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特開2024-103822ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム及び半導体装置の製造方法
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  • 特開-ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム及び半導体装置の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103822
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240726BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20240726BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240726BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/78 X
H01L21/78 V
H01L21/52 G
C09J7/38
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021092942
(22)【出願日】2021-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】木村 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】大久保 恵介
(72)【発明者】
【氏名】菅原 丈博
(72)【発明者】
【氏名】高橋 義政
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F047
5F063
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004AB07
4J004CE01
4J004FA08
4J040DF001
4J040JA09
4J040JB08
4J040JB09
4J040NA20
5F047BA34
5F047BB03
5F047BB19
5F063AA07
5F063AA18
5F063AA33
5F063CB02
5F063CB05
5F063CB06
5F063CB07
5F063CB29
5F063CC32
5F063DD68
5F063DD71
5F063DD85
5F063DD93
5F063DG21
5F063EE04
5F063EE07
5F063EE08
5F063EE13
5F063EE14
5F063EE16
5F063EE17
5F063EE18
5F063EE31
5F063EE42
5F063EE43
5F063EE44
(57)【要約】
【課題】粘着剤層が酸素に接触した場合であっても、粘着剤層に対して紫外線を照射したときに、接着剤層に対する粘着剤層の粘着力を充分に低下させることが可能なダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを提供すること。
【解決手段】ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム10は、基材層1、紫外線硬化型粘着剤からなる層を含む粘着剤層3、及び接着剤層5をこの順序で備える。紫外線硬化型粘着剤からなる層は、接着剤層5と接して設けられている。紫外線硬化型粘着剤は、連鎖重合可能な官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂及び光重合開始剤を含み、光重合開始剤として、第1の光重合開始剤及び第1の光重合開始剤と紫外線領域の最大吸収波長の異なる第2の光重合開始剤を含む。光重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂の総量100質量部に対して、1.5質量部以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、紫外線硬化型粘着剤からなる紫外線硬化型粘着剤層を含む粘着剤層と、接着剤層とをこの順序で備え、
前記粘着剤層に含まれる前記紫外線硬化型粘着剤層が、前記接着剤層と接して設けられており、
前記紫外線硬化型粘着剤が、連鎖重合可能な官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂と、光重合開始剤とを含み、
前記紫外線硬化型粘着剤が、前記光重合開始剤として、第1の光重合開始剤と、前記第1の光重合開始剤と紫外線領域の最大吸収波長の異なる第2の光重合開始剤とを少なくとも含み、
前記光重合開始剤の含有量が、前記(メタ)アクリル系樹脂の総量100質量部に対して、1.5質量部以上である、
ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム。
【請求項2】
前記官能基が、アクリロイル基及びメタクリロイル基から選ばれる少なくとも1種である、
請求項1に記載のダイシング・ダイボンディング一体型フィルム。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系樹脂の少なくとも一部が、架橋剤により架橋されている、
請求項1又は2に記載のダイシング・ダイボンディング一体型フィルム。
【請求項4】
(A)請求項1~3のいずれか一項に記載のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを準備する工程と、
(B)ウェハをダイシングする工程と、
(C)前記ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの前記接着剤層に対して前記ウェハを貼り付ける工程と、
(D)前記基材層を冷却条件下においてエキスパンドすることによって、前記ウェハ及び前記接着剤層が個片化されてなる接着剤片付きチップを得る工程と、
(E)前記粘着剤層に紫外線を照射することによって、前記接着剤片付きチップに対する前記粘着剤層の粘着力を低下させる工程と、
(F)前記接着剤片付きチップを前記粘着剤層からピックアップする工程と、
(G)ピックアップされた前記接着剤片付きチップを基板又は他のチップ上にマウントする工程と、
を備える、
半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は以下の工程を経て製造される。まず、ウェハにダイシング用粘着フィルムを貼り付けた状態でダイシング工程を実施する。その後、エキスパンド工程、ピックアップ工程、ダイボンディング工程等が実施される。
【0003】
半導体装置の製造プロセスにおいて、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムと称されるフィルムが使用されている。このフィルムは、基材層と粘着剤層と接着剤層とがこの順序で積層された構造を有し、例えば、次のように使用される。まず、ウェハに対して接着剤層側の面を貼り付けるとともにダイシングリングでウェハを固定した状態でウェハをダイシングする。これにより、ウェハが多数のチップに個片化される。続いて、粘着剤層に対して紫外線を照射することによって接着剤層に対する粘着剤層の粘着力を低下させた後、接着剤層が個片化されてなる接着剤片とともにチップを粘着剤層からピックアップする。その後、接着剤片を介してチップを基板等にマウントする工程を経て半導体装置が製造される。なお、ダイシング工程を経て得られるチップと、これに付着した接着剤片とからなる積層体は接着剤片付きチップと称される。
【0004】
従来、ウェハ及び接着剤層のダイシング方法としては、ブレード等による切断であるブレードダイシングが広く知られている。近年、半導体パッケージの高集積化及びウェハの薄化に伴い、ステルスダイシングが普及しつつある(特許文献1、2参照)。ステルスダイシングは、レーザによって加工対象物の内部に切断予定ラインを形成した後、切断予定ラインに沿ってウェハ及び接着剤層を切断することによって、接着剤片付きチップを得る方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-192370号公報
【特許文献2】特開2003-338467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、薄化されたチップを用いた接着剤片付きチップの製造において、歩留まりが低下するという問題がある。本発明者らの検討によると、接着剤片付きチップを粘着剤層からピックアップする前に、接着剤片付きチップの端部と粘着剤層との間での剥離が発生する場合があることが見出された。このような剥離が発生すると、粘着剤層の剥離した部分が酸素に接触し、粘着剤層に対して紫外線を照射した後に接着剤層に対する粘着剤層の粘着力が充分に低下しないことがあり、ピックアップ性が低下することがある。
【0007】
そこで、本開示は、粘着剤層が酸素に接触した場合であっても、粘着剤層に対して紫外線を照射したときに、接着剤層に対する粘着剤層の粘着力を充分に低下させることが可能なダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムに関する。当該ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムは、基材層と、紫外線硬化型粘着剤からなる紫外線硬化型粘着剤層を含む粘着剤層と、接着剤層とをこの順序で備える。粘着剤層に含まれる紫外線硬化型粘着剤層は、接着剤層と接して設けられている。紫外線硬化型粘着剤は、連鎖重合可能な官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂(以下、単に「(メタ)アクリル系樹脂」という場合がある。)と、光重合開始剤とを含む。紫外線硬化型粘着剤は、光重合開始剤として、第1の光重合開始剤と、第1の光重合開始剤と紫外線領域の最大吸収波長の異なる第2の光重合開始剤とを少なくとも含む。光重合開始剤の含有量は、前記(メタ)アクリル系樹脂の総量100質量部に対して、1.5質量部以上である。
【0009】
このようなダイシング・ダイボンディング一体型フィルムによれば、光重合開始剤の含有量が充分に多く、また、紫外線領域の光を効率よく利用することができることから、粘着剤層が酸素に接触した場合であっても、粘着剤層に対して紫外線を照射したときに粘着剤層の粘着力を充分に低下させることが可能となる。
【0010】
(メタ)アクリル系樹脂の官能基は、アクリロイル基及びメタクリロイル基から選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0011】
(メタ)アクリル系樹脂は、その少なくとも一部が架橋剤により架橋されていてもよい。
【0012】
本開示の他の一側面は、半導体装置の製造方法に関する。当該半導体装置の製造方法は、以下の工程を備える。
(A)上記のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを準備する工程(準備工程)
(B)ウェハをダイシングする工程(ダイシング工程)
(C)前記ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの前記接着剤層に対して前記ウェハを貼り付ける工程(ウェハ貼り付け工程)
(D)基材層を冷却条件下においてエキスパンドすることによって、ウェハ及び接着剤層が個片化されてなる接着剤片付きチップを得る工程(冷却エキスパンド工程)
(E)粘着剤層に紫外線を照射することによって、接着剤片付きチップに対する粘着剤層の粘着力を低下させる工程(紫外線照射工程)
(F)接着剤片付きチップを粘着剤層からピックアップする工程(ピックアップ工程)
(G)ピックアップされた接着剤片付きチップを基板又は他のチップ上にマウントする工程(マウント工程)
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、粘着剤層が酸素に接触した場合であっても、粘着剤層に対して紫外線を照射したときに、接着剤層に対する粘着剤層の粘着力を充分に低下させることが可能なダイシング・ダイボンディング一体型フィルムが提供される。また、本開示によれば、このようなダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを用いた半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(a)は、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの一実施形態を示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示すB-B線に沿った模式断面図である。
図2図2は、接着剤層に対する粘着剤層の30°ピール強度を測定している様子を模式的に示す断面図である。
図3図3は、半導体装置の一実施形態の模式断面図である。
図4図4(a)及び図4(b)は、接着剤片付きチップを製造する過程を模式的に示す断面図である。
図5図5(a)、図5(b)、及び図5(c)は、接着剤片付きチップを製造する過程を模式的に示す断面図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、図3に示す半導体装置を製造する過程を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」等の他の類似の表現においても同様である。また、「(ポリ)」とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合の双方を意味する。また、「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。また、以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0017】
[ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム]
図1(a)は、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの一実施形態を示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示すB-B線に沿った模式断面図である。ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム10(以下、場合により、単に「フィルム10」という。)は、(A)工程~(G)工程を含む半導体装置の製造プロセスに好適に用いることができる。
【0018】
フィルム10は、基材層1と、紫外線硬化型粘着剤からなる粘着剤層3と、接着剤層5とをこの順序で備える。本実施形態においては、正方形の基材層1の上に、粘着剤層3及び接着剤層5の積層体が一つ形成された態様を例示しているが、基材層1が所定の長さ(例えば、100m以上)を有し、その長手方向に並ぶように、粘着剤層3及び接着剤層5の積層体が所定の間隔で配置された態様であってもよい。
【0019】
<粘着剤層>
粘着剤層3は、紫外線硬化型粘着剤からなる紫外線硬化型粘着剤層を含む。紫外線硬化型粘着剤は、(メタ)アクリル系樹脂と、光重合開始剤とを含む。(メタ)アクリル系樹脂は、その少なくとも一部が架橋剤により架橋されていてもよい。以下、紫外線硬化型粘着剤の含有成分について詳細に説明する。
【0020】
((メタ)アクリル系樹脂)
紫外線硬化型粘着剤は、連鎖重合可能な官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂を含む。官能基は、アクリロイル基及びメタクリロイル基から選ばれる少なくとも1種であってよい。(メタ)アクリル系樹脂における官能基の含有量は、例えば、0.1~1.2mmol/gであってよく、0.3~1.0mmol/g又は0.5~0.8mmol/gであってもよい。官能基の含有量が0.1mmol/g以上であると、紫外線の照射によって粘着力を適度に低下させることができ、他方、1.2mmol/g以下であると、優れたピックアップ性を達成し易い傾向にある。
【0021】
(メタ)アクリル系樹脂は、既知の方法で合成することで得ることができる。合成方法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法、析出重合法、気相重合法、プラズマ重合法、超臨界重合法が挙げられる。また、重合反応の種類としては、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、リビングラジカル重合、リビングカチオン重合、リビングアニオン重合、配位重合、イモーダル重合等の他、ATRP(原子移動ラジカル重合)及びRAFT(可逆的付加開裂連鎖移動重合)といった手法も挙げられる。この中でも、溶液重合法を用いてラジカル重合により合成することは、経済性の良さ、反応率の高さ、重合制御の容易さなどの他、重合で得られた樹脂溶液をそのまま用いて配合できる等の利点を有する。
【0022】
ここで、溶液重合法を用いてラジカル重合によって、(メタ)アクリル系樹脂を得る方法を例に、(メタ)アクリル系樹脂の合成法について詳細に説明する。
【0023】
(メタ)アクリル系樹脂を合成する際に用いられるモノマーとしては、一分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有するものであれば特に制限はない。その具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチルヘプチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)スクシネート等の脂肪族(メタ)アクリレート;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)テトラヒドロフタレート、モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)ヘキサヒドロフタレート等の脂環式(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、o-ビフェニル(メタ)アクリレート、1-ナフチル(メタ)アクリレート、2-ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-クミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、1-ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(o-フェニルフェノキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(1-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(2-ナフトキシ)プロピル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート;2-テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-N-カルバゾール等の複素環式(メタ)アクリレート、これらのカプロラクトン変性体、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、α-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、α-プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、α-ブチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、α-エチル-6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエチレン性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物;(2-エチル-2-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、2-(2-エチル-2-オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-メチル-2-オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、3-(2-エチル-2-オキセタニル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(2-メチル-2-オキセタニル)プロピル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基とオキセタニル基とを有する化合物;2-(メタ)アクリロキシエチルイソシアネート等のエチレン性不飽和基とイソシアネート基とを有する化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基とヒドロキシル基とを有する化合物が挙げられる。これらを適宜組み合わせて目的とする(メタ)アクリル系樹脂を得ることができる。
【0024】
(メタ)アクリル系樹脂は、後述する官能基導入化合物又は架橋剤との反応点として、水酸基、グリシジル基(エポキシ基)、アミノ基等から選ばれる少なくとも1種の官能基を有していてもよい。水酸基を有する(メタ)アクリル系樹脂を合成するためのモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基とヒドロキシル基とを有する化合物などが挙げられる。
【0025】
グリシジル基を有する(メタ)アクリル系樹脂を合成するためのモノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、α-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、α-プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、α-ブチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2-プロピルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、α-エチル-6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル等のエチレン性不飽和基とエポキシ基とを有する化合物が挙げられる。
【0026】
これらのモノマーから合成される(メタ)アクリル系樹脂は、連鎖重合可能な官能基を含む。連鎖重合可能な官能基は、例えば、アクリロイル基及びメタクリロイル基から選ばれる少なくとも1種である。連鎖重合可能な官能基は、例えば、上述のように合成された水酸基、グリシジル基(エポキシ基)、アミノ基等から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂に、以下の化合物(官能基導入化合物)を反応させることにより、当該(メタ)アクリル系樹脂中に導入することができる。官能基導入化合物の具体例として、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、α,α-ジメチル-4-イソプロペニルベンジルイソシアナート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又は4-ヒドロキシブチルエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物等が挙げられる。これらの中でも、官能基導入化合物は、2-メタクリロキシエチルイソシアネートであってよい。
【0027】
(メタ)アクリル系樹脂は、主に、水酸基、グリシジル基(エポキシ基)、アミノ基等から選ばれる少なくとも1種の官能基を反応点として、その反応点の一部が架橋剤により架橋されていてもよい。すなわち、(メタ)アクリル系樹脂の少なくとも一部は、架橋剤により架橋されていてもよい。紫外線硬化型粘着剤は、(メタ)アクリル系樹脂として、連鎖重合可能な官能基を有する、架橋剤により架橋された(メタ)アクリル系樹脂を含んでいてもよい。
【0028】
架橋剤は、例えば、粘着剤層の貯蔵弾性率及び/又は粘着性の制御を目的に用いられる。架橋剤は、(メタ)アクリル系樹脂が有する水酸基、グリシジル基、アミノ基等から選ばれる少なくとも1種の官能基と反応し得る官能基を一分子中に2つ以上有する化合物であればよい。(メタ)アクリル系樹脂と架橋剤との反応によって形成される結合としては、例えば、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、ウレア結合等が挙げられる。
【0029】
架橋剤は、例えば、一分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートであってよい。このような多官能イソシアネートを用いると、(メタ)アクリル系樹脂が有する水酸基、グリシジル基、アミノ基等と容易に反応し、強固な架橋構造を形成することができる。
【0030】
一分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート、リジンイソシアネート等のイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0031】
架橋剤は、多官能イソシアネートと、一分子中に2つ以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールとの反応物(イソシアナート基含有オリゴマー)であってもよい。一分子中に2つ以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
【0032】
これらの中でも、架橋剤は、一分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する多官能イソシアネートと、一分子中に3つ以上のヒドロキシ基を有する多価アルコールとの反応物(イソシアナート基含有オリゴマー)であってもよい。このようなイソシアネート基含有オリゴマーを架橋剤として用いることで、粘着剤層3が緻密な架橋構造を形成し、これにより、ピックアップ工程において接着剤層5に粘着剤が付着することを抑制することができる傾向にある。
【0033】
(メタ)アクリル系樹脂を架橋剤と反応させる際の架橋剤の含有量は、粘着剤層に対して求められる凝集力、破断伸び率、接着剤層との密着性等に応じて適宜設定することができる。具体的には、架橋剤の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂の総量100質量部に対して、例えば、0.1~10質量部、0.2~7質量部、又は0.3~5質量部であってよい。架橋剤の含有量がこのような範囲にあると、ダイシング工程において粘着剤層に求められる特性と、ダイボンディング工程において粘着剤層に求められる特性とをバランスよく両立することが可能であるとともに、優れたピックアップ性も達成し得る。
【0034】
架橋剤の含有量が(メタ)アクリル系樹脂の総量100質量部に対して0.1質量部以上であると、架橋構造の形成が不充分となり難く、ピックアップ工程において、接着剤層との界面密着力が充分に低下してピックアップ時に不良が発生し難い傾向にある。他方、架橋剤の含有量が(メタ)アクリル系樹脂の総量100質量部に対して10質量部以下であると、粘着剤層が過度に硬くなり難く、エキスパンド工程においてチップが剥離し難い傾向にある。
【0035】
(光重合開始剤)
紫外線硬化型粘着剤は、光重合開始剤として、第1の光重合開始剤と、第1の光重合開始剤と紫外線領域の最大吸収波長の異なる第2の光重合開始剤とを少なくとも含む。
【0036】
本明細書において、「紫外線領域」は波長220~400nmの領域を意味し、「最大吸収波長」とは、分光吸収スペクトルにおいて、複数の吸収ピーク(吸収極大)が存在する場合、その中で最大のピーク強度(吸光度)を示す吸収ピークのピーク強度(吸収極大波長)を意味する。分光吸収スペクトルは、例えば、実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0037】
紫外線硬化型粘着剤は、紫外線領域の最大吸収波長の異なる光重合開始剤を2種若しくは2種以上含んでいてもよく、3種若しくは3種以上含んでいてもよく、又は、4種若しくは4種以上含んでいてもよい。紫外線硬化型粘着剤は、光重合開始剤として、第1の光重合開始剤及び第2の光重合開始剤と紫外線領域の最大吸収波長の異なる第3の光重合開始剤とをさらに含んでいてもよく、第3の光重合開始剤に加えて、第1の光重合開始剤、第2の光重合開始剤、及び第3の光重合開始剤と紫外線領域の最大吸収波長の異なる第4の光重合開始剤とをさらに含んでいてもよい。
【0038】
光重合開始剤は、紫外線を照射することで連鎖重合可能な活性種を発生するものであれば、特に制限はない。光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤等が挙げられる。ここで連鎖重合可能な活性種とは、連鎖重合可能な官能基と反応することで重合反応が開始されるものを意味する。
【0039】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等のベンゾインケタール;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシケトン;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、1,2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等のα-アミノケトン;1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタジオン-2-(ベンゾイル)オキシム等のオキシムエステル;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、N,N,N’,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;2-エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ベンズアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、2-メチル-1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルアントラキノン等のキノン化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル化合物;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9、9’-アクリジニルヘプタン)等のアクリジン化合物;N-フェニルグリシン、クマリンなどが挙げられる。
【0040】
第1の光重合開始剤及び第2の光重合開始剤は、これらの光重合開始剤の中で、紫外線領域の最大吸収波長の異なる任意のものを選択することができる。第1の光重合開始剤と第2の光重合開始剤との組み合わせは、例えば、220nm以上300nm未満の領域に最大吸収波長を有する光重合開始剤と300nm以上400nm以下の領域に最大吸収波長を有する光重合開始剤との組み合わせであってよい。
【0041】
紫外線硬化型粘着剤における光重合開始剤(第1の光重合開始剤、第2の光重合開始剤等の総量)の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂の総量100質量部に対して、1.5質量部以上であり、1.7質量部以上、2.0質量部以上、2.3質量部以上、又は2.5質量部以上であってもよい。光重合開始剤の含有量がこのような範囲にあると、粘着剤層が酸素に接触した場合であっても、粘着剤層に対して紫外線を照射した後に接着剤層に対する粘着剤層の粘着力を充分に低下させることが可能となり、ピックアップ不良が起こり難い傾向にある。紫外線硬化型粘着剤における光重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリル系樹脂の総量100質量部に対して、10質量部以下、7質量部以下、又は5質量部以下であってよい。光重合開始剤の含有量がこのような範囲にあると、接着剤層への汚染(光重合開始剤の接着剤層への転写)を防ぐことができる傾向にある。
【0042】
紫外線硬化型粘着剤は、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、連鎖重合可能な官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂(アクリルモノマー又はオリゴマー、ウレタンモノマー又はオリゴマー等)、粘着性付与剤(タッキファイヤ等)、帯電防止性付与剤、充填剤(有機フィラー、無機フィラー等)などが挙げられる。紫外線硬化型粘着剤は、本開示で奏する効果が得られ易いことから、増感剤を含まないことが好ましい。
【0043】
粘着剤層3に含まれる紫外線硬化型粘着剤層は、接着剤層5と接して設けられている。粘着剤層3は、紫外線硬化型粘着剤層からなる単層構成(すなわち、紫外線硬化型粘着剤からなるもの)であってよい。一方、粘着剤層3は、紫外線硬化型粘着剤層が接着剤層5と接して設けられているのであれば、紫外線硬化型粘着剤層と、1以上の紫外線硬化型粘着剤層以外の層とから構成される多層構成であってもよい。紫外線硬化型粘着剤層以外の層は、感圧型粘着剤からなる層、又は、紫外線硬化型粘着剤層を構成する紫外線硬化型粘着剤とは異なる紫外線硬化型粘着剤(以下、「その他の紫外線硬化型粘着剤」という場合がある。)からなる層であってよい。感圧型粘着剤及びその他の紫外線硬化型粘着剤は、当該分野で一般的に使用されている粘着剤を使用することができる。その他の紫外線硬化型粘着剤は、上記で説明した、(メタ)アクリル系樹脂(少なくとも一部が架橋剤により架橋された(メタ)アクリル系樹脂を含む)、光重合開始剤等を含むものであってよく、含まないものであってよい。
【0044】
粘着剤層3(又は紫外線硬化型粘着剤層)の厚さは、エキスパンド工程の条件(温度、張力等)に応じて適宜設定すればよく、例えば、1~100μm、2~50μm、3~20μm又は5~15μmであってよい。粘着剤層3の厚さが1μm以上であると、粘着性が不十分となり難く、100μm以下であると、エキスパンド時にカーフ幅が広くなり(ピン突き上げ時に応力を緩和せずに)、ピックアップが不充分になり難い傾向にある。
【0045】
粘着剤層3が紫外線硬化型粘着剤層からなる単層構成である(粘着剤層3が紫外線硬化型粘着剤からなる)場合、粘着剤層3は、基材層1上に形成されている。粘着剤層3の形成方法としては、既知の手法を採用できる。例えば、基材層1と粘着剤層3との積層体を二層押し出し法で形成してもよいし、紫外線硬化型粘着剤のワニス(粘着剤層形成用のワニス)を調製し、これを基材層1の表面に塗工する、あるいは、離型処理されたフィルム上に粘着剤層3を形成し、これを基材層1に転写してもよい。
【0046】
紫外線硬化型粘着剤のワニス(粘着剤層形成用のワニス)は、(メタ)アクリル系樹脂、光重合開始剤、及び架橋剤を溶解し得る有機溶剤であって加熱により揮発するものであってよい。有機溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、p-シメン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等の環状エーテル;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコールアルキルエーテルアセテート;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミドなどが挙げられる。
【0047】
これらの中で、有機溶剤は、溶解性及び沸点の観点から、例えば、トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及びN,N-ジメチルアセトアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。ワニスの固形分濃度は、通常、10~60質量%である。
【0048】
接着剤層5に対する粘着剤層3(又は紫外線硬化型粘着剤層)の粘着力は、6N/25mm以上、6.5N/25mm以上、又は7N/25mm以上であってよい。この粘着力は、温度23℃において剥離角度30°及び剥離速度600mm/分の条件で測定される30°ピール強度である。図2は、接着剤層に対する粘着剤層の30°ピール強度を測定している様子を模式的に示す断面図である。図2に示すように、粘着剤層3の30°ピール強度は、支持板80に測定試料(幅25mm×長さ100mm)の接着剤層5を固定した状態で測定される。接着剤層5に対する粘着剤層3の粘着力(30°ピール強度)がこのような範囲にあると、接着剤片付きチップを粘着剤層からピックアップする前((F)工程より前)に、接着剤片付きチップの端部と粘着剤層との間での剥離の発生を抑制することができる傾向にある。接着剤層5に対する粘着剤層3の粘着力は、例えば、15N/25mm以下、13N/25mm以下、又は12N/25mm以下であってよい。
【0049】
接着剤層5に対する粘着剤層3の粘着力が低くなるほど、接着剤片付きチップを粘着剤層からピックアップする前((F)工程より前)に、接着剤片付きチップの端部と粘着剤層との間での剥離が発生し易くなる傾向になる。そのため、接着剤層5に対する粘着剤層3の粘着力が低くなるほど、本開示の構成による効果が発現し易いといえる。
【0050】
粘着剤層3に対して照度70mW/cm及び照射量150mJ/cmの紫外線(主波長:365nm)が照射された後の接着剤層5に対する紫外線照射後の粘着剤層3(又は紫外線硬化型粘着剤層)の粘着力は1.2N/25mm以下、1.0N/25mm以下、又は0.9N/25mm以下であってよい。接着剤層5に対する紫外線照射後の粘着剤層3の粘着力がこのような範囲にあると、優れたピックアップ性を達成することが可能となる。接着剤層5に対する紫外線照射後の粘着剤層3の粘着力は、0.3N/25mm以上、0.4N/25mm以上、又は0.5N/25mm以上であってよい。なお、当該粘着力は、上記と同様に、温度23℃において剥離角度30°及び剥離速度600mm/分の条件で測定される30°ピール強度である(図2参照)。
【0051】
粘着剤層3に対して、酸素接触条件下で照度70mW/cm及び照射量150mJ/cmの紫外線(主波長:365nm)が照射された後の接着剤層5に対する紫外線照射後の粘着剤層3(又は紫外線硬化型粘着剤層)の粘着力は4.0N/25mm以下、3.8N/25mm以下、又は3.5N/25mm以下であってよい。接着剤層5に対する紫外線照射後の粘着剤層3の粘着力がこのような範囲にあると、優れたピックアップ性を達成することが可能となる。接着剤層5に対する紫外線照射後の粘着剤層3の粘着力は、0.5N/25mm以上、1.0N/25mm以上、2.0N/25mm以上、又は2.5N/25mm以上であってよい。なお、当該粘着力は、上記と同様に、温度23℃において剥離角度30°及び剥離速度600mm/分の条件で測定される30°ピール強度である(図2参照)。
【0052】
本実施形態においては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂における連鎖重合可能な官能基の含有量(官能基導入化合物の含有量)、(メタ)アクリル系樹脂を架橋させるための架橋剤の含有量等を調整することによって、又は、例えば、連鎖重合可能な官能基を有する(メタ)アクリル系樹脂以外の樹脂(アクリルモノマー又はオリゴマー、ウレタンモノマー又はオリゴマー等)、粘着性付与剤(タッキファイヤ等)などを添加することによって、接着剤層5に対する粘着剤層3の粘着力及び接着剤層5に対する紫外線照射後の粘着剤層3の粘着力を調整することができる。
【0053】
<基材層>
基材層1は、既知のポリマーシート又はフィルムを用いることができ、低温条件下において、エキスパンド工程を実施可能なものであれば、特に制限されない。基材層1の具体例としては、結晶性ポリプロピレン、非晶性ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、低密度直鎖ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル(ランダム、交互)共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、全芳香族ポリアミド、ポリフェニルスルフイド、アラミド(紙)、ガラス、ガラスクロス、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース系樹脂、シリコーン樹脂、又は、これらに可塑剤を混合した混合物、あるいは、電子線照射により架橋を施した硬化物が挙げられる。
【0054】
基材層1は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン-ポリプロピレンランダム共重合体、及びポリエチレン-ポリプロピレンブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を主成分とする表面を有し、この表面と粘着剤層3とが接しているものであってよい。これらの樹脂は、ヤング率、応力緩和性、融点等の特性、価格面、使用後の廃材リサイクルなどの観点からも良好な基材となり得る。基材層1は、単層であってよく、必要に応じて、異なる材質からなる層が積層された多層構造を有していてもよい。粘着剤層3との密着性を制御する観点から、基材層1は、その表面に対して、マット処理、コロナ処理等の表面粗化処理を施してもよい。
【0055】
<接着剤層>
接着剤層5には、既知のダイボンディングフィルムを構成する接着剤組成物を適用できる。具体的には、接着剤層5を構成する接着剤組成物は、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、反応性基含有(メタ)アクリル共重合体とを含んでいてもよい。接着剤層5を構成する接着剤組成物は、硬化促進剤と、フィラーとをさらに含んでいてもよい。これらの成分を含む接着剤層5によれば、チップ/基板間、チップ/チップ間の接着性に優れ、また、電極埋め込み性、ワイヤ埋め込み性等も付与可能で、かつダイボンディング工程では低温で接着でき、短時間で優れた硬化が得られる、封止剤でモールド後は優れた信頼性を有する等の特徴を有する傾向にある。
【0056】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールのジグリシジリエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジリエーテル化物、フェノール類のジグリシジリエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びこれらのアルキル置換体、ハロゲン化物、水素添加物等の二官能エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。また、多官能エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂等の一般に知られているその他のエポキシ樹脂を適用してもよい。なお、特性を損なわない範囲でエポキシ樹脂以外の成分が不純物として含まれていてもよい。
【0057】
エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、フェノール化合物と2価の連結基であるキシリレン化合物とを、無触媒又は酸触媒の存在下に反応させて得ることができるフェノール樹脂等が挙げられる。フェノール樹脂の製造に用いられるフェノール化合物としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-n-プロピルフェノール、m-n-プロピルフェノール、p-n-プロピルフェノール、o-イソプロピルフェノール、m-イソプロピルフェノール、p-イソプロピルフェノール、o-n-ブチルフェノール、m-n-ブチルフェノール、p-n-ブチルフェノール、o-イソブチルフェノール、m-イソブチルフェノール、p-イソブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、2,4-キシレノール、2,6-キシレノール、3,5-キシレノール、2,4,6-トリメチルフェノール、レゾルシン、カテコール、ハイドロキノン、4-メトキシフェノール、o-フェニルフェノール、m-フェニルフェノール、p-フェニルフェノール、p-シクロヘキシルフェノール、o-アリルフェノール、p-アリルフェノール、o-ベンジルフェノール、p-ベンジルフェノール、o-クロロフェノール、p-クロロフェノール、o-ブロモフェノール、p-ブロモフェノール、o-ヨードフェノール、p-ヨードフェノール、o-フルオロフェノール、m-フルオロフェノール、p-フルオロフェノール等が挙げられる。フェノール樹脂の製造に用いられる2価の連結基であるキシリレン化合物としては、次に示すキシリレンジハライド、キシリレンジグリコール及びその誘導体が用いることができる。すなわち、キシリレン化合物の具体例としては、α,α’-ジクロロ-p-キシレン、α,α’-ジクロロ-m-キシレン、α,α’-ジクロロ-o-キシレン、α,α’-ジブロモ-p-キシレン、α,α’-ジブロモ-m-キシレン、α,α’-ジブロモ-o-キシレン、α,α’-ジヨード-p-キシレン、α,α’-ジヨード-m-キシレン、α,α’-ジヨード-o-キシレン、α,α’-ジヒドロキシ-p-キシレン、α,α’-ジヒドロキシ-m-キシレン、α,α’-ジヒドロキシ-o-キシレン、α,α’-ジメトキシ-p-キシレン、α,α’-ジメトキシ-m-キシレン、α,α’-ジメトキシ-o-キシレン、α,α’-ジエトキシ-p-キシレン、α,α’-ジエトキシ-m-キシレン、α,α’-ジエトキシ-o-キシレン、α,α’-ジ-n-プロポキシ-p-キシレン、α,α’-ジ-n-プロポキシ-m-キシレン、α,α’-ジ-n-プロポキシ-o-キシレン、α,α’-ジイソプロポキシ-p-キシレン、α,α’-ジイソプロポキシ-m-キシレン、α,α’-ジイソプロポキシ-o-キシレン、α,α’-ジ-n-ブトキシ-p-キシレン、α,α’-ジ-n-ブトキシ-m-キシレン、α,α’-ジ-n-ブトキシ-o-キシレン、α,α’-ジイソブトキシ-p-キシレン、α,α’-ジイソブトキシ-m-キシレン、α,α’-ジイソブトキシ-o-キシレン、α,α’-ジ-tert-ブトキシ-p-キシレン、α,α’-ジ-tert-ブトキシ-m-キシレン、α,α’-ジ-tert-ブトキシ-o-キシレン等が挙げられる。
【0058】
フェノール化合物とキシリレン化合物とを反応させる際には、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸等の鉱酸類;ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の有機カルボン酸類;トリフロロメタンスルホン酸等の超強酸類;アルカンスルホン酸型イオン交換樹脂等の強酸性イオン交換樹脂類;パーフルオロアルカンスルホン酸型イオン交換樹脂等の超強酸性イオン交換樹脂類(商品名:ナフィオン、Nafion、Du Pont社製、「ナフィオン」は登録商標);天然及び合成ゼオライト類;活性白土(酸性白土)類等の酸性触媒を用い、50~250℃において実質的に原料であるキシリレン化合物が消失し、かつ反応組成が一定になるまで反応させることによってフェノール樹脂をえることができる。反応時間は、原料及び反応温度によって適宜設定することができ、例えば、1~15時間程度とすることでき、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)等により反応組成を追跡しながら決定することができる。
【0059】
反応性基含有(メタ)アクリル共重合体は、例えば、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体であってよい。エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体は、原料としてグリシジル(メタ)アクリレートを、得られる共重合体に対し0.5~6質量%となる量用いて得られる共重合体であってよい。グリシジル(メタ)アクリレートの含有量が0.5質量%以上であると、高い接着力を得易くなり、他方、6質量%以下であることでゲル化を抑制できる傾向にある。反応性基含有(メタ)アクリル共重合体の残部を構成するモノマーは、例えば、メチル(メタ)アクリレート等の炭素数1~8のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート、スチレン、アクリロニトリル等であってよい。これらの中でも、反応性基含有(メタ)アクリル共重合体の残部を構成するモノマーは、エチル(メタ)アクリレート及び/又はブチル(メタ)アクリレートであってよい。混合比率は、反応性基含有(メタ)アクリル共重合体のTgを考慮して調整することができる。Tgが-10℃以上であるとBステージ状態での接着剤層5のタック性が大きくなり過ぎることを抑制できる傾向にあり、取り扱い性に優れる傾向にある。なお、エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体のガラス転移点(Tg)は、例えば、30℃以下であってよい。重合方法は、特に制限されないが、例えば、パール重合、溶液重合等が挙げられる。市販のエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体としては、例えば、HTR-860P-3(商品名、ナガセケムテックス株式会社製)が挙げられる。
【0060】
エポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は、接着性及び耐熱性の観点から、10万以上であってよく、30万~300万又は50万~200万であってもよい。重量平均分子量が300万以下であると、チップと、これを支持する基板との間の充填性が低下することを抑制できる。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)で標準ポリスチレンによる検量線を用いたポリスチレン換算値である。
【0061】
硬化促進剤としては、例えば、第三級アミン、イミダゾール類、第四級アンモニウム塩類等が挙げられる。硬化促進剤の具体例としては、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテートが挙げられる。
【0062】
フィラーは、無機フィラーであってよい。無機フィラーの具体例としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミウイスカ、窒化ホウ素、結晶質シリカ、非晶質シリカが挙げられる。
【0063】
接着剤層5の厚さは、例えば、1~300μm、5~150μm、又は10~100μmであってよい。接着剤層5の厚さが1μm以上であると、接着性がより優れ、他方、300μm以下であると、エキスパンド時の分断性及びピックアップ性がより優れる傾向にある。接着剤層5の厚さは、例えば、40μm以上、50μm以上、70μm以上、又は80μm以上であってもよく、150μm以下、130μm以下、又は110μm以下であってもよい。接着剤層5の厚さが40μm以上であると、冷却エキスパンドによる分断工程時の伸びとヒートシュリンク工程時の収縮とにおいて差が大きくなり易く、接着剤片付きチップを粘着剤層からピックアップする前((F)工程より前)に、接着剤片付きチップの端部と粘着剤層との間での剥離が発生し易くなる傾向にある。そのため、接着剤層5の厚さが40μm以上であるほど、本開示の構成による効果が発現し易いということができる。
【0064】
なお、接着剤層5は熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤)を含まない態様であってもよい。例えば、接着剤層5が反応性基含有(メタ)アクリル共重合体を含む場合、接着剤層5は、反応性基含有(メタ)アクリル共重合体と、硬化促進剤と、フィラーとを含むものであってもよい。
【0065】
接着剤層5は、接着剤組成物のワニス(接着剤層形成用のワニス)を調製し、これを粘着剤層3の表面に塗工する、あるいは、離型処理されたフィルム上に接着剤層5を形成し、これを粘着剤層3に貼り付けてもよい。接着剤組成物のワニス(接着剤層形成用のワニス)は、フィラー以外の各成分を溶解し得る有機溶剤であって加熱により揮発するものであってよい。有機溶剤の具体例は、紫外線硬化型粘着剤のワニスにおける有機溶剤と同様のものを例示できる。
【0066】
[ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの製造方法]
フィルム10は、例えば、基材層1と、基材層1上に設けられた紫外線硬化型粘着剤からなる粘着剤層3とを含む積層体(ダイシングフィルム)を準備する工程と、接着剤層5を含むダイボンディングフィルムを準備する工程と、ダイシングフィルムの粘着剤層3上に、ダイボンディングフィルムにおける接着剤層5を貼り合わせる工程とを備える方法によって製造することができる。
【0067】
[半導体装置及びその製造方法]
図3は、半導体装置の一実施形態の模式断面図である。図3に示される半導体装置100は、基板70と、基板70の表面上に積層された四つのチップS1,S2,S3,S4と、基板70の表面上の電極(不図示)と、四つのチップS1,S2,S3,S4とを電気的に接続するワイヤW1,W2,W3,W4と、これらを封止している封止層50とを備える。
【0068】
基板70は、例えば、有機基板であってよく、リードフレーム等の金属基板であってもよい。半導体装置100の反りを抑制する観点から、基板70の厚さは、例えば、70~140μmであってよく、80~100μmであってもよい。
【0069】
四つのチップS1,S2,S3,S4は、接着剤片5Pの硬化物5Cを介して積層されている。平面視におけるチップS1,S2,S3,S4の形状は、例えば正方形又は長方形である。チップS1,S2,S3,S4の面積は、30~250mmであってよく、40~200mm又は50~150mmであってもよい。チップS1,S2,S3,S4の一辺の長さは、例えば、6.0mm以上であり、7.0~18mm又8.0~15mmであってもよい。なお、四つのチップS1,S2,S3,S4の一辺の長さは同じであっても、互いに異なっていてもよい。また、四つのチップS1,S2,S3,S4は、サイズが比較的小さいものであってもよい。すなわち、チップS1,S2,S3,S4の面積は、例えば、30mm未満であってよく、0.1~20mm又は1~15mmであってもよい。
【0070】
チップS1,S2,S3,S4の厚さは、例えば、10~200μmであり、20~100μmであってもよい。なお、四つのチップS1,S2,S3,S4の厚さは同じであっても、互いに異なっていてもよい。また、チップの厚さは、例えば、50μm以下、40μm以下、30μm以下、又は20μm以下であってもよく、10μm以上又は15μm以上であってもよい。チップの厚さが薄くなるほど、チップの反りが起こり易い傾向にあり、接着剤片付きチップを粘着剤層からピックアップする前((F)工程より前)に、接着剤片付きチップの端部と粘着剤層との間での剥離が発生し易くなる傾向にある。そのため、チップの厚さが薄いほど、本開示の構成による効果が発現し易いということができる。
【0071】
半導体装置100の製造方法は、以下の工程を備える。
(A)上記のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを準備する工程(準備工程)
(B)ウェハをダイシングする工程(ダイシング工程)
(C)前記ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの前記接着剤層に対して前記ウェハを貼り付ける工程(ウェハ貼り付け工程)
(D)基材層を冷却条件下においてエキスパンドすることによって、ウェハ及び接着剤層が個片化されてなる接着剤片付きチップを得る工程(冷却エキスパンド工程)
(E)粘着剤層に紫外線を照射することによって、接着剤片付きチップに対する粘着剤層の粘着力を低下させる工程(紫外線照射工程)
(F)接着剤片付きチップを粘着剤層からピックアップする工程(ピックアップ工程)
(G)ピックアップされた接着剤片付きチップを基板又は他のチップ上にマウントする工程(マウント工程)
【0072】
図4及び図5を参照しながら、接着剤片付きチップ8の作製方法の一例について説明する。まず、上記のフィルム10を準備する((A)工程(準備工程))。
【0073】
次いで、ウェハWの回路面Waに保護フィルム(「BGテープ」とも称される。)を貼り付け、ウェハWにレーザを照射して複数本の切断予定ラインLを形成する((B)工程(ダイシング工程)、図4(a)参照)。これをステルスダイシングという。ステルスダイシングは、厚さの薄いウェハW(例えば、100μm以下)に対して好適に用いることができる。その後、必要に応じて、ウェハWに対して、ウェハWの厚さを調整するためのバックグラインディング処理及びウェハWを研磨するためのポリッシング処理を行ってもよい。なお、ここではレーザによるステルスダイシングを説明しているが、ステルスダイシングに代えて、ブレードによってウェハWをハーフカットしてもよい。これをハーフカットダイシングという。ハーフカットは、ウェハWを切断するのではなく、ウェハWの切断予定ラインLに対応した切込みを形成することを意味する。
【0074】
次いで、図4(a)に示すように、フィルム10の接着剤層5に対して、ウェハWの裏面Wbを貼り付ける((B)工程(ウェハ貼り付け工程))。このとき、粘着剤層3に対してダイシングリングDRを貼り付けてもよい。
【0075】
次いで、図4(b)に示すように、0~-15℃の温度条件下での冷却エキスパンドによって、ウェハW及び接着剤層5を個片化する((D)工程(冷却エキスパンド工程))。すなわち、図4(b)に示すように、基材層1におけるダイシングリングDRの内側領域1aをリングRaで突き上げることによって基材層1に張力を付与する。これにより、ウェハWが切断予定ラインLに沿って分断されるとともに、これに伴って接着剤層5は接着剤片5Pに分断され、粘着剤層3の表面上に複数の接着剤片付きチップ8が得られる。接着剤片付きチップ8は、チップSと、接着剤片5Pとによって構成される。
【0076】
次いで、基材層1におけるダイシングリングDRの内側領域1aを加熱することによって内側領域1aを収縮させる(ヒートシュリンク)。図5(a)は、ヒータHのブローによって内側領域1aを加熱している様子を模式的に示す断面図である。内側領域1aを環状に収縮させて基材層1に張力を付与することで、隣接する接着剤片付きチップ8の間隔を広げることができる。これにより、ピックアップエラーの発生をより一層抑制できるとともに、ピックアップ工程における接着剤片付きチップ8の視認性を向上させることができる。
【0077】
次いで、図5(b)に示すように、紫外線の照射によって粘着剤層3の粘着力を低下させる((E)工程(紫外線照射工程))。紫外線照射ランプは、特に制限されず、例えば、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ、UV-LEDランプ等を使用することができる。粘着剤層3に対する紫外線の照度は、例えば、1~1000mW/cm、10~900mW/cm、又は30~800mW/cmあってよい。粘着剤層3に対する紫外線の照射量は、例えば、10~3000mJ/cmであり、50~2500mJ/cm、又は100~2000mJ/cmであってもよい。その後、図5(c)に示すにように、突き上げ冶具42で接着剤片付きチップ8を突き上げることによって粘着剤層3から接着剤片付きチップ8をはく離させるとともに、接着剤片付きチップ8を吸引コレット44で吸引してピックアップする((F)工程(ピックアップ工程))。
【0078】
接着剤片付きチップ8は、半導体装置の組立装置(不図示)に搬送され、回路基板等に圧着される((G)工程(マウント工程))。図6(a)に示すように、接着剤片5Pを介して一段目のチップS1(チップS)を基板70の所定の位置に圧着する。次に、加熱によって接着剤片5Pを硬化させる(ダイボンディング工程)。これにより、接着剤片5Pが硬化して硬化物5Cとなる。接着剤片5Pの硬化処理は、ボイドの低減の観点から、加圧雰囲気下で実施してもよい。
【0079】
基板70に対するチップS1のマウントと同様にして、チップS1の表面上に二段目のチップS2をマウントする。さらに、三段目及び四段目のチップS3,S4をマウントすることによって図6(b)に示す構造体60が作製される。チップS1,S2,S3,S4と基板70とをワイヤW1,W2,W3,W4でそれぞれ電気的に接続した後、半導体素子及びワイヤを封止するための封止層50を形成することによって、半導体素子及びワイヤを封止することによって、図3に示される半導体装置100を作製することができる。
【実施例0080】
以下、本開示について、実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に記述がない限り、薬品は全て試薬(市販品)を使用した。
【0081】
<実施例1>
[アクリル樹脂の合成]
スリーワンモータ、撹拌翼、及び窒素導入管が備え付けられた容量2000mLのフラスコに以下の成分を入れた。
・酢酸エチル(溶剤):635質量部
・2-エチルヘキシルアクリレート:395質量部
・2-ヒドロキシエチルアクリレート:100質量部
・メタクリル酸:5質量部
・アゾビスイソブチロニトリル:0.08質量部
【0082】
充分に均一になるまで内容物を撹拌した後、流量500mL/分にて60分間バブリングを実施し、系中の溶存酸素を脱気した。1時間かけて78℃まで昇温し、昇温後6時間重合させた。次に、スリーワンモータ、撹拌翼、及び窒素導入管が備え付けられた容量2000mLの加圧釜に反応溶液を移し、120℃、0.28MPaの条件にて4.5時間加温後、室温(25℃、以下同様)に冷却した。
【0083】
次に酢酸エチルを490質量部加えて撹拌し、内容物を希釈した。これに、ウレタン化触媒として、ジオクチルスズジラウレートを0.10質量部添加した後、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製、カレンズMOI(商品名))を96.0質量部加え、70℃で6時間反応させた後、室温に冷却した。次いで、酢酸エチルをさらに加え、アクリル系樹脂溶液中の不揮発分含有量が35質量%となるよう調整し、製造例1の連鎖重合可能な官能基を有するアクリル系樹脂(A-1)を含む溶液を得た。
【0084】
上記のようにして得たアクリル系樹脂(A-1)を含む溶液を60℃で一晩真空乾燥した。これによって得られた固形分を全自動元素分析装置(エレメンタール社製、商品名:varioEL)にて元素分析し、導入された2-メタクリロキシエチルイソシアネートに由来する官能基の含有量を窒素含有量から算出したところ、1.10mmol/gであった。
【0085】
また、以下の装置を使用して、アクリル系樹脂(A-1)のポリスチレン換算の重量平均分子量を求めた。すなわち、東ソー株式会社製SD-8022/DP-8020/RI-8020を使用し、カラムには日立化成株式会社製Gelpack GL-A150-S/GL-A160-Sを用い、溶離液にテトラヒドロフランを用いてGPC測定を行った。その結果、ポリスチレン換算の重量平均分子量は40万であった。JIS K0070に記載の方法に準拠して測定した水酸基価及び酸価は22.8mgKOH/g及び6.5mgKOH/gであった。
【0086】
<実施例1>
[ダイシングフィルム(粘着剤層)の作製]
以下の成分を混合することで、紫外線硬化型粘着剤のワニス(粘着剤層形成用のワニス)を調製した(表1参照)。酢酸エチル(溶剤)の量は、ワニスの総固形分含有量が25質量%となるように調整した。
・製造例1のアクリル系樹脂(A-1)を含む溶液:100質量部(固形分)
・光重合開始剤(B-1)1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IGM RESINS B.V.社製、Omnirad 184、「Omnirad」は登録商標、最大吸収波長:243nm):2.0質量部
・光重合開始剤(B-2)フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(IGM RESINS B.V.社製、Omnirad 819、「Omnirad」は登録商標、220~400nmの最大吸収波長:380nm):0.2質量部
・光重合開始剤(B-3)2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モリフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン(IGM RESINS B.V.社製、Omnirad 379EG、「Omnirad」は登録商標、220~400nmの最大吸収波長:320nm):0.5質量部
・光重合開始剤(B-4)2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(IGM RESINS B.V.社製、Omnirad 819、「Omnirad」は登録商標、220~400nmの最大吸収波長:252nm):0.4質量部
・増感剤(b-1)2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン(東京化成工業株式会社)
・架橋剤(C-1)(ヘキサヘチレンジシソシアネート)、日本ポリウレタン工業株式会社製、コロネートHL、固形分:75%):4.0質量部(固形分)
・酢酸エチル(溶剤)
【0087】
なお、光重合開始剤の最大吸収波長は、可視-紫外分光光度計U-3010(株式会社日立ハイテク製)を用いて、アセトニトリル中に0.001質量%の光重合開始剤を溶解させた溶液をサンプルとして、波長220~400nmの領域における光重合開始剤の吸光度を測定することによって求めた。
【0088】
一方の面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(幅450mm、長さ500mm、厚さ38μm)を準備した。離型処理が施された面に、アプリケータを用いて紫外線硬化型粘着剤のワニスを塗布した後、80℃で3分間乾燥した。これによって、ポリエチレンテレフタレートフィルムと、その上に形成された厚さ10μmの粘着剤層とからなる積層体(ダイシングフィルム)を得た。
【0089】
一方の面にコロナ処理が施されたポリオレフィンフィルム(幅450mm、長さ500mm、厚さ90μm)を準備した。コロナ処理が施された面と、上記積層体の粘着剤層とを室温にて貼り合わせた。次いで、ゴムロールで押圧することで粘着剤層をポリオレフィンフィルム(カバーフィルム)に転写した。その後、室温で3日間放置することでカバーフィルム付きのダイシングフィルムを得た。
【0090】
[ダイボンディングフィルム(接着剤層)の作製]
以下の成分を混合することで、接着剤層形成用のワニスを調製した。まず、以下の成分を含む混合物に対して、シクロヘキサノン(溶剤)を加えて撹拌混合した後、さらにビーズミルを用いて90分混練した。
・エポキシ樹脂(N-500P-10(商品名)、DIC株式会社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量:200、軟化点:85℃):11.0質量部
・エポキシ樹脂(EXA-830CRP(商品名)、DIC株式会社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量:160、分子量:1800、軟化点:85℃):13.0質量部
・フェノール樹脂(ミレックスXLC-LL(商品名)、三井化学株式会社製、フェノール樹脂、水酸基当量:175、吸水率:1.8%、350℃における加熱重量減少率:4%):19.0質量部
・シランカップリング剤(NUC A-189(商品名)株式会社NUC製、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン):0.1質量部
・シランカップリング剤(NUC A-1160(商品名)、日本ユニカー株式会社製、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン):0.2質量部
・フィラー(SC2050-HLG(商品名)、アドマテックス株式会社製、シリカ、平均粒径0.500μm):39質量部
【0091】
上記のようにして得られた混合物に以下の成分をさらに加えた後、撹拌混合及び真空脱気の工程を経て接着剤層形成用のワニスを得た。
・エポキシ基含有アクリル共重合体(HTR-860P-3(商品名)、ナガセケムテックス株式会社製、重量平均分子量:80万):18質量部
・硬化促進剤(キュアゾール2PZ-CN(商品名)、四国化成工業株式会社製、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、「キュアゾール」は登録商標)0.1質量部
【0092】
一方の面に離型処理が施されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ35μm)を準備した。離型処理が施された面に、アプリケータを用いて接着剤層形成用のワニスを塗布した後、140℃で5分間加熱乾燥した。これにより、ポリエチレンテレフタレートフィルム(キャリアフィルム)と、その上に形成された厚さ50μmの接着剤層(Bステージ状態)とからなる積層体(ダイボンディングフィルム)を得た。
【0093】
[ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの作製]
接着剤層とキャリアフィルムとからなるダイボンディングフィルムを、キャリアフィルムごと直径335mmの円形にカットした。カットしたダイボンディングフィルムに、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離したダイシングフィルムを室温で貼り付けた後、室温で1日放置した。その後、直径370mmの円形にダイシングフィルムをカットした。このようにして、後述の種々の評価試験に供するための複数の実施例1のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを得た。
【0094】
<実施例2~7及び比較例1~4>
表1の実施例1の粘着剤層の組成を、表1の実施例2~7及び比較例1~4の粘着剤層の組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~7及び比較例1~4のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムをそれぞれ複数得た。
【0095】
[評価試験]
(1)接着剤層に対する粘着剤層の粘着力(30°ピール強度)の測定
接着剤層に対する紫外線照射前の粘着剤層の粘着力及び紫外線照射後の粘着剤層の粘着力を、30°ピール強度を測定することによって評価した。紫外線照射前の粘着剤層の測定試料は、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを幅25mm及び長さ100mmに切り出すことによって得た。紫外線照射後の粘着剤層の測定試料は、ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを幅25mm及び長さ100mmに切り出し、これに対して、紫外線照射装置(株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション、コンベアUV照射装置CS60)を用いて、照度70mW/cm及び照射量150mJ/cmの紫外線(主波長:365nm)を照射することによって得た。引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフ「AGS-1000」)を用いて、それぞれの測定試料から接着剤層に対する粘着剤層のピール強度を測定した。測定条件は、剥離角度30°及び剥離速度600mm/分とした。試料の保存及びピール強度の測定は、温度23℃、相対湿度60%の環境下で行った。結果を表1に示す。なお、ピール強度の測定上限は「20N/25mm」であり、表1中の「>20」は測定上限を超えたことを意味する。また、「-」は、未測定であることを意味する。
【0096】
(2)接着剤層に対する酸素接触条件下における紫外線照射後の粘着剤層の粘着力(30°ピール強度)の測定
接着剤層と粘着剤層との間での剥離が発生して粘着剤層が酸素に接触した場合を想定して、予め粘着剤層を酸素接触条件下で紫外線を照射し、紫外線照射後の粘着剤層を用いてダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを作製した。当該ダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを用いて、接着剤層に対する酸素接触条件下における紫外線照射後の粘着剤層の粘着力を、30°ピール強度を測定することによって評価した。測定試料は、以下のようにして作製した。まず、ダイシングフィルムのポリエチレンテレフタレートフィルムを剥がし、粘着剤層が酸素に曝露されるようにしてから、紫外線照射装置(株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション、コンベアUV照射装置CS60)を用いて、照度70mW/cm及び照射量150mJ/cmの紫外線(主波長:365nm)を照射した。次いで、上記のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムの作製条件と同様にして、評価試験に供するための評価試験に供するためのダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを得た。次いで、得られたダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを幅25mm及び長さ100mmに切り出すことによって測定試料を得た。引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフ「AGS-1000」)を用いて、測定試料から接着剤層に対する酸素接触条件下における紫外線照射後の粘着剤層のピール強度を測定した。測定条件は、剥離角度30°及び剥離速度600mm/分とした。試料の保存及びピール強度の測定は、温度23℃、相対湿度60%の環境下で行った。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
表1に示すように、接着剤層に対する酸素接触条件下における紫外線照射後の粘着剤層の粘着力(30°ピール強度)において、実施例1~7のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムは、比較例1~4のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムに比べて、粘着力が低下していた。比較例3のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムは、粘着剤層に増感剤を含むものであるが、粘着力は充分に低下しなかった。比較例4のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムは、粘着剤層に1種の光重合開始剤を所定量含むものであるが、粘着力は充分に低下しなかった。これらの結果から、本開示のダイシング・ダイボンディング一体型フィルムが、粘着剤層が酸素に接触した場合であっても、粘着剤層に対して紫外線を照射したときに、接着剤層に対する粘着剤層の粘着力を充分に低下させることが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0099】
1…基材層、3…粘着剤層、5…接着剤層、8…接着剤片付きチップ、10…ダイシング・ダイボンディング一体型フィルム、W…ウェハ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6