(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024103835
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】カメラ装置
(51)【国際特許分類】
G03B 17/04 20210101AFI20240726BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20240726BHJP
【FI】
G03B17/04
G03B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007755
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】関澤 宏治
(72)【発明者】
【氏名】若山 富裕
(72)【発明者】
【氏名】小澤 雄一
(72)【発明者】
【氏名】田坂 恒
【テーマコード(参考)】
2H100
2H101
【Fターム(参考)】
2H100AA05
2H100EE06
2H101BB05
2H101BB07
2H101BB13
2H101DD64
(57)【要約】
【課題】簡単で安価な構成によりケラレを抑制しつつ遮光と防塵を図ることが可能なカメラ装置を提供する。
【解決手段】カメラ装置1は、フレーム20のバレル部22の半径方向内側に収容された状態からバレル部22に対して前方に移動可能な回転筒30及びキー筒40と、キー筒40の半径方向内側に収容された状態から回転筒30及びキー筒40に対して前方に移動可能な直動筒50とを含むレンズ鏡筒と、回転筒30及びキー筒40から離間した状態でフレーム20と直動筒50との間を連結する遮光部材60とを備える。遮光部材60は、フレーム20に接続される後方伸縮部61と、直動筒50に接続される前方伸縮部62とを含む。遮光部材60の後方伸縮部61は、沈胴状態では光軸P方向に圧縮され、第1の撮影状態及び第2の撮影状態では光軸P方向に沿って伸長する。遮光部材60の前方伸縮部62は、沈胴状態では光軸P方向に圧縮され、第2の撮影状態では光軸P方向に沿って伸長して自然長以上の長さとなる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
写真フィルムが収容されるフィルム収容部と、前記フィルム収容部から光軸方向に延びるバレル部とを含むフレームと、
前記バレル部の内側で前記光軸方向に沿って移動可能なレンズ鏡筒であって、
前記バレル部の半径方向内側に収容された状態から前記バレル部に対して前方に移動可能な後方鏡筒ユニットと、
前記後方鏡筒ユニットの半径方向内側に収容された状態から前記後方鏡筒ユニットに対して前方に移動可能な前方鏡筒ユニットであって、内部に少なくとも1つのレンズが収容される前方鏡筒ユニットと
を含むレンズ鏡筒と、
前記後方鏡筒ユニットから離間した状態で前記フレームと前記前方鏡筒ユニットとの間を連結する遮光部材であって、
前記フレームに接続され、前記光軸方向に圧縮された状態から前記光軸方向に伸長可能な後方伸縮部と、
前記前方鏡筒ユニットに接続され、前記光軸方向に圧縮された状態から自然長を超えて前記光軸方向に伸長可能な前方伸縮部と
を含む遮光部材と
を備え、
前記レンズ鏡筒は、
前記後方鏡筒ユニットが前記バレル部の半径方向内側に収容され、前記前方鏡筒ユニットが前記後方鏡筒ユニットの半径方向内側に収容された沈胴状態と、
前記後方鏡筒ユニットが前記バレル部に対して前方に繰り出し、前記前方鏡筒ユニットが前記後方鏡筒ユニットの半径方向内側に収容された第1の撮影状態と、
前記後方鏡筒ユニットが前記バレル部に対して前方に繰り出し、前記前方鏡筒ユニットが前記後方鏡筒ユニットに対して前方に繰り出した第2の撮影状態と
を実現可能に構成され、
前記遮光部材の前記後方伸縮部は、前記沈胴状態では前記光軸方向に圧縮されて前記光軸方向に沿って第1の長さを有し、前記第1の撮影状態及び前記第2の撮影状態では前記光軸方向に沿って前記第1の長さよりも大きな第2の長さを有し、
前記遮光部材の前記前方伸縮部は、前記沈胴状態では前記光軸方向に圧縮されて前記光軸方向に沿って第3の長さを有し、前記第2の撮影状態では前記光軸方向に沿って前記第3の長さよりも大きく、前記自然長以上の第4の長さを有する、
カメラ装置。
【請求項2】
前記第1の撮影状態及び前記第2の撮影状態では、前記後方伸縮部及び前記前方伸縮部のいずれも前記少なくとも1つのレンズから前記写真フィルムに投影される光線の外側に位置する、請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項3】
前記遮光部材の前記後方伸縮部は、折り畳まれることにより前記光軸方向に圧縮され、前記折り畳まれた状態から展開することで前記光軸方向に伸長するように構成される、請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項4】
前記遮光部材の前記前方伸縮部は、前記光軸方向に沿って延びる円筒状の蛇腹部により構成される、請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項5】
前記遮光部材の前記前方伸縮部を前記前方鏡筒ユニットに取り付ける取付プレートをさらに備える、請求項1に記載のカメラ装置。
【請求項6】
前記レンズ鏡筒の前記後方鏡筒ユニット及び前記前方鏡筒ユニットを駆動する駆動筒であって、前記バレル部に対して前記光軸方向に移動することなく回転可能に構成される駆動筒をさらに備える、
請求項1から5のいずれか一項に記載のカメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ装置に係り、特に繰出可能なレンズ鏡筒を有するカメラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からレンズ鏡筒を光軸方向に沿って前方に繰り出す鏡筒繰出機構を有するカメラが知られている。このようなカメラにおいては、レンズ鏡筒を繰り出す際の遮光と防塵のために、レンズ鏡筒とカメラ本体とを伸縮自在のベローズで連結することが一般的である。ここで、通常の撮影に加えて近距離での撮影(マクロ撮影)を行うためには、通常の撮影時からさらにレンズ鏡筒を繰り出す必要がある。このため、折り畳み可能な遮光部材を光軸方向に2つ連結することによりレンズ鏡筒を長い距離にわたって繰り出せるようにしたカメラも考えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような従来のカメラにおいては、2つの遮光部材を連結している部分をレンズ鏡筒の可動部に固定する必要があり、この連結部分とレンズ鏡筒の可動部とを固定する固定具が必要である。また、2つの遮光部材のいずれも折り畳み可能なものであり、これらの遮光部材は折り畳み状態と展開状態との間で光軸方向に垂直な方向に大きく伸縮する。このため、カメラを小型化しようとする場合には、折り畳み状態にある一方の遮光部材が写真フィルムに投影される像に映り込んでケラレが生じやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、簡単で安価な構成によりケラレを抑制しつつ遮光と防塵を図ることが可能なカメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、簡単で安価な構成によりケラレを抑制しつつ遮光と防塵を図ることが可能なカメラ装置が提供される。カメラ装置は、写真フィルムが収容されるフィルム収容部と、上記フィルム収容部から光軸方向に延びるバレル部とを含むフレームと、上記バレル部の内側で上記光軸方向に沿って移動可能なレンズ鏡筒とを備える。上記レンズ鏡筒は、上記バレル部の半径方向内側に収容された状態から上記バレル部に対して前方に移動可能な後方鏡筒ユニットと、上記後方鏡筒ユニットの半径方向内側に収容された状態から上記後方鏡筒ユニットに対して前方に移動可能な前方鏡筒ユニットとを含む。上記前方鏡筒ユニットの内部には少なくとも1つのレンズが収容される。上記カメラ装置は、上記後方鏡筒ユニットから離間した状態で上記フレームと上記前方鏡筒ユニットとの間を連結する遮光部材をさらに備える。上記遮光部材は、上記フレームに接続され、上記光軸方向に圧縮された状態から上記光軸方向に伸長可能な後方伸縮部と、上記前方鏡筒ユニットに接続され、上記光軸方向に圧縮された状態から自然長を超えて上記光軸方向に伸長可能な前方伸縮部とを含む。上記レンズ鏡筒は、上記後方鏡筒ユニットが上記バレル部の半径方向内側に収容され、上記前方鏡筒ユニットが上記後方鏡筒ユニットの半径方向内側に収容された沈胴状態と、上記後方鏡筒ユニットが上記バレル部に対して前方に繰り出し、上記前方鏡筒ユニットが上記後方鏡筒ユニットの半径方向内側に収容された第1の撮影状態と、上記後方鏡筒ユニットが上記バレル部に対して前方に繰り出し、上記前方鏡筒ユニットが上記後方鏡筒ユニットに対して前方に繰り出した第2の撮影状態とを実現可能に構成される。上記遮光部材の上記後方伸縮部は、上記沈胴状態では上記光軸方向に圧縮されて上記光軸方向に沿って第1の長さを有し、上記第1の撮影状態及び上記第2の撮影状態では上記光軸方向に沿って上記第1の長さよりも大きな第2の長さを有する。上記遮光部材の上記前方伸縮部は、上記沈胴状態では上記光軸方向に圧縮されて上記光軸方向に沿って第3の長さを有し、上記第2の撮影状態では上記光軸方向に沿って上記第3の長さよりも大きく、上記自然長以上の第4の長さを有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態におけるカメラ装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すカメラ装置のフロントカバー、リアカバー、及びトップカバーにより形成される内部空間に収容される構成要素の一部を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示すレンズ鏡筒が第1の撮影状態にあるときを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2に示すレンズ鏡筒が第2の撮影状態にあるときを示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図1のカメラ装置が沈胴状態にあるときの縦断面図である。
【
図8】
図8は、
図1のカメラ装置が第1の撮影状態にあるときの縦断面図である。
【
図9】
図9は、
図1のカメラ装置が第2の撮影状態にあるときの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係るカメラ装置の実施形態について
図1から
図9を参照して詳細に説明する。
図1から
図9において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図9においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態におけるカメラ装置1を示す斜視図である。本実施形態におけるカメラ装置1は、撮影後に自動的に現像が行われる写真フィルムを用いるカメラ(インスタントカメラ)であるが、本発明はこのようなインスタントカメラ以外にも適用できることは言うまでもない。なお、本実施形態では、便宜的に、
図1における+X方向を「前」又は「前方」といい、-X方向を「後」又は「後方」ということとする。
【0010】
図1に示すように、カメラ装置1は、フロントカバー2と、フロントカバー2の後方に装着されるリアカバー3と、フロントカバー2とリアカバー3とに挟まれるトップカバー4と、フロントカバー2の筒状部2Aの内側に収容されるレンズ鏡筒10と、フロントカバー2の筒状部2Aに対して回転可能に構成される操作リング8とを備えている。フロントカバー2にはファインダ窓5が形成されており、このファインダ窓5に隣接してフラッシュ窓6が配置されている。また、ファインダ窓5の-Z方向側にはレリーズボタン7が配置されている。トップカバー4には、Y方向に延びる排出スリット4Aが形成されており、この排出スリット4Aから撮影後に現像された写真フィルムが排出されるようになっている。
【0011】
図2は、
図1に示すカメラ装置のフロントカバー、リアカバー、及びトップカバーにより形成される内部空間に収容される構成要素の一部を示す斜視図、
図3は、
図2に示す構成要素の分解斜視図である。
図2及び
図3に示すように、カメラ装置1は、内部に写真フィルムが収容される収容空間Sが形成されたフィルム収容部21と、フィルム収容部21の前方(+X方向)に取り付けられる筒状のバレル部22とを含むフレーム20を備えている。バレル部22がネジ(図示せず)などによりフィルム収容部21の前方に取り付けられることでフレーム20が構成される。バレル部22がフィルム収容部21に取り付けられた状態(
図2)では、バレル部22は、フィルム収容部21から前方(+X方向)に延びており、このバレル部22の内部にレンズ鏡筒10が保持されている。
【0012】
図2及び
図3に示すように、バレル部22は、フィルム収容部21に固定される四角錘台状の基部221と、基部221から前方(+X方向)に延びる円筒壁222とを有している。この円筒壁222には、円筒壁222を貫通して延びる2つの貫通カム溝224が形成されている。2つの貫通カム溝224は、周方向に沿って180度の間隔で配置されている。これらの貫通カム溝224の中間部は、後端部から前端部224Aに向かって周方向の位置が次第に変化するように延びている。また、バレル部22の円筒壁222の内周面には、軸方向(X方向)に延びる2つの軸方向溝226が形成されている。
【0013】
また、カメラ装置1は、操作リング8に係合して操作リング8と一体となって回転する駆動筒9を備えている。この駆動筒9は、バレル部22に対して軸方向に移動することなくバレル部22に対して回転可能に構成されている。駆動筒9は、軸方向(X方向)に延びる円筒部91と、円筒部91から後方に延びる2つの延出部92とを有している。円筒部91は、バレル部22の前縁の半径方向外側に配置される。2つの延出部92は光軸Pを挟んで互いに対向する位置に配置されている。円筒部91と延出部92との内周面には、軸方向(X方向)に延びる軸方向溝94が形成されている。
【0014】
本実施形態におけるレンズ鏡筒10は、光軸Pに沿った方向(+X方向)に伸長可能な構造となっている。
図1及び
図2に示す状態のレンズ鏡筒10は光軸Pに沿った方向(X方向)に最も縮んだ状態となっている。レンズ鏡筒10が
図1に示す状態にあるときをカメラ装置1の「沈胴状態」ということとする。
図4は、
図2に示す状態からレンズ鏡筒10が+X方向に伸長した状態を示す斜視図であり、この状態でユーザは通常の撮影を行うことができる。以下、この状態を「第1の撮影状態」ということとする。
図5は、
図4に示す状態からレンズ鏡筒10がさらに+X方向に伸長した状態を示す斜視図である。
図5においては、レンズ鏡筒10が+X方向に最大限伸長しており、この状態でユーザは例えば近距離のマクロ撮影を行うことができる。以下、この状態を「第2の撮影状態」ということとする。
【0015】
図6は、レンズ鏡筒10の分解斜視図、
図7は、カメラ装置1が沈胴状態にあるときの縦断面図である。
図6及び
図7に示すように、本実施形態におけるレンズ鏡筒10は、バレル部22に対して回転可能かつ軸方向に移動可能に構成される回転筒30と、バレル部22に対して回転することなく回転筒30とともに軸方向に移動可能に構成されるキー筒40と、キー筒40の前縁に取り付けられるカバーリング45と、バレル部22に対してキー筒40とともに回転可能に構成される直動筒50とを含んでいる。
【0016】
本実施形態においては、回転筒30、キー筒40、及びカバーリング45が、バレル部22の半径方向内側に収容された状態からバレル部22に対して前方(+X方向)に移動可能な後方鏡筒ユニットを構成しており、直動筒50が、回転筒30及びキー筒40の半径方向内側に収容された状態から回転筒30及びキー筒40に対して前方(+X方向)に移動可能な前方鏡筒ユニットを構成している。
図7に示すように、本実施形態においては、前方鏡筒ユニットを構成する直動筒50の内部には、開閉自在のバリア55、第1レンズ56、及び第2レンズ57を含むレンズユニットが収容されている。なお、レンズユニット内のレンズの枚数は図示のものに限られるものではない。
【0017】
図6に示すように、回転筒30は、バレル部22に対して回転可能かつ軸方向に移動可能に構成されるものである。この回転筒30は、軸方向(X方向)に延び、バレル部22の半径方向内側に配置される円筒部31と、円筒部31の後端部近傍で半径方向外側に突出する2つの作動部32とを有している。それぞれの作動部32の外径は、バレル部22の円筒壁222の貫通カム溝224の幅及び駆動筒9の軸方向溝94の周方向幅よりわずかに小さい程度であり、それぞれの作動部32は、バレル部22の貫通カム溝224を通って駆動筒9の軸方向溝94に係合している。
【0018】
このような構成により、回転筒30の作動部32は、バレル部22の貫通カム溝224に係合してバレル部22の貫通カム溝224の内部を貫通カム溝224に沿って移動できるとともに、駆動筒9の軸方向溝94に係合して駆動筒9の軸方向溝94の内部を軸方向に沿って移動できるようになっている。この回転筒30の作動部32と駆動筒9の軸方向溝94との係合により、駆動筒9がバレル部22に対して回転すると、回転筒30が駆動筒9とともにバレル部22に対して回転する。このとき、回転筒30の作動部32とバレル部22の貫通カム溝224との係合により、回転筒30の回転に伴って、回転筒30が貫通カム溝224の形状に沿ってバレル部22に対してX方向に移動する。このように、駆動筒9がバレル部22に対して回転すると、回転筒30がバレル部22に対して回転するとともに+X方向に繰り出すようになっている。
【0019】
図6に示すように、回転筒30の円筒部31の内周面には、後端部から前端部に向かって周方向の位置が次第に変化するように延びる6つのカム溝33が形成されている。これら6つのカム溝33は、軸周りに60度の間隔で配置されている。
【0020】
キー筒40は、軸方向(X方向)に延びる円筒部41と、円筒部41の後縁部から半径方向外側に突出する係合部42とを有している。キー筒40の円筒部41は、回転筒30の円筒部31の半径方向内側に配置される。キー筒40の円筒部41には、円筒部41を貫通して軸方向(X方向)に延びる6つの軸方向溝43が形成されている。6つの軸方向溝43は、それぞれ周方向に沿って60度の間隔で配置されている。キー筒40は、回転筒30に対して軸方向位置を変えることなく回転筒30に対して相対的に回転できるようになっている。
【0021】
キー筒40の係合部42の幅は、バレル部22の軸方向溝226の幅よりわずかに小さい程度であり、それぞれの係合部42は、バレル部22の軸方向溝226に係合してこの軸方向溝226の内部を軸方向に移動できるようになっている。したがって、キー筒40は、バレル部22に対して回転はせずに、回転筒30に対して回転しつつ、回転筒30とともに軸方向に移動できるようになっている。
【0022】
直動筒50は、キー筒40の半径方向内側に配置される円筒部51と、外周面から半径方向外側に向かって突出する6つの円筒状の作動部52を有している。これらの作動部52は周方向に沿って等間隔で配置されている。それぞれの作動部52の外径は、キー筒40の軸方向溝43及び回転筒30のカム溝33の周方向幅よりわずかに小さい程度であり、それぞれの作動部52は、キー筒40の軸方向溝43を通って回転筒30のカム溝33に係合している。
【0023】
キー筒40は、係合部42とバレル部22の軸方向溝226との係合によってバレル部22に対して回転することがない一方で、回転筒30はバレル部22に対して回転可能となっているため、回転筒30がバレル部22に対して回転すると、直動筒50の作動部52と回転筒30のカム溝33との係合により直動筒50がカム溝33の形状に沿って回転筒30に対してX方向に移動する。このように、回転筒30をバレル部22に対して回転させることにより直動筒50を回転筒30から+X方向に繰り出すことができるようになっている。なお、キー筒40の前縁には、キー筒40及び回転筒30の前縁部を覆うカバーリング45が取り付けられている。
【0024】
このような構成のカメラ装置1において、
図1に示す沈胴状態からユーザが操作リング8をフロントカバー2の筒状部2Aに対して回転させる操作を行うと、駆動筒9が操作リング8と一体となって回転し、回転筒30の作動部32と駆動筒9の軸方向溝94との係合及び回転筒30の作動部32とバレル部22の貫通カム溝224との係合により、回転筒30が、駆動筒9と一体となって回転するとともに、バレル部22の貫通カム溝224の形状に沿って軸方向に沿って移動する。また、直動筒50の作動部52とキー筒40の軸方向溝43との係合及び直動筒50の作動部52と回転筒30のカム溝33との係合により、直動筒50がバレル部22に対して回転することなく回転筒30のカム溝33の形状に沿って軸方向に沿って移動する。このように、レンズ鏡筒10の回転筒30と直動筒50の双方を軸方向に繰り出すことが可能である。
【0025】
図3に戻って、バレル部22の貫通カム溝224の前端部224Aは、同一の軸方向位置で周方向に延びている。第1の撮影状態では、回転筒30の作動部32は、この貫通カム溝224の前端部224Aに位置しており、第1の撮影状態から第2の撮影状態に移行する際に回転筒30が回転しても、回転筒30は軸方向にそれ以上繰り出すことなく、直動筒50のみが軸方向に繰り出すようになっている。
【0026】
図3に示すように、本実施形態におけるカメラ装置1は、レンズ鏡筒10の内部の光路にレンズ鏡筒10の外部から光が入射することを防止する遮光部材60を有している。遮光部材60の内側には、-X方向に向かって次第に大きくなるような形状の空間が形成されている。この遮光部材60は、直動筒50の後端部とフレーム20のフィルム収容部21との間に配置されており、遮光部材60は、フレーム20に接続される後方伸縮部61と、直動筒50に接続される前方伸縮部62とを含んでいる。後方伸縮部61と前方伸縮部62とは、例えばシリコンゴムなどの柔軟性のある材料から一体的に形成されており、フレーム20に対する直動筒50の移動に伴い伸縮するように構成されている。このように、直動筒50の後端部とフレーム20のフィルム収容部21との間が遮光部材60により接続されているため、レンズ鏡筒10の外部からの光が直動筒50の後端部からフレーム20のフィルム収容部21までの光路に入射することが防止される。
【0027】
図7に示すように、遮光部材60の後方伸縮部61は、フレーム20のフィルム収容部21とバレル部22の後縁部との間に挟まれて固定される固定部611と、谷部612において折り畳み可能な折り畳み部613とを含んでいる。
図7に示す状態では、後方伸縮部61は、折り畳み部613が谷部612において折り畳まれることによって光軸Pに沿った方向に圧縮され、光軸Pに沿った方向の後方伸縮部61の長さがL
1となっている。後方伸縮部61は、この折り畳まれた状態から展開することで光軸Pに沿った方向に伸長するようになっている。
【0028】
前方伸縮部62は、直動筒50の後端部に固定される矩形枠状の連結部621と、連結部621と後方伸縮部61の折り畳み部613との間を伸縮可能に接続する円筒状の蛇腹部622とを含んでいる。
図7に示す状態では、前方伸縮部62は、蛇腹部622が光軸Pに沿った方向に圧縮され、光軸Pに沿った方向の前方伸縮部62の長さがL
3となっている。この前方伸縮部62の蛇腹部622は、後方伸縮部61の折り畳み部613とは異なり、光軸Pに沿った方向には伸縮するが、光軸Pに垂直な方向には実質的に伸縮しないようになっている。
【0029】
遮光部材60の前方伸縮部62の連結部621には複数のネジ孔623が形成されている。前方伸縮部62の連結部621の後方(-X方向側)には、矩形枠状の取付プレート65(
図6参照)が配置されている。この取付プレート65には、遮光部材60の前方伸縮部62の連結部621のネジ孔623に対応してネジ孔651が形成されている。取付プレート65のネジ孔651、前方伸縮部62の連結部621のネジ孔623、及び直動筒50の後端部に形成されたネジ孔(図示せず)にネジを螺合することにより、遮光部材60の前方伸縮部62の連結部621が取付プレート65と直動筒50の後端部との間に挟み込まれて保持される。
【0030】
図7に示すように、沈胴状態では、レンズ鏡筒10の回転筒30及び直動筒50がバレル部22の半径方向内側に収容されている。直動筒50は最も-X方向側に位置しており、遮光部材60はX方向に最も縮んだ状態となっている。すなわち、遮光部材60の後方伸縮部61の折り畳み部613は谷部612で折り畳まれて、X方向に圧縮された状態となっており、前方伸縮部62の蛇腹部622はX方向に圧縮された状態となっている。この状態では、カメラ装置1による撮影は行われない。
【0031】
上述したように、
図7に示す沈胴状態からユーザが操作リング8を回転させると、レンズ鏡筒10の回転筒30及び直動筒50が前方(+X方向)に繰り出して
図8に示す第1の撮影状態となる。この第1の撮影状態では、レンズ鏡筒10の直動筒50がフレーム20に対して+X方向に繰り出すため、遮光部材60の後方伸縮部61の折り畳み部613が、折り畳まれた状態から展開して+X方向に伸長し、光軸Pに沿った方向の後方伸縮部61の長さがL
2となる。本実施形態における第1の撮影状態では、遮光部材60の後方伸縮部61は+X方向に最大限伸びた状態となっている。また、前方伸縮部62の蛇腹部622も+X方向に伸長する。このときの光軸Pに沿った方向の前方伸縮部62の長さは、自然長以上であってもよいし、自然長未満であってもよい。この第1の撮影状態では通常の撮影を行うことができるが、
図8に示すように、遮光部材60の後方伸縮部61及び前方伸縮部62のいずれも、直動筒50内のレンズユニットから写真フィルム(図示せず)に投影される光線B1よりも外側に位置し、写真フィルムに投影される像には映り込まないようになっている。
【0032】
図8に示す第1の撮影状態からユーザがさらに操作リング8を回転させると、レンズ鏡筒10の直動筒50が前方(+X方向)に繰り出して
図9に示す第2の撮影状態となる。上述したように第1の撮影状態で遮光部材60の後方伸縮部61は+X方向に最大限伸びており、それ以上伸びることができないため、光軸Pに沿った方向の後方伸縮部61の長さはL
2のままである。したがって、第1の撮影状態から第2の撮影状態に移行する際には、遮光部材60の前方伸縮部62の蛇腹部622が+X方向に延び、光軸Pに沿った方向の前方伸縮部62の長さは自然長以上の長さL
4となる。この第2の撮影状態では例えば近距離のマクロ撮影を行うことができるが、
図9に示すように、遮光部材60の後方伸縮部61及び前方伸縮部62のいずれも、直動筒50内のレンズユニットから写真フィルム(図示せず)に投影される光線B2よりも外側に位置し、写真フィルムに投影される像には映り込まないようになっている。
【0033】
このように、本実施形態では、第1の撮影状態及び第2の撮影状態のいずれにおいても、遮光部材60によってレンズ鏡筒10の内部の光路にレンズ鏡筒10の外部から光が入射することが防止される。また、本実施形態では、後方伸縮部61と前方伸縮部62とが一体となった遮光部材60を用いているので、遮光部材60の後方伸縮部61と前方伸縮部62との間の接続部分をレンズ鏡筒10の回転筒30又はキー筒40に固定する必要がない。すなわち、
図7に示す沈胴状態、
図8に示す第1の撮影状態、及び
図9に示す第2の撮影状態のいずれにおいても、遮光部材60は、回転筒30及びキー筒40のいずれとも接触しておらず、回転筒30及びキー筒40から離間している。このように、本実施形態では、後方伸縮部61と前方伸縮部62との間の接続部分をレンズ鏡筒10の回転筒30又はキー筒40に固定する固定具が必要ないため、部材点数を減らしてカメラ装置1の製造コストを低減することができる。
【0034】
また、第1の撮影状態から直動筒50が回転筒30及びキー筒40に対して前方に繰り出して第2の撮影状態になるときに、遮光部材60の後方伸縮部61の光軸Pに沿った方向の長さはL2で変わらずに、前方伸縮部62が自然長以上の長さL4に伸長するように遮光部材60が構成されているため、前方伸縮部62を光軸Pに垂直な方向に伸縮させる必要がない。このため、前方伸縮部62において光軸Pに沿った方向にのみ伸縮する蛇腹部622を用いることができ、カメラ装置1を小型化した場合においても、前方伸縮部62が写真フィルムに投影される像に映り込みにくく、ケラレが生じにくい。
【0035】
このように、本実施形態におけるカメラ装置1によれば、簡単で安価な構成によりケラレを抑制しつつ遮光と防塵を実現し、レンズの位置の異なる2種類の撮影(例えば、通常撮影とマクロ撮影)を行うことが可能となる。
【0036】
上述した実施形態では、レンズ鏡筒10の回転筒30、キー筒40、及びカバーリング45により後方鏡筒ユニットを構成し、直動筒50により前方鏡筒ユニットを構成した例を説明したが、それぞれの鏡筒ユニットの構成はこれに限られるものではない。
【0037】
本明細書において使用した用語「前」、「前方」、「後」、「後方」、「上」、「上方」、「下」、「下方」、その他の位置関係を示す用語は、図示した実施形態との関連において使用されているのであり、装置の相対的な位置関係によって変化するものである。
【0038】
以上述べたように、本発明の一態様によれば、簡単で安価な構成によりケラレを抑制しつつ遮光と防塵を図ることが可能なカメラ装置が提供される。
【0039】
(構成1)
カメラ装置は、写真フィルムが収容されるフィルム収容部と、上記フィルム収容部から光軸方向に延びるバレル部とを含むフレームと、上記バレル部の内側で上記光軸方向に沿って移動可能なレンズ鏡筒とを備える。上記レンズ鏡筒は、上記バレル部の半径方向内側に収容された状態から上記バレル部に対して前方に移動可能な後方鏡筒ユニットと、上記後方鏡筒ユニットの半径方向内側に収容された状態から上記後方鏡筒ユニットに対して前方に移動可能な前方鏡筒ユニットとを含む。上記前方鏡筒ユニットの内部には少なくとも1つのレンズが収容される。上記カメラ装置は、上記後方鏡筒ユニットから離間した状態で上記フレームと上記前方鏡筒ユニットとの間を連結する遮光部材をさらに備える。上記遮光部材は、上記フレームに接続され、上記光軸方向に圧縮された状態から上記光軸方向に伸長可能な後方伸縮部と、上記前方鏡筒ユニットに接続され、上記光軸方向に圧縮された状態から自然長を超えて上記光軸方向に伸長可能な前方伸縮部とを含む。上記レンズ鏡筒は、上記後方鏡筒ユニットが上記バレル部の半径方向内側に収容され、上記前方鏡筒ユニットが上記後方鏡筒ユニットの半径方向内側に収容された沈胴状態と、上記後方鏡筒ユニットが上記バレル部に対して前方に繰り出し、上記前方鏡筒ユニットが上記後方鏡筒ユニットの半径方向内側に収容された第1の撮影状態と、上記後方鏡筒ユニットが上記バレル部に対して前方に繰り出し、上記前方鏡筒ユニットが上記後方鏡筒ユニットに対して前方に繰り出した第2の撮影状態とを実現可能に構成される。上記遮光部材の上記後方伸縮部は、上記沈胴状態では上記光軸方向に圧縮されて上記光軸方向に沿って第1の長さを有し、上記第1の撮影状態及び上記第2の撮影状態では上記光軸方向に沿って上記第1の長さよりも大きな第2の長さを有する。上記遮光部材の上記前方伸縮部は、上記沈胴状態では上記光軸方向に圧縮されて上記光軸方向に沿って第3の長さを有し、上記第2の撮影状態では上記光軸方向に沿って上記第3の長さよりも大きく、上記自然長以上の第4の長さを有する。
【0040】
このような構成によれば、第1の撮影状態及び第2の撮影状態のいずれにおいても、遮光部材によってレンズ鏡筒の内部の光路にレンズ鏡筒の外部から光が入射することが防止される。また、後方伸縮部と前方伸縮部とが一体となった遮光部材を用いているので、遮光部材の後方伸縮部と前方伸縮部との間の接続部分をレンズ鏡筒の可動部に固定する必要がない。したがって、後方伸縮部と前方伸縮部との間の接続部分をレンズ鏡筒の可動部に固定する固定具が必要なくなり、部材点数を減らしてカメラ装置の製造コストを低減することができる。また、第1の撮影状態から前方鏡筒ユニットが後方鏡筒ユニットに対して前方に繰り出して第2の撮影状態になるときに、遮光部材の後方伸縮部の光軸方向の長さは変わらずに、前方伸縮部が自然長以上の長さに伸長するように構成されているため、前方伸縮部を光軸に垂直な方向に伸縮させる必要がない。このため、カメラ装置を小型化した場合においても、前方伸縮部が写真フィルムに投影される像に映り込みにくく、ケラレが生じにくい。このように、本発明に係るカメラ装置によれば、簡単で安価な構成によりケラレを抑制しつつ遮光と防塵を実現し、レンズの位置の異なる2種類の撮影(例えば、通常撮影とマクロ撮影)を行うことが可能となる。
【0041】
(構成2)
上記構成1のカメラ装置において、上記第1の撮影状態及び上記第2の撮影状態では、上記後方伸縮部及び上記前方伸縮部のいずれも上記少なくとも1つのレンズから上記写真フィルムに投影される光線の外側に位置することが好ましい。
【0042】
(構成3)
上記構成1又は2のカメラ装置において、上記遮光部材の上記後方伸縮部は、折り畳まれることにより上記光軸方向に圧縮され、上記折り畳まれた状態から展開することで上記光軸方向に伸長するように構成されることが好ましい。
【0043】
(構成4)
上記構成1から3のいずれかのカメラ装置において、上記遮光部材の上記前方伸縮部は、上記光軸方向に沿って延びる円筒状の蛇腹部により構成されることが好ましい。
【0044】
(構成5)
上記構成1から4のいずれかのカメラ装置は、上記遮光部材の上記前方伸縮部を上記前方鏡筒ユニットに取り付ける取付プレートをさらに備えていてもよい。
【0045】
(構成6)
上記構成1から5のいずれかのカメラ装置は、上記レンズ鏡筒の上記後方鏡筒ユニット及び上記前方鏡筒ユニットを駆動する駆動筒をさらに備えていてもよい。この駆動筒は、上記バレル部に対して上記光軸方向に移動することなく回転可能に構成され得る。
【0046】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
1 カメラ装置
2 フロントカバー
3 リアカバー
4 トップカバー
8 操作リング
9 駆動筒
10 レンズ鏡筒
20 フレーム
21 フィルム収容部
22 バレル部
30 回転筒
31 円筒部
32 作動部
33 カム溝
40 キー筒
41 円筒部
42 係合部
43 軸方向溝
45 カバーリング
50 直動筒
51 円筒部
52 作動部
55 バリア
56 第1レンズ
57 第2レンズ
60 遮光部材
61 後方伸縮部
62 前方伸縮部
65 取付プレート
91 円筒部
92 延出部
94 軸方向溝
221 基部
222 円筒壁
224 貫通カム溝
226 軸方向溝
611 固定部
612 谷部
613 折り畳み部
621 連結部
622 蛇腹部
B1,B2 光線
P 光軸
S 収容空間