(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104013
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】光学部材貼合用粘着剤組成物、光学部材貼合用粘着シート、離型フィルム付き粘着シート、画像表示装置用積層体、画像表示装置及び画像表示装置構成部材用粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 133/00 20060101AFI20240726BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240726BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240726BHJP
【FI】
C09J133/00
C09J11/06
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008007
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】田代 智史
(72)【発明者】
【氏名】福田 晋也
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004AB06
4J004DB02
4J004FA01
4J040DF001
4J040FA132
4J040GA05
4J040GA13
4J040HD20
4J040JA09
4J040JB07
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA26
4J040KA28
4J040LA10
4J040NA17
(57)【要約】
【課題】比較的長波長側のエネルギー線により硬化可能な、光分解生成物の少ない光学部材貼合用粘着剤組成物、光学部材貼合用粘着シート、離型フィルム付き粘着シートを提供すると共に、これらを用いた画像表示装置用積層体、画像表示装置及び画像表示装置構成部材用粘着シートを提供することを目的とする。
【解決手段】(メタ)アクリル系重合体(A)、波長405nmのモル吸光係数が30(L/mol・cm)未満である水素引き抜き型光開始剤(B)、及び、チオキサントン構造を有する化合物(C)を含有する光学部材貼合用粘着剤組成物。また、これを用いた画像表示装置用積層体、光学部材貼合用粘着シート、離型フィルム付き粘着シート、画像表示装置及び画像表示装置構成部材用粘着シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系重合体(A)、波長405nmのモル吸光係数が30(L/mol・cm)未満である水素引き抜き型光開始剤(B)、及び、チオキサントン構造を有する化合物(C)を含有する光学部材貼合用粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル系重合体(A)が、アルキル基の炭素原子数が3~20の直鎖又は分岐のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単位と、水酸基含有モノマー単位、及び/又は窒素含有モノマー単位とを含む、請求項1に記載の光学部材貼合用粘着剤組成物。
【請求項3】
紫外線吸収剤(D)を更に含有する、請求項1に記載の光学部材貼合用粘着剤組成物。
【請求項4】
多官能(メタ)アクリレート(E)を更に含有する、請求項1に記載の光学部材貼合用粘着剤組成物。
【請求項5】
前記水素引き抜き型光開始剤(B)が、炭素-炭素二重結合を有するラジカル重合性官能基を有する化合物(b1)を含む、請求項1に記載の光学部材貼合用粘着剤組成物。
【請求項6】
前記水素引き抜き型光開始剤(B)が、グリオキシレート骨格を有する化合物(b2)を含む、請求項1に記載の光学部材貼合用粘着剤組成物。
【請求項7】
前記化合物(C)の含有量に対する前記水素引き抜き型光開始剤(B)の含有量の割合(B/C)が、2~1000である、請求項1に記載の光学部材貼合用粘着剤組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の光学部材貼合用粘着剤組成物から形成される粘着剤層を有する光学部材貼合用粘着シート。
【請求項9】
波長380nmでの光線透過率が0~10%である、請求項8に記載の光学部材貼合用粘着シート。
【請求項10】
波長405nmでの光線透過率が0~10%である、請求項8に記載の光学部材貼合用粘着シート。
【請求項11】
ゲル分率(X0)が10%以上である、請求項8に記載の光学部材貼合用粘着シート。
【請求項12】
光学部材貼合用粘着シートが活性エネルギー線硬化性を有し、前記光学部材貼合用粘着シートに波長405nmの活性エネルギー線を積算光量が2000~4000mJ/cm2となるよう照射した時のゲル分率(X1)が50%以上である、請求項11に記載の光学部材貼合用粘着シート。
【請求項13】
前記ゲル分率(X1)と前記ゲル分率(X0)との差(X1-X0)が5%以上である、請求項12に記載の光学部材貼合用粘着シート。
【請求項14】
前記光学部材貼合用粘着シートが活性エネルギー線硬化性を有し、且つ、前記光学部材貼合用粘着シートに波長405nmの活性エネルギー線を積算光量が2000~4000mJ/cm2となるよう照射した時の色度(b*1)が3.0以下であり、前記活性エネルギー線の照射前の色度(b*0)との差(b*1-b*0)が1.0以下である、請求項8に記載の光学部材貼合用粘着シート。
【請求項15】
請求項8に記載の光学部材貼合用粘着シートと、離型フィルムとが積層されてなる構成を備えた離型フィルム付き粘着シート。
【請求項16】
2つの画像表示装置構成部材が、請求項8に記載の光学部材貼合用粘着シートを介して積層されてなる構成を備えた、画像表示装置用積層体。
【請求項17】
請求項16に記載の画像表示装置用積層体を備えた画像表示装置。
【請求項18】
請求項8に記載の光学部材貼合用粘着シートからなる画像表示装置構成部材用粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材貼合用粘着剤組成物、光学部材貼合用粘着シート、離型フィルム付き粘着シート、画像表示装置用積層体、画像表示装置及び画像表示装置構成部材用粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の視認性を向上させるために、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)又はエレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の画像表示パネルと、その前面側(視認側)に配置する保護パネルやタッチパネル部材等の光学部材との間の空隙を、粘着剤や接着剤等の樹脂で充填し、入射光や表示画像からの出射光の空気層界面での反射を抑えることが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、透明両面粘着シートの少なくとも片側に、画像表示装置構成部材が積層してなる構成を備えた画像表示装置構成用積層体の製造方法として、紫外線によって1次架橋した粘着シートを画像表示装置構成部材に貼合後、画像表示装置構成部材を介して粘着シートに紫外線照射し2次硬化させる方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、表示及びタッチパネルに有用な粘着シートとして、紫外線架橋性部位を有する(メタ)アクリル共重合物を含む感圧性接着剤シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4971529号公報
【特許文献2】特許第6062740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
紫外線照射によって架橋構造を形成する粘着シートの多くは、紫外線照射によりラジカルを発生する光開始剤を含む。しかし、粘着シート中に紫外線吸収剤を含む場合は、紫外線が遮蔽されて十分に硬化反応が進行しない問題があった。
また、画像表示装置構成部材等の被着体に貼合後、該部材を介して粘着シートに光照射して2次硬化させる粘着シートにおいては、介在する部材が紫外線吸収性を有する場合、粘着シートの硬化に必要な光が到達しくいという問題があった。
更に、近年は省エネルギーや部材保護の観点から、比較的長波長側のエネルギー線(例えば波長380nmよりも長波長の紫外線及び可視光線)により硬化する粘着シートが強く求められている。
【0007】
このため、長波長の紫外域や可視光域に吸収を持つ光開始剤、α-アミノアセトフェノン系やアシルホスフィンオキサイド系の光開始剤を使用した光硬化性粘着シートが開発されている。しかし、これらの開裂型光開始剤は光分解生成物として、例えば、ベンズアルデヒドなどのアウトガスが発生するため、好ましい光開始剤とは言えなかった。
一方、光分解生成物を生じない、チオキサントン系、アントラキノン系等の水素引き抜き型光開始剤は、長波長域の紫外域や可視光域に吸収を持つものの、硬化物が光開始剤由来の着色、特に黄変が生じることが問題となっている。そのため、特に無色や透明性が必要な用途においては添加量に限りがあり、十分な硬化感度を得る事ができなかった。
【0008】
本発明は、比較的長波長側のエネルギー線(例えば波長380nmよりも長波長の紫外線及び可視光線)により硬化可能な、光分解生成物の少ない光学部材貼合用粘着剤組成物、光学部材貼合用粘着シート、離型フィルム付き粘着シートを提供すると共に、これらを用いた画像表示装置用積層体、画像表示装置及び画像表示装置構成部材用粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、以下の構成を含む。
[1](メタ)アクリル系重合体(A)、波長405nmのモル吸光係数が30(L/mol・cm)未満である水素引き抜き型光開始剤(B)、及び、チオキサントン構造を有する化合物(C)を含有する光学部材貼合用粘着剤組成物。
[2]前記(メタ)アクリル系重合体(A)が、アルキル基の炭素原子数が3~20の直鎖又は分岐のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単位と、水酸基含有モノマー単位、及び/又は窒素含有モノマー単位とを含む、[1]に記載の光学部材貼合用粘着剤組成物。
[3]紫外線吸収剤(D)を更に含有する、[1]又は[2]に記載の光学部材貼合用粘着剤組成物。
[4]多官能(メタ)アクリレート(E)を更に含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の光学部材貼合用粘着剤組成物。
[5]前記水素引き抜き型光開始剤(B)が、炭素-炭素二重結合を有するラジカル重合性官能基を有する化合物(b1)を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の光学部材貼合用粘着剤組成物。
[6]前記水素引き抜き型光開始剤(B)が、グリオキシレート骨格を有する化合物(b2)を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の光学部材貼合用粘着剤組成物。
[7]前記化合物(C)の含有量に対する前記水素引き抜き型光開始剤(B)の含有量の割合(B/C)が、2~1000である、[1]~[6]のいずれかに記載の光学部材貼合用粘着剤組成物。
[8][1]~[7]のいずれかに記載の光学部材貼合用粘着剤組成物から形成される粘着剤層を有する光学部材貼合用粘着シート。
[9]波長380nmでの光線透過率が0~10%である、[8]に記載の光学部材貼合用粘着シート。
[10]波長405nmでの光線透過率が0~10%である、[8]又は[9]に記載の光学部材貼合用粘着シート。
[11]ゲル分率(X0)が10%以上である、[8]~[10]のいずれかに記載の光学部材貼合用粘着シート。
[12]光学部材貼合用粘着シートが活性エネルギー線硬化性を有し、前記光学部材貼合用粘着シートに波長405nmの活性エネルギー線を積算光量が2000~4000mJ/cm2となるよう照射した時のゲル分率(X1)が50%以上である、[11]に記載の光学部材貼合用粘着シート。
[13]前記ゲル分率(X1)と前記ゲル分率(X0)との差(X1-X0)が5%以上である、[12]に記載の光学部材貼合用粘着シート。
[14]前記光学部材貼合用粘着シートが活性エネルギー線硬化性を有し、且つ、前記光学部材貼合用粘着シートに波長405nmの活性エネルギー線を積算光量が2000~4000mJ/cm2となるよう照射した時の色度(b*1)が3.0以下であり、前記活性エネルギー線の照射前の色度(b*0)との差(b*1-b*0)が1.0以下である、[8]~[13]のいずれかに記載の光学部材貼合用粘着シート。
[15][8]~[14]のいずれかに記載の光学部材貼合用粘着シートと、離型フィルムとが積層されてなる構成を備えた離型フィルム付き粘着シート。
[16]2つの画像表示装置構成部材が、[8]~[14]のいずれかに記載の光学部材貼合用粘着シートを介して積層されてなる構成を備えた、画像表示装置用積層体。
[17][16]に記載の画像表示装置用積層体を備えた画像表示装置。
[18][8]~[14]に記載の光学部材貼合用粘着シートからなる画像表示装置構成部材用粘着シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粘着シートは、比較的長波長側のエネルギー線(例えば波長380nmよりも長波長の紫外線及び可視光線)により硬化可能であり、光分解生成物が少ないことから、画像表示装置に用いる粘着シートとして好適である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。但し、本発明は、次に説明する実施形態に限定されるものではない。
なお、本発明において「フィルム」とは、シート、フィルム、テープを概念的に包含するものである。
また、画像表示パネル、保護パネル等のように「パネル」と表現する場合、板体、シート及びフィルムを包含するものである。
【0012】
本発明において、「x~y」(x,yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「x以上y以下」の意と共に、「好ましくはxより大きい」あるいは「好ましくはyより小さい」の意も包含するものである。
また、「x以上」(xは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはxより大きい」の意を包含し、「y以下」(yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはyより小さい」の意も包含するものである。
更に、「x及び/又はy(x,yは任意の構成)」とは、x及びyの少なくとも一方を意味するものであって、xのみ、yのみ、x及びy、の3通りを意味するものである。
また、本発明において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを包括する意味であり、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート及びメタクリレートを包括する意味であり、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及びメタクリロイルを包括する意味である。
「(メタ)アクリル系重合体」は、(メタ)アクリル系モノマー由来の構成単位を有する共重合体を意味する。(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系モノマー以外のモノマー(例えばスチレン等)由来の構成単位をさらに有していてもよい。
アルキル(メタ)アクリレート由来の構成単位を「アルキル(メタ)アクリレート単位」とも称し、他のモノマー由来の構成単位についても同様に称する。
【0013】
<<粘着シート>>
本発明に係る光学部材貼合用粘着シート(以下、「本粘着シート」と称する)は、(メタ)アクリル系重合体(A)、吸収極大波長が380nm以下である水素引き抜き型光開始剤(B)及び、チオキサントン構造を有する化合物(C)を含有する光学部材貼合用粘着剤組成物(以下、「本粘着剤組成物」と称する)から形成される粘着剤層を有する粘着シートである。以下、本粘着剤組成物に含まれる各成分について詳述する。
【0014】
<(メタ)アクリル系重合体(A)>
(メタ)アクリル系重合体(A)は、アルキル基の炭素原子数が3~20の直鎖又は分岐のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単位(a1)、水酸基含有モノマー単位(a2)、及び窒素含有モノマー単位(a3)から選ばれる少なくとも1種を含むのが好ましい。
このような(メタ)アクリル系重合体(A)は、アルキル基の炭素原子数が3~20の直鎖又は分岐のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1)、水酸基含有モノマー(a2)及び窒素含有モノマー単位(a3)から選ばれる少なくとも1種を含む重合成分を重合して得られるものである。
また、前記重合成分には、炭素原子数が3~20の直鎖又は分岐のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1)、水酸基含有モノマー(a2)及び窒素含有モノマー(a3)以外の、アルキル(メタ)アクリレート(a1)以外のアルキル(メタ)アクリレート(a4)、水酸基及び窒素含有官能基以外の官能基を有するエチレン性不飽和モノマー(a5)、その他の共重合性モノマー(a6)が含まれていてもよい。
【0015】
[アルキル(メタ)アクリレート(a1)]
炭素原子数が3~20の直鎖又は分岐のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1)は、次の(式1)で示される。
(式1) CH2=CH(R1)-COO(R2)
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素原子数3~20の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。)
【0016】
(式1)で示されるアルキル(メタ)アクリレート(a1)としては、例えばn-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ヘンイコシル(メタ)アクリレート等の直鎖アルキル(メタ)アクリレート;イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソイコシル(メタ)アクリレート等の分岐アルキル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
これらのなかでも、柔軟性を得る点からは、直鎖アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。また、粘着性と柔軟性のバランスをとる観点からアルキル基の炭素原子数3~18、更には3~16、特には3~12、殊には3~8の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、例えばn-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0018】
また、これらの中でも光照射時に、後述する水素引き抜き反応が起こりやすく、その結果、効率的に架橋反応を形成できる点からは、分岐アルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、中でも、アルキル基の炭素原子数が4~18、更には6~16、特には8~12、殊には8~10の分岐アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0019】
また、貯蔵剪断弾性率(G’)の増加を抑えて粘着シートとしての柔軟性を得る点から、アルキル(メタ)アクリレート(a1)は、特にアルキルアクリレートであることが好ましい。一方、凝集力の付与及び、後述する水素引き抜き反応が起こりやすく、その結果、効率的に架橋反応を形成できる点からは、アルキル(メタ)アクリレート(a1)は、アルキルメタクリレートであることが好ましい。
【0020】
(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する全ての構成単位に対する、アルキル(メタ)アクリレート(a1)単位の含有量は、低温における貯蔵剪断弾性率(G’)の増加を抑える点から、好ましくは40~95質量%であり、より好ましくは45~90質量%、特に好ましくは50~85質量%ある。アルキル(メタ)アクリレート(a1)単位の含有量が前記下限値以上であると、低温における貯蔵剪断弾性率(G’)の増加を抑制でき、上限値以下であると、粘着性等その他の物性と両立できる点から好ましい。
【0021】
[水酸基含有モノマー(a2)]
水酸基含有モノマー(a2)としては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン構造を有する(メタ)アクリレート、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸等の1級水酸基含有(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有(メタ)アクリレート;2,2-ジメチル2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上併せて用いることができる。
水酸基含有モノマー(a2)により、粘着シートの粘着力が向上するとともに、湿熱白化を抑止することができる。また、本粘着剤組成物が後述する熱架橋剤を含有する場合は、架橋の反応点となる。
【0022】
水酸基含有モノマー(a2)のなかでも、炭素原子数1~10、更には1~6、殊には2~4のヒドロキシアルキル基を有する水酸基含有モノマー、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル等が好ましく、特には1級水酸基含有(メタ)アクリレート、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0023】
(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する全ての構成単位に対する、水酸基含有モノマー(a2)単位の含有量は、粘着力や耐湿熱白化性を付与する観点から、好ましくは3~30質量%、より好ましくは5~25質量%、特に好ましくは7~20質量%である。
【0024】
[窒素含有モノマー(a3)]
窒素含有モノマー(a3)としては、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマーが挙げられる。窒素含有モノマー(a3)により、粘着シートの凝集力が向上するとともに、湿熱白化を抑止することができる。また、窒素含有モノマー(a3)は、後述する水素引き抜き反応を促進する作用がある。
【0025】
前記アミノ基含有モノマーとしては、例えばアミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート等の第1級アミノ基含有(メタ)アクリレート;t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の第2級アミノ基含有(メタ)アクリレート;エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等の第3級アミノ基含有(メタ)アクリレートや、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルアセトアミド類、N-ビニルカプロラクタム等のモノマーを挙げることができる。
【0026】
前記アミド基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-エチルメチルアクリルアミド、N,N-ジアリル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-(n-ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド等のアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0027】
前記イソシアネート基含有モノマーとしては、例えば2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートやそれらのアルキレンオキサイド付加物等を挙げることができる。イソシアネート基は、メチルエチルケトンオキシム、3,5-ジメチルピラゾール、1,2,4-トリアゾール、マロン酸ジエチル等のブロック化剤で保護されていてもよい。
これらは単独で又は2種以上併せて用いることができる。
【0028】
これらの中でも、光照射時に、水素引き抜き反応が起こりやすく、その結果、効率的に架橋を形成できる点からは、第3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン等の3級アミン類が特に好ましい。
【0029】
(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する全ての構成単位に対する、窒素含有モノマー(a3)単位の含有量は、凝集力や耐湿熱白化性を付与する観点から、好ましくは2~30質量%、より好ましくは2~25質量%、特に好ましくは3~20質量%である。
【0030】
(メタ)アクリル系重合体(A)は、水酸基含有モノマー(a2)単位及び窒素含有モノマー(a3)単位の両方を含有することが好ましい。水酸基含有モノマー(a2)単位及び窒素含有モノマー(a3)単位の両方を含む場合、粘着シートの粘着力及び凝集性が高められる傾向がある。
(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する全ての構成単位に対する、水酸基含有モノマー(a2)単位及び窒素含有モノマー(a3)単位の合計含有量は、好ましくは2~60質量%、より好ましくは5~50質量%、特に好ましくは10~40質量%である。
【0031】
(メタ)アクリル系重合体(A)には、前記(式1)で示されるアルキル(メタ)アクリレート(a1)、水酸基含有モノマー(a2)、及び窒素含有モノマー(a3)と共重合可能なモノマー成分(前記(a1)、(a2)及び(a3)成分を除く)を併用することもできる。かかるモノマー成分として、例えば、アルキル(メタ)アクリレート(a1)以外のアルキル(メタ)アクリレート(a4)、水酸基及び窒素含有官能基以外の官能基を有するエチレン性不飽和モノマー(a5)、その他の共重合性モノマー(a6)等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を併せて用いることができる。
【0032】
アルキル(メタ)アクリレート(a4)としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の、炭素原子数が1、2、又は20を超えるアルキル基を含有するアルキル(メタ)アクリレートや、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。アルキル(メタ)アクリレート(a4)により、(メタ)アクリル系重合体(A)の凝集力を高めることができる。
【0033】
(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する全ての構成単位に対する、アルキル(メタ)アクリレート(a4)単位の含有量は、柔軟性を維持する観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。アルキル(メタ)アクリレート(a4)単位の含有量の下限値は通常0質量%である。
【0034】
水酸基及び窒素含有官能基以外の官能基を有するエチレン性不飽和モノマー(a5)としては、カルボキシ基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0035】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等を挙げることができる。
【0036】
前記アセトアセチル基含有モノマーとしては、例えば2-(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、アリルアセトアセテート等を挙げることができる。
【0037】
前記グリシジル基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルグリシジル等を挙げることができる。
【0038】
(メタ)アクリル系重合体(A)を構成する全ての構成単位に対する、エチレン性不飽和モノマー(a5)単位の含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。エチレン性不飽和モノマー(a5)単位の含有量の下限値は通常0質量%である。
【0039】
その他の共重合性モノマー(a6)としては、例えばフェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェニルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物(メタ)アクリレート等の芳香族系(メタ)アクリレートや、4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシエトキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシエトキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシエトキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシエトキシ-4’-ブロモベンゾフェノン及びこれらの混合物等のベンゾフェノン構造を有する(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の複素環含有(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、ステアリン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アルキルビニルエーテル、ビニルトルエン、ビニルピリジン、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、アリルアルコール、アクリルクロライド、メチルビニルケトン、N-アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン等のビニル系モノマー等を挙げることができる。
また、後述する2以上の官能基を有する多官能(メタ)アクリレート(E)を共重合モノマーとして用いることもできる。
これらは単独で又は2種以上併せて用いることができる。
【0040】
(メタ)アクリル系重合体(A)は、側鎖に光活性部位、例えば重合性炭素-炭素二重結合基が導入されていてもよい。これにより、粘着剤組成物の架橋効率を高めることができ、より短時間で粘着剤組成物を架橋できることから、生産性を上げることができる。
【0041】
(メタ)アクリル系重合体(A)の側鎖に重合性炭素-炭素二重結合基を導入する方法としては、例えば上述した水酸基含有モノマー(a2)やエチレン性不飽和モノマー(a5)を含む共重合体を作製し、その後、これらの官能基と反応しうる官能基と重合性炭素-炭素二重結合基とを有する化合物を、重合性炭素-炭素二重結合基の活性を維持したまま縮合又は付加反応させる方法を挙げることができる。
【0042】
これらの官能基の組み合わせとしては、エポキシ基(グリシジル基)とカルボキシ基、アミノ基とカルボキシ基、アミノ基とイソシアネート基、エポキシ基(グリシジル基)とアミノ基、水酸基とエポキシ基、水酸基とイソシアネート基等を挙げることができる。これらの官能基の組み合わせの中でも、反応制御のし易さから水酸基とイソシアネート基との組み合わせが好ましい。中でも共重合体が水酸基を有し、前記化合物がイソシアネート基を有する組み合わせが好適である。
【0043】
重合性炭素-炭素二重結合基を有するイソシアネート化合物としては、上述した2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートやそれらのアルキレンオキサイド付加物等を挙げることができる。
【0044】
前記官能基と反応しうる官能基と重合性炭素-炭素二重結合基とを有する化合物の含有量は、粘着性や応力緩和性を向上させる観点から、(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、特に好ましくは0.1質量部以下である。なお、下限値は通常0質量部である。
【0045】
(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、凝集力の高い粘着剤組成物が得られる観点では、好ましくは20万以上、より好ましくは30万以上、更に好ましくは40万以上である。また、(メタ)アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、取り扱い性や均一撹拌性の観点では、好ましくは150万以下、より好ましくは120万以下、更に好ましくは110万以下、殊に好ましくは100万以下である。
【0046】
<水素引き抜き型光開始剤(B)>
本発明では、光開始剤として、波長405nmのモル吸光係数が30(L/mol・cm)未満である水素引き抜き型光開始剤(B)を用いる。
【0047】
光開始剤は、活性エネルギー線によってラジカルを発生する化合物である。
光開始剤は、ラジカル発生機構によって大きく2つに分類され、開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生させることができる開裂型光開始剤と、励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることができる水素引き抜き型光開始剤と、に大別される。
【0048】
長波長域の光に対して高い感光性を持つ光開始剤としては、α-アミノアセトフェノン系やアシルホスフィンオキサイド系の光開始剤が主に使用されてきた。しかし、これらは開裂型光開始剤であるため、光分解生成物として、例えば、ベンズアルデヒドなどのアウトガスが発生することから、改善が強く望まれていた。
また、長波長域の光に対する感光性を持つ光開始剤である、波長405nmのモル吸光係数が30(L/mol・cm)以上と高い水素引き抜き型光開始剤は、光分解物は生成しないものの、黄変の問題があり、使用に制限があった。
かかる事情のもと、本発明者らは鋭意検討を重ねた。その結果、波長405nmのモル吸光係数が30(L/mol・cm)未満である水素引き抜き型光開始剤を使用すると、通常、長波長域の光では硬化反応は進行しないと考えられるところ、後述するチオキサントン構造を有する化合物(C)と併用することにより、意外にも硬化不足や黄変といった不具合もなく、長波長側のエネルギー線(例えば波長380nmよりも長波長の紫外線及び可視光線)により硬化することを見出した。
なお、水素引抜型光開始剤(B)を用いた場合、(メタ)アクリル系重合体(A)からも水素引抜反応を起こし、(メタ)アクリル系重合体(A)が架橋構造に取り込まれ、架橋点が多い架橋構造を形成できるという利点もある。
【0049】
水素引き抜き型光開始剤は、他分子の水素を引き抜く分子間水素引き抜き型光開始剤と、前記分子内水素引き抜き反応に加えて、同一分子内でも水素引き抜き反応が起こる分子内水素引き抜き型光開始剤に大別される。
水素引き抜き型光開始剤(B)としては、分子内水素引き抜き型光開始剤及び分子間水素引き抜き型光開始剤のいずれであってもよく、それぞれ単独に使用しても両者を混合して使用してもよく、更に各々について1種又は2種以上を併用してもよい。
【0050】
水素引き抜き型光開始剤(B)としては、例えば、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチル、4-[(4-メチルフェニル)チオ]ベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシエトキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシエトキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシエトキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシ-4’-ブロモベンゾフェノン、4-メタクリロイルオキシエトキシ-4’-ブロモベンゾフェノン等の分子間水素引き抜き型光開始剤;ベンゾイル蟻酸メチル、オキシフェニル酢酸-2-(2-オキソ-2-フェニルーアセトキシ-エトキシ)エチルエステル、オキシフェニル酢酸-2-(2-ヒドロキシ-エトキシ)エチルエステル等の分子内水素引き抜き型光開始剤;を挙げることができる。
【0051】
これらの中でも、炭素-炭素二重結合を有するラジカル重合性官能基を有する化合物(b1)であれば、光反応後に重合構造に取り込まれることで、光開始剤のブリードアウトを抑制するとともに、粘着シートの凝集力を向上させることができる点で好ましい。
化合物(b1)としては、例えば、4-アクリロイルオキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシ-4’-メトキシベンゾフェノン、4-アクリロイルオキシエトキシ-4’-メトキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0052】
また、グリオキシレート骨格を有する化合物(b2)は、分子内水素引き抜き型光開始剤として機能し、系中の水素供与体のみならず、自身もラジカル発生の起点となりうる点で好ましい。
化合物(b2)としては、例えば、ベンゾイル蟻酸メチル、オキシフェニル酢酸-2-(2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ)エチルエステル、オキシフェニル酢酸-2-(2-ヒドロキシ-エトキシ)エチルエステルなどのグリオキシレート骨格を有する化合物を挙げることができる。
【0053】
本粘着剤組成物中の水素引き抜き型光開始剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。また、上限については、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、特に好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。水素引き抜き型光開始剤(B)の含有量が前記下限値以上であれば、硬化不良を防げる傾向があり、前記上限値以下であれば、光開始剤のブリードアウトが抑えられるとともに、脆化や着色の問題を抑制しやすい傾向がある。
【0054】
水素引き抜き型光開始剤として前記化合物(b1)及び化合物(b2)を併用する場合、発生したラジカルが効率的に架橋点を生じさせることから、本粘着剤組成物中の化合物(b2)の含有量に対する化合物(b1)の含有量の質量比(b1/b2)は、0.2以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.7以上が更に好ましい。ラジカル発生効率を上げられることから、質量比(b1/b2)は、10以下が好ましく、5以下がより好ましく、2以下が更に好ましい。前記質量比(b1/b2)の含有量の下限と上限は任意に組み合わせることができる。
【0055】
光開始剤として、開裂型光開始剤も光分解生成物が品質に影響を与えない程度に使用してもよい。
前記開裂型光開始剤としては、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-[4-{4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル}フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オン、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)、フェニルグリオキシリック酸メチル、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイドや、それらの誘導体等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
<チオキサントン構造を有する化合物(C)>
本粘着剤組成物は、チオキサントン構造を有する化合物(C)を含む。チオキサントン構造を有する化合物(C)は、前述の水素引き抜き型光開始剤(B)の増感剤として作用し、比較的長波長(例えば380nmより長波長の紫外域及び可視光域)の活性エネルギー線による光硬化反応を促進することができる。
【0057】
通常、チオキサントン構造を有する化合物は、ヨードニウム塩等の光カチオン重合開始剤や、α-アミノアセトフェノンなどの開裂型光開始剤に対して有用な増感剤として知られており、水素引き抜き型光開始剤に対する増感効果はないと考えられていた。
また、前述の水素引き抜き型光開始剤の増感剤としては、ミヒラーズケトン等のジアミノベンゾフェノンが一般的に知られていたが、毒性等の問題から使用に制限があった。
本発明者は、上記事情のもと鋭意検討を積み重ねた。その結果、驚くべきことに、380nmより短波長に吸収極大を有する水素引き抜き型光開始剤(B)とともに、チオキサントン構造を有する化合物(C)を用いることで、化合物(C)が水素引き抜き型光開始剤(B)に対する増感作用を発現し、比較的長波長(例えば380nmより長波長の紫外域及び可視光域)の活性エネルギー線による光硬化反応を促進ことができることを見出した。
【0058】
チオキサントン構造を有する化合物(C)としては、例えば、チオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-ドデシルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-メトキシカルボニルチオキサントン、2-エトキシカルボニルチオキサントン、3-(2-メトキシエトキシカルボニル)-チオキサントン、4-ブトキシカルボニルチオキサントン、3-ブトキシカルボニル-7-メチルチオキサントン、1-シアノ-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-クロロチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-エトキシチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-アミノチオキサントン、1-エトキシカルボニル-3-フェニルスルフリルチオキサントン、3,4-ジ-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシカルボニル]-チオキサントン、1,3-ジメチル-2-ヒドロキシ-9H-チオキサンテン-9-オン2-エチルヘキシルエーテル、1-エトキシカルボニル-3-(1-メチル-1-モルホリノエチル)-チオキサントン、2-メチル-6-ジメトキシメチル-チオキサントン、2-メチル-6-(1,1-ジメトキシベンジル)-チオキサントン、2-モルホリノメチルチオキサントン、2-メチル-6-モルホリノメチルチオキサントン、N-アリルチオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、N-オクチルチオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、N-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-チオキサントン-3,4-ジカルボキシイミド、1-フェノキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メトキシチオキサントン、6-エトキシカルボニル-2-メチルチオキサントン、チオキサントン-2-カルボン酸ポリエチレングリコールエステル、2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサントン-2-イルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミウムクロリドなどを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、相溶性の観点から、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントンが好ましい。
【0059】
本粘着剤組成物中のチオキサントン構造を有する化合物(C)の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上である。また、上限については、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下、特に好ましくは1質量部以下である。化合物(C)の含有量が前記下限値以上であれば、光開始剤の増感作用が得られ、前記上限値以下であれば、ブリードアウトや黄変を抑制しやすい傾向がある。
【0060】
本粘着剤組成物における、チオキサントン構造を有する化合物(C)の含有量に対する、水素引き抜き型光開始剤(B)の含有量の割合(B/C)は、2~1000が好ましい。上記割合であることにより、長波長(例えば380nm以上の長波長域及び可視光域)の光反応性を有しながら、黄変やブリードアウトを抑制することができる。上記割合は、3~600がより好ましく、5~200が更に好ましく、10~100が特に好ましい。
【0061】
<紫外線吸収剤(D)>
本粘着剤組成物は、紫外線吸収剤(D)を含有してもよい。紫外線吸収剤(D)を含むことにより、粘着シート自身や、被着体の紫外線による劣化を抑制することができる。
なお、本粘着剤組成物が紫外線吸収剤(D)を含有する場合、光硬化させるには、紫外線吸収剤(D)の吸収波長以外の波長を有する光線によって硬化させることが好ましい。
【0062】
紫外線吸収剤(D)としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等を挙げることができる。これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0063】
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0064】
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン、2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
【0065】
前記トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(3-オクチルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)-5-α-クミルフェニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(3-ノニルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)-5-α-クミルフェニル]-s-トリアジン2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-[2-ヒドロキシ-4-(3-デシルオキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシ)-5-α-クミルフェニル]-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-アクリロイルオキシエトキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等を挙げることができる。
【0066】
前記サリチル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリシレート、p-tert-ブチルフェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレート等を挙げることができる。
【0067】
前記シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート等を挙げることができる。
【0068】
これらの中で、粘着シート自身や被着体の紫外線劣化を効果的に抑制する観点から、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びトリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。その中でも、耐熱性に優れる観点から、トリアジン構造を含むトリアジン系紫外線吸収剤がより好ましい。
【0069】
耐光信頼性を向上させる観点では、本粘着剤組成物中の紫外線吸収剤(D)の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上、特に好ましくは3質量部以上、最も好ましくは5質量部以上である。一方、ブリードアウトを抑制し、耐黄変性を向上させる観点では、紫外線吸収剤(D)の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、好ましくは15質量部以下、より好ましくは12質量部以下、更に好ましくは10質量部以下、特に好ましくは8質量部以下、最も好ましくは7質量部以下である。
【0070】
<多官能(メタ)アクリレート(E)>
本粘着剤組成物は、多官能(メタ)アクリレート(E)を含有することも、架橋反応を促進する観点から好ましい。これにより、例えば同じ光照射量でも本粘着剤組成物が架橋構造を素早く形成することができる。本粘着シートに架橋構造が形成されることで、保管時やロール状に巻いた際の糊はみだしを防いだり、良好な粘着性や凝集力を得たりすることができる。
【0071】
多官能(メタ)アクリレート(E)としては、2以上の官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーや(メタ)アクリル系オリゴマー等を挙げることができる。これらは単独又は2種以上併せて用いることができる。
【0072】
2以上の官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えばペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサジオールジ(メタ)アクリレート、ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ウンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリングリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε-カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0073】
多官能(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、例えばポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマー等の多官能(メタ)アクリル系オリゴマーを挙げることができる。
これらの中でも、硬化物に適度な柔軟性を付与する観点から、グリコール構造を有する(メタ)アクリレート系モノマー及びオリゴマーが好ましい。
【0074】
本粘着剤組成物中の多官能(メタ)アクリレート(E)の含有量は、粘着シートの形状安定性や、画像表示装置用積層体としたときの耐久性を付与することができる観点から、(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1質量部以上が更に好ましい。また、上限は、低温での貯蔵剪断弾性率(G’)を低減する点から20質量部以下が好ましく、より好ましくは15質量部以下、特に好ましくは12質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0075】
また、前記ラジカル重合性化合物に加えて、架橋密度をより向上して長期信頼性を改善する点から熱架橋剤を併用することもできる。
かかる熱架橋剤としては、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤が挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル系重合体(A)との反応性に優れる点で、イソシアネート系架橋剤を用いることが好ましい。
【0076】
<その他の成分>
本粘着剤組成物は、「その他の成分」として、本発明の効果を損なわない限度で必要に応じて、例えばシランカップリング剤、可塑剤、粘着付与樹脂や、酸化防止剤、光安定化剤、金属不活性化剤、老化防止剤、吸湿剤、防錆剤、無機粒子等の各種の添加剤を適宜含有させることが可能である。
また、必要に応じて、三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物、ラウリル酸スズ化合物等の反応触媒を適宜含有してもよい。
これらは単独で又は2種以上併せて用いることができる。
【0077】
[シランカップリング剤]
シランカップリング剤は、構造中に反応性官能基と、ケイ素原子と結合したアルコキシ基をそれぞれ1つ以上含有する有機ケイ素化合物である。前記反応性官能基としては、例えばエポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、イソシアネート基が挙げられ、これらの中でも、耐久性のバランスの点からエポキシ基、メルカプト基が好ましい。
【0078】
前記ケイ素原子と結合したアルコキシ基としては、耐久性と保存安定性の点から炭素原子数1~8のアルコキシ基を含有することが好ましく、特に好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。なお、シランカップリング剤は、反応性官能基及びケイ素原子と結合したアルコキシ基以外の有機置換基、例えばアルキル基、フェニル基等を有していてもよい。
【0079】
本発明で用いられるシランカップリング剤としては、例えば3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のシラン化合物であるモノマー型のエポキシ基含有シランカップリング剤や、前記シラン化合物の一部が加水分解縮重合したり、前記シラン化合物とメチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有シラン化合物が共縮合したシラン化合物であるオリゴマー型エポキシ基含有シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン化合物であるモノマー型のメルカプト基含有シランカップリング剤や、前記シラン化合物の一部が加水分解縮重合したり、前記シラン化合物とメチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有シラン化合物が共縮合したシラン化合物であるオリゴマー型メルカプト基含有シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0080】
これらの中でも、耐久性に優れる点から、エポキシ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤が好ましく用いられ、中でもエポキシ基含有シランカップリング剤が好ましい。
【0081】
本粘着剤組成物中のシランカップリング剤の含有量としては、(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、0.005~10質量部であることが好ましく、特に好ましくは0.01~5質量部、更に好ましくは0.05~1質量部である。かかる含有量が前記下限値以上であると耐久性が向上する傾向があり、前記上限値以下であると耐久性が向上する傾向がある。
【0082】
[可塑剤]
本粘着剤組成物は、本粘着シートに柔軟性を付与するために、可塑剤を含むことができる。
【0083】
可塑剤の例としては、限定されるものではない。例えば、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、非晶質ポリオレフィン及びそのコポリマー、シリコーン、ポリアクリレート、オリゴマーポリウレタン、エチレンプロピレンコポリマー、これらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択されるものを挙げることができる。
これらの中でも、可塑剤は、ポリイソブチレンであることが好ましい。本明細書において使用することができるポリイソブチレン可塑剤の例としては、BASFより商品名OPPANOLで市販されているもののなかで、特にOPPANOLBシリーズから選択されるものを挙げることができる。
【0084】
環境保護の観点から、使用する可塑剤の揮発性有機化合物値(VOC)値は、小さいほうが好ましく、熱重量分析により測定した場合、1000ppm未満が好ましく、800ppm未満がより好ましく、600ppm未満が更に好ましく、400ppm未満が最も好ましい。
【0085】
本粘着剤組成物中の可塑剤の含有量は、特に制限されるものではない。(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対し0.1~20質量部であるのが好ましく、中でも0.5~15質量部であるのが更に好ましい。前記可塑剤の含有量の下限と上限は任意に組み合わせることができる。
【0086】
[粘着付与剤]
本粘着剤組成物は、本粘着シートにホットメルト性を付与するために、粘着付与剤を含むことができる。
粘着付与剤としては、ポリテルペン(例えば、αピネン系樹脂、βピネン系樹脂、及びリモネン系樹脂)及び芳香族変性ポリテルペン樹脂(例えば、フェノール変性ポリテルペン樹脂)等のテルペン樹脂、クマラン-インデン樹脂、並びにC5系炭化水素樹脂、C9系炭化水素樹脂、C5/C9系炭化水素樹脂、及びジシクロペンタジエン系樹脂等の石油系樹脂、変性ロジンや水素化ロジン、重合ロジン、ロジンエステル等のロジン類を挙げることができる。
【0087】
本粘着剤組成物中の粘着付与剤の含有量は、特に制限されず、(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対し、0.1~20質量部が好ましく、より好ましくは0.5~15質量部が更に好ましい。
【0088】
[防錆剤]
本粘着剤組成物は、被着体が金属配線等の腐食性を有する部位を含む場合の腐食を防止するために、防錆剤を含むことができる。
防錆剤としては、例えばトリアゾール類、ベンゾトリアゾール類等が好ましく、光学部材が腐食するのを防止することができる。
本粘着剤組成物中の防錆剤の含有量は、(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましい。
【0089】
本粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系重合体(A)及び、吸収極大波長が380nm以下である水素引き抜き型光開始剤(B)、チオキサントン構造を有する化合物(C)、好ましくは更に紫外線吸収剤(D)、多官能(メタ)アクリレート(E)、必要に応じて更にシランカップリング剤等のその他の成分をそれぞれ所定量混合することにより調製される。
かくして得られた粘着剤組成物は、粘着シート、とりわけ画像表示装置構成部材の貼合に用いる粘着シートに供される。
【0090】
本粘着剤組成物は、シロップ状であってもよい。このときのシロップ成分は、アクリルポリマーと、モノマー成分とから構成されていてもよい。一例において、このようなシロップ成分は、いわゆる部分重合によって形成されていてもよく、(メタ)アクリル系重合体(A)を構成するモノマーが完全に重合したポリマー又は部分的に重合されたポリマーにモノマーを添加することによって調整されていてもよい。すなわち、所定のモノマー組成物を部分的に重合させると、一部のモノマーが重合してオリゴマー又はポリマーを形成するとともに一部のモノマーが残存し、それによってシロップ成分が形成され得る。また、別の例では、部分重合又は完全重合したポリマーにモノマー成分を添加することによって、シロップ状にすることもできる。したがって、本明細書における(メタ)アクリル系重合体(A)を構成するモノマー単位とは、アクリル系重合体の成分中にオリゴマー又はポリマーが形成された状態で存在するモノマー、又は重合前のシロップ成分中に含まれるモノマーを意味する場合がある。
【0091】
<構成>
本粘着シートは、本粘着剤組成物から形成されてなる粘着剤層(「本粘着剤層」とも称する)のみからなる単層シートであっても、本粘着剤層が複数積層されている複層シートであってもよい。
本粘着シートは、最表層及び最裏層と、それら最表層と最裏層に挟まれた中間層を備える3層構成であってもよい。この場合、最表層、最裏層、中間層のいずれの層が本粘着剤層であってもよい。
層間接着性をより高める観点からは、本粘着剤層以外の層を形成する樹脂組成物も、(メタ)アクリル系重合体(A)を主成分として含むのが好ましい。更には、本粘着剤層以外の層も、光開始剤を含むのが更に好ましく、多官能(メタ)アクリレートを含むのが更に好ましい。
【0092】
<本粘着シートの物性>
本粘着シートは、次のような物性を有することができる。
【0093】
[ゲル分率]
本粘着シートのゲル分率(X0)は、10%以上が好ましい。本粘着シートのゲル分率(X0)が下限値以上であれば、形状を十分に保持しやすい。かかる観点から、前記ゲル分率(X0)は、20%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましく、50%以上が特に好ましい。また、本粘着シートのゲル分率(X0)は、粘着力を高める観点から、70%以下であるのが好ましく、60%以下であるのがより好ましく、55%以下であるのが更に好ましく、50%以下であるの特に好ましい。前記ゲル分率(X0)の下限と上限は任意に組み合わせることができる。
前記ゲル分率(X0)は、架橋度(硬化度合い)の目安になるものであり、後述の実施例に記載の測定条件で測定することができる。
【0094】
[光線透過率]
本粘着シートの380nmにおける光線透過率は、10%以下であるのが好ましく、5%以下であるのがより好ましく、2%以下であるのが更に好ましく、1%以下であるのが特に好ましく、0.5%以下であるのが最も好ましい。本粘着シートの380nmにおける光線透過率が5%以下あることにより、紫外線から画像表示装置構成部材を保護することができる。
【0095】
本粘着シートの400nmにおける光線透過率は、10%以下であるのが好ましく、7%以下であるのがより好ましく、5%以下であるのが更に好ましく、3%以下であるのが特に好ましい。本粘着シートの400nmにおける光線透過率が10%以下あることにより、貼合する画像表示装置構成部材が可視光域をも含む比較的長波長域の光(例えば400nm)により劣化のおそれのある場合であっても、本粘着シートにより光を遮蔽し、部材を保護することができる。
【0096】
[全光線透過率、ヘイズ]
本粘着シートの全光線透過率は、80%以上であることが好ましく、85%以上であることが更に好ましく、90%以上であることがより好ましい。
全光線透過率は、例えば分光光度計によって波長250nm~800nmの光の透過率を測定することによって求められる。
【0097】
本粘着シートのヘイズは、1.0%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることが更に好ましい。本粘着シートのヘイズが1.0%以下であることにより、透明性が求められる画像表示装置用の粘着シートとして使用することができる。
前記ヘイズは、ヘイズメーターで測定することができる。
本粘着シートのヘイズを前記範囲にするためには、本粘着シートが有機粒子等の粒子を含まないことが好ましい。
【0098】
[粘着力]
本粘着シートは、ソーダライムガラスに対する、剥離角180°、剥離速度60mm/分における粘着力が4N/cm以上であることが好ましく、5N/cm以上であることがより好ましく、6N/cm以上であることが更に好ましい。
【0099】
本粘着シートは、活性エネルギー線硬化性を有することが好ましい。ただし、「粘着シートが活性エネルギー線硬化性を有する」とは、活性エネルギー線によって硬化し得る性質を備える粘着シートであること、換言すれば、活性エネルギー線により硬化する余地が残された粘着シートであることを意味する。
【0100】
本粘着シートは、本粘着剤組成物が活性エネルギー線によって硬化する余地が残された状態に硬化(以下、「1次硬化」とも称する。)されたものであってもよいし、本粘着剤組成物が熱架橋剤によって架橋(1次硬化)されており、活性エネルギー線によって硬化し得るものであってもよい。1次硬化状態の粘着シートは、被着体へ貼合する前又は貼合した後に活性エネルギー線を照射することによって硬化(以下、「2次硬化」とも称する。)させることができる。
なお、本粘着シートが活性エネルギー線硬化性を有する場合、「ゲル分率(X0)」は、1次硬化された状態における粘着シートのゲル分率を意味する。
【0101】
本粘着シートを1次硬化する場合、熱による1次硬化であっても、活性エネルギー線による1次硬化であってもよいが、ゲル分率(X0)を所定範囲に制御しやすい観点からは、活性エネルギー線照射により1次硬化された粘着シートであることが好ましい。
1次硬化に用いる活性エネルギー線は、380nmよりも長波長の紫外域及び可視光域の波長の活性エネルギー線、中でも400nmよりも長波長の活性エネルギー線であるのが好ましい。
本粘着シートを活性エネルギー線によって1次硬化する場合、例えば、405nmにおける積算照射量が10~4000mJ/cm2である活性エネルギー線照射により1次硬化するのが好ましい。かかる活性エネルギー線照射において、好ましい照射量は、中でも50mJ/cm2以上3500mJ/cm2以下であり、より好ましくは100mJ/cm2以上3000mJ/cm2以下、特に好ましくは200mJ/cm2以上2500mJ/cm2以下、更に好ましくは300mJ/cm2以上2000mJ/cm2以下である。かかる照射量が上記範囲内であれば硬化する余地を残しながら硬化度を調整できる傾向にあり好ましい。
なお、前記活性エネルギー線照射量は、両側から活性エネルギー線を照射する場合、一側の積算エネルギーと他側の積算エネルギーとの合計である。
【0102】
[ゲル分率(X1)]
本粘着シートが活性エネルギー線硬化性を有する場合、本粘着シートに波長405nmの活性エネルギー線を積算光量が2000~4000mJ/cm2となるよう照射した後(2次硬化後)のゲル分率(X1)は50%以上であるのが好ましく、60%以上であるのがより好ましく、70%以上であるのが更に好ましく、75%以上であるのが特に好ましい。
2次硬化後のゲル分率(X1)が50%以上であることにより、本粘着シートを用いた画像表示装置用積層体が、耐久性に優れるものとなる。
【0103】
また、前記2次硬化後のゲル分率(X1)と、光照射前(2次硬化前)のゲル分率(X0)との差(X1-X0)は、5%以上であるのが好ましい。かかる差分が5%以上であることにより、画像表示装置構成部材に貼合する際の部材への密着性と、貼合後の画像表示装置用積層体の耐久性をより高い水準で両立させることができる。
【0104】
[硬化後粘着力]
本粘着シートが活性エネルギー線硬化性を有する場合、本粘着シートをソーダライムガラスに貼合した後、波長405nmの活性エネルギー線を積算光量が2000~4000mJ/cm2となるよう照射した時のソーダライムガラスに対する、剥離角180°、剥離速度60mm/分における粘着力(硬化後粘着力)は、前述の粘着力より高い値となることが好ましい。
硬化後粘着力は、具体的には、5N/cm以上であることが好ましく、6N/cm以上であることが更に好ましく、7N/cm以上であることがより好ましい。硬化後の粘着力が5N/cm以上であることにより、本粘着シートを用いた画像表示装置用積層体が、耐久性に優れるものとなる。
【0105】
[色度]
本粘着シートは、波長405nmの活性エネルギー線を積算光量が2000~4000mJ/cm2となるよう照射した時の色度(b*1)が3.0以下であるのが好ましく、2.5以下であるのがより好ましく、2.0以下であるのが更に好ましく、1.5以下が特に好ましく、1.0以下が最も好ましい。
本粘着シートが活性エネルギー線硬化性を有する場合、本粘着シートに波長405nmの活性エネルギー線を積算光量が2000~4000mJ/cm2となるよう照射した後(2次硬化後)の色度(b*1)と、本粘着シートの2次硬化前の色度(b*0)との差(b*1-b*0)は、1.0以下であることが好ましく、0.5以下であるのがより好ましく、0.1以下であるのが更に好ましく、0以下であるのが特に好ましい。前記(b*1)及び(b*1-b*0)が前記範囲を満たすことにより、活性エネルギー線照射による黄変が抑制された粘着シートとすることができる。
また、本粘着シートの2次硬化前の色度(b*0)に対する2次硬化後の色度(b*1)の割合(b*1/b*0)は、1.5以下であるのが好ましく、1.3以下がより好ましく、1.2以下が更に好ましく、1.1以下が特に好ましい。かかる値が1.5以下であることにより、光照射による粘着シートの黄変が抑制された粘着シートとすることができる。
前記色度(b*1)及び色度(b*0)は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
【0106】
<厚み>
本粘着シートの厚みは、特に制限されるものではないが、10μm以上であればハンドリング性が良好であり、1000μm以下であれば本粘着シートの薄型化に寄与することができる。かかる観点から、本粘着シートの厚みは、10μm以上であることが好ましく、より好ましくは15μm以上、更に好ましくは20μm以上、特に好ましくは25μm以上である。一方、上限に関しては、1000μm以下であることが好ましく、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは250μm以下、特に好ましくは100μm以下、殊に好ましくは50μm以下である。
【0107】
本粘着シートが最表層、最裏層及び中間層を備える3層構成である場合、各層の厚み比(最表層:中間層:最裏層)は、1:0.5:1~1:10:1であるのが好ましく、1:0.7:1~1:6:1であるのがより好ましく、1:1:1~1:4:1であるのが特に好ましい。
【0108】
<本粘着シートの製造方法>
次に、本粘着シートの製造方法について説明する。
但し、以下の説明は、本粘着シートを製造する方法の一例であり、本粘着シートはかかる製造方法により製造されるものに限定されるものではない。
【0109】
本粘着シートは、例えば本粘着剤組成物を調製し、本粘着剤組成物をシート状に成形し、架橋すなわち重合反応させて硬化させ、必要に応じて適宜加工を施すことによって作製すればよい。また、本粘着剤組成物を調製し、これを画像表示装置構成部材上にコーティングし、当該粘着剤組成物を硬化させることにより、本粘着シートを形成してもよい。
【0110】
本粘着剤組成物を調製する際は、前記原料を、プロペラ式撹拌機や混練機(例えば一軸押出機、二軸押出機、プラネタリーミキサー、二軸ミキサー、加圧ニーダー等)を用いて混合すればよい。
なお、種々の原料を混合する際、シランカップリング剤、酸化防止剤等の各種添加剤は、予め樹脂と共にブレンドしてから撹拌機や混練機に供給してもよいし、予め全ての材料を溶融混合してから供給してもよいし、添加剤のみを予め樹脂に濃縮したマスターバッチを作製して供給してもよい。
【0111】
本粘着剤組成物をシート状に成形する方法としては、公知の方法、例えばウェットラミネーション法、ドライラミネート法、Tダイを用いる押出キャスト法、押出ラミネート法、カレンダー法やインフレーション法、射出成形、注液硬化法等を採用することができる。なかでも、シートを製造する場合は、ウェットラミネーション法、押出キャスト法、押出ラミネート法が好適である。
【0112】
本粘着剤組成物の硬化は、活性エネルギー線を照射することにより行うことができ、本粘着剤組成物の成形体、例えばシート体に成形したものに、活性エネルギー線を照射することにより、本粘着シートを製造することができる。なお、活性エネルギー線の照射の他に、加熱して更に硬化を図ることもできる。
【0113】
活性エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法等に関しては特に限定されず、光開始剤を活性化させてモノマー成分を重合できればよい。
【0114】
前記活性エネルギー線照射における活性エネルギー線としては、例えば遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線、可視光線等の光線、X線、α線、β線、γ線、電子線、プロトン線、中性子線等の電離性放射線が挙げられる。なかでも、画像表示装置構成部材へのダメージ抑制や反応制御のし易さの観点から紫外線又は可視光線が好適である。また、硬化速度、照射装置の入手のしやすさ、価格等からも、紫外線照射又は可視光照射による硬化が有利である。中でも紫外線吸収剤による硬化阻害を防止する観点からは、可視光線、例えば405nmの活性エネルギー線により硬化することが好ましい。
【0115】
活性エネルギー線照射の光源としては、150~450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、カーボンアークランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ、LED等を用いることが挙げられる。
【0116】
活性エネルギー線照射量(積算光量)としては、硬化の点から、10~6000mJ/cm2が好ましく、50mJ/cm2~5500mJ/cm2がより好ましく、100mJ/cm2~5000mJ/cm2が更に好ましく、200mJ/cm2~4000mJ/cm2が特に好ましく、300mJ/cm2~3000mJ/cm2が殊に好ましい。
【0117】
本粘着シートの製造方法の別の実施態様として、粘着剤組成物を適切な溶剤に溶解させ、各種コーティング手法を用いて実施することもできる。なお、粘着剤組成物がシロップ状である場合は、溶剤を用いずにコーティングすることも可能である。
コーティング手法を用いた場合、前記の活性エネルギー線照射による硬化の他、熱硬化させることにより、本粘着シートを得ることもできる。コーティングの場合、本粘着シートの厚みは塗工厚みと塗工液の固形分濃度によって調整できる。
【0118】
例えば、粘着剤組成物を溶剤に溶解した後、離型フィルムにコーティングして乾燥し、活性エネルギー線照射により硬化し、本粘着シートを形成することができる。更に、必要に応じて離型フィルムを積層してもよい。この場合、離型フィルムにコーティングして乾燥し、活性エネルギー線照射により硬化し、その上に離型フィルムを積層してもよいし、また、離型フィルムにコーティングして乾燥し、離型フィルムを積層した後、活性エネルギー線照射により硬化し本粘着シートを形成してもよい。
【0119】
かかる溶剤としては、本粘着剤組成物を溶解させるものであれば特に限定されることなく、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤が挙げられる。これらは単独で又は2種以上併せて用いることができる。なかでも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、トルエンが好ましく、特に酢酸エチルが好適に用いられる。
【0120】
溶剤の使用量としては、乾燥性から、(メタ)アクリル系重合体(A)100質量部に対して、600質量部以下が好ましく、500質量部以下がより好ましく、400質量部以下が更に好ましく、300質量部以下が特に好ましい。一方、1質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、100質量部以上が更に好ましく、150質量部以上が特に好ましい。
コーティング方法としては、例えばロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷、バーコーティング等の慣用の方法により行うことができる。
【0121】
前記乾燥後における粘着剤組成物中の溶剤含有量は1質量%以下となることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.1質量%以下であり、最も好ましくは0質量%である。
【0122】
乾燥温度としては、通常40~150℃であり、より好ましくは45~140℃、更に好ましくは50~130℃、特に好ましくは55~120℃である。前記温度範囲であると、離型フィルムの熱変形を抑えつつ、効率的かつ比較的安定して溶剤を除去できる。
【0123】
乾燥時間としては、通常1~30分間であり、より好ましくは3~25分間、更に好ましくは5~20分間である。前記時間範囲であると、効率的かつ十分に溶剤を除去できる。
【0124】
乾燥方法としては、例えば乾燥機、熱ロールによる乾燥、フィルムに熱風を吹き付ける乾燥等が挙げられる。なかでも、乾燥機を用いることが均一かつ容易に乾燥できる点から好ましい。これらは単独で又は2種以上併せて用いることができる。
【0125】
<<離型フィルム付き粘着シート>>
本粘着シートは、本粘着剤組成物からなる粘着剤層(本粘着シート)の片面又は両面に、離型フィルムを積層して離型フィルム付き粘着シート(粘着シート積層体)として提供することもできる。
本粘着シートの両面に離型フィルムを設ける場合は、剥離力の相対的に低い軽剥離フィルムと、剥離力の相対的に高い重剥離フィルムが積層された積層体構成とするのが好ましい。両面に離型フィルムを設けた離型フィルム付き粘着シートの使用時には、まず、一方の離型フィルム(軽剥離フィルム)を剥離して粘着シートの一方の面を露出させて、画像表示装置構成部材(第1部材とする)との貼り合わせを行い、他方の離型フィルム(重剥離フィルム)を剥離して露出した粘着シートの他方の面に、別の画像表示装置構成部材(第2部材とする)を貼り合わせればよい。
【0126】
かかる離型フィルムとしては、公知の離型フィルムを適宜用いることができる。
離型フィルムの材質としては、例えばポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、フッ素樹脂フィルム等のフィルムに、シリコーン樹脂等の離型剤を塗布して離型処理したものや、離型紙等を適宜選択して用いることができる。その中でも、ポリエステルフィルム、更にその中でもポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、特に2軸延伸PETフィルムが、透明性、機械強度、耐熱性、柔軟性などに優れている点で好ましい。前記のような基材に、シリコーン樹脂を主成分とする硬化型シリコーン系離型剤を硬化してなる離型層を設けた離型フィルムを使用することができる。
【0127】
離型フィルムの厚みは、特に制限されない。なかでも、例えば加工性及びハンドリング性の観点からは、10~250μmであることが好ましく、より好ましくは25~200μmであり、更に好ましくは35~190μmである。
【0128】
<本粘着シートの好ましい用途>
本粘着シートは、光学部材の貼合に好適に使用されるものである。具体的には、ディスプレイを構成する部材、とりわけ、ディスプレイを作製するのに用いる部材の貼合に好適に使用されるものであり、画像表示パネルと、その前面側(視認側)に配置する保護パネルやタッチパネル等の画像表示装置構成部材、又は、前記画像表示装置構成部材を構成する部材を貼合するための粘着シートとして使用される。
なお、画像表示装置構成部材については、後述するものと同一のものを使用することができる。
【0129】
<<画像表示装置用積層体>>
本発明の実施形態の一例に係る画像表示装置用積層体(以下、「本画像表示装置用積層体」と称することがある。)は、2つの画像表示装置構成部材が、本粘着シートを介して積層してなる構成を有する画像表示装置用積層体である。本画像表示装置用積層体は、2つの画像表示装置構成部材が、本粘着シートを介して積層されてなる構成を有する画像表示装置用積層体であることが好ましい。
【0130】
本画像表示装置用積層体の構成要素のうち、本粘着シートについては上述の通りであり、粘着シート以外の要素について、以下説明する。
【0131】
<画像表示装置構成部材>
本画像表示装置用積層体を構成する画像表示装置構成部材としては、例えばフラットパネル画像表示装置構成部材や、フレキシブル画像表示装置構成部材が挙げられる。このような画像表示装置構成部材としては、例えば液晶ディスプレイや、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等のフレキシブルディスプレイ、カバーレンズ(カバーフィルム)、偏光板、偏光子、位相差フィルム、バリアフィルム、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム、電極フィルム、透明導電性フィルム、金属メッシュフィルム、タッチセンサーフィルム等を挙げることができる。これらのうちのいずれか1種又は2種のうちの2つを組み合わせて使用すればよい。例えばフレキシブルディスプレイと、その他の画像表示装置構成部材との組み合わせや、カバーレンズと、その他の画像表示装置構成部材との組み合わせを挙げることができる。
【0132】
なお、フレキシブル画像表示装置構成部材とは屈曲可能な部材であり、曲面形状を有する画像表示装置に用いられる部材や、繰り返し屈曲可能な部材であることを意味する。特に、曲率半径が25mm以上の湾曲形状に固定が可能な部材、とりわけ、曲率半径25mm未満、より好ましくは、曲率半径3mm未満での曲げ作用に耐えることができる部材であることが好ましい。
【0133】
上述の構成において、画像表示装置構成部材を構成する部材としては、樹脂シート又はガラス等が挙げられる。
かかる樹脂シートの材質としては、例えばポリエステル樹脂、シクロオレフィン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びアラミド樹脂等を挙げることができ、これらは1種の樹脂であっても、又は2種以上の樹脂であってもよい。なかでも、ポリエステル樹脂、シクロオレフィン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アラミド樹脂、及びポリウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を主成分として含む樹脂シートであることが好ましい。
ここで「主成分」とは、画像表示装置構成部材を構成する成分の中で最も多い重量比率を占める成分であることをいい、具体的には画像表示装置構成部材を形成する樹脂組成物(樹脂シート)の50質量%以上を占めるものであり、更には55質量%以上、特には60質量%以上を占めることが好ましい。
【0134】
<本画像表示装置用積層体の製造方法>
本画像表示装置用積層体の製造方法としては、特に制限されるものではなく、上述のように、例えば、粘着剤組成物を画像表示装置構成部材上に塗布して粘着シートを形成してもよいし、予め離型フィルム付き粘着シートを形成した後に、画像表示装置構成部材と貼合してもよい。
【0135】
<<画像表示装置>>
本発明の実施形態の一例に係る画像表示装置(以下、「本画像表示装置」と称することがある。)は、2つの画像表示装置構成部材が本粘着シートを介して貼り合わされた構成を有する画像表示装置用積層体を組み込んでなる画像表示装置である。例えば、2つの画像表示装置構成部材が本粘着シートを介して貼り合わされた構成を有する画像表示装置用積層体を、他の画像表示装置構成部材に積層することで、該積層体を備えた本画像表示装置を形成することができる。
【実施例0136】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳しく説明する。ただし、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、質量基準を意味する。
【0137】
<原材料>
先ず、実施例及び比較例で調製した(メタ)アクリル系重合体、及び粘着剤組成物の詳細について説明する。
【0138】
<(メタ)アクリル系重合体(A)>
・(メタ)アクリル系重合体(A-1):2-エチルヘキシルアクリレート64質量部と、メチルアクリレート19質量部と、2-ヒドロキシエチルアクリレート17質量部とが共重合してなるアクリル系共重合体(重量平均分子量:47万)。
・(メタ)アクリル系重合体(A-2):2-ヒドロキシエチルアクリレート46.4質量部と、メチルアクリレート45.1質量部と、N-ビニル-2-ピロリドン8.5質量部とが共重合してなるアクリル系共重合体(重量平均分子量:約23万)。
【0139】
<光開始剤(B)>
・光開始剤(B-1):ベンゾイル蟻酸メチル(IGM社製「SpeedcureMBF」、波長405nmのモル吸光係数:6.5L/mol・cm)
・光開始剤(B-2):4-メタクリロイルオキシベンゾフェノン(新菱社製「MBP」、波長405nmのモル吸光係数:0L/mol・cm)
・光開始剤(B-3):2,4,6-トリメチルベンゾフェノン及び4-メチルベンゾフェノンの混合物(IGM社製「Esacure TZT」、波長405nmのモル吸光係数:0L/mol・cm)
・光開始剤(B’-1):(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド(IGM社製「Omnirad TPO-L」、波長405nmのモル吸光係数:81L/mol・cm)
【0140】
<化合物(C)>
・化合物(C-1):2,4-ジエチルチオキサントン(日本化薬社製、「KAYACURE DETX-S」、波長405nmのモル吸光係数:3.3×103L/mol・cm)
【0141】
<紫外線吸収剤(D)>
・紫外線吸収剤(D-1):トリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製「TinosorbS」)
・紫外線吸収剤(D-2):ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(ケミプロ化成社製「KEMISORB111」)
【0142】
<多官能(メタ)アクリレート(E)>
・多官能(メタ)アクリレート(E-1):プロピレングリコールジアクリレート(新中村化学社製「APG-400」)
・多官能(メタ)アクリレート(E-2):ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(新中村化学社製「ATMM-3L」)
【0143】
<その他成分>
・シランカップリング剤:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製「KBM403」)
【0144】
[実施例1~10]
表1及び表2に示す通りの配合組成にて、粘着剤組成物の原材料を均一混合し、粘着剤組成物を得た。
【0145】
前記粘着剤組成物を、離型フィルム(三菱ケミカル社製、シリコーン剥離処理ポリエステルフィルム、厚み100μm)上に厚さが100μmとなるようシート状に賦形した。当該粘着剤組成物の表面に、離型フィルム(三菱ケミカル社製、シリコーン剥離処理ポリエステルフィルム、厚み75μm)を積層して積層体を形成し、高圧水銀ランプを用いて、前記粘着剤組成物に対し、前記離型フィルムを介して波長405nmの活性エネルギー線を1400mJ/cm2となるように照射し、離型フィルム付粘着シート(厚さ100μm)を得た。
なお、各粘着剤組成物には紫外線吸収剤(D)が含まれているため、高圧水銀ランプによる紫外域(例えば波長365nm)の活性エネルギー線は硬化反応に寄与しない。
【0146】
[実施例11]
表1に示す通りの配合組成にて調整した粘着剤層樹脂組成物及び中間層樹脂組成物を、2台の押出機に各々供給し、2種3層(粘着剤層/中間層/粘着剤層、厚さ1:4:1)の層構成で共押出した。
【0147】
次に、共押出した前記樹脂組成物を、2枚の離型フィルム(三菱ケミカル社製、シリコーン剥離処理ポリエステルフィルム、厚み75μm及び、三菱ケミカル社製シリコーン剥離処理ポリエステルフィルム、厚み100μm)の間に挟んで積層体を形成した。高圧水銀ランプを用いて、前記樹脂組成物に対し、前記離型フィルムを介して波長405nmの活性エネルギー線を1400mJ/cm2となるよう照射し、離型フィルム付粘着シート(厚さ100μm)を得た。
なお、中間層樹脂組成物には紫外線吸収剤(D)が含まれているため、高圧水銀ランプによる紫外域(例えば波長365nm)の活性エネルギー線は中間層樹脂組成物の硬化反応に寄与しない。
【0148】
[比較例1~3]
表2に示す通りの配合組成にて、粘着剤組成物の原材料を均一混合し、粘着剤組成物を得た。
前記粘着剤組成物を、離型フィルム(三菱ケミカル社製、シリコーン剥離処理ポリエステルフィルム、厚み100μm)上に厚さが100μmとなるようシート状に賦形した。当該粘着剤組成物の表面に、離型フィルム(三菱ケミカル社製、シリコーン剥離処理ポリエステルフィルム、厚み75μm)を積層して積層体を形成し、前記粘着剤組成物に対し、前記離型フィルムを介して波長405nmの活性エネルギー線を2000mJ/cm2となるように照射し、離型フィルム付粘着シート(厚さ100μm)を得た。
【0149】
<評価>
得られた粘着シートについて以下の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0150】
<ゲル分率>
実施例及び比較例で作製した離型フィルム付き粘着シートに対して、離型フィルムを剥がした粘着シートから約0.1gの粘着シート片を採取した。採取した粘着シート片は、あらかじめ袋状にした質量X(g)のSUSメッシュ(#150)に包み、袋の口を閉じてサンプルとして、当該サンプルの質量Y(g)を測定した。前記サンプルを酢酸エチルに浸漬させた状態で23℃、24時間暗所保管した後、前記サンプルを取り出して70℃で4.5時間加熱することで酢酸エチルを蒸発させ、乾燥させたサンプルの質量Z(g)を測定した。測定したそれぞれの質量から、下記式によって1次硬化後のゲル分率(X0)を算出した。
ゲル分率(%)=[(Z-X)/(Y-X)]×100
【0151】
また、実施例及び比較例で作製した離型フィルム付き粘着シートについて、高圧水銀ランプを用いて、365nmの積算光量が3000mJ/cm2(405nmの積算光量が2100mJ/cm2)となるように、離型フィルムを介して粘着シートに活性エネルギー線を照射し、粘着シートを硬化させた。硬化後の粘着シートを用いて、ゲル分率(X0)と同様にして2次硬化後のゲル分率(X1)を算出した。
【0152】
<色度>
実施例及び比較例で作製した離型フィルム付き粘着シートの離形フィルムを剥がし、露出した両面の粘着面を2枚のソーダライムガラス(厚み0.55mm)で挟むように貼合サンプルを作成した。当該貼合サンプルについて、分光測色計(スガ試験機(株))「SC-T」を用いて、JIS Z8722に基づく方法で、D65光源、10°視野で1次硬化後の色度(b*0)を測定した。
【0153】
また、実施例及び比較例で作製した離型フィルム付き粘着シートに対して、高圧水銀ランプを用いて、365nmの積算光量が3000mJ/cm2(405nmの積算光量が2100mJ/cm2)となるように、離型フィルムを介して粘着シートに活性エネルギー線を照射し、粘着シートを硬化させた。硬化後の粘着シートを用いて、色度(b*0)と同様にして2次硬化後の色度(b*1)を測定した。
2次硬化後の色度(b*1)が2.5以下である場合、実用的に問題ないと判定した。
【0154】
<光線透過率>
実施例及び比較例で作製した離型フィルム付き粘着シートの一方の離型フィルムを剥がし、露出した粘着面をソーダライムガラス(82mm×53mm×厚さ0.5mm)にロール圧着した。次いで、残る離型フィルムを剥がし、露出した粘着面を別のソーダライムガラス(82mm×53mm×厚さ0.5mm)にロール圧着した。その後、オートクレーブ処理(60℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上げ貼着し、評価用積層体を作製した。
前記評価用積層体について、分光光度計(島津製作所製 UV2000)を用いて、波長250nm~800nmの分光透過率(%)を測定し、波長380nm及び405nmの光線透過率を求めた。
【0155】
<粘着力>
実施例及び比較例で作製した離型フィルム付き粘着シートの一方の離型フィルムを剥がし、裏打ちフィルムとして厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「コスモシャインA4300」)を貼合して積層品を準備した。
前記積層品を長さ150mm、巾10mmに裁断した後、残る離型フィルムを剥がし、露出した粘着面をソーダライムガラスに接触させてロールを1往復させ、粘着シートをロール圧着した。得られた貼合品を温度60℃で30分養生して仕上げ貼着した後、高圧水銀ランプを用いて、365nmの積算光量が3000mJ/cm2(405nmの積算光量が2100mJ/cm2)となるように、裏打ちフィルム越しに光照射して粘着シートを硬化し、23℃で15時間養生して、粘着力測定サンプルとした。
この粘着力測定サンプルを、23℃、40%RHの環境下にて剥離角180°、剥離速度60mm/分で引き剥がしたときのガラスへの剥離力(N/cm)を測定し、2次硬化後の粘着力を求めた。
【0156】
【0157】
【0158】
実施例1~11の粘着シートは、(メタ)アクリル系重合体(A)、波長405nmのモル吸光係数が30(L/mol・cm)未満である水素引き抜き型光開始剤(B)及び、チオキサントン構造を有する化合物(C)を含有する粘着剤組成物から形成される粘着シートであり、紫外線吸収剤による硬化阻害があるにもかかわらず、長波長(405nm)の活性エネルギー線により硬化反応が進行した。
比較例1の粘着シートは、チオキサントン構造を有する化合物(C)を含まないため、硬化反応が十分に進行しなかった。
比較例2の粘着シートは、水素引き抜き型光開始剤(B)を含まず、チオキサントン構造を有する化合物(C)のみを用いており、硬化反応が十分に進行しないばかりか、活性エネルギー線照射によって著しい黄変(b*値の上昇)が見られた。
比較例3の粘着剤組成物は、開裂型光開始剤を使用しているため、活性エネルギー線照射時に光分解生成物を生じるものであった。
また、比較例3の粘着シートは差(X1-X0)が小さく、活性エネルギー線硬化性が不十分であった。これは、用いた光開始剤が開裂型のみであるため、粘着シート製造時の光照射によって光開始剤が消費され、活性エネルギー線によって硬化する余地が残された状態に制御することが難しく、粘着シートの活性エネルギー線硬化性が失われたためであると考えられる。