(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104140
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】有機性排水の生物処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 3/12 20230101AFI20240726BHJP
C02F 11/02 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
C02F3/12 B ZAB
C02F11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008223
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】藤島 繁樹
【テーマコード(参考)】
4D028
4D059
【Fターム(参考)】
4D028AC03
4D028BC17
4D028BD00
4D028BD17
4D028CA00
4D059AA05
4D059BA09
4D059BA22
4D059CA28
4D059EB01
(57)【要約】
【課題】好気性生物処理により増加した細菌を捕食する微小動物を増殖させて有機性排水を効率よく処理することができる有機性排水の生物処理方法を提供する。
【解決手段】有機性排水を好気性生物処理槽1に導入して好気性生物処理し、この好気性生物処理槽1に濾過捕食型微小動物を存在させる有機性排水の生物処理方法において、該好気性生物処理槽1内の微小動物数が1000個/mL以下のときに、メタン生成細菌を含む嫌気処理汚泥を1~500mg-SS/L/dで該好気性生物処理槽に添加し、微小動物を増殖させることを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性排水を好気性生物処理槽に導入して好気性生物処理し、この好気性生物処理槽に濾過捕食型微小動物を存在させる有機性排水の生物処理方法において、
該好気性生物処理槽内の微小動物数が1000個/mL以下のときに、メタン生成細菌を含む嫌気処理汚泥を該好気性生物処理槽に槽容積当り1~500mg-SS/L/dで添加し、微小動物を増殖させることを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項2】
前記好気性生物処理槽内の微小動物数が5000個/mL以上となるまで、前記嫌気処理汚泥を添加することを特徴とする請求項1の有機性排水の生物処理方法。
【請求項3】
前記好気性生物処理槽内の生物処理液を嫌気槽に導入し、該嫌気槽に前記嫌気処理汚泥を添加し、該嫌気槽内の液を前記好気性生物処理槽に戻すことを特徴とする請求項1の有機性排水の生物処理方法。
【請求項4】
有機性排水を第1好気性生物処理槽に導入して好気性生物処理し、
該第1好気性生物処理槽からの第1生物処理水を第2好気性生物処理槽に導入して好気性生物処理し、該第2好気性生物処理槽に濾過捕食型微小動物を存在させる有機性排水の生物処理方法において、
該第2好気性生物処理槽内の微小動物数が1000個/mL以下のときに、メタン生成細菌を含む嫌気処理汚泥を1~500mg-SS/L/dで該第2好気性生物処理槽に添加し、微小動物を増殖させることを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【請求項5】
前記第2好気性生物処理槽内の微小動物数が5000個/mL以上となるまで、前記嫌気処理汚泥を添加することを特徴とする請求項4の有機性排水の生物処理方法。
【請求項6】
前記第2生物処理槽への有機物汚泥負荷が0.01~0.05kg-s.BOD/MLVSS/dの範囲にあることを特徴とする請求項4の有機性排水の生物処理方法。
【請求項7】
前記嫌気処理汚泥がグラニュール汚泥であることを特徴とする請求項1~6のいずれかの有機性排水の生物処理方法。
【請求項8】
前記嫌気処理汚泥が、酸生成槽を別に設けたUASB型嫌気処理由来のグラニュール汚泥であり、1~50mg-SS/L/dで添加されることを特徴とする請求項7の有機性排水の生物処理方法。
【請求項9】
前記微小動物数がピーク時の50%以下になり減少傾向が継続する場合、微小動物数が1000個/mL超の場合であっても嫌気処理汚泥を添加して減少傾向を止めることを特徴とする請求項1~6のいずれかの有機性排水の生物処理方法。
【請求項10】
前記好気性生物処理が、生物処理槽内の好気処理汚泥を定期的に系外へ引き抜く方式であり、SRTが20-60dの範囲内に収まるように汚泥を引き抜くことを特徴とする請求項1~6のいずれかの有機性排水の生物処理方法。
【請求項11】
前記微小動物がヒルガタワムシ目の微小動物であることを特徴とする請求項1~6のいずれかの有機性排水の生物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生活排水、下水、食品工場やパルプ工場排水等の有機性排水処理装置に係り、特に生物処理汚泥を濾過捕食型微小動物に捕食させて汚泥を減量するようにした有機性排水の生物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性排水を生物処理する場合に用いられる活性汚泥法は、処理水質が良好で、メンテナンスが容易であるなどの利点から、下水処理や産業廃水処理等に広く用いられている。しかしながら、運転に用いられるBOD容積負荷は0.5-0.8kg/m3/d程度であるため、広い敷地面積が必要となる。また、分解したBODの20%が菌体すなわち汚泥へと変換されるため、大量の余剰汚泥処理も問題となる。
【0003】
有機性排水をまず、第1処理槽で好気性生物処理して、排水に含まれる有機物を非凝集性の細菌(分散性細菌)の菌体に変換した後、第2処理槽でワムシ等の微小動物に補食させることで余剰汚泥の減量化する有機性排水の生物処理方法が知られている(特許文献1,2)。
【0004】
ワムシ等の微小動物が分散性細菌を含んだ微細SSを捕食することにより、処理水質が向上すると共に、汚泥の沈降性が向上する。また、余剰汚泥も減少する。
【0005】
特許文献1,2には、この微小動物の増殖促進剤として、液体豆乳、粉末豆乳、おから、乾燥おから、豆腐、きな粉、大豆レシチン、卵黄レシチン、菜種レシチン、とうもろこし胚芽レシチン、綿実レシチン、ひまわりレシチン等を添加することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-326067号公報
【特許文献2】特開2006-43586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
分散性細菌を微小動物に捕食させる有機性排水の生物処理方法においては、負荷変動、毒物の流入、生物処理改善薬剤(沈降剤やバルキング解消剤)の添加などにより、微小動物が減少したり、死滅したりすることがある。一旦微小動物数が減少すると、微小動物数が回復(増加)するのに時間がかかり、この間、細菌の捕食が不十分となる。
【0008】
特許文献1,2に記載の微小動物の増殖促進剤は、それなりの効果はあるが、生物処理槽に添加された場合、槽内の細菌により増殖促進剤が分解され、微小動物に行き渡る量が減少し、十分な効果が得られないことがある。
【0009】
本発明は、好気性生物処理により増加した細菌を捕食する微小動物を増殖させて有機性排水を効率よく処理することができる有機性排水の生物処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の要旨は、次の通りである。
【0011】
[1] 有機性排水を好気性生物処理槽に導入して好気性生物処理し、この好気性生物処理槽に濾過捕食型微小動物を存在させる有機性排水の生物処理方法において、
該好気性生物処理槽内の微小動物数が1000個/mL以下のときに、メタン生成細菌を含む嫌気処理汚泥を該好気性生物処理槽に槽容積当り1~500mg-SS/L/dで添加し、微小動物を増殖させることを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【0012】
[2] 前記好気性生物処理槽内の微小動物数が5000個/mL以上となるまで、前記嫌気処理汚泥を添加することを特徴とする[1]の有機性排水の生物処理方法。
【0013】
[3] 前記好気性生物処理槽内の生物処理液を嫌気槽に導入し、該嫌気槽に前記嫌気処理汚泥を添加し、該嫌気槽内の液を前記好気性生物処理槽に戻すことを特徴とする[1]の有機性排水の生物処理方法。
【0014】
[4] 有機性排水を第1好気性生物処理槽に導入して好気性生物処理し、
該第1好気性生物処理槽からの第1生物処理水を第2好気性生物処理槽に導入して好気性生物処理し、該第2好気性生物処理槽に濾過捕食型微小動物を存在させる有機性排水の生物処理方法において、
該第2好気性生物処理槽内の微小動物数が1000個/mL以下のときに、メタン生成細菌を含む嫌気処理汚泥を1~500mg-SS/L/dで該第2好気性生物処理槽に添加し、微小動物を増殖させることを特徴とする有機性排水の生物処理方法。
【0015】
[5] 前記第2好気性生物処理槽内の微小動物数が5000個/mL以上となるまで、前記嫌気処理汚泥を添加することを特徴とする[4]の有機性排水の生物処理方法。
【0016】
[6] 前記第2生物処理槽への有機物汚泥負荷が0.01~0.05kg-s.BOD/MLVSS/dの範囲にあることを特徴とする[4]の有機性排水の生物処理方法。
【0017】
[7] 前記嫌気処理汚泥がグラニュール汚泥であることを特徴とする[1]~[6]のいずれかの有機性排水の生物処理方法。
【0018】
[8] 前記嫌気処理汚泥が、酸生成槽を別に設けたUASB型嫌気処理由来のグラニュール汚泥であり、1~50mg-SS/L/dで添加されることを特徴とする[7]の有機性排水の生物処理方法。
【0019】
[9] 前記微小動物数がピーク時の50%以下になり減少傾向が継続する場合、微小動物数が1000個/mL超の場合であっても嫌気処理汚泥を添加して減少傾向を止めることを特徴とする[1]~[6]のいずれかの有機性排水の生物処理方法。
【0020】
[10] 前記好気性生物処理が、生物処理槽内の好気処理汚泥を定期的に系外へ引き抜く方式であり、SRTが20-60dの範囲内に収まるように汚泥を引き抜くことを特徴とする[1]~[6]のいずれかの有機性排水の生物処理方法。
【0021】
[11] 前記微小動物がヒルガタワムシ目の微小動物であることを特徴とする[1]~[6]のいずれかの有機性排水の生物処理方法。
【発明の効果】
【0022】
嫌気処理汚泥を好気性生物処理槽に添加すると、微小動物が嫌気処理汚泥を捕食し、嫌気処理汚泥に含まれていたメタン生成細菌が微小動物に定着する。メタン生成細菌は、ビタミンB12を含んでおり、ビタミンB12は微小動物の増殖を促進する作用を有する。そのため、微小動物に定着したメタン生成細菌によって恒常的にビタミンB12が微小動物に供給され、微小動物の増殖が促進される。
【0023】
本発明では、ワムシ(輪虫)類等の微小動物の増殖に効果があるビタミンB12を直接生物処理槽に添加するのではなく、ビタミンB12を生産するメタン生成細菌を含む嫌気処理汚泥を添加し、メタン生成細菌が微小動物の体内に定着することにより、恒常的に輪虫類にビタミンB12が供給される。これにより、微小動物が短期間で増殖する。
【0024】
好気性生物処理槽に添加された嫌気処理汚泥中のメタン生成細菌は、好気性生物処理槽内の細菌によって分解されないので、微小動物が十分な量のビタミンB12を摂取し、増殖が効率よく促進され、有機性排水の処理が効率よく行われるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施の形態に係る有機性排水の生物処理方法を説明するフロー図である。
【
図2】実施の形態に係る有機性排水の生物処理方法を説明するフロー図である。
【
図3】実施の形態に係る有機性排水の生物処理方法を説明するフロー図である。
【
図4】実施の形態に係る有機性排水の生物処理方法を説明するフロー図である。
【
図5】実施の形態に係る有機性排水の生物処理方法を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明で処理対象とする有機性排水としては、生活排水、下水、食品工場やパルプ工場排水、栄養が乏しい電子産業排水、化学排水などが例示されるが、これに限定されない。
【0027】
本発明では、有機性排水を生物処理槽に導入し、好気性生物処理する。本発明の一態様では、生物処理槽内の微小動物の数が1000個/mL以下の場合に、生物処理槽内に嫌気処理汚泥を添加する。
【0028】
微小動物としては、濾過捕食型微小動物、特にヒルガタワムシ等のワムシ類が好適である。
【0029】
生物処理槽内の微小動物の数を測定する方法としては、槽内水をサンプリングして界線入りスライドガラスや血球計数板を用いた検鏡による計数を行う方法が好適である。
【0030】
生物処理槽内の微小動物の数の測定は、定期的に、特に1~30日に、望ましくは1~14日に1回程度の頻度で行うのが好ましい。この微小動物測定値が1000個/mL超、好ましくは5000個/mL以上となるまで嫌気処理汚泥を添加する。
【0031】
嫌気処理汚泥の添加は、連続的に行ってもよく、間欠的に行ってもよい。
【0032】
嫌気処理汚泥としては、食品、飲料等の排水を嫌気性生物処理する嫌気処理槽のグラニュール汚泥が好適であり、特に、酸生成槽を別に設けたUASB型嫌気処理槽のグラニュール汚泥が好適である。
【0033】
酸生成槽を別に設けたUASB型嫌気処理槽のグラニュール汚泥は、メタン生成細菌が高濃度で固形化(凝集)しているため、曝気で分解されることがなく、ワムシに摂取される可能性が高い。また、酸生成槽を別に設けたUASB型嫌気処理槽のグラニュール汚泥は、メタン生成細菌の割合が高いので、生物処理槽内に添加する嫌気処理汚泥として好適である。
【0034】
嫌気処理汚泥の形態は脱水汚泥、濃縮汚泥、膜分離型嫌気処理汚泥のいずれでもよい。
【0035】
嫌気処理汚泥の添加量は、MLSS量として、好気性生物処理槽内の液量1Lに対し1日当り、1~500mg-SS/L/d特に10~100mg-SS/L/d程度が好適である。なお、メタン生成グラニュールを用いる場合は、1~50mg-SS/L/dの割合での添加で足りる。
【0036】
以下、
図1~5を参照して実施の形態について説明する。
【0037】
[実施形態1(
図1)]
図1は実施の形態1のフロー図である。原水は生物処理槽1に導入されて散気管1aからの曝気空気により好気性生物処理される。この生物処理槽1には濾過捕食型微小動物を含む好気性微生物(好気汚泥や活性汚泥とも呼ばれる)が存在する。
【0038】
生物処理槽1内の活性汚泥及び濾過捕食型微小動物を含む液は、沈殿池3に導入され、上澄み液と沈降汚泥とに分離され、上澄み液は処理水として槽外に取り出される。濾過捕食型微小動物を含む沈降汚泥の一部は返送ライン4によって生物処理槽1に返送される。余剰汚泥は系外に排出される。なお、好気性生物処理槽1内の汚泥のSRTが20-60dの範囲内に収まるように、余剰汚泥を定期的に引き抜くことが好ましい。
【0039】
定期的に生物処理槽1内の微小動物数を測定し、微小動物数が1000個/mL以下の場合、微小動物数が1000個/mL超、特に5000個/mL以上となるまで嫌気処理汚泥を生物処理槽1に添加する。
【0040】
[実施形態2(
図2)]
図2は実施の形態2のフロー図である。原水は生物処理槽1Aに導入されて散気管1aからの曝気空気により好気性生物処理される。この生物処理槽1Aには濾過捕食型微小動物を含む好気性微生物が存在する。
【0041】
図2の生物処理槽1Aでは、流動床担体1cが充填されており、活性汚泥が担体1cに付着している。散気管1aからの曝気空気により、担体1cが流動する。
【0042】
生物処理槽1Aに添加する担体1cは、球状、ペレット状、中空筒状、糸状、板状の任意であり、大きさは0.1~10mm程度の平均径であることが好ましい。材料は天然素材、無機素材、高分子素材等任意で、ゲル状物質を用いても良い。特に好ましいのは、3~10mm角程度の立方体よりなるポリウレタンスポンジ担体であり、有用な微生物(細菌や体長1mm以下の微小動物)の定着のしやすさの観点から、セル数30個/25mm以上、比表面積2000m2/m3以上、空隙率95%以上が望ましく、高濃度に微生物が定着した場合でも担体の流動性維持できる密度20~60kg/m3、過度の担体の変形による付着微生物の剥離を防ぐため、体積膨張率は100~120%程度のものを選定することが望ましい。担体1cを充填することにより、生物処理槽1のBOD容積負荷を1kg/m3/d以上に大きくすることができる。なお、流動床担体を用いる代わりに固定床担体を設置してもよい。充填率は5~40%が望ましい。
【0043】
生物処理槽1A内の液は、オーバーフロー堰1bをオーバーフローし、処理水として槽外に取り出される。なお、処理水の水質が不十分であるときには、凝集・固液分離装置(図示略)にて処理することが好ましい。
【0044】
定期的に生物処理槽1A内の担体中のものも含む微小動物数を測定し、微小動物数が1000個/mL以下の場合、微小動物数が1000個/mL超、特に5000個/mL以上となるまで嫌気処理汚泥を生物処理槽1Aに添加する。
【0045】
[実施形態3(
図3)]
図3は、分散菌槽→微小動物槽(一過式の2段好気処理)による食物連鎖を利用した汚泥減容型の好気処理を行うものである。
【0046】
図3では、
図1の沈殿池3の代わりに好気性の第2生物処理槽2が設置されている。第2生物処理槽2内には浸漬型の分離膜2bが設置され、その下方に散気管2aが設置されている。分離膜としては、MF膜やUF膜などが好適である。なお、第二生物処理槽を設けず槽外膜としても良い。
【0047】
原水は、
図1の生物処理方法と同様に、生物処理槽1(第1生物処理槽)に供給され、好気性生物処理が行われる。第1生物処理槽1からの第1生物処理水が第2生物処理槽2に導入され、更に好気性生物処理される。処理水は、分離膜2bを透過し、取り出される。第2生物処理槽2の底部から抜き出された汚泥の一部は第1生物処理槽1に返送され、残部は余剰汚泥として排出される。
【0048】
定期的に生物処理槽1内の微小動物数を測定し、微小動物数が1000個/mL以下の場合、微小動物数が1000個/mL超、特に5000個/mL以上となるまで嫌気処理汚泥を生物処理槽1に添加する。
【0049】
[実施形態4(
図4)]
図4も、分散菌槽→微小動物槽(一過式の2段好気処理)による食物連鎖を利用した汚泥減容型の好気処理を行うものである。
【0050】
図4の第1生物処理槽1Aの構成は、
図2の生物処理槽1Aの構成と同じである。
図4では、第1生物処理槽1Aの第1生物処理水を第2生物処理槽2Aに導入し、好気性生物処理を行う。第2生物処理槽2Aには分離膜2bは設置されていない。
【0051】
第2生物処理槽2Aからの第2生物処理水が沈殿池3に導入され、上澄水が処理水として取り出される。沈降した汚泥の一部はライン4によって第2生物処理槽2Aに返送され、残部は余剰汚泥として排出される。
【0052】
第2生物処理槽2Aに流動床担体1cが充填されてもよく、また固定床担体が設置されてもよい。
【0053】
なお、沈澱池分離方式、膜分離方式を採用する際は、汚泥の良好な固液分離性を維持するため、第2生物処理槽2Aへの有機物汚泥負荷は、0.01~0.05kg-s.BOD/MLVSS/d(あるいは、0.01~0.05kg-s.TOC/MLVSS/d、0.02~0.10kg-s.CODCr/MLVSS/d)、望ましくは0.01~0.025kg-s.BOD/MLVSS/d(あるいは、0.01~0.025kg-s.TOC/MLVSS/d、0.02~0.05kg-s.CODCr/MLVSS/d)の範囲にあることが好ましい。
【0054】
定期的に各方式の第2生物処理槽2A内の微小動物数を測定し、微小動物数が1000個/mL以下の場合、微小動物数が1000個/mL超、特に5000個/mL以上となるまで嫌気処理汚泥を第2生物処理槽2Aに添加する。
【0055】
[実施形態5(
図5)]
図5の実施の形態は、
図1の実施の形態において、嫌気槽(無酸素槽)7を設置し、第1生物処理槽1内の生物処理液をライン6によって嫌気槽7に導入し、嫌気槽7内の液をライン8によって第1生物処理槽1に返送するように構成したものである。
【0056】
嫌気槽7には撹拌翼7aが設けられ、常時又は間欠的に槽内を撹拌する。
【0057】
図5のその他の構成は
図1と同じであり、同一符号は同一部分を示している。
【0058】
嫌気槽7の容積は第1生物処理槽1の1/10以下1/2000以上、特に1/100以下1/1000以上が好ましい。嫌気槽7のHRTが30min~12hとなるように生物処理槽1との間の液循環量を調整するのが好ましい。
【0059】
定期的に生物処理槽1内の微小動物数を測定し、微小動物数が1000個/mL以下の場合、微小動物数が1000個/mL超、特に5000個/mL以上となるまで嫌気槽7に嫌気処理汚泥を添加する。嫌気槽7に嫌気処理汚泥を添加することにより、嫌気汚泥に含まれるメタン生成細菌が好気処理で分解されないようにすることができる。
【0060】
本発明における好気生物処理は、活性汚泥など微生物群にワムシ類が含まれる場合に特に良い効果が得られるので、
図1のような一般的な活性汚泥処理、
図2のような流動床担体による好気生物処理、
図3のような膜式活性汚泥処理が好適である。
【0061】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0062】
例えば、
図4,5において、固液分離手段は沈澱池に限定されず、
図2の第2生物処理槽2Aのようにオーバーフロー堰1bを設けるとともに流動床担体1cを充填して流動床方式としてもよいし、
図3の第2生物処理槽2Aのように分離膜2bを設置して膜分離方式としてもよい。
【0063】
また、
図5において、撹拌手段は撹拌翼7aに限定されず、ポンプ等による循環方式でも良い。
【0064】
本発明では、微小動物数がピーク時の50%以下になり減少傾向が継続する場合には、微小動物数が1000個/mLよりも多い場合でも、減少傾向が止まるまで嫌気処理汚泥を添加するようにしてもよい。
【実施例0065】
[実施例1]
<実験条件>
図4に示されるフローを有し、容量が36Lの第1生物処理槽1Aと、容量が150Lの第2生物処理槽2Aと、沈殿池3とを備え、返送汚泥を第2生物処理槽2Aに返送するようにした試験装置を用いて、下記条件により有機性排水の処理を行った。担体としては、3~10mm角程度の立方体よりなるポリウレタンスポンジ担体を用いた。
【0066】
この有機性排水は、CODCr:1000mg/L,BOD:640mg/Lの人工基質(易分解性の糖質排水)を含むものである。
【0067】
<第1生物処理槽>
DO:0.5mg/L
担体充填率:5%
BOD容積負荷:3.85kg-BOD/m3/d
HRT:4h
pH:7.0
【0068】
<第2生物処理槽>
DO:4mg/L
担体充填率:2%
HRT:17h
SRT:30日
pH:7.0
【0069】
装置全体でのBOD容積負荷は0.73kg-BOD/m3/dであり、装置全体でのHRTは21hであった。第2生物処理槽2Aへの有機物汚泥負荷は0.03kg-s.BOD/kg-MLVSS/d(0.025kg-s.TOC/kg-MLVSS/d、0.05kg-s.CODCr/kg-MLVSS/d)であった。
【0070】
試験開始時に、第2生物処理槽2Aに、ヒルガタワムシ数が500個/mLの食品排水処理汚泥を種汚泥として15L添加すると共に、嫌気処理汚泥として飲料水排水を処理する酸生成槽を有するUASB槽の余剰グラニュール(MLSS=50000mg/L)を、200mL(MLSSとして50000mg/L×200mL=10000mg)添加した。
【0071】
試験開始直後の第2生物処理槽2A内の1mL当たりのヒルガタワムシ数は、500個/mL×15L÷150L=50個/mLである。試験開始日1日における嫌気処理汚泥(グラニュール)添加量は、10000mg÷150L=67mg/L/dである。
【0072】
1日に1回の頻度でヒルガタワムシ数を測定し、ヒルガタワムシが5000個/mL以下の場合は上記グラニュールを20mL添加した。ヒルガタワムシ数は5日目に1000個/mL超(1300個/mL)となり、7日目に4000個/mL超(4600個/mL)となった。10日目に5000個/mL超(9000個/mL)となったので、それ以降はグラニュール添加を停止した。試験開始から2週間後には、第2生物処理槽2A内のヒルガタワムシ数が20000個/mLまで増加し、汚泥転換率は0.1kg-SS/kg-CODCrとなった。処理水SSは20mg/L以下で安定していた。
【0073】
[比較例1]
嫌気グラニュールを添加しなかったこと以外は実施例1と同様の条件で運転を行った。その結果、試験開始から2週間後でも第2生物処理槽2A内のヒルガタワムシ数は1000個/mLにとどまり、21日目に5000個/mL超(5300個/mL)となった。4週間後に10000個/mLとなった。
【0074】
4週間後の汚泥転換率は0.12kg-SS/kg-CODCrとなり、処理水SSも20mg/L以下に到達した。しかしながら、試験開始から2週間後の時点では処理水SSは40mg/Lと高い値であった。
【0075】
[実施例2]
試験開始時、及びその後の1日当りのグラニュール添加量を400mLと多くしたこと以外は実施例1と同一条件の試験を行った。
【0076】
その結果、試験開始から3日目にヒルガタワムシ数が1000個/mLを超え、5000個/mLとなったので、グラニュール添加を停止した。
【0077】
試験開始から2週間後のヒルガタワムシ数は30000個/mLであり、汚泥添加率は0.08kg-SS/kg-CODCrとなった。処理水SSは20mg/L以下で安定していた。
【0078】
[比較例2]
試験開始時、及びその後の1日当りのグラニュール添加量を2000mLと過剰に多くしたこと(SS添加量は670mg-SS/L/d)、およびグラニュール添加の停止のタイミング以外は実施例1と同一条件の試験を行った。
【0079】
その結果、試験開始から3日目にヒルガタワムシ数が1000個/mLを超え、5000個/mLとなった。また、3日目にグラニュール添加を停止したが、試験開始から2週間後に凝集体捕食型の微小動物が10000個/mL以上発生し、汚泥転換率は0.07kg-SS/kg-CODCrとなったものの、処理水SSは100mg/L以上となり、良好な処理水質は得られなかった。