(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104212
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】媒体処理装置、画像形成装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B65H 31/36 20060101AFI20240726BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
B65H31/36
G03G15/00 431
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008327
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠田 淳
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 勇介
(72)【発明者】
【氏名】廣野 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】東海枝 秀斗
(72)【発明者】
【氏名】平田 聡
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 真悟
(72)【発明者】
【氏名】藤田 涼香
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直文
(72)【発明者】
【氏名】高山 亮太
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 賢裕
(72)【発明者】
【氏名】森永 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕史
(72)【発明者】
【氏名】野崎 航
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 日奈子
(72)【発明者】
【氏名】山田 淳
【テーマコード(参考)】
2H072
3F054
【Fターム(参考)】
2H072CA01
2H072GA08
2H072HB07
3F054AA01
3F054AC01
3F054BA04
3F054BB14
3F054BH03
3F054BH08
3F054DA01
3F054DA16
(57)【要約】
【課題】シートを積層するトレイの角度に関わらず、シートの自重による整合性を高めることができる媒体処理装置を提供する。
【解決手段】搬送されたシートを積載するシートスタック部と、シートスタック部に積層された複数のシートのうちの最上位面のシートに接触し、当該シートを搬送方向の逆方向に移動させて、複数のシートの搬送方向後端部を整合させる搬送方向整合部材に当接させる戻し部材と、シートの幅方向に駆動する一対の部材からなり、シートスタック部に積層されて搬送方向整合部材において搬送方向後端部を整合されたシートの幅方向の端部を整合させる幅方向整合部材と、を備え、幅方向整合部材は、シートの幅方向の中央方向に向けて傾斜している傾斜面と、シートの積層方向と直交しシートの幅方向の端部に当接して整合させる幅方向整合面と、を少なくとも有する、媒体処理装置。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されたシートを積載するシートスタック部と、
前記シートスタック部に積層された複数の前記シートのうちの最上位面のシートに接触し、当該シートを搬送方向の逆方向に移動させて、複数の前記シートの搬送方向後端部を整合させる搬送方向整合部材に当接させる戻し部材と、
前記シートの幅方向に駆動する一対の部材からなり、前記シートスタック部に積層されて前記搬送方向整合部材において前記搬送方向後端部を整合された前記シートの幅方向の端部を整合させる幅方向整合部材と、
を備え、
前記幅方向整合部材は、前記シートの幅方向の中央方向に向けて傾斜している傾斜面と、前記シートの積層方向と直交し前記シートの幅方向の端部に当接して整合させる幅方向整合面と、を少なくとも有する、
ことを特徴とする媒体処理装置。
【請求項2】
前記幅方向整合部材は、新たに排出されたシートが前記シートスタック部に落下するときには、一対の前記傾斜面の端部の間隔が当該シートの幅方向よりも狭い状態に位置する、
請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記戻し部材は、新たに排出されたシートが前記シートスタック部に落下する途中において一対の前記傾斜面に幅方向端部が接触しているときに、当該シートに当接して搬送方向の反対側に移動させる、
請求項2に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記幅方向整合部材は、新たに排出されたシートが前記搬送方向の反対側に移動させられた後に、前記傾斜面が当該シートの幅端部よりも外側に位置するように移動する、
請求項3に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
シートに画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置で画像が形成された複数の前記シートを束ねる請求項1に記載の媒体処理装置と、
を備えることを特徴とする画像形成システム。
【請求項6】
シートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部の排出部に設けられ、当該排出部から排出された前記シートに対して所定の処理を行う媒体処理部と、
を備え、
前記媒体処理部は、請求項1に記載の媒体処理装置である、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体処理装置、画像形成装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の媒体に画像を形成する画像形成システムにおいて、画像形成後の媒体に所定の後処理を施す媒体処理装置が知られている。媒体処理装置において施される後処理には様々な種類があるが、例えば、複数の媒体を束ねて整合させる整合処理や綴じ処理がある。整合処理及び綴じ処理は、処理対象の媒体を一時的に積層して処理を行うために、用紙束を積み上げて保持するための積載トレイを備える。
【0003】
従来の媒体処理装置において、シート束を排出する排出トレイに関し、シートの整合性の向上を図る目的で、後処理(綴じ処理)でシートを積層し整合するために、排出トレイに角度を付けることで媒体の自重による整合を行う構成が知られている(特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている構成のようにシートの自重を利用して整合を行う場合、排出トレイの角度をある程度の大きさにしなければ、自重により、多様な種類のシートの整合を図ることは困難である。しかしながら、排出トレイの角度を大きくするには、排出トレイの配置位置における上下の空間を大きく確保する必要があり装置が大型になる。又は、排出トレイの角度を確保可能なように別装置に設けるなどの対応を要する。
【0005】
一方、積層されるシートに対して端部突き当て部材に向かうように付勢するためには、シートに外力を加えるとよいが、特に、コシの弱いシートの場合には、外力の影響によって湾曲して乱れることがある。また、摩擦係数が高いシートの場合には、十分に突き当てるには外力を強める必要があり、シートに傷をつけることも懸念される。
【0006】
すなわち、従来技術では、排出トレイの設置位置における上下方向の空間に制限がある場合や、多様な媒体を積層して整合する場合において整合性を向上させるには課題があった。言い換えると、従来技術では、排出トレイの角度に限定されることなく自重による整合性の向上を図るには課題があった。
【0007】
本発明は、シートを積層するトレイの角度に関わらず、シートの自重による整合性を高めることができる媒体処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一態様は、媒体処理装置に関し、搬送されたシートを積載するシートスタック部と、前記シートスタック部に積層された複数の前記シートのうちの最上位面のシートに接触し、当該シートを搬送方向の逆方向に移動させて、複数の前記シートの搬送方向後端部を整合させる搬送方向整合部材に当接させる戻し部材と、前記シートの幅方向に駆動する一対の部材からなり、前記シートスタック部に積層されて前記搬送方向整合部材において前記搬送方向後端部を整合された前記シートの幅方向の端部を整合させる幅方向整合部材と、を備え、前記幅方向整合部材は、前記シートの幅方向の中央方向に向けて傾斜している傾斜面と、前記シートの積層方向と直交し前記シートの幅方向の端部に当接して整合させる幅方向整合面と、を少なくとも有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シートを積層するトレイの角度に関わらず、シートの自重による整合の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】後処理ユニットにおけるステープルモードの動作の流れを例示する図。
【
図6】後処理ユニットにおけるステープルモードの動作の流れを例示する図。
【
図7】後処理ユニットにおけるステープルモードの動作の流れを例示する図。
【
図8】後処理ユニットにおけるステープルモードの動作の流れを例示する図。
【
図9】後処理ユニットにおけるステープルモードの動作の流れを例示する図。
【
図10】後処理ユニットにおけるステープルモードの動作の流れを例示する図。
【
図11】後処理ユニットにおける整合処理の流れを説明する図。
【
図12】後処理ユニットにおける整合処理の流れを説明する図。
【
図13】後処理ユニットにおける整合処理の流れを説明する図。
【
図14】後処理ユニットにおける整合処理の流れを説明する図。
【
図15】後処理ユニットにおける整合処理の流れを説明する図。
【
図16】後処理ユニットにおける整合処理フローを示すフローチャート。
【
図17】後処理ユニットが備えるジョガーフェンスの実施形態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[画像形成装置の実施形態]
以下、本発明に係る画像形成装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の例を示す外観図である。
図1に示すように、画像形成装置10は、シート状の媒体としての用紙Pに画像を形成する装置であって、筐体11と、画像形成部12とを備える。
【0012】
筐体11は、画像形成装置10の構成部品を収容する内部空間を形成する箱状の部材である。また、筐体11には、画像形成装置10の外部からアクセス可能な胴内空間13が形成されている。胴内空間13は、例えば、筐体11の上下方向の中央よりやや上方に位置している。また、胴内空間13は、筐体11の外側壁が切り欠かれて、外部に露出されている空間であって、
図1に示すように、排出トレイ32に排出された用紙Pや用紙束Pbをユーザが取り出すときのアクセス経路が開放された構造になっていて、かつ、上下方向の空間が、筐体11の大きさによって制限されるような意匠になっている。
【0013】
画像形成装置10は、上下方向の空間が制限される構成である胴内空間13において、媒体処理装置(媒体処理部)としての後処理ユニット100が取り付け可能になっている。後処理ユニット100は、画像形成部12において画像が形成された用紙Pが筐体11から排出される排出口(排出部)。に取り付け可能な処理ユニットであって、用紙Pに対して所定の後処理を施す機能を備える。例えば、後処理ユニット100は、排出口から搬送された用紙Pを順次積層して、複数の用紙Pからなる用紙束Pbを形成し、端部に綴じ処理をする綴じ処理機能を備える。後処理ユニット100の詳細な説明は後述する。
【0014】
画像形成部12は、トレイに収容された用紙Pに画像を形成し、画像を形成した用紙Pを、後処理ユニット100に排出する。画像形成部12は、液体インクを用紙Pに付着させて用いて画像を形成するインクジェット方式でもよいし、トナーを用紙Pに付着させて画像を形成する電子写真方式でもよい。画像形成部12の構成は既に周知なので、詳細な説明は省略する。なお、後処理ユニット100は、いずれも筐体11に対して着脱自在な構成になっている。
【0015】
[画像形成装置10の機能ブロック]
次に、画像形成装置10の処理機能を実現するための機能ブロック構成について
図2を用いて説明する。
【0016】
図2において用紙Pの搬送経路は破線で示し、制御信号の流れは一点鎖線で示している。画像形成装置10は既知の電子写真プロセスにより用紙Pに画像を形成する装置であって、表示部14、操作部15、給紙部111、作像部112、定着部113、制御部500を有する。
【0017】
表示部14は、ユーザに画像形成装置10や後処理ユニット100の状態や操作内容を知らせるための出力をする。操作部15は、画像形成装置10や後処理ユニット100の動作モードや、綴じ処理によって形成する用紙束Pbの部数などをユーザが設定する操作を受け付けるユーザインターフェースに相当する。給紙部111は、用紙Pをストックし一枚毎に分離給送する。作像部112は、詳細な図示を省略してあるが、感光体に潜像を形成し用紙へ画像を転写させる。定着部113は、用紙Pに転写された画像を定着させる。そして、制御部500は、上記の各機能ブロックの動作を制御する。
【0018】
後処理ユニット100は、画像形成装置10の制御部500から通信ライン152を通じてユニット制御部180に処理の指示がされ、ユニット処理部190にて指定された用紙Pに指定された処理を行う。
【0019】
各連結されたユニット制御部180と制御部150は、通信ライン152を介して制御信号や制御に用いられる情報の相互通信が可能になっている。これらにより、動作モードに関する情報、用紙のサイズに関する情報、動作タイミングに関する情報等がやり取りされてシステム全体での動作が可能となっている。
【0020】
図3は、画像形成装置10の制御ブロックのハードウェア構成図である。後処理ユニット100はオプション装置であるため着脱が可能であり、オプション装置のI/F部分は例えば中継コネクタやドロアコネクタによりハード的に着脱が可能な構成となっている。
【0021】
図3に示すように、画像形成部12側の制御部500と、ユニット制御部180は、通信ライン152によって接続されている。ユニット制御部180は、主に、CPU(Central Processing Unit)181とI/F182を含むが、これら以外にも、周知のRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)により構成される記憶部などを備えていて、記憶部に格納されている制御プログラムをCPU181において実行して、処理機能を実現する。
【0022】
CPU181は、I/F182を介してユニット処理部190に対して制御信号を出力する。ユニット処理部190には、例えば、搬送モータ191、排紙モータ192、ステープル駆動モータ193,手前ジョガーフェンス移動モータ194、奥ジョガーフェンス移動モータ195、搬送センサ196、排紙センサ197、ステープル移動HPセンサ198が含まれる。これらは、I/F182を介してCPU181と接続されていて、CPU181において制御プログラムが実行された結果として出力される制御信号に基づいて動作が制御される。
【0023】
なお、ユニット制御部180及びユニット処理部190は、公知の機能ブロック及び制御ブロックのハードウェアにより構成されているものに相当するので、詳細な説明を省略する。
【0024】
[後処理ユニット100の内部構成]
次に、
図4を用いて後処理ユニット100の内部構成の第一例を説明する。後処理ユニット100は、画像形成部12によって画像が形成された用紙束Pbを綴じる綴じ処理(後処理)を施す。本実施形態では、後処理部の一例として後処理ユニット100を説明するが、後処理部(後処理)の具体例はこれに限定されない。
図4に示すように、後処理ユニット100は、ユニット筐体101と、排出トレイ32と、複数の搬送ローラ対102、103、104、105と、内部トレイ121と、叩きコロ122と、戻しコロ130と、エンドフェンス131と、
図4においては図示を省略しているジョガーフェンス141(
図17参照)と、綴じ処理部160とを備える。
【0025】
ユニット筐体101は、後処理ユニット100の構成部品を収容する内部空間が形成された箱状の部材である。また、ユニット筐体101の内部空間には、用紙束Pbが通過する空間である搬送路Ph3が形成されている。排出トレイ32は、ユニット筐体101の外側面に支持されている。排出トレイ32は、搬送ローラ対102~105によって搬送された用紙P及び用紙束Pbを支持する。
【0026】
搬送ローラ対102~105は、搬送路Ph3上に所定の間隔を隔てて配置されている。入口ローラとしての搬送ローラ対102から搬入された用紙Pは、搬送路Ph3に沿って搬送されてシフトローラとしての搬送ローラ対104や、排出ローラとして搬送ローラ対によって所定の搬送方向へと搬送される。
【0027】
排出ローラとしての搬送ローラ対105は、駆動ローラ105aと、駆動ローラ105aに接離可能な従動ローラ105bとで構成される。また、シフトローラとしての搬送ローラ対104は、用紙Pの排出位置を幅方向にずらす動作に用いられる。用紙Pの幅方向の位置を所定の枚数ごとにシフトさせて排出トレイ32に排出することでソート処理を実現する。なお、ソート処理は、所定の枚数ごとに排出トレイ32の位置をずらすことで実現されてもよい。
【0028】
シートスタック部としての内部トレイ121は、搬送路Ph3上を搬送される用紙Pを一時的に支持(積載)して用紙束Pbを形成するために用いられる積載トレイに相当する。叩きコロ122及び戻しコロ130は、内部トレイ121の上方において、回動アームの先端に支持されている。叩きコロ122は、搬送ローラ対105に挟持された用紙束Pbの上面に当接して回転することによって、用紙Pを内部トレイ121に搬入するための当接ローラである。
【0029】
戻し部材としての戻しコロ130は、内部トレイ121に搬入された用紙Pの上面に当接して回転することによって、用紙Pをエンドフェンス131に向けて案内する当接ローラである。叩きコロ122と戻しコロ130によって、用紙Pは排出ローラとしての搬送ローラ対105まで搬送されてきた方向と逆方向に搬送される。すなわち、叩きコロ122と戻しコロ130によって、用紙Pの搬送方向はスイッチバックして、内部トレイ121へと向かうようになる。
【0030】
搬送方向整合部材としてのエンドフェンス131は、手前側エンドフェンス131Lと奥側エンドフェンス131Rから構成されていて、内部トレイ121に支持された用紙Pの搬送方向の下流側の端部(後端部)に当接する位置に配置されている。
【0031】
叩きコロ122と戻しコロ130によってスイッチバック搬送された用紙Pは、手前側エンドフェンス131Lと奥側エンドフェンス131Rに搬送方向端部が突き当てられて、整合される。なお、内部トレイ121は、エンドフェンス131に向かって下り傾斜面を形成している。
【0032】
内部トレイ121において、搬送方向端部が整合された複数の用紙Pの幅方向の整合は、
図4においては図示を省略している幅方向整合部材としてのジョガーフェンス141によって行われる。ジョガーフェンス141は、内部トレイ121に支持された複数の用紙Pの積載物としての用紙束Pbの幅方向の両端部に当接して、用紙束Pbの幅方向の位置を揃える機能を有する。
【0033】
また、ジョガーフェンス141は、用紙Pの後端部が、シフトローラとしての搬送ローラ対104を抜けるまで搬送された後に、内部トレイ121へと落下する用紙Pの幅端部を支持する幅端部支持部と、内部トレイ121に一部が落下した状態の用紙Pの幅方向の端部を整合させる幅端部整合部と、を少なくとも有する。幅端部支持部は、内部トレイ121へと落下する用紙Pの幅方向端部を含む一部分を支持する傾斜面によって構成されていて、用紙P全体が、搬送方向端部の整合を終わるまでに内部トレイ121に落下しきってしまうことを抑制する効果を奏する。
【0034】
すなわち、ジョガーフェンス141は、搬送ローラ対104を抜けて内部トレイ121へと落下を始める用紙Pの幅方向端部を含む部分を、内部トレイ121の中央方向に向けた下り傾斜を形成している傾斜面で支持する。そして、ジョガーフェンス141は、用紙Pのその他の部分を(主に用紙Pの幅方向中央部分)、内部トレイ121の積載面または内部トレイ121にすでに載置されている他の用紙Pに接する状態で支持する。このように支持することで、用紙Pが内部トレイ121に落下し終わるまでの一部分を、浮かせた状態で支持し、搬送方向端部の整合を容易に行える状態を維持する。なお、ジョガーフェンス141の詳細は後述する。
【0035】
綴じ処理部160は、内部トレイ121に支持された用紙束Pbを綴じる綴じ処理を実行する。綴じ処理部160が実行する綴じ処理は、用紙束Pbに綴じ針を貫通させて綴じる針綴じ処理でもよいし、用紙束Pbを加圧変形させて綴じる圧着綴じ処理でもよい。また、後処理ユニット100は、幅方向に離間した位置で互いに独立して動作可能な、針綴じ処理を実行する針綴じ処理部と、圧着処理を実行する圧着綴じ処理部とを備えていてもよい。
【0036】
また、ユニット筐体101の綴じ処理部160に対面する位置には、マニュアルステープル用スリットが設けられていてもよい。そして、ユーザは、マニュアルステープル用スリットを通じて用紙束Pbを綴じ処理部160に挿入して、後述する操作パネル110のマニュアルステープルボタン押下することによって、綴じ処理部160に綴じ処理を実行させることができるように構成されていてもよい。
【0037】
[後処理ユニット100の動作モード]
後処理ユニット100には、複数の動作モードがある。たとえば、搬送ローラ対102から搬入された用紙Pを、搬送路Ph3を通過させて排出トレイ32へと搬出する排紙モードがある。また、搬送ローラ対102から搬入された用紙Pを、内部トレイ121に一時的に搬送し積載して、整合処理を行って、綴じ処理などを行うステープルモードがある。本実施形態では主にステープルモードについて説明する。
【0038】
[ステープルモードの動作例]
次に、後処理ユニット100の動作モードがステープルモードの場合、
図5に例示するように、画像形成部12から搬送されてきた用紙Pを入口搬送ローラ対としての搬送ローラ対102によって後処理ユニット100の内部の搬送路Ph3に受け入れる。
【0039】
続いて、
図6に示すように、従動ローラ105bを圧解除位置のままにして、用紙Pを内部トレイ121に向けて搬送可能な状態にする。
【0040】
続いて、
図7に示すように、後端部が搬送ローラ対104を用紙Pの抜けたタイミングで、叩きコロ122を回動させる。これによって、用紙Pの後端部が内部トレイ121側へ移動する。この叩きコロ122の動作のように、用紙Pを下方に向けて叩いて後端部の位置を変更した状態で、用紙Pはエンドフェンス131に向け下り傾斜になっている内部トレイ121の情報に移動する。すなわち、叩きコロ122によって用紙Pの搬送方向はスイッチバックする。
【0041】
続いて、
図8に示すように、用紙Pは、叩きコロ122及び戻しコロ130の動作により、エンドフェンス131に後端部が突き当てられるまで戻される。これによって、内部トレイ121に積層される複数の用紙Pの後端部が整合される。後端部の整合が終わった後、ジョガーフェンス141によって用紙Pを挟み込むようにして、用紙Pの幅方向の端部の整合が行われる。
【0042】
図9に例示するように、用紙束Pbを形成するための用紙Pの枚数が揃うまで、
図5~
図8の処理を繰り返す。これによって、用紙Pを内部トレイ121で重ね合わせて、綴じ処理部160を動作させて、綴じ針を用いた針綴じ処理か、圧着歯を用いた圧着綴じ処理によって用紙束Pbを綴る。このとき、従動ローラ105bはニップ位置に移動する。
【0043】
続いて、
図10に例示するように、綴じ処理が終わった用紙束Pbが排出トレイ32へと排出される。
【0044】
以上説明をしたステープルモードのように、内部トレイ121に向けて用紙Pをスイッチバックさせて、搬送方向端部の整合と、幅方向の整合を図るとき、内部トレイ121の傾斜は戻しコロ130により加えられる外力によって用紙Pがエンドフェンス131に突き当てられることになる。新たに積載される用紙Pをエンドフェンス131に突き当てるとき、内部トレイ121の載置面や、内部トレイ121にすでに積載されている用紙Pの最上位面と、突き当てられる用紙Pは接触する。
【0045】
このような用紙P同士は、摩擦は、新たな用紙Pの後端部の整合においては抵抗力として影響する摩擦を生ずることになる。整合するときに接触しあっている用紙Pを移動させることに抗う力となる摩擦は、なるべく少なくするほうが、用紙Pの種類に関わらず整合が容易に行える。そのためには、内部トレイ121の傾斜角度を大きくすることで、摩擦よりも用紙Pの自重による移動の力を大きく得られるようにするとよいが、筐体11の内部に設置される後処理ユニット100のように、上下方向の空間が制限されている場合、傾斜角度を大きくすることは困難である。一方、エンドフェンス131に用紙Pを向かわせるために最上位の用紙Pに加える外力を強くすると、用紙Pに損傷を与える虞がある。
【0046】
そこで以下の説明のように、後処理ユニット100においては、一対のジョガーフェンス141の形状と、その動作を工夫することにより、用紙P同士の接触を減らし、摩擦が少なくなる状態で端部の整合を行うようにすることで整合性を向上させる。
【0047】
[後処理ユニット100の実施形態]
次に、本発明に係る後処理装置の実施形態について
図11以降を用いて説明する。
図11(a)は、後処理ユニット100を排出口方向に向かって見た図である。
図11(b)は、後処理ユニット100の側面図であって、手前側ジョガーフェンス141Lを省略している図である。
【0048】
図11(a)に示すように、一対のジョガーフェンス141として、手前側ジョガーフェンス141Lと奥側ジョガーフェンス141Rが対向配置されている。これらは、用紙Pの幅方向に対向して配置され、それぞれが傾斜部1411と垂直部1412を有している。
【0049】
垂直部1412は、内部トレイ121の載置面に対する垂直面を有している。この幅方向整合面としての垂直面が用紙Pの積層方向と直交する方向に移動して、用紙Pの幅方向端部に当接することで、用紙束Pbの幅方向の整合を図ることができる。
【0050】
ここで、一対のジョガーフェンス141として、手前側ジョガーフェンス141Lと奥側ジョガーフェンス141Rについて、より詳細に説明する。
図17は、一対のジョガーフェンス141の斜視図である。
図17に示すように、一対のジョガーフェンス141は、同じ形状のものが対向して配置されている。一のジョガーフェンス141が有する幅端部支持部としての傾斜部1411は、内部トレイ121における中央方向(用紙Pの幅方向)における中央方向に向かう下り傾斜面を有している。この下り傾斜面は、一対のジョガーフェンス141の対向する方向に向かう下り傾斜であって、内部トレイ121の幅方向の中央部分に向けて下っているように形成される。
【0051】
対向する傾斜部1411は、用紙Pが内部トレイに落下してきたときに、その中央部分は載置面に垂れ下がって接触するが、幅方向端部は傾斜面で支持される。このときに、内部トレイ121に対して用紙Pが浮いている状態になるような状態になるように、用紙Pが搬送ローラ対104から抜けるときの距離が設定される。言い換えると、傾斜部1411の最下位置は、垂直部1412が有する垂直面より内側にある。また、搬送方向端部の整合が終わった後に、用紙Pを内部トレイ121に落下させるときは、用紙Pの幅寸法よりも長い距離とする。
【0052】
幅端部整合部としての垂直部1412は、内部トレイ121の載置面に対して垂直方向の面からなる。この面が、内部トレイ121に積載された用紙束Pbの幅方向端部に接触することで、幅方向の整合を実行できる。
【0053】
図11に戻る。ジョガーフェンス141は、それぞれ移動モータ142によって、用紙Pの幅方向に移動可能になっている。手前側ジョガーフェンス141Lは、手前ジョガーフェンス移動モータ194によって移動する。奥側ジョガーフェンス141Rは、奥ジョガーフェンス移動モータ195によって移動する。手前ジョガーフェンス移動モータ194と奥ジョガーフェンス移動モータ195は、ユニット制御部180によって動作方向及び動作タイミングが制御される。
【0054】
次に、用紙Pが内部トレイ121に積載されるときの用紙Pとジョガーフェンス141との関係について、さらに詳細に説明する。
図12は、搬送されてきた用紙Pの後端部が搬送ローラ対104を通過した直後の状態を例示している。このとき、新たに内部トレイ121に積層される用紙Pnの搬送方向先頭側(
図12(a)における手前側、
図12(b)におけるY方向側)は、内部トレイ121に向かって落下が進んでいて、搬送方向後端部は、搬送ローラ対104近傍にある。
【0055】
このとき、用紙Pの一部としての搬送方向先頭側であって幅方向端部側は、ジョガーフェンス141の傾斜部1411に接触した状態で落下が抑制されていて、用紙Pの幅方向中央側が傾斜部1411の傾斜に沿って垂れ下がった状態になっている。
【0056】
続いて、
図13に示すように、用紙Pの搬送方向後端部分もジョガーフェンス141の傾斜部1411に落下した状態になると、新たに整合される用紙Pnの幅方向端部分は、ジョガーフェンス141の傾斜部1411によって持ち上げられた状態になる。そして、用紙Pの幅方向中央部分は、内部トレイ121にすでに積載されている用紙Poの最上位面と接触する状態になる。
【0057】
続いて、
図14に示すように、叩きコロ122が、用紙Pnに接触して回転し、エンドフェンス131に向けて用紙Pnを突き当てて、搬送方向端部を整合させる。このとき、用紙Pnは、用紙束Pbの最上位面と全面的に接触しておらず、中央部分の一部分のみが接触している。そして用紙Pnの中央部分以外は中空に浮いているか、ジョガーフェンス141の傾斜部1411に接している状態であるから、内部トレイ121の傾斜角度に関わらず、容易に搬送方向端部の整合を精度よく行うことができる。
【0058】
続いて、搬送方向端部の整合が終わった後、
図15に示すように、手前ジョガーフェンス移動モータ194と奥ジョガーフェンス移動モータ195を駆動し、手前側ジョガーフェンス141Lと奥側ジョガーフェンス141Rを離間する方向に移動させる。すなわち、用紙Pnを支持している傾斜部1411の対向距離を、用紙Pnの幅寸法よりも長い状態にする。これによって、用紙Pnの幅方向端部は、ジョガーフェンス141で支持されていた位置から内部トレイ121へと落下する。
【0059】
用紙Pnが内部トレイ121に落下して用紙束Pbの一部として記載された状態で、再度、手前ジョガーフェンス移動モータ194と奥ジョガーフェンス移動モータ195を駆動して、手前側ジョガーフェンス141Lと奥側ジョガーフェンス141Rを接近する方向に移動させる。この移動は、手前側ジョガーフェンス141Lと奥側ジョガーフェンス141Rのそれぞれの垂直部1412が用紙束Pbの幅方向端部に接触するまで接近させる。なお、叩きコロ122は、手前側ジョガーフェンス141Lと奥側ジョガーフェンス141Rが動作している最中は、元の位置(搬送経路から出てくる用紙Pnと接触しない位置)へ移動してある。
【0060】
手前側ジョガーフェンス141Lと奥側ジョガーフェンス141Rの垂直部1412が、用紙束Pbの幅方向端部に接触する位置と離間する位置の間で、往復移動させることで、用紙幅方向端部の整合をより精度よく行うことができる。
【0061】
以上のように、内部トレイ121に新たに積載される用紙Pnは、すでに積載されている用紙Poに対して一枚ずつ、上から重なっていくことになるので、用紙Pnを新たに積載するときは、まず、幅方向端部を持ち上げた状態で内部トレイ121の上空に受け入れる。そして、幅方向端部がジョガーフェンス141によって持ち上げられた状態で搬送方向端部の整合を行う。その後、用紙Pnを内部トレイ121に落下させてから、幅方向端部の整合を行う。
【0062】
上記のように用紙Pの積載と整合を行うことで、用紙間の摩擦を最小限にしつつ、精度よい整合処理を行うことができる。
【0063】
[処理フロー]
次に、ユニット制御部180において実行される用紙整合処理の流れについて
図16にフローチャートを用いて説明する。
【0064】
まず、搬送ローラ対104によって用紙Pnが一枚、内部トレイ121に向けて排出される(S1601)。このとき、手前側ジョガーフェンス141Lと奥側ジョガーフェンス141Rは接近していて、傾斜部1411の最も内側は、用紙Pnの幅寸法よりも短い距離で対向している状態であって、落下してくる用紙Pnの幅端部を支持することができる位置にある。
【0065】
続いて、叩きコロ122が回転しながら用紙Pnに接触する位置に回動して下降する(S1602)。叩きコロ122が用紙Pnに接触することで、エンドフェンス131に用紙Pnの搬送方向後端部が突き当てられて、搬送方向の整合が行われる(S1603)。
【0066】
搬送方向整合動作が終了したタイミングで、叩きコロ122は上昇し用紙Pnから離間する(S1604)。続いて、手前側ジョガーフェンス141Lと奥側ジョガーフェンス141Rを離間する方向に移動させて、用紙Pnを内部トレイ121に落下させて、その後、手前側ジョガーフェンス141Lと奥側ジョガーフェンス141Rを接近する方向に移動させる(S1605)。この動作によって、用紙Pnが積層された用紙束Pbの幅方向整合動作が行われる。
【0067】
続いて、用紙束Pbの一部当たりの用紙Pを積層したか否かを判定し(S1606)、次に搬送されてくる用紙Pnが同じ用紙束Pbを構成するものであれば、処理をS1601に戻す(S1606:YES)。次に搬送されてくる用紙Pnが同じ用紙束Pbを構成するものでなければ(S1606:NO)、整合動作は終了し、続けて後処理(たとえば綴じ処理)を実行する(S1607)。
【0068】
以上説明したとおり、本実施形態に係る後処理装置3は、後処理を実施する前の用紙の整合を行う整合部材に特徴と備えている。当該整合部材は、特に幅方向の整合に用いるものであり、搬送されてきた用紙を受け止める部分と、整合した用紙をスタックし整合させる部分の二つの形状を備える。当該形状により、これから整合する用紙とすでに整合されている用紙の接触面積が減少し用紙間摩擦力を小さくできる。これにより小さな搬送力で用紙整合を行うことができ、厚紙の用紙間摩擦力の大きさと薄紙の屈曲しやすさの問題の両方を解決できるという効果を奏する。
【0069】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【0070】
本発明の内容は、例えば、以下のとおりである。
<1> 搬送されたシートを積載するシートスタック部と、
前記シートスタック部に積層された複数の前記シートのうちの最上位面のシートに接触し、当該シートを搬送方向の逆方向に移動させて、複数の前記シートの搬送方向後端部を整合させる搬送方向整合部材に当接させる戻し部材と、
前記シートの幅方向に駆動する一対の部材からなり、前記シートスタック部に積層されて前記搬送方向整合部材において前記搬送方向後端部を整合された前記シートの幅方向の端部を整合させる幅方向整合部材と、
を備え、
前記幅方向整合部材は、前記シートの幅方向の中央方向に向けて傾斜している傾斜面と、前記シートの積層方向と直交し前記シートの幅方向の端部に当接して整合させる幅方向整合面と、を少なくとも有する、ことを特徴とする媒体処理装置である。
<2> 前記幅方向整合部材は、新たに排出されたシートが前記シートスタック部に落下するときには、一対の前記傾斜面の端部の間隔が当該シートの幅方向よりも狭い状態に位置する、前記<1>に記載の媒体処理装置である。
<3> 前記戻し部材は、新たに排出されたシートが前記シートスタック部に落下する途中において一対の前記傾斜面に幅方向端部が接触しているときに、当該シートに当接して搬送方向の反対側に移動させる、前記<2>に記載の媒体処理装置である。
<4> 前記幅方向整合部材は、新たに排出されたシートが前記搬送方向の反対側に移動させられた後に、前記傾斜面が当該シートの幅端部よりも外側に位置するように移動する、前記<3>に記載の媒体処理装置である。
<5> シートに画像を形成する画像形成装置と、
前記画像形成装置で画像が形成された複数の前記シートを束ねる前記<1>乃至前記<4>のいずれか一項に記載の媒体処理装置と、を備えることを特徴とする画像形成システムである。
<6> シートに画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部の排出部に設けられ、当該排出部から排出された前記シートに対して所定の処理を行う媒体処理部と、を備え、
前記媒体処理部は、前記<1>乃至前記<4>に記載の媒体処理装置である、ことを特徴とする画像形成装置である。
【符号の説明】
【0071】
3 :後処理装置
10 :画像形成装置
100 :後処理ユニット
121 :内部トレイ
122 :コロ
130 :戻しコロ
131 :エンドフェンス
131L :手前側エンドフェンス
131R :奥側エンドフェンス
141 :ジョガーフェンス
141L :手前側ジョガーフェンス
141R :奥側ジョガーフェンス
142 :移動モータ
150 :制御部
180 :ユニット制御部
190 :ユニット処理部
500 :制御部
1411 :傾斜部
1412 :垂直部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】