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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104240
(43)【公開日】2024-08-02
(54)【発明の名称】廃棄物処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/40 20220101AFI20240726BHJP
【FI】
B09B3/40 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008376
(22)【出願日】2023-01-23
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】中山 栄希
(72)【発明者】
【氏名】酒井 和也
(72)【発明者】
【氏名】讃井 香純
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA16
4D004AB06
4D004BA06
4D004CA12
4D004CA24
4D004CA27
4D004CB31
4D004CB32
4D004CB44
4D004DA02
4D004DA03
4D004DA06
4D004DA07
(57)【要約】
【課題】エネルギー効率に優れ、装置の寿命、安全性及び運転コストにも優れる廃棄物処理装置及び方法を提供する。
【解決手段】ハロゲン化物を含む廃棄物5を収容する本体容器3と、本体容器3に収容された廃棄物5に対する第1段階の加熱と第1段階よりも高温での第2段階の加熱とが可能な加熱部4とを有する反応器2を有し、本体容器3は、本体容器3に同伴ガスを流入させる同伴ガス流入部6と、第1段階の加熱により廃棄物5から発生する水素化物ガスを同伴ガスとともに本体容器3から流出させる水素化物ガス流出部7と、水素化物ガス流出部7とは別に設けられ、第2段階の加熱により廃棄物5から発生するハロゲン化物ガスを同伴ガスとともに本体容器3から流出させるハロゲン化物ガス流出部8とを有する、廃棄物処理装置1。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化物を含む廃棄物を収容する本体容器と、前記本体容器に収容された前記廃棄物に対する第1段階の加熱と前記第1段階よりも高温での第2段階の加熱とが可能な加熱部とを有する反応器を有し、
前記本体容器は、前記本体容器に同伴ガスを流入させる同伴ガス流入部と、前記第1段階の加熱により前記廃棄物から発生する水素化物ガスを前記同伴ガスとともに前記本体容器から流出させる水素化物ガス流出部と、前記水素化物ガス流出部とは別に設けられ、前記第2段階の加熱により前記廃棄物から発生するハロゲン化物ガスを前記同伴ガスとともに前記本体容器から流出させるハロゲン化物ガス流出部とを有する、廃棄物処理装置。
【請求項2】
前記同伴ガス流入部は同伴ガス流入口を有し、
前記ハロゲン化物ガス流出部はハロゲン化物ガス流出口を有し、
前記水素化物ガス流出部は、前記本体容器の長手方向において前記同伴ガス流入口と前記ハロゲン化物ガス流出口の間に設けられる水素化物ガス流出口を有する、請求項1に記載の廃棄物処理装置。
【請求項3】
前記同伴ガス流入部は、前記本体容器の前記長手方向において前記水素化物ガス流出口から見て前記同伴ガス流入口の反対側に設けられる他の同伴ガス流入口を有し、
前記水素化物ガス流出部は、前記第1段階の加熱により前記廃棄物から発生する水素化物ガスを、少なくとも前記他の同伴ガス流入口から流入した前記同伴ガスとともに前記本体容器から流出させる、請求項2に記載の廃棄物処理装置。
【請求項4】
前記水素化物ガス流出部は、前記第1段階の加熱により前記廃棄物から発生する水素化物ガスを、前記同伴ガス流入口と前記他の同伴ガス流入口のそれぞれから流入した前記同伴ガスとともに前記本体容器から流出させる、請求項3に記載の廃棄物処理装置。
【請求項5】
前記本体容器は、前記本体容器の前記長手方向において前記廃棄物を収容する廃棄物収容部と前記同伴ガス流入口との間でガス流路を絞る絞り部と、前記本体容器の前記長手方向において前記廃棄物収容部と前記他の同伴ガス流入口との間でガス流路を絞る他の絞り部とを有する、請求項4に記載の廃棄物処理装置。
【請求項6】
前記ハロゲン化物はホウフッ化物を含み、前記ハロゲン化物ガスはフッ化ホウ素ガスを含む、請求項1に記載の廃棄物処理装置。
【請求項7】
前記ホウフッ化物は、NaBF4、LiBF4、KBF4のうちの1種類以上を含む、請求項6に記載の廃棄物処理装置。
【請求項8】
前記第1段階の加熱は前記廃棄物を50~450℃に加熱し、
前記第2段階の加熱は前記廃棄物を450~650℃に加熱する、請求項6に記載の廃棄物処理装置。
【請求項9】
前記加熱部は、前記本体容器の外周部に配置される抵抗加熱器によって構成される、請求項1に記載の廃棄物処理装置。
【請求項10】
前記ハロゲン化物ガス流出部から流出する前記ハロゲン化物ガスと前記同伴ガスから不純物を分離する不純物分離部と、
前記不純物分離部を通った前記ハロゲン化物ガスと前記同伴ガスとを分離する同伴ガス分離部とを有する、請求項1に記載の廃棄物処理装置。
【請求項11】
前記ハロゲン化物ガス流出部と前記同伴ガス分離部との間の圧力を制御する圧力制御部を有する、請求項10に記載の廃棄物処理装置。
【請求項12】
前記同伴ガス流入部に前記同伴ガスを流入させるガスバッファー部と、
前記同伴ガス分離部から前記同伴ガスを前記ガスバッファー部に送る同伴ガス移送部とを有する、請求項10に記載の廃棄物処理装置。
【請求項13】
前記廃棄物を前記本体容器に収容し、前記同伴ガス流入部から前記同伴ガスを流入させながら前記加熱部により前記第1段階の加熱を行うことで、前記廃棄物から発生する前記水素化物ガスを前記同伴ガスとともに前記水素化物ガス流出部から流出させる第1段階加熱工程と、
前記第1段階加熱工程の後に、前記同伴ガス流入部から前記同伴ガスを流入させながら前記加熱部により前記第2段階の加熱を行うことで、前記廃棄物から発生する前記ハロゲン化物ガスを前記同伴ガスとともに前記ハロゲン化物ガス流出部から流出させる第2段階加熱工程とを有する、請求項1~12の何れか1項に記載の廃棄物処理装置を用いる廃棄物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物は加熱分解、燃焼分解、加水分解、化学分解、生物分解、超臨界分解、プラズマ分解などの処理によって無害化される。なかでも、ホウフッ化物などのハロゲン化物を含む廃棄物は分解が難しい。
【0003】
ハロゲン化物を含む廃棄物は、加水処理後に中和し、加熱、乾燥することで無害な固体廃棄物とすることができる。しかし、中和反応や、中和反応後の反応液の処理自体にも多くのエネルギーを要することから、エネルギー効率の点で環境負荷が高い。
【0004】
ハロゲン化物を含む廃棄物を加熱し、熱分解又は燃焼により無害化することもできる(例えば特許文献1~2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-209314号公報
【特許文献2】特開2000-144143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし加熱時に、ハロゲン化物から発生する水性、有機性などの水素化物ガスに、ハロゲン化物から発生するハロゲン化物ガスが吸収されると、腐食性が強いハロゲン化水素が発生する場合がある。ハロゲン化水素が装置内に滞在すると、装置の寿命、部品交換時などの安全性、運転コストなどに大きく影響するため、望ましくない。
【0007】
そこで本発明の目的は、エネルギー効率に優れ、装置の寿命、安全性及び運転コストにも優れる廃棄物処理装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は以下のとおりである。
【0009】
[1]
ハロゲン化物を含む廃棄物を収容する本体容器と、前記本体容器に収容された前記廃棄物に対する第1段階の加熱と前記第1段階よりも高温での第2段階の加熱とが可能な加熱部とを有する反応器を有し、
前記本体容器は、前記本体容器に同伴ガスを流入させる同伴ガス流入部と、前記第1段階の加熱により前記廃棄物から発生する水素化物ガスを前記同伴ガスとともに前記本体容器から流出させる水素化物ガス流出部と、前記水素化物ガス流出部とは別に設けられ、前記第2段階の加熱により前記廃棄物から発生するハロゲン化物ガスを前記同伴ガスとともに前記本体容器から流出させるハロゲン化物ガス流出部とを有する、廃棄物処理装置。
【0010】
[2]
前記同伴ガス流入部は同伴ガス流入口を有し、
前記ハロゲン化物ガス流出部はハロゲン化物ガス流出口を有し、
前記水素化物ガス流出部は、前記本体容器の長手方向において前記同伴ガス流入口と前記ハロゲン化物ガス流出口の間に設けられる水素化物ガス流出口を有する、[1]に記載の廃棄物処理装置。
【0011】
[3]
前記同伴ガス流入部は、前記本体容器の前記長手方向において前記水素化物ガス流出口から見て前記同伴ガス流入口の反対側に設けられる他の同伴ガス流入口を有し、
前記水素化物ガス流出部は、前記第1段階の加熱により前記廃棄物から発生する水素化物ガスを、少なくとも前記他の同伴ガス流入口から流入した前記同伴ガスとともに前記本体容器から流出させる、[2]に記載の廃棄物処理装置。
【0012】
[4]
前記水素化物ガス流出部は、前記第1段階の加熱により前記廃棄物から発生する水素化物ガスを、前記同伴ガス流入口と前記他の同伴ガス流入口のそれぞれから流入した前記同伴ガスとともに前記本体容器から流出させる、[3]に記載の廃棄物処理装置。
【0013】
[5]
前記本体容器は、前記本体容器の前記長手方向において前記廃棄物を収容する廃棄物収容部と前記同伴ガス流入口との間でガス流路を絞る絞り部と、前記本体容器の前記長手方向において前記廃棄物収容部と前記他の同伴ガス流入口との間でガス流路を絞る他の絞り部とを有する、[4]に記載の廃棄物処理装置。
【0014】
[6]
前記ハロゲン化物はホウフッ化物を含み、前記ハロゲン化物ガスはフッ化ホウ素ガスを含む、[1]~[5]の何れか1項に記載の廃棄物処理装置。
【0015】
[7]
前記ホウフッ化物は、NaBF4、LiBF4、KBF4のうちの1種類以上を含む、[6]に記載の廃棄物処理装置。
【0016】
[8]
前記第1段階の加熱は前記廃棄物を50~450℃に加熱し、
前記第2段階の加熱は前記廃棄物を450~650℃に加熱する、[6]又は[7]に記載の廃棄物処理装置。
【0017】
[9]
前記加熱部は、前記本体容器の外周部に配置される抵抗加熱器によって構成される、[1]~[8]の何れか1項に記載の廃棄物処理装置。
【0018】
[10]
前記ハロゲン化物ガス流出部から流出する前記ハロゲン化物ガスと前記同伴ガスから不純物を分離する不純物分離部と、
前記不純物分離部を通った前記ハロゲン化物ガスと前記同伴ガスとを分離する同伴ガス分離部とを有する、[1]~[9]の何れか1項に記載の廃棄物処理装置。
【0019】
[11]
前記ハロゲン化物ガス流出部と前記同伴ガス分離部との間の圧力を制御する圧力制御部を有する、[10]に記載の廃棄物処理装置。
【0020】
[12]
前記同伴ガス流入部に前記同伴ガスを流入させるガスバッファー部と、
前記同伴ガス分離部から前記同伴ガスを前記ガスバッファー部に送る同伴ガス移送部とを有する、[10]又は[11]に記載の廃棄物処理装置。
【0021】
[13]
前記廃棄物を前記本体容器に収容し、前記同伴ガス流入部から前記同伴ガスを流入させながら前記加熱部により前記第1段階の加熱を行うことで、前記廃棄物から発生する前記水素化物ガスを前記同伴ガスとともに前記水素化物ガス流出部から流出させる第1段階加熱工程と、
前記第1段階加熱工程の後に、前記同伴ガス流入部から前記同伴ガスを流入させながら前記加熱部により前記第2段階の加熱を行うことで、前記廃棄物から発生する前記ハロゲン化物ガスを前記同伴ガスとともに前記ハロゲン化物ガス流出部から流出させる第2段階加熱工程とを有する、[1]~[12]の何れか1項に記載の廃棄物処理装置を用いる廃棄物処理方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エネルギー効率に優れ、装置の寿命、安全性及び運転コストにも優れる廃棄物処理装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態の廃棄物処理装置を示す模式図である。
図2図1に示す廃棄物処理装置の反応器の詳細を示す模式図である。
図3】実施例と比較例でのBF3ガス発生量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を例示説明する。
【0025】
図1図2に示すように、本発明の一実施形態において廃棄物処理装置1は、ハロゲン化物を含む廃棄物5を収容する本体容器3と、本体容器3に収容された廃棄物5に対する第1段階の加熱と第1段階よりも高温での第2段階の加熱とが可能な加熱部4とを有する反応器2を有する。
【0026】
本体容器3は、本体容器3に同伴ガスを流入させる同伴ガス流入部6と、第1段階の加熱により廃棄物5から発生する水素化物ガスを同伴ガスとともに本体容器3から流出させる水素化物ガス流出部7と、水素化物ガス流出部7とは別に設けられ、第2段階の加熱により廃棄物5から発生するハロゲン化物ガスを同伴ガスとともに本体容器3から流出させるハロゲン化物ガス流出部8とを有する。
【0027】
このような構成によれば、廃棄物5を本体容器3に収容し、同伴ガス流入部6から同伴ガスを流入させながら加熱部4により第1段階の加熱を行うことで、廃棄物5から発生する水素化物ガスを同伴ガスとともに水素化物ガス流出部7から流出させる第1段階加熱工程と、第1段階加熱工程の後に、同伴ガス流入部6から同伴ガスを流入させながら加熱部4により第2段階の加熱を行うことで、廃棄物5から発生するハロゲン化物ガスを同伴ガスとともにハロゲン化物ガス流出部8から流出させる第2段階加熱工程とを行うことができる。したがって、ハロゲン化物を含む廃棄物5から、腐食性が強いハロゲン化水素の発生を抑制しながらハロゲン化物ガスを再資源として再生でき、且つ、廃棄物5を無害化できる。このように、本実施形態によれば、エネルギー効率に優れ、装置の寿命、安全性及び運転コストにも優れる廃棄物処理装置1及び方法を実現できる。
【0028】
同伴ガス流入部6は第1同伴ガス流入口6aを有し、ハロゲン化物ガス流出部8はハロゲン化物ガス流出口8aを有し、水素化物ガス流出部7は、本体容器3の長手方向において第1同伴ガス流入口6aとハロゲン化物ガス流出口8aの間に設けられる水素化物ガス流出口7aを有する。
【0029】
このような構成によれば、加熱部4によって加熱しやすく廃棄物5が配置される本体容器3の中央部に近い位置から水素化物ガスを流出させることができるので、本体容器3内での水素化物ガスの凝縮の発生を抑制でき、その結果、第2段階の加熱時に発生するハロゲン化物ガスの、凝縮した水素化物への吸収によるハロゲン化水素の発生を抑制できる。しかし、反応器2の構成はこれに限らない。
【0030】
同伴ガス流入部6は、本体容器3の長手方向において水素化物ガス流出口7aから見て第1同伴ガス流入口6aの反対側に設けられる第2同伴ガス流入口6bを有し、水素化物ガス流出部7は、第1段階の加熱により廃棄物5から発生する水素化物ガスを、少なくとも第2同伴ガス流入口6bから流入した同伴ガスとともに本体容器3から流出させる。
【0031】
このような構成によれば、ハロゲン化物ガス流出部8と水素化物ガス流出部7との間での水素化物ガスの凝縮の発生を抑制できるので、第2段階の加熱時に発生するハロゲン化物ガスが、ハロゲン化物ガス流出部8から流出するまでの経路上で、凝縮した水素化物に吸収されることでハロゲン化水素が発生することを抑制できる。しかし、反応器2の構成はこれに限らない。
【0032】
水素化物ガス流出部7は、第1段階の加熱により廃棄物5から発生する水素化物ガスを、第1同伴ガス流入口6aと第2同伴ガス流入口6bのそれぞれから流入した同伴ガスとともに本体容器3から流出させる。
【0033】
このような構成によれば、第1同伴ガス流入口6aと水素化物ガス流出部7との間での水素化物ガスの凝縮の発生も抑制できるので、第2段階の加熱時に第1同伴ガス流入口6aから流入した同伴ガスが、凝縮した水素化物をハロゲン化物ガス流出部8に向けて運び、ハロゲン化物ガスを吸収させることでハロゲン化水素が発生することを抑制できる。しかし、反応器2の構成はこれに限らない。
【0034】
本体容器3は、本体容器3の長手方向において廃棄物5を収容する廃棄物収容部9と第1同伴ガス流入口6aとの間でガス流路を絞る第1絞り部10aと、本体容器3の長手方向において廃棄物収容部9と第2同伴ガス流入口6bとの間でガス流路を絞る第2絞り部10bとを有する。
【0035】
このような構成によれば、第1段階の加熱時に、発生した水素化物ガスが水素化物ガス流出部7の側から第1同伴ガス流入口6aの側へ逆拡散することを第1絞り部10aによって抑制でき、また、発生した水素化物ガスが水素化物ガス流出部7の側から第2同伴ガス流入口6bの側へ逆拡散することを第2絞り部10bによって抑制できる。したがって、ハロゲン化水素の発生を抑制できる。しかし、反応器2の構成はこれに限らない。
【0036】
ハロゲン化物はホウフッ化物を含み、ハロゲン化物ガスはフッ化ホウ素ガスを含む。このような構成によれば、分解が特に難しいホウフッ化物を含む廃棄物5の無害化とフッ化ホウ素ガスの再資源化を有利に実現できる。しかし、反応器2の構成はこれに限らない。
【0037】
ホウフッ化物は、NaBF4、LiBF4、KBF4のうちの1種類以上を含む。このような構成によれば、分解が特に難しいNaBF4、LiBF4、KBF4のうちの1種類以上を含む廃棄物5の無害化とフッ化ホウ素ガスとしての三フッ化ホウ素(BF3)の再資源化を有利に実現できる。しかし、反応器2の構成はこれに限らない。
【0038】
第1段階の加熱は廃棄物5を50~450℃に加熱し、第2段階の加熱は廃棄物5を450~650℃に加熱する。このような構成によれば、ホウフッ化物を含む廃棄物5の無害化とフッ化ホウ素ガスの再資源化を有利に実現できる。しかし、反応器2の構成はこれに限らない。
【0039】
加熱部4は、本体容器3の外周部に配置される抵抗加熱器によって構成される。このような構成によれば、廃棄物5を一様に加熱しやすくできる。しかし、反応器2の構成はこれに限らない。
【0040】
廃棄物処理装置1は、ハロゲン化物ガス流出部8から流出するハロゲン化物ガスと同伴ガスから不純物を分離する不純物分離部11と、不純物分離部11を通ったハロゲン化物ガスと同伴ガスとを分離する同伴ガス分離部12とを有する。このような構成によれば、純度の高いハロゲン化物ガスの取り出しを実現できる。しかし、廃棄物処理装置1の構成はこれに限らない。
【0041】
廃棄物処理装置1は、ハロゲン化物ガス流出部8と同伴ガス分離部12との間の圧力を制御する圧力制御部13を有する。このような構成によれば、廃棄物処理装置1内のガスの流束を容易に制御できる。しかし、廃棄物処理装置1の構成はこれに限らない。
【0042】
廃棄物処理装置1は、同伴ガス流入部6に同伴ガスを流入させるガスバッファー部14と、同伴ガス分離部12から同伴ガスをガスバッファー部14に送る同伴ガス移送部15とを有する。このような構成によれば、同伴ガスを循環させることでエネルギー効率を高めることができる。しかし、廃棄物処理装置1の構成はこれに限らない。
【0043】
以下に、本実施形態の廃棄物処理装置1の詳細構成を記載するが、廃棄物処理装置1の構成はこれに限らない。
【0044】
廃棄物5は、ホウフッ化物としてのテトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF4)、不純物としての水、エーテル系溶媒、ホウ酸(B(OH)3)を含む。しかし廃棄物5はこれに限らず、例えば、ホウフッ化物としてLiBF4、KBF4などのテトラフルオロホウ酸塩類を含んでもよい。
【0045】
NaBF4は、熱分解温度である450℃を超えると、BF3とフッ化ナトリウム(NaF)に分解することが知られており、式1の反応で分解が進行する。
【0046】
NaBF4 → NaF + BF3 (式1)
【0047】
材料となるホウフッ化物は、特にエレクトロニクス関連、めっき処理関連等で産業廃棄物として生じることが多く、水性、有機性、金属等の様々な不純物が含まれることが多い。例えばジボラン製造反応システムから生じる産業廃棄物を使用でき、当該産業廃棄物は、不純物としてエーテルやアルコール、エステル等の有機性不純物、水や水と反応して生じたホウ素酸化物、その他無機塩を含むことが多い。
【0048】
同伴ガスは、材料を効率良く処理し、発生したハロゲン化物ガスを製品といえる純度まで精製するために使用される。同伴ガスは、ハロゲン化物ガスや材料、その他不純物ガスと反応しにくい物質から適宜選択でき、N2、He、Arなどが好ましい。同伴ガスを使用しない場合、式1の分解反応が進行しにくいことや、発生したハロゲン化物ガスの高濃度と滞留により不純物が増加し且つ装置の腐食が早まることなどの不具合が生じやすくなる。
【0049】
処理工程のスタート地点は、ガスバッファー部14及びガスMFC(Mass Flow Controller)16である。ガスバッファー部14とガスMFC16から同伴ガスが流量を制御された状態で後続する反応システム、精製システムに送られ、ハロゲン化物ガスが製造される。
【0050】
ガスバッファー部14は、金属製などのタンク14a、排出弁14b、供給弁14c及び圧力発信機14dで構成される。それぞれの機器は、精製するハロゲン化物ガスの清浄度、精製量などに応じ、物理的化学的に耐えうるものから適宜選択でき、好ましい材質は、目的物質であるハロゲン化物ガスや発生しうるハロゲン化水素への耐性に優れる、SUS(Stainless Used Steel)304、SUS316などのステンレス鋼、インコネル、ハステロイ、PTFE(PolyTetraFluoroEthylene)、PFA(PolyFurfuryl Alcohol)、FFKM(パーフロロエラストマー、Perfluoroelastomer)などである。なお、ガスバッファー部14を設けない構成としてもよい。
【0051】
タンク14aの内部は同伴ガスで満たされ、反応器2の圧力以上の所定の設定範囲内の圧力になるように圧力発信機14dと排出弁14b、供給弁14cで制御される。具体的には、タンク14aの内部は、設定範囲未満の圧力になると同伴ガスが供給弁14cから供給され、設定範囲を超える圧力になると同伴ガスが排出弁14bから排出される。反応器2の内部の圧力は分解反応の効率を考慮して適宜設定できるが、例えば反応器2の内部の圧力が-50~+50kPaGである場合に、タンク14aの内部の圧力は100~900kPaGであることが好ましい。100kPaG未満だと反応器2に十分な流量の同伴ガスを送り続けることが難しくなり、900kPaGを超えると装置コストが高額化する。
【0052】
タンク14aの容量は適宜選択できるが、1~100Lであることが好ましい。1L未満だと同伴ガスの排出、供給の頻度が増え、排出弁14b、供給弁14cの故障リスクが高まる。100Lを超えると装置コストが高額化する。
【0053】
ガスMFC16は同伴ガスの流量を制御できる機器から適宜選択でき、0.1~100L/min(管直径を勘案した大気圧流速換算で0.2~200cm/s)の範囲で流量制御できることが好ましい。0.1L/min未満だと、発生したハロゲン化物ガスの高濃度化により分解反応が進行しにくいことや、発生したハロゲン化物ガスの高濃度と滞留により不純物が増加し且つ装置の腐食が早まることなどの不具合が生じやすくなる。100L/minを超えると、加熱領域への滞在時間が短いことにより分解反応が進行しにくいことや、材料が物理的に後段に飛ばされることにより収率の低下や閉塞を招くことや、ポンプ15aなどの機器が大型化しやすいことなどの不都合が生じやすくなる。
【0054】
反応器2は、NaBF4を主成分とするハロゲン化物廃棄物から、ハロゲン化物ガスBF3を取り出す重要な機器である。その加熱方式と全体構造は、NaBF4を分解温度である450℃以上に加熱でき、且つ本体容器3からガスを抜き出せるものから適宜選択できるが、NaBF4の融点が380℃程度であることから、ある程度限定される。
【0055】
加熱部4の加熱方式としては、誘電加熱、誘導加熱、抵抗加熱等が一般的であるが、一様な加熱が容易な抵抗加熱が好ましい。誘電加熱は、材料の状況次第で加熱が局所的になりやすい。誘導加熱は、反応が進むに従って材料自体が不導体となるため加熱に適さない。
【0056】
反応器2の全体構造としては、キルン炉、バッチ炉、コンベア炉、横型管状炉、マッフル炉などが一般的であるが、全体が安価で、腐食による部品交換が容易、ガスの流れ方向が明確で同伴ガスの流路が制御しやすい横型管状炉が好ましい。キルン炉は、中央部付近からガスを抜き出す構造とする場合、軸シール部を2箇所に設け、加熱炉自体を囲う必要性があり、設備全体が高額になりやすい。バッチ炉は、式1の反応の進行に伴い固体NaFが増加することから、粘度が上昇し同伴ガスのバブリングが不安定化しやすい。コンベア炉は、NaBF4が液化するため材料が移動できないことから適さない。マッフル炉は、全体の気密性確保やガスの流れ制御が難しくなりやすい。
【0057】
以上の理由から、反応器2は、抵抗加熱炉に横型の金属製等の管体を設置した構造とすることが好ましい。
【0058】
本体容器3は、管状外周部3aと、管状外周部3aの長手方向(管軸方向)の両端部に連なる2つの端部壁3bとで構成され、第1同伴ガス流入口6a、第1絞り部10a、廃棄物収容部9、水素化物ガス流出口7a、第2絞り部10b、第2同伴ガス流入口6b、ハロゲン化物ガス流出口8aを有する。第2同伴ガス流入口6bはハロゲン化物ガス流出口8aと共用される構成とされる。なお、第2同伴ガス流入口6bは、ハロゲン化物ガス流出口8aとは別に設ける構成としてもよい。
【0059】
本体容器3の材質は、精製するハロゲン化物ガスの清浄度、精製量などに応じ、物理的化学的に耐えうるものから適宜選択でき、例えば、450~700℃の温度範囲で、目的物質であるハロゲン化物ガスや、発生しうるハロゲン化水素に耐えうるSUS304、SUS316、インコネル、ハステロイ、セラミクスなどが好ましく、PTFE等でもよい。
【0060】
本体容器3の管状外周部3aの大きさは、材料物質(廃棄物5)の処理量に応じて適宜選択でき、50~500Aの太さであることが好ましい。50A未満だと、十分な処理量を得にくい。500Aを超えると加熱炉自体が高額化し、また反応器2の交換が難しくなる。本体容器3を直列に複数段接続した構成としてもよい。廃棄物収容部9は、廃棄物5を収容する廃棄物容器9aを有することが好ましい。廃棄物収容部9に複数の廃棄物容器9aを配置してもよい。
【0061】
同伴ガス流入部6、第1絞り部10a及び第2絞り部10bはガス流れを制御する重要な部分である。上述したとおり、産業廃棄物中には不純物としてエーテルやアルコール、エステル等の有機性不純物、水や水と反応して生じたホウ素酸化物、その他無機塩が含まれる。有機性不純物及び水はガスとしてハロゲン化物ガス発生前に分離される。その後、ハロゲン化物ガスは取り出され、製造の最後段階に送り出される。ホウ素酸化物及びその他無機塩は廃棄物容器9a内に残存する。有機性不純物及び水は加熱によりガス化するが、加熱領域から外れると凝集液化する。凝集液が滞在している部分にハロゲン化物ガスが流通すると、ハロゲン化物ガスはその高い化学的極性のため凝集液に吸収され、収率の低下と配管の腐食を招き、また、凝集液が分解され放出される二酸化炭素や一酸化炭素に代表される低炭素系ガスが不純物となり、製品としてのハロゲン化物ガスの純度に悪影響を及ぼす。また、凝集液自体もその蒸気圧に従い加熱炉後段に運ばれ、不純物分離部11において吸着材などの寿命を縮めるなど悪影響を及ぼす。以上の理由より、有機性不純物と水は、ハロゲン化物ガスの流通路とはできるだけ分けることが肝要である。両側2方向の同伴ガス流入部6(第1同伴ガス流入口6aと第2同伴ガス流入口6b)はこれを実現し、第1絞り部10aと第2絞り部10bはその効果を最大化する。第1絞り部10aと第2絞り部10bはそれぞれ、切り欠き部(開口部など)を有する整流板で構成される。なお、第1絞り部10aと第2絞り部10bを設けなくても、ある程度の効果は得ることができる。
【0062】
第1同伴ガス流入口6aは第1絞り部10aよりも1次側に設けられる。第2同伴ガス流入口6bは第2絞り部10bよりも2次側に設けられる。なお、ガスバッファー部14から同伴ガス分離部12に向かう側が2次側で、その反対側が1次側である。第1同伴ガス流入口6a及び第2同伴ガス流入口6bのそれぞれの向き(横方向、縦方向)と上下方向の配置は特に限定されない。同伴ガス流入部6は、第2同伴ガス流入口6bを有さず第1同伴ガス流入口6aを有する構成としてもよい。しかしこの場合、第1段階の加熱時に廃棄物容器9aの後段(2次側)にガスの滞留する場所が生じることで、水素化物ガスが廃棄物容器9aの後段で凝縮し、上述した不具合が生じやすくなる。第1段階の加熱時に第1同伴ガス流入口6aを用いずに第2同伴ガス流入口6bを用いて同伴ガスを流入させる構成としてもよい。しかしこの場合、水素化物ガスが前段側で凝縮するため、ハロゲン化物ガスの流路上には凝縮液は存在しないものの、第2段階の加熱時に使用される第1同伴ガス流入口6aから流入する同伴ガスにさらされ気化し、発生するハロゲン化物ガスに混ざり、不純物の増加を招く。
【0063】
第1絞り部10aと第2絞り部10bの配置は、エーテル系溶媒の沸点の多くが50~200℃であるため、本体容器3内の温度を400℃に設定した際、250~300℃の位置であることが好ましい。250℃未満の位置に配置すると有機性ガスが整流板から廃棄物収容部9までの範囲内で凝集しやすくなる。300℃を超える位置に配置すると、十分な広さの廃棄物収容部9を確保しにくくなる。
【0064】
整流板の切り欠き部(開口部)の数、位置、形状及び大きさは、各種有機性ガス、水性ガス、同伴ガス、ハロゲン化物ガスの種別、同伴ガス流束(流量)、及び収容する廃棄物5の量(廃棄物容器9aの数など)によって適宜選択できる。各種有機性ガス、水性ガス、ハロゲン化物ガスが同伴ガスより重い物性である場合は、管状外周部3aの中央よりも下側に切り欠き部を配置することで滞留を抑制したガス流路を形成できる。また、切り欠き部の面積は、管状外周部3aの長手方向に垂直な横断面での内部面積の1~30%であることが好ましい。1%未満だと、同伴ガスの圧損が高まり、同伴ガスの供給圧力が高まる。30%を超えると、逆拡散が発生しやすくなり、廃棄物収容部9の前後段に凝集液が生じやすくなる。
【0065】
水素化物ガス流出部7は、本体容器3(管状外周部3a)の中央よりも上側に設けることが好ましくい。こうすることで、水素化物ガスとともに凝縮液などが水素化物ガス流出部7から流出することを抑制できる。
【0066】
また水素化物ガス流出部7は、本体容器3の長手方向において第1絞り部10aと第2絞り部10bの間の部分に設けられ、好ましくは第1絞り部10aと第2絞り部10bの中間部付近(第1絞り部10aと第2絞り部10bの間の距離を3等分してできる前段領域、中間領域、後段領域のうちの中間領域)に設けられ、より好ましくは第1絞り部10aと第2絞り部10bの中間部に設けられる。水素化物ガス流出部7の配置が第1絞り部10aと第2絞り部10bの中間部から外れるほど、同伴ガス中に含まれる不純物ガスの飽和度が不均一化することで均一な有機性ガス、水性ガスの除去が難しくなる。
【0067】
また水素化物ガス流出部7は、本体容器3の長手方向において本体容器3(管状外周部3a)の中央部付近(本体容器3の長さを3等分してできる前段領域、中間領域、後段領域のうちの中間領域)に設けられ、より好ましくは本体容器3の中央部に設けられる。加熱炉の多くは中央部の到達温度が最も高いため、水素化物ガス流出部7の配置が中央部から外れるほど、廃棄物5から揮発した有機性ガス、水性ガスが凝縮しやすくなる。
【0068】
精製システムは、不純物分離部11、同伴ガス分離部12及び圧力制御部13を有する。不純物分離部11はコールドトラップ11aと吸着筒11bを有する。同伴ガス分離部12は精製器12aを有する。
【0069】
コールドトラップ11a、吸着筒11b、精製器12aは、粗ハロゲン化物ガスの不純物種に応じて適宜選択でき、精製の種類、各種精製器12aの材質、構造、精製条件は限定されない。
【0070】
コールドトラップ11aは、ハロゲン化物ガスが発生する温度範囲において、残存する微量な有機性ガス、水性ガス、その他常温大気圧状態で固体の分子がハロゲン化物ガスに含まれる場合、冷却凝集させる。コールドトラップ11aは、例えば、金属充填物を詰めた容器を0℃程度に冷却し、その容器内にガスを流通する方式などを選択できる。
【0071】
吸着筒11bは、常温常圧でガス状であり、コールドトラップ11aで除去しきれなかった不純物を取り除く。吸着筒11bは、例えば、ゼオライトを充填した容器にガスを流通し、二酸化炭素、水などを除去する方式を選択できる。
【0072】
なお、コールドトラップ11aと吸着筒11bのいずれか一方を設ける構成としてもよいし、不純物分離部11を設けない構成としてもよい。
【0073】
精製器12aは、同伴ガスを含め、ハロゲン化物ガス以外の分子を取り除く。精製器12aは、例えば、50L程度などの金属容器に金属リングを仕込み、液体窒素温度で冷却しハロゲン化物ガスを固化精製する方式を選択できる。
【0074】
圧力制御部13は、ハロゲン化物ガス流出部8と同伴ガス分離部12(精製器12a)との間の圧力(背圧)を制御する。圧力制御部13は、吸着筒11bと精製器12aとの間の圧力(背圧)を制御してもよいし、ハロゲン化物ガス流出部8とコールドトラップ11aとの間の圧力(背圧)を制御してもよいし、コールドトラップ11aと吸着筒11bとの間の圧力(背圧)を制御してもよい。圧力制御部13は、例えば、圧力発信機13aと圧力調整弁13bとで構成できる。
【0075】
精製器12aによって分離された同伴ガスは同伴ガス移送部15によってガスバッファー部14(タンク14a)に送られる。同伴ガス移送部15はポンプ15aを有する。ポンプ15aは、例えば、真空ポンプとコンプレッサーを用いて、タンク14aの所望の圧力まで昇圧する方式を選択できる。
【0076】
各種機器を接続する配管の材質、形状は特に限定されず、精製するハロゲン化物ガスの清浄度、精製量などに応じ、物理的化学的に耐えうる限り適宜選択でき、例えば、ステンレス鋼などの金属製やPTFEなどの樹脂製であってよい。反応温度に応じ、配管を適宜加温してもよい。
【0077】
次に、本実施形態の廃棄物処理装置1を用いる廃棄物処理方法の詳細構成を記載するが、廃棄物処理方法の構成はこれに限らない。
【0078】
まずポンプ15aを稼働させ、適切な圧力まで精製器12aの圧力を下げると共に、その排気ガスをタンク14aに導入し、タンク14a内を昇圧する。タンク14aの調圧を開始し、圧力が規定値に達しない場合は供給弁14cから同伴ガスを導入し昇圧する。
【0079】
次いで、ガスMFC16を稼働させ、同伴ガスを反応器2内に導入する。背圧の制御が必要であれば、圧力制御部13で制御し、必要であればコールドトラップ11a、精製器12aなどを必要温度まで冷却する。
【0080】
次いで、水素化物ガス流出部7を開け、反応器2後段側の第2同伴ガス流入口6bの弁を切り替え、第2同伴ガス流入口6bからも同伴ガスを導入し、全量の同伴ガスが水素化物ガス流出部7から排出される経路に設定する。
【0081】
次いで、加熱部4を稼働させ、廃棄物5を仕込んだ反応器2を50~450℃に加熱し水性、有機性成分をドライアウトする(第1段階加熱工程)。好ましい温度範囲は、50~440℃であり、より好ましくは300~440℃であり、さらに好ましくは350℃~430℃である。50℃未満だと有機不純物のドライアウト速度が遅くマシンタイム効率が低下しやすくなる。450℃を超えると目的ガスBF3への分解が始まり、BF3の収率が低下しやすくなる。
【0082】
加熱時間は、不純物の含有量などに応じて適宜選択できる。例えば、水素化物ガス流出部7から排出されるガスをFT-IR(Fourier Transform Infrared Spectroscopy)式などの適切な分析計で測定し、水や各有機性ガス成分が100~5000ppmまで低下することを確認し、第1段階加熱工程(乾燥工程)の終点とすることができる。100ppm未満だと乾燥工程に必要な時間が長大となりマシンタイム効率が低下しやすくなる。5000ppmを超えると、後続するBF3発生工程(第2段階加熱工程)の段階で精製器12aまで到達する不純物分子が増え、収率や純度低下を招きやすくなる。第1段階加熱工程が終了すると、必要に応じて加熱部4の稼働を停止させる。
【0083】
次いで、乾燥工程を終えた材料からBF3ガスを取り出す発生工程(第2段階加熱工程)を実施する。反応器2後段側の第2同伴ガス流入口6bの弁を閉止し、ハロゲン化物ガス流出口8aの弁を開くことで精製システムまでの流路を開き、水性、水素化物ガス流出口7aの弁を閉じることで精製システムまでの流路を確保する。
【0084】
加熱部4により反応器2を加熱し、式1の反応を開始する(発生工程)。加熱温度は450℃~700℃であればよく、より好ましくは450℃~550℃である。450℃未満だと、発生工程終了までに時間がかかりマシンタイム効率が低下しやすくなる。700℃を超えると、主に反応器2の腐食、減肉が早まり、装置運転コストが増加しやすくなる。
【0085】
加熱時間は、廃棄物5の量などに応じて適宜選択できる。例えば、精製器12a前にFT-IR式、超音波式などの分析計でBF3をリアルアイムに分析し、極大濃度の1~10%以下までBF3濃度が低下した時点を発生工程終点とすることができる。
【0086】
第2段階加熱工程で取り出したBF3は、精製システムによる精製工程によって不純物と同伴ガスが取り除かれ、再生された高純度なBF3として製品化される。
【0087】
第2段階加熱工程終了後は、加熱部4を停止させ、同伴ガスをしばらくの間循環させ、反応器2内の冷却とパージアウトを完了させる。
【0088】
本発明は前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0089】
したがって、前述した実施形態の廃棄物処理装置1は、ハロゲン化物を含む廃棄物5を収容する本体容器3と、本体容器3に収容された廃棄物5に対する第1段階の加熱と第1段階よりも高温での第2段階の加熱とが可能な加熱部4とを有する反応器2を有し、本体容器3は、本体容器3に同伴ガスを流入させる同伴ガス流入部6と、第1段階の加熱により廃棄物5から発生する水素化物ガスを同伴ガスとともに本体容器3から流出させる水素化物ガス流出部7と、水素化物ガス流出部7とは別に設けられ、第2段階の加熱により廃棄物5から発生するハロゲン化物ガスを同伴ガスとともに本体容器3から流出させるハロゲン化物ガス流出部8とを有する、廃棄物処理装置1である限り変更可能である。
【実施例0090】
図1図2記載の廃棄物処理装置を使用し、ハロゲン化物ガスへの再生を行った。乾燥工程の終点及び発生工程の終点判断はFT-IR式分析計で実施した。具体的な反応条件を以下に示す。
【0091】
<実施条件>
・材料主成分組成:NaBF470wt%程度
・不純物組成:B(OH)3約15wt%、エーテル成分約10wt%、水5wt%
・横型管状炉直径100mm
・産業廃棄物量1kg
・乾燥工程温度:400℃
・発生工程温度:600℃
・同伴ガス種、流量:N2、5L/min
・整流板枚数:2枚
・整流板位置:同伴ガス流通時250℃地点
・整流板開口部
形状:丸形、位置:整流板中心よりも下側、数:1つ、大きさ:φ25mm
・発生工程終点判断:最大BF3発生時の約5%
・コールドトラップ温度:-5℃
・吸着材充填物:モレキュラーシーブス4A
・固化精製器温度:-195℃
【0092】
上記条件により行った廃棄物処理の発生工程中のBF3発生量、及び精製器で得られた収率、不純物を図3及び表1に示す。
【表1】
【0093】
図3に示す通り、連続的にBF3が発生した。発生量が50cc/min程度になった時点で加熱炉を停止し、精製器で固化精製を実施した結果、99.9%程度の高純度なBF3が得られた。
【比較例】
【0094】
実施例と同様の反応温度で、加熱炉に粉体高温処理で一般的なロータリーキルン方式を採用し、精製システムは同条件にてBF3への再生、廃棄物処理を実施した。乾燥工程は行わず、BF3分解発生温度である600℃まで一気に昇温した。
【0095】
図3に示す通り、昇温初期には実施例を上回る発生量が得られたものの、徐々に発生速度が低下した。また、精製したBF3ガスにはエーテル由来の成分が多く含まれ、半導体グレードでは使用できない純度であった。
【0096】
また、発生終了後の配管には多くの凝集液がシステム内に存在し、その液体からBF3由来と考えられる発煙が多くみられ、BF3が吸収されエーテルと錯形成、収率低下を招いていることが示唆された。長期的にも、配管の腐食、減肉の恐れが高い状態であった。また、コールドトラップ及び吸着材に多くのエーテル成分が到達し、吸着材の早期劣化が示唆された。
【符号の説明】
【0097】
1 廃棄物処理装置
2 反応器
3 本体容器
3a 管状外周部
3b 端部壁
4 加熱部
5 廃棄物
6 同伴ガス流入部
6a 第1同伴ガス流入口
6b 第2同伴ガス流入口
7 水素化物ガス流出部
7a 水素化物ガス流出口
8 ハロゲン化物ガス流出部
8a ハロゲン化物ガス流出口
9 廃棄物収容部
9a 廃棄物容器
10a 第1絞り部
10b 第2絞り部
11 不純物分離部
11a コールドトラップ
11b 吸着筒
12 同伴ガス分離部
12a 精製器
13 圧力制御部
13a 圧力発信機
13b 圧力調整弁
14 ガスバッファー部
14a タンク
14b 排出弁
14c 供給弁
14d 圧力発信機
15 同伴ガス移送部
15a ポンプ
16 ガスMFC
図1
図2
図3