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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104338
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】端子
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/187 20060101AFI20240729BHJP
   H01R 43/16 20060101ALN20240729BHJP
【FI】
H01R13/187 B
H01R43/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008482
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】和田 卓十
【テーマコード(参考)】
5E063
【Fターム(参考)】
5E063GA05
5E063XA20
(57)【要約】
【課題】端子本体を構成するバネ部材と基台部の接合強度を損なうことなく、基台部からのバネ部材の分離が容易化された端子を提供する。
【解決手段】電線に接続される基台部と、前記基台部に取り付けられ、相手側の端子と電気的に接続されるバネ部材と、を有する端子本体が設けられ、前記バネ部材は、前記基台部と接合部にて接続され、前記バネ部材と前記基台部の少なくとも一方に、前記接合部の接続を解除するための治具が挿入可能な引っ掛け部を有する端子。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に接続される基台部と、前記基台部に取り付けられ、相手側の端子と電気的に接続されるバネ部材と、を有する端子本体が設けられ、
前記バネ部材は、前記基台部と接合部にて接続され、
前記バネ部材と前記基台部の少なくとも一方に、前記接合部の接続を解除するための治具が挿入可能な引っ掛け部を有する端子。
【請求項2】
前記引っ掛け部が、前記接合部における前記バネ部材と前記基台部との界面と同一平面上の部位を起点に形成されている請求項1に記載の端子。
【請求項3】
前記引っ掛け部が、前記接合部の近傍に設けられている請求項1または2に記載の端子。
【請求項4】
前記引っ掛け部が、前記バネ部材の縁部に対応する部位に設けられている請求項1または2に記載の端子。
【請求項5】
前記接合部が、レーザ溶接からなる請求項1または2に記載の端子。
【請求項6】
前記接合部が、前記基台部の同一面上に複数設けられ、複数の前記接合部のそれぞれの近傍に、前記引っ掛け部が設けられている請求項1または2に記載の端子。
【請求項7】
前記接合部が、前記バネ部材の長手方向に延び、前記引っ掛け部が、前記接合部の長手方向の端部近傍に設けられている請求項1または2に記載の端子。
【請求項8】
前記引っ掛け部が、前記基台部の面方向に延在した屋根部を有する請求項1または2に記載の端子。
【請求項9】
前記治具が、棒状部材である請求項1または2に記載の端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流用のワイヤーハーネス等の電線が接続される端子であり、特に、リサイクル性に優れた端子に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に装備された電装機器は、被覆電線を束ねたワイヤーハーネスを介して、別の電装機器や電源装置と接続して電気回路を構成している。この際、ワイヤーハーネスと電装機器や電源装置とは、それぞれに装着したコネクタ同士で接続されている。また、通電させる電流の大電流化に伴い、太線化した電線が電気的に接続される端子が使用されることがある。
【0003】
太線化した電線が電気的に接続される端子として、例えば、接続されるオス型端子と電気的に接続されるバネ部材、及び、該バネ部材と電気的に接続される導電性の基台部を有する端子本体が設けられ、前記基台部は、前記オス型端子の一部が挿入可能な挿入空間を隔てて配置された一対の側壁を有し、前記バネ部材は、前記基台部における一対の側壁同士の間に配置され、前記バネ部材と前記側壁とは、前記バネ部材と前記側壁とを導電可能に溶接された導電溶接部によって固定されたメス型端子が提案されている(特許文献1)。電線が太線化すると肉厚な端子板材で端子を構成する必要があるところ、特許文献1では、導電性のバネ部材を、挿入空間に挿入されたオス型端子の一部に対して、側壁を反力として押付けて密着させることで、太線化した電線が電気的に接続されるメス型端子とオス型端子との間の導電性を改善するものである。
【0004】
一方で、環境負荷の低減の観点から、端子を構成する材料はリサイクルされることが好ましい。一般に、材料をリサイクルする場合には、同じ材料種ごとに分別してリサイクルをする必要がある。
【0005】
特許文献1の端子は、複数の部材(すなわち、バネ部材と基台部)で構成されている。端子が複数の部材で構成され、前記複数の部材の材料種が異なる場合には、端子を構成する材料をリサイクルするにあたり、端子を各部材ごとに分解する、すなわち、複数の部材をそれぞれ分離させる必要がある。
【0006】
しかし、複数の部材同士がレーザ溶接等で接合されていると、複数の部材間の接合強度には優れているものの、端子を各部材ごとに分解することが難しく、端子のリサイクル性が困難化してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2022/118736号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、端子本体を構成するバネ部材と基台部の接合強度を損なうことなく、基台部からのバネ部材の分離が容易化された端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1]電線に接続される基台部と、前記基台部に取り付けられ、相手側の端子と電気的に接続されるバネ部材と、を有する端子本体が設けられ、
前記バネ部材は、前記基台部と接合部にて接続され、
前記バネ部材と前記基台部の少なくとも一方に、前記接合部の接続を解除するための治具が挿入可能な引っ掛け部を有する端子。
[2]前記引っ掛け部が、前記接合部における前記バネ部材と前記基台部との界面と同一平面上の部位を起点に形成されている[1]に記載の端子。
[3]前記引っ掛け部が、前記接合部の近傍に設けられている[1]または[2]に記載の端子。
[4]前記引っ掛け部が、前記バネ部材の縁部に対応する部位に設けられている[1]または[2]に記載の端子。
[5]前記接合部が、レーザ溶接からなる[1]または[2]に記載の端子。
[6]前記接合部が、前記基台部の同一面上に複数設けられ、複数の前記接合部のそれぞれの近傍に、前記引っ掛け部が設けられている[1]または[2]に記載の端子。
[7]前記接合部が、前記バネ部材の長手方向に延び、前記引っ掛け部が、前記接合部の長手方向の端部近傍に設けられている[1]または[2]に記載の端子。
[8]前記引っ掛け部が、前記基台部の面方向に延在した屋根部を有する[1]または[2]に記載の端子。
[9]前記治具が、棒状部材である[1]または[2]に記載の端子。
【発明の効果】
【0010】
本発明の端子の態様によれば、バネ部材と基台部の少なくとも一方に、バネ部材と基台部の接合部の接続を解除するための治具が挿入可能な引っ掛け部を有することにより、治具を引っ掛け部に挿入してバネ部材を基台部から剥がすように治具に応力を加えることで、基台部からバネ部材が容易に分離されて、接合部の接続が解除される。上記から、引っ掛け部に挿入される治具は、基台部からバネ部材を分離させる機能を有する。また、本発明の端子の態様では、前記バネ部材は、前記基台部と接合部にて接続されているので、端子本体を構成するバネ部材と基台部の接合強度は損なわれない。
【0011】
本発明の端子の態様によれば、前記引っ掛け部が、前記接合部における前記バネ部材と前記基台部との界面と同一平面上の部位を起点に形成されていることにより、治具に加えられた応力がバネ部材と基台部との接合部へ効率よく伝達されるので、基台部からのバネ部材の分離がさらに容易化される。
【0012】
本発明の端子の態様によれば、前記引っ掛け部が前記接合部の近傍に設けられていることにより、治具に加えられた応力がバネ部材と基台部との接合部へさらに確実に伝達されるので、基台部からのバネ部材の分離がさらに容易化される。
【0013】
本発明の端子の態様によれば、前記引っ掛け部が、前記バネ部材の縁部に対応する部位に設けられていることにより、引っ掛け部への治具の挿入が容易化される。
【0014】
本発明の端子の態様によれば、前記接合部がレーザ溶接からなることにより、バネ部材と基台部の接合強度を確実に向上させることができる。また、前記接合部がレーザ溶接からなることにより、接合部の領域の低減が可能となるので、基台部からのバネ部材の分離がさらに容易化される。
【0015】
本発明の端子の態様によれば、複数の前記接合部のそれぞれの近傍に、前記引っ掛け部が設けられていることにより、接合部が複数形成されていても、基台部からのバネ部材の分離を容易化できる。
【0016】
本発明の端子の態様によれば、前記接合部が前記バネ部材の長手方向に延びていることで、バネ部材と基台部の接合強度を確実に向上させることができる。また、本発明の端子の態様によれば、前記引っ掛け部が前記接合部の長手方向の端部近傍に設けられていることで、前記接合部の長手方向の端部から中央部へ向かって、順次、バネ部材と基台部を分離させることができるので、基台部からバネ部材を分離する際の応力を省力化できる。従って、前記接合部が前記バネ部材の長手方向に延び、前記引っ掛け部が前記接合部の長手方向の端部近傍に設けられていることにより、バネ部材と基台部の接合強度を確実に向上させつつ、基台部からのバネ部材の分離をさらに容易化できる。
【0017】
本発明の端子の態様によれば、前記引っ掛け部が、前記基台部の面方向に延在した屋根部を有することにより、治具への応力を基台部の面方向に対して直交方向に加えることができるので、基台部からのバネ部材の引き剥がしが簡易化されて、基台部からのバネ部材の分離をさらに容易化できる。また、本発明の端子の態様では、治具が棒状部材であることにより、簡易的な治具で接合部の接続を解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態例に係る端子の斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態例に係る端子における引っ掛け部の断面図である。
図3】本発明の第1実施形態例に係る端子における、棒状部材を引っ掛け部に挿入して基台部からバネ部材を分離させる仕組みを示す説明図である。
図4】本発明の第2実施形態例に係る端子の斜視図である。
図5】本発明の第2実施形態例に係る端子における引っ掛け部の断面図である。
図6】本発明の第2実施形態例に係る端子における、棒状部材を引っ掛け部に挿入して基台部からバネ部材を分離させる仕組みを示す説明図である。
図7】本発明の第3実施形態例に係る端子の斜視図である。
図8】本発明の第4実施形態例に係る端子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態例に係る端子について説明する。先ず、本発明の第1実施形態例に係る端子について説明する。なお、図1は、本発明の第1実施形態例に係る端子の斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態例に係る端子における引っ掛け部の断面図である。図3は、本発明の第1実施形態例に係る端子における、棒状部材を引っ掛け部に挿入して基台部からバネ部材を分離させる仕組みを示す説明図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の実施形態例に係る端子1には、一方端側11にて電線(図示せず)が接続され、他方端側12にて相手側の端子(図示せず)が電気的に接続される端子本体10が設けられている。具体的には、端子本体10は、電線に接続される基台部20と、基台部20に取り付けられ、相手側の端子と電気的に接続されるバネ部材30と、を有する。バネ部材30は、基台部20の他方端側12に取り付けられている。
【0021】
基台部20うち、バネ部材30が取り付けられていない部位の少なくとも一部は、電線が接続される電線接続部13となっている。上記から、基台部20は、基台部20の長手方向Lの一方端側11に、電線接続部13を有している。端子1では、電線接続部13は、平板状の部位となっている。
【0022】
電線は、内部の導体を絶縁被覆で被覆した大電流用の太電線であり、電線の先端において絶縁被覆が剥がされて露出する導体が、電線接続部13に接続される。電線が基台部20の電線接続部13に接続されることでワイヤーハーネスとしてもよい。
【0023】
基台部20の他方端側12は、相手側端子が挿入される挿入空間14を隔てて配置された一対の側壁21と側壁21同士を連結する側壁連結部22とを備えている。基台部20を構成する側壁21は幅方向Wに所定間隔を隔てて2枚設けられている。基台部20を構成する側壁連結部22は、一対の側壁21の高さ方向Hの一方の端部同士を幅方向Wに連結する構成である。また、基台部20の他方端側12は、側壁連結部22と高さ方向Hにて対向する上方が開口している。従って、基台部20の他方端側12は、長手方向Lから視てU字状に形成されている。
【0024】
一対の側壁21のそれぞれに、バネ部材30が取り付けられている。従って、2つのバネ部材30が、挿入空間14を介して相互に対向するように配置されている。一対の側壁21の間に配置されるバネ部材30は、挿入空間14に挿入された相手側の端子に対して、側壁21を反力として付勢力が作用するように接触する。
【0025】
また、一対の側壁21のうち、一方の側壁21は、電線接続部13と長手方向Lにて連続している構成となっている。端子1では、幅方向Wにおける奥側の側壁21が電線接続部13と連続している。また、端子1では、幅方向Wにおける手前側の側壁21と側壁連結部22は、電線接続部13と連続していない構成となっている。なお、幅方向Wにおける奥側の側壁21と奥側の側壁21に取り付けられたバネ部材30及び幅方向Wにおける手前側の側壁21と手前側の側壁21に取り付けられたバネ部材30は、同じ構成を有しているので、以降、側壁21とバネ部材30の説明は、便宜上、幅方向Wにおける手前側の側壁21と手前側の側壁21に取り付けられたバネ部材30を用いることとする。
【0026】
図1に示すように、バネ部材30は、側壁21を反力として付勢力が作用するように接触するバネ部31と、側壁21に接続されている接続部32と、を有している。バネ部材30は、接続部32にて基台部20に固定されている。バネ部31は、側壁21の内面に設けられ、側壁21の内面上を面状に延在している。接続部32は、側壁21の外面23に設けられ、側壁21の外面23上を面状に延在している。接続部32は、連結部33を介してバネ部31と連続している。
【0027】
バネ部31は、一対の側壁21の高さ方向Hの上方に設けられている。また、接続部32は、一対の側壁21の高さ方向Hの上方に設けられている。上記から、バネ部材30は、長手方向Lから視て逆U字状に形成されている。なお、端子1では、バネ部31は、一対の側壁21の高さ方向Hの下方には設けられておらず、接続部32は、一対の側壁21の高さ方向Hの下方には設けられていない。一方で、バネ部31と接続部32の位置は、特に限定されず、例えば、バネ部31は、一対の側壁21の高さ方向Hの上方だけではなく下方にも設けられていてもよく、接続部32は、一対の側壁21の高さ方向Hの上方だけではなく下方にも設けられていてもよい。また、バネ部31は、一対の側壁21の高さ方向Hの下方に設けられ、一対の側壁21の高さ方向Hの上方には設けられていなくてもよく、接続部32は、一対の側壁21の高さ方向Hの下方に設けられ、一対の側壁21の高さ方向Hの上方には設けられていなくてもよい。
【0028】
図1に示すように、バネ部材30は、基台部20と接合部40にて接続されている。具体的には、側壁21の外面23に設けられている接続部32が、接合部40にて基台部20と接続されている。端子1では、接合部40は、バネ部材30の長手方向(すなわち、基台部20の長手方向L)に略直線状に延びている。端子1では、接合部40は、1つのバネ部材30に対して1つ設けられている。上記から、接合部40は、基台部20の側壁21の同一面上に1つ設けられている。なお、接合部40の形状及び数は、特に限定されず、端子1の使用条件等に応じて、適宜選択可能である。
【0029】
本発明の端子では、バネ部材30と基台部20の少なくとも一方に、接合部40の接続を解除するための治具が挿入可能な引っ掛け部41を有している。本発明の第1実施形態例に係る端子1では、バネ部材30に引っ掛け部41が設けられている。具体的には、バネ部材30の、側壁21の外面上を面状に延在している接続部32に、引っ掛け部41が設けられている。
【0030】
図1に示すように、端子1では、引っ掛け部41は、接合部40の近傍に設けられている。また、端子1では、引っ掛け部41は、バネ部材30の縁部に対応する部位に設けられている。具体的には、引っ掛け部41は、面状に延在している接続部32のうち、側壁連結部22に対向する下端部34、すなわち、側壁連結部22に対向する先端に設けられている。上記から、引っ掛け部41は、接合部40よりも側壁連結部22側に設けられている。
【0031】
また、引っ掛け部41は、接合部40の長手方向の端部近傍に設けられている。端子1では、引っ掛け部41は、接合部40の長手方向の両端部近傍に、それぞれ、1つずつ設けられている。なお、端子1では、接合部40の長手方向の中央部には、引っ掛け部41は設けられていない構成となっている。
【0032】
図1、2に示すように、端子1では、引っ掛け部41は、面状に延在している接続部32の下端部34が、局所的に幅方向Wの外側に膨らんだ形状となっている。引っ掛け部41は、基台部20の面方向(外面方向)に延在した屋根部42を有している。屋根部42は、基台部20の側壁21の外面23と所定間隔をあけて、基台部20の側壁21の外面23の延在方向に沿って延在している。
【0033】
また、引っ掛け部41は、屋根部42と接合部40との間に、幅方向Wの外側に向かって次第に膨らんでいる膨張部43を有している。屋根部42と膨張部43は連続しており、屋根部42と膨張部43にて、引っ掛け部41の空間部44が形成されている。また、空間部44の側壁連結部22側は、開口部45となっている。上記から、引っ掛け部41の開口部45は、空間部44から見て接合部40と対向する方向に開口した部位、すなわち、側壁連結部22方向に開口した部位である。
【0034】
引っ掛け部41は、接合部40におけるバネ部材30と基台部20との界面46に対し同一平面上の部位を起点に形成されている。すなわち、接合部40における接続部32と基台部20の側壁21の外面23との界面46に対し同一平面上の部位を起点にして、膨張部43が幅方向Wの外側に向かって膨らんでいる。
【0035】
接合部40の形成方法としては、特に限定されず、例えば、レーザ溶接、アーク溶接、摩擦撹拌溶接等の溶接、電子ビームによる接合が挙げられる。このうち、バネ部材30と基台部20の接合強度を確実に向上させることができ、また、接合部40の領域の低減が可能となり、基台部20からのバネ部材30の分離がさらに容易化される点から、接合部40がレーザ溶接からなることが好ましい。
【0036】
基台部20の材質としては、例えば、純銅が挙げられる。また、バネ部材30の材質としては、例えば、銅合金に金属めっきが施された複合材が挙げられる。金属めっきとしては、例えば、銀めっき、スズめっき等が挙げられる。バネ部材30が金属めっきの施された複合材であることで、耐摩耗性、電気的接続性が向上する。なお、電線の導体の材質としては、基台部20の材質と同じ材質、例えば、純銅が挙げられる。
【0037】
次に、端子1について、引っ掛け部41を用いて基台部20からバネ部材30を分離させる方法について説明する。
【0038】
図3に示すように、引っ掛け部41を用いて基台部20からバネ部材30を分離させるには、治具として、例えば、棒状部材100を使用することができる。後述するように、引っ掛け部41に挿入される棒状部材100が、基台部20からバネ部材30を分離させる治具として機能する。従って、簡易的な治具にて、接合部40の接続を解除することができる。
【0039】
具体的には、作業者は、棒状部材100の先端部101を、側壁連結部22の方向から、引っ掛け部41の開口部45を介して空間部44内へ挿入する。その後、作業者は、棒状部材100の先端部101を、引っ掛け部41の主に屋根部42に当接させて、屋根部42を幅方向Wの外側へ押す。引っ掛け部41の屋根部42が幅方向Wの外側へ向かって押し広げられて、屋根部42が幅方向Wの外側への応力を受けることに伴って、バネ部材30の接続部32が幅方向Wの外側への応力を受ける。バネ部材30の接続部32が幅方向Wの外側への応力を受けることにより、基台部20の側壁21において、バネ部材30の接続部32と基台部20の側壁21の外面23とを接続していた接合部40が、界面46にて破壊される。接合部40が界面46にて破壊されることに伴い、バネ部材30の接続部32が基台部20の側壁21の外面23から分離される。
【0040】
端子1では、バネ部材30に、バネ部材と基台部の接合部の接続を解除するための治具(図3では、棒状部材100)が挿入可能な引っ掛け部41を有することにより、作業者は棒状部材100を引っ掛け部41に挿入してバネ部材30を基台部20から剥がすように棒状部材100に応力を加えることで、基台部20からバネ部材30が容易に分離されて、接合部40の接続が解除される。また、端子1では、バネ部材30は基台部20と接合部40にて接続されているので、端子本体10を構成するバネ部材30と基台部20の接合強度は損なわれない。なお、具体的には、端子1では、レーザ溶接にて接合部40を形成されている。
【0041】
上記から、端子1では、複数の部材(端子1では、バネ部材30と基台部20)がレーザ溶接等で接合されて複数の部材間の接合強度に優れつつ、端子1を各部材ごとに分解(端子1では、銅合金が銀めっきされた複合材であるバネ部材30と、純銅である基台部20に分解)することが容易化される。従って、端子1では、端子1を構成する部材を同じ材料種ごとに分離、分別することができるので、端子1のリサイクル性が向上する。
【0042】
また、端子1では、引っ掛け部41が、接合部40におけるバネ部材30と基台部20の側壁21の外面23との界面46と同一平面上の部位を起点に形成されているので、作業者によって棒状部材100に加えられた応力がバネ部材30と基台部20との接合部40へ効率よく伝達されるので、基台部20からのバネ部材30の分離がさらに容易化される。
【0043】
また、端子1では、引っ掛け部41が接合部40の近傍に設けられているので、作業者によって棒状部材100に加えられた応力がバネ部材30と基台部20との接合部40へさらに確実に伝達されて、基台部20からのバネ部材30の分離がさらに容易化される。
【0044】
また、端子1では、引っ掛け部41が、バネ部材30の縁部である下端部34に設けられているので、引っ掛け部41への棒状部材100の挿入が容易化されて、作業性が向上する。
【0045】
また、端子1では、接合部40がバネ部材30の長手方向Lに延びていることで、バネ部材30と基台部20の接合強度を確実に向上させることができる。また、端子1では、引っ掛け部41が接合部40の長手方向の端部近傍に設けられていることで、接合部40の長手方向の端部から中央部へ向かって、順次、バネ部材30と基台部20を分離させることができる。従って、基台部20からバネ部材30を分離する際の応力を省力化できる。上記から、端子1では、接合部40がバネ部材30の長手方向Lに延び、且つ引っ掛け部41が接合部40の長手方向の端部近傍に設けられていることにより、バネ部材30と基台部20の接合強度を確実に向上させつつ、基台部20からのバネ部材30の分離をさらに容易化できる。
【0046】
また、端子1では、引っ掛け部41が、基台部20の側壁21の外面23に沿って延在した屋根部42を有することにより、棒状部材100への応力を基台部20の側壁21の外面23の延在方向に対して直交方向(すなわち、幅方向W)に加えることができるので、基台部20からのバネ部材30の引き剥がしが簡易化されて、基台部20からのバネ部材30の分離をさらに容易化できる。
【0047】
次に、本発明の第2実施形態例に係る端子について説明する。第2実施形態例に係る端子は、第1実施形態例に係る端子と主要な構成要素は共通しているので、第1実施形態例に係る端子と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0048】
なお、図4は、本発明の第2実施形態例に係る端子の斜視図である。図5は、本発明の第2実施形態例に係る端子における引っ掛け部の断面図である。図6は、本発明の第2実施形態例に係る端子における、棒状部材を引っ掛け部に挿入して基台部からバネ部材を分離させる仕組みを示す説明図である。
【0049】
第1実施形態例に係る端子1では、引っ掛け部41は、バネ部材30に設けられており、面状に延在している接続部32の下端部34が、局所的に幅方向Wの外側に膨らんだ形状となっていたが、これに代えて、図4に示すように、第2実施形態例に係る端子2では、基台部20に、接合部40の接続を解除するための治具が挿入可能な引っ掛け部41が設けられている。具体的には、基台部20の側壁21の外面23に、引っ掛け部41が設けられている。
【0050】
図4に示すように、端子2でも、引っ掛け部41は、接合部40の近傍に設けられている。また、端子2でも、引っ掛け部41は、バネ部材30の縁部に対応する部位に設けられている。具体的には、引っ掛け部41は、側壁21の外面23のうち、面状に延在している接続部32の側壁連結部22に対向する下端部34に対応する部位に設けられている。上記から、引っ掛け部41は、接合部40よりも側壁連結部22側に設けられている。
【0051】
また、端子2でも、接合部40は、バネ部材30の長手方向(すなわち、基台部20の長手方向L)に略直線状に延びており、引っ掛け部41は、接合部40の長手方向に沿って伸延している。端子2では、引っ掛け部41は、接合部40の長手方向の両端部から中央部にわたって、その近傍に設けられている。
【0052】
図4、5に示すように、端子2では、引っ掛け部41は、基台部20の側壁21の外面23が、側壁21の肉厚方向に溝状に形成された凹部52を有している。端子2では、凹部52は、基台部20の側壁21の外面23に側壁21の肉厚方向に形成された切り欠き部である。端子2でも、接合部40は、バネ部材30の長手方向(すなわち、基台部20の長手方向L)に略直線状に延びている。凹部52は、接合部40の長さと略同等の長さを有し、略直線状に、接合部40に対して略平行に伸延している。また、接合部40の長手方向の両端部近傍に、略直線状である凹部52の両端部が位置している。
【0053】
また、端子2でも、引っ掛け部41は、基台部20の面方向(外面方向)に延在した屋根部42を有している。端子2では、基台部20の側壁21の外面23に沿って平面状に延在している接続部32の下端部34とその近傍が、屋根部42となっている。屋根部42は、基台部20の側壁21の外面23に形成された凹部52の一部を覆いつつ、基台部20の側壁21の外面23の延在方向に沿って延在している。
【0054】
また、屋根部42は、接合部40におけるバネ部材30と基台部20との界面46と略同一平面上に形成されている。上記から、端子2でも、接合部40における接続部32と基台部20の側壁21の外面23との界面46に対し同一平面上の部位を起点にして、引っ掛け部41が形成されている。
【0055】
また、引っ掛け部41の凹部52の幅方向Wにおける断面形状は、特に限定されないが、端子2では、側壁連結部22から離れるに従って凹部52が深くなり、凹部52の底部を形成する傾斜部50と、幅方向W(側壁21の肉厚方向)に沿って形成された側壁部51と、を有する形状となっている。接続部32の屋根部42と凹部52の傾斜部50と側壁部51にて、引っ掛け部41の空間部44が形成されている。また、空間部44の側壁連結部22側は、開口部45となっている。上記から、引っ掛け部41の開口部45は、空間部44から見て接合部40と対向する方向に開口した部位、すなわち、側壁連結部22方向に開口した部位である。
【0056】
端子2では、接合部40における接続部32と基台部20の側壁21の外面23との界面46に対し同一平面上の部位を起点にして、凹部52が幅方向Wの内側に向かって形成されている。
【0057】
次に、端子2について、引っ掛け部41を用いて基台部20からバネ部材30を分離させる方法について説明する。
【0058】
図6に示すように、端子2でも、引っ掛け部41を用いて基台部20からバネ部材30を分離させるには、治具として、例えば、棒状部材100を使用することができる。引っ掛け部41に挿入される棒状部材100が、基台部20からバネ部材30を分離させる治具として機能する。
【0059】
具体的には、作業者は、棒状部材100の先端部101を、側壁連結部22の方向から、引っ掛け部41の開口部45を介して空間部44を形成している凹部52へ挿入する。その後、作業者は、棒状部材100の先端部101を、引っ掛け部41の主に屋根部42に当接させて、屋根部42を幅方向Wの外側へ押す。引っ掛け部41の屋根部42が幅方向Wの外側へ向かって押し広げられて、屋根部42が幅方向Wの外側への応力を受けることに伴って、バネ部材30の接続部32が幅方向Wの外側への応力を受ける。バネ部材30の接続部32が幅方向Wの外側への応力を受けることにより、基台部20の側壁21において、バネ部材30の接続部32と基台部20の側壁21の外面23とを接続していた接合部40が、界面46にて破壊される。接合部40が界面46にて破壊されることに伴い、バネ部材30の接続部32が基台部20の側壁21の外面23から分離される。
【0060】
端子2では、基台部20の側壁21に、バネ部材と基台部の接合部の接続を解除するための治具(図6では、棒状部材100)が挿入可能な凹部52を有する引っ掛け部41を備えることにより、作業者は棒状部材100を引っ掛け部41に挿入してバネ部材30を基台部20から剥がすように棒状部材100に応力を加えることで、基台部20からバネ部材30が容易に分離されて、接合部40の接続が解除される。また、端子2でも、バネ部材30は基台部20と接合部40にて接続されているので、端子本体10を構成するバネ部材30と基台部20の接合強度は損なわれない。
【0061】
上記から、端子2でも、複数の部材(端子1では、バネ部材30と基台部20)がレーザ溶接等で接合されて複数の部材間の接合強度に優れつつ、端子2を各部材ごとに分解(端子2でも、銅合金が銀めっきされた複合材であるバネ部材30と、純銅である基台部20に分解)することが容易化される。従って、端子2でも、端子1を構成する部材を同じ材料種ごとに分離、分別することができるので、端子2のリサイクル性が向上する。
【0062】
また、端子2では、引っ掛け部41の凹部52が、側壁連結部22から離れるに従って凹部52が深くなる傾斜部50を有するので、棒状部材100の凹部52への挿入が容易であり、また、棒状部材100を用いた屋根部42の幅方向Wの外側への押し作業も容易化される。
【0063】
次に、本発明の第3実施形態例に係る端子について説明する。第3実施形態例に係る端子は、第1実施形態例に係る端子と主要な構成要素は共通しているので、第1実施形態例に係る端子と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。なお、図7は、本発明の第3実施形態例に係る端子の斜視図である。
【0064】
第1実施形態例に係る端子1では、接合部40は、バネ部材30の長手方向(すなわち、基台部20の長手方向L)に略直線状に延びており、基台部20の側壁21の同一面上に1つ設けられていたが、これに代えて、図7に示すように、第3実施形態例に係る端子3では、接合部40が、基台部20の同一面上に複数設けられ、複数の接合部40のそれぞれの近傍に、引っ掛け部41が設けられている。端子3では、基台部20の側壁21の同一面上に、接合部40が2つ設けられ、2つの接合部40のそれぞれの近傍に、引っ掛け部41が設けられている。
【0065】
端子3では、バネ部材30の長手方向(すなわち、基台部20の長手方向L)の一端部60に接合部40-1が設けられ、他端部61に接合部40-2が設けられている。バネ部材30の長手方向中央部62には、接合部40は設けられていない。従って、端子3の接合部40は、第1実施形態例に係る端子1の接合部と比較して、局所的となっている。
【0066】
また、接合部40-1の近傍に、1つの引っ掛け部41-1が設けられ、接合部40-2の近傍に、1つの引っ掛け部41-2が設けられている。端子3では、第1実施形態例に係る端子1と同様に、引っ掛け部41-1、41-2は、いずれも、バネ部材30に設けられており、面状に延在している接続部32の下端部34が、局所的に幅方向Wの外側に膨らんだ形状となっている。
【0067】
端子3では、複数の接合部40のそれぞれの近傍に、引っ掛け部41が設けられているので、接合部40が複数形成されていても、基台部20からのバネ部材30の分離を容易化できる。また、端子3では、接合部40は局所的に形成されている点でも、基台部20からのバネ部材30の分離を容易化できる。
【0068】
次に、本発明の第4実施形態例に係る端子について説明する。第4実施形態例に係る端子は、第1~第3実施形態例に係る端子と主要な構成要素は共通しているので、第1~第3実施形態例に係る端子と同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。なお、図8は、本発明の第4実施形態例に係る端子の斜視図である。
【0069】
第1~第3実施形態例に係る端子1、2、3では、引っ掛け部41に治具(端子1、2、3では、棒状部材100)を挿入することで基台部20からバネ部材30を分離する構造であったが、これに代えて、図8に示すように、第4実施形態例に係る端子4では、基台部20の電線接続部13と側壁21の境界部66に分離部65が設けられている。端子4では、分離部65にて、バネ部材30が取り付けられている側壁21を基台部20の電線接続部13から分離させることで、基台部20からバネ部材30を分離する。端子4でも、幅方向Wにおける奥側の側壁21が電線接続部13と連続し、幅方向Wにおける手前側の側壁21と側壁連結部22は電線接続部13と連続していない構成となっている。従って、端子4では、幅方向Wにおける奥側の側壁21と電線接続部13の境界部66に、分離部65が設けられている。
【0070】
上記から、端子4は、電線110に接続される基台部20と、基台部20に取り付けられ、相手側の端子と電気的に接続されるバネ部材30と、を有する端子本体10が設けられ、バネ部材30は、基台部20と接合部にて接続され、バネ部材30が取り付けられている基台部20の部位と基台部20の電線接続部13との境界部66に分離部65が設けられている端子である。なお、図8では、基台部20の電線接続部13に電線110が接続されている。電線110としては、大電流用の太線化した電線が挙げられる。
【0071】
端子4では、基台部20の境界部66において、基台部20の高さ方向Hに切り欠き部が形成されて基台部20の高さ方向Hの寸法が低減されていることにより、分離部65が設けられている。上記から、分離部65は、電線接続部13及び側壁21と比較して機械的強度が若干低減されている。
【0072】
作業者は、基台部20の電線接続部13と側壁21を把持し、基台部20に対して幅方向Wに応力を加えることで、基台部20が分離部65にて分割されて、バネ部材30が取り付けられている側壁21を電線接続部13から分離させることができる。従って、端子4では、棒状部材等の治具は必要ではない。
【0073】
端子4では、基台部20とバネ部材30が異なる材料であり、さらに、基台部20と電線110の導体の材質が異なる場合であっても、材質ごとに分別することが容易化できるので、端子4のリサイクル性が向上する。
【0074】
端子4では、分離部65は、基台部20の高さ方向Hに切り欠き部が形成されている構造であるが、分離部65は、電線接続部13及び側壁21と比較して機械的強度が低減されている構造であれば、特に限定されない。分離部65としては、上記以外に、例えば、基台部20の厚さ方向に形成された線状の溝部の構造、基台部20の厚さ方向に形成された複数の穴部の構造、基台部20の厚さ方向に突出した線状の突起の構造等が挙げられる。
【0075】
次に、本発明の端子の他の実施形態例について説明する。第1実施形態例に係る端子では、引っ掛け部は、接合部の長手方向の両端部近傍に、それぞれ、1つずつ設けられており、接合部の長手方向の中央部には、引っ掛け部は設けられていない構成となっていたが、これに代えて、接合部の長手方向の両端部のうち、いずれか一方の端部近傍のみに引っ掛け部が設けられている構成でもよく、また、接合部の長手方向の両端部近傍に加えて、中央部近傍にも引っ掛け部が設けられている構成でもよい。
【0076】
第2実施形態例に係る端子では、引っ掛け部を構成する凹部は、接合部の長さと略同等の長さを有し、接合部の長手方向の両端部近傍に、略直線状である凹部の両端部が位置していたが、これに代えて、引っ掛け部を構成する凹部は、接合部の長手方向の両端部近傍のみに設けられていてもよく、接合部の長手方向のいずれか一方の端部近傍のみに設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1、2、3、4 端子
10 端子本体
20 基台部
21 側壁
30 バネ部材
40 接合部
41 引っ掛け部
42 屋根部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8