(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104443
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】積層体及び光硬化型組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 4/02 20060101AFI20240729BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240729BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
C09D4/02
B32B27/36 102
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008647
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】時田 康利
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秀一
【テーマコード(参考)】
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AK25B
4F100AK45
4F100AK45A
4F100AK45B
4F100AK51B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA05
4F100CA05B
4F100CA07
4F100CA07B
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4F100EH46
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4F100GB48
4F100JA06
4F100JA06B
4F100JB14
4F100JB14B
4F100JK06
4F100JK12
4F100JL09
4F100YY00B
4J038FA111
4J038FA281
4J038PA17
4J038PB07
4J038PB09
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】耐候性、硬度及びPC基材への密着性が良好である積層体を提供すること。
【解決手段】ポリカーボネートを含む基材と、該基材に積層された保護層とを備える積層体であって、保護層は、(A)ラジカル重合性成分と、(B)光重合開始剤と、(C)紫外線吸収剤と、(D)光安定化剤と、を含有する光硬化型組成物の硬化物を含み、(A)ラジカル重合性成分は、(A1)窒素含有単官能(メタ)アクリルモノマーと、(A2)脂環式多官能(メタ)アクリルモノマーと、を含み、(B)光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含む、積層体。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートを含む基材と、該基材に積層された保護層とを備える積層体であって、
前記保護層は、(A)ラジカル重合性成分と、(B)光重合開始剤と、(C)紫外線吸収剤と、(D)光安定化剤と、を含有する光硬化型組成物の硬化物を含み、
前記(A)ラジカル重合性成分は、(A1)窒素含有単官能(メタ)アクリルモノマーと、(A2)脂環式多官能(メタ)アクリルモノマーと、を含み、
前記(B)光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含む、積層体。
【請求項2】
前記(A)ラジカル重合性成分が、(A3)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタンアクリレートをさらに含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記(A3)ウレタンアクリレートがポリカーボネート構造を有する、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記(A)ラジカル重合性成分が、(A4)下記一般式(1)で表されるエチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【化1】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、n及びmは、n+m=20~40となるように選ばれる正の整数を示す。]
【請求項5】
前記ラジカル重合性成分が、(A5)脂環式単官能(メタ)アクリルモノマーをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記ラジカル重合性成分が、(A6)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリルモノマーをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記光硬化型組成物における前記(A1)窒素含有単官能(メタ)アクリルモノマーの含有量が、前記(A)ラジカル重合性成分全量を基準として5~50質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
前記光硬化型組成物における前記(A2)脂環式多官能(メタ)アクリルモノマーの含有量が、前記(A)ラジカル重合性成分全量を基準として5~50質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
前記光硬化型組成物における前記(A3)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタンアクリレートの含有量が、前記(A)ラジカル重合性成分全量を基準として0.1~30質量%である、請求項2又は3に記載の積層体。
【請求項10】
前記光硬化型組成物における前記(A4)エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートの含有量が、前記(A)ラジカル重合性成分全量を基準として0.1~20質量%である、請求項4に記載の積層体。
【請求項11】
前記光硬化型組成物における前記(A5)脂環式単官能(メタ)アクリルモノマーの含有量が、前記(A)ラジカル重合性成分全量を基準として20~55質量%である、請求項5に記載の積層体。
【請求項12】
前記光硬化型組成物における前記(A6)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリルモノマーの含有量が、前記(A)ラジカル重合性成分全量を基準として0.1~40質量%である、請求項6に記載の積層体。
【請求項13】
前記光硬化型組成物における前記(B)光重合開始剤の含有量が、前記ラジカル重合性成分100質量部に対して、0.5~5質量部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項14】
前記光硬化型組成物における前記(C)紫外線吸収剤の含有量が、前記ラジカル重合性成分100質量部に対して、2~40質量部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項15】
前記光硬化型組成物における前記(D)光安定化剤の含有量が、前記ラジカル重合性成分100質量部に対して、0.1~10質量部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項16】
(A)ラジカル重合性成分と、(B)光重合開始剤と、(C)紫外線吸収剤と、(D)光安定化剤と、を含有する光硬化型組成物であって、
前記(A)ラジカル重合性成分は、(A1)窒素含有単官能(メタ)アクリルモノマーと、(A2)脂環式多官能(メタ)アクリルモノマーと、を含み、
前記(B)光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含む、光硬化型組成物。
【請求項17】
25℃での粘度が20~500mPa・sである、請求項16に記載の光硬化型組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及び光硬化型組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等のモバイル端末筐体は、従来金属素材が使用されているが、第5世代移動通信システム(5G)の導入に伴い、金属素材の影響による通信及び充電時の障害が問題となっている。近年、モバイル端末の筐体は、通信時の影響も少なく軽量化も可能な樹脂素材化が注目され、検討が盛んに行われている。また、自動車分野においても、樹脂材料はヘッドランプ及び内装部材の材料として従来から使用されており、近年は外装軽量化及び車載ディスプレイカバーシートの樹脂化(ガラス代替)等の検討も行われている。これら背景から、樹脂材料は、より新しい機能を有するもの、及び、より高品質なものに対する需要が高まっており、それらの用途での技術要求が高まっている。
【0003】
上記樹脂材料としては、通常、市販のPET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)等が挙げられ、金属及びガラスに比べて軽量であり、透明性、信頼性に優れるという特徴を有している。特にPC樹脂を加工したシート、フィルムといった物品は、透明性、耐熱性、耐衝撃性に優れることから、車載ディスプレイ部材、ヘッドランプ、ガラス代替材料への適用検討が行われている。一方で、PC樹脂は耐候性、耐傷付性に弱く、特に紫外線で劣化・着色するため、特徴である透明性及び耐衝撃性が低下することから、その表面を保護する保護層を設けることが多い。すなわち、PC樹脂を用いた物品は、PC基材上にPC基材への付着性に優れるプライマ層を設け、プライマ層の上に耐傷付性等の機能を付与したハードコート層等を設けた多層体として提供される場合が多く、そのような多層体に関する提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記保護層としては、熱硬化型樹脂組成物又は光硬化型樹脂組成物といった塗液を、PC樹脂の板、シート又はフィルム等の面に数μmから数十μmの厚みに塗布し、硬化した膜が挙げられる。これら樹脂組成物は、ポリマ、オリゴマが主成分であるため、高粘度又は流動性のない性状であり、所定の膜厚に塗布することが難しく、溶剤で塗布可能な粘度まで希釈するのが一般的である。その場合、塗液を基材上に塗布後、溶剤を熱で揮発除去する乾燥工程が必要となる。熱硬化型としては主に水酸基を有するウレタン樹脂又はアクリル樹脂を主剤とし、そこに主剤の水酸基と反応し得るイソシアネート基を有するポリイソシアネート硬化剤を混合した2液硬化型が用いられている。しかし硬化には熱が必要であり、時間を要することが欠点として挙げられる。一方、光硬化型としては紫外線を照射することで短時間硬化が可能であり生産性に優れる特徴を有するが、硬化時の収縮による内部応力の蓄積により、熱硬化型に比べて重要特性である基材付着性に劣ることが欠点として挙げられる。
【0005】
一方、近年、カーボンニュートラルといった環境対応への国内外の取り組みから、樹脂及び塗液の製造工程、塗液の塗装工程、硬化工程において、二酸化炭素、揮発性有機溶剤(VOC)といった環境負荷物質の排出量削減が強く求められている。有機溶剤を多く含む塗液の場合、塗装後熱乾燥時に多量の有機溶剤が揮発するため、毒性、作業環境の面においても問題となっている。例えば特許文献1に開示された光硬化型樹脂組成物を使用したプライマ層は、光硬化型樹脂組成物が有機溶剤を多量に含んでいるため、上記問題が生じる。近い将来、有機溶剤及び熱を使用しない、且つ生産性に優れる無溶剤光硬化型樹脂組成物の開発要求が高まると考えられる。
【0006】
本出願人は、PC基材への密着性に優れる賦形層形成用の無溶剤型光硬化型組成物を提案している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-177772号公報
【特許文献2】国際公開第2019/031310号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示された賦形フィルムは、耐候性試験においてフィルムの着色、劣化が生じる場合があるため、耐候性の要求が高い自動車用途、特に外装への適用は困難であった。また、特許文献2に開示された賦形フィルムは、硬度の点においても更なる改善の余地を有していた。
【0009】
本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、耐候性、硬度及びPC基材への密着性が良好である積層体、及びこれを製造するための光硬化型樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の積層体及び光硬化型組成物を提供する。
【0011】
[1]ポリカーボネートを含む基材と、該基材に積層された保護層とを備える積層体であって、上記保護層は、(A)ラジカル重合性成分と、(B)光重合開始剤と、(C)紫外線吸収剤と、(D)光安定化剤と、を含有する光硬化型組成物の硬化物を含み、上記(A)ラジカル重合性成分は、(A1)窒素含有単官能(メタ)アクリルモノマーと、(A2)脂環式多官能(メタ)アクリルモノマーと、を含み、上記(B)光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含む、積層体。
[2]上記(A)ラジカル重合性成分が、(A3)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタンアクリレートをさらに含む、上記[1]に記載の積層体。
[3]上記(A3)ウレタンアクリレートがポリカーボネート構造を有する、上記[2]に記載の積層体。
[4]上記(A)ラジカル重合性成分が、(A4)下記一般式(1)で表されるエチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートをさらに含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
【化1】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、n及びmは、n+m=20~40となるように選ばれる正の整数を示す。]
[5]上記ラジカル重合性成分が、(A5)脂環式単官能(メタ)アクリルモノマーをさらに含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載の積層体。
[6]上記ラジカル重合性成分が、(A6)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリルモノマーをさらに含む、上記[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
[7]上記光硬化型組成物における上記(A1)窒素含有単官能(メタ)アクリルモノマーの含有量が、上記(A)ラジカル重合性成分全量を基準として5~50質量%である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の積層体。
[8]上記光硬化型組成物における上記(A2)脂環式多官能(メタ)アクリルモノマーの含有量が、上記(A)ラジカル重合性成分全量を基準として5~50質量%である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の積層体。
[9]上記光硬化型組成物における上記(A3)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタンアクリレートの含有量が、上記(A)ラジカル重合性成分全量を基準として0.1~30質量%である、上記[1]又は[2]に記載の積層体。
[10]上記光硬化型組成物における上記(A4)エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートの含有量が、上記(A)ラジカル重合性成分全量を基準として0.1~20質量%である、上記[4]に記載の積層体。
[11]上記光硬化型組成物における上記(A5)脂環式単官能(メタ)アクリルモノマーの含有量が、上記(A)ラジカル重合性成分全量を基準として20~55質量%である、上記[5]に記載の積層体。
[12]上記光硬化型組成物における上記(A6)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリルモノマーの含有量が、上記(A)ラジカル重合性成分全量を基準として0.1~40質量%である、上記[6]に記載の積層体。
[13]上記光硬化型組成物における上記(B)光重合開始剤の含有量が、上記ラジカル重合性成分100質量部に対して、0.5~5質量部である、上記[1]~[12]のいずれかに記載の積層体。
[14]上記光硬化型組成物における上記(C)紫外線吸収剤の含有量が、上記ラジカル重合性成分100質量部に対して、2~40質量部である、上記[1]~[13]のいずれかに記載の積層体。
[15]上記光硬化型組成物における上記(D)光安定化剤の含有量が、上記ラジカル重合性成分100質量部に対して、0.1~10質量部である、上記[1]~[14]のいずれかに記載の積層体。
[16](A)ラジカル重合性成分と、(B)光重合開始剤と、(C)紫外線吸収剤と、(D)光安定化剤と、を含有する光硬化型組成物であって、上記(A)ラジカル重合性成分は、(A1)窒素含有単官能(メタ)アクリルモノマーと、(A2)脂環式多官能(メタ)アクリルモノマーと、を含み、上記(B)光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含む、光硬化型組成物。
[17]25℃での粘度が20~500mPa・sである、上記[16]に記載の光硬化型組成物。
【0012】
上記[1]に記載の積層体によれば、(A)ラジカル重合性成分として(A1)窒素含有単官能(メタ)アクリルモノマー及び(A2)脂環式多官能(メタ)アクリルモノマーを含み、(B)光重合開始剤としてアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含み、且つ、(C)紫外線吸収剤及び(D)光安定化剤の両方を含む光硬化型組成物の硬化物により保護層が形成されていることで、保護層は、耐候性、硬度及びPC基材への密着性が良好なものとなる。
【0013】
上記[1]に記載の積層体において、光硬化型組成物が(A)ラジカル重合性成分として(A1)窒素含有単官能(メタ)アクリルモノマーを含むことで、物理的及び機械的な側面から、基材に対する硬化物の密着性を向上させることができる。また、無溶剤であっても光硬化型組成物の低粘度化が可能になり、基材上への塗工性及び濡れ性を大幅に向上させることができる。
【0014】
上記[1]に記載の積層体において、光硬化型組成物が(A)ラジカル重合性成分として(A2)脂環式多官能(メタ)アクリルモノマーを含むことで、基材に対する硬化物の密着性を維持しつつ、保護層の硬度及び耐候性を大幅に向上させることができる。
【0015】
上記[1]に記載の積層体において、光硬化型組成物が(B)光重合開始剤としてアシルフォスフィン系光重合開始剤を含むことで、光硬化型組成物は可視光領域の光吸収を有することができる。これにより光硬化時において、(C)紫外線吸収剤の紫外線吸収能による光硬化型組成物の光硬化阻害を防ぐことが可能になり、光硬化型組成物の効率的な硬化に有用となる。
【0016】
上記[1]に記載の積層体において、光硬化型組成物が(C)紫外線吸収剤を含むことにより、保護層及びポリカーボネート基材の耐候性試験下での着色及び劣化を抑制することができ、積層体の透明性を維持するのに有用となる。
【0017】
上記[1]に記載の積層体において、光硬化型組成物が(D)光安定化剤を含むことにより、保護層の耐候性試験下での着色及び劣化を抑制することができ、積層体の透明性を維持するのに有用である。また、(D)光安定化剤と(C)紫外線吸収剤とを併用することで、保護層及びポリカーボネート基材の耐候性試験下での着色及び劣化を抑制することができ、且つ(C)紫外線吸収剤の紫外線劣化による紫外線吸収能低下をさらに抑制することができ、長寿命化にも寄与できることから、相乗効果を発揮する。
【0018】
上記[2]に記載の積層体において、光硬化型組成物が(A3)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタンアクリレートをさらに含むことで、光重合型組成物の硬化物が、ウレタン結合由来の強靭性を得ることができる。また、(A3)成分を(A1)成分と組み合わせて用いることで、信頼性試験条件下においても基材に対する密着性を維持することができる。
【0019】
上記[3]に記載の積層体において、上記(A3)ウレタンアクリレートがポリカーボネート構造を有することで、基材に対する保護層の密着性がより高くなる。
【0020】
上記[4]に記載の積層体において、光硬化型組成物が(A4)エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートをさらに含むことで、光硬化型組成物が硬化する際の収縮が緩和されるため、光照射及び高温処理により光硬化型組成物の硬化反応が進行しても、基材に対する硬化物の密着性が長時間維持される。また、(A4)エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートは、硬化物の柔軟性を適度に向上させることができ、それによって硬化物の密着性を向上させることができる。
【0021】
上記[5]に記載の積層体において、光硬化型組成物が(A5)脂環式単官能(メタ)アクリルモノマーをさらに含むことで、光硬化型組成物が硬化する際の収縮が緩和されるため、光照射及び高温処理により光硬化型組成物の硬化反応が進行しても、基材に対する硬化物の密着性が長時間維持される。また、脂環式構造は、同炭素数からなる直鎖アルキル(メタ)アクリルモノマーに比べて、分子運動が拘束されることから、耐熱性を高めることができ、高温条件下においても、基材に対する密着性を、より長時間維持することができる。
【0022】
上記[6]に記載の積層体において、光硬化型組成物が(A6)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリルモノマーをさらに含むことで、保護層の硬度がより高くなるとともに、耐熱性を高めることができる。
【0023】
上記[9]に記載の積層体において、光硬化型組成物における上記(A3)ウレタンアクリレートの含有量が、上記(A)ラジカル重合性成分全量を基準として0.1~30質量%であると、信頼性試験条件下において、基材に対する保護層の密着性をより長時間維持することができる。また、ウレタンアクリレートは固有の凝集力によって非常に高い粘度を有する傾向にあるが、この範囲にあると、無溶剤であっても塗工可能な粘度に光硬化型組成物の粘度を調整することができる。
【0024】
上記[10]に記載の積層体において、光硬化型組成物における上記(A4)エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートの含有量が、上記(A)ラジカル重合性成分全量を基準として0.1質量%以上であると、優れた密着性を得る上でより適した柔軟性を与えることができるとともに、光硬化型組成物が硬化する際の収縮をより緩和することができる。また、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートの含有量が、上記(A)ラジカル重合性成分全量を基準として20質量%以下であると、硬化物のガラス転移温度を一定以上に保つことができる。硬化物のTgが一定以上であると、高温条件で硬化物の分子が動くことによる密着性の低下を抑えることができる。
【0025】
上記[11]に記載の積層体において、光硬化型組成物における上記(A5)脂環式単官能(メタ)アクリルモノマーの含有量が、上記(A)ラジカル重合性成分全量を基準として20~55質量%であると、高温条件下において、基材に対する保護層の密着性を、より長時間維持することができる。また、脂環式構造は、同炭素数からなる直鎖アルキル(メタ)アクリルモノマーに比べて、分子運動が拘束されることから、耐熱性を高めることができ、信頼性条件下においても、基材に対する密着性を、より長時間維持することができる。
【0026】
上記[16]に記載の光硬化型組成物は、上記積層体における保護層の形成に有用であり、耐候性、硬度及びPC基材への密着性が良好である積層体を得ることができる。
【0027】
上記[17]に記載の光硬化型組成物において、25℃での粘度が20~500mPa・sであると、光硬化型組成物の塗工性の観点において有利である。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、耐候性、硬度及びPC基材への密着性が良好である積層体、及びこれを製造するための光硬化型樹脂組成物を提供することができる。本発明の積層体は、耐候性を有する保護層を備え、且つ、耐候性試験を行った場合でも積層体の透明性を長時間(例えば、1000時間以上)維持することができる。特に、上記積層体は、基材がポリカーボネートを含んでいても、信頼性試験における基材に対する保護層の密着性を長時間維持することができる。本発明によれば、光硬化型樹脂組成物が無溶剤であっても、上記効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】積層体の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本明細書において、「(メタ)アクリル」の用語は、メタクリル又はアクリルを意味する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリレート」等の用語も同様である。
【0031】
本発明の一実施形態に係る積層体は、基材と、該基材に積層された保護層とを備え、基材はポリカーボネートを含み、保護層は、(A)ラジカル重合性成分と、(B)光重合開始剤と、(C)紫外線吸収剤と、(D)光安定化剤と、を含有する光硬化型組成物の硬化物を含む。また、上記(A)ラジカル重合性成分は、(A1)窒素含有単官能(メタ)アクリルモノマーと、(A2)脂環式多官能(メタ)アクリルモノマーと、を含み、上記(B)光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含む。
【0032】
図1に、積層体の一実施形態を模式的に示す。
図1に示す積層体10は、基材5と、基材5に積層された保護層1とを備える。基材5は、ポリカーボネートのみからなってもよい。保護層1は、上述した光硬化型組成物の硬化物(以下、単に「硬化物」ともいう)のみからなってもよい。光硬化型組成物は、有機溶剤の含有量が光硬化型組成物全量を基準として50質量%以下であってもよく、有機溶剤を含まない無溶剤光硬化型組成物であってもよい。
【0033】
保護層の厚みは、1μm以上であってよく、50μm以下であってよい。保護層が厚いと、基材への紫外線到達を抑制(保護層が紫外線を吸収)するため、基材の紫外線劣化及び着色を抑制することができ、積層体の透明性をより高いレベルで維持することができる。
【0034】
基材は、ポリカーボネート(PC)を含むPC基材であり、PCのみからなる基材であってもよい。従来、ポリエチレンテレフタレート(PET)に対する保護層の密着性と比べて、PCに対する保護層の密着性は低い傾向にあった。本発明に係る積層体の保護層は、基材がPC基材であっても、優れた密着性を発揮する。基材の形態は特に限定されないがフィルム、シート、板であってよい。基材の厚みは特に限定されないが、例えば10μm~10mmであってよい。
【0035】
以下、光硬化型組成物について説明する。光硬化型組成物は、(A)ラジカル重合性成分と、(B)光重合開始剤と、(C)紫外線吸収剤と、(D)光安定化剤と、を含有する。(A)ラジカル重合性成分(「(A)成分」ともいう)は、(A1)窒素含有単官能(メタ)アクリルモノマーと、(A2)脂環式多官能(メタ)アクリルモノマーと、を含む。(A)ラジカル重合性成分はさらに、(A3)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタンアクリレート、(A4)後述する一般式(1)で表されるエチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、(A5)脂環式単官能(メタ)アクリルモノマー、及び、(A6)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリルモノマーのうちの一種以上を含んでいてもよい。(A)ラジカル重合性成分は光照射によりラジカル重合し、重合体を形成する。これにより、光硬化型組成物が硬化する。(B)光重合開始剤は、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含む。
【0036】
(A1)窒素含有単官能(メタ)アクリルモノマー
窒素含有単官能(メタ)アクリルモノマー(「(A1)成分」ともいう)は、(メタ)アクリロイル基を1個のみ有し、かつ、窒素原子を含有する官能基を有する単官能(メタ)アクリルモノマーである。このような単官能(メタ)アクリルモノマーを含むことで、物理的及び機械的な側面から、基材に対する保護層の密着性を向上させることができる。より具体的には、この成分を含むことで、硬化物と基材との間に化学的な相互作用が生じ(物理的な側面)、また、基材に対する硬化物のアンカー効果が発揮される(機械的な側面)ため、基材に対する硬化物の密着性が向上する。また、硬化物の硬度も向上する。
【0037】
窒素含有単官能(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート及びこれらの誘導体が挙げられ、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体が好ましい。窒素含有単官能(メタ)アクリルモノマーは、下記一般式(3a)又は(3b)で表される(メタ)アクリルアミド誘導体((メタ)アクリルアミドを含む)であってもよい。一般式(3a)及び(3b)中、Rは水素原子又はメチル基である。一般式(3a)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、炭素原子、水素原子及び酸素原子から選ばれる少なくとも1種の原子からなる1価の基を示す。R1及びR2はそれぞれ独立に、置換基を有する若しくは有しない炭素数1~3のアルキル基、又は水素原子であってもよく、特に、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はヒドロキシエチル基であってもよい。R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基であってもよい。一般式(3b)中、R3及びR4はそれぞれ独立に、炭素原子、水素原子及び酸素原子から選ばれる少なくとも1種の原子からなる2価の基を示す。R3、R4及び窒素原子(N)は、テトラヒドロ-1,4-オキサジン環を形成していてもよい。
【0038】
【0039】
窒素含有単官能(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、及びN-ヒドロキシエチルアクリルアミドが挙げられる。これらの窒素含有単官能(メタ)アクリルモノマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0040】
光硬化型組成物における窒素含有単官能(メタ)アクリルモノマーの含有量は、ラジカル重合性成分全量を基準として、5~50質量%であってよく、5~40質量%であってよく、7.5~40質量%であってもよく、7.5~35質量%であってもよい。窒素含有単官能(メタ)アクリルモノマーの含有量が上記範囲内にあると、保護層の硬度を向上させることができるとともに、信頼性条件下において、基材に対する保護層の密着性を、より長時間維持することができる。また、窒素含有単官能(メタ)アクリルモノマーの含有量が40質量%以下であると、含有量が40質量%を超える場合と比べて、硬化物のヘイズを小さくすることができる。
【0041】
(A2)脂環式多官能(メタ)アクリルモノマー
脂環式多官能(メタ)アクリルモノマー(「(A2)成分」ともいう)は、(メタ)アクリロイル基を2個以上有し、かつ、脂環構造を有する多官能(メタ)アクリルモノマーである。このような多官能(メタ)アクリルモノマーを含むことで、光硬化型組成物が硬化する際の収縮が軽減されるため、光照射及び高温処理により光硬化型組成物の硬化反応が進行しても、硬化物の密着性が維持されると共に、(メタ)アクリロイル基を2個以上有することで、保護層の硬度及び耐候性を高めることができる。また、脂環式構造は、同炭素数からなる直鎖アルキル(メタ)アクリルモノマーに比べて、分子運動が拘束されることから、耐熱性を高めることができ、信頼性条件下においても、基材に対する密着性を、より長時間維持することができる。
【0042】
脂環構造としては、例えば、シクロヘキシル骨格、ジシクロペンタジエン骨格、アダマンタン骨格、イソボルニル骨格、シクロアルカン骨格(シクロヘプタン骨格、シクロオクタン骨格、シクロノナン骨格、シクロデカン骨格、シクロウンデカン骨格、シクロドデカン骨格等)、シクロアルケン骨格(シクロヘプテン骨格、シクロオクテン骨格等)、ノルボルネン骨格、ノルボルナジエン骨格、多環式骨格(キュバン骨格、バスケタン骨格、ハウサン骨格等)、スピロ骨格などが挙げられる。これらの中でも、高温条件下において保護層の密着性をより長時間維持する観点から、シクロヘキシル骨格、ジシクロペンタジエン骨格、アダマンタン骨格又はイソボルニル骨格が好ましい。
【0043】
脂環式多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を2個有するジ(メタ)アクリレートが好ましく、具体的には、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン環を含むポリカーボネートジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、高温条件下において保護層の密着性をより長時間維持し、且つ、保護層の硬度及び耐候性をより高める観点から、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートが好ましい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
光硬化型組成物における脂環式多官能(メタ)アクリルモノマーの含有量は、高温条件下において保護層の密着性をより長時間維持、且つ、保護層の硬度及び耐候性をより高める観点から、ラジカル重合性成分全量を基準として、5~50質量%であってよく、7.5~45質量%であってよく、10~45質量%であってよく、10~40質量%であってよい。脂環式多官能(メタ)アクリルモノマーの含有量が上記範囲内にあると、保護層の密着性、硬度及び耐候性をよりバランス良く向上させることができる。脂環式多官能(メタ)アクリルモノマーの含有量が5質量%以上であると、硬度を向上させることができる。脂環式多官能(メタ)アクリルモノマーの含有量が50質量%以下であると、密着性が向上する傾向がある。
【0045】
(A3)ウレタンアクリレート
光硬化型組成物は、(A)ラジカル重合性成分として、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタンアクリレート(「(A3)成分」ともいう)をさらに含んでいてもよい。このようなウレタンアクリレートを含むことで、硬化物は、ウレタン結合由来の強靭性を得ることができる。また、(A1)成分と組み合わせることで、信頼性試験条件下においても基材に対する密着性を維持することができる。そして、(A1)成分と組み合わせることで、密着力が低下しやすい信頼性条件下においても、保護層は、基材に対する密着性を長時間維持することができる。また、ウレタンアクリレートは、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとの重縮合体であるポリウレタン鎖と、水酸基を有する単官能(メタ)アクリルモノマーとを反応させて得られる。
【0046】
ウレタンアクリレートの原料として用いられるポリオールとしては、例えば、ポリカーボネートジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のジオールが挙げられる。これらのポリオールは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。一般に、ポリカーボネートジオール、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、又はポリカプロラクトンジオールを用いて得られるウレタンアクリレートは、それぞれ、ポリカーボネートウレタンアクリレート、ポリエステルウレタンアクリレート、ポリエーテルウレタンアクリレート、又はカプロラクトンウレタンアクリレートと称される。
【0047】
ウレタンアクリレートの原料として用いられるポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加されたトリレンジイソシアネート、水素添加されたキシリレンジイソシアネート、水素添加されたジフェニルメタンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシーアネートが挙げられる。これらのポリイソシアネートは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
ウレタンアクリレートの原料として用いられる、水酸基を有する単官能(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの(メタ)アクリルモノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
ウレタンアクリレートとしては、ポリカーボネート(PC)構造を有するウレタンアクリレートが好ましく、PC構造を有しかつ芳香環構造を有さないウレタンアクリレートがより好ましい。PC構造を有するウレタンアクリレートを使用することで、保護層の密着性がより高くなる。また、芳香環構造を有さないウレタンアクリレートを使用することで、高い透明性を有し、耐候性劣化し難い硬化物を得ることができる。
【0050】
ウレタンアクリレートの重量平均分子量は特に制限されないが、1000以上、30000以下であることが好ましく、2000以上、20000以下であることがより好ましく、3000以上、10000以下であることがさらに好ましい。ウレタンアクリレートの重量平均分子量が1000以上であると、光硬化型組成物の粘度が、塗工するのに良好となり、光硬化型組成物の塗工性が向上する傾向にある。重量平均分子量が30000以下であると、塗工性を維持するために使用される得る希釈モノマーの量が少なくてすむため、硬化物の硬度及び密着性が向上する傾向にある。ウレタンアクリレートの重量平均分子量は、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとのモル比、又はそれらの分子量によって調整できる。本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算された値である。
【0051】
ウレタンアクリレートが有する(メタ)アクリロイル基は2個以上であれば特に制限されないが、6個以下であることが好ましく、4個以下であることがより好ましく、3個以下であることがさらに好ましい。ウレタンアクリレートが有する(メタ)アクリロイル基の個数が上記範囲内であると、信頼性条件下において、基材に対する保護層の密着性を、より長時間維持することができる。
【0052】
光硬化型組成物におけるウレタンアクリレートの含有量は、ラジカル重合性成分全量を基準として、0.1~30質量%であってよい。信頼性条件下において保護層の密着性をより長時間維持する観点から、ウレタンアクリレートの含有量は、ラジカル重合性成分全量を基準として、5~25質量%であってもよい。光硬化型組成物の塗工性の観点から、ウレタンアクリレートの含有量は、ラジカル重合性成分全量を基準として、0.1~30質量%であってもよく、1~30質量%であってもよく、5~25質量%であってもよい。
【0053】
(A4)エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート
光硬化型組成物は、(A)ラジカル重合性成分として、下記一般式(1)で表されるエチレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート(「EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート」又は「(A4)成分」ともいう)をさらに含んでいてもよい。このようなEO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートを含むことで、硬化物のガラス転移温度(Tg)が適度に向上することにより柔軟性が適度に向上するため、硬化物の密着性がより向上する。また、光硬化型組成物が硬化する際の収縮が緩和されるため、光照射及び高温処理により光硬化型組成物の硬化反応が進行しても、硬化物の密着性が維持される。
【0054】
【化3】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、n及びmは、n+m=20~40となるように選ばれる正の整数を示す。]
【0055】
一般式(1)において、硬化物の柔軟性を高める観点から、n及びmは、n+m=22~37となるように選ばれる正の整数であることが好ましく、n+m=25~35となるように選ばれる正の整数であることがより好ましい。また、光硬化型組成物の光硬化性、及び光硬化型組成物の硬化物のTgの観点から、R1及びR2は水素原子であることが好ましい。いいかえれば、一般式(1)で表される化合物は、EO変性ビスフェノールAジアクリレートであることが好ましい。
【0056】
(A4)成分の具体例として、FA-323A(株式会社レゾナック製)及びA-BPE-30(新中村化学工業株式会社製)が挙げられる。これらはいずれも、エチレンオキサイド(EO)で変性されたビスフェノールAの、ジアクリレートであり、n+m=30である。
【0057】
光硬化型組成物におけるEO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートの含有量は、ラジカル重合性成分全量を基準として、0.1~20質量%であってもよく、1~19質量%であってもよく、5~15質量%であってもよい。EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートの含有量が0.1質量%以上である場合、優れた密着性を得る上でより適した柔軟性を与えるとともに、光硬化型組成物が硬化する際の収縮をより緩和することができる。EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートの含有量が20質量%以下である場合、硬化物のTgを一定以上に保つことができる。硬化物のTgが一定以上であると、高温条件で硬化物の分子が動くことによる密着性の低下を抑えることができる。
【0058】
(A5)脂環式単官能(メタ)アクリルモノマー
光硬化型組成物は、(A)ラジカル重合性成分として、脂環式単官能(メタ)アクリルモノマー(「(A5)成分」ともいう)をさらに含んでいてもよい。脂環式単官能(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリロイル基を1個のみ有し、かつ、脂環構造を有する単官能(メタ)アクリルモノマーである。このような単官能(メタ)アクリルモノマーを含むことで、光硬化型組成物が硬化する際の収縮が軽減されるため、光照射及び高温処理により光硬化型組成物の硬化反応が進行しても、硬化物の密着性が維持される。また、脂環式構造は、同炭素数からなる直鎖アルキル(メタ)アクリルモノマーに比べて、分子運動が拘束されることから、耐熱性を高めることができ、信頼性条件下においても、基材に対する密着性を、より長時間維持することができる。
【0059】
脂環構造としては、例えば、シクロヘキシル骨格、ジシクロペンタジエン骨格、アダマンタン骨格、イソボルニル骨格、シクロアルカン骨格(シクロヘプタン骨格、シクロオクタン骨格、シクロノナン骨格、シクロデカン骨格、シクロウンデカン骨格、シクロドデカン骨格等)、シクロアルケン骨格(シクロヘプテン骨格、シクロオクテン骨格等)、ノルボルネン骨格、ノルボルナジエン骨格、多環式骨格(キュバン骨格、バスケタン骨格、ハウサン骨格等)、スピロ骨格などが挙げられる。これらの中でも、高温条件下において保護層の密着性をより長時間維持する観点から、シクロヘキシル骨格、ジシクロペンタジエン骨格、アダマンタン骨格又はイソボルニル骨格が好ましい。
【0060】
脂環式単官能(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリレートが好ましく、具体的には、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、高温条件下において保護層の密着性をより長時間維持する観点から、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、又はジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
光硬化型組成物における脂環式単官能(メタ)アクリルモノマーの含有量は、高温条件下において保護層の密着性をより長時間維持する観点から、ラジカル重合性成分全量を基準として、20~55質量%であってよく、22~53質量%であってもよく、25~50質量%であってもよい。
【0062】
光硬化型組成物は、(A2)成分と(A5)成分の両方を含有することが好ましい。(A2)成分と(A5)成分とを併用することにより、保護層の密着性、硬度及び耐候性をよりバランス良く向上させることができる。上記効果をより十分に得る観点から、(A2)成分と(A5)成分との含有量の質量比((A2)成分の含有量/(A5)成分の含有量)は、0.5~1.5であってよく、0.6~1.2であってよく、0.7~1.0であってよく、0.7~0.9であってよい。上記質量比が0.5以上であると、保護層の硬度及び耐候性がより向上する傾向があり、1.5以下であると、保護層の密着性がより向上する傾向がある。
【0063】
(A6)多官能(メタ)アクリルモノマー
光硬化型組成物は、(A)ラジカル重合性成分として、(A6)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリルモノマー(「(A6)成分」ともいう)をさらに含んでいてもよい。このような成分を適度に含むことで、保護層の硬度がより高くなるとともに、耐熱性を高めることができる。なお、(A6)成分は、(A2)成分、(A3)成分及び(A4)成分のいずれにも該当しない成分である。
【0064】
多官能(メタ)アクリルモノマーは、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、3-メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、α,ω-ジ(メタ)アクリルビスジエチレングリコールフタレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ポリグリセリンポリアクリレート、並びに、これらをエチレンオキサイド変性又はプロピレンオキサイド変性したアルキレンオキサイド変性多官能(メタ)アクリレート、及びこれらをカプロラクトン変性したカプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリルモノマーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0065】
光硬化型組成物における多官能(メタ)アクリルモノマーの含有量は、ラジカル重合性成分全量を基準として、0.1~40質量%であることが好ましく、0.2~37.5質量%であることがより好ましく、0.5~30質量%であることがさらに好ましい。
【0066】
光硬化型組成物は、上記(A1)~(A6)成分以外の(A)ラジカル重合性成分をさらに含むことができる。(A1)~(A6)成分以外の(A)ラジカル重合性成分としては、例えば、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレートテトラヒドロフルフリルアクリレート、オルトフェニルフェノキシエチルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等の希釈モノマーが挙げられる。(A1)~(A6)成分以外のラジカル重合性成分の含有量は、(A)ラジカル重合性成分全量を基準として、90質量%以下であってもよく、0.1~90質量%であってもよく、0.5~80質量%であってもよく、1~75質量%であってもよく、1~50質量%であってもよい。これらの成分を含むことで、光硬化型組成物の粘度を低くすることができ、硬化物の密着性を向上させることができる。
【0067】
(B)光重合開始剤
光硬化型組成物は、光ラジカル重合による効率的な硬化のために、光重合開始剤(「(B)成分」ともいう)を含有する。光重合開始剤は、活性エネルギー線が照射されたときにラジカル重合を開始させる化合物である。活性エネルギー線は、例えば、紫外線、電子線、α線、β線、及びγ線を含む。光重合開始剤は、より高い硬化性を得るために、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を含む。光重合開始剤としては、アシルフォスフィンオキサイド系以外に、ベンゾフェノン系、アントラキノン系、ベンゾイル系、ベンジルジメチルケタール系、α-ヒドロキシアルキルフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、α-アミノアルキルフェノン系、スルホニウム塩系、ジアゾニウム塩系、オニウム塩系等の光重合開始剤を含んでいてもよい。
【0068】
アシルフォスフィン系光重合開始剤としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等の化合物が挙げられる。
【0069】
光重合開始剤は、上記アシルフォスフィン系光重合開始剤以外の他の光重合開始剤を併用してもよい。これら他の光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、N,N,N’,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N,N’,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、2-エチルアントラキノン、t-ブチルアントラキノン、1,4-ジメチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2,3-ジクロロアントラキノン、3-クロロ-2-メチルアントラキノン、1,2-ベンゾアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等の芳香族ケトン化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンジル、ベンジルジメチルケタール等のベンジル化合物;2,2-ジエトキシアセトフェノン等の芳香族ケトン化合物;β-(アクリジン-9-イル)(メタ)アクリル酸のエステル化合物、9-フェニルアクリジン、9-ピリジルアクリジン、1,7-ジアクリジノヘプタン等のアクリジン化合物;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾール二量体、2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メチルメルカプトフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパン等のα-アミノアルキルフェノン化合物;並びにオリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)が挙げられる。
【0070】
光硬化型組成物における光重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性成分100質量部に対して、0.01質量部以上、0.1質量部以上、又は0.5質量部以上であってよく、10質量部以下、6質量部以下、又は5質量部以下であってよい。光重合開始剤の含有量がこの範囲にあることで、特に良好な光重合性が得られる。
【0071】
(C)紫外線吸収剤
光硬化型組成物は、紫外線吸収剤(「(C)成分」ともいう)をさらに含有する。紫外線剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)系紫外線吸収剤等を使用することができる。これらの紫外線吸収剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、優れた密着性、硬度、及び光安定性を得る観点、並びに、光硬化型組成物に含有される(メタ)アクリルモノマーとの相溶性の観点から、HPT系紫外線吸収剤が好ましい。
【0072】
HPT系紫外線吸収剤としては、例えば、85% 2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニルと、オキシラン(特に、[(アルキルオキシ)メチル]オキシランであって、アルキルオキシはC10~C16、主としてC12~C13である)との反応生成物の15% 1-メトキシ-2-プロパノール溶液(商品名:TINUVIN(登録商標) 400)、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと(2-エチルヘキシル)-グリシド酸エステルの反応生成物(商品名:TINUVIN 405)、2,4-ビス「2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン(商品名:TINUVIN 460)、TINUVIN 477、及びTINUVIN 479が挙げられる(いずれもBASFジャパン株式会社製である)。中でも、優れた光安定性を得る観点及び光硬化型組成物に含有される(メタ)アクリルモノマーとの相溶性の観点から、TINUVIN 479が好ましい。TINUVIN 479は、4-[4,6-ビス(ビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]ベンゼン-1、3-ジオールと、アルキル=2-ブロモプロパノアートとの反応生成物であり、アルキル=2-{4-[4,6-ビス(ビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-3-ヒドロキシフェノキシ}プロパノアートを主成分とする。上記「アルキル」は炭素数8の分岐型アルキルを指す。
【0073】
光硬化型組成物における紫外線吸収剤の含有量は、高温による硬化物の黄変を防ぐ観点から、ラジカル重合性成分100質量部に対して、0.01~40質量部であることが好ましく、2~40質量部であることがより好ましく、2~35質量部であることがさらに好ましい。
【0074】
(D)光安定化剤
光硬化型組成物は、光安定化剤(「(D)成分」ともいう)をさらに含有する。光安定化剤としては例えば、チオール系、チオエーテル系、ヒンダードアミン系化合物等のラジカル捕捉材を使用することができる。(D)成分を含むことにより、保護層の耐候性試験下での着色及び劣化を抑制することができ、積層体の透明性を維持することができる。また、(D)光安定化剤を(C)紫外線吸収剤と併用することで、保護層及びポリカーボネート基材の耐候性試験下での着色及び劣化を抑制することができ、且つ(C)紫外線吸収剤の紫外線劣化による紫外線吸収性能低下を抑制することができ、長寿命化にも寄与できることから、相乗効果を発揮する。これらの光安定化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、優れた密着性、硬度、及び光安定性を得る観点、並びに、光硬化型組成物に含有される(メタ)アクリルモノマーとの相溶性の観点から、ヒンダードアミン系光安定化剤が好ましい。
【0075】
ヒンダードアミン系光安定化剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)=デカンジオアートと2-ヒドロペルオキシ-2-メチルプロパンとオクタンの反応生成物(商品名:TINUVIN 123)、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸 ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(商品名:TINUVIN 144)、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールと3,5,5-トリメチルヘキサン酸のエステル(商品名:TINUVIN249)、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)=デカンジオアート、メチル=1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル=デカンジオアート等が挙げられる。中でも、優れた光安定性を得る観点及び光硬化型組成物に含有される(メタ)アクリルモノマーとの相溶性の観点から、TINUVIN123、TINUVIN249が好ましい。
【0076】
光硬化型組成物における光安定化剤の含有量は、高温による硬化物の黄変を防ぐ観点から、ラジカル重合性成分100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、1~5質量部であることがより好ましい。
【0077】
光硬化型組成物には、必要に応じて、シリコーン系界面活性剤、増粘剤、レベリング剤、帯電防止剤、消泡剤等の添加剤をさらに添加してもよい。光硬化型組成物における添加剤の合計含有量は、ラジカル重合性成分100質量部に対して、例えば、0.01~10質量部であってもよい。なお、光硬化型組成物に溶剤が含まれない場合でも、光硬化型組成物の粘度は塗工に好適な、十分に低い粘度を有する。
【0078】
光硬化型組成物の25℃での粘度は、10~500mPa・sが好ましく、20~500mPa・sがより好ましく、20~400mPa・sがさらに好ましい。粘度が上記範囲内にあると、光硬化型組成物の塗工性の観点において有利である。粘度は、例えば、各成分の分子量又は比率等を調節することで調整することができる。
【0079】
積層体の製造方法は特に限定されず、例えば、下記のような製造方法により製造することができる。まず、基材の片面(主面)に光硬化型組成物を均一に塗布後、光硬化型組成物の塗膜を形成する。ここで、塗膜を離型フィルムで覆ってもよい。次に、光硬化型組成物の塗布面側から塗膜に対して活性エネルギー線を照射して塗膜を硬化することで、基材に光硬化型組成物の硬化物が積層された積層体を得ることができる。
【0080】
ここで、光源は、光硬化型組成物を十分に硬化することができるものであれば特に制限されず、高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプ等、光硬化型の組成物を硬化するのに一般的に使用される光源を使用することができる。活性エネルギー線の照射量も、光硬化型組成物を十分に硬化することができる量であれば特に制限されず、例えば、1000mJ/cm2であってよい。また、光硬化環境は空気下、窒素等の不活性ガス雰囲気下等一般的に使用される環境条件でよい。塗液表面を離型フィルムで覆う、或いは不活性ガス雰囲気下で光硬化する場合、光硬化組成物の表面硬化性を高める観点から有用である。
【実施例0081】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0082】
<原材料>
表1は、以下の例において光硬化型組成物を調製するために用いられた原材料を示す。
【0083】
【0084】
[実施例1~5及び比較例1~9]
<光硬化型組成物の調製>
表2に示す配合割合(単位:質量部)の各成分を配合し、60℃で1時間撹拌して、実施例1~5及び比較例1~9の均一な光硬化型組成物(無溶剤光硬化型組成物)を得た。
【0085】
<粘度の測定>
各光硬化型組成物の粘度を、東機産業株式会社製のデジタル型粘度計 RE80R型を用いて、25℃で測定した。
【0086】
<評価用サンプルの作製>
基材としての厚み2mmのPC板(TP技研株式会社製、商品名:テストピースPC透明)上に、硬化物の厚みが10μmになるように実施例1~5及び比較例1~9の光硬化型組成物を均一に塗布した。形成された光硬化型組成物の塗膜に対し、高圧水銀ランプを用いて、塗膜側かの紫外線を照射することにより塗膜を硬化し、保護層を形成した。得られた基材及び保護層からなる積層体を評価用サンプルとした。
【0087】
<評価>
(1)硬化性の評価
紫外線照射により硬化した後の保護層を指触にて評価した。保護層表面のベタつきがなく、且つ、指の腹を保護層表面から深さ方向に押し付けても凹むことがない場合、「〇:保護層表面及び保護層深部が硬化している」と判定した。それ以外の場合を「×:硬化不足(液状)」と判定した。硬化性の評価が「×」である場合、それ以降の評価ができないため、他の評価は行わなかった。
【0088】
(2)PC基材密着性の評価
密着性は、JIS K 5600-5-6:1999の規格に準じて、クロスカット剥離試験により評価した。具体的には、まず、評価用サンプルの保護層に対し、10mm×10mmの区画に、カッターナイフを用いて1mm間隔で基材に達する深さの切り傷を、碁盤目状(100マス)につけた。切り傷部分にセロハンテープ(ニチバン株式会社製、セロテープ(登録商標))を圧着させ、テープの端を持って45°の角度でテープを引き剥がした。試験片を観察し、いずれの切り傷部分においても硬化物が基材から剥がれていない場合に、硬化物が「〇:密着している」と判定し、硬化物が切り傷部分を起点として基材から剥がれている箇所があった場合(僅かに剥れている等の状態によらず全て)、硬化物が「×:密着していない」と判定した。
【0089】
(3)85℃85%RH高温高湿試験後の密着性の評価
評価用サンプルを85℃、85%RH条件に設定した恒温恒湿器(エスペック株式会社製、商品名::恒温恒湿器PL-3J)に入れ、1000時間高温高湿試験を行った。試験後、評価用サンプルを取り出し、上記(2)PC基材密着性の評価と同様の手順にて、高温高湿試験後の密着性の評価を行った。
【0090】
(4)鉛筆硬度の測定
評価用サンプルにおける、積層体(保護層面)の鉛筆硬度を、JIS K 5600-5-4:1999の規格に準じて測定した。鉛筆を保護層の主面に対して45°の角度であて、750gの荷重をかけながら保護層の表面をひっかいた。これを、硬さの異なる鉛筆で繰り返し、凹み傷を残さなかった鉛筆の硬さのうち、最も硬いものを記録した。但し、比較例4の保護層は、光硬化型組成物が高粘度であるため、塗布した際、平滑な保護層を得ることができなかった。それにより鉛筆を用いた試験でも表面に凹凸が生じたため、評価ができなかった。また、比較例5の保護層は、硬さ6Bの鉛筆を用いた試験でも硬化物が基材から剥離したため、評価ができなかった。比較例5の保護層は、基材から容易に剥離するものであったため、下記(6)の評価も実施しなかった。
【0091】
(5)促進耐候性試験後の外観性状評価
評価用サンプルの保護層面の一部に、基材密着性評価と同様にカッターナイフを用いて1mm間隔で基材に達する深さの切り傷を碁盤目状(100マス)につけた状態のものを試験片とした。この試験片に対し、下記の条件で耐候性試験を行った。
・試験装置:QUV(Q-LAB社製)
・ランプ:UVB-313
・照度:0.62W/m2
・1サイクル:24時間〔UV照射:20時間(温度80℃)、結露:4時間(温度50℃)〕
・試験時間:3000時間
耐候性試験後に試験片を取り出し、碁盤目状に切り傷を付けた箇所の塗膜外観(剥がれ、浮き、クラックの有無)を目視にて観察した。塗膜の剥がれ、浮き、クラックがいずれも発生していない場合を「〇」、剥れ、浮き、クラックの少なくとも一つが発生している場合を「×」と評価した。
【0092】
(6)促進耐候性試験後の透明性評価
評価用サンプルを試験片とし、この試験片に対し、上記(5)と同じ条件で耐候性試験を行った。但し、耐候性試験の試験時間は、1000時間、2000時間、3000時間とした。耐候性試験前後の試験片の保護層の色相変化(ΔL*、Δa*、Δb*)を分光色彩計(日本電色工業株式会社製、商品名:SD 6000)にて透過測定した。色相の総合変化値は、下記式に示すΔE*abにて算出した。ΔE*abの数値が高い場合、色相変化があることを意味する。
ΔE*ab={(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2}1/2
【0093】
上記(1)~(6)の評価結果及び粘度の測定結果を表2に示す。
【0094】
【0095】
表2に示した通り、実施例1~5の光硬化型組成物を光硬化した保護層は、紫外線吸収剤による硬化阻害もなく硬化が確認され、PC基材との密着性を有しており、高い硬度を有していた。また、実施例1~5の光硬化型組成物を光硬化した保護層は、過酷な長時間の耐候性試験後も高い透明性、外観性状を維持していた。
【0096】
一方、(A1)成分を含まない比較例2の保護層は、PC基材密着性が不十分であった。(B)成分としてアシルフォスフィン系光重合開始剤を含まない比較例3は、光硬化型組成物が硬化しなかった。(A1)成分を含まず、(A3)成分比率の多い比較例4は、光硬化型組成物が高粘度であり塗布性に劣っていることから、均一な保護層を得ることができなかった。(A6)成分の配合比率の多い比較例5の保護層は、PC基材密着性が不十分であった。
【0097】
(D)光安定化剤を含まない比較例1の保護層は、実施例と比べると耐候性試験の初期段階から色相変化が生じていた。(C)紫外線吸収剤及び(D)光安定化剤の両方を含まない比較例6の保護層は、耐候性試験の極めて初期段階(110時間及び570時間)から色相変化が生じていた。
【0098】
(A2)成分を含まない比較例7~9の保護層は、実施例と比べると硬度が劣っており、(C)紫外線吸収剤の量を増やした場合であっても、実施例と比べると色相変化が生じやすかった。
【0099】
本発明の光硬化型組成物を用いた保護層は、優れた耐候性(透明性、外観性状)、硬度、基材密着性を併せ持つため、PC基材の保護に有用である。また、本発明の光硬化型組成物は、薄膜用途及び厚膜用途にそれぞれ適用可能であるため、PC基材上のプライマ層、コーティング層等に好適に使用可能である。本発明の光硬化型組成物を硬化した保護層を備えたPC積層体は、耐候性(透明性、外観性状)に優れるため、建材内外装、自動車内外装、ガラス代替樹脂カバーガラス等に好適に使用可能である。