(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104451
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】化合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/21 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
C07F7/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008656
(22)【出願日】2023-01-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2022年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「NEDOプロジェクトを核とした人材育成、産学連携等の総合的展開/有機ケイ素先端材料開発技術者養成に係る特別講座」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 正安
(72)【発明者】
【氏名】八木橋 不二夫
(72)【発明者】
【氏名】松本 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一彦
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP09
4H049VQ88
4H049VR11
4H049VR22
4H049VR23
4H049VR41
4H049VR44
4H049VS88
(57)【要約】
【課題】新規のかご型シロキサン化合物と、その製造方法の提供。
【解決手段】下記式(1)で表される化合物。(式(1)中、複数のZ
5は、それぞれ独立に、水素原子、又は、-SiR
1R
2R
3で表される基であり、ただし、複数のZ
5のうち少なくとも1つは-SiR
1R
2R
3で表される基である。)
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】
(式(1)中、複数のZ
5は、それぞれ独立に、水素原子、又は、-SiR
1R
2R
3で表される基であり、ただし、複数のZ
5のうち少なくとも1つは-SiR
1R
2R
3で表される基である。
R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、若しくは、置換基を有していてもよいアリール基であり、R
1、R
2及びR
3のうちの2個以上が前記アルキル基、前記アルケニル基又は前記アリール基である場合、これら基は相互に結合して環を形成していてもよい。)
【請求項2】
下記式(10)で表される化合物(10)に、少なくとも1種の下記式(3)で表される化合物(3)を反応させて、下記式(1)で表される化合物(1)を得る、化合物の製造方法。
【化2】
X-SiR
1R
2R
3 ・・・(3)
(式(3)中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、若しくは、置換基を有していてもよいアリール基であり、R
1、R
2及びR
3のうちの2個以上が前記アルキル基、前記アルケニル基又は前記アリール基である場合、これら基は相互に結合して環を形成していてもよく;Xはハロゲン原子である。)
【化3】
(式(1)中、複数のZ
5は、それぞれ独立に、水素原子、又は、-SiR
1R
2R
3で表される基であり、ただし、複数のZ
5のうち少なくとも1つは-SiR
1R
2R
3で表される基である。
R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、若しくは、置換基を有していてもよいアリール基であり、R
1、R
2及びR
3のうちの2個以上が前記アルキル基、前記アルケニル基又は前記アリール基である場合、これら基は相互に結合して環を形成していてもよい。)
【請求項3】
少なくとも2種以上の前記化合物(3)を反応させる、請求項2に記載の化合物の製造方法。
【請求項4】
さらに、下記式(10)’で表される構造を有するケイ酸塩と、酸性化合物とを反応させて、前記化合物(10)を得るプロトン交換工程を含む、請求項2又は3に記載の化合物の製造方法。
【化4】
(式(10)’中、Q
+は、陽イオンを表す。)
【請求項5】
前記プロトン交換工程が、前記化合物(10)を含む溶液から前記化合物(10)を粉体として単離する単離工程を含む、請求項4に記載の化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オルトケイ酸の縮合物又はその誘導体と見做せる、かご型の骨格を有する一群のシロキサン化合物は、機能性ケイ素材料として種々の分野で有望であり、新規化合物の探索と、その製造方法が種々検討されている。
【0003】
例えば、このようなかご型シロキサン化合物の1種として、以下に示す合成ルートによって、下記式(90)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(90)」と称することがある)を原料として、下記式(91)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(91)」と称することがある)を得たことが開示されている(非特許文献1参照)。
【0004】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Main Group Metal Chemistry 20(1997)515-529
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献1に記載の方法では、化合物(91)を得るために、原料である化合物(90)に対して、クロロジメチルシラン((CH3)2HSiCl)を大過剰量使用する必要があるという問題点があった。これは、シリケート化合物である化合物(90)が、大量の水和水を含んでいるためである。
【0007】
このように、従来のかご型シロキサン化合物には、実用的な方法では製造できないものがあり、製造方法の改良が望まれていた。
また、現状、かご型シロキサン化合物の探索も十分に為されているとは言えず、新規のかご型シロキサン化合物の探索も望まれていた。
【0008】
本発明は、新規のかご型シロキサン化合物と、その製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の態様を含むものである。
[1] 下記式(1)で表される化合物。
【0010】
【0011】
(式(1)中、複数のZ5は、それぞれ独立に、水素原子、又は、-SiR1R2R3で表される基であり、ただし、複数のZ5のうち少なくとも1つは-SiR1R2R3で表される基である。
R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、若しくは、置換基を有していてもよいアリール基であり、R1、R2及びR3のうちの2個以上が前記アルキル基、前記アルケニル基又は前記アリール基である場合、これら基は相互に結合して環を形成していてもよい。)
[2] 下記式(10)で表される化合物(10)に、少なくとも1種の下記式(3)で表される化合物(3)を反応させて、下記式(1)で表される化合物(1)を得る、化合物の製造方法。
【0012】
【0013】
X-SiR1R2R3 ・・・(3)
(式(3)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、若しくは、置換基を有していてもよいアリール基であり、R1、R2及びR3のうちの2個以上が前記アルキル基、前記アルケニル基又は前記アリール基である場合、これら基は相互に結合して環を形成していてもよく;Xはハロゲン原子である。)
【0014】
【0015】
(式(1)中、複数のZ5は、それぞれ独立に、水素原子、又は、-SiR1R2R3で表される基であり、ただし、複数のZ5のうち少なくとも1つは-SiR1R2R3で表される基である。
R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、若しくは、置換基を有していてもよいアリール基であり、R1、R2及びR3のうちの2個以上が前記アルキル基、前記アルケニル基又は前記アリール基である場合、これら基は相互に結合して環を形成していてもよい。)
[3] 少なくとも2種以上の前記化合物(3)を反応させる、[2]に記載の化合物の製造方法。
【0016】
[4] さらに、下記式(10)’で表される構造を有するケイ酸塩と、酸性化合物とを反応させて、前記化合物(10)を得るプロトン交換工程を含む、[2]又は[3]に記載の化合物の製造方法。
【0017】
【0018】
(式(10)’中、Q+は、陽イオンを表す。)
[5] 前記プロトン交換工程が、前記化合物(10)を含む溶液から前記化合物(10)を粉体として単離する単離工程を含む、[4]に記載の化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、新規のかご型シロキサン化合物と、その製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】製造例1で得られた生成物の
29Si-NMRの測定結果である。
【
図2】製造例1で得られた生成物の高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図3】式(10)’で表される構造を有するケイ酸塩に無機酸(例えば、塩酸)を作用させて、シラノール化合物を生成するプロトン交換反応式の一例である。
【
図4】実施例1で得られた化合物(1)-1の
1H-NMRの測定結果である。
【
図5】実施例1で得られた化合物(1)-1の
13C-NMRの測定結果である。
【
図6】実施例1で得られた化合物(1)-1の
29Si-NMRの測定結果である。
【
図7】実施例1で得られた化合物(1)-1の高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図8】実施例2で得られた化合物(1)-2の
1H-NMRの測定結果である。
【
図9】実施例2で得られた化合物(1)-2の
13C-NMRの測定結果である。
【
図10】実施例2で得られた化合物(1)-2の
29Si-NMRの測定結果である。
【
図11】実施例2で得られた化合物(1)-2の高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図12】実施例3で得られた化合物(1)-3の
1H-NMRの測定結果である。
【
図13】実施例3で得られた化合物(1)-3の
13C-NMRの測定結果である。
【
図14】実施例3で得られた化合物(1)-3の
29Si-NMRの測定結果である。
【
図15】実施例3で得られた化合物(1)-3の高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図16】実施例4で得られた化合物(1)-4の
1H-NMRの測定結果である。
【
図17】実施例4で得られた化合物(1)-4の
13C-NMRの測定結果である。
【
図18】実施例4で得られた化合物(1)-4の
29Si-NMRの測定結果である。
【
図19】実施例4で得られた化合物(1)-4のうち、式(1)中、1つのZ
5がジメチルシリル基であり、11個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図20】実施例4で得られた化合物(1)-4のうち、式(1)中、2つのZ
5がジメチルシリル基であり、10個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図21】実施例4で得られた化合物(1)-4のうち、式(1)中、3つのZ
5がジメチルシリル基であり、9個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図22】実施例4で得られた化合物(1)-4のうち、式(1)中、4つのZ
5がジメチルシリル基であり、8個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図23】実施例4で得られた化合物(1)-4のうち、式(1)中、5つのZ
5がジメチルシリル基であり、7個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図24】実施例4で得られた化合物(1)-4のうち、式(1)中、6つのZ
5がジメチルシリル基であり、6個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図25】実施例4で得られた化合物(1)-4のうち、式(1)中、7個のZ
5がジメチルシリル基であり、5個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図26】実施例4で得られた化合物(1)-4のうち、式(1)中、8個のZ
5がジメチルシリル基であり、4個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図27】実施例4で得られた化合物(1)-4のうち、式(1)中、9個のZ
5がジメチルシリル基であり、3個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図28】実施例4で得られた化合物(1)-4のうち、式(1)中、10個のZ
5がジメチルシリル基であり、2個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図29】実施例4で得られた一連の化合物(1)-4の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図30】実施例5で得られた化合物(1)-5の
1H-NMRの測定結果である。
【
図31】実施例5で得られた化合物(1)-5の
13C-NMRの測定結果である。
【
図32】実施例5で得られた化合物(1)-5の
29Si-NMRの測定結果である。
【
図33】実施例5で得られた化合物(1)-5のうち、式(1)中、1個のZ
5がジメチルビニル基であり、11個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図34】実施例5で得られた化合物(1)-5のうち、式(1)中、2個のZ
5がジメチルビニル基であり、10個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図35】実施例5で得られた化合物(1)-5のうち、式(1)中、3個のZ
5がジメチルビニル基であり、9個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図36】実施例5で得られた化合物(1)-5のうち、式(1)中、4個のZ
5がジメチルビニル基であり、8個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図37】実施例5で得られた化合物(1)-5のうち、式(1)中、5個のZ
5がジメチルビニル基であり、7個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図38】実施例5で得られた化合物(1)-5のうち、式(1)中、6個のZ
5がジメチルビニル基であり、6個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図39】実施例5で得られた化合物(1)-5のうち、式(1)中、7個のZ
5がジメチルビニル基であり、5個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図40】実施例5で得られた化合物(1)-5のうち、式(1)中、8個のZ
5がジメチルビニル基であり、4個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図41】実施例5で得られた化合物(1)-5のうち、式(1)中、9個のZ
5がジメチルビニル基であり、3個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図42】実施例5で得られた化合物(1)-5のうち、式(1)中、10個のZ
5がジメチルビニル基であり、2個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図43】実施例5で得られた化合物(1)-5のうち、式(1)中、11個のZ
5がジメチルビニル基であり、1個のZ
5がトリメチルシリル基である化合物の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【
図44】実施例5で得られた一連の化合物(1)-5の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<<化合物>>
本発明の実施形態に係る化合物は、下記一般式(1)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(1)」と称することがある)である。
【0022】
【0023】
(式(1)中、複数のZ5は、それぞれ独立に、水素原子、又は、-SiR1R2R3で表される基であり、ただし、複数のZ5のうち少なくとも1つは-SiR1R2R3で表される基である。
R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、若しくは、置換基を有していてもよいアリール基であり、R1、R2及びR3のうちの2個以上が前記アルキル基、前記アルケニル基又は前記アリール基である場合、これら基は相互に結合して環を形成していてもよい。)
【0024】
一般式(1)中、Z5は、水素原子(-H)又は一般式「-SiR1R2R3」で表される基である。そして、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、又は置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、若しくはアリール基である。
【0025】
R1、R2及びR3における前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。
【0026】
R1、R2及びR3における、直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基の炭素数は、特に限定されないが、1~20であることが好ましい。
このような直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の炭素数は、1~10であることがより好ましく、例えば、1~6、及び1~3のいずれかであってもよい。
【0027】
R1、R2及びR3における、環状の前記アルキル基は、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
環状の前記アルキル基の炭素数は、3以上であれば特に限定されないが、3~20であることが好ましい。
環状の前記アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられる。
環状のアルキル基の炭素数は、3~15であることがより好ましく、例えば、3~10、及び3~6のいずれかであってもよいし、5~15及び5~10のいずれかであってもよい。
【0028】
R1、R2及びR3における前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状の鎖状構造と、環状構造と、が混在したものであってもよい。
このような鎖状構造と環状構造が混在した前記アルキル基としては、例えば、シクロペンチルメチル基、1-シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルメチル基、1-シクロヘキシルエチル基等の、上述の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基における1個又は2個以上の水素原子が、上述の環状のアルキル基で置換された構造を有する基;メチルシクロペンチル基、エチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基等の、上述の環状のアルキル基における1個又は2個以上の水素原子が、上述の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基で置換された構造を有する基等が挙げられる。
鎖状構造と環状構造が混在した前記アルキル基の炭素数は、4以上であれば特に限定されないが、4~25であることが好ましく、例えば、6~15であってもよい。
【0029】
R1、R2及びR3における前記アルケニル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよい。
【0030】
R1、R2及びR3における、直鎖状又は分岐鎖状の前記アルケニル基の炭素数は、特に限定されないが、2~20であることが好ましい。
このような直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、2-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基;イソプロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、イソペンテニル基;ブタジエニル基、ペンタジエニル基、ヘキサジエニル基、オクタジエニル基等が挙げられる。
直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基の炭素数は、2~10であることがより好ましく、例えば、2~6、及び2~3のいずれかであってもよい。
【0031】
R1、R2及びR3における、環状の前記アルケニル基は、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
環状の前記アルケニル基の炭素数は、3以上であれば特に限定されないが、3~20であることが好ましい。
環状の前記アルケニル基としては、例えば、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基等が挙げられる。
環状のアルケニル基の炭素数は、3~15であることがより好ましく、例えば、3~10、及び3~6のいずれかであってもよいし、5~15及び5~10のいずれかであってもよい。
【0032】
R1、R2及びR3における前記アルケニル基は、直鎖状又は分岐鎖状の鎖状構造と、環状構造と、が混在したものであってもよい。
このような鎖状構造と環状構造が混在した前記アルケニル基としては、例えば、上述の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基における1個又は2個以上の水素原子が、上述の環状のアルケニル基で置換された構造を有する基;上述の環状のアルケニル基における1個又は2個以上の水素原子が、上述の直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基で置換された構造を有する基等が挙げられる。
鎖状構造と環状構造が混在した前記アルケニル基の炭素数は、4以上であれば特に限定されないが、4~25であることが好ましく、例えば、6~15であってもよい。
【0033】
R1、R2及びR3における前記アリール基(aryl group)は、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
【0034】
前記アリール基の炭素数は、6~20であることが好ましく、前記アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、キシリル基(ジメチルフェニル基)等が挙げられ、さらに、これらアリール基の1個又は2個以上の水素原子が、前記アリール基、又は、R1~R3における前記アルキル基で置換された構造を有する基も挙げられる。これら置換基を有するアリール基の炭素数は、6~20であることが好ましい。
アリール基の炭素数は、6~12であることがより好ましい。
【0035】
R1、R2及びR3における、前記アルキル基、前記アルケニル基、並びにアリール基は、置換基を有していてもよい。
本明細書においては、R1、R2及びR3の場合に限らず、アルキル基、アルケニル基、及びアリール基が置換基を有するとは、特に断りのない限り、これらの基を構成している1個又は2個以上の水素原子が、水素原子以外の基で置換されていることを意味する。そして、本明細書において、「基」とは、特に断りのない限り、複数個の原子が結合してなる原子団だけでなく、1個の原子も包含するものとする。
【0036】
R1、R2及びR3における前記置換基としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;水酸基;カルボキシ基;1個のメチレン基(-CH2-)、又は2個以上の互いに隣接していないメチレン基が、酸素原子(-O-)、カルボニルオキシ基(-C(=O)-O-)、又はオキシカルボニル基(-O-C(=O)-)で置換されたアルキル基及びアリール基等が挙げられる。
【0037】
上述の「メチレン基が、酸素原子、カルボニルオキシ基、又はオキシカルボニル基で置換されたアルキル基」におけるアルキル基としては、例えば、R1、R2及びR3における前記アルキル基と同様のものが挙げられる。
【0038】
上述の「メチレン基が、酸素原子、カルボニルオキシ基、又はオキシカルボニル基で置換されたアルキル基」において、置換基(酸素原子、カルボニルオキシ基、又はオキシカルボニル基)によるメチレン基の置換位置は、特に限定されず、置換基の数は、1であってもよいし、2以上であってもよい。また、置換基の数が2以上である場合、これら置換基は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0039】
R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基(炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数3~20の環状のアルキル基)、炭素数2~20のアルキレン基(炭素数2~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、炭素数3~20の環状のアルキレン基)、又は炭素数6~20のアリール基であることが好ましく、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基(炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数3~6の環状のアルキル基)、炭素数2~6のアルキレン基(炭素数2~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数3~6の環状のアルキレン基)、又は炭素数6~12のアリール基であることがより好ましい。このようなR1、R2及びR3においては、いずれも、前記アルキル基、前記アルケニル基、又はアリール基が置換基を有していてもよい。
【0040】
一般式「-SiR1R2R3」で表される基において、R1、R2及びR3のうちの2個以上(2個又は3個)が前記アルキル基、アルケニル基、又はアリール基である場合、これら基(アルキル基、アルケニル基、又はアリール基)は相互に結合して、これら基が結合しているケイ素原子(Si)とともに環を形成していてもよい。
【0041】
R1、R2及びR3のうちの2個以上が相互に結合して形成している前記環は、環骨格を形成している原子としてケイ素原子を含む、含ケイ素脂肪族環又は含ケイ素芳香族環である。
前記環を形成している場合の、R1、R2又はR3の結合位置は、特に限定されない。例えば、R1、R2又はR3が鎖状構造を有する場合には、前記結合位置は、前記鎖状構造の末端の炭素原子であってもよいし、非末端の炭素原子であってもよい。ただし、前記アルキル基、アルケニル基、又はアリール基が前記置換基を有する場合には、前記置換基は、環を形成する場合の前記結合位置とはならない。
前記環を形成している場合の、R1、R2又はR3の結合部位の数は、1であってもよいし、2以上であってもよい。すなわち、前記環は、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
【0042】
一般式(1)中、複数のZ5は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、複数のZ5は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。
【0043】
ただし、一般式(1)中、すべてのZ5が水素原子であることはなく、1個又は2個以上のZ5は、前記一般式「-SiR1R2R3」で表される基であり、12個のZ5がすべて、前記一般式「-SiR1R2R3」で表される基であってもよい。
【0044】
一般式(1)中、1個又は2個以上のZ5が水素原子である場合(すなわち、化合物(1)が、すべてのZ5が前記一般式「-SiR1R2R3」で表される基であるもの、ではない場合)、前記一般式「-SiR1R2R3」で表される基の結合位置は、特に限定されない。
【0045】
一般式「-SiR1R2R3」で表される基として、より具体的には、例えば、トリアルキルシリル基、ジアルキルシリル基、モノアルキルシリル基、トリアルケニルシリル基、ジアルケニルシリル基、モノアルケニルシリル基、トリアリールシリル基、ジアリールシリル基、モノアリールシリル基、ジアルキルモノアリールシリル基、モノアルキルジアリールシリル基、モノアルキルモノアリールシリル基、ジアルケニルモノアリールシリル基、モノアルケニルジアリールシリル基、モノアルケニルモノアリールシリル基、ジアルケニルモノアルキルシリル基、モノアルケニルジアルキルシリル基、モノアルケニルモノアルキルシリル基、シリル基(-SiH3)等が挙げられる。なかでも、トリメチルシリル基が好ましく、ジメチルモノビニルシリル基がより好ましく、ジメチルシリル基がさらに好ましい。
【0046】
<<化合物の製造方法>>
本発明の実施形態に係る化合物の製造方法は、下記一般式(10)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(10)」と称することがある)と、下記一般式(3)で表される化合物(本明細書においては、「化合物(3)」と称することがある)と、を反応させることにより、下記一般式(1)で表される化合物(1)を得る、化合物の製造方法である。
【0047】
【0048】
X-SiR1R2R3 ・・・(3)
(式(3)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、若しくは、置換基を有していてもよいアリール基であり、R1、R2及びR3のうちの2個以上が前記アルキル基、前記アルケニル基又は前記アリール基である場合、これら基は相互に結合して環を形成していてもよく;Xはハロゲン原子である。)
【0049】
【0050】
(式(1)中、複数のZ5は、それぞれ独立に、水素原子、又は、-SiR1R2R3で表される基であり、ただし、複数のZ5のうち少なくとも1つは-SiR1R2R3で表される基である。
R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、又は置換基を有していてもよいアリール基であり、R1、R2及びR3のうちの2個以上が前記アルキル基、前記アルケニル基又は前記アリール基である場合、これら基は相互に結合して環を形成していてもよい。)
【0051】
化合物(1)は、上述したものと同じである。化合物(3)及び化合物(10)について、次に詳述する。
【0052】
<化合物(3)>
化合物(3)は、前記一般式(3)で表される。
化合物(3)中のXが取り除かれた構造を有する1価の基は、化合物(1)中のZ5における、一般式「-SiR1R2R3」で表される基と同じである。
【0053】
一般式(3)中のR1、R2及びR3は、一般式(1)中のR1、R2及びR3と同じである。
【0054】
一般式(3)中、Xはハロゲン原子である。
前記ハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0055】
例えば、Xが塩素原子である場合の化合物(3)として、より具体的には、例えば、トリアルキルシリルクロライド、ジアルキルシリルクロライド、モノアルキルシリルクロライド、トリアルケニルシリルクロライド、ジアルケニルシリルクロライド、モノアルケニルシリルクロライド、トリアリールシリルクロライド、ジアリールシリルクロライド、モノアリールシリルクロライド、ジアルキルモノアリールシリルクロライド、モノアルキルジアリールシリルクロライド、モノアルキルモノアリールシリルクロライド、ジアルケニルモノアリールシリルクロライド、モノアルケニルジアリールシリルクロライド、モノアルケニルモノアリールシリルクロライド、ジアルケニルモノアルキルシリルクロライド、モノアルケニルジアルキルシリルクロライド、モノアルケニルモノアルキルシリルクロライド、等が挙げられる。
次に、化合物(10)と化合物(3)とを反応させる方法全般について、説明する。
【0056】
<化合物(10)と化合物(3)との反応条件>
化合物(1)は、化合物(10)と化合物(3)とを反応させることにより得られる。
反応に供する化合物(3)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、目的とする化合物(1)の構造に応じて、適宜選択すればよい。
化合物(3)を2種以上用いる場合には、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜調節できる。
【0057】
なお、本明細書においては、化合物(1)、(10)及び(3)の種類数に関する記載では、特に断りのない限り、立体異性体を考慮していない。
【0058】
化合物(3)の使用量は、目的とする化合物(1)の構造等に応じて、適宜調節できる。
例えば、化合物(3)の使用量は、目的とする化合物(1)中の、前記一般式「-SiR1R2R3」で表される基の数に応じて調節できる。
【0059】
例えば、p1の値によらず、化合物(3)の使用量が、化合物(10)の使用量に対して、1~2倍モル量である場合には、1分子中の前記一般式「-SiR1R2R3」で表される基の数が1~2個である化合物(1)が好適に得られる。
例えば、p1の値によらず、化合物(3)の使用量が、化合物(10)の使用量に対して、3~4倍モル量である場合には、1分子中の前記一般式「-SiR1R2R3」で表される基の数が3~4個である化合物(1)が好適に得られる。
例えば、p1の値によらず、化合物(3)の使用量が、化合物(10)の使用量に対して、5~6倍モル量である場合には、1分子中の前記一般式「-SiR1R2R3」で表される基の数が5~6個である化合物(1)が好適に得られる。
例えば、p1が0である場合、化合物(3)の使用量が、化合物(10)の使用量に対して、6倍モル量以上である場合には、1分子中の前記一般式「-SiR1R2R3」で表される基の数が6個である化合物(1)が、より高収率で得られる。この場合、例えば、化合物(3)の前記使用量が10倍モル量以下であると、化合物(3)の過剰使用が抑制される。
例えば、化合物(3)の使用量が、化合物(10)の使用量に対して、7~8倍モル量である場合には、1分子中の前記一般式「-SiR1R2R3」で表される基の数が7~8個である化合物(1)が好適に得られる。
例えば、化合物(3)の使用量が、化合物(10)の使用量に対して、8倍モル量以上である場合には、1分子中の前記一般式「-SiR1R2R3」で表される基の数が8個である化合物(1)が、より高収率で得られる。この場合、例えば、化合物(3)の前記使用量が好ましくは17倍モル量以下、より好ましくは12倍モル量以下であると、化合物(3)の過剰使用が抑制される。
例えば、化合物(3)の使用量が、化合物(10)の使用量に対して、9~10倍モル量である場合には、1分子中の前記一般式「-SiR1R2R3」で表される基の数が9~10個である化合物(1)が好適に得られる。
例えば、化合物(3)の使用量が、化合物(10)の使用量に対して、10倍モル量以上である場合には、1分子中の前記一般式「-SiR1R2R3」で表される基の数が10個である化合物(1)が、より高収率で得られる。
例えば、化合物(3)の使用量が、化合物(10)の使用量に対して、12倍モル量以上である場合には、1分子中の前記一般式「-SiR1R2R3」で表される基の数が12個である化合物(1)が、より高収率で得られる。
この場合、例えば、化合物(3)の前記使用量が14倍モル量以下であると、化合物(3)の過剰使用が抑制される。
【0060】
なお、ここまでで説明した化合物(3)の使用量は、目的とする化合物(1)を効率よく、良好な収率で得るための一例であり、化合物(3)の使用量は、化合物(1)の製造条件全般を考慮して、適宜調節できる。
また、ここまでで説明した化合物(3)の使用量は、2種以上の化合物(3)を用いる場合には、用いる化合物(3)の全種類の合計使用量を意味する。
【0061】
[塩基]
化合物(10)と化合物(3)との反応時には、塩基を用いることが好ましい。塩基を用いることにより、化合物(1)の生成量が顕著に増大する。
【0062】
前記塩基は、有機塩基であることが好ましい。
前記有機塩基としては、例えば、アニリン、ピリジン、ピペリジン等の芳香族アミン;トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等の脂肪族アミン等が挙げられる。
【0063】
前記塩基を用いる場合、塩基は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜調節できる。
【0064】
前記塩基を用いる場合、塩基の使用量は、例えば、化合物(3)の使用量に応じて、調節できる。
その場合、塩基の使用量は、化合物(3)の使用量に対して、1~2倍モル量であることが好ましく、例えば、1~1.5倍モル量であってもよい。塩基の前記使用量が1倍モル量以上であることで、化合物(1)の生成量がより増大する。塩基の前記使用量が2倍モル量以下であることで、塩基の過剰使用が抑制される。
【0065】
[溶媒]
化合物(10)と化合物(3)との反応は、溶媒を用いずに行ってもよいが、溶媒を用いて行うことが好ましい。溶媒を用いることにより、反応液の流動性が向上し、化合物(10)と化合物(3)との反応がより円滑に進行し、副生成物の生成量も低減できる。
【0066】
前記溶媒は、化合物(10)、化合物(3)等の、反応に用いる成分との反応性を有しないものが好ましい。
前記溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサン、テトラヒドロピラン、ジブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル(エーテル結合を有する化合物);N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)等のアミド;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;1,2-ジクロロエタン、塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素(置換基としてハロゲン原子を有する炭化水素);プロピオニトリル、アセトニトリル等のニトリル(シアノ基を有する化合物);トルエン、n-ヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素等が挙げられる。
【0067】
溶媒を用いる場合、前記溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜調節できる。
【0068】
溶媒の使用量は、特に限定されないが、例えば、化合物(10)の使用量1mmolに対して、0~100mLであることが好ましく、10~50mLであることがより好ましい。溶媒の前記使用量が10mL以上であることで、溶媒を用いたことによる効果がより顕著に得られる。溶媒の前記使用量が100mL以下であることで、溶媒の過剰使用が抑制される。
【0069】
[他の成分]
化合物(10)と化合物(3)との反応時には、本発明の効果を損なわない範囲内において、化合物(10)と、化合物(3)と、前記塩基と、前記溶媒と、のいずれにも該当しない他の成分を用いてもよい。
前記他の成分の種類は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
【0070】
前記他の成分を用いる場合、前記他の成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて適宜調節できる。
【0071】
前記他の成分を用いる場合、前記他の成分の使用量は、特に限定されず、前記他の成分の種類に応じて、任意に選択できる。
【0072】
[他の反応条件]
化合物(10)と化合物(3)との反応時における反応温度は、適宜調節すればよく、特に限定されない。
反応温度は、10~40℃であることが好ましく、例えば、18~30℃等の室温であってもよい。
【0073】
化合物(10)と化合物(3)との反応時における反応時間は、化合物(1)の生成量が増大するように、反応温度等、他の条件に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
反応時間は、例えば、1~72時間であることが好ましく、1~60時間であることがより好ましい。
【0074】
本実施形態の化合物の製造方法においては、反応終了後、必要に応じて公知の手法によって後処理を行った後、公知の手法によって化合物(1)を取り出すことができる。
例えば、反応終了後、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、次いで、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、化合物(1)を取り出すことができる。また、取り出した化合物(1)は、さらに必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて、1回又は2回以上行うことによって、精製してもよい。
反応終了後に、化合物(1)を用いる他の工程を引き続き行う場合には、反応終了後に、必要に応じて公知の手法によって後処理を行った後、化合物(1)を取り出すことなく、引き続き前記他の工程を行ってもよい。
【0075】
化合物(10)と化合物(3)との反応によって、複数種の化合物(1)が生成している場合、上述の後処理操作及び精製操作のいずれか一方又は両方を、適宜選択して行うことにより、目的とする化合物(1)を得られる。複数種の化合物(1)が生成していても、化合物(1)の構造からその特性を推測できるため、その特性に適した後処理操作又は精製操作を選択することにより、目的とする化合物(1)の収率を向上させることができる。
また、化合物(3)の使用量、その他の反応条件等を調節することで、目的とする化合物(1)の生成率を向上させることによって、化合物(1)の収率を向上させることができる。
【0076】
化合物(1)の構造は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)、紫外・可視分光法(UV-VIS吸収スペクトル)、元素分析法等の公知の手法によって、確認できる。
【0077】
<化合物(10)>
本実施形態の化合物の製造方法において、化合物(10)は、下記式(10)で表されるシラノール化合物である。
【0078】
【0079】
化合物(10)のシラノール化合物は、上記のような構造を有することにより、結晶溶媒がなくても、脱水縮合が起こらず、単独の粉体として単離することができる。
従来のシラノール化合物(例えば、オルトケイ酸(Si(OH)4)のかご型8量体(Q8H8))は、配位安定化する結晶溶媒(アミド溶媒等)が存在しないと、脱水縮合が進行してしまうので、単独の粉体として単離することはできない。
一方、化合物(10)のシラノール化合物は、単独(例えば、純度:100%)の粉体として安定した状態を保つことができるので、取り扱いやすく、材料開発上で極めて有利である。
なお、本実施形態において、化合物(10)のシラノール化合物は、各種NMR、高分解能質量分析、X線結晶構造解析により確認することができる。
【0080】
<化合物(10)の製造方法>
化合物(10)のシラノール化合物は、下記式(10)’で表される構造を有するケイ酸塩(以下、「ケイ酸塩」と略す場合がある。)と、酸性化合物とを反応させて、下記式(10)で表されるシラノール化合物を含む溶液を得るプロトン交換工程(以下、「プロトン交換工程」と略す場合がある。)を含む、シラノール化合物の製造方法により得ることができる。
【0081】
【0082】
(式(10)’中、Q+は、陽イオンを表す。)
【0083】
【0084】
また、化合物(10)のシラノール化合物の製造方法は、プロトン交換工程で得られた溶液に貧溶媒を添加し、該式(10)で表されるシラノール化合物を析出させて、該式(10)で表されるシラノール化合物を粉体として単離する工程(以下、「単離工程」と略す場合がある。)をさらに含むことが好ましい。
【0085】
以下、プロトン交換工程におけるケイ酸塩、酸性化合物、及びその他の反応条件等について詳細に説明する。
【0086】
(プロトン交換工程)
プロトン交換工程で用いるケイ酸塩の具体的種類、酸性化合物の具体的種類、酸性化合物の使用量、溶媒又は分散媒である反応媒体の種類、反応条件等は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0087】
プロトン交換工程に用いる酸性化合物としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)中における酸解離定数pKa(以下、「pKa(DMSO)」と略す場合がある。)が-1~20である酸性化合物が好ましい。
【0088】
pKa(DMSO)が-1~20である酸性化合物によってプロトン交換することにより、シラノール化合物を効率良く製造できる傾向にある。pKa(DMSO)が-1~20であると、ケイ酸塩の陽イオン(Q+)と酸性化合物のプロトン(H+)の交換が効率良く進むとともに、副反応が抑えられる。このため、シラノール化合物自体を収率良く合成できる。また、化合物(10)のシラノール化合物の製造方法は、反応が穏和な条件で速やかに進行するため、工業的に非常に適した製造方法である。なお、pKa(DMSO)が小さいほど、プロトン交換工程が速く進行する傾向にある。
【0089】
また、pKa(DMSO)は、DMSO中における酸性化合物の25℃での酸解離平衡の各成分の濃度から算出される公知の数値を意味する。具体的には下記式で算出される数値Kaを常用対数化した数値である。
【0090】
【0091】
プロトン交換工程において、下記式(10)’で表される構造を有するケイ酸塩と、酸性化合物とを反応させる。
【0092】
【0093】
(式(10)’中、Q+は、陽イオンを表す。)
【0094】
式(10)’中、Q+である陽イオンとしては、特に限定されないが、例えば、リチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)等のアルカリ金属イオン、マグネシウムイオン(Mg2+)、及びカルシウムイオン(Ca2+)等のアルカリ土類金属イオン、鉄(III)イオン(Fe3+)、銅(II)イオン(Cu2+)、及び亜鉛イオン(Zn2+)等の遷移金属イオン、アンモニウムイオン(NH4
+)、テトラメチルアンモニウムイオン(NMe4
+)、エチルトリメチルアンモニウムイオン(NEtMe3+)、ジエチルジメチルアンモニウムイオン(NEt2Me2+)、トリエチルメチルアンモニウムイオン(NEt3Me+)、テトラエチルアンモニウムイオン(NEt4
+)、テトラプロピルアンモニウムイオン(NPr4
+)、及びテトラブチルアンモニウムイオン(NBu4
+)等のアンモニウムイオンが挙げられる。これらの中でも、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、テトラメチルアンモニウムイオン(NMe4
+)、テトラエチルアンモニウムイオン(NEt4
+)、及びエチルトリメチルアンモニウムイオン(NEtMe3+)が特に好ましい。
【0095】
プロトン交換工程において、酸性化合物と反応させるケイ酸塩は、特に限定されないが、例えば、Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1997, 36, 743に記載の下記式で表されるような、2つのα-シクロデキストリン(αCD)が上下に配位したかご型ケイ酸カリウム12量体(Q12K12)の水和物(ドデカカリウム-2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,25,26,27,28,29,30-オクタデカオキサ-1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23-ドデカシラヘプタシクロ[13.9.1.13,13.15,11.17,21.19,19.117,23]トリアコンタン-1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23-ドデカキス(オラート)ビス(α-デキストリン)水和物((以下、「Q12K12・2αCD・nH2O」と略す場合がある。))であってもよい。
【0096】
【0097】
このようなQ12K12・2αCD・nH2Oは、特に限定されないが、例えば、Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1997, 36, 743.、Crystals 2018, 8, 457.の記載を参照して調製することができる。
【0098】
酸性化合物は、pKa(DMSO)が-1~20である酸性化合物であることが好ましい。酸性化合物のpKa(DMSO)は、好ましくは0以上、より好ましくは1以上、さらに好ましくは2以上であり、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、さらに好ましくは8以下である。酸性化合物のpKa(DMSO)が上記範囲内であると、シラノール化合物が効率良く製造できる。
【0099】
酸性化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、硝酸(pKa(DMSO)が1.4)、硫酸(pKa1(DMSO)が1.4、pKa2(DMSO)が14.7)、塩酸(pKa(DMSO)が2.1)、リン酸(pKa1(DMSO)が1.83、pKa2(DMSO)が6.43、pKa3(DMSO)が11.46)等の無機酸、及び酢酸若しくは下記式(b-1)~(b-5)で表される構造を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種である有機酸が挙げられる。
【0100】
【0101】
(式(b-1)~(b-5)中、Lはそれぞれ独立して酸素原子、硫黄原子、又はアミノ基(-NRc-)を、Raは水素原子又は炭素原子数1~14の炭化水素基を、Rbはそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~14の炭化水素基を表す。)
【0102】
後述する反応媒体であるN,N-ジメチルアセトアミド(以下「DMAc」とも記す)やメタノール(以下「MeOH」とも記す)などの中で、有機酸を用いたプロトン交換反応を行うと、生成するアンモニウム塩又はアルカリ金属塩が反応媒体に溶解する。このため、カラム精製等によって副生成物であるアンモニウム塩又はアルカリ金属塩を分離することが好ましい。一方、後述する反応媒体であるテトラヒドロフラン(以下「THF」とも記す)などの中で、無機酸を用いたプロトン交換反応を行うと、生成するアンモニウム塩又はアルカリ金属塩及びα-デキストリンとα-デキストリンに由来する化学種は反応媒体に溶解しにくい。このため、フィルター濾過等の簡易な分離手段によりアンモニウム塩又はアルカリ金属塩の分離ができ、濾液であるシラノール化合物溶液が得られる。したがって、酸性化合物は無機酸であることが好ましい。
【0103】
無機酸の中でも、硝酸、硫酸、塩酸、及びリン酸が好ましく、硝酸又は塩酸がより好ましく、塩酸が特に好ましい。塩酸は、安価であり、また、塩酸を用いた場合に収率が高くなる傾向にある。
【0104】
なお、上記式(b-2)~(b-5)中の波線は、その先が任意の構造であることを意味する。例えば、酸性化合物は、反応に関与しない官能基等を含んでいてもよい。したがって、例えば、上記式(b-4)で表される構造を有する酸性化合物は、下記式で表されるマロン酸ジメチルのように、Lに該当する酸素原子の先にメチル基のような炭化水素基を含む化合物であってもよい。また、例えば、上記式(b-4)で表される構造を有する酸性化合物は、下記式で表されるメルドラム酸のように、Lに該当する酸素原子の先の炭化水素基が結合して、環状構造を形成している化合物であってもよい。
【0105】
【0106】
上記式(b-1)~(b-5)で表される構造は、いわゆるβ-ジカルボニル構造であるが、2つのカルボニル基に挟まれたメチレン基の水素、即ちα-水素は酸点として働くことが知られている。上記式(b-1)~(b-5)で表される構造を有することによって、酸性化合物は、適度な酸解離定数を示すとともに、プロトンの解離によって生成した陰イオンの電子が構造内で非局在化する。例えば、上記式(b-2)で表される構造を有する酸性化合物は、下記式で表されるようにプロトン解離する。このため、上記式(b-1)~(b-5)で表される構造を有する酸性化合物は、陰イオンの塩基性や求核性が抑えられて、副反応が効果的に抑制できると考えられる。
【0107】
【0108】
Lであるアミノ基(-NRc-)としては、例えば第二級アミノ基(-NH-)が挙げられる。Lは酸素原子であることが特に好ましい。Raが炭化水素基である場合の炭素原子数は、好ましくは6以下、より好ましくは5以下、さらに好ましく4以下である。Raとしては、特に限定されず、例えば、水素原子、メチル基(-Me)、エチル基(-Et)、n-プロピル基(-nPr)、i-プロピル基(-iPr)、及びn-ブチル基(-nBu)、フェニル基(-Ph)が挙げられるが、水素原子であることが好ましい。
【0109】
Rbが炭化水素基である場合の炭素原子数は、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下である。Rbとしては、例えば、水素原子、メチル基(-Me)、エチル基(-Et)、n-プロピル基(-nPr)、i-プロピル基(-iPr)、及びn-ブチル基(-nBu)が挙げられるが、水素原子であることが好ましい。
【0110】
上記式(b-4)で表される酸性化合物としては、特に限定されないが、例えば、下記式(b-4-1)で表される酸性化合物が挙げられる。上記式(b-5)で表される酸性化合物としては、例えば、下記式(b-5-1)で表される酸性化合物が挙げられる。
【0111】
【0112】
(式(b-4-1)及び(b-5-1)中、Raは水素原子又は炭素原子数1~14の炭化水素基を、Rdは炭素原子数1~14の2価の炭化水素基を、それぞれ表す。)
【0113】
Rdとしては、特に限定されないが、例えば、メチレン基(-CH2-)、エチレン基(-CH2CH2-)、n-プロピレン基(-CH2CH2CH2-)、ジメチルメチレン基(-C(CH3)2-)、及びi-プロピレン基(-CH(CH3)CH2-)が挙げられる。
【0114】
酸性化合物の具体例としては、特に限定されないが、例えば、酢酸(pKa(DMSO)が12.6)、安息香酸(pKa(DMSO)が11.1)、メルドラム酸(pKa(DMSO)が7.3)、メルドラム酸誘導体、ジメドン(pKa(DMSO)が11.2)、ジメドン誘導体、アセチルアセトン(pKa(DMSO)が13.3)、及びアセチルアセトン誘導体が挙げられる(下記式参照)。
【0115】
【0116】
酸性化合物として、メルドラム酸のような低分子化合物、又は樹脂等の有機固体材料若しくはシリカやカーボン等の無機固体材料に上記式(b-2)~(b-5)で表される化合物が導入されたものが利用できる。酸性化合物がこのような固体であると、カラムに充填してイオン交換樹脂のように利用することができる。このため、シラノール化合物を非常に効率良く製造できる。酸性化合物として、一般的な固体酸(例えば、アンバーリストやアンバーライトなど)を使用してもよい。
【0117】
特に酸性化合物は、上記式(b-2)~(b-5)からなる群より選択される少なくとも1種の構造を有する樹脂であることが好ましく、プロトン交換工程を行った後、塩酸等の酸性水溶液にさらすことによって、酸性化合物として再生できるものであることが好ましい。
【0118】
プロトン交換工程における酸性化合物の使用量は、ケイ酸塩に対して物質量換算で、通常1倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2.0倍以上であり、通常50倍以下、好ましくは20倍以下、より好ましくは5倍以下である。酸性化合物の使用量が上記範囲内であると、シラノール化合物を効率良く製造できる。
【0119】
プロトン交換工程における反応は液体(反応媒体)中で行われることが好ましい。このような反応媒体としては、特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン、ジオキサン、ジエチルエーテル(Et2O)、ジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、メチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、及びトリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系液体、メタノール、エタノール、n-プロパノール、及びi-プロパノール等のアルコール系液体、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、尿素、及びテトラメチル尿素等のアミド系液体、酢酸エチル、酢酸n-アミル、及び乳酸エチル等のエステル系液体、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラクロロエタン、及びヘキサクロロエタン等のハロゲン系液体、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、フェニルメチルケトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、並びに水が挙げられる。
なお、反応媒体は、1種類に限られず、2種類以上を組み合せてもよい。
【0120】
プロトン交換工程における反応媒体の使用量は、ケイ酸塩の含有量が0.005~0.04mol/Lとなる量であることが好ましい。このケイ酸塩の含有量であると、シラノール化合物を効率良く製造できるからである。プロトン交換工程における反応温度は、通常-80℃以上、好ましくは0℃以上、より好ましくは20℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは70℃以下、より好ましくは40℃以下である。プロトン交換工程における反応時間は、通常48時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは8時間以下、特に好ましくは1時間以下である。上記範囲内であると、シラノール化合物を効率良く製造できる。
【0121】
(単離工程)
化合物(10)のシラノール化合物の製造方法は、プロトン交換工程で得られた上記式(10)で表されるシラノール化合物の溶液に貧溶媒を添加し、上記式(10)で表されるシラノール化合物を析出させて、上記式(10)で表されるシラノール化合物を粉体として単離する工程を含むことが好ましい。化合物(10)のシラノール化合物の製造方法は、このような工程を含むことにより、結晶溶媒がなくても、脱水縮合が起こらず、上記式(10)で表されるシラノール化合物を単独の粉体として極めて簡便に単離することができる。
【0122】
上記式(10)で表されるシラノール化合物を析出させるための貧溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチルが挙げられる。中でも、ヘキサン、ベンゼン、ジイソプロピルエーテル、酢酸エチルであることが好ましく、ジエチルエーテル及び酢酸エチルが特に好ましい。
また、単離工程において、酸性化合物と反応させるケイ酸塩として、配位子(例えば、αCD)が配位した前駆体(例えば、Q12K12・2αCD・nH2O)を用いる場合、上記式(10)で表されるシラノール化合物を析出させるための貧溶媒として、配位子および配位子の分解物(例えば、αCDおよびαCDの分解物)を溶解する溶媒を用いることが好ましい。
上記式(10)で表されるシラノール化合物を析出させるための貧溶媒の沸点は、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは30℃以上であり、通常300℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下である。
【0123】
また、プロトン交換工程で得られた溶液は、反応で生成した塩をろ過した後、ろ液を濃縮した濃縮液とすることが好ましい。当該濃縮液を用いることにより、上記式(10)で表されるシラノール化合物を一層効率よく析出させることができる。
【0124】
単離工程において、上記式(10)で表されるシラノール化合物を析出させる時間等は特に限定されず、適宜選択することができ、通常24時間以下、好ましくは12時間以下、より好ましくは6時間以下であり、通常0.25時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上である。当該シラノール化合物を析出させる際、撹拌していた方が析出する粒子が均一になり、乾燥工程で粉末化しやすい。
【0125】
上記式(10)で表されるシラノール化合物を粉体として単離する方法としては、特に限定されないが、例えば、ろ過、が挙げられる。
さらに、このような単離方法により得られた上記式(10)で表されるシラノール化合物の粉体を乾燥することが好ましい。乾燥温度、乾燥圧力、乾燥時間等は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0126】
<シラノール化合物含有組成物>
本実施形態の化合物の製造方法においては、上記化合物(10)を含む組成物(以下、「シラノール化合物含有組成物」ということがある。)を原材料として用いることができる。
シラノール化合物含有組成物において、上記式(10)で表されるシラノール化合物以外に含まれる化合物の種類等は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。なお、上述したとおり、化合物(10)は、単独(純度:100%)の粉体として単離することができるため、シラノール化合物含有組成物中の上記化合物(10)の含有量は適宜調整できる。シラノール化合物含有組成物中の上記化合物(10)の含有量は、特に限定されないが、例えば、シラノール化合物含有組成物の総質量に対し、0.1~99.9質量%であることが好ましく、25~50質量%であることがより好ましく、50~70質量%であることがさらに好ましく、70~99質量%であることが特に好ましい。
【0127】
シラノール化合物含有組成物において、上記式(10)で表されるシラノール化合物以外に含まれる化合物としては、特に限定されないが、例えば、水、エーテル化合物、アミン化合物、アミド化合物、アンモニウム塩、及び金属錯体が挙げられる。
【0128】
アミン化合物は、アミノ基(第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンのいずれであってもよい。)を有するものであれば、具体的な種類は特に限定されない。なお、アミノ基とアミド基の両方を有する化合物は、「アミド化合物」に分類する。アミン化合物としては、例えば、アニリン(NH2Ph)、ジフェニルアミン(NHPh2)、ジメチルピリジン(Me2Pyr)、ジ-tert-ブチルピリジン(tBu2Pyr)、ピラジン(Pyraz)、トリフェニルアミン(NPh3)、トリエチルアミン(Et3N)、及びジ-イソプロピルエチルアミン(iPr2EtN)が挙げられる。アミン化合物の中でも、アニリン(NH2Ph)が特に好ましい。なお、組成物に含まれるアミン化合物は、1種類に限られず、2種類以上を含むものであってもよい。
【0129】
シラノール化合物含有組成物におけるアミン化合物の含有量(2種類以上含む場合は総含有量)は、組成物の総質量に対し、好ましくは0.1質量%より多く、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、通常95質量%未満、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0130】
アミド化合物は、アミド結合を有するものであれば、具体的な種類は特に限定されない。アミド化合物としては、例えば、下記式(i)又は(ii)で表される化合物が挙げられる。
【0131】
【0132】
(式(i)及び(ii)中、R’及びR”はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~10の炭化水素基を表す。)
【0133】
R’及びR”としては、特に限定されないが、例えば、水素原子、メチル基(-Me)、エチル基(-Et)、n-プロピル基(-nPr)、i-プロピル基(-iPr)、及びフェニル基(-Ph)が挙げられる。上記式(i)で表される化合物としては、特に限定されないが、例えば、ホルムアミド、DMF、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、及びDMAcが挙げられる。上記式(ii)で表される化合物としては、特に限定されないが、例えば、尿素、及びテトラメチル尿素(Me4Urea)が挙げられる。シラノール化合物含有組成物におけるアミド化合物の含有量(2種類以上含む場合は総含有量)は、組成物の総質量に対し、0質量%(含有しない)以上90質量%以下であってもよい。
【0134】
アンモニウム塩は、アンモニウムイオンと対アニオンからなる化合物であれば、具体的な種類は特に限定されない。アンモニウムイオンとしては、特に限定されないが、例えば、テトラヒドロアンモニウムイオン(NH4
+)、テトラメチルアンモニウムイオン(NMe4
+)、テトラエチルアンモニウムイオン(NEt4
+)、テトラプロピルアンモニウムイオン(NPr4
+)、テトラブチルアンモニウムイオン(NBu4
+)、ベンジルトリブチルアンモニウムイオン(NBnBu3
+)、トリブチル(メチル)アンモニウム(NBu3Me+)イオン、テトラペンチルアンモニウムイオン(NPen4
+)、テトラへキシルアンモニウムイオン(NHex4
+)、テトラヘプチルアンモニウムイオン(NHep4
+)、1-ブチル-1メチルピロリジウムイオン(BuMePyr+)、メチルトリオクチルアンモニウムイオン(NMeOct3
+)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオン、ヒドロピリジニリウムイオン(C5H5N+H)、ヒドロアニリニウムイオン(PhNH2
+H)、トリメチルアダマンチルアンモニウムイオン及びメルドラム酸イオンが挙げられる。また、対アニオンとしては、例えば、フッ化物イオン(F-)、塩化物イオン(Cl-)、臭化物イオン(Br-)、ヨウ化物イオン(I-)、アセトキシイオン(AcO-)、硝酸イオン(NO3
-)、アジ化物イオン(N3
-)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF4
-)、過塩素酸イオン(ClO4
-)、及び硫酸イオン(HSO4
-)が挙げられる。
【0135】
アンモニウム塩としては、テトラブチルアンモニウムクロリド(NBu4Cl)、テトラブチルアンモニウムブロミド(NBu4Br)、テトラペンチルアンモニウムクロリド(NPen4Cl)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド、トリメチルアダマンチルアンモニウムヒドロキシド、メルドラム酸-テトラメチルアンモニウム塩が特に好ましい。なお、組成物に含まれるアンモニウム塩は、1種類に限られず、2種類以上を含むものであってもよい。
【0136】
シラノール化合物含有組成物におけるアンモニウム塩の含有量(2種類以上含む場合は総含有量)は、組成物の総質量に対し、好ましくは0.1質量%より多く、より好ましくは50質量%以上であり、通常95質量%未満、好ましくは80質量%以下である。また、シラノール化合物含有組成物におけるアンモニウム塩のシラノール化合物に対する比率(アンモニウム塩の総物質量/シラノール化合物の総物質量)は、好ましくは0より大きく、より好ましくは1以上であり、通常12以下、好ましくは8以下、より好ましくは6以下である。
【実施例0137】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0138】
本実施例で用いている略称の意味を以下に示す。
AcOEt:酢酸エチル
THF:テトラヒドロフラン
Me:メチル基
Vi:ビニル基
【0139】
以下に示す化合物(1)の収率は、化合物(10)を基準としている。
以下において、「mmol」は「10-3モル」を示す。
以下においては、化合物(1)の個々の化合物の名称を、これら化合物を表す式に付した符号を用いて決定している。例えば、後述する「式(1)-1で表される化合物」は、「化合物(1)-1」と称する。
【0140】
<シラノール化合物(化合物(10))の製造>
[製造例1]化合物(10)の合成
ドデカカリウム-2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,25,26,27,28,29,30-オクタデカオキサ-1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23-ドデカシラヘプタシクロ[13.9.1.13,13.15,11.17,21.19,19.117,23]トリアコンタン-1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23-ドデカキス(オラート)ビス(α-デキストリン)水和物(以下、「Q12K12・2αCD・nH2O」と略す場合がある。)、Q12K12・2αCD・49.2H2O、0.823g(0.200mmol)をTHF(反応溶媒)10mLに懸濁させた分散液に塩酸0.501mL(6.00mmol)を加え、15分間攪拌することで懸濁液を得た。この懸濁液をフィルターろ過してろ液を得た。
【0141】
得られたろ液に酢酸エチル(貧溶媒)10mLを加え、10分間攪拌し、再沈殿(固形物を析出)させた。この懸濁溶液をフィルターろ過して固形物を分離した。固形物を回収した後、減圧乾燥することで組成式Si
12O
30H
12で表される化合物(下記式(10)で表される化合物である、2,4,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,25,26,27,28,29,30-オクタデカオキサ-1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23-ドデカシラヘプタシクロ[13.9.1.13,13.15,11.17,21.19,19.117,23]トリアコンタン-1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23-ドデカオール(CAS番号126347-25-9(化合物(10))を無色固体(粉体)として収率90%(0.170g)で単離した。なお、化合物(10)の無色固体(粉体)を重水素化されたDMSO-d6に溶解させ、NMRを測定したところ、
1H-NMRで7.07ppm、
29Si-NMRで-101.2ppmにピークが観測された。
29Si-NMRの測定結果を
図1に示す。また、Q
12H
12の無色固体(粉体)をジメチルスルホキシドとアセトニトリルとの混合溶媒に溶かし、高分解能質量分析(TOF-MS)を行った結果、理論値:H
12O
30Si
12Na[M+Na]850.6537に対して、実測値は850.6538であった。高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果を
図2に示す。以上、各種NMR及び高分解能質量分析により、製造例1で得られた生成物が下記式(10)で表される構造の化合物(10)であることを確認した。化合物(10)は、単独(純度:100%)の粉体として安定した状態を保つことができることがわかった。
【0142】
【0143】
[製造例2]化合物(10)の合成
Q12K12・2αCD・59.3H2O、6.845g(1.602mmol)をTHF(反応溶媒)80mLに懸濁させた分散液に塩酸3.924mL(46.99mmol)を加え、15分間攪拌することで懸濁液を得た。この懸濁液をフィルターろ過してろ液を得た。
【0144】
得られたろ液に酢酸エチル(貧溶媒)80mLを加え、60分間攪拌し、再沈殿(固形物を析出)させた。この懸濁溶液をフィルターろ過して固形物を分離した。固形物を回収した後、減圧乾燥することで化合物(10)を無色固体(粉体)として収率74%(1.167g)で単離した。
【0145】
[製造例3]化合物(10)の合成
Q12K12・2αCD・59.3H2O、6.886g(1.602mmol)をTHF(反応溶媒)80mLに懸濁させた分散液に硝酸3.007mL(47.44mmol)を加え、15分間攪拌することで懸濁液を得た。この懸濁液をフィルターろ過してろ液を得た。
【0146】
得られたろ液に酢酸エチル(貧溶媒)80mLを加え、60分間攪拌し、再沈殿(固形物を析出)させた。この懸濁溶液をフィルターろ過して固形物を分離した。固形物を回収した後、減圧乾燥することで化合物(10)を無色固体(粉体)として収率14%(0.215g)で単離した。
【0147】
<化合物(1)の製造>
[実施例1]化合物(1)-1の合成
製造例2で得られた化合物(10)を用い、化合物(1)として化合物(1)-1を製造した。より具体的には、以下のとおりである。
【0148】
【0149】
化合物(10)(36.6mg、0.04mmol)をTHF(3mL)に溶解させ、得られた溶液に、ピリジン(45.6mg、0.576mmol)とクロロトリメチルシラン(62.6mg、0.576mmol)を加えて、室温で24時間撹拌することで、懸濁溶液を得た。この懸濁溶液の各種NMRスペクトルから、化合物(1)-1(「Si12O18[OSiMe3]12」)が生成していることを確認した。フィルターろ過後、得られたろ液から溶媒を減圧留去した。その後ヘキサンを(20mL)加え、フィルターろ過し、得られたろ液から溶媒を減圧留去することで、化合物(1)-1を固体物として得た(収量64mg、収率95%)。
【0150】
得られた化合物(1)-1のNMRデータおよびTOF-MSスペクトルを以下に示す。
図4に
1H-NMRの測定結果を示す。
図5に
13C-NMRの測定結果を示す。
図6に
29Si-NMRの測定結果を示す。
図7に高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果を示す。
【0151】
1H-NMR(CDCl3):0.14ppm.
13C-NMR(CDCl3):1.31ppm.
29Si-NMR(CDCl3):11.7ppm、-110.2ppm.
HRMS (ESI) m/z calcd. for C36H108NaO30Si24 1715.1280 [M+Na]+, found 1715.1246.
【0152】
【0153】
[実施例2]
製造例2で得られた化合物(10)を用い、化合物(1)として化合物(1)-2を製造した。より具体的には、以下のとおりである。
【0154】
【0155】
化合物(10)(36.6mg、0.04mmol)をTHF(3mL)に溶解させ、得られた溶液に、ピリジン(45.6mg、0.576mmol)とクロロジメチルビニルシラン(69.5mg、0.576mmol)を加えて、室温で24時間撹拌することで、懸濁溶液を得た。この懸濁溶液の各種NMRスペクトルから、化合物(1)-2(「Si12O18[OSiMe2Vi]12」)が生成していることを確認した(Viはビニル基を示す)。フィルターろ過後、得られたろ液から溶媒を減圧留去した。その後ヘキサンを(20mL)加え、フィルターろ過し、得られたろ液から溶媒を減圧留去することで、化合物(1)-2を固体物として得た(収量70mg、収率95%)。
【0156】
得られた化合物(1)-2のNMRデータおよびTOF-MSスペクトルを以下に示す。
図8に
1H-NMRの測定結果を示す。
図9に
13C-NMRの測定結果を示す。
図10に
29Si-NMRの測定結果を示す。
図11に高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果を示す。
【0157】
1H-NMR(CDCl3):0.18ppm、5.73-5.77ppm、5.91-5.94ppm、6.08-6.14ppm.
13C-NMR(CDCl3):-0.11ppm、132.3ppm、138.2ppm.
29Si-NMR(CDCl3):-0.07ppm、-110.4ppm.
HRMS (ESI) m/z calcd. for C48H108NaO30Si24 1859.1280 [M+Na]+, found 1859.1272.
【0158】
【0159】
[実施例3]
製造例2で得られた化合物(10)を用い、化合物(1)として化合物(1)-3を製造した。より具体的には、以下のとおりである。
【0160】
【0161】
化合物(10)(36.6mg、0.04mmol)をTHF(3mL)に溶解させ、得られた溶液に、ピリジン(45.6mg、0.576mmol)とクロロジメチルシラン(54.5mg、0.576mmol)を加えて、室温で4時間撹拌することで、懸濁溶液を得た。この懸濁溶液の各種NMRスペクトルから、化合物(1)-3(「Si12O18[OSiMe2H]12」)が生成していることを確認した。フィルターろ過後、得られたろ液から溶媒を減圧留去した。その後ヘキサンを(20mL)加え、フィルターろ過し、得られたろ液から溶媒を減圧留去することで、化合物(1)-3を固体物として得た(収量60mg、収率98%)。
【0162】
得られた化合物(1)-3のNMRデータおよびTOF-MSスペクトルを以下に示す。
図12に
1H-NMRの測定結果を示す。
図13に
13C-NMRの測定結果を示す。
図14に
29Si-NMRの測定結果を示す。
図15に高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果を示す。
【0163】
1H-NMR(CDCl3):0.24ppm、4.73ppm.
13C-NMR(CDCl3):0.2ppm.
29Si-NMR(CDCl3):-2.3ppm、-109.6ppm.
HRMS (ESI) m/z calcd. for C24H84NaO30Si24 1546.9402 [M+Na]+, found 1546.9382.
【0164】
【0165】
[実施例4]
製造例2で得られた化合物(10)を用い、化合物(1)として化合物(1)-4を製造した。より具体的には、以下のとおりである。
【0166】
【0167】
化合物(10)(36.6mg、0.04mmol)をTHF(3mL)に溶解させ、得られた溶液に、クロロジメチルシラン(13.2mg、0.14mmol)を加え、その後クロロトリメチルシラン(56.5mg、0.52mmol)を加え、さらにその後ピリジン(52.2mg、0.66mmol)を加えて、室温で20時間撹拌することで、懸濁溶液を得た。フィルターろ過後、得られたろ液から溶媒を減圧留去した。その後ヘキサンを(20mL)加え、フィルターろ過し、得られたろ液から溶媒を減圧留去することで、一連の化合物(1)-4を固体物として得た。この固体物の飛行時間型質量分析スペクトル(TOF-MS)から、一連の化合物(1)-4(「Si12O18[OSiMe2H]n[OSiMe3]12―n」)(n=0~12)が生成していることを確認した。
【0168】
図16に
1H-NMRの測定結果を示す。
図17に
13C-NMRの測定結果を示す。
図18に
29Si-NMRの測定結果を示す。
図19~28に各化合物の高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果を示す。
図29に一連の化合物(1)-4の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果を示す。
図19~28のそれぞれの左側に、一連の化合物(1)-4の中の置換基の位置の例の一つを示した。高分解能質量分析では置換基の位置の違いは観察されない。一連の化合物(1)-4は、混合物として得られたことが示された。
【0169】
【0170】
式(1)中、少なくとも1つのZ5はジメチルシリル基であり、少なくとも1つのZ5はトリメチルシリル基である。
【0171】
[実施例5]
製造例2で得られた化合物(10)を用い、化合物(1)として化合物(1)-5を製造した。より具体的には、以下のとおりである。
【0172】
【0173】
化合物(10)(18.6mg、0.02mmol)をTHF(1.5mL)に溶解させ、得られた溶液に、クロロジメチルビニルシラン(17.4mg、0.16mmol)とクロロトリメチルシラン(19.3mg、0.16mmol)を加え、さらにその後ピリジン(25.3mg、0.32mmol)を加えて、室温で24時間撹拌することで、懸濁溶液を得た。フィルターろ過後、得られたろ液から溶媒を減圧留去した。その後ヘキサンを(20mL)加え、フィルターろ過し、得られたろ液から溶媒を減圧留去することで、一連の化合物(1)-5を固体物として得た。この固体物の飛行時間型質量分析スペクトル(TOF-MS)から、一連の化合物(1)-5(「Si12O18[OSiMe2Vi]n[OSiMe3]12―n」)(n=0~12)が生成していることを確認した。
【0174】
図30に
1H-NMRの測定結果を示す。
図31に
13C-NMRの測定結果を示す。
図32に
29Si-NMRの測定結果を示す。
図33~43に各化合物の高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果を示す。
図44に一連の化合物(1)-4の、高分解能質量分析(TOF-MS)の測定結果を示す。
図33~43のそれぞれの左側に、一連の化合物(1)-5の中の置換基の位置の例の一つを示した。高分解能質量分析では置換基の位置の違いは観察されない。一連の化合物(1)-5は、混合物として得られたことが示された。
【0175】
【0176】
式(1)中、少なくとも1つのZ5はジメチルビニルシリル基であり、少なくとも1つのZ5はトリメチルシリル基である。