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特開2024-104550潜像表出構造、潜像形成体及び潜像表出構造の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104550
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】潜像表出構造、潜像形成体及び潜像表出構造の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/342 20140101AFI20240729BHJP
   G02B 5/32 20060101ALN20240729BHJP
【FI】
B42D25/342
G02B5/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008828
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】森永 匡
【テーマコード(参考)】
2C005
2H249
【Fターム(参考)】
2C005HA01
2C005JB22
2C005JB27
2C005JB40
2H249CA22
(57)【要約】
【課題】左右のバランスが整ったモーフィング画像を提供する。
【解決手段】本発明に係る潜像表出構造は、第1基画像が一端に配置され、第1基画像と異なる第2基画像が他端に配置され、第1基画像と第2基画像との間に第1基画像から第2基画像に遷移する複数の遷移画像が配置される基画像群を圧縮又は分割圧縮した圧縮画像群を備える。複数の遷移画像のうちの少なくとも一つが、中心線に対して非線対称の図形から成る合成遷移画像である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプリング器具によって発現する潜像が動画効果とモーフィング効果を有して視認される潜像表出構造であって、
前記潜像表出構造は、第1基画像と、前記第1基画像と異なる形状の第2基画像と、前記第1基画像と前記第2基画像との間に前記第1基画像から前記第2基画像に遷移する複数の遷移画像から成る基画像群が第1方向に圧縮された圧縮画像群から成り、
前記圧縮画像群において、前記複数の遷移画像のうち少なくとも一つが前記第1方向と直交する中心線に対して非線対称の図形である合成遷移画像から成ることを特徴とする潜像表出構造。
【請求項2】
前記圧縮画像群が、前記第1基画像、前記複数の遷移画像、前記第2基画像を圧縮して第1ピッチで配列した複数の圧縮画像から成り、
前記第1ピッチが前記複数の圧縮画像をサンプリングするサンプリング器具に形成された要素の第2ピッチより小さい場合は、前記合成遷移画像が、前記中心線を境に、前記第1基画像側は前記第2基画像に近似し、前記第2基画像側は前記第1基画像に近似した形状から成り、
前記第1ピッチが前記複数の圧縮画像をサンプリングするサンプリング器具に形成された要素の第2ピッチより大きい場合は、前記合成遷移画像が、前記中心線を境に、前記第1基画像側は前記第1基画像に近似し、前記第2基画像側は前記第2基画像に近似した形状から成ることを特徴とする請求項1記載の潜像表出構造。
【請求項3】
前記圧縮画像群が、前記第1基画像、前記複数の遷移画像、前記第2基画像を分割圧縮して第2ピッチで配列した複数の圧縮画像から成り、
前記第2ピッチが、前記複数の圧縮画像をサンプリングするサンプリング器具に形成された要素のピッチと同じであることを特徴とする請求項1記載の潜像表出構造。
【請求項4】
前記複数の遷移画像のうち、中心に配置された遷移画像が、前記合成遷移画像である、請求項2又は3に記載の潜像表出構造。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の前記潜像表出構造と前記サンプリング器具が基材に積層又は前記潜像表出構造及び前記サンプリング器具が前記基材に形成され一体化されて成ることを特徴とする潜像形成体。
【請求項6】
請求項3に記載の前記潜像表出構造と前記サンプリング器具が基材に積層又は前記潜像表出構造及び前記サンプリング器具が前記基材に形成され一体化されて成ることを特徴とする潜像形成体。
【請求項7】
請求項4に記載の前記潜像表出構造と前記サンプリング器具が基材に積層又は前記潜像表出構造及び前記サンプリング器具が前記基材に形成され一体化されて成ることを特徴とする潜像形成体。
【請求項8】
請求項1記載の潜像表出構造の形成方法であって、
前記第1基画像と、前記第1基画像と異なる形状の前記第2基画像と、前記第1基画像と前記第2基画像との間に前記第1基画像から前記第2基画像に遷移する複数の仮遷移画像から成る仮の基画像群を形成するステップと、
前記複数の仮遷移画像のうち、前記潜像を再生するために必要な遷移画像のコマ数を算出するステップと、
前記複数の仮遷移画像における少なくとも一つを中間遷移画像として設定し、前記中間遷移画像より前記第1基画像側に位置する前記複数の仮遷移画像の中の一つを第1取り込み画像、前記中間遷移画像より前記第2基画像側に位置する前記複数の仮遷移画像の中の一つを第2取り込み画像として設定するステップと、
前記第1取り込み画像と前記第2取り込み画像をそれぞれ第1方向と直交する中心線を境に分割し、前記中心線に対して非線対称の図形として合成する合成遷移画像を作成するステップと、
前記仮の基画像群における前記中間遷移画像を前記合成遷移画像に変換し、前記合成遷移画像を除く前記複数の仮遷移画像を、前記第1基画像から前記合成遷移画像に遷移する複数の第1遷移画像及び前記合成遷移画像から前記第2基画像に遷移する複数の第2遷移画像に変換した前記基画像群を形成するステップと、
前記基画像群を前記第1方向に圧縮又は分割圧縮することによって、圧縮画像群を形成するステップと、
を有する潜像表出構造の形成方法。
【請求項9】
前記圧縮画像群を形成するステップは、
前記第1基画像、前記複数の第1遷移画像、前記合成遷移画像、前記複数の第2遷移画像及び前記第2基画像のそれぞれの画像を前記第1方向に圧縮又は分割圧縮してから前記第1方向に配置する、又は
前記第1基画像、前記複数の第1遷移画像、前記合成遷移画像、前記複数の第2遷移画像及び前記第2基画像を前記第1方向に配置してからそれぞれの画像を前記第1方向に圧縮又は分割圧縮することを特徴とする請求項8記載の潜像表出構造の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像が動く動画効果に加えて、二つの画像が混ざり合いながら徐々に変化するモーフィング(Morphing)効果を得られる潜像表出構造、潜像形成体及び潜像表出構造の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像が複雑に変化する効果の一つとして、モーフィング効果が知られている。モーフィング効果では、二つの画像が混ざり合いながら一方の画像から他方の画像へ徐々に変化する。モーフィング効果を得られる画像を形成する方式の一つに、圧縮画像方式がある。圧縮画像方式には、さらに、モアレ方式と、IP(Integral Photography)画像方式がある。ここで、一般的なモアレ方式及びIP画像方式について説明する。
【0003】
図8は、一般的なモアレ方式及びIP画像方式で用いられる基画像群の一例を示す模式図である。図8に示す基画像群100の一端には星形の第1基画像101が配置され、他端には円形の第2基画像102が配置されている。また、第1基画像101と第2基画像102の間には、星形から段階的に円形に変形する複数の遷移画像が形成されている。各遷移画像は、第1方向S1に直交する中心線に対して線対称な図形となっている。図8においては、第1基画像101から段階的に変形する複数の遷移画像が第1方向S1である左から右に10個並び、11個目の遷移画像は2行目の左端に配置され、さらにそこから遷移画像が第1方向S1である左から右に10個並び、21個目の遷移画像は3行目の左端に配置され、を繰り返すことで、第1基画像101から第2基画像102にかけて複数の遷移画像が配置されているが、これは図面の記載上このような配置になっているものであり、複数の遷移画像の配置を限定するものではない。
【0004】
図9は、一般的なモアレ方式の圧縮画像群の一例を示す模式図である。図9に示す圧縮画像群110は、図8に示す基画像群100の各画像をそれぞれ第1方向S1に圧縮した画像を第1方向S1に配列した画像群である。このとき、図9の右側の拡大図に示すように、各圧縮画像は、各基画像を第1幅W1に圧縮して第1ピッチP1の周期で第1方向S1に一列に並べた規則的な画線構成になっている。
【0005】
図10は、一般的なモアレ方式で再生される潜像の一例を示す図である。図10では、図9に示す圧縮画像群110上にサンプリング器具200が配置されている。サンプリング器具200には、図10の右側の拡大図に示すように、第2幅W2を有する要素が第2ピッチP2の周期で第1方向S1に一列に並べられた万線模様(スリット)が形成されている。サンプリング器具200によって、圧縮画像が第1ピッチP1とわずかに異なる第2ピッチでサンプリングされると、Moire Magnificationという現象によって、圧縮画像を拡大した潜像120~潜像122が出現する。このようなモアレ方式でモーフィング効果を得られる潜像を形成する技術が、特許文献1(特許4427796号公報)に提案されている。
【0006】
図11は、一般的なIP画像方式の圧縮画像群の一例を示す模式図である。図11に示す圧縮画像群130は、図8に示す基画像群100の各画像の一部を分割して取り出し、第1方向S1にすべて同じ割合で圧縮することによって形成される。このとき、分割された圧縮画像は、図10に示すサンプリング器具200の要素201の第2ピッチP2と同じ第2ピッチP2で第1方向S1に規則的に配列される。
【0007】
図12は、一般的なIP画像方式で再生される潜像の一例を示す図である。図12では、図11に示す圧縮画像群130上にサンプリング器具200が配置されている。サンプリング器具200によって、圧縮画像がサンプリングされると、図12に示すように、圧縮画像を拡大した潜像140が出現する。このとき、サンプリング器具200の配置を第1方向S1である左から右や、第1方向S1とは逆の方向である右から左に移動させると、出現した潜像140が左右方向に動的変化する効果とともに、モーフィング効果が視認される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4427796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
圧縮画像を用いて再生される潜像は、複数の基画像の集合体から成る。特に、特許文献1に提案されたようなモアレ方式でモーフィング効果を得られる潜像を形成する際、再生される潜像の左右の位置ではサンプリングされる画像の形状に大きな違いがあることによって、左右のバランスが崩れる場合がある。
【0010】
図13(a)は、左右のバランスが崩れた状態で再生されたモアレ方式の潜像123の一例を示す模式図である。また、図13(b)は、図13(a)に示す潜像の再生に用いられた複数の圧縮画像の抽出位置60を示す模式図である。図13(c)は、図13(b)の抽出位置60内における一方の圧縮画像111の基画像を示す模式図である。図13(d)は、図13(b)の抽出位置60内における他方の圧縮画像112の基画像を示す模式図である。
【0011】
図13(a)に示す潜像123は、図13(b)に示す圧縮画像111の左側から圧縮画像112の右側までの複数の圧縮画像をサンプリング器具200でサンプリングすることによって、形成される。このとき、圧縮画像111のサンプリング部分は、図13(c)に示す遷移画像103における左端部分103aに相当する。一方、圧縮画像112のサンプリング部分は、図13(d)に示す遷移画像104の右端部分104aに相当する。圧縮画像111から圧縮画像112の間に存在する遷移画像も隣り合う画像同士でもわずかではあるものの形状に差異があり、サンプリングされる位置が離れるほどその違いが大きな歪みとなって現れる。その結果、図13(a)に示す潜像123は、左右のバランスが崩れた歪み画像となってしまう。
【0012】
そこで、本発明は、モーフィング効果発現時に左右のバランスが整った潜像を発現させるための潜像表出構造、潜像形成体及び潜像表出構造の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の潜像表出構造は、サンプリング器具によって発現する潜像が動画効果とモーフィング効果を有して視認される潜像表出構造であって、第1基画像と、第1基画像と異なる形状の第2基画像と、第1基画像と第2基画像との間に第1基画像から第2基画像に遷移する複数の遷移画像から成る基画像群が第1方向に圧縮された圧縮画像群から成り、圧縮画像群において、複数の遷移画像のうち少なくとも一つが第1方向と直交する中心線に対して非線対称の図形である合成遷移画像から成ることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の潜像表出構造は、圧縮画像群が、第1基画像、複数の遷移画像、第2基画像を圧縮して第1ピッチで配列した複数の圧縮画像から成り、第1ピッチが複数の圧縮画像をサンプリングするサンプリング器具に形成された要素の第2ピッチより小さい場合は、合成遷移画像が、中心線を境に、第1基画像側は第2基画像に近似し、第2基画像側は第1基画像に近似した形状から成り、第1ピッチが複数の圧縮画像をサンプリングするサンプリング器具に形成された要素の第2ピッチより大きい場合は、合成遷移画像が、中心線を境に、第1基画像側は第1基画像に近似し、第2基画像側は第2基画像に近似した形状から成ることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の潜像表出構造は、圧縮画像群が、第1基画像、複数の遷移画像、第2基画像を分割圧縮して第2ピッチで配列した複数の圧縮画像から成り、第2ピッチが、複数の圧縮画像をサンプリングするサンプリング器具に形成された要素のピッチと同じであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の潜像表出構造は、複数の遷移画像のうち、中心に配置された遷移画像が、合成遷移画像であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の潜像形成体は、潜像表出構造とサンプリング器具が基材に積層又は潜像表出構造及びサンプリング器具が基材に形成され一体化されて成ることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、潜像表出構造の形成方法であって、第1基画像と、第1基画像と異なる形状の第2基画像と、第1基画像と第2基画像との間に第1基画像から第2基画像に遷移する複数の仮遷移画像から成る仮の基画像群を形成するステップと、複数の仮遷移画像のうち、潜像を再生するために必要な遷移画像のコマ数を算出するステップと、複数の仮遷移画像における少なくとも一つを中間遷移画像として設定し、中間遷移画像より第1基画像側に位置する複数の仮遷移画像の中の一つを第1取り込み画像、中間遷移画像より第2基画像側に位置する複数の仮遷移画像の中の一つを第2取り込み画像として設定するステップと、第1取り込み画像と第2取り込み画像をそれぞれ第1方向と直交する中心線を境に分割し、中心線に対して非線対称の図形として合成する合成遷移画像を作成するステップと、仮の基画像群における中間遷移画像を合成遷移画像に変換し、合成遷移画像を除く複数の仮遷移画像を、第1基画像から合成遷移画像に遷移する複数の第1遷移画像及び合成遷移画像から第2基画像に遷移する複数の第2遷移画像に変換した基画像群を形成するステップと、基画像群を第1方向に圧縮又は分割圧縮することによって、圧縮画像群を形成するステップと、を有する潜像表出構造の形成方法である。
【0019】
また、本発明は、圧縮画像群を形成するステップは、第1基画像、複数の第1遷移画像、合成遷移画像、複数の第2遷移画像及び第2基画像のそれぞれの画像を第1方向に圧縮又は分割圧縮してから第1方向に配置する、又は第1基画像、複数の第1遷移画像、合成遷移画像、複数の第2遷移画像及び第2基画像を第1方向に配置してからそれぞれの画像を第1方向に圧縮又は分割圧縮することを特徴とする潜像表出構造の形成方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、モーフィング効果を表現するにあたって、左右のバランスが整った潜像を発現させるための潜像表出構造、潜像形成体及び潜像表出構造の形成方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1実施形態に係る潜像表出構造の形成方法を示すフローチャートである。
図2】取り込み画像の合成処理を説明するための模式図である。
図3】基画像群の一例を示す模式図である。
図4】第1潜像形成体の構造を示す斜視図である。
図5】第2潜像形成体の構造を示す斜視図である。
図6】第3潜像形成体の構造を示す斜視図である。
図7】第4潜像形成体の構造を示す平面図である。
図8】一般的なモアレ方式及びIP画像方式で用いられる基画像群の一例を示す模式図である。
図9】一般的なモアレ方式の圧縮画像群の一例を示す模式図である。
図10】一般的なモアレ方式で再生される潜像の一例を示す図である。
図11】一般的なIP画像方式の圧縮画像群の一例を示す模式図である。
図12】一般的なIP画像方式で再生される潜像の一例を示す図である。
図13】左右のバランスが崩れた状態で再生されたモアレ方式の潜像の一例と、その原因について示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施形態が含まれる。
【0023】
(第1実施形態)
本実施形態では、第1基画像と第2基画像との間に存在する複数の遷移画像の中に、少なくとも一つの非線対称画像を新たに作成して配置し、再生される潜像の左右のバランスを適正化する。本実施形態に係る潜像表出構造の形成方法を図1図3を参照して説明する。なお、本実施形態では、図8図13に示す従来の構成要素と同様の構成要素には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。第1実施形態ではモアレ方式で圧縮画像を形成する構成について説明する。
【0024】
図1は、第1実施形態に係る潜像表出構造の形成方法を示すフローチャートである。なお、このフローチャートに基づく潜像表出構造の形成方法は、市販の画像処理ソフト(例えば、アドビ株式会社のイラストレーター等)をインストールしたコンピュータによって実現することができる。
【0025】
まず、ユーザが上記コンピュータを操作して、潜像に関するパラメータを設定する(ステップS11)。このパラメータには、例えば、2つの基画像の図形、その図形の大きさ、基画像群の数、圧縮画像のピッチ、及び圧縮画像をサンプリングするサンプリング器具のピッチなどが含まれる。なお、本実施形態では、基画像群の数は、50個に設定したものとして説明する。すなわち、第1基画像から第2基画像までのコマ数が50個に設定される。
【0026】
次に、仮の基画像群を作成する(ステップS12)。本実施形態では、図8に示す従来の基画像群100が、仮の基画像群100として作成される。仮の基画像群100では、星形の第1基画像101と、円形の第2基画像102との間に、48コマ分の仮遷移画像が作成される。これらの仮遷移画像は、例えばイラストレーターのブレンド機能といった画像処理ソフトの混ぜ合わせの機能を用いて作成することができる。なお、仮遷移画像は、デザイナーの手作業によって、作成されてもよい。
【0027】
次に、再生される潜像の大きさから、潜像が何コマの仮遷移画像から作成されるかを算出する(ステップS13)。本実施形態ではモアレ方式を用いるため、仮遷移画像のコマ数Nは、下記の式(1)を用いて算出される。
N=P2÷|P2-P1| (1)
【0028】
式(1)において、第1ピッチP1は、図9に示す圧縮画像群110の圧縮画像の画線ピッチを示す。また、第2ピッチP2は、図10に示す圧縮画像をサンプリングするサンプリング器具200に形成された要素201のピッチを示す。本実施形態では、例えば、第1ピッチP1=0.475mm、第2ピッチP2=0.5mmとした場合、上記の式(1)によりN=20に算出される。
【0029】
次に、図8に示す仮の基画像群100の仮遷移画像の中から取り込み画像を設定する(ステップS14)。ステップS14では、まず、仮の基画像群100の中間に位置する中間遷移画像105を起点画像として設定する。ここでいう中間とは、第1基画像と第2基画像の間にある複数の仮遷移画像のうち、少なくとも一つをいう。起点画像として設定される中間遷移画像105の位置は特に限定しないが、第1基画像群100の中心に近い仮遷移画像を中間遷移画像として設定することが好ましい。続いて、中間遷移画像105から第1基画像101側にステップS13で算出した(コマ数N÷2)の位置に配置された仮遷移画像103を第1取り込み画像に設定する。続いて、中間遷移画像105から第2基画像102側に(コマ数N÷2)の位置に配置された仮遷移画像104を第2取り込み画像に設定する。本実施形態では、仮の基画像群100の中で25コマ目の中間遷移画像105が起点画像として設定される。また、中間遷移画像105から第1基画像101側に10コマ戻った(-10コマ)仮遷移画像103が第1取り込み画像として設定される。さらに、中間遷移画像105から第2基画像102側に10コマ進んだ(+10コマ)仮遷移画像104が第2取り込み画像として設定される。取り込み画像として設定される仮遷移画像は、これに限定されるものではなく、適宜選定される。
【0030】
次に、仮遷移画像103と仮遷移画像104を半分に分割して合成し、合成遷移画像106を作成する(ステップS15)。ここで、図2を参照してステップS15について説明する。
【0031】
図2は、取り込み画像を合成処理して作成する合成遷移画像106を説明するための模式図である。本実施形態では、図2に示すように、仮遷移画像103については、第2基画像102側の半分(換言すると右半分)を残す。一方、仮遷移画像104については、第1基画像101側の半分(換言すると左半分)を残す。仮遷移画像103の右半分と、仮遷移画像104の左半分とを合成することによって、中間遷移画像105が、図2に示す合成遷移画像106に変換される。合成遷移画像106は、中心線に対して非線対称の図形から成る。これは、前述した図13の説明において、発現する潜像123の左端は遷移画像103の左端部分103a、潜像123の右端は遷移画像104の右端部分104aがサンプリングされることによって歪み画像になることを防止するために、中間遷移画像105における第1基画像101側(換言すると左側)は第2基画像102に近い形状、第2基画像102側(換言すると右側)は第1基画像101に近い形状の中心線に対して非線対称の図形をあえて合成遷移画像106にすることで、発現する潜像は左右のバランスが整ったものとなる。なお、ステップS15では、仮遷移画像103と仮遷移画像104との合成部分である接続端部において、画線が完全に一致しない場合には、例えば両画像の接続端部の中間位置に画線をずらす等の画像処理を行って微調整する。
【0032】
次に、図1に戻って、本実施形態における仮の基画像群100において第1基画像101と合成遷移画像106の画像を基準として23コマの新しい複数の第1遷移画像を作成し、合成遷移画像106と第2基画像102の画像を基準として、24コマの新しい複数の第2遷移画像を作成する。これらの第1遷移画像及び第2遷移画像は、仮遷移画像の作成時と同様に画像処理ソフトの混ぜ合わせ機能を用いて作成すればよい。これらの画像を、基画像群10とする(ステップS16)。
【0033】
図3は、基画像群の一例を示す模式図である。図3に示す基画像群10では、一端に配置された第1基画像101及び他端に配置された第2基画像102は、図8に示す仮の基画像群100と同じく、中心線に対して線対称な図形(星形、円形)である。その一方で、第1基画像101と第2基画像102との間に配置された48コマの遷移画像のうち、合成遷移画像106を含む少なくとも一つは、ステップS14~ステップS16の画像処理によって、中心線に対して(左右で)非線対称な図形となっている。
【0034】
次に、図1に戻って、基画像群10を圧縮した圧縮画像群を作成する(ステップS17)。ステップS17では、各圧縮画像の第1ピッチP1がステップS11で設定された値となるように、基画像群10の各基画像が第1方向S1に圧縮処理される。ここで、圧縮画像の第1ピッチP1とサンプリング器具200の第2ピッチP2の関係について説明する。ステップS11において、P1<P2に設定されている場合、圧縮画像群の各圧縮画像は、基画像群10の各基画像をそのまま圧縮処理することによって作成される。反対にP1>P2に設定されている場合、基画像群10の各基画像を中心線に対して左右反転した画像に変換してから圧縮処理を行う。これは、P1>P2に設定された場合、発現する潜像が従来技術以上に左右のバランスが崩れた歪み画像となってしまうためである。画像の反転処理は、例えばイラストレーターのリフレクト機能を用いて実現することができる。
【0035】
ここで、圧縮画像群を作成する際は、基画像群10の第1基画像、複数の第1遷移画像、合成遷移画像、複数の第2遷移画像及び第2基画像のそれぞれの画像を第1方向S1に圧縮又は分割圧縮してから第1方向S1に配置しても良いし、基画像群10を第1基画像、複数の第1遷移画像、合成遷移画像、複数の第2遷移画像及び第2基画像の順に第1方向S1に配置してからそれぞれの画像を第1方向に圧縮又は分割圧縮しても良い。
【0036】
次に、ステップS17で作成した圧縮画像を、サンプリング器具200でサンプリングすることによって出現する潜像の形状の適否を判定する(ステップS18)。ステップS18では、例えば、予めコンピュータに記憶された適切な潜像と、第2ピッチP2でサンプリングされた潜像とをパターンマッチングしたときの位置ずれ(歪み)量が、しきい値内であるときに適正であると判定し、しきい値を超えているときに適正でないと判定する。適切な潜像としては、例えば、図8に示す仮の基画像群100のそれぞれの画像を適切な潜像として予め記憶しておくことができる。なお、潜像の形状の適否は、デザイナーの目視によって判定されてもよい。
【0037】
ステップS18で、潜像の形状が適正でないと判定された場合、上記位置ずれ量に応じて、合成遷移画像106の修正処理を行う。修正処理の一例としては、図8に示す取り込み画像として設定する仮遷移画像103と仮遷移画像104の位置を変えて、改めて合成遷移画像106を作成する。また、より精緻な潜像変化を求める場合、第1基画像101と合成遷移画像106との間、及び合成遷移画像と第2基画像102との間にさらに1/4画像等を設定してもよい(ステップS19)。
【0038】
以上説明した本実施形態では、図8に示す仮の基画像群100のように第1基画像101と第2基画像102を単純に均等に混ぜ合わせた遷移画像を圧縮するのではなく、図3に示す基画像群10のような、第1基画像101と第2基画像102の配分を変化させた新しい遷移画像を圧縮する。このように、予め左右のバランスの崩れた遷移画像を用いることによって、左右のバランスが整った潜像を発現させるための潜像表出構造を作成可能となる。
【0039】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、IP画像方式で潜像を形成する。ここでは、上述した第1実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の点については説明を省略する。
【0040】
本実施形態では、ステップS17の圧縮処理がモアレ方式の第1実施形態と異なり、その他のステップの処理は、第1実施形態と同様である。本実施形態のステップS17では、基画像群10の各基画像を分割圧縮する。このとき、各圧縮画像の第2ピッチP2がステップS11で設定された値になるように、基画像群10の各基画像が第1方向にS1圧縮処理される。本実施形態では、第2ピッチP2の値は、サンプリング器具200の要素201の第2ピッチP2と同じ値に設定されている。
【0041】
なお、基画像群10の各基画像をそのまま分割処理及び圧縮処理することによって圧縮画像群を作成する場合と、基画像群10の各基画像を中心線に対して左右反転した画像に変換してから分割処理及び圧縮処理することによって圧縮画像群を作成する場合では、発現した潜像が動的に変化する方向が反転する。画像の反転処理は、第1実施形態と同様に、例えばイラストレーターのリフレクト機能を用いて実現することができる。
【0042】
以上説明した本実施形態によれば、従来には存在しなかったIP画像方式によるモーフィング効果を有する潜像を実現することができる。また、この潜像は、第1基画像101から第2基画像102までの遷移画像の配分を変化させた遷移画像を含む基画像群10を分割圧縮することによって形成される。したがって、第1実施形態と同様に、左右のバランスが整った潜像を実現することが可能となる。本実施形態における基画像群を分割圧縮して潜像を形成する具体的な方法は、特許第5200284号公報に記載の方法を用いればよい。
【0043】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態又は第2実施形態で用いられる基画像群10を圧縮又は分割圧縮した圧縮画像群から成る潜像表出構造と、サンプリング器具200が基材と一体化した幾つかの潜像形成体の例について説明する。ここでいう一体化とは、後述する基材の表裏に潜像表出構造とサンプリング器具200が形成された形態、基材に形成された潜像表出構造の上にサンプリング器具200が積層された形態、基材上にサンプリング器具200、潜像表出構造が順次積層された形態及び基材そのものがサンプリング器具200と潜像表出構造の機能を備えている形態をいう。
【0044】
図4は、第1潜像形成体の構造を示す斜視図である。図4に示す第1潜像形成体20の一体化したサンプリング器具200は開口スリットを有した万線模様であり、パララックスバリアを構成する。第1潜像形成体20は、平板状の透明基材21と、圧縮画像群23と、を有する。透明基材21は、例えばガラス基板である。透明基材21の表面21aには、スリット22が形成されている。スリット22には、サンプリング器具200と同様に、複数の画線を第2ピッチP2で一列に配列した万線模様が形成されている。
【0045】
また、透明基材21の裏面21bには、圧縮画像群23が形成されている。圧縮画像群23には、複数の圧縮画像が一列に配列されている。第1実施形態で説明したモアレ方式の潜像を再生する場合には、各圧縮画像は、図3に示す基画像群10の各基画像を圧縮することによって形成される。このとき、各圧縮画像の第1ピッチP1は、スリット22の第2ピッチP2と異なる。なお、第1ピッチP1が第2ピッチP2よりも大きい場合、圧縮画像群23は、基画像群10の各基画像を中心線に対して左右反転して圧縮した複数の圧縮画像で構成される。
【0046】
一方、第2実施形態で説明したIP画像方式の潜像を再生する場合には、各圧縮画像は、図3に示す基画像群10の各基画像を分割圧縮することによって形成される。このとき、各圧縮画像の第2ピッチP2は、スリット22の第2ピッチP2と同じである。なお、潜像が変化する方向を逆転させる場合には、圧縮画像群23は、基画像群10の各基画像を中心線に対して左右反転して圧縮した複数の圧縮画像で構成される。
【0047】
上記のように構成された第1潜像形成体20では、透明基材21を傾けると、圧縮画像群23の圧縮画像が、スリット22によってサンプリングされる。その結果、第1基画像101から第2基画像102に変化する潜像、または第2基画像102から第1基画像101に変化する潜像が出現する。
【0048】
図5は、第2潜像形成体の構造を示す斜視図である。図5に示す第2潜像形成体30は、サンプリング器具200としてレンチキュラーと一体化した形成体である。第2潜像形成体30は、平板状の基材31と、凸レンズ群32と、圧縮画像群33と、を有する。
【0049】
基材31は、例えば上質紙、コート紙、プラスティック、金属等であるが、特に限定されない。また、基材31の色彩及び大きさも特に制限されない。基材31の上面に凸レンズ群32が配置される。凸レンズ群32には、蒲鉾状の複数の凸レンズが一列に配列されており、いわゆるレンチキュラーを形成する。この凸レンズを配列する第2ピッチP2は、サンプリング器具200の要素201の第2ピッチP2と同じである。
【0050】
圧縮画像群33は、凸レンズ群32の下に配置される。圧縮画像群33には、複数の圧縮画像が凸レンズの配列方向と同じ方向に配列されている。第1実施形態で説明したモアレ方式の潜像を再生する場合には、各圧縮画像は、図3に示す基画像群10の各基画像を圧縮することによって形成される。このとき、各圧縮画像の第1ピッチP1は、凸レンズの配列第2ピッチP2と異なる。なお、第1ピッチP1が配列第2ピッチP2よりも大きい場合、圧縮画像群23は、基画像群10の各基画像を中心線に対して左右反転して圧縮した複数の圧縮画像で構成される。
【0051】
一方、第2実施形態で説明したIP画像方式の潜像を再生する場合には、各圧縮画像は、図3に示す基画像群10の各基画像を分割圧縮することによって形成される。このとき、各圧縮画像の第2ピッチP2は、凸レンズの配列第2ピッチP2と同じである。なお、潜像が変化する方向を逆転させる場合には、圧縮画像群23は、基画像群10の各基画像を中心線に対して左右反転して圧縮した複数の圧縮画像で構成される。
【0052】
上記のように構成された第2潜像形成体30では、凸レンズ群32の各凸レンズが、光の屈折を利用して圧縮画像群の圧縮画像を拡大してサンプリングする。その結果、第1基画像101から第2基画像102に変化する潜像、または第2基画像102から第1基画像101に変化する潜像が出現する。また、本実施形態に係る第2潜像形成体30で形成される潜像は、第1潜像形成体20で形成される潜像に比べて、明るく、かつ鮮明になる。また、第2潜像形成体30の厚さは、第1潜像形成体20の厚さよりも薄くなる。これは、第1潜像形成体20は光の屈折を利用するものではないため、レンズ効果を利用する第2潜像形成体30に比べ、透明基材21に厚みが必要であるが、第2潜像形成体30はレンズ効果による光の屈折を利用することから凸レンズ群32の厚みを透明基材21に比べて薄くすることが可能であるからである。
【0053】
図6は、第3潜像形成体の構造を示す斜視図である。図6に示す第3潜像形成体40におけるサンプリング器具200は蒲鉾形状の画線群42である。第3潜像形成体40は、シート状の基材41と、画線群42と、圧縮画像群43と、を有する。
【0054】
基材41の材料は、例えば上質紙、コート紙、プラスティック、金属等であるが、特に限定されない。また、基材41の色彩及び大きさも特に制限されない。画線群42は、図6に示すように、蒲鉾状の複数の画線で構成される。なお、本実施形態では、画線群42の各画線は、断面が曲線で構成された部分を備えていればよく、例えば半円形状又は半楕円形状等の画線であってもよい。また、画線群42は、例えばスクリーン印刷、凹版印刷及びUV-IJPで形成することが望ましいが、グラビア印刷やフレキソ印刷、凸版印刷等で形成することも可能である。本実施形態では、画線を配列する第2ピッチP2は、上述したサンプリング器具200の要素201の第2ピッチP2と同じである。
【0055】
また、本実施形態における画線群42は、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性を備えている必要がある。明暗フリップフロップ性とは、正反射した場合に明度が上昇する特性を指し、カラーフリップフロップ性とは、色相が変化する特性を指す。すなわち、画線群42は、光が入射した場合に、明度や色相が変化することで、色彩が大きく変化する特性を有している必要がある。色彩の変化の大きさが大きければ大きいほど、出現する潜像の視認性は高くなる。
【0056】
画線群42に明暗フリップフロップ性を付与する方法の一例としては、高光沢なインキ樹脂を用いたり、インキ中に金属顔料を混合したインキを用いたりして印刷することで容易に実現することができる。金属顔料としては、アルミや真鍮、酸化鉄等の一般的な金属顔料を混合すればよい。
【0057】
また、カラーフリップフロップ性を付与する方法の一例としては、パールインキや液晶インキ、OVI、CSI(Color Shifting Ink)等のインキを用いて印刷することで容易に実現することができる。多くのインキは物体色を有するが、虹彩色パールインキは無色透明である。例えば、赤色の虹彩色パールインキは、拡散反射光下では無色透明だが、正反射光下では赤色の干渉色を発する。このようにカラーフリップフロップ性を備えたインキは、正反射光下で色相が変化する。
【0058】
圧縮画像群43は、画線群42上に配置される。圧縮画像群43には、複数の圧縮画像が、画線群42の画線の配列方向と同じ方向に配列されている。第1実施形態で説明したモアレ方式の潜像を再生する場合には、各圧縮画像は、図3に示す基画像群10の各基画像を圧縮することによって形成される。このとき、各圧縮画像の第1ピッチP1は、図6に示す画線が配列された第2ピッチP2と異なる。なお、第1ピッチP1が配列第2ピッチP2よりも大きい場合、圧縮画像群23は、基画像群10の各基画像を中心線に対して左右反転して圧縮した複数の圧縮画像で構成される。
【0059】
一方、第2実施形態で説明したIP画像方式の潜像を再生する場合には、各圧縮画像は、図3に示す基画像群10の各基画像を分割圧縮することによって形成される。このとき、各圧縮画像の第2ピッチP2は、図6に示す画線が配列された第2ピッチP2と同じである。なお、潜像が変化する方向を逆転させる場合には、圧縮画像群43は、基画像群10の各基画像を中心線に対して左右反転して圧縮した複数の圧縮画像で構成される。
【0060】
上記のように構成された第3潜像形成体40では、蒲鉾状の画線上に、画線と反射率の異なる圧縮画像群43が重ねられる。そのため、画線群42の各画線が、光の反射を利用して圧縮画像群43の画像を拡大してサンプリングする。その結果、第1基画像101から第2基画像102に変化する潜像、または第2基画像102から第1基画像101に変化する潜像が出現する。
【0061】
図7は、第4潜像形成体の構造を示す平面図である。図7に示す第4潜像形成体50は、OVD(Optical Variable Device)を用いたホログラムであり、一体化したサンプリング器具200はライン状に構成された円弧状の回折格子である。第4潜像形成体50では、図7の右側の拡大図に示すように、圧縮画像群51の中に、円弧状の複数の格子線から成る回折格子52が一定の周期でライン状に形成されている。
【0062】
圧縮画像群51の圧縮画像は、図3に示す基画像群10の各基画像を圧縮又は分割圧縮することによってプラスティックや金属等の基材上にエンボスによって形成され、複数の回折格子52によってサンプリングされる。その結果、第1基画像101から第2基画像102に変化する潜像、または第2基画像102から第1基画像101に変化する潜像が出現する。圧縮画像を回折格子によってサンプリングする具体的な構成と作成方法については、特開2021-081705号公報に記載の構成と方法を用いればよい。
【0063】
以上説明した本実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様に、第1基画像101と第2基画像102の配分を変化させた新しい遷移画像を圧縮する。このように、予め左右のバランスが崩れた遷移画像を用いることによって、左右のバランスが整った潜像を実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0064】
10、100:基画像群(仮の基画像群)
20:第1潜像形成体
21:透明基材
22:スリット
23:圧縮画像群
30:第2潜像形成体
31:透明基材
32:凸レンズ群
33:圧縮画像群
40:第3潜像形成体
41:基材
42:画線群
43:圧縮画像群
50:第4潜像形成体
51:圧縮画像群
52:回折格子
60:抽出位置
101:第1基画像
102:第2基画像
103、104:遷移画像(仮遷移画像)
105:中間遷移画像
106:合成遷移画像
110、130:圧縮画像群
111、112:圧縮画像
120~123:潜像
200:サンプリング器具
201:要素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13