(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104557
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】駆動力発生体、振動波モータ、および電子機器
(51)【国際特許分類】
H02N 2/04 20060101AFI20240729BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20240729BHJP
G02B 7/08 20210101ALI20240729BHJP
【FI】
H02N2/04
G02B7/04 E
G02B7/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008836
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】木村 将光
(72)【発明者】
【氏名】芦沢 隆利
(72)【発明者】
【氏名】小林 三奈
(72)【発明者】
【氏名】塚田 晃弘
【テーマコード(参考)】
2H044
5H681
【Fターム(参考)】
2H044BE04
2H044DB04
5H681AA07
5H681BB02
5H681BB13
5H681BC01
5H681CC02
5H681DD23
5H681DD55
5H681DD74
5H681FF16
5H681FF33
(57)【要約】
【課題】駆動性能の向上を図ること。
【解決手段】駆動力発生体は、振動を発生させる振動体と、前記振動体と接続される弾性体と、前記弾性体に設けられ、前記振動体から発生する振動を、接触相手に対し前記弾性体が相対移動する駆動力に変換する変換部と、を備え、前記振動体と前記接触相手とが相対移動する方向を第1方向とし、前記弾性体と前記接触相手とが配列する方向を第2方向とした場合に、前記振動体の振動は、前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向に、節を有する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動を発生させる振動体と、
前記振動体と接続される弾性体と、
前記弾性体に設けられ、前記振動体から発生する振動を、接触相手に対し前記弾性体が相対移動する駆動力に変換する変換部と、を備え、
前記振動体と前記接触相手とが相対移動する方向を第1方向とし、前記弾性体と前記接触相手とが配列する方向を第2方向とした場合に、前記振動体の振動は、前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向に、節を有する、
駆動力発生体。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動力発生体であって、
前記振動体は、共振周波数が近似する縦振動と曲げ振動とを発生させ、
前記節は、前記曲げ振動の節である、
駆動力発生体。
【請求項3】
請求項2に記載の駆動力発生体であって、
前記振動体において前記曲げ振動の次数は奇数である、
駆動力発生体。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の駆動力発生体であって、
前記弾性体は、前記第3方向に交差する前記弾性体の長手方向に沿って前記節を中心に対向する位置に2つの前記変換部を有し、2つの前記変換部の位置における前記曲げ振動は、互いに逆位相となっている、
駆動力発生体。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の駆動力発生体であって、
前記振動体は、少なくとも2つの位相の電力が入力され、前記位相に応じて複数存在する入力部を有し、
前記複数の入力部のうち、前記変換部に対応する第1入力部の面積が前記変換部に対応していない第2入力部の面積よりも大きい、
駆動力発生体。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の駆動力発生体であって、
前記振動体は、少なくとも2つの位相の電力が入力され、前記第3方向に交差する前記弾性体の長手方向に配列された偶数個の入力部を有し、
隣り合う2つの前記入力部の間隙のうち、前記長手方向の中央に位置する第1間隙に、前記振動の第1変曲点となる前記節が位置する、
駆動力発生体。
【請求項7】
請求項6に記載の駆動力発生体であって、
前記間隙は奇数個あり、そのうち、前記長手方向において前記第1間隙から一方の側に位置する第2間隙に、前記振動の第2変曲点が位置し、
奇数個の前記間隙のうち、前記長手方向において前記第1間隙から他方の側に位置する第3間隙に、前記振動の第3変曲点が位置する、
駆動力発生体。
【請求項8】
請求項7に記載の駆動力発生体であって、
前記第2間隙の位置は、前記長手方向において前記第2変曲点の位置よりも前記第1変曲点から離間する位置であり、
前記第3間隙の位置は、前記長手方向において前記第3変曲点の位置よりも前記第1変曲点から離間する位置である、
駆動力発生体。
【請求項9】
請求項7に記載の駆動力発生体であって、
前記第2間隙の位置は、前記長手方向において前記第2変曲点の位置よりも前記第1変曲点に近接する位置であり、
前記第3間隙の位置は、前記長手方向において前記第3変曲点の位置よりも前記第1変曲点近接する位置である、
駆動力発生体。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の駆動力発生体であって、
前記第3方向に交差する前記弾性体の長手方向が前記第3方向の長さの3.5~8倍である、
駆動力発生体。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の駆動力発生体であって、
前記振動体および前記弾性体の少なくとも一方は、前記振動を調整する振動調整部を有する、
駆動力発生体。
【請求項12】
請求項11に記載の駆動力発生体であって、
前記振動調整部は、前記節を有する第1領域と、前記振動の腹を有する第2領域と、のうち少なくとも一方を含み、
前記第1領域は、前記振動体および前記弾性体の少なくとも一方における他の領域よりも質量が小さい領域を含み、
前記第2領域は、前記他の領域よりも質量が大きい領域を含む、
駆動力発生体。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の駆動力発生体であって、
前記振動体と前記弾性体とは、接着剤による接着により一体化されている第1部分と接着されていない第2部分とを有する、
駆動力発生体。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の駆動力発生体であって、
前記変換部は、前記第3方向に交差する前記弾性体の長手方向における前記変換部の長さが前記接触相手に近付くほど短い形状である、
駆動力発生体。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の駆動力発生体と、
前記弾性体と前記駆動力を受ける前記接触相手とを加圧接触させる加圧力発生部と、
前記加圧力発生部を保持するとともに前記駆動力発生体を加圧接触された状態で保持する保持部と、
を有する振動波モータ。
【請求項16】
請求項15に記載の振動波モータであって、
前記弾性体と前記相対移動部材の少なくとも一方は、表面処理としてダイヤモンド・ライク・カーボンと窒化処理の少なくとも一方が施され、
前記表面処理された表面に溶融異物がある場合は前記溶融異物の凸部の高さが2nm以上200nm以下であり、
表面粗さがSpc10以上2000以下の第1範囲と、線粗さがRq1nm以上47nm以下の第2範囲のうち、少なくとも一方の範囲を有する、
振動波モータ。
【請求項17】
請求項15または請求項16に記載の振動波モータと、
前記振動波モータで駆動する光学部材と、
を有する光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動波モータ、レンズ鏡筒及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機械変換素子と弾性体が接合された振動子を有し、電気機械変換素子の伸縮により、固有の振動を発生させた振動子と、加圧力によって接触した相対運動部材を有する、振動波モータがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
第1開示技術の駆動力発生体は、振動を発生させる振動体と、前記振動体と接続される弾性体と、前記弾性体に設けられ、前記振動体から発生する振動を、接触相手に対し前記弾性体が相対移動する駆動力に変換する変換部と、を備え、前記振動体と前記接触相手とが相対移動する方向を第1方向とし、前記弾性体と前記接触相手とが配列する方向を第2方向とした場合に、前記振動体の振動は、前記第1方向および前記第2方向に交差する第3方向に、節を有する。
【0005】
第2開示技術の振動波モータは、第1開示技術の駆動力発生体と、前記弾性体と前記相対移動駆動力を受ける相対移動部材とを加圧接触させる加圧力発生部と、前記加圧力発生部を保持するとともに前記駆動力発生体を加圧接触された状態で保持する保持部と、を有する。
【0006】
第3開示技術の光学機器は、第2開示技術の振動波モータと、前記振動波モータで駆動するレンズと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】
図4は、弾性体の裏面側から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、振動子と保持部材との関係を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、振動子と摩擦部材との位置関係を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、振動波モータの進行方向から見た側面図(その1)である。
【
図13】
図13は、振動波モータの進行方向から見た側面図(その2)である。
【
図16】
図16は、A相およびB相に印加された電圧を示す波形図である。
【
図18】
図18は、屈曲モードにおける分極の伸縮方向を示す説明図である。
【
図19】
図19は、時刻0における第1モード(90度位相差)でA相の印加電圧により発生する振動を示す説明図である。
【
図20】
図20は、時刻0における第2モード(90度位相差)でA相の印加電圧により発生する振動を示す説明図である。
【
図21】
図21は、時刻0における第1モード(90度位相差)において、A相で発生した振動とB相で発生した振動との合成を示す説明図である。
【
図22】
図22は、時刻0における第2モード(90度位相差)において、A相で発生した振動とB相で発生した振動との合成を示す説明図である。
【
図23】
図23は、時刻0における第1モード(90度位相差)および第2モード(90度位相差)の合成振動を示す説明図である。
【
図24】
図24は、時刻π/4における第1モード(90度位相差)でA相の印加電圧により発生する振動を示す説明図である。
【
図25】
図25は、時刻π/4における第2モード(90度位相差)でA相の印加電圧により発生する振動を示す説明図である。
【
図26】
図26は、時刻π/4における第2モード(90度位相差)でB相の印加電圧により発生する振動を示す説明図である。
【
図27】
図27は、時刻π/4における第1モード(90度位相差)において、A相で発生した振動とB相で発生した振動との合成を示す説明図である。
【
図28】
図28は、時刻π/4における第2モード(90度位相差)において、A相で発生した振動とB相で発生した振動との合成を示す説明図である。
【
図29】
図29は、時刻π/4における第1モード(90度位相差)および第2モード(90度位相差)の合成振動における現在位置を示す説明図である。
【
図30】
図30は、実施例1の時刻0~3π/4における第1モードの振動による振動子の伸縮状態を示す説明図である。
【
図31】
図31は、実施例1の時刻4π/4~7π/4における第1モードの振動による振動子の伸縮状態を示す説明図である。
【
図32】
図32は、実施例1の時刻0~3π/4における第2モードの振動による摺動部413の屈曲状態を示す説明図である。
【
図33】
図33は、実施例1の時刻4π/4~7π/4における第2モードの振動による摺動部413の屈曲状態を示す説明図である。
【
図34】
図34は、実施例1の時刻0~3π/4における摺動部の合成振動による先端位置を示す説明図である。
【
図35】
図35は、実施例1の時刻4π/4~7π/4における摺動部の合成振動による先端位置を示す説明図である。
【
図36】
図36は、入力周波数による駆動速度の変化と摺動部の振動軌跡との関係を示す説明図である。
【
図37】
図37は、入力電圧による駆動速度の変化と摺動部の振動軌跡との関係を示す説明図である。
【
図38】
図38は、位相差による駆動速度の変化と摺動部の振動軌跡との関係を示す説明図である。
【
図40】
図40は、弾性体と摺動部との関係1を示す振動子の背面図である。
【
図41】
図41は、弾性体と摺動部との関係2を示す振動子の背面図である。
【
図42】
図42は、共振周波数と共振抵抗値のシミュレーション結果を示す説明図である。
【
図43】
図43は、錘の体積比と第2モードとの関係を示すグラフである。
【
図44】
図44は、摺動部の形状の変形例1を示す斜視図である。
【
図45】
図45は、摺動部の形状の変形例2を示す斜視図である。
【
図46】
図46は、摺動部の形状の変形例3を示す斜視図である。
【
図47】
図47は、摺動部の形状の変形例4を示す斜視図である。
【
図48】
図48は、実施例2の時刻0~3π/4における第1モードの振動による振動子の伸縮状態を示す説明図である。
【
図49】
図49は、実施例2の時刻4π/4~7π/4における第1モードの振動による振動子の伸縮状態を示す説明図である。
【
図50】
図50は、実施例2の時刻0~3π/4における第2モードの振動による摺動部413の屈曲状態を示す説明図である。
【
図51】
図51は、実施例2の時刻4π/4~7π/4における第2モードの振動による摺動部の屈曲状態を示す説明図である。
【
図52】
図52は、実施例2の時刻0~3π/4における摺動部の合成振動による先端位置を示す説明図である。
【
図53】
図53は、実施例2の時刻4π/4~7π/4における摺動部の合成振動による先端位置を示す説明図である。
【
図54】
図54は、振動波モータを備えるレンズ鏡筒を含むカメラのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0008】
実施例1にかかる振動波モータは、第1モードと第2モードとを組み合わせて振動を発生させる。第1モードとは、たとえば、振動子の進行方向に振動子が伸縮する縦振動1次モードである。第2モードとは、たとえば、進行方向に直交する振動子500が幅方向に沿って屈曲する屈曲1次モードでかつ中心を境に逆位相に屈曲するモードである。以下、添付図面を用いて詳細に説明する。
【0009】
<振動波モータの外観>
図1は、振動波モータの斜視図である。また、
図2は、振動波モータの分解斜視図である。振動波モータ100は、振動体101と、弾性体102と、保持部材103と、摩擦部材104と、レール部材105と、ボール106と、加圧バネ107と、FPC(Flexible Printed Circuits)108と、フレーム109と、を有する。
【0010】
振動体101および弾性体102は接合される。保持部材103は、接合された振動体101および弾性体102を保持する。摩擦部材104は、保持部材103によって保持された振動体101および弾性体102を摺動させる。レール部材105は、ボール106を介して摩擦部材104と接続される。ボール106は、摩擦部材104に形成された溝とレール部材105に形成された溝との間に設けられ、両溝で形成されるレール内を転動する。
【0011】
加圧バネ107は、保持部材103とレール部材105とを接続する。保持部材103によって保持された振動体101および弾性体102は、加圧バネ107の付勢力に抗して摩擦部材104上を摺動する。FPC108は、可撓性のプリント配線基板であり、振動体101に接続されて給電する。フレーム109は、摩擦部材104に接続され、振動波モータ100を構成する振動体101、弾性体102、保持部材103、摩擦部材104、レール部材105、ボール106、およびFPC108を保持する。
【0012】
<振動体101>
図3は、振動体101の平面図である。振動体101は振動を発生させる。振動体101は、たとえば、圧電素子(鉛を含むチタン酸ジルコン酸鉛や無鉛の圧電体)により構成される。振動体101は、振動体101と摩擦部材104とが相対移動する進行方向(以下、単に進行方向と呼ぶ場合がある)に長尺な板形状で、振動体101の幅方向の長さとの比率は、たとえば、3.5~8倍である。進行方向は、振動体101と摩擦部材104とが相対移動する方向の一例である。当該相対移動する方向は、加圧方向(振動子500や摩擦部材104の厚み方向)と直交する相対移動成分の方向となる。
【0013】
3.5倍よりも比率が小さいと進行方向の縦振動1次モードの形状が崩れてしまい、所望の伸縮運動、並びに出力が得られない。一方、8倍よりも比率が大きいと、縦振動1次モードと幅方向に沿って屈曲する屈曲1次モードとの共振周波数を揃えるために厚みを極めて薄くする必要があり作製が困難となる。
【0014】
振動体101は、本体300と、凸部312と、電極313a~313dと、配線313e、313fと、を有する。本体300は、括れ部311を有する。なお、以降振動体101の電極313a~313dと、配線313e、313fが設けられている面を振動体101の表面、その裏側を振動体101の裏面と呼ぶことがある。また、振動体101の裏面には接地電極が設けられている。
【0015】
括れ部311は、振動体101の長側端301a、301bの中央にそれぞれ設けられる。2つの括れ部311間の振動体101の幅は、振動体101の幅方向の長さよりも短い。括れ部311は、第1モードの節を含む。第1モードの共振周波数を低周波数側に下げるには、振動体101の進行方向の長さを長くする必要があるが、括れ部311のように、振動の節に位置する部分に他の括れ部を設けても第1モードの共振周波数を低周波数側に下げることができる。
【0016】
振動の節に括れ部を設けることは節の剛性を下げることになり、節の剛性が下がると、バネ定数が下がることと同一の効果があり、共振周波数が低下する。これにより、振動体101の寸法を長くすることなく共振周波数を下げることができ、小型化に寄与させることができる。なお、節の剛性を下げる構造は括れに限らず多孔質としてもよいし、部分的に剛性の低い材質としてもよい。
【0017】
凸部312は、振動体101の進行方向の両側に設けられる。凸部312は、幅方向に突出する。第1モードは、振動の腹の質量を増加させることでも第1モードの共振周波数を低周波数側に下げることができる。振動の腹に錘として凸部312を設けることは、バネの先端に錘を増やすことと同一の効果があり、錘を増やすと共振周波数が低下する。凸部312を錘として振動の腹である振動体101の長手方向の両端近傍に配置することで、第1モードの共振周波数が低周波数側に移動する。
【0018】
また、凸部312は、第2モードの、この形状で最も摺動部413の振幅が強くなる付近の側面に配置される。これにより、第1モードの腹である完全な端部分に配置するよりも、第2モードの振幅を増大させることに寄与する。また、凸部312は、進行方向に対して長さが長くなりすぎると、第1モードの形状が崩れ、振動が不安定になり、また、振幅が出にくくなるため、局所的な配置となる。
【0019】
電極313a~313d、配線313e、313fは、振動体101の本体300の表面に設けられる。電極313a~313d、配線313e、313fには、FPC108から駆動用の電圧が印加される。電極313a~313dの各々が設けられる振動体101については、振動体101の裏面に設けられるGND電極に対して同一方向、または逆方向に分極処理が施されている。
【0020】
電極313a、313dの各々は、2つの凸部312の間に設けられる。電極313b、313cは、電極313a、313dの間に設けられる。電極313a、313b間の間隙をスリット302abと称す。電極313b、313c間の間隙をスリット302bcと称す。電極313c、313d間の間隙をスリット302cdと称す。
【0021】
配線313eは、電極313bと振動体101の一方の長側端301aとの間に、長側端301aに沿って設けられる。配線313fは、電極313cと振動体101の他方の長側端301bとの間に、長側端301bに沿って設けられる。
【0022】
配線313e、313fは、組立後に駆動用電極同士を導電塗料等で導通させるための電極となる。具体的には、たとえば、配線313eは、電極313a、313cと導通し、配線313fは、電極313b、313dと導通する。
【0023】
スリット302bcは、第2モードの振動の節となる変曲点に位置し、スリット302ab、スリット302cdは第2モードの振動の変曲点に位置する。スリット302ab、302bc、302cdを第2モードの振動の変曲点に位置させることで、振動を励起させやすくする。これにより、振幅が大きくなる。
【0024】
スリット302ab、302cdの位置を進行方向の短側端301c、301d側に寄せるほど、電極313b、313cの電極面積が増大し、第1モードの振幅が増大する。逆に、スリット302ab、302cdの位置を長手方向(進行方向)の中心側に寄せるほど、電極313b、313cの電極面積が縮小し、第1モードの振幅が減少する。第1モードの強さの調節は、スリット302ab,302cdの位置を進行方向にずらすことでも可能となる。
【0025】
具体的には、たとえば、スリット302ab,302cdの位置を進行方向の中心(スリット302bc)に寄せることで、電極313a,313dの電極面積が増大し、相対的に電極313b,313cの電極面積が減少する。これにより、第1モードの振動が減少する。一方、この場合、第2モードの振動は増大する。第2モードの振動が増大することより大きな加圧力を加えても対抗できるようになり、相対移動部材である摩擦部材104を、電極313a,313dの電極面積を増大させる前よりも強い駆動力で駆動することができる。第2モードの振幅が小さい状態で大きな加圧力を加えると第2モードの振動では振動子500と相対移動部材である摩擦部材104との離間が発生しなくなり駆動できなくなる。このように、摺動部413に対応する電極313a、313dの電極面積を大きくすることにより大きな駆動力を得ることが可能になる。
【0026】
逆に、スリット302ab,302cdを進行方向の中心から遠ざけることで電極313a,313dの電極面積が減少し、相対的に電極313d,313cの電極面積が増大する。これにより、第1モードの振動が増幅する。このように、スリット302ab,302cdの位置を変え、電極313a~313dの電極面積の比率を変えることで、第1モードの振動の調節が可能になる。なお、この時、スリット302bcの位置に変更はない。
【0027】
<弾性体102>
図4は、弾性体102の裏面側から見た斜視図である。弾性体102は、振動体101と同様、進行方向に長い板形状である。弾性体102は、たとえば、SUS304などのステンレス鋼やリン青銅、ベリリウム銅、アルミなどの金属で構成される。
【0028】
弾性体102は、本体400を有する。本体400は、括れ部411を有する。本体400の長手方向(進行方向)の両端側には、凸部412が幅方向に突出して設けられる。本体400の進行方向の両端側には、摺動部413が突出して設けられる。腕部414および先端部415が、括れ部411から幅方向に突出して設けられる。
【0029】
括れ部411は、弾性体102の長側端401の中央にそれぞれ設けられる。2つの括れ部411間の弾性体102の幅は、弾性体102の短側端402の幅方向の長さよりも短い。括れ部411は、振動体101の括れ部311と同様、第1モードの節に配置される。第1モードの共振周波数を低周波数側に下げるには、弾性体102の進行方向の長さを長くする必要があるが、括れ部411のように、振動の節に位置する部分に他の括れ部を設けても第1モードの共振周波数を低周波数側に下げることができる。
【0030】
振動の節に他の括れ部を設けることは節の剛性を下げることになり、節の剛性が下がると、バネ定数が下がることと同一の効果があり、共振周波数が低下する。これにより、振動体101と同様、弾性体102の寸法を長くすることなく、共振周波数を下げることができ、小型化に寄与させることができる。
【0031】
凸部412は、振動体101の凸部312と同様、弾性体102の長手方向(進行方向)の両端近傍に設けられる。凸部412は、幅方向に突出する。第1モードは、振動の腹の質量を増加させることでも第1モードの共振周波数を低周波数側に下げることができる。振動の腹に錘を付けることは、バネの先端に錘を増やすことと同一の効果があり、錘を増やすと共振周波数が低下する。凸部412を振動の腹である弾性体102の長手方向(進行方向)の両端に配置することで、第1モードの共振周波数が低周波数側に移動する。
【0032】
また、凸部412は、第2モードの、この形状で最も摺動部413の振幅が強くなる付近の側面に配置される。これにより、第1モードの腹である完全な端部分に配置するよりも、第2モードの振幅を増大させることに寄与する。また、凸部412は、進行方向に対して長さが長くなりすぎると、第1モードの形状が崩れ、振動が不安定になり、また、振幅が出にくくなるため、局所的な配置となる。
【0033】
摺動部413は、加圧によって摩擦部材104と加圧接触し摺動する。摺動部413は、本体400の裏面400a上において、第2モードの腹の頂点部分に配置される。第2モードの腹の頂点部分に摺動部413が位置することで、第2モードの振動が発生した際に、第2モードでは駆動方向の変位成分が発生せず、厚み方向のみの変位となる。そうすることによって、駆動に対して余分な変位の成分の発生を抑え、駆動方向の制御性が向上する。また、余分な変位成分が無いため、摩耗による耐久性も向上する。
【0034】
摺動部413の凸形状は、たとえば、長手方向(進行方向)の断面が半円型で構成される。また、摺動部413の凸形状は、長手方向(進行方向)および幅方向の断面が半円型、または、半球型でもよい。半円型のメリットとしては幅方向にある程度の長さがあるため、振動体101の不必要な傾きを抑制することができる。また、摺動部413が摩擦部材104と加圧接触する接触部は半円形の方が、長方形に対しては、摺動によって発生した摩耗粉を脇に排出しやすくなり、摩耗粉の巻き込みによる更なる摩耗の抑制が期待できる。
【0035】
腕部414は、保持部材103に接続され、振動体101と弾性体102とからなる構造体を、保持部材103に保持させる。腕部414は、振動体101および弾性体102の中心付近に幅方向に突出して設けられている。腕部414の位置は、振動体101と弾性体102とが接合した接合体における第1モードおよび第2モードの振動の節部に位置する。この振動の節部を外部の保持部材103と接触させることで、振動体101を保持した際の振動の減衰を最低限に抑える。
【0036】
先端部415は、腕部414の先端に設けられる。先端部415は略C字形状であり、その凹部で保持部材103と接続する。先端部415は、弾性体102の括れ部411から距離が離れているほど(腕部414が幅方向に長いほど)、振動減衰を抑制する効果がある。先端部415は、弾性体102の長側端401(括れ部411を除く)よりも外側に位置する。
【0037】
なお、先端部415は、長側端401よりも内側に位置してもよい。たとえば、括れ部411の幅方向の深さを深くして腕部414の長さを確保すると、先端部415は、長側端401よりも内側に位置することになる。
【0038】
<振動子>
図5は、振動子を示す斜視図である。振動子500は、振動体101の裏面と弾性体102の表面とが接合した接合体である。振動体101と弾性体102とが接合された場合、腕部414と振動体101とが接合してしまうと、腕部414の位置は節部でありながら若干の振動はあるため、振動を減衰させる効果がある。したがって、腕部414の寸法をより長くし、振動の減衰効果を弱める必要がある。
【0039】
振動の減衰効果の低減を回避するためには、腕部414と振動体101とを接合させないような形状にする。具体的には、たとえば、腕部414をその厚みが先端部415およびその付近の厚みよりも薄くなるような段差形状とし、腕部414と振動体101との間に空隙510ができるようにする。これにより、腕部414と振動体101とが直接接触しない。
【0040】
なお、振動体101の裏面と弾性体102の表面との接合の際には、腕部414にある空隙510に接着剤が回り込まないようにしてもよい。また、接着剤を塗布しないなどの方法により振動を減衰させないようにしてもよい。たとえば、ワイヤボンディングや真空接合(オプティカルコンタクトを含む)などのように接着剤を使用しないようにする。その際、空隙510があれば振動体101と弾性体102とは腕部414で接合されない。また、振動体101を弾性体102上で焼成によって作ることも可能であり、その場合は焼成前に隙間を作って置くことになる。
【0041】
なお、振動体101の長側端301aおよび弾性体102の長側端401を、振動子500の長側端501とする。振動体101の長側端301bおよび弾性体102の長側端401についても同様である。また、振動体101の短側端301cおよび弾性体102の短側端402を、振動子500の短側端502とする。振動体101の短側端301dおよび弾性体102の短側端402についても同様である。
【0042】
図6は、振動子500と保持部材103と振動子の関係を示す斜視図である。(A)において、保持部材103は、振動体101上の電極313a~313d、配線313e、313fを覆うように配置される。(B)は、(A)の状態を振動子500の裏面側から見た斜視図である。
【0043】
保持部材103は、本体600と、保持部601と、接続部602と、引掛部603と、を有する。
【0044】
本体600は、進行方向に長尺な板状部材であるが、進行方向の長さは、振動子500よりも短いが、振動子500よりも短くする必要はない。本体600は、電極313a~313d、配線313e、313fを覆う。
【0045】
保持部601は、本体600の長手方向の中央の両側に設けられ、本体600の厚み方向に突出する。保持部601は、レール部材105に接続される。
【0046】
接続部602は、保持部601の先端に設けられる。接続部602は、先端部415の凹部にはめ込まれて、弾性体102と接続する。これにより、振動子500が保持部材103に保持され、弾性体102の位置が規制される。接続部602と先端部415とは接着剤で固定されてもよい。
【0047】
引掛部603は、振動子500を摩擦部材104に加圧接触させるために配置する加圧バネ107を引っ掛ける部分である。引掛部603は、本体600の4つの角に設けられる。引掛部603はV字溝を有し、このV字溝に加圧バネ107が引っ掛けられる。
【0048】
引掛部603にV字溝を設けたことで、組立時に加圧バネ107を引っ掛けるときは、加圧バネ107の掛り部を引掛部603に対して幅方向の内側に押し込む。一方、組みばらし時で加圧バネ107を外すときに、加圧バネ107の掛り部を引掛部603に対して幅方向の外側に引っ張る。このように、加圧バネ107の押し引きのみで加圧バネ107を着脱できるようになり、作業性が向上する。
【0049】
また、本体600の4つの角に加圧バネ107を配置することで、加圧バネ107の個体差による加圧力のバラツキが平均化され、振動波モータ100ごとの加圧力の差を軽減し、振動波モータ100ごとの摩擦力のバラツキを減らす。
【0050】
図7は、振動子500と摩擦部材104との位置関係を示す斜視図である。(A)において、保持部材103で保持された振動子500が摩擦部材104上に配置された状態を示す。(B)は、(A)の状態を摩擦部材104の裏面側から見た斜視図である。
【0051】
摩擦部材104は、進行方向に長尺な棒状部材であり、長手方向の長さは、摺動部413同士の間隔よりも長い。摩擦部材104は、摺動面700と、裏面701と、溝702と、貫通孔703と、を有する。
【0052】
摺動面700は、振動子500が加圧接触される面である。具体的には、たとえば、摺動面700は、弾性体102の本体400の背面の摺動部413に加圧接触される。
【0053】
裏面701には溝702が形成されている。溝702は、長手方向に延在し、レール部材105とともにボール106を長手方向に案内する。
図7では、長手方向に1本の溝702が形成されている例について説明したが長手方向に複数本の溝702が形成されてもよい。複数本の溝702は、幅方向に平行に配置されてもよく、長手方向に直列に配置されてもよい。
【0054】
貫通孔703は、摩擦部材104の両端に設けられる。貫通孔703は、後述するフレーム109の貫通孔と連通するネジ孔である。不図示のネジにより、摩擦部材104はフレーム109に接続される。
【0055】
振動波モータ100では、摩擦部材104に加圧接触した振動子500が、摩擦力によって駆動する。駆動の状態は、この摩擦力の状態に影響を受けるため、摺動面700の状態は摩擦駆動の繰り返しによって変化しないことが望ましい。
【0056】
また、摺動によって主に振動子500側の摺動部413による摩耗粉が発生すると、摩耗粉の影響によって摩擦駆動の状態が悪くなるだけではなく、振動波モータ100以外の部分、レンズ鏡筒においては、特に光学性能への影響も懸念される。そのため、摩擦摺動により、摩耗粉が極力発生しないようにする必要がある。
【0057】
摩耗粉を発生させないためには、拡散または成膜処理により窒化層やDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)などを摺動面700の表面に設け、摺動面700の硬度を上昇させる。摺動面700の硬度を20~50Gpaとすることで、弾性体102の摺動部413と摩擦部材104の摺動面700との摩耗を大きく抑えることができる。
【0058】
また、摺動面700に高硬度の表面処理を施したため、表面粗さを抑えなければ、弾性体102の摺動部413を磨滅させる効果を与えてしまう。そこで、DLC製膜プロセス時に発生する炭素化合物などの溶融異物(ドロップレット)の高さをRp0.2μm以下に抑え、摺動面700の表面粗さをSpc2000[1/mm]以下、線粗さをRq47nm以下にする必要がある。
【0059】
ドロップレット(droplet)とは、DLC成膜時の原材料や金属系異物(溶融金属液滴)からなる凸部を指す。ドロップレットのサイズはサブμmから数十μm程度である。ドロップレットの付着により膜面に凸部が形成されると、表面を粗くして被膜特性(摩擦摩耗特性など)を劣化させる。
【0060】
ドロップレットが摩擦摩耗等の外部から受ける力により脱離すると、膜面に陥没凹部が形成されることもあり、脱離したドロップレットが相対する材料を攻撃したり摩耗させたりすることもある。よって、ドロップレットの形成はなるべく避けるべきである。またドロップレットを研磨で除去する際にはその断片が残らないように細心の注意を払うべきである。
【0061】
また、DLC成膜プロセスは、物理気相成長法(Physical vapor deposition:PVD)と化学気相成長法(Chemical vapor deposition:CVD)に分類され、真空環境にて成膜される。
【0062】
PVDコーティングと呼ばれるプロセスでは、高真空中で成膜材料を蒸気(気体)に変えて、基板(コーティングされる製品、本例ではステンレス材料)を蒸気にさらして表面に薄膜を成長させる。時に固体成膜材料であるグラファイトの塊が核となり、通常のDLC成膜面よりも突出したドロップレットを形成する。
【0063】
また、炭化水素ガス(アセチレン等)を原材料とするCVDコーティングでは、a-C:H膜が成膜される。ガスから炭素を原子単位で供給されるため、基材に倣った平滑で均質な膜が得られる。
【0064】
CVD法の中のプラズマCVD法では、水素フリーDLCであるta-C(Tetrahedral Amorphous Carbon)を成膜することもできる。その際に、主に用いられる真空アーク法では、DLC(原料は固体炭素)のみならず窒化物もドロップレットと呼ばれる溶融金属液滴が被膜中に混ざり、表面を粗くする。ドロップレットを低減する新しいプロセスとしてフィルタード・アーク(Filtered Arc)法もある。
【0065】
なお、DLC膜と基材(SUSなど)の界面の残留応力を緩和する目的で、金属系(窒化クロム等)の中間層を導入する場合が多く、そのプロセスにおいてドロップレットの原因となる金属液滴が発生する。イオンプレーティングやスパッタリングを組み合わせて、基材の上に金属系の膜を設け、その上にDLCを成膜する。その金属液滴は、DLC成膜後もドロップレットとしてDLC最表面に凸部となって残存する。
【0066】
図8は、摺動面700の粗さを示す図表である。
図8において、二乗平均平方根高さRqは、基準長さにおける二乗平均平方根である。基準長さは、たとえば、摩擦部材104の長手方向の長さである。二乗平均平方根粗さRqは、表面粗さの標準偏差である。輪郭曲線が粗さ曲線である場合の二乗平均平方根高さは、二乗平均平方根粗さRqとなる。
【0067】
図8に示したように、ドロップレットの高さは線粗さRpでも表すことができる。なお粗さ等の計測には、接触式粗さ計、レーザー顕微鏡、白色干渉顕微鏡を用いた。接触式粗さ計の解析条件については、カットオフ種別はガウシアンであり、カットオフ波長は0.08mmであり、評価長さは0.4mmである。また、レーザー顕微鏡の解析条件については、評価面は0.14mm×0.11mmの長方形である。また、SUSの相手攻撃性については、摩擦径が大きい方が「×」となる。
【0068】
<レール部材105>
図9は、レール部材105の斜視図である。レール部材105は、本体900と、第1嵌合部901と、第2嵌合部902と、を有する。
【0069】
本体900は、進行方向(長手方向)に長尺な部材であり、長手方向の長さは、摩擦部材104よりも短い。本体900には、摩擦部材104の溝702に対向するように、溝702に対応する溝904が設けられ、摩擦部材104の溝702とともにボール106を長手方向に案内する。ボール106は、溝702および溝904で形成された空間内を転動する。
【0070】
図9の例では、溝904は、進行方向に直列に2本設けられているため、ボール106は、溝904ごとに配置される。なお、溝904の数は、溝702よりも1つ多くてもよく、1つ少なくてもよく、同数でもよい。
【0071】
溝904,702を長手方向に直列に複数本配列することにより、ボール106が溝904,702を転がった際に、ボール106が長手方向の片側に偏ってしまうことがない。したがって、レール部材105に倒れが生じにくくなり、正常な駆動が可能になる。なお、溝904は、本体900に形成されていてもよく、本体900とは別部材として本体900に取り付けられていてもよい。溝904が本体900とは別部材である場合は、金属などの表面が硬い材料の方が、ボール106の転動による抵抗やバラつきが軽減される。
【0072】
また、本体900の4つの角には、引掛部905が設けられ、加圧バネ107が引っ掛けられる。引掛部905および引掛部603に加圧バネ107の両端が掛けられることにより、保持部材103に保持された振動子500または弾性体102が、摩擦部材104に加圧接触される。引掛部905は引掛部603と同様にV字溝を有し、取付および取り外しの作業性が向上する。
【0073】
第1嵌合部901は、本体900の長手方向の長側端の一方の中央に設けられる。第1嵌合部901は、溝部910を有する。溝部910は、保持部材103の一方の保持部601を案内して嵌合する。
【0074】
第1嵌合部901は、溝部911を有する。溝部911は、振動波モータ100の外に出力を取り出すための溝となる。たとえば、溝部911にレンズ鏡筒側の凸部を差し込み、ひっかけることで、レンズ鏡筒の部品を駆動することができる。
【0075】
第2嵌合部902は、本体900の長手方向の長側端の他方の中央に設けられる。第2嵌合部902は、溝部920を有する。溝部920は、保持部材103の他方の保持部601を案内して嵌合する。溝部910、920は対向配置される。
【0076】
第1嵌合部901および第2嵌合部902が保持部材103の保持部601に嵌合することで、レール部材105と保持部材103とが接続される。これにより、レール部材105および保持部材103は一体となって駆動する。
【0077】
第1嵌合部901および第2嵌合部902と保持部601との間に摩擦力が働くと駆動時の揺動により、加圧力の変化が大きくなってしまう。そのため、保持部材103には、摺動性の良いポリアセタール(POM)が用いられる。また、保持部材103に樹脂材を使用することにより、保持部材103は、振動子500から伝達した振動を吸収し、他の部品への振動の伝達を抑制する。このほかに、保持部601が摺動する溝部910、920の表面に、摺動性の良い、四フッ化エチレン等を含む摺動材を挟み込んでもよい。
【0078】
また、第2嵌合部902には、幅方向に突出するフランジ903が設けられている。フランジ903は、FPC108の一部を支持する。
【0079】
<加圧バネ107>
図10は、加圧バネ107の装着例を示す斜視図である。加圧バネ107は、保持部材103の引掛部603とレール部材105の引掛部905に引っ掛けられる。引掛部603の位置は、レール部材105の引掛部905よりも長手方向の内側に位置しており、加圧バネ107が摺動面700の加圧方向(振動子500や摩擦部材104の厚み方向)に対し斜めに掛かるようになっている。加圧方向は、進行方向と直交する。
【0080】
加圧バネ107は保持部材103の4隅から1個ずつ、4カ所に配置される。引掛部905は保持部材103の引掛部603よりも進行方向に対して外側に位置する。振動子500と摩擦部材104との間に欲しい加圧は、それらの厚み方向でそれらを引寄せる方向となるが、加圧バネ107は、それ以外に進行方向に対しても付勢する力を発生させている。
【0081】
振動子500からレール部材105の間には、部品のバラツキや組み立てによってある程度の隙間によってガタつきがあるが、精密に駆動させる場合、このガタつきの分だけ駆動の精度が悪化する。そのため、上述のように加圧バネ107を斜めにし、加圧バネ107の力が、進行方向と摺動面700の加圧方向との両方にかかるようにする。
【0082】
さらに、加圧バネ107には製造上で力量のバラツキが発生するため、4つの加圧バネ107の力量に差が生まれるため、進行方向に対しては、4つの加圧バネ107の力量差でどちらか片方に寄せられる。これにより、第1嵌合部901および第2嵌合部902が保持部材103の保持部601に嵌合する部分のガタつきを抑える効果が得られる。
【0083】
<FPC108>
図11は、FPC108の実装状態を示す平面図である。
図11では、説明の便宜上、保持部材103はないものとして説明する。
図11において、FPC108が観察できない部位については、
図1および
図2を参照する。
【0084】
FPC108は、外部給電部1101と、接続部1102と、中途部1103と、を有する。外部給電部1101および接続部1102は、中途部1103を介して一体形成されている。
【0085】
外部給電部1101は、振動波モータ100の外部の電源から電力供給を受ける部分である。接続部1102は、電極313b~313c、配線313eに接続される。
【0086】
FPC108は、振動体101の電極313b~313c、配線313eに接続された接続部1102から幅方向に引き出される。レール部材105のフランジ903に中途部1103が支持される。中途部1103の少なくとも一部は、フランジ903に貼着される。
【0087】
FPC108は、この貼着された反対側に折り返され、摩擦部材104を保持するフレーム109との間にU字構造1104を形成する(
図2を参照)。U字構造1104を形成することで、振動波モータ100が進行方向に駆動した場合に、FPC108によって駆動が阻害されることなくスムーズに駆動することが出来る。また、FPC108は、フレーム109ともU字構造1104の反対側の端で貼着され、その先に外部給電部1101が配置される。
【0088】
<ボール106と溝702および溝904との位置関係>
図12は、振動波モータ100の進行方向から見た側面図(その1)である。
図12は、溝702および溝904の各々が、幅方向に1本ずつ形成された場合、いわゆる1溝構成を示す。ボール106は、溝702および溝904に挟まれており、加圧バネ107による加圧力で保持されている。振動子500(振動体101および弾性体102)の振動により、振動子500と連結した保持部材103、レール部材105、加圧バネ107、およびFPC108が一体となって、摩擦部材104と相対的に移動する。
【0089】
この相対移動が起こる際に、ボール106が溝702および溝904を転動し、ベアリングの役割を果たす。ボール106が転動する溝702および溝904は、長手方向に長尺な1本の空隙で1溝構成となる。ボール106は、摺動部413および摺動面700の真下に位置する。
【0090】
1溝構成の場合、振動子500、保持部材103、レール部材105、加圧バネ107、FPC108が一体化した構造体は、ボール106中心を通り進行方向と平行な軸を回転軸として傾くことができる。
【0091】
このような1溝構成のメリットとしては、摩擦部材104の摺動面700と、摺動部413が幅方向の軸に対し、加工バラつき等により完全に並行でなかった場合、前述の様に振動子500、保持部材103、レール部材105、加圧バネ107、FPC108が一体化した構造体がボール106中心を通り進行方向と平行な軸を回転軸として傾きながら加圧バネ107の付勢力によって、摺動部413と摺動面700が接触する。この時、摺動部413と摺動面700の接触面が完全に一致するように傾くため、振動子500の振動を適切に摩擦部材104に伝達することが可能となる。したがって、摺動部413の摺動面700への接触が常に一定になることで駆動の安定性が得られる。
【0092】
図13は、振動波モータ100の進行方向から見た側面図(その2)である。
図13は、いわゆる2溝構成を示す。2溝構成のうち一方は、溝702および溝904で構成された進行方向の空隙(以下、左側空隙)であり、他方は、溝904のみで構成された進行方向の空隙(以下、右側空隙)である。
【0093】
左側空隙および右側空隙の加圧方向の位置(ボール106の位置)は異なる。加圧方向において、左側空隙の溝702に対向する溝904は、右側空隙の溝904よりも浅い。右側空隙の溝904は、溝702の加圧方向の深さ分深く形成されており、ボール106による接触では2つの溝904の深さを異ならせることで、右側空隙と左側空隙との平衡がとられている。
【0094】
このような左側空隙を1溝とする構成をとることで、溝702および溝904の加工バラつきによる位置のバラツキの影響を排除することができる。また、このように2溝構成にした場合では、傾きの基準が摺動部413および摺動面700ではなく、ボール106と溝702および溝904との接触箇所となる。
【0095】
2溝構成にした場合のメリットとしては、傾きの基準がボール106と溝702および溝904とになることで、外から不要なモーメントが加わった際にもこの接触箇所で力を受け止めることとなり、摺動部413および摺動面700には加圧力以外の不要な力は加わらない。加工バラつきによる接触の傾きは1溝に劣るが、外力による影響には強いメリットとなる。
【0096】
<振動波モータ100の駆動方式>
つぎに、振動波モータ100の駆動方式について説明する。振動波モータ100は、振動体101に電圧を印加することで駆動する。電圧は、FPC108を介して、振動体101の電極313a~313dに印加される。具体的には、たとえば、電極313aおよび電極313cへの電圧の印加は配線313eを介して同時に行われる。また、電極313bおよび電極313dへの電圧の印加は配線313fを介して同時に行われる。
【0097】
配線313eおよび配線313fは、電極313a~313dと導電ペースト等を使用して接続される。電圧は、正弦波(三角波、矩形波、デジタル入力もあり)で特定の周波数で印加される。
【0098】
ここで、電極313aおよび電極313cに印加される電圧をAとし、電極313bおよび電極313dに印加される電圧をBとする。電圧Bは、電圧Aに対して時間的に位相をずらして印加される。位相をずらすことにより、電圧Aによって励起される第1モードおよび第2モードの振動と、電圧Bによって励起される第1モードおよび第2モードの振動と、にズレが生じる。これらのモードの組み合わせによって、摺動部413の振動の軌跡が変化する。
【0099】
図14は、振動子500のモード図である。
図14では、説明の便宜上、振動体101から括れ部311、411、凸部312、412、電極313a~313d、配線313e、313f、腕部414、先端部415を省略した形状で説明する。
【0100】
(A)は、第1モード、すなわち、縦振動1次モードを示す。第1モードでは、振動体101は、第1節1401を中心に進行方向に伸縮する。第1節1401は、幅方向に沿って、括れ部311、411に位置する。
【0101】
(B)は、幅方向に沿って屈曲する屈曲1次モードを示す。幅方向に沿って屈曲する屈曲1次モードでは、振動子500の長側端501は、2本の第2節1402を基準にして加圧方向に屈曲する。幅方向の屈曲1次モードでは、幅方向の中心において進行方向に延在する中心線1410および長側端501が、振動の腹となる。
【0102】
(C)は、第2モードを示す。第2モードは、(B)幅方向に沿って屈曲する屈曲1次モードと同様に進行方向に2本の第2節1402と、(A)第1モードと同様に、第1節1401と、を有する屈曲モードである。第2モードでは、中心線1410の腹の振動が、進行方向の一方の短側端502(以下、502a)では(B)と同様に屈曲するが、他方の短側端502(以下、502b)では逆方向に振動する。つまり、短側端502aと短側端502bで屈曲振動が逆位相となっている。中心線1410とは、2本の第2節1402の間の進行方向の線である。すなわち、短側端502aの幅方向の中心位置と短側端502bの幅方向の中心位置とを結んだ線である。
【0103】
具体的には、たとえば、第1節1401を境界にして屈曲方向が逆方向になる。この振動は、本実施例と同様に縦振動と屈曲振動を組み合わせたL1B4(駆動方向縦1次振動と駆動方向屈曲4次振動との組み合わせ)モードを使用したモータと比較すると、進行方向の屈曲4次モードよりもモード次数が低い。モード次数が低いと、振幅および加圧方向に持ち上げる力が強くなりより強い加圧部材を用いることができ、より強い摩擦力を発生させることができる。
【0104】
また、第2モードでは、振動子500は幅方向に沿って屈曲するため、第2モードの共振周波数が幅方向の長さに依存する。幅方向の長さは、進行方向(振動体101の長手方向)に対して短い。したがって、進行方向の屈曲4次モードに対して、第1モードの共振周波数と第2モードの共振周波数とを同じ共振周波数にする場合、振動子500の厚みを薄くすることができ、振動波モータ100の厚み寸法を減らすことができる。
【0105】
また、括れ部311、411と凸部312、412とを設けたことにより、進行方向の長さを抑えたうえで第1モードの共振周波数を下げ、さらに、第2モードの共振周波数を合わせるために、更なる振動子500の薄型化ができ、第2モードの振幅も増大させることができる。
【0106】
また、振動子500を薄型化するメリットとして、振動子500が薄いほど振動体101も薄くできるため、振動子500の変形量は電界強度に依存するため、同一電圧では電界が強くなり、振幅を揃えた場合はより電圧を下げることができる。したがって、省電力化をすることができる。
【0107】
<振動体101の分極構成と印加電圧>
図15は、振動体101の分極構成例を示す説明図である。
図15は、幅方向から見た振動体101の断面図を示す。振動体101は、プラス方向に分極したプラス分極(
図15中、「+」)とマイナス方向に分極したマイナス分極(
図15中、「-」)とが進行方向に交互に配列した構成となる。電極313a、313cをA相と称す。電極313b、313dをB相と称す。なお、本説明においては説明の便宜上、電極313a~313dはそれぞれ同等な大きさとするが、実際は
図3のような形状など適宜変形することができる。
【0108】
図16は、A相およびB相に印加された電圧を示す波形図である。横軸は時間で縦軸は印加電圧である。A相には基準となる第1電圧1601が印加され、B相には第1電圧1601から90度位相がずれた第2電圧1602が印加される。なお、A相およびB相に印加された第1電圧1601および第2電圧1602は正弦波として説明するが、これに限定されるものではない。
【0109】
図17は、分極の伸縮方向を示す説明図である。プラス分極にプラス電圧が印加されると、プラス分極は進行方向に伸長する(状態1701)。マイナス分極にプラス電圧が印加されると、マイナス分極は進行方向に収縮する(状態1702)。プラス分極にマイナス電圧が印加されると、プラス分極は進行方向に収縮する(状態1703)。マイナス分極にマイナス電圧が印加されると、マイナス分極は進行方向に伸長する(状態1704)。
【0110】
図18は、屈曲モードにおける分極の伸縮方向を示す説明図である。
図18において、図面に直交する方向が進行方向であり、たとえば、図面から手前に向かう方向を正の進行方向(+進行方向)とし、図面から奥行方向を負の進行方向(-進行方向)とする(逆でもよい)。
【0111】
屈曲モードは、弾性体102に対して作用する。したがって、プラス分極にプラス電圧が印加されると、プラス分極が伸長して、弾性体102は凸方向に変形する(凸変形1801)。マイナス分極にプラス電圧が印加されると、振動体101が収縮して、弾性体102は凹方向に変形する(凹変形1802)。
【0112】
プラス分極にマイナス電圧が印加されると、振動体101が収縮して、弾性体102は凹方向に変形する(凹変形1803)。マイナス分極にマイナス電圧が印加されると、マイナス分極は幅方向に伸長する。マイナス分極が伸長して、弾性体102は凸方向に変形する(凸変形1804)。
【0113】
<A相とB相との間に90度の位相差がある場合の振動>
図15~
図18に示した分極の性質に基づいて、A相とB相との間に90度の位相差がある場合の第1モードおよび第2モードを説明する。
【0114】
[時刻0における第1モード(90度位相差):A相の印加電圧により発生する振動]
図19は、時刻0における第1モード(90度位相差)でA相の印加電圧により発生する振動を示す説明図である。時刻0では、
図16に示したように、A相のプラス分極に+1の第1電圧1601が印加されるため、(A)プラス分極は、状態1701となる。状態1701では、プラス分極は、進行方向に伸長する。
【0115】
(B)印加電圧が+1のときの振動子500の伸長による摺動部413の位置における振動量を「1」とする。振動子500Bは、状態1701による伸長前の振動子500を示し、振動子500Aは、状態1701による伸長後の振動子500を示す。振動子500の伸長により、摺動部413は、短側端402側に振動量「1」分移動する。具体的には、たとえば、摺動部413lは、負の進行方向(-進行方向)に振動量「1」分移動し、摺動部413rは、正の進行方向(+進行方向)に振動量「1」分移動する。
【0116】
[時刻0における第2モード(90度位相差):A相の印加電圧により発生する振動]
図20は、時刻0における第2モード(90度位相差)でA相の印加電圧により発生する振動を示す説明図である。時刻0では、
図16に示したように、A相のプラス分極に+1の第1電圧1601が印加されているため、(A)プラス分極は、凸変形1801となる。
【0117】
(B)左側の摺動部413を摺動部413lとし、右側の摺動部413を摺動部413rとする。摺動部413lB、413rBは、凸変形1801前の摺動部413l、413rを示し、摺動部413lA、413rAは、凸変形1801後の摺動部413l、413rを示す。
【0118】
ここで、摺動部413の位置に注目すると、摺動部413は電極313a、313dの反対側の面に位置しており、電極313a、313dの変形に大きく影響を受ける。左側の摺動部413lに注目すると、弾性体102は、上記(A)の振動と同じ形状となり、摺動部413lは、負の加圧方向(-加圧方向)に+1の振動となる。一方、弾性体102の中心の第1節1401を境に逆方向に振動(励振)するので、右側の摺動部413rは、正の加圧方向(+加圧方向)に+1の振動となる。
【0119】
[時刻0(90度位相差):B相の印加電圧により発生する振動]
時刻0では、B相に印加される第2電圧1602は0である。したがって、B相に起因する振動は0になる。
【0120】
[時刻0における第1モード(90度位相差):A相で発生した振動とB相で発生した振動との合成]
図21は、時刻0における第1モード(90度位相差)において、A相で発生した振動とB相で発生した振動との合成を示す説明図である。(A)A相への第1電圧1601の印加により、振動子500には進行方向に+1の振動が発生する。B相に印加される第2電圧1602は0であるため、振動子500に振動は発生しない。
【0121】
(B)上記(A)のA相の振動とB相の振動とを合成すると、摺動部413lには、負の進行方向(-進行方向)に1の合成振動が発生し、摺動部413rには、正の進行方向(+進行方向)に1の合成振動が発生することになる。
【0122】
[時刻0における第2モード(90度位相差):A相で発生した振動とB相で発生した振動との合成]
図22は、時刻0における第2モード(90度位相差)において、A相で発生した振動とB相で発生した振動との合成を示す説明図である。(A)A相への第1電圧1601の印加により、摺動部413lAには負の加圧方向(-加圧方向)に+1の振動が発生し、摺動部413rAには正の加圧方向(+加圧方向)に+1の振動が発生する。B相に印加される第2電圧1602は0であるため、摺動部413l、413rに振動は発生しない。
【0123】
(B)上記(A)のA相の振動とB相の振動とを合成すると、摺動部413lには、負の加圧方向(-加圧方向)に1の合成振動が発生し、摺動部413rには、正の加圧方向(+加圧方向)に1の合成振動が発生することになる。
【0124】
図23は、時刻0における第1モード(90度位相差)および第2モード(90度位相差)の合成振動における現在位置を示す説明図である。つぎに、時刻π/4について説明する。
【0125】
[時刻π/4における第1モード(90度位相差):A相の印加電圧により発生する振動]
図24は、時刻π/4における第1モード(90度位相差)でA相の印加電圧により発生する振動を示す説明図である。時刻π/4では、
図16に示したように、A相のプラス分極に1/√2(≒0.7)の第1電圧1601が印加されるため、(A)プラス分極は、状態1701となる。状態1701では、プラス分極は、進行方向に伸長する。
【0126】
なお、B相のマイナス分極には-1/√2(≒-0.7)の第2電圧1602が印加されるため、マイナス分極は、状態1704となる。状態1704は状態1701と同じ状態であり、マイナス分極は、進行方向に伸長する。
【0127】
(B)印加電圧が1/√2のときの振動子500の摺動部413の位置における伸長による振動量を「0.7」とする。振動子500の伸長により、摺動部413は、短側端402側に振動量「0.7」分移動する。具体的には、たとえば、摺動部413lは、負の進行方向(-進行方向)に振動量「0.7」分移動し、摺動部413rは、正の進行方向(+進行方向)に振動量「0.7」分移動する。
【0128】
[時刻π/4における第2モード(90度位相差):A相の印加電圧により発生する振動]
図25は、時刻π/4における第2モード(90度位相差)でA相の印加電圧により発生する振動を示す説明図である。時刻π/4では、
図16に示したように、A相のプラス分極に+1/√2の第1電圧1601が印加されているため、(A)プラス分極は、凸変形1801となる。
【0129】
(B)左側の摺動部413lに注目すると、弾性体102は、上記(A)の振動と同じ形状となり、摺動部413lは、負の加圧方向(-加圧方向)に0.7の振動となる。一方、弾性体102の中心の第1節1401を境に逆方向に振動するので、右側の摺動部413rは、正の加圧方向(+加圧方向)に0.7の振動が励起される。
【0130】
[時刻π/4(90度位相差):B相の印加電圧により発生する振動]
時刻π/4では、B相に印加される第2電圧1602は-1/√2である。したがって、B相に起因する振動はA相と同様、0.7になり、
図24に示した場合と同様に、摺動部413lは、負の進行方向(-進行方向)に振動量「0.7」分移動し、摺動部413rは、正の進行方向(+進行方向)に振動量「0.7」分移動する。
【0131】
[時刻π/4における第2モード(90度位相差):B相の印加電圧により発生する振動]
図26は、時刻π/4における第2モード(90度位相差)でB相の印加電圧により発生する振動を示す説明図である。時刻π/4では、
図16に示したように、B相のマイナス分極に-1/√2の第2電圧1602が印加されているため、(A)マイナス分極は、凸変形1804となる。
【0132】
(B)B相の場合、B相のマイナス分極は、A相のプラス分極とは、進行方向の中心(第1モードの節線)を対称軸にA相と対称の位置にあるため、第2モードでは、摺動部413rに対応するB相のマイナス分極は、
図25の(B)に示したA相のプラス分極とは逆方向に振動する。
【0133】
すなわち、屈曲1次逆位相モードを採用する本実施例では、左側の摺動部413lに注目すると、弾性体102は、上記(A)の振動の逆方向に振動(励振)し、摺動部413lは、正の加圧方向(+加圧方向)に0.7の振動となる。一方、弾性体102の中心の第1節1401を境に逆方向に振動するので、右側の摺動部413rは、負の加圧方向(-加圧方向)に0.7の振動となる。
【0134】
[時刻π/4における第1モード(90度位相差):A相で発生した振動とB相で発生した振動との合成]
図27は、時刻π/4における第1モード(90度位相差)において、A相で発生した振動とB相で発生した振動との合成を示す説明図である。(A)A相への第1電圧1601の印加により、振動子500には進行方向に+0.7の振動が発生する。B相への第2電圧1602の印加により、振動子500には進行方向に+0.7の振動が発生する。
【0135】
(B)上記(A)のA相の振動とB相の振動とを合成すると、摺動部413lには、負の進行方向(-進行方向)に1.4の合成振動が発生し、摺動部413rには、正の進行方向(+進行方向)に1.4の合成振動が発生することになる。
【0136】
[時刻π/4における第2モード(90度位相差):A相で発生した振動とB相で発生した振動との合成]
図28は、時刻π/4における第2モード(90度位相差)において、A相で発生した振動とB相で発生した振動との合成を示す説明図である。(A)
図25に示したように、A相への第1電圧1601の印加により、摺動部413lAには負の加圧方向(-加圧方向)に0.7の振動が発生し、摺動部413rAには正の加圧方向(+加圧方向)に0.7の振動が発生する。
【0137】
また、
図26に示したように、B相への第2電圧1602の印加により、摺動部413lAには正の加圧方向(+加圧方向)に0.7の振動が発生し、摺動部413rAには負の加圧方向(-加圧方向)に0.7の振動が発生する。
【0138】
(B)上記(A)のA相の振動とB相の振動とを合成すると、摺動部413lおよび摺動部413rには、合成振動による変位は0となる。
【0139】
図29は、時刻π/4における第1モード(90度位相差)および第2モード(90度位相差)の合成振動における現在位置を示す説明図である。
【0140】
[時刻0~7π/4における第1モードの振動]
ここまでは、時刻0および時刻π/4について説明した。つぎに、時刻2π/4~7π/4までの振動も含めてまとめて説明する。
図16に示したように、A相およびB相には、時刻0~7π/4に応じた電圧1601,1602が印加される。
【0141】
図30は、実施例1の時刻0~3π/4における第1モードの振動による振動子500の伸縮状態を示す説明図である。
図31は、実施例1の時刻4π/4~7π/4における第1モードの振動による振動子500の伸縮状態を示す説明図である。
【0142】
図30において、時刻0では、
図21に示したように、振動子500は、振動前の状態(振動子500B)から進行方向に1.0ずつ伸長し、振動子500Aとなる。時刻π/4では、
図27に示したように、振動子500は、時刻0から進行方向に0.4伸長ずつ伸長し、振動子500Aとなる。この状態が、振動子500が最も伸長した状態になる。
【0143】
時刻2π/4では、振動子500は、時刻π/4から進行方向に0.4ずつ収縮し、振動子500Aとなる。時刻3π/4では、振動子500は、時刻2π/4から進行方向に1.0ずつ収縮し、振動子500Aとなる。すなわち、振動子500は、振動していない場合と同じ状態になる。
【0144】
図31において、時刻4π/4では、振動子500は、時刻3π/4から進行方向に1.0ずつ収縮し、振動子500Aとなる。時刻5π/4では、振動子500は、時刻4π/4から進行方向に0.4ずつ収縮し、振動子500Aとなる。この状態が、振動子500が最も収縮した状態になる。
【0145】
時刻6π/4では、振動子500は、時刻5π/4から進行方向に0.4ずつ伸長し、振動子500Aとなる。時刻7π/4では、振動子500は、時刻6π/4から進行方向に1.0ずつ伸長し、振動子500Aとなる。すなわち、振動子500は、振動していない場合と同じ状態になる。時刻8π/4以降は、時刻0~7π/4の伸縮を繰り返すことになる。
【0146】
図32は、実施例1の時刻0~3π/4における第2モードの振動による摺動部413の屈曲状態を示す説明図である。
図33は、実施例1の時刻4π/4~7π/4における第2モードの振動による摺動部413の屈曲状態を示す説明図である。上向きの凸形状が負の加圧方向への屈曲を示し、下向きの凸形状が正の加圧方向への屈曲を示す。
【0147】
図34は、実施例1の時刻0~3π/4における摺動部の合成振動による先端位置を示す説明図である。
図35は、実施例1の時刻4π/4~7π/4における摺動部の合成振動による先端位置を示す説明図である。
図34および
図35では、進行方向を横軸(左側がプラス、右側がマイナス)とし、加圧方向を縦軸(上側がマイナス、下側がプラス)とする座標系で、摺動部413の先端位置の座標値(x,y)を表現する。xは摺動部413の先端位置の進行方向の座標値であり、yは摺動部413の先端位置の加圧方向の座標値である。
図35も同様である。
【0148】
図34において、時刻0では、左側の摺動部413lの先端位置は(-1,-1)であり、右側の摺動部413rの先端位置は(1,1)である。
【0149】
時刻0から時刻π/4になると、左側の摺動部413lの先端位置は(-1.4,0)になり、右側の摺動部413rの先端位置は(1.4,0)になる。
【0150】
時刻π/4から時刻2π/4になると、左側の摺動部413lの先端位置は(-1,1)になり、右側の摺動部413rの先端位置は(1,-1)になる。
【0151】
時刻2π/4から時刻3π/4になると、左側の摺動部413lの先端位置は(0,1.4)になり、右側の摺動部413rの先端位置は(0,-1.4)になる。
【0152】
図35において、時刻3π/4から時刻4π/4になると、左側の摺動部413lの先端位置は(1,1)になり、右側の摺動部413rの先端位置は(-1,1)になる。
【0153】
時刻4π/4から時刻5π/4になると、左側の摺動部413lの先端位置は(1.4,0)になり、右側の摺動部413rの先端位置は(-1.4,0)になる。
【0154】
時刻5π/4から時刻6π/4になると、左側の摺動部413lの先端位置は(1,-1)になり、右側の摺動部413rの先端位置は(-1,1)になる。
【0155】
時刻6π/4から時刻7π/4になると、左側の摺動部413lの先端位置は(0,-1.4)になり、右側の摺動部413rの先端位置は(0,1.4)になる。
【0156】
図34および
図35に示すように、摺動部413は、楕円運動を起こす。
図34および
図35の楕円運動は便宜的に円形となっているが、実際には楕円運動となる。
【0157】
図30~
図33に示した合成振動により、摺動部413は楕円運動する。楕円運動する摺動部413が摩擦部材104に加圧接触することで、摩擦力によって振動子500が駆動する。
【0158】
<A相とB相との間に270度(-90度)の位相差がある場合の振動>
なお、
図19~
図35では、A相の第1電圧1601とB相に印加される第2電圧1602との位相差を90度(deg)として説明した。A相の第1電圧1601とB相に印加される第2電圧1602との位相差が270度(-90度)である場合、摺動部413の楕円運動は、
図34および
図35に示した方向とは逆方向の楕円運動となる。
【0159】
また、A相の第1電圧1601とB相に印加される第2電圧1602との位相差を90度(deg)のままとし、かつ、電極313a、313cをマイナス分極、電極313b、313dをプラス分極とした場合も、同様である。
【0160】
<A相とB相との間に45度の位相差がある場合の振動>
位相差45度の場合、A相の第1電圧1601とB相の第2電圧1602とによって励起される振動のタイミングが変わる。具体的には、たとえば、第1モードは、位相差90度の場合よりも、打ち消しあう振動成分が強くなり、合成振動の振幅は小さくなる。逆に第2モードは、強めあう振動成分が強くなり、位相差90度の場合よりも、合成振動の振幅が大きくなる。そのため、摺動部413の振動軌跡は、位相差90度の場合よりも縦長に変化する。すなわち、加圧方向の振動が大きくなり、進行方向の振動が小さくなることを意味する。
【0161】
<A相とB相との間に0度の位相差がある場合の振動>
位相差0度、すなわち、位相差がない場合において、A相の第1電圧1601によって励起される振動とB相の第2電圧1602によって励起される振動とは、第1モードでは互いに打ち消しあう。したがって、振動が発生しない。一方、第2モードでは、A相の第1電圧1601によって励起される振動とB相の第2電圧1602によって励起される振動とは、完全に一致し、最も強くなる。このことより、摺動部413の振動軌跡は、第2モードのみの形状となり、加圧方向に振動するのみとなる。
【0162】
この状態では駆動力は発生しないが、摩擦部材104と摺動部413とが離間している時間が長くなり、摩擦部材104と摺動部413との間に作用する摩擦力が低減する。そのため、摩擦部材104および摺動部413を手動で相対移動させることが容易となる。なお、振動波モータをカメラの交換レンズのAF(オートフォーカス)駆動に用いる場合はマニュアルフォーカス(手動で焦点を調整する)時に位相差を0度としてもよい。
【0163】
このことから、位相差を90度から0度に近づけるほど、摺動部413の楕円運動は加圧方向に細長くなるため、加圧方向の振動が大きくなり、進行方向の振動は小さくなる。そのため、位相差を0度に近づける操作をすると、振動波モータ100の駆動速度を減速させる効果がある。
【0164】
一般的な超音波モータでは、入力電圧の周波数を駆動に使用しているモードの共振周波数から離す操作や電圧を下げる操作により、駆動速度が減速する。すなわち、この操作では、楕円運動全体の大きさを小さくすることで、駆動速度が減速する。したがって、低速になるほど摺動部413の引きずりが発生し、駆動が不安定化する。具体的には、たとえば、加圧方向の振動が小さくなることで、表面粗さ等の凹凸に摺動部413が引っ掛かり、引っ掛かった場所ごとに速度が変わり速度が安定しない、または、駆動可能な場所と駆動不可能な場所とが発生する。
【0165】
一方、実施例1の振動モードで位相差を操作することで楕円運動のアスペクト比を変えることで振動波モータ100を低速駆動する場合には、加圧方向の振幅は大きいまま、進行方向の振幅を下げることができ、引きずりを発生させにくい。そのため、振動波モータ100の駆動速度を減速しても安定駆動が実現するため、より低速での駆動が可能となる。
【0166】
より低速で駆動できるため、振動波モータ100の停止精度が向上する。たとえば、振動波モータ100をカメラのレンズ鏡筒に実装してレンズを駆動制御する場合、最も高精細な画像が得られるピント位置に対して、より精度よく停止させることができるようになり、また、動画撮影時には、低速駆動時にも滑らかな駆動が可能となる。
【0167】
<A相とB相との間に135度の位相差がある場合の振動>
位相差135度の場合、第1モードは、位相差90度の場合よりも、同じ方向の振動成分が増えるため、合成振動の振幅は大きくなる。一方、第2モードでは、打ち消しあう振動成分が強くなり、位相差90度の場合よりも、合成振動の振幅が小さくなる。そのため、摺動部413の振動軌跡は、位相差90度の場合よりも横長に変化する。すなわち、加圧方向の振動が小さくなり、進行方向の振動が大きくなることを意味する。
【0168】
<A相とB相との間に180度の位相差がある場合の振動>
位相差180度の場合、第1モードでは、A相の第1電圧1601によって励起される振動とB相の第2電圧1602によって励起される振動とは一致する。したがって、第1モードの振動は最大になる。一方、第2モードでは、A相の第1電圧1601によって励起される振動とB相の第2電圧1602によって励起される振動とは互いに打ち消しあい、振動子500は振動しなくなる。したがって、摺動部413は、進行方向にのみ振動する。
【0169】
このことから、位相差を90度から180度に近づけるほど、摺動部413の楕円運動は進行方向に細長くなるため、進行方向の振動が大きくなる。一方、加圧方向の振動は180度に近づくにつれ小さくなるため、90度から180度までの間で摺動部413の引きずりが発生し、駆動の抵抗となる。このことから、位相差を90度から180度に変更する操作では、90度から引きずりが強くなる特定の位相差までは駆動速度が増加するが、当該特定の位相差を超えると、摺動部413の引きずりにより振動が阻害され、振動波モータ100は駆動できなくなる。
【0170】
<駆動速度の変化と摺動部413の振動軌跡との関係>
図36は、入力周波数による駆動速度の変化と摺動部413の振動軌跡との関係を示す説明図である。
図36では、位相差を90度とし、周波数調整に着目して説明する。グラフ3600の横軸は、印加電圧の入力周波数であり、縦軸は、振動波モータ100の駆動速度である。また、グラフ3600の横軸に沿って、入力周波数に対応する摺動部413の楕円運動による振動軌跡群3601を示す。
【0171】
振動軌跡群3601において、入力周波数を共振周波数より高くするにつれ、振動軌跡は小さくなり、共振周波数に近づいて行くにつれ、振動軌跡は大きくなる。具体的には、振動軌跡群3601の各々の楕円形状は、形状の変化よりも大きさの大小が支配的となる。
【0172】
加圧方向の振動成分が駆動可能な振幅cpthに達したとき、初めて振動子500が駆動を開始する。駆動可能な振動成分cpthの時の入力周波数をf0、振動軌跡をe0とする。入力周波数f0の振動軌跡e0の加圧方向の振動成分をcp0とする。その後、共振周波数に向かって振動が大きくなり、駆動速度も増大する。そのため、最小駆動速度は、駆動可能な振動軌跡e0に達した入力周波数f0での進行方向の振動成分ch0となる。
【0173】
図37は、入力電圧による駆動速度の変化と摺動部413の振動軌跡との関係を示す説明図である。
図37では、電圧調整に着目して説明する。グラフ3700の横軸は、入力電圧(第1電圧1601および第2電圧1602)であり、縦軸は、振動波モータ100の駆動速度である。また、グラフ3700の横軸に沿って、入力電圧に対応する摺動部413の楕円運動による振動軌跡群3701を示す。
【0174】
振動軌跡群3701においても、入力電圧を高くするにつれ、振動軌跡が大きくなる。具体的には、入力電圧を徐々に大きくしていくと、加圧方向の振動成分が駆動可能な振幅cpthに達したとき、初めて振動子500が駆動を開始する。駆動可能な振動成分cpthの時の入力電圧をv0、振動軌跡をe0とする。その後、入力電圧が大きくなるにつれ振動が大きくなり、駆動速度も増大する。そのため、最小駆動速度は、駆動可能な振動軌跡e0に達した入力電圧v0での進行方向の振動成分ch0となる。なお、最大入力電圧は装置の特性から適宜設定される。
【0175】
図38は、位相差による駆動速度の変化と摺動部413の振動軌跡との関係を示す説明図である。
図38では、ある入力周波数における位相差制御に着目して説明する。グラフ3800の横軸は、位相差であり、縦軸は、振動波モータ100の駆動速度である。また、グラフ3800の横軸に沿って、位相差に対応する摺動部413の楕円運動による振動軌跡群3801を示す。
【0176】
振動軌跡群3801において、位相差が0度に近づくほど振動軌跡の形状は、縦長形状(加圧方向に長尺)となり、180度に近づくほど横長形状(進行方向に長尺)となる。すなわち、位相差が0度に近づくほど進行方向の成分が小さくなるため、駆動速度は低下する。この時、加圧方向の振動成分は、位相差が0度に近づくほど大きくなるため、極低速状態でも加圧方向の振動成分による振幅が維持され、より低速で駆動することが可能となる。
【0177】
一方、位相差を180度に近づけると、進行方向の振動成分が大きくなるが、加圧方向の振動成分が駆動可能な加圧方向の振動成分cpthを下回るため、途中で駆動できなくなる。
【0178】
実際には位相差制御を行って振動軌跡を縦長にした場合、ある程度の所で加圧方向の振動が大きくなりすぎ、摺動部413が摩擦部材104から離間しすぎ、摺動部413の進行方向の力が摩擦部材104に適切に伝わらない。安定的に振動子500を駆動させるためには、入力周波数と入力電圧の位相差とを変化させ、振動軌跡の加圧方向の振動成分が、駆動可能な加圧方向の振動成分cpth以上となるように制御すればよい。なお、入力電圧と入力電圧の位相差とを変化させてもよく、入力周波数、入力電圧および入力電圧の位相差を変化させてもよい。
【0179】
たとえば、振動波モータ100を低速で駆動させたい場合には、位相差を小さくして、振動軌跡の進行方向の振幅を下げる必要があるが、単純に位相差を小さくしただけでは加圧方向の振幅が強くなる。したがって、入力周波数を共振周波数から離す方向に調整すればよい。
【0180】
また、振動波モータ100を高速で駆動させたい場合には、位相差を大きくすることで、振動軌跡の進行方向の振幅を上げる必要があるが、単純に位相差を大きくしただけでは加圧方向の振幅が低下してしまう。したがって、入力周波数を共振周波数に近づける方向に調整すればよい。
【0181】
第1モードと第2モードとの組み合わせにより、従来では駆動できなかった極低速領域も位相差制御を組み合わせることで達成できるようになり、かつ、振動が大きすぎて駆動が伝達できなくなる高速域においても、位相差制御を組み合わせて持ち上げ振動を抑えることで、より高速で駆動することが可能となる。また、反転駆動時にも、従来ではある一定の速度以下で一旦停止と再駆動となっていたが、極低速域まで駆動した位相差で、位相差制御により反転駆動する事で滑らかに反転することができる。これにより、反転時の振動、音、衝撃による摩耗を軽減することができる。
【0182】
<振動波モータ100のストローク>
つぎに、上述した駆動をおこなう振動波モータ100のストロークについて説明する。ストロークとは、振動子500が進行方向に摺動する摺動範囲である。
【0183】
図39は、振動波モータ100の部分側断面図である。振動波モータ100の進行方向の長さをL0とする。負の進行方向側において、振動子500の進行方向の端部(短側端502)とフレーム109の内側端部までの長さをLb1、正の進行方向側において、振動子500の進行方向の端部(短側端502)とフレーム109の内側端部までの長さをLb2とする。負の進行方向側において、レール部材105の進行方向の端部とフレーム109の内側端部までの長さをLc1、正の進行方向側において、レール部材105の進行方向の端部とフレーム109の内側端部までの長さをLc2とする。
【0184】
この場合、振動波モータ100のうちフレーム109と摩擦部材104以外の構成部品の駆動稼働領域はLaである。振動波モータ100の駆動可能領域La内を振動波モータ100の各部品が駆動するため、振動子500の駆動可能領域Lb1、Lb2の和Lb(=Lb1+Lb2)と、レール部材105の駆動可能領域Lc1、Lc2の和Lc(=Lc1+Lc2)と、のうち短い方が、振動波モータ100のうちフレーム109と摩擦部材104以外の構成部品の最大ストロークとなる。
【0185】
<弾性体102と摺動部413との関係>
つぎに、上述したストロークで振動する振動波モータ100における弾性体102と摺動部413との関係について、具体的に説明する。
【0186】
図40は、弾性体102と摺動部413との関係1を示す振動子500の背面図である。振動子500は、振動子500の本体と振動子500の凸部とを有する。振動子500の本体とは、振動体101の本体300と弾性体102の本体400との組み合わせである。
【0187】
すなわち、振動子500から振動子500の凸部を除いた部分である。振動子500の凸部とは、凸部312,412の組み合わせであり、4か所存在する。振動子500の凸部(312,412)の体積を錘体積Vaとし、振動子500本体の体積を本体体積Vbとする。錘の体積比を4Va/Vbと定義する。
【0188】
また、弾性体102の括れ部411の容積をVcとし、振動体101の括れ部311の容積をVdとする。括れ容積の割合を括れの容積比(2Vc+2Vd)/Vbと定義する。
【0189】
図41は、弾性体102と摺動部413との関係2を示す振動子500の背面図である。振動子幅Waは、弾性体102の本体400の幅方向の長さである。錘幅Wbは、錘となる凸部412の幅方向の長さである。ここで、錘幅の割合を、錘の長さ比Wb/Waと定義する。
【0190】
また、括れ幅Wcは、弾性体102の括れ部411の幅方向の深さである。括れ幅Wdは、振動体101の括れ部311の幅方向の深さである。括れ幅の割合を括れの長さ比(Wc+Wd)/(2Wa)と定義する。振動体101の括れ幅Wdと弾性体102の括れ幅Wcとは異なるため、平均値を採用した。
【0191】
図42は、共振周波数と共振抵抗値のシミュレーション結果を示す説明図である。
図42では、振動子500の材質を圧電素子(PZT)とステンレス鋼で構成して、振動子500の凸部と括れ部411の体積や長さを変えた場合の共振周波数と共振抵抗のシミュレーション結果4201~4204を、第1モードおよび第2モード別に示す。
【0192】
シミュレーション結果4201は、錘(振動子500の凸部)の体積比4Va/Vbのシミュレーション結果である。シミュレーション結果4202は、括れの容積比(2Vc+2Vb)/Vdのシミュレーション結果である。シミュレーション結果4203は、錘(振動子500の凸部)の長さ比Wa/Wbのシミュレーション結果である。シミュレーション結果4204は、括れの長さ比(Wc+Wd)/2Waのシミュレーション結果である。なお、シミュレーション結果4201~4204の各々において、共振周波数は、5つあるデータの中央の共振周波数で規格化した共振周波数比としてある。
【0193】
図43は、錘の体積比4Va/Vbと第2モードとの関係を示すグラフである。上のグラフ4301は、錘の体積比4Va/Vbと第2モード共振周波数比との関係を示すシミュレーション結果である。縦軸の第2モード共振周波数比は、基準共振周波数を1とした場合の第2モード共振周波数との比である。下のグラフ4302は、錘の体積比4Va/Vbと第2モード共振抵抗との関係を示すシミュレーション結果である。
【0194】
なお、共振抵抗は、共振時の電気的な等価回路内の抵抗であり、小さいほど効率的に電気エネルギーを機械エネルギーに変換できる。このため、振動子500は、共振抵抗が小さいほどより大きな振動を発生する。一方、駆動力を得るのに必要な振動強度(必要振動強度)は駆動条件により定まるため、必要振動強度を得る抵抗値より低い抵抗値は、余裕(マージン)とみることができる。グラフ4302では一点破線で第二モードにおける必要振動強度を得る抵抗値を示している。
【0195】
錘の体積比4Va/Vbが0.05~0.20の範囲R1内である場合、0.05より低いと共振周波数を合わせるために形状を調整すると、厚みが薄くなりすぎ、加圧により破損する恐れがある。0.20よりも大きすぎると共振抵抗値が大きくなりすぎ、駆動できなくなる恐れがある。
【0196】
錘の体積比4Va/Vbが0.07~0.20の範囲R2内である場合、0.07より低い場合には加工誤差を考慮した場合、破損の恐れが高くなる。上限は0.20なので上記と同様となる。
【0197】
錘の体積比4Va/Vbが0.10~0.15の範囲R3内である場合、0.10より大きくなると、体積比の変化に対して、第二モードの共振周波数の変化がしにくくなり、加工誤差の影響を受けにくくなり、歩留まりが向上する。0.15より小さい場合には、共振抵抗値のマージンができ、突発的な負荷向上に対して停止等が生じにくくなり、安定して駆動が可能となる。
【0198】
<摺動部413の形状>
つぎに、摺動部413の形状の変形例について
図44~
図47を用いて説明する。
【0199】
図44は、摺動部413の形状の変形例1を示す斜視図である。
図44では、摺動部413の形状は、幅方向に長尺な直方体である。摺動部413の面積が狭いので、摩擦面700に全面当たりさせるための研磨を少し行うだけで面出しが可能になる。したがって、研磨工程の時間を削減できる。また、摺動部413は幅方向に長尺であるため外乱による傾きが抑制される。
【0200】
図45は、摺動部413の形状の変形例2を示す斜視図である。
図45では、摺動部413の形状は、進行方向に長尺な直方体である。
図44に対して面積が大きいので、全面当たりさせるための研磨の時間はかかるが、面積が広い分、加圧力に対する面圧が下がる。したがって、摩耗による耐久性が上がる。
【0201】
図46は、摺動部413の形状の変形例3を示す斜視図である。
図46では、摺動部413の形状は、加圧方向を軸とする円柱である。摺動部413の形状を円柱とすることで、摺動時に発生した摩耗粉を摺動部413の脇に排出しやすく、摩耗粉巻き込みによる摩耗促進を抑制することができる。
【0202】
図47は、摺動部413の形状の変形例4を示す斜視図である。
図47では、摺動部413の形状は、
図45と同様、進行方向に長尺な直方体であるが、配置位置には溝が形成されている。溝を形成することで、付け根付近の剛性を下げ、摺動部413が摩擦面700に接触した際に、ある程度変形により接触時間が延び、振動の伝達が安定する。
【0203】
このように、実施例1によれば、振動波モータ100は、使用する振動モードを進行方向に屈曲する屈曲4次モードではなく、第2モードを使用し、第1モードと合わせて使用する。幅方向に沿って屈曲する屈曲1次モードは、進行方向に節線2本を有し、中心線と端部がそれぞれ腹となり、振動する。
【0204】
これに対し、第2モードは、幅方向に沿って屈曲する屈曲1次モードと同様に進行方向に節線2本を有し、更に進行方向中心に幅方向にもう1本節線を有し、中心線の腹の振動が、進行方向の端部同士で逆方向(逆位相)に振動する。この振動は進行方向の屈曲4次モードよりもモード次数が低い。これにより、屈曲モードの振動モードの次数を下げることができ、振幅、および加圧方向に持ち上げる力を強化することができより強い加圧部材を用いることができ、より強い摩擦力を発生させることができる。
【0205】
また、第2モードでは、幅方向に沿って振動子500が屈曲するため、幅方向の長さに周波数が依存する。幅方向は進行方向に対して、長さが大幅に短くなっているため、進行方向の屈曲4次モードに対して、同じ共振周波数にする場合、大幅に振動子の厚みを薄くすることができ、アクチュエータの厚み寸法を減らすことができる。
【0206】
また、振動子500の中心付近に括れ部311,411を設け、摺動部413付近に幅方向に凸部312,412を設けたため、振動子500の進行方向の長さを抑えたうえで第1モードの共振周波数を下げ、更に第2モードの周波数を合わせるために、振動子500の更なる薄型化を図ることができる。
【0207】
したがって、第2モードの振幅の増大を図ることができる。また、振動子500の変形量は電界強度に依存するため、振動子500を薄くすると、振動体101を薄くすることができ、同一電圧では電界が強くなる。したがって、振幅を揃えた場合は、より電圧を低下させることができ、省電力化をすることができる。
【0208】
また、振動子500を加圧接触させる摩擦部材104としてステンレス鋼などの金属部材を採用した場合に、DLCや窒化処理等のHv1000以上の高硬度の表面処理を施すことで、高面圧化下の耐久性を確保することができる。
【0209】
このように、実施例1によれば、従来のステッピングモータ(STM)に対し高速駆動が可能な直進型の振動波モータ100を提供することができる。また、実施例1によれば、ボイスコイルモータ(VCM)に対し小型かつ低コストでの作成が可能な直進型の振動波モータ100を提供することができる。
【0210】
また、実施例1によれば、リング型超音波モータに対しても小型、高速、精密駆動であり、かつ、直進駆動への変換機構を省略した直進型の振動波モータ100を提供することができる。また、実施例1によれば、直進型の振動波モータ100を搭載したレンズ鏡筒、電子機器を提供することもできる。
【0211】
また、STMやVCMなどの電磁モータは、電源OFF時には保持力が無いため、外部要因で駆動体の位置が変化してしまい、位置を保持するための機構が別途必要となる。これに対し、実施例1の直進型の振動波モータ100は摩擦駆動のため、電源OFF時にも保持力によって振動子500の位置が維持される。
実施例1では、A相の電極313a、313cをプラス分極とし、B相の電極313b、313dをマイナス分極としたが、実施例2では、A相およびB相の全電極313a~313dをプラス分極にした場合の振動について説明する。なお、実施例2では、実施例1との相違点を中心に説明するため、実施例1と同一内容については説明を省略する。
時刻2π/4において、振動子500は、A相の振動では、時刻π/4から進行方向に0.7ずつ収縮し、B相の振動では、時刻π/4から進行方向に0.3ずつ収縮するため、進行方向に1.0ずつ収縮した振動子500Aとなる。
時刻3π/4において、振動子500は、A相の振動では、時刻2π/4から進行方向に0.7ずつ収縮し、B相の振動では、時刻2π/4から進行方向に0.3ずつ伸長するため、進行方向に1.4ずつ収縮した振動子500Aとなる。この状態が、振動子500が最も収縮した状態になる。
時刻5π/4において、振動子500は、A相の振動では、時刻4π/4から進行方向に0.3ずつ伸長し、B相の振動では、時刻4π/4から進行方向に0.7ずつ伸長するため、A相およびB相の合成振動が0の振動子500Aとなる。すなわち、振動子500は、振動していない場合と同じ状態になる。
時刻6π/4において、振動子500は、A相の振動では、時刻5π/4から進行方向に0.7ずつ伸長し、B相の振動では、時刻5π/4から進行方向に0.3ずつ伸長するため、進行方向に1.0ずつ伸長した振動子500Aとなる。
時刻7π/4において、振動子500は、時刻6π/4から進行方向に0.7ずつ伸長し、B相の振動では、時刻6π/4から進行方向に0.3ずつ収縮するため、進行方向に1.4ずつ伸長した振動子500Aとなる。時刻8π/4以降は、時刻0~7π/4の伸縮を繰り返すことになる。
また、A相の基準電圧1601とB相に印加される電圧1602との位相差を90度(deg)のままとし、かつ、電極313a、313cをマイナス分極、電極313b、313dをプラス分極とした場合も、同様である。
A相およびB相の全電極313a~313dをプラス分極にし、かつ、A相とB相との間に90度の位相差がある場合の振動は、実施例1の270度の位相差と同じ振動となる。そのため、駆動時の進行方向は実施例1とは逆方向となる。すなわち、実施例2では、振動子500は、正の進行方向に駆動する。
このことから、位相差を90度から0度に近づけるほど、摺動部413の楕円運動は進行方向に細長くなるため、進行方向の振動が大きくなる。一方、加圧方向の振動は0度に近づくにつれ小さくなるため、90度から0度までの間で摺動部413の引きずりが発生し、駆動の抵抗となる。このことから、位相差を90度から0度に変更する操作では、90度から引きずりが強くなる特定の位相差までは駆動速度が増加するが、当該特定の位相差を超えると、摺動部413の引きずりにより振動が阻害され、振動波モータ100は駆動できなくなる。
このことから、位相差を90度から180度に近づけるほど、摺動部413の楕円運動は加圧方向に細長くなるため、加圧方向の振動が大きくなり、進行方向の振動は小さくなる。そのため、位相差を180度に近づける操作をすると、振動波モータ100の駆動速度を減速させる効果がある。
一般的な進行波を使用した超音波モータでは、入力電圧の周波数を共振周波数から離す操作や電圧を下げる操作により、駆動速度が減速する。すなわち、この操作では、楕円運動全体の大きさを小さくすることで、駆動速度が減速する。したがって、低速になるほど摺動部413の引きずりが発生し、不安定化する。具体的には、たとえば、加圧方向の振動が小さくなることで、表面粗さ等の凹凸に摺動部413が引っ掛かり、引っ掛かった場所ごとに速度が変わり速度が安定しない、または、駆動可能な場所と駆動不可能な場所とが発生する。
一方、実施例2の振動モードで位相差を操作することで楕円運動のアスペクト比を変えることで振動波モータ100を低速駆動する場合には、加圧方向の振幅は大きいまま、進行方向の振幅を下げることができ、引きずりを発生させにくい。そのため、振動波モータ100の駆動速度を減速しても安定駆動が実現するため、より低速での駆動が可能となる。また、より低速で駆動できるため、振動波モータ100の停止精度が向上する。
たとえば、振動波モータ100をカメラのレンズ鏡筒に実装してレンズを駆動制御する場合、最も高精細な画像が得られるピント位置に対して、より精度よく停止させることができるようになり、また、動画撮影時には、低速駆動時にも滑らかな駆動が可能となる。
カメラ5400は、レンズ鏡筒5401内に撮像光学系(レンズ)5411を備える。また、カメラ5400は、その本体内に、撮像素子5402と、AFE(Analog front end)回路5403と、画像処理部5404と、音声検出部5405と、バッファメモリ5406と、記録インターフェイス5407と、モニタ5408と、操作部材5409と、メモリ5410と、CPU5430とから構成され、外部機器のPC5440との接続が可能となっている。
操作部材5409または画像の状況により撮像素子5402への露光時間(シャッタースピード)が決定される。撮像素子5402は、受光面に受光素子が二次元的に配列されたCMOSイメージセンサなどによって構成される。撮像素子5402は、撮像光学系5411を通過した光束による被写体像を光電変換してアナログ画像信号を生成する。アナログ画像信号は、AFE回路5403に入力される。
AFE回路5403は、アナログ画像信号に対するゲイン調整(ISO感度に応じて信号増幅)行う。具体的には、AFE回路5403は、CPU5430からの感度設定指示に応じて、撮像感度を所定範囲内で変更する。AFE回路5403は、さらに、内蔵するA/D変換回路によってアナログ処理後の画像信号をデジタルデータに変換する。そのデジタルデータは、画像処理部5404に入力される。
画像処理部5404は、デジタル画像データに対して、各種の画像処理を行う。メモリ5410は、画像処理部5404による画像処理の前工程や後工程での画像データを一時的に記録する。音声検出部5405は、マイクと信号増幅部から構成され、主に動画撮影時に被写体方向からの音声を検出して取り込み、そのデータをCPU5430へ伝達する。
記録インターフェイス5407は、不図示のコネクタを有し、該コネクタに記録媒体5420が接続され、接続された記録媒体5420に対して、データの書き込みや、記録媒体5420からのデータの読み込みを行う。モニタ5408は、液晶パネルによって構成され、CPU5430からの指示に応じて画像や操作メニューなどを表示する。
操作部材5409は、モードダイヤル、十字キー、決定ボタンやレリーズボタンを示し、各操作に応じた操作信号をCPU5430へ送出する。静止画撮影や動画撮影の設定は、該操作部材5409により設定される。
CPU5430は、不図示のROMに格納されたプログラムを実行することによってカメラ5400が行う動作を統括的に制御する。例えば、AF(オートフォーカス)動作制御、AE(自動露出)動作制御、オートホワイトバランス制御などを行う。メモリ5410は、画像処理した一連の画像データを記録する。この様な構成のカメラ5400において、本発明は、動画に対応した画像を取り込む。
このように、上述した振動波モータ100は、進行方向に振動子500が伸縮する縦振動1次モード(第1モード)と、進行方向に直交する幅方向に沿って振動子500が屈曲する屈曲1次モードでかつ中心を境に逆位相に屈曲する第2モードと、を組み合わせて振動を発生させる。
すなわち、第2モードでは、幅方向に沿って屈曲する屈曲1次モードと同様に進行方向の2本の第2節1402と、振動体101の進行方向の中心位置に幅方向の1本の第1節1401と、により、中心線1410の腹の振動が、第1節1401を境界として短側端502a側と短側端502bとで逆方向になる。この振動は、振動体101の進行方向の屈曲4次モードよりもモード次数が低い。モード次数が低いと、振幅および加圧方向に持ち上げる力が強くなり、より強い摩擦力を発生させることができる。
また、第2モードでは、振動子500は幅方向に沿って屈曲するため、第2モードの共振周波数が幅方向の長さに依存する。幅方向の長さは、振動体101進行方向(振動子500のの長手方向)に対して短い。したがって、進行方向の屈曲4次モードに対して、同じ共振周波数にする場合、振動子500の厚みを薄くすることができ、振動波モータ100の厚み寸法を減らすことができる。
また、括れ部311、411と凸部312、412とを設けたことにより、進行方向の長さを抑えたうえで第1モードの共振周波数を下げ、さらに、第2モードの共振周波数を合わせるために、更なる振動子500の薄型化ができ、第2モードの振幅も増大させることができる。
また、振動子500を薄型化するメリットとして、振動子500が薄いほど振動体101も薄くできるため、振動子500の変形量は電界強度に依存するため、同一電圧では電界が強くなり、振幅を揃えた場合はより電圧を下げることができる。したがって、省電力化をすることができる。
また、振動子500を加圧接触させる摩擦部材104としてステンレス鋼などの金属部材を採用した場合に、DLCや窒化処理等のHv1000以上の高硬度の表面処理を施すことで、高面圧化下の耐久性を確保することができる。
以上説明したように、上述した振動波モータ100によれば、従来のステッピングモータ(STM)に対し高速駆動が可能な直進型の振動波モータ100を提供することができる。また、ボイスコイルモータ(VCM)に対し小型かつ低コストでの作成が可能な直進型の振動波モータ100を提供することができる。
また、リング型超音波モータに対しても小型、高速、精密駆動であり、かつ、直進駆動への変換機構を省略した直進型の振動波モータ100を提供することができる。また、実施例1によれば、直進型の振動波モータ100を搭載したレンズ鏡筒、電子機器を提供することもできる。
また、STMやVCMなどの電磁モータは、電源OFF時には保持力が無いため、外部要因で駆動体の位置が変化してしまい、位置を保持するための機構が別途必要となる。これに対し、実施例1の直進型の振動波モータ100は摩擦駆動のため、電源OFF時にも保持力によって振動子500の位置が維持される。
また、上述した実施例では、摩擦部材104が固定され、振動子500と連結した保持部材103、レール部材105、加圧バネ107、およびFPC108が一体となって、摩擦部材104に対し移動することとした。これに対し、振動子500と連結した保持部材103、レール部材105、加圧バネ107、およびFPC108が一体となって固定され、摩擦部材104が移動する構成でもよい。
また、上述した実施例では、振動体101には括れ部311が形成されたが、振動体101の本体300は、括れ部311がない矩形であってもよい。この場合、括れ部311が形成されていた領域には、1以上の孔または気孔が形成され、本体300の他の領域に比べて質量が小さくなるようにしてもよい。同様に、弾性体102には括れ部411が形成されたが、弾性体102の本体400は、括れ部411がない矩形であってもよい。この場合、括れ部411が形成されていた領域には、1以上の孔または気孔が形成され、本体400の他の領域に比べて質量が小さくなるようにしてもよい。
なお、本発明は上記の内容に限定されるものではなく、これらを任意に組み合わせたものであってもよい。また、本発明の技術的思想の範囲で考えられるその他の態様も本発明の範囲に含まれる。