(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104591
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】指向性切り替え照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20240729BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240729BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20240729BHJP
G02B 3/02 20060101ALI20240729BHJP
G02B 3/14 20060101ALI20240729BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20240729BHJP
G02B 15/00 20060101ALI20240729BHJP
F21V 14/06 20060101ALI20240729BHJP
F21V 14/00 20180101ALI20240729BHJP
G02B 5/04 20060101ALI20240729BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20240729BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240729BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20240729BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240729BHJP
F21Y 103/00 20160101ALN20240729BHJP
【FI】
F21S2/00 481
G02B5/30
G02B5/00 A
G02B3/02
G02B3/14
G02B13/18
G02B15/00
F21V14/06
F21V14/00 200
F21V14/00 100
G02B5/04
G02B3/00 A
F21Y115:10
F21Y115:15
F21Y115:30
F21Y103:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008892
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】矢内 雄二郎
【テーマコード(参考)】
2H042
2H087
2H149
3K244
【Fターム(参考)】
2H042AA10
2H042AA26
2H042CA00
2H087KA29
2H087MA20
2H087PA02
2H087PA17
2H087PB02
2H087RA01
2H087RA26
2H087RA46
2H149AA21
2H149AB00
2H149DA02
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2H149DA12
2H149EA17
2H149FA02Z
2H149FA04Z
2H149FA08Z
2H149FA12Z
2H149FA13Z
2H149FA24Y
2H149FA26Y
2H149FA33Y
2H149FA34Y
2H149FA42Z
2H149FA51Y
2H149FA52Y
2H149FA54Y
2H149FA58Y
3K244AA01
3K244BA14
3K244CA02
3K244DA01
3K244DA02
3K244DA03
3K244DA05
3K244GA01
3K244GA06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】指向性を切り替え可能な指向性切り替え照明装置を提供する。
【解決手段】光源108と、光源から出射された光の指向性を制御する光指向性制御部材106と、第1レンズ102と第2レンズ104とを有し、第1レンズと第2レンズとを相対的に移動または回転させて焦点を変えることができる可変焦点レンズを配列してなるレンズアレイと、をこの順に有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射された光の指向性を制御する光指向性制御部材と、
第1レンズと第2レンズとを有し、前記第1レンズと前記第2レンズとを相対的に移動または回転させて焦点を変えることができる可変焦点レンズを配列してなるレンズアレイと、をこの順に有する、指向性切り替え照明装置。
【請求項2】
前記可変焦点レンズは、前記第1レンズと前記第2レンズとを組み合わせた、アルバレスレンズである、請求項1に記載の指向性切り替え照明装置。
【請求項3】
前記可変焦点レンズは、前記第1レンズと前記第2レンズとを組み合わせた、モアレレンズである、請求項1に記載の指向性切り替え照明装置。
【請求項4】
前記モアレレンズが有する前記第1レンズおよび前記第2レンズはそれぞれ、液晶化合物を含む組成物を用いて形成された液晶層を含み、
前記液晶層は、渦配向パターンを有しており、
前記渦配向パターンは、円形の中心部と、前記中心部と中心を一致して、前記中心部の半径方向に設けられる内径の異なる1以上の円環部とにおいて、前記液晶化合物由来の光学軸が、周方向に沿って回転しており、外側の前記円環部ほど、周方向に一周する間の、前記光学軸の回転量が多い、請求項3に記載の指向性切り替え照明装置。
【請求項5】
前記光指向性制御部材が、ルーバー部材、プリズムシート、または、コリメートレンズアレイである、請求項1~4のいずれか一項に記載の指向性切り替え照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指向性切り替え照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置において、広視野角と狭視野角の切り替えが可能な視野角可変ディスプレイの実現が望まれている。液晶表示装置の視野角を切り替える構成として、液晶表示装置のバックライト(面状光源)の指向性を切り替える構成が考えられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、特定方向に光出射の指向性を有する面状光源と、液晶層を挟んで配置された透明電極への電圧印加によって微小な液晶レンズ部を複数形成するように構成されており、面状光源からの光の指向性を維持して当該光を透過させる非レンズ形成状態と、面状光源からの光のうち主に特定方向に振動する直線偏光光を拡散するレンズ形成状態と、を切り替えることができる拡散制御液晶パネルと、拡散制御液晶パネルからの光を受け取るように配置され、特定方向に振動する直線偏光光及び他の方向に振動する直線偏光光の取り込みが可能なように光入射側偏光板の偏光光透過軸が設定された液晶表示パネルと、から成る映像表示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、光源から出射される光の指向性を拡散制御液晶パネルで切り替えることが記載されているが、新たな構成の指向性を切り替え可能な照明装置が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点を解決することにあり、指向性を切り替え可能な指向性切り替え照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
[1] 光源と、
光源から出射された光の指向性を制御する光指向性制御部材と、
第1レンズと第2レンズとを有し、第1レンズと第2レンズとを相対的に移動または回転させて焦点を変えることができる可変焦点レンズを配列してなるレンズアレイと、をこの順に有する、指向性切り替え照明装置。
[2] 可変焦点レンズは、第1レンズと第2レンズとを組み合わせた、アルバレスレンズである、[1]に記載の指向性切り替え照明装置。
[3] 可変焦点レンズは、第1レンズと第2レンズとを組み合わせた、モアレレンズである、[1]に記載の指向性切り替え照明装置。
[4] モアレレンズが有する第1レンズおよび第2レンズはそれぞれ、液晶化合物を含む組成物を用いて形成された液晶層を含み、
液晶層は、渦配向パターンを有しており、
渦配向パターンは、円形の中心部と、中心部と中心を一致して、中心部の半径方向に設けられる内径の異なる1以上の円環部とにおいて、液晶化合物由来の光学軸が、周方向に沿って回転しており、外側の円環部ほど、周方向に一周する間の、光学軸の回転量が多い、[3]に記載の指向性切り替え照明装置。
[5] 光指向性制御部材が、ルーバー部材、プリズムシート、または、コリメートレンズアレイである、[1]~[4]のいずれかに記載の指向性切り替え照明装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、指向性を切り替え可能な指向性切り替え照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の指向性切り替え照明装置の一例を概念的に示す図である。
【
図2】
図1に示す指向性切り替え照明装置が有する可変焦点レンズの作用を説明するための概念図である。
【
図3】
図1に示す指向性切り替え照明装置が有する可変焦点レンズの作用を説明するための概念図である。
【
図4】
図1に示す指向性切り替え照明装置が有する可変焦点レンズの作用を説明するための概念図である。
【
図5】本発明の指向性切り替え照明装置の一例を概念的に示す図である。
【
図6】
図5に示す指向性切り替え照明装置が有する可変焦点レンズの一例を概念的に示す斜視図である。
【
図7】
図6に示す可変焦点レンズの第1レンズの一例を概念的に示す側面図である。
【
図8】
図7に示す第1レンズが有する第1液晶層の一例を概念的に示す平面図である。
【
図10】
図8に示す第1液晶層の部分拡大図である。
【
図11】第1液晶層の一例の一部を拡大して概念的に示す平面図である。
【
図12】可変焦点レンズの第2レンズが有する第2液晶層の一例の一部を拡大して概念的に示す平面図である。
【
図13】第1液晶層の渦配向パターンを説明するための概念図である。
【
図14】第2液晶層の渦配向パターンを説明するための概念図である。
【
図15】可変焦点レンズの位相を概念的に表す図である。
【
図16】可変焦点レンズの位相を概念的に表す図である。
【
図17】可変焦点レンズの位相を概念的に表す図である。
【
図18】可変焦点レンズの位相を概念的に表す図である。
【
図19】可変焦点レンズの作用を説明するための図である。
【
図20】可変焦点レンズの位相を概念的に表す図である。
【
図21】可変焦点レンズの作用を説明するための図である。
【
図22】液晶層を形成するための配向膜を露光する露光装置の一例の概念図である。
【
図23】本発明の指向性切り替え照明装置の可変焦点レンズのレンズを回転させる駆動機構を説明するための概念図である。
【
図24】本発明の指向性切り替え照明装置の可変焦点レンズのレンズを回転させる駆動機構の他の一例を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の指向性切り替え照明装置について、添付の図面に示される好適実施形態を基に詳細に説明する。
【0011】
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「同じ」、「同一」等の用語は、該当する技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含む。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートおよびメタクリレートのいずれか一方または双方」の意味で使用される。
【0012】
本明細書において、Re(λ)は、波長λにおける面内のレタデーションを表す。特に記載がないときは、波長λは、550nmとする。
本明細書において、Re(λ)は、AxoScan(Axometrics社製)において、波長λで測定した値である。AxoScanにて平均屈折率((nx+ny+nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScanで算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
【0013】
[指向性切り替え照明装置]
本発明の指向性切り替え照明装置は、
光源と、
光源から出射された光の指向性を制御する光指向性制御部材と、
第1レンズと第2レンズとを有し、第1レンズと第2レンズとを相対的に移動または回転させて焦点を変えることができる可変焦点レンズを配列してなるレンズアレイと、をこの順に有する、指向性切り替え照明装置である。
【0014】
図1に、本発明の指向性切り替え照明装置の一例を概念的に表す図を示す。
【0015】
図1に示す指向性切り替え照明装置100aは、光源108と、光指向性制御部材106と、レンズアレイ105と、をこの順に有する。
【0016】
光源108は、光指向性制御部材106側に向けて光を出射するものである。
【0017】
光源108としては特に制限はなく、照明装置、画像表示装置のバックライト等に用いられている従来公知の光源が適宜利用可能である。また、光源108は、点光源であっても線状光源であっても面状光源であってもよい。
【0018】
例えば、光源108は、LED(発光ダイオード)、有機発光ダイオード(OLED)、レーザ等の点光源、あるいは、蛍光灯(CCFL)等の線状光源を並べ、2次元的に配列した面状光源であってもよいし、点光源あるいは線状光源が出射した光を側面から入射し、表面から面状の光を出射する板状の導光板を用いる面状光源であってもよい。
あるいは、光源108は、図示例のような面状光源にも限定されず、点光源、線状光源であってもよい。
【0019】
光源108の光出射面側には、光指向性制御部材106が配置される。
【0020】
光指向性制御部材106は、光源108から出射された光の指向性を制御する部材である。具体的には、光源108から出射される光は、種々の向きに拡散するように出射されている。光指向性制御部材106は、この拡散される光の進行方向を所定の方向に規制してコリメートする。
【0021】
光指向性制御部材106としては、ルーバー部材、プリズムシート、または、コリメートレンズアレイ等を用いることができる。
【0022】
ルーバー部材は、帯状の光透過帯と遮光帯とが交互に配されており、特定方向から入射する光を透過し、その特定方向以外から入射する光の透過を妨げるものである。従って、ルーバー部材は、光源108から出射された光のうち、特定方向に進行する光のみを透過し、それ以外の方向に進行する光を遮蔽することで、光をコリメートすることができる。
【0023】
ルーバー部材としては、種々の公知のルーバー部材(ルーバーフィルム)が適宜利用可能である。また、光指向性制御部材106は、このようなルーバー部材をルーバーが直交するように2つ配置した構成を有していてもよい。
【0024】
プリズムシートは、表面に微細なプリズム構造を備えたシートであり、反射及び屈折を通じて光の向きを変えることができるシートである。プリズムシートは、入射した光を特定方向に集光させることができる。従って、プリズムシートは、光源108から出射された光を特定方向に集光することで、光をコリメートすることができる。
【0025】
プリズムシートとしては、種々の公知のプリズムシートが適宜利用可能である。また、光指向性制御部材106は、このようなプリズムシートをプリズム構造が直交するように2枚配置した構成を有していてもよい。
【0026】
コリメートレンズアレイは、多数のレンズを2次元状に備えた部材であり、各レンズは、凸レンズの作用を有しており、入射する光を特定方向に集光する。従って、コリメートレンズアレイは、光源108から出射された光を特定方向に集光することで、光をコリメートすることができる。
【0027】
光指向性制御部材106によってコリメートされた光はレンズアレイ105に入射する。
【0028】
レンズアレイ105は、複数の可変焦点レンズ101を2次元的に配列してなるものである。
図1に示す例では、可変焦点レンズ101は、第1レンズ102と第2レンズ104とを有し、第1レンズ102と第2レンズ104とを相対的に移動させて焦点距離を変えることができる。このような可変焦点レンズ101としては、第1レンズおよび第2レンズを有する、いわゆるアルバレスレンズが用いられる。
【0029】
図2~
図4に示すように、アルバレスレンズとしての可変焦点レンズ101は、2枚の自由曲面を有するレンズを面内方向に相対的に平行移動させることで可変焦点レンズ101としての焦点距離(レンズパワー)を変化させることができるレンズである。アルバレスレンズとしては従来公知のアルバレスレンズを適宜利用可能である。
【0030】
アルバレスレンズの第1レンズおよび第2レンズにおける位相分布は、例えば、下記式(1)および式(2)で示される。
【0031】
【数1】
ここで、xおよびyはxy平面の座標位置であり、zはその位置での高さである。また、Aは定数で、Aの値によって、2枚のレンズの相対移動を最大にしたときの焦点距離が定まる。
【0032】
アルバレスレンズが有する第1レンズ102と第2レンズ104とは対称性を有しており、例えば、
図2に示すように、第1レンズ102と第2レンズ104との合計厚さが、位置によらず同じ厚さとなる状態の場合には、入射した光を屈曲させることなく透過する。
一方、
図3に示すように、第1レンズ102と第2レンズ104との凹状の部分が重複している状態の場合には、凹レンズとして作用する。
また、
図4に示すように、第1レンズ102と第2レンズ104との凸状の部分が重複している状態の場合には、凸レンズとして作用する。
【0033】
従って、第1レンズ102と第2レンズ104とを面内方向に相対的に平行移動させることで可変焦点レンズ101の焦点距離を変化させることができる。
【0034】
第1レンズ102と第2レンズ104とを面内方向に相対的に平行移動させる際には、第1レンズ102のみを平行移動させる構成であってもよいし、第2レンズ104のみを平行移動させる構成であってもよいし、第1レンズ102および第2レンズ104をそれぞれ逆方向に平行移動させる構成であってもよい。
【0035】
第1レンズ102および/または第2レンズ104を平行移動させる駆動装置としては、リニアモーター、電気モーターと電気モーターの回転運動を直線運動に変換する機構(ラック・アンド・ピニオン等)を有する装置等の従来公知の駆動装置が適宜利用可能である。
【0036】
レンズアレイ105は、このような複数の可変焦点レンズ101を2次元的に配列してなる。レンズアレイ105は、各可変焦点レンズ101の焦点距離を切り替えることにより、入射した光の指向性を、例えば、平行光に近い状態と、拡散光の状態とで切り替えることができる。また、レンズアレイ105は、可変焦点レンズ101を2次元的に配列して構成されているため、レンズアレイ105を通過した光の輝度の面内分布を均一にすることができる。
【0037】
また、光源108とレンズアレイ105との間に光指向性制御部材106を有し、光源108が出射した光を光指向性制御部材106によってコリメートして、レンズアレイ105に入射する光を略平行光としているため、レンズアレイ105による光の指向性の切り替えを適切に行うことができる。
【0038】
なお、レンズアレイ105における可変焦点レンズ101の配列には特に限定はなく、正方配置、千鳥配置、等の任意の配置とすればよい。
【0039】
レンズアレイ105における各可変焦点レンズ101は、同じ構成の可変焦点レンズ(アルバレスレンズ)であるのが好ましいが、異なる構成のアルバレスレンズを含んでいてもよい。
【0040】
また、各可変焦点レンズ101の面内方向のサイズは、特に制限はないが、均一性および作製のしやすさなどから、500μm~1000μmが好ましい。
【0041】
また、
図1に示す例では、可変焦点レンズ101は、第1レンズと第2レンズとを相対的に移動させることで焦点距離を変えるものとしたがこれに限定はされず、可変焦点レンズは、第1レンズと第2レンズとを相対的に回転させることで焦点距離を変えるものであってもよい。
【0042】
図5に本発明の指向性切り替え照明装置の他の一例を概念的に表す図を示す。
図5に示す指向性切り替え照明装置100bは、光源108と、光指向性制御部材106と、レンズアレイ205と、をこの順に有する。なお、
図5に示す指向性切り替え照明装置100bは、レンズアレイ105に代えて、レンズアレイ205を有する以外は、
図1に示す指向性切り替え照明装置100aと同様の構成を有するため、以下の説明では同じ部位には同じ符号を付し、異なる部位を主に行う。
【0043】
レンズアレイ205は、複数の可変焦点レンズ10を2次元的に配列してなるものである。
図5に示す例では、可変焦点レンズ10は、第1レンズ12と第2レンズ14とを有し、第1レンズ12と第2レンズ14とを相対的に回転させて焦点距離を変えることができるレンズである。
【0044】
図6にレンズアレイ205が有する可変焦点レンズ10の一例を概念的に示す斜視図を示す。
図6に示す可変焦点レンズ10は、第1レンズ12と第2レンズ14とをする。
図6に示すように、第1レンズ12と第2レンズ14とは、面内方向の中心を一致して厚さ方向に配列されており、この中心を軸にして、第1レンズ12と第2レンズ14とが、厚さ方向(積層方向)の距離を変えることなく、相対的に回転可能に支持されている。可変焦点レンズ10においては、第1レンズ12および第2レンズ14のいずれか一方が回転するものであってもよく、両方がそれぞれ独立して回転するものであってもよい。
【0045】
レンズアレイ205は、このような複数の可変焦点レンズ10を2次元的に配列してなる。レンズアレイ205は、各可変焦点レンズ10の焦点距離を切り替えることにより、入射した光の指向性を、例えば、平行光に近い状態と、拡散光の状態とで切り替えることができる。また、レンズアレイ205は、可変焦点レンズ10を2次元的に配列して構成されているため、レンズアレイ205を通過した光の輝度の面内分布を均一にすることができる。
【0046】
また、光源108とレンズアレイ205との間に光指向性制御部材106を有し、光源108が出射した光を光指向性制御部材106によってコリメートして、レンズアレイ205に入射する光を略平行光としているため、レンズアレイ205による光の指向性の切り替えを適切に行うことができる。
【0047】
なお、レンズアレイ105における可変焦点レンズ101の配列には特に限定はなく、正方配置、千鳥配置、等の任意の配置とすればよい。
【0048】
レンズアレイ205における各可変焦点レンズ10は、同じ構成の可変焦点レンズであるのが好ましいが、異なる構成の可変焦点レンズを含んでいてもよい。
【0049】
2つのレンズを相対的に回転させることで焦点距離を変えることができる可変焦点レンズとしては、いわゆるモアレレンズ等が挙げられる。モアレレンズとしては従来公知のモアレレンズが適宜利用可能である。
【0050】
本発明においては、モアレレンズが有する第1レンズおよび第2レンズは、液晶化合物を含む組成物を用いて形成された液晶層を含み、液晶層は、渦配向パターンを有しており、渦配向パターンは、円形の中心部と、中心部と中心を一致して、中心部の半径方向に設けられる内径の異なる1以上の円環部とにおいて、液晶化合物由来の光学軸が、周方向に沿って回転しており、外側の円環部ほど、周方向に一周する間の、光学軸の回転量が多い、ことが好ましい。
【0051】
さらに、第1レンズ12が有する液晶層を第1液晶層とし、第2レンズ14が有する液晶層を第2液晶層とすると、
第1液晶層および第2液晶層が、円形の中心部と、中心部と中心を一致して、中心部の半径方向に設けられる内径の異なる複数の円環部とを有し、
第1液晶層の中心部の中心と、第2液晶層の中心部の中心とが、面内方向において一致しており、
第1液晶層の中心部を中心に、第1液晶層と第2液晶層との間の距離を変えることなく、第1液晶層と第2液晶層とが相対的に回転可能であり、
第1液晶層の中心部からn番目の円環部の内径rin-n1および外径rout-n1と、第2液晶層の中心部からn番目の円環部の内径rin-n2および外径rout-n2が、式1、式2で表される関係を満たし、
式1 0.9×rin-n1≦rin-n2≦1.1×rin-n1
式2 0.9×rout-n1≦rout-n2≦1.1×rout-n1
第1液晶層の中心部の中心を原点とするrとφとの極座標において、φがφ1である領域における、第1液晶層の光学軸の方向θ1[°]が式3で表される関係を満たすパターンを渦配向パターンとしたとき、
式3 {α1×φ1+θ0n1}-3°<θ1<{α1×φ1+θ0n1}+3°
ただし、θ0n1[°]は、中心部および各円環部ごとのφ1=0°における光学軸の方向
第1液晶層の中心部は、mを1以上の整数としたときに、α1=m×0.5である渦配向パターンを有し、
第1液晶層の中心部からn番目の円環部は、α1=(m+n)×0.5である渦配向パターンを有し、
第2液晶層の中心部の中心を原点とするrとφとの極座標において、φがφ2である領域における、第2液晶層の光学軸の方向θ2[°]が式4で表される関係を満たすパターンを渦配向パターンとしたとき、
式4 {α2×φ2+θ0n2}-3°<θ2<{α2×φ2+θ0n2}+3°
ただし、θ0n2[°]は、中心部および各円環部ごとのφ2=0°における光学軸の方向
第2液晶層の中心部は、mを1以上の整数としたときに、α2=-(m×0.5)である渦配向パターンを有し、
第2液晶層の中心部からn番目の円環部は、α2=-(m+n)×0.5である渦配向パターンを有する、ことが好ましい。
【0052】
このような液晶層を有する第1レンズおよび第2レンズを有する可変焦点レンズ(モアレレンズ)について、以下、詳細に説明する。
【0053】
なお、以下の説明において、第1レンズ12の第1液晶層34aおよび第2レンズ14の第2液晶層34bを区別する必要がない場合にはまとめて液晶層34ともいう。
【0054】
第1液晶層34aおよび第2液晶層34bは、液晶化合物を含む組成物を用いて形成されており、液晶化合物由来の光学軸が後述する渦配向パターンとなるように配向されている。液晶化合物を所望の渦配向パターンに配向するために、第1液晶層34aおよび第2液晶層34bは、例えば、
図7に示すように、支持体30上に形成された配向膜32上に形成される。
【0055】
なお、可変焦点レンズ10に用いられる際には、第1液晶層34aおよび第2液晶層は、支持体30および配向膜32の上に積層された状態であってもよい。あるいは、例えば、支持体30を剥離した、配向膜32および液晶層のみが積層された状態でもよい。または、支持体30および配向膜32を剥離した、液晶層のみの状態でもよい。
【0056】
図8は、第1液晶層34aの一例を概念的に示す平面図である。
図8は、第1液晶層34aの微小な領域ごとの光学軸(遅相軸)の向きを0~2πで規格化した位相で表し、0を黒、2πを白とするグレースケールで可視化した図である。
【0057】
図8に示すように、第1液晶層34aは、円形の中心部と、中心部と中心を一致して、中心部の半径方向に設けられる内径の異なる複数の円環部とを有する。
図8に示す例では、第1液晶層34aは、中心部と19個の円環部とを有している。中心部から半径方向に向かって1番目の円環部は、中心部と接しており、また、2番目の円環部は1番目の円環部と接している。すなわち、各円環部は、中心部の中心と中心を同じにして同心円状に、順に接して形成されている。
図8にグレースケールで示すとおり、中心部および各円環部はそれぞれ周方向に位相(光学軸の向き)が変化している。
【0058】
位相について
図9を用いて説明する。
図9は、微小な領域ごとの光学軸の向きと規格化した位相との関係を表す図である。
図9の一番左の光学軸40のように、光学軸40が図中左右方向を向いている(後述する極座標表示における光学軸の角度θ
1が0°)状態を位相0と定義し、ここから、図の一番右に示す光学軸40のように、光学軸40が反時計回りに180°回転した状態を位相2πと定義して、反時計回りに回転した角度に応じて位相を規格化する。例えば、光学軸40が反時計回りに45°回転した状態(左から2番目の光学軸40)は位相π/2であり、90°回転した状態(左から3番目の光学軸40)は位相πであり、135°回転した状態(右から2番目の光学軸40)は位相3π/2である。なお、光学軸40の変化は、実際には連続的な変化であり、
図9において光学軸40同士の間には、その間の角度に配向された光学軸(液晶化合物)40が存在する。また、図からわかるように、位相0と位相2πの光学軸の状態は同じである。
【0059】
一例として、第1液晶層の中心部20a中の位相について
図10を用いて説明する。
図10は、
図8に示す第1液晶層34aの中心部20aの位相を表す図である。
図10において、第1液晶層34a(中心部20a)中の位相をグレースケールで表し、また、光学軸40の向きを重畳して示している。基本的に、液晶層中の微小な領域における光学軸40の向きは、液晶化合物由来の光学軸の向きである。従って、
図10中の光学軸40は、液晶化合物の光学軸とも言える。液晶化合物が棒状液晶化合物の場合には、棒状液晶化合物の長軸が液晶化合物に由来する光学軸である。また、液晶化合物が円盤液晶化合物の場合には、円盤状液晶化合物の円盤面に垂直な軸が光学軸である。
【0060】
図10に示すように、中心部20aの周方向に反時計回りに見た際に、微小な領域における光学軸(液晶化合物)40の向きは、反時計回りに回転している。図示例においては、中心部20aは、位相が0の位置から、中心部20aの周方向に1周する間に、光学軸40は半回転、すなわち、位相が0から2πまで漸次、変化している。
【0061】
次に、円環部の位相について、
図11を用いて説明する。
図11は、
図8に示す第1液晶層34aの一部を拡大して示す図であり、中心部20aおよび各円環部の位相を表す図である。
図11に示すように、中心部20aから半径方向に向かって1番目の円環部(第1円環部)21aは、第1円環部21aの周方向に反時計回りに見た際に、微小な領域における光学軸40の向きが、反時計回りに1回転している。すなわち、図示例においては、第1円環部21aは、位相が0の位置から、第1円環部21aの周方向に1周する間に、0から2πの位相変化を2回繰り返している。すなわち、第1円環部21aにおける位相変化の回数は、中心部20aよりも1回多くなっている。
【0062】
次いで、中心部20aから半径方向に向かって2番目の円環部(第2円環部)22aは、第2円環部22aの周方向に反時計回りに見た際に、微小な領域における光学軸40の向きが、反時計回りに1.5回転している。すなわち、図示例においては、第2円環部22aは、位相が0の位置から、第2円環部22aの周方向に1周する間に、0から2πの位相変化を3回繰り返している。すなわち、第2円環部22aにおける位相変化の回数は、第1円環部21aよりも1回多くなっている。
【0063】
第1液晶層34aにおいて、中心部20aから半径方向に向かって3番目以降の円環部についても同様に、円環部の周方向に反時計回りに見た際に、位相が0の位置から円環部の周方向に1周する間に、0から2πの位相変化を複数回繰り返しており、位相変化の繰り返し回数が内側に隣接する円環部よりも1回多くなっている。
【0064】
すなわち、
図8に示す第1液晶層34aにおいては、n番目の円環部は、位相変化をn+1回繰り返している。
【0065】
本発明においては、このように、中心部と複数の円環部とを有し、中心部および複数の円環部それぞれにおいて、周方向に位相変化を1回以上しており、n番目の円環部がn+m回(mは中心部における位相変化の回数)の位相変化を繰り返すパターンを渦配向パターンという。
【0066】
このような渦配向パターンは、第1液晶層34aの中心部20aの中心を原点とするrとφとの極座標において、φがφ
1である領域における光学軸40の角度θ
1[°]が式3aで表される。
式3a θ
1=α
1×φ
1+θ
0n1
ここで、θ
0n1[°]は、中心部20aおよび各円環部ごとのφ
1=0°における光学軸の方向である。
図8および
図11に示す例では、全ての中心部20aおよび円環部でθ
0n1=0°である。
中心部20aにおける光学軸40の角度θ
1の変化は、mを1以上の整数としたときに、式3aにおいて、α
1=m×0.5で表される。また、中心部20aからn番目の円環部における光学軸の角度θ
1の変化は、式3aにおいて、α
1=(m+n)×0.5で表される。
【0067】
mは上述の、中心部20aにおける位相変化の回数と同義であり、
図10および
図11に示す例では、m=1である。従って、中心部20aにおける式3aは、α
1=1×0.5=0.5から、θ
1=0.5×φ
1+0°となる。この式から、中心部20aにおける光学軸40の角度θ
1は、φ
1=0°の領域では、θ
1=0°であり、φ
1=90°の領域では、θ
1=45°であり、φ
1=180°の領域では、θ
1=90°であり、φ
1=270°の領域では、θ
1=135°であり、φ
1=360°の領域では、θ
1=180°と求められる。これは
図10に示す例と一致していることがわかる。
【0068】
また、
図11に示す例の第1円環部21aにおける式3aは、α
1=(1+1)×0.5=1から、θ
1=1×φ
1+0°となる。この式から、第1円環部21aにおける光学軸40の角度θ
1は、φ
1=0°の領域では、θ
1=0°であり、φ
1=90°の領域では、θ
1=90°であり、φ
1=180°の領域では、θ
1=180°であり、φ
1=270°の領域では、θ
1=270°であり、φ
1=360°の領域では、θ
1=360°と求められる。これは
図11に示す例の第1円環部21aと一致していることがわかる。
【0069】
同様に、
図11に示す例の第2円環部22aにおける式3aは、α
1=(1+2)×0.5=1.5から、θ
1=1.5×φ
1+0°となる。この式から、第2円環部22aにおける光学軸40の角度θ
1は、φ
1=0°の領域では、θ
1=0°であり、φ
1=90°の領域では、θ
1=135°であり、φ
1=180°の領域では、θ
1=270°であり、φ
1=270°の領域では、θ
1=405°=45°であり、φ
1=360°の領域では、θ
1=540°=180°と求められる。これは
図11に示す例の第2円環部22aと一致していることがわかる。
【0070】
n番目の円環部においても、光学軸40の角度θ1は式3aから求められる。
【0071】
本発明において、第1液晶層34aは、上記式3aで求められる光学軸の角度θ1を±3°の範囲で満たすものとするのが好ましい。
すなわち、第1液晶層の中心部の中心を原点とするrとφとの極座標において、φがφ1である領域における、第1液晶層の光学軸の角度θ1[°]が下記式3で表される関係を満たすパターンを渦配向パターンとしたとき、第1液晶層の中心部は、mを1以上の整数としたときに、α1=m×0.5である渦配向パターンを有し、第1液晶層の中心部からn番目の円環部は、α1=(m+n)×0.5である渦配向パターンを有する。
式3 {α1×φ1+θ0n1}-3°<θ1<{α1×φ1+θ0n1}+3°
(ただし、θ0n1[°]は、中心部および各円環部ごとのφ1=0°における光学軸の方向)
【0072】
一方、第2液晶層34bは、第1液晶層34aと同様に、円形の中心部と、中心部と中心を一致して、中心部の半径方向に設けられる内径の異なる複数の円環部とを有し、中心部および各円環部における周方向の位相変化が第1液晶層34aとは逆の渦配向パターンを有する。
【0073】
第2液晶層34bの渦配向パターンについて
図12を用いて説明する。
図12は、第2液晶層34bの一部を拡大して示す図であり、中心部20bおよび各円環部の位相を表す図である。
図12において、第2液晶層34b中の位相をグレースケールで表し、また、光学軸40の向きを重畳して示している。
【0074】
図12に示すように、中心部20bの周方向に反時計回りに見た際に、微小な領域における光学軸(液晶化合物)40の向きは、時計回りに回転している。図示例においては、中心部20bは、位相が2π(0)の位置から、中心部20bの周方向に1周する間に、光学軸40は第1液晶層34aとは逆方向に半回転、すなわち、位相が2πから0まで漸次、変化している。言い換えると、中心部20bにおいては、0から2πの位相変化を中心部20bの周方向に時計回りに生じている。
【0075】
図12に示すように、中心部20bから半径方向に向かって1番目の円環部(第1円環部)21bは、第1円環部21bの周方向に反時計回りに見た際に、微小な領域における光学軸40の向きが、時計回りに1回転している。すなわち、図示例においては、第1円環部21bは、位相が2πの位置から、第1円環部21bの周方向に1周する間に、2πから0の位相変化を2回繰り返している。すなわち、第1円環部21bにおける位相変化の回数は、中心部20bよりも1回多くなっている。また、第2液晶層34bの第1円環部21bにおける位相変化は、第1液晶層34aの第1円環部21aにおける位相変化とは逆向きである。言い換えると、第1円環部21bにおいては、0から2πの位相変化を第1円環部21bの周方向に時計回りに2回繰り返している。
【0076】
次いで、中心部20bから半径方向に向かって2番目の円環部(第2円環部)22bは、第2円環部22bの周方向に反時計回りに見た際に、微小な領域における光学軸40の向きが、時計回りに1.5回転している。すなわち、図示例においては、第2円環部22bは、位相が2πの位置から、第2円環部22bの周方向に1周する間に、2πから0の位相変化を3回繰り返している。すなわち、第2円環部22bにおける位相変化の回数は、第1円環部21bよりも1回多くなっている。また、第2液晶層34bの第2円環部22bにおける位相変化は、第1液晶層34aの第2円環部22aにおける位相変化とは逆向きである。言い換えると、第2円環部22bにおいては、0から2πの位相変化を第2円環部22bの周方向に時計回りに3回繰り返している。
【0077】
第2液晶層34bにおいて、中心部20bから半径方向に向かって3番目以降の円環部についても同様に、円環部の周方向に反時計回りに見た際に、位相が2πの位置から円環部の周方向に1周する間に、2πから0の位相変化を複数回繰り返しており、位相変化の繰り返し回数が内側に隣接する円環部よりも1回多くなっている。
【0078】
すなわち、
図12に示す第2液晶層34bにおいては、n番目の円環部は、位相変化をn+1回繰り返している。
【0079】
このように、第2液晶層34bは、中心部と複数の円環部とを有し、中心部および複数の円環部それぞれにおいて、第1液晶層34aにおける位相変化とは逆方向に位相変化を1回以上しており、n番目の円環部がn+m回(mは中心部における位相変化の回数)の位相変化を繰り返している。
【0080】
第1液晶層34aと同様に、このような渦配向パターンは、第2液晶層34bの中心部20bの中心を原点とするrとφとの極座標において、φがφ
2である領域における光学軸40の角度θ
2[°]が式4aで表される。
式4a θ
2=α
2×φ
2+θ
0n2
ここで、θ
0n2[°]は、中心部20bおよび各円環部ごとのφ
2=0°における光学軸の方向である。
図12に示す例では、全ての中心部20bおよび円環部でθ
0n2=0°である。
中心部20bにおける光学軸40の角度θ
2の変化は、mを1以上の整数としたときに、式4aにおいて、α
2=-(m×0.5)で表される。また、中心部20bからn番目の円環部における光学軸の角度θ
2の変化は、式4aにおいて、α
2=-(m+n)×0.5で表される。
【0081】
mは上述の、中心部20bにおける位相変化の回数と同義であり、
図12に示す例では、m=1である。従って、中心部20bにおける式4aは、α
2=-1×0.5=-0.5から、θ
2=-0.5×φ
2+0°となる。この式から、中心部20bにおける光学軸40の角度θ
2は、φ
2=0°の領域では、θ
2=0°(=180°)であり、φ
2=90°の領域では、θ
2=-45°(=135°)であり、φ
2=180°の領域では、θ
2=-90°(=90°)であり、φ
2=270°の領域では、θ
2=-135°(=45°)であり、φ
2=360°の領域では、θ
2=-180°(=0°)と求められる。これは
図12に示す例と一致していることがわかる。
【0082】
また、
図12に示す例の第1円環部21bにおける式4aは、α
2=-(1+1)×0.5=-1から、θ
2=1×φ
2+0°となる。この式から、第1円環部21bにおける光学軸40の角度θ
2は、φ
2=0°の領域では、θ
2=0°(=180°)であり、φ
2=90°の領域では、θ
2=-90°(=90°)であり、φ
2=180°の領域では、θ
2=-180°(=0°)であり、φ
2=270°の領域では、θ
2=-270°(=90°)であり、φ
2=360°の領域では、θ
2=-360°(=0°)と求められる。これは
図12に示す例の第1円環部21bと一致していることがわかる。
【0083】
同様に、
図12に示す例の第2円環部22bにおける式4aは、α
2=-(1+2)×0.5=-1.5から、θ
2=-1.5×φ
2+0°となる。この式から、第2円環部22bにおける光学軸40の角度θ
2は、φ
2=0°の領域では、θ
2=0°(=180°)であり、φ
2=90°の領域では、θ
2=-135°(=45°)であり、φ
2=180°の領域では、θ
2=-270°(=90°)であり、φ
2=270°の領域では、θ
2=-405°=-45°(=135°)であり、φ
2=360°の領域では、θ
2=-540°=-180°(=0°)と求められる。これは
図12に示す例の第2円環部22bと一致していることがわかる。
【0084】
n番目の円環部においても、光学軸40の角度θ2は式4aから求められる。
【0085】
本発明において、第2液晶層34bは、上記式4aで求められる光学軸の角度θ2を±3°の範囲で満たすものとするのが好ましい。
すなわち、第2液晶層の中心部の中心を原点とするrとφとの極座標において、φがφ2である領域における、第2液晶層の光学軸の角度θ2[°]が下記式4で表される関係を満たすパターンを渦配向パターンとしたとき、第2液晶層の中心部は、mを1以上の整数としたときに、α2=m×0.5である渦配向パターンを有し、第2液晶層の中心部からn番目の円環部は、α2=(m+n)×0.5である渦配向パターンを有する。
式4 {α2×φ2+θ0n2}-3°<θ2<{α2×φ2+θ0n2}+3°
(ただし、θ0n2[°]は、中心部および各円環部ごとのφ2=0°における光学軸の方向)
【0086】
このような渦配向パターンにおいて、α1、α2の絶対値は、周方向に反時計回りに見た際に光学軸40が回転する回数と一致する。また、α1、α2の正負が光学軸40が回転方向を表している。α1、α2を渦配向パターンの次数とする。
【0087】
次数αが0、0.5、1.0、1.5の場合の光学軸の変化をより詳細に示した例を
図13に示し、次数αが-0.5、1.0、1.5の場合の光学軸の変化をより詳細に示した例を
図14に示す。
【0088】
ここで、第1液晶層の中心部からn番目の円環部の内径rin-n1および外径rout-n1と、第2液晶層の中心部からn番目の円環部の内径rin-n2および外径rout-n2が、式1、式2で表される関係を満たすことが好ましい。
式1 0.9×rin-n1≦rin-n2≦1.1×rin-n1
式2 0.9×rout-n1≦rout-n2≦1.1×rout-n1
すなわち、第1液晶層34aと第2液晶層34bとを、中心部の中心を一致して厚さ方向に配列した際に、厚さ方向から見て、中心部同士、および、n番目の円環部同士がそれぞれ重複する。これにより、第1液晶層と第2液晶層との積層体がレンズとして機能する面積を維持することができる。
【0089】
第1液晶層の中心部からn番目の円環部の内径rin-n1および外径rout-n1と、第2液晶層の中心部からn番目の円環部の内径rin-n2および外径rout-n2とは、下記式1a、式2aで表される関係を満たすことがより好ましく、下記式1b、式2bで表される関係を満たすことがさらに好ましい。
式1a 0.95×rin-n1≦rin-n2≦1.05×rin-n1
式2a 0.95×rout-n1≦rout-n2≦1.05×rout-n1
式1b 0.975×rin-n1≦rin-n2≦1.025×rin-n1
式2b 0.975×rout-n1≦rout-n2≦1.025×rout-n1
【0090】
また、上記式3および式4から、第1液晶層34aの中心部20aおよびn番目の円環部における次数と、第2液晶層34bの中心部20bおよびn番目の円環部における次数とは同じである。すなわち、第1液晶層34aの中心部20aおよびn番目の円環部における位相変化の繰り返し回数と、第2液晶層34bの中心部20bおよびn番目の円環部における位相変化の繰り返し回数とは同じである。
【0091】
このような第1液晶層34a(第1レンズ12)および第2液晶層34b(第2レンズ14)を有する可変焦点レンズは、中心を軸にして、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの間の距離を変えることなく、第1液晶層34aと第2液晶層34bとを相対的に回転させることで、レンズとしての焦点距離を可変できる。
【0092】
この点を
図8および
図11に示す第1液晶層34aと、
図12に示す第2液晶層34bとを有する可変焦点レンズの例を用いて説明する。
第1液晶層34aの中心部20aのθ
1が0°(すなわち位相0)となる角度を第1液晶層34aの基準線とし、第2液晶層34bの中心部20bのθ
2が0°(すなわち位相0=2π)となる角度を第2液晶層34bの基準線として、第1液晶層34aの基準線と第2液晶層34bの基準線とのなす角度を、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの相対角度とする。なお、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの相対角度は、重ねて配置される第1液晶層34aおよび第2液晶層34bを第2液晶層34b側から見て、第1液晶層34aの基準線に対する第2液晶層34bの基準線の回転方向が反時計回りの方向を正とし、時計回りを負とし、-180°~180°で表す。
【0093】
第1液晶層34aと第2液晶層34bとの相対角度が0°の場合には、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの積層体としての位相は、
図15に概念的に表すような状態となる。
位相がこのような状態の場合、つまり、全面が位相0の場合には、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの積層体は、光を回折させることなく透過させる。
【0094】
また、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの相対角度が180°の場合には、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの積層体としての位相は、
図16に概念的に表すような状態となる。
位相がこのような状態の場合、つまり、位相分布が0かπか2πしかない場合にも、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの積層体は、光を回折させることなく透過させる。
【0095】
次に、一例として、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの相対角度が30°の場合には、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの積層体としての位相は、
図17に概念的に表すような状態となる。
【0096】
この位相状態は、中心部および各円環部に対応する領域それぞれにおいて、領域内の位相が一様になっており、隣接する領域とは位相が互いに異なるものとなる。すなわち、位相が異なる領域を同心円状に有する状態である。この位相状態を、中心から各方位の半径方向に見た際には、中心から外側に向かって位相が連続的に変化している。すなわち、
図12に示す例は、中心から外側に向かって光学軸が連続的に回転しながら変化しているパターンを有すると言える。光学軸が連続的に回転しながら変化する方向を配列軸とすると、
図12に示す例は、配列軸を中心から外側に向かう放射状に有する、と言える。
【0097】
光学軸が連続的に回転しながら変化するパターンを有する場合には、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの積層体に入射した円偏光は、配列軸に沿った方位方向に回折される。その際の回折方向は右円偏光と左円偏光とで逆になる。従って、
図17に示すように、配列軸を中心から外側に向かう放射状に有する位相状態の場合には、入射した一方の円偏光に対しては、
図19に示す例のように、光を集光する集光レンズ(凸レンズ)として作用し、他方の円偏光に対しては、
図21に示す例のように、光を発散する発散レンズ(凹レンズ)として作用する。
【0098】
また、例えば、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの相対角度が60°の場合には、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの積層体としての位相は、
図18に概念的に表すような状態となる。
【0099】
この位相状態は、
図17と同様に、中心部および各円環部に対応する領域それぞれにおいて、領域内の位相が一様になっており、隣接する領域とは位相が互いに異なるものとなる。すなわち、位相が異なる領域を同心円状に有する状態である。また、
図18に示す例は、中心から外側に向かって光学軸が連続的に回転しながら変化している、配列軸が放射状のパターンを有すると言える。
【0100】
また、
図18に示すように、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの相対角度を60°とした場合には、配列軸に沿った位相変化の周期、すなわち、光学軸が180°回転する1周期が相対角度30°の場合(
図17)よりも短くなっている。この1周期が短いほど光の回折角度が大きくなるため、光を集光する集光レンズとしての焦点距離は、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの相対角度が30°の場合よりも、60°の場合の方が短くなる。焦点距離は、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの相対角度が90°の場合に最も短くなる。
【0101】
このように、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの相対角度を変えることでレンズとして作用する積層体の焦点距離を変えることができる。例えば、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの積層体が集光レンズとして作用する円偏光に対しては、
図19に示すように、相対角度を変化させることで集光する焦点距離を変えることができる。第1液晶層34aと第2液晶層34bとの積層体が発散レンズとして作用する円偏光に対しては、相対角度を変化させることで発散する焦点距離を変えることができる。その際、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの相対角度を0°から90°の間で大きくするほど焦点距離を短くすることができる。また、相対角度90°から180°の間では、相対角度を大きくするほど焦点距離を長くすることができる。
【0102】
一方、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの相対角度が-60°の場合には、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの積層体としての位相は、
図20に概念的に表すような状態となる。
【0103】
この位相状態は、
図17と同様に、中心部および各円環部に対応する領域それぞれにおいて、領域内の位相が一様になっており、隣接する領域とは位相が互いに異なるものとなる。すなわち、位相が異なる領域を同心円状に有する状態である。また、
図20に示す例は、中心から外側に向かって光学軸が連続的に回転しながら変化している、配列軸が放射状のパターンを有すると言える。
【0104】
また、
図20に示すように、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの相対角度を-60°とした場合には、配列軸に沿った位相変化の向き、すなわち、配列軸に沿った光学軸の回転方向が、相対角度60°の場合とは逆になる。配列軸に沿った光学軸の回転方向が逆になると、入射する円偏光に対する、配列軸に沿った方位方向における回折方向が逆になる。従って、集光レンズとして作用する円偏光と発散レンズとして作用する円偏光とが相対角度が60°の場合とは逆になる。
【0105】
この場合も
図17および
図18の場合と同様に、光学軸が180°回転する1周期が短いほど光の回折角度が大きくなり、焦点距離は、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの相対角度が-30°の場合よりも、-60°の場合の方が短くなり、-90°の場合に最も短くなる。
【0106】
このように、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの相対角度をマイナス方向に変えるた場合も、レンズとして作用する積層体の焦点距離を変えることができる。例えば、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの積層体が発散レンズとして作用する円偏光(すなわち、相対角度をプラスにした場合に集光する円偏光)に対しては、
図21に示すように、相対角度を変化させることで発散する焦点距離を変えることができる。また、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの積層体が集光レンズとして作用する円偏光に対しては、相対角度を変化させることで集光する焦点距離を変えることができる。その際、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの相対角度を0°から-90°の間で大きくするほど焦点距離を短くすることができる。また、相対角度-90°から―180°(=180°)の間では、相対角度を大きくするほど焦点距離を長くすることができる。
【0107】
このような液晶層を有する第1レンズおよび第2レンズを有する可変焦点レンズ(モアレレンズ)は、2つの液晶層の厚さ方向の距離を変えることなく、相対的に回転することで焦点距離を可変にできるため、実質的にレンズとして作用する領域の大きさを2つの液晶層の大きさと略同等とすることができる。従って、薄型で、かつ、面内方向の大きさも小型で、焦点距離可変のレンズデバイスとすることができる。
【0108】
ここで、第1液晶層34a(第1レンズ12)と第2液晶層34b(第2レンズ14)とを相対的に回転させる機構としては特に制限はなく、電気モーター、超音波モーター、および、ラックアンドピニオン機構等の種々の公知の回転機構を適宜、利用可能である。
【0109】
また、回転機構は、各可変焦点レンズ10ごとに有していてもよいし、あるいは、
図23に示す例のように、複数の可変焦点レンズ10の第1レンズ12と第2レンズ14とを相対的に回転させる回転機構を有していてもよい。
【0110】
例えば、
図23に示すように、正方配置された各可変焦点レンズ10の第1レンズ12が、歯車付き支持部材210に支持されており、各歯車付き支持部材210の歯形を補助歯車212を介して噛み合わせて、端辺側の一列の歯車付き支持部材210をラックギヤ214で回転させる構成としてもよい。各歯車付き支持部材210は、円形の開口部を有する円環状の部材であり、周面に歯型が形成されている。歯車付き支持部材210は開口部に第1レンズ12が重複するように第1レンズ12を支持する。
【0111】
このような回転機構では、ラックギヤ214を平行移動させることで、多数の可変焦点レンズ10の第1レンズ12を回転させることができる。
【0112】
また、各歯車付き支持部材210を補助歯車212を介して噛み合わせているため、各歯車付き支持部材210(第1レンズ12)の回転方向を同じ方向とすることができる。
【0113】
なお、
図23に示す例においては、各歯車付き支持部材210を補助歯車212を介して噛み合わせる構成としたがこれに限定はされず、
図24に示す例のように各歯車付き支持部材210を直接、かみ合わせる構成としてもよい。その場合、噛み合っている歯車付き支持部材210(第1レンズ12)同士の回転方向が逆になるため、これらに支持されている可変焦点レンズ10の回転方向と焦点距離の変化方向とを互いに逆にすればよい。
【0114】
また、可変焦点レンズ10において、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの間の距離が長すぎると、第1液晶層34aの中心部および各円環部を透過した光の一部が、第2液晶層34bの対応する中心部および各円環部ではなく、他の領域に入射しやすくなってしまう。その場合には、可変焦点レンズ10は、上述したレンズ作用が適切に発現できないおそれがある。従って、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの間の距離は、第1液晶層34aと第2液晶層34bとを相対的に回転できる範囲で短いほど好ましい。
具体的には、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの間の距離は、10mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましく、0.1mm以下がさらに好ましい。
【0115】
また、第1液晶層34aおよび第2液晶層34bにおける中心部の直径、ならびに、各円環部の内径、外径、および、半径方向の幅等は特に制限はなく、可変焦点レンズ10として求められる焦点距離の範囲、レンズ径、光源のサイズ、および、使用デバイスのサイズ等に応じて適宜設定すればよい。
【0116】
第1液晶層34aおよび第2液晶層34bにおける中心部の直径、および、各円環部の半径方向の幅は、100mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、5mm以下がさらに好ましい。
【0117】
また、第1液晶層34aおよび第2液晶層34bにおける各円環部の半径方向の幅は、中心部から外側に向かって順に小さくなることが好ましい。これにより、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの相対角度をレンズ作用が生じる角度にした際の第1液晶層34aと第2液晶層34bとの積層体における位相状態において、前述の配列軸に沿った方向に、光学軸が180°回転する1周期が、中心から外側に向かって、漸次、短くなる。光の屈折の角度は、1周期が短いほど大きくなる。従って、1周期を中心から配列軸に沿って外側に向かって、漸次、短くすることにより、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの積層体による光の集束力または発散力をより向上でき、凸レンズまたは凹レンズとしての性能を向上できる。
【0118】
また、
図8、
図11、
図12等に記載の例では、第1液晶層34aおよび第2液晶層34bの中心部において、中心部の周方向に1周する間に、0から2πまでの位相変化を1回生じるものとした。すなわち、上述の式3および式4におけるα
1およびα
2を定めるためのmを1としたが、これに限定はされない。中心部における周方向の位相変化の回数、すなわち、mは2以上であってもよい。mが2以上の場合には、第1液晶層34aおよび第2液晶層34bのn番目の円環部における周方向の位相変化の回数は、m+n回となる。
【0119】
また、各円環部の次数αは、中心部から外側に向かって0.5刻みとしたが、これに限定はされず、1.0刻み、1.5刻み等であってもよい。また、隣接する円環部の次数の変化量が一定でなくてもよい。しかしながら、レンズとしての性能を高くできる点で、各円環部の次数αは、中心部から外側に向かって0.5刻みであることが好ましい。
【0120】
ここで、上述した例では、第1液晶層34aは、中心部20aにおいて光学軸が半径方向に平行になる方位方向と、各円環部において光学軸が半径方向に平行になる方位方向とがすべて一致している。また、第2液晶層34bは、中心部20bにおいて光学軸が半径方向に平行になる方位方向と、各円環部において光学軸が半径方向に平行になる方位方向とがすべて一致している。言い換えると、第1液晶層34aの中心部20aにおいて光学軸が半径方向に平行になる方位角を基準として、中心部からn番目の円環部において光学軸が半径方向に平行になる方位角をφn1とし、第2液晶層34bの中心部20bにおいて光学軸が半径方向に平行になる方位角を基準として、中心部からn番目の円環部において光学軸が半径方向に平行になる方位角をφn2とした際に、φn1=0°、および、φn2=0°を満たしている。
【0121】
しかしながら、本発明はこれに限定はされず、第1液晶層34aは、各円環部において光学軸が半径方向に平行になる方位角φn1がそれぞれ異なっていてもよい。また、第2液晶層34bは、各円環部において光学軸が半径方向に平行になる方位角φn2がそれぞれ異なっていてもよい。すなわち、例えば、第1液晶層34aにおいて、第1円環部におけるφn1=φ11、第2円環部におけるφn1=φ21、および、第3円環部におけるφn1=φ31…がそれぞれ異なっていてもよい。また、第2液晶層34bにおいて、第1円環部におけるφn2=φ12、第2円環部におけるφn2=φ22、および、第3円環部におけるφn2=φ32…がそれぞれ異なっていてもよい。
【0122】
また、第1液晶層34aおよび第2液晶層34bがそれぞれ、各円環部において光学軸が半径方向に平行になる方位角(φn1、φn2)がそれぞれ異なっている場合には、第1液晶層34aのn番目の円環部において光学軸が半径方向に平行になる方位φn1と、第2液晶層34bのn番目の円環部において光学軸が半径方向に平行になる方位φn2とがφn1=φn2を満たすことが好ましい。すなわち、例えば、第1液晶層34aの第1円環部におけるφ11と第2液晶層34bの第1円環部におけるφ12とが同じで、第1液晶層34aの第2円環部におけるφ21と第2液晶層34bの第2円環部におけるφ22とが同じで、第1液晶層34aの第3円環部におけるφ31と第2液晶層34bの第3円環部におけるφ32とが同じであることが好ましい。
【0123】
第1液晶層34aのn番目の円環部のφn1と、第2液晶層34bのn番目の円環部のφn2とがφn1=φn2を満たす構成とすることにより、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの相対角度を0°とした際に、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの積層体(レンズデバイス)が光を回折せずに透過するものとすることができる。すなわち、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの相対角度を変えることによって、第1液晶層34aと第2液晶層34bとの積層体(レンズデバイス)を集光レンズあるいは発散レンズとする状態と光を回折せずに透過する状態とを切り替えることができる。
【0124】
このような、第1液晶層34aと第2液晶層とを有する可変焦点レンズ10は、アキシコンレンズとして機能するものであってもよいし、球面レンズとして機能するものであってもよいし、非球面レンズとして機能するものであってもよい。
【0125】
可変焦点レンズ10がどのようなレンズとして機能するかは、第1液晶層34aおよび第2液晶層34bの各円環部の幅によって定まる。
【0126】
例えば、レンズデバイスをアキシコンレンズとして機能させる場合には、第1液晶層34aおよび第2液晶層34bの各円環部の幅を一定にすればよい。
また、レンズデバイスを球面レンズとして機能させる場合には、第1液晶層34aおよび第2液晶層34bの各円環部の幅を、最初の円環部の幅に対して1/2乗に反比例するように適宜決めればよい。
【0127】
<渦配向パターンを有する液晶層の形成方法>
渦配向パターンを有する液晶層は、液晶化合物を含む液晶組成物を、液晶化合物を所定の渦配向パターンに配向するための配向膜上に塗布して、液晶化合物由来の光学軸の向きを渦配向パターンに配向した液晶相を形成し、これを層状に固定して形成できる。
また、本発明において、液晶層は、多層塗布による形成されてもよい。多層塗布とは、先ず配向膜の上に1層目の液晶組成物を塗布、加熱、冷却後に紫外線硬化を行って液晶固定化層を作製した後、2層目以降はその液晶固定化層に重ね塗りして塗布を行い、同様に加熱、冷却後に紫外線硬化を行うことを、所望の厚みになるまで繰り返して、液晶層を形成する方法である。
【0128】
(支持体)
配向膜および光学異方性層を支持する支持体としては、配向膜および光学異方性層を支持できるものであれば、各種のシート状物(フィルム、板状物)が利用可能である。
なお、支持体は、回折する光に対する透過率が50%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、85%以上であるのがさらに好ましい。
【0129】
支持体の厚さには、制限はなく、レンズデバイスの用途および支持体の形成材料等に応じて、配向膜および液晶層を支持できる厚さを、適宜、設定すればよい。
支持体の厚さは、1~1000μmが好ましく、3~250μmがより好ましく、5~150μmがさらに好ましい。
【0130】
支持体は単層であっても、多層であってもよい。
単層である場合の支持体としては、ガラス、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリル、および、ポリオレフィン等からなる支持体が例示される。多層である場合の支持体の例としては、前述の単層の支持体のいずれかなどを基板として含み、この基板の表面に他の層を設けたもの等が例示される。
【0131】
(配向膜)
支持体の表面には配向膜が形成される。
配向膜は、液晶層を形成する際に、液晶化合物を所定の渦配向パターンに配向するための配向膜である。
【0132】
配向膜は、光配向性の素材に偏光または非偏光を照射して配向膜とした、いわゆる光配向膜が好適に利用される。すなわち、本発明においては、配向膜として、支持体上に、
光配向材料を塗布して形成した光配向膜が、好適に利用される。
偏光の照射は、光配向膜に対して、垂直方向または斜め方向から行うことができ、非偏光の照射は、光配向膜に対して、斜め方向から行うことができる。
【0133】
本発明に利用可能な配向膜に用いられる光配向材料としては、例えば、特開2006-285197号公報、特開2007-76839号公報、特開2007-138138号公報、特開2007-94071号公報、特開2007-121721号公報、特開2007-140465号公報、特開2007-156439号公報、特開2007-133184号公報、特開2009-109831号公報、特許第3883848号公報および特許第4151746号公報に記載のアゾ化合物、特開2002-229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002-265541号公報および特開2002-317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミドおよび/またはアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号および特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003-520878号公報、特表2004-529220号公報および特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、光架橋性ポリアミドおよび光架橋性ポリエステル、ならびに、特開平9-118717号公報、特表平10-506420号公報、特表2003-505561号公報、国際公開第2010/150748号、特開2013-177561号公報および特開2014-12823号公報に記載の光二量化可能な化合物、特にシンナメート化合物、カルコン化合物およびクマリン化合物等が、好ましい例として例示される。
中でも、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、光架橋性ポリアミド、光架橋性ポリエステル、シンナメート化合物、および、カルコン化合物は、好適に利用される。
【0134】
配向膜32の厚さには、制限はなく、配向膜32の形成材料に応じて、必要な配向機能を得られる厚さを、適宜、設定すればよい。
配向膜32の厚さは、0.01~5μmが好ましく、0.05~2μmがより好ましい。
【0135】
本発明において、渦配向パターンを形成するための配向膜の好適な露光方法は、配向膜を直接描画法で露光する方法である。
【0136】
図22に、配向膜を露光する露光装置の一例を概念的に表す図を示す。
図22に示す露光装置300は、光源302と、光源302から出射された光の偏光方向を変えるλ/2板304と、光路上に配置されたレンズ306と、XYステージ308と、を有する。この露光装置300は、直線偏光された光ビームを直接、配向膜上に合焦させて、合焦位置を走査して、配向膜に配向パターンを描画するものである。
【0137】
光源302は、レーザーおよび直線偏光板を備え、直線偏光を出射する。出射された直線偏光は、λ/2板304に入射される。λ/2板304は、回転可能に取り付けられており、XYステージ308のXY平面に対して垂直な軸の回りに回転可能となっている。λ/2板304は、XY平面に対して垂直な軸の回りに回転されて、入射した直線偏光の偏光方向を任意の方向に変換する。レンズ306は、λ/2板304を通過した直線偏光を、XYステージ308上に配置される配向膜32の表面に合焦させる。XYステージ308上には、配向膜32を有する支持体30が配置され、配向膜32(支持体30)をX方向および/またはY方向に移動させることで、配向膜32表面の光が合焦される位置を変化させる。すなわち、XYステージ308は、配向膜32表面に光を走査させる。
λ/2板304の回転、および、XYステージ308の移動は、例えば、コンピュータにより制御されて、配向膜32表面の光が合焦される位置と、光の偏光方向とを対応させることで、配向膜上に所望の渦配向パターンを形成する。
【0138】
光源302からの光ビームの照射、λ/2板304の回転、および、XYステージ308は、交互に行ってもよいし、同時に行ってもよい。すなわち、例えば、XYステージ308を駆動し、配向膜32を所定の位置に移動させ停止すると共に、λ/2板304を通過する直線偏光の偏光方向が所定の方向になるように回転させた後に、光源302から光ビームを照射して配向膜32表面の所定の位置を露光した後、光の照射を停止し、次に、再度、XYステージ308を駆動し、配向膜32を次の所定の位置(露光位置)に移動させ停止すると共に、λ/2板304を通過する直線偏光の偏光方向が所定の方向になるように回転させた後に、光源302から光ビームを照射して配向膜32表面の所定の位置を露光した後、光の照射を停止する。このようにXYステージ308の移動と光源302からの光ビームの照射とを交互に繰り返して、配向膜32の露光を間欠的に行うものであってもよい。
あるいは、XYステージ308を駆動して、配向膜32を所定の方向に移動させつつ、λ/2板304を回転させながら、光源302から光ビームを照射して配向膜32表面を連続的に露光するものであってもよい。
【0139】
あるいは、例えば、ある中心部あるいは円環部に対応する領域を、光源302から光ビームを照射しながら、XYステージ308を駆動して、照射位置をこの領域の周方向に移動させつつ、λ/2板を、周方向の位相変化の回数(光学軸の回転数)に応じて回転させて、この領域の露光を行い、このような露光を繰り返すことで、中心部あるいは円環部に対応する領域をそれぞれ露光するものであってもよい。
【0140】
照射する光の強度、露光時間等は、配向膜の形成材料等に応じて適宜設定すればよい。
単位面積あたりの露光量は、照射する光の強度と走査速度で調整することができる。配向膜32に配向性を与えるために十分な露光を行う観点から、100mJ/m2以上であることが好ましく、150mJ/m2であることがより好ましい。また、過剰な照射による配向性低下を防ぐ観点から、5J/m2以下であることが好ましく、3J/m2以下であることがより好ましい。
また、配向膜上において合焦される光ビームのスポット径は、所望の配向パターンを配向膜に付与することができる大きさであればよい。
【0141】
また、本発明においては、液晶層の微小な領域における光学軸の角度θ1、θ2が上述した式3および式4を満たす構成とするために、すなわち、上述した理想的な渦配向パターンを表す式3aおよび式4aで求められる光学軸の角度の±3°の範囲とするために、直接描画法による配向膜の露光の精度を高くすることが好ましい。そのため、本発明においては、直接描画法によって配向膜を露光する際に、支持体30または配向膜32に、位置合わせ用のマーカーを付与しておき、XYステージ308を駆動して、配向膜32の露光位置を所定の位置に合わせる際に、このマーカーをカメラで検出して、マーカーの位置情報を基にXYステージ308の座標を修正して位置合わせを行うことが好ましい。これにより、厳密な位置合わせを行うことができ、理想的な渦配向パターンに対して光学軸の角度のばらつきが小さい液晶層を形成できる渦配向パターンを配向膜に付与することができる。
【0142】
中心部および各円環部の周方向に走査する際の、直線偏光の偏光角度の変化量(λ/2板304の回転量)は45°以下が好ましい。細かく描画することで光学軸の変化速度を液晶材料の特性に依らず一定とすることができる。
【0143】
可動ステージの移動量は、中心部および各円環部の周方向の長さの5分の1以下であることが好ましい。細かく描画することで、光学軸の変化速度を液晶材料の特性に依らず一定とすることができる。
【0144】
可動ステージの移動量の要求精度は、可動ステージの移動量の5分の1以下であることが好ましく、10分の1以下であることがより好ましく、20分の1以下であることが特に好ましい。
【0145】
本発明においては、前述のようにマーカーをカメラで検出して、マーカーの位置情報を基にXYステージ308の座標を修正して位置合わせを行う好ましい。
XYステージ308に固定した配向膜32の位置座標および回転角度を定めるため、位置合わせに際しては、複数台のカメラを用いることが好ましい。複数台のカメラを用いることで、細かい位置合わせに必要な撮影倍率を維持したまま、配向膜32上の十分に離れた2点の位置座標を定めることができ、十分な位置座標および回転角度の精度を保って位置合わせを行うことができる。
【0146】
マーカーは、複数台のカメラで十分に離れた2点の位置を確認できるものであれば、単一のマーカーあっても複数のマーカーであってもよい。ここで十分に離れた2点とは、10mm以上であることが好ましく、30mm以上であることがより好ましく、50mm以上であることがさらに好ましく、80mm以上であることが特に好ましい。
また、複数台のカメラで、2点より多い位置を同時に確認することも好ましい。
【0147】
また、少なくとも1つの領域にマーカーを有するものであればよく、3つ以上の領域にマーカーを有することが好ましい。3つ以上の領域にマーカーを有することで、X方向に露光領域を挟む位置に設けられた2つのマーカーを用いて位置合わせを行うことができ、かつ、Y方向に露光領域を挟む位置に設けられた2つのマーカーを用いて位置合わせを行うことができるため、XYステージの座標をより正確に位置合わせすることができる。
【0148】
マーカーの形状は、十字、点、直線、円形、四角形状等の任意の形状とすることができる。また、マーカーは、集合体であってもよく、あるいは、格子状であってもよい。
【0149】
(液晶層)
液晶層34は、配向膜32の表面に形成される。
上述したように、液晶層は、液晶化合物を配向した液晶相を固定してなる、液晶層であり、渦配向パターンを有する液晶層である。
【0150】
<<液晶層の形成方法>>
液晶層は、液晶化合物を渦配向パターンに配向した液晶相を層状に固定して形成できる。
液晶相を固定した構造は、液晶相となっている液晶化合物の配向が保持されている構造であればよく、典型的には、重合性液晶化合物を液晶配向パターンに沿った配向状態としたうえで、紫外線照射、加熱等によって重合、硬化し、流動性が無い層を形成して、同時に、外場または外力によって配向形態に変化を生じさせることない状態に変化した構造が好ましい。
なお、液晶相を固定した構造においては、液晶相の光学的性質が保持されていれば十分であり、液晶層において、液晶化合物40は液晶性を示さなくてもよい。例えば、重合性液晶化合物は、硬化反応により高分子量化して、液晶性を失っていてもよい。
【0151】
液晶相を固定してなる液晶層の形成に用いる材料としては、一例として、液晶化合物を含む液晶組成物が挙げられる。液晶化合物は重合性液晶化合物であるのが好ましい。
また、液晶層の形成に用いる液晶組成物は、さらに界面活性剤、重合開始剤等を含んでいてもよい。
【0152】
--重合性液晶化合物--
重合性液晶化合物は、棒状液晶化合物であっても、円盤状液晶化合物であってもよい。
液晶層を形成する棒状の重合性液晶化合物の例としては、棒状ネマチック液晶化合物が挙げられる。棒状ネマチック液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、および、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類等が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
【0153】
棒状液晶化合物を重合によって配向を固定することがより好ましく、重合性棒状液晶化合物としては、Makromol. Chem., 190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開第95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1-272551号公報、同6-16616号公報、同7-110469号公報、同11-80081号公報、および、特願2001-64627号公報などに記載の化合物を用いることができる。さらに棒状液晶化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報および特開2007-279688号公報に記載のものも好ましく用いることができる。また、2種類以上の重合性液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0154】
重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、およびアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基がより好ましい。重合性基は種々の方法で、液晶化合物の分子中に導入できる。重合性液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1~6個、より好ましくは1~3個である。
【0155】
また、上記以外の重合性液晶化合物としては、特開昭57-165480号公報に開示されているようなコレステリック相を有する環式オルガノポリシロキサン化合物等を用いることができる。さらに、前述の高分子液晶化合物としては、液晶を呈するメソゲン基を主鎖、側鎖、あるいは主鎖および側鎖の両方の位置に導入した高分子、コレステリル基を側鎖に導入した高分子コレステリック液晶、特開平9-133810号公報に開示されているような液晶性高分子、および、特開平11-293252号公報に開示されているような液晶性高分子等を用いることができる。
【0156】
--円盤状液晶化合物--
円盤状液晶化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報や特開2010-244038号公報に記載のものを好ましく用いることができる。
なお、液晶層に円盤状液晶化合物を用いた場合には、液晶層において、液晶化合物40は厚さ方向に立ち上がっており、液晶化合物に由来する光学軸40Aは、円盤面に垂直な軸、いわゆる進相軸として定義される。
【0157】
また、液晶組成物中の重合性液晶化合物の添加量は、液晶組成物の固形分質量(溶媒を除いた質量)に対して、75~99.9質量%であるのが好ましく、80~99質量%であるのがより好ましく、85~90質量%であるのがさらに好ましい。
【0158】
液晶化合物としては、高い回折効率を得るために、屈折率異方性Δnの高い液晶化合物を好ましく用いることができる。
【0159】
--界面活性剤--
液晶層を形成する際に用いる液晶組成物は、界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤は、安定的に、または迅速に、液晶化合物の配向に寄与する配向制御剤として機能できる化合物が好ましい。界面活性剤としては、例えば、シリコ-ン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤が挙げられ、フッ素系界面活性剤が好ましく例示される。
【0160】
界面活性剤の具体例としては、特開2014-119605号公報の段落[0082]~[0090]に記載の化合物、特開2012-203237号公報の段落[0031]~[0034]に記載の化合物、特開2005-99248号公報の段落[0092]および[0093]中に例示されている化合物、特開2002-129162号公報の段落[0076]~[0078]および段落[0082]~[0085]中に例示されている化合物、ならびに、特開2007-272185号公報の段落[0018]~[0043]等に記載のフッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、などが挙げられる。
なお、界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
フッ素系界面活性剤として、特開2014-119605号公報の段落[0082]~[0090]に記載の化合物が好ましい。
【0161】
液晶組成物中における、界面活性剤の添加量は、液晶化合物の全質量に対して0.01~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましく、0.02~2質量%がさらに好ましい。
【0162】
--重合開始剤--
液晶組成物が重合性化合物を含む場合は、重合開始剤を含有しているのが好ましい。紫外線照射により重合反応を進行させる態様では、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。
光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、米国特許第2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、米国特許第2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)、ならびに、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
液晶組成物中の光重合開始剤の含有量は、液晶化合物の含有量に対して0.1~20質量%であるのが好ましく、0.5~12質量%であるのがさらに好ましい。
【0163】
--架橋剤--
液晶組成物は、硬化後の膜強度向上、耐久性向上のため、任意に架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては、紫外線、熱、および、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。
架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレートおよびエチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]および4,4-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネートおよびビウレット型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ならびに、ビニルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物などが挙げられる。また、架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いることができ、膜強度および耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋剤の含有量は、液晶組成物の固形分質量に対して、3~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。架橋剤の含有量が上記範囲内であれば、架橋密度向上の効果が得られやすく、液晶相の安定性がより向上する。
【0164】
--その他の添加剤--
液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、色材、および、金属酸化物微粒子等を、光学的性能等を低下させない範囲で添加することができる。
【0165】
液晶組成物は、液晶層を形成する際には、液体として用いられるのが好ましい。
液晶組成物は溶媒を含んでいてもよい。溶媒には、制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機溶媒が好ましい。
有機溶媒には、制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、および、エーテル類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、環境への負荷を考慮した場合にはケトン類が好ましい。
【0166】
液晶層を形成する際には、液晶層の形成面に液晶組成物を塗布して、液晶化合物を所定の液晶配向パターンに配向された液晶相の状態に配向した後、液晶化合物を硬化して、液晶層とするのが好ましい。
すなわち、配向膜32上に液晶層を形成する場合には、配向膜32に液晶組成物を塗布して、液晶化合物を所定の液晶配向パターンに配向した後、液晶化合物を硬化して、液晶相を固定してなる液晶層を形成するのが好ましい。
液晶組成物の塗布は、インクジェットおよびスクロール印刷等の印刷法、ならびに、スピンコート、バーコートおよびスプレー塗布等のシート状物に液体を一様に塗布できる公知の方法が全て利用可能である。
【0167】
塗布された液晶組成物は、必要に応じて乾燥および/または加熱され、その後、硬化され、液晶層を形成する。この乾燥および/または加熱の工程で、液晶組成物中の液晶化合物が所定の液晶配向パターンに配向すればよい。加熱を行う場合、加熱温度は、200℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。
【0168】
配向させた液晶化合物は、必要に応じて、さらに重合される。重合は、熱重合、および、光照射による光重合のいずれでもよいが、光重合が好ましい。光照射は、紫外線を用いるのが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2~50J/cm2が好ましく、50~1500mJ/cm2がより好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下または窒素雰囲気下で光照射を実施してもよい。照射する紫外線の波長は250~430nmが好ましい。
【0169】
液晶層の厚さには、制限はなく、液晶層の用途、および、液晶層の形成材料等に応じて、適宜、設定すればよい。
【0170】
液晶層において、微小な領域における面内レタデーション(Re)の値は、半波長すなわちλ/2であるのが好ましい。面内レタデーションは、領域内の屈折率異方性に伴う屈折率差Δnと液晶層の厚さとの積により算出される。ここで、液晶層における領域の屈折率異方性に伴う屈折率差とは、領域の面内における遅相軸の方向の屈折率と、遅相軸の方向に直交する方向の屈折率との差により定義される屈折率差である。すなわち、領域の屈折率異方性に伴う屈折率差Δnは、領域の面内において、光学軸の方向の液晶化合物の屈折率と、光学軸に垂直な方向の液晶化合物の屈折率との差に等しい。つまり、屈折率差Δnは、液晶化合物の屈折率差に等しい。
【0171】
液晶層において、複数の領域の面内レタデーションの値は、半波長であるのが好ましいが、波長が550nmである入射光に対する液晶層の複数の領域の面内レタデーションRe(550)=Δn550×dが下記式(3)に規定される範囲内であるのが好ましい。ここで、Δn550は、入射光の波長が550nmである場合の、領域の屈折率異方性に伴う屈折率差であり、dは、液晶層の厚さである。
200nm≦Δn550×d≦350nm・・・(3)
すなわち、液晶層の複数の領域の面内レタデーションRe(550)=Δn550×dが式(3)を満たしていれば、液晶層に入射した光の十分な量の円偏光成分を、配列軸方向に対して順方向または逆方向に傾いた方向に進行する円偏光に変換することができる。面内レタデーションRe(550)=Δn550×dは、225nm≦Δn550×d≦340nmがより好ましく、250nm≦Δn550×d≦330nmがさらに好ましい。
なお、上記式(3)は波長550nmである入射光に対する範囲であるが、波長がλnmである入射光に対する液晶層の複数の領域の面内レタデーションRe(λ)=Δnλ×dは下記式(3-2)に規定される範囲内であるのが好ましく、適宜設定することができる。
0.7×(λ/2)nm≦Δnλ×d≦1.3×(λ/2)nm・・・(3-2)
【0172】
また、液晶層における、複数の領域の面内レタデーションの値は、上記式(3)の範囲外で用いることもできる。具体的には、Δn550×d<200nmまたは350nm<Δn550×dとすることで、入射光の進行方向と同一の方向に進行する光と、入射光の進行方向とは異なる方向に進行する光に分けることができる。Δn550×dが0nmまたは550nmに近づくと入射光の進行方向と同一の方向に進行する光の成分は増加し、入射光の進行方向とは異なる方向に進行する光の成分は減少する。
【0173】
さらに、波長が450nmの入射光に対する液晶層の領域のそれぞれの面内レタデーションRe(450)=Δn450×dと、波長が550nmの入射光に対する液晶層の領域のそれぞれの面内レタデーションRe(550)=Δn550×dは、下記式(4)を満たすのが好ましい。ここで、Δn450は、入射光の波長が450nmである場合の、領域の屈折率異方性に伴う屈折率差である。
(Δn450×d)/(Δn550×d)<1.0・・・(4)
式(4)は、液晶層に含まれる液晶化合物が逆分散性を有していることを表している。すなわち、式(4)が満たされることにより、液晶層は、広帯域の波長の入射光に対応できる。
【0174】
なお、いわゆるλ/2板として機能するのは液晶層であるが、本発明においては、支持体および配向膜を一体的に備えた積層体がλ/2板として機能する態様を含む。
【0175】
ここで、液晶層は、厚さ方向において、液晶化合物(の光学軸)がねじれ配向していることが好ましい。「液晶化合物(光学軸)が厚さ方向にねじれ配向した」とは、液晶層の一方の主面から他方の主面に向かう厚さ方向に配列されている光学軸の向きが相対的に変化し一方向にねじれて配向された状態をいう。ねじれ性には、右ねじれ性および左ねじれ性があるが、回折させたい方向に応じて適用すればよい。なお、厚さ方向全体における光学軸のねじれは1回転未満、すなわちねじれ角は360°未満である。厚み方向における液晶化合物の捩れ角は10°から200°程度が好ましく、20°から180°程度がより好ましい。また、ねじれ方向が厚さ方向の途中で逆になってもよい。その場合もねじれ角は360°未満であり、厚み方向における液晶化合物の捩れ角は10°から200°程度が好ましく、20°から180°程度がより好ましい。コレステリック配向の場合には、捩れ角が360°以上であり特定の波長域の特定の円偏光を反射する選択反射性を有するものとなる。本明細書における「ねじれ配向」にはコレステリック配向を含まず、ねじれ配向を有する液晶層において選択反射性は生じない。
【0176】
厚さ方向にねじれ配向している液晶層は、液晶化合物が厚み方向に旋回して積み重ねられたねじれ構造を有し、液晶層の一方の主面側に存在する液晶化合物から他方の主面側に存在する液晶化合物までの合計の回転角が360°未満である。
【0177】
このように、液晶層を、厚さ方向において液晶化合物がねじれ配向している構成とするためには、液晶層を形成するための液晶組成物にキラル剤を含有させればよい。
【0178】
--キラル剤(光学活性化合物)--
キラル剤(カイラル剤)は液晶相の螺旋構造を誘起する機能を有する。キラル剤は、化合物によって誘起する螺旋の捩れ方向および螺旋誘起力(Helical twisting power:HTP)が異なるため、目的に応じて選択すればよい。
キラル剤としては、特に制限はなく、公知の化合物(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4-3項、TN(twisted nematic)、STN(Super Twisted Nematic)用キラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)、イソソルビド、および、イソマンニド誘導体等を用いることができる。
キラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物または面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファン、および、これらの誘導体が含まれる。キラル剤は、重合性基を有していてもよい。キラル剤と液晶化合物とがいずれも重合性基を有する場合は、重合性キラル剤と重合性液晶化合物との重合反応により、重合性液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、キラル剤から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性キラル剤が有する重合性基は、重合性液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であるのが好ましい。従って、キラル剤の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基またはアジリジニル基であるのが好ましく、不飽和重合性基であるのがより好ましく、エチレン性不飽和重合性基であるのがさらに好ましい。
また、キラル剤は、液晶化合物であってもよい。
【0179】
キラル剤が光異性化基を有する場合には、塗布、配向後に活性光線などのフォトマスク照射によって、発光波長に対応した所望のねじれ配向を形成することができるので好ましい。光異性化基としては、フォトクロッミック性を示す化合物の異性化部位、アゾ基、アゾキシ基、または、シンナモイル基が好ましい。具体的な化合物として、特開2002-80478号公報、特開2002-80851号公報、特開2002-179668号公報、特開2002-179669号公報、特開2002-179670号公報、特開2002-179681号公報、特開2002-179682号公報、特開2002-338575号公報、特開2002-338668号公報、特開2003-313189号公報、および、特開2003-313292号公報等に記載の化合物を用いることができる。
【0180】
液晶組成物における、キラル剤の含有量は、液晶化合物の含有モル量に対して0.01~200モル%が好ましく、1~30モル%がより好ましい。
【0181】
以上の液晶層は、いずれも、液晶化合物として、棒状液晶化合物を用いているが、本発明は、これに制限はされず、円盤状液晶化合物を用いることも可能である。
なお、円盤状液晶化合物の場合には、液晶化合物に由来する光学軸は、円盤面に垂直な軸、いわゆる進相軸として定義される。
また、本発明において、液晶層は、棒状液晶化合物と、円盤状液晶化合物とを組み合わせて用いてもよい。
【0182】
また、液晶層の平面形状は、円形状に限定はされず、矩形状、楕円形状、不定形状等、指向性切り替え照明装置の構成に応じて適宜設定すればよい。
【0183】
本発明の指向性切り替え照明装置は、表示パネルと組み合わせて画像表示装置とすることができる。
本発明の指向性切り替え照明装置を有する画像表示装置は、指向性切り替え照明装置が照射する光の指向性(拡散状態)を切り替えることで、画像表示装置の視野角を切り替えることができる。
【0184】
以上、本発明の指向性切り替え照明装置について詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
【符号の説明】
【0185】
10、101 可変焦点レンズ
12、102 第1レンズ
14、104 第2レンズ
20、20a、20b 中心部
21a、21b 第1円環部
22a、22b 第2円環部
30 支持体
32 配向膜
34a 第1液晶層
34b 第2液晶層
40 光学軸(液晶化合物)
100a、100b 指向性切り替え照明装置
105、205 レンズアレイ
106 光指向性制御部材
108 光源
210 歯車付き支持部材
212 補助歯車
214 ラックギヤ
300 露光装置
302 光源
304 λ/2板
306 レンズ
308 XYステージ