(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104610
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20240729BHJP
G01N 35/04 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G01N35/00 B
G01N35/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008924
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 佑太
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058BB02
2G058BB09
2G058BB18
2G058CC09
2G058CD11
2G058GA01
2G058GA11
(57)【要約】
【課題】平面サイズの小型化が可能な分析装置を提供する。
【解決手段】検体試料が点着される複数の分析チップが着脱自在に装填され、分析チップを用いて検体試料を分析する分析装置であって、複数の分析チップを予め設定された温度に温めるインキュベータであって、複数の分析チップを高さ方向に並べて収容可能な縦型ラックを有するインキュベータと、複数の分析チップに点着された検体試料を測定する測定ユニットと、を備えている分析装置。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体試料が点着される乾式の複数の分析チップが着脱自在に装填され、前記分析チップを用いて前記検体試料を分析する分析装置であって、
複数の前記分析チップを予め設定された温度に温めるインキュベータであって、複数の前記分析チップを高さ方向に並べて収容可能な縦型ラックを有するインキュベータと、
複数の前記分析チップに点着された前記検体試料を測定する測定ユニットと、を備えている
分析装置。
【請求項2】
前記縦型ラックは、複数の前記分析チップを1つずつ載置する複数の棚を有する
請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
平面視した場合において、前記分析チップに前記検体試料が点着される点着位置と、前記測定ユニットによって前記分析チップが測定される測定位置とは、前記縦型ラックの外側に並べて配置されている
請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記縦型ラックは、前記点着位置および前記測定位置に対して前記高さ方向に相対的に移動可能である
請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
平面視した場合において、前記点着位置は、前記縦型ラックに対して第1方向に並べて配置されており、かつ、前記測定位置は、前記縦型ラックに対して前記第1方向と交差する第2方向に並べて配置されている
請求項3に記載の分析装置。
【請求項6】
前記点着位置および前記測定位置のうちの少なくとも1つは、前記インキュベータ内に配置されている
請求項3に記載の分析装置。
【請求項7】
前記点着位置から、前記縦型ラック内に前記分析チップを送る第1送り機構と、
前記縦型ラック内から、前記測定位置に前記分析チップを送る第2送り機構と、
測定済みの前記分析チップを廃却位置に送る廃却機構と、を備えている
請求項3に記載の分析装置。
【請求項8】
前記縦型ラック内から、前記検体試料が点着前に予熱された前記分析チップを前記点着位置に戻す戻し機構を備えている
請求項7に記載の分析装置。
【請求項9】
前記測定ユニットは、前記検体試料と試薬との反応状態を光学的に測定する第1測定ユニットと、前記検体試料に含まれる電解質濃度を、電極を用いて測定する第2測定ユニットとを有しており、
前記分析チップは、前記第1測定ユニットによって測定される第1分析チップと、前記第2測定ユニットによって測定される第2分析チップとが含まれる
請求項1に記載の分析装置。
【請求項10】
前記インキュベータとして、前記第1分析チップを温める第1インキュベータと、前記第2分析チップを温める第2インキュベータの2つのインキュベータを有する
請求項9に記載の分析装置。
【請求項11】
前記インキュベータは、前記第1分析チップと前記第2分析チップの両方を温める1つのインキュベータであり、
前記第1分析チップと前記第2分析チップのそれぞれを異なる目標温度に温める温度調節機構を備えている
請求項9に記載の分析装置。
【請求項12】
前記第1測定ユニットによる測定において前記反応状態の比較の基準となる参照光学濃度を有する光学濃度板を有しており、
前記縦型ラックの高さ方向の両端部の少なくとも一方に前記光学濃度板が収容される
請求項9に記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検体試料が点着される分析チップを用いて、検体試料を分析する分析装置が知られている(例えば特許文献1参照)。検体試料の分析としては、検体試料と試薬との反応状態を測定することにより、検体試料に含まれる検査対象物質の濃度測定などが行われる。検体試料は、例えば血液および尿などである。分析チップは一例として、固相の試薬を用いた乾式の分析チップである。
【0003】
分析装置は、好適な測定条件を確保するために複数の分析チップを温めるインキュベータを備えている。インキュベータは、例えば、複数の分析チップを保持する複数のセルが円周方向に配列された回転テーブルを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなインキュベータを有する分析装置では、回転テーブル上において複数のセルが水平方向に配列されるため、分析装置を平面視した場合の平面サイズが大型化してしまう懸念があった。平面サイズが大きいと、医療施設および研究施設などにおいて、分析装置の設置スペースを確保する際の障害になりやすいため、平面サイズの小型化が求められていた。
【0006】
本開示の技術は、平面サイズの小型化が可能な分析装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の技術に係る第1の態様は、検体試料が点着される乾式の複数の分析チップが着脱自在に装填され、分析チップを用いて検体試料を分析する分析装置であって、複数の分析チップを予め設定された温度に温めるインキュベータであって、複数の分析チップを高さ方向に並べて収容可能な縦型ラックを有するインキュベータと、複数の分析チップに点着された検体試料を測定する測定ユニットと、を備えている分析装置である。
【0008】
本開示の技術に係る第2の態様は、縦型ラックは、複数の分析チップを1つずつ載置する複数の棚を有する第1の態様に係る分析装置である。
【0009】
本開示の技術に係る第3の態様は、平面視した場合において、分析チップに検体試料が点着される点着位置と、測定ユニットによって分析チップが測定される測定位置とは、縦型ラックの外側に並べて配置されている第2の態様に係る分析装置である。
【0010】
本開示の技術に係る第4の態様は、縦型ラックは、点着位置および測定位置に対して高さ方向に相対的に移動可能である第3の態様に係る分析装置である。
【0011】
本開示の技術に係る第5の態様は、平面視した場合において、点着位置は、縦型ラックに対して第1方向に並べて配置されており、かつ、測定位置は、縦型ラックに対して第1方向と交差する第2方向に並べて配置されている第3の態様に係る分析装置である。
【0012】
本開示の技術に係る第6の態様は、点着位置および測定位置のうちの少なくとも1つは、インキュベータ内に配置されている第3の態様に係る分析装置である。
【0013】
本開示の技術に係る第7の態様は、点着位置から、縦型ラック内に分析チップを送る第1送り機構と、縦型ラック内から、測定位置に分析チップを送る第2送り機構と、測定済みの分析チップを廃却位置に送る廃却機構と、を備えている第3の態様に係る分析装置である。
【0014】
本開示の技術に係る第8の態様は、縦型ラック内から、検体試料が点着前に予熱された分析チップを点着位置に戻す戻し機構を備えている第7の態様に係る分析装置である。
【0015】
本開示の技術に係る第9の態様は、測定ユニットは、検体試料と試薬との反応状態を光学的に測定する第1測定ユニットと、検体試料に含まれる電解質濃度を、電極を用いて測定する第2測定ユニットとを有しており、分析チップは、第1測定ユニットによって測定される第1分析チップと、第2測定ユニットによって測定される第2分析チップとが含まれる第1の態様に係る分析装置である。
【0016】
本開示の技術に係る第10の態様は、インキュベータとして、第1分析チップを温める第1インキュベータと、第2分析チップを温める第2インキュベータの2つのインキュベータを有する第9の態様に係る分析装置である。
【0017】
本開示の技術に係る第11の態様は、インキュベータは、第1分析チップと第2分析チップの両方を温める1つのインキュベータであり、第1分析チップと第2分析チップのそれぞれを異なる目標温度に温める温度調節機構を備えている第9の態様に係る分析装置である。
【0018】
本開示の技術に係る第12の態様は、第1測定ユニットによる測定において反応状態の比較の基準となる参照光学濃度を有する光学濃度板を有しており、縦型ラックの高さ方向の両端部の少なくとも一方に光学濃度板が収容される第9の態様に係る分析装置である。
【発明の効果】
【0019】
本開示に係る技術は、平面サイズの小型化が可能な分析装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態の分析装置の全体構成の一例を示す概要図である。
【
図3】比色チップの構造例を示す外観斜視図である。
【
図4】電解質チップの構造例を示す外観斜視図である。
【
図5】分析装置の部分構成の一例を示す平面図である。
【
図6】インキュベータの構成例を示す断面図である。
【
図8】分析装置の部分構成の一例を示す平面図である。
【
図9】インキュベータの構成例を示す断面図である。
【
図10】分析装置の部分構成の一例を示す平面図である。
【
図11】分析装置の部分構成の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本開示の実施形態を詳細に説明する。
【0022】
<第1実施形態>
図1は一実施形態の分析装置100の全体構成を示す概要図であり、
図2は分析装置100の部分構成の一例の斜視図である。
一例として
図1及び
図2に示すように、分析装置100は、検体試料を分析する分析装置である。分析装置100には、分析チップ12が着脱自在に装填される。分析装置100では、例えば、乾式の分析チップ12が用いられ、検体試料に含まれる検査対象物質の濃度が測定される。分析チップ12は、平板状の形態をしている場合はスライドなどとも呼ばれる。分析装置100は、本開示の技術に係る「分析装置」の一例である。
【0023】
具体的には、分析装置100では、検体試料として血液が用いられ、血液に含まれる検査対象物質の濃度が光学的に測定される。より具体的には、比色法により検査対象物質の濃度が測定される。また、分析装置100では、検体試料として血液又は尿が用いられ、血液又は尿に含まれる電解質の濃度を測定する。具体的には、血液又は尿に含まれる電解質が電離したイオン(例えば、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、又は塩素(Cl)の各イオン)の濃度が電気的に測定される。より具体的には、電極法により測定対象となるイオン濃度が測定される。
【0024】
分析装置100は、チップセット部10、読取機20、検体点着部30、第1チップ搬送機構40、検体点着機構50、インキュベータ60、光学測定部70、電位測定部76、電位測定用インキュベータ75、第2チップ搬送機構80、及び制御装置90を備える。
【0025】
チップセット部10には、保持台11上に分析チップ12を収容するストッカー14が配置されている。ストッカー14には、複数の分析チップ12が積み重ねて収容される。分析チップ12には、比色法による光学的な濃度測定に用いられる分析チップ12A(以下単に、「比色チップ12A」とも称する)、及び電極法による電解質濃度の測定に用いられる分析チップ12B(以下単に、「電解質チップ12B」とも称する)が含まれる。以下において、比色チップ12Aと電解質チップ12Bとを区別する必要が無い場合は、両者を総称して分析チップ12と呼ぶ。分析チップ12の詳細については後述する。分析チップ12は、本開示の技術に係る「分析チップ」の一例である。比色チップ12Aは、本開示の技術に係る「第1分析チップ」の一例であり、電解質チップ12Bは、本開示の技術に係る「第2分析チップ」の一例である。
【0026】
読取機20は、一例として、分析チップ12に付与されている項目情報を読み取るコードリーダである。これにより、分析チップ12の種類、及び/又はロット番号等が識別される。読取機20は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)及びCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などのイメージセンサで構成される。読取機20によって読み取られた項目情報は制御装置90に出力される。
【0027】
検体点着部30では、分析チップ12に血漿、全血、血清あるいは尿などの検体試料の点着が行われる。検体点着部30には、チップ支持台31が設けられており、チップ支持台31上に搬送された分析チップ12への検体試料の点着が、チップ支持台31上にて行われる。検体試料の点着は、後述の検体点着機構50によって行われる。チップ支持台31は、保持台11に隣接して配置されている。
【0028】
第1チップ搬送機構40は、分析チップ12をチップセット部10から検体点着部30へ搬送し、さらに検体点着部30からインキュベータ60に搬送する。また、第1チップ搬送機構40は、検体点着部30からインキュベータ60を通過して、電位測定用インキュベータ75へ分析チップ12を搬送する。第1チップ搬送機構40は、薄板状のチップ搬送部材42と、チップ搬送部材42をチップセット部10、検体点着部30及びインキュベータ60の並び方向に往復移動させる駆動機構44とを備える。駆動機構44は例えば、リニアアクチュエータである。チップ搬送部材42は、図示しないガイドロッドにより摺動自在に支持され、駆動機構44によって往復移動される。第1チップ搬送機構40は、本開示の技術に係る「第1送り機構」の一例である。
【0029】
検体点着機構50は、ノズル52及び図示しない吸引吐出機構とノズル52を移動する移動機構とを備える。検体点着機構50は、図示しない検体収容部から検体試料を吸引し、検体点着部30において分析チップ12に検体を点着する。
【0030】
インキュベータ60は、複数の分析チップ12を内部に収容することが可能である。インキュベータ60は、高さ方向に長手方向を有する直方体形状の筐体60Aと、筐体60Aの内部に設けられた縦型ラック60Bとを有している。縦型ラック60Bは、複数の分析チップ12を高さ方向(
図2に示すZ方向)に並べて収容可能としている。例えば、縦型ラック60Bは、複数の棚61A~61Fを有する。棚61A~61Fの上には、分析チップ12が1つずつ載置される。以下の説明では、複数の棚61A~61Fを特に区別する必要が無い場合、単に「棚61」とも称する。縦型ラック60Bは、本開示の技術に係る「縦型ラック」の一例であり、複数の棚61A~61Fは、本開示の技術に係る「複数の棚」の一例である。
【0031】
なお、ここでは、棚61A~61Fのみを図示しているが、実際には、棚61の数は、縦型ラック60Bの大きさ、移動範囲及び検査効率等を考慮して適宜設定される。例えば、棚61の数は、12個である。
【0032】
また、縦型ラック60Bは、高さ方向に移動可能とされている。縦型ラック60Bは、高さ方向に長手方向を有する支柱62に取り付けられており、支柱62に沿って移動可能とされている。縦型ラック60Bは、駆動機構64からの動力を受けて、支柱62によってガイドされながら、高さ方向に移動する。これにより、棚61に載置された分析チップ12の高さ方向における位置が変更される。
【0033】
インキュベータ60は、内部にヒータ66(
図6参照)を有しており、インキュベータ60内の少なくとも分析チップ12が収容されている部分を予め設定された目標温度に温める機能を有する。また、インキュベータ60は、分析チップ12を目標温度に保つ機能も有する。より具体的には、インキュベータ60は、分析チップ12において検体試料が点着される領域の周囲の雰囲気を目標温度に保つ。目標温度は、例えば、37℃である。なお、目標温度は、分析チップ12の種類によって異なる場合がある。インキュベータ60内の分析チップ12を予め設定された目標温度に温め、かつ分析チップ12を目標温度に保つことにより、インキュベータ60は、分析チップ12の試薬と検体試料との反応を促進させる。インキュベータ60は、本開示の技術に係る「インキュベータ」及び「第1インキュベータ」の一例である。
【0034】
光学測定部70は、分析チップ12に対して比色法を用いた光学濃度の測定である比色測定を行うユニットである。また、電位測定部76は、分析チップ12に対して電極法を用いた電解質濃度の測定である電解質測定を行うユニットである。光学測定部70及び電位測定部76の詳細については後述する。光学測定部70及び電位測定部76は、本開示の技術に係る「測定ユニット」の一例である。光学測定部70は、本開示の技術に係る「第1測定ユニット」であり、電位測定部76は、本開示の技術に係る「第2測定ユニット」の一例である。
【0035】
電位測定用インキュベータ75は、電位測定部76による電位測定のために分析チップ12を収容する。電位測定用インキュベータ75は、インキュベータ60と同様に、電位測定用インキュベータ75内の少なくとも分析チップ12が収容されている部分を予め設定された目標温度に温める機能を有する。また、電位測定用インキュベータ75は、分析チップ12を目標温度に保つ機能も有する。より具体的には、電位測定用インキュベータ75は、分析チップ12において検体試料が点着される領域の周囲の雰囲気を目標温度に保つ。目標温度は、例えば、30℃である。電位測定用インキュベータ75は、本開示の技術に係る「第2インキュベータ」の一例である。
【0036】
第2チップ搬送機構80は、インキュベータ60の外部に設けられており、インキュベータ60の内部にある分析チップ12を搬送する。第2チップ搬送機構80は、縦型ラック60Bの棚61に載置された分析チップ12を光学測定部70によって測定するための測定位置60C1まで搬送する。また、第2チップ搬送機構80は、測定位置60C1から棚61へ分析チップ12を搬送する。すなわち、第2チップ搬送機構80は、第1チップ搬送機構40における分析チップ12の搬送方向(
図2に示すY方向に沿った方向)と交差する方向(
図2に示すX方向に沿った方向)に分析チップ12を搬送する。第2チップ搬送機構80は、本開示の技術に係る「第2送り機構」の一例である。
【0037】
第2チップ搬送機構80は、薄板状のチップ搬送部材82と、チップ搬送部材82を往復移動させる駆動機構84(
図5参照)とを備える。駆動機構84は、例えば、リニアアクチュエータである。チップ搬送部材82は、図示しないガイドロッドにより摺動自在に支持され、駆動機構84によって往復移動される。第2チップ搬送機構80の具体的な構成については後述する。
【0038】
制御装置90は、分析装置100の全体の動作を制御する。制御装置90の構成は特に限定されないが、例えば、制御装置90は、CPU(Central Processing Unit)、NVM(Non-volatile Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などによって構成されるプロセッサ90Aを含むコンピュータによって実現される。
【0039】
上述したように、分析チップ12は、比色チップ12Aと電解質チップ12Bと含んでいる。
図3は比色チップ12Aの構造例を示す外観斜視図である。一例として
図3に示すように、比色チップ12Aは、試薬が固定された反応領域13を有している。試薬は、検査対象物質と反応することにより、特定の色に発色する物質を生成する。この反応によって発色する物質を、以下において反応物質と呼ぶ。試薬としては、例えば、少なくとも出荷時においては乾燥状態となる固相の乾式試薬が用いられる。検体試料は、比色チップ12Aの反応領域13に点着される。
【0040】
比色チップ12Aは、検体試料が点着される担体16を有しており、担体16はケース17に収容されている。ケース17は、第1ケース17Aおよび第2ケース17Bで構成されており、第1ケース17Aと第2ケース17Bとにより、担体16を挟み込むようにして収容する。第1ケース17Aに、検体試料を反応領域13に点着するための滴下口として機能する開口17Cが形成されている。第2ケース17Bには、反応領域13に光を照射するための開口17Dが形成されている。比色チップ12Aの表面を構成する第1ケース17Aの開口17Cに担体16は露呈される。また、比色チップ12Aの裏面を構成する第2ケース17Bの開口17Dに担体16は露呈される。担体16の開口17Dに露呈される領域が、試薬が固定された反応領域13を構成している。また、第2ケース17Bには、測定項目に関する項目情報が符号化された情報コード17Eとして付与されている。情報コード17Eは、例えば、複数のドットが配列されたパターンであり、測定項目毎にドットの配列パターンが異なっている。もちろん、情報コード17Eとしては、一次元バーコード及び二次元バーコードなどを用いてもよい。
【0041】
検体試料と反応させる試薬を変化させることで、検体試料に対する複数の測定項目の分析が可能となる。測定項目毎に複数の比色チップ12Aが用意されており、比色チップ12Aには測定項目に応じた試薬が担体16に固定されている。比色チップ12A毎に付与されている項目情報は、その比色チップ12Aの担体16に固定された試薬の識別情報(例えば、試薬名及び識別コードを特定可能な情報)、又はその試薬によって測定される測定項目の識別情報(例えば、項目名及び識別コードを特定可能な情報)を含んでいる。
【0042】
図4は電解質チップ12Bの構造例を示す外観斜視図である。
一例として
図4に示すように、電解質チップ12Bは、ケース15の内部に測定対象となるイオン(例えば、Naイオン、Kイオン、及びClイオン)に応じた多層フィルム電極(図示省略)及び分配部材(図示省略)を有している。ケース15は、第1ケース15Aおよび第2ケース15Bで構成されており、第1ケース15Aと第2ケース15Bとにより、多層フィルム電極及び分配部材を挟み込むようにして収容する。第1ケース15Aには、2つの開口15Cが設けられている。一方の開口15Cには、検体試料が点着され、他方の開口15Cには、参照液が点着される。分配部材によって検体試料は多層フィルム電極の一端に運ばれ、一方、参照液は多層フィルム電極の他端に運ばれる。
【0043】
第2ケース15Bには、多層フィルム電極の数に応じた穴15Dが形成されている。穴15Dを介して多層フィルム電極の一端及び他端に測定用の電極(図示省略)が多層フィルム電極に接触可能とされている。
図4に示す例では、6つの穴15D1~15D6が形成されている。例えば、穴15D1及び15D2は、それぞれClイオン濃度測定用の多層フィルム電極の一端及び他端に通じている。また、穴15D3及び15D4は、それぞれKイオン濃度測定用の多層フィルム電極の一端及び他端に通じている。さらに、穴15D5及び15D6は、それぞれNaイオン濃度測定用の多層フィルム電極の一端及び他端に通じている。
【0044】
また、第2ケース15Bには、測定項目に関する項目情報が符号化された情報コード15Eとして付与されている。情報コード15Eは、比色チップ12Aに付与された情報コード17Eと同様な構成、及び機能を有する。
【0045】
図5~
図9を用いて、ストッカー14に収容されている分析チップ12の搬送、検体試料の点着、測定、及び廃却までの一例の手順を説明する。
図5及び
図8は、分析装置100の部分構成の一例を示す平面図であり、
図6及び
図9はインキュベータ60及び電位測定用インキュベータ75の構成例を示す断面図であり、
図7は縦型ラック60Bの動作例を示す概念図である。
一例として
図5に示すように、第1チップ搬送機構40によるストッカー14からインキュベータ60への分析チップ12の搬送はチップ搬送部材42によって行われる。まず、ストッカー14内において積層されている分析チップ12のうち、最下段に収容されている分析チップ12にチップ搬送部材42が押し当てられる。この状態で、チップ搬送部材42がインキュベータ60側に移動することによって、分析チップ12は、チップ搬送機構40によってストッカー14から取り出される。そして、分析チップ12は、チップ支持台31上の点着位置31Aへ搬送される。点着位置31Aは、分析装置100を平面視した場合(すなわち、
図5に示すZ方向に沿った方向で見た場合)に、縦型ラック60Bの外側に並べて配置されている。すなわち、点着位置31Aは、分析装置100を平面視した場合に、縦型ラック60Bと隣り合う位置に設けられている。点着位置31Aにおいて、検体点着部30によって分析チップ12に検体が点着される。点着位置31Aは、本開示の技術に係る「点着位置」の一例である。分析チップ12に点着がされた後、分析チップ12は、チップ搬送部材42によって押し込まれることにより、インキュベータ60内へ搬送される。インキュベータ60内の縦型ラック60Bには、複数の棚61が設けられており、点着位置31Aからインキュベータ60への分析チップ12の搬送は、縦型ラック60Bの高さを変更しながら、各棚61へ行われる。
【0046】
インキュベータ60内に搬送された分析チップ12は、縦型ラック60Bの棚61に載置される。実際には複数の棚61に対してそれぞれ分析チップ12が載置されるが、説明の便宜上、
図5に示す例では、複数の棚61のうちの1つの棚61Cにだけ比色チップ12Aが載置されている。インキュベータ60の内部は、予め設定された温度(例えば、37℃)とされている。
【0047】
縦型ラック60Bにおいて、複数の棚61の各々は、チップ押圧部材68を備えている。チップ押圧部材68は、棚61に載置された分析チップ12を押圧する部材である。チップ押圧部材68は、分析チップ12と対向する位置に設けられ、棚61に向かって付勢されている。これにより、分析チップ12が棚61に押し付けられるので、棚61において分析チップ12の位置がずれることが抑制される。また、チップ押圧部材68は、分析チップ12の反応領域13(
図3参照)を覆うことで、点着された検体試料の揮発を抑制する。
【0048】
分析チップ12のうち比色チップ12Aを、インキュベータ60から測定位置60C1へ搬送する際には、縦型ラック60Bの高さを変更することにより、測定対象の比色チップ12Aが載置される棚61の高さを測定位置60C1の高さに合わせる。
図5に示す例のように棚61Cに測定対象の比色チップ12Aが載置されている場合には、棚61Cの高さを測定位置60C1の高さに合わせる。この状態で、棚61Cに載置された比色チップ12Aは、第2チップ搬送機構80によって測定位置60C1まで搬送される。第2チップ搬送機構80は、チップ搬送部材82を備えている。チップ搬送部材82は、比色チップ12Aとの当接により、縦型ラック60Bから測定位置60C1に向けて比色チップ12Aを送り込み、かつ、比色チップ12Aとの当接により、測定位置60C1から縦型ラック60Bに向けて比色チップ12Aを引き戻す部材である。
【0049】
具体的には、チップ搬送部材82は、軸部82Aと、第1当接部82Bと、第2当接部82Cとを備えている。軸部82Aは、棒状部材であり、軸部82Aの側面には図示しないラックギアが形成されている。軸部82Aに形成されたラックギアが、駆動機構84のモータ84Aと係合することで、チップ搬送部材82が
図5においてX方向に沿って移動する。X方向は、インキュベータ60と測定位置60C1との間で比色チップ12Aが搬送される搬送方向である。軸部82Aは、インキュベータ60内において、縦型ラック60Bが高さ方向に移動する場合に縦型ラック60Bと干渉しない位置(例えば、平面視した場合に縦型ラック60Bよりも外側の位置)に配置されている。
【0050】
第1当接部82B及び第2当接部82Cは、軸部82Aの同じ側面から、軸部82Aと直交するY方向に突出した部位である。第1当接部82Bは、軸部82Aの先端に設けられており、第2当接部82Cは、第1当接部82Bよりも予め定めた距離離れた位置に設けられている。具体的には、第1当接部82Bと第2当接部82Cとの間隔は、棚61のX方向の幅よりも僅かに大きい。これにより、
図5に示すように、第1当接部82Bと第2当接部82Cとによって比色チップ12AをX方向の両側から挟み込む態様で、チップ搬送部材82を配置することができる。また、第1当接部82Bと第2当接部82Cとの間隔は棚61の幅よりも大きいため、第1当接部82Bと第2当接部82Cとは、平面視した場合に縦型ラック60Bよりも外側の位置に配置することが可能となる。このため、縦型ラック60Bが高さ方向に移動する場合でも、縦型ラック60Bが、第1当接部82B及び第2当接部82Cと干渉することが防止される。
【0051】
第2当接部82Cは、比色チップ12AのX方向における一方の側面と当接することで、比色チップ12AをX方向の他方側に移動させることにより、比色チップ12Aを棚61から測定位置60C1に送り込む。また、第1当接部82Bは、比色チップ12AのX方向における他方の側面と当接することで、比色チップ12AをX方向の一方側に移動させることにより、比色チップ12Aを測定位置60C1から棚61へ引き戻す。
【0052】
また、チップ搬送部材82を平面視した場合は、第1当接部82B及び第2当接部82Cと、軸部82Aのうち第1当接部82B及び第2当接部82Cの間に位置する部分とによって、比色チップ12Aの三辺が取り囲まれる。軸部82Aのうち第1当接部82B及び第2当接部82Cの間に位置する部分は、比色チップ12Aを点着位置31Aから棚61に向けて搬送する搬送路と交差する方向に位置する。そのため、軸部82Aは、第1当接部82B及び第2当接部82Cの間が、比色チップ12Aの厚み分、Z方向にオフセットしている。これにより、比色チップ12Aをインキュベータ60へ受け入れるための開口82A1(
図2も参照)が形成されている。また、点着位置31Aからインキュベータ60への搬送は、比色チップ12Aばかりでなく、電解質チップ12Bについても行われる。開口82A1は、電解質チップ12Bも受け入れ可能となっている。
【0053】
上述したように、分析装置100を平面視した場合に、点着位置31Aは、縦型ラック60Bに対して、Y方向に沿った方向に並べて配置されている。この場合において、測定位置60C1は、縦型ラック60Bに対して、X方向に沿った方向に並べて配置されている。このように、測定位置60C1は、点着位置31Aが縦型ラック60Bに対して並べて配置された方向と交差する方向(例えば、直交方向)に並べて配置されている。
図5に示すY方向に沿った方向は、本開示の技術に係る「第1方向」の一例であり、X方向に沿った方向は、本開示の技術に係る「第2方向」の一例である。
【0054】
一例として
図6に示すように、チップ搬送部材82の第2当接部82Cが、比色チップ12Aの側面に当接することで、比色チップ12Aが測定位置60C1に搬送される。測定位置60C1は、インキュベータ60の筐体60Aの一部が突出した突出部60Cの内部に設けられている(
図2参照)。また、測定位置60C1は、分析装置100を平面視した場合に、縦型ラック60Bの外側に並べて配置されている。すなわち、測定位置60C1は、分析装置100を平面視した場合に、縦型ラック60Bと隣り合う位置に設けられている。光学測定部70は、突出部60Cの下側(
図6に示すZ方向と反対の方向の側)に設けられている。突出部60Cにおいて、比色チップ12Aが押圧部材60C2によって押圧されることで、比色チップ12Aが、測定位置60C1から大きく位置がずれることが抑制される。測定位置60C1は、本開示の技術に係る「測定位置」の一例である。
【0055】
そして、光学測定部70によって比色測定が行われる。光学測定部70は、測定位置60C1にある開口60C3を介して、比色チップ12Aに対して光(一例として後述する測定光L0)を照射し、比色チップ12Aからの反射光を受光することにより、比色チップ12Aにおいて検体試料と試薬との反応状態に応じた光学濃度を測定する。光学測定部70は、反応領域13に測定光L0を照射するための光源72と、反応領域13からの光を受光し、光電変換する光検出器74を備える。
【0056】
光源72は、比色チップ12Aのケース17の開口17Dから反応領域13に向けて、光を照射する。光の波長域は、検査対象物質(すなわち測定項目)に応じて決定される。例えば、本例においては、上述したとおり、検査対象物質と試薬との反応によって、特定の色に発色する反応物質が生じる。光源72が照射する光は、反応物質が生じているか否かを検出するための光であるため、反応物質が発色する色に応じて波長域が決定される。本例の測定光L0は、例えば、反応物質を検出するために、反応物質に吸収される波長域を含む光である。
【0057】
特に、測定光L0の波長域は、反応物質に吸収される波長域に制限されていることが好ましい。光源72としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro Luminescence)及び半導体レーザなどの光源が用いられる。また、白色光源などの比較的ブロードな波長域の光を発する光源と、特定の波長域のみを透過するバンドパスフィルタとを組み合わせることにより、特定の波長域に制限された測定光を生成してもよい。また、
図6には、1つの光源72のみを示しているが、複数の測定項目の測定を行うため、実際には、異なる波長域の複数の光を出力する複数の光源72、もしくは、1つの白色光源と、異なる波長域の複数の光を透過する複数のバンドパスフィルタを備えている。
【0058】
光検出器74は、比色チップ12Aに測定光L0が照射された場合に、比色チップ12Aから出力される出力光L1を検出する。光検出器74は、例えば、フォトダイオード等の光量に応じた検出信号を出力する受光素子である。本例では、2つの光検出器74を備えている。光検出器74は、検出信号を制御装置90(
図1参照)に出力する。制御装置90は、出力光L1に応じた検出信号を取得し、検査対象物質の濃度を導出する。
【0059】
反応領域13においては、検体試料と試薬とが反応し、特定の色に発色する反応物質が生じる。反応物質が生じることにより、反応領域13の色が変化し、この色の変化は反応領域13の光学濃度の変化として現れる。出力光L1は、反応領域13の光学濃度に応じた光であり、出力光L1には、反応物質による光の吸収等が生じることによって反応物質の情報が反映される。そして、反応領域13の光学濃度は、反応物質の量の多寡に応じて変化し、反応物質の量は、検体試料内の検査対象物質の濃度を表す。したがって、反応物質の情報を含む出力光L1を表す検出信号に基づいて、検査対象物質の濃度を測定することができる。
【0060】
縦型ラック60Bの棚61Aには、白色濃度板58が載置されている。また、縦型ラック60Bの棚61Bには、黒色濃度板56が載置されている。黒色濃度板56及び白色濃度板58は、比色チップ12Aの光学濃度を測定する際に参照される参照光学濃度を取得するための濃度板である。黒色濃度板56及び白色濃度板58は、本開示の技術に係る「光学濃度板」の一例である。棚61Aは、縦型ラック60Bの高さ方向の最上段に位置しており、本開示の技術に係る「縦型ラック60Bの高さ方向の両端部」の一例である。
【0061】
光学測定部70は、比色チップ12Aの光学濃度を測定する前に、黒色濃度板56及び白色濃度板58のそれぞれに測定光L0を照射して、黒色の参照光学濃度及び白色の参照光学濃度を測定する。具体的には、白色の参照光学濃度を測定する場合には、棚61Aが、測定位置60C1と同じ高さになるまで縦型ラック60Bが移動される。そして、第2チップ搬送機構80によって、白色濃度板58が測定位置60C1まで搬送される。光学測定部70により、白色濃度板58に対して光学的な測定が行われた後、白色濃度板58は、棚61Aに戻される。なお、黒色の参照光学濃度を測定する場合も同様の手順で測定が行われる。
【0062】
比色チップ12Aの光学濃度は、黒色の参照光学濃度を下限値、白色の参照光学濃度を上限値とする範囲内における相対的な濃度として測定される。上述したように、光学測定部70は、異なる複数の波長の測定光L0を発する複数の光源を有しており、各波長は、比色チップ12Aの種類、すなわち測定項目に応じて使用される。黒色の参照光学濃度及び白色の参照光学濃度は、測定光L0の波長毎に測定される。
【0063】
一回目の比色測定が終了した後、比色チップ12Aは、縦型ラック60Bの棚61Cに戻される。具体的には、チップ搬送部材82の第1当接部82Bが、比色チップ12Aの側面に当接することで、比色チップ12Aが測定位置60C1から棚61Cに搬送される。
【0064】
ここで、比色測定では、測定項目の異なる複数の比色チップ12Aが用意されており、複数の比色チップ12Aに対して、それぞれの経時変化を観察することが必要な場合がある。そこで、検査効率を向上させるため、上述したように一つの比色チップ12Aに対する比色測定を行った後、時間経過を待つ間に、別の測定項目の比色チップ12Aに対して比色測定を行う。
【0065】
一例として
図7に示すように、棚61Cに載置された比色チップ12Aに対する比色測定が終了した後、棚61Cの一つ下の棚61Dに比色チップ12Aを収容するため、縦型ラック60Bは、点着位置31A及び測定位置60C1に対して、棚61の一つ分の高さ上方に移動する。そして、点着された比色チップ12Aが、点着位置31Aから棚61Dへ搬送される。棚61Dに載置された比色チップ12Aは、測定位置60C1へ搬送され、比色測定が行われる。そして、測定後の比色チップ12Aは、棚61Dへ戻される。このような、比色チップ12Aの収容、測定、再度収容、及び縦型ラック60Bの上昇の動作を測定項目の数(すなわち、比色チップ12Aの数)に応じて繰り返した後、縦型ラック60Bは、最初に比色測定を行った比色チップ12Aを測定位置60C1へ搬送可能な高さまで下降する。このように、最初の比色測定から最後の比色測定までを1つの測定サイクルとして、以降、必要な時間経過に応じた測定結果が得られるまで、測定サイクルが繰り返される。
【0066】
必要な測定サイクルが終了した後、比色チップ12Aは、第2チップ搬送機構80によって廃却位置へ搬送される。廃却位置は、例えば、廃却容器85(
図5参照)の内部である。第2チップ搬送機構80は、本開示の技術に係る「廃却機構」の一例である。
【0067】
一例として
図8に示すように、電解質チップ12Bについてもチップ搬送部材42が押し当てられることによって、電解質チップ12Bが、ストッカー14から取り出される。そして、電解質チップ12Bは、点着位置31Aにおいて、検体点着部30によって電解質チップ12Bに検体試料及び参照液が点着される。電解質チップ12Bに点着がされた後、電解質チップ12Bは、インキュベータ60内へ搬送される。電解質チップ12Bは、インキュベータ60の棚61の上を通過して、電位測定用インキュベータ75へ搬送される。電解質チップ12Bは、電位測定用インキュベータ75内の測定位置75Aに載置される。
【0068】
一例として
図9に示すように、測定位置75Aにおいて、電解質チップ12Bは、チップ押圧部材75Bによって押圧される。これにより、電解質チップ12Bは、測定位置75Aから大きく位置がずれることが抑制される。電位測定用インキュベータ75の内部は、図示しないヒータによって、電極法による測定に適した温度(例えば、30℃)に設定されている。
【0069】
電位測定部76は、電解質チップ12Bに対して電極法による電位測定を行う。電位測定部76は、装置本体76A、恒温部76B、及び電極ピン76C並びに76Dを備えている。電解質チップ12Bが測定位置75Aに搬送されると、装置本体76Aは、電解質チップ12Bに向けて移動する。そして、装置本体76Aは、開口75Cから恒温部76Bを電解質チップ12Bに対して接触させ、さらに、電極ピン76C及び76Dを電解質チップ12Bの穴15D(
図6参照)に挿入する。
【0070】
恒温部76Bは、電位測定用インキュベータ75の内部と同様に、電極法による測定に適した温度(例えば、30℃)に設定されている。恒温部76Bは、例えば、装置本体76Aの内部に収容された熱源で発生した熱を伝える金属板である。このため、電位測定用インキュベータ75によって温められた電解質チップ12Bが、恒温部76Bと接触した場合でも、電解質チップ12Bの温度低下が抑制される。電解質チップ12Bに対しては、電極ピン76C及び76Dを用いて、電位の測定が行われる。
【0071】
電極ピン76C及び76Dは、一対の電極ピンである。電極ピン76C及び76Dは、電解質チップ12Bの穴15Dを介して、多層フィルム電極の一端及び他端に接触する。これにより、多層フィルム電極において生じた電位差を測定する。電位差は、検体試料中のイオン濃度に応じて変化する。このため、電位差を測定することで、検体試料中のイオン濃度を測定することができる。
【0072】
電極ピン76C及び76Dは、電解質チップ12Bの穴15Dの数に応じて設けられている。例えば、上述したように電解質チップ12Bの穴15D1~15D6の6つの穴が設けられている場合、一対の電極ピン76C及び76Dは、3組設けられる。そして、そのうちの1組が、穴15D1及び15D2に挿入される。これにより、Clイオン濃度が測定される。また、別の1組が、穴15D3及び15D4に挿入される。Kイオン濃度が測定される。さらに、別の1組が、穴15D5及び15D6に挿入される。Naイオン濃度が測定される。このように、複数種類のイオンの濃度が同時に測定される。
【0073】
電位測定部76による測定が終了した後、装置本体76Aは、電解質チップ12Bから離れる方向に移動する。そして、電解質チップ12Bは、廃却機構(図示省略)によって測定位置75Aから廃却位置へ搬送される。廃却位置は、例えば、廃却容器86の内部である。
【0074】
以上説明したように、本第1実施形態に係る分析装置100では、乾式の複数の分析チップ12を予め設定された温度に温めるインキュベータ60が設けられ、インキュベータ60は、複数の分析チップ12を高さ方向(
図2等に示すZ方向)に並べて収容可能な縦型ラック60Bを有している。これにより、縦型ラック60Bを有しない場合と比べて、分析装置100の平面サイズ(すなわち、分析装置100を平面視した場合の大きさ)の小型化が可能になる。例えば、複数の分析チップ12を高さ方向と直交する方向に並べてインキュベータ内に収容する場合と比較して、本構成では、分析装置100の平面サイズの小型化が実現される。
【0075】
また、本第1実施形態に係る分析装置100では、縦型ラック60Bは、複数の分析チップ12を1つずつ載置する複数の棚61を有している。このため、縦型ラック60Bの一の棚に複数の分析チップ12が載置される場合と比較して、分析チップ12を縦型ラック60Bへ収容したり、分析チップ12を縦型ラック60Bから取り出したりする動作を分析チップ12に対して1つずつ行いやすい。
【0076】
また、本第1実施形態に係る分析装置100では、平面視した場合において、分析チップ12に検体試料が点着される点着位置31Aと、光学測定部70によって分析チップ12が測定される測定位置60C1とは、縦型ラック60Bの外側に並べて配置されている。このため、縦型ラック60B内で検体試料の点着および比色測定が行われる場合と比較して、分析装置100の構成を簡素化することができる。
【0077】
また、本第1実施形態に係る分析装置100では、縦型ラック60Bは、点着位置31A及び測定位置60C1に対して、高さ方向に相対的に移動可能とされている。このため、点着位置31Aおよび測定位置60C1に、縦型ラック60B内の複数の分析チップ12のそれぞれの高さを合わせることができる。これにより、縦型ラック60Bが相対的な移動ができない場合と比べて、分析チップ12を縦型ラック60Bへ収容したり、分析チップ12を縦型ラック60Bから取り出したりしやすい。
【0078】
また、本第1実施形態に係る分析装置100では、分析装置100を平面視した場合において、点着位置31Aは、縦型ラック60Bに対して
図5に示すX方向に沿った方向に並べて配置されており、かつ、測定位置60C1は、縦型ラック60Bに対してY方向(すなわち、X方向と直交する方向)に沿った方向に並べて配置されている。これにより、分析装置100を平面視した場合に、点着位置31Aと測定位置60C1の位置を異ならせることで、分析装置100の内部構造のレイアウトがしやすい場合がある。例えば、点着位置31Aと測定位置60C1の位置を異ならせることで、点着位置31Aと測定位置60C1の高さ方向の位置を同じにすることが可能となり、分析装置100の内部構造のレイアウトの設定が容易になる。
【0079】
また、本第1実施形態に係る分析装置100では、測定位置60C1は、インキュベータ60内に配置されている。また、測定位置75Aは、電位測定用インキュベータ75内に配置されている。これにより、測定の際も分析チップ12の温度が管理されるので、測定に適した温度条件で測定が行われる。
【0080】
また、本第1実施形態に係る分析装置100では、第1チップ搬送機構40及び第2チップ搬送機構80が設けられている。第1チップ搬送機構40によって、点着位置31Aから縦型ラック60Bの棚61へ分析チップ12が搬送される。また、第2チップ搬送機構80によって、縦型ラック60Bの棚61から測定位置60C1へ分析チップ12が搬送される。さらに、第2チップ搬送機構80によって、測定済みの分析チップ12が廃却位置へ搬送される。これにより、分析装置100の内部における分析チップ12の搬送作業が簡便になる。
【0081】
また、本第1実施形態に係る分析装置100では、光学測定部70と電位測定部76とを備えている。また、分析チップ12には、光学測定部70による比色測定が行われる比色チップ12Aと、電位測定部76による電位測定が行われる電解質チップ12Bとが含まれる。このように、本構成では、複数の種類の測定方式による検体試料の分析が可能である。
【0082】
また、本第1実施形態に係る分析装置100では、比色チップ12Aを温めるインキュベータ60と、電解質チップ12Bを温める電位測定用インキュベータ75とが設けられている。これにより、比色チップ12Aと電解質チップ12Bとで測定の際の目標温度が異なる場合であっても、それぞれ温度管理を行うことが簡便になる。
【0083】
また、本第1実施形態に係る分析装置100では、比色法において比較の基準となる参照光学濃度を有する黒色濃度板56及び白色濃度板58が備えられており、縦型ラック60Bの高さ方向の最上段である棚61Aに白色濃度板58が設けられ、その次の段である棚61Bに黒色濃度板56が設けられている。縦型ラック60Bは、高さ方向の中央部から両端部に向かうにつれて放熱量が多くなる場合が多い。高さ方向の両端部においては、縦型ラック60Bの最上面又は最下面が外部に露出し、表面積が大きくなる傾向があるためである。そのため、縦型ラック60Bの高さ方向の両端部は、中央部と比較して温度が低い。このため、縦型ラック60Bの中央部の温度を目標温度に合わせると、両端部は目標温度よりも低い温度になってしまうため、両端部の棚61は適切な温度管理が必要な分析チップ12を載置する棚61としては使用しにくい。
【0084】
本構成では、縦型ラック60Bの両端部の一例である高さ方向の最上段の棚61Aに、温度管理が不要な白色濃度板58が載置されている。そのため、分析チップ12を載置する棚61として不向きな両端部の棚61を、有効に活用できる。また、もう1つの黒色濃度板56は、白色濃度板58が載置される棚61Aの一段下の棚61Bに載置される。棚61Bも最上段の棚61Aに近く、中央部と比較して温度管理がしにくい場合がある。このため、黒色濃度板56を載置することで棚61Bについても有効に活用することができる。なお、もちろん、白色濃度板58と黒色濃度板56の位置を入れ替えてもよい。
【0085】
なお、本例では、縦型ラック60Bの高さ方向の上端部に位置する最上段の棚61Aに白色濃度板58を載置した例で説明したが、高さ方向の下端部に位置する最下段の棚61Fに白色濃度板58を載置してもよい。また、白色濃度板58及び黒色濃度板56の一方を、縦型ラック60Bの最上段に、他方を最下段に載置してもよい。
【0086】
また、上記第1実施形態では、比色測定の測定位置60C1がX方向に沿って縦型ラック60Bに並んで配置され、電位測定の測定位置75AがY方向に沿って縦型ラック60Bに並んで配置される形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。測定位置のレイアウトは適宜設定され得る。例えば、測定位置60C1と測定位置75Aの配置は、
図5に示した例とは反対であってもよい。また、その他の例として、測定位置75Aが、測定位置60C1と並んで配置されていてもよい。すなわち、X方向に沿って縦型ラック60B、測定位置60C1、及び測定位置75Aの順に並んで配置されてもよい。また、その他の例として、点着位置31A、縦型ラック60B、測定位置60C1、及び測定位置75Aが直線状に並んで配置されてもよい。
【0087】
(第1変形例)
上記第1実施形態では、検体試料の点着が行われた後に分析チップ12がインキュベータ60の内部へ搬送される形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。本第1変形例では、検体試料の点着が行われる前に、分析チップ12がインキュベータ60の内部へ搬送され、予熱がされる。その後、分析チップ12に検体試料の点着が行われる。
【0088】
図10は第1変形例に係る分析装置100の部分構成の一例を示す平面図である。
一例として
図10に示すように、本第1変形例に係る分析装置100は、第3チップ搬送機構110を備えている。第3チップ搬送機構110は、点着前に予熱された分析チップ12をインキュベータ60の内部から検体点着部30へ搬送する。第3チップ搬送機構110は、薄板状のチップ搬送部材110Aと、チップ搬送部材110Aを検体点着部30及びインキュベータ60の並び方向に往復移動させる駆動機構110B(不図示)とを備える。駆動機構110Bは、例えば、リニアアクチュエータである。チップ搬送部材110Aは、図示しないガイドロッドにより摺動自在に支持され、駆動機構110Bによって往復移動される。第3チップ搬送機構110は、本開示の技術に係る「戻し機構」の一例である。
【0089】
ストッカー14から取り出された分析チップ12は、インキュベータ60の縦型ラック60Bの棚61に載置される。分析チップ12は、インキュベータ60の内部において、目標温度まで温められる。分析チップ12が目標温度に到達した後、分析チップ12は、第3チップ搬送機構110によって点着位置31Aへ搬送される。そして、検体点着部30によって、分析チップ12に対して、検体試料が点着される。点着された分析チップ12は、再度インキュベータ60の内部へ搬送され、測定が行われる。
【0090】
なお、ここでは、分析チップ12として比色チップ12Aに対して予熱が行われた後、検体試料の点着、及び測定が行われる例を図示して説明したが、電解質チップ12B(図示省略)についても同様に、予熱が行われた後、検体試料及び参照液の点着、及び測定が行われる。この場合において、測定後の電解質チップ12Bは、廃却容器86の内部に廃却されるのではなく、比色チップ12Aと共通の廃却容器85の内部に廃却されてもよい。すなわち、測定後の電解質チップ12Bが、第3チップ搬送機構110によって、電位測定用インキュベータ75から縦型ラック60Bの棚61へ搬送される。そして、第2チップ搬送機構80(図示省略)によって、電解質チップ12Bが棚61から廃却容器85の内部へ搬送される。これにより、電解質チップ12Bのための廃却容器86を設ける必要が無くなり、分析装置100の平面サイズの小型化が実現される。
【0091】
以上説明したように、本第1変形例に係る分析装置100では、第3チップ搬送機構110を備えている。第3チップ搬送機構110によって、検体試料が点着される前に予熱された分析チップ12が縦型ラック60Bの棚61から点着位置31Aへ搬送される。このような予熱を行うことにより、検体試料を点着する際の分析チップ12の温度を予め設定された目標温度に合わせることができる。これにより、複数の分析チップ12間の測定条件を揃えることができる。
【0092】
<第2実施形態>
図11は第2実施形態に係る分析装置101の部分構成の一例を示す平面図である。上記第1実施形態では、点着位置31Aがインキュベータ60の外部に設けられている形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。本第2実施形態では、点着位置31Aがインキュベータ60の内部に設けられる。
【0093】
一例として
図11に示すように、ストッカー14から取り出された比色チップ12Aは、インキュベータ60の縦型ラック60Bの棚61に載置される。比色チップ12Aは、インキュベータ60の内部において、目標温度(例えば、37℃)まで温められる。
【0094】
比色チップ12Aが目標温度まで到達した後、比色チップ12Aは、第2チップ搬送機構80によって、インキュベータ60の突出部60Cに設けられた点着位置121へ搬送される。点着位置121の上側(
図11に示すZ方向の側)には、検体点着機構50のノズル52が設けられている。ノズル52は、貫通孔52Aを介して比色チップ12Aに対して検体試料を点着する。
【0095】
点着後の比色チップ12Aに対して、光学測定部70による比色測定が行われる。
図11に示す例では、点着位置121が、測定位置122とされている。すなわち、点着された比色チップ12Aに対して、同じ位置のまま比色測定が行われる。測定後の比色チップ12Aは、第2チップ搬送機構80によって、縦型ラック60Bの棚61に戻される。そして、次の比色チップ12Aに対して、点着及び測定が行われる。このように比色測定のサイクルが繰り返される(
図7参照)。
【0096】
また、電解質チップ12Bに対して電位測定が行われる場合、ストッカー14から取り出された電解質チップ12Bは、縦型ラック60Bの棚61Fに載置される。この場合、棚61Fは、電解質チップ12Bの専用の棚とされている。棚61Fは、冷却素子69を備えている。冷却素子69は、例えば、ペルチェ素子である。冷却素子69は、電解質チップ12Bの温度が過度に上昇することを抑制する。これにより、電解質チップ12Bが目標温度(例えば、30℃)とされている。このように、インキュベータ60は、比色チップ12Aと電解質チップ12Bとの両方を温める機能を有する。冷却素子69は、本開示の技術に係る「温度調節機構」の一例である。
【0097】
なお、ここでは、棚61Fが電解質チップ12Bの専用の棚とされている形態例を挙げて説明したが、これはあくまでも一例にすぎない。最上段の棚61Aが電解質チップ12Bの専用の棚とされてもよい。この場合において、白色濃度板58は、棚61Fに載置される。
【0098】
また、冷却素子69が、縦型ラック60Bの最下段の棚61Fに設けられていることで、冷却素子69による温度調節に必要な電力消費を抑えることができる。なぜならば、縦型ラック60Bは、高さ方向の両端部の方が中央部よりも放熱効率が高く、温度が低くなっている。そのため、冷却素子69を棚61Fに設けることで、インキュベータ60内の目標温度(例えば、37℃)よりも低い温度に電解質チップ12Bを設定するための電力消費を低減できる。
【0099】
電解質チップ12Bが目標温度に到達した後、電解質チップ12Bは、第2チップ搬送機構80によって、インキュベータ60の突出部60Cに設けられた点着位置121へ搬送さる。そして、電解質チップ12Bに対して検体試料及び参照液が点着される。その後、電解質チップ12Bに対して電位測定部76による電位測定が行われる。この場合において、光学測定部70に代えて、電位測定部76が、測定位置122の下方に位置する。測定が終了した分析チップ12は、第2チップ搬送機構80によって廃却位置まで搬送される。
【0100】
以上説明したように、本第2実施形態に係る分析装置101では、点着位置121及び測定位置122は、インキュベータ60内に配置されている。これにより、温度が管理された状態で分析チップ12に対して点着及び測定が行われるので、例えば、インキュベータ60の外部で点着が行われる場合と比較して、より適切な条件で測定を行うことが実現される。
【0101】
また、本第2実施形態に係る分析装置101では、インキュベータ60は、比色チップ12A及び電解質チップ12Bの両方を温める機能を有している。インキュベータ60の縦型ラック60Bにおいて、電解質チップ12Bが載置される棚61Fには、冷却素子69が設けられている。電解質チップ12Bは、冷却素子69によってインキュベータ60の内部の目標温度(例えば、37℃)よりも低い目標温度(例えば、30℃)とされている。このように、1つのインキュベータ60で、分析装置101の平面サイズの小型化が実現され、さらに、冷却素子69によって異なる目標温度を有する分析チップ12を収容することが可能となる。
【0102】
なお、上記第2実施形態では、インキュベータ60の内部において、点着位置121及び測定位置122が同じである形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。点着位置121及び測定位置122は、インキュベータ60の内部にあればよく、両者が異なる位置にあってもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、比色法による測定と電極法による測定が行われる形態例を挙げて説明したが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、比色法による測定のみが行われてもよく、また、比色法による測定と蛍光法による測定が行われてもよい。
【0104】
また、上記実施形態における測定位置及び点着位置がすべて同じ高さにある形態例を挙げて説明したが、本開示の技術は、これに限定されない。測定位置及び点着位置が異なる高さに設けられていてもよい。ただし、本構成のように測定位置及び点着位置が同じ高さにあることで、上下方向の搬送の必要が無くなるので、効率的な搬送の観点で本構成はより効果的である。
【0105】
以上に示した記載内容及び図示内容は、本開示の技術に係る部分についての詳細な説明であり、本開示の技術の一例に過ぎない。例えば、上記の構成、機能、作用、及び効果に関する説明は、本開示の技術に係る部分の構成、機能、作用、及び効果の一例に関する説明である。よって、本開示の技術の主旨を逸脱しない範囲内において、以上に示した記載内容及び図示内容に対して、不要な部分を削除したり、新たな要素を追加したり、置き換えたりしてもよいことは言うまでもない。また、錯綜を回避し、本開示の技術に係る部分の理解を容易にするために、以上に示した記載内容及び図示内容では、本開示の技術の実施を可能にする上で特に説明を要しない技術常識等に関する説明は省略されている。
【0106】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【0107】
上記実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0108】
<付記1>
検体試料が点着される乾式の複数の分析チップが着脱自在に装填され、上記分析チップを用いて上記検体試料を分析する分析装置であって、
複数の上記分析チップを予め設定された温度に温めるインキュベータであって、複数の上記分析チップを高さ方向に並べて収容可能な縦型ラックを有するインキュベータと、
複数の上記分析チップに点着された上記検体試料を測定する測定ユニットと、を備えている
分析装置。
<付記2>
上記縦型ラックは、複数の上記分析チップを1つずつ載置する複数の棚を有する
付記1に記載の分析装置。
<付記3>
平面視した場合において、上記分析チップに上記検体試料が点着される点着位置と、上記測定ユニットによって上記分析チップが測定される測定位置とは、上記縦型ラックの外側に並べて配置されている
付記1又は付記2に記載の分析装置。
<付記4>
上記縦型ラックは、上記点着位置および上記測定位置に対して上記高さ方向に相対的に移動可能である
付記3に記載の分析装置。
<付記5>
平面視した場合において、上記点着位置は、上記縦型ラックに対して第1方向に並べて配置されており、かつ、上記測定位置は、上記縦型ラックに対して上記第1方向と交差する第2方向に並べて配置されている
付記3又は付記4に記載の分析装置。
<付記6>
上記点着位置および上記測定位置のうちの少なくとも1つは、上記インキュベータ内に配置されている
付記3から付記5の何れか一つに記載の分析装置。
<付記7>
上記点着位置から、上記縦型ラック内に上記分析チップを送る第1送り機構と、
上記縦型ラック内から、上記測定位置に上記分析チップを送る第2送り機構と、
測定済みの上記分析チップを廃却位置に送る廃却機構と、を備えている
付記3から付記6の何れか一つに記載の分析装置。
<付記8>
上記縦型ラック内から、上記検体試料が点着前に予熱された上記分析チップを上記点着位置に戻す戻し機構を備えている
付記3から付記7の何れか一つに記載の分析装置。
<付記9>
上記測定ユニットは、上記検体試料と試薬との反応状態を光学的に測定する第1測定ユニットと、上記検体試料に含まれる電解質濃度を、電極を用いて測定する第2測定ユニットとを有しており、
上記分析チップは、上記第1測定ユニットによって測定される第1分析チップと、上記第2測定ユニットによって測定される第2分析チップとが含まれる
付記1から付記8の何れか一つに記載の分析装置。
<付記10>
上記インキュベータとして、上記第1分析チップを温める第1インキュベータと、上記第2分析チップを温める第2インキュベータの2つのインキュベータを有する
付記9に記載の分析装置。
<付記11>
上記インキュベータは、上記第1分析チップと上記第2分析チップの両方を温める1つのインキュベータであり、
上記第1分析チップと上記第2分析チップのそれぞれを異なる目標温度に温める温度調節機構を備えている
付記9に記載の分析装置。
<付記12>
上記第1測定ユニットによる測定において上記反応状態の比較の基準となる参照光学濃度を有する光学濃度板を有しており、
上記縦型ラックの高さ方向の両端部の少なくとも一方に上記光学濃度板が収容される
付記9から付記11の何れか一つに記載の分析装置。
【符号の説明】
【0109】
10 チップセット部
11 保持台
11A 開口
12 分析チップ
12A 比色チップ
12B 電解質チップ
13 反応領域
14 ストッカー
15 ケース
15A 第1ケース
15B 第2ケース
15C 開口
15D,15D1~15D6 穴
15E 情報コード
16 担体
17 ケース
17A 第1ケース
17B 第2ケース
17C,17D 開口
17E 情報コード
20 読取機
30 検体点着部
31 チップ支持台
31A 点着位置
40 第1チップ搬送機構
42 チップ搬送部材
44 駆動機構
50 検体点着機構
52 ノズル
52A 貫通孔
56 黒色濃度板
58 白色濃度板
60 インキュベータ
60A 筐体
60C 突出部
60C1 測定位置
60C2 押圧部材
60C3 開口
60B 縦型ラック
61,61A~61F 棚
62 支柱
64 駆動機構
66 ヒータ
68 チップ押圧部材
69 冷却素子
70 光学測定部
72 光源
74 光検出器
75 電位測定用インキュベータ
75A 測定位置
75B チップ押圧部材
75C 開口
76 電位測定部
76A 装置本体
76B 恒温部
76C,76D 電極ピン
80 第2チップ搬送機構
82 チップ搬送部材
82A 軸部
82A1 開口
82B 第1当接部
82C 第2当接部
84 駆動機構
84A モータ
85,86 廃却容器
90 制御装置
90A プロセッサ
100,101 分析装置
110 第3チップ搬送機構
110A チップ搬送部材
110B 駆動機構
121 点着位置
122 測定位置
L0 測定光
L1 出力光