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特開2024-104638非水電解質二次電池用電極及び非水電解質二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104638
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用電極及び非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20240729BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240729BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240729BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M10/0566
H01M10/052
H01M4/66 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008963
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】田代 勇太
(72)【発明者】
【氏名】山本 英和
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017AS02
5H017DD05
5H017EE06
5H017EE07
5H017HH01
5H017HH03
5H017HH05
5H017HH08
5H029AJ11
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029BJ12
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ12
5H029HJ14
5H050AA14
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA03
5H050DA04
5H050DA09
5H050EA10
5H050EA28
5H050FA02
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA12
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】できるだけ厚みを小さくしながらも、電解液に浸漬させた後の負極合材層の負極集電体からの脱落や剥離を十分に抑制することができる下地層を備えた非水電解質二次電池用電極を提供する。
【解決手段】集電体と、電極合材層と、これら集電体と電極合材層との間に設けられた導電性の下地層とを備える非水電解質二次電池用負極であって、前記下地層が、スチレン-アクリル酸エステル系共重合体と、炭素材料と、ポリアクリル酸を少なくとも含み、前記下地層における前記スチレン-アクリル酸系エステル系共重合体の含有量は70質量%以上90質量%以下であり、前記ポリアクリル酸は、該ポリアクリル酸が備えるカルボキシ基が中和されていない、又は前記カルボキシ基のうち、アルカリ金属イオンによって中和されている中和カルボキシ基の割合が25%以下であり、前記集電体の片面あたりの前記電極合材層の目付量が10mg/cm以上35mg/cm以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、
電極合材層と、
これら集電体と電極合材層との間に設けられた導電性の下地層とを備える非水電解質二次電池用負極であって、
前記下地層が、スチレン-アクリル酸エステル系共重合体と、炭素材料と、ポリアクリル酸を少なくとも含み、
前記下地層における前記スチレン-アクリル酸系エステル系共重合体の含有量は70質量%以上90質量%以下であり、
前記ポリアクリル酸は、該ポリアクリル酸が備えるカルボキシ基が中和されていない、又は前記カルボキシ基のうち、アルカリ金属イオンによって中和されている中和カルボキシ基の割合が25%以下であり、
前記集電体の片面あたりの前記電極合材層の目付量が10mg/cm以上35mg/cm以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極。
【請求項2】
集電体と、
電極合材層と、
これら集電体と電極合材層との間に設けられた導電性の下地層とを備える非水電解質二次電池用負極であって、
前記下地層が、スチレン-アクリル酸エステル系共重合体と、炭素材料と、ポリアクリル酸を少なくとも含み、
前記下地層における前記スチレン-アクリル酸系エステル系共重合体の含有量は77.5質量%を超えて90質量%以下であり、
前記ポリアクリル酸は、該ポリアクリル酸が備えるカルボキシ基が中和されていない、又は前記カルボキシ基のうち、アルカリ金属イオンによって中和されている中和カルボキシ基の割合が25%以下であり、
前記集電体の片面あたりの前記電極合材層の目付量が10mg/cm以上35mg/cm以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極。
【請求項3】
前記下地層における前記スチレン-アクリル酸エステル系共重合体の含有量は78質量%以上85質量%以下である、請求項1又は請求項2に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項4】
前記下地層における前記スチレン-アクリル酸エステル系共重合体の含有量は80質量%以上85質量%以下である、請求項1又は請求項2に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項5】
前記下地層の厚みが0.5μm以上5μm以下である、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項6】
前記下地層の厚みが0.5μm以上2μm以下である、請求項5に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項7】
前記スチレン-アクリル酸エステル系共重合体のガラス転移温度が、-20℃以上20℃以下である、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項8】
前記電極合材層が0.5質量%以上10質量%以下のポリテトラフルオロエチレンを含有する、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項9】
前記ポリアクリル酸が備えるカルボキシ基が中和されていない、又は前記ポリアクリル酸における前記中和カルボキシ基の割合が0%を超えて10%以下である。請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項10】
前記炭素材料が、ファーネスブラック(furnace black)、チャネルブラック(channel black)、サーマルブラック(thermal black)、ケッチェンブラック(ketjen black)及びアセチレンブラック(acetylene black)のうち1種以上を含むものである、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用負極。
【請求項11】
正極と、負極と、これら正極と負極との間に設けられたセパレータと、電解液とを備える非水電解質二次電池であって、前記負極が請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用負極である非水電解質二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用電極及び該電極を備えた非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池をはじめとする非水電解質二次電池は、スマートフォンやノート型パソコン等の電源として広く用いられているが、これら電子機器の小型化と軽量化が進むにつれて二次電池にはさらなる高エネルギー密度化が求められている。
また、最近は電気自動車やハイブリッド自動車等の電源としての需要も高まっており、従来のガソリンエンジンと同等の性能を確保するための高エネルギー密度化が求められている。
【0003】
リチウムイオン二次電池の高エネルギー密度化の方法の一つとして、電極合材層の目付量を増やすことが挙げられる。
【0004】
通常、電極合材層の作製においては、電極合材スラリーを箔状の集電体に塗工、乾燥することによって得ることが一般的であるが、電極合材層の目付量を大きくすると、バインダーが表面にマイグレーションを起こしやすく、集電体から電極合材層が脱落あるいは剥離しやすくなってしまう。
そのため、目付量の大きい電極合材層の作製では電極合材組成物を乾式で混合、混練し、カレンダープレスなどでシート化した後、集電体と張り合わせる方法も用いられている。このとき、集電体から電極合材層が脱落や剥離しないように抑える方法として、以下の特許文献1のように集電体と電極合材層との間に導電性を有する下地層を設けることが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2020/196372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、下地層は電極活物質を含む層ではなく、電池のエネルギー密度向上に貢献しない層であるために、高エネルギー密度を実現するためには、下地層の厚みをより薄くすることが求められる。
また、集電箔からの電極合材層の剥離についてさらに検討を進めた本発明者は、実際の電池構成においては電極が電解液に浸漬させ、電解液が電極に含浸された状態で使用されるが、このように電解液に浸漬された後においては、特に負極合材層において電解液に浸漬される前の状態よりも、集電体から電極合材層が剥離しやすくなることを見出した。一方、前述した特許文献1においては、電解液への浸漬後における電極合材層の脱落や剥離については一切検討されていない。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、下地層のできるだけ厚みを小さくしながらも、電極合材層の脱落や剥離が起こりやすい電解液への浸漬後においても、電極合材層の集電体からの脱落や剥離を十分に抑制することができる下地層を備えた非水電解質二次電池用負極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は以下に示すものである。
[1]集電体と、電極合材層と、これら集電体と電極合材層との間に設けられた導電性の下地層とを備える非水電解質二次電池用負極であって、
前記下地層が、スチレン-アクリル酸エステル系共重合体と、炭素材料と、ポリアクリル酸を少なくとも含み、
前記下地層における前記スチレン-アクリル酸系エステル系共重合体の含有量は70質量%以上90質量%以下であり、
前記ポリアクリル酸は、該ポリアクリル酸が備えるカルボキシ基が中和されていない、又は前記カルボキシ基のうち、アルカリ金属イオンによって中和されている中和カルボキシ基の割合が25%以下であり、
前記集電体の片面あたりの前記電極合材層の目付量が10mg/cm以上35mg/cm以下であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極。
[2]前記下地層における前記スチレン-アクリル酸系エステル系共重合体の含有量が77.5質量%を超えて90質量%以下である、[1]に記載の非水電解質二次電池用負極。
[3]前記下地層における前記スチレン-アクリル酸エステル系共重合体の含有量は78質量%以上90質量%以下である、[1]又は[2]に記載の非水電解質二次電池用負極。
[4]前記下地層における前記スチレン-アクリル酸エステル系共重合体の含有量は78質量%以上88質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極。
【0009】
[5]前記下地層の厚みが0.5μm以上5μm以下である[1]~[4]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極。
[6]前記下地層の厚みが0.5μm以上2μm以下である、[5]に記載の非水電解質二次電池用負極。
[7]前記スチレン-アクリル酸エステル系共重合体のガラス転移温度が、-20℃以上20℃以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極。
【0010】
[8]前記電極合材層が0.5質量%以上10質量%以下のポリテトラフルオロエチレンを含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極。
[9]前記ポリアクリル酸が備えるカルボキシ基が中和されていない、又は前記ポリアクリル酸における前記中和カルボキシ基の割合が0%を超えて10%以下である。[1]~[8]のいずれかに記載の非水電解質二次電池用負極。
【0011】
[10]前記炭素材料が、ファーネスブラック(furnace black)、チャネルブラック(channel black)、サーマルブラック(thermal black)、ケッチェンブラック(ketjen black)及びアセチレンブラック(acetylene black)のうち1種以上を含むものである、[1]~[9]に記載の非水電解質二次電池用負極。
【0012】
[11]正極と、負極と、これら正極と負極との間に設けられたセパレータと、電解液とを備える非水電解質二次電池であって、前記負極が[1]~[10]に記載の非水電解質二次電池用負極である非水電解質二次電池。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、できるだけ下地層の厚みを小さくしながらも、電極合材層の脱落や剥離が起こりやすい電解液への浸漬後においても、電極合材層の脱落や剥離を十分に抑制することができる下地層を備えた非水電解質二次電池用負極を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態に係る二次電池の具体的な構成について説明する。
<1.非水電解質二次電池の基本構成>
本実施形態に係る非水電解質二次電池は、正極と、負極と、セパレータ(separator)と、非水電解質と、を備えるリチウムイオン二次電池である。
このリチウムイオン二次電池の形態は、特に限定されないが、例えば、円筒形、角形、ラミネート(laminate)形、またはボタン(button)形等のいずれであってもよい。
【0015】
(1-1.正極)
前記正極は、正極集電体と、該正極集電体上に形成された正極合材層とを備えている。
前記正極集電体は、導電体であればどのようなものでも良く、例えば、板状又は箔状のものであり、アルミニウム(aluminum)、ステンレス(stainless)鋼、及びニッケルメッキ(nickel coated)鋼等で構成されることが好ましい。
前記正極合材層は、少なくとも正極活物質を含み、導電剤と、正極用バインダーとをさらに含んでいてもよい。
【0016】
前記正極活物質は、例えば、リチウムを含む遷移金属酸化物または固溶体酸化物であり、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵および放出することができる物質であれば特に制限されない。リチウムを含む遷移金属酸化物としては、例えば、Li1.0Ni0.88Co0.1Al0.01Mg0.01等を挙げることができるが、これ以外にも、LiCoO等のLi・Co系複合酸化物、LiNiCoMn等のLi・Ni・Co・Mn系複合酸化物、LiNiO等のLi・Ni系複合酸化物、またはLiMn等のLi・Mn系複合酸化物等を例示することができる。固溶体酸化物としては、LiMnCoNi(1.150≦a≦1.430、0.45≦x≦0.6、0.10≦y≦0.15、0.20≦z≦0.28)、LiMn1.5Ni0.5等を例示することができる。なお、前記正極活物質の含有量(含有比)は、特に制限されず、非水電解質二次電池の正極合材層に適用可能な含有量であればよい。また、これらの化合物を単独で用いても良いし、または複数種混合して用いてもよい。
【0017】
前記導電剤は、前記正極の導電性を高めるためのものであれば特に制限されない。前記導電剤の具体例としては、例えば、カーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、繊維状炭素及び、ナノ炭素材料の中から選ばれる一種以上を含有するものを挙げることができる。
前記カーボンブラックの例としては、ファーネスブラック(furnace black)、チャネルブラック(channel black)、サーマルブラック(thermal black)、ケッチェンブラック(ketjen black)、アセチレンブラック(acetylene black)等を挙げることができる。
前記繊維状炭素の例としては、炭素繊維等を挙げることができる。
前記ナノ炭素材料の例としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、単層グラフェン、多層グラフェン等を挙げることができる。
前記導電剤の含有量は、特に制限されず、非水電解質二次電池の正極合材層に適用可能な含有量であれば良い。
【0018】
前記正極用バインダーとしては、前記正極活物質及び前記導電剤を前記正極集電体上に結着可能なものであればよく、特に制限されない。前記正極用バインダーは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸(PAA)、スチレンブタジエン系共重合体(SBR)、カルボキシメチルセルロースの金属塩(CMC)などであってもよい。1種のバインダーが単独で使用されても良いし、2種以上を含有するものとしても良い。
【0019】
(1-2.負極)
負極は、負極集電体と、該負極集電体上に形成された負極合材層とを備えるものである。
前記負極集電体は、導電体であればどのようなものでも良く、例えば、板状又は箔状のものであり、銅、ステンレス鋼、及びニッケルメッキ鋼等で構成されるものであることが好ましい。
【0020】
前記負極合材層は、少なくとも負極活物質を含み、導電剤と、負極用バインダーとをさらに含んでいても良い。
前記負極活物質は、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵及び放出することが出来るものであれば特に限定されないが、例えば、黒鉛活物質(人造黒鉛、天然黒鉛、人造黒鉛と天然黒鉛との混合物、人造黒鉛を被覆した天然黒鉛等)、Si系活物質又はSn系活物質(例えば、ケイ素(Si)もしくはスズ(Sn)もしくはそれらの酸化物の微粒子と黒鉛活物質との混合物もしくは複合化物、ケイ素もしくはスズの微粒子、ケイ素もしくはスズを基本材料とした合金)、金属リチウム及びLiTi12等の酸化チタン系化合物、リチウム窒化物等が考えられる。負極活物質としては、以上に挙げたもののうち一種類を用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。なお、ケイ素の酸化物は、SiOx(0≦x≦2)で表される。
【0021】
前記導電剤は、前記負極の導電性を高めるためのものであれば特に制限されず、例えば、前記正極の項で説明したものと同様のものを使用することができる。
【0022】
前記負極用バインダーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)等のフッ素含有樹脂、スチレンブタジエンゴム(styrene-butadiene rubber)等のエチレン含有樹脂、エチレンプロピレンジエン三元共重合体(ethylene-propylene-diene terpolymer)、アクリロニトリルブタジエンゴム(acrylonitile-butadiene rubber)、フッ素ゴム(fluororubber)、ポリ酢酸ビニル(polyvinyl acetate)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリエチレン(polyethylene)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、カルボキシメチルセルロース(carboxy methyl cellulose)若しくはカルボキシメチルセルロース誘導体(カルボキシメチルセルロースの塩等)、又はニトロセルロース(nitrocellulose)等を挙げることができる。
前記負極用バインダーは、前記負極活物質及び前記導電剤を前記負極集電体上に結着可能なものであればよく、特に制限されないが、負極合材層の目付量を大きくするという観点から、負極合材層がバインダーとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)等のフッ素含有樹脂を含有していることが好ましく、負極合材層中のバインダーの含有量は0.5質量部以上、10質量部以下であることが好ましい。バインダーの含有量がこの範囲にあるとき、負極合材層の機械的強度が良好な工程性を確保できる程度に向上し、負極極板のエネルギー密度を高めることができる。
【0023】
(1-3.セパレータ)
セパレータは、特に制限されず、リチウムイオン二次電池のセパレータとして使用されるものであれば、どのようなものであってもよい。セパレータとしては、優れた高率放電性能を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。セパレータを構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)等に代表されるポリオレフィン(polyolefin)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate)等に代表されるポリエステル(polyester)系樹脂、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene difluoride)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(vinylidene difluoride-hexafluoropropylene copolymer)、フッ化ビニリデン-パーフルオロビニルエーテル共重合体(vinylidene difluoride-perfluorovinylether copolymer)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体(vinylidene difluoride-tetrafluoroethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体(vinylidene difluoride-trifluoroethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-フルオロエチレン共重合体(vinylidene difluoride-fluoroethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロアセトン共重合体(vinylidene difluoride-hexafluoroacetone copolymer)、フッ化ビニリデン-エチレン共重合体(vinylidene difluoride-ethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-プロピレン共重合体(vinylidene difluoride-propylene copolymer)、フッ化ビニリデン-トリフルオロプロピレン共重合体(vinylidene difluoride-trifluoro propylene copolymer)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(vinylidene difluoride-tetrafluoroethylene copolymer)、フッ化ビニリデン-エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(vinylidene difluoride-ethylene-tetrafluoroethylene copolymer)等を挙げることができる。なお、セパレータの気孔率は、特に制限されず、従来のリチウムイオン二次電池のセパレータが有する気孔率を任意に適用することが可能である。
【0024】
セパレータの表面に、耐熱性を向上させるための無機粒子を含む耐熱層、または電極と接着して電池素子を固定化するための接着剤を含む層があってもよい。前述の無機粒子としては、Al、AlOOH、Mg(OH)、SiO等を挙げることができる。接着剤としてはフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン重合体の酸変性物、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル系共重合体等を挙げることができる。
【0025】
(1-4.非水電解液)
非水電解液は、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液と同様のものを特に限定なく使用することができる。非水電解液は、電解液用溶媒である非水溶媒に電解質塩を含有させた組成を有する。前記非水溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(propylene carbonate)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate)、ブチレンカーボネート(butylene carbonate)、クロロエチレンカーボネート(chloroethylene carbonate)、フルオロエチレンカーボネート(fluoroethylene carbonate)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate)等の環状炭酸エステル類、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、γ-バレロラクトン(γ-valerolactone)等の環状エステル類、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate)、エチルメチルカーボネート(ethylmethyl carbonate)等の鎖状カーボネート類、ギ酸メチル(methylformate)、酢酸メチル(methylacetate)、酪酸メチル(methylbutyrate)、プロピオン酸エチル(ethyl propionate)、プロピオン酸プロピル(propyl propionate)等の鎖状エステル類、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)またはその誘導体、1,3-ジオキサン(1,3-dioxane)、1,4-ジオキサン(1,4-dioxane)、1,2-ジメトキシエタン(1,2-dimethoxyethane)、1,4-ジブトキシエタン(1,4-dibutoxyethane)、またはメチルジグライム(methyldiglyme)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(ethylene glycol monopropyl ether)、プロピレンレングリコールモノプロピルエーテル(propylene glycol monopropyl ether)等のエーテル類、アセトニトリル(acetonitrile)、ベンゾニトリル(benzonitrile)等のニトリル類、ジオキソラン(dioxolane)またはその誘導体、エチレンスルフィド(ethylene sulfide)、スルホラン(sulfolane)、スルトン(sultone)またはその誘導体等を、単独で、またはそれら2種以上を混合して使用することができる。なお、前記非水溶媒を2種以上混合して使用する場合、各非水溶媒の混合比は、従来のリチウムイオン二次電池で用いられる混合比が適用可能である。
【0026】
電解質塩としては、例えば、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiPF6-x(C2n+1[但し、1<x<6、n=1or2]、LiSCN、LiBr、LiI、LiSO、Li10Cl10、NaClO、NaI、NaSCN、NaBr、KClO、KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)またはカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiC(CFSO、LiC(CSO、(CHNBF、(CHNBr、(CNClO、(CNI、(CNBr、(n-CNClO、(n-CNI、(CN-maleate、(CN-benzoate、(CN-phtalate、ステアリルスルホン酸リチウム(stearyl sulfonic acid lithium)、オクチルスルホン酸リチウム(octyl sulfonic acid lithium)、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム(dodecyl benzenesulfonic acid lithium)等の有機イオン塩等が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。なお、電解質塩の濃度は、従来のリチウムイオン二次電池で使用される非水電解液と同様でよく、特に制限はない。本実施形態では、前述したようなリチウム化合物(電解質塩)を0.8mol/l以上1.5mol/l以下程度の濃度で含有させた非水電解液を使用することが好ましい。
【0027】
なお、非水電解液には、各種の添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、負極作用添加剤、正極作用添加剤、エステル系の添加剤、炭酸エステル系の添加剤、硫酸エステル系の添加剤、リン酸エステル系の添加剤、ホウ酸エステル系の添加剤、酸無水物系の添加剤、及び電解質系の添加剤等が挙げられる。これらのうちいずれか1種を非水電解液に添加しても良いし、複数種類の添加剤を非水電解液に添加してもよい。
【0028】
<2.本実施形態に係る非水電解質二次電池の特徴構成>
以下に、本実施形態に係る非水電解質二次電池の特徴構成について説明する。
【0029】
(2-1.下地層)
前述した負極は、さらに下地層を備えている。
前記下地層は、前記負極集電体と前記負極合材層との間に設けられて、前記負極合材層が脱落又は剥離することを抑えるものである。
【0030】
前記下地層は、炭素材料と、結着剤(下地層用バインダー)と、分散剤とを含有するものである。
前記炭素材料は、下地層の導電性を高めるためのものであれば特に制限されない。前記炭素材料の具体例としては、例えば、カーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、繊維状炭素およびナノ炭素材料の中から選ばれる一種以上を含有するものを挙げることができる。
前記カーボンブラックの例としては、ファーネスブラック(furnace black)、チャネルブラック(channel black)、サーマルブラック(thermal black)、ケッチェンブラック(ketjen black)、アセチレンブラック(acetylene black)等を挙げることができる。
前記繊維状炭素の例としては、炭素繊維等を挙げることができる。
前記ナノ炭素材料の例としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、単層グラフェン、多層グラフェン等を挙げることができる。
炭素材料の中でも分散が容易であるカーボンブラックを使用することが好ましい。カーボンブラックの中でも導電性が高いアセチレンブラックを使用することがより好ましい。
前記下地層中の炭素材料の含有量は、5質量%以上29質量%以下であることが好ましく、より好ましくは6質量%以上27質量%以下である。炭素材料の含有量が5質量%以上である時前記下地層の導電性が良好となり、6質量%以上である時前記下地層の導電性がより良好となる。一方で炭素材料の含有量を低下させることは、前述した下地層用バインダーや分散剤の含有量を増大させる余地を生むため、前記下地層の良好な接着性の発現や分散性向上につながる。そのため、炭素材料の含有量は29質量%以下であることが好ましく、27質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましい。
【0031】
前記下地層用バインダーは、下地層に含まれる炭素材料等の各成分を互いに結着させるとともに、該下地層と前記負極集電体又は前記負極合材層とを結着させるものである。具体的に本実施形態に係る下地層用バインダーは、スチレン-アクリル酸エステル系共重合体である。
スチレン-アクリル酸エステル系共重合体とは、共重合体の構成単位がスチレン、およびアクリル酸エステルを重合してなる構成が主となっている共重合体のことであり、たとえばスチレンおよびアクリル酸エステルの構成単位を80質量%以上99質量%以下の範囲で含む共重合体である。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸イソボニル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸2-ヒドロキシブチル、アクリル酸2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル、2-アクリオイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、アクリル酸エトキシ-ジエチレングリコール、アクリル酸メトキシ-トリエチレングリコール、アクリル酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸フェノキシ-ポリエチレングリコール、アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリロニトリル、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、及び2-アクリロキシエチルアシッドホスフェート等が挙げられ、好ましくはアクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシルを含む。
【0032】
スチレン-アクリル酸エステル系共重合体は、1質量%以上20質量%以下の範囲でスチレンおよびアクリル酸エステル以外の構成単位を含有していても良い。
スチレン-アクリル酸エステル系共重合体が含有していても良い構成単位としては、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、o-メチルスチレン、o-t-ブチルスチレン、m-t-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、p-クロロスチレン、o-クロロスチレン、などの芳香族ビニル化合物を重合した時の構成単位、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸イソボニル等の不飽和メタクリル酸アルキルエステル化合物、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等の(メタ)アクリル酸系化合物、(メタ)アクリルアミド、(メタ)N-メチルアクリルアミド、(メタ)N-ジメチルアクリルアミド、(メタ)N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、(メタ)N-ブトキシメチルアクリルアミド、(メタ)イソブトキシメチルアクリルアミド、等の不飽和カルボン酸アミド化合物、その他、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシブチル、メタクリル酸2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル、メタクリル酸エトキシ-ジエチレングリコール、メタクリル酸メトキシ-トリエチレングリコール、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸フェノキシ-ポリエチレングリコール、メタクリル酸フェノキシジエチレングリコール、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリロニトリル、及び2-メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート等が重合した時の構成単位が挙げられる。
【0033】
前記スチレン-アクリル酸エステル系共重合体のガラス転移温度は20℃以下であることが好ましく、-20℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度がこの範囲にあるとき、負極合材層を下地層に接着させるときの熱ロールプレスの温度を例えば120℃を超えるような過度に高い温度にしなくとも良好な接着性が得られる。前記スチレン-アクリル酸エステル系共重合体のガラス転移温度は、-15℃以上15℃以下であることがより好ましく、―10℃以上15℃以下であることが特に好ましい。
【0034】
スチレン-アクリル酸エステル系共重合体のガラス転移温度は、共重合体の構成単位の種類と含有量によって調整することができる。スチレン-アクリル酸エステル系共重合体は80質量%以上、99質量%がスチレン、およびアクリル酸エステルを重合した時の構成単位を含有しているので、スチレンとアクリル酸エステルの含有量によって調整できる。たとえばスチレンの単独重合体のガラス転移温度は約100℃であり、アクリル酸2-エチルヘキシルの単独重合体のガラス転移温度は約-55℃であるので、スチレンとアクリル酸2-エチルヘキシルの含有量を調整することで、およそ-55℃から100℃の間のガラス転移温度を持つ共重合体を合成することができる。また、使用する単量体の単独重合体のガラス転移温度が既知であれば、それらの単量体化合物の体積分率からFoxの式を用いて、計算上のガラス転移温度を求めることができ、それを参考にしながら共重合物を合成し、示差走査熱量測定(DSC, Differential Scanning Calorimetry)を行うことによって、-20℃以上20℃以下のガラス転移温度をもったスチレン-アクリル酸エステル系共重合体を得ることができる。
【0035】
前記下地層によって電解液に浸漬した後の前記負極合材層の脱落や剥離を十分に防止するために、前記下地層用バインダーの前記下地層中における含有量は70質量%以上であることが好ましい。また、下地層の導電性を十分に確保するためには前記下地層用バインダーの前記下地層中における含有量は90質量%以下であることが好ましい。前記下地層用バインダーの前記下地層中における含有量は77.5質量%を超えて90質量%以下であることがより好ましく、78質量%以上88質量%以下であることがさらに好ましく、特に好ましくは78質量%以上83質量%以下である。
【0036】
前記分散剤は、前述した炭素材料と下地層用バインダーとを均一に分散させるためのものであり、本実施形態においてはポリアクリル酸がそれに該当する。
ポリアクリル酸は、分子内に複数のカルボキシ基を有しており、これらカルボキシ基がナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンによって中和されている場合がある。
本実施形態で用いるポリアクリル酸は、これらカルボキシ基ができるだけ中和されていないものであることが好ましい。具体的には、ポリアクリル酸が備えるカルボキシ基のうち、中和されているカルボキシ基(中和カルボキシ基)の割合が20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、0%(すなわち未中和)であることが特に好ましい。
前記下地層中の前記分散剤の含有量は、1質量%以上25質量%以下であることが好ましく、2質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。分散剤が1質量%以上である時、前述した炭素材料と下地層用バインダーとを均一に分散でき、2質量%以上である時、より均一に分散することができる。一方で分散剤の含有量を低下させることは、前述した下地層用バインダーや導電剤の含有量を増大させる余地を生むため、前記下地層の良好な接着性の発現や低抵抗化による電池性能向上につながる。そのため、分散剤の含有量は25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
<3.本実施形態に係る非水電解質二次電池の製造方法>
次に、リチウムイオン二次電池の製造方法について説明する。
(3-1.正極の作製方法)
本実施形態に係る正極は、以下のように作製される。
正極合材層は、例えば、正極活物質、導電剤、及び正極用バインダーを所望の割合で混合したものを、混錬して正極合材塊を作成し、この正極合材塊を圧延して正極合材シートを作成し、この正極合材シートを正極集電体上に熱プレスなどによって積層することによって作製することができる。
また、正極合材層を構成する材料を混合したものを、正極スラリー用溶媒に分散させることで、正極スラリーを作製し、この正極スラリーを正極集電体上に塗布し、乾燥させることで、正極合材層を形成するものとしても良い。この場合には、形成した正極合材層をプレス機により所望の密度となるようにプレスするものとしても良い。
【0038】
(3-2.負極の作成方法)
本実施形態に係る負極は、以下のように作製される。
まず、前述した下地層に含有される各成分を水等の溶媒に懸濁してスラリー状にした下地層スラリーを調整し、この下地層スラリーを、負極集電体上に塗布乾燥することによって下地層を形成する。この時、下地層スラリーの塗工量は、乾燥後の下地層の厚みが、例えば、0.5μm以上5μm以下の厚みとなるようにする。乾燥後の下地層の厚みは、0.5μm以上2μm以下とすることがより好ましく、0.5m以上1.5μm以下とすることが特に好ましい。なお、塗布の方法は、特に限定されない。塗布の方法としては、例えば、ナイフコーター(knife coater)法、グラビアコーター(gravure coater)法、リバースロールコーター(reverse roll coater)、スリットダイコーター(slit die coater)等が考えられる。本実施形態における各塗布工程も同様の方法により行われるものとすることができる。
【0039】
次に、負極活物質、導電剤、及び負極用バインダーを所望の割合で混合したものを、混錬して負極合材塊を作成し、この負極合材塊を圧延して負極合材シートを作成する。この負極合材シートを熱ロールプレスなどによって前記下地層上に積層する乾式法によって、負極が作製される。なお、負極合材シートを下地層に乾式法で積層する工程に用いる製造装置は、特に限定されない。負極合材シートを下地層に積層する工程に用いる製造装置としては、ロールプレス装置、熱ロールプレス装置、ドライラミネーター、カレンダー加工装置、ヒートプレス装置等が考えられる。前記積層する工程で、例えば、熱ロールプレス装置を用いる場合、熱ロールプレス装置のプレスロール温度は、負極合材層に使用する材料等によって適宜変更可能であるが、20℃以上150℃以下であることが好ましく、40℃以上120℃以下であることがより好ましく、60℃以上100℃以下であることが特に好ましい。また、プレスロールの回転速度は、分速0.1m以上10m以下であることが好ましく、0.1m以上5m以下であることがより好ましく、0.1m以上1.0m以下であることが特に好ましい。前記プレスロールの温度や前記ロールの回転速度を始めとした各種パラメータは、用いられる熱ロールプレス装置によって好適な範囲が異なる可能性があり、それぞれの熱ロールプレス装置に応じて前記パラメータを調節可能であることは言うまでもない。負極合材シートの積層時には、負極集電体の片面あたりの負極合材層の目付量が10mg/cm以上35mg/cm以下となるように調整する。
また、負極合材層を構成する材料を混合したものを、負極スラリー用溶媒に分散させることで、負極スラリーを作製する。次いで、負極スラリーを負極集電体上に塗布し、乾燥させることで、負極合材層を形成するものとしてもよい。このように負極合材層を塗工・乾燥によって形成する場合には、プレス機により負極合材層を前述した所望の密度となるようにプレスするものとしても良い。
【0040】
(3-3.非水電解質二次電池の作製方法)
次いで、セパレータを正極及び負極で挟むことで、電極構造体を作製する。次いで、電極構造体を所望の形態(例えば、円筒形、角形、ラミネート形、ボタン形等)に加工し、当該形態の容器に挿入する。次いで、当該容器内に非水電解液を注入することで、セパレータ内の各気孔や正極及び負極の空隙に電解液を含浸させる。これにより、リチウムイオン二次電池が作製される。
【0041】
<4.本実施形態による効果>
以上のように構成した非水電解質二次電池によれば、負極合材層の目付量を大きくし、かつ下地層の厚みをできるだけ小さくすることによって、非水電解質二次電池の高エネルギー密度化を図るとともに、負極合材層の電解液浸漬後の集電体からの脱落及び/又は剥離を十分に抑制することができる。
【0042】
<5.本発明に係る他の実施形態>
本発明は、前述した実施形態に限られるものではない。
前述した実施形態では、負極集電体の片面にのみ下地層を形成する場合を説明したが、下地層及び負極合材層が負極集電体の両面に設けられるものとしても良い。
前記実施形態においては、負極集電体と負極合材層との間に下地層を設ける場合について説明したが、本発明に係る下地層は正極集電体と正極合材層との間に設けられて、正極合材層の脱落や剥離を抑制するものとしても良い。
本発明に係る下地層は、固体電解質層を備えない非水電解質二次電池に限らず、固体電解質層を備える半固体二次電池や全固体二次電池などにも適用可能なものである。
その他、本発明はこれら実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【実施例0043】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいてより詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は、あくまでも本発明の一例であり、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
<下地層スラリーの作成>
炭素材料としてアセチレンブラックを、分散剤としてポリアクリル酸を、下地層用バインダーとしてアクリル酸エステル系共重合体(ガラス転移温度は15℃)の水分散液を、それぞれ用いて表1又は表2に示す組成の下地層を形成するための下地層スラリーを作成した。
手順としては、まず前述した炭素材料と分散剤とをディスパーを用いて20分間混合した後、この混合液を吉田工業機械株式会社製NanoVatorにより高圧分散処理した。前記高圧分散処理を3回繰り返し、アセチレンブラック分散液を得た。なお、この分散液を120℃の乾燥炉で乾固させ秤量した結果、分散液中の乾固物の含有量(固形分濃度)は約8質量%であった。
次に固形分濃度40%のバインダーの水分散液と前記アセチレンブラック分散液とを撹拌用容器に投入し、前記攪拌用容器をTHYNKY社製自転・公転ミキサーARE-310に装着して、10分間混合し、下地層スラリーを得た。なお、前記下地層スラリーを乾固させ秤量した結果、下地層スラリー中の乾固物の含有量(固形分濃度)は約15%であった。
下地層スラリー中の各成分の含有割合は、下地層スラリーから溶媒を除去し下地層とした後の下地層100質量部に対する各成分の質量部とほぼ等しいものである。
【0045】
<下地層スラリーの塗工>
負極集電体として厚さ約8μmの銅箔を、正極集電体として厚さ約12μmのアルミニウム箔をそれぞれ用意し、前述した作製方法によって得られた下地層スラリーを各集電体の片面に塗工した。各実施例及び各比較例において負極集電体に塗工した下地層スラリーの組成は、それぞれ表1~4に記載したように様々な組成のものを用いた。一方で、正極集電体に塗工した下地層スラリーは全ての実施例及び比較例において共通であり、比較例1で負極集電体に塗工したものと同じものを用いている。塗工はマイクログラビア塗工機を使用し、下地層の膜厚が1μmとなるよう塗工し、80℃で1分間乾燥して集電体上に下地層を形成した。なお、表2中の比較例2については、下地層スラリーがすぐに固まってしまい、そもそも負極集電体上に下地層スラリーを塗工することができなかった。
【0046】
<負極の作製>
(負極合材シート1の作製)
天然黒鉛、人造黒鉛、単層カーボンナノチューブ、ポリテトラフルオロエチレンの粉体を質量比48.2:48.2:0.1:3.5で秤量し、乳鉢にて10分間混錬した。混錬後の塊状負極合材を2本のロール間に約100回通し、膜厚約180μm、密度1.2g/cmから密度1.4g/cmの負極合材シートを作製した。前述の2本のロール間に塊状負極合材を約100回通す工程において、2本のロールのギャップは3mmから徐々に狭められ、最終的なギャップは約0.1mmであった。
前記の方法で得られた負極合材シートの合材密度を1.6g/cm、負極合材層の目付量を17mg/cmに調整するため、熱ロールプレスを用いて負極合材シートの圧延を行った。圧延ロールの温度を75℃に設定し、ロールの回転速度を分速0.5mに設定した。ロールギャップを30μmに調整し、寸法3.0cm×8.0cmに成形された負極合材シートを長手方向に3から8回通した。前記圧延工程における総圧は3kNで、線圧は100kN/mであった。作製された負極合材シートを15.5φで打ち抜き、その重量と膜厚を測定した。得られた重量と膜厚を用いて算出した負極合材密度および負極合材層の目付量はそれぞれ密度が約1.6g/cm、目付量が約17mg/cmであった。
【0047】
(負極合材シート2の作製)
前記圧延工程で、負極合材シートを圧延ロール間に通す回数を増やすことにより負極合材層の目付量を小さくすることができる。前記の圧延工程でロール間に通す回数のみを25から35回と変更することで、負極合材密度が約1.6g/cm、合材層目付量が約10mg/cmの負極合材シート2を作製した。
【0048】
(負極合材シート3の作製)
前記圧延工程で作製した複数の負極合材シートを重ねてさらに圧延することにより負極合材層の目付量を大きくすることができる。合材密度が約1.6g/cm、合材目付量が約17.5mg/cmの負極シート2枚を面直方向に重ね、前記圧延工程でのロールギャップのみを60μmへと変更することで負極合材密度が約1.6g/cm、合材層目付量が約35mg/cmの負極合材シート3を作製した。
【0049】
(集電体への負極合材シート1の接着)
前述した方法で作製された負極合材シート1を、下地層を形成した集電体上に熱ロールプレスを用いて接着して表1に示す実施例1~9及び比較例1の各負極を作成した。
まず、熱ロールの温度を80℃に設定して、ロールの回転速度を分速0.5mに設定した。ロールギャップを45μmに調整し、膜厚1μmで集電体上に塗工された下地層の上に負極合材シートを乗せ、ロール間に1回通した。なお、各実施例及び比較例で使用しているロールの回転速度条件については、±分速0.2m程度の誤差が生じる場合があるが、製造された負極合材シートの性質への影響はない。また、各実施例及び比較例で使用しているロールギャップの条件についても、±10μm程度の誤差があっても特に問題はない。前記接着工程における総圧は3kNで、線圧は100kN/mあった。このようにして作製された負極を真空乾燥機にて145℃で6時間乾燥した。真空乾燥後の負極を15.5φで打ち抜き重量と膜厚を測定した。得られた重量と膜厚を用いて算出した負極合材密度、および負極合材層の目付量はそれぞれ約1.6g/cm、目付量が約17.0mg/cmであった。
【0050】
(集電体への負極合材シート2、3の接着)
負極合材シート2及び3の接着工程は前述した負極合材シート1の工程で、ロールギャップのみを変更することでなされた。ロールギャップは用いられる負極合材シートの目付量に応じて下記の計算によって得られた値となるよう調整した。
(ロールギャップ)=(用いられる負極合材シートの目付量)÷17×45μm
【0051】
<負極の性能評価試験>
(電解液浸漬後の負極集電体に対する負極合材層の密着性の評価方法)
前述したようにして作製した各負極を電解液と共にアルミラミネート内に投入し、ラミネータで封をし、60℃の恒温槽で3日保存した。電解液には、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネートを20/20/40(体積比)で混合した溶媒に1.15MのLiPFと1.0質量%のビニレンカーボネートを溶解させたものを使用した。投入した電解液の体積は2.0mlであった。3日経った後、前記アルミラミネートを恒温槽から出し、露点-30℃のドライルーム内に移動させた。前記アルミラミネートを開封して負極極板を取り出し、電解液を十分に手早くふき取った。負極極板を幅25mm、長さ80mmの短冊状に切り出した。ついで、両面テープを用いて、前記負極の合材層側の面をステンレス板に張り合わせ、密着性評価用サンプルを作製した。剥離試験機((株)島津製作所社製SHIMAZU EZ-S)に前記密着性評価用サンプルを装着し、剥離速度を100mm/分に設定し、長さ60mmの180度における剥離強度を測定した。
【0052】
(電解液浸漬後の負極集電体に対する負極合材層の密着性の評価基準)
前記剥離強度が2.0g重/mm以上の場合は密着性を◎と評価した。0.5g重/mm以上2.0g重/mm未満の場合は密着性を〇と評価した。0.5g重/mm未満の場合は密着性を×と評価した。結果を表1に示す。
【0053】
<正極の作製>
(正極合材シート1の作成)
LiNi0.8Co0.1Al0.1、アセチレンブラック、ポリテトラフルオロエチレンの粉体を質量比93.0:3.5:3.5で秤量し、乳鉢にて10分間混錬した。混錬後の塊状正極合材を2本のロール間に約100回通し、膜厚約150μm、密度2.9g/cmから密度3.1g/cmの正極合材シートを作成した。前述の2本のロール間に塊状正極合材を約100回通す工程において、2本のロールのギャップは3mmから徐々に狭められ、最終的なギャップは約0.1mmであった。
前記の方法で得られた正極合材シートの正極合材密度、および正極合材層の目付量をそれぞれ3.6g/cm、30.0mg/cmに調整するため、熱ロールプレスを用いて正極合材シートの圧延を行った。熱ロールの温度を40℃に設定し、ロールの回転速度を分速0.5mに設定した。ロールギャップを10μmに調整し、寸法3.0cm×8.0cmに成形された正極合材シートを長手方向に2回通した。次いで、ロールギャップを5μmに調整し、正極合材シートを2回通した。前記圧延工程における総圧は3kNで、線圧は100kN/mであった。作成された正極合材シートを15.5φで打ち抜き、その重量と膜厚を測定したところ、膜厚が約100μm、正極合材密度が約3.6g/cm、目付量が約30.0mg/cmであった。
【0054】
(正極合材シート2の作製)
前記圧延工程で、正極合材シートを圧延ロール間に通す回数を増やすことにより正極合材層の目付量を小さくすることができる。前記の圧延工程でロール間に通す回数のみを25から35回と変更することで、正極合材密度が約3.6g/cm、合材層目付量が約18mg/cmの正極合材シート2を作製した。
【0055】
(正極合材シート3の作製)
前記圧延工程で作製した複数の正極合材シートを重ねてさらに圧延することにより正極合材層の目付量を大きくすることができる。合材密度が約3.6g/cm、合材目付量が約31mg/cmの正極シート2枚を面直方向に重ね、前記圧延工程でのロールギャップのみを60μmへと変更することで正極合材密度が約3.6g/cm、合材層目付量が約62mg/cmの正極合材シート3を作製した。
【0056】
(集電体への正極合材シート1の接着)
前述した方法で作製された正極合材シート1を、下地層を形成することができた集電体上に熱ロールプレスを用いて接着して表1に示す実施例1~5及び比較例1の各正極を作成した。
まず、熱ロールの温度を60℃に設定して、ロールの回転速度を分速0.5mに設定した。ロールギャップを60μmに調整し、膜厚1μmで集電体上に塗工された下地層の上に正極合材シートを乗せ、ロール間に1回通した。なお、各実施例及び比較例で使用しているロールの回転速度条件については、±分速0.2m程度の誤差が生じる場合があるが、製造された正極合材シートの性質への影響はない。また、各実施例及び比較例で使用しているロールギャップの条件についても、±10μm程度の誤差があっても特に問題はない。前記接着工程における総圧は3kNで、線圧は100kN/mであった。このようにして作製された正極を真空乾燥機にて80℃で6時間乾燥した。真空乾燥後の正極を15.5φで打ち抜き重量と膜厚を測定した。得られた重量と膜厚を用いて算出した正極合材密度、および正極合材層の目付量はそれぞれ約3.6g/cm、目付量が約30.0mg/cmであった。
【0057】
(集電体への正極合材シート2、3の接着)
正極合材シート2及び3の接着工程は前述した正極合材シート1の工程で、ロールギャップのみを変更することでなされた。ロールギャップは用いられる正極合材シートの目付量に応じて下記の計算によって得られた値となるよう調整した。
(ロールギャップ)=(用いられる正極合材シートの目付量)÷30×60μm
【0058】
<二次電池セルの作製>
実施例1~5及び比較例1で作製した各負極と正極にそれぞれニッケル線とアルミ線を溶接した後、ポリエチレン製多孔質セパレータを介して負極1枚と正極1枚とを対向させる形で積層させることで、電極積層体を作製した。次いで、アルミラミネートフィルム内に上記の電極積層体を、リード線を外部に引き出した状態で収納し、電解液を注液して減圧封止することで初期充電前二次電池セルを作製した。電解液には、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネートを20/20/40(体積比)で混合した溶媒に1.15MのLiPFと1.0質量%のビニレンカーボネートを溶解させたものを使用した。なお、各実施例比較例において正極と負極との目付量のバランスが最適なものとなるように、実施例1~9及び比較例1、2においては負極合材シート2と正極合材シート2とを、実施例3-10においては負極合剤シート1と正極合シート1とを、実施例3-11においては負極合剤シート3と正極合材シート3とをそれぞれを用いて二次電池セルを作製した。
【0059】
<二次電池セルのエージング>
実施例1~5及び比較例1で作製した各負極と正極とを用いて前記の方法で作製した二次電池セルは充放電を開始する前に、45℃の恒温槽中で12時間保存し、次いで25℃で24時間保存した。
【0060】
<二次電池セルの化成充放電>
実施例1~5及び比較例1で作製した各負極と正極とを用いて前記の方法でエージングした二次電池セルを、充放電装置に接続し、25℃の恒温槽内で化成充放電を行った。初回の充放電は、充電終止電圧4.25V、放電終止電圧2.8Vで、0.1CAで定電流充電後0.05CAで定電圧充電し、0.1CA定電流放電する充放電プログラムを用いて行った。2回目および3回目の充放電は、充電終止電圧4.25V、放電終止電圧2.8Vで、0.2CAで定電流充電後0.05CAで定電圧充電し、0.2CA定電流放電する充放電プログラムを用いてそれぞれ行った。
【0061】
<二次電池セルのレート特性試験>
前述した化成充放電後の二次電池を充電終止電圧4.25Vで、0.33CA定電流充電後0.05CAで定電圧充電し、次いで放電終止電圧2.8Vで、2CAで定電流放電を行った。0.33CAで充電した際の満充電容量をSOC100%と定めた時、2CA定電流放電した際の放電容量がSOC10%に相当する容量になった時の放電電圧を読み取った。前述の方法で読み取った放電電圧が3.85V以上であれば◎、3.75V以上3.85V未満であれば〇、3.5V以上3.85V未満であれば△、3.5V未満を×と評価した。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
<評価結果の考察>
表1の結果から、バインダーの含有量が70質量%以上である下地層を備えた実施例1~9によれば負極合材層の目付量が17mg/cmと十分に大きい場合であり、かつ1μmと十分に小さい厚みの下地層である場合であっても、比較例1と比較して電解液浸漬後の密着性が向上した負極を提供することができることが分かった。
また、表1には記載していないが、実施例1~9の負極では電解液浸漬前の密着力についても3gf/mm以上と十分に大きな値が得られた。また、下地層におけるバインダーの含有量を90質量%以下とすることによって負極合材層の集電体への密着性を十分に大きくしながらも、電池のレート特性を適切な範囲に保つことができることが分かった。
電解液浸漬後の負極合材層の剥離・脱落は二次電池の電気容量の低下、レート性能の低下、寿命特性の低下を引き起こす可能性がある。この点、本発明の実施例1~9で使用した下地層は前述した通り、電解液浸漬後の密着性が十分に大きいため、二次電池の電気容量の向上、レート性能の向上、寿命特性の向上の観点で有利である。
【0064】
以下の表2に示す実施例3~5と比較例2との比較から、分散剤の中和度が25%以下となっていることによって、分散剤が炭素材料に十分吸着し、炭素材料の粒子間で十分に大きな斥力が生じたため炭素材料を下地層スラリー中に十分に分散させることができていると考えられる。
【0065】
【表2】
【0066】
また、実施例3と同じ組成の下地層を膜厚0.5μm以上5μm以下で塗工し、評価した結果を表3に示す。表3の結果によると、膜厚が0.5μm
以上5μm以下と非常に小さいながら十分に大きな電解液浸漬後の密着性が得られることがわかった。また、厚みを5μmとした場合であっても電池の放電電圧には影響がないことが確認できた。
【0067】
【表3】
【0068】
表4に、実施例3と同じ組成の下地層を用いて、負極合材層の目付量を変えて評価した結果を示す。表4を見ると、合材層の目付量が10mg/cm以上35mg/cm以下と大きな場合でも十分な電解液浸漬後の密着性が得られることがわかった。
【0069】
【表4】