(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104689
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】フロー式反応装置、当該フロー式反応装置の洗浄方法及び反応生成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/24 20060101AFI20240729BHJP
【FI】
B01J19/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009036
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100213436
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 直俊
(72)【発明者】
【氏名】中山 栄希
(72)【発明者】
【氏名】酒井 和也
【テーマコード(参考)】
4G075
【Fターム(参考)】
4G075AA02
4G075AA57
4G075BA10
4G075BB05
4G075BD01
4G075BD15
4G075BD22
4G075CA63
4G075DA02
4G075FC02
(57)【要約】
【課題】2つ以上の原料を接触させて反応生成物を生成するフロー式反応装置であって、定置洗浄が可能なフロー式反応装置の提供、当該フロー式反応装置の洗浄方法及び反応生成物の製造方法を提供する。
【解決手段】反応装置100は、第一原料の流体と第二原料の流体とを混合する混合部41を有し、第一原料と第二原料とを連続的に化学反応させて反応生成物を連続的に生成する反応部Mと、反応部Mに第一原料を供給する配管である第一ライン1と、反応部Mに第二原料を供給する配管である第二ライン2と、反応部Mに洗浄液を供給する配管である洗浄ライン3と、を備え、洗浄ラインは、第一ライン1又は第二ライン2に接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一原料の流体と第二原料の流体とを混合する混合部を有し、前記第一原料と前記第二原料とを連続的に化学反応させて反応生成物を連続的に生成する反応部と、
前記反応部に前記第一原料を供給する配管である第一ラインと、
前記反応部に前記第二原料を供給する配管である第二ラインと、
前記反応部に洗浄液を供給する配管である洗浄ラインと、を備え、
前記洗浄ラインは、前記第一ライン又は前記第二ラインに接続されているフロー式反応装置。
【請求項2】
前記洗浄ラインは、前記第一ラインに対して鉛直方向下向きに接続されている請求項1に記載のフロー式反応装置。
【請求項3】
前記第一ラインに配置されたフィルタを更に備え、
前記洗浄ラインは、前記第一ラインにおける、前記フィルタと前記混合部との間に接続されている請求項1に記載のフロー式反応装置。
【請求項4】
請求項1から3に記載のフロー式反応装置の洗浄方法であって、
前記反応部に洗浄液と不活性ガスとを供給する第一洗浄工程と、
前記第一洗浄工程後に行われ、前記反応部に洗浄液のみを供給する第二洗浄工程と、
前記第二洗浄工程後に行われ、前記反応部に洗浄液を滞留させる第三洗浄工程と、
前記第三洗浄工程後に行われ、前記反応部に滞留している洗浄液を新たな洗浄液で置換する第四洗浄工程と、
前記第四洗浄工程後に行われ、前記反応部に滞留している洗浄液の濃度を低下させる第五洗浄工程と、を含む、フロー式反応装置の洗浄方法。
【請求項5】
請求項1から3に記載のフロー式反応装置を用いて第一原料と第二原料とを連続的に化学反応させて反応生成物を連続的に生成する反応工程と、
前記フロー式反応装置の定置洗浄工程と、を含む、反応生成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロー式反応装置、当該フロー式反応装置の洗浄方法及び反応生成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化学反応による反応生成物(化学物質)の製造は、バッチ式の反応装置で行うことが一般的であった。しかし、バッチ式の反応装置で反応生成物を生成する場合、化学反応を生じさせる反応槽中で、反応の対象物(原料)を十分に(たとえば、分子拡散に至るまで)撹拌混合する必要があり、これにより反応時間が長くなるなどして生産効率が低下する場合があった。また、バッチ式の反応装置では、バッチ量を増大させる場合に、化学反応の制御が難しくなる場合もあった。
【0003】
このようなバッチ式の反応装置に対し、原料を連続的に供給して連続的に反応生成物を得るフロー式反応装置では、バッチ式の反応装置を用いるよりも、生産効率を向上させ、また、化学反応の制御が容易となる場合もある。また、フロー式反応装置は、容易に極端な反応条件(例えば高温や高圧)を設定することができるので、バッチ式の反応装置では制御が難しい化学反応を生じさせることができる場合がある。また、フロー式反応装置は、製造の停止及び再開が容易である。また、フロー式反応装置には、災害発生時のスケールが小さく、スケールアップが容易であり、熱的な効率に優れ、設備費用が小額であるという特徴もある。
【0004】
そのため、近年は、フロー式反応装置を用いた反応生成物の製造が着目されている(例えば、特許文献1参照)。また、生産性向上や作業性向上を目的として、反応装置を定置洗浄する事例が増加している(例えば、特許文献2参照)。定置洗浄では、例えば、配管などに洗浄液を通流させる通液洗浄が行われる。
【0005】
特許文献1には、2種以上の原料物質を連続的に反応させるフロー式反応装置が開示されている。このフロー式反応装置は、2種以上の原料物質を混合する混合部と、混合部の二次側に設けられるとともに、原料物質を反応させて生成物を得る反応部と、を備えている。混合部は、2種以上の原料物質を混合する混合器と、混合器にそれぞれの原料物質を供給する2以上の供給経路と、を有する。混合器には2つの供給経路が接続されるとともに、一方の供給経路が、その供給経路と混合器との接続部分の近傍に、混合器から供給
経路へ向かう流体の移動を抑制する抑制機構を有する。
【0006】
特許文献2には、ポリマ溶液を通液するポリマ配管の洗浄方法が記載されている。この洗浄方法では、ポリマ配管内に、溶解性蒸発残留物濃度の高い溶液からなるポリマ配管洗浄液を通液することで、ポリマ配管内に固着したポリマを取り除き洗浄する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-98275号公報
【特許文献2】特開2017-196567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
原料を連続的に供給されて連続的に反応生成物を生成(製造)するため、フロー式反応装置では、原料や反応生成物が通流する配管や、化学反応を生じさせる配管に、原料や生成物が滞留や堆積などし難く、詰まりが生じにくい工夫がされている。しかし、通常は、所定期間ごとにこれら配管の洗浄が必要である。また、周辺の環境変化や人的ミスにより配管に詰まりが生じ、これら配管の洗浄が必要になる場合もある。このような洗浄をフロー式反応装置の分解洗浄によって行う場合、フロー式反応装置の分解と組み立てに手間がかかる場合があり、また、分解と組み立てとに伴う人為的ミスなどに起因してフロー式反応装置の配管や計器を破損する恐れがあった。そのため、フロー式反応装置を分解することなく洗浄する方法(いわゆる定置洗浄方法)の提供が望まれる。
【0009】
しかし、従来の定置洗浄における通液洗浄方法は、例えば、特許文献2に例示されるように単一の配管を対象としたものであり、2つ以上の原料を接触させて反応生成物を生成するフロー式反応装置では十分な洗浄効果を得られない場合があった。そのため、フロー式反応装置に適した定置洗浄方法の提供が望まれる。
【0010】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、2つ以上の原料を接触させて反応生成物を生成するフロー式反応装置であって、定置洗浄が可能なフロー式反応装置の提供、当該フロー式反応装置の洗浄方法及び反応生成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係るフロー式反応装置は、
第一原料の流体と第二原料の流体とを混合する混合部を有し、前記第一原料と前記第二原料とを連続的に化学反応させて反応生成物を連続的に生成する反応部と、
前記反応部に前記第一原料を供給する配管である第一ラインと、
前記反応部に前記第二原料を供給する配管である第二ラインと、
前記反応部に洗浄液を供給する配管である洗浄ラインと、を備え、
前記洗浄ラインは、前記第一ライン又は前記第二ラインに接続されている。
【0012】
上記目的を達成するための本発明に係る、上記フロー式反応装置の洗浄方法は、
前記反応部に洗浄液と不活性ガスとを供給する第一洗浄工程と、
前記第一洗浄工程後に行われ、前記反応部に洗浄液のみを供給する第二洗浄工程と、
前記第二洗浄工程後に行われ、前記反応部に洗浄液を滞留させる第三洗浄工程と、
前記第三洗浄工程後に行われ、前記反応部に滞留している洗浄液を新たな洗浄液で置換する第四洗浄工程と、
前記第四洗浄工程後に行われ、前記反応部に滞留している洗浄液の濃度を低下させる第五洗浄工程と、を含む。
【0013】
上記目的を達成するための本発明に係る反応生成物の製造方法は、
上記に記載のフロー式反応装置を用いて第一原料と第二原料とを連続的に化学反応させて反応生成物を連続的に生成する反応工程と、
前記フロー式反応装置の定置洗浄工程と、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、2つ以上の原料を接触させて反応生成物を生成するフロー式反応装置であって、定置洗浄が可能なフロー式反応装置の提供、当該フロー式反応装置を用いた反応生成物の製造方法及び当該フロー式反応装置の洗浄方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係るフロー式反応装置本実施形態に係るフロー図である。
【
図2】第一ラインに対する洗浄ラインの接続状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係るフロー式反応装置、当該フロー式反応装置の洗浄方法及び反応生成物の製造方法について説明する。
【0017】
(概要の説明)
図1には、本実施形態に係るフロー式反応装置100(以下、反応装置100と称する)のフロー図を示している。
【0018】
まず、反応装置100、反応装置100の洗浄方法及び反応装置100を用いた反応生成物の製造方法の概要を説明する。
【0019】
図1に示すように、反応装置100は、第一原料の流体と第二原料の流体とを混合する混合部41を有し、第一原料と第二原料とを連続的に化学反応させて反応生成物を連続的に生成する反応部Mと、反応部Mに第一原料を供給する配管である第一ライン1と、反応部Mに第二原料を供給する配管である第二ライン2と、反応部Mに洗浄液を供給する配管である洗浄ライン3と、を備え、洗浄ラインは、第一ライン1に接続されている。
【0020】
本実施形態に係る反応装置100の洗浄方法は、反応部Mに洗浄液と不活性ガスとを供給する第一洗浄工程と、第一洗浄工程後に行われ、反応部Mに洗浄液のみを供給する第二洗浄工程と、第二洗浄工程後に行われ、反応部Mに洗浄液を滞留させる第三洗浄工程と、第三洗浄工程後に行われ、反応部Mに滞留している洗浄液を新たな洗浄液で置換する第四洗浄工程と、第四洗浄工程後に行われ、反応部Mに滞留している洗浄液の濃度を低下させる第五洗浄工程と、を含む。
【0021】
反応装置100では、第一原料と第二原料とを連続的に化学反応させて反応生成物を連続的に生成する反応工程と、上記洗浄方法による定置洗浄工程と、を実現可能である。
【0022】
すなわち、反応装置100では、2つ以上の原料を接触させて反応生成物を生成する反応生成物の製造方法を提供することができる。そして、反応装置100は、反応生成物の製造にあたり、定期的に必要となる反応部Mなどの洗浄に関し定置洗浄を実現しており、これにより反応生成物の製造を効率化することができる。
【0023】
反応装置100では、例えば、反応装置100を洗浄するための分解と組み立てとに係る手間を削減することができる。また、この分解と組み立てとに伴う人為的ミスなどに起因した反応装置100の配管や計器の破損のおそれを回避することができる。
【0024】
以下、反応装置100の各部及び反応装置100の洗浄方法(定置洗浄)の詳細を説明する。
【0025】
(反応装置の説明)
反応装置100は、第一原料と第二原料とを連続的に化学反応させて反応生成物を製造する、連続式の化学反応装置である。以下では、第一原料が液体状(流体の一例)であり、第二原料が気体状(流体の一例)である場合を例示して説明する。
【0026】
反応装置100は、上述の、混合部41を有する反応部M、第一ライン1、第二ライン2及び洗浄ライン3に加えて、第一原料を貯留する貯留槽などの原料タンク10(以下、タンク10と称する)、第二原料を貯留するガスボンベなどのボンベ20、洗浄液を貯留する貯留槽などの洗浄タンク30(以下、タンク30と称する)を備えている。
【0027】
第一ライン1は、混合部41に第一原料を供給する配管(配管系統)である。第一ライン1は、タンク10から第一原料の供給を受けて混合部41に供給する。
【0028】
第一ライン1には、タンク10と混合部41との間に、送液ポンプ11(以下、ポンプ11と称する)と、バルブ71と、フィルタ12と、バルブ72が接続される合流部17と、流量計13とがこの順に設けられている。
【0029】
第一ライン1は、第一原料や洗浄液に化学的に安定な材料で形成されていればよい。第一ライン1を形成する材料には、ステンレス、フッ素樹脂(PTFEやPFA)などを用いることができる。
【0030】
ポンプ11は、タンク10から第一原料を吸い上げて混合部41に送り出す、第一ライン1における送液装置である。ポンプ11は、例えばタービンポンプ、ギアポンプ、ダイアフラムポンプ、チューブポンプ、プランジャーポンプなどであってよい。
【0031】
フィルタ12は、第一ライン1を通流する第一原料をろ過して固形物を捕捉するろ過装置である。
【0032】
流量計13は、第一ライン1を通流する第一原料の通流量を計測する流量計測装置である。流量計13の一例は、液体用の質量流量計である。
【0033】
合流部17は、第一ライン1に洗浄ライン3(バルブ72)が合一する合流配管部分である。バルブ72は、第一ライン1への洗浄ライン3からの洗浄液の導入を許容又は禁止する弁装置である。バルブ72は、後述する洗浄ライン3に設けられている。バルブ72は、例えばダイアフラム弁、ボールバルブ又はバタフライ弁であってよい。
【0034】
バルブ71は、第一ライン1を通流する液体(例えば、第一原料や洗浄液)の系外(反応装置100)への排出を許容又は禁止する弁装置である。バルブ71は、例えば洗浄液を系外に排出する洗浄液排出ラインの排水管などに接続されてよい。バルブ71は、例えばダイアフラム弁、ボールバルブ又はバタフライ弁であってよい。
【0035】
第二ライン2は、混合部41に第二原料を供給する配管(配管系統)である。第二ライン2は、ボンベ20から第二原料の供給を受けて混合部41に供給する。
【0036】
第二ライン2には、ボンベ20と混合部41との間に、圧力調整弁21と、バルブ73と、バルブ74と、流量計23とがこの順に設けられている。
【0037】
第二ライン2は、第二原料や洗浄液に化学的に安定な材料で形成されていればよい。第二ライン2を形成する材料には、ステンレス、フッ素樹脂(PTFEやPFA)などを用いることができる。
【0038】
圧力調整弁21は、ボンベ20から吐出する第二原料の圧力を所定の圧力に調整して混合部41に送り出す弁装置である。圧力調整弁21は、例えば減圧弁である。
【0039】
流量計23は、第二ライン2を通流する第二原料の通流量を計測する流量計測装置である。流量計23の一例は、気体用の質量流量計である。
【0040】
バルブ73は、ボンベ20から第二ライン2への第二原料の供給を許容又は禁止する弁装置である。バルブ73は、例えばダイアフラム弁、ボールバルブ、バタフライ弁又はニードルバルブであってよい。
【0041】
バルブ74は、第二ライン2への洗浄用の気体(例えば、窒素のような不活性ガス)の導入を許容又は禁止する弁装置である。バルブ74は、例えば窒素ボンベや不活性ガス発生装置などに接続され、当該窒素ボンベ等から不活性ガスを洗浄用の気体として供給されてよい。バルブ74は、例えばダイアフラム弁、ボールバルブ又はバタフライ弁であってよい。
【0042】
洗浄ライン3は、第一ライン1に洗浄液を供給する配管(配管系統)である。洗浄ライン3は、タンク30から洗浄液の供給を受けて、第一ライン1に供給する。本実施形態では、洗浄ライン3は、バルブ72を介して第一ライン1の合流部17に接続されている。
【0043】
洗浄ライン3は、第一ライン1に対して鉛直方向下向きに接続されるとよい。具体的には、
図2に示すように、洗浄ライン3は、第一ライン1に対する接続部分である合流部17において洗浄液が鉛直方向下向きの流れとなるように、このバルブ72に隣接する洗浄ライン3の配管部分が鉛直方向下向きに延在する下降配管部3aとなるように接続されている。これにより、後述するように、洗浄後において洗浄ライン3(特に下降配管部3a)への洗浄液の残留が抑制される。なお、バルブ72の内部配管も鉛直方向下向きに配置されるとよい。また、洗浄ライン3全体が鉛直方向下向きとなるように配設されてもよい。なお、
図2では、鉛直方向における上向きを方向G1として示し、鉛直方向における下向きを方向G2として示している。また、
図2に示す例では、一例として、第一ライン1が、フィルタ12の側よりも流量計23が鉛直方向において下側に配置される場合を示しているが、第一ライン1の配管の配置はこの例に限られない。
【0044】
図1に示す洗浄ライン3は、洗浄液に化学的に安定な材料で形成されていればよい。洗浄ライン3を形成する材料には、ステンレス、フッ素樹脂(PTFEやPFA)などを用いることができる。
【0045】
洗浄ライン3には、タンク30とバルブ72との間に、洗浄ポンプ31(以下、ポンプ31と称する)と、バルブ75とがこの順に設けられている。
【0046】
ポンプ31は、タンク30から洗浄液を吸い上げてバルブ72に送り出す、洗浄ライン3における送液装置である。ポンプ31は、タービンポンプ、ギアポンプ、ダイアフラムポンプ、チューブポンプ、プランジャーポンプなどであってよい。
【0047】
ポンプ31は、例えば洗浄液を10から1000ml/min程度の流量(例えば、第一ライン1の管径が6.35mmの場合)で送液できるものであればよい。また、ポンプ31は、洗浄液を0から0.5MPa(ゲージ圧)程度の液圧で送液できればよい。通常、ポンプ31は、洗浄液を0.1から0.3MPa(ゲージ圧)で送液できれば足りる。
【0048】
バルブ75は、洗浄ライン3への洗浄用の気体(例えば、窒素のような不活性ガス)の導入を許容又は禁止する弁装置である。バルブ75は、例えば窒素ボンベや不活性ガス発生装置などに接続され、当該窒素ボンベ等から不活性ガスを洗浄用の気体として供給されてよい。バルブ75は、例えばダイアフラム弁、ボールバルブ又はバタフライ弁であってよい。
【0049】
反応部Mは、第一原料と第二原料とを連続的に化学反応させて反応生成物を生成する管型反応器42(以下、反応器42と称する)を有するユニットである。反応部Mは、上述の混合部41と反応器42とに加えて、反応生成物を回収する分離回収装置50(以下、回収装置50と称する)と、混合部41と反応器42と排圧弁43と回収装置50とをこの順に接続する配管4とを有する。
【0050】
混合部41は、第一ライン1と第二ライン2とから供給される第一原料と第二原料とを受け入れて、これらを混合した気液混相流(例えば、スラグ流)を反応器42に送出する混合機構である。混合部41は、例えばスタティックミキサや、ベンチュリ機構を備えたものであってよい。混合部41には、第一原料と第二原料とが、例えば一定の比率で連続的に供給される。混合部41から反応器42には、上記混相流が例えば一定の流速で送り出されていく。
【0051】
反応器42は、混合部41で形成された気液混相流(第一原料と第二原料)が化学反応を完了する反応時間を確保するための、管状に形成された反応場である。反応器42では、この化学反応により、所定の反応生成物が生成する。
【0052】
反応器42は、例えば上記の気液混相流が分離せず、また、この気液混相流が反応器42の管を通流している間に管壁と適度なせん断力を生じて混合状態(混相状態)を維持する程度の内径の管を、例えばコイル状に形成したものであってよい。
【0053】
反応器42は、1/4インチ以下の細い配管で形成するとよい。これにより、反応器42としての管内を通流する上記の気液混相流が重力の影響を受けにくくなり、第一原料と第二原料とがセグメント状に交互に小さく分割した状態(スラグ流)を維持したまま混ざり合うようになる。そのため、この気液混相流において即時に高い混合均一性を実現することが出来る。
【0054】
反応器42における反応時間は、例えば、その管の管径と管長とにより任意に調節可能である。一例をあげると、反応器42の管長を十分に長くして化学反応を十分に進行させて反応生成物の収率を向上させたり、化学的に安定な化合物を反応生成物として得たりすることもできるし、反応器42の管長を短くして化学的には不安定な化合物を反応生成物として得たりすることもできる。
【0055】
反応器42に供給する気液混相流の流量は、第一ライン1のポンプ11の出力及び第二ライン2の圧力調整弁21での調整圧力を調節して第一原料及び第二原料の供給流量を調節することで行える。
【0056】
反応器42に供給する気液混相流の圧力(反応器42内の反応圧力)は、第一ライン1のポンプ11の出力及び第二ライン2の圧力調整弁21での調整圧力、及び排圧弁43の開度又は設定圧力の調節により行える。
【0057】
反応器42では、必要に応じて、管路を加熱又は冷却して反応温度を調節(制御)してよい。
【0058】
反応器42からは、所定の流速で、反応生成物を含む流体(以下、製品流体と記載する)が回収装置50へ排出される。
【0059】
回収装置50は、第一原料と第二原料との反応によって生じた反応生成物を回収する装置又は機構である。
【0060】
回収装置50は、例えば、反応器42から送り出された製品流体を貯留する回収容器51と、回収容器51中の液面レベルを検知するレベルセンサ52と、回収容器51の容器内を減圧する減圧ポンプ53と、を備えてよい。回収装置50では、例えば、後述するように回収容器51を減圧して反応生成物を気化させて分離して回収し、また、反応生成物を回収した後の溶媒(以下、廃液と称する)を分離して反応装置100の系外に排出する。
【0061】
回収容器51と減圧ポンプ53とを接続する配管5aには、回収容器51の容器内から減圧ポンプ53への気体の流出を許容又は禁止するバルブ76が設けられてよい。なお、配管5aは回収容器51の上部に接続されるとよい。
【0062】
回収容器51の底部には、回収容器51から液体(溶媒や洗浄液)を排出する配管5bが接続されてよい。配管5bには、回収容器51からの液体の流出を許容又は禁止するバルブ77と、バルブ77を通過した液体を外部に排出させるバルブ78,79とが設けられてよい。バルブ78は、例えば洗浄液を系外に排出する洗浄液排出ラインの排水管などに接続されてよい。バルブ79は、例えば廃液を系外に排出する廃液ラインの廃液配管などに接続されてよい。なお、バルブ77,78,79は、例えばダイアフラム弁、ボールバルブ又はバタフライ弁であってよい。
【0063】
上述のごとく、回収装置50では、例えば、回収容器51を減圧して反応生成物を気化させて回収する。具体的には例えば、減圧ポンプ53を駆動して回収容器51内を減圧しながら、回収容器51の上部領域から配管5aを介して内部の気体(この例示では反応生成物)を回収容器51の外部(反応装置100の系外、例えば、製品タンク)に排気する。
【0064】
回収装置50では、例えば、レベルセンサ52で回収容器51に製品流体が所定の液面レベルになるまで貯留されたことを検知すると、反応装置100における、第一ライン1及び第二ライン2からの反応部Mへの第一原料及び第二原料の供給を停止してもよい。また、当該検知により、バルブ77,79を開いて廃液を系外に排出してもよい。
【0065】
(定置洗浄に関する説明)
以下では、洗浄ライン3から供給される洗浄液と、バルブ74から供給される不活性ガスとによる反応装置100の定置洗浄について説明する。
【0066】
上述のごとく、洗浄ライン3はバルブ72を介して第一ライン1に接続されている。これにより、洗浄ライン3は、洗浄液を、第一ライン1におけるポンプ11と混合部41との間に供給することができる。
【0067】
このように、洗浄ライン3が洗浄液を、第一ライン1におけるポンプ11と混合部41との間に供給することで、反応装置100において閉塞(詰まり)の生じる可能性が高い、混合部41、反応器42及び排圧弁43並びにこれらを接続する配管4を特に効率よく洗浄することができる(第一洗浄工程の一例)。具体的には、バルブ72の位置からバルブ78に向けて洗浄液を通流させることができる。
【0068】
特に、洗浄ライン3がポンプ11と流量計13の間に接続されることで、洗浄ライン3(バルブ72)からバルブ78に向けて供給される洗浄液の流量を流量計13で監視しながら反応装置100を洗浄することができる。
【0069】
回収装置50は、配管4を介して供給される洗浄液で洗浄することができる。回収装置50の洗浄は、例えば、配管4を介して供給される洗浄液を回収容器51に滞留させて行うことができる。すなわち、回収容器51に滞留させた洗浄液で、回収容器51の内壁などの液接面に付着などしている残留物を溶解したり流し落としたりして回収装置50を洗浄することができる。
【0070】
回収装置50の洗浄時には、回収容器51に滞留させる洗浄液の液面の高さを、製造時における廃液などの液面の高さ以上にするとよい。これにより、回収容器51を適切に洗浄可能となる。なお、洗浄液の液面の高さは、レベルセンサ52で検知すればよい。
【0071】
例えば、反応装置100における反応生成物の製造時において、回収容器51に貯留される製品流体の液面の高さを、回収容器51の有効容量の20%となる高さで制御している場合、回収装置50の洗浄時における、回収容器51に滞留させる洗浄液の液面の高さを、回収容器51の有効容量の40%となる高さとしてよい。
【0072】
回収容器51を洗浄した後の洗浄液は、回収容器51の下部に接続された配管5bのバルブ77,78を介して系外に排出する。これにより、配管5aへの洗浄液の混入、すなわち、配管5aを介して回収される製品としての反応生成物への洗浄液の混入が防止される。
【0073】
本実施形態では、バルブ71とバルブ72との間にフィルタ12が配置されているため、洗浄ライン3から供給する洗浄液は、フィルタ12を通過させた後、バルブ71を介して反応装置100の系外に排出することができる。これにより、フィルタ12を分解することなく通液洗浄することができる。
【0074】
本実施形態において、洗浄ライン3から供給される洗浄液は、フィルタ12を、第一原料の通流方向とは逆向きに通流する。すなわち、フィルタ12は、洗浄液により逆流洗浄される。このように逆流洗浄することで、フィルタ12に捕捉された固形物を効率よく取り除くことができる。
【0075】
本実施形態において、洗浄ライン3は、上述のごとく第一ライン1の水平配管部1aに対して鉛直方向下向きに接続されている。そのため、洗浄ライン3における、鉛直方向に沿って配置された配管部分に存するに洗浄液は、ポンプ31が停止した後、自重で第一ライン1に流れ込む。すなわち、洗浄ライン3が第一ライン1の水平配管部1aに対して鉛直方向下向きに接続されることで、洗浄ライン3と第一ライン1との接続部近傍(バルブ72近傍)における、洗浄終了後の洗浄液の滞留が抑制される。
【0076】
洗浄ライン3から送液される洗浄液は、例えば10から1000ml/min程度の流量で送液されるとよい。また、送液される洗浄液の液圧は0から0.5MPa(ゲージ圧)程度であればよい。通常、洗浄液の液圧は、0.1から0.3MPa(ゲージ圧)で足りる。第一ライン1や配管4を通流する洗浄液の流速は、0.5から50m/sとするとよい。
【0077】
洗浄ライン3から洗浄液を供給する際、これと同時に、バルブ74から不活性ガスを第二ライン2に導入し、反応部Mに洗浄液と不活性ガスとを同時に供給すると、より一層、反応部Mの洗浄効果が高まるため好ましい(第二洗浄工程の一例)。洗浄ライン3から洗浄液を供給する際、バルブ74から不活性ガスを第二ライン2に導入することに代えて、又は、バルブ74から不活性ガスを第二ライン2に導入する操作に加えて、バルブ75から不活性ガスを洗浄ライン3を介して反応部Mに供給してもよい。
【0078】
反応部Mに洗浄液と不活性ガスとを同時に供給すると、洗浄液と不活性ガスとが、反応部M内を、例えばスラグ流のような気液混相流の状態で通流するようになり、反応部Mの管壁や容器内壁などに洗浄液と不活性ガスとが激しく衝突し、また、反応部Mの管壁や容器内壁などに、洗浄液と不活性ガスとが大きなせん断力を与えることができるようになり、反応部Mの洗浄効果が高まるものと考えられる。なお、反応部Mに洗浄液と不活性ガスとを同時に供給する場合、不活性ガスと洗浄液との流量比(洗浄液の流量対不活性ガスの流量)は、例えば体積比(0℃1気圧換算の場合)で、1対1から20対1程度とするとよい。不活性ガスと洗浄液との流量比をこの範囲とすることで、洗浄の効率が向上する。
【0079】
反応装置100の洗浄時は、反応部Mなど各部に洗浄液を通流させた状態で洗浄を行ってもよいが、ある程度洗浄が進んだ段階で、反応部Mなど各部に洗浄液を滞留させて洗浄を行ってもよい(第三洗浄工程の一例)。以下では、反応装置100における、反応部Mなど各部に洗浄液を滞留させて行う洗浄のことを、滞留洗浄と称する場合がある。
【0080】
洗浄対象物が溶解性の物質である場合、ある程度反応装置100洗浄が進んだ段階では、洗浄液への洗浄対象物の溶解量は十分に小さくなる。そのため、滞留洗浄は、洗浄液の通流を継続して洗浄を行う場合に比べて、洗浄液の使用量を小さくすることができ、経済的となる場合がある。
【0081】
洗浄対象物が溶解性の物質である場合であって、特に反応装置100の内部のデッドスペース、例えば、反応部Mの配管4における、混合部41、反応器42及び排圧弁43の継ぎ手部分(例えば、フェルールの接続部)のような部位に洗浄対象物が残留している場合、いたずらに洗浄液の通流を継続させても洗浄対象物の溶解速度が向上しない場合がある。このような場合は、ある程度反応装置100の洗浄が進んだ段階において、反応部M(配管4など)やポンプ11以降の第一ライン1に洗浄液を所定期間滞留させて滞留洗浄を行うと、少ない洗浄液の使用量で、効果的にデッドスペースを洗浄する(デッドスペースに滞留した洗浄対象物を溶解する)ことができるのである。
【0082】
上記のごとく行う滞留洗浄時の洗浄液の静置時間は、洗浄対象物に応じて任意に定めてよい。この静置時間の一例は、10分以上24時間以内である。デットスペースに残留する洗浄対象物を十分に溶解させるためには、静置時間を12時間以上24時間以内とすると好ましい場合がある。なお、静置時間が不足すると、洗浄対象物が完全に溶解せず、反応装置100内に残留してしまう。
【0083】
上記のごとく滞留洗浄を行った後は、反応部Mなどに滞留している(滞留させていた)洗浄液を、新たな洗浄液で置換して仕上げ洗浄を行うとよい(第四洗浄工程の一例)。この仕上げ洗浄は、反応部Mなどへの洗浄液の通液により行ってよい。この仕上げ洗浄により、滞留洗浄で溶解した洗浄対象物を、バルブ71,78を介して反応装置100の系外に排出することができる。
【0084】
仕上げ洗浄を行った後は、バルブ74やバルブ75から第二ライン2や洗浄ライン3に不活性ガスを供給し、反応部Mなど各部に滞留している洗浄液をバルブ78やバルブ71から反応装置100の系外に排出するとよい。以下では、このように洗浄液を反応装置100の系外に押し出すことを、ガスパージと称する。ガスパージは、バルブ74又はバルブ75の何れか一方からのみ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0085】
ガスパージ後は、更に、反応部Mなど各部に残留している洗浄液を、反応生成物の製造に影響しない液体で希釈しつつ(洗浄液の濃度を低下させつつ)、反応装置100の系外に排出するとよい(第五洗浄工程の一例)。これにより、反応装置100内に残留する洗浄液を極力削減し、洗浄後の反応生成物の製造時における、製品としての反応生成物への洗浄液の成分の混入や、この混入に伴う製品品質の低下を抑制することができる。以下では、このように洗浄液を希釈して反応装置100の系外に排出することを、溶液パージと称する。
【0086】
溶液パージで使用する溶媒の一例は、反応生成物の製造時に使用する反応溶媒(第一原料の溶媒成分)である。反応溶媒は、ポンプ11によって第一ライン1から反応部Mなどに供給してもよい。また、タンク30内の洗浄液を反応溶媒に置き換えて、洗浄ライン3から第一ライン1を介して反応部Mなどに供給してもよい。
【0087】
溶液パージの終点の管理は、例えば、バルブ78から排出される溶媒中の洗浄液の濃度を計測し、この濃度に基づいて行ってよい。例えば、この濃度が目標値以下になった場合、溶媒バージを終了してよい。溶媒バージの終了により、反応装置100の定置洗浄は終了する。
【0088】
上記のような定置洗浄に用いる洗浄液について更に具体例を説明する。洗浄液は、必要に応じて温度調整してよい。例えば、洗浄液の温度が高くなると洗浄対象物の溶解度が高くなったり、洗浄対象物の付着力や粘性が低下したりするなどして洗浄しやすくなる場合は、洗浄液の温度を高くして用いてよい。例えば、洗浄液は、0から100℃に温度調整して用いてよい。洗浄液を温調する場合は、例えば、タンク30に温調装置(例えば、加熱装置)を設けるなどして温調してよい。洗浄液は、洗浄ライン3を通流させる過程で温調してもよい。
【0089】
洗浄対象物が、洗浄液の温度が上昇するほど溶解度の高くなる、常温で固体の物質である場合、洗浄液の温度は例えば60から80℃とすると好ましい。
【0090】
例えば、反応装置100で、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒(以下、反応溶媒と称する場合がある)にNaH、NaBH4等の還元剤を含む第一原料と、BF3、BCl3等の三ハロゲン化ホウ素ガスである第二原料とを用い、反応生成物としてジボランを製造(生成)する場合を例示して説明すると、洗浄液の組成は、ホウ酸、テトラヒドロホウ酸ナトリウム、テトラフルオロホウ酸ナトリウム等の塩が溶解する液体であればよい。このような洗浄液として、エタノールなどのアルコール溶媒、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル溶媒及び水を具体例として挙げることができる。
【実施例0091】
以下では、反応装置100を定置洗浄した実施例を説明する。
【0092】
上記実施形態で説明した反応装置100によってジボランを合成(製造)した。そして、ジボランを所定量合成した後、反応装置100の反応部Mの配管4や混合部41などに副生成物(洗浄対象物)が析出してこれら内部が閉塞気味となった。そこで、ジボランの製造を中断し、この反応装置100を定置洗浄した。なお、本実施例における洗浄対象物の主要成分は、ホウ酸、テトラヒドロホウ酸ナトリウム及びテトラフルオロホウ酸ナトリウムである。
【0093】
本実施例における定置洗浄での洗浄液、反応溶媒、洗浄液の送液条件(送液速度、圧力及び温度)及び分析装置は以下のとおりとした。
【0094】
洗浄液には純水を用いた。溶媒パージに用いる反応溶媒にはジエチレングリコールジメチルエーテルを用いた。なお、反応溶媒中の水の濃度は150ppmである。
【0095】
反応溶媒中の水の濃度はカールフィッシャー法で計測した(カールフィッシャー水分計を用いて計測した)。溶媒パージを行った後の反応溶媒中の洗浄液(水)の濃度も同様にカールフィッシャー法で計測した。
【0096】
洗浄液の送液速度は100mL/minとし、洗浄液の供給圧力(ポンプ31の吐出圧)は0.05MPa(ゲージ圧)とした。また、洗浄液の液温は60℃とした。
【0097】
溶媒パージにおける反応溶媒の送液速度は200mL/minとした。
【0098】
本実施例では、以下の手順で定置洗浄を行った。
【0099】
(第一洗浄工程)
まず、バルブ74,77,78を開き、不活性ガスとして窒素(N2)ガス(以下、単に窒素と記載する)を反応部Mに供給した(通流させた)。窒素は、0.9SLM(Standard Litter Min、0℃で1気圧に換算した場合の1分あたり)の流量で供給した。
【0100】
上記窒素の供給後に、更にバルブ72を開き、ポンプ31を駆動して、反応部Mに洗浄液を供給した(通流させた)。洗浄液の供給を15分間継続した。
【0101】
(第二洗浄工程)
第一洗浄工程での洗浄液の供給を15分間継続した後、バルブ74を閉じて窒素の供給を停止した。反応部Mへの洗浄液の供給は継続した。
【0102】
(第三洗浄工程)
引き続いてバルブ77を閉じ、回収容器51に滞留した洗浄液の液面高さが回収容器51の容量の40%まで上昇した直後にポンプ31を停止して洗浄液の供給を停止した。その後、洗浄液の供給を停止した状態で12時間静置した。
【0103】
(第四洗浄工程)
洗浄液の供給を停止して12時間静置した後、バルブ74,77を開き、ポンプ31を駆動して新たな洗浄液を供給し、反応部Mに滞留している洗浄液を新たな洗浄液で置換し、反応部Mに滞留していた洗浄液は反応装置100の系外に排出した。反応部Mへの洗浄液の供給は5分間継続した。
【0104】
(第五洗浄工程)
洗浄液の供給を5分間継続した後、ガスパージと溶媒パージを行った。
【0105】
(ガスパージ)
洗浄液の供給を5分間継続した後ポンプ31を停止した。そして、引き続いてバルブ75を開いて洗浄ライン3に窒素を供給し、第一ライン1内の洗浄液及び反応部M内の洗浄液を、バルブ78を介して反応装置100の系外に排出した。
【0106】
(溶媒パージ)
ガスパージ後、バルブ77,78は一旦閉じ、ポンプ11を駆動して、反応部Mに反応溶媒を供給した。液面高さが回収容器51の容量の50%になるように、バルブ77,78を適宜開閉し反応溶媒を一定時間滞留させた。
【0107】
そして、バルブ77,78を介して排出される反応溶媒中の洗浄液の濃度があらかじめ定めた目標値(例えば、160ppm)よりも低下した後に、ポンプ11を停止して反応溶媒の供給を停止した。そして、回収容器51から反応溶媒を滞留させた状態でバルブ77,78を閉じて洗浄を完了した。
【0108】
この溶媒パージの工程では、反応溶媒の通流開始直後にバルブ78を介して排出される反応溶媒中の洗浄液の濃度は10,000ppmを超えていた。反応溶媒の通流を開始して15分後には、バルブ78を介して排出される反応溶媒中の洗浄液の濃度が192ppmを下回り、更に30分後には目標値(160ppm)を下回る147ppm(溶媒パージに使用する反応溶媒中の水の濃度と同等)まで低下し、洗浄完了を確認できた。
【0109】
図3には、上記の定置洗浄前の継手部(
図3では、一例として混合部41と反応器42との間の継手部を例示)における洗浄対象物による閉塞状況を示す写真(継手を分解した状態の写真)を示している。
図4には、この継手部の洗浄後の状態を示す写真(継手を分解した状態の写真)を示している。
図3,4の比較により、定置洗浄により適切に継手部を洗浄できたことがわかる。
【0110】
各種計器など流路又は管路が分岐する箇所、弁装置内部などの流体が滞留しやすい箇所、継手部など流体の流れを阻害する箇所、接液面の表面が荒くなっている箇所などにおいては、固体状の洗浄対象物が堆積しやすい。そして、これらの箇所では、定置洗浄における洗浄液の通流状態も悪くなりやすいため、従来の定置洗浄方法では洗浄が難しく、洗浄不良を生じやすい。しかし、本実施例では、上記の継手部のごとく洗浄が難しい部分であっても洗浄不良を回避して適切な洗浄を実現できた。
【0111】
また、混合部41や回収装置50などの洗浄状態も確認したところ、これらを分解洗浄した場合と相違ない程度に適切に洗浄されていた。
【0112】
なお、洗浄後の反応装置100を用いてジボランの製造を再開したところ、洗浄後2週間の期間内において、反応装置100の装置安定性、製品ガスとしてのジボランの品質に問題は生じなかった。
【0113】
このように、本実施例では、第一洗浄工程から第五洗浄工程を含む定置洗浄を行うことで、洗浄対象物の確実な除去と洗浄液の残留とを防止し、製品としての反応生成物の品質低下を防止している。また、反応装置100では、このように反応生成物の品質低下を防止できる程度に高いレベルで定置洗浄を実現できることから、この反応装置100を用いた反応生成物の製造方法は、極めて効率的で安全なものとなる。
【0114】
以上のようにして、定置洗浄が可能なフロー式反応装置の提供、当該フロー式反応装置の洗浄方法及び反応生成物の製造方法を提供することができる。
【0115】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、
図1に示すように、洗浄ライン3を第一ライン1に接続する場合を説明した。しかし、洗浄ラインは第一ライン1に接続する場合のみに限られない。洗浄ライン3とは別の洗浄ラインを設け、第二ライン2にこの洗浄ラインを接続して反応装置100の定置洗浄を行ってもよい。
【0116】
この場合、反応装置100には洗浄ライン3と第二ライン2に接続される別の洗浄ラインとを併存させてもよいし、反応装置100において洗浄ライン3に代えて第二ライン2に接続される別の洗浄ラインのみ設けるようにしてもよい。
【0117】
なお、上記実施形態で説明した場合のごとく、第一原料が液体状であり、第二原料が気体状である場合、少なくとも液体状の原料が通流される第一ライン1に洗浄ライン3を接続することが好ましい。なぜならば、液体状の原料が通流されるラインに洗浄ラインを接続した場合、洗浄液の使用後に、その洗浄液を液体状の原料又はその反応溶媒で希釈することができる為である。
【0118】
(2)上記実施形態では、第二ライン2で供給される第二原料が気体状である場合を例示して説明したが、第二ライン2で供給される第二原料は気体状である場合に限られない。第二原料は、液体状であってもよく、この場合、第二ライン2を、例えば第一ライン1のごとく、原料タンクや送液ポンプを有する構成とすればよい。
【0119】
(3)上記実施形態では、ガスパージとして、仕上げ洗浄を行った後に、バルブ74やバルブ75から第二ライン2や洗浄ライン3に不活性ガスを供給し、反応部Mなど各部に滞留している洗浄液をバルブ78やバルブ71から反応装置100の系外に排出する場合を説明した。しかし、ガスパージはこのような態様に限られない。例えば、仕上げ洗浄を行った後に、バルブ75から洗浄ライン3に不活性ガスを供給し、第一ライン1に滞留している洗浄液をバルブ71からのみ反応装置100の系外に排出してもよい。また、仕上げ洗浄を行った後に、バルブ74から第二ライン2に不活性ガスを供給し、第二ライン2や反応部Mに滞留している洗浄液をバルブ77からのみ反応装置100の系外に排出してもよい。バルブ74やバルブ75から供給する不活性ガスは、バルブ71から反応装置100の系外に排出してもよいし、バルブ78から反応装置100の系外に排出してもよい。
【0120】
(4)上記実施形態では、ガスパージとして、仕上げ洗浄を行った後に、バルブ75から洗浄ライン3に不活性ガスを供給し、更にバルブ71から反応装置100の系外に排出してよいことを説明した。すなわち、ポンプ11の二次側から第一ライン1に不活性ガスが供給される場合を説明した。しかし、ガスパージは、バルブ75からバルブ71に向かう方向(第一ライン1においては、二次側から一次側に向かう方向)に不活性ガスを通流させる場合に限られない。例えば、タンク10とポンプ11との間(すなわち、ポンプ11の一次側)に不活性ガスを第一ライン1に供給するバルブを設け、当該バルブから不活性ガスを供給してポンプ11の一次側(フィルタ12や反応部M)に不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0121】
(5)上記実施形態では、反応装置100において、反応部Mが一つの反応器42を有する場合を例示して説明した。しかし、反応部Mは、並列して配置された複数の反応器42を有してもよい。反応部Mは、複数の反応器42を並列して有するようにすることで、容易にスケールアップ可能である。
【0122】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。