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特開2024-104699チルトステージ、極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104699
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】チルトステージ、極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240729BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
H05G2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009057
(22)【出願日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】石井 卓也
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄人
(72)【発明者】
【氏名】萩原 真一
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197AA10
2H197CA10
2H197CA12
2H197CA17
2H197GA05
2H197GA12
2H197GA24
2H197HA03
4C092AA06
4C092AB10
4C092AB12
4C092AC09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】極端紫外光生成装置のターゲット供給装置の姿勢を調整する方法を提供する。
【解決手段】チルトステージは、極端紫外光生成装置のターゲットをチャンバ内の所定領域に供給するターゲット供給装置が載置される載置台と、載置台を少なくとも第1及び第2の軸に対して回転可能に支持する回転支持部と、第1及び第2のチルト支持部と、第1及び第2の調整器と、を備える。第1及び第2のチルト支持部の各々は、ボールとボールに当接する当接面とを含み、載置台を支持する。第1及び第2の調整器の各々は、ボールが当接面で転がるように、ボール及び当接面のいずれかを当接面に垂直な方向及び平行な方向のいずれとも異なる方向に移動させることで、ターゲット供給装置の姿勢を調整する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極端紫外光生成装置のターゲットをチャンバ内の所定領域に供給するターゲット供給装置が載置される載置台と、
前記載置台を少なくとも第1及び第2の軸に対して回転可能に支持する回転支持部と、
第1のボールと前記第1のボールに当接する第1の当接面とを含み、前記載置台を支持する第1のチルト支持部と、
前記第1のボールが前記第1の当接面で転がるように、前記第1のボール及び前記第1の当接面のいずれかを前記第1の当接面に垂直な方向及び平行な方向のいずれとも異なる第1の方向に移動させることで、前記ターゲット供給装置の姿勢を調整する第1の調整器と、
第2のボールと前記第2のボールに当接する第2の当接面とを含み、前記載置台を支持する第2のチルト支持部と、
前記第2のボールが前記第2の当接面で転がるように、前記第2のボール及び前記第2の当接面のいずれかを前記第2の当接面に垂直な方向及び平行な方向のいずれとも異なる第2の方向に移動させることで、前記ターゲット供給装置の姿勢を調整する第2の調整器と、
を備えるチルトステージ。
【請求項2】
請求項1に記載のチルトステージであって、
前記第1のボールの一部が前記チャンバ及び前記載置台のうちの一方に前記第1の方向に移動可能に支持された第1のソケットに複数のソケット内転動体と共に収容されて、前記第1のボールが回転可能に支持され、
前記第1の当接面は、前記チャンバ及び前記載置台のうちの他方に固定された、
チルトステージ。
【請求項3】
請求項2に記載のチルトステージであって、
前記第1のチルト支持部は、前記第1の方向に配置されたレールと、前記第1のソケットを支持して前記レールに沿って移動する移動部と、前記レールと前記移動部との間に配置された複数のリニアガイド転動体と、をさらに含む、チルトステージ。
【請求項4】
請求項1に記載のチルトステージであって、
前記第1のボールの一部が前記チャンバ及び前記載置台のうちの一方に固定された第1のソケットに複数のソケット内転動体と共に収容されて、前記第1のボールが回転可能に支持され、
前記第1の当接面は、前記チャンバ及び前記載置台のうちの他方に前記第1の方向に移動可能に支持された、
チルトステージ。
【請求項5】
請求項4に記載のチルトステージであって、
前記第1のチルト支持部は、前記第1の方向に配置されたレールと、前記第1の当接面を支持して前記レールに沿って移動する移動部と、前記レールと前記移動部との間に配置された複数のリニアガイド転動体と、をさらに含む、チルトステージ。
【請求項6】
請求項1に記載のチルトステージであって、
前記第2のボールの一部が前記チャンバ及び前記載置台のうちの一方に支持された第2のソケットに複数のソケット内転動体と共に収容されて、前記第2のボールが回転可能に支持され、
前記第2の当接面は、前記チャンバ及び前記載置台のうちの他方に支持された、
チルトステージ。
【請求項7】
請求項1に記載のチルトステージであって、
前記第1の当接面と前記第1の方向とが45°未満の角度で交差する、
チルトステージ。
【請求項8】
請求項1に記載のチルトステージであって、
前記第1の当接面は、前記第1の調整器によって前記第1のボール及び前記第1の当接面のいずれかを移動させるときの前記第1のボールの前記第1の当接面に対する移動軌跡に沿った溝を有する、
チルトステージ。
【請求項9】
請求項8に記載のチルトステージであって、
前記溝に垂直な断面に沿った前記溝の曲率半径は、前記第1のボールの曲率半径より大きい、
チルトステージ。
【請求項10】
請求項1に記載のチルトステージであって、
前記回転支持部は、前記第1の当接面に垂直な方向と前記第1の方向との両方に平行な面であって前記第1のボールを通る前記面に位置する、
チルトステージ。
【請求項11】
請求項1に記載のチルトステージであって、
前記回転支持部は、前記第1の調整器によって前記第1のボール及び前記第1の当接面のいずれかを移動させるときの前記第1のボールの回転軸に垂直な面であって前記第1のボールを通る前記面に位置する、
チルトステージ。
【請求項12】
請求項1に記載のチルトステージであって、
前記回転支持部は、前記チャンバ及び前記載置台のうちの一方に固定された第3のボールと、前記チャンバ及び前記載置台のうちの他方に固定され前記第3のボールの一部を複数のソケット内転動体と共に収容して前記第3のボールを回転可能に支持する第3のソケットと、を含む球面軸受で構成される、
チルトステージ。
【請求項13】
請求項12に記載のチルトステージであって、
前記第1~第3のボールの中心を頂点とする三角形を前記ターゲット供給装置の一部が貫通するように前記第1~第3のボールが配置された、
チルトステージ。
【請求項14】
請求項1に記載のチルトステージであって、
前記第1及び第2の軸の両方と交差する第3の軸に対する前記載置台の回転を制限するガイド部材をさらに備える、
チルトステージ。
【請求項15】
請求項1に記載のチルトステージであって、
前記第1のボール及び前記第1の当接面の一方を他方に対して押し付けるバネをさらに備える、
チルトステージ。
【請求項16】
チャンバと、
ターゲットを前記チャンバ内の所定領域に供給するターゲット供給装置と、
チルトステージであって、
前記ターゲット供給装置が載置される載置台と、
前記載置台を少なくとも第1及び第2の軸に対して回転可能に支持する回転支持部と、
第1のボールと前記第1のボールに当接する第1の当接面とを含み、前記載置台を支持する第1のチルト支持部と、
前記第1のボールが前記第1の当接面で転がるように、前記第1のボール及び前記第1の当接面のいずれかを前記第1の当接面に垂直な方向及び平行な方向のいずれとも異なる第1の方向に移動させることで、前記ターゲット供給装置の姿勢を調整する第1の調整器と、
第2のボールと前記第2のボールに当接する第2の当接面とを含み、前記載置台を支持する第2のチルト支持部と、
前記第2のボールが前記第2の当接面で転がるように、前記第2のボール及び前記第2の当接面のいずれかを前記第2の当接面に垂直な方向及び平行な方向のいずれとも異なる第2の方向に移動させることで、前記ターゲット供給装置の姿勢を調整する第2の調整器と、
を備える前記チルトステージと、
を備える、極端紫外光生成装置。
【請求項17】
請求項16に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記ターゲット供給装置の位置を調整する位置ステージと、
前記ターゲットの軌道を検出するターゲットセンサと、
前記ターゲットセンサの検出結果に基づいて前記チルトステージを制御することにより前記ターゲットの軌道の粗調整を行い、前記検出結果に基づいて前記位置ステージを制御することにより前記ターゲットの軌道の微調整を行うプロセッサと、
をさらに備える、極端紫外光生成装置。
【請求項18】
請求項16に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記ターゲット供給装置の位置を調整する位置ステージと、
前記ターゲットの軌道を検出するターゲットセンサと、
前記ターゲットセンサが前記ターゲットの軌道を検出できない場合に前記チルトステージを制御し、前記ターゲットセンサが前記ターゲットの軌道を検出できた場合に前記位置ステージを制御するプロセッサと、
をさらに備える、極端紫外光生成装置。
【請求項19】
電子デバイスの製造方法であって、
チャンバと、
ターゲットを前記チャンバ内の所定領域に供給するターゲット供給装置と、
チルトステージであって、
前記ターゲット供給装置が載置される載置台と、
前記載置台を少なくとも第1及び第2の軸に対して回転可能に支持する回転支持部と、
第1のボールと前記第1のボールに当接する第1の当接面とを含み、前記載置台を支持する第1のチルト支持部と、
前記第1のボールが前記第1の当接面で転がるように、前記第1のボール及び前記第1の当接面のいずれかを前記第1の当接面に垂直な方向及び平行な方向のいずれとも異なる第1の方向に移動させることで、前記ターゲット供給装置の姿勢を調整する第1の調整器と、
第2のボールと前記第2のボールに当接する第2の当接面とを含み、前記載置台を支持する第2のチルト支持部と、
前記第2のボールが前記第2の当接面で転がるように、前記第2のボール及び前記第2の当接面のいずれかを前記第2の当接面に垂直な方向及び平行な方向のいずれとも異なる第2の方向に移動させることで、前記ターゲット供給装置の姿勢を調整する第2の調整器と、
を備える前記チルトステージと、
を備える極端紫外光生成装置によって極端紫外光を生成し、
前記極端紫外光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記極端紫外光を露光する
ことを含む、電子デバイスの製造方法。
【請求項20】
電子デバイスの製造方法であって、
チャンバと、
ターゲットを前記チャンバ内の所定領域に供給するターゲット供給装置と、
チルトステージであって、
前記ターゲット供給装置が載置される載置台と、
前記載置台を少なくとも第1及び第2の軸に対して回転可能に支持する回転支持部と、
第1のボールと前記第1のボールに当接する第1の当接面とを含み、前記載置台を支持する第1のチルト支持部と、
前記第1のボールが前記第1の当接面で転がるように、前記第1のボール及び前記第1の当接面のいずれかを前記第1の当接面に垂直な方向及び平行な方向のいずれとも異なる第1の方向に移動させることで、前記ターゲット供給装置の姿勢を調整する第1の調整器と、
第2のボールと前記第2のボールに当接する第2の当接面とを含み、前記載置台を支持する第2のチルト支持部と、
前記第2のボールが前記第2の当接面で転がるように、前記第2のボール及び前記第2の当接面のいずれかを前記第2の当接面に垂直な方向及び平行な方向のいずれとも異なる第2の方向に移動させることで、前記ターゲット供給装置の姿勢を調整する第2の調整器と、
を備える前記チルトステージと、
を備える極端紫外光生成装置によって生成した極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、
前記検査の結果を用いてマスクを選定し、
前記選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写する
ことを含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、チルトステージ、極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、10nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長約13nmの極端紫外(EUV)光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた半導体露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLPP(Laser Produced Plasma)式の装置の開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0294958号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/0153792号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2015/0179401号明細書
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係るチルトステージは、極端紫外光生成装置のターゲットをチャンバ内の所定領域に供給するターゲット供給装置が載置される載置台と、載置台を少なくとも第1及び第2の軸に対して回転可能に支持する回転支持部と、第1のボールと第1のボールに当接する第1の当接面とを含み、載置台を支持する第1のチルト支持部と、第1のボールが第1の当接面で転がるように、第1のボール及び第1の当接面のいずれかを第1の当接面に垂直な方向及び平行な方向のいずれとも異なる第1の方向に移動させることで、ターゲット供給装置の姿勢を調整する第1の調整器と、第2のボールと第2のボールに当接する第2の当接面とを含み、載置台を支持する第2のチルト支持部と、第2のボールが第2の当接面で転がるように、第2のボール及び第2の当接面のいずれかを第2の当接面に垂直な方向及び平行な方向のいずれとも異なる第2の方向に移動させることで、ターゲット供給装置の姿勢を調整する第2の調整器と、を備える。
【0006】
本開示の1つの観点に係る極端紫外光生成装置は、チャンバと、ターゲットをチャンバ内の所定領域に供給するターゲット供給装置と、チルトステージであって、ターゲット供給装置が載置される載置台と、載置台を少なくとも第1及び第2の軸に対して回転可能に支持する回転支持部と、第1のボールと第1のボールに当接する第1の当接面とを含み、載置台を支持する第1のチルト支持部と、第1のボールが第1の当接面で転がるように、第1のボール及び第1の当接面のいずれかを第1の当接面に垂直な方向及び平行な方向のいずれとも異なる第1の方向に移動させることで、ターゲット供給装置の姿勢を調整する第1の調整器と、第2のボールと第2のボールに当接する第2の当接面とを含み、載置台を支持する第2のチルト支持部と、第2のボールが第2の当接面で転がるように、第2のボール及び第2の当接面のいずれかを第2の当接面に垂直な方向及び平行な方向のいずれとも異なる第2の方向に移動させることで、ターゲット供給装置の姿勢を調整する第2の調整器と、を備えるチルトステージと、を備える。
【0007】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、チャンバと、ターゲットをチャンバ内の所定領域に供給するターゲット供給装置と、チルトステージであって、ターゲット供給装置が載置される載置台と、載置台を少なくとも第1及び第2の軸に対して回転可能に支持する回転支持部と、第1のボールと第1のボールに当接する第1の当接面とを含み、載置台を支持する第1のチルト支持部と、第1のボールが第1の当接面で転がるように、第1のボール及び第1の当接面のいずれかを第1の当接面に垂直な方向及び平行な方向のいずれとも異なる第1の方向に移動させることで、ターゲット供給装置の姿勢を調整する第1の調整器と、第2のボールと第2のボールに当接する第2の当接面とを含み、載置台を支持する第2のチルト支持部と、第2のボールが第2の当接面で転がるように、第2のボール及び第2の当接面のいずれかを第2の当接面に垂直な方向及び平行な方向のいずれとも異なる第2の方向に移動させることで、ターゲット供給装置の姿勢を調整する第2の調整器と、を備えるチルトステージと、を備える極端紫外光生成装置によって極端紫外光を生成し、極端紫外光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上に極端紫外光を露光することを含む。
【0008】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、チャンバと、ターゲットをチャンバ内の所定領域に供給するターゲット供給装置と、チルトステージであって、ターゲット供給装置が載置される載置台と、載置台を少なくとも第1及び第2の軸に対して回転可能に支持する回転支持部と、第1のボールと第1のボールに当接する第1の当接面とを含み、載置台を支持する第1のチルト支持部と、第1のボールが第1の当接面で転がるように、第1のボール及び第1の当接面のいずれかを第1の当接面に垂直な方向及び平行な方向のいずれとも異なる第1の方向に移動させることで、ターゲット供給装置の姿勢を調整する第1の調整器と、第2のボールと第2のボールに当接する第2の当接面とを含み、載置台を支持する第2のチルト支持部と、第2のボールが第2の当接面で転がるように、第2のボール及び第2の当接面のいずれかを第2の当接面に垂直な方向及び平行な方向のいずれとも異なる第2の方向に移動させることで、ターゲット供給装置の姿勢を調整する第2の調整器と、を備えるチルトステージと、を備える極端紫外光生成装置によって生成した極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、検査の結果を用いてマスクを選定し、選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、例示的なLPP式のEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
図2図2は、比較例に係るEUV光生成システムの一部を概略的に示す。
図3図3は、第1の実施形態におけるチルトステージの平面図である。
図4図4は、チルトステージの側面図である。
図5図5は、回転支持部の断面図である。
図6図6は、第1のチルト支持部と、第1の調整器の一部と、の側面図である。
図7図7は、図6のVII-VII線における断面図である。
図8図8は、ガイド機構の断面図である。
図9図9は、第1の実施形態の第1の変形例によるチルトステージの側面図である。
図10図10は、第1の実施形態の第2の変形例によるチルトステージの側面図である。
図11図11は、第1の実施形態の第3の変形例によるチルトステージの側面図である。
図12図12は、第2の実施形態においてターゲット軌道調整を行う動作を示すフローチャートである。
図13図13は、図12のS1及びS2におけるターゲット供給装置の姿勢とターゲットの軌道とを示す。
図14図14は、図12のS3及びS4におけるターゲット供給装置の位置とターゲットの軌道とを示す。
図15図15は、EUV光生成システムに接続された露光装置の構成を概略的に示す。
図16図16は、EUV光生成システムに接続された検査装置の構成を概略的に示す。
【実施形態】
【0010】
<内容>
1.EUV光生成システム11の全体説明
1.1 構成
1.2 動作
2.比較例
2.1 構成
2.2 動作
2.3 比較例の課題
3.第1、第2、及び第3のボール711、721、及び731でターゲット供給装置26を支持するチルトステージ7
3.1 構成
3.1.1 回転支持部73
3.1.2 第1のチルト支持部71及び第1の調整器75
3.1.3 第2のチルト支持部72及び第2の調整器76
3.1.4 ガイド機構74
3.2 動作
3.3 変形例
3.4 作用
4.チルトステージ7と位置ステージ8とを使い分けるEUV光生成装置1
4.1 動作
4.2 作用
5.その他
5.1 EUV光利用装置6の例
5.2 補足
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0012】
1.EUV光生成システム11の全体説明
1.1 構成
図1に、例示的なLPP式のEUV光生成システム11の構成を概略的に示す。EUV光生成装置1は、レーザ装置3と共に用いられる。本開示においては、EUV光生成装置1及びレーザ装置3を含むシステムを、EUV光生成システム11と称する。EUV光生成装置1は、チャンバ2及びターゲット供給装置26を含む。チャンバ2は、密閉可能な容器である。ターゲット供給装置26は、ターゲット物質を含むターゲット27をチャンバ2内部に供給する。ターゲット物質の材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又は、それらの内のいずれか2つ以上の組合せを含んでもよい。
【0013】
チャンバ2の壁には、貫通孔が備えられている。その貫通孔は、ウインドウ21によって塞がれ、ウインドウ21をレーザ装置3から出力されるパルスレーザ光32が透過する。チャンバ2の内部には、回転楕円面形状の反射面を備えたEUV集光ミラー23が配置される。EUV集光ミラー23は、第1及び第2の焦点を備える。EUV集光ミラー23の表面には、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成される。EUV集光ミラー23は、その第1の焦点がプラズマ生成領域25に位置し、その第2の焦点が中間集光点292に位置するように配置される。EUV集光ミラー23の中央部には貫通孔24が備えられ、貫通孔24をパルスレーザ光33が通過する。プラズマ生成領域25は本開示における所定領域に相当する。
【0014】
EUV光生成装置1は、プロセッサ5、ターゲットセンサ4等を含む。プロセッサ5は、制御プログラムが記憶されたメモリ501と、制御プログラムを実行するCPU(central processing unit)502と、を含む処理装置である。プロセッサ5は本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。ターゲットセンサ4は、ターゲット27の存在、軌跡、位置、速度の内の少なくとも1つを検出する。ターゲットセンサ4は、撮像機能を備えてもよい。
【0015】
また、EUV光生成装置1は、チャンバ2の内部とEUV光利用装置6の内部とを連通させる接続部29を含む。EUV光利用装置6は、図15に示される露光装置6aでもよいし図16に示される検査装置6bでもよい。接続部29内部には、アパーチャが形成された壁291が備えられる。壁291は、そのアパーチャがEUV集光ミラー23の第2の焦点に位置するように配置される。
【0016】
さらに、EUV光生成装置1は、レーザ光伝送装置34、レーザ光集光ミラー22、ターゲット27を回収するためのターゲット回収部28等を含む。レーザ光伝送装置34は、レーザ光の伝送状態を規定するための光学素子と、この光学素子の位置、姿勢等を調整するためのアクチュエータとを備える。
【0017】
1.2 動作
図1を参照して、EUV光生成システム11の動作を説明する。レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光伝送装置34を経て、パルスレーザ光32としてウインドウ21を透過してチャンバ2内に入射する。パルスレーザ光32は、レーザ光経路に沿ってチャンバ2内を進み、レーザ光集光ミラー22で反射されて、パルスレーザ光33としてプラズマ生成領域25に導かれる。
【0018】
ターゲット供給装置26は、ターゲット27をチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出力する。ターゲット27には、パルスレーザ光33が照射される。パルスレーザ光33が照射されたターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマから放射光251が放射される。放射光251に含まれるEUV光は、EUV集光ミラー23によって他の波長域の光に比べて高い反射率で反射される。EUV集光ミラー23によって反射されたEUV光を含む反射光252は、中間集光点292で集光され、EUV光利用装置6に出力される。なお、1つのターゲット27に、パルスレーザ光33に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。以下の説明において、EUV光の出力方向を+Z方向とし、ターゲット27の出力方向を+Y方向とする。+Z方向及び+Y方向は互いに垂直であり、+Z方向及び+Y方向の両方に垂直な方向を+X方向及び-X方向とする。
【0019】
プロセッサ5は、EUV光生成システム11全体を制御する。プロセッサ5は、ターゲットセンサ4の検出結果を処理する。ターゲットセンサ4の検出結果に基づいて、プロセッサ5は、ターゲット27が出力されるタイミング、ターゲット27の出力方向等を制御する。さらに、プロセッサ5は、レーザ装置3の発振タイミング、パルスレーザ光32の進行方向、パルスレーザ光33の集光位置等を制御する。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御が追加されてもよい。
【0020】
2.比較例
2.1 構成
図2は、比較例に係るEUV光生成システム11の一部を概略的に示す。本開示の比較例とは、出願人のみによって知られていると出願人が認識している形態であって、出願人が自認している公知例ではない。図2において、チャンバ2、レーザ光集光ミラー22、EUV集光ミラー23、レーザ光伝送装置34等の図示は省略されている。図2に示されるように、比較例に係るEUV光生成装置1は、X軸軌道センサ4xと、Z軸軌道センサ4zと、照明装置41と、位置ステージ8と、を含む。
【0021】
X軸軌道センサ4x、Z軸軌道センサ4z、及び照明装置41が、ターゲットセンサ4(図1参照)を構成する。X軸軌道センサ4x及びZ軸軌道センサ4zの各々は、例えば、撮像装置を含み、ターゲット供給装置26からプラズマ生成領域25に向けて移動するターゲット27を撮像して画像データを生成するように構成されている。
【0022】
X軸軌道センサ4xは、ターゲット27の軌道Tからみて略-Z方向の位置に配置され、ターゲット27の軌道Tを-Z方向の位置から検出する。ターゲット27の軌道Tの位置が+X方向又は-X方向に変更された場合、X軸軌道センサ4xによって取得された画像におけるターゲット27の像の位置が、+X方向又は-X方向に移動する。従って、プロセッサ5は、X軸軌道センサ4xから出力された画像データに基づいてターゲット27の軌道TのX軸における検出位置を算出することができる。
【0023】
Z軸軌道センサ4zは、ターゲット27の軌道Tからみて略-X方向の位置に配置され、ターゲット27の軌道Tを-X方向の位置から検出する。ターゲット27の軌道Tの位置が+Z方向又は-Z方向に変更された場合、Z軸軌道センサ4zによって取得された画像におけるターゲット27の像の位置が、+Z方向又は-Z方向に移動する。従って、プロセッサ5は、Z軸軌道センサ4zから出力された画像データに基づいてターゲット27の軌道TのZ軸における検出位置を算出することができる。
【0024】
X軸軌道センサ4x及びZ軸軌道センサ4zの各々は、プラズマ生成領域25の近傍のターゲット27、例えばプラズマ生成領域25に到達する直前のターゲット27を撮像するように配置される。X軸軌道センサ4xの検出範囲Vx及びZ軸軌道センサ4zの検出範囲Vzは、これらのセンサの光学系によって決まる画角及び焦点深度によって規定される。X軸軌道センサ4xの検出範囲VxとZ軸軌道センサ4zの検出範囲Vzとは、互いに重複する空間Vxzを含む。ターゲット供給装置26からプラズマ生成領域25に向かうターゲット27の理想的な軌道が空間Vxzのほぼ中心を貫通するように、X軸軌道センサ4x及びZ軸軌道センサ4zの各々が位置合わせされている。
【0025】
照明装置41は、ターゲット27をレーザ光である照明光43で照明する。照明光43の光路に、空間Vxzが含まれる。
【0026】
位置ステージ8は、ターゲット供給装置26に接続されている。位置ステージ8は、プラズマ生成領域25に対するターゲット供給装置26の位置を変更することにより、ターゲット27の軌道Tを変更するように構成されている。例えば、位置ステージ8は、ターゲット供給装置26の位置をX軸方向とZ軸方向とに移動することにより、ターゲット27の軌道TをX軸方向とZ軸方向とに変更することができる。
【0027】
2.2 動作
照明装置41は、プロセッサ5による制御に従って照明光43を生成する。ターゲット27が空間Vxzを通過するときに、ターゲット27が照明光43によって照明される。
【0028】
X軸軌道センサ4x及びZ軸軌道センサ4zの各々は、ターゲット27によって反射された照明光43の一部を受光する。X軸軌道センサ4x及びZ軸軌道センサ4zの各々は、照明光43によって照明されたターゲット27を撮像して画像データを生成し、画像データをプロセッサ5に出力する。X軸軌道センサ4x及びZ軸軌道センサ4zによる撮像のタイミングは、プロセッサ5によって制御される。
【0029】
プロセッサ5は、X軸軌道センサ4x及びZ軸軌道センサ4zから画像データを受信し、X軸及びZ軸の各々においてターゲット27の軌道Tの検出位置を算出する。プロセッサ5は、X軸及びZ軸の各々における検出位置と、X軸及びZ軸の各々におけるターゲット27の軌道Tの目標位置とに基づいて、位置ステージ8を制御する。すなわち、プロセッサ5は、ターゲット27の軌道TがX軸及びZ軸の各々における目標位置に近づくように、位置ステージ8をX軸方向とZ軸方向とに制御する。位置ステージ8がターゲット供給装置26の位置を変更することにより、その後に出力されるターゲット27の軌道Tが変更される。これにより、ターゲット27がプラズマ生成領域25に到達するように、ターゲット27の軌道Tが制御される。
【0030】
レーザ装置3は、図示しないプリパルスレーザ装置及びメインパルスレーザ装置を含んでもよい。プリパルスレーザ装置から出力されるプリパルスレーザ光はターゲット27に照射されて、ターゲット27を拡散させて拡散ターゲットを生成させる。メインパルスレーザ装置から出力されるメインパルスレーザ光は、拡散ターゲットに照射されて拡散ターゲットに含まれるターゲット物質をプラズマ化させる。図示しない複数のプリパルスレーザ装置から複数のプリパルスレーザ光を1つのターゲット27に順次照射することにより、拡散ターゲットを生成させてもよい。
【0031】
X軸軌道センサ4x又はZ軸軌道センサ4zは、ターゲット27がY軸における所定の位置を通過したタイミングを示す通過タイミング信号を出力する。プロセッサ5は、通過タイミング信号に基づいて、レーザ装置3を制御してレーザ光33aを出力させる。さらに、プロセッサ5は、通過タイミング信号に基づいて、上述のレーザ光伝送装置34のアクチュエータを制御することにより、Y軸におけるレーザ光33aの集光位置を調整する。
【0032】
また、プロセッサ5は、X軸におけるターゲット27の軌道Tの検出位置に基づいて、レーザ光伝送装置34のアクチュエータを制御することにより、X軸におけるレーザ光33aの集光位置を調整する。
【0033】
2.3 比較例の課題
ターゲット供給装置26を連続稼働していると、ターゲット供給装置26のノズルにターゲット物質が付着して、ターゲット27の軌道Tが大きくずれてくることがあり得た。ターゲット27の軌道Tが大きくずれると、位置ステージ8によるターゲット27の軌道Tの調整しろを超えてしまい、ターゲット27をプラズマ生成領域25に供給できなくなり得た。
【0034】
ターゲット27の軌道Tの調整しろを大きくするために、チルトステージを設けてターゲット供給装置26を傾け、ターゲット27の出力方向を変更することが考えられる。しかし、ターゲット供給装置26の荷重に耐えるチルトステージを実現することが難しかった。例えば、チルトステージの回転軸に弾性ヒンジを用いることが考えられるが、弾性ヒンジは大きな荷重には耐えられない場合がある。また、チルトステージにすべり摩擦が生じる部分があると、大きな荷重がかかれば摩擦面に焼き付きが生じる場合がある。チルトステージには設置スペースの制約もあるため、耐荷重や摩擦特性を改善するために複雑な構造をとることも好ましくはない。
【0035】
以下に説明する実施形態は、EUV光生成装置1のターゲット供給装置26を傾けることでターゲット27の軌道Tを変えられるように、コンパクトな構造で大きな荷重にも耐え得るチルトステージ7を提供することに関連している。
【0036】
3.第1、第2、及び第3のボール711、721、及び731でターゲット供給装置26を支持するチルトステージ7
3.1 構成
図3は、第1の実施形態におけるチルトステージ7の平面図である。図3には、チルトステージ7を載置するX方向移動板82と、チャンバ2の一部と、が併せて示されている。図4は、チルトステージ7の側面図である。図4には、ターゲット供給装置26の一部の断面と、X方向移動板82を含む位置ステージ8の断面と、チャンバ2の一部の断面と、が併せて示されている。チャンバ2に位置ステージ8が載置され、位置ステージ8にチルトステージ7が載置され、チルトステージ7にターゲット供給装置26が載置される。
【0037】
位置ステージ8は、固定板80と、固定板80に載置されたZ方向移動板81と、Z方向移動板81に載置されたX方向移動板82と、を含む。固定板80とZ方向移動板81との間にはZ方向リニアガイド8zが配置され、Z方向移動板81とX方向移動板82との間にはX方向リニアガイド8xが配置されている。固定板80はチャンバ2に対して固定されているが、固定板80にかかる荷重をチャンバ2が支持しているとは限らない。固定板80とチャンバ2との位置関係が変化しないように、チャンバ2とは別の部材が固定板80を支持していてもよい。
【0038】
Z方向リニアガイド8z及びX方向リニアガイド8xの各々はプロセッサ5(図1参照)によって制御される図示しないアクチュエータを含む。Z方向リニアガイド8zによってZ方向移動板81が固定板80に対しZ軸方向に移動可能であり、X方向リニアガイド8xによってX方向移動板82がZ方向移動板81に対しX軸方向に移動可能である。従って、Z方向リニアガイド8z及びX方向リニアガイド8xによって、X方向移動板82は固定板80に対しZ軸方向及びX軸方向に移動可能である。
【0039】
チルトステージ7は、ターゲット供給装置26が載置される載置台70と、第1及び第2のチルト支持部71及び72と、回転支持部73と、ガイド機構74と、第1及び第2の調整器75及び76と、を含む。第1及び第2のチルト支持部71及び72と、回転支持部73とは、X方向移動板82と載置台70との間に位置して載置台70を支持する。
【0040】
第1のチルト支持部71、第2のチルト支持部72、及び回転支持部73は、それぞれ第1のボール711、第2のボール721、及び第3のボール731を含む。載置台70は第1、第2、及び第3のボール711、721、及び731の3点で支持される。第2のボール721の上端と第3のボール731の中心とを結ぶ軸を第1の軸Ax1とし、第1のボール711の上端と第3のボール731の中心とを結ぶ軸を第2の軸Ax2とする。第3のボール731の中心を通りY軸方向に平行な軸を第3の軸Ax3とする。第3の軸Ax3は第1及び第2の軸Ax1及びAx2の両方と交差する。
【0041】
ターゲット供給装置26の一部であるノズル261は、載置台70の中央に形成された貫通孔を貫通している。ノズル261は、さらに、第1、第2、及び第3のボール711、721、及び731のそれぞれの中心を頂点とする三角形を貫通する。
【0042】
ノズル261から出力されたターゲット27はチャンバ2の貫通孔を通ってチャンバ2の内部に供給される。載置台70の貫通孔とチャンバ2の貫通孔との間にはフレキシブル管262が接続されている。フレキシブル管262の内部の圧力はチャンバ2の内部の圧力と同等であり、大気圧の5分の1未満である。フレキシブル管262はその内外の圧力差に耐える強度を有している。チルトステージ7には、ターゲット供給装置26の重量に起因する荷重だけでなく、大気圧に起因する荷重もかかる。
【0043】
3.1.1 回転支持部73
図5は、回転支持部73の断面図である。図5図4におけるV-V線に沿った断面の一部に相当する。回転支持部73は、第3のボール731と、第3のソケット732と、を含む球面軸受で構成される。第3のボール731はロッド733を介して載置台70に固定される。第3のソケット732は第3のボール731の一部を複数のソケット内転動体73aと共に収容して第3のボール731を回転可能に支持する。ソケット内転動体73aは、第3のボール731と第3のソケット732との間で転がることでこれらの間の摩擦を軽減している。第3のソケット732は、X方向移動板82に固定されることにより、位置ステージ8を操作しない限りチャンバ2に固定された状態となる。
【0044】
第3のボール731は、第3のソケット732の内部で3自由度の回転が可能となっている。すなわち、互いに直交する任意の3つの軸のいずれの軸周りにも回転可能となっている。但し、第3の軸Ax3周りの回転はターゲット27の出力方向にほぼ影響がないので、第3の軸Ax3周りの回転は抑制されてもよい。載置台70は、少なくとも第1及び第2の軸Ax1及びAx2(図3参照)に対して回転可能に支持される。
【0045】
3.1.2 第1のチルト支持部71及び第1の調整器75
図6は、第1のチルト支持部71と、第1の調整器75の一部と、の側面図である。図6は、図4の囲み線VI付近の構成を、第1の調整器75によって第1のボール711が第1の方向D1に移動するときの第1のボール711の回転軸R1と平行な方向に見たものに相当する。すなわち、図6における視線の方向は、第1の方向D1に垂直である。図7は、図6のVII-VII線における断面図である。図7は、後述の溝718の方向に垂直な断面に相当する。
【0046】
第1のチルト支持部71は、第1のボール711と、第1のソケット712と、レール715と、移動部716と、傾斜部材719と、複数のソケット内転動体71aと、複数のリニアガイド転動体71b及び71cと、を含む。第1のソケット712は、第1のボール711の一部をソケット内転動体71aと共に収容して第1のボール711を回転可能に支持する。ソケット内転動体71aは、第1のボール711と第1のソケット712との間で転がることでこれらの間の摩擦を軽減している。
【0047】
レール715は第1の方向D1に沿って配置され、X方向移動板82(図4参照)に固定されている。移動部716は、第1のソケット712を支持した状態で、レール715に沿って移動する。レール715の上面と移動部716との間にはリニアガイド転動体71bが配置され、レール715の側面と移動部716との間にはリニアガイド転動体71cが配置されている。リニアガイド転動体71b及び71cは、レール715と移動部716との間で第1の方向D1に転がることでこれらの間の摩擦を軽減している。レール715と移動部716との間で転がって移動部716の一端に達したリニアガイド転動体71b及び71cは、移動部716の内部の循環路(図示せず)を通って移動部716の他端に戻される。
【0048】
傾斜部材719は、第1のボール711に当接する第1の当接面717を含む部材であって、載置台70に固定されている。第1の方向D1は、第1の当接面717に垂直な方向及び平行な方向のいずれとも異なる方向である。第1の当接面717に非垂直な方向に第1のボール711が移動することで、第1のボール711が第1の当接面717で転がる。第1の当接面717に非平行な方向に第1のボール711が移動することで、第1の当接面717がY軸方向成分を含む移動方向に移動する。図3を参照しながら説明したように、載置台70は第1、第2、及び第3のボール711、721、及び731の3点で支持されているので、第1の当接面717がY軸方向成分を含む移動方向に移動することで、載置台70は第1の軸Ax1周りに回転する。なお、第1の方向D1と第1の当接面717とが交差する角度θは、45°未満であることが望ましい。
【0049】
第1の当接面717は、第1のボール711が転がるときの第1の当接面717に対する移動軌跡に沿った溝718を有することが望ましい。また、溝718に垂直な断面に沿った溝718の曲率半径は、第1のボール711の曲率半径より大きいことが望ましい。但し、溝718がなく第1の当接面717が平らな面であってもよい。
【0050】
第1の調整器75は、X方向移動板82に固定されると共に、調整棒77を介して移動部716に接続されている。第1の調整器75は、プロセッサ5(図1参照)によって制御される図示しないアクチュエータを含み、調整棒77を第1の方向D1に進退させることで移動部716を移動させる。あるいは、第1の調整器75はX方向移動板82に固定された雌ネジと調整棒77に固定された雄ネジとを含み、雌ネジに対して雄ネジを手動で回転させることで調整棒77を進退させるように構成されてもよい。
【0051】
第1のボール711が第1の当接面717を押圧するときに、載置台70は、第3の軸Ax3周りの回転方向の力を受けないか、あるいはその力は小さいことが望ましい。第1のボール711と第1の当接面717との摩擦が0であると仮定した場合、第1のボール711は第1の当接面717に垂直な方向に載置台70を押圧する。実際には摩擦は0ではなく、第1のボール711が移動する第1の方向D1の方向成分を含む摩擦力も、載置台70を押圧する。そこで、第1の当接面717に垂直な方向と第1の方向D1との両方に平行な仮想の面P1であって第1のボール711を通る面P1に回転支持部73を配置することで、載置台70が第3の軸Ax3周りに回転することを抑制し得る。面P1は第1のボール711の回転軸R1に垂直であるので、回転軸R1に垂直な仮想の面P1であって第1のボール711を通る面P1に回転支持部73を配置することとしてもよい。
【0052】
3.1.3 第2のチルト支持部72及び第2の調整器76
第2のボール721、第2のソケット722、第2の当接面727等を含む第2のチルト支持部72、及び第2の調整器76(図3参照)については、詳細の図示及び説明を省略する。第2のチルト支持部72及び第2の調整器76は、第1のチルト支持部71及び第1の調整器75とほぼ鏡像対称である点以外は第1のチルト支持部71及び第1の調整器75と同様である。第2の調整器76によって第2のボール721が回転軸R2で回転しながら第2の方向D2に移動する。回転支持部73は、第2の当接面727に垂直な方向と第2の方向D2との両方に平行な仮想の面P2であって第2のボール721を通る面P2に位置する。
【0053】
3.1.4 ガイド機構74
図8は、ガイド機構74の断面図である。ガイド機構74は、ガイド部材741と、バネ743と、押さえ部材744と、を含む。押さえ部材744はX方向移動板82との距離が一定となるように固定されている。ガイド部材741は、棒状の部材であって、上端が押さえ部材744に固定され、下端がX方向移動板82に固定され、上端と下端との間の一部が載置台70に形成された切り欠き742に挿し込まれる。載置台70の第3の軸Ax3周りの回転はガイド部材741によって制限される。
【0054】
バネ743は、載置台70を下方に押し付けることで、第1のボール711及び第1の当接面717の一方を他方に対して押し付ける。バネ743はコイルバネであって、バネ743をガイド部材741が貫通するように配置することでバネ743の位置ずれが抑制される。バネ743は、押さえ部材744と載置台70との間に圧縮コイルバネとして配置されてもよいし、載置台70とX方向移動板82との間に引っ張りコイルバネ(図示せず)として配置されてもよい。
【0055】
3.2 動作
第1のチルト支持部71を動作させることにより、載置台70が第1の軸Ax1周りに回転し、第2のチルト支持部72を動作させることにより、載置台70が第2の軸Ax2周りに回転する。第1及び第2のチルト支持部71及び72の動作を組み合わせることにより、Y軸に平行な軸周りの回転以外のあらゆる回転方向で載置台70を回転させ、ターゲット供給装置26を傾けることができる。例えば、第1及び第2のボール711及び721の一方を第3のボール731に近づく方向に移動させ、他方を第3のボール731から遠ざかる方向に移動させると、載置台70はZ軸に平行な軸周りに回転する。第1及び第2のボール711及び721の両方を第3のボール731に近づく方向に移動させ、あるいは両方を第3のボール731から遠ざかる方向に移動させると、載置台70はX軸に平行な軸周りに回転する。
【0056】
3.3 変形例
図9は、第1の実施形態の第1の変形例によるチルトステージ7の側面図である。図9においては、図4の構成に対して載置台70以外のチルトステージ7の構成部材の上下が逆になっている。すなわち、第1のボール711は、第1の方向D1に移動できるように第1のソケット712及びレール715等を介して載置台70に支持され、第1の当接面717は、X方向移動板82に固定される。第3のボール731は、ロッド733を介してX方向移動板82に固定され、第3のソケット732は載置台70に固定されてもよい。
【0057】
図10は、第1の実施形態の第2の変形例によるチルトステージ7の側面図である。図10の構成は、図4の構成に対して、第1のボール711が第1のソケット712を介して載置台70に固定され、第1の当接面717は、第1の方向D1に移動できるようにレール715を介してX方向移動板82に支持される点で異なる。
【0058】
図11は、第1の実施形態の第3の変形例によるチルトステージ7の側面図である。図11においては、図10の構成に対して載置台70以外のチルトステージ7の構成部材の上下が逆になっている。すなわち、第1のボール711は、第1のソケット712を介してX方向移動板82に固定され、第1の当接面717は、第1の方向D1に移動できるようにレール715を介して載置台70に支持される。第3のボール731は、ロッド733を介してX方向移動板82に固定され、第3のソケット732は載置台70に固定されてもよい。
【0059】
3.4 作用
(1)第1の実施形態においては、チルトステージ7は、載置台70と、回転支持部73と、第1及び第2のチルト支持部71及び72と、第1及び第2の調整器75及び76と、を備える。載置台70には、EUV光生成装置1のターゲット27をチャンバ2内のプラズマ生成領域25に供給するターゲット供給装置26が載置される。回転支持部73は、載置台70を少なくとも第1及び第2の軸Ax1及びAx2に対して回転可能に支持する。第1のチルト支持部71は、第1のボール711と第1のボール711に当接する第1の当接面717とを含み、載置台70を支持する。第1の調整器75は、第1のボール711が第1の当接面717で転がるように、第1のボール711及び第1の当接面717のいずれかを第1の当接面717に垂直な方向及び平行な方向のいずれとも異なる第1の方向D1に移動させることで、ターゲット供給装置26の姿勢を調整する。第2のチルト支持部72は、第2のボール721と第2のボール721に当接する第2の当接面727とを含み、載置台70を支持する。第2の調整器76は、第2のボール721が第2の当接面727で転がるように、第2のボール721及び第2の当接面727のいずれかを第2の当接面727に垂直な方向及び平行な方向のいずれとも異なる第2の方向D2に移動させることで、ターゲット供給装置26の姿勢を調整する。
【0060】
これによれば、第1及び第2の当接面717及び727における第1及び第2のボール711及び721の転がりによってターゲット供給装置26の姿勢を調整することで、第1及び第2のチルト支持部71及び72における摩擦を低減し、接触面における焼き付きを抑制し得る。ターゲット27の軌道Tのずれが位置ステージ8の調整範囲を超える場合であっても、ターゲット供給装置26を傾けてターゲット27の出力方向を変更することにより、軌道Tのずれを軽減し得る。また、第1及び第2のチルト支持部71及び72と回転支持部73とを用いた簡易な構成でチルトステージ7を構成でき、載置台70とチャンバ2との間の設置スペースを大幅に拡大しなくてもターゲット27の出力方向を変更し得る。
【0061】
(2)第1の実施形態においては、第1のボール711の一部がチャンバ2及び載置台70のうちの一方に第1の方向D1に移動可能に支持された第1のソケット712に複数のソケット内転動体71aと共に収容されて、第1のボール711が回転可能に支持され、第1の当接面717は、チャンバ2及び載置台70のうちの他方に固定される。
【0062】
これによれば、第1の方向D1に移動可能に支持された第1のソケット712に第1のボール711の一部が収容され、第1の当接面717が固定されることで、第1のボール711が第1の当接面717で転がることを簡易な構成で実現し得る。また、第1のボール711と第1のソケット712との摩擦をソケット内転動体71aによって低減できる。
【0063】
(3)第1の実施形態においては、第1のチルト支持部71は、第1の方向D1に配置されたレール715と、第1のソケット712を支持してレール715に沿って移動する移動部716と、レール715と移動部716との間に配置された複数のリニアガイド転動体71b及び71cと、をさらに含む。
【0064】
これによれば、第1のソケット712を第1の方向D1に移動可能に支持することを簡易な構成で実現し得る。また、レール715と移動部716との摩擦をリニアガイド転動体71b及び71cによって低減できる。
【0065】
(4)第1の実施形態においては、第1のボール711の一部がチャンバ2及び載置台70のうちの一方に固定された第1のソケット712に複数のソケット内転動体71aと共に収容されて、第1のボール711が回転可能に支持され、第1の当接面717は、チャンバ2及び載置台70のうちの他方に第1の方向D1に移動可能に支持される。
【0066】
これによれば、固定された第1のソケット712に第1のボール711の一部が収容され、第1の当接面717が第1の方向D1に移動可能に支持されることで、第1のボール711が第1の当接面717で転がることを簡易な構成で実現し得る。また、第1のボール711と第1のソケット712との摩擦をソケット内転動体71aによって低減できる。
【0067】
(5)第1の実施形態においては、第1のチルト支持部71は、第1の方向D1に配置されたレール715と、第1の当接面717を支持してレール715に沿って移動する移動部716と、レール715と移動部716との間に配置された複数のリニアガイド転動体71b及び71cと、をさらに含む。
【0068】
これによれば、第1の当接面717を第1の方向D1に移動可能に支持することを簡易な構成で実現し得る。また、レール715と移動部716との摩擦をリニアガイド転動体71b及び71cによって低減できる。
【0069】
(6)第1の実施形態においては、第2のボール721の一部がチャンバ2及び載置台70のうちの一方に支持された第2のソケット722に複数のソケット内転動体(図示せず)と共に収容されて、第2のボール721が回転可能に支持され、第2の当接面727は、チャンバ2及び載置台70のうちの他方に支持される。
【0070】
これによれば、第2のボール721と第2のソケット722との摩擦をソケット内転動体によって低減できる。
【0071】
(7)第1の実施形態においては、第1の当接面717と第1の方向D1とが45°未満の角度θで交差する。
【0072】
これによれば、第1のボール711及び第1の当接面717のいずれかを第1の方向D1に移動させる力が、第1のボール711及び第1の当接面717を互いに押し付ける力より小さくても、第1のチルト支持部71を駆動してターゲット供給装置26の姿勢を調整し得る。
【0073】
(8)第1の実施形態においては、第1の当接面717は、第1の調整器75によって第1のボール711及び第1の当接面717のいずれかを移動させるときの第1のボール711の第1の当接面717に対する移動軌跡に沿った溝718を有する。
【0074】
これによれば、溝718を設けることで第1のボール711と第1の当接面717との接触面にかかる圧力を低減し、接触面の変形を抑制し得る。また、溝718に第1のボール711が留まりやすくなり、第1及び第2の軸Ax1及びAx2と交差する第3の軸Ax3周りの載置台70の回転が抑制され得る。
【0075】
(9)第1の実施形態においては、溝718に垂直なVII-VII線における断面に沿った溝718の曲率半径は、第1のボール711の曲率半径より大きい。
【0076】
これによれば、第1のボール711の曲率半径よりも溝718の曲率半径を大きくすることで、第1のボール711と第1の当接面717との間ですべり摩擦が発生することを抑制し得る。
【0077】
(10)第1の実施形態においては、回転支持部73は、第1の当接面717に垂直な方向と第1の方向D1との両方に平行な面P1であって第1のボール711を通る面P1に位置する。
【0078】
これによれば、第1の当接面717に垂直な方向と第1の方向D1との両方に平行な面P1に回転支持部73を配置することで、載置台70の第3の軸Ax3周りの回転が抑制され得る。
【0079】
(11)第1の実施形態においては、回転支持部73は、第1の調整器75によって第1のボール711及び第1の当接面717のいずれかを移動させるときの第1のボール711の回転軸R1に垂直な面P1であって第1のボール711を通る面P1に位置する。
【0080】
これによれば、第1のボール711の回転軸R1に垂直な面P1に回転支持部73を配置することで、載置台70の第3の軸Ax3周りの回転が抑制され得る。
【0081】
(12)第1の実施形態においては、回転支持部73は、チャンバ2及び載置台70のうちの一方に固定された第3のボール731と、チャンバ2及び載置台70のうちの他方に固定され第3のボール731の一部を複数のソケット内転動体73aと共に収容して第3のボール731を回転可能に支持する第3のソケット732と、を含む球面軸受で構成される。
【0082】
これによれば、第3のソケット732に第3のボール731の一部が収容されることで、載置台70を少なくとも第1及び第2の軸Ax1及びAx2に対して回転可能に支持することを簡易な構成で実現し得る。また、第3のボール731と第3のソケット732との摩擦をソケット内転動体73aによって低減できる。
【0083】
(13)第1の実施形態においては、第1、第2、及び第3のボール711、721、及び731の中心を頂点とする三角形をターゲット供給装置26の一部が貫通するように第1、第2、及び第3のボール711、721、及び731が配置される。
【0084】
これによれば、第1及び第2のチルト支持部71及び72と回転支持部73とを配置する際にターゲット供給装置26の設置スペースと干渉することを抑制し得る。また、ターゲット供給装置26の重量を、ターゲット供給装置26の周囲の3点でバランスよく支持し得る。
【0085】
(14)第1の実施形態においては、チルトステージ7は、第1及び第2の軸Ax1及びAx2の両方と交差する第3の軸Ax3に対する載置台70の回転を制限するガイド部材741を備える。
【0086】
これによれば、チルトステージ7の調整時だけでなく、搬送時にも、載置台70の第3の軸Ax3周りの回転を抑制し得る。
【0087】
(15)第1の実施形態においては、チルトステージ7は、第1のボール711及び第1の当接面717の一方を他方に対して押し付けるバネ743を備える。
【0088】
これによれば、チルトステージ7の搬送時などに、載置台70のがたつきを抑制し、載置台70を安定的に保持し得る。
【0089】
(16)第1の実施形態においては、EUV光生成装置1は、チャンバ2と、ターゲット27をチャンバ2内のプラズマ生成領域25に供給するターゲット供給装置26と、チルトステージ7と、を含む。
【0090】
これによれば、EUV光生成装置1のターゲット供給装置26を傾けることでターゲット27の軌道Tを変えることができる。また、上述のチルトステージ7はコンパクトな構造で大きな荷重にも耐えることができる。
【0091】
他の点については、第1の実施形態は比較例と同様である。
【0092】
4.チルトステージ7と位置ステージ8とを使い分けるEUV光生成装置1
4.1 動作
図12は、第2の実施形態においてターゲット軌道調整を行う動作を示すフローチャートである。第2の実施形態に係るEUV光生成装置1の物理的な構成は、第1の実施形態の構成と同様である。
【0093】
S1において、プロセッサ5は、ターゲットセンサ4がターゲット27を検出できたか否かを判定する。ターゲット27を検出できた場合(S1:YES)、プロセッサ5はS3に処理を進める。ターゲット27を検出できない場合(S1:NO)、プロセッサ5はS2に処理を進める。
【0094】
S2において、プロセッサ5は、チルトステージ7を制御してターゲット27の出力方向を変更し、その後S1に処理を戻す。
【0095】
図13は、図12のS1及びS2におけるターゲット供給装置26の姿勢とターゲット27の軌道TS1及びTS2とを示す。S1においてターゲット27の軌道TS1がターゲットセンサ4によって検出可能な空間Vxzを通らない場合に、S2においてプロセッサ5はターゲット供給装置26の姿勢を矢印SS2方向に変更することによりターゲット27の出力方向を変更する。その結果、ターゲット27の軌道TS2が空間Vxzを通るようになった場合は、S3に処理を進める。ここで、S2の処理はターゲット27の軌道TS2が空間Vxzのどこかを通るようにターゲット供給装置26の姿勢を制御することを目的としており、ターゲット27の軌道TS2が空間Vxzの中の最適位置を通るようにすることは目的としない。このようにチルトステージ7の制御はターゲット27の軌道Tの粗調整を担う。
【0096】
図12を再び参照し、S3において、プロセッサ5は、ターゲット27がプラズマ生成領域25を通過しているか否かを判定する。ターゲット27がプラズマ生成領域25を通過している場合(S3:YES)、プロセッサ5は本フローチャートの処理を終了する。ターゲット27がプラズマ生成領域25を通過していない場合(S3:NO)、プロセッサ5はS4に処理を進める。
【0097】
S4において、プロセッサ5は、ターゲットセンサ4の検出結果に基づいて位置ステージ8を制御し、その後S3に処理を戻す。
【0098】
図14は、図12のS3及びS4におけるターゲット供給装置26の位置とターゲット27の軌道TS2及びTS4とを示す。S3においてターゲット27の軌道TS2が空間Vxzを通るが、空間Vxz内の最適位置を通らない場合に、S4においてプロセッサ5はターゲット供給装置26の位置を矢印SS4方向に変更することによりターゲット27の軌道TS2を軌道TS4に平行移動する。その結果、ターゲット27の軌道TS4が空間Vxz内の最適位置を通るようになった場合は、ターゲット27がプラズマ生成領域25を通るものと判断し、図12のフローチャートの処理を終了する。空間Vxz内の最適位置は、ターゲット27の出力方向によっても異なるが、例えばX方向から見てもZ方向から見ても空間Vxzの中心となる位置が最適位置である。このように位置ステージ8の制御はターゲット27の軌道Tの微調整を担う。
【0099】
4.2 作用
(17)第2の実施形態においては、EUV光生成装置1は、ターゲット供給装置26の位置を調整する位置ステージ8と、ターゲット27の軌道Tを検出するターゲットセンサ4と、ターゲットセンサ4の検出結果に基づいてチルトステージ7を制御することによりターゲット27の軌道Tの粗調整を行い、検出結果に基づいて位置ステージ8を制御することによりターゲット27の軌道Tの微調整を行うプロセッサ5と、を備える。
【0100】
これによれば、チルトステージ7は粗調整を行うので、ターゲット27の軌道Tを例えばμm単位で精緻に制御可能とするような構成でなくてもよい。従って、チルトステージ7の構成を複雑化する必要性を軽減できる。
【0101】
(18)第2の実施形態においては、EUV光生成装置1は、ターゲット供給装置26の位置を調整する位置ステージ8と、ターゲット27の軌道Tを検出するターゲットセンサ4と、ターゲットセンサ4がターゲット27の軌道Tを検出できない場合にチルトステージ7を制御し、ターゲットセンサ4がターゲット27の軌道Tを検出できた場合に位置ステージ8を制御するプロセッサ5と、を備える。
【0102】
これによれば、ターゲットセンサ4がターゲット27の軌道Tを検出できなくなった場合でも検出が可能となるようにチルトステージ7によって軌道Tを変えることができ、検出が可能となった場合には位置ステージ8によって軌道Tを理想的な位置に制御し得る。
【0103】
他の点については、第2の実施形態は第1の実施形態と同様である。
【0104】
5.その他
5.1 EUV光利用装置6の例
図15は、EUV光生成システム11に接続された露光装置6aの構成を概略的に示す。
【0105】
図15において、EUV光利用装置6(図1参照)としての露光装置6aは、マスク照射部608とワークピース照射部609とを含む。マスク照射部608は、EUV光生成システム11から入射したEUV光によって、反射光学系を介してマスクテーブルMTのマスクパターンを照明する。ワークピース照射部609は、マスクテーブルMTによって反射されたEUV光を、反射光学系を介してワークピーステーブルWT上に配置された図示しないワークピース上に結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置6aは、マスクテーブルMTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、マスクパターンを反映したEUV光をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで電子デバイスを製造できる。
【0106】
図16は、EUV光生成システム11に接続された検査装置6bの構成を概略的に示す。
【0107】
図16において、EUV光利用装置6(図1参照)としての検査装置6bは、照明光学系603と検出光学系606とを含む。照明光学系603は、EUV光生成システム11から入射したEUV光を反射して、マスクステージ604に配置されたマスク605を照射する。ここでいうマスク605はパターンが形成される前のマスクブランクスを含む。検出光学系606は、照明されたマスク605からのEUV光を反射して検出器607の受光面に結像させる。EUV光を受光した検出器607はマスク605の画像を取得する。検出器607は例えばTDI(time delay integration)カメラである。以上のような工程によって取得したマスク605の画像により、マスク605の欠陥を検査し、検査の結果を用いて、電子デバイスの製造に適するマスクを選定する。そして、選定したマスクに形成されたパターンを、露光装置6aを用いて感光基板上に露光転写することで電子デバイスを製造できる。
【0108】
5.2 補足
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
【0109】
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。たとえば、「含む」、「有する」、「備える」、「具備する」などの用語は、「記載されたもの以外の構成要素の存在を除外しない」と解釈されるべきである。また、修飾語「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきであり、さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16