(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104721
(43)【公開日】2024-08-05
(54)【発明の名称】天ぷら、天ぷら用打ち粉、並びに天ぷらの製造方法及び調理方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/157 20160101AFI20240729BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20240729BHJP
A23L 35/00 20160101ALI20240729BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/10 E
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023182185
(22)【出願日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2023008843
(32)【優先日】2023-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100162503
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 智介
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】原 耕太郎
(72)【発明者】
【氏名】笠谷 聡
【テーマコード(参考)】
4B025
4B035
4B036
【Fターム(参考)】
4B025LB05
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4B036LK03
(57)【要約】
【課題】油ちょう後に保存しても、再加熱処理により食感を改善できる天ぷらについての技術の提供。
【解決手段】タンパク質粉とでんぷん質粉とを含んでなり、前記でんぷん質粉に対する前記タンパク質粉の重量比(タンパク質粉/でんぷん質粉)が0.02~0.2である、天ぷら用の打ち粉。特に、この打ち粉と、でんぷん質粉を含み、タンパク質含量が15重量%以下である衣材を用いて製造した天ぷら。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
具材の表面に、打ち粉からなる層及び衣材からなる層をこの順に有する天ぷらであって、
前記打ち粉は、タンパク質粉とでんぷん質粉とを含み、前記でんぷん質粉に対する前記タンパク質粉の重量比(タンパク質粉/でんぷん質粉)が0.02~0.2であり、
前記衣材は、でんぷん質粉を含み、タンパク質含量が15重量%以下である、
天ぷら。
【請求項2】
前記衣材のタンパク質含量が5~15重量%である、請求項1に記載の天ぷら。
【請求項3】
再加熱調理用である、請求項1又は2に記載の天ぷら。
【請求項4】
前記タンパク質粉が、乾燥卵白、小麦タンパク、大豆粉、大豆タンパク、乳タンパク、ホエイパウダー、脱脂粉乳、卵黄粉、及び全卵粉からなる群から選択される1種類又は2種類以上のタンパク質粉である、請求項1又は2に記載の天ぷら。
【請求項5】
前記タンパク質粉が、乾燥卵白である、請求項4に記載の天ぷら。
【請求項6】
前記タンパク質粉が、乾燥卵白と乳化剤とを含む乾燥卵白製剤として前記打ち粉中に配合される、請求項5に記載の天ぷら。
【請求項7】
前記でんぷん質粉が、小麦粉、及びとうもろこし、もちとうもろこし、米、もち米、小麦、甘薯、馬鈴薯及びタピオカ由来の澱粉並びにこれらの加工澱粉からなる群から選択される1種類又は2種類以上のでんぷん質粉である、請求項1又は2に記載の天ぷら。
【請求項8】
前記でんぷん質粉が、小麦粉及び/又は加工澱粉である、請求項7に記載の天ぷら。
【請求項9】
かき揚げ又はえび天ぷらである、請求項1に記載の天ぷら。
【請求項10】
前記具材にごぼうを含むかき揚げである、請求項1に記載の天ぷら。
【請求項11】
タンパク質粉とでんぷん質粉とを含んでなり、前記でんぷん質粉に対する前記タンパク質粉の重量比(タンパク質粉/でんぷん質粉)が0.02~0.2である、天ぷら用の打ち粉。
【請求項12】
でんぷん質粉を含み、タンパク質含量が15重量%以下である衣材と組み合わせて用いられる、請求項11に記載の打ち粉。
【請求項13】
前記衣材のタンパク質含量が5~15重量%である、請求項12に記載の打ち粉。
【請求項14】
前記天ぷらが、再加熱調理用の天ぷらである、請求項11~13のいずれか一項に記載の打ち粉。
【請求項15】
前記タンパク質粉が、乾燥卵白、小麦タンパク、大豆粉、大豆タンパク、乳タンパク、ホエイパウダー、脱脂粉乳、卵黄粉、及び全卵粉からなる群から選択される1種類又は2種類以上のタンパク質粉である、請求項11又は12に記載の打ち粉。
【請求項16】
前記タンパク質粉が、乾燥卵白である、請求項15に記載の打ち粉。
【請求項17】
前記タンパク質粉が、乾燥卵白と乳化剤とを含む乾燥卵白製剤として配合される、請求項16に記載の打ち粉。
【請求項18】
前記でんぷん質粉が、小麦粉、及びとうもろこし、もちとうもろこし、米、もち米、小麦、甘薯、馬鈴薯及びタピオカ由来の澱粉並びにこれらの加工澱粉からなる群から選択される1種類又は2種類以上のでんぷん質粉である、請求項11又は12に記載の打ち粉。
【請求項19】
前記でんぷん質粉が、小麦粉及び/又は加工澱粉である、請求項18に記載の打ち粉。
【請求項20】
具材表面に、打ち粉を付着させる工程、衣材の分散液(バッター)を付着させる工程、及び前記分散液(バッター)を付着させた具材を油ちょうする工程をこの順に有し、
前記打ち粉が、タンパク質粉とでんぷん質粉とを含んでなり、前記でんぷん質粉に対する前記タンパク質粉の重量比(タンパク質粉/でんぷん質粉)が0.02~0.2であり、
前記衣材が、でんぷん質粉を含み、タンパク質含量が15重量%以下である、天ぷらの製造方法。
【請求項21】
前記油ちょうする工程後の天ぷらを常温、冷蔵及び/又は冷凍で保存する工程を有する、請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
前記油ちょうする工程後の天ぷらを冷凍保存する工程を含む、請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
再加熱調理用の天ぷらを調理する方法であって、
前記天ぷらが、具材の表面に、打ち粉からなる層及び衣材からなる層をこの順に有し、
前記打ち粉は、タンパク質粉とでんぷん質粉とを含み、前記でんぷん質粉に対する前記タンパク質粉の重量比(タンパク質粉/でんぷん質粉)が0.02~0.2であり、
前記衣材は、でんぷん質粉を含み、タンパク質含量が15重量%以下であり、
且つ、常温、保存及び/又は冷凍で保存された天ぷらであり、
当該天ぷらを電子レンジで加熱後にオーブン加熱する工程を有する、方法。
【請求項24】
タンパク質粉あるいはこれを含む組成物の、天ぷら用打ち粉の製造のための使用であって、
前記天ぷら用打ち粉が、タンパク質粉とでんぷん質粉とを含んでなり、でんぷん質粉に対するタンパク質粉の重量比(タンパク質粉/でんぷん質粉)が0.02~0.2である、使用。
【請求項25】
前記組成物が、乾燥卵白と乳化剤とを含む乾燥卵白製剤である、請求項24に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、天ぷら、天ぷら用打ち粉、並びに天ぷらの製造方法及び調理方法に関する。より詳しくは、再加熱処理された際の食感が改善された天ぷら等に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる中食市場の拡大にともなって、天ぷらは家庭内で調理されるのみでなく、量販店等で調理されたいわゆる日販品として、あるいは冷蔵又は冷凍により賞味期間を延長させた商品として、販売される機会が増している。このような商品は、通常、そのまま食するか、又は再加熱して食される。再加熱手段としては、油ちょう、電子レンジ、オ-ブン等が用いられている。油ちょうは、調理、清掃及び廃油処理の手間や、においや熱による作業環境の悪化等の問題のために、消費者から敬遠される傾向がある。一方、電子レンジ及びオーブンは、油ちょうに比べて容易、簡便かつ安全であるが、天ぷらに特徴的な好ましい食感や外観が損なわれやすいという問題がある。
【0003】
すなわち、例えば、電子レンジを使用した場合、天ぷらは、元来、衣が低水分かつ具材が高水分の状態であるため、具材が集中的に加熱されることとなり、具材から衣へ水分が移行して衣のサクサクとしたもろい歯ごたえを特徴とする好ましい食感が失われやすい。さらに、油分が衣の表面に滲み出して外観が損なわれやすい。また、オ-ブンを使用した場合、天ぷらの外側が集中的に加熱されるため、内部が十分に温まるまで加熱を続けると衣が焦げてしまう可能性がある。
【0004】
天ぷら等の揚げ物類を再加熱した後もその品質を維持させる試みがなされてきた。例えば、特許文献1には、「具材の表面から外側に向かって厚さ2mm以内の被覆部分に蛋白素材が0.75g/cm2以上、澱粉及び/又は穀粉を主体とする素材が0.75g/cm2以上含まれ、且つ水分含量が30~65重量%である被覆剤」(請求項2参照)により、再加熱調理用のフライ食品を被覆する技術が提案されている。特許文献1によれば、油揚げ調理後、常温下で時間経過しても、あるいは加熱調理後に冷凍及び冷蔵保存しても、電子レンジなどの加熱機器による再加熱(温め直し)により、調理直後の食品素材の多汁感を保持し、パリッとした外皮の食感やサクミが得られるフライ食品が提供されるとしている。
【0005】
また、特許文献2は、「小麦粉60~80重量部と、化工澱粉10~30重量部と、粉末大豆たん白、粉末卵白、膨張剤及びシュガ-エステルからなる混合粉体5~20重量部とを含有してなることを特徴とする天ぷら用衣材」(請求項1参照)を開示している。この衣材は、油ちょう後に常温で保存しても、又は油ちょう後に冷凍もしくは冷蔵した後に電子レンジ、オーブン又はボイルで再加熱処理しても、油ちょう直後の好ましい衣の食感、外観及び風味を維持し得る天ぷら用衣材であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-327775号公報
【特許文献2】特開平9-173001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、油ちょう後に暫くの間保存されていても、再加熱により天ぷらの食感を改善することができる技術を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題解決のため、本開示は、以下の[1]~[38]を提供する。
【0009】
[1] 具材の表面に、打ち粉からなる層及び衣材からなる層をこの順に有する天ぷらであって、
前記打ち粉は、タンパク質粉とでんぷん質粉とを含んでなり、でんぷん質粉に対するタンパク質粉の重量比(タンパク質粉/でんぷん質粉)が0.02~0.2であり、
前記衣材は、でんぷん質粉を含み、タンパク質含量が15重量%以下である、
天ぷら。
[2] 前記衣材のタンパク質含量が5~15重量%である、[1]の天ぷら。
[3] 再加熱調理用である、[1]又は[2]の天ぷら。
[4] 前記タンパク質粉が、乾燥卵白、小麦タンパク、大豆粉、大豆タンパク、乳タンパク、ホエイパウダー、脱脂粉乳、卵黄粉、及び全卵粉からなる群から選択される1種類又は2種類以上のタンパク質粉である、[1]~[3]のいずれかの天ぷら。
[5] 前記タンパク質粉が、乾燥卵白である、[4]の天ぷら。
[6] 前記タンパク質粉が、乾燥卵白と乳化剤とを含む乾燥卵白製剤として前記打ち粉中に配合される、[5]の天ぷら。
[7] 前記でんぷん質粉が、小麦粉及び加工澱粉、並びにとうもろこし、もちとうもろこし、米、もち米、小麦、甘薯、馬鈴薯及びタピオカ由来の澱粉並びにこれらの加工澱粉からなる群から選択される1種類又は2種類以上のでんぷん質粉である、[1]~[6]のいずれかの天ぷら。
[8] 前記でんぷん質粉が、小麦粉及び/又は加工澱粉である、[7]の天ぷら。
[9] かき揚げ又はえび天ぷらである、[1]~[8]のいずれかの天ぷら。
[10] 前記具材にごぼうを含むかき揚げである、[1]~[8]のいずれかの天ぷら。
【0010】
[11] タンパク質粉とでんぷん質粉とを含んでなり、でんぷん質粉に対するタンパク質粉の重量比(タンパク質粉/でんぷん質粉)が0.02~0.2である、天ぷら用の打ち粉。
[12] でんぷん質粉を含み、タンパク質含量が15重量%以下である衣材と組み合わせて用いられる、[11]の打ち粉。
[13] 前記衣材のタンパク質含量が5~15重量%である、[12]の打ち粉。
[14] 前記天ぷらが、再加熱調理用の天ぷらである、[11]~[13]のいずれかの打ち粉。
[15] 前記タンパク質粉が、乾燥卵白、小麦タンパク、大豆粉、大豆タンパク、乳タンパク、ホエイパウダー、脱脂粉乳、卵黄粉、及び全卵粉からなる群から選択される1種類又は2種類以上のタンパク質粉である、[11]~[14]のいずれかの打ち粉。
[16] 前記タンパク質粉が、乾燥卵白である、[15]の打ち粉。
[17] 前記タンパク質粉が、乾燥卵白と乳化剤とを含む乾燥卵白製剤として配合される、[16]の打ち粉。
[18] 前記でんぷん質粉が、小麦粉及び加工澱粉、並びにとうもろこし、もちとうもろこし、米、もち米、小麦、甘薯、馬鈴薯及びタピオカ由来の澱粉並びにこれらの加工澱粉からなる群から選択される1種類又は2種類以上のでんぷん質粉である、[11]~[17]のいずれかの打ち粉。
[19] 前記でんぷん質粉が、小麦粉及び/又は加工澱粉である、[18]の打ち粉。
【0011】
[20] 具材表面に、打ち粉を付着させる工程、衣材の分散液(バッター)を付着させる工程、及び前記分散液(バッター)を付着させた具材を油ちょうする工程をこの順に有し、
前記打ち粉が、タンパク質粉とでんぷん質粉とを含んでなり、でんぷん質粉に対するタンパク質粉の重量比(タンパク質粉/でんぷん質粉)が0.02~0.2であり、
前記衣材が、でんぷん質粉を含み、タンパク質含量が15重量%以下である、
天ぷらの製造方法。
[21] 油ちょう後の天ぷらを常温保存、冷蔵保存及び/又は冷凍保存する工程を含む、[20]の製造方法。
[22] 油ちょう後の天ぷらを冷凍保存する工程を含む、[21]の製造方法。
[23] 前記衣材のタンパク質含量が5~15重量%である、[20]~[22]のいずれかの製造方法。
[24] 前記天ぷらが、再加熱調理用の天ぷらである、[20]~[23]のいずれかの製造方法。
[25] 前記タンパク質粉が、乾燥卵白、小麦タンパク、大豆粉、大豆タンパク、乳タンパク、ホエイパウダー、脱脂粉乳、卵黄粉、及び全卵粉からなる群から選択される1種類又は2種類以上のタンパク質粉である、[20]~[24]のいずれかの製造方法。
[26] 前記タンパク質粉が、乾燥卵白である、[25]の製造方法。
[27] 前記タンパク質粉が、乾燥卵白と乳化剤とを含む乾燥卵白製剤として前記打ち粉中に配合される、[26]の製造方法。
[28] 前記でんぷん質粉が、小麦粉及び加工澱粉、並びにとうもろこし、もちとうもろこし、米、もち米、小麦、甘薯、馬鈴薯及びタピオカ由来の澱粉並びにこれらの加工澱粉からなる群から選択される1種類又は2種類以上のでんぷん質粉である、[20]~[27]のいずれかの製造方法。
[29] 前記でんぷん質粉が、小麦粉及び/又は加工澱粉である、[28]の製造方法。
【0012】
[30] 再加熱調理用の天ぷらを調理する方法であって、
前記天ぷらが、具材の表面に、打ち粉からなる層及び衣材からなる層をこの順に有し、
前記打ち粉は、タンパク質粉とでんぷん質粉とを含んでなり、でんぷん質粉に対するタンパク質粉の重量比(タンパク質粉/でんぷん質粉)が0.02~0.2であり、
前記衣材は、でんぷん質粉を含み、タンパク質含量が15重量%以下であり、かつ、
常温保存、冷蔵保存及び/又は冷凍保存を経たものであり、
当該天ぷらを電子レンジで加熱後にオーブン加熱する工程を有する、方法。
【0013】
[31] タンパク質粉あるいはこれを含む組成物の、天ぷら用打ち粉の製造のための使用であって、
前記天ぷら用打ち粉が、タンパク質粉とでんぷん質粉とを含んでなり、でんぷん質粉に対するタンパク質粉の重量比(タンパク質粉/でんぷん質粉)が0.02~0.2である、使用。
[32] 前記打ち粉が、でんぷん質粉を含み、タンパク質含量が15重量%以下である衣材と組み合わせて用いられる、[31]の使用。
[33] 前記衣材のタンパク質含量が5~15重量%である、[32]の使用。
[34] 前記天ぷらが、再加熱調理用の天ぷらである、[31]~[33]のいずれかの使用。
[35] 前記タンパク質粉が、乾燥卵白である、[31]~[34]のいずれかの使用。
[36] 前記組成物が、乾燥卵白と乳化剤とを含む乾燥卵白製剤である、請[35]の使用。
[37] 前記でんぷん質粉が、小麦粉及び加工澱粉、並びにとうもろこし、もちとうもろこし、米、もち米、小麦、甘薯、馬鈴薯及びタピオカ由来の澱粉並びにこれらの加工澱粉からなる群から選択される1種類又は2種類以上のでんぷん質粉である、[31]~[36]のいずれかの使用。
[38] 前記でんぷん質粉が、小麦粉及び/又は加工澱粉である、[37]の使用。
【0014】
本開示において、「天ぷら」とは、魚介、肉、野菜等の具材にでんぷん質粉を含む打ち粉を付着させた後に、さらにでんぷん質粉と水を主体とする衣液(バッター)を付着させ、油ちょうして得られる食品をいう。天ぷらは、香ばしく、硬すぎない脆さを伴うサクサク感のある衣と、旨味が閉じ込められた具材とが相俟って、独特の良好な食感と食味を有する食品である。天ぷらは、衣の厚さが薄く、ボリュームがあり、花咲き状の外観が好まれることが多い。天ぷらには、完全油ちょうしたもののみならず、不完全な油ちょう(プレフライ)によるものも含まれ得る。
これに対し、「唐揚げ」は、少なくとも脆さが小さい食感が好まれる点で、脆さが大きい食感が好まれる天ぷらとは異なる食品である。
また、フライ及びカツレツは、少なくとも最外層にパン粉が付着され油ちょうされる点で、天ぷらとは異なる食品である。
ナゲットは、少なくとも具材に食品をパテ状に加工した物が用いられる点で、天ぷらとは異なる食品である。
フリッターは、少なくとも硬さのないふわふわとした食感と、花咲き状の衣がなく、分厚い衣の外観が好まれる点で、天ぷらとは異なる食品である。
【0015】
「食感」とは、衣と具材等とが相俟って生み出される感覚であって、特に衣のサクサク感と具材の水抜け感に優れていることが好ましい。食感が良好である場合、特に、衣が柔らかすぎず且つ硬すぎずサクサクとしていること、具材と衣との間に水分が存在しないことが好ましい。
【0016】
「打ち粉」とは、天ぷらを製造するときに、具材表面に付着させる粉末状の組成物をいう。具材表面に打ち粉を付着させることにより、天ぷらの具材と衣の付着性を向上させることができる。
「衣材」とは、天ぷらを製造するときに、表面に打ち粉を付着させた具材に、さらに付着させる衣液(バッター)を調製するための組成物をいい、通常、当該組成物に水を加えて衣液が調製される。衣液は、通常、でんぷん質粉と水、又はでんぷん質粉と卵水等のタンパク質粉を混合して調製される。衣材は、種々の具材と共に高温の油で揚げられることにより、急激に脱水されて膨張し、不定形の凸凹形状の外観を呈し、サクサク感を有する食感を生み出す。
【0017】
「タンパク質粉」とは、タンパク質を含む原料から乾燥あるいは精製によって得られる粉末状の組成物をいい、原料が含むタンパク質が当該組成物において濃縮されているものをいう。原料の乾燥を経て得られるタンパク質粉として、乾燥卵白、大豆粉、卵黄粉、及び全卵粉などが挙げられる。原料からの精製を経て得られるタンパク質粉として、小麦タンパク、大豆タンパク、乳タンパク、ホエイパウダー、脱脂粉乳などが挙げられる。
「でんぷん質粉」とは、でんぷん質を含む粉末状の組成物をいい、イネ科穀粉、イネ科穀物又はイモ類等から選択される原料から製粉あるいは精製によって得られる粉末状組成物が好ましく、原料が含むでんぷん質が当該組成物において濃縮されているものをいう。でんぷん質粉において、澱粉は物理的あるいは化学的な加工がなされ得る。原料から製粉されるでんぷん質粉として、小麦粉等が挙げられる。原料からの精製を経て得られるでんぷん質粉として、とうもろこし、もちとうもろこし、米、もち米、小麦、甘薯、馬鈴薯及びタピオカから精製される澱粉並びにそれらの加工澱粉が挙げられる。
【発明の効果】
【0018】
本開示により、油ちょう後に保存した後であっても、再加熱処理により天ぷらの食感を改善することができる技術が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本開示の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本開示の範囲が狭く解釈されることはない。
【0020】
[天ぷら]
本発明の天ぷらは、具材の表面に、打ち粉からなる層及び衣材からなる層をこの順に有する。ここで、打ち粉は、タンパク質粉とでんぷん質粉とを含み、でんぷん質粉に対するタンパク質粉の重量比(タンパク質粉/でんぷん質粉)は0.02~0.2である。また、衣材は、でんぷん質粉を含み、タンパク質含量は15重量%以下である。
【0021】
本発明の天ぷらは、再加熱処理された際の食感が改善されるため、再加熱調理用の天ぷらとして好適であり、特に再加熱時に具材から衣へ水分が移行することによりサクサクとした食感が低下しやすいかき揚げに特に好適である。かき揚げは、通常、小サイズの複数の具材を用いるために、具材の表面積が大きくなり、具材の水分により衣の食感の低下が引き起こされやすい。
【0022】
天ぷらの具材は、特に限定されず、エビ、イカ、白身魚などの魚介類;鶏肉、豚肉、牛肉などの畜肉類;ゴボウ、タマネギ、ニンジン、いんげん、サツマイモ、カボチャなどの野菜・根菜類などが挙げられる。
具材は、適宜の大きさに切断されてもよく、また水分を減少させるために冷蔵庫内で一晩程度静置されていてもよい。
【0023】
具材はゴボウが好ましい。かき揚は、具材にゴボウが含まれることが好ましく、ゴボウ、エビ、タマネギ及びニンジンの組み合わせとされることがより好ましい。ゴボウを具材に使用すると、ゴボウが天ぷら内部の支柱的な役割を果たし、天ぷら内部に間隙を生じさせる。そのために油ちょう直後または保管後の再加熱後に、天ぷら内部から水分が蒸発しやすくなり、その食感を維持しやすくなる。また、かき揚げのゴボウのサイズは、特に限定されないが、好ましくは厚さ2mm程度の平板状である。この形状であると、かき揚げの内部でゴボウが支柱的な役割を果たしやすく、前記の効果を得やすくなる。
【0024】
天ぷらの具材、打ち粉及び衣材には、天ぷらの味や食感、匂い等に好ましくない影響を及ぼさない範囲で、調味料や香辛料等を適量加えてもよい。また、天ぷらは、米飯と一緒に冷凍して、冷凍食品の天丼としてもよい。
【0025】
[打ち粉]
本開示に係る天ぷら用の打ち粉(以下、「本発明の打ち粉」又は単に「打ち粉」と言う場合がある。)は、タンパク質粉とでんぷん質粉とを含んでなる。打ち粉に含まれるでんぷん質粉に対するタンパク質粉の重量比(タンパク質粉/でんぷん質粉)は、0.02~0.2である。本発明の打ち粉は、タンパク質粉を含むことで再加熱時に具材から流出する水分を吸収できるため、衣材は衣の水保持力を低くするため、タンパク質粉の含有量が少ない又は含まない衣材と組み合わせて用いることが好ましい。
【0026】
打ち粉に含まれるタンパク質粉により、具材表面付近に水保持力を有する層を形成することができる。この層が天ぷらの再加熱時に具材から流出する水分を吸収することにより、流出水分が具材と衣の間に滞留せず、喫食時の水っぽさを軽減することができる。
打ち粉に含まれるタンパク質粉は、乾燥卵白、小麦タンパク、大豆粉、大豆タンパク、乳タンパク、ホエイパウダー、脱脂粉乳、卵黄粉、及び全卵粉などが挙げられる。これらの1種類又は2種類以上を用いることが好ましく、喫食時の水っぽさが軽減されやすいことから、乾燥卵白がより好ましい。
乾燥卵白は、パン、菓子等の小麦粉使用ベーカリー製品に用いられる公知のものを使用することができる。乾燥卵白は、乾燥卵白製剤であってもよく、乾燥卵白製剤としては、乾燥卵白と乳化剤とを含むものが好適に用いられ得る。
乾燥卵白製剤は、乾燥卵白と乳化剤に加えて、食塩、デキストリン、大豆たんぱくなどの食品用製剤に従来添加されている成分を含んでいてよい。
乳化剤は、特に限定されないが、従来、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン、リゾレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリソルベート、ステアリル有機酸エステル、及びサポニンなどが用いられており、本開示においてもこれらの1又は2以上を用いることができる。
乾燥卵白製剤中の乳化剤の配合量も、特に限定されず、従来用いられている製剤と同様でよいが、例えば10-25重量%程度である。
このような乾燥卵白製剤の具体例として、コリメックス-C(三菱ケミカル(株)製)等が挙げられる。
【0027】
打ち粉に含まれるでんぷん質粉は、小麦粉、及びとうもろこし、もちとうもろこし、米、もち米、小麦、甘薯、馬鈴薯及びタピオカ由来の澱粉並びにこれらの加工澱粉等が挙げられる。これらの1種類又は2種類以上を用いることが好ましく、小麦粉及び加工澱粉がより好ましい。
【0028】
小麦粉は、薄力小麦粉と同程度のタンパク質含量(約8重量%、乾物ベース)に調整した穀粉と澱粉の混合物で代替され得る。このような混合物として、例えば、強力小麦粉等のタンパク質含量の高い粉体に澱粉を添加し、薄力小麦粉と同程度のタンパク質含量とした粉体を利用することができる。
【0029】
加工澱粉は、澱粉に化学的処理を施した粉である。澱粉は、特に限定されず、例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、米澱粉、サゴ澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉などを用いることができる。加工澱粉を得るために澱粉に施す化学的処理としては、例えば、エステル化、エーテル化、酸化、架橋などが挙げられ、これらの処理を2種類以上組み合わせてもよい。また、化学的処理に加えて、物理的処理及び/又は酵素的処理を施してもよい。加工澱粉は、好ましくは酸化澱粉及び架橋澱粉である。打ち粉に酸化澱粉や架橋澱粉を使用することにより、油ちょう時または再加熱時に具材からの水分の蒸発を促進することができる。
【0030】
打ち粉において、でんぷん質粉に対するタンパク質粉の重量比(タンパク質粉/でんぷん質粉)は、再加熱時に具材から流出する水分を十分に吸収しやすく、喫食時に水っぽさがなく、サクミ(サクサクとした食感)が得られやすい点では大きいことが好ましい。また、一方で、衣が硬すぎず、歯切れのよい食感になりやすい点では小さいことが好ましい。そこで、でんぷん質粉に対するタンパク質粉の重量比(タンパク質粉/でんぷん質粉)は0.02~0.2である。また、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.15以上であり、また、一方で、好ましくは0.18以下である。すなわち、好ましくは0.03~0.18であり、より好ましくは0.05~0.18、さらに好ましくは0.15~0.18である。
でんぷん質粉に対して一定量のタンパク質粉を含む打ち粉は、衣材がタンパク質を含むと衣の水保持力が増大してしまうため、タンパク質粉の含有量が少ない又は含まない衣材と組み合わせて用いることができる。そして、タンパク質粉の含有量が少ない又は含まない衣材を用いることにより、天ぷらが再加熱処理された際の食感を改善し得る。
【0031】
打ち粉は、でんぷん質粉及びタンパク質粉以外の成分が配合されていてよく、例えば、ベーキングパウダー、乳化剤、食物繊維、糖類、食塩、アミノ酸、有機酸及び有機酸塩、pH調整剤、粉末油脂、調味料、香辛料、増粘剤等を含んでもよい。打ち粉に含まれる、でんぷん質粉とタンパク質粉の合計量は、90重量%以上が好ましく、98重量%以上がさらに好ましい。
【0032】
[衣材]
衣材は、タンパク質粉の含有量が少ない又は含まない衣材が好ましい。ここで、タンパク質粉は、打ち粉に含まれるタンパク質粉と同様のものを指す。
通常、天ぷらの衣材には、多量のタンパク質が含まれる。衣材に、タンパク質粉が多量に含まれると、衣中のタンパク質が衣液の水を吸収してしまい、油ちょう時に衣から十分に水分が抜けずに柔らかい食感になったり、ザラザラと舌触りの悪い状態になったり、歯切れの悪い状態となって、上述した再加熱時の食感改善効果が損なわれやすくなる。
【0033】
衣材に含まれるタンパク質含量は、衣の水保持力が弱く、油ちょう直後または再加熱後に食感が柔らかすぎずサクミ大きくなりやすい点では少ないことが好ましいが、また、一方で、衣液の粘りにより天ぷらの保形性に優れる点では多いことが好ましい。そこで、衣材に含まれるタンパク質含量は、5重量%以上が好ましく、6重量%以上がより好ましく、また一方で、15重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。すなわち、5~15重量%が好ましく、6~10重量%がより好ましい。ここで、衣材が含有するタンパク質には、でんぷん質粉に由来するタンパク質が含まれる。
【0034】
衣材に含まれるでんぷん質粉は、打ち粉に含まれるでんぷん質粉と同様の粉を用いることができ、好ましくは小麦粉及び加工澱粉である。
【0035】
衣材は、でんぷん質粉以外の成分が配合されていてよく、例えば、ベーキングパウダー、乳化剤、食物繊維、糖類、食塩、アミノ酸、有機酸及び有機酸塩、pH調整剤、粉末油脂、調味料、香辛料、増粘剤等を含んでいてもよい。衣材に含まれる、でんぷん質粉の含有量は、90重量%以上が好ましく、98重量%以上がさらに好ましい。
【0036】
[天ぷら及びその製造方法]
本発明の天ぷらの製造方法は、具材表面に、打ち粉を付着させる工程、衣材の分散液(バッター)を付着させる工程、及びこの分散液(バッター)を付着させた具材を油ちょうする工程をこの順に有する。ここで、打ち粉及び衣材については、前述のとおりである。本発明の天ぷらの製造方法は、さらに、油ちょう後の天ぷらを常温、冷蔵及び/又は冷凍で保存する工程を有することが好ましい。
【0037】
具材表面に打ち粉を付着させる工程では、前述の打ち粉を具材表面に付着させる。次いで、この打ち粉を付着させた具材に、衣材の分散液(バッター)を付着させる。バッターは、通常、衣材に乳化剤の水溶液を加え、均一に混合することにより調製することができる。具材と打ち粉及びバッターの量は、それぞれ適宜調整され得る。
【0038】
分散液(バッター)を付着させた具材を油ちょうする工程では、バッターを付着させた具材を、必要に応じて型枠(かき揚げの場合)に入れ、油ちょうする。油ちょうは、衣液中の水分を十分に蒸発させる条件(油温度や油ちょう時間)を設定すればよい。当該条件は、通常140~190℃の食用油脂で2~6分間であり、特には約145℃の食用油脂で約4分間を採用できる。さらに、油ちょうしながらバッターの適量を滴下し、具材の衣の表面にさらに新たな衣を部分的に形成させてもよい。このような最初の衣と追加的な衣とを含めて、本開示では一層の衣材の層とみなすものとする。
【0039】
打ち粉を付着させる工程と衣材の分散液(バッター)を付着させる工程によれば、上述した打ち粉と衣材との組み合わせによって奏される効果により、再加熱処理された際の食感が改善された天ぷらを得ることができる。したがって、本開示に係る天ぷらの製造方法は、さらに、油ちょう後の天ぷらを常温、冷蔵及び/又は冷凍で保存する工程を有する場合にその効果が顕著に発現する。保存は、特に冷凍保存を採用できる。保存時には、必要に応じて適当な包材で天ぷらを包装してもよい。
【0040】
天ぷらを再加熱して調理する際には、通常、天ぷらを電子レンジ及び/又はオーブンにより加熱する。好ましい加熱方法は、天ぷらを電子レンジにより加熱し、その後のオーブンによりさらに加熱する方法である。まず電子レンジによる加熱で天ぷら内部の温度を十分に上げた後に、オーブンによる加熱で天ぷら外側の水分を蒸発させることで天ぷら内部が冷たくなく、衣部分の水分量が十分に低下させることで天ぷら製造直後の特有の好ましい食感、外観及び風味を再現することができる。
【実施例0041】
1.原料の説明
小麦粉:日清フラワー、日清製粉ウェルナ、タンパク質含率8重量%
酸化澱粉:スタビロースBM、松谷化学工業
架橋澱粉:松谷ひょうたん、松谷化学工業
ベーキングパウダー:アイコクベーキングパウダーシルバー、大宮糧食工業
乳化剤製剤:リョートーエステルSMO-P、三菱ケミカル
乾燥卵白:乾燥卵白(メレンゲパウダー)、cotta
乾燥卵白製剤:コリメックス-C、三菱ケミカル(表1参照)
油ちょう用油脂:大豆白絞油、理研農産化工
【0042】
【0043】
2.製造方法
2-1.かき揚げ
(1)具材の準備
玉ネギを皮むきして、幅3mmの櫛切りにした。
人参を皮むきして、3mm×3mm×4cmの四角柱状に切断した。
前記の玉ネギと人参と、むきエビとを冷蔵庫に入れて、一晩静置することにより、脱水した。
また、ゴボウを皮むきして、長さ4cm×厚み2mmの平板状に切断した。
【0044】
(2)具材混合、打ち粉付着、バッター付着
玉ネギ30g、人参15g、ゴボウ15g、むきエビ3尾(または玉ネギ45g、人参15g、むきエビ3尾)を混ぜて、打ち粉9gを薄く均一にまぶし、バッター液20gを付着させた。バッター液は、衣材10重量部に2重量%乳化剤製剤水溶液13重量部を加え均一混合して調製した。表2に打ち粉と衣材の組成を示す。
【0045】
(3)油ちょう、冷却、包装、冷凍保管
145℃の油ちょう用油脂中で4分間油ちょうしてかき揚げを試作し、油切り後に皿にのせ、速やかに-35℃の冷凍庫で急速冷凍した。1時間後にポリエチレン/ナイロン複合フィルム製の袋を用いて包装し、-15℃で5日間または7日間、冷凍保存した。
【0046】
2-2.えび天ぷら
(1)具材の準備
冷凍むきエビを冷水中で解凍し、キッチンペーパーで水気を除去して、脱水した。
【0047】
(2)具材混合、打ち粉付着、バッター付着
むきエビ1尾に打ち粉を薄く均一にまぶし、バッター液を付着させた。バッター液は、衣材10重量部に2重量%乳化剤製剤水溶液13重量部を加え均一混合して調製した。表3に打ち粉と衣材の組成を示す。
【0048】
(3)油ちょう、冷却、包装、冷凍保管
160℃の油ちょう用油脂中で3分間油ちょうしてエビ天ぷらを試作し、油切り後に皿にのせ、速やかに-35℃の冷凍庫で急速冷凍した。1時間後にポリエチレン/ナイロン複合フィルム製の袋を用いて包装し、-15℃で5日間、冷凍保存した。
【0049】
3.評価方法
(1)再加熱
冷凍かきあげ又は冷凍えび天ぷらを1個ずつ電子レンジで加熱(高周波出力600W、50秒間)した。次に、オ-ブンで加熱(230℃、2分間予熱後、表裏で各2分間ずつ加熱)した。
【0050】
(2)試食評価
専門パネル2名により試食評価した。評価は、衣の食感と水抜け感の2項目について行った。評点の基準は以下のとおりである。
(衣の食感)
◎:衣の食感において、強いサクミでザクザクする
〇:弱いサクミでサクサクする
△:サクミがなく、柔らかさが小さい
×:サクミがなく、柔らかさが大きい
(水抜け感)
◎:喫食時に具材周辺に水分を感じなかった
〇:具材周辺に少量の水分を感じた
△:具材周辺にやや水分を感じなかった(中量の水分を感じた)
×:具材周辺に多量の水分を感じた
【0051】
かき揚げの結果を表2に示す。
【0052】
【0053】
実施例1~6の天ぷらは、何れも衣の食感と水抜け感に優れていた。これに対し、打ち粉にタンパク質粉を含まない比較例1は、衣の食感が低下していた。即ち、本発明の打ち粉を用いることにより、衣の食感と水抜け感に優れる天ぷらが得られることが裏付けられた。
より詳細には、実施例1(冷凍時間7日)及び実施例2(冷凍時間5日)では、いずれも衣の食感及び水抜け感に優れた。
実施例1に比して、打ち粉のでんぷん質粉を少なくし、タンパク質粉(乾燥卵白)を多くすることによりタンパク質粉/でんぷん質粉比を0.18に高めた実施例3も、衣の食感及び水抜け感に優れた。打ち粉のでんぷん質粉を小麦粉のみとした実施例6では、酸化澱粉及び架橋澱粉の添加を要することなく、実施例3と同様に優れた衣の食感及び水抜け感が得られた。
また、実施例1に比して、打ち粉のタンパク質粉(乾燥卵白製剤)を少なくすることによりタンパク質粉/でんぷん質粉比を0.03に低めた実施例4でも、衣がサクサクしており、水抜け感にも優れていた。
【0054】
実施例3と実施例5より、具材にごぼうを含む天ぷらは、衣の食感及び水抜け感がより優れていた。
【0055】
えび天ぷらの結果を表3に示す。
【0056】
【0057】
実施例7~9の天ぷらは、何れも衣の食感と水抜け感に優れていた。
実施例7に比して、タンパク質粉(乾燥卵白製剤)を少なくすることによりタンパク質粉/でんぷん質粉比を0.01にまで低くした比較例2では、水抜け感の評価が低下した。
また、実施例7に比して、打ち粉のでんぷん質粉を少なくし、タンパク質粉(乾燥卵白製剤)を多くすることによりタンパク質粉/でんぷん質粉比を0.34に高めた比較例3では、食感も水抜け感も低下した。
衣材にタンパク質粉を配合した比較例4(衣材のタンパク質含量16重量%)では、食感が悪化した。