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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024104938
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/34 20060101AFI20240730BHJP
   C23C 16/04 20060101ALI20240730BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C23C16/34
C23C16/04
H01L21/285 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009391
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】芦澤 宏明
【テーマコード(参考)】
4K030
4M104
【Fターム(参考)】
4K030AA02
4K030AA03
4K030AA13
4K030AA16
4K030AA18
4K030BA18
4K030BA38
4K030CA04
4K030CA12
4K030DA04
4K030EA01
4K030EA05
4K030EA06
4K030FA01
4K030GA02
4K030HA01
4K030JA01
4K030JA05
4K030JA09
4K030JA10
4K030LA15
4M104BB30
4M104DD43
4M104DD44
4M104DD45
4M104HH13
(57)【要約】
【課題】カバレッジの良い金属含有膜を成膜する。
【解決手段】基板の上に形成された凹部に窒化チタン膜を成膜する成膜方法であって、(a)前記基板を処理容器内に準備する工程と、(b)前記処理容器内に金属含有ガスを含む成膜ガスを供給し、前記窒化チタン膜を成膜する工程と、(c)前記処理容器内に金属含有ガスを含むエッチングガスを供給し、前記窒化チタン膜をエッチングする工程と、を含み、(d)前記(b)の工程と前記(c)の工程とをこの順で繰り返し実行し、前記(b)における金属含有ガスは、TiBrガス又はTiClガスであり、前記(c)における金属含有ガスは、TiBrガスである、成膜方法が提供される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に形成された凹部に窒化チタン膜を成膜する成膜方法であって、
(a)前記基板を処理容器内に準備する工程と、
(b)前記処理容器内に金属含有ガスを含む成膜ガスを供給し、前記窒化チタン膜を成膜する工程と、
(c)前記処理容器内に金属含有ガスを含むエッチングガスを供給し、前記窒化チタン膜をエッチングする工程と、を含み、
(d)前記(b)の工程と前記(c)の工程とをこの順で繰り返し実行し、
前記(b)における金属含有ガスは、TiBrガス又はTiClガスであり、
前記(c)における金属含有ガスは、TiBrガスである、
成膜方法。
【請求項2】
基板の上に形成された凹部にチタン膜を成膜する成膜方法であって、
(a)前記基板を処理容器内に準備する工程と、
(b)前記処理容器内に金属含有ガスを含むガスを供給し、前記チタン膜を成膜する工程と、
(c)前記処理容器内に金属含有ガスを含むガスを供給し、前記チタン膜をエッチングする工程と、を含み、
(d)前記(b)の工程と前記(c)の工程とをこの順で繰り返し実行し、
前記(b)における金属含有ガスは、TiClガスであり、
前記(c)における金属含有ガスは、TiBrガスである、
成膜方法。
【請求項3】
前記(c)の工程は、
前記処理容器内にRF電力を供給し、TiBrガスから生成されたプラズマにより前記窒化チタン膜をプラズマエッチングする、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記(c)の工程は、
前記処理容器内にRF電力を供給し、TiBrガスから生成されたプラズマにより前記チタン膜をプラズマエッチングする、
請求項2に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記(b)の工程及び前記(c)の工程において供給する前記金属含有ガスは同一ガスである、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記(b)の工程及び前記(c)の工程において供給する前記金属含有ガスは異なるガスである、
請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記(b)の工程は、
前記金属含有ガスとNHガスとを交互に供給し、ALD法により成膜する、
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記(b)の工程は、
前記金属含有ガスとHガスとを交互に供給し、ALD法により成膜する、
請求項2に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記(b)の工程及び前記(c)の工程において、前記基板を載置するステージの温度は同一である、
請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項10】
(e)前記(d)の工程において前記(b)の工程と前記(c)の工程とを繰り返し実行する回数が第1設定回数に達すると、TiBrガスにより前記処理容器内のショートクリーニングを実行する工程を含む、
請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記(e)の工程、前記(b)の工程及び前記(c)の工程において、前記基板を載置するステージの温度は同一である、
請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項12】
(f)前記(d)の工程において前記(b)の工程と前記(c)の工程とを繰り返し実行する回数が前記第1設定回数よりも多い第2設定回数に達すると、ClFガスにより前記処理容器内のクリーニングを実行する工程を含む、
請求項10に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記(b)の工程と前記(c)の工程とは、同一の前記処理容器で連続して実行される、
請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項14】
前記(b)の工程を1回又は複数回実行した後に前記(c)の工程を実行することを、繰り返し実行する、
請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項15】
前記(c)の工程において、前記基板を載置するステージの温度は、350℃~530℃である、
請求項1又は2に記載の成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、基板における絶縁膜間の隙間に金属膜を埋め込むにあたり、当該金属膜の充填性を高くすることができる基板処理方法を提案する。特許文献1では、基板に成膜ガスを供給し、各隙間に金属膜を形成する第1の成膜工程と、続いて、基板にエッチングガスを供給し、金属膜の表層をエッチングするエッチング工程と、その後、基板に成膜ガスを供給し、各隙間に金属膜を充填する第2の成膜工程と、を実施する。
【0003】
例えば、特許文献2は、コンタクトホール内の底面を含めて基板表面全面に、TiClガスとHガスの存在下にて非常に薄いTi(チタン)金属膜をプラズマCVDにより形成し、次にエッチング工程を行うことを提案する。エッチング工程では、エッチングガスとしてTiClガスのみを流すことにより、プラズマを生成せずにチタン金属膜の表面を所定の厚さだけエッチングして除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-117843号公報
【特許文献2】特開2001-210713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、カバレッジの良い金属含有膜を成膜することができる成膜方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の態様によれば、基板の上に形成された凹部に窒化チタン膜を成膜する成膜方法であって、(a)前記基板を処理容器内に準備する工程と、(b)前記処理容器内に金属含有ガスを含む成膜ガスを供給し、前記窒化チタン膜を成膜する工程と、(c)前記処理容器内に金属含有ガスを含むエッチングガスを供給し、前記窒化チタン膜をエッチングする工程と、を含み、(d)前記(b)の工程と前記(c)の工程とをこの順で繰り返し実行し、前記(b)における金属含有ガスは、TiBrガス又はTiClガスであり、前記(c)における金属含有ガスは、TiBrガスである、成膜方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一の側面によれば、カバレッジの良い金属含有膜を成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る基板処理装置の一例を示す断面模式図。
図2】第1実施形態に係る基板処理装置における成膜方法及びガス供給シーケンスの一例。
図3図2の成膜方法を説明するための図。
図4】第1実施形態に係る成膜方法におけるエッチング結果の一例を示す図。
図5】第2実施形態に係る基板処理装置の一例を示す断面模式図。
図6】第2実施形態に係る基板処理装置における成膜方法及びガス供給シーケンスの一例。
図7図6の成膜方法を説明するための図。
図8】第2実施形態に係る成膜方法におけるエッチング結果の一例を示す図。
図9】第1及び第2実施形態に係る成膜方法(クリーニング方法を含む)の一例を示すフローチャート。
図10図9の成膜方法(クリーニング方法を含む)のシーケンスの一例。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
<第1実施形態>
基板の上に形成された凹部にバリアメタルとして窒化チタン膜を成膜し、その後、配線となる金属を埋め込む工程がある。この工程では、凹部のアスペクト比が高まるにつれ、均一に窒化チタン膜を凹部に形成することが困難となる。そこで、第1実施形態では、スループットが高く、かつステップカバレッジの良い高品質な窒化チタン膜を成膜する成膜方法について提案する。また、その成膜方法を実行する基板処理装置及びその基板処理装置をクリーニングする方法について提案する。
【0010】
[基板処理装置]
まず、第1実施形態に係る成膜方法を実行する基板処理装置100の一例について、図1を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る基板処理装置100の一例を示す断面模式図である。
【0011】
基板処理装置100は、凹部を有する基板Wに対して原料ガスの一例であるTiBrガス及び還元ガスの一例であるNHガスを供給して、ウェハを一例とする基板Wの表面にTiN膜を成膜するALD(Atomic Layer Deposition)装置である。基板処理装置100は、TiN膜を成膜した後、TiBrガス及びArガスのプラズマにより凹部の開口を広げるようにエッチングを行う。このようにしてTiN膜の成膜工程及びエッチング工程を繰り返すことにより、アスペクト比の高い凹部においてもステップカバレッジの良い高品質な窒化チタン膜(以下、TiN膜ともいう。)を成膜することができる。
【0012】
基板処理装置100は、処理容器1、ステージ2、シャワーヘッド3、排気部4、処理ガス供給部5、制御装置7を有する。
【0013】
処理容器1は、アルミニウム等の金属により構成され、略円筒状を有する。処理容器1の側壁には基板Wを搬入又は搬出するための搬入出口11が形成され、搬入出口11はゲートバルブ12で開閉可能となっている。処理容器1の本体の上には、断面が略矩形状をなす円環状の排気ダクト13が設けられている。排気ダクト13には、内周面に沿ってスリット13aが形成されている。また、排気ダクト13には、リング状の排気空間13bが形成されている。また、排気ダクト13の外壁には排気口13cが形成されている。排気ダクト13の上面には処理容器1の上部開口を塞ぐように天壁14が設けられている。天壁14と排気ダクト13の間はシールリング15で気密にシールされている。
【0014】
ステージ2は、処理容器1内で基板Wを水平に支持する。ステージ2は、基板Wに対応した大きさの円板状をなし、支持部材23に支持されている。ステージ2は、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料や、アルミニウムやニッケル基合金等の金属材料で構成されており、内部に基板Wを加熱するためのヒータ21が埋め込まれている。ヒータ21は、ヒータ電源(図示せず)から給電されて発熱する。そして、ステージ2の上面のウェハ載置面近傍に設けられた熱電対(図示せず)の温度信号によりヒータ21の出力を制御することにより、基板Wを所定の温度に制御するようになっている。
【0015】
ステージ2には、ウェハ載置面の外周領域、及びステージ2の側面を覆うようにアルミナ等のセラミックスからなるカバー部材22が設けられている。支持部材23は、ステージ2の底面中央から処理容器1の底壁に形成された孔部を貫通して処理容器1の下方に延び、その下端が昇降機構24に接続されている。昇降機構24によりステージ2が支持部材23を介して、図1で示す処理位置と、その下方の二点鎖線で示すウェハの搬送が可能な搬送位置との間で昇降可能となっている。また、支持部材23の処理容器1の下方には、鍔部25が取り付けられており、処理容器1の底面と鍔部25の間には、処理容器1内の雰囲気を外気と区画し、ステージ2の昇降動作にともなって伸縮するベローズ26が設けられている。
【0016】
処理容器1の底面近傍には、昇降板27aから上方に突出するように3本(2本のみ図示)の支持ピン27が設けられている。支持ピン27は、処理容器1の下方に設けられた昇降機構28により昇降板27aを介して昇降可能になっており、搬送位置にあるステージ2に設けられた貫通孔2aに挿通されてステージ2の上面に対して突没可能となっている。このように支持ピン27を昇降させることにより、ウェハ搬送機構(図示せず)とステージ2との間で基板Wの受け渡しが行われる。
【0017】
シャワーヘッド3は、処理容器1内に処理ガスをシャワー状に供給する。シャワーヘッド3は、金属製であり、ステージ2に対向するように設けられており、ステージ2とほぼ同じ直径を有する。シャワーヘッド3は、処理容器1の天壁14に固定された本体部31と、本体部31の下に接続されたシャワープレート32とを有する。本体部31とシャワープレート32との間にはガス拡散空間33が形成されており、ガス拡散空間33には、本体部31及び処理容器1の天壁14の中央を貫通するようにガス導入孔36が設けられている。シャワープレート32の周縁部には下方に突出する環状突起部34が形成され、シャワープレート32の環状突起部34の内側の平坦面にはガス吐出孔35が形成されている。
【0018】
ステージ2が処理位置に存在した状態では、シャワープレート32とステージ2との間に処理空間37が形成され、環状突起部34とステージ2のカバー部材22の上面が近接して環状隙間38が形成される。
【0019】
排気部4は、処理容器1の内部を排気する。排気部4は、排気ライン41と、圧力調整部(APC:Auto Pressure Controller)42と、バルブ43と、真空ポンプ44と、を有する。排気ライン41の一端は排気ダクト13の排気口13cに接続され、他端は真空ポンプ44の吸入ポートに接続される。排気ダクト13と真空ポンプ44との間には、上流側から順に、圧力調整部42、バルブ43が設けられる。圧力調整部42は、排気経路のコンダクタンスを調整して処理空間37の圧力を調整する。バルブ43は、排気ライン41の開閉を切り替える。処理に際して、処理空間37内のガスは、環状隙間38、スリット13aを介して排気ダクト13の排気空間13bに至り、排気ダクト13の排気口13cから排気部4の真空ポンプ44により排気ライン41を通って排気される。
【0020】
処理ガス供給部5は、原料ガス(TiBr)供給ラインL1、NHガス供給ラインL2、第1のパージラインL3、第2のパージラインL4を有する。更に、処理ガス供給部5は、Arガス供給ラインL5、クリーニングガス供給ラインL6を有する。
【0021】
原料ガス(TiBr)供給ラインL1は、金属含有ガス、例えば、TiBrガスの供給源である原料ガス(TiBr)供給源GS1から延び、合流配管L9に接続されている。合流配管L9は、ガス導入孔36に接続されている。原料ガス(TiBr)供給ラインL1には、原料ガス(TiBr)供給源GS1側から順に、マスフローコントローラM1、バッファタンクT1、及び開閉弁V1が設けられている。マスフローコントローラM1は、原料ガス(TiBr)供給ラインL1を流れるTiBrガスの流量を制御する。バッファタンクT1は、TiBrガスを一時的に貯留し、短時間で必要なTiBrガスを供給する。開閉弁V1は、原子層堆積(ALD)プロセス及びエッチングプロセスの際にTiBrガスの供給・停止を切り替える。
【0022】
NHガス供給ラインL2は、窒素含有ガス、例えば、NHガス供給源GS2から延び、合流配管L9に接続されている。NHガス供給ラインL2には、NHガス供給源GS2側から順に、マスフローコントローラM2、バッファタンクT2、及び開閉弁V2が設けられている。マスフローコントローラM2は、NHガス供給ラインL2を流れるNHガスの流量を制御する。バッファタンクT2は、NHガスを一時的に貯留し、短時間で必要なNHガスを供給する。開閉弁V2は、ALDプロセス及びエッチングプロセスの際にNHガスの供給・停止を切り替える。
【0023】
第1のパージラインL3は、Nガスの供給源であるNガス供給源GS3から延び、合流配管L9に接続されている。第1のパージラインL3は、ALD法による成膜中のパージ工程のときにNガスを供給する。第1のパージラインL3には、Nガス供給源GS3側から順に、マスフローコントローラM3、バッファタンクT3及び開閉弁V3が設けられている。マスフローコントローラM3は、第1のパージラインL3を流れるNガスの流量を制御する。バッファタンクT3は、Nガスを一時的に貯留し、短時間で必要なNガスを供給する。開閉弁V3は、ALDプロセスのパージ及びエッチングプロセスの際にNガスの供給・停止を切り替える。
【0024】
第2のパージラインL4は、Nガスの供給源であるNガス供給源GS4から延び、合流配管L9に接続されている。第2のパージラインL4は、ALD法による成膜中のパージ工程のときにNガスを供給する。第2のパージラインL4には、Nガス供給源GS4側から順に、マスフローコントローラM4、バッファタンクT4及び開閉弁V4が設けられている。マスフローコントローラM4は、第2のパージラインL4を流れるNガスの流量を制御する。バッファタンクT4は、Nガスを一時的に貯留し、短時間で必要なNガスを供給する。開閉弁V4は、ALDプロセスのパージ及びエッチングプロセスの際にNガスの供給・停止を切り替える。
【0025】
Arガス供給ラインL5は、Arガスの供給源であるArガス供給源GS5から延び、合流配管L9に接続されている。Arガス供給ラインL5には、Arガス供給源GS5側から順に、マスフローコントローラM5、バッファタンクT5及び開閉弁V5が設けられている。マスフローコントローラM5は、Arガス供給ラインL5を流れるArガスの流量を制御する。バッファタンクT5は、Arガスを一時的に貯留し、短時間で必要なArガスを供給する。開閉弁V5は、ALDプロセスのパージ及びエッチングプロセスの際にArガスの供給・停止を切り替える。
【0026】
クリーニングガス供給ラインL6は、クリーニングガス(フッ素含有ガス)、例えば、ClFガスの供給源であるClFガス供給源GS6から延び、合流配管L9に接続されている。クリーニングガス供給ラインL6には、ClFガス供給源GS6側から順に、マスフローコントローラM6、開閉弁V6が設けられている。マスフローコントローラM6は、クリーニングガス供給ラインL6を流れるクリーニングガスの流量を制御する。開閉弁V6は、クリーニングの際にClFガスの供給・停止を切り替える。
【0027】
天壁14は、整合器51を介してRF(Radio Frequency)電源50に接続されている。RF電源50は、プラズマ生成用の高周波(RF)電力を供給する。
【0028】
制御装置7は、基板処理装置100の各部の動作を制御する。制御装置7は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を有する。CPUは、RAM等の記憶領域に格納されたレシピに従って、所望の処理を実行する。レシピには、プロセス条件に対する装置の制御情報が設定されている。制御情報は、例えばガス流量、圧力、温度、プロセス時間であってよい。なお、レシピ及び制御装置7が使用するプログラムは、例えばハードディスク、半導体メモリに記憶されてもよい。また、レシピ等は、CD-ROM、DVD等の可搬性のコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に収容された状態で所定の位置にセットされ、読み出されるようにしてもよい。
【0029】
[成膜方法]
次に、基板処理装置100における金属含有膜の一例としてTiN膜の成膜処理について説明する。図2は、第1実施形態に係る基板処理装置100における成膜方法及びガス供給シーケンスの一例である。
【0030】
まず、基板処理装置100の処理容器1内に基板Wを搬入し、準備する。具体的には、ヒータ21により所定温度(例えば、350℃~530℃)に加熱されたステージ2を搬送位置(図1において二点鎖線で示す。)に下降させた状態でゲートバルブ12を開く。続いて、搬送アーム(図示せず)により基板Wを、搬入出口11を介して処理容器1内に搬入し、支持ピン27で支持する。搬送アームが搬入出口11から退避すると、ゲートバルブ12を閉じる。また、支持ピン27を下降させて、基板Wをステージ2に載置する。続いて、ステージ2を処理位置(図1において実線で示す。)まで上昇させ、処理容器1内を所定の真空度まで減圧する。
【0031】
(TiN成膜工程S1)
続いて、図2のTiN成膜工程S1において、TiBrガスとNHガスとを交互に供給してALDプロセスによりTiN膜を成膜する。TiN成膜工程S1は、第1のパージ工程S11、TiBr供給工程S12、第2のパージ工程S13、及びNH供給工程S14をこの順に1又は複数サイクル繰り返し、基板Wの上に所望の膜厚のTiN膜を形成するプロセスである。
【0032】
第1のパージ工程S11では、開閉弁V3,V4を開き、開閉弁V1,V2,V5、V6を閉じる。これにより、Nガス供給源GS3及びNガス供給源GS4から第1のパージラインL3及び第2のパージラインL4を経てNガスを処理容器1内に供給して圧力を上昇させ、ステージ2上の基板Wの温度を安定させる。このとき、Nガスは、バッファタンクT3,T4に一旦貯留された後に処理容器1内に供給されるので、比較的大きい流量を供給することができる。また、バッファタンクT1内には、原料ガス(TiBr)供給源GS1からTiBrガスが供給されて、バッファタンクT1内の圧力は略一定に維持されている。
【0033】
次のTiBr供給工程S12は、原料ガスであるTiBrガスを処理空間37に供給する工程である。TiBr供給工程S12では、まず、開閉弁V3,V4を閉じた状態で、開閉弁V1を開くことにより、原料ガス(TiBr)供給源GS1から原料ガス(TiBr)供給ラインL1を経てTiBrガスを処理容器1内の処理空間37に供給する。このとき、TiBrガスは、バッファタンクT1に一旦貯留された後に処理容器1内に供給される。これにより、基板Wの表面にTiBrガスが吸着される。
【0034】
次の第2のパージ工程S13は、処理空間37の余剰のTiBrガス等をパージする工程である。第2のパージ工程S13では、開閉弁V1を閉じてTiClガスの供給を停止する。また、開閉弁V3,V4を開く。これにより、Nガス供給源GS3及びNガス供給源GS4から第1のパージラインL3及び第2のパージラインL4を経てNガスを処理容器1内に供給する。このとき、Nガスは、バッファタンクT3,T4に一旦貯留された後に処理容器1内に供給されるので、比較的大きい流量を供給することができる。これにより、処理空間37の余剰のTiBrガス等をパージする。また、バッファタンクT2内には、NHガス供給源GS2からNHガスが供給されて、バッファタンクT2内の圧力は略一定に維持されている。
【0035】
次のNH供給工程S14は、NHガスを処理空間37に供給する工程である。NH供給工程S14では、開閉弁V3,V4を閉じた状態で開閉弁V2を開く。これにより、NHガス供給源GS2からNHガス供給ラインL2を経てNHガスを処理空間37に供給する。このとき、NHガスは、バッファタンクT2に一旦貯留された後に処理容器1内に供給される。これにより、基板W上に吸着したTiBrが還元される。このときのNHガスの流量は、十分に還元反応が生じる量とすることができる。これにより、TiBrガスのプリカーサを使用して熱処理により以下の化学反応が起こり、TiN膜を成膜することができる。
6TiBr(g)+32NH(g)=6TiN+24NHBr+N(g)
【0036】
これらの工程S11~S14を所定回数繰り返す(図2の(1)繰り返し)。これにより、基板Wの上に所望の膜厚のTiN膜を形成する。図3(a)は、工程S11~S14の成膜工程を所定回数繰り返した結果、基板W上の下地膜200に形成された凹部にTiN膜201が成膜されている状態を示す。TiN膜201は上部程厚く成膜される。よって、図2の(1)の繰り返しの回数が増えると、凹部の開口がTiN膜201によって塞がれる可能性がある。
【0037】
そこで、図2のTiN成膜工程S1のALDプロセスを1回又は複数回実行してTiN膜を成膜した後、TiNエッチング工程S2にてTiN膜の表層をプラズマエッチングする。これにより、凹部の開口を広げ、凹部の開口がTiN膜201によって塞がれることを防ぐ。
【0038】
(TiNエッチング工程S2)
図2のTiNエッチング工程S2は、第3のパージ工程S21、プラズマエッチング工程S22、及び第4のパージ工程S23をこの順に実行し、TiN膜をプラズマエッチングするプロセスである。
【0039】
第3のパージ工程S21は、処理空間37の余剰のNHガス等をパージする工程である。第3のパージ工程S21では、開閉弁V2を閉じてNHガスの供給を停止する。また、開閉弁V3,V4を開く。これにより、Nガス供給源GS3及びNガス供給源GS4から第1のパージラインL3及び第2のパージラインL4を経てNガスを処理容器1内に供給する。このとき、Nガスは、バッファタンクT3,T4に一旦貯留された後に処理容器1内に供給されるので、比較的大きい流量を供給することができる。これにより、処理空間37の余剰のNHガス等をパージする。また、バッファタンクT2内には、NHガス供給源GS2からNHガスが供給されて、バッファタンクT2内の圧力は略一定に維持されている。
【0040】
次のプラズマエッチング工程S22は、エッチングガスとしてのTiBrガスと、Arガスとを処理空間37に供給し、高周波(RF)電力を供給し、プラズマを生成してエッチングする工程である。プラズマエッチング工程S22では、まず、開閉弁V3,V4を閉じた状態で、開閉弁V1、V5を開く。開閉弁V1を開くことにより、原料ガス(TiBr)供給源GS1から原料ガス(TiBr)供給ラインL1を経てTiBrガスを処理容器1内の処理空間37に供給する。このとき、TiBrガスは、バッファタンクT1に一旦貯留された後に処理容器1内に供給される。
【0041】
また、開閉弁V5を開くことにより、Ar原料ガス供給源GS5からArガス供給ラインL5を経てArガスを処理容器1内の処理空間37に供給する。このとき、Arガスは、バッファタンクT5に一旦貯留された後に処理容器1内に供給される。Arガスは、プラズマを安定して着火及び生成するために寄与する。
【0042】
更に、RF電源50からプラズマ生成用の高周波(RF)電力を供給する。これにより、TiBrガスのプリカーサを使用してプラズマ処理により以下の化学反応が起こり、TiN膜の表層をプラズマエッチングすることができる。
2TiN+4Br=2TiBr(g)+N(g)
【0043】
次の第4のパージ工程S23は、処理空間37の余剰のTiBrガス等をパージする工程である。第4のパージ工程S23では、開閉弁V1を閉じてTiBrガスの供給を停止する。また、開閉弁V5を閉じてArガスの供給を停止する。また、開閉弁V3,V4を開く。これにより、Nガス供給源GS3及びNガス供給源GS4から第1のパージラインL3及び第2のパージラインL4を経てNガスを処理容器1内に供給する。このとき、Nガスは、バッファタンクT3,T4に一旦貯留された後に処理容器1内に供給されるので、比較的大きい流量を供給することができる。これにより、処理空間37の余剰のTiBrガス等をパージする。また、バッファタンクT1内には、原料ガス(TiBr)供給源GS1からTiBrガスが供給されて、バッファタンクT1内の圧力は略一定に維持されている。
【0044】
図3(a)は、TiNエッチング工程S2を行った結果、TiBrガスから生成されたプラズマ中のラジカルにより基板W上の凹部のTiN膜201がエッチングされる。TiN膜201の上面及び側面上部は、底部及び側面下部よりもラジカルが届きやすくエッチングされ易いため、凹部の開口を広げることができる。
【0045】
図2の「(2)繰り返し」に示すように、TiNエッチング工程S2の実行後、TiN成膜工程S1に戻り、再び工程S11~S14を所定回数繰り返す(図2の(1)繰り返し)。なお、工程S23と工程S11のパージ工程は同一工程であるため、TiNエッチング工程S2の実行後、次のTiN成膜工程S1では、工程S11を省略してTiBr供給工程S12を行ってもよい。
【0046】
図2の(1)(2)の繰り返し工程を実行することにより、図3(c)に示すカバレッジの良いTiN膜201を成膜することができる。
【0047】
以上に説明した基板Wの成膜処理では、処理容器1内の内壁を含むパーツにTiN膜が堆積する。堆積した膜は剥がれてパーティクルとなり、基板Wの成膜に影響を及ぼすため、所定の条件にて図2に示すショートクリーニング工程S3を行う。
【0048】
例えば、図2の(2)の繰り返し工程においてTiN成膜工程S1とTiNエッチング工程S2とを繰り返し実行する回数が予め設定された第1設定回数に達すると、基板Wを搬出後、TiBrガスにより処理容器1内のショートクリーニング工程S3を実行する。ショートクリーニング工程S3は、堆積したTiN膜の表層をエッチングし、パーティクルの原因となる堆積物を除去する工程である。
【0049】
ショートクリーニング工程S3では、クリーニング(エッチング)ガスとしてのTiBrガスを処理空間37に供給し、高周波(RF)電力を供給し、プラズマを生成してクリーニング(エッチング)を行う。ショートクリーニング工程S3では、まず、開閉弁V3,V4を閉じた状態で、開閉弁V1を開く。開閉弁V1を開くことにより、原料ガス(TiBr)供給源GS1から原料ガス(TiBr)供給ラインL1を経てTiBrガスを処理容器1内の処理空間37に供給する。このとき、TiBrガスは、バッファタンクT1に一旦貯留された後に処理容器1内に供給される。
【0050】
RF電源50からプラズマ生成用の高周波(RF)電力を供給する。これにより、TiBrガスのプラズマによって堆積したTiN膜の表層をエッチングにより剥がし、除去する。
【0051】
図2の(3)繰り返しに示すように、ショートクリーニング工程S3の実行後、TiN成膜工程S1に戻り、再び工程S11~S14を所定回数繰り返し(図2の(1)繰り返し)、TiNエッチング工程S2を行う動作を繰り返す(図2の(2)繰り返し)。
【0052】
このようにして、TiN成膜工程S1とTiNエッチング工程S2との繰り返し(図2の(2)繰り返し)の間に、ショートクリーニング工程S3を実行する動作を繰り返す(図2の(3)繰り返し)。
【0053】
その後、例えば、TiN成膜工程S1とTiNエッチング工程S2とを繰り返し実行する回数(図2の(2)繰り返し回数)が第1設定回数よりも多い予め設定された第2設定回数に達すると、クリーニング工程S4を行う。
【0054】
クリーニング工程S4では、クリーニングガスとしてのClFガスを処理空間37に供給し、高周波(RF)電力を供給し、プラズマを生成してクリーニングを行う。クリーニング工程S4では、まず、開閉弁V3,V4を開いてNガスを処理容器1内に供給することにより、処理空間37の余剰のTiBrガス等をパージする。
【0055】
また、開閉弁V6を開くことにより、ClFガス供給源GS6からクリーニングガス供給ラインL6を経てClFガスを処理容器1内の処理空間37に供給する。RF電源50からプラズマ生成用の高周波(RF)電力を供給する。これにより、ClFガスからプラズマを生成することによって、処理容器1内をクリーニングする。クリーニング工程S4の実行後、プリコート膜によるコーティングを行い、次のTiN膜の成膜を実行する。
【0056】
[実験結果]
(成膜工程)
TiN成膜工程S1では、ステージ2を350℃~530℃に設定し、TiBrガス及びNHガスを交互に供給して熱処理によりTiN膜を成膜した。これによれば、上記温度範囲において、結晶性及びステップカバレッジ(段差被覆性)が良く、均一な膜厚のTiN膜を形成できた。また、上記温度範囲でステージ2の温度が高くなるほど成膜レートが上昇し、TiN膜の膜厚が厚くなった。
【0057】
(エッチング工程)
TiNエッチング工程S2では、ステージ2をTiN成膜工程S1と同一温度に制御し、TiBrガス及びArガスを使用してプラズマを生成し、TiN膜をエッチングした。図4は、第1実施形態に係る成膜方法におけるエッチング結果の一例を示す図である。図4の横軸はエッチング温度(ステージ2の温度)であり、縦軸はTiN膜のエッチングレートである。
【0058】
エッチング温度が450℃のとき、TiBrガス及びArガスを使用してプラズマを生成し、TiN膜をエッチングした場合、エッチングレートは22nm/minであった。エッチング温度が500℃のとき、TiBrガス及びArガスを使用してプラズマを生成し、TiN膜をエッチングした場合、エッチングレートは23nm/minであった。
【0059】
これに対して、TiBrガスを使用して熱処理によりTiN膜をエッチングした場合、エッチング温度が450℃のとき、TiN膜をエッチングできなかった。エッチング温度が500℃のとき、エッチングレートは1~2nm/minであり、ほとんどTiN膜をエッチングできなかった。
【0060】
(TiN膜評価)
TiN膜のステップカバレッジについては、成膜されたTiN膜の下膜(凹部の底面の膜)の膜厚に対するTiN膜の上膜(凹部の上面の膜)の膜厚の割合を用いて評価した。エッチング温度が450℃、エッチング時間が30秒のとき、ステップカバレッジは100%であり、下膜に対する上膜の厚さが同じであった。
【0061】
エッチング温度が450℃、エッチング時間が120秒のとき、ステップカバレッジは113%であった。エッチング温度が500℃、エッチング時間が120秒のとき、ステップカバレッジは113%であった。いずれもカバレッジの良いTiN膜を成膜することができた。
【0062】
なお、TiBrガスの替わりにTiClガスを使用して成膜工程S1に示す方法によりTiN膜を成膜した場合にも、エッチング工程S2に示す方法によりTiBrガスを使用してTiN膜をプラズマエッチングすることができた。この場合のステップカバレッジは90%であった。
【0063】
以上から、TiBrガスを使用してTiN膜をエッチングする場合、熱処理ではほぼエッチングできず、プラズマを生成することが有効であることがわかった。また、TiBrガスの替わりにTiClガスを使用して成膜したTiN膜に対しても、TiBrガスを使用してエッチングできることがわかった。
【0064】
以上に説明した第1実施形態に係る成膜方法では、(a)基板Wを処理容器1内に準備する工程と、(b)処理容器1内にTiBrガス又はTiClガスを含むガスを供給し、TiN膜を成膜する成膜工程と、(c)処理容器1内にTiBrガスを含むガスを供給し、TiN膜をエッチングするエッチング工程と、を含み、(d)(b)の成膜工程と(c)のエッチング工程とをこの順で繰り返し実行する。(c)のエッチング工程では、処理容器1内にRF電力を供給し、TiBrガスから生成されたプラズマによりTiN膜をプラズマエッチングする。
【0065】
成膜工程では、金属含有ガス、つまり、TiBrとNHガスとを交互に供給し、ALD法によりTiN膜を成膜する、または、TiClガスとNHガスとを交互に供給し、ALD法によりTiN膜を成膜する。また、成膜工程を1回又は複数回実行した後にエッチング工程を実行することを、1回又は複数回実行する。
【0066】
成膜工程とエッチング工程において供給する金属含有ガスは同一ガス、つまり、TiBrガスであってもよいし、異なるガス、つまり成膜工程がTiClガス、エッチング工程がTiBrガスであってもよい。
【0067】
成膜工程とエッチング工程において基板を載置するステージ2の温度は同一であることが好ましい。更に、成膜工程とエッチング工程とショートクリーニング工程とにおいてステージ2の温度は同一であることが好ましい。
【0068】
これによれば、カバレッジの良いTiN膜を成膜することができる成膜方法を提供できる。また、成膜工程とエッチング工程とを同一の処理容器1で連続して実行できるため、基板処理装置100を1台配置すればよく、高いスループットとコストメリットを得ることができる。
【0069】
また、成膜工程とエッチング工程とショートクリーニング工程とを350℃~530℃の範囲でほぼ同一温度に設定でき、これによってもスループットを改善することができる。
【0070】
<第2実施形態>
次に、基板の上に形成された凹部にチタン膜(以下、Ti膜ともいう。)を成膜する第2実施形態に係る成膜方法について説明する。また、その成膜方法を実行する基板処理装置100a及びその基板処理装置100aをクリーニングする方法について提案する。
【0071】
[基板処理装置]
まず、第2実施形態に係る成膜方法を実行する基板処理装置100aの一例について、図5を参照しながら説明する。図5は、第2実施形態に係る基板処理装置100aの一例を示す断面模式図である。
【0072】
基板処理装置100aは、処理ガス供給部5aの構成において図1の基板処理装置100の処理ガス供給部5の構成と相違し、その他の構成は同一である。よって、基板処理装置100aの処理ガス供給部5aについて説明し、その他の構成の説明を省略する。
【0073】
処理ガス供給部5aは、原料ガス(TiBr)供給ラインL1、第1のパージラインL3、第2のパージラインL4を有する。更に、処理ガス供給部5aは、Arガス供給ラインL5、クリーニングガス供給ラインL6、原料ガス(TiCl)供給ラインL7、Hガス供給ラインL8を有する。
【0074】
原料ガス(TiBr)供給ラインL1、第1のパージラインL3、第2のパージラインL4、Arガス供給ラインL5、クリーニングガス供給ラインL6については、処理ガス供給部5のガス供給ラインと同一構成であるため、説明を省略する。
【0075】
原料ガス(TiCl)供給ラインL7は、金属含有ガス、例えば、TiClガスの供給源である原料ガス(TiCl)供給源GS7から延び、合流配管L9に接続されている。原料ガス(TiCl)供給ラインL7には、原料ガス(TiCl)供給源GS7側から順に、マスフローコントローラM7、バッファタンクT7、及び開閉弁V7が設けられている。マスフローコントローラM7は、原料ガス(TiCl)供給ラインL7を流れるTiClガスの流量を制御する。バッファタンクT7は、TiClガスを一時的に貯留し、短時間で必要なTiClガスを供給する。開閉弁V7は、ALDプロセス及びエッチングプロセスの際にTiClガスの供給・停止を切り替える。
【0076】
ガス供給ラインL8は、例えば、Hガス供給源GS8から延び、合流配管L9に接続されている。Hガス供給ラインL8には、Hガス供給源GS8側から順に、マスフローコントローラM8、バッファタンクT8、及び開閉弁V8が設けられている。マスフローコントローラM8は、Hガス供給ラインL8を流れるHガスの流量を制御する。バッファタンクT8は、Hガスを一時的に貯留し、短時間で必要なHガスを供給する。開閉弁V8は、ALDプロセス及びエッチングプロセスの際にHガスの供給・停止を切り替える。
【0077】
[成膜方法]
次に、基板処理装置100aにおける金属含有膜の一例としてTi膜の成膜処理について説明する。図6は、第2実施形態に係る基板処理装置100aにおける成膜方法及びガス供給シーケンスの一例である。
【0078】
まず、基板処理装置100aの処理容器1内に基板Wを搬入し、準備する。
【0079】
(Ti成膜工程S1')
続いて、図6のTi成膜工程S1'において、TiClガスとHガスとを用いたALDプロセスによりTi膜を成膜する。Ti成膜工程S1'は、第1のパージ工程S11、TiCl供給工程S12'、第2のパージ工程S13、及びH供給工程S14'をこの順に1又は複数サイクル繰り返し、基板Wの上に所望の膜厚のTi膜を形成するプロセスである。
【0080】
第1のパージ工程S11及び第3のパージ工程S13は、第1実施形態の第1のパージ工程S11及び第3のパージ工程S13と同一工程であるため説明を省略する。
【0081】
第1のパージ工程S11に続くTiCl供給工程S12'は、成膜ガスとしてのTiClガスを処理空間37に供給する工程である。TiCl供給工程S12'では、まず、開閉弁V3,V4を閉じた状態で開閉弁V7を開くことにより、原料ガス(TiCl)供給源GS7から原料ガス(TiCl)供給ラインL7を経てTiClガスを処理容器1内の処理空間37に供給する。このとき、TiClガスは、バッファタンクT7に一旦貯留された後に処理容器1内に供給される。これにより、基板Wの表面にTiClガスが吸着される。
【0082】
次の第2のパージ工程S13に続くH供給工程S14'は、Hガスを処理空間37に供給する工程である。H供給工程S14'では、開閉弁V3,V4を閉じた状態で開閉弁V5、V8を開く。
【0083】
開閉弁V5を開くことにより、Ar原料ガス供給源GS5からArガス供給ラインL5を経てArガスを処理容器1内の処理空間37に供給する。このとき、Arガスは、バッファタンクT5に一旦貯留された後に処理容器1内に供給される。Arガスは、プラズマを安定して着火及び生成するために寄与する。
【0084】
また、開閉弁V8を開くことにより、Hガス供給源GS8からHガス供給ラインL8を経てHガスを処理空間37に供給する。このとき、Hガスは、バッファタンクT8に一旦貯留された後に処理容器1内に供給される。
【0085】
更に、RF電源50からプラズマ生成用の高周波(RF)電力を供給する。これにより、Hガス及びArガスを使ってプラズマを生成する。
【0086】
これにより、基板W上に吸着したTiClがHガスと反応する。このときのHガスの流量は、十分に反応が生じる量とすることができる。これにより、Hガスのプラズマを使ってプラズマ処理することによって以下の化学反応が起こり、Ti膜を成膜することができる。ただし、本工程は、プラズマを使用せず熱処理で以下の化学反応を起こさせてもよい。
TiCl(g)+2H(g)=Ti+4HCl(g)
【0087】
これらの工程S11、S12'、S13、S14'を所定回数繰り返す(図6の(1)繰り返し)。これにより、基板Wの上に所望の膜厚のTi膜を形成する。図7(a)は、Ti成膜工程S1'の各工程を繰り返した結果、基板W上の下地膜200に形成された凹部にTi膜202が成膜された状態を示す。Ti膜202は、結晶性及びステップカバレッジ(段差被覆性)がよい。Ti膜202はコンフォーマルに成膜される。
【0088】
図6のTi成膜工程S1'のALDプロセスを1回又は複数回実行してTi膜を成膜した後、Tiエッチング工程S2'にてTi膜のプラズマエッチングを行う。Tiエッチング工程S2'は、第1実施形態にかかるTiNエッチング工程S2の工程S21~S23と同一の工程を行う。これにより、凹部の上面及び側面のTi膜をエッチングし、TiBrのラジカルが届きにくい底面においてTi膜を残すことができる。図7(b)は、Tiエッチング工程S2'の各工程を繰り返した結果、凹部の上面及び側面にてTi膜202が除去され、底面においてTi膜202が残っている状態を示す。
【0089】
図6の「(2)繰り返し」に示すように、Tiエッチング工程S2'の実行後、Ti成膜工程S1'に戻り、再びTi成膜工程S1'の各工程を所定回数繰り返す(図2の(1)繰り返し)。なお、工程S23と工程S11のパージ工程は同一工程であるため、Tiエッチング工程S2'の実行後、次のTi成膜工程S1'では、工程S11を省略し、TiCl供給工程S12'を行ってもよい。
【0090】
図6の(1)(2)の繰り返し工程により、図7(c)に示すように、Ti膜202を凹部の底部から成膜することができる。
【0091】
[実験結果]
(成膜工程)
Ti成膜工程S1'では、ステージ2を350℃~530℃に設定し、TiClガスを供給した後、Hガス及びArガスを使用してプラズマ処理によりTi膜を成膜した。これによれば、上記温度範囲において均一な膜を形成できた。また、上記温度範囲でステージ2の温度が高くなるほどTi膜の膜厚が厚くなった。
(エッチング工程)
Tiエッチング工程S2'では、ステージ2をTi成膜工程S1'と同一温度範囲で、TiBrガス及びArガスを使用してプラズマを生成し、Ti膜をエッチングした。図8は、第2実施形態に係る成膜方法におけるエッチング結果の一例を示す図である。図8の横軸はエッチング温度(ステージ2の温度)であり、縦軸はTi膜のエッチングレートである。
【0092】
エッチング温度が450℃のとき、TiBrガス及びArガスを使用してプラズマを生成し、Ti膜をエッチングした場合、エッチングレートは64nm/minであった。エッチング温度が500℃のとき、TiBrガス及びArガスを使用してプラズマを生成し、Ti膜をエッチングした場合、エッチングレートは67nm/minであった。
【0093】
これに対して、TiBrガスを使用して熱処理によりTi膜をエッチングした場合、エッチング温度が450℃のとき、Ti膜をエッチングできなかった。エッチング温度が500℃のとき、エッチングレートは4~5nm/minであり、ほとんどTi膜をエッチングできなかった。
【0094】
以上から、TiBrガスを使用してTi膜をエッチングする場合、熱処理ではほぼエッチングできず、プラズマを生成することが有効であることがわかった。
【0095】
以上に説明した第2実施形態に係る成膜方法では、(a)基板Wを処理容器1内に準備する工程と、(b)処理容器1内にTiClガスを含むガスを供給し、Ti膜を成膜する工程と、(c)処理容器1内にTiBrガスを含むガスを供給し、Ti膜をエッチングする工程と、を含み、(d)(b)の成膜工程と(c)のエッチング工程とをこの順で繰り返し実行する。(c)のエッチング工程では、処理容器1内にRF電力を供給し、TiBrガスから生成されたプラズマによりTi膜をプラズマエッチングする。
【0096】
(b)の成膜工程では、金属含有ガス、つまり、TiClとHガスとを交互に供給し、ALD法によりTi膜を成膜する。
【0097】
(b)の成膜工程において供給する金属含有ガスはTiClガスであり、(c)のエッチング工程において供給する金属含有ガスはTiBrガスであり、異なるガスである。
【0098】
成膜工程とエッチング工程とにおいて基板を載置するステージ2の温度は同一であることが好ましい。更に、成膜工程とエッチング工程とショートクリーニング工程とにおいて基板Wを載置するステージ2の温度は同一であることが好ましい。
【0099】
これによれば、凹部へのTi膜の充填性を高めることができる成膜方法を提供できる。また、成膜工程とエッチング工程とを同一の処理容器1で連続して実行できるため、基板処理装置100を1台配置すればよく、高いスループットとコストメリットを得ることができる。
【0100】
また、成膜工程とエッチング工程とショートクリーニング工程S3とを350℃~530℃の間の同一温度に設定でき、これによってもスループットを改善することができる。
【0101】
[クリーニング]
成膜処理に続けて実行されるクリーニング方法について、図9及び図10を参照して説明する。図9は、第1及び第2実施形態に係る成膜方法(クリーニング方法を含む)の一例を示すフローチャートである。図10は、図9の成膜方法(クリーニング方法を含む)のシーケンスの一例である。図9の処理は、制御装置7により制御され、基板処理装置100又は基板処理装置100aにより実行される。
【0102】
図9に示す成膜方法では、ステップS10において基板を準備し、ステップS20においてTiN膜又はTi膜を成膜し、ステップS30において成膜後の基板Wを搬出する。TiN膜を成膜する場合、ステップS20は、例えば、図2に示すTiN成膜工程S1及びTiNエッチング工程S2を所定回数繰り返し実行する。Ti膜を成膜する場合、ステップS20は、例えば、図6に示すTi成膜工程S1'及びTiエッチング工程S2'を所定回数繰り返し実行する。図10(b)ではステップS20の成膜処理を「Deposition」で示している。
【0103】
ステップS40において、制御装置7は、クリーニングを実行するか否かを判定する。制御装置7は、クリーニングを実行しないと判定すると、ステップS50に進み、図2又は図6の「(2)繰り返し」を第1設定回数繰り返したかを判定する。
【0104】
ステップS50において、制御装置7は、第1設定回数繰り返していないと判定すると、ステップS10に戻り、次の基板Wの処理を開始する。一方、ステップS50において、制御装置7は、第1設定回数行ったと判定すると、ステップS60に進み、TiBrガスを用いたショートクリーニング(エッチング)処理を実行する。図10(b)ではステップS60のショートクリーニング処理を「TiBr short Cleaning」で示している。ショートクリーニング処理を行った後、ステップS10に戻り、次の基板Wの成膜処理を開始する。ショートクリーニング処理は、成膜温度と同一温度(例えば500℃)で行うことができる。
【0105】
ステップS40において、制御装置7は、クリーニングを実行すると判定すると、ステップS70に進み、ClFガスを使用してクリーニング処理を実行する。図10(b)ではステップS70のクリーニング処理を「ClF Cleaning」で示している。
【0106】
このクリーニング処理では、ClFガスを使用する。このため、シャワーヘッド3等が腐食することを避けるためにクリーニング温度を350℃以上に上げるのは困難である。よって、クリーニング処理は、成膜温度と同一温度で行うことができず、350℃よりも低い温度(例えば200℃)で行う。
【0107】
これに対して、TiBrガスを用いたショートクリーニング処理では、成膜温度と同一温度で行うことができるため、ショートクリーニング処理のための温度制御時間が不要になる。よって、図10(a)に示す参考例において、成膜処理からクリーニング処理を行う場合、及びクリーニング処理から成膜処理を行う場合に発生する温度制御のための待ち時間なく、TiBrガスを用いたショートクリーニング処理を実行することができる。これにより、スループットの低下を招くことなく、パーティクルの原因となる処理容器1内の堆積物をTiBrガスによるプラズマエッチングによって除去することができる。
【0108】
図9に戻り、ステップS70のClFガスを使用したクリーニング処理の後、ステップS80において、制御装置7は、パージ処理を行い、ClFガスを排気する。パージ処理にはNガスを用いてもよいし、Arガスを用いてもよい。
【0109】
ステップS80のパージ処理後、制御装置7は、ステップS90において処理容器1内の各パーツにプリコート膜を形成する。このプリコート工程において供給するガスは、基板Wの成膜に用いられるガスと同一ガスであることが好ましい。これにより、基板Wの成膜処理にて形成される膜と同じ膜(例えばTiN膜はTi膜)がプリコート膜として処理容器1内の各パーツに形成され、基板Wの成膜環境を安定させることができる。プリコート膜によるコーティングの後、次のTiN膜又はTi膜の成膜が実行される。
【0110】
以上に説明したように、本実施形態に係る成膜方法によれば、カバレッジの良い金属含有膜を成膜することができる。また、凹部の底部から金属含有膜を成膜することができる。
【0111】
今回開示された実施形態に係る成膜方法は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0112】
1 処理容器
2 ステージ
3 シャワーヘッド
4 排気部
5 処理ガス供給部
7 制御装置
13 排気ダクト
41 排気ライン
44 真空ポンプ
100 基板処理装置
201 TiN膜
202 Ti膜
L1 原料ガス(TiBr)供給ライン
L2 NHガス供給ライン
L3 第1のパージライン
L4 第2のパージライン
L5 Arガス供給ライン
L6 クリーニングガス供給ライン
L7 原料ガス(TiCl)供給ライン
L8 Hガス供給ライン
L9 合流配管
W 基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10