(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105021
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】逆浸透システム及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
B01D 61/06 20060101AFI20240730BHJP
C02F 1/44 20230101ALI20240730BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20240730BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20240730BHJP
B01D 61/04 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B01D61/06
C02F1/44 A
B01D61/58
B01D61/02 500
B01D61/04
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009525
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 妙子
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006JA57Z
4D006JA58Z
4D006KA01
4D006KA03
4D006KA14
4D006KA16
4D006KA52
4D006KA53
4D006KA54
4D006KA55
4D006KA57
4D006KA67
4D006KB13
4D006KB14
4D006KD08
4D006PA01
4D006PB02
4D006PB08
4D006PC01
(57)【要約】
【課題】第1RO装置からのブラインを第2RO装置で処理して透過水を回収する逆浸透システムにおいて、第1RO装置からの高圧ブラインからエネルギー回収装置でエネルギーを回収できると共に、第1RO装置及び第2RO装置の水バランスを調整することが可能な逆浸透システムを提供する。
【解決手段】原水は、第1高圧ポンプ6によって第1RO装置8に供給される。第1RO装置8からの第1ブラインは、高圧を維持したままエネルギー回収装置30に導入され、配管32から送水されたブライン水槽15からのブラインを昇圧させる。昇圧されたブラインは、第2RO装置18に供給される。第2RO装置18からの第2透過水は、配管19によって原水槽2に送水される。エネルギー回収装置30を通って降圧した第1ブラインはブライン水槽15に導入される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水が第1高圧ポンプによって供給され、第1透過水と第1ブラインとに分離する第1RO装置と、
該第1RO装置からの第1ブラインの圧力により第2RO装置用給水を加圧するためのエネルギー回収装置と、
該エネルギー回収装置からの該第2RO装置用給水を第2透過水と第2ブラインとに分離する第2RO装置と、
該エネルギー回収装置を通過して降圧した該第1ブラインを受け入れるブライン水槽と、
該ブライン水槽内のブラインを前記第2RO装置用給水として前記エネルギー回収装置に送水する送水手段と、
前記第2RO装置の第2透過水を前記第1RO装置の給水側へ戻す返送手段と
を有する逆浸透システム。
【請求項2】
原水槽が設置されており、該原水槽から原水が前記第1高圧ポンプによって前記第1RO装置へ供給され、
前記返送手段は、前記第2透過水を該原水槽に返送する請求項1の逆浸透システム。
【請求項3】
原水槽が設置されており、該原水槽から原水が前記第1高圧ポンプによって前記第1RO装置へ供給され、
前記返送手段は、前記第2透過水を前記第1高圧ポンプのサクション側に返送する請求項1の逆浸透システム。
【請求項4】
前記第1高圧ポンプと第1RO装置とを有するラインが並列に複数設けられており、
複数の第1RO装置からの第1ブラインを合流させて前記エネルギー回収装置に供給する請求項1の逆浸透システム。
【請求項5】
原水が第1高圧ポンプによって供給され、第1透過水と第1ブラインとに分離する第1RO装置と、
該第1RO装置からの第1ブラインの圧力により膜濾過装置用給水を加圧するためのエネルギー回収装置と、
該エネルギー回収装置を通過して降圧した該第1ブラインを受け入れるブライン水槽と、
該ブライン水槽からの該第1ブラインを第2透過水と第2ブラインとに分離する第2RO装置と、
該第2RO装置の第2透過水を前記第1RO装置の給水側へ戻す第2透過水返送手段と、
廃水又はその処理水を前記エネルギー回収装置に送水する廃水又は処理水送水手段と、
該エネルギー回収装置で加圧された廃水又は処理水を膜濾過する膜濾過装置と、
該膜濾過装置からの膜濾過水を前記第1RO装置の給水側へ送水する膜濾過水送水手段と
を有する逆浸透システム。
【請求項6】
前記廃水送水手段は、前記廃水の凝集処理手段と、該凝集処理手段からの凝集処理水を固液分離処理する固液分離手段とを備えており、
該固液分離手段からの固液分離処理水が前記エネルギー回収装置に送水される
請求項5の逆浸透システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかの逆浸透システムの運転方法であって、前記原水としてかん水を処理する逆浸透システムの運転方法。
【請求項8】
請求項6又は7の逆浸透システムの運転方法であって、前記原水としてかん水を処理し、前記廃水として電子部品製造プロセスからの排出水を処理する逆浸透システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜装置(RO装置)を備えた逆浸透システムに係り、特にRO装置が多段に設置されており、前段RO装置の濃縮水(ブライン)を後段RO装置で処理してその透過水を前段RO装置の給水側に戻すよう構成された逆浸透システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RO装置が多段に設置されており、前段RO装置の濃縮水(ブライン)を後段RO装置で処理してその透過水を前段RO装置の給水側に戻すよう構成された逆浸透システムとして、前段RO装置からの高圧のブライン水を一旦オリフィスで減圧させてからブライン水槽で受け、該ブライン水槽内のブラインを後段用高圧ポンプで加圧して後段RO装置に供給するものがある(
図4)。
【0003】
また、RO装置が多段に設置されており、前段RO装置の濃縮水(ブライン)を後段RO装置で処理してその透過水を前段RO装置の給水側に戻すよう構成された逆浸透システムとして、前段RO装置からのブラインを、高圧のまま直接後段RO装置に供給し、透過水を得るものがある(
図5)。
【0004】
図4,5を参照してこれらの逆浸透システムについて説明する。なお、
図4,5は、海水よりも塩分濃度の低い、かん水等よりなる原水を2段RO処理するものである。
【0005】
図4の逆浸透システムにあっては、原水は原水配管1によって原水槽2に導入される。原水槽2内の原水は、給水ポンプ3及び配管4によって保安フィルタ5に通水される。保安フィルタ5を通過した水は、第1高圧ポンプ6によって昇圧され、配管7から第1RO装置8に供給される。
【0006】
RO膜を透過した第1透過水は、配管9によって処理水槽10に送水される。処理水槽10内の処理水は、ポンプ11及び配管12によって目的箇所に送水される。
【0007】
第1RO装置8でRO膜を透過しなかった第1ブライン(濃縮水)は、オリフィス13によって降圧された後、配管14を介してブライン水槽15に導入される。ブライン水槽15内のブラインは、第2高圧ポンプ16によって昇圧され、配管17を介して第2RO装置18に供給される。第2RO装置18のRO膜を透過した第2透過水は、配管19によって原水槽2に送水される。
【0008】
第2RO装置18からの第2ブラインは、オリフィス20で降圧された後、配管(排水配管)21を介して排出される。なお、第2RO装置18からの第2ブラインの水量が不足する場合には、第2RO装置18からの第2ブラインの一部は、配管21から分岐した配管22を介してブライン水槽15に導入される。
【0009】
なお、システム全体の水バランスをとるように、第1高圧ポンプ6の出口弁の調整を行ったり、第1高圧ポンプ6をインバータ制御する。
【0010】
図5は、第1RO装置からの第1ブラインの圧力によって第2RO装置でRO処理を行うようにした従来例の一例を示すものである。
図5の逆浸透システムは、
図4の逆浸透システムにおいてオリフィス13、ブライン水槽15、第2高圧ポンプ16、配管17及び分岐配管22を省略し、第1RO装置8からの第1ブラインを、高圧を維持したまま第2RO装置18に供給し、このブライン水圧によってRO膜処理するようにしたものである。
図5のその他の構成は
図4と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0011】
図5の逆浸透システムは、
図4の逆浸透システムと比較して、ブライン水槽及びブライン昇圧用の第2高圧ポンプが不要となり、その分初期建設費用が低減するとともに高圧ポンプの消費電力も低減できるというメリットがある。
【0012】
第1RO装置のブラインを第2RO装置で処理してその透過水を第1RO装置の給水側に戻すよう構成された逆浸透システムにより海水を淡水化する場合には、第1RO装置からのブライン水量が多いので、第1RO装置からのブラインをエネルギー回収装置に導入してエネルギーを回収する(RO給水の昇圧に利用する)ことが従来より行われている。
【0013】
図6はかかるエネルギー回収装置を備えた逆浸透システムの従来例の一例を示すものである。
【0014】
図6の逆浸透システムは、
図4の逆浸透システムにおいて、オリフィス13を省略し、第1RO装置8のブラインを、高圧を維持したまま配管14によってエネルギー回収装置26に導入し、第1RO装置8への給水の一部を昇圧させるようにしたものである。
【0015】
エネルギー回収装置26には、保安フィルタ5を通過した原水の一部が配管25によって導入され、昇圧される。昇圧された原水は、高圧ポンプ27でさらに昇圧された後、配管28を通って配管7に導入され、第1高圧ポンプ6からの高圧原水と合流して第1RO装置8に給水として供給される。
【0016】
エネルギー回収装置26を通過して圧が低下した第1RO装置8からのブラインは、配管24を通ってブライン水槽15に流入する。
【0017】
図6の逆浸透システムのその他の構成は
図4と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0018】
図6の逆浸透システムによると、第1RO装置8からのブラインが保有する高圧力を利用(回収)して第1RO装置8への給水の一部を昇圧させるので、第1高圧ポンプ6を小容量化したり、第1高圧ポンプ6の消費電力を節減したりすることができる。
【0019】
しかし、
図6の逆浸透システムは、原水が海水であり第1RO装置8のブライン水量が多い場合には好適であるが、原水がかん水のように低塩分濃度の場合には、第1RO装置8からのブライン水量が少なく、回収エネルギー量が少ないので、エネルギー回収装置26を設置する経済的メリットに乏しい。
【0020】
また、エネルギー回収装置26内のシール部からのブラインのリークにより、高圧ブライン水がRO給水へ混入して第1RO装置8の見かけ除去率が低下するリスクもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2022-45877号公報
【特許文献2】特開2004-167423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
図4の逆浸透システムにあっては、第1RO装置8からの第1ブラインを一旦ブライン水槽15に受けるようにしているので、システム全体の水バランスをとることが可能である。しかし、
図4の逆浸透システムではエネルギー回収がなされない。
【0023】
図5の逆浸透システムにあっては、システム全体の水バランスが設計基準値から外れ易い。すなわち、一般に、RO装置の運転を継続すると、スケールが付着して差圧が上昇したり、フラックス(透過流束)が低下する。特に、第1RO装置のブラインを第2RO装置に供給してその透過水を回収する逆浸透システムにあっては、第1RO装置よりも第2RO装置の方が差圧上昇やフラックス低下が進行し易く、第2RO装置の透過水量すなわち回収水量が経時的に減少する。
【0024】
そのため、
図5の逆浸透システムでは、システム全体での水バランスが設計基準値から外れるおそれがある。すなわち、第1高圧ポンプ6の出口弁の調整を行ったり、第1高圧ポンプ6をインバータ制御しても第2RO装置18の透過水量が規定水量を維持できず、設計水バランスを確保できなくなってしまうリスクがあった。
【0025】
図6の逆浸透システムは、原水が海水の場合には効果的であるが、塩分濃度が低いかん水等を原水とする場合には、前述の通り、経済的メリットに乏しい。
【0026】
本発明は、第1RO装置からの第1ブラインを第2RO装置で処理して透過水を回収する逆浸透システムにおいて、高圧の第1ブラインからエネルギー回収装置でエネルギーを回収できると共に、第1RO装置及び第2RO装置の水バランスを調整することが可能な逆浸透システム及びその運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の要旨は、次の通りである。
【0028】
[1] 原水が第1高圧ポンプによって供給され、第1透過水と第1ブラインとに分離する第1RO装置と、
該第1RO装置からの第1ブラインの圧力により第2RO装置用給水を加圧するためのエネルギー回収装置と、
該エネルギー回収装置からの該第2RO装置用給水を第2透過水と第2ブラインとに分離する第2RO装置と、
該エネルギー回収装置を通過して降圧した該第1ブラインを受け入れるブライン水槽と、
該ブライン水槽内のブラインを前記第2RO装置用給水として前記エネルギー回収装置に送水する送水手段と、
前記第2RO装置の第2透過水を前記第1RO装置の給水側へ戻す返送手段と
を有する逆浸透システム。
【0029】
[2] 原水槽が設置されており、該原水槽から原水が前記第1高圧ポンプによって前記第1RO装置へ供給され、
前記返送手段は、前記第2透過水を該原水槽に返送する[1]の逆浸透システム。
【0030】
[3] 原水槽が設置されており、該原水槽から原水が前記第1高圧ポンプによって前記第1RO装置へ供給され、
前記返送手段は、前記第2透過水を前記第1高圧ポンプのサクション側に返送する[1]の逆浸透システム。
【0031】
[4] 前記第1高圧ポンプと第1RO装置とを有するラインが並列に複数設けられており、
複数の第1RO装置からの第1ブラインを合流させて前記エネルギー回収装置に供給する[1]の逆浸透システム。
【0032】
[5] 原水が第1高圧ポンプによって供給され、第1透過水と第1ブラインとに分離する第1RO装置と、
該第1RO装置からの第1ブラインの圧力により膜濾過装置用給水を加圧するためのエネルギー回収装置と、
該エネルギー回収装置を通過して降圧した該第1ブラインを受け入れるブライン水槽と、
該ブライン水槽からの該第1ブラインを第2透過水と第2ブラインとに分離する第2RO装置と、
該第2RO装置の第2透過水を前記第1RO装置の給水側へ戻す第2透過水返送手段と、
廃水又はその処理水を前記エネルギー回収装置に送水する廃水又は処理水送水手段と、
該エネルギー回収装置で加圧された廃水又は処理水を膜濾過する膜濾過装置と、
該膜濾過装置からの膜濾過水を前記第1RO装置の給水側へ送水する膜濾過水送水手段と
を有する逆浸透システム。
【0033】
[6] 前記廃水送水手段は、前記廃水の凝集処理手段と、該凝集処理手段からの凝集処理水を固液分離処理する固液分離手段とを備えており、
該固液分離手段からの固液分離処理水が前記エネルギー回収装置に送水される
[5]の逆浸透システム。
【0034】
[7] [1]~[6]のいずれかの逆浸透システムの運転方法であって、前記原水としてかん水を処理する逆浸透システムの運転方法。
【0035】
[8] [6]又は[7]の逆浸透システムの運転方法であって、前記原水としてかん水を処理し、前記廃水として電子部品製造プロセスからの排出水を処理する逆浸透システムの運転方法。
【発明の効果】
【0036】
本発明の逆浸透システムによると、第1RO装置からの高圧の第1ブラインのエネルギーをエネルギー回収装置によって第2RO装置給水の昇圧に利用するので、電力消費量を節減することができる。
【0037】
また、エネルギー回収装置を通過した第1RO装置からの第1ブラインを一旦ブライン水槽に貯留するようにしているので、第1RO装置と第2RO装置の水バランスを調整することができる。例えば、エネルギー回収装置が停止しても、第2RO装置からの第1ブラインをエネルギー回収装置からブライン水槽に流した状態で第1RO装置の運転を継続させ、処理水量を確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】実施の形態に係る逆浸透システムの構成図である。
【
図2】実施の形態に係る逆浸透システムの構成図である。
【
図3】実施の形態に係る逆浸透システムの構成図である。
【
図4】従来例に係る逆浸透システムの構成図である。
【
図5】従来例に係る逆浸透システムの構成図である。
【
図6】従来例に係る逆浸透システムの構成図である。
【
図7】実施の形態に係る逆浸透システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、
図1~3を参照して実施の形態に係る逆浸透システムについて説明する。なお、本実施の形態の逆浸透システムは、河川水、地下水、工業用水などの塩分濃度が海水よりも低いかん水の処理、半導体などの製造プロセス排水の回収再利用時の処理に好適である。
【0040】
図1の逆浸透システムは、
図4の逆浸透システムにおいて、第1RO装置8からの第1ブラインを降圧させるためのオリフィス13と、ブライン水槽15からの第2ブラインを昇圧して第2RO装置18に供給するための第2高圧ポンプ16及び配管17とが省略されている。
【0041】
図1にあっては、第1RO装置8からの第1ブラインが配管14を介してエネルギー回収装置30に導入される。エネルギー回収装置30へは、ブライン水槽15から送水ポンプ31及び配管32を介してブライン(第1ブライン又は第1ブラインと第2ブラインとの混合水)が供給され、配管14からの高圧ブラインのエネルギーによって昇圧され、配管33を介して第2RO装置18に給水として供給される。
【0042】
エネルギー回収装置30でエネルギーが回収されて降圧した第1RO装置8からの第1ブラインは、配管34によってブライン水槽15に流入する。ブライン水槽15へは、排水配管21から分岐した配管22を介して、第2RO装置18からの第2ブラインが導入可能とされている。
【0043】
なお、エネルギー回収装置30としては、市販のピストン式のもの(例えば電業社機械製作所製DeROs(登録商標))、インペラ式のもの、アキシャルピストン式のものなどを用いることができるが、これらに限定されない。
【0044】
図1のその他の構成は
図4と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0045】
図1の逆浸透システムにあっても、原水は原水配管1によって原水槽2に導入される。なお、原水は、濾過、凝集処理などの前処理が施されたものであってもよい。原水槽2内の原水は、給水ポンプ3及び配管4によって保安フィルタ5に通水される。保安フィルタ5を通過した水は、第1高圧ポンプ6によって昇圧され、配管7から第1RO装置8に供給される。第1高圧ポンプ6をインバータ制御することにより、第1RO装置8への給水量が制御される。
【0046】
第1高圧ポンプ6の吐出圧力は6MPa未満、特に0.5~4MPaが好適である(なお、一般的な海水淡水化の逆浸透システムの給水圧力は6~8MPaである。)。
【0047】
RO膜を透過した透過水(第1透過水)は、配管9によって処理水槽10に送水される。処理水槽10内の処理水は、ポンプ11及び配管12によって目的箇所に送水される。
【0048】
第1RO装置8からの第1ブラインは、高圧を維持したまま配管14を介してエネルギー回収装置30に導入され、配管32から送水されたブライン水槽15からのブラインを昇圧させる。昇圧されたブラインは、配管33を介して第2RO装置18に供給される。第2RO装置18からの第2透過水は、配管19によって原水槽2に送水される。
【0049】
第2RO装置18からの第2ブラインは、オリフィス20で降圧された後、排水配管21を介して排出される。第2RO装置18からの第2ブラインの水量が不足する場合には、第2RO装置18からの第2ブラインの一部は、配管21から分岐した配管22を介してブライン水槽15に導入される。
【0050】
このように構成された
図1の逆浸透システムにあっては、エネルギー回収装置30において、第1RO装置8からの高圧ブラインの保有エネルギーを利用してブライン水槽15からのブラインを昇圧して第2RO装置18に給水として供給するので、第2高圧ポンプ16が不要であり、高圧ポンプの設置コスト及び消費電力が節減される。
【0051】
また、エネルギー回収装置30では、第1RO装置8からの第1ブラインを駆動源としてブライン水槽15からのブラインを昇圧するが、ブライン水槽15からのブラインは第1ブライン又は第1ブラインと第2ブラインの混合水であるので、仮にエネルギー回収装置30において第1RO装置8からの第1ブラインがリークしたとしても、第2RO装置18への給水の水質に影響は生じない。
【0052】
また、
図1の逆浸透システムは、
図6の逆浸透システムと比較して、エネルギー回収装置30の突発的な故障等非常時対応の点でもメリットがある。すなわち、
図6では、エネルギー回収装置26が停止した場合、第1RO装置8への給水圧力が低下するので、処理水量の低下や処理水水質の悪化に繋がる。
【0053】
これに対し、
図1の逆浸透システムでは、エネルギー回収装置30が停止しても、第1RO装置8からの第1ブラインをエネルギー回収装置30からブライン水槽15に流した状態で第1RO装置8の運転を継続させ、処理水量を確保することが可能である。
【0054】
図1では、第1RO装置8及び第2RO装置18を1基ずつ設置しているが、第1RO装置8からのブライン水量は透過水量に比べて少ないので、第1RO装置8を有したライン(第1RO系列)を複数個並列に設置し、各第1RO装置8からのブラインを共通の1基の第2RO装置18で処理してもよい。その一例を
図2に示す。
【0055】
図2では、第1RO装置8A,8B,8Cを有する3ラインが並列に設置されている。なお、ラインの数は2又は4以上であってもよい。
【0056】
原水槽2内の原水は、それぞれ各ラインの給水ポンプ3A,3B,3Cと、配管4A,4B,4Cと、保安フィルタ5A,5B,5Cと、第1高圧ポンプ6A,6B,6Cと、配管7A,7B,7Cとによって各第1RO装置8A,8B,8Cに給水として供給される。
【0057】
各第1RO装置8A,8B,8Cからの第1透過水は、配管9A,9B,9Cを経て配管9’にて合流し、処理水槽10に流入する。
【0058】
各第1RO装置8A,8B,8Cからの第1ブラインは、高圧を維持したまま配管14A,14B,14Cを経て配管14’にて合流し、エネルギー回収装置30に供給される。
【0059】
図2のその他の構成は
図1と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0060】
図2では、第2RO装置18の透過水を配管19で原水槽2に戻しているが、
図3のように配管19及び該配管19に連なる配管19B,19Cを介して各第1高圧ポンプ6A,6B,6Cのサクション側(各保安フィルタ5A,5B,5Cの下流側)に戻すようにしてもよい。
【0061】
図2,3のように、複数の第1RO系列がある場合、高圧ブライン水を1つの配管14’に集約し、1つのエネルギー回収装置30に供給することにより、初期建設費用が安くなる。この場合、エネルギー回収装置30を適用する投資回収効率が更に大きくなる。
【0062】
エネルギー回収装置30から第2RO装置18へ供給するブラインのエネルギーが余剰で回収しきれない場合(すなわち、第2RO装置18からの第2透過水の水圧が所定圧よりも高い場合)には、
図4のように、第2RO装置18からの透過水配管19を第1高圧ポンプ6A~6Cのサクション側に接続することで、第1ブラインの保有エネルギーを十分に回収することが可能となる。
【0063】
以下、
図7を参照してさらに別の実施の形態に係る逆浸透システムについて説明する。この逆浸透システムは、原水が第1高圧ポンプ6によって供給され、第1透過水と第1ブラインとに分離する第1RO装置8と、該第1RO装置8からの第1ブラインの圧力により膜濾過装置用給水を加圧するためのエネルギー回収装置30と、希薄廃水槽60と、該希薄廃水槽60からの希薄廃水を第2透過水と第2ブラインとに分離する第2RO装置18と、該第2RO装置18の第2透過水を前記第1RO装置8の給水側(この形態では、原水槽2)へ戻す第2透過水返送手段としての配管19と、廃水又はその処理水を前記エネルギー回収装置30に送水する廃水又は処理水送水手段と、該エネルギー回収装置30で加圧された廃水又は処理水を膜濾過する膜濾過装置58(この実施の形態ではUF装置。ただし、MF装置などでもよい。)と、該膜濾過装置58からの膜濾過水を前記第1RO装置8の給水側(この形態では、原水槽2)へ送水する配管59とを有する。
【0064】
この形態では、該廃水又は処理水送水手段は、廃水槽52と、廃水の凝集槽53と、該凝集槽53からの凝集処理水を固液分離処理する固液分離手段としての沈殿槽54と、ポンプ55とを備えており、沈殿槽54からの固液分離処理水(上澄水)がエネルギー回収装置30に送水される。
【0065】
配管51を流れる廃水の水質に応じ、廃水槽52、凝集槽53、または沈殿槽54から分岐する配管(図示略)を設け、希薄廃水を希薄廃水槽60で受ける。
【0066】
なお、前記希薄廃水槽の廃水は、該廃水槽52より不純物濃度が希薄であれば良く、廃水槽とは異なる系統の廃水でもよい。また
図7には示していないが、該廃水槽52と該凝集槽53、該凝集槽53と該沈殿槽54、または該沈殿槽54とポンプ55の間から配管を分岐し、前記希釈廃水槽60で受け入れてもよい。
【0067】
図7にあっては、希薄廃水槽60から送水ポンプ31、保安フィルタ45、第2高圧ポンプ46及び配管47を介してブライン(第1ブライン)が第2RO装置18に供給される。
【0068】
図7のその他の構成は
図1と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0069】
図7の逆浸透システムにあっても、原水は原水配管1によって原水槽2に導入される。なお、原水は、濾過、凝集処理などの前処理が施されたものであってもよい。原水槽2内の原水は、給水ポンプ3及び配管4によって保安フィルタ5に通水される。保安フィルタ5を通過した水は、第1高圧ポンプ6によって昇圧され、配管7から第1RO装置8に供給される。第1高圧ポンプ6をインバータ制御することにより、第1RO装置8への給水量が制御される。
【0070】
RO膜を透過した透過水(第1透過水)は、配管9によって処理水槽10に送水される。処理水槽10内の処理水は、ポンプ11及び配管12によって目的箇所に送水される。
【0071】
第1RO装置8からの第1ブラインは、高圧を維持したまま配管14を介してエネルギー回収装置30に導入され、配管56を介して送水された沈殿槽54からの上澄水を昇圧させる。昇圧された上澄水は、配管57を介して膜濾過装置58に供給される。膜濾過装置58からの膜濾過水は、配管59によって原水槽2に送水される。
【0072】
第2RO装置18の透過水は、配管19を介して原水槽2に送水される。第2RO装置18からの第2ブラインは、オリフィス20で降圧された後、排水配管21を介して沈殿槽54に導入される。
【0073】
廃水としては、半導体等の製造プロセスからの排出水が好適である。この廃水は、凝集槽53で凝集剤が添加され、撹拌されて凝集処理される。凝集処理水は、沈殿槽54で汚泥が沈降し、上澄水がポンプ55及び配管56によってエネルギー回収装置30に送水され、加圧された後、膜濾過装置58で膜濾過される。膜濾過水が配管59によって原水槽2に送水される。なお、凝集槽53及び沈殿槽54以外の浄化処理手段が用いられてもよい。また、廃水の水質によっては、浄化処理手段は省略されてもよい。
【0074】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態とされてもよい。
【符号の説明】
【0075】
2 原水槽
3,3A,3B,3C 給水ポンプ
5,5A,5B,5C 保安フィルタ
6,6A,6B,6C 第1高圧ポンプ
8,8A,8B,8C 第1RO装置
13,20 オリフィス
15 ブライン水槽
16,46 第2高圧ポンプ
18 第2RO装置
26,30 エネルギー回収装置
【手続補正書】
【提出日】2024-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水が第1高圧ポンプによって供給され、第1透過水と第1ブラインとに分離する第1RO装置と、
該第1RO装置からの第1ブラインの圧力により膜濾過装置用給水を加圧するためのエネルギー回収装置と、
該エネルギー回収装置を通過して降圧した該第1ブラインを受け入れるブライン水槽と、
希薄廃水槽からの希薄廃水を第2透過水と第2ブラインとに分離する第2RO装置と、
該第2RO装置の第2透過水を前記第1RO装置の給水側へ戻す第2透過水返送手段と、
廃水を処理する廃水処理手段と、
該廃水処理手段からの処理水を前記膜濾過装置用給水として前記エネルギー回収装置に送水する処理水送水手段と、
該エネルギー回収装置で加圧された該処理水を膜濾過するUF膜濾過装置と、
該UF膜濾過装置からの膜濾過水を前記第1RO装置の給水側へ送水する膜濾過水送水手段と
を有する逆浸透システム。
【請求項2】
前記廃水処理手段は、前記廃水の凝集処理手段と、該凝集処理手段からの凝集処理水を固液分離処理する固液分離手段とを備えており、
該固液分離手段からの固液分離処理水が前記エネルギー回収装置に送水される
請求項1の逆浸透システム。
【請求項3】
前記廃水処理手段は、さらに廃水槽を備えており、該廃水槽内の廃水が前記凝集処理手段に供給される請求項2の逆浸透システム。
【請求項4】
前記希薄廃水は、前記廃水槽からの廃水、前記凝集処理手段からの凝集処理水又は前記固液分離手段からの固液分離処理水である請求項3の逆浸透システム。
【請求項5】
前記希薄廃水は、前記廃水よりも不純物濃度が低い水である請求項1の逆浸透システム。
【請求項6】
前記第2RO装置からの第2ブラインを前記固液分離手段に導く手段を有する請求項2の逆浸透システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかの逆浸透システムの運転方法であって、前記原水はかん水である逆浸透システムの運転方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかの逆浸透システムの運転方法であって、前記原水はかん水であり、前記廃水は電子部品製造プロセスからの排出水である逆浸透システムの運転方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0062
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0062】
エネルギー回収装置30から第2RO装置18へ供給するブラインのエネルギーが余剰で回収しきれない場合(すなわち、第2RO装置18からの第2透過水の水圧が所定圧よりも高い場合)には、図3のように、第2RO装置18からの透過水配管19を第1高圧ポンプ6A~6Cのサクション側に接続することで、第1ブラインの保有エネルギーを十分に回収することが可能となる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
図7にあっては、希薄廃水槽60から送水ポンプ31、保安フィルタ45、第2高圧ポンプ46及び配管47を介して
希薄廃水が第2RO装置18に供給される。