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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105137
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】イミド樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/34 20060101AFI20240730BHJP
   C08G 73/12 20060101ALI20240730BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20240730BHJP
   C08G 18/67 20060101ALI20240730BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20240730BHJP
   C08F 299/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C08G18/34
C08G73/12
C08G18/10
C08G18/67
C08F290/06
C08F299/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023009716
(22)【出願日】2023-01-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(74)【代理人】
【識別番号】100176692
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 ▲廣▼志
(72)【発明者】
【氏名】橋本 慎太郎
【テーマコード(参考)】
4J034
4J043
4J127
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034CA26
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC12
4J034CC13
4J034CC61
4J034CC65
4J034CC67
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DC50
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF12
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG05
4J034DG06
4J034DG08
4J034DG09
4J034DP12
4J034DP19
4J034FA02
4J034FB01
4J034FC01
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4J034HA01
4J034HA06
4J034HA07
4J034HB08
4J034HB11
4J034HC03
4J034HC08
4J034HC12
4J034HC22
4J034HC35
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4J034HC52
4J034HC54
4J034HC61
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4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA02
4J034JA32
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
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4J034KD04
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4J034KD07
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4J034KD25
4J034KE01
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4J034QA03
4J034QB06
4J034QB12
4J034RA05
4J034RA11
4J034RA14
4J043PB02
4J043QB58
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4J043TA22
4J043UA041
4J043UA122
4J043VA022
4J043VA062
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4J043XB27
4J043XB37
4J043ZA42
4J043ZB47
4J043ZB51
4J127AA03
4J127BB031
4J127BB111
4J127BB221
4J127BC02
4J127BC151
4J127BD261
4J127BE24
4J127BE24Y
4J127BF451
4J127BF45X
4J127BF621
4J127BF62X
4J127BG051
4J127BG05X
4J127BG05Y
4J127BG05Z
4J127BG091
4J127BG09X
4J127BG09Y
4J127BG09Z
4J127CB191
4J127EA05
4J127FA37
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた柔軟性を維持しながら優れた誘電特性を有するイミド樹脂を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される構造および下記式(2)で表される構造を有し、少なくとも一方の末端が不飽和結合を有する基であるイミド樹脂。


(式(1)中、Rはテトラカルボン酸無水物から酸無水物基を除いた残基を表し、式(2)中、Xは1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオール化合物から2つの水酸基を除いた残基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造および下記式(2)で表される構造を有し、少なくとも一方の末端が不飽和結合を有する基であるイミド樹脂。
【化1】
【化2】
(式(1)中、Rはテトラカルボン酸無水物から酸無水物基を除いた残基を表し、式(2)中、Xは1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオール化合物から2つの水酸基を除いた残基を表す。)
【請求項2】
両末端が不飽和結合を有する基である請求項1に記載のイミド樹脂。
【請求項3】
少なくとも一方の末端がビニル基または(メタ)アクリロイル基である請求項1または2に記載のイミド樹脂。
【請求項4】
前記式(1)のRが下記式(3)から(8)の少なくとも一つの構造である請求項1または2に記載のイミド樹脂。
【化3】
(式(3)から(8)中、*は結合部位を表す。)
【請求項5】
前記式(2)のXが、数平均分子量が300から5000であるポリオール化合物から2つの水酸基を除いた残基である請求項1または2に記載のイミド樹脂。
【請求項6】
前記式(2)のXが1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオレフィンポリオールから2つの水酸基を除いた残基、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリエーテルポリオールから2つの水酸基を除いた残基、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリカーボネートポリオールから2つの水酸基を除いた残基、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリエステルポリオールから2つの水酸基を除いた残基および1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリシロキサンポリオールから2つの水酸基を除いた残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の残基である請求項1または2に記載のイミド樹脂。
【請求項7】
1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、1分子中に2個以上のカルボン酸無水物基を有する酸無水物基含有化合物、およびアルコール性水酸基と不飽和結合を有する基を有する化合物と
を反応原料とし、少なくとも一方の末端が不飽和結合を有する基である請求項1または2に記載のイミド樹脂。
【請求項8】
前記不飽和結合を有する基がビニル基または(メタ)アクリロイル基である請求項7に記載のイミド樹脂。
【請求項9】
前記反応原料の合計の質量を100質量%として、前記反応原料中、前記ポリオール化合物が20質量%以上60質量%以下、前記ポリイソシアネート化合物が3質量%以上20質量%以下、前記酸無水物基含有化合物が1%以上10質量%以下、および前記アルコール性水酸基と不飽和結合を有する基を有する化合物が20質量%以上70質量%以下である請求項7または8に記載のイミド樹脂。
【請求項10】
請求項1または2に記載のイミド樹脂と他の熱硬化性樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイミド樹脂に関する。より詳細には本発明は誘電特性に優れたイミド樹脂に関する。また本発明は前記イミド樹脂と他の熱硬化性樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、イミド樹脂は、耐熱性、電気特性、機械強度に優れることから、エレクトロニク ス分野をはじめ様々な分野で利用されている。一般的に高物性を発現する芳香族イミド樹 脂は、イミド基とフェニル基間の分子間電荷移動(CT)錯体形成によって有機溶剤に溶 解し難く、製品としてはフィルム状やその前駆体溶液として提供されている。しかし、フィルムでは成型・加工・塗工が困難であり、前駆体ではイミド化工程に高温が必要である 等、適用用途や応用面での制限を受ける場合があった。
【0003】
上記問題点を解決するため、芳香族イミド樹脂に代えて、有機溶剤に対する可溶性を有 するブタジエン変性ソフトイミド樹脂が報告されている(例えば、特許文献1)。またイミド樹脂中に2個のフェノール性水酸基を有するフェノール系化合物からフェノール性水酸基を除いた残基を含む構造と2個のアルコール性水酸基を有するポリール化合物から2つの水酸基を除いた残基を含む構造を有するイミド樹脂も報告されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-146188号公報
【特許文献2】特開2008-301584号公報
【0005】
特許文献1に開示されているイミド樹脂を用いた半導体用基板では、ブタジエン由来の柔軟な骨格が基板の応力緩和性能を発現し、半導体製造時における熱による基板の反りを緩和できるなど、適用用途や応用面での制限が緩和されている。また特許文献2に開示されているイミド樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物は、ポリイミド骨格が持つ耐熱性を有しながら、柔軟性に優れる硬化物が提供される。
【0006】
一方、エレクトロニクスの分野において、高速大容量通信の実現に向け、誘電特性をはじめとする材料への種々の要求特性が高まっている。したがってエレクトロニクス分野に用いられるイミド樹脂においても、低誘電率および低誘電正接という、より優れた誘電特性を有するイミド樹脂の開発は高速大容量通信の実現において重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで優れた柔軟性を維持しながら、さらに優れた誘電特性を有するイミド樹脂の開発が望まれている。
【0008】
本発明はエレクトロニクスの分野に好適に用いられる、優れた柔軟性を維持しながら、さらに優れた誘電特性を有するイミド樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、イミド樹脂の改良を検討し、前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のイミド樹脂に関する。
[1]
下記式(1)で表される構造および下記式(2)で表される構造を有し、少なくとも一方の末端が不飽和結合を有する基であるイミド樹脂。
【化4】
【化5】
(式(1)中、Rはテトラカルボン酸無水物から酸無水物基を除いた残基を表し、式(2)中、Xは1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオール化合物から2つの水酸基を除いた残基を表す。)
【0010】
また本発明は以下のイミド樹脂に関する。
[2]
両末端が不飽和結合を有する基である前記[1]に記載のイミド樹脂。
[3]
少なくとも一方の末端がビニル基または(メタ)アクリロイル基である前記[1]または[2]に記載のイミド樹脂。
[4]
前記式(1)のRが下記式(3)から(8)の少なくとも一つの構造である前記[1]または[2]に記載のイミド樹脂。
【化6】
(式(3)から(8)中、*は結合部位を表す。)
[5]
前記式(2)のXが、数平均分子量が300から5000であるポリオール化合物から2つの水酸基を除いた残基である前記[1]または[2]に記載のイミド樹脂。
[6]
前記式(2)のXが1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオレフィンポリオールから2つの水酸基を除いた残基、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリエーテルポリオールから2つの水酸基を除いた残基、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリカーボネートポリオールから2つの水酸基を除いた残基、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリエステルポリオールから2つの水酸基を除いた残基および1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリシロキサンポリオールから2つの水酸基を除いた残基からなる群から選ばれる少なくとも1種の残基である前記[1]または[2]に記載のイミド樹脂。
[7]
1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、1分子中に2個以上のカルボン酸無水物基を有する酸無水物基含有化合物、およびアルコール性水酸基と不飽和結合を有する基を有する化合物と
を反応原料とし、少なくとも一方の末端が不飽和結合を有する基である前記[1]または[2]に記載のイミド樹脂。
[8]
前記不飽和結合を有する基がビニル基または(メタ)アクリロイル基である前記[7]に記載のイミド樹脂。
[9]
前記反応原料の合計の質量を100質量%として、前記反応原料中、前記ポリオール化合物が20質量%以上60質量%以下、前記ポリイソシアネート化合物が3質量%以上20質量%以下、前記酸無水物基含有化合物が1%以上10質量%以下、および前記アルコール性水酸基と不飽和結合を有する基を有する化合物が20質量%以上70質量%以下である前記[7]または[8]に記載のイミド樹脂。
【0011】
さらに本発明は以下の熱硬化性樹脂組成物および硬化物に関する。
[10]
前記[1]または[2]に記載のイミド樹脂と他の熱硬化性樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物。
[11]
前記[10]に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた柔軟性を維持しながら、さらに優れた誘電特性を有するイミド樹脂が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のイミド樹脂(以下、「本イミド樹脂」とも記す。)は、前記式(1)で表される構造および前記式(2)で表される構造を有し、少なくとも一方の末端が不飽和結合を有する基(以下、「本不飽和結合基」とも記す。)である。なお前記不飽和結合は炭素と炭素の不飽和結合であり、炭素と炭素の二重結合または三重結合である。
本イミド樹脂は前記式(1)で表される構造を複数種有してもよく、また前記式(2)で表される構造を複数種有してもよい。
【0014】
前記式(1)中、Rはテトラカルボン酸無水物から酸無水物基を除いた残基を示し、下記式(4)から(8)で示される構造が耐熱性の観点から好ましい。
【化7】
前記式(3)から(8)中、*は結合部位を表し、前記式(1)中のイソシアネート基の炭素原子と結合している。
【0015】
前記式(2)中、Xは1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオール化合物から2つの水酸基を除いた残基を表す。
1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオール化合物としては、例えば、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオレフィンポリオール、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリエーテルポリオール、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリカーボネートポリオール、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリエステルポリオールおよび1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリシロキサンポリオール、およびこれらの共重縮合体であるポリオール化合物が挙げられる。
【0016】
前記Xとしては、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオレフィンポリオール、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリエーテルポリオール、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリカーボネートポリオール、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリエステルポリオールおよび1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリシロキサンポリオール、およびこれらの共重縮合体のポリオールからなる群から選ばれる少なくとも一種のポリオールから2つの水酸基を除いた残基が好ましい。
【0017】
得られるイミド樹脂の柔軟性と誘電特性の観点から、Xは1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオレフィンポリオール、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリカーボネートポリオール、および1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリシロキサンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも一種のポリオールから2つの水酸基を除いた残基がより好ましい。
【0018】
また得られるイミド樹脂の柔軟性と誘電特性の観点から、前記一般式(2)中のXは1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオレフィンポリオールから2つの水酸基を除いた残基であることが好ましい。また得られるイミド樹脂の破断伸度等の機械物性と耐加水分解性との観点から、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリカーボネートポリオールから2つの水酸基を除いた残基が好ましい。
【0019】
前記ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリオレフィン構造やポリジエン構 造を有するポリオール化合物等を有し1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオールが挙げられる。具体的には、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有する、ポリエチレン系ポリオール、ポリプロピレン系ポリオール、ポリブタジエンポリオールおよびその水素添加物、ポリイソプレンポリオールおよびその水素添加物が挙げられる。前記Xはこれら1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオレフィンポリオール化合物から2つの水酸基を除いた残基が挙げられる。Xはこれらの残基の1種または2種以上であってもよい。
得られるイミド樹脂の誘電特性の観点から、Xは1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリブタジエンポリオール、または1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有する水素添加ポリブタジエンポリオールのいずれかから2つの水酸基を除いた残基が好ましく、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有する水素添加ポリブタジエンポリオールから2つの水酸基を除いた残基がより好ましい。
【0020】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコール等アルキレンエーテルポリオールやこれらポリアルキレンポリオールの共重合体などが挙げられる。前記Xはこれら1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリエーテルポリオール化合物から2つの水酸基を除いた残基が挙げられる。Xはこれらの残基の1種または2種以上であってもよい。
【0021】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、プロピレンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール等から得られるポリアルキレンカーボネートポリオールやビスフェノールAやビスフェノールF,S等のアルキレンオキサイド付加ジオール等から得られるポリカーボネートポリオール、これらの共重合体などが挙げられる。前記Xはこれら1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリカーボネートポリオール化合物から2つの水酸基を除いた残基が挙げられる。Xはこれらの残基の1種または2種以上であってもよい。
【0022】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、アルキレンジオールと多価カルボン酸とのエステル化物、あるいは多価カルボン酸のアルキルエステルとのエステル交換反応物、ε-カプロラクトン系ポリラクトンポリオール等のポリラクトンポリオールなどが挙げられる。前記Xはこれら1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリエステルポリオール化合物から2つの水酸基を除いた残基が挙げられる。Xはこれらの残基の1種または2種以上であってもよい。
【0023】
前記ポリシロキサンポリオールとしては、例えば、ジメチルポリシロキサンポリオールやメチルフェニルポリシロキサンポリオール等が挙げられる。前記Xはこれら1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリシロキサンポリオール化合物から2つの水酸基を除いた残基が挙げられる。Xはこれらの残基の1種または2種以上であってもよい。
【0024】
前記ポリオールとしては、得られるイミド樹脂の硬化物の伸度と柔軟性の観点から、その数平均分子量は300から5,000が好ましく、500から3,000がより好ましい。また、前記ポリオールのガラス転移温度(Tg)は0℃以下が好ましく、0℃から-150℃がより好ましい。
【0025】
前記式(2)で表される構造は、通常、前記1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオール化合物とポリイソシネート化合物の縮重合により得られる。
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物;p-フェニレンジイソシアネートまたはm-フェニレンジイソシアネート等のフェニレンジイソシアネート、p-キシレンジイソシアネートまたはm-キシレンジイソシアネート等のキシレンジイソシアネート、トルエン-2,4-ジイソシアネートまたはトルエン-2,6-ジイソシアネート等のトルエンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジエチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネート、1,3-ビス(α,α-ジメチルイソシアナートメチル)ベンゼン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ジフェニレンエーテル-4,4’-ジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート芳香族ジイソシアネート化合物;下記式(9)で表される繰り返し構造を有するポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性体、ビウレット変性体、アロファネート変性体等が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物を単独または2種以上を前記1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオール化合物と重縮合することで、前記式(2)の構造が得られる。得られるイミド樹脂の誘電特性の観点から、脂環式イソシアネートが好ましい。
【化8】
前記式(9)中、Rはそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数が1から6の炭化水素基のいずれかである。Rはそれぞれ独立して炭素数が1から4のアルキル基である。lは0または1から3の整数であり、mは1から15の整数である。
【0026】
本イミド樹脂は前記式(1)で表される構造および前記式(2)で表される構造を有し、少なくとも一方の末端が本不飽和基である。
末端が本不飽和基であるとは、高分子の末端がビニル基またはアセチレン基であり、本イミド樹脂の少なくとも一方の末端が下記式(10)で示されるビニル基または(11)に示されるアセチレン基を有していることを意味する。
【化9】
【化10】
前記式(10)および(11)中の*は結合部位を示し、本イミド樹脂の高分子鎖の主鎖または側鎖と結合している。
本イミド樹脂は少なくとも一方の末端がビニル基または(メタ)アクリロイル基であるのが好ましく、両末端がビニル基または(メタ)アクリロイル基であるのがより好ましい。なお(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基およびメタアクリロイル基の少なくともいずれか一方を指す。
本イミド樹脂は両末端がアクリロイル基または両末端がメタアクリロイル基であるのがさらに好ましい
【0027】
本イミド樹脂の少なくとも一方の末端が(メタ)アクリロイル基である場合、本イミド樹脂の(メタ)アクリロイル基である末端は下記式(12)の構造を有しているのが誘電特性の観点から好ましい。
【化11】
式(12)中、Rは水素または置換されていてもよい炭素数が1から5のアルキル基を表し、Yは置換されていてもよい炭素数が1から5のアルキレン基を表し、*は結合部位を表し、本イミド樹脂の高分子鎖の主鎖または側鎖と結合している。
【0028】
本イミド樹脂の少なくとも一方の末端がビニル基である場合、ビニル基である末端は下記式(13)の構造を有しているのが誘電特性の観点から好ましい。
【化12】
式(13)中、Arは置換されていてもよい2価のアリレン基を表し、Rは置換されていてもよい炭素数が1から5のアルキレン基を表し、*は結合部位を表し、本イミド樹脂の高分子鎖の主鎖または側鎖と結合している。
【0029】
前記式(12)中、Rとしてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、およびこれらの異性体が挙げられ、これらはハロゲンで置換されていてもよい。これらの中でも、メチル基、エチル基が好ましい。
前記式(12)中、Yとしてはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、およびこれらの異性体が挙げられる。またメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンはハロゲンで置換されていてもよい。Yはメチレンまたはエチレンが好ましい。
【0030】
前記式(13)中、Arとしてはフェニレン、ナフチレンが挙げられ、これらはハロゲンで置換されていてもよい。Arの中でも、フェニレンが好ましい。
前記式(13)中、Rとしてはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、およびこれらの異性体が挙げられる。またメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンはハロゲンで置換されていてもよい。Rはメチレンまたはエチレンが好ましい。
【0031】
本発明のイミド樹脂は前記式(12)の構造のうち、下記式(12-1)から(12-3)の少なくともいずれかの構造を一方の末端に有するのが好ましく、両末端が下記式(12-1)から(12-3)の構造であるのが好ましい。
【化13】
【化14】
【化15】
【0032】
また本発明のイミド樹脂は前記式(13)で表される構造のうち、下記式(13-1)の構造を一方の末端に有するのが好ましく、両末端が下記式(13-1)である構造が好ましい。
【化16】
【0033】
本イミド樹脂は前記式(1)、(2)を有し、少なくとも一方の末端が前記式(12-1)、(12-2)、(12-3)および(13-1)からなる群から選ばれる少なくとも一つであるのが好ましい。
本イミド樹脂の一方の末端が前記本不飽和基でない場合、本不飽和基でない末端は炭素数2から6のアルコキシ基であるのが好ましい。
【0034】
本イミド樹脂としては、前記式(1)において、Rが前記式(3)であり、前記式(2)におけるXが2個のアルコール性水酸基を有するポリブタジエンポリオールから2つの水酸基を除いた残基、または2個のアルコール性水酸基を有するポリブタジエンポリオールの水素添加物から2つの水酸基を除いた残基であり、下記式(14)の構造を有し,少なくとも一方の末端が前記式(12-1)、(12-2)、(12-3)および(13-1)からなる群から選ばれる少なくとも一つであるのが好ましく、両末端が前記式(12-1)または(12-2)であるのがより好ましい。
【化17】
前記式(14)において*1は前記式(12-1)または(12-2)の結合部位*と、または酸素を介して前記式(2)中のXと結合し、*2は前記式(1)と、または前記式(2)と結合している。
また前記式(14)中、nはポリブタジエンポリオールの重合度であり、4以上90以下が好ましい。
【0035】
本イミド樹脂は、例えば、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオール化合物(以下、「ポリオール化合物A」とも記す。)、ポリイソシネート化合物(以下、「ポリイソシネート化合物B」とも記す。)、1分子中に2個以上のカルボン酸無水物基を有する酸無水物含有化合物(以下、「酸無水物含有化合物C」とも記す。)とアルコール性水酸基および本不飽和基を有する化合物(以下、「本不飽和基含有化合物D」とも記す。)を反応原料とし、少なくとも一方の末端を本不飽和基とすることで、得ることができる。
【0036】
ポリオール化合物(A)は、前記1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオール化合物で例示したポリオール化合物と同じ化合物が挙げられ、これら化合物の1種を用いてもよいし2種以上を併用してもよい。得られるイミド樹脂の誘電特性の観点から、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリオレフィンポリオールが好ましく、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリブタジエンポリオール、または1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有する水素添加ポリブタジエンポリオールがより好ましい。
【0037】
ポリイソシアネート化合物Bは前記ポリイソシアネート化合物で例示したポリイソシアネート化合物と同じ化合物が挙げられ、これら化合物の1種を用いてもよいし2種以上を併用してもよい。得られるイミド樹脂の誘電特性の観点から、脂環式イソシアネートが好ましく、イソホロンジイソシアネートがより好ましい。
【0038】
酸無水物含有化合物Cとしては、例えば、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物等のベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ベンゼン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-2,3,3’,4-テトラカルボン酸二無水物等のビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物等のナフタレンテトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、4,8-ジメチル-1,2,3,5,6,7-ヘキサヒドロナフタレン-1,2,5,6-テトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、2,6-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、2,7-ジクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物等のジクロロナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-テトラクロロナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、フェナントレン-1,3,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ベリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物等のビス(ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物等のビス(ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物等のビス(ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、シクロブタンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、プロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ブタンジオールビスアンヒドロトリメリテート、ヘキサメチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ポリプロピレングリコールビスアンヒドロトリメリテート等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、これらの中でも、得られるイミド樹脂の誘電特性の観点から、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、シクロブタンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物及び1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオンからなる群より選ばれる1種以上が好ましい。
【0039】
本イミド樹脂の少なくとも一方の末端を前記本不飽和基とするために、本イミド樹脂を製造するための反応原料の一つとして、本不飽和基含有化合物Dを用いる。本不飽和基含有化合物Dを反応原料の一つとして用いることで、本イミド樹脂の少なくとも一方の末端を前記本不飽和基とすることができる。本不飽和基含有化合物Dからアルコール性水酸基の水酸基とイソシアネート基が反応し、本イミド樹脂の末端が本不飽和基含有化合物Dからアルコール性水酸基の水酸基を除いた残基となり、末端に前記本不飽和基が導入される。本不飽和基含有化合物Dはアルコール性水酸基とビニル基とを有する化合物、またはアルコール性水酸基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。
【0040】
本不飽和基含有化合物Dとしては、ヒドロキシ-1-アルケン、ヒドロキシ-1-アルキン、ヒドロキシアルキル不飽和カルボン酸エステル、ヒドロキシアルキルアリール-1-アルケン、ヒドロキシアルキルアリール-1-アルキン等が挙げられる。
【0041】
ヒドロキシ-1-アルケンとしては、炭素数が3から8のヒドロキシ-1-アルケンが挙げられ、ヒドロキシ-1-アルキンとしては、炭素数が3から8のヒドロキシ-1-アルキンが挙げられる。
ヒドロキシアルキル不飽和カルボン酸エステルの不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタアクリル酸が挙げられる。ヒドロキシアルキルとしては炭素数が2から5のヒドロキシアルキルが好ましく、末端に水酸基を有するヒドロキシアルキルが好ましい。ヒドロキシアルキル不飽和カルボン酸エステルとしては2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチルアクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレートが挙げられ、2-ヒドロキシエチルアクリレートまたは2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0042】
ヒドロキシアルキルアリール-1-アルケンとしては、末端にヒドロキシル基を有するアルキル基で置換されたスチレン、末端にヒドロキシル基を有するアルキル基で置換されたビニルナフタレン等が挙げられる。ヒドロキシアルキルアリール-1-アルキンとしては、末端にヒドロキシル基を有するアルキル基で置換されたフェニルアセチレン、末端にヒドロキシル基を有するアルキル基で置換されたナフチルアセチレン等が挙げられる。
末端にヒドロキシル基を有するアルキル基で置換されたスチレンとしては2-(ヒドロキシルメチル)スチレン、3-(ヒドロキシルメチル)スチレンまたは4-(ヒドロキシルメチル)スチレンが好ましい。
【0043】
本イミド樹脂の反応原料として、例えば、以下の組み合わせが、得られるイミド樹脂の柔軟性と誘電特性の観点から好ましい。
ポリオール化合物A:1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有するポリブタジエンポリオール、または1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有する水素添加ポリブタジエンポリオール
ポリイソシネート化合物B:イソホロンジイソシアネート
酸無水物含有化合物C:ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、シクロブタンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物及び1,3,3a,および4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオンからなる群から選ばれる少なくとも1種
本不飽和基含有化合物D:2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび2-(ヒドロキシルメチル)スチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種
【0044】
また本イミド樹脂の末端の一方が前記本不飽和基であり、もう一方の末端が前記本不飽和基ではない場合、本不飽和基でない末端は炭素数2から6のアルコキシ基であるのが好ましい観点から、反応原料として前記化合物に加えて一分子中に水酸基を一つ有するアルキルアルコールを用いるのが好ましい。アルキルアルコールとしては、炭素数2から6のアルキルアルコールが好ましく、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、およびこれらの異性体が好ましい。
【0045】
本イミド樹脂の製造方法としては、例えば、前記ポリオール化合物A、前記ポリイソシアネート化合物B、前記酸無水物含有化合物C、前記本不飽和基含有化合物Dを含む反応原料を一括で反応させる方法、または前記反応原料を順次反応させる方法等が挙げられる。
【0046】
反応原料を一括で反応させる場合、反応温度は100から160℃の範囲が好ましく、反応時間は4から10時間の範囲が好ましい。反応原料が前記アルキルアルコールをさらに含有する場合も同じである。
【0047】
反応原料を順次反応させる場合、例えば、前記ポリオール化合物Aと前記ポリイソシアネート化合物Bを反応温度が50から100℃、反応時間が0.5から4時間で反応させ、次いで、前記酸無水物基含有化合物Cを反応温度が120から160℃、反応時間が3から6時間で反応させ、さらに前記本不飽和基含有化合物Dを反応温度が50から140℃、反応時間が2から6時間で反応させる方法等が挙げられる。反応原料が前記アルキルアルコールをさらに含有する場合、前記アルキルアルコールは前記本不飽和基含有化合物Dの反応終了後に用いるのが好ましい。
【0048】
反応原料を順次反応させる場合、前記ポリオール化合物Aと、前記ポリイソシアネート化合物Bの反応は、得られるイミド樹脂の誘電特性の観点から、前記ポリイソシアネート化合物Bが有するイソシアネート基のモル数を前記ポリオール化合物Aが有する水酸基のモル数で除したモル比[イソシアネート基のモル数/水酸基のモル数]が、1.1から3の範囲が好ましく、2から2.5の範囲がより好ましい。
【0049】
反応原料を順次反応させる場合、前記ポリオール化合物Aと、前記ポリイソシアネート化合物Bの反応物と、前記本不飽和基含有化合物Dの反応は、得られるイミド樹脂の誘電特性の観点から、前記本不飽和基含有化合物Dが有するアルコール性水酸基と前記反応物が有するイソシアネート基とのモル比[イソシアネート基のモル数/アルコール性水酸基のモル数]が、2以上が好ましい。
前記アルキルアルコールをさらに含有する場合、前記本不飽和基含有化合物Dが有するアルコール性水酸基のモル数と前記アルキルアルコールが有するアルコール性水酸基のモル数の合計のモル数と前記反応物が有するイソシアネート基とのモル比が前記範囲であるのが好ましい。
【0050】
前記反応原料の各反応で反応効率の観点から合成触媒を用いるのが好ましい。
前記合成触媒としては、例えば、テトラメチルブタンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N’-ジメチルピペリジン、α-メチルベンジルジメチルアミン、N-メチルモルホリン、トリエチレンジアミン等の三級アミン、ジブチル錫ラウレート、ジメチル錫ジクロライド、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛等の有機金属触媒などが挙げられる。これらの合成触媒は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0051】
また合成触媒としてジルコニウム化合物とそれ以外の金属化合物との組み合わせも挙げることができる。
ジルコニウム化合物としては無機ジルコニウム化合物および有機ジルコニウム化合物が挙げられる。
無機ジルコニウムとしては、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、塩化ジルコニウム等が挙げられる。
【0052】
有機ジルコニウムとしては、アルコキシジルコニウム、ジルコニウムのジケトナート錯体、ジルコニウムのカルボン酸塩等が挙げられる。アルコキシジルコニウムとしては、メトキシジルコニウム、エトキシジルコニウム、プロポキシジルコニウム、ブトキシジルコニウム等が挙げられる。ジルコニウムのジケトナート錯体としては、ジルコニウムとβ-ジケトンとの錯体が好ましく、ジルコニウムアセチルアセトナート、トリフルオロアセチルアセトナート等が挙げられる。
またアルコキシとジケトンの両方を配位子として有するジルコニウム錯体も触媒として好適に用いられ、例えば、ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)が挙げられる。
【0053】
前記ジルコニウム錯体と組み合わせ用いられるジルコニウム化合物以外の金属化合物としては、亜鉛化合物、チタン化合物、鉄化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物等が挙げられる。
これら、金属化合物の中でも、触媒能により優れることから、亜鉛化合物、チタン化合物、鉄化合物のいずれか一種類以上が好ましく、亜鉛化合物が特に好ましい。前記亜鉛化合物のうち、無機亜鉛化合物としては、例えば、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、塩化亜鉛等が挙げられる。有機亜鉛化合物としては、例えば、亜鉛錯体が挙げられる。
合成触媒としてジルコニウム化合物とそれ以外の金属化合物との組み合わせて用いる場合、例えば、化反応触媒を質量100質量部として、前記ジルコニウム化合物、亜鉛化合物、チタン化合物、および鉄化合物の合計質量が、80質量部以上で用いればよく、90質量部以上であることがより好ましく、95質量部以上であることが特に好ましい。
【0054】
本イミド樹脂は前記反応原料を用い、必要に応じて、さらにアルキルアルコールも用いて、例えば、前記反応条件で、必要に応じて前記反応触媒を用いて、製造することができる。
【0055】
本イミド樹脂は優れた柔軟性と誘電特性を有するので、本イミド樹脂と他の熱硬化性樹脂とを含有する熱硬化性樹脂組成物も優れた柔軟性と誘電特性を有する熱硬化性樹脂を与えるので、本イミド樹脂は熱硬化性樹脂組成物として好適に用いられる。
前記他の熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂等が挙げられる。
【0056】
また、前記硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、硬化促進剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合禁止剤、有機溶剤、無機質充填材やポリマー微粒子、顔料、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、難燃剤、保存安定化剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0057】
前記硬化促進剤としては、硬化反応を促進するものであり、例えば、有機過酸化物、リン系化合物、アミン系化合物、イミダゾール系化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
また、前記硬化促進剤の添加量は、例えば、前記硬化性樹脂組成物の固形分中に0.01から10質量%の範囲が好ましい。
【0058】
前記紫外線吸収剤としては、例えば、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-{(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ}-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン誘導体、2-(2’-キサンテンカルボキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-o-ニトロベンジロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-キサンテンカルボキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン、2-o-ニトロベンジロキシ-4-ドデシロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
これらの紫外線吸収剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0059】
前記酸化防止剤としては、例えば、p-メトキシフェノール、p-メトキシクレゾール、4-メトキシ-1-ナフトール、4,4’-ジアルコキシ-2,2’-ビ-1-ナフトール、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール、N’1,N’12-ビス(2-ヒドロキシベンゾイル)ドデカンジヒドラジド、スチレン化フェノール、N-イソプロピル-N’-フェニルベンゼン-1,4-ジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等のフェノール化合物、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、p-ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニルベンゾキノン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、アントラキノン、ジフェノキノン等のキノン化合物、メラミン、p-フェニレンジアミン、4-アミノジフェニルアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N-i-プロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1.3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、4,4’-ジクミル-ジフェニルアミン、4,4’-ジオクチル-ジフェニルアミン、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、スチレン化ジフェニルアミン、スチレン化ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物、ジフェニルアミンと2,4,4-トリメチルペンテンの反応生成物等のアミン化合物、フェノチアジン、ジステアリルチオジプロピオネート、2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル=ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオナート]、ジトリデカン-1-イル=3,3’-スルファンジイルジプロパノアート等のチオエーテル化合物、N-ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルナフチルアミン、p-ニトロソフェノール、ニトロソベンゼン、p-ニトロソジフェニルアミン、α-ニトロソ-β-ナフトール等、N、N-ジメチルp-ニトロソアニリン、p-ニトロソジフェニルアミン、p-ニトロンジメチルアミン、p-ニトロン-N、N-ジエチルアミン、N-ニトロソエタノールアミン、N-ニトロソジ-n-ブチルアミン、N-ニトロソ-N-n-ブチル-4-ブタノールアミン、N-ニトロソ-ジイソプロパノールアミン、N-ニトロソ-N-エチル-4-ブタノールアミン、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、N-ニトロソモルホリン、N-二トロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、二トロソベンゼン、N-ニトロソ-N-メチル-p-トルエンスルホンアミド、N-ニトロソ-N-エチルウレタン、N-ニトロソ-N-n-プロピルウレタン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、1-ニトロソ-2-ナフトール-3,6-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-1-ナフトール-4-スルホン酸ナトリウム、2-ニトロソ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩、2-ニトロ-5-メチルアミノフェノール塩酸塩等のニトロソ化合物、リン酸とオクタデカン-1-オールのエステル、トリフェニルホスファイト、3,9-ジオクタデカン-1-イル-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、トリスノニルフェニルホスフィト、亜リン酸-(1-メチルエチリデン)-ジ-4,1-フェニレンテトラ-C12-15-アルキルエステル、2-エチルヘキシル=ジフェニル=ホスフィット、ジフェニルイソデシルフォスファイト、トリイソデシル=ホスフィット、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等のホスファイト化合物、ビス(ジメチルジチオカルバマト-κ(2)S,S’)亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチル・ジチオカルバミン酸亜鉛等の亜鉛化合物、ビス(N,N-ジブチルカルバモジチオアト-S,S’)ニッケル等のニッケル化合物、1,3-ジヒドロ-2H-ベンゾイミダゾール-2-チオン、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2-メチル-4,6-ビス[(オクタン-1-イルスルファニル)メチル]フェノール、ジラウリルチオジプロピオン酸エステル、3,3’-チオジプロピオン酸ジステアリル等の硫黄化合物などが挙げられる。これらの酸化防止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0060】
また、前記酸化防止剤の市販品としては、例えば、和光純薬工業株式会社製「Q-1300」、「Q-1-301」、住友化学株式会社製「スミライザーBBM-S」、「スミライザーGA-80」等が挙げられる。
【0061】
前記重合禁止剤としては、上述の酸化防止剤として例示したものと同様のものを用いる ことができ、前記重合禁止剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
また、前記重合禁止剤の市販品としては、上述の酸化防止剤の市販品として例示したものと同様のものことができ、例えば、和光純薬工業株式会社製「Q-1300」、「Q-1301」、住友化学株式会社製「スミライザーBBM-S」、「スミライザーGA-80」等が挙げられる。
【0062】
前記有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキソラン等の環状エーテル溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族溶剤;カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;アルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート等のグリコールエーテル溶剤;メトキシプロパノール、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
これらの有機溶剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記有機溶剤の使用量は、反応効率が良好となることから、反応原料の合計質量に対し0.1から5倍量程度の範囲が好ましい。
【0063】
前記無機質充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。
前記顔料としては、無機顔料や有機顔料を使用することができる。
【0064】
前記無機顔料としては、例えば、白色顔料、アンチモンレッド、ベンガラ、カドミウムレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等が挙げられる。これらの無機顔料は、単独で用いることも2種以上を併用することもでき る。
【0065】
前記白色顔料としては、例えば、酸化チタン,酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、中空樹脂粒子、硫化亜鉛等が挙げられる。
【0066】
前記有機顔料としては、例えば、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、フタロシアニン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンツイミダゾロン顔料、アゾ顔料等が挙げられる。これらの有機顔料は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0067】
前記難燃剤としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム、リン酸アミド等の無機リン化合物;リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,5-ジヒドロオキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロオキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等の環状有機リン化合物、およびそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等の有機リン化合物;トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等の窒素系難燃剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等のシリコーン系難燃剤;金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等の無機難燃剤などが挙げられる。これらの難燃剤は、単独でも用いることも2種以上を併用することもできる。また、これら難燃剤を用いる場合は、全樹脂組成物中0.1から20質量%の範囲であることが好ましい。
【0068】
前記熱硬化性樹脂組成物は加熱、光照射等、外部からエネルギーを与えて、または前記硬化促進剤の添加により硬化させ、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物としてもよい。
前記硬化物は、本イミド樹脂と、前記他の熱硬化性樹脂と、必要に応じて前記各種添加剤を含む硬化性樹脂組成物を例えば、熱硬化させて得られる。
【0069】
前記硬化物の製造方法としては、例えば、本イミド樹脂と前記熱硬化性樹脂を混合し、硬化性樹脂組成物を得、前記硬化性樹脂組成物を加熱硬化させる方法等が挙げられる
【0070】
前記硬化性樹脂組成物を加熱硬化させる場合、加熱条件は、通常150℃から220℃で20分から180分の範囲が好ましく、160℃から200℃で30から120分の範囲がより好ましい。
【0071】
本イミド樹脂は優れた柔軟性を維持しながら、さらに優れた誘電特性を有することから、半導体用基板として好適に用いられる。特に高速大容量通信の実現に向けたエレクトロニクスの分野での絶縁材料へ好適に適用することができる。
【0072】
以上、本発明のイミド樹脂、前記イミド樹脂と他の熱硬化性樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物およびその硬化物に関して説明したが、本発明は前記の実施形態の構成に限定されない。
本発明のイミド樹脂は前記実施形態の構成において、他の任意の構成を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてもよい。また前記熱硬化性樹脂組成物およびその硬化物において、他の任意の構成を追加してもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてもよい。
【実施例0073】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0074】
〔合成例1〕イミド樹脂Aの合成
(1)撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えたフラスコに、770.1gのプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(以下、PGMAcとも記す。)と、67.5g(0.30mol)のイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIとも記す。)と、562.6g(0.15mol)の両末端OH基ポリブタジエン(日本曹達株式会社製「G-3000」、水酸基価:30.3mgKOH/g)と、0.28gのジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)(マツモトファインケミカル株式会社社製「オルガチックスZC-580」)、0.14gの亜鉛錯体(楠本化成株式会社製「K-KAT XK-614」)を加えた。この混合溶液を60℃まで昇温した後、この温度に4時間保持した。
イソシアネート基の量がNCO%測定値で0.91%以下と所定値以下であることを確認し、前記混合溶液に、16.6g(0.076mol)の無水ピロメリット酸を添加した。その後、混合溶液を140℃まで昇温した後、4時間反応を継続した。
(2)粘度の上昇が収まったことを確認し、120℃まで冷却した。その後、20.0gのメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(0.15mol)と0.37gのメトキノンを加えて、120℃で2時間反応を行った。
(3)赤外スペクトルにて特性吸収を測定し、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1の吸収ピークが完全に消滅したことを確認し、PGMAcを用いて、不揮発分が45%になるように調整した。
以上のようにして、末端にメタクリロイル基を有するイミド樹脂を合成した。
かかるイミド樹脂を含有する混合溶液は、不揮発分の含有量が45質量%であり、25℃での粘度が740mPa・sであった。この混合溶液をイミド樹脂溶液(A)とした。
【0075】
〔合成例2〕イミド樹脂Bの合成
(1)撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えたフラスコに、727.2gのPGMAcと、135.9g(0.61mol)のIPDIと、459.1g(0.31mol)の両末端OH基ポリブタジエン(日本曹達株式会社製「G-1000」、水酸基価:74.8mgKOH/g)と、0.26gのジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)(マツモトファインケミカル株式会社社製「オルガチックスZC-580」)、0.13gの亜鉛錯体(楠本化成株式会社製「K-KAT XK-614」)を加えた。この混合溶液を60℃まで昇温した後、この温度に4時間保持した。
イソシアネート基の量がNCO%測定値で1.94%以下と所定値以下であることを確認し、混合溶液に、33.4g(0.15mol)の無水ピロメリット酸を添加した。その後、混合溶液を140℃まで昇温した後、4時間反応を継続した。
(2)粘度の上昇が収まったことを確認し、120℃まで冷却した。その後、40.2gのメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(0.31mol)と0.34gのメトキノンを加えて、120℃で2時間反応を行った。
(3)赤外スペクトルにて特性吸収を測定し、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1の吸収ピークが完全に消滅したことを確認し、PGMAcを用いて、不揮発分が45%になるように調整した。
以上のようにして、メタクリロイル基を有するイミド樹脂を合成した。
かかるイミド樹脂を含有する混合溶液は、不揮発分の含有量が45質量%であり、粘度(25℃)が1200mPa・sであった。この混合溶液をイミド樹脂溶液(B)とした。
【0076】
〔合成例3〕イミド樹脂Cの合成
(1)撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えたフラスコに、727.2gのPGMAcと、135.9g(0.61mol)のIPDIと、459.1g(0.31mol)の両末端OH基ポリブタジエン(日本曹達株式会社製「G-1000」、水酸基価:74.8mgKOH/g)と、0.26gのジルコニウムテトラアセチルアセトネート(マツモトファインケミカル株式会社製「オルガチックスZC-150」)、0.13gのチタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)(マツモトファインケミカル株式会社社製「オルガチックスTC-750」)を加えた。この混合溶液を60℃まで昇温した後、この温度に4時間保持した。
イソシアネート基の量がNCO%測定値で1.94%以下と所定値以下であることを確認し、混合溶液に、49.3g(0.15mol)のベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)を添加した。その後、混合溶液を140℃まで昇温した後、4時間反応を継続した。
(2)粘度の上昇が収まったことを確認し、120℃まで冷却した。その後、40.2gのメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(0.31mol)と0.34gのメトキノンを加えて、120℃で2時間反応を行った。
(3)赤外スペクトルにて特性吸収を測定し、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1の吸収ピークが完全に消滅したことを確認し、PGMAcを用いて、不揮発分が45%になるように調整した。
以上のようにして、メタクリロイル基を有するイミド樹脂を合成した。
かかるイミド樹脂を含有する混合溶液は、不揮発分の含有量が45質量%であり、粘度(25℃)が1640mPa・sであった。この混合溶液をイミド樹脂溶液(C)とした。
【0077】
〔合成例4〕イミドを含まない樹脂Dの合成
(1)撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えたフラスコに、727.2gのPGMAcと、135.9g(0.61mol)のIPDIと、459.1g(0.31mol)の両末端OH基ポリブタジエン(日本曹達株式会社製「G-1000」、水酸基価:74.8mgKOH/g)と、0.26gのジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート)(マツモトファインケミカル株式会社社製「オルガチックスZC-580」)、0.13gの亜鉛錯体(楠本化成株式会社製「K-KAT XK-614」)を加えた。この混合溶液を60℃まで昇温した後、この温度に4時間保持した。
イソシアネート基の量がNCO%測定値で1.94%以下と所定値以下であることを確認した。
(2)120℃まで昇温後、40.2gのメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(0.31mol)と0.34gのメトキノンを加えて、120℃2時間反応を行った。
(3)赤外スペクトルにて特性吸収を測定し、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1の吸収ピークが完全に消滅したことを確認し、PGMAcを用いて、不揮発分が45%になるように調整した。
以上のようにして、メタクリロイル基を有するがイミドを含まない樹脂を合成した。
前記イミドを含まない樹脂を含有する混合溶液は、不揮発分の含有量が45質量%であり、粘度(25℃)が550mPa・sであった。この混合溶液をイミドを含まない樹脂溶液(D)とした。
【0078】
実施例1から5および比較例1、2
<樹脂硬化物>
表1の通り調製された硬化性樹脂組成物をアプリケータにより、鏡面アルミ基板上に乾燥膜厚が30μmとなる塗工して、塗膜を形成した。
次いで、この塗膜を170℃×1時間で硬化させてアルミ基板上に硬化フィルムを作成し、サンプル片とした。得られたサンプル片に対して、誘電特性の評価を行った。
表1中、ポリブタジエンは両末端OH基ポリブタジエン(日本曹達株式会社製「G-1000」、水酸基価:74.8mgKOH/g)、マレイミド樹脂はDIC株式会社製「NE-X-9470S」、触媒としてジクミルパーオキサイド(DCPOと記す。)を用いた。
【0079】
【表1】
【0080】
<誘電正接の測定>
各サンプル片について、アルミ基板から樹脂膜を剥離した後、約1mm幅の短冊状サンプルを作成し、アジレントテクノロジー社製E8362Cを用いた空洞共振法(10G)による誘電率および誘電特性の測定を実施した。
【0081】
前記結果から明らかなように、本発明のイミド樹脂は誘電率および誘電正接のような誘電特性に優れている。また本発明イミド樹脂と熱硬化性樹脂との熱硬化性樹脂組成物およびその硬化物も誘電特性に優れている。