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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105178
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】撮像装置および測距システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/894 20200101AFI20240730BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20240730BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G01S17/894
G01S7/481 Z
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023204232
(22)【出願日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2023009747
(32)【優先日】2023-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕之
(72)【発明者】
【氏名】畑崎 壮哉
(72)【発明者】
【氏名】仲村 直人
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA06
2F112CA05
2F112CA08
2F112DA02
2F112DA15
2F112DA25
2F112EA07
2F112GA01
5J084AA05
5J084AC08
5J084AD01
5J084BA04
5J084BA07
5J084BA20
5J084BA34
5J084BA40
5J084BA48
5J084BB02
5J084CA65
5J084CA67
5J084DA04
5J084DA05
5J084EA04
(57)【要約】
【課題】照明手段と受光手段との光軸が同一でないToF方式の撮像装置において、測距対象とする画角において受光手段で受光するドットパターン光が過度に近接する領域を排除し、正確な距離情報を取得する。
【解決手段】撮像装置であって、筐体と、構造化光を投光する第1投光部と、前記第1投光部からの前記構造化光を含む入射光が入射する第1受光部と、前記撮像装置が支持される支持部と、を備え、前記第1受光部と、前記第1投光部と、前記支持部とは、前記第1受光部、前記第1投光部、前記支持部の順に、前記筐体の第1方向に関して異なる位置に配置されている。
【選択図】図9-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置であって、
筐体と、
構造化光を投光する第1投光部と、
前記第1投光部からの前記構造化光を含む入射光が入射する第1受光部と、
前記撮像装置が支持される支持部と、
を備え、
前記第1受光部と、前記第1投光部と、前記支持部とは、前記第1受光部、前記第1投光部、前記支持部の順に、前記筐体の第1方向に関して異なる位置に配置されている、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第1受光部は、前記第1方向の周囲360度を撮像可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第1投光部と前記第1受光部とは、それぞれ複数設けられ、
複数の第1投光部と複数の第1受光部とは、前記筐体の前記第1方向の軸の周囲に備えられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第1受光部は、非撮像領域を有し、
前記非撮像領域は、前記第1投光部と前記支持部とを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記筐体は、前記第1投光部と前記第1受光部との間に段差を設けており、
前記段差は、前記第1受光部の死角を形成し、前記第1投光部から前記第1受光部に対して前記構造化光の直接入射を避ける、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
輝度画像を撮影する第2受光部をさらに備え、
前記第1投光部は、前記第1受光部に対して、前記第2受光部と同等以上に近接して配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記筐体の周囲全面に均一照度の拡散光を照射する第2投光部をさらに備え、
前記第1投光部は、前記第1受光部に対して、前記第2投光部および前記第2受光部と同等以上に近接して配置される、
ことを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
輝度画像を撮影する第2受光部をさらに備え、
前記第1投光部は、前記支持部に対して、前記第2受光部と同等以上に近接して配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記筐体の周囲全面に均一照度の拡散光を照射する第2投光部をさらに備え、
前記第1投光部は、前記支持部に対して、前記第2投光部および前記第2受光部と同等以上に近接して配置される、
ことを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項10】
複数の前記第1投光部と、
遮蔽手段と、をさらに備え、
複数の前記第1投光部の一の前記第1投光部の投光範囲は、他の前記第1投光部の前記投光範囲と重なる重複領域を含み、
前記遮蔽手段は、前記重複領域に向けて射出される光の少なくとも一部を遮蔽する、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の撮像装置と、
前記第1受光部での受光データに基づき対象物までの距離を算出する処理部と、
を備えることを特徴とする測距システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置および測距システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像装置から対象物までの測距の手法の一つに、ToF(Time of Flight)方式と呼ばれる、光を照射してから反射光を受光するまでの時間に基づき対象物までの距離を算出する手法が知られている。このToF方式を利用して距離情報を取得するため、ToFセンサを含む受光手段とレーザ光源を含む照明手段とを使用し、測距を行う測距装置としてのToF方式の撮像装置が開発されている。ToF方式の撮像装置は、例えば車両において障害物検出に使用されたり、あるいは構造物内の空間情報の取得に使用されたりする。
【0003】
特許文献1には、光の反射率や距離が著しく異なる様々な物体が混在するようなシーンにおいて的確に距離情報を取得することを目的として、強発光領域(ドット状)と弱発光領域(均一光)を有する空間的照射パターンを照射する照明手段(構造化照明)を備えるToF方式の測距装置が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示の測距装置によれば、弱発光領域と強発光領域とを有する空間的照射パターンを持つことにより、弱発光領域からの戻り光では距離情報を取得するのに十分なS/N比を確保できなかったとしても、強発光領域からの戻り光により十分なS/N比を確保して正確な距離情報を取得することができる。
【0005】
加えて、特許文献1に開示の測距装置によれば、光の反射率が高かったり、対象物が近方に存在したりする場合に、たとえ強発光領域からの戻り光が強すぎたとしても、弱発光領域の光により受光素子が飽和しない程度の戻り光を受光して正確な距離情報を取得することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のToF方式の撮像装置によれば、照明手段と受光手段との光軸が同一でないため、測距対象とする画角において受光手段で受光するドットパターン光が過度に近接する領域が生じてしまう。このように、従来のToF方式の撮像装置によれば、受光素子上で受光されるドット光同士が近接しすぎた場合、ドット同士が繋がってしまうことでドットパターンとして機能しなくなってしまい、正確な距離情報を取得することができなくなってしまう、という問題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、照明手段と受光手段との光軸が同一でないToF方式の撮像装置において、測距対象とする画角において受光手段で受光するドットパターン光が過度に近接する領域を排除し、正確な距離情報を取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、撮像装置であって、筐体と、構造化光を投光する第1投光部と、前記第1投光部からの前記構造化光を含む入射光が入射する第1受光部と、前記撮像装置が支持される支持部と、を備え、前記第1受光部と、前記第1投光部と、前記支持部とは、前記第1受光部、前記第1投光部、前記支持部の順に、前記筐体の第1方向に関して異なる位置に配置されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ドットパターン光を照射する照明手段と受光手段との光軸が同一でないToF方式の撮像装置において、測距対象とする画角において受光手段で受光するドットパターン光が過度に近接する領域を排除し、正確な距離情報を取得することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施の形態の測距システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施の形態の撮像装置の構成の一例を示す図である。
図3図3は、撮像装置の概略構成の一例を示す図である。
図4図4は、光学系の配置の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施の形態の処理部の機能ブロックの一例を示す図である。
図6図6は、撮像装置の支持態様を例示的に示す図である。
図7図7は、撮像装置の死角を例示的に示す図である。
図8-1】図8-1は、望ましいドットパターン像の一例を示す図である。
図8-2】図8-2は、実際に得られるドットパターン像(視差による疎密有)の一例を示す図である。
図9-1】図9-1は、近接した平面状の測距対象に対する照射例を示す図である。
図9-2】図9-2は、隣接するドット間のピッチを例示的に示す図である。
図10図10は、ToFカメラの死角を例示的に示す図である。
図11図11は、ToF視野角とD/dとの関係を示す図である。
図12図12は、撮像装置の支持部の他の例を示す図である。
図13図13は、撮像装置の各光学要素の他の配置例を示す図である。
図14図14は、第2の実施の形態にかかる測距システムの構成を例示的に示す図である。
図15図15は、第3の実施の形態にかかる測距システムの構成を例示的に示す図である。
図16図16は、第3の実施の形態にかかる測距システムの変形例を示す図である。
図17図17は、第3の実施の形態にかかる測距システムの別の変形例を示す図である。
図18図18は、第3の実施の形態の処理部の機能ブロックの一例を示す図である。
図19図19は、第4の実施の形態にかかる測距システムの構成を例示的に示す図である。
図20図20は、手振れの影響の例を示す図である。
図21図21は、第5の実施の形態にかかる測距システムの構成を例示的に示す図である。
図22図22は、第5の実施の形態にかかる測距システムの変形例を示す図である。
図23図23は、第5の実施の形態にかかる測距システムの別の変形例を示す図である。
図24図24は、パターン化光の重複の例を示す図である。
図25図25は、第6の実施の形態にかかる遮断手段の一例を示す図である。
図26図26は、第6の実施の形態にかかる遮断手段の他の一例を示す図である。
図27図27は、第6の実施の形態にかかる遮断手段の他の一例を示す図である。
図28図28は、第6の実施の形態にかかる遮断手段の他の一例を示す図である。
図29図29は、第7の実施の形態にかかる測距システムの構成を例示的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、撮像装置および測距システムの実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかる撮像装置1001及び情報処理装置4001を含む測距システム3001のシステム構成を示す図である。図1に示すように、測距システム3001は、撮像装置1001を、PCまたはクラウドなどの情報処理装置4001に接続するシステム構成である。測距システム3001は、撮像装置1001によりToF撮影等を行い、情報処理装置4001により撮像装置1001で取得されたデータに基づく測距処理を行う。撮像装置1001と情報処理装置4001は、それぞれの有する送受信部によって有線通信または無線通信により通信することができる。撮像装置1001から情報処理装置4001へネットワーク経由でデータを送信(出力)してもよく、SDカード等の可搬型の記憶媒体やパーソナルコンピュータなどとのインターフェース回路により送受信部を構成してもよい。
【0013】
図2は第1の実施の形態にかかる撮像装置1001の構成を示す外観斜視図、図3は撮像装置1001の概略構成の一例を示す図、図4は光学系の配置の一例を示す図である。本実施形態では、撮像装置1001は、ToF(Time of Flight)方式の測距装置(ToFカメラ)としての機能と、輝度カメラ(RGBカメラ)としての機能を有し、全天球を対象としてToFカメラ及び輝度カメラにより撮像を行う。
【0014】
図2ないし図4に示すように、撮像装置1001は、投光ユニット21と、ToF受光ユニット61と、輝度受光ユニット30と、制御部120と、を備える。投光ユニット21とToF受光ユニット61とがToF方式の測距装置、つまりToFカメラとして機能し、輝度受光ユニット30が輝度カメラとしての機能を有する。
【0015】
投光ユニット21は、計測対象領域に向けて測距光(赤外光等)を照射する。投光ユニット21は、赤外光を放出する光源210と、発散角を広げる光学素子からなるToF投光系111(投光光学系)とを含み、光源210の光を広角に出射する。ToF投光系111の光学素子は、例えば、レンズやDOE(回折光学素子)、拡散板等を含む。光源210は、例えば、2次元アレイの垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL;Vertical Cavity Surface Emitting Laser)である。本実施形態の撮像装置1001は、互いに反対方向を向いて配置された2個の投光ユニット21を有している。
【0016】
2個の投光ユニット21は、構造化光であるパターン化光(本実施形態ではドットパターン)を空間中に照射する構造化照明である。換言すると、2個の投光ユニット21は、点状光(スポット光)を投光するものである。理想的には、光が照射される部分と光が照射されない部分に分かれるが、実際には、スポット光にはある程度の光の広がりや少量のマルチパス干渉が生じるため、後述のToFセンサ110で受光されるスポット光の反射光の点とそれ以外の領域とのコントラスト差を必ずしも“100:0”とするものではない。
【0017】
投光ユニット21から出射された測距光(構造化光)は、計測対象領域に存在する物体で反射される。ToF受光ユニット61は、計測対象領域の物体からの反射光を受光する。ToF受光ユニット61は、測距光に感度を有するToFセンサ110と、入射光をToFセンサ110へ導く光学素子からなるToF受光光学系112(第1受光光学系)とを含む。ToF受光光学系112の光学素子は、例えばレンズを含む。ToFセンサ110は受光画素が二次元に配列した受光素子であり、各画素が計測対象領域内の各位置と対応しているため、ToF受光ユニット61は、計測対象領域内の各位置からの光を個別に受光することができる。本実施形態の撮像装置1001は、互いに異なる方向を向いて配置された4個のToF受光ユニット61を有している。4個のToF受光ユニット61は、第1方向(Z軸)の周囲360度を撮像可能である。複数の投光ユニット21と複数のToF受光ユニット61とは、筐体11の第1方向(Z軸)の周囲に備えられる。
【0018】
輝度受光ユニット30は、CMOSセンサ33により2次元画像を取得する。輝度受光ユニット30は、輝度画像(RGB画像)を撮影するためのCMOSセンサ33と、入射光をCMOSセンサ33へ導く光学素子からなる輝度受光光学系113(第2受光光学系)とを含む。輝度受光光学系113の光学素子は、例えばレンズを含む。
【0019】
本実施形態の撮像装置1001は、ToF受光ユニット61の受光データにより距離画像を取得するとともに、輝度受光ユニット30の受光データにより輝度画像(RGB画像)を取得することができる。後述の処理部により、輝度画像(RGB画像)を、距離画像から得られた座標点群に対してマッピングする。これにより、測距システム3001は、周囲空間の距離・形状情報を、色情報付きでデジタルデータ化することが可能になる。
【0020】
制御部120は、投光ユニット21とToF受光ユニット61と輝度受光ユニット30とを駆動または制御する。制御部120は、光源210、ToFセンサ110、CMOSセンサ33のそれぞれとケーブル、FPC、FFC等で接続される。
【0021】
ここで、投光ユニット21は、構造化光を投光する第1投光部の一例である。ToF受光ユニット61は、構造化光を含む入射光が入射する第1受光部の一例である。輝度受光ユニット30は、第2受光部の一例であり、少なくとも輝度を含む情報を出力する。
【0022】
本実施形態では、図2ないし図4に示すように、撮像装置1001はZ軸方向に長い長手形状である。撮像装置1001の最も+Z方向側の一段目には、各々の画角が120度以上の4つのToF受光光学系112が、XY平面内の3方向と+Z方向である1方向を向くよう配置されている。撮像装置1001の一段目の-Z方向側となる二段目には、各々の画角が180度以上の2つのToF投光系111と、各々の画角が180度の2つの輝度受光光学系113とが配置されている。2つのToF投光系111はそれぞれ反対方向(+X方向と-X方向)を向き、2つの輝度受光光学系113もそれぞれ反対方向(+Y方向と-Y方向)を向いている。撮像装置1001の-Z方向側の下段には、制御部120、バッテリー130が配置されている。これにより、全天球をカバーする光学系をコンパクトに配置し、撮像装置を小型化することができる。
【0023】
制御部120は、投光ユニット21が投光するタイミングを制御するとともに、ToF受光ユニット61による受光を検出する。まず、制御部120は、光源210を駆動するタイミングを制御し、計測対象領域に向かって光を照射させる。さらに、制御部120は、ToFセンサ110で受光した光の光電変換で得られた受光データを取得する。同時に、制御部120は、CMOSセンサ33による撮像で得られた輝度画像を取得する。
【0024】
ここで、ToFセンサ110として直接ToFセンサを用いる場合、制御部120は、例えば、各画素での受光タイミングの情報を含むデータを取得する。一方、ToFセンサ110として間接ToFセンサを用いる場合、制御部120は、例えば、異なる4つの位相における各画素での受光量に基づく位相画像を取得する。後述の処理部により、4つの位相画像から距離画像を生成することができる。
【0025】
撮像装置1001で取得されたデータは、情報処理装置4001の備える処理部5001へ入力される。処理部5001は、例えば、情報処理装置400のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)などにより構成される。
【0026】
図5は、第1の実施形態において、ToF受光ユニット61での受光データに基づき対象物までの距離を算出する処理部5001の一例である。図5に示すように、処理部5001は、画像保存部5010、距離計算部5011、補正値算出部5012、距離補正部5013及び出力部5014の各機能を実現する。
【0027】
画像保存部5010は、ToF受光ユニット61による受光データ(複数枚の位相画像)をRAM等の記憶部に保存する。距離計算部5011は、画像保存部5010によって保存された複数枚の位相画像に基づいて、対象物までの間の距離を示す距離情報を計算する。補正値算出部5012は、例えば、投光ユニット21を発光して距離計算部5011で得られた距離画像におけるスポット光の直接反射光の領域と、それ以外の領域(スポット光の直接反射光が入射しない領域)とで得られた情報を用いて、距離情報を補正する補正値を算出する。距離補正部5013は、補正値算出部5012で算出された補正値を用い、投光ユニット21を発効して得られた距離情報の補正を行う。なお、補正値算出部5012及び距離補正部5013は必須ではないが、前述の補正によりマルチパス低減を行うことができる。
【0028】
出力部5014は、距離補正部5013で補正された対象物までの間の距離を示す距離情報を、外部機器に出力する。
【0029】
ここで、撮像装置1001の支持態様について、いくつか例を挙げて説明する。
【0030】
図6は、撮像装置1001の支持態様を例示的に示す図である。図6(a)に示すように、撮像装置1001は、筐体11の下部に三脚などの器具200を取り付けるネジ穴などの固定手段19(図2参照)を備える。図6(a)に示すように、撮像装置1001は、筐体11に設けられた固定手段19に対して、支持部として機能する三脚などの器具200を取り付けることにより、支持される。すなわち、撮像装置1001は、ToF受光ユニット61と投光ユニット21と支持部とについて、ToF受光ユニット61、投光ユニット21、支持部の順に、筐体11の第1の方向(Z軸)に関して異なる位置に配置する。
【0031】
また、図6(b)に示すように、撮像装置1001は、筐体11にユーザの手によって把持可能な把持部14を、投光ユニット21および輝度受光ユニット30の下段に備える。図6(b)に示すように、撮像装置1001は、支持部として機能する把持部14をユーザの手によって把持されることにより、支持される。
【0032】
ここで、図7は撮像装置1001の死角を例示的に示す図である。上述したように、本実施形態の撮像装置1001は、ToF受光ユニット61及び投光ユニット21を、それぞれ複数個異なる方向に向けて備える。このようにすることで、撮像装置1001を中心とした周囲の距離画像を、広範囲にわたって得ることができる。ただし、図7に示すように、撮像装置1001は、投光ユニット21からの光や支持部がToF受光ユニット61に映り込むことを回避するため、投光ユニット21及び支持部が存在する方向に非撮像領域となる死角を有する。
【0033】
ここで、図8-1は望ましいドットパターン像の一例を示す図、図8-2は実際に得られるドットパターン像(視差による疎密有)の一例を示す図である。
【0034】
投光ユニット21から平面状の近接した測距対象に照射されたドットパターン光の反射光を、ToF受光ユニット61内のToFセンサ110で受光した際に得られる像は、望ましく図8-1に示すようなものである。しかしながら、実際には、特に近接した対象の測距を行う場合に、ToF受光ユニット61と投光ユニット21との視差によって、図8-2に示すように疎密の分布を持ってしまう。
【0035】
ところで、図6に示したように、撮像装置1001の使用時において、ToF受光ユニット61が投光ユニット21よりも上側に位置する場合、すなわちToF受光ユニット61と投光ユニット21とを同一箇所に置けない場合においても、図8-2と同様にToFカメラから見て下方の測距点に対応するToFセンサ110の画素でドットパターンは密になる。
【0036】
このようにドットパターンが密になる領域では、1ピクセル内に複数のドットの反射光が入射することで各ドットが分解できず、中~強照射領域に塗りつぶされて弱照射領域が消失してしまう。このような状態になると、例えば特許文献1に記載の装置においては、弱照射領域が存在しない領域が発生して近距離の対象の測距が困難になるなど、当該パターン照明における一部のメリットが失われる。
【0037】
ToF受光ユニット61内のToFセンサ110で受光するドットパターン光のうち、ToFセンサ110上で受光されるドット光同士が近接しすぎた場合、ドット同士が繋がってしまうことでドット密度が濃くなり、ドットパターンとして機能しなくなってしまう。このようなドット密度が濃くなる領域は、ToF受光ユニット61の下側に位置してToFカメラの死角に入ることになるため、ToFカメラの視野角内において過度に近接したドットパターン光がなくなり、正確な距離情報を取得することができなくなってしまう、という問題がある。
【0038】
ここで、上述の問題についてより具体的に説明する。
【0039】
図9-1は、近接した平面状の測距対象に対する照射例を示す図である。図9-1に示すように、例えば、ToF受光ユニット61内のToFセンサ110の受光面からY方向に距離Dだけ離れた平面状の測距対象の距離画像を得ることを考える。撮像装置1001は、ToF受光ユニット61と投光ユニット21との光軸がZ方向に距離dだけ離間しており、投光ユニット21はToF受光ユニット61に対してZ方向マイナス側(図中下側)に配置されている。例えば、投光ユニット21から照射するドットパターン光は、5度間隔で照射されると考える。なお、図9-1に示す撮像装置1001は、投光ユニット21に対してZ方向マイナス側に、三脚などの器具200を備える。
【0040】
図9-2は、隣接するドット間のピッチを例示的に示す図である。
【0041】
図9-2(a)ないし図9-2(c)は、図9-1に示す撮像装置1001において、ToF受光ユニット61内のToFセンサ110の受光面からY方向に距離Dを変動させた場合における隣接するドット間のピッチを示す図である。より詳細には、図9-2(a)ないし図9-2(c)は、D/dを0.5、1、2としたときにドットパターン光の各ドットの反射光がToF受光ユニット61から見て視野角のいずれの角度から入射して受光するかと、そのドット像と隣接するドット像のピッチがToF受光ユニット61内のToFセンサ110上で何ピクセルに相当するかと、示している。
【0042】
図9-2(a)ないし図9-2(c)に示すように、D/dが小さくなるほどピッチの偏りは大きくなり、D/d=0.5では視野角-60度以下において隣接するドット像とのピッチが1ピクセル以下となる領域が発生する。このような領域では、1ピクセル上に複数のドット像の一部が重複することでドット間の非照射領域がToF受光ユニット61内のToFセンサ110上で失われ、前述のようにパターン照明におけるメリットが失われる。
【0043】
ここで、図10はToFカメラの死角を例示的に示す図である。前述したように、本実施形態の撮像装置1001では、ToF受光ユニット61より下方に配置される投光ユニット21の光がToF受光ユニット61に直接入射しないようにするとともに、三脚などの器具200の映り込み防止の目的も兼ねて図10中の下方に死角を設ける。具体的には、図10に示すように、撮像装置1001は、筐体11に段差11aを設ける。撮像装置1001は、筐体11に設けた段差11aに従い、ToF受光ユニット61と投光ユニット21との光学系に対して段差を形成する。撮像装置1001は、ToF受光ユニット61の画角-60度以下の入射光を筐体11に設けた段差11aにより遮蔽し、死角となるようにしている。これにより、ToF受光ユニット61は、投光ユニット21から照射される最大画角のパターン化光を回避する配置となっている。
【0044】
図9-2(c)に示すように、撮像装置1001は、ToF受光ユニット61の画角-60度以下の死角を用いることにより、D/d=0.5以上の近距離測距の場合において、ToF受光ユニット61の画角-60度以下に存在する隣接するドット像とのピッチが1ピクセル以下となる領域を隠すことができる。これにより、ToF受光ユニット61で受光した像からは分解されていないドット像が除かれ、ToF受光ユニット61内のToFセンサ110上で非照射領域が存在しない領域を判別してデータから除外する手間がなくなる。
【0045】
ところで、撮像装置1001の筐体11は、投光ユニット21から照射される波長(例として850nm、940nmなどの可視外光)の光を吸収しやすい材質であることが好ましい。撮像装置1001の筐体11は、例えば艶消しの黒色アルマイト処理を行ったアルミ合金とする。撮像装置1001の筐体11を投光ユニット21から照射される波長の光を吸収しやすい材質で構成することで、外気への放熱性の向上によって内部の発熱部品の温度上昇を抑制する効果も期待できる。
【0046】
なお、撮像装置1001の筐体11に関しては、投光ユニット21から照射される光の波長を吸収しやすい表面処理をしてあれば前述の例に限るものではなく、黒体テープの貼付や黒体塗料の塗布などであってもよい。
【0047】
なお、本実施形態の撮像装置1001では、筐体11に設けた段差11aによってToF受光ユニット61の死角を設けているが、その他の方法によって死角とする角度からの入射光を遮光してもよい。例えば、図9-1に示す撮像装置1001は、ToF受光ユニット61に付随するToFセンサ110の中心をZ方向にずらすことで、死角とすべき範囲の画角からの入射光をToFセンサ110の受光範囲に入らないようにするなどを行ってもよい。
【0048】
なお、例えばToFセンサ110の画角-60度以下が死角である撮像装置1001からD=50mm以上において所望の距離画像取得を行いたい場合、撮像装置1001の装置サイズは、D/d≧0.5であればよいことから、ToF受光ユニット61と投光ユニット21との距離D=100mm以下となるサイズにすればよい。
【0049】
また、撮像装置1001の装置サイズは、図6(b)に示すように把持部14を把持する場合、把持部14の太さが断面40mm×30mm程度の角柱であったり、φ40程度の円柱あるいはこれらに近い小判型形状のようなものであったりすると、片手で安定して把持しやすい。
【0050】
本実施形態の撮像装置1001では、ToF受光ユニット61の死角とする視野角について-60度を閾値としているが、これは光学設計や対象とするD/d、ToFセンサ110のピクセルのサイズなどによっても変動する。
【0051】
ここで、図11はToF視野角とD/dとの関係を示す図である。より詳細には、図11は、ToF受光ユニット61の光学系をfθレンズあるいはfθレンズに準ずるものであると仮定したときのD/dと、そのとき最もToF受光ユニット61のToFセンサ110上でドットのピッチが狭くなる視野角と、を示すものである。
【0052】
図9-2(a)ないし図9-2(c)において、D/dを0.5,1,2としたときのToFセンサ110上で受光するドット像の隣接するドット像とのピッチの変化を示した。図9-2(a)ないし図9-2(c)においては、D/d=0.5で約-67度、D/d=1で約-57度、D/d=1で約-50度で最小値をとる例を示している。図11は、図9-2(a)ないし図9-2(c)において示した最小値をとるようなピッチの変化に対応している。
【0053】
ところで、ToF受光ユニット61においては、ToFセンサ110上のピクセルのサイズによって、どの視野角で複数のドット光が単一ピクセルで重複するかが変化する。基本的には、ドット像の隣接するドット像とのピッチが最小となる視野角で最もドット像が重複しやすくなるため、その角度以下の視野角を遮蔽することになる。
【0054】
図11に示されるように、ドット像の隣接するドット像とのピッチが最小となる視野角は、基本的に-40度を超えることはない。図11中では省略しているが、ドット像の隣接するドット像とのピッチが最小となる視野角は、距離Dが無限遠(D/d=∞)であっても-42度程度である。したがって、基本的には、閾値は最大で-42度程度であり、それ以上の角度まで遮蔽すると無駄に距離画像の情報を減らしてしまうことになりやすい。
【0055】
撮像装置1001は、D/d<0.5レベルの超近距離での測距を実用上において行うことは少ない。一方で、撮像装置1001は、D/d>5レベルではドット間のピッチは十分なピクセル数を確保できることが多い。したがって、撮像装置1001は、図11に示されるように、死角とする閾値の推奨角度を概ね-67度~-46度の範囲とする。
【0056】
このように本実施形態によれば、パターン化された構造化光(例:ドットパターン)の密度分布が過度に高い部分に相当する光が実使用する視野角の外に存在することで、視野角内において過度に近接したドットパターン光がなくなる。これにより、ドットパターン光を照射する照明手段と受光手段との光軸が同一でないToF方式の撮像装置において、測距対象とする画角において受光手段で受光するドットパターン光が過度に近接する領域を排除し、正確な距離情報を取得することができる、という効果を奏する。
【0057】
なお、本実施形態の撮像装置1001は、支持部として三脚などの器具200(図6(a)参照)やユーザの手によって把持される把持部14(図6(b)参照)を例に挙げて説明したが、これに限るものではない。ここで、図12は撮像装置1001の支持部の他の例を示す図である。図12に示すように、例えば、建造物の天井に対する固定手段230を支持部として設けて、撮像装置1001を屋内空間の測距手段として用いてもよい。
【0058】
また、本実施形態の撮像装置1001は、装置全周の距離画像を得るために、図9-1に示されるように、Y方向の正方向、負方向の両方に対称に各光学要素(ToF受光ユニット61、輝度受光ユニット30)を設けるようにしたが、これに限るものではない。ここで、図13は撮像装置1001の各光学要素の他の配置例を示す図である。図13に示すように、撮像装置1001は、例えば、片面のみに各光学要素(ToF受光ユニット61、輝度受光ユニット30)を設けたものであってもよい。そして、図13に示すように、撮像装置1001は、支持部として機能する三脚などの器具200を取り付ける固定手段19の前段に、例えば電動モータなどによって回転する回転テーブルである回転手段220を設けるようにしてもよい。この場合、撮像装置1001は、回転手段220によって装置自体を回転させながら全周の距離画像を取得する。
【0059】
なお、本実施形態では、照射パターンとしてドットパターンを照射する投光ユニット21を例に挙げてきたが、これに限るものではなく、不規則なドット配置によるランダムドットパターンやストライプパターンなどの任意のパターン化光を照射する投光ユニット21であってもよい。
【0060】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0061】
第2の実施の形態は、投光ユニット21を輝度受光ユニット30よりもToF受光ユニット61に近い位置に配置する点が、第1の実施の形態と異なる。以下、第2の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0062】
図14は、第2の実施の形態にかかる撮像装置1002及び情報処理装置4002を含む測距システム3002のシステム構成を例示的に示す図である。第1の実施の形態の撮像装置1002は、投光ユニット21と輝度受光ユニット30とをToF受光ユニット61から同等の近接した位置に配置するようにしたが、これに限るものではない。図14に示すように、本実施形態の撮像装置1002は、投光ユニット21を輝度受光ユニット30と同等以上にToF受光ユニット61に近い位置に配置する。
【0063】
これにより、本実施形態によれば、ToF受光ユニット61と投光ユニット21との視差を減らすことができる。結果として、投光ユニット21から照射されるパターン化光をToF受光ユニット61内のToFセンサ110で受光した際に生じるドット分布の不均一(図8-2参照)が軽減される。
【0064】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0065】
第3の実施の形態は、周囲全面に光を照射する均一照明を備える点が、第2の実施の形態と異なる。以下、第3の実施の形態の説明では、第2の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第2の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0066】
図15は、第3の実施の形態にかかる撮像装置1003及び情報処理装置4003を含む測距システム3003のシステム構成を例示的に示す図である。図15に示すように、本実施形態の撮像装置1003は、第2の実施の形態で説明した構成に加えて、投光ユニット21から照射されるドットパターン光のドット間の距離情報を獲得するために、さらに筐体11の周囲全面に均一照度の拡散光を照射する第2投光部である均一照明71を備える。
【0067】
本実施形態の撮像装置1003は、均一照明71によって周囲全面に拡散光を照射するが、均一照明71によって得られる距離画像では集光されている投光ユニット21に対して照明の照度が低いため遠距離での測距精度が低下する。しかしながら、撮像装置1003は、均一照明71によって筐体11の周囲全面に均一照度の拡散光を照射することによって、投光ユニット21から照射されるドットパターン間のブランクになっている部位の距離・形状の情報を、補間する情報として使用することができる。
【0068】
このとき、図15に示すように、投光ユニット21がToF受光ユニット61の直近に配置されている場合には、第2の実施の形態で説明したように、投光ユニット21から照射されるパターン化光をToF受光ユニット61内のToFセンサ110で受光した際に生じるドット分布の不均一(図8-2参照)が軽減される。
【0069】
図15に示すように、本実施形態の撮像装置1003は、ToF受光ユニット61、投光ユニット21、輝度受光ユニット30および均一照明71、把持部14の順に配置した構成である。このような構成にすることにより、撮像装置1003は、発熱しやすい投光ユニット21と均一照明71とを離間した構成とし、撮像装置1003の温度上昇を分散させやすくしている。
【0070】
このように本実施形態によれば、投光ユニット21から照射されるドットパターン光のドット間の距離情報を獲得することができるとともに、撮像装置1003の温度上昇を抑えることができる。
【0071】
ここで、図16は第3の実施の形態にかかる撮像装置1003の変形例を示す図である。図16に示すように、撮像装置1003は、ToF受光ユニット61の直近であって、ToF受光ユニット61から同等以上に近接する距離に、投光ユニット21と均一照明71とを配置する。また、撮像装置1003は、把持部14と投光ユニット21および均一照明71との間に、輝度受光ユニット30を配置している。このような構成にすることにより、撮像装置1003は、発熱しやすい投光ユニット21と均一照明71とを把持部14から離した構成とし、手で触れる部分の温度上昇によるやけどなどのリスクを低減することができる。
【0072】
ここで、図17は第3の実施の形態にかかる撮像装置1003の別の変形例を示す図である。図17に示すように、撮像装置1003は、ToF受光ユニット61の直近に、投光ユニット21と輝度受光ユニット30とを同等以上に近接する距離に配置し、把持部14と投光ユニット21および輝度受光ユニット30の間に均一照明71を配置している。言い換えれば、撮像装置1003は、投光ユニット21と輝度受光ユニット30との両方をToF受光ユニット61に近接させて視差を最小限とし、周囲全面を照射するため視差の影響のない均一照明71をToF受光ユニット61から最も離した構成とする。
【0073】
なお、投光ユニット21が、ToF受光ユニット61に対して、輝度受光ユニット30や均一照明71に比べて同等以上に近接した配置であれば、輝度受光ユニット30や均一照明71の配置は、図15図17以外の組み合わせであってもよい。
【0074】
図18は、第3の実施形態において、ToF受光ユニット61での受光データに基づき対象物までの距離を算出する処理部5003の一例である。図18に示すように、処理部5003は、画像保存部5030、距離計算部5031、補正値算出部5032、距離補正部5033及び出力部5034の各機能を実現する。
【0075】
画像保存部5030は、ToF受光ユニット61による受光データ(複数枚の位相画像)をRAM等の記憶部に保存する。距離計算部5031は、画像保存部5030によって保存された複数枚の位相画像に基づいて、対象物までの間の距離を示す距離情報を計算する。補正値算出部5032は、投光ユニット21を発光して距離計算部5031で得られた距離情報1と、均一照明71を発光して距離計算部5031で得られた距離情報2とを用いて、距離情報を補正する補正値を算出する。距離補正部5033は、補正値算出部5032で算出された補正値を用い、投光ユニット21を発光して得られた距離情報1の補正を行う。なお、本実施形態では、処理部5001に代えて、第1の実施形態の処理部5003を用いて補正値の算出と距離の補正を行ってもよい。その場合は第1の実施形態で説明した通り、補正値算出部5012及び距離補正部5013により、マルチパス低減を行うことができる。
【0076】
出力部5034は、距離補正部5033で補正された対象物までの間の距離を示す距離情報を、外部機器に出力する。
【0077】
(第4の実施の形態)
次に、第4の実施の形態について説明する。
【0078】
第4の実施の形態は、投光ユニット21の手振れによる変動を少なくする構成とした点が、第1の実施の形態と異なる。以下、第4の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0079】
図19は、第4の実施の形態にかかる撮像装置1004及び情報処理装置4004を含む測距システム3004のシステム構成を例示的に示す図である。第1の実施の形態の撮像装置1004は、投光ユニット21と輝度受光ユニット30とをToF受光ユニット61から同等以上に近接する位置に配置するようにしたが、これに限るものではない。図19(a)に示すように、本実施形態の撮像装置1004は、ToF受光ユニット61と投光ユニット21との間に、輝度受光ユニット30を備える。すなわち、本実施形態の撮像装置1004は、投光ユニット21を把持部14の近傍に配置した構成である。
【0080】
これにより、図19(b)に示すように、投光ユニット21の手振れ時の変動は、ToF受光ユニット61および輝度受光ユニット30の手振れ時の変動よりも小さくなる。
【0081】
撮像装置1004は、把持部14を把持する手持ちでの撮影時には手振れが生じうる。特に、投光ユニット21で1回の距離画像の取得中に複数回の撮影を行い統合する場合(例えば複数回撮影を行った結果の平均を出力したり、近距離用に光源出力を低くした撮影と遠距離用に光源出力を強くした撮影を行ったのちに情報を統合したりするなど)、最も手振れによる影響が大きいのは投光ユニット21である。
【0082】
ここで、手振れの影響の例として、ドットパターンを照射する投光ユニット21の場合を挙げて以下に説明する。
【0083】
図20は、手振れの影響の例を示す図である。S/N比の良好な距離の情報は、投光ユニット21でドットパターンが照射された箇所のみから得られる。このとき照射箇所が疎かつ局所的になるため、手振れによって撮影中に投光ユニット21が大きく変動する。このように投光ユニット21が大きく変動することでドットパターンの照射箇所が変動すると、図20に示すように、測距対象の形状が大きく変化したかのような結果になる可能性がある。これにより、1回の距離画像の取得中の複数の撮影結果において対象の形状的特徴が一致せず、統合後の距離画像の品質が低下してしまうことが考えられる。
【0084】
これに対して、ToF受光ユニット61では、手振れによってToF受光ユニット61から見た像の位置に変動が生じても投光ユニット21による照射位置の変動が小さければ、得られる対象の形状情報はほとんど変化しないため、特徴点抽出などの結果から手振れ補正を後から行うことができる。
【0085】
なお、輝度受光ユニット30においても、一般的な手振れ補正を用いることで、手振れによる影響をある程度抑制できる。そのため、最優先して手振れによる変動を抑制したい対象は、投光ユニット21である。
【0086】
以上の理由より、本実施形態の撮像装置1004は、手振れによる変動が最も少ない把持部14の近傍に投光ユニット21を配置している。
【0087】
このように本実施形態によれば、投光ユニット21の手振れによる変動を少なくすることができる。
【0088】
(第5の実施の形態)
次に、第5の実施の形態について説明する。
【0089】
第5の実施の形態は、周囲全面に光を照射する均一照明を備える点が、第4の実施の形態と異なる。以下、第5の実施の形態の説明では、第4の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第4の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0090】
図21は、第5の実施の形態にかかる撮像装置1005及び情報処理装置4005を含む測距システム3005のシステム構成を例示的に示す図である。図21に示すように、本実施形態の撮像装置1005は、第4の実施の形態で説明した構成に加えて、投光ユニット21から照射されるドットパターン光のドット間の距離情報を獲得するために、さらに周囲全面に光を照射する均一照明71を備える。
【0091】
本実施形態の撮像装置1005は、均一照明71によって周囲全面に光を照射するが、均一照明71によって得られる距離画像では集光されている投光ユニット21に対して照明の照度が低いため遠距離での測距精度が低下する。しかしながら、撮像装置1005は、均一照明71によって周囲全面に光を照射することによって、投光ユニット21から照射されるドットパターン間のブランクになっている部位の距離・形状の情報を、補間する情報として使用することができる。
【0092】
図21に示すように、本実施形態の撮像装置1005は、ToF受光ユニット61、輝度受光ユニット30、投光ユニット21および均一照明71、把持部14の順に配置した構成である。
【0093】
このように本実施形態の撮像装置1005によれば、投光ユニット21と均一照明71とを光学要素の中では最下段に置くことで、投光ユニット21および均一照明71の内部の光源に対する把持部14内に内蔵された電源供給手段からの配線を最短にし、発光遅延を最小限に抑制することができる。
【0094】
ここで、図22は第5の実施の形態にかかる撮像装置1005の変形例を示す図である。図22に示すように、撮像装置1005は、ToF受光ユニット61の直近であって、ToF受光ユニット61から同等以上に近接する距離に、輝度受光ユニット30と均一照明71とをする。また、撮像装置1005は、把持部14と輝度受光ユニット30および均一照明71との間に、投光ユニット21を配置している。このような構成にすることにより、撮像装置1005は、発熱しやすい投光ユニット21と均一照明71とを離間した構成とし、撮像装置1005の温度上昇を分散させやすくすることができる。
【0095】
ここで、図23は第5の実施の形態にかかる撮像装置1005の別の変形例を示す図である。図23に示すように、撮像装置1005は、ToF受光ユニット61、均一照明71の順に配置し、その次段に投光ユニット21および輝度受光ユニット30を把持部14に近接して配置している。言い換えれば、撮像装置1005は、投光ユニット21および輝度受光ユニット30を共に把持部14の近傍に置いた構成としている。これにより、撮像装置1005は、投光ユニット21だけではなく、輝度受光ユニット30の手振れ量を抑制することができる。また、撮像装置1005は、輝度受光ユニット30の露光時間を長くする必要があるときでも、手振れによるブラーの影響を小さくすることができる。
【0096】
なお、投光ユニット21が、把持部14に対して、輝度受光ユニット30や均一照明71に比べて同等以上に近接した配置であれば、輝度受光ユニット30や均一照明71の配置は、図21図23以外の組み合わせであってもよい。
【0097】
(第6の実施の形態)
次に、第6の実施の形態について説明する。
【0098】
第6の実施の形態は、撮像装置1006の投光ユニット21に対しその投光範囲の一部を遮光する遮蔽手段を設けた構成である点が、第1~第5の構成と異なる。
【0099】
図24は撮像装置1006の投光ユニット21のパターン化光の重複について示す図である。パターン化光をドットパターン光としたとき、投光範囲が重複していない面(1)においてはドットパターン同士が離間しているが、撮像装置1006から遠距離となる面(2)より遠方においては過度に近接したドット光間の干渉が見られる。面(3)においてはドット同士がちょうど重なることでドットパターンが問題なく機能するが、面(4)、(5)などでは過度に近接したドット光同士が干渉することでドットパターンとしての機能が損なわれる。
【0100】
そこで本実施形態では上記の問題を回避するにあたり、所望の撮像領域において投光範囲が重複しないように、投光ユニット21からのパターン化光の一部を遮蔽する遮蔽手段を設ける。
【0101】
図25は、第6の実施の形態にかかる遮断手段の一例を示す図である。遮蔽手段の一例として、図25(a)に示す構成に対して図25(b)のように筐体11に対して遮光形状11bを追加することができる。これにより、投光ユニット21から上方へ投光されるパターン化光の一部(図25(b)で「光を遮蔽する範囲」と示した部分)が遮蔽される。この遮光形状11bを任意のせり出し量にすることで、パターン化光が重複する範囲を変更し、所望の距離においてパターン化光の投光範囲の重複に伴う問題を回避することができる。本構成では、左右両側の遮光形状11bのせり出し量は投光ユニット21の配光角度θが90度以下となる長さ未満である。なお、θ=90度の時は、パターン化光は無限遠まで重複しない。
【0102】
図26は、第6の実施の形態にかかる遮断手段の他の一例を示す図である。図26は、撮像装置1006の投光ユニット21の周囲の断面を示す。遮蔽手段の他の一例として、図26に示すように、光学系21aの鏡筒外周にリング状部材12を追加することができる。このリング状部材12により、投光ユニット21の投光範囲の一部が遮蔽される。
【0103】
この例によれば、リング状部材12を投光ユニット21の光軸方向に移動させることでパターン化光を遮蔽する範囲を調整することが可能である。また、たとえば図26に示すように、リング状部材12の内周をめねじ、光学系21aの鏡筒外周をおねじにすれば、リングの回転によってリングの位置が光軸方向に前後するため、パターン化光を遮蔽する範囲を微調整することが容易である。
【0104】
図27は、第6の実施の形態にかかる遮断手段の他の一例を示す図である。図27に示すように、リング状部材12を光学系21aの鏡筒外周に直接固定するのではなく、投光ユニット21を固定する筐体11側の投光ユニット21の外周に、円筒形の凸部を設け、ここにリング状部材12を固定しても同様の効果が得られる。
【0105】
図28は、第6の実施の形態にかかる遮断手段の他の一例を示す図である。図28は、投光ユニット21を光軸方向から見た図である。遮蔽手段のさらに他の一例として、図28に示すように、光学系21aの内部に絞り羽根部材13を追加することができる。この絞り羽根部材13により、投光ユニット21の投光範囲の一部が遮蔽される。
【0106】
絞り羽根部材13は、開閉することにより開口部21bの大きさを調整可能となっている。絞り羽根部材13を開けば、図28(a)に示すように開口部21bは大きくなり、絞り羽根部材13を閉じれば、図28(b)に示すように開口部21bは小さくなる。このように、絞り羽根部材13の開閉によって、投光ユニット21の投光範囲外縁部の光の遮蔽範囲の大小を調整することが可能となる。
【0107】
(第7の実施の形態)
次に、第7の実施の形態について説明する。
【0108】
第7の実施の形態は、撮像装置1007が処理部5007を備える測距装置であり、撮像装置1007により測距システム3007が構成される点が、第1の実施の形態ないし第6の実施の形態と異なる。以下、第7の実施の形態の説明では、第1の実施の形態ないし第6の実施の形態と同一部分の説明については省略し、第1の実施の形態ないし第6の実施の形態と異なる箇所について説明する。
【0109】
図29は、第7の実施の形態にかかる撮像装置1007(測距システム3007)の構成を例示的に示す図である。図29に示すように、撮像装置1007は、処理部5007を備える測距装置である。
【0110】
処理部5007は、例えば、撮像装置1007のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、SSD(Solid State Drive)などにより構成される。処理部5007の機能は、第1の実施形態における情報処理装置4001の処理部5001と同様である。
【0111】
このように本実施形態によれば、ドットパターン光を照射する照明手段と受光手段との光軸が同一でないToF方式の撮像装置において、測距対象とする画角において受光手段で受光するドットパターン光が過度に近接する領域を排除し、正確な距離情報を出力することができる、という効果を奏する。
【0112】
なお、本実施形態においては、第3の実施の形態で説明した投光ユニット21および均一照明71を備える撮像装置1003に対して、処理部5007を備える構成としたが、これに限るものではなく、第1の実施の形態で説明した投光ユニット21を備える撮像装置1001に対して、処理部5007を備える構成としてもよい。
【0113】
以上、本発明に係る各実施形態を説明したが、上述の各実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら新規な実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。さらに、異なる実施形態および変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0114】
11 筐体
11a 段差
11b 遮光形状
12 リング状部材
13 絞り羽根部材
14,200,230 支持部
21 第1投光部
21a 光学系
21b 開口部
30 第2受光部
61 第1受光部
71 第2投光部
1001 撮像装置、測距装置
3001 測距システム
4001 情報処理装置
5001 処理部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0115】
【特許文献1】特開2019-113530号公報
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