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特開2024-105201エチレンの製造方法、二酸化炭素還元電極及び二酸化炭素還元装置
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  • 特開-エチレンの製造方法、二酸化炭素還元電極及び二酸化炭素還元装置 図1
  • 特開-エチレンの製造方法、二酸化炭素還元電極及び二酸化炭素還元装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105201
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】エチレンの製造方法、二酸化炭素還元電極及び二酸化炭素還元装置
(51)【国際特許分類】
   C07C 1/02 20060101AFI20240730BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20240730BHJP
   B01J 31/22 20060101ALI20240730BHJP
   C25B 3/26 20210101ALI20240730BHJP
   C25B 3/03 20210101ALI20240730BHJP
   C25B 11/054 20210101ALI20240730BHJP
   C25B 11/085 20210101ALI20240730BHJP
   C25B 11/065 20210101ALI20240730BHJP
   C25B 11/053 20210101ALI20240730BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240730BHJP
   C25B 13/08 20060101ALI20240730BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
C07C1/02
C07C11/04
B01J31/22 Z
C25B3/26
C25B3/03
C25B11/054
C25B11/085
C25B11/065
C25B11/053
C25B9/00 G
C25B13/08
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007650
(22)【出願日】2024-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2023009665
(32)【優先日】2023-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023173256
(32)【優先日】2023-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 謙太朗
(72)【発明者】
【氏名】阿部 柾律
(72)【発明者】
【氏名】神川 卓
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4G169AA04
4G169AA08
4G169BA08B
4G169BC31A
4G169BD02A
4G169BE13A
4G169BE37A
4G169CB02
4G169DA06
4G169EA13
4G169EA14
4G169ED02
4G169EE06
4G169FA01
4G169FA03
4G169FB14
4G169FB23
4H006AA02
4H006AC29
4H006BA05
4H006BA47
4H006BA55
4H006BE41
4H006BE60
4H039CA29
4H039CA99
4H039CL25
4K011AA69
4K011BA02
4K011BA12
4K011DA10
4K021AC02
4K021BA02
4K021BB03
4K021DB18
4K021DB36
4K021DC11
(57)【要約】
【課題】エチレン選択性が高いエチレンの製造方法、二酸化炭素還元電極及び二酸化炭素還元装置の提供。
【解決手段】多核銅錯体であり、密度汎関数法で求められた銅原子間距離が2.8Å以下である二酸化炭素還元触媒の存在下で、二酸化炭素と水とを反応させる工程を含む、エチレンの製造方法、二酸化炭素還元電極及び二酸化炭素還元装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多核銅錯体であり、密度汎関数法で求められた銅原子間距離が2.8Å以下である二酸化炭素還元触媒の存在下で、二酸化炭素と水とを反応させる工程を含む、エチレンの製造方法。
【請求項2】
前記二酸化炭素還元触媒が、銅原子と2つの酸素原子とが配位結合している多核銅錯体である請求項1に記載のエチレンの製造方法。
【請求項3】
下記式(1)で表される二酸化炭素還元触媒の存在下で、二酸化炭素と水とを反応させる工程を含む、エチレンの製造方法。
【化1】


(上記式(1)中、
は水素原子又は置換基を表し、複数あるRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。隣り合う2つのRは互いに結合して環を形成してもよい。Pは芳香環を1つ以上含む2価の基を表す。Q及びQは芳香環を1つ以上含む1価の基を表し、Q及びQは互いに結合して環構造を形成してもよい。aは2以上4以下の整数である。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Oは酸素原子であり、少なくとも1つの銅原子と結合する。)
【請求項4】
前記Pが、下記式(P)又は下記式(P)で表される2価の基である請求項3に記載のエチレンの製造方法。
【化2】


(上記式(P)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR同士及び隣り合う2つのR同士は互いに結合して環構造を形成してもよい。上記式(P)中、R及びRは水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR同士、並びに隣り合うR及びRは互いに結合して環構造を形成してもよい。複数あるRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。なお、*は、結合手を表す。)
【請求項5】
前記二酸化炭素還元触媒が下記式(2)で表される化合物である請求項3に記載のエチレンの製造方法。
【化3】


(上記式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR同士、隣り合う2つのR同士、及び隣り合う2つのR同士は互いに結合して環構造を形成してもよい。複数存在するR~Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Q及びQは芳香環を1つ以上含む1価の基を表し、Q及びQは互いに結合して環構造を形成してもよい。aは2以上4以下の整数である。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Oは酸素原子であり、少なくとも1つの銅原子と結合する。)
【請求項6】
前記二酸化炭素還元触媒が下記式(3)で表される化合物である請求項3に記載のエチレンの製造方法。
【化4】



(上記式(3)中、R~R13は、それぞれ独立に水素原子、置換基又は2価の基を表し、隣り合う2つのR同士、隣り合う2つのR10同士、隣り合う2つのR11同士、隣り合う2つのR12同士、並びに隣り合うR12及びR13は互いに結合して環構造を形成してもよい。複数存在するR~R12はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R13が2価の基である場合、当該2価の基は他の上記式(3)で表される化合物と結合を形成し2量体を形成してもよい。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項7】
前記二酸化炭素還元触媒が下記式(4)で表される化合物である請求項3に記載のエチレンの製造方法。
【化5】


(上記式(4)中、R14~R16は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR14同士、隣り合う2つのR15同士、並びに隣り合うR15及びR16は互いに連結して環を形成してもよい。複数存在するR14~R16はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項8】
前記二酸化炭素還元触媒が下記式(5)で表される化合物である請求項3に記載のエチレンの製造方法。
【化6】



(上記式(5)中、R17~R21は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR17同士、隣り合う2つのR18同士、隣り合う2つのR19同士、隣り合う2つのR20同士、及び隣り合う2つのR21同士は互いに連結して環を形成してもよい。複数存在するR17~R21はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項9】
前記二酸化炭素還元触媒が下記式(6)で表される化合物である請求項3に記載のエチレンの製造方法。
【化7】


(式(6)中、R22~R26は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR22同士、隣り合う2つのR23同士、隣り合う2つのR24同士、隣り合う2つのR26同士、並びに隣り合うR25及びR26は互いに結合して環構造を形成してもよい。複数存在するR22~R26はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項10】
前記二酸化炭素還元触媒が下記式(7)で表される化合物である請求項3に記載のエチレンの製造方法。
【化8】


(上記式(7)中、R27~R34は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR27同士、隣り合う2つのR28同士、隣り合う2つのR29同士、隣り合う2つのR30同士、隣り合う2つのR31同士、隣り合う2つのR32同士、隣り合う2つのR33同士、及び隣り合う2つのR34同士は互いに結合して環構造を形成してもよい。複数存在するR27~R34はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Arは置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。aは2以上4以下の整数である。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Oは酸素原子であり、少なくとも1つの銅原子と結合する。)
【請求項11】
多核銅錯体であり、密度汎関数法で求められた銅原子間距離が2.8Å以下である二酸化炭素還元触媒又は下記式(1)で表される二酸化炭素還元触媒が担持された導電性材料を含む二酸化炭素還元電極。
【化9】


(上記式(1)中、
は水素原子または置換基を表し、複数あるRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。隣り合う2つのRは互いに結合して環を形成してもよい。Pは芳香環を1つ以上含む2価の基を表す。Q及びQは芳香環を1つ以上含む1価の基を表し、Q及びQは互いに結合して環構造を形成してもよい。aは2以上4以下の整数である。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Oは酸素原子であり、少なくとも1つの銅原子と結合する。)
【請求項12】
前記導電性材料を支持する支持体をさらに含む請求項11に記載の二酸化炭素還元電極。
【請求項13】
イオン伝導体を含む請求項11又は請求項12に記載の二酸化炭素還元電極。
【請求項14】
酸化電極と、
請求項11に記載の二酸化炭素還元電極と、
前記酸化電極と前記二酸化炭素還元電極とを隔てる膜と、
電解液と、
前記酸化電極及び前記二酸化炭素還元電極に接続された電源と、を備える二酸化炭素還元装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エチレンの製造方法、二酸化炭素還元電極及び二酸化炭素還元装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素を還元してエチレンを製造する方法において、銅錯体である二酸化炭素還元触媒を用いることがある。
例えば、特許文献1には、「リン原子を有する配位子と、2つの金属原子を有し、そのうちの少なくとも1つはCuであるハロゲン化金属塩と、を有する金属錯体を含むことを特徴とする炭素化合物還元触媒。」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-109157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
銅触媒である二酸化炭素還元触媒を用いたエチレンの製造方法において、副生成物が多く発生しやすく、エチレン選択性が低い傾向にある。そのため、エチレン選択性の高いエチレンの製造方法の開発が求められている。
【0005】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、エチレン選択性が高いエチレンの製造方法を提供することである。
本開示の他の一実施形態が解決しようとする課題は、エチレン選択性が高い二酸化炭素還元電極を提供することである。
本開示の他の一実施形態が解決しようとする課題は、エチレン選択性が高い二酸化炭素還元装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の手段が含まれる。
<1> 多核銅錯体であり、密度汎関数法で求められた銅原子間距離が2.8Å以下である二酸化炭素還元触媒の存在下で、二酸化炭素と水とを反応させる工程を含む、エチレンの製造方法。
<2> 前記二酸化炭素還元触媒が、銅原子と2つの酸素原子とが配位結合している多核銅錯体である<1>に記載のエチレンの製造方法。
<3> 下記式(1)で表される二酸化炭素還元触媒の存在下で、二酸化炭素と水とを反応させる工程を含む、エチレンの製造方法。
【0007】
【化1】
【0008】
上記式(1)中、
は水素原子又は置換基を表し、複数あるRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。隣り合う2つのRは互いに結合して環を形成してもよい。Pは芳香環を1つ以上含む2価の基を表す。Q及びQは芳香環を1つ以上含む1価の基を表し、Q及びQは互いに結合して環構造を形成してもよい。aは2以上4以下の整数である。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Oは酸素原子であり、少なくとも1つの銅原子と結合する。
<4> 前記Pが、下記式(P)又は下記式(P)で表される2価の基である<3>に記載のエチレンの製造方法。
【0009】
【化2】
【0010】
上記式(P)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR同士及び隣り合う2つのR同士は互いに結合して環構造を形成してもよい。上記式(P)中、R及びRは水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR同士、並びに隣り合うR及びRは互いに結合して環構造を形成してもよい。複数あるRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。なお、*は、結合手を表す。
<5> 前記二酸化炭素還元触媒が下記式(2)で表される化合物である<3>に記載のエチレンの製造方法。
【0011】
【化3】
【0012】
上記式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR同士、隣り合う2つのR同士、及び隣り合う2つのR同士は互いに結合して環構造を形成してもよい。複数存在するR~Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Q及びQは芳香環を1つ以上含む1価の基を表し、Q及びQは互いに結合して環構造を形成してもよい。aは2以上4以下の整数である。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Oは酸素原子であり、少なくとも1つの銅原子と結合する。
<6> 前記二酸化炭素還元触媒が下記式(3)で表される化合物である<3>に記載のエチレンの製造方法。
【0013】
【化4】
【0014】
上記式(3)中、R~R13は、それぞれ独立に水素原子、置換基又は2価の基を表し、隣り合う2つのR同士、隣り合う2つのR10同士、隣り合う2つのR11同士、隣り合う2つのR12同士、並びに隣り合うR12及びR13は互いに結合して環構造を形成してもよい。複数存在するR~R12はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R13が2価の基である場合、当該2価の基は他の上記式(3)で表される化合物と結合を形成し2量体を形成してもよい。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
<7> 前記二酸化炭素還元触媒が下記式(4)で表される化合物である<3>に記載のエチレンの製造方法。
【0015】
【化5】
【0016】
上記式(4)中、R14~R16は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR14同士、隣り合う2つのR15同士、並びに隣り合うR15及びR16は互いに連結して環を形成してもよい。複数存在するR14~R16はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
<8> 前記二酸化炭素還元触媒が下記式(5)で表される化合物である<3>に記載のエチレンの製造方法。
【0017】
【化6】
【0018】
上記式(5)中、R17~R21は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR17同士、隣り合う2つのR18同士、隣り合う2つのR19同士、隣り合う2つのR20同士、及び隣り合う2つのR21同士は互いに連結して環を形成してもよい。複数存在するR17~R21はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
<9> 前記二酸化炭素還元触媒が下記式(6)で表される化合物である<3>に記載のエチレンの製造方法。
【0019】
【化7】
【0020】
式(6)中、R22~R26は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR22同士、隣り合う2つのR23同士、隣り合う2つのR24同士、隣り合う2つのR26同士、並びに隣り合うR25及びR26は互いに結合して環構造を形成してもよい。複数存在するR22~R26はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
<10> 前記二酸化炭素還元触媒が下記式(7)で表される化合物である<3>に記載のエチレンの製造方法。
【0021】
【化8】
【0022】
上記式(7)中、R27~R34は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR27同士、隣り合う2つのR28同士、隣り合う2つのR29同士、隣り合う2つのR30同士、隣り合う2つのR31同士、隣り合う2つのR32同士、隣り合う2つのR33同士、及び隣り合う2つのR34同士は互いに結合して環構造を形成してもよい。複数存在するR27~R34はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Arは置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。aは2以上4以下の整数である。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Oは酸素原子であり、少なくとも1つの銅原子と結合する。
<11> 多核銅錯体であり、密度汎関数法で求められた銅原子間距離が2.8Å以下である二酸化炭素還元触媒又は下記式(1)で表される二酸化炭素還元触媒が担持された導電性材料と、を含む二酸化炭素還元電極。
【0023】
【化9】
【0024】
上記式(1)中、
は水素原子または置換基を表し、複数あるRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。隣り合う2つのRは互いに結合して環を形成してもよい。Pは芳香環を1つ以上含む2価の基を表す。Q及びQは芳香環を1つ以上含む1価の基を表し、Q及びQは互いに結合して環構造を形成してもよい。aは2以上4以下の整数である。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Oは酸素原子であり、少なくとも1つの銅原子と結合する。
<12> 前記導電性材料を支持する支持体をさらに含む<11>に記載の二酸化炭素還元電極。
<13> イオン伝導体を含む<11>又は<12>に記載の二酸化炭素還元電極。
<14> 酸化電極と、<11>~<13>のいずれか1つに記載の二酸化炭素還元電極と、前記酸化電極と前記二酸化炭素還元電極とを隔てる膜と、電解液と、前記酸化電極及び前記二酸化炭素還元電極に接続された電源と、を備える二酸化炭素還元装置。
【発明の効果】
【0025】
本開示の一実施形態によれば、エチレン選択性が高いエチレンの製造方法が提供される。
本開示の他の一実施形態によれば、エチレン選択性が高い二酸化炭素還元電極が提供される。
本開示の他の一実施形態によれば、エチレン選択性が高い二酸化炭素還元装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示に係る二酸化炭素還元電極の一例を示す概略断面図である。
図2】本開示に係る二酸化炭素還元装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0028】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
「工程」とは、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0029】
「置換基」の例としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、1価の複素環基、置換アミノ基、アシル基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、置換オキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、及びニトロ基が挙げられる。なお、本明細書において炭素原子数という場合には、通常、当該炭素原子数には置換基Aの炭素原子数は含まれない。
【0030】
「芳香族炭化水素環基」とは、無置換でも置換基を有していてもよく、2個以上の環が縮環していてもよい芳香族炭化水素環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子を1個以上除いた残りの原子団を意味する。
【0031】
「芳香族複素環基」とは、無置換でも置換基を有していてもよく、2個以上の環が縮環していてもよい芳香族複素環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子を1個以上除いた残りの原子団を意味する。
【0032】
化合物名中、「t-」とはターシャリーを意味し、「n-」とはノルマルを意味し、「p-」はパラ位を意味する。
【0033】
<エチレンの製造方法>
本開示の一実施形態に係るエチレンの製造方法は、多核銅錯体であり、密度汎関数法で求められた銅原子間距離が2.8Å以下である二酸化炭素還元触媒の存在下で、二酸化炭素と水とを反応させる工程を含む。
【0034】
本開示の一実施形態に係るエチレンの製造方法は、上記構成により、エチレン選択性が高いエチレンの製造方法となる。その理由は、次の通り推測される。
【0035】
多核銅錯体である二酸化炭素還元触媒を用いたエチレンの製造は、二酸化炭素還元触媒が有する銅原子に二酸化炭素が配位し、別の銅原子に配位した2つの二酸化炭素同士が結合を形成し、水と反応することでエチレンを生じることで進行すると推測される。エチレン選択性の向上には、別の銅原子に配位した2つの二酸化炭素同士が結合を形成しやすくすることが有効であると考えられ、そのためには、銅原子間距離を短くすることが有効であると推測される。
ここで、本開示の一実施形態に係るエチレンの製造方法は、多核銅錯体であり、密度汎関数法で求められた銅原子間距離が2.8Å以下である二酸化炭素還元触媒を使用する。当該銅原子間距離とすることで、別の銅原子に配位した2つの二酸化炭素同士が結合を形成しやすくなる。そのため、エチレン選択性が高いエチレンの製造方法となると推測される。
【0036】
本開示の他の一実施形態に係るエチレンの製造方法は、下記式(1)で表される二酸化炭素還元触媒の存在下で、二酸化炭素と水とを反応させる工程を含む。
【0037】
本開示の他の一実施形態に係るエチレンの製造方法は、上記構成により、エチレン選択
性が高いエチレンの製造方法となる。その理由は、次の通り推測される。
【0038】
本開示の他の一実施形態に係るエチレンの製造方法は、下記式(1)で表される二酸化炭素還元触媒を使用する。当該二酸化炭素還元触媒は、別の銅原子に配位した2つの二酸化炭素同士が結合を形成しやすくなる程度の銅原子間距離を有する。そのため、エチレン選択性が高いエチレンの製造方法となると推測される。
【0039】
【化10】
【0040】
上記式(1)中、
は水素原子または置換基を表し、複数あるRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。隣り合う2つのRは互いに結合して環を形成してもよい。Pは芳香環を1つ以上含む2価の基を表す。Q及びQは芳香環を1つ以上含む1価の基を表し、Q及びQは互いに結合して環構造を形成してもよい。aは2以上4以下の整数である。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Oは酸素原子であり、少なくとも1つの銅原子と結合する。
【0041】
以下、本開示の一実施形態に係るエチレンの製造方法及び本開示の他の一実施形態に係るエチレンの製造方法について詳細に説明する。以下、本開示の一実施形態に係るエチレンの製造方法及び本開示の他の一実施形態に係るエチレンの製造方法をまとめて「本開示に係るエチレンの製造方法」と称する。
【0042】
(二酸化炭素還元触媒)
本開示に係るエチレンの製造方法に用いられる二酸化炭素還元触媒について説明する。
二酸化炭素還元触媒は、多核銅錯体である。
【0043】
二酸化炭素還元触媒は、一態様において、密度汎関数法で求められた銅原子間距離が2.8Å以下であり、2.5Å以上2.8Å以下であることが好ましく、2.5Å以上2.75Å以下であることがより好ましく、2.5Å以上2.7Å以下であることが更に好ましい。
ここで、銅原子間距離が2.5Å以上であることが好ましい理由としては、多核銅錯体の構造上、銅原子間距離を2.5Å以下とすることが難しいためである。
【0044】
・銅原子間距離の算出方法
銅原子間距離は量子化学計算プログラムを用いて算出する。量子化学計算プログラムとしては、例えば、Gaussian社製のGaussian16が使用可能である。
銅原子間距離を算出する対象とする二酸化炭素還元触媒の構造最適化計算を密度汎関数法(B3LYP/def2svp、sdd for Cu)により行い、銅原子間距離を
算出する。構造最適化計算のSCF(self consistent field)解が不安定解である場合、再度構造最適化計算を行い、安定解を導くこととする。
【0045】
エチレン選択性の観点から、二酸化炭素還元触媒は、1つの銅原子に対して少なくとも1つ以上の酸素原子が配位結合している多核銅錯体であることが好ましく、銅原子と2つの酸素原子とが配位結合している多核銅錯体であることがより好ましい。
【0046】
二酸化炭素還元触媒は、下記式(1)で表される化合物である。
【0047】
【化11】
【0048】
上記式(1)中、
は水素原子又は置換基を表し、複数あるRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。隣り合う2つのRは互いに結合して環を形成してもよい。Pは芳香環を1つ以上含む2価の基を表す。Q及びQは芳香環を1つ以上含む1価の基を表し、Q及びQは互いに結合して環構造を形成してもよい。aは2以上4以下の整数である。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Oは酸素原子であり、少なくとも1つの銅原子と結合する。
【0049】
上記式(1)中、Rとしては、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基であることが好ましい。Rがアルキル基である場合、炭素数1以上10以下のアルキル基であることがより好ましく、t-ブチル基であることが更に好ましい。Rがアルコキシ基である場合、炭素数1以上10以下のアルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることが更に好ましい。
上記式(1)中、Q及びQで表される1価の基が含む芳香環としては、芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。Q及びQで表される1価の基が含む芳香環としての芳香族複素環基としては、窒素原子を含有する芳香族複素環基又は硫黄原子を含有する芳香族複素環基であることが好ましい。Q及びQが互いに結合して環構造を形成している場合、当該環構造は、例えばフェナントロリンから水素原子を2つ除いた残りの原子団であることが好ましい。
aは2以上4以下の整数であり、2又は4であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。
Xで表される対イオンとしては、アニオンであることが好ましく、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫化物イオン、酸化物イオン、水酸化物イオン、水素化物イオン、亜硫酸イオン、リン酸イオン、シアン化物イオン、酢酸イオン、2-エチルヘキサン酸イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸水素イオン、トリフルオロ酢酸イオン、チオシアン化物イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、及びアセチルアセトナート、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオ
ン、テトラフェニルホウ酸イオンからなる群から選択される少なくとも1種のアニオンであることがより好ましい。Xで表される中性分子としては、水、メタノール、エタノール、n-プロパノ-ル、イソプロピルアルコール、2-メトキシエタノール、1,1-ジメチルエタノール、エチレングリコール、N,N’-ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、アセトン、クロロホルム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、トリエチルアミン、ピリジン、ピラジン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、4,4’-ビピリジン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、メチルエチルエーテル、1,4-ジオキサン、酢酸、プロピオン酸、及び2-エチルヘキサン酸からなる群から選択される少なくとも1種の中性分子であることが好ましい。
bは0以上の整数であり、例えば、0以上4以下であることが好ましい。
【0050】
エチレン選択性の観点から、上記式(1)中、Pは、下記式(P)又は下記式(P)で表される2価の基であることが好ましい。
【0051】
【化12】
【0052】
上記式(P)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR同士及び隣り合う2つのR同士は互いに結合して環構造を形成してもよい。上記式(P)中、R及びRは水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR同士、並びに隣り合うR及びRは互いに結合して環構造を形成してもよい。複数あるRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。なお、*は、結合手を表す。
【0053】
上記式(P)中、Rは炭化水素基であることが好ましく、炭素数1以上6以下のアルキル基又はアルケニル基であることがより好ましく、炭素数1以上4以下のアルケニル基であることが更に好ましい。隣り合う2つのR同士が互いに結合して環構造を形成していることが好ましく、隣り合う2つのR同士が互いに結合して形成される環構造としては、ベンゼン環であることが好ましい。
上記式(P)中、Rは水素原子であることが好ましい。
【0054】
上記式(P)中、Rは水素原子であることが好ましい。
上記式(P)中、Rは芳香族炭化水素環基であることが好ましく、無置換の若しくは置換基を有する炭素数30以下の芳香族炭化水素基であることが好ましく、無置換の若しくは置換基を有するフェニル基、無置換の若しくは置換基を有するナフチル基、無置換の若しくは置換基を有するアントリル基、又は無置換の若しくは置換基を有するピレニル基であることがより好ましく、無置換の若しく置換基を有するフェニル基であることがさらに好ましい。置換基として具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、メルカプト基、スル
ホン酸基、ニトロ基、ホスホン酸基、炭素数1~4のアルキル基を有するシリル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ノルボニル基、ノニル基、シクロノニル基、デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、アダマンチル基、ドデシル基、シクロドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基などの全炭素数1~50程度の直鎖、分岐又は環状の一価の飽和炭化水素基、アルケニル基、アルキニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、シクロへキシルオキシ基、ノルボニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基などの全炭素数1~50程度の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基などが挙げられる。置換基の数としては、置換可能な数であればよく、フェニル基であれば1~5個、ナフチル基であれば1~7個、アントリル基及びピレニル基はそれぞれ1~9個である。
【0055】
エチレン選択性の観点から、二酸化炭素還元触媒は下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0056】
【化13】
【0057】
上記式(2)中、R~Rは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR同士、隣り合う2つのR同士、及び隣り合う2つのR同士は互いに結合して環構造を形成してもよい。複数存在するR~Rはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Q及びQは芳香環を1つ以上含む1価の基を表し、Q及びQは互いに結合して環構造を形成してもよい。aは2以上4以下の整数である。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Oは酸素原子であり、少なくとも1つの銅原子と結合する。
【0058】
上記式(2)中、Rとしては、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基であることが好ましい。Rがアルキル基である場合、炭素数1以上10以下のアルキル基であることがより好ましく、t-ブチル基であることが更に好ましい。Rがアルコキシ基である場合、炭素数1以上10以下のアルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることが更に好ましい。
上記式(2)中、Rは炭化水素基であることが好ましく、炭素数1以上6以下のアルキル基又はアルケニル基であることがより好ましく、炭素数1以上4以下のアルケニル基であることが更に好ましい。隣り合う2つのR同士が互いに結合して環構造を形成していることが好ましく、隣り合う2つのR同士が互いに結合して形成される環構造としては、ベンゼン環であることが好ましい。
上記式(2)中、Rは水素原子であることが好ましい。
上記式(2)中、Q及びQで表される1価の基が含む芳香環としては、芳香族炭化
水素環基及び芳香族複素環基が挙げられる。Q及びQで表される1価の基が含む芳香環としての芳香族複素環基としては、窒素原子を含有する芳香族複素環基又は硫黄原子を含有する芳香族複素環基であることが好ましい。Q及びQが互いに結合して環構造を形成している場合、当該環構造は、例えばフェナントロリンから水素原子を2つ除いた残りの原子団であることが好ましい。
上記式(2)中、a、X、及びbの好ましい態様は式(1)におけるa、X、及びbの好ましい態様と同一である。
【0059】
エチレン選択性の観点から、二酸化炭素還元触媒は下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0060】
【化14】
【0061】
上記式(3)中、R~R13は、それぞれ独立に水素原子、置換基又は2価の基を表し、隣り合う2つのR同士、隣り合う2つのR10同士、隣り合う2つのR11同士、隣り合う2つのR12同士、並びに隣り合うR12及びR13は互いに結合して環構造を形成してもよい。複数存在するR~R12はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R13が2価の基である場合、当該2価の基は他の上記式(3)で表される化合物と結合を形成し2量体を形成してもよい。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0062】
上記式(3)中、Rとしては、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基であることが好ましい。Rがアルキル基である場合、炭素数1以上10以下のアルキル基であることがより好ましく、t-ブチル基であることが更に好ましい。Rがアルコキシ基である場合、炭素数1以上10以下のアルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることが更に好ましい。
上記式(3)中、R10は炭化水素基であることが好ましく、炭素数1以上6以下のアルキル基又はアルケニル基であることがより好ましく、炭素数1以上4以下のアルケニル基であることが更に好ましい。隣り合う2つのR10同士が互いに結合して環構造を形成していることが好ましく、隣り合う2つのR10同士が互いに結合して形成される環構造としては、ベンゼン環であることが好ましい。
上記式(3)中、R11は水素原子であることが好ましい。
上記式(3)中、R12は水素原子であることが好ましい。
上記式(3)中、R13は芳香族炭化水素環基であることが好ましく、無置換の若しくは置換基を有する炭素数30以下の芳香族炭化水素基であることが好ましく、無置換の若しくは置換基を有するフェニル基、無置換の若しくは置換基を有するナフチル基、無置換の若しくは置換基を有するアントリル基、又は無置換の若しくは置換基を有するピレニル基であることがより好ましく、無置換の若しく置換基を有するフェニル基であることがさらに好ましい。置換基として具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、メルカプト基、スルホン酸基、ニトロ基、ホスホン酸基、炭素数1~4のアルキル基を有するシリル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ノルボニル基、ノニル基、シクロノニル基、デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、アダマンチル基、ドデシル基、シクロドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基などの全炭素数1~50程度の直鎖、分岐又は環状の一価の飽和炭化水素基、アルケニル基、アルキニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、シクロへキシルオキシ基、ノルボニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基などの全炭素数1~50程度の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基などが挙げられる。置換基の数としては、置換可能な数であればよく、フェニル基であれば1~5個、ナフチル基であれば1~7個、アントリル基及びピレニル基はそれぞれ1~9個である。
上記式(3)中、X、及びbの好ましい態様は式(1)におけるX、及びbの好ましい態様と同一である。
【0063】
エチレン選択性の観点から、二酸化炭素還元触媒は下記式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【0064】
【化15】
【0065】
上記式(4)中、R14~R16は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR14同士、隣り合う2つのR15同士、並びに隣り合うR15及びR16は互いに連結して環を形成してもよい。複数存在するR14~R16はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0066】
上記式(4)中、R14は水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基であることが好ましい。R14がアルキル基である場合、炭素数1以上10以下のアルキル基であることがより好ましく、t-ブチル基であることが更に好ましい。R14がアルコキシ基である場合、炭素数1以上10以下のアルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることが更に好ましい。
上記式(4)中、R15は水素原子であることが好ましい。
上記式(4)中、R16は芳香族炭化水素環基であることが好ましく、無置換の若しくは置換基を有する炭素数30以下の芳香族炭化水素基であることが好ましく、無置換の若しくは置換基を有するフェニル基、無置換の若しくは置換基を有するナフチル基、無置換の若しくは置換基を有するアントリル基、又は無置換の若しくは置換基を有するピレニル
基であることがより好ましく、無置換の若しく置換基を有するフェニル基であることがさらに好ましい。置換基として具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、エステル基、メルカプト基、スルホン酸基、ニトロ基、ホスホン酸基、炭素数1~4のアルキル基を有するシリル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ノルボニル基、ノニル基、シクロノニル基、デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、アダマンチル基、ドデシル基、シクロドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基などの全炭素数1~50程度の直鎖、分岐又は環状の一価の飽和炭化水素基、アルケニル基、アルキニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、シクロへキシルオキシ基、ノルボニルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基などの全炭素数1~50程度の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基などが挙げられる。置換基の数としては、置換可能な数であればよく、フェニル基であれば1~5個、ナフチル基であれば1~7個、アントリル基及びピレニル基はそれぞれ1~9個である。
上記式(4)中、X、及びbの好ましい態様は式(1)におけるX、及びbの好ましい態様と同一である。
【0067】
エチレン選択性の観点から、二酸化炭素還元触媒は下記式(5)で表される化合物であることが好ましい。
【化16】
【0068】
上記式(5)中、R17~R21は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR17同士、隣り合う2つのR18同士、隣り合う2つのR19同士、隣り合う2つのR20同士、及び隣り合う2つのR21同士は互いに連結して環を形成してもよい。複数存在するR17~R21はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0069】
上記式(5)中、R17は水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基であることが好ましい。R17がアルキル基である場合、炭素数1以上10以下のアルキル基であることがより好ましく、t-ブチル基であることが更に好ましい。R17がアルコキシ基である場合、炭素数1以上10以下のアルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることが更に好ましい。
上記式(5)中、R18は炭化水素基であることが好ましく、炭素数1以上6以下のアルキル基又はアルケニル基であることがより好ましく、炭素数1以上4以下のアルケニル基であることが更に好ましい。隣り合う2つのR18同士が互いに結合して環構造を形成していることが好ましく、隣り合う2つのR18同士が互いに結合して形成される環構造
としては、ベンゼン環であることが好ましい。
上記式(5)中、R19は水素原子であることが好ましい。
上記式(5)中、R20は炭化水素基であることが好ましく、炭素数1以上6以下のアルキル基又はアルケニル基であることがより好ましく、炭素数1以上4以下のアルケニル基であることが更に好ましい。隣り合う2つのR20同士が互いに結合して環構造を形成していることが好ましく、隣り合う2つのR20同士が互いに結合して形成される環構造としては、ベンゼン環であることが好ましい。
上記式(5)中、R21は水素原子であることが好ましい。
上記式(5)中、X、及びbの好ましい態様は式(1)におけるX、及びbの好ましい態様と同一である。
【0070】
エチレン選択性の観点から、二酸化炭素還元触媒は下記式(6)で表される化合物であることが好ましい。
【0071】
【化17】
【0072】
式(6)中、R22~R26は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR22同士、隣り合う2つのR23同士、隣り合う2つのR24同士、隣り合う2つのR26同士、並びに隣り合うR25及びR26は互いに結合して環構造を形成してもよい。複数存在するR22~R26はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0073】
上記式(6)中、R22は水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基であることが好ましい。R22がアルキル基である場合、炭素数1以上10以下のアルキル基であることがより好ましく、t-ブチル基であることが更に好ましい。R22がアルコキシ基である場合、炭素数1以上10以下のアルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることが更に好ましい。
上記式(6)中、R23は炭化水素基であることが好ましく、炭素数1以上6以下のアルキル基又はアルケニル基であることがより好ましく、炭素数1以上4以下のアルケニル基であることが更に好ましい。隣り合う2つのR23同士が互いに結合して環構造を形成していることが好ましく、隣り合う2つのR23同士が互いに結合して形成される環構造としては、ベンゼン環であることが好ましい。
上記式(6)中、R24及びR25は水素原子であることが好ましい。
上記式(6)中、R26は炭化水素基であることが好ましく、炭素数1以上6以下のアルキル基又はアルケニル基であることがより好ましく、炭素数1以上4以下のアルケニル基であることが更に好ましい。隣り合う2つのR26同士が互いに結合して環構造を形成
していることが好ましく、隣り合う2つのR26同士が互いに結合して形成される環構造としては、ベンゼン環であることが好ましい。
上記式(6)中、X、及びbの好ましい態様は式(1)におけるX、及びbの好ましい態様と同一である。
【0074】
エチレン選択性の観点から、二酸化炭素還元触媒は下記式(7)で表される化合物であることが好ましい。
【0075】
【化18】
【0076】
上記式(7)中、R27~R34は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、隣り合う2つのR27同士、隣り合う2つのR28同士、隣り合う2つのR29同士、隣り合う2つのR30同士、隣り合う2つのR31同士、隣り合う2つのR32同士、隣り合う2つのR33同士、及び隣り合う2つのR34同士は互いに結合して環構造を形成してもよい。複数存在するR27~R34はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Arは置換基を有していてもよい2価の芳香族基を表す。aは2以上4以下の整数である。Xは対イオン又は中性分子であり、bは0以上の整数であり、Xを複数有する場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Oは酸素原子であり、少なくとも1つの銅原子と結合する。
【0077】
上記式(7)中、R27及びR31は、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基であることが好ましい。R27及びR31はがアルキル基である場合、炭素数1以上10以下のアルキル基であることがより好ましく、t-ブチル基であることが更に好ましい。R27及びR31はがアルコキシ基である場合、炭素数1以上10以下のアルコキシ基であることがより好ましく、メトキシ基であることが更に好ましい。
上記式(7)中、R28は炭化水素基であることが好ましく、炭素数1以上6以下のアルキル基又はアルケニル基であることがより好ましく、炭素数1以上4以下のアルケニル基であることが更に好ましい。隣り合う2つのR28同士が互いに結合して環構造を形成していることが好ましく、隣り合う2つのR28同士が互いに結合して形成される環構造としては、ベンゼン環であることが好ましい。
上記式(7)中、R32は炭化水素基であることが好ましく、炭素数1以上6以下のアルキル基又はアルケニル基であることがより好ましく、炭素数1以上4以下のアルケニル基であることが更に好ましい。隣り合う2つのR32同士が互いに結合して環構造を形成していることが好ましく、隣り合う2つのR32同士が互いに結合して形成される環構造としては、ベンゼン環であることが好ましい。
上記式(7)中、R29及びR33は水素原子であることが好ましい。
上記式(7)中、R30及びR34は水素原子であることが好ましい。
上記式(7)中、aは4であることが好ましい。
上記式(7)中、X、及びbの好ましい態様は式(1)におけるX、及びbの好ましい態様と同一である。
【0078】
以下に、二酸化炭素還元触媒の具体的な構造式を示すが、これに限定されることはない。なお、下記構造式において、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表し、「t-Bu」はt-ブチル基を意味し、「TMS」はトリメチルシリル基を表し、「i-Pr」はイソプロピル基を意味し、「OAc」は酢酸アニオンを意味し、銅の価数は二価(Cu2+)である。
【0079】
【化19】

【0080】
【化20】

【0081】
【化21】

【0082】
【化22】

【0083】
【化23】

【0084】
【化24】

【0085】
【化25】

【0086】
【化26】

【0087】
【化27】

【0088】
【化28】

【0089】
【化29】

【0090】
【化30】

【0091】
【化31】

【0092】
【化32】

【0093】
【化33】

【0094】
【化34】

【0095】
【化35】

【0096】
【化36】

【0097】
【化37】

【0098】
【化38】

【0099】
【化39】

【0100】
【化40】

【0101】
【化41】

【0102】
(二酸化炭素と水とを反応させる工程)
本開示に係るエチレンの製造方法は、二酸化炭素還元触媒の存在下で、二酸化炭素と水とを反応させる工程を含む。
本工程は、二酸化炭素還元触媒の存在下で、二酸化炭素と水とを反応させることができる工程であれば特に限定されないが、エチレン選択性の観点から、酸化電極と、本開示に係る二酸化炭素還元電極と、前記酸化電極と前記二酸化炭素還元電極とを隔てる膜と、電解液と、前記酸化電極及び前記二酸化炭素還元電極に接続された電源と、を備える二酸化炭素還元装置を用いて行うことが好ましい。
なお、二酸化炭素還元装置の詳細については後述する。
【0103】
二酸化炭素還元装置を用いて二酸化炭素と水とを反応させる方法としては、酸化電極及び二酸化炭素還元電極に電流を流し、二酸化炭素還元電極に接触するように二酸化炭素を
装置内に流し、二酸化炭素還元装置の電解液に含まれる水と二酸化炭素とを二酸化炭素還元電極上で反応させる方法が挙げられる。
【0104】
<二酸化炭素還元電極>
本開示に係る二酸化炭素還元電極は、多核銅錯体であり、密度汎関数法で求められた銅原子間距離が2.8Å以下である二酸化炭素還元触媒又は上記式(1)で表される二酸化炭素還元触媒が担持された導電性材料を含む。
【0105】
(導電性材料)
導電性材料は二酸化炭素還元触媒を担持している。
本開示に係る二酸化炭素還元電極に含まれる、二酸化炭素還元触媒は本開示に係るエチレンの製造方法に用いられる二酸化炭素還元触媒が適用され、好ましい態様も同様である。
【0106】
導電性材料は多孔質の炭素材料であることが好ましい。
導電性材料としては、ノーリット;ケッチェンブラック;バルカン;ブラックパール;アセチレンブラック等のカーボン粒子;C60、C70等のフラーレン;カーボンナノチューブ;カーボンナノホーン;カーボン繊維;グラフェン;酸化グラフェン;還元型酸化グラフェン;グラフェンメソスポンジ等が挙げられる。
【0107】
導電性材料に二酸化炭素還元触媒を担持させる方法としては、二酸化炭素還元触媒を溶解する溶液中に導電性材料を添加して得られる分散液を超音波処理することで行うことが好ましい。
【0108】
導電性材料に担持された二酸化炭素還元触媒の量としては、導電性材料の質量に対する銅原子の質量が1質量%以上50質量%以下となる量とすることが好ましく、銅原子の質量が2質量%以上10質量%以下となる量とすることがより好ましい。
【0109】
導電性材料に担持された二酸化炭素還元触媒の量としては、導電性材料の質量に対する二酸化炭素還元触媒の質量が1質量%以上100質量%以下となる量とすることが好ましく、二酸化炭素還元触媒の質量が5質量%以上50質量%以下となる量とすることがより好ましい。
【0110】
導電性材料の質量に対する銅原子の質量は熱重量示差熱(TG-DTA)分析装置を用いて測定される。測定方法は以下の手順の通りである。
熱重量示差熱分析装置を用いて、大気中、昇温速度10℃/分にて、25℃以下から900℃まで昇温して、TG-DTA曲線を測定することにより行なうことができる。
【0111】
(支持体)
本開示に係る二酸化炭素還元電極は、導電性材料を支持する支持体をさらに含むことが好ましい。
支持体は導電性を有することが好ましく、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック、カーボンクロス、カーボンペーパー、グラッシーカーボン、グラファイト、タンタル(Ta)等が挙げられる。
【0112】
(イオン伝導体)
本開示に係る二酸化炭素還元電極は、イオン伝導体を含むことが好ましい。
イオン導電体としては、アイオノマーが挙げられる。
アイオノマーとは、イオンで中和されたポリマーである。
アイオノマーとしては、金属などの陽イオンで中和されたポリマー(カチオン性アイオ
ノマー)又は陰イオンで中和されたポリマー(アニオン性アイオノマー)であることが好ましい。
アニオン性アイオノマーとしては、例えば、Dioxide Materials社製Sustanion、Ionomer innovations社製AEMION、FumaTech社製Fumasep、Orion社製Orionなどが挙げられる。
【0113】
イオン伝導体としては、二酸化炭素還元触媒が担持された導電性材料の質量に対して、10質量%以上200質量%以下であることが好ましい。
【0114】
(その他の成分)
本開示に係る二酸化炭素還元電極は、導電性材料、支持体、及びイオン伝導体以外のその他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、例えば、撥水材、などが挙げられる。撥水材としてはフッ素含有樹脂、ケイ素含有樹脂、シランカップリング剤、ワックスなどが挙げられるが、撥水効果の観点からフッ素含有樹脂であることが好ましく、フッ素含有樹脂としてはポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0115】
(二酸化炭素還元電極の製造方法)
本開示に係る二酸化炭素還元電極は、二酸化炭素還元触媒が担持された導電性材料、必要に応じて、イオン導電体、及びその他の成分を溶媒中に分散した電極用インクを作製し、当該電極用インクを支持体に塗布して乾燥することで製造することが好ましい。
【0116】
(二酸化炭素還元電極の一例)
図1に、本開示に係る二酸化炭素還元電極の一例を示す。
図1は、本開示に係る二酸化炭素還元電極の概略断面図である。
図1において、二酸化炭素還元電極10は、二酸化炭素還元触媒が担持された導電性材料を含む層1を支持体2上に有する。
イオン伝導体以外のその他の成分を含む場合、これらの成分は二酸化炭素還元触媒が担持された導電性材料を含む層1に含まれる。
【0117】
<二酸化炭素還元装置>
本開示に係る二酸化炭素還元装置は、
酸化電極と、
本開示に係る二酸化炭素還元電極と、
前記酸化電極と前記二酸化炭素還元電極とを隔てる膜と、
電解液と、
前記酸化電極及び前記二酸化炭素還元電極に接続された電源と、を備える。
【0118】
(二酸化炭素還元装置の一例)
図2に、本開示に係る二酸化炭素還元装置の一例を示す。
図2において、二酸化炭素還元装置100は、酸化電極11と、二酸化炭素還元電極10と、酸化電極11と二酸化炭素還元電極10とを隔てる膜12と、電解液13と、酸化電極11及び二酸化炭素還元電極10に接続された電源14と、を備える。また、二酸化炭素還元装置100は、これらの部材を備える電解槽15と、反応槽16と、を有する。
ここで二酸化炭素還元電極10は、二酸化炭素還元触媒が担持された導電性材料が電解液13と接するように設置することが好ましい。
【0119】
二酸化炭素還元装置100は、二酸化炭素の還元を行い、エチレンを生成する反応に適用可能である。当該反応に利用する場合、電源14を使用して、二酸化炭素還元電極10から、酸化電極11の向きに電流を流すことが好ましい。そして、反応槽16中に矢印A
の向きに二酸化炭素を流すことが好ましい。反応槽16中に流入した二酸化炭素は二酸化炭素還元電極10中の二酸化炭素還元触媒と接触する。そうすることで、二酸化炭素還元電極10側で、下記反応式1で表される反応が進行し、酸化電極11側では下記反応式2で表される反応が進行する。
反応式1:2CO+8HO+12e→C+12OH
反応式2:12OH→3O+6HO+12e
そして、生成したエチレンは反応槽16から矢印Bの向きに流出する。
【0120】
以下、二酸化炭素還元電極について詳細に説明する。なお、符号については省略する。
【0121】
(酸化電極)
酸化電極は、例えば、白金、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、チタン、カーボン等が挙げられ、白金が好ましい。酸化電極の形状は、例えば、箔状、メッシュ状である。
【0122】
(二酸化炭素還元電極)
二酸化炭素還元電極は、既述の本開示に係る二酸化炭素還元電極が適用される。
【0123】
(膜)
酸化電極と二酸化炭素還元電極とを隔てる膜は、イオン交換膜であることが好ましい。
イオン交換膜としては、陰イオン交換膜であることが好ましい。
イオン交換膜としては、例えば、Dioxide Materials製Sustainion RX37-50 Grade RTが使用可能である。
【0124】
(電解液)
電解液としては、例えば、ナトリウムイオンや、カリウムイオン等の陽イオンと、水酸化物イオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン等の陰イオンと、水と、を含むものが挙げられる。
【0125】
電解液のイオン濃度は、0.01mol/L以上5.0mol/L以下とすることが好ましく、0.5mol/L以上2.0mol/L以下とすることがより好ましい。
【0126】
(電源)
電源は酸化電極及び二酸化炭素還元電極に接続される。
電源は、二酸化炭素還元電極及び酸化電極の間に電流を流すことができるものであれば特に限定されない。
電源としては、例えば、BAS製電気化学アナライザー701C等が使用可能である。
【実施例0127】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0128】
以下、「TMEDA」はN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、「MTBE」はtert-ブチルメチルエーテル、「THF」はテトラヒドロフラン、「OAc」は酢酸アニオン、「DMSO」はジメチルスルホキシド、「PhCHO」はベンズアルデヒド、「PhNHMeB(C 」はN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートを意味する。
NMR測定にはBRUKER社製AV NEO 300MHz NMRスペクトロメーターを用いた。ESI-MS測定にはAgilent社製 6130 LCMSDを用い
た。
【0129】
<<実施例1>>
<二酸化炭素還元触媒の合成>
以下の手順で二酸化炭素還元触媒を合成した。
【0130】
(化合物3の合成)
以下に示す反応式に従って、化合物3を合成した。
【0131】
【化42】
【0132】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、MTBE135mL、4-t-ブチルアニソール63.80g(388mmol)、TMEDA38.69g(333mmol)を滴下し0℃に冷却した。ここにn-ブチルリチウムのヘキサン溶液212.07mL(1.6mol/L、n-ブチルリチウムとして333mmol)を滴下し、45℃まで昇温した後、1.5時間撹拌し、リチオ化反応液を得た。別の反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、室温で無水1,10-フェナントロリン10.00g(55.5mmol)をTHF113mLに懸濁させた。この懸濁液を前記リチオ化反応液に滴下した後、65℃に昇温して還流させながら2時間撹拌してアリール化反応液を得た。室温まで冷却した前記アリール化反応液に20質量%の塩化アンモニウム水溶液100gを滴下した。30分間撹拌して洗浄を行い、水相を除去した後に有機相を減圧濃縮した。別の反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、室温でp-ベンゾキノン12.00g(111mmol)をTHF113mLに溶解させた。この溶液を前記濃縮後の有機相に滴下し、室温で30分撹拌し、化合物2を含む酸化反応液を得た。
【0133】
別の反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、室温で塩化亜鉛11.35g(83.2m
mol)をTHF113mLに懸濁させた。この懸濁液を室温で前記酸化反応液に滴下した。得られた懸濁液を0℃まで冷却した後、4時間撹拌した。その後、0℃でろ過を行い、THFで洗浄を行った後、減圧乾燥することにより化合物3を収率55%で得た。得られた化合物3の同定データを以下に示す。
【0134】
H-NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=1.37(s,18H),3.76(s,6H),6.98(d,J=9.0Hz,2H),7.52(dd,J=9.0Hz,2.4Hz,2H),7.87(d,J=2.4Hz,2H),8.02(d,J=8.4Hz,2H),8.02(s,2H),8.50(d,J=8.4Hz,2H)
【0135】
(化合物4の合成)
以下に示す反応式に従って、化合物4を合成した。
【0136】
【化43】
【0137】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、室温のクロロホルム108mLに8.00g(12.48mmol)の化合物3を加え溶解させた。ここに臭素15.96g(99.85mol)を撹拌しながら滴下し、45℃に昇温した後、6時間撹拌して臭素化反応液を得た。別の反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、室温でチオ硫酸ナトリウム10.39g(99.85mmol)を水160mLに溶解させた。この水溶液を0℃まで冷却した前記臭素化反応液に滴下し、1時間撹拌して洗浄した後、水相を除去した。別の反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、室温で臭化亜鉛2.81g(12.48mmol)をメタノール151mLに溶解させた。この溶液を前記洗浄後の有機相に加えた後、75℃まで昇温して濃縮した。ここにメタノール202mLを加え、75℃で還流させながら1時間撹拌した。これを0℃まで冷却して1時間撹拌した後、ろ過を行い、メタノールで洗浄した後に減圧乾燥することで化合物4を収率88%で得た。得られた化合物4の同定データを以下に示す。
【0138】
H-NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=1.36(s,18H),3.65(s,6H),7.63(d,J=2.4Hz,2H),7.87(s,2H),7.93(d,J=2.4Hz,2H),8.17(d,J=8.1Hz,2H),8.31(d,J=8.1Hz,2H)
【0139】
(化合物6の合成)
以下に示す反応式に従って、化合物6を合成した。
【0140】
【化44】
【0141】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、4.39g(110mmol)の水素化ナトリウムにTHF106mLを加え懸濁させた。これを40℃まで昇温し、ピロール32.67g(487mmol)を20分間かけて滴下し、30分間撹拌し、反応液を得た。別の反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、室温で塩化亜鉛19.96g(146mmol)をTHF137mLに懸濁させた。この懸濁液を上記反応液に滴下し、30分間撹拌した後、室温まで冷却した。ここに32.50g(36.6mmol)の化合物4を加えた。別の反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、室温で酢酸パラジウム0.082g(0.37mmol)と2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)ビフェニル0.219g(0.73mmol)をTHF6.5mLに溶解させ触媒溶液を得た。この触媒溶液を上記反応液に滴下した後、75℃まで昇温し還流させながら6時間撹拌した後、室温まで冷却した。
【0142】
別の反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、室温で塩化アンモニウム86.23gとアンモニア水溶液178.15g(28%、2930mmol)を水217mLに溶解させた。この水溶液を上記反応液に滴下し、室温で30分間撹拌して洗浄し、水相を除去した。得られた有機相に24.8質量%の塩化アンモニウム水溶液216gを滴下し、15分間撹拌して洗浄を行い、水相を除去した。
【0143】
得られた有機相にDMSO79mLを加え、82℃まで昇温し、減圧濃縮によりTHFを除去した。ここに1-ドデカンチオール6.18g(30.5mmol)とナトリウムメトキシドのメタノール溶液7.06g(28%、ナトリウムメトキシドとして36.6mmol)を滴下し、82℃で6.5時間撹拌した。反応液を40℃まで冷却し、MTBE58.6mLを加えた。別の反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、室温で塩化アンモニウム23.50gと酢酸2.93g(48.8mmol)を水86.7mLに溶解させ
た。この水溶液を上記反応液に滴下し、40℃で30分間撹拌して洗浄を行い、水相を除去した。得られた有機相を0℃まで冷却して2時間撹拌した後にろ過を行った。得られた結晶をMTBE、メタノールの順で洗浄し、減圧乾燥することにより化合物6を収率76%で得た。得られた化合物6の同定データを以下に示す。
【0144】
H-NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)=1.40(s,18H),6.25(m,2H),6.44(m,2H),6.74(m,2H),7.84(s,2H),7.89(s,2H),7.92(s,2H),8.35(d,J=8.4Hz,2H),8.46(d,J=8.4Hz,2H),10.61(s,2H),15.88(s,2H)
【0145】
(化合物8の合成)
国際公開第2019-026883号に記載の方法により、以下に示す反応式に従って、化合物8を合成した。
【0146】
【化45】
【0147】
(酸素架橋2核銅錯体1の合成)
以下に示す反応式に従って、酸素架橋2核銅錯体1(即ち、二酸化炭素還元触媒1)を合成した。
【0148】
【化46】
【0149】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、酢酸銅一水和物1.80g(9.02mmol)に予め脱気したメタノール29mLを加え懸濁させた。ここにクロロホルム31mLを加え50℃まで昇温し、酢酸銅溶液とした。別の反応容器を窒素ガス雰囲気とした後、化合物8 2.50g(3.61mmol)とクロロホルム31mLからなる懸濁液を用意した。この懸濁液を上記酢酸銅溶液に滴下した後、55℃に昇温して還流させながら1時間撹拌して酸素架橋2核銅錯体1を含む反応液を得た。この反応液を室温まで冷却した後、ろ過を行った。得られた結晶をメタノールで洗浄し、減圧乾燥することにより酸素架橋2核銅錯体1を収量2.79g、収率95%で得た。得られた酸素架橋2核銅錯体1(二酸化炭素還元触媒)の同定データを以下に示す。ESI-MS測定の結果を下記により確認した。
【0150】
ESI-MS[M‐OAc]:m/z=815.2
【0151】
酸素架橋2核銅錯体1の銅原子間距離は、2.70(Å)であった。
銅原子間距離の算出方法は、後述する。以降の実施例における銅原子間距離の算出方法も同様である。
【0152】
<二酸化炭素還元電極の作製>
(二酸化炭素還元触媒が担持された導電性材料の合成)
反応容器に、137.84mg(0.157mmol)の酸素架橋2核銅錯体1を秤量し、クロロホルム105mLを加え、60℃まで昇温して撹拌と超音波照射を繰り返し行った。酸素架橋2核銅錯体1が溶解したことを確認した後、室温まで冷却して溶液を得た。別の反応容器に、導電性材料として400mgのカーボンブラック(ライオンスペシャリティケミカルズ社製のKetjenBlack EC600JD)を秤量し、ここに上記に上記溶液を滴下して分散液とした。この分散液に15分間超音波を照射することで、二酸化炭素還元触媒が担持された導電性材料を均一に分散させ、カーボンブラックの質量に対して銅原子の含量が5質量%となる懸濁液を得た。PTFEメンブレンフィルターを用いてこの懸濁液のろ過を行った後、減圧乾燥することで二酸化炭素還元触媒が担持された導電性材料を得た。
【0153】
(二酸化炭素還元電極の作製)
スクリュー管に上記二酸化炭素還元触媒が担持された導電性材料の粉末25.00mgと粒径1μmのPTFE微粒子(シグマアルドリッチ製)25.00mgを秤量し、ここにエタノールを2.50mL、イオン伝導体であるアニオン性アイオノマーとしてSustanion XA-9 5質量%エタノール溶液(Dioxide Materials製)を500mg加え、分散液とした。この分散液に5分間超音波を照射し、インクを得た。
支持体としてカーボンペーパー(直径25mm/SIGRACET製GDL36BB)を用い、上記で得られたインク250mgをカーボンペーパーに塗布した後、乾燥させることで実施例1の二酸化炭素還元電極を得た。
【0154】
<二酸化炭素還元装置の作製>
図2に示す二酸化炭素還元装置100と同様にして二酸化炭素還元装置を作製した。
酸化電極11として、白金メッシュを用いた。二酸化炭素還元電極10として実施例1の二酸化炭素還元電極を用いた。膜12としては陰イオン交換膜(Dioxide Materials製Sustainion RX37-50 Grade RT)を用いた。電解液13として1.0M水酸化カリウム水溶液を用いた。電源14としては電気化学測定装置(BAS製電気化学アナライザー701C)を用いた。更に、参照電極としてAg/AgCl参照電極(イーシーフロンティア製)を膜12と二酸化炭素還元電極10と、の間の電解液13中に設置した。
【0155】
<エチレンの製造>
反応槽16の矢印Aの向きに、60℃の水が入った洗気瓶を通して加湿した二酸化炭素ガスを流通させた。ガスの流入はマスフローコントローラー(BROOKS製GF40)を用いて5mL/minとなるよう設定した。
電気化学測定装置を用いて二酸化炭素還元電極10に可逆水素電極(Reversible Hydrogen Electrode, RHE)に対して-2.2Vの定電位を印加することでエチレンの製造を行った。
【0156】
<<実施例2>>
<エチレンの製造>
可逆水素電極(Reversible Hydrogen Electrode, RHE)に対して-3.2Vの定電位を印加したこと以外は、実施例1と同一の手順でエチレンの合成を行った。
【0157】
<<実施例3>>
(酸素架橋2核銅錯体2の合成)
国際公開第2009-084283号に記載の方法により合成した化合物10を用いて、以下に示す反応式に従って、酸素架橋2核銅錯体2(即ち、二酸化炭素還元触媒2)を合成した。
【0158】
【化47】
【0159】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、酢酸銅一水和物0.69g(3.48mmol)に予め脱気したメタノール29mLを加え懸濁させた。ここにクロロホルム31mLを加え50℃まで昇温し、酢酸銅溶液とした。別の反応容器を窒素ガス雰囲気とした後、化合物10 1.0g(1.39mmol)とクロロホルム31mLからなる懸濁液を用意した。この懸濁液を上記酢酸銅溶液に滴下した後、55℃に昇温して還流させながら1時間撹拌して酸素架橋2核銅錯体2を含む反応液を得た。この反応液を室温まで冷却した後、ろ過を行った。得られた結晶をメタノールで洗浄し、減圧乾燥することにより酸素架橋2核銅錯体2を収量1.25g、収率98%で得た。得られた酸素架橋2核銅錯体2(二酸化炭素還元触媒)の同定データを以下に示す。ESI-MS測定の結果を下記により確認した。
【0160】
ESI-MS[M‐OAc]:m/z=841.17
【0161】
酸素架橋2核銅錯体2の銅原子間距離は、2.73(Å)であった。
【0162】
<二酸化炭素還元電極の作製>
酸素架橋2核銅錯体1の代わりに酸素架橋2核銅錯体2を使用したこと以外は実施例1と同様の手順により実施例3の二酸化炭素還元電極を得た。
【0163】
<二酸化炭素還元装置の作製>
実施例1の二酸化炭素還元電極の代わりに実施例3の二酸化炭素還元電極を使用したこと以外は実施例1と同一の手順で二酸化炭素還元装置を得た。
【0164】
<エチレンの製造>
実施例1の二酸化炭素還元装置の代わりに実施例3の二酸化炭素還元装置を使用したこと以外は実施例2と同一の手順でエチレンの合成を行った。
【0165】
<<実施例4>>
(酸素架橋2核銅錯体3の合成)
国際公開第2009-084283号に記載の方法により合成した化合物11を用いて、以下に示す反応式に従って、酸素架橋2核銅錯体3(即ち、二酸化炭素還元触媒3)を合成した。
【0166】
【化48】
【0167】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、酢酸銅一水和物0.64g(3.19mmol)に予め脱気したメタノール29mLを加え懸濁させた。ここにクロロホルム31mLを
加え50℃まで昇温し、酢酸銅溶液とした。別の反応容器を窒素ガス雰囲気とした後、化合物11 1.0g(1.28mmol)とクロロホルム31mLからなる懸濁液を用意した。この懸濁液を上記酢酸銅溶液に滴下した後、55℃に昇温して還流させながら1時間撹拌して酸素架橋2核銅錯体3を含む反応液を得た。この反応液を室温まで冷却した後、ろ過を行った。得られた結晶をメタノールで洗浄し、減圧乾燥することにより酸素架橋2核銅錯体3を収量1.23g、収率42%で得た。得られた酸素架橋2核銅錯体3(二酸化炭素還元触媒3)の同定データを以下に示す。ESI-MS測定の結果を下記により確認した。
【0168】
ESI-MS[M+H]:m/z=906.1
【0169】
酸素架橋2核銅錯体3の銅原子間距離は、2.69(Å)であった。
【0170】
<二酸化炭素還元電極の作製>
酸素架橋2核銅錯体1の代わりに酸素架橋2核銅錯体3を使用したこと以外は実施例1と同様の手順により実施例4の二酸化炭素還元電極を得た。
【0171】
<二酸化炭素還元装置の作製>
実施例1の二酸化炭素還元電極の代わりに実施例4の二酸化炭素還元電極を使用したこと以外は実施例1と同一の手順で二酸化炭素還元装置を得た。
【0172】
<エチレンの製造>
実施例1の二酸化炭素還元装置の代わりに実施例4の二酸化炭素還元装置を使用したこと以外は実施例2と同一の手順でエチレンの合成を行った。
【0173】
<<実施例5>>
(酸素架橋2核銅錯体4の合成)
国際公開第2009-084283号に記載の方法により合成した化合物12を用いて、以下に示す反応式に従って、酸素架橋2核銅錯体4(即ち、二酸化炭素還元触媒4)を合成した。
【0174】
【化49】
【0175】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、酢酸銅一水和物0.66g(3.29mmol)に予め脱気したメタノール29mLを加え懸濁させた。ここにクロロホルム31mLを加え50℃まで昇温し、酢酸銅溶液とした。別の反応容器を窒素ガス雰囲気とした後、化合物12 1.0g(1.31mmol)とクロロホルム31mLからなる懸濁液を用意した。この懸濁液を上記酢酸銅溶液に滴下した後、55℃に昇温して還流させながら1時
間撹拌して酸素架橋2核銅錯体4を含む反応液を得た。この反応液を室温まで冷却した後、ろ過を行った。得られた結晶をメタノールで洗浄し、減圧乾燥することにより酸素架橋2核銅錯体4を収量1.24g、収率100%で得た。得られた酸素架橋2核銅錯体4(二酸化炭素還元触媒)の同定データを以下に示す。ESI-MS測定の結果を下記により確認した。
【0176】
ESI-MS[M‐OAc]:m/z=883.16
【0177】
酸素架橋2核銅錯体4の銅原子間距離は、2.73(Å)であった。
【0178】
<二酸化炭素還元電極の作製>
酸素架橋2核銅錯体1の代わりに酸素架橋2核銅錯体4を使用したこと以外は実施例1と同様の手順により実施例5の二酸化炭素還元電極を得た。
【0179】
<二酸化炭素還元装置の作製>
実施例1の二酸化炭素還元電極の代わりに実施例5の二酸化炭素還元電極を使用したこと以外は実施例1と同一の手順で二酸化炭素還元装置を得た。
【0180】
<エチレンの製造>
実施例1の二酸化炭素還元装置の代わりに実施例5の二酸化炭素還元装置を使用したこと以外は実施例2と同一の手順でエチレンの合成を行った。
【0181】
<<実施例6>>
(化合物13の合成)
以下に示す反応式に従って、化合物13を合成した。
【0182】
【化50】
【0183】
窒素雰囲気下、脱水トルエン92ml、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフエニルボラート231mg(0.29mmol)を加え、回転子を用いて、得られた溶液を撹拌しながら80℃になるまで加熱した。この溶液へアルデヒド 1.49g(9.06mmol)と、化合物6 5.0g(8.24mmol)と、トルエン12 mlとの混合液を滴下した。3時間撹拌後放冷し、反応液の温度を徐々に室温に合わせた。
【0184】
前記反応液に、ベンゾキノン 0.98g(9.06mmol)をTHF 11mlに溶解させた溶解液を滴下した。反応終了確認後、得られた反応液をろ過し、目的物である化合物13を収量5.49g、収率99%で得た。得られた化合物13の同定データを以下に示す。ESI-MS測定の結果を下記により確認した。
【0185】
ESI-MS[M+H]:m/z=751.3
【0186】
(酸素架橋2核銅錯体5の合成)
以下に示す反応式に従って、酸素架橋2核銅錯体5(即ち、二酸化炭素還元触媒5)を合成した。
【0187】
【化51】
【0188】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、酢酸銅一水和物0.67g(3.33mmol)に予め脱気したメタノール29mLを加え懸濁させた。ここにクロロホルム31mLを加え50℃まで昇温し、酢酸銅溶液とした。別の反応容器を窒素ガス雰囲気とした後、化合物13 1.0g(1.33mmol)とクロロホルム31mLからなる懸濁液を用意した。この懸濁液を上記酢酸銅溶液に滴下した後、55℃に昇温して還流させながら1時間撹拌して酸素架橋2核銅錯体5を含む反応液を得た。この反応液を室温まで冷却した後、ろ過を行った。得られた結晶をメタノールで洗浄し、減圧乾燥することにより酸素架橋2核銅錯体5を収量1.16g、収率93%で得た。得られた酸素架橋2核銅錯体5(二酸化炭素還元触媒5)の同定データを以下に示す。ESI-MS測定の結果を下記により確認した。
【0189】
ESI-MS[M‐OAc]:m/z=873.16
【0190】
酸素架橋2核銅錯体5の銅原子間距離は、2.73(Å)であった。
【0191】
<二酸化炭素還元電極の作製>
酸素架橋2核銅錯体1の代わりに酸素架橋2核銅錯体5を使用したこと以外は実施例1と同様の手順により実施例6の二酸化炭素還元電極を得た。
【0192】
<二酸化炭素還元装置の作製>
実施例1の二酸化炭素還元電極の代わりに実施例6の二酸化炭素還元電極を使用したこと以外は実施例1と同一の手順で二酸化炭素還元装置を得た。
【0193】
<エチレンの製造>
実施例1の二酸化炭素還元装置の代わりに実施例6の二酸化炭素還元装置を使用したこと以外は実施例2と同一の手順でエチレンの合成を行った。
【0194】
<<実施例7>>
(化合物14の合成)
以下に示す反応式に従って、化合物14を合成した。
【0195】
【化52】
【0196】
窒素雰囲気下、脱水トルエン92ml、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフエニルボラート231mg(0.29mmol)を加え、回転子を用いて、得られた溶液を撹拌しながら80℃になるまで加熱した。この溶液へアルデヒド 2.09g(9.06mmol)と、化合物6 5.0g(8.24mmol)と、トルエン12mlとの混合液を滴下した。3時間撹拌後放冷し、反応液の温度を徐々に室温に合わせた。
【0197】
前記反応液に、ベンゾキノン 0.98g(9.06 mmol)をTHF 11mlに溶解させた溶解液を滴下した。反応終了確認後、得られた反応液をろ過し、目的物である化合物14を収量5.89g、収率99%で得た。得られた化合物14の同定データを以下に示す。ESI-MS測定の結果を下記により確認した。
【0198】
ESI-MS[M+H]:m/z=817.4
【0199】
(酸素架橋2核銅錯体6の合成)
以下に示す反応式に従って、酸素架橋2核銅錯体6(即ち、二酸化炭素還元触媒6)を合成した。
【0200】
【化53】
【0201】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、酢酸銅一水和物0.61g(3.06mmol)に予め脱気したメタノール29mLを加え懸濁させた。ここにクロロホルム31mLを加え50℃まで昇温し、酢酸銅溶液とした。別の反応容器を窒素ガス雰囲気とした後、化合物14 1.0g(1.22mmol)とクロロホルム31mLからなる懸濁液を用意した。この懸濁液を上記酢酸銅溶液に滴下した後、55℃に昇温して還流させながら1時
間撹拌して酸素架橋2核銅錯体6を含む反応液を得た。この反応液を室温まで冷却した後、ろ過を行った。得られた結晶をメタノールで洗浄し、減圧乾燥することにより酸素架橋2核銅錯体6を収量1.08g、収率88%で得た。得られた酸素架橋2核銅錯体6(二酸化炭素還元触媒6)の同定データを以下に示す。ESI-MS測定の結果を下記により確認した。
【0202】
ESI-MS[M‐OAc]:m/z=941.20
【0203】
酸素架橋2核銅錯体6の銅原子間距離は、2.7(Å)であった。
【0204】
<二酸化炭素還元電極の作製>
酸素架橋2核銅錯体1の代わりに酸素架橋2核銅錯体6を使用したこと以外は実施例1と同様の手順により実施例7の二酸化炭素還元電極を得た。
【0205】
<二酸化炭素還元装置の作製>
実施例1の二酸化炭素還元電極の代わりに実施例7の二酸化炭素還元電極を使用したこと以外は実施例1と同一の手順で二酸化炭素還元装置を得た。
【0206】
<エチレンの製造>
実施例1の二酸化炭素還元装置の代わりに実施例7の二酸化炭素還元装置を使用したこと以外は実施例2と同一の手順でエチレンの合成を行った。
【0207】
<<実施例8>>
(化合物15の合成)
以下に示す反応式に従って、化合物15を合成した。
【0208】
【化54】
【0209】
窒素雰囲気下、脱水トルエン92ml、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフエニルボラート231mg(0.29mmol)を加え、回転子を用いて、得られた溶液を撹拌しながら80℃になるまで加熱した。この溶液へアルデヒド1.37g(9.36mmol)と、化合物6 5.0g(8.24mmol)と、トルエン12mlとの混合液を滴下した。3時間撹拌後放冷し、反応液の温度を徐々に室温に合わせた。
【0210】
前記反応液に、ベンゾキノン 0.98g(9.06mmol)をTHF 11mlに溶解させた溶解液を滴下した。反応終了確認後、得られた反応液をろ過し、目的物である化合物15を収量5.59g、収率92%で得た。得られた化合物15の同定データを以下に示す。ESI-MS測定の結果を下記により確認した。
【0211】
ESI-MS[M+H]:m/z=738.3
【0212】
(酸素架橋2核銅錯体7の合成)
以下に示す反応式に従って、酸素架橋2核銅錯体7(即ち、二酸化炭素還元触媒7)を合成した。
【0213】
【化55】
【0214】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、酢酸銅一水和物0.68g(3.39mmol)に予め脱気したメタノール29mLを加え懸濁させた。ここにクロロホルム31mLを加え50℃まで昇温し、酢酸銅溶液とした。別の反応容器を窒素ガス雰囲気とした後、化合物15 1.0g(1.36mmol)とクロロホルム31mLからなる懸濁液を用意した。この懸濁液を上記酢酸銅溶液に滴下した後、55℃に昇温して還流させながら1時間撹拌して酸素架橋2核銅錯体7を含む反応液を得た。この反応液を室温まで冷却した後、ろ過を行った。得られた結晶をメタノールで洗浄し、減圧乾燥することにより酸素架橋2核銅錯体7を収量1.08g、収率88%で得た。得られた酸素架橋2核銅錯体7(二酸化炭素還元触媒7)の同定データを以下に示す。ESI-MS測定の結果を下記により確認した。
【0215】
ESI-MS[M‐OAc]:m/z=860.1
【0216】
酸素架橋2核銅錯体7の銅原子間距離は、2.76(Å)であった。
【0217】
<二酸化炭素還元電極の作製>
酸素架橋2核銅錯体1の代わりに酸素架橋2核銅錯体7を使用したこと以外は実施例1と同様の手順により実施例8の二酸化炭素還元電極を得た。
【0218】
<二酸化炭素還元装置の作製>
実施例1の二酸化炭素還元電極の代わりに実施例8の二酸化炭素還元電極を使用したこと以外は実施例1と同一の手順で二酸化炭素還元装置を得た。
【0219】
<エチレンの製造>
実施例1の二酸化炭素還元装置の代わりに実施例8の二酸化炭素還元装置を使用したこと以外は実施例2と同一の手順でエチレンの合成を行った。
【0220】
<<実施例9>>
(酸素架橋2核銅錯体8の合成)
Tetrahedron,1999,55,8377.に記載の方法により合成した化合物17を用いて、以下に示す反応式に従って、酸素架橋2核銅錯体8(即ち、二酸化炭素還元触媒8)を合成した。
【0221】
【化56】
【0222】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、酢酸銅一水和物0.21g(1.03mmol)に予め脱気したメタノール2.9mLを加え懸濁させた。ここにクロロホルム3.1mLを加え50℃まで昇温し、酢酸銅溶液とした。別の反応容器を窒素ガス雰囲気とした後、化合物17 0.25g(0.41mmol)とクロロホルム10mLからなる懸濁液を用意した。この懸濁液を上記酢酸銅溶液に滴下した後、55℃に昇温して還流させながら1時間撹拌して酸素架橋2核銅錯体8を含む反応液を得た。この反応液を室温まで冷却した後、ろ過を行った。得られた結晶をメタノールで洗浄し、減圧乾燥することにより酸素架橋2核銅錯体8を収量0.11g、収率33%で得た。得られた酸素架橋2核銅錯体8(二酸化炭素還元触媒8)の同定データを以下に示す。ESI-MS測定の結果を下記により確認した。
【0223】
ESI-MS[M-Cl]:m/z=763.1
【0224】
酸素架橋2核銅錯体8の銅原子間距離は、2.75(Å)であった。
【0225】
<二酸化炭素還元電極の作製>
酸素架橋2核銅錯体1の代わりに酸素架橋2核銅錯体8を使用したこと以外は実施例1と同様の手順により実施例9の二酸化炭素還元電極を得た。
【0226】
<二酸化炭素還元装置の作製>
実施例1の二酸化炭素還元電極の代わりに実施例9の二酸化炭素還元電極を使用したこと以外は実施例1と同一の手順で二酸化炭素還元装置を得た。
【0227】
<エチレンの製造>
実施例1の二酸化炭素還元装置の代わりに実施例9の二酸化炭素還元装置を使用したこと以外は実施例2と同一の手順でエチレンの合成を行った。
【0228】
<<実施例10>>
(酸素架橋2核銅錯体9の合成)
特開2009-173627号公報に記載の方法により合成した化合物18を用いて以下に示す反応式に従って、酸素架橋2核銅錯体9(即ち、二酸化炭素還元触媒9)を合成した。
【0229】
【化57】
【0230】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、酢酸銅一水和物0.68g(3.41mmol)に予め脱気したメタノール12mLを加え懸濁させた。ここにクロロホルム11mLを加え50℃まで昇温し、酢酸銅溶液とした。別の反応容器を窒素ガス雰囲気とした後、化合物18 1.0g(1.36mmol)とクロロホルム10mLからなる懸濁液を用意した。この懸濁液を上記酢酸銅溶液に滴下した後、55℃に昇温して還流させながら1時間撹拌して酸素架橋2核銅錯体9を含む反応液を得た。この反応液を室温まで冷却した後、ろ過を行った。得られた結晶をメタノールで洗浄し、減圧乾燥することにより酸素架橋2核銅錯体9を収量0.93g、収率80%で得た。得られた酸素架橋2核銅錯体9(二酸化炭素還元触媒10)の同定データを以下に示す。ESI-MS測定の結果を下記により確認した。
【0231】
ESI-MS[M+H]:m/z=855.2
【0232】
<二酸化炭素還元電極の作製>
酸素架橋2核銅錯体1の代わりに酸素架橋2核銅錯体9を使用したこと以外は実施例1と同様の手順により実施例10の二酸化炭素還元電極を得た。
【0233】
<二酸化炭素還元装置の作製>
実施例1の二酸化炭素還元電極の代わりに実施例10の二酸化炭素還元電極を使用したこと以外は実施例1と同一の手順で二酸化炭素還元装置を得た。
【0234】
<エチレンの製造>
実施例1の二酸化炭素還元装置の代わりに実施例10の二酸化炭素還元装置を使用したこと以外は実施例2と同一の手順でエチレンの合成を行った。
【0235】
<<実施例11>>
(酸素架橋2核銅錯体10の合成)
Tetrahedron,1999,55,8377.に記載の方法により合成した化合物17を用いて、以下に示す反応式に従って、酸素架橋2核銅錯体10(即ち、二酸化炭素還元触媒10)を合成した。
【0236】
【化58】
【0237】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、酢酸銅一水和物0.08g(0.38mmol)に予め脱気したメタノール5.0mLを加え懸濁させた。ここにクロロホルム5.0mLを加え50℃まで昇温し、酢酸銅溶液とした。別の反応容器を窒素ガス雰囲気とした後、化合物17 0.1g(0.19mmol)と4,5-ジメチル-1,2-フェニレンジアミン 0.03g(0.19mmol)とクロロホルム10mLからなる懸濁液を用意した。この懸濁液を上記酢酸銅溶液に滴下した後、65℃に昇温して還流させながら3時間撹拌して酸素架橋2核銅錯体9を含む反応液を得た。この反応液を室温まで冷却した後、溶媒を留去した。得られた固体をアセトンで洗浄しながらろ過によって取得し、減圧乾燥することにより酸素架橋2核銅錯体10を収量0.13g、収率85%で得た。得られた酸素架橋2核銅錯体10(二酸化炭素還元触媒10)の同定データを以下に示す。ESI-MS測定の結果を下記により確認した。
【0238】
ESI-MS[M‐OAc]:m/z=815.2
【0239】
酸素架橋2核銅錯体10の銅原子間距離は、2.71(Å)であった。
【0240】
<二酸化炭素還元電極の作製>
酸素架橋2核銅錯体1の代わりに酸素架橋2核銅錯体10を使用したこと以外は実施例1と同様の手順により実施例11の二酸化炭素還元電極を得た。
【0241】
<二酸化炭素還元装置の作製>
実施例1の二酸化炭素還元電極の代わりに実施例11の二酸化炭素還元電極を使用したこと以外は実施例1と同一の手順で二酸化炭素還元装置を得た。
【0242】
<エチレンの製造>
実施例1の二酸化炭素還元装置の代わりに実施例11の二酸化炭素還元装置を使用したこと以外は実施例2と同一の手順でエチレンの合成を行った。
【0243】
<<実施例12>>
(酸素架橋2核銅錯体11の合成)
Tetrahedron,1999,55,8377.に記載の方法により合成した化合物17を用いて、以下に示す反応式に従って、酸素架橋2核銅錯体11(即ち、二酸化炭素還元触媒11)を合成した。
【0244】
【化59】
【0245】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、酢酸銅一水和物0.08g(0.38mmol)に予め脱気したメタノール5.0mLを加え懸濁させた。ここにクロロホルム5.0mLを加え50℃まで昇温し、酢酸銅溶液とした。別の反応容器を窒素ガス雰囲気とした後、化合物17 0.1g(0.19mmol)と2,3-ナフタレンジアミン 0.03g(0.19mmol)とクロロホルム10mLからなる懸濁液を用意した。この懸濁液を上記酢酸銅溶液に滴下した後、65℃に昇温して還流させながら3時間撹拌して酸素架橋2核銅錯体10を含む反応液を得た。この反応液を室温まで冷却した後、溶媒を留去した。得られた固体をアセトンで洗浄しながらろ過によって取得し、減圧乾燥することにより酸素架橋2核銅錯体11を収量0.15g、収率95%で得た。得られた酸素架橋2核銅錯体11(二酸化炭素還元触媒11)の同定データを以下に示す。ESI-MS測定の結果を下記により確認した。
【0246】
ESI-MS[M‐OAc]:m/z=837.2
【0247】
酸素架橋2核銅錯体11の銅原子間距離は、2.71(Å)であった。
【0248】
<二酸化炭素還元電極の作製>
酸素架橋2核銅錯体1の代わりに酸素架橋2核銅錯体11を使用したこと以外は実施例1と同様の手順により実施例12の二酸化炭素還元電極を得た。
【0249】
<二酸化炭素還元装置の作製>
実施例1の二酸化炭素還元電極の代わりに実施例12の二酸化炭素還元電極を使用したこと以外は実施例1と同一の手順で二酸化炭素還元装置を得た。
【0250】
<エチレンの製造>
実施例1の二酸化炭素還元装置の代わりに実施例12の二酸化炭素還元装置を使用したこと以外は実施例2と同一の手順でエチレンの合成を行った。
【0251】
<<実施例13>>
(酸素架橋2核銅錯体12の合成)
Tetrahedron,1999,55,8377.に記載の方法により合成した化合物17を用いて、以下に示す反応式に従って、酸素架橋2核銅錯体12(即ち、二酸化炭素還元触媒12)を合成した。
【0252】
【化60】
【0253】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、酢酸銅一水和物0.08g(0.38mmol)に予め脱気したメタノール5.0mLを加え懸濁させた。ここにクロロホルム5.0mLを加え50℃まで昇温し、酢酸銅溶液とした。別の反応容器を窒素ガス雰囲気とした後、化合物17 0.1g(0.19mmol)と4-tert-ブチルベンゼン-1,2-ジアミン 0.03g(0.19mmol)とクロロホルム10mLからなる懸濁液を用意した。この懸濁液を上記酢酸銅溶液に滴下した後、65℃に昇温して還流させながら3時間撹拌して酸素架橋2核銅錯体11を含む反応液を得た。この反応液を室温まで冷却した後、溶媒を留去した。得られた固体をアセトンで洗浄しながらろ過によって取得し、減圧乾燥することにより酸素架橋2核銅錯体12を収量0.15g、収率89%で得た。得られた酸素架橋2核銅錯体12(二酸化炭素還元触媒12)の同定データを以下に示す。ESI-MS測定の結果を下記により確認した。
【0254】
ESI-MS[M+H]:m/z=903.3
【0255】
酸素架橋2核銅錯体12の銅原子間距離は、2.71(Å)であった。
【0256】
<二酸化炭素還元電極の作製>
酸素架橋2核銅錯体1の代わりに酸素架橋2核銅錯体12を使用したこと以外は実施例1と同様の手順により実施例12の二酸化炭素還元電極を得た。
【0257】
<二酸化炭素還元装置の作製>
実施例1の二酸化炭素還元電極の代わりに実施例12の二酸化炭素還元電極を使用したこと以外は実施例1と同一の手順で二酸化炭素還元装置を得た。
【0258】
<エチレンの製造>
実施例1の二酸化炭素還元装置の代わりに実施例12の二酸化炭素還元装置を使用したこと以外は実施例2と同一の手順でエチレンの合成を行った。
【0259】
<<実施例14>>
(化合物20の合成)
国際公開第2017-073467号に記載の方法により合成した化合物19を用いて、以下に示す反応式に従って、化合物20を合成した。
【0260】
【化61】
【0261】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物19 2.5g(5.2mmol)に予め脱気したDMSO 28mLを加え溶解させた。ここにドデカンチオール5.2g(26.0mmol)、ナトリウムメトキシドメタノール溶液 6.0g(31.2mmol)を加え80℃まで昇温し8時間撹拌した。この反応液を室温まで放冷した後に1M塩酸で反応液を中和し、クロロホルムで抽出した。硫酸マグネシウムで有機層の脱水を行い、ロータリーエバポレーターで濃縮することで溶媒を留去した。得られた粗生成物に対してノルマルヘプタンを加え、析出した固体をノルマルヘプタンで洗浄しながらろ過によって取得し、減圧乾燥することにより化合物20を収量1.0g、収率42%で得た。得られた化合物20の同定データを以下に示す。1H NMR測定の結果を下記により確認した。
【0262】
1H NMR(CDCl,400MHz):13.86(s, 2H), 8.09(m,6H), 7.90(d,2H), 7.42(dd, 2H), 6.99(d, 2H), 1,39(s, 18H)
【0263】
(化合物21の合成)
以下に示す反応式に従って、化合物21を合成した。
【0264】
【化62】
【0265】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物20 0.6g(1.3mmol)、ヘキサメチレンテトラミン(HMTA)0.45g(3.18mmol)、トリフルオロ酢酸(TFA)6.6mLを加え、撹拌しながら100℃に昇温し、8時間保温した。この反応液を60℃まで冷却した後に30%硫酸水溶液20mLとクロロホルム20mLを加え、保温した状態で1時間撹拌した。分液により有機層を抜き出し、硫酸マグネシウムで脱水を行い、ロータリーエバポレーターで濃縮することで溶媒を留去した。得られた粗生成物に対してメタノールを加え、析出した固体をメタノールで洗浄しながらろ過によって取得し、減圧乾燥することにより化合物21を収量0.32g、収率47%で得た。得られた化合物21の同定データを以下に示す。1H NMR測定の結果を下記により確認した。
【0266】
1H NMR(CDCl,400MHz):10.46(s, 2H), 8.13(m,6H), 8.02(m,2H), 7.83(d, 2H), 1,31(s, 18H)
【0267】
(酸素架橋2核銅錯体13の合成)
化合物21を用いて、以下に示す反応式に従って、酸素架橋2核銅錯体13(即ち、二酸化炭素還元触媒13)を合成した。
【0268】
【化63】
【0269】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、酢酸銅一水和物0.08g(0.39mmol)に予め脱気したメタノール5.0mLを加え懸濁させた。ここにクロロホルム5.0mLを加え50℃まで昇温し、酢酸銅溶液とした。別の反応容器を窒素ガス雰囲気とした後、化合物21 0.1g(0.197mmol)と1,2-フェニレンジアミン 0.02g(0.197mmol)とクロロホルム10mLからなる懸濁液を用意した。この懸濁液を上記酢酸銅溶液に滴下した後、65℃に昇温して還流させながら3時間撹拌して酸素架橋2核銅錯体12を含む反応液を得た。この反応液を室温まで冷却した後、溶媒を留去した。得られた固体をアセトンで洗浄しながらろ過によって取得し、減圧乾燥することにより酸素架橋2核銅錯体13を収量0.14g、収率84%で得た。得られた酸素架橋2核銅錯体13(二酸化炭素還元触媒13)の同定データを以下に示す。ESI-MS測定の結果を下記により確認した。
【0270】
ESI-MS[M-OAc]:m/z=765.2
【0271】
酸素架橋2核銅錯体13の銅原子間距離は、2.75(Å)であった。
【0272】
<二酸化炭素還元電極の作製>
酸素架橋2核銅錯体1の代わりに酸素架橋2核銅錯体13を使用したこと以外は実施例1と同様の手順により実施例14の二酸化炭素還元電極を得た。
【0273】
<二酸化炭素還元装置の作製>
実施例1の二酸化炭素還元電極の代わりに実施例14の二酸化炭素還元電極を使用したこと以外は実施例1と同一の手順で二酸化炭素還元装置を得た。
【0274】
<エチレンの製造>
実施例1の二酸化炭素還元装置の代わりに実施例14の二酸化炭素還元装置を使用したこと以外は実施例2と同一の手順でエチレンの合成を行った。
【0275】
<二酸化炭素還元電極の作製>
酸素架橋2核銅錯体1の代わりに酸素架橋2核銅錯体13を使用したこと以外は実施例1と同様の手順により実施例14の二酸化炭素還元電極を得た。
【0276】
<二酸化炭素還元装置の作製>
実施例1の二酸化炭素還元電極の代わりに実施例14の二酸化炭素還元電極を使用したこと以外は実施例1と同一の手順で二酸化炭素還元装置を得た。
【0277】
<エチレンの製造>
実施例1の二酸化炭素還元装置の代わりに実施例14の二酸化炭素還元装置を使用したこと以外は実施例2と同一の手順でエチレンの合成を行った。
【0278】
<<実施例15>>
(化合物22の合成)
以下に示す反応式に従って、化合物22を合成した。
【0279】
【化64】
【0280】
窒素雰囲気下、脱水トルエン37ml、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフエニルボラート264mg(0.33mmol)を加え、回転子を用いて、得られた溶液を撹拌しながら80℃になるまで加熱した。この溶液へアルデヒド 0.60g(3.63mmol)と、化合物6 2.0g(3.30mmol)と、トルエン5 mlとの混合液を滴下した。3時間撹拌後放冷し、反応液の温度を徐々に室温に合わせた。
【0281】
前記反応液に、ベンゾキノン 0.39g(3.63mmol)をTHF 5mlに溶解させた溶解液を滴下した。反応終了確認後、得られた反応液をろ過し、目的物である化合物23を収量2.27g、収率91%で得た。得られた化合物22の同定データを以下に示す。ESI-MS測定の結果を下記により確認した。
【0282】
ESI-MS[M+H]:m/z=753.3
【0283】
(酸素架橋2核銅錯体14の合成)
以下に示す反応式に従って、酸素架橋2核銅錯体14(即ち、二酸化炭素還元触媒14)を合成した。
【0284】
【化65】
【0285】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、酢酸銅一水和物0.29g(1.46mmol)に予め脱気したメタノール6mLを加え懸濁させた。ここにクロロホルム6mLを加え50℃まで昇温し、酢酸銅溶液とした。別の反応容器を窒素ガス雰囲気とした後、化合物23 0.5g(0.66mmol)とクロロホルム10mLからなる懸濁液を用意した。この懸濁液を上記酢酸銅溶液に滴下した後、55℃に昇温して還流させながら1時間撹拌して酸素架橋2核銅錯体5を含む反応液を得た。この反応液を室温まで冷却した後、ろ過を行った。得られた結晶を減圧乾燥することにより酸素架橋2核銅錯体14を収量0.4g、収率64%で得た。得られた酸素架橋2核銅錯体14(二酸化炭素還元触媒14)の同定データを以下に示す。ESI-MS測定の結果を下記により確認した。
【0286】
ESI-MS[M‐OAc]:m/z=875.2
【0287】
酸素架橋2核銅錯体14の銅原子間距離は、2.67(Å)であった。
【0288】
<二酸化炭素還元電極の作製>
酸素架橋2核銅錯体1の代わりに酸素架橋2核銅錯体14を使用したこと以外は実施例1と同様の手順により実施例15の二酸化炭素還元電極を得た。
【0289】
<二酸化炭素還元装置の作製>
実施例1の二酸化炭素還元電極の代わりに実施例15の二酸化炭素還元電極を使用したこと以外は実施例1と同一の手順で二酸化炭素還元装置を得た。
【0290】
<エチレンの製造>
実施例1の二酸化炭素還元装置の代わりに実施例15の二酸化炭素還元装置を使用したこと以外は実施例2と同一の手順でエチレンの合成を行った。
【0291】
<<実施例16>>
(化合物23の合成)
以下に示す反応式に従って、化合物23を合成した。
【0292】
【化66】
【0293】
窒素雰囲気下、脱水クロロホルム10ml、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフエニルボラート66mg(0.08mmol)を加え、回転子を用いて、得られた溶液を撹拌しながら80℃になるまで加熱した。この溶液へアルデヒド 0.09g(0.37mmol)と、化合物6 0.5g(0.82mmol)と、クロロホルム12mlとの混合液を滴下した。3時間撹拌後放冷し、反応液の温度を徐々に室温に合わせた。
【0294】
前記反応液に、ベンゾキノン 0.1g(0.906 mmol)をTHF 1mlに溶解させた溶解液を滴下した。反応終了確認後、得られた反応液をろ過し、目的物である化合物23を収量0.51g、収率99%で得た。得られた化合物23の同定データを以下に示す。ESI-MS測定の結果を下記により確認した。
【0295】
ESI-MS[M+H]:m/z=1407.2
【0296】
(酸素架橋4核銅錯体1の合成)
以下に示す反応式に従って、酸素架橋4核銅錯体1(即ち、二酸化炭素還元触媒15)を合成した。
【0297】
【化67】
【0298】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物23 0.2g(0.142mmol)、酢酸銅一水和物0.13g(0.64mmol)に予め脱気したジメチルホルムアミド5mLを加え100℃まで昇温し、3時間撹拌した。その後反応液を130℃まで昇温し6時間撹拌した。この反応液を室温まで冷却した後、クロロホルムと水を加え分液した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後にろ過を行い、ろ液にヘプタンを加えることで酸素架橋4核銅錯体1を析出させ、ろ取した。収量0.25g、収率99%で得た。得られた酸素架橋4核銅錯体1(二酸化炭素還元触媒15)の同定データを以下に示す。ESI-MS測定の結果を下記により確認した。
【0299】
ESI-MS[M-OAc]:m/z=1654.3
【0300】
酸素架橋4核銅錯体1の銅原子間距離は、2.70(Å)および2.69(Å)であった。
【0301】
<二酸化炭素還元電極の作製>
酸素架橋2核銅錯体1の代わりに酸素架橋4核銅錯体1を使用したこと以外は実施例1と同様の手順により実施例16の二酸化炭素還元電極を得た。
【0302】
<二酸化炭素還元装置の作製>
実施例1の二酸化炭素還元電極の代わりに実施例16の二酸化炭素還元電極を使用したこと以外は実施例1と同一の手順で二酸化炭素還元装置を得た。
【0303】
<エチレンの製造>
実施例1の二酸化炭素還元装置の代わりに実施例16の二酸化炭素還元装置を使用したこと以外は実施例2と同一の手順でエチレンの合成を行った。
【0304】
<<比較例1>>
<二酸化炭素還元触媒の合成>
特開2021-109157号に記載の方法により、以下に示す反応式に従って、ハロゲン架橋2核銅錯体1を合成した。下記反応式中「Ph」はフェニル基を意味する。
【0305】
【化68】
【0306】
<二酸化炭素還元電極の作製>
反応容器に、105.12mg(0.079mmol)のハロゲン架橋2核銅錯体1を秤量し、HO52mLとメタノール33mLを加え、撹拌と超音波照射を繰り返し行うことで分散液とした。別の反応容器に、導電性材料として200mgのカーボンブラック(ライオンスペシャリティケミカルズ社製のKetjenBlack EC600JD)を秤量し、ここに上記の分散液を滴下することにより新たに分散液を得た。この分散液に15分間超音波を照射することで、二酸化炭素還元触媒が担持された導電性材料を均一に分散させ、カーボンブラックの質量に対して銅原子の含量が5質量%となる懸濁液を得た。以降の操作については、実施例1と同様の手順により比較例1の二酸化炭素還元電極を得た。
【0307】
ハロゲン架橋2核銅錯体1の銅原子間距離は、2.85(Å)であった。
【0308】
<二酸化炭素還元装置の作製>
実施例1の二酸化炭素還元電極の代わりに比較例1の二酸化炭素還元電極を使用したこと以外は実施例1と同一の手順で二酸化炭素還元装置を得た。
【0309】
<エチレンの製造>
実施例1の二酸化炭素還元装置の代わりに比較例1の二酸化炭素還元装置を使用したこと以外は実施例1と同一の手順でエチレンの合成を行った。
【0310】
<<比較例2>>
<二酸化炭素還元触媒の準備>
銅テトラフェニルポルフィリン(東京化成製)212.83mg(0.3147mmmol)を準備して、これを比較例2の二酸化炭素還元触媒とした。
【0311】
<二酸化炭素還元電極の作製>
酸素架橋2核銅錯体1の代わりに銅テトラフェニルポルフィリンを使用したこと以外は実施例1と同様の手順により比較例2の二酸化炭素還元電極を得た。
【0312】
<二酸化炭素還元装置の作製>
実施例1の二酸化炭素還元電極の代わりに比較例2の二酸化炭素還元電極を使用したこと以外は実施例1と同一の手順で二酸化炭素還元装置を得た。
【0313】
<エチレンの製造>
実施例1の二酸化炭素還元装置の代わりに比較例2の二酸化炭素還元装置を使用したこと以外は実施例1と同一の手順でエチレンの合成を行った。
【0314】
<<比較例3>>
<エチレンの製造>
実施例1の二酸化炭素還元装置の代わりに比較例1の二酸化炭素還元装置を使用したこと以外は実施例2と同一の手順でエチレンの合成を行った。
【0315】
<<比較例4>>
<エチレンの製造>
実施例1の二酸化炭素還元装置の代わりに比較例2の二酸化炭素還元装置を使用したこと以外は実施例2と同一の手順でエチレンの合成を行った。
【0316】
<<評価>>
<銅原子間距離の算出>
銅原子間距離は、既述の「・銅原子間距離の算出方法」に記載の方法に従って算出した。
なお、銅テトラフェニルポルフィリンは単核銅錯体であるため、銅原子間距離を算出していない。
ここで、酸素架橋2核銅錯体1~7、14は、合成時には対アニオンとして酢酸アニオンを有するが、二酸化炭素還元反応中、銅中心はそれぞれ1価に還元され、酢酸アニオンが脱離したモノアニオン状態と考えられる。そのため、酸素架橋2核銅錯体1~7、14はモノアニオン状態における銅原子間距離を算出した。
また、酸素架橋2核銅錯体8は合成時には対アニオンとして塩素アニオンを2つ有するが、二酸化炭素還元反応中、銅中心はそれぞれ1価に還元され、塩素アニオンが脱離したニュートラル状態と考えられる。そのため、酸素架橋2核銅錯体8はニュートラル状態における銅原子間距離を算出した。
また、酸素架橋2核銅錯体10~13は合成時には対アニオンとして酢酸アニオンを2つ有するが、二酸化炭素還元反応中、銅中心はそれぞれ1価に還元され、酢酸アニオンが脱離したニュートラル状態と考えられる。そのため、酸素架橋2核銅錯体10~13はニュートラル状態における銅原子間距離を算出した。
また、酸素架橋4核銅錯体1は合成時には対アニオンとして酢酸アニオンを2つ有するが、二酸化炭素還元反応中、銅中心はそれぞれ1価に還元され、酢酸アニオンが脱離したジアニオン状態と考えられる。そのため、酸素架橋4核銅錯体1はジアニオン状態における銅原子間距離を算出した。
また、ハロゲン架橋2核銅錯体1の銅中心はそれぞれ1価であり、ニュートラル状態と考えられる。そのため、ハロゲン架橋2核銅錯体1についてはニュートラル状態における銅原子間距離を算出した。
【0317】
<エチレン選択性評価>
各例で得た二酸化炭素還元装置を用いて、下記手順でエチレン選択性を評価した。
電圧の印加開始から100秒~200秒の間に、ガスタイトシリンジを用いて出口ガス(反応槽16から矢印Bの向きに流出するガス)50μLを採取し、ガスに含まれる生成物をガスクロマトグラフ装置(島津製GC-2010/FID検出器、及び島津製GC-2014/TCD検出器)により定量分析した。各種生成物のファラデー効率は、反応に用いられたすべての電荷量のうち、観測された各種生成物の生成に用いられた電荷量の割合によって計算した。二酸化炭素還元電極10の反応面積に流れた電流を、単位面積あたり(mA/cm)の電流値として換算した値である。
Ag/AgCl基準電位からRHE基準電位への変換は以下の式に基づいて行った。
式:E(RHE) = E(Ag/AgCl)+0.198V+0.059×pH
エチレンのファラデー効率の値が高いほど、エチレンが選択的に生成していることを示し、エチレン選択性が高いことを意味する。
【0318】
【表1】
【0319】
上記結果から、本実施例のエチレンの製造方法は、比較例に比べて、エチレン選択性が高いことがわかる。
【符号の説明】
【0320】
1 二酸化炭素還元触媒が担持された導電性材料を含む層、2 支持体、10 二酸化炭素還元電極、11 酸化電極、12 膜、13 電解液、14 電源、15 電解槽、16 反応槽、100 二酸化炭素還元装置
図1
図2