(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105233
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ジオール構造を含むレジスト下層膜形成用組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20240730BHJP
C08K 5/34 20060101ALI20240730BHJP
C08K 5/372 20060101ALI20240730BHJP
C08L 61/20 20060101ALI20240730BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240730BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G03F7/11 502
G03F7/11 503
C08K5/34
C08K5/372
C08L61/20
G03F7/20 501
G03F7/20 502
G03F7/20 503
G03F7/20 504
G03F7/20 521
H01L21/30 573
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058760
(22)【出願日】2024-04-01
(62)【分割の表示】P 2022530633の分割
【原出願日】2021-06-11
(31)【優先権主張番号】P 2020102046
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】上林 哲
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 勇樹
(57)【要約】 (修正有)
【課題】微細化が進む半導体基板上の微細孔をボイド(空隙)無く埋め込むことができ、膜形成時の膜焼成時に発生する昇華物が少ないレジスト下層膜形成組成物、及び半導体基板加工をウエットエッチング薬液に対する保護膜としての機能を兼ね備えた薬液耐性保護膜組成物を提供する。
【解決手段】下記式(1)で表される、理論分子量が999以下の化合物、及び、有機溶剤を含む、レジスト下層膜形成組成物又は保護膜形成組成物。
[式(1)中、Z
1は窒素含有複素環を含み、Uは下記式(2)で表される一価の有機基であり、pは2~4の整数を表す。]
[式(2)中、*はZ
1への結合部分を示す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される、理論分子量が999以下の化合物、及び、有機溶剤を含む、レジスト下層膜形成組成物。
【化34】
[式(1)中、Z
1は窒素含有複素環を含み、Uは下記式(2)で表される一価の有機基であり、pは2~4の整数を表す。]
【化35】
[式(2)中、R
1は炭素原子数1~4のアルキレン基を表し、A
1~A
3は、それぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Xは-COO-、-OCO-、-O-、-S-又は-NR
a-のいずれかを表し、R
aは水素原子又はメチル基を表す。Yは直接結合又は置換されてもよい炭素原子数1~4のアルキレン基を表し、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ水素原子、又は置換されてもよい炭素原子数1~10のアルキル基若しくは炭素原子数6~40のアリール基であり、R
5は水素原子又はヒドロキシ基であり、nは0又は1の整数を表し、m1及びm2は、それぞれ独立に0又は1の整数を表し、*はZ
1への結合部分を示す]
【請求項2】
前記Z
1が、下記式(3)で表される、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【化36】
[式(3)中、Q
3は下記式(4)、式(5)又は式(6)を表す。]
【化37】
[式(4)、式(5)及び式(6)中、
R
11、R
12、R
13およびR
14は、各々独立に水素原子、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数2~10のアルケニル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数2~10のアルキニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、原子数1~10のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の官能基で置換されていてもよい。
R
15は、水素原子、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数3~10のアルケニル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数3~10のアルキニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキルチオ基、及び式(1)中の前記Uで表される1価の有機基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の官能基で置換されていてもよい。*はUへの結合部分を表す。]
【請求項3】
前記R15が、炭素原子数1~10のアルキル基又は式(1)中の前記Uで表される1価の有機基である、請求項2に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項4】
前記R11及びR12が、各々独立に炭素原子数1~10のアルキル基である、請求項2又は3に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
前記Xが、-S-であり、Yはメチレン基である、請求項1~4のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項6】
酸化合物及び/又は架橋剤をさらに含む、請求項1~5何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項7】
界面活性剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項8】
請求項1~7何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からなる塗布膜の焼成物であることを特徴とするレジスト下層膜。
【請求項9】
下記式(1)で表される、理論分子量が999以下であり、且つ、窒素原子を2つ以上、及び酸素原子を6つ以上分子内に含む化合物、及び、有機溶剤を含む、半導体用ウエットエッチング液に対する保護膜形成組成物。
【化38】
[式(1)中、Z
1は窒素含有複素環を含み、Uは下記式(2)で表される一価の有機基であり、pは2~4の整数を表す。]
【化39】
[式(2)中、R
1は炭素原子数1~4のアルキレン基、A
1~A
3は、それぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Xは-COO-、-OCO-、-O-、-S-又は-NR
a-のいずれかを表し、R
aは水素原子又はメチル基を表す。Yは直接結合又は置換されてもよい炭素原子数1~4のアルキレン基を表し、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ水素原子、又は置換されてもよい炭素原子数1~10のアルキル基若しくは炭素原子数6~40のアリール基であり、R
5は水素原子又はヒドロキシ基であり、nは0又は1の整数を表し、m1及びm2は、それぞれ独立に0又は1の整数を表し、*はZ
1への結合部分を示す]
【請求項10】
前記Z
1が、下記式(3)で表される、請求項9に記載の組成物。
【化40】
[式(3)中、Q
3は下記式(4)、式(5)又は式(6)を表す。]
【化41】
[式(4)、式(5)及び式(6)中、
R
11、R
12、R
13およびR
14は、各々独立に水素原子、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数2~10のアルケニル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数2~10のアルキニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、原子数1~10のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の官能基で置換されていてもよい。
R
15は、水素原子、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数3~10のアルケニル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数3~10のアルキニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキルチオ基、及び式(1)中の前記Uで表される1価の有機基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の官能基で置換されていてもよい。*はUへの結合部分を表す。]
【請求項11】
酸化合物及び/又は架橋剤をさらに含む、請求項9又は10に記載の保護膜形成組成物。
【請求項12】
請求項9~11何れか1項に記載の保護膜形成組成物からなる塗布膜の焼成物であることを特徴とする保護膜。
【請求項13】
請求項1~7いずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成してレジスト下層膜を形成する工程、該レジスト下層膜上にレジスト膜を形成し、次いで露光、現像してレジストパターンを形成する工程を含み、半導体の製造に用いることを特徴とするレジストパターン付き基板の製造方法。
【請求項14】
表面に無機膜が形成されていてもよい半導体基板上に、請求項1~7何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を用いてレジスト下層膜を形成し、前記レジスト下層膜上にレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクとして前記レジスト下層膜をドライエッチングし、前記無機膜又は前記半導体基板の表面を露出させ、ドライエッチング後の前記レジスト下層膜をマスクとして、前記無機膜又は前記半導体基板をエッチングする工程を含む半導体装置の製造方法。
【請求項15】
表面に無機膜が形成されていてもよい半導体基板上に、請求項9~11何れか1項に記載の保護膜形成組成物を用いて保護膜を形成し、前記保護膜上にレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクとして前記保護膜をドライエッチングし、前記無機膜又は前記半導体基板の表面を露出させ、ドライエッチング後の前記保護膜をマスクとして、半導体用ウエットエッチング液を用いて前記無機膜又は前記半導体基板をウエットエッチング及び洗浄する工程を含む半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造におけるリソグラフィープロセスにおいて、微細構造基板への埋め込み性に優れ、且つ膜形成時の昇華物が少ないレジスト下層膜形成組成物に関する。また、前記レジスト下層膜を適用したレジストパターン付き基板の製造方法、及び半導体装置の製造方法に関する。また、半導体製造時の基板加工をウエットエッチング薬液で行うための保護膜にも関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造において、基板とその上に形成されるレジスト膜との間にレジスト下層膜を設け、所望の形状のレジストパターンを形成するリソグラフィープロセスは広く知られている。特許文献1には、3つのエポキシ基を有するトリアジン骨格を含む化合物と、ジスルフィド結合を含むジカルボン酸化合物等との反応生成物を含むレジスト下層膜形成組成物が開示されている。
また、半導体製造のリソグラフィープロセスにおいて、前記レジスト下層膜形成組成物を用いてレジスト下層膜を形成する際、焼成時に前記ポリマー樹脂や架橋剤、架橋触媒等の低分子化合物に由来する昇華成分(昇華物)が発生することが新たな問題となってきている。このような昇華物は、半導体デバイス製造工程において、成膜装置内に付着、蓄積されることによって装置内を汚染し、それがウエハー上に異物として付着することで欠陥(ディフェクト)等の発生要因となることが懸念される。したがって、このようなレジスト下層膜から発生する昇華物を、可能な限り抑制するような新たな下層膜組成物の提案が求められており、特許文献2などこのような低昇華物性を示すレジスト下層膜の検討も行われている。
又、特許文献3には、分子内に互いに隣接する2つの水酸基を少なくとも1組含む化合物、又はその重合体と、溶剤とを含む、半導体用ウエットエッチング液に対する保護膜形成組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/151471号公報
【特許文献2】特開2010-237491号公報
【特許文献3】国際公開第2019/124474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のレジスト下層膜形成組成物は、レジスト下層膜として求められるレジストパターン形成時のトラブル(形状不良等)を解決するため、膜自体の光学定数を適切にコントロールしつつ、ますます微細化が進む半導体基板上の微細パターン(例えば幅10nm以下)をボイド(空隙)無く埋め込むことも求められ、これらの性能を両立させることは、困難であった。
さらにレジスト下層膜形成時の膜焼成時に発生する昇華物も、装置汚染やボイドの原因にもなることからさらなる削減を求められている。さらに、上記レジスト下層膜には、半導体製造工程においては、基板加工をウエットエッチング薬液(例えばSC-1(アンモニア-過酸化水素溶液)等)で行う場合があり、非加工部分の保護膜としての機能も求められる場合がある。
本発明の目的は、上記の課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下を包含する。
[1] 下記式(1)で表される、理論分子量が999以下の化合物、及び、有機溶剤を含む、レジスト下層膜形成組成物。
【化1】
[式(1)中、Z
1は窒素含有複素環を含み、Uは下記式(2)で表される一価の有機基であり、pは2~4の整数を表す。]
【化2】
[式(2)中、R
1は炭素原子数1~4のアルキレン基を表し、A
1~A
3は、それぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Xは-COO-、-OCO-、-O-、-S-又は-NR
a-のいずれかを表し、R
aは水素原子又はメチル基を表す。Yは直接結合又は置換されてもよい炭素原子数1~4のアルキレン基を表し、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ水素原子、又は置換されてもよい炭素原子数1~10のアルキル基若しくは炭素原子数6~40のアリール基であり、R
5は水素原子又はヒドロキシ基であり、nは0又は1の整数を表し、m1及びm2は、それぞれ独立に0又は1の整数を表し、*はZ
1への結合部分を示す]
[2] 前記Z
1が、下記式(3)で表される、[1]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【化3】
[式(3)中、Q
3は下記式(4)、式(5)又は式(6)を表す。]
【化4】
[式(4)、式(5)及び式(6)中、
R
11、R
12、R
13およびR
14は、各々独立に水素原子、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数2~10のアルケニル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数2~10のアルキニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、原子数1~10のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の官能基で置換されていてもよい。
R
15は、水素原子、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数3~10のアルケニル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数3~10のアルキニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキルチオ基、及び式(1)中の前記Uで表される1価の有機基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の官能基で置換されていてもよい。*はUへの結合部分を表す。]
[3] 前記R
15が、炭素原子数1~10のアルキル基又は式(1)中の前記Uで表される1価の有機基である、[2]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[4] 前記R
11及びR
12が、各々独立に炭素原子数1~10のアルキル基である、[2]又は[3]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[5] 前記Xが、-S-であり、Yはメチレン基である、[1]~[4]のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[6] 酸化合物をさらに含む、[1]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[7] 界面活性剤をさらに含む、[1]~[6]のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[8] [1]~[7]何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からなる塗布膜の焼成物であることを特徴とするレジスト下層膜。
[9] 下記式(1)で表される、理論分子量が999以下であり、且つ、窒素原子を2つ以上、及び酸素原子を6つ以上分子内に含む化合物、及び、有機溶剤を含む、半導体用ウエットエッチング液に対する保護膜形成組成物。
【化5】
[式(1)中、Z
1は窒素含有複素環を含み、Uは下記式(2)で表される一価の有機基であり、pは2~4の整数を表す。]
【化6】
[式(2)中、R
1は炭素原子数1~4のアルキレン基、A
1~A
3は、それぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Xは-COO-、-OCO-、-O-、-S-又は-NR
a-のいずれかを表し、R
aは水素原子又はメチル基を表す。Yは直接結合又は置換されてもよい炭素原子数1~4のアルキレン基を表し、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ水素原子、又は置換されてもよい炭素原子数1~10のアルキル基若しくは炭素原子数6~40のアリール基であり、R
5は水素原子又はヒドロキシ基であり、nは0又は1の整数を表し、m1及びm2は、それぞれ独立に0又は1の整数を表し、*はZ
1への結合部分を示す]
[10] 前記Z
1が、下記式(3)で表される、[9]に記載の組成物。
【化7】
[式(3)中、Q
3は下記式(4)、式(5)又は式(6)を表す。]
【化8】
[式(4)、式(5)及び式(6)中、
R
11、R
12、R
13およびR
14は、各々独立に水素原子、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数2~10のアルケニル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数2~10のアルキニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、原子数1~10のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の官能基で置換されていてもよい。
R
15は、水素原子、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数3~10のアルケニル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数3~10のアルキニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキルチオ基、及び式(1)中の前記Uで表される1価の有機基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の官能基で置換されていてもよい。*はUへの結合部分を表す。]
[11] 酸化合物及び/又は架橋剤をさらに含む、[9]又は[10]に記載の保護膜形成組成物。
[12] [9]~[11]に記載の保護膜形成組成物からなる塗布膜の焼成物であることを特徴とする保護膜。
[13] [1]~[7]いずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成してレジスト下層膜を形成する工程、該レジスト下層膜上にレジスト膜を形成し、次いで露光、現像してレジストパターンを形成する工程を含み、半導体の製造に用いることを特徴とするレジストパターン付き基板の製造方法。
[14] 表面に無機膜が形成されていてもよい半導体基板上に、[1]~[7]何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を用いてレジスト下層膜を形成し、前記レジスト下層膜上にレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクとして前記レジスト下層膜をドライエッチングし、前記無機膜又は前記半導体基板の表面を露出させ、ドライエッチング後の前記レジスト下層膜をマスクとして、前記無機膜又は前記半導体基板をエッチングする工程を含む半導体装置の製造方法。
[15] 表面に無機膜が形成されていてもよい半導体基板上に、[9]~[11]に記載の保護膜形成組成物を用いて保護膜を形成し、前記保護膜上にレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクとして前記保護膜をドライエッチングし、前記無機膜又は前記半導体基板の表面を露出させ、ドライエッチング後の前記保護膜をマスクとして、半導体用ウエットエッチング液を用いて前記無機膜又は前記半導体基板をウエットエッチング及び洗浄する工程を含む半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、レジスト下層膜として求められるレジストパターン形成時のトラブル(形状不良等)を解決しながら、ますます微細化が進む半導体基板上の微細パターン(例えば幅10nm以下)をボイド(空隙)無く埋め込むことができる。さらに従来のレジスト下層膜と比較し、レジスト下層膜形成時の膜焼成時に発生する昇華物が少ない。
さらに、半導体製造工程における、基板加工を行うためのウエットエッチング薬液耐性を有する。さらに従来のウエットエッチング保護膜と比較し、ドライエッチングレートが高いため、本レジスト下層膜及び保護膜を除去する場合に、基板へのダメージを減らすことができる。
【0007】
ポリマーは分子量が大きくなるほど分子サイズも大きくなり粘度も上昇するため、微細パターンへの埋め込みが困難になると考えられる。従って、本発明のレジスト下層膜形成組成物は理論分子量が999以下の化合物を用いることから、高分子ポリマーを使用した組成物に比べ微細構造に埋め込むことが可能となる。さらに、化合物中にヒドロキシ基を多く持つことで、化合物の沸点が上昇し昇華を抑制し、一部の基板とは相互作用により密着力が向上しウエットエッチング薬液処理に対しても耐性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例の埋め込み性評価基板の断面模式図である。
【
図2】実施例2のレジスト下層膜形成組成物の段差基板への埋め込み性評価の断面SEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<レジスト下層膜形成組成物>
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物は、下記式(1)で表される、理論分子量が999以下の化合物である化合物、及び、有機溶剤を含む。
上記理論分子量とは、式(1)で表される化合物の化学構造に基づき、計算により算出される分子量のことをいう。
前記化合物は、ドライエッチングレートを高める観点から、窒素原子を2つ以上、3つ以上、4つ以上、及び酸素原子を6つ以上、8つ以上、9つ以上、10以上、15以上分子内に含むことが好ましい。さらに硫黄原子を2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上分子内に含むことが好ましい。
<式(1)で表される、理論分子量が999以下の化合物>
本願のレジスト下層膜形成組成物が含む、理論分子量が999以下の化合物は、下記式(1):
【0010】
【0011】
[式(1)中、Z1は窒素含有複素環を含み、Uは下記式(2)で表される一価の有機基であり、pは2~4の整数を表す。]
【0012】
【0013】
[式(2)中、R1は炭素原子数1~4のアルキレン基を表し、A1~A3は、それぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Xは-COO-、-OCO-、-O-、-S-又は-NRa-のいずれかを表し、Raは水素原子又はメチル基を表す。Yは直接結合又は置換されてもよい炭素原子数1~4のアルキレン基を表し、R2、R3及びR4はそれぞれ水素原子、又は置換されてもよい炭素原子数1~10のアルキル基若しくは炭素原子数6~40のアリール基であり、R5は水素原子又はヒドロキシ基であり、nは0又は1の整数を表し、m1及びm2は、それぞれ独立に0又は1の整数を表し、*はZ1への結合部分を示す]で表される。
m2が1であることが好ましく、さらにm1が1であることが好ましい。
m2が1であるときにm1が0であることが最も好ましい。
【0014】
式(1)中、Z1は好ましくは下記式(3)で表される。
【0015】
【0016】
[式(3)中、Q3は下記式(4)、式(5)又は式(6)を表す。]
【0017】
【0018】
[式(4)、式(5)及び式(6)中、
R11、R12、R13およびR14は、各々独立に水素原子、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数2~10のアルケニル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数2~10のアルキニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、原子数1~10のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の官能基で置換されていてもよい。
【0019】
上記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、1-メチル-シクロプロピル基、2-メチル-シクロプロピル基、n-ペンチル基、1-メチル-n-ブチル基、2-メチル-n-ブチル基、3-メチル-n-ブチル基、1,1-ジメチル-n-プロピル基、1,2-ジメチル-n-プロピル基、2,2-ジメチル-n-プロピル基、1-エチル-n-プロピル基、シクロペンチル基、1-メチル-シクロブチル基、2-メチル-シクロブチル基、3-メチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロプロピル基、2,3-ジメチル-シクロプロピル基、1-エチル-シクロプロピル基、2-エチル-シクロプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチル-n-ペンチル基、2-メチル-n-ペンチル基、3-メチル-n-ペンチル基、4-メチル-n-ペンチル基、1,1-ジメチル-n-ブチル基、1,2-ジメチル-n-ブチル基、1,3-ジメチル-n-ブチル基、2,2-ジメチル-n-ブチル基、2,3-ジメチル-n-ブチル基、3,3-ジメチル-n-ブチル基、1-エチル-n-ブチル基、2-エチル-n-ブチル基、1,1,2-トリメチル-n-プロピル基、1,2,2-トリメチル-n-プロピル基、1-エチル-1-メチル-n-プロピル基、1-エチル-2-メチル-n-プロピル基、シクロヘキシル基、1-メチル-シクロペンチル基、2-メチル-シクロペンチル基、3-メチル-シクロペンチル基、1-エチル-シクロブチル基、2-エチル-シクロブチル基、3-エチル-シクロブチル基、1,2-ジメチル-シクロブチル基、1,3-ジメチル-シクロブチル基、2,2-ジメチル-シクロブチル基、2,3-ジメチル-シクロブチル基、2,4-ジメチル-シクロブチル基、3,3-ジメチル-シクロブチル基、1-n-プロピル-シクロプロピル基、2-n-プロピル-シクロプロピル基、1-i-プロピル-シクロプロピル基、2-i-プロピル-シクロプロピル基、1,2,2-トリメチル-シクロプロピル基、1,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、2,2,3-トリメチル-シクロプロピル基、1-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-1-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-2-メチル-シクロプロピル基、2-エチル-3-メチル-シクロプロピル基、デシル基等が挙げられる。
【0020】
上記アルケニル基としては、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-エテニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-エチルエテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-n-プロピルエテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-エチル-2-プロペニル基、2-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基、1-i-プロピルエテニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,2-ジメチル-2-プロペニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、1-n-ブチルエテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、2-メチル-3-ペンテニル基、2-メチル-4-ペンテニル基、2-n-プロピル-2-プロペニル基、3-メチル-1-ペンテニル基、3-メチル-2-ペンテニル基、3-メチル-3-ペンテニル基、3-メチル-4-ペンテニル基、3-エチル-3-ブテニル基、4-メチル-1-ペンテニル基、4-メチル-2-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、4-メチル-4-ペンテニル基、1,1-ジメチル-2-ブテニル基、1,1-ジメチル-3-ブテニル基、1,2-ジメチル-1-ブテニル基、1,2-ジメチル-2-ブテニル基、1,2-ジメチル-3-ブテニル基、1-メチル-2-エチル-2-プロペニル基、1-s-ブチルエテニル基、1,3-ジメチル-1-ブテニル基、1,3-ジメチル-2-ブテニル基、1,3-ジメチル-3-ブテニル基、1-i-ブチルエテニル基、2,2-ジメチル-3-ブテニル基、2,3-ジメチル-1-ブテニル基、2,3-ジメチル-2-ブテニル基、2,3-ジメチル-3-ブテニル基、2-i-プロピル-2-プロペニル基、3,3-ジメチル-1-ブテニル基、1-エチル-1-ブテニル基、1-エチル-2-ブテニル基、1-エチル-3-ブテニル基、1-n-プロピル-1-プロペニル基、1-n-プロピル-2-プロペニル基、2-エチル-1-ブテニル基、2-エチル-2-ブテニル基、2-エチル-3-ブテニル基、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル基、1-t-ブチルエテニル基、1-メチル-1-エチル-2-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル基、1-i-プロピル-1-プロペニル基、1-i-プロピル-2-プロペニル基、1-メチル-2-シクロペンテニル基、1-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-1-シクロペンテニル基、2-メチル-2-シクロペンテニル基、2-メチル-3-シクロペンテニル基、2-メチル-4-シクロペンテニル基、2-メチル-5-シクロペンテニル基、2-メチレン-シクロペンチル基、3-メチル-1-シクロペンテニル基、3-メチル-2-シクロペンテニル基、3-メチル-3-シクロペンテニル基、3-メチル-4-シクロペンテニル基、3-メチル-5-シクロペンテニル基、3-メチレン-シクロペンチル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基及び3-シクロヘキセニル基等が挙げられる。
【0021】
上記アルキニル基としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基等が挙げられる。
【0022】
上記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、原子数1~10のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の官能基で置換されていてもよい。
【0023】
上記アルキル基については上に例示のとおりである。
【0024】
ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0025】
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペントキシ基、1-メチル-n-ブトキシ基、2-メチル-n-ブトキシ基、3-メチル-n-ブトキシ基、1,1-ジメチル-n-プロポキシ基、1,2-ジメチル-n-プロポキシ基、2,2-ジメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-n-プロポキシ基、n-ヘキシルオキシ基、1-メチル-n-ペンチルオキシ基、2-メチル-n-ペンチルオキシ基、3-メチル-n-ペンチルオキシ基、4-メチル-n-ペンチルオキシ基、1,1-ジメチル-n-ブトキシ基、1,2-ジメチル-n-ブトキシ基、1,3-ジメチル-n-ブトキシ基、2,2-ジメチル-n-ブトキシ基、2,3-ジメチル-n-ブトキシ基、3,3-ジメチル-n-ブトキシ基、1-エチル-n-ブトキシ基、2-エチル-n-ブトキシ基、1,1,2-トリメチル-n-プロポキシ基、1,2,2,-トリメチル-n-プロポキシ基、1-エチル-1-メチル-n-プロポキシ基、1-エチル-2-メチル-n-プロポキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基及びn-ノニルオキシ基等が挙げられる。
【0026】
アルキルチオ基としてはメチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基等が挙げられる。
【0027】
上記式(3)中、Q3が式(4)を表すとき、式(4)中のR11及びR12が、各々独立に炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましい。
【0028】
上記式(3)中、Q3が式(5)を表すとき、式(5)中のR13及びR14が、各々独立に炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましい。
【0029】
上記式(3)中、Q3が式(6)を表すとき、式(6)中のR15は、水素原子、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数3~10のアルケニル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数3~10のアルキニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキルチオ基、及び式(1)中の前記Uで表される1価の有機基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の官能基で置換されていてもよい。
【0030】
上記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基については上に例示のとおりである。
【0031】
好ましくは、前記R15は、炭素原子数1~10のアルキル基又は式(1)中のUで表される1価の有機基であり、pは2~4の整数を表す。
【0032】
【0033】
式(2)中、R1は炭素原子数1~4のアルキレン基を表す。
上記アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、シクロプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、s-ブチレン基、t-ブチレン基、シクロブチレン基、1-メチル-シクロプロピレン基、2-メチル-シクロプロピレン基等が挙げられる。
A1~A3は、それぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Xは-COO-、-OCO-、-O-、-S-又は-NR1-のいずれかを表す。XがNRa-を表すとき、Raは水素原子又はメチル基を表す。好ましくは、Xは-S-である。
【0034】
式(2)中、Yは直接結合又は置換されてもよい炭素原子数1~4のアルキレン基を表す。アルキレン基としては上に例示したとおりであり、好ましくは、Yはメチレン基である。
R2、R3及びR4はそれぞれ水素原子、又は置換されてもよい炭素原子数1~10のアルキル基若しくは炭素原子数6~40のアリール基である。
上記置換基で置換されていてもよいとは、置換される官能基中に存在する一部又は全部の水素原子が、例えば、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、メチレンジオキシ基、アセトキシ基、メチルチオ基、アミノ基又は炭素原子数1~9のアルコキシ基で置換されてもよいことを意味する。R5は水素原子又はヒドロキシ基である。
【0035】
上記アリール基としては、フェニル基、o-メチルフェニル基、m-メチルフェニル基、p-メチルフェニル基、o-クロルフェニル基、m-クロルフェニル基、p-クロルフェニル基、o-フルオロフェニル基、p-フルオロフェニル基、o-メトキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、p-ニトロフェニル基、p-シアノフェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、o-ビフェニリル基、m-ビフェニリル基、p-ビフェニリル基、1-アントリル基、2-アントリル基、9-アントリル基、1-フェナントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、4-フェナントリル基及び9-フェナントリル基等が挙げられる。
m1及びm2は、それぞれ独立に0又は1の整数を表すが、 m2が1であることが好ましく、さらにm1が1であることが好ましい。
m2が1であるときにm1が0であることが最も好ましい。
【0036】
本願の式(1)で表される化合物は例えば下記式(a)~(ak)で表される化合物が有するエポキシ基又はアリル基と、1-チオグリセロール(3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、CAS No.96-27-5)とを公知の方法で反応させて得ることができるが、これらに限定されるわけでは無い。さらに、上記化合物が有するエポキシ基の加水分解によるジオール構造を含んでいてもよい。上記エポキシ基又はアリル基と、1-チオグリセロールとの反応から誘導されるジオール構造が好ましく、上記エポキシ基と、1-チオグリセロールとの反応から誘導されるジオール構造がさらに好ましい。
【化14】
【化15】
【0037】
式(1)で表される化合物の具体例をいくつか挙げると、以下のとおりである。合成方法については実施例の項に詳述する。(式(X-1)で表される化合物の理論分子量:799、式(X-2)で表される化合物の理論分子量:621、式(X-3)で表される化合物の理論分子量:471、式(X-4)で表される化合物の理論分子量:456、式(X-5)で表される化合物の理論分子量:573、式(X-6)で表される化合物の理論分子量:795)
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【0038】
式(1)で表される化合物の理論分子量は、400~999であり、好ましくは450~800である。
【0039】
<有機溶剤>
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、上記各成分を、有機溶剤に溶解させることによって調製でき、均一な溶液状態で用いられる。
【0040】
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物の有機溶剤としては、上記化合物や、下記に記載の酸触媒等の固形成分を溶解できる有機溶剤であれば、特に制限なく使用することができる。特に、本発明に係る保護膜形成組成物は均一な溶液状態で用いられるものであるため、その塗布性能を考慮すると、リソグラフィー工程に一般的に使用される有機溶剤を併用することが推奨される。
【0041】
前記有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、4-メチル-2-ペンタノール、2―ヒドロキシイソ酪酸メチル、2―ヒドロキシイソ酪酸エチル、エトキシ酢酸エチル、酢酸2-ヒドロキシエチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2-ヘプタノン、メトキシシクロペンタン、アニソール、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、及びN,N-ジメチルアセトアミドが挙げられる。これらの溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
これらの溶媒の中でプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、及びシクロヘキサノン等が好ましい。特にプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。
【0043】
本願のレジスト下層膜形成組成物は、酸触媒(酸化合物)をさらに含んでもよい。当該酸触媒としては、酸性化合物、塩基性化合物に加え、熱により酸又は塩基が発生する化合物を用いることができる。酸性化合物としては、スルホン酸化合物又はカルボン酸化合物を用いることができ、熱により酸が発生する化合物としては、熱酸発生剤を用いることができる。
【0044】
スルホン酸化合物又はカルボン酸化合物として、例えば、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート(=ピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸)、ピリジニウム-p-トルエンスルホネート、ピリジニウム-4-ヒドロキシベンゼンスルホナート、サリチル酸、カンファースルホン酸、5-スルホサリチル酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、4-フェノールスルホン酸、ピリジニウム-4-フェノールスルホネート、ベンゼンジスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、4-ニトロベンゼンスルホン酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸が挙げられる。
【0045】
熱酸発生剤として、例えば、K-PURE〔登録商標〕CXC-1612、同CXC-1614、同TAG-2172、同TAG-2179、同TAG-2678、同TAG2689(以上、King Industries社製)、及びSI-45、SI-60、SI-80、SI-100、SI-110、SI-150(以上、三新化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0046】
これら酸触媒は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、塩基性化合物としては、アミン化合物又は水酸化アンモニウム化合物を用いることができ、熱により塩基が発生する化合物としては、尿素を用いることができる。
【0047】
アミン化合物として、例えば、トリエタノールアミン、トリブタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリノルマルプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリノルマルブチルアミン、トリ-tert-ブチルアミン、トリノルマルオクチルアミン、トリイソプロパノールアミン、フェニルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、及びジアザビシクロオクタン等の第3級アミン、ピリジン及び4-ジメチルアミノピリジン等の芳香族アミンが挙げられる。また、ベンジルアミン及びノルマルブチルアミン等の第1級アミン、ジエチルアミン及びジノルマルブチルアミン等の第2級アミンもアミン化合物として挙げられる。これらのアミン化合物は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0048】
水酸化アンモニウム化合物としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリエチルアンモニウム、水酸化セチルトリメチルアンモニウム、水酸化フェニルトリメチルアンモニウム、水酸化フェニルトリエチルアンモニウムが挙げられる。
【0049】
また、熱により塩基が発生する化合物としては、例えば、アミド基、ウレタン基又はアジリジン基のような熱不安定性基を有し、加熱することでアミンを生成する化合物を使用することができる。その他、尿素、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムクロリド、ベンジルドデシルジメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、コリンクロリドも熱により塩基が発生する化合物として挙げられる。
【0050】
本願のレジスト下層膜形成組成物が酸触媒を含む場合、その含有量は、レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して、0.0001~20質量%、好ましくは0.01~15質量%、さらに好ましくは0.1~10質量%である。
【0051】
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物の固形分は通常0.1~70質量%、好ましくは0.1~60質量%とする。固形分はレジスト下層膜形成組成物から溶媒を除いた全成分の含有割合である。固形分中におけるポリマーの割合は、1~100質量%、1~99.9質量%、50~99.9質量%、50~95質量%、50~90質量%の順で好ましい。
【0052】
<架橋剤>
本発明のレジスト下層膜形成組成物は架橋剤を含むことができる。その架橋剤としては、メラミン系、置換尿素系、またはそれらのポリマー系等が挙げられる。好ましくは、少なくとも2個の架橋形成置換基を有する架橋剤であり、メトキシメチル化グリコールウリル、ブトキシメチル化グリコールウリル、メトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン、メトキシメチル化ベンゾグワナミン、ブトキシメチル化ベンゾグワナミン、メトキシメチル化尿素、ブトキシメチル化尿素、メトキシメチル化チオ尿素、またはメトキシメチル化チオ尿素等の化合物である。また、これらの化合物の縮合体も使用することができる。
【0053】
また、上記架橋剤としては耐熱性の高い架橋剤を用いることができる。耐熱性の高い架橋剤としては分子内に芳香族環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環)を有する架橋形成置換基を含有する化合物を用いることができる。
このような化合物としては、下記式(5-1)の部分構造を有する化合物や、下記式(5-2)の繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマーが挙げられる。
【0054】
【0055】
上記R11、R12、R13、及びR14は水素原子又は炭素数1~10のアルキル基であり、これらのアルキル基の具体例は上述のとおりである。
m1は1≦m1≦6-m2、m2は1≦m2≦5、m3は1≦m3≦4-m2、m4は1≦m4≦3である。
式(5-1)及び式(5-2)の化合物、ポリマー、オリゴマーは以下に例示される。
【0056】
【0057】
【0058】
上記化合物は旭有機材工業(株)、本州化学工業(株)の製品として入手することができる。例えば上記架橋剤の中で式(6-22)の化合物は本州化学工業(株)、商品名TMOM-BPとして入手することができる。
【0059】
架橋剤の添加量は、使用する塗布溶剤、使用する下地基板、要求される溶液粘度、要求される膜形状などにより変動するが、レジスト下層膜形成組成物の全固形分に対して通常0.001~80質量%、好ましくは 0.01~50質量%、さらに好ましくは0.1~40質量%である。これら架橋剤は自己縮合による架橋反応を起こすこともあるが、本発明の上記のポリマー中に架橋性置換基が存在する場合は、それらの架橋性置換基と架橋反応を起こすことができる。
【0060】
<界面活性剤>
本発明のレジスト膜形成組成物は、半導体基板に対する塗布性を向上させるために界面活性剤を含有することができる。前記界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップ〔登録商標〕EF301、同EF303、同EF352(三菱マテリアル電子化成株式会社製)、メガファック〔登録商標〕F171、同F173、同R-30、同R-30N、同R-40、同R-40-LM(DIC株式会社製)、フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム株式会社製)、アサヒガード〔登録商標〕AG710、サーフロン〔登録商標〕S-382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(旭硝子株式会社製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業株式会社製)を挙げることができる。これらの界面活性剤は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。前記保護膜形成組成物が界面活性剤を含む場合、その含有量は、保護膜形成組成物の全固形分に対して、0.0001~10重量%、好ましくは0.01~5重量%である。
【0061】
<保護膜形成組成物>
本願の保護膜形成組成物は、下記式(1)で表される、理論平均分子量が999以下であり、窒素原子を2つ以上、3つ以上、4つ以上、及び酸素原子を6つ以上、8つ以上、9つ以上、10以上、15以上分子内に含む化合物、及び、有機溶剤を含むことを特徴とする。
さらに前記化合物は、硫黄原子を2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上含むことが好ましい。
上記特定の原子を一定数以上含む理由は、保護膜のドライエッチングレートを向上させるためである。
【0062】
【0063】
[式(1)中、Z1は窒素含有複素環を含み、Uは下記式(2)で表される一価の有機基であり、pは2~4の整数を表す。]
【0064】
【0065】
[式(2)中、R1は単結合又は炭素原子数1~4のアルキレン基を表し、A1~A3は、それぞれ独立に水素原子、メチル基又はエチル基を表し、Xは-COO-、-OCO-、-O-、-S-又は-NRa-のいずれかを表し、Raは水素原子又はメチル基を表す。Yは直接結合又は置換されてもよい炭素原子数1~4のアルキレン基を表し、R2、R3及びR4はそれぞれ水素原子、又は置換されてもよい炭素原子数1~10のアルキル基若しくは炭素原子数6~40のアリール基であり、R5は水素原子又はヒドロキシ基であり、nは0又は1の整数を表し、m1及びm2は、それぞれ独立に0又は1の整数を表し、*はZ1への結合部分を示す]
m2が1であることが好ましく、さらにm1が1であることが好ましい。
m2が1であるときにm1が0であることが最も好ましい。
好ましくは、前記Z1は下記式(3)で表される。
【0066】
【化27】
[式(3)中、Q
3は下記式(4)、式(5)又は式(6)を表す。]
【0067】
【0068】
[式(4)、式(5)及び式(6)中、
R11、R12、R13およびR14は、各々独立に水素原子、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数2~10のアルケニル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数2~10のアルキニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、原子数1~10のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基及び炭素原子数1~6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の官能基で置換されていてもよい。
R15は、水素原子、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよく、ヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数1~10のアルキル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数3~10のアルケニル基、酸素原子若しくは硫黄原子で中断されていてもよい炭素原子数3~10のアルキニル基、ベンジル基又はフェニル基を表し、前記フェニル基は、炭素原子数1~6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、炭素原子数1~6のアルキルチオ基、及び式(1)中の前記Uで表される1価の有機基からなる群から選ばれる少なくとも1つの1価の官能基で置換されていてもよい。*はUへの結合部分を表す。]
【0069】
好ましくは、前記R15は、炭素原子数1~10のアルキル基又は式(1)中の前記Uで表される1価の有機基である。
好ましくは、前記R11及びR12は、各々独立に炭素原子数1~10のアルキル基である。
好ましくは、前記Xは-S-である。好ましくは、前記Yはメチレン基である。
【0070】
好ましくは、上記保護膜形成組成物は酸化合物及び/又は架橋剤をさらに含む。
好ましくは、上記保護膜形成組成物は界面活性剤をさらに含む。
【0071】
酸触媒、酸触媒の含有量及び有機溶剤は上述のレジスト下層膜形成組成物のものと同一である。
【0072】
本発明に係る保護膜形成組成物の固形分は通常0.1~70質量%、好ましくは0.1~60質量%とする。固形分は保護膜形成組成物から溶媒を除いた全成分の含有割合である。固形分中におけるポリマーの割合は、1~100質量%、1~99.9質量%、50~99.9質量%、50~95質量%、50~90質量%の順で好ましい。
【0073】
<架橋剤>
本発明の保護膜形成組成物は架橋剤を含むことができる。その架橋剤は上記レジスト下層膜形成組成物のものと同一である。
【0074】
<界面活性剤>
本発明の保護膜形成組成物は、半導体基板に対する塗布性を向上させるために界面活性剤を含有することができる。前記界面活性剤は、上記レジスト下層膜形成組成物のものと同一である。
【0075】
<レジスト下層膜、保護膜、レジストパターン付き基板及び半導体装置の製造方法>
以下、本発明に係るレジスト下層膜形成組成物(保護膜形成組成物)を用いたレジストパターン付き基板の製造方法及び半導体装置の製造方法について説明する。
【0076】
本発明に係るレジストパターン付き基板は、上記したレジスト下層膜形成組成物(保護膜形成組成物)を半導体基板上に塗布し、焼成することにより製造することができる。
【0077】
本発明のレジスト下層膜形成組成物(保護膜形成組成物)が塗布される半導体基板としては、例えば、シリコンウエハ、ゲルマニウムウエハ、及びヒ化ガリウム、リン化インジウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化アルミニウム等の化合物半導体ウエハが挙げられる。
【0078】
表面に無機膜が形成された半導体基板を用いる場合、当該無機膜は、例えば、ALD(原子層堆積)法、CVD(化学気相堆積)法、反応性スパッタ法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、スピンコーティング法(スピンオングラス:SOG)により形成される。前記無機膜として、例えば、ポリシリコン膜、酸化ケイ素膜、窒化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、BPSG(Boro-Phospho Silicate Glass)膜、窒化チタン膜、酸窒化チタン膜、窒化タングステン膜、窒化ガリウム膜、及びヒ化ガリウム膜が挙げられる。上記半導体基板は、いわゆるビア(穴)、トレンチ(溝)等が形成された段差基板であってもよい。例えばビアは、上面から見ると略円形の形状であり、略円の直径は例えば1nm~20nm、深さは50nm~500nm、トレンチは例えば溝(基板の凹部)の幅が2nm~20nm、深さは50nm~500nmである。本願のレジスト下層膜形成組成物(保護膜形成組成物)は組成物中に含まれる化合物の理論平均分子量及び平均粒径が小さいため、上記のような段差基板にも、ボイド(空隙)等の欠陥なく、該組成物を埋め込むことができる。半導体製造の次工程(半導体基板のウエットエッチング/ドライエッチング、レジストパターン形成)のために、ボイド等の欠陥が無いのは重要な特性である。
【0079】
このような半導体基板上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により本発明のレジスト下層膜形成組成物(保護膜形成組成物)を塗布する。その後、ホットプレート等の加熱手段を用いてベークすることによりレジスト下層膜(保護膜)を形成する。ベーク条件としては、ベーク温度100℃~400℃、ベーク時間0.3分~60分間の中から適宜、選択される。好ましくは、ベーク温度120℃~350℃、ベーク時間0.5分~30分間、より好ましくは、ベーク温度150℃~300℃、ベーク時間0.8分~10分間である。形成される保護膜の膜厚としては、例えば0.001μm~10μm、好ましくは0.002μm~1μm、より好ましくは0.005μm(5nm)~0.5μm(500nm)、0.05μm(50nm)~0.3μm(300nm)、0.05μm(50nm)~0.2μm(200nm)である。ベーク時の温度が、上記範囲より低い場合には架橋が不十分となり、形成されるレジスト下層膜(保護膜)の、レジスト溶剤又は塩基性過酸化水素水溶液に対する耐性が得られにくくなることがある。一方、ベーク時の温度が上記範囲より高い場合は、レジスト下層膜(保護膜)が熱によって分解してしまうことがある。
【0080】
露光は、所定のパターンを形成するためのマスク(レチクル)を通して行われ、例えば、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV(極端紫外線)またはEB(電子線)が使用される。現像にはアルカリ現像液が用いられ、現像温度5℃~50℃、現像時間10秒~300秒から適宜選択される。アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ-n-ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第4級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類、等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。さらに、上記アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、ノニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。これらの中で好ましい現像液は第四級アンモニウム塩、さらに好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びコリンである。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。アルカリ現像液に代えて、酢酸ブチル等の有機溶媒で現像を行い、フォトレジストのアルカリ溶解速度が向上していない部分を現像する方法を用いることもできる。
【0081】
次いで、形成したレジストパターンをマスクとして、前記レジスト下層膜(保護膜)をドライエッチングする。その際、用いた半導体基板の表面に前記無機膜が形成されている場合、その無機膜の表面を露出させ、用いた半導体基板の表面に前記無機膜が形成されていない場合、その半導体基板の表面を露出させる。
【0082】
さらに、ドライエッチング後のレジスト下層膜(保護膜)(そのレジスト下層膜/保護膜上にレジストパターンが残存している場合、そのレジストパターンも)をマスクとして、半導体用ウエットエッチング液を用いてウエットエッチングすることにより、所望のパターンが形成される。
【0083】
半導体用ウエットエッチング液としては、半導体用ウエハをエッチング加工するための一般的な薬液を使用することが出来、例えば酸性を示す物質、塩基性を示す物質何れも使用することができる。
【0084】
酸性を示す物質としては、例えば過酸化水素、フッ酸、フッ化アンモニウム、酸性フッ化アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、バッファードフッ酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸又はこれらの混合液が挙げられる。
【0085】
塩基性を示す物質としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、トリエタノールアミン等の有機アミンと過酸化水素水とを混合し、pHを塩基性にした、塩基性過酸化水素水を挙げることができる。具体例としては、SC-1(アンモニア-過酸化水素溶液)が挙げられる。その他、pHを塩基性にすることができるもの、例えば、尿素と過酸化水素水を混合し、加熱により尿素の熱分解を引き起こすことでアンモニアを発生させ、最終的にpHを塩基性にするものも、ウエットエッチングの薬液として使用できる。
【0086】
これらの中でも、酸性過酸化水素水又は塩基性過酸化水素水であることが好ましい。
【0087】
これらの薬液は、界面活性剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0088】
半導体用ウエットエッチング液の使用温度は25℃~90℃であることが望ましく、40℃~80℃であることがさらに望ましい。ウエットエッチング時間としては、0.5分~30分であることが望ましく、1分~20分であることがさらに望ましい。
【実施例0089】
次に合成例、実施例を挙げ本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本明細書の下記合成例に示すポリマーの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略称する)による測定結果である。測定には東ソー株式会社製GPC装置を用い、測定条件等は次のとおりである。
カラム温度:40℃
流量:0.6mL/分
溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)
標準試料:ポリスチレン(東ソー株式会社)
【0090】
<合成例1>
1,3,4,6-(テトラグリシジル)グリコウリル(製品名:TG-G、四国化成工業株式会社製)4.00g、1-チオグリセロール(富士フイルム和光純薬株式会社製)6.26g、テトラブチルホスホニウム ブロミド(北興化学株式会社製)0.54gにプロピレングリコールモノメチルエーテル43.26gを加えた反応フラスコを窒素雰囲気下、105℃で22時間加熱撹拌した。得られた反応生成物は式(X-1)に相当し、理論分子量は799、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは980であった。
【0091】
【0092】
<合成例2>
トリグリシジルイソシアヌル酸(製品名 TEPIC、日産化学株式会社製)5.00g、1-チオグリセロール(富士フイルム和光純薬株式会社製)5.45g、テトラブチルホスホニウム ブロミド(北興化学株式会社製)0.21gにプロピレングリコールモノメチルエーテル42.68gを加えた反応フラスコを窒素雰囲気下、105℃で23時間加熱撹拌した。得られた反応生成物は式(X-2)に相当し、理論分子量は621、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは870であった。
【0093】
【0094】
<合成例3>
メチルイソシアヌル酸ジグリシジル(製品名:MeDGIC、四国化成工業株式会社製、28.8重量%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)16.00g、1-チオグリセロール(富士フイルム和光純薬株式会社製)3.88g、テトラブチルホスホニウム ブロミド(北興化学株式会社製)0.45gにプロピレングリコールモノメチルエーテル24.52gを加えた反応フラスコを窒素雰囲気下、105℃で18時間加熱撹拌した。得られた反応生成物は式(X-3)に相当し、理論分子量は471、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは600であった。
【0095】
【0096】
<合成例4>
グリセリンモノメタクリレート(製品名:ブレンマーGLM、日油株式会社製)3.00g、2,2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)(富士フイルム和光純薬株式会社製)0.90g、プロピレングリコールモノメチルエーテル16.44gの溶液を滴下ロートに加え、プロピレングリコールモノメチルエーテル4.11gを加えた反応フラスコ中に窒素雰囲気下、100℃で滴下させ、15時間加熱攪拌した。得られた反応生成物は式(X-7)に相当し、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは4160であった。
【0097】
【0098】
<合成例5>
メチルイソシアヌル酸ジグリシジル(製品名:MeDGIC、四国化成工業株式会社製、28.8重量%プロピレングリコールモノメチルエーテル溶液)11.00g、コハク酸(東京化成工業株式会社製)1.16g、1-チオグリセロール(富士フイルム和光純薬株式会社製)0.53g、エチルトリフェニルホスホニウム ブロミド(東京化成工業株式会社製)0.29gにプロピレングリコールモノメチルエーテル12.85gを加えた反応フラスコを窒素雰囲気下、100℃で18時間加熱撹拌した。得られた反応生成物は式(X-8)に相当し、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2800であった。
【0099】
【0100】
<実施例1>
前記式(X-1)に相当する反応生成物の溶液(固形分は15.5重量%)8.22gに、ピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)0.06g、界面活性剤(製品名:メガファックR-40、DIC株式会社製)0.01g、プロピレングリコールモノメチルエーテル18.84g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.87gを加え、溶液とした。その溶液を、孔径0.02μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過することで、レジスト下層膜(保護膜)形成組成物を調製した。
【0101】
<実施例2>
前記式(X-2)に相当する反応生成物の溶液(固形分は17.8重量%)7.12gに、ピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)0.06g、界面活性剤(製品名:メガファックR-40、DIC株式会社製)0.01g、プロピレングリコールモノメチルエーテル19.90g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.87gを加え、溶液とした。その溶液を、孔径0.02μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過することで、レジスト下層膜(保護膜)形成組成物を調製した。
【0102】
<実施例3>
前記式(X-3)に相当する反応生成物の溶液(固形分は17.9重量%)7.12gに、ピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)0.06g、界面活性剤(製品名:メガファックR-40、DIC株式会社製)0.01g、プロピレングリコールモノメチルエーテル19.94g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.87gを加え、溶液とした。その溶液を、孔径0.02μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過することで、レジスト下層膜(保護膜)形成組成物を調製した。
【0103】
<実施例4>
前記式(X-2)に相当する反応生成物の溶液(固形分は17.8重量%)6.32gに、3,3’,5,5’-テトラキス(メトキシメチル)-4,4’-ジヒドロキシビフェニル(製品名:TMOM-BP、本州化学工業株式会社製)0.17g、ピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)0.06g、界面活性剤(製品名:メガファックR-40、DIC株式会社製)0.01g、プロピレングリコールモノメチルエーテル19.47g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.87gを加え、溶液とした。その溶液を、孔径0.02μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過することで、レジスト下層膜(保護膜)形成組成物を調製した。
【0104】
<比較例1>
前記式(X-7)に相当する反応生成物の溶液(固形分は13.1重量%)4.32gに、ピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸(東京化成工業株式会社製)0.03g、界面活性剤(製品名:メガファックR-40、DIC株式会社製)0.01g、プロピレングリコールモノメチルエーテル9.21g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.44gを加え、溶液とした。その溶液を、孔径0.02μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過することで、レジスト下層膜(保護膜)形成組成物を調製した。
【0105】
<比較例2>
前記式(X-8)に相当する反応生成物の溶液(固形分は17.5重量%)6.09gに、3,3’,5,5’-テトラキス(メトキシメチル)-4,4’-ジヒドロキシビフェニル(製品名:TMOM-BP、本州化学工業株式会社製)0.21g、ピリジニウム-4-ヒドロキシベンゼンスルホナート0.01g、界面活性剤(製品名:メガファックR-40、DIC株式会社製)0.01g、プロピレングリコールモノメチルエーテル20.82g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.87gを加え、溶液とした。その溶液を、孔径0.02μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過することで、レジスト下層膜(保護膜)形成組成物を調製した。
【0106】
〔レジスト溶剤耐性試験〕
実施例1~実施例4及び比較例1~比較例2で調製されたレジスト下層膜(保護膜)形成組成物のそれぞれをスピンコーターにてシリコンウエハー上に塗布(スピンコート)した。塗布後のシリコンウエハーをホットプレート上で220℃、1分間加熱し、膜厚100nmの被膜(保護膜)を形成した。次に、保護膜のレジスト溶剤耐性を確認するため、保護膜形成後のシリコンウエハーを、プロピレングリコールモノメチルエーテルとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを重量比7対3で混合した溶剤に1分間浸漬し、スピンドライ後に100℃、30秒間ベークした。混合溶剤を浸漬する前後の保護膜の膜厚を光干渉膜厚計(製品名:ナノスペック6100、ナノメトリクス・ジャパン株式会社製)で測定した。
【0107】
レジスト溶剤耐性の評価は、((溶剤浸漬前の膜厚)-(溶剤浸漬後の膜厚))÷(溶剤浸漬前の膜厚)×100の計算式から、溶剤浸漬によって除去された保護膜の膜厚減少率(%)を算出、評価した。結果を表1に示す。なお、膜厚減少率が約1%以下であれば十分なレジスト溶剤耐性を有すると言える。
【0108】
【0109】
上記の結果から、実施例1~実施例4及び比較例1~2のレジスト下層膜(保護膜)はレジスト溶剤に浸漬後も膜厚変化が非常に小さかった。よって、実施例1~実施例4の保護膜形成組成物はレジスト下層膜として機能するに十分なレジスト溶剤耐性を有している。
【0110】
[塩基性過酸化水素水への耐性試験]
塩基性過酸化水素水への耐性評価として、実施例1~実施例4及び比較例1~比較例2で調製されたレジスト下層膜形成組成物(保護膜形成組成物)のそれぞれを50nm膜厚の窒化チタン(TiN)蒸着基板に塗布し、220℃、1分間加熱することで、膜厚100nmとなるように保護膜を成膜した。次に、28%アンモニア水、33%過酸化水素、水をそれぞれ重量比1対4対20となるように混合し、塩基性過酸化水素水を調製した。前記のレジスト下層膜形成組成物(保護膜形成組成物)を塗布したTiN蒸着基板を50℃に加温したこの塩基性過酸化水素水中に浸漬し、浸漬直後から保護膜が基板から完全に剥離するまでの時間(剥離時間)を測定した。塩基性過酸化水素水への耐性試験の結果を表2に示す。尚、剥離時間が長くなるほど、塩基性過酸化水素水を用いたウエットエッチング液への耐性が高いと言える。
【0111】
【0112】
上記表の結果より、実施例1~実施例4で調製したレジスト下層膜形成組成物(保護膜形成組成物)を用いて作製した塗膜は、塩基性過酸化水素水溶液に対して十分な耐性を有することが示された。すなわち、これらの塗膜は、塩基性過酸化水素水溶液に対する保護膜となり得ることがわかった。また、実施例1~実施例4は、比較例1乃比較例2と比較して、塩基性過酸化水素水を用いたウエットエッチング液に対して良好な耐性を示すと言える。したがって、実施例1~実施例4は、比較例1~2と比較して、塩基性過酸化水素水に対して、良好な薬液耐性を示すことから、半導体用ウエットエッチング液に対する保護膜として一層有用である。
【0113】
[エッチング選択比の評価]
エッチング選択比の評価として、前記の実施例1~実施例4及び比較例1で調製されたレジスト下層膜形成組成物(保護膜形成組成物)のそれぞれをシリコンウエハー上に塗布し、220℃、1分間加熱することで、膜厚100nmとなるように保護膜を成膜した。次に、成膜した保護膜をドライエッチング装置(製品名:RIE-10NR、サムコ株式会社製)を用い、塩素ガス、及び窒素ガスと水素ガスの混合ガスによるドライエッチングを行うことで、保護膜のドライエッチング速度の比(ドライエッチング速度の選択比)を測定した。エッチング選択比の測定結果を表3に示す。尚、エッチング選択比が大きくなるほど、ドライエッチング速度が速いと言える。
【0114】
【0115】
上記の結果から、実施例1~実施例4は、比較例1と比較してドライエッチング選択比が高いため、ドライエッチング速度が速いと言える。すなわち、実施例1~実施例4は、保護膜を除去するために必要なドライエッチング時間を短縮できることから、下地基板へのダメージを低減することができるために有用である。
【0116】
すなわち、実施例1~実施例4は、比較例1~比較例2よりも塩基性過酸化水素水を用いた半導体用ウエットエッチング液への耐性に優れ、比較例1よりもエッチング速度が速い。よって、本発明によれば、高ウエットエッチング液耐性、高エッチング速度を併せ有する保護膜形成組成物を提供することができる。
【0117】
[光学パラメーターの評価]
本明細書に記載の実施例1~実施例3及び比較例1~比較例2で調製されたレジスト下層膜形成組成物(保護膜形成組成物)を、それぞれスピンコーターにてシリコンウエハー上に塗布(スピンコート)した。塗布後のシリコンウエハーをホットプレート上で220℃、1分間加熱し、保護膜形成組成物(膜厚100nm)を形成した。そして、これらの保護膜形成組成物を分光エリプソメーター(製品名:VUV-VASE VU-302、J.A.Woollam社製)を用い、波長193nmでのn値(屈折率)及びk値(減衰係数又は吸光係数)を測定した。光学パラメーターの測定結果を表4に示す。
【0118】
【0119】
[昇華物量の測定]
昇華物量の測定は国際公開第2007/111147号パンフレットに記載されている昇華物量測定装置を用いて実施した。まず、直径4インチのシリコンウエハー基板に、実施例1~実施例3、比較例1~比較例2で調製したレジスト下層膜形成組成物をスピンコーターにて、膜厚100nmとなるように塗布した。レジスト下層膜が塗布されたウエハーをホットプレートが一体化した前記昇華物量測定装置にセットし、120秒間ベークし、昇華物をQCM(Quartz Crystal Microbalance)センサー、すなわち電極が形成された水晶振動子に捕集した。QCMセンサーは、水晶振動子の表面(電極)に昇華物が付着するとその質量に応じて水晶振動子の周波数が変化する(下がる)性質を利用して、微量の質量変化を測定することができる。
【0120】
詳細な測定手順は、以下の通りである。昇華物量測定装置のホットプレートを表5に記載の測定温度に昇温し、ポンプ流量を2.4m3/sに設定し、最初の60秒間は装置安定化のために放置した。その後直ちに、レジスト下層膜が被覆されたウエハーをスライド口から速やかにホットプレートに乗せ、60秒の時点から180秒の時点(120秒間)の昇華物の捕集を行った。尚、前記昇華物量測定装置のQCMセンサーと捕集ロート部分の接続となるフローアタッチメント(検出部分)にはノズルをつけずに使用し、そのため、センサー(水晶振動子)との距離が30mmのチャンバーユニットの流路(口径:32mm)から、気流が絞られることなく流入する。また、QCMセンサーには、電極として珪素とアルミニウムを主成分とする材料(AlSi)を用い、水晶振動子の直径(センサー直径)が14mm、水晶振動子表面の電極直径が5mm、共振周波数が9MHzのものを用いた。
得られた周波数変化を、測定に使用した水晶振動子の固有値からグラムに換算し、レジスト下層膜が塗布されたウエハー1枚の昇華物量と時間経過との関係を明らかにした。尚、最初の60秒間は装置安定化のために放置した(ウエハーをセットしていない)時間帯であり、ウエハーをホットプレートに載せた60秒の時点から180秒の時点までの測定値がウエハーの昇華物量に関する測定値である。当該装置から定量したレジスト下層膜の昇華物量を昇華物量比として表5に示す。尚、昇華物量は比較例1の値を1と換算し示す。
【0121】
【0122】
[埋め込み性評価基板への埋め込み性評価]
50nmトレンチ(L(ライン)/S(スペース))を形成したシリコン基板に、CVD法にてシリコン酸化膜を20nm程度堆積させて作製した、シリコン酸化膜がトレンチ表面部に形成されたシリコン加工基板(シリコン酸化膜堆積後:10nmトレンチ(L(ライン)/S(スペース))上に、レジスト下層膜形成組成物を塗布した。その後、ホットプレート上で220℃1分間加熱し、レジスト下層膜を膜厚約100nmで形成した。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、実施例2で得たレジスト下層膜形成組成物を塗布したトレンチを有する基板の断面形状(
図1)を観察することにより、埋め込み性を評価した。実施例のレジスト下層膜形成組成物においては、シリコン酸化膜の間隙である10nmトレンチ(L(ライン)/S(スペース))基板へ、該組成物がボイド(空隙等)を生じることなく埋め込まれていることが分かる(
図2)。
本発明のレジスト下層膜形成組成物又は保護膜形成組成物は、半導体リソグラフィー工程におけるレジスト下層膜として、さらには半導体基板をウエットエッチング加工する場合の保護膜として有用である。
請求項1~7いずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し焼成してレジスト下層膜を形成する工程、該レジスト下層膜上にレジスト膜を形成し、次いで露光、現像してレジストパターンを形成する工程を含み、半導体の製造に用いることを特徴とするレジストパターン付き基板の製造方法。
表面に無機膜が形成されていてもよい半導体基板上に、請求項1~7何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を用いてレジスト下層膜を形成し、前記レジスト下層膜上にレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクとして前記レジスト下層膜をドライエッチングし、前記無機膜又は前記半導体基板の表面を露出させ、ドライエッチング後の前記レジスト下層膜をマスクとして、前記無機膜又は前記半導体基板をエッチングする工程を含む半導体装置の製造方法。
表面に無機膜が形成されていてもよい半導体基板上に、請求項9~11何れか1項に記載の保護膜形成組成物を用いて保護膜を形成し、前記保護膜上にレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをマスクとして前記保護膜をドライエッチングし、前記無機膜又は前記半導体基板の表面を露出させ、ドライエッチング後の前記保護膜をマスクとして、半導体用ウエットエッチング液を用いて前記無機膜又は前記半導体基板をウエットエッチング及び洗浄する工程を含む半導体装置の製造方法。