(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105258
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ケイ素含有膜を調製するための前駆体及び方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/10 20060101AFI20240730BHJP
C23C 16/42 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
C07F7/10 E CSP
C23C16/42
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024063161
(22)【出願日】2024-04-10
(62)【分割の表示】P 2022559935の分割
【原出願日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】63/002,855
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リー, サンジン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ダヘ
(72)【発明者】
【氏名】チョ, スンシル
(72)【発明者】
【氏名】チャン, ソポン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ジェオン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリックス, ブライアン シー.
(72)【発明者】
【氏名】バウム, トーマス エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】リー, スジン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マイクロエレクトロニクスデバイスの製造における、特に窒化ケイ素、二酸化ケイ素、及び酸窒化ケイ素膜の形成に利用される低温蒸着技術を利用するプロセスにおける、ケイ素含有膜の形成のための改善された有機ケイ素前駆体及びプロセスを提供する。
【解決手段】マイクロエレクトロニクスデバイスの表面上にケイ素含有膜を堆積させるための方法であって、式(I):
(式中、各R
1は、水素、C
1~C
4アルキル、又はCl、Br及びIから選択されるハロゲン原子から独立して選択される。)の少なくとも1つの化合物を、蒸気堆積条件下で、反応チャンバ内の前記表面に導入することを含む、方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
(式中、各R
1は、水素、C
1~C
4アルキル、又はCl、Br及びIから選択されるハロゲン原子から独立して選択される。)の化合物。
【請求項2】
各R1がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
各R1がメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
各R1がエチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
各R1が、Cl、Br及びIから選択されるハロゲン原子である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式(I):
(式中、各R
1は、水素、C
1~C
4アルキル、又はCl、Br及びIから選択されるハロゲン原子から独立して選択される。)の化合物を調製するための方法であって、
A.式:
の化合物を式M-R
3(式中、Mは、リチウム又はカリウムであり、R
3は、窒素原子を任意選択で含むC
1~C
6アルキル基である。)の化合物と接触させて、式(II):
(式中、各R
1は、水素、C
1~C
4アルキル、又はCl、Br及びIから選択されるハライド原子から独立して選択され、R
2は、リチウム又はカリウムから選択される。)の化合物を提供する工程と、その後に
B.式(II)の化合物を式:
(式中、Xは、ハロゲンである。)の化合物と反応させる工程と
を含む、方法。
【請求項7】
各R1がメチルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式M-R3の化合物が、n-ブチルリチウム、メチルリチウム、t-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、メチルカリウム、及びn-ブチルカリウムから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
各R1がメチルであり、Xがクロロであり、Mがリチウムである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
式(II):
(式中、各R
1は、水素、C
1~C
4アルキル、又はCl、Br及びIから選択されるハロゲン原子から独立して選択され、R
2は、リチウム又はカリウムから選択される。)の化合物。
【請求項11】
各R1がメチルであり、R2がリチウムである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
各R1がメチルであり、R2がカリウムである、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
各R2がエチルである、請求項10に記載の化合物。
【請求項14】
マイクロエレクトロニクスデバイスの表面上にケイ素含有膜を堆積させるための方法であって、
式(I):
(式中、各R
1は、水素、C
1~C
4アルキル、又はCl、Br及びIから選択されるハロゲン原子から独立して選択される。)の少なくとも1つの化合物を、蒸気堆積条件下で、反応チャンバ内の前記表面に導入することを含む、方法。
【請求項15】
ケイ素含有膜が二酸化ケイ素である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ケイ素含有膜が窒化ケイ素である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
蒸気堆積条件が、化学蒸着(CVD)、原子層堆積(ALD)、プラズマ強化ALD(PEALD)、プラズマ強化周期性化学蒸着(PECCVD)、流動性化学蒸着(FCVD)、プラズマ強化ALD様プロセス、又は酸素含有反応物、窒素含有反応物、若しくはそれらの組合せを用いるALDプロセスから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
蒸気堆積条件が、約150℃~約650℃の温度と、
(v)0.1~30秒間の式(I)の前駆体の注入工程、その後に、
(vi)不活性ガスを使用した1~30秒間のパージング工程、その後に、
(vii)約0.1~30秒間の50~500sccmの流速でのオゾンの注入工程、その後に、
(viii)不活性ガスを使用した1~30秒間のパージング、及び所望の厚さの膜が得られるまで工程(i)~(iv)を繰り返す工程
を含むパルシングシーケンスと
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
式(I)の化合物がビス(ジメチルシリル)ジメチルヒドラジンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
温度が約500~550℃である、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、本発明は、マイクロエレクトロニクスデバイス表面上へのケイ素含有膜の堆積のための方法及び前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造において、窒化ケイ素(Si3N4)、酸窒化ケイ素(SiOxNy)、炭化ケイ素(SiC)、窒化炭化ケイ素(SiCN)、及び窒化酸化ケイ素(SiCO)及び/又は二酸化ケイ素(SiO2)などの化学的に不活性な誘電材料の薄い(例えば、<1000ナノメートルの厚さ)不動態層は、側壁スペーサ要素、拡散マスク、酸化バリア、トレンチ分離コーティング、金属間誘電材料、パッシベーション層、絶縁体、及びエッチング停止層などの多層デバイスの構造要素として機能するために、マイクロエレクトロニクスデバイス構造に広く使用されている。
【0003】
化学蒸着技術によるケイ素含有膜の堆積は、そのような膜を形成するための非常に魅力的な方法論である。低い堆積温度、例えば約550℃未満の温度を伴うCVDプロセスが特に望ましいが、そのような目的のために適切なケイ素前駆体化合物の利用可能性が必要である。場合によっては、集積回路の熱履歴が許容する場合、より高い堆積温度を考慮することができる。これらの場合、特に高品質の二酸化ケイ素膜が所望される場合、誘電膜の所望の特性を達成するために>450℃の温度が利用され得る。非常に高品質の膜が必要とされ、高い熱履歴が許容される状況では、高温に対して安定な原料物質が、高アスペクト比構造にわたって均一な工程カバレッジを与える飽和ALDパルスを可能にするので好ましい。
【0004】
窒化ケイ素(SiN)は、その高いウェットエッチング耐性及びO2アッシング耐性のために、FinFET及びゲートオールアラウンド(GAA)構造のためのソース及びドレインスペーサ(S/Dスペーサ)に使用されてきた。残念ながら、SiNは、誘電率(k)が約7.5と高い。誘電率を低減し、堆積後処理中に優れたウェットエッチング耐性及びアッシング耐性を維持するために、炭素及び窒素ドープSiO2(SiCON)スペーサが開発されている。現在、最良のウェットエッチング及びアッシング耐性SiCON誘電体は、約4.0のk値を有する。次世代デバイスには、<3.5のk値を有するウェットエッチング及びアッシング抵抗誘電体が必要である。
【0005】
さらに、マイクロエレクトロニクスデバイスの製造における、特に窒化ケイ素、二酸化ケイ素、及び酸窒化ケイ素膜の形成に利用される低温蒸着技術を利用するプロセスにおける、ケイ素含有膜の形成のための改善された有機ケイ素前駆体及びプロセスが依然として必要とされている。特に、貯蔵及び気相輸送中の良好な熱安定性、高い揮発性、及び基板表面との反応性を有する液体ケイ素前駆体が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、一般に、半導体デバイスの製造におけるケイ素含有膜の形成に関し、より具体的には、比較的低温での特定の場合において、ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、炭素ドープ窒化ケイ素、又は炭素ドープ酸窒化ケイ素膜を含む膜などの、そのようなケイ素含有膜を形成するための組成物及び方法に関する。
【0007】
本明細書に記載の式(I)の化合物は、そのような様々なケイ素含有膜の形成における前駆体化合物として有用である。有利には、本発明の前駆体は、低温蒸気堆積条件下で使用して、高品質の窒化膜を形成することができる一方で、比較的高温で高品質及び高成長速度の二酸化ケイ素膜を形成するのにも使用することができる。したがって、この汎用性は、式(I)の前駆体の柔軟性を示す。一実施形態では、ビス(ジメチルシリル)ジメチルヒドラジンなどの式(I)の化合物はまた、従来のケイ素前駆体と比較して、より高い二酸化ケイ素膜の堆積速度を提供することができる。同様に、式(I)の化合物を利用して、より高い成長速度で窒化ケイ素膜を調製することができる。(以下の
図5を参照されたい。)SiN及びSiCNの膜を、N
2、NH
3共反応物の存在下、同様の条件下で堆積させた。蒸気堆積条件及び化学蒸着(CVD)、原子層堆積(ALD)、プラズマ強化ALD(PEALD)、プラズマ強化周期性化学蒸着(PECCVD)、流動性化学蒸着(FCVD)、プラズマ強化ALD様プロセス、又は酸素含有反応物、窒素含有反応物、若しくはそれらの組合せを用いるALDプロセスなどのプロセスを含めたプロセスをこれらの前駆体化合物と共に利用して、ケイ素含有膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ビス(ジメチルシリル)ジメチルヒドラジン(各R
1がメチルである以下の式(I))、及び酸化性共反応ガスとしてのオゾンを使用して、500℃、550℃、及び600℃の3つの温度で行われた、サイクルあたりのオングストローム単位のSiO
2成長速度対秒単位のパルス時間の描写である。<600℃の基板温度でALD飽和曲線が観察され、より低い温度での飽和ALD挙動を示している。>2.5Å/サイクルの高いSiO
2成長速度が550℃で認められた。
【
図2】
図1に記載の同様のプロセスによって堆積された純粋なSiO
2膜について、秒単位のエッチング時間(深さプロファイリング)の関数としてX線光電子分光法(XPS)によって測定された原子百分率のグラフである。膜上の環境キャップ層を除去した後、NもCも観察されない。Si:O含有量の相対比は、SiO
2膜の組成を反映している。
【
図3】18:1のアスペクト比を有するSiN/SiO
2/Siトレンチ構造上に、
図1に記載の前駆体化学及びプロセスによって達成される、>92%の共形工程カバレッジを有するSiO
2膜の堆積を示す図である。
【
図4】様々な基板温度でのビス(ジメチルシリル)ジメチルヒドラジン(BDMSDMH)から堆積した膜とビス(t-ブチルアミノ)シラン(BTBAS)から堆積した膜のウェットエッチング速度の比較を示す図である。ウェットエッチングは、200:1のHF水溶液で行った。この場合のウェットエッチング速度は、BTBASからの膜と比較した場合、ビス(ジメチルシリル)ジメチルヒドラジン前駆体から堆積した膜の約>60%の改善を表す。ウェットエッチング速度はまた、熱酸化物(SiO
2)のウェットエッチング速度と比較される。
【
図5】250℃で前駆体としてビス(ジメチルシリル)ジメチルヒドラジンを使用し、200ワットのプラズマ出力で300sccmの窒素流速で、窒化ケイ素堆積プロセスに関するN
2プラズマ曝露の影響下でのケイ素パルス時間の関数としてのサイクルあたりの成長速度を示す図である。利用したサイクルシークエンスは、(i)x軸上にプロットされたパルス長を有する前駆体、(ii)20秒間のパージ、(iii)15秒間(正方形)又は20秒間(円形)の窒素プラズマ、その後の(iv)20秒間のパージであった。
【
図6】15秒のプラズマ曝露時間を有する
図5に記載の同様の反応器及びプラズマ堆積条件下で、前駆体としてビス(ジメチルシリル)ジメチルヒドラジンの異なるパルス時間を使用した場合のサイクルあたりの成長速度に及ぼす窒素プラズマ出力(200ワット又は300ワット)の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「又は」という用語は、一般に、その内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、「及び/又は」を含む意味で使用される。
【0010】
用語「約」は、一般に、列挙された値と等価である(例えば、同じ機能又は結果を有する)と考えられる数の範囲を指す。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められた数字を含み得る。
【0011】
端点を使用して表される数値範囲は、その範囲内に包含されるすべての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5を含む。)。
【0012】
第1の態様では、本発明は、式(I):
(式中、各R
1は、水素、C
1~C
4アルキル、又はCl、Br及びIから選択されるハロゲン原子から独立して選択される。)の化合物を提供する。一実施形態では、各R
1は、メチルである。
【0013】
式(I)の化合物は、マイクロエレクトロニクスデバイスの表面上へのケイ素含有膜の堆積のための前駆体として有用である。特定の実施形態では、膜はまた、窒素及び/又は酸素及び/又は炭素を含有する。
【0014】
したがって、第2の態様では、本発明は、マイクロエレクトロニクスデバイスの表面上にケイ素含有膜を堆積させるための方法であって、式(I)の少なくとも1つの化合物を、蒸気堆積条件下で、反応チャンバ内の前記表面に導入することを含む、方法を提供する。
式(I)の化合物は、以下の反応スキームに従って調製することができる。
【0015】
工程1:
工程1では、クロロシランをジメチルヒドラジンと反応させて、シリルヒドラジド中間体及びヒドラジン塩酸塩副生成物を得る。
【0016】
工程2:
上記の工程2に示すように、ヒドラジドジメチルシラン(又は他のいくつかのヒドラジド(R
1)
2--シラン)をn-ブチルリチウム又は窒素原子を任意選択で含有する他のいくつかの反応性アルカリ金属C
1~C
6アルカンと反応させることができる。他の潜在的な反応物としては、メチルリチウム、t-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、メチルカリウム、n-ブチルカリウムなどが挙げられ、以下に示すような新規中間体(II):
(式中、各R
1は、水素、C
1~C
4アルキル、又はCl、Br及びIから選択されるハロゲン原子から独立して選択され、R
2は、リチウム又はカリウムから選択される。)が得られ、これは、今度は式(I)の化合物の合成に有用である。次いで、式(II)の化合物を、このスキームにおいて、例えば、クロロジメチルシランと反応させる。したがって、本発明の第3の態様では、上記の式(II)の化合物が提供される。
【0017】
したがって、本発明の第4の態様では、式(I)の化合物:
(式中、各R
1は、水素、C
1~C
4アルキル、又はCl、Br及びIから選択されるハロゲン原子から独立して選択される。)を調製するための方法であって、
A.式:
の化合物を式M-R
3(式中、Mは、リチウム又はカリウムであり、R
3は、窒素原子を任意選択で含むC
1~C
6アルキル基である。)の化合物と接触させて、式(II):
(式中、各R
1は、水素、C
1~C
4アルキル、又はCl、Br及びIから選択されるハライド原子から独立して選択され、R
2は、リチウム又はカリウムから選択される。)の化合物を提供する工程と、その後に
B.式(II)の化合物を式:
式中、Xは、ハロゲンである。)の化合物と反応させる工程と
を含む方法が提供される。
【0018】
本明細書で使用される場合、ケイ素含有膜という用語は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、酸炭窒化ケイ素、Low-k薄ケイ素含有膜などの膜を指す。
【0019】
特定の実施形態では、蒸気堆積条件は、化学蒸着、パルス化学蒸着、及び原子層堆積として知られる反応条件を含む。パルス化学蒸着の場合、中間(不活性ガス)パージ工程の有無にかかわらず、前駆体化合物及び共反応体の一連の交互パルスを利用して、膜厚を所望の終点まで構築することができる。
【0020】
式(I)の化合物は、ケイ素含有膜の低温CVD及び/又はALD形成が可能である。そのような化合物は、高い揮発性及び化学反応性を示すが、前駆体の揮発又は気化に伴う温度での熱分解に対して安定であり、得られた前駆体蒸気の堆積ゾーン又は反応チャンバへの一貫した繰り返し可能な輸送を可能にする。
【0021】
特定の実施形態では、上記の前駆体化合物のパルス時間(すなわち、基板への前駆体曝露の持続時間)は、約0.1~30秒の範囲である。他の実施形態では、共反応物のパルス時間は、約0.1~約30秒の範囲である。
【0022】
一実施形態では、蒸気堆積条件は、約50℃~約750℃の温度を含む。別の実施形態では、蒸気堆積条件は、約200℃~約650℃の温度を含む。別の実施形態では、蒸着物は、約500℃~550℃の温度を含む。
【0023】
一実施形態では、蒸気圧条件は、約0.5~約1000トルの圧力を含む。
【0024】
上記の化合物は、CVD、デジタル(パルス)CVD、ALD、及びパルスプラズマプロセス(PEALD)などの任意の適切な蒸着技術によって高純度の薄いケイ素含有膜を形成するために用いることができる。そのような蒸着プロセスを利用して、約250℃~約550℃の蒸着温度を利用してマイクロエレクトロニクスデバイス上にケイ素含有膜を形成し、約20オングストローム~約2000オングストロームの厚さを有する膜を形成することができる。
【0025】
本発明の方法では、上記化合物は、任意の適切な方法で、例えば、単一ウエハCVD、ALD及び/若しくはPECVD若しくはPEALDチャンバ内で、又は複数のウエハを含む炉内で所望のマイクロエレクトロニクスデバイス基板と反応させることができる。
【0026】
あるいは、本発明の方法は、ALD又はALD様プロセスとして行うことができる。本明細書で使用される場合、「ALD又はALD様」という用語は、(i)式(I)のケイ素前駆体化合物並びに酸化及び/又は還元ガスを含む各反応物が、単ウエハALD反応器、半バッチALD反応器、又はバッチ炉ALD反応器などの反応器に順次導入される、又は(ii)式(I)のケイ素前駆体化合物並びに酸化及び/又は還元ガスを含む各反応物が、反応器の異なるセクションに基板を移動又は回転させることによって基板又はマイクロエレクトロニクスデバイス表面に順次曝露され、各セクションが不活性ガスカーテン、すなわち空間ALD反応器又はロールツーロールALD反応器によって分離されるプロセスなどのプロセスを指す。
【0027】
一態様では、本発明は、水素プラズマ又は窒素プラズマと共に、本明細書に記載の式(I)の前駆体を使用して低いウェットエッチング速度を堆積させるためのプラズマ増強原子層堆積プロセス(PEALD)プロセスに関する。窒素プラズマは、式(I)の前駆体化合物と併せて使用される窒化ケイ素膜の形成に有用である。
【0028】
したがって、別の実施形態では、上記の蒸着プロセスは、膜を還元ガスに曝露することを伴う工程をさらに含んでもよい。本発明の特定の実施形態では、還元ガスは、H2、ヒドラジン(N2H4)、メチルヒドラジン、t-ブチルヒドラジン、1,1-ジメチルヒドラジン、1,2-ジメチルヒドラジン、アルキルアミン、ピリジン、及びNH3から選択されるガスから構成される。
【0029】
別の実施形態では、蒸着プロセスは、前駆体をO2、O3、N2O、水蒸気、アルコール、又は酸素プラズマなどの酸化ガスに曝露して、二酸化ケイ素膜を形成することを伴う工程をさらに含んでもよい。R1がハロである場合、水及びアルコールなどの酸化剤を、ピリジン、アルキルアミン、N,N’-ジメチルホルムアミド、及びアンモニアなどの塩基と共に使用することができる。特定の実施形態では、酸化ガスは、アルゴン、ヘリウム、窒素、又はそれらの組合せなどの不活性ガスをさらに含む。別の実施形態では、酸化ガスは、窒素、亜酸化窒素、又はアンモニアをさらに含み、これらは、プラズマ条件下で式(I)の前駆体と反応して、酸窒化ケイ素膜を形成することができる。
【0030】
一般に、式(I)の前駆体化合物を使用して作製された所望の膜は、還元又は酸化共反応物の利用と合わせて、各化合物及び反応条件の選択によって調整することができる。例えば、以下のスキーム1を参照されたい:
【0031】
ビス(ジメチルシリル)ジメチルヒドラジン(各R1がメチルである場合の式(I))の場合、得られたSiO2膜は、450℃で1.3Å/サイクルの成長速度を示し、酸素プラズマプロセスで非常に速い表面飽和度を示した。
【0032】
一実施形態では、急速に成長する二酸化ケイ素膜を提供するために、オゾン(O3)などの酸化ガスが蒸着プロセスにおいて利用される。一実施形態では、温度は、約500℃~600℃である。オゾンプロセスの場合、1.9~約5.8Å/サイクルの成長速度が観察された。さらに、得られたSiO2膜のウェットエッチング速度は、ケイ素前駆体としてBTBAS(ビス(t-ブチルアミノ)シラン)を利用する比較膜よりも改善を示した。
【0033】
二酸化ケイ素膜の場合、例示的なパルシング方式には以下が含まれる。
(i)0.1~30秒間の式(I)の前駆体の注入、その後の、
(ii)1~30秒間の不活性ガスを用いたパージング、その後の、
(iii)約0.1~30秒間の50~500sccm(標準立方センチメートル毎分)の流速でのオゾンの注入、その後の
(iv)1~30秒間の不活性ガスを用いたパージング。(1サイクル)。したがって、所望の厚さの膜が得られるまで、工程(i)~(iv)を繰り返すことができる。
【0034】
したがって、別の実施形態では、本発明は、二酸化ケイ素膜を調製するための方法であって、蒸気堆積条件が、約150℃~約650℃の温度と、
(i)0.1~30秒間の式(I)の前駆体の注入工程、その後に、
(ii)不活性ガスを使用した1~30秒間のパージング工程、その後に、
(iii)約0.1~30秒間の50~500sccmの流速でのオゾンの注入工程、その後に、
(iv)不活性ガスを使用した1~30秒間のパージング、及び所望の厚さの膜が得られるまで工程(i)~(iv)を繰り返す工程
を含むパルシングシーケンスとを含む、方法を提供する。
【0035】
一実施形態では、窒化ケイ素膜を提供するための蒸着プロセスにおいて窒素プラズマが利用される。一実施形態では、温度は、約200℃~300℃である。ビス(ジメチルシリル)ジメチルヒドラジンの場合、200ワット~300ワットの出力、100~300sccmの流速のN2の窒素プラズマで利用され、窒化ケイ素が提供される。
【0036】
窒化ケイ素膜の場合、例示的なパルシング方式には以下が含まれる。
(i)式(I)の前駆体を0.1~30秒間注入すること、その後の、
(ii)不活性ガスを用いて1~30秒間パージングすること、その後の
(iii)N2を用いて、50~500sccmの流速、約50ワット~1000ワットの出力で、0.1~30秒間、窒素プラズマを注入、その後の、
(iv)プラズマ曝露後に不活性ガスを使用した1~30秒の任意選択のパージ。(1サイクル)。したがって、所望の厚さの膜が得られるまで、工程(i)~(iv)を繰り返すことができる。
【0037】
したがって、別の実施形態では、窒化ケイ素膜の調製において、蒸気堆積条件は、約150℃~約300℃の温度と、約0.1~約5トルの圧力と、
(i)0.1~30秒間の式(I)の前駆体の注入、その後の、
(ii)不活性ガスを使用した1~30秒間のパージ、その後の、
(iii)0.1~30秒間の50~500sccmの流速、約50ワット~500ワットの出力でのN2を使用した窒素プラズマの注入、その後の、
(iv)プラズマ曝露後の不活性ガスを使用した1~30秒の任意選択のパージ、及び所望の厚さの膜が得られるまで工程(i)~(iv)を繰り返すこと
を含むパルシングシーケンスとを含む。
【0038】
式(I)の前駆体化合物を使用している間、そのような膜への炭素及び窒素の取込みは、そのような化合物の組成の自然な結果であり、プロセス条件は、これらの元素の取込み又は排除を促進するように調整することができる。さらに、炭素の取込みが望まれる場合、例えば、メタン、エタン、エチレン又はアセチレンの形態の炭素を利用して、炭素含有量をケイ素含有膜にさらに導入し、それによって炭化ケイ素、炭窒化ケイ素又はケイ素カルボオキシドを作製することができる。
【0039】
本明細書に開示される堆積方法は、1つ又は複数のパージガスを伴うことができる。未消費の反応物及び/又は反応副生成物をパージするために使用されるパージガスは、前駆体と反応しない不活性ガスである。例示的なパージガスには、アルゴン、窒素、ヘリウム、ネオン、水素、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、Arなどのパージガスを約10~約2000sccmの範囲の流速で約0.1~1000秒間反応器に供給し、それによって未反応材料及び反応器内に残留し得るすべての副生成物をパージする。ガス、例えば窒素は、不活性であり、プラズマによって活性化されない場合はパージとして作用するが、プラズマによって活性化される場合は共反応物であることに留意されたい。
【0040】
ケイ素前駆体化合物、酸化ガス、還元ガス、及び/又は他の前駆体、原料ガス、及び/又は試薬を供給するそれぞれの工程は、それらを供給するためのシークエンスを変更すること、及び/又は得られる誘電体膜の化学量論組成を変更することによって実行され得る。
【0041】
式(I)のケイ素前駆体化合物及び酸化ガス、還元ガス、又はそれらの組合せの少なくとも1つにエネルギーを加えて、反応を誘導し、マイクロエレクトロニクスデバイス基板上にケイ素含有膜を形成する。そのようなエネルギーは、熱、パルス熱、プラズマ、パルスプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導結合プラズマ、X線、電子ビーム、光子、リモートプラズマ法、及びそれらの組合せによって提供され得るが、これらに限定されない。特定の実施形態では、二次RF周波数源を使用して、基板表面のプラズマ特性を修正することができる。他の実施形態では、プラズマと基板との間にDCバイアスを維持することができる。堆積がプラズマを伴う実施形態では、プラズマ生成プロセスは、プラズマが反応器内で直接生成される直接プラズマ生成プロセス、又は代替的に、プラズマが反応ゾーン及び基板の「遠隔」で生成され、反応器内に供給される遠隔プラズマ生成プロセスを含み得る。
【0042】
本明細書で使用される場合、「マイクロエレクトロニクスデバイス」という用語は、マイクロエレクトロニクス、集積回路、又はコンピュータチップ適用で使用するために製造された、3D NAND構造、フラットパネルディスプレイ、及び微小電子機械系(MEMS)を含む半導体基板に対応する。「マイクロエレクトロニクスデバイス」という用語は、決して限定することを意味するものではなく、負チャネル金属酸化膜半導体(nMOS)及び/又は正チャネル金属酸化膜半導体(pMOS)トランジスタを含み、最終的にマイクロエレクトロニクスデバイス又はマイクロエレクトロニクスアセンブリになる任意の基板を含むことを理解されたい。そのようなマイクロエレクトロニクスデバイスは、例えば、ケイ素、SiO2、Si3N4、OSG、FSG、炭化ケイ素、水素化炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化炭窒化ケイ素、窒化ホウ素、反射防止コーティング、フォトレジスト、ゲルマニウム、ゲルマニウム含有、ホウ素含有、Ga/As、可撓性基板、及び多孔質無機材料、銅、アルミニウム、コバルト、タングステン、モリブデン、ルテニウム、及びイリジウムなどの金属、並びに並びにTiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、WN、WC、MoC又はMoNなどであるがこれらに限定されない拡散バリア層から選択することができる少なくとも1つの基板を含む。膜は、例えば、化学機械平坦化(CMP)及び異方性エッチング工程などの様々な後続の処理工程に適合する。
【0043】
本発明は、その特定の実施形態の以下の例によってさらに説明することができるが、これらの実施例は、単に例示の目的で含まれ、特に明記しない限り本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されよう。
【実施例0044】
実施例1-ジメチルヒドラジドージメチルシランの合成
N,N’-ジメチルヒドラジン(88.93g、1.48mol)のn-ペンタン(350g、4.85mol)氷冷溶液に、クロロジメチルシラン(70g、0.74mol)のn-ペンタン(70g、0.97mol)溶液を滴下し、-10℃未満で撹拌した。クロロジメチルシラン溶液を添加した後、反応混合物を室温で5時間撹拌した。得られた白色スラリーをろ過し、n-ペンタン(125g)で洗浄した。揮発性物質を除去した後、得られた粗生成物を50℃、240トルでの単蒸留によって精製し、標題化合物を無色液体として得た(62.50g、71.4%)。
【0045】
実施例2-ビス(ジメチルシリル)ジメチルヒドラジンの合成
ジメチルヒドラジド-ジメチルシラン(60g、0.507mol)のn-ヘキサン(210g、2.44mol)溶液に、n-ブチルリチウムのn-ヘキサン(203mL、2.5mol)溶液を-20℃で滴下した。n-ブチルリチウム溶液を添加した後、反応混合物を室温で2時間撹拌し、次いで10℃に冷却した。この反応混合物に、クロロジメチルシランのn-ヘキサン溶液を滴下し、室温で5時間撹拌した。得られた白色スラリーをろ過し、n-ヘキサン(90g)で洗浄した。揮発性物質を除去した後、得られた粗生成物を80℃、80トルでの単蒸留によって精製して、最終生成物を無色の液体として得た(78.71g、63.5%)。
【0046】
実施例3-二酸化ケイ素膜の堆積
ケイ素前駆体として、ビス(ジメチルシリル)ジメチルヒドラジン蒸気を使用して、酸化ケイ素膜を堆積した。ビス(ジメチルシリル)ジメチルヒドラジンを室温でバブラーに入れた。ダブルシャワーヘッドALD反応器を使用して、ウエハ温度として500~600℃のオゾン共反応物を用いてケイ素ウエハ上に酸化ケイ素膜を堆積させた。反応器の圧力は、0.5~1.5トルに制御した。酸化ケイ素膜を、以下のパルスシークエンス、28秒のケイ素前駆体パルスパルス、20秒のArパージ、25秒のオゾンパルス及び20秒のArパージを使用して形成した。このシークエンスを160サイクル繰り返し、400Åの膜厚を得た。堆積速度は、膜中に炭素及び塩素不純物がなく、550℃で約2.5Å/サイクルで飽和した。0.2%HF希釈溶液を使用して、膜のウェットエッチング速度を51.4Å/分で得た。
【0047】
実施例4-窒化ケイ素膜の堆積
ケイ素原料前駆体材料として、ビス(ジメチルシリル)ジメチルヒドラジンを使用して、窒化ケイ素膜を堆積した。BDMSDMHのバブラーを室温(約23℃)に保持し、反応器の圧力を0.5~1.5トルに制御した。以下のパルスシークエンスを使用して窒化ケイ素膜を形成した:28秒のケイ素前駆体パルス、20秒のArパージ、200又は300Wでの13.56MHzの周波数パルスでの15又は20秒の直接窒素プラズマ、及び20秒のArパージ。このシークエンスを170サイクル繰り返し、200Åの膜厚を得た。このプロセスは、膜中に炭素及び塩素不純物がなく、300℃で約1.16Å/サイクルで飽和した。
【0048】
本発明は、その特定の実施形態を特に参照して詳細に説明されているが、本発明の趣旨及び範囲内で変形及び修正を行うことができることが理解されよう。
【0049】
このように本開示のいくつかの例示的な実施形態を記載してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲内でさらに他の実施形態を作製及び使用することができることを容易に理解するであろう。本文書によってカバーされる本開示の多くの利点は、前述の記載に記載されている。しかしながら、本開示は、多くの点で例示にすぎないことが理解されよう。本開示の範囲を超えることなく、詳細、特に部品の形状、サイズ、及び配置に関する事項を変更することができる。本開示の範囲は、当然のことながら、添付の特許請求の範囲が表現される文言で定義される。
蒸気堆積条件が、化学蒸着(CVD)、原子層堆積(ALD)、プラズマ強化ALD(PEALD)、プラズマ強化周期性化学蒸着(PECCVD)、流動性化学蒸着(FCVD)、プラズマ強化ALD様プロセス、又は酸素含有反応物、窒素含有反応物、若しくはそれらの組合せを用いるALDプロセスから選択される、請求項1に記載の方法。