(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105316
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 16/455 20060101AFI20240730BHJP
B05B 7/04 20060101ALI20240730BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20240730BHJP
B05B 1/04 20060101ALN20240730BHJP
B05D 1/02 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
C23C16/455
B05B7/04
C23C26/00 B
B05B1/04
B05D1/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024068752
(22)【出願日】2024-04-22
(62)【分割の表示】P 2022539490の分割
【原出願日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2020126079
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】奥井 公太郎
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 義昭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 健至
(57)【要約】 (修正有)
【課題】微細なナノ粒子(材料粒子)を含むミストをキャリア気体に乗せて被処理基板に噴霧し、被処理基板の表面にナノ粒子による材料物質の膜を堆積させる成膜装置を提供する。
【解決手段】ミストを物体の表面に供給して前記物体の表面に前記ミストが含む材料物質の膜を成膜する成膜装置は、前記ミストを発生させるミスト発生部と、前記ミスト発生部で発生した前記ミストを空間SOに導入する導入口13aと、前記空間から前記物体の表面に前記ミストを供給する供給口APとを有するミスト供給部とを有する。前記供給口は、第1方向と第2方向とが交差する前記供給口を含み、前記ミストが通過する第1所定平面内の前記第1方向において前記導入口と異なる位置に設けられる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミストを物体の表面に供給して前記物体の表面に前記ミストが含む材料物質の膜を成膜する成膜装置であって、
前記ミストを発生させるミスト発生部と、
前記ミスト発生部で発生した前記ミストを空間に導入する導入口と、
前記空間から前記物体の表面に前記ミストを供給する供給口とを有するミスト供給部とを有し、
前記供給口は、第1方向と第2方向とが交差する前記供給口を含み、前記ミストが通過する第1所定平面内の前記第1方向において前記導入口と異なる位置に設けられる、成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細なナノ粒子(材料粒子)を含むミストをキャリア気体に乗せて被処理基板に噴霧し、被処理基板の表面にナノ粒子による材料物質の膜を堆積させる成膜装置、ミスト成膜装置、および導電膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスの製造過程では、電子デバイスが形成される基板(被処理対象)の表面に各種の材料物質による薄膜を形成する成膜工程(成膜処理)が実施されている。成膜工程での成膜方法には各種の方式があり、近年、材料物質の微粒子(ナノ粒子)を含む溶液から発生させたミストを基板の表面に噴霧し、基板に付着したミスト(溶液)に含まれる溶媒成分を反応又は蒸発させて、基板の表面に材料物質(金属材料等)による薄膜を形成するミスト成膜法が注目されている。
【0003】
国際公開第2012/124047号には、ミスト発生器から発生させた成膜の原料となるミストを基板へと噴射するミスト噴射用ノズルを設けたミスト成膜装置が開示されている。国際公開第2012/124047号のミスト噴射用ノズルは、中空部を有する本体部と、その本体部の横方向に設けられて、ミストを本体部内に供給するミスト供給口と、ミストを基板に向けて噴射するスリット状の噴出口と、本体部の上方に設けられて、本体内にキャリアガスを供給するキャリアガス供給口と、本体内のミスト供給口よりも上方に配置されて、複数の孔が形成されたシャワープレートと、を備えている。そのシャワープレートの配設によって、本体内の中空部は、キャリアガス供給口と接続される第1の空間と、ミスト供給口と噴出口とに接続される第2の空間とに分割され、キャリアガスがシャワープレートを経ることで均一化されて第2の空間内へ流れ込み、それによって噴出口から基板に吹き付けられるミストを均一化している。
【0004】
このように、ミスト噴射用ノズルの本体内の中空部にシャワープレートを設けて、第2の空間内に流れ込む際のキャリアガスの分布を均一化する場合、第2の空間内に横方向から供給されるミストの分布がスリット状の噴出口の長手方向(スリット長手方向)に関して一様化されていないと、最終的に基板に噴霧されるミストの濃度分布をスリット長手方向に良好に均一化することが難しい。
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様は、ミストを物体の表面に供給して前記物体の表面に前記ミストが含む材料物質の膜を成膜する成膜装置であって、前記ミストを発生させるミスト発生部と、前記ミスト発生部で発生した前記ミストを空間に導入する導入口と、前記空間から前記物体の表面に前記ミストを供給する供給口とを有するミスト供給部とを有し、前記供給口は、第1方向と第2方向とが交差する前記供給口を含み、前記ミストが通過する第1所定平面内の前記第1方向において前記導入口と異なる位置に設けられる。
【0006】
本発明の第2の態様は、キャリアガスに含まれるミストを物体の表面に供給して前記物体の表面に前記ミストが含む材料物質の膜を成膜する成膜装置であって、前記物体を表面に沿った第1方向に移動させる移動機構と、前記物体の表面から所定の間隔で対向した先端部から前記ミストを、前記第1方向と交差した第2方向にスリット状に延びた分布で噴出するように、前記先端部に形成された供給口と、前記ミストの導入口から前記供給口まで、前記ミストを前記第2方向に広がった空間内に満たす為に、前記供給口の前記第1方向の一方の端部に連なる第1壁面と、前記供給口の前記第1方向の他方の端部に連なると共に、前記第1壁面との間隔が前記導入口から前記供給口に向けて狭くなるような第2壁面とで構成されるミスト供給部と、を備え、前記導入口から導入される前記ミストの導入ベクトルの中心の延長線と前記第2壁面との成す交差角を鋭角に設定した。
【0007】
本発明の第3の態様は、導電膜の製造方法であって、第1の態様または第2の態様の成膜装置を用いて前記物体上に前記材料物質である導電膜材料を成膜する成膜工程と、成膜された前記物体を乾燥させる乾燥工程と、を含む。
【0008】
本発明の第4の態様は、ミスト成膜装置であって、材料物質を含むミストを発生させるミスト発生部と、導入口と、供給口とを有し、前記導入口から導入された前記ミストを前記供給口から物体の表面に供給するミスト供給部と、を有し、前記供給口は、前記ミストの導入方向と異なる方向である第1方向において、前記導入口と異なる位置に設けられる。
【0009】
本発明の第5の態様は、ミスト成膜装置であって、材料物質を含むミストを発生させるミスト発生部と、導入口と、供給口とを有し、前記導入口から導入された前記ミストを前記供給口から物体の表面に供給するミスト供給部と、を有し、前記ミストの導入方向と異なる方向である第1方向において、前記供給口の幅は、前記導入口の幅よりも狭い。
【0010】
本発明の第6の態様は、ミスト成膜装置であって、材料物質を含むミストを発生させるミスト発生部と、導入口と、供給口とを有し、前記導入口から導入された前記ミストを前記供給口から物体の表面に供給するミスト供給部と、を有し、前記ミスト供給部は、前記導入口から導入されたミストを前記供給口に導く空間であって、第1壁面と、前記第1壁面と対向する第2壁面との間に設けられる空間を有し、前記第1壁面および第2壁面の少なくとも一方は、前記第1壁面と第2壁面との間隔が前記導入口から前記供給口に向けて狭くなるように設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態によるミスト成膜装置の全体的な構成を概略的に示した図である。
【
図2】
図1に示したミスト成膜装置のノズルユニット部の外観構成を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示したノズルユニット部のYu(Y)方向の一部をXuZu(XZ)面と平行な面で破断した断面図である。
【
図4】
図4A~
図4Cは、ノズルユニット部内の空間SOの構造の違いによる流速分布の違いをシミュレーションしたときのいくつかのモデル例を示す。
【
図5】
図4A~
図4Cに示したノズルユニット部MNの各々のスリット開口部APのYu方向の端部付近から噴出されるミスト気体MsfのZu方向の流速の違いをシミュレーションした結果を表すグラフである。
【
図6】
図4A(
図3)に示したノズルユニット部MNの空間SO内でのミスト気体MsfのYuZu面内での流速分布のシミュレーション結果を表した図である。
【
図7】
図7A~
図7Cは、ノズルユニット部MN内の空間SOの形状として、特に傾斜内壁面10Aの角度θaを30°以外にした3つのモデル例を示す。
【
図8】
図7A~
図7Cに示したノズルユニット部MNの各々のスリット開口部APのYu方向の端部付近から噴出されるミスト気体MsfのZu方向の流速の違いをシミュレーションした結果を表すグラフである。
【
図9】
図8に示したシミュレーション結果のグラフ中の一部分を拡大して表したグラフである。
【
図10】
図10A~
図10Dは、シミュレーションの為に、ノズルユニット部MN内の傾斜内壁面10Aの角度θaを変えずに、他の部分の寸法を異ならせたノズルユニット部MNの変形例(変形例1)の部分断面図である。
【
図11】
図10A~
図10Dに示したノズルユニット部MNの各々のミスト気体MsfのZu方向の流速の違いをシミュレーションした結果を表すグラフである。
【
図12】シミュレーション結果を参酌したノズルユニット部MNの変形例(変形例2)を示す部分断面図である。
【
図13】シミュレーション結果を参酌したノズルユニット部MNの変形例(変形例3)を示す部分断面図である。
【
図14】シミュレーション結果を参酌したノズルユニット部MNの変形例(変形例4)の一部を破断した斜視図である。
【
図15】
図14に示したノズルユニット部MNのXuZu面と平行な面で見た部分断面図である。
【
図16】
図14、
図15のノズルユニット部MNを基板Pの傾斜に合わせて傾けて配置する様子を示す図である。
【
図17】第2の実施の形態によるミスト成膜部のノズルユニット部MN、回収ユニット部DN1、DN2の具体的な構成を表す図である。
【
図18】
図17のミスト成膜部の変形例(変形例5)を部分断面で表した斜視図である。
【
図19】
図18のミスト成膜部の構成の更なる変形例(変形例6)を示す部分断面図である。
【
図20】
図19のミスト成膜部の底面を基板P側から見た平面図である。
【
図21】先の
図2、
図12、
図17~20の各々で示した電極保持ブロック部材16の構造の変形例(変形例7)を示す斜視図である。
【
図22】
図19、
図21に示した電極保持ブロック部材16を、-Zu側から+Zu側に見た変形例を示す。
【
図23】
図23A~
図23Cは、ノズルユニット部MNのブロック部材13に形成される複数の導入口の形状と配置に関する幾つかの変形例(変形例8)を示す平面図である。
【
図24】第3の実施の形態によるミスト成膜装置の概略的な構成を示す図である。
【
図25】ノズルユニット部MN、回収ユニット部DN1、DN2、及び電極保持ブロック部材16が組付けられて、
図24のミスト成膜装置に適用されるカバー部CBの変形構造(変形例9)を示す斜視図である。
【
図26】
図25のカバー部CBをXuZu面と平行な面で破断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の態様に係る成膜装置、ミスト成膜装置、および導電膜の製造方法について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更又は改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態によるミスト成膜装置MDEの概略的な全体構成を示す図である。
図1において、特に断わりのない限り重力方向を-Z方向とするXYZ直交座標系を設定する。ミスト成膜装置MDEは、被処理基板(物体)としての可撓性のシート基板P(単に基板Pとも呼ぶ)の表面に、ナノ粒子(材料物質)を含むミスト気体を噴霧する為のミスト成膜部1と、ミストが噴霧された基板Pの表面を乾燥させる為の乾燥ユニット2と、基板Pを長尺方向(Xu方向)に平面状に支持してXu方向(搬送方向)に搬送する為の無端ベルト3Aと、無端ベルト3Aが掛け回される回転ローラR1、R2と、回転ローラR2を一定速度で回転させる回転駆動部(モータや減速器を含む)3Bと、基板Pを支持する無端ベルト3Aの平坦部分の裏面側を平面支持する支持ステージ3Cと、を備える。また、無端ベルト3Aと回転ローラR1、R2と回転駆動部3Bと支持ステージ3Cを少なくとも含む構成を搬送部3Dとする。無端ベルト3AのY方向の幅は、シート基板Pの長尺方向と直交したY方向の幅よりも大きく設定され、長尺方向に搬送されるシート基板Pは回転ローラR1側で無端ベルト3Aに接触し、回転ローラR2側で無端ベルト3Aから離脱する。
【0014】
本実施の形態において、長尺のシート基板Pは、重力方向と直交したXY面(水平面)に対して角度θpだけ傾いて+Z方向に上昇する状態で搬送されるように、無端ベルト3Aの平坦部分と支持ステージ3Cの平坦な上面とが角度θpだけ傾いて配置される。その為、ミスト成膜部1と乾燥ユニット2も、基板Pの搬送方向に沿って、角度θpだけ傾けて配置される。ミスト成膜部1については、その詳細な構成を以下で説明する都合から、基板Pの平坦な表面と平行な長尺方向をXu軸方向、基板Pの長尺方向と直交した幅方向をYu軸(Y軸と平行)方向、そして基板Pの表面の法線方向をZu軸方向とするXuYuZu直交座標系を設定する。従って、XuYuZu直交座標系は、XYZ直交座標系内でY軸の回りに角度θpだけ回転させたものとなる。角度θpは30度~60度の範囲に設定される。このように、基板Pを傾けた状態でミスト成膜する構成は、例えば、国際公開第2016/133131号に開示されている。
【0015】
シート基板Pは、本実施の形態では、長尺なPET(ポリエチレン・テレフタレート)、PEN(ポリエチレン・ナフタレート)、又はポリイミド等の樹脂を母材とした厚みが数百μm~数十μm程度のフレキシブルシートとするが、その他の材料、例えば、ステンレス、アルミ、真鍮、銅等の金属材料を薄く圧延した金属箔シート、厚みを100μm以下にして可撓性を持たせた極薄ガラスシート、セルロースナノファイバーを含有する樹脂製シートであっても良い。なお、シート基板Pは、必ずしも長尺である必要はなく、例えば、A4サイズ、A3サイズ、B4サイズ、B3サイズのように長辺や短辺の寸法が規格化された枚葉のシート基板、或いは規格外の不定型な枚葉のシート基板であっても良い。
【0016】
本実施の形態のミスト成膜部1は、
図1に示すように、ミスト気体(ミストを含むキャリアガス)を基板Pに向けて噴出するノズルユニット部(ミスト供給部)MNと、基板Pの表面に付着せずに基板Pの表面に沿って流れるミスト気体を回収する為に、基板Pの搬送方向(Xu方向)に関してノズルユニット部MNの上流側と下流側とに配置された回収ユニット部DN1、DN2とを有する。さらにミスト成膜部1には、ミスト気体を噴出するノズルユニット部MNの先端部と、ミスト気体を吸引によって回収する回収ユニット部DN1、DN2の各先端部と、基板Pの上面の全体とを覆うカバー部CBが設けられる。カバー部CBは、ノズルユニット部MNから噴出されて基板Pに付着せずに流れるミスト気体が基板Pの表面の上方空間から遺漏することを抑制して、効率的に回収ユニット部DN1、DN2に導く導風部材として機能する。
【0017】
ノズルユニット部MNには、複数の霧化器5A、5B(ここでは2つ)の各々で発生したミスト気体が供給される。霧化器5A、5Bは、いずれも同じ構成であるので、代表して霧化器5Aの構成を中心に説明する。霧化器(ミスト発生部)5A(5B)には、成膜すべき材料物質のナノ粒子(粒径が数nm~数百nm)を所定の濃度で分散させた溶液Lqがパイプ6A(6B)を介して内部の容器に供給される。ここで、ナノ粒子は導電性を有する。容器内の溶液Lqは超音波振動子で加振され、溶液Lqの表面からは数μm~十数μm程度の粒径のミストが発生する。その容器内で発生したミストは、パイプ7A(7B)を介して所定の流量で供給されるキャリアガスCgs(空気、O2ガス、窒素ガス、アルゴンガス、炭酸ガス等のいずれか1つ、又は2つ以上の混合ガス)に乗って、パイプ8A(SP1)、8B(SP2)を介してミスト気体となってノズルユニット部MNに導かれる。
【0018】
複数本のパイプ8A(8B)の各々の噴出口は、ノズルユニット部MNの上部にY方向(Yu方向)に並んで配置され、ほぼ同じ流量に調整されたミスト気体をノズルユニット部MNの内部空間に噴出する。ノズルユニット部MNのYu方向(Y方向)の長さに応じて、ミスト気体を供給するパイプ8A、8Bは3本以上に増設することができる。その場合、霧化器5A、5Bも3個以上に増設される。なお、パイプ8A、8Bは、以降、パイプSPn(nは2以上の整数)とも呼ぶことにする。本ミスト成膜装置を用いることで、基板上に導電性膜を成膜することができる。成膜された導電性膜は、ディスプレイなどの電子デバイスの製造の際に用いられてもよい。
【0019】
図2は、
図1中に示したノズルユニット部MNの外観形状を部分的に分解して表した斜視図であり、
図3は、
図2のノズルユニット部MNの一部をXuYuZu座標系のXuZu面と平行な面で破断した断面図である。
図2、
図3のように、ノズルユニット部MNは、Yu方向を長手としてXuZu面内での断面形状が概略的に台形のブロック部材10と、ブロック部材10とXu方向に対向するように配置され、Yu方向を長手としてXuZu面内での断面形状がZu方向に細長い長方形のブロック部材11と、ブロック部材10、11のYu方向の各々の端部を塞ぐ矩形状のブロック部材12A、12Bと、ブロック部材10、11、12A、12Bの各々のZu方向の上端部を塞ぐXuYu面と平行な板状のブロック部材(天板)13とで構成される。これによって、ノズルユニット部MNは全体としてYu方向に延びた角柱状に形成され、ブロック部材10、11のZu方向の下端部には、ミスト気体をYu方向にスリット状に均一な分布とするようにYu方向に延設されたスロット部SLTと、ミスト気体を基板Pに向けて噴出するようにYu方向に直線的に延設されたスリット開口部(供給口)APとが形成される。また、スリット開口部APを含む平面を第1所定平面とし、ブロック部材13を含む平面を第2所定平面とする。
【0020】
さらに、ブロック部材10、11のZu方向の下端部で、スリット開口部APの下方には、噴出されたミスト気体にプラズマ放電を照射する為に、Yu方向に延びた2本の電極棒15A、15BをXu方向に一定間隔で平行に保持する電極保持ブロック部材16が配置される。ミスト気体にプラズマを照射するプラズマアシスト付のミスト成膜装置は、例えば、国際公開第2016/133131号に開示されている。なお、プラズマアシストが必須でない場合、電極保持ブロック部材16は不要である。
【0021】
ブロック部材10、11、12A、12Bは、絶縁性が高く、加工性や成型性が良い硬質の合成樹脂、例えばアクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル:PMMA)、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン:PTFE)、熱可塑性プラスチックのポリカーボネート、或いは、石英等のガラス硝材で構成される。但し、プラズマアシストを行わない場合、ブロック部材10、11、12A、12Bの材料は、ステンレス等の金属材としても良い。また、天板としてのブロック部材13は、上記の合成樹脂、プラスチック、ガラス硝材、或いは金属材で構成され、ブロック部材13には、
図1に示した複数本のパイプSPn(ここではn=6)の各々が接続される6つの円形の導入口13a~13fがYu方向に所定の間隔で形成されている。ブロック部材10、11、12A、12B、13の各々は、ネジ又は接着剤によって
図2、
図3のように固定される。なお、
図2に示したノズルユニット部MNの場合、6つのパイプSP1~SP6が接続されるので、
図1に示した霧化器5A、5B・・・も6個用意される。
【0022】
図3は、
図2に示された円形の導入口13aのYu方向の中心を通って、Yu軸と直交した面(XuZu面)で、ノズルユニット部MNのブロック部材10、11、13を破断した断面図であり、プラズマア放電用の電極棒15A、15Bと電極保持ブロック部材16との図示は省略されている。ミスト気体(ミストを含むキャリアガスCgs)Msfを噴出する導入口13aには、パイプSP1が締結部13Kを介して取り付けられる。ここで、導入口13aのXuYu面内での直径をDa、導入口13aの円形の中心点を通ってZu軸と平行な中心線をAXhとする。
【0023】
ブロック部材11は、
図3に示すように、ブロック部材13から-Zu方向の下端部でスリット開口部APが形成される下端面Peにかけて、YuZu面と平行な内壁面(垂直内壁面)11Aを有する。ブロック部材10は、
図3に示すように、ブロック部材13側から-Zu方向に向けて、YuZu面に対して角度θaで傾斜した内壁面(傾斜内壁面、第1壁面)10Aと、ブロック部材11の平面状の内壁面(第2壁面)11Aと、Xu方向に間隔Dgで平行に対向して下端面Peのスリット開口部APに至る内壁面(垂直内壁面)10Bとを有する。スリット開口部APのYu方向の長さは、
図2に示したブロック部材12A、12Bの各々の内壁面のYu方向の間隔で設定され、内壁面10A、10B、11Aの各々はスリット開口部APのYu方向の長さ全体に亘って延設されている。以上の構成によって、ノズルユニット部MNの内部には
図3のように、XuZu面内で見たとき、傾斜内壁面10Aと垂直内壁面11Aとで囲まれた三角形のロート状の空間SOと、垂直内壁面10Bと垂直内壁面11Aとで囲まれたスロット状の空間であるスロット部SLTとが形成される。
【0024】
空間SOは、XuZu面内で見たとき、ブロック部材13側(Zu方向の上部)のXu方向の広い間隔Duから、スロット部SLTのZu方向の上部位置Pfの狭い間隔Dgにかけて、傾斜内壁面10Aと垂直内壁面11AとのXu方向の間隔が連続的に減少するように構成される。空間SO内において、導入口13aの中心線AXh(Zu軸と平行)の延長は、ブロック部材10の傾斜内壁面10AとZu方向の高さ位置Pzで交差すると共に、スロット部SLTのXu方向の中心を通ってZu軸と平行な中心線AXsに対して、Xu方向に間隔Lxaだけシフト(横ずれ)している。また、ブロック部材13で導入口13aをZu方向(第3方向)に延伸させたとき、内壁面10Aと交差するように、前記導入口13aが設けられる。また、ブロック部材13の下面(内壁面)の位置(間隔DuのZu方向の上端位置)から、中心線AXhの延長が傾斜内壁面10Aと交差する位置PzまでのZu方向の寸法をLza、位置Pzからスロット部SLTの上部の位置PfまでのZu方向の寸法をLzb、位置Pfから下端面Peまでのスロット部SLTのZu方向の寸法をLzcとする。
【0025】
導入口13a(他の導入口13b~13fも同様)から空間SO内に噴出されるミスト気体Msfは、導入口13aの出口付近では直径Da内でほぼ均一な流量分布で-Zu方向にまっすぐに進むが、空間SO内を-Zu方向に進むに従ってXu方向とYu方向とに徐々に広がっていく。しかしながら、導入口13a(13b~13f)から噴出したミスト気体Msfは、そのほとんど全部がブロック部材10の傾斜内壁面10Aに噴霧され、位置Pfのスロット部SLTの上部に直接達することが無いように、直径Da、間隔Lxa、寸法Lza、寸法Lzbが設定されている。なお、導入口13a(13b~13f)から噴出されるミスト気体Msfの送流方向を噴出ベクトルとしたとき、本実施の形態では、ミスト気体Msfの噴出ベクトルの中心線を導入口13a(13b~13f)の中心線AXhと一致させているものとする。また、スリット開口部APの下端面Peと基板Pの表面とのZu方向の間隔(ワーキングディスタンス)をLwdとする。
【0026】
図2、
図3に示したように、導入口13a~13fの各々からのミスト気体Msfは、噴出時の流速を保ったままブロック部材10の傾斜内壁面10Aに噴霧される為、傾斜内壁面10Aには、ミスト気体Msfに含まれるミストの一部の付着によって液滴が生じる。その液滴は徐々に成長し、やがてミスト気体Msfの流れと重力との影響によって傾斜内壁面10Aに沿って下方(-Zu方向)に流れ落ちる。液滴がそのまま流れ落ちると、液滴はスリット開口部APから基板Pに滴下され、ミスト成膜によるナノ粒子の成膜均一性を大きく阻害することになる。そこで、本実施の形態では、傾斜内壁面10Aの-Zu方向の終端部である位置Pfの高さに、Yu方向に延設されたスリット部(回収部)TRSが液滴のトラップ部として形成される。スリット部TRSのXu方向の奥には、Yu方向に延設されたマニュホールド部(回収部)Gutが形成される。スリット部TRSは傾斜内壁面10Aに付着して液化したミストを回収する回収機構である。スリット部TRSの隙間でトラップされた液滴は、マニュホールド部Gutに溜められて、ブロック部材10内に形成された流路10Rを通って排出口17を介して排出される。なお、不図示であるが、排出口17には吸引ポンプからのパイプが接続されている。
【0027】
本実施の形態において、
図2、
図3に示したノズルユニット部MNの空間SOの寸法は、一例として、Yu方向の長さ(スロット部SLTのYu方向の長さ)が30~35mm、上端部のXu方向の間隔(幅)Duが約35mm、ブロック部材(天板)13の下面からスロット部SLTの上端部までのZu方向の長さLza+Lzbが約60mmに設定され、ブロック部材10の傾斜内壁面10Aの角度θaは約30度(XuYu面に対しては約60度)となり、傾斜内壁面10AのXuZu面内での長さは約70mmになる。また、スロット部SLT(スリット開口部AP)のXu方向の間隔(幅)Dgは5~6mmに設定され、スロット部SLTのZu方向の寸法(長さ)Lzcは、ここでは約15mmに設定したが、5mm程度であっても良い。さらに、
図3に示した導入口13a~13fの各々の直径Daは約13mm、導入口13a~13fの各々の中心線AXhとスロット部SLTの中心線AXsとのXu方向の間隔(寸法)Lxaは25~20mmの範囲に設定される。また、導入口13aはXu方向においてスリット開口部APとは異なる位置に設けられる。さらに、スリット開口部APのXu方向における幅(間隔)Dgは、導入口13aのXu方向における幅(間隔)Daよりも短く設定されることが好ましい。また、導入口13a~13fの各々の中心線AXhのYu方向の間隔Lyp(
図2参照)は50~60mm程度に設定されるが、その間隔は導入口13a~13fの個数によって変更され、例えば、導入口13a~13fを6つから8つに増やした場合、間隔Lypは35~40mm程度に設定される。従って、
図3の構成では、Lxa>(Da+Dg)/2の関係に設定される。
【0028】
本実施の形態では、ノズルユニット部MNの構造や寸法を以上のように設定したが、その設定の為に、いくつかの異なる構造や寸法を設定して、予め流体シミュレーションを行った。その前提として、例えば、国際公開第2020/026823号に開示されているノズルユニット部のように、ミスト気体の導入口の直下(ミスト気体の噴出方向の延長上)にスロット開口が配置される構成を検討した。その構成の場合、スロット開口の長手方向に関する噴霧ミスト気体の流速分布の一様性(均一性)を良好にする為には、導入口からノズルユニット部内に流入した直後のミスト気体のスロット開口の長手方向に関する流速分布が一様である必要がある。その為、国際公開第2012/124047号に開示されているように、複数の孔が形成されたシャワープレートを設けることも考えられるが、ミスト気体の流れに対する圧損が大きくなり、シャワープレートに大量の液滴が溜まるといった問題、或いは乱流が発生し易いといった問題が生じ得る。
【0029】
そこで、本実施の形態では、
図2、
図3に示したように、ミスト気体Msfの導入口13a~13fをYu方向に沿って3つ以上設けると共に、導入口13a~13fの中心線AXhとスリット開口部AP(スロット部SLT)の中心線AXsとを、Xu方向に間隔Lxaだけオフセットさせて、導入口13a~13fの各々から噴出されるミスト気体Msfが直接的にスリット開口部AP(スロット部SLT)に向かわないように設定する。さらに、複数の導入口13a~13fの各々から噴出されるミスト気体Msfの大部分をブロック部材10の傾斜内壁面10Aに噴霧する構成とする。これにより、ミスト気体Msfの進行方向を傾斜内壁面10Aに沿うように滑らかに変化させながら、スリット開口部AP(スロット部SLT)の長手方向(Yu方向)に関するミスト気体Msfの流速分布(或いはミストの濃度分布)を一様化することができる。
【0030】
以上の
図1~
図3に示したように、キャリアガスCgsにミストを含ませたミスト気体Msfを基板Pの表面に噴霧し、ミストに含有させたナノ粒子を基板Pの表面に薄膜状に堆積するミスト成膜装置MDEは、基板Pを表面に沿ったXu方向(第1方向)に移動させる回転ローラR1、R2、無端ベルト3Aによる移動機構と、基板Pの表面から所定の間隔で対向した先端部からミスト気体Msfを、Xu方向と交差したYu方向(第2方向)にスリット状に延びた分布で噴出するように、先端部に形成されたAP(スロット開口)と、ミスト気体Msfの導入口13a~13fからスリット開口部APまで、ミスト気体MsfをYu方向に広がった空間SO内に満たす為に、スリット開口部APのXu方向の一方の端部に連なる内壁面11A(第1内壁面)と、スリット開口部APのXu方向の他方の端部に連なると共に、内壁面11Aとの間隔が導入口13a~13fからスリット開口部AP(スロット部SLT)に向けて狭くなるような傾斜内壁面10A(第2内壁面)とで構成されるノズルユニット部MNと、を備え、導入口13a~13fから噴出されるミスト気体Msfの噴出ベクトルの中心の延長線としての中心線AXhと第2内壁面との成す傾斜角度θaが鋭角に設定される。
【0031】
図4A、
図4B、
図4Cは、導入口13a~13fの個数とYu方向の配置や各導入口13a~13fからのミスト気体Msf(キャリアガスCgs)の流速を同じにして、ノズルユニット部MN内の空間SOの構造の違いによる流速分布の違いをシミュレーションしたときのいくつかのモデル例を示す。
図4Aは、
図3と同じ構造のノズルユニット部MNのモデルの断面形状を示し、
図4Bは
図3に示したブロック部材10の傾斜内壁面10Aの傾斜角度θaを60°にしたモデルの断面形状を示す。さらに、
図4Cは
図4Bのモデルの傾斜内壁面10AのXuZu面内での長さと同じ長さで、傾斜角度θaを30°にしたモデルの断面形状を示す。シミュレーションでは、ノズルユニット部MNの導入口13a~13fをYu方向に4つ並べた状態とし、スリット開口部APからのYu方向の流速分布として、乱れると予想されるスリット開口部APのYu方向の端部付近での流速分布を調べた。なお、シミュレーションは、SIEMENS社から提供されるシミュレータ・ソフトのStar-CCM+(登録商標)を利用して行った。
【0032】
図4Bのノズルユニット部MNの場合、導入口13aの中心線AXhとスロット部SLTの中心線AXsとのXu方向の間隔Lxaは、
図4Aのノズルユニット部MNの間隔Lxaと同じに設定される。その為、
図4Bのノズルユニット部MNの寸法Lza、寸法Lzbは、いずれも
図4Aのノズルユニット部MNの各寸法に対して小さくなっている。
図4A、
図4B、
図4Cのいずれのノズルユニット部MNでも、ブロック部材(天板)13の下面側とブロック部材11の垂直内壁面11Aとが接合されている空間付近では、ミスト気体Msfの乱流が生じるが、その乱流によってスリット開口部APから噴出されるミスト気体Msfの流速分布が劣化する影響は、傾斜内壁面10AのXuZu面内での長さや寸法Lzbが大きいと緩和される。
【0033】
図5は、
図4A、
図4B、
図4Cの各々のノズルユニット部MNのスリット開口部APのYu方向の端部付近から噴出されるミスト気体MsfのZu方向の流速の違いをシミュレーションした結果を表すグラフである。
図5の横軸は、スリット開口部APのYu方向の端部付近の約70mmの範囲の距離を表し、縦軸は、スリット開口部APから噴出するミスト気体MsfのZu方向の流速成分の規格化された比率(m/s)を表す。その比率は、導入口13aから噴出されるミスト気体MsfのZu方向の流速を基準値とし、その基準値に対してZu方向の流速が半分になった場合を-0.5(50%減)とする。従って、比率が大きい場合(縦軸の数値の絶対値が大きい場合)は、スリット開口部APから噴出するミスト気体Msfのうち、Zu軸と平行な向きの成分の他に、Zu軸と非平行な傾いた向きの成分が多くなることを意味する。
【0034】
図5において、
図4Aのノズルユニット部MNの場合は、特性(4A)で示すように、スリット開口部APのYu方向の端部付近でのミスト気体Msfの流速の低下(減衰)は全体的に滑らかである。また、
図4Cのノズルユニット部MNの場合は、傾斜内壁面10AのXuZu面内での傾斜角度θaが
図4Aの場合と同じであるが、寸法Lzbが
図4Aの場合よりも短い為、
図5中の特性(4C)で示すように、特性(4A)に比べると僅かではあるがムラがある。一方、傾斜内壁面10Aの傾斜角度θaを60°にした
図4Bのノズルユニット部MNの場合は、寸法Lza、寸法Lzbがいずれも
図4Aの場合よりも短くなっており、ノズルユニット部MNの空間SO内で発生する乱流が強くなることから、
図5中の特性(4B)で示すように、ムラが多くなっている。
【0035】
図6は、
図4A(
図3)に示したノズルユニット部MNの空間SO内でのミスト気体MsfのYuZu面内での流速分布のシミュレーション結果を表した図である。
図6の流速分布は、ノズルユニット部MNの空間SOの+Yu方向の端部側(ブロック部材12B側)のみを表し、
図4A又は
図3のスロット部SLTの中心線AXsを含んでYuZu面と平行な面内に設定した多数の点の各々における流れの大きさと方向をベクトルで表したものである。なお、
図6では、ノズルユニット部MNのスロット部SLT(Zu方向の寸法Lzc)の両端部を、ブロック部材18Aによってブロック部材12B側から距離Lye(例えば、5~15mm)の範囲で塞いだ状態でシミュレーションを行った。
【0036】
図4A(
図3)に示した様に、導入口13a~13fの各々から噴出されるミスト気体Msfは、一様な流速分布で-Zu方向に進んでブロック部材10の傾斜内壁面10Aに当たる。傾斜内壁面10Aに当たった後のミスト気体Msfの大部分は、その進行方向がブロック部材11の垂直内壁面11Aに斜めに向かうように偏向されて、Zu方向の位置Pfのスロット部SLTに流入する。また、導入口13a~13fの中心線AXhが傾斜内壁面10Aと交差する位置Pzの付近では、ミスト気体Msfの流れが乱され、±Yu方向や+Xu方向、或いは+Zu方向に向かう成分も発生する。しかしながら、複数の導入口13a~13fがYu方向に一定間隔で配置されていること、ノズルユニット部MN内の空間SOのXu方向の幅(傾斜内壁面10Aと垂直内壁面11AのXu方向の間隔)が、-Zu方向(スロット部SLTの位置Pf)に向かって順次減少して絞られていることによって、スロット部SLTに流入するミスト気体Msfの流速分布はYu方向に関して一様にされる。
【0037】
以上のように、導入口13a~13fの中心線AXhとブロック部材10の傾斜内壁面10Aとが成す角度θaが30°前後が良いことを確認する為、角度θaを異ならせた幾つかのノズルユニット部MNの構造について、同様のシミュレーションを行った。そのシミュレーションの為に、
図7A~
図7Cに示すような3つのモデル例を設定した。
図7Aは、
図3(
図4A)と同様に傾斜内壁面10AのXuZu面内での長さを約70mmとし、角度θaを40°としたモデルを示し、
図7Bは、
図7Aと同様に傾斜内壁面10AのXuZu面内での長さを約70mmとし、角度θaを10°としたモデルを示す。さらに、
図7Cは、
図7Aと同様に傾斜内壁面10AのXuZu面内での長さを約70mmとし、角度θaを20°としたモデルを示す。
図7Aのノズルユニット部MNのモデル例の場合、長さLzaは約12.5mm、長さLzbは約47.5mm、寸法Lxaは約37mmになる。
図7Bのノズルユニット部MNのモデル例の場合は、長さLzaが約45mm、長さLzbが約24mm、寸法Lxaが約7mmになり、
図7Cのノズルユニット部MNのモデル例の場合は、長さLzaが約25mm、長さLzbが約40mm、寸法Lxaが約17.5mmになる。
【0038】
図8は、
図7A、
図7B、
図7Cの各々のノズルユニット部MNと
図4Aのノズルユニット部MNとのスリット開口部APのYu方向の端部付近から噴出されるミスト気体MsfのZu方向の流速の違いを、
図5と同様にシミュレーションした結果を表すグラフであり、
図8の横軸と縦軸は
図5と同じに設定される。また
図9は、
図8のグラフ中のYu方向の距離が0mm~30mmの範囲GA8におけるシミュレーション結果を拡大して表したグラフである。
【0039】
図8に示したように、先の
図4Aのノズルユニット部MNでのミスト気体MsfのZu方向の流速特性(4A)30°に対して、
図7A、
図7B、
図7Cの各々のノズルユニット部MNでのミスト気体MsfのZu方向の流速特性(7A)40°、(7B)10°、(7C)20°は、全体的な傾向は大きく変わることはない。しかしながら、ノズルユニット部MNのYu方向の端部から内側の範囲GA8では、
図9に示すように、流速特性(7A)40°、(7B)10°、(7C)20°は、いずれも流速特性(4A)30°に比べてムラ(Yu方向の位置に応じた流速の変化の度合い)が大きくなっている。但し、流速特性(7C)20°は流速特性(4A)30°に近似した傾向となっていることから、傾斜内壁面10Aの角度θaは、20°<θa<40°に設定されるのが好ましく、更には、θa=30°±5°の範囲にするのが望ましい。
【0040】
〔変形例1〕
以上で説明したノズルユニット部MNのうち、
図3に示したノズルユニット部MNの構成をベースにして、その傾斜内壁面10A(角度θa=30°)と対峙するブロック部材11側の内壁面の形状を変形した幾つかの例について、
図10A~
図10Dを参照して説明する。
図10A、
図10B、
図10C、
図10Dは、いずれも傾斜内壁面10Aの傾斜の角度θaを30°に設定したノズルユニット部MNのXuZu面と平行な面での部分断面を示す。
【0041】
図10Aでは、ノズルユニット部MNの傾斜内壁面10Aと対峙するブロック部材11の内壁面11A側に、傾斜内壁面10AからXu方向に一定の間隔Sgxで離間して傾斜内壁面10Aと平行に配置された斜面11Aaが設けられる。間隔Sgxは、天板としてのブロック部材13に形成される導入口13aのXu方向の寸法(例えば、直径13mm)よりも少し大きい寸法(例えば、15~20mm)に設定される。その他の各部の寸法は、先の
図3で説明したノズルユニット部MNの寸法と同じに設定される。
【0042】
図10Bでは、ノズルユニット部MNの傾斜内壁面10Aと対峙するブロック部材11の内壁面11A側に、天板としてのブロック部材13の下面からスロット部SLTのスリット開口部APの位置近傍まで、傾斜内壁面10AからのXu方向の間隔が漸次減少する斜面11Abが設けられる。傾斜内壁面10Aと斜面11Abとのブロック部材13の下面でのXu方向の間隔は、
図10Aと同じに間隔Sgxに設定され、傾斜内壁面10Aと斜面11Abとのスリット開口部APの近傍でのXu方向の間隔は、
図3に示したノズルユニット部MNのスロット部SLTの間隔Dg程度に設定される。
【0043】
図10Cでは、ノズルユニット部MNの傾斜内壁面10Aと対峙するブロック部材11側に、YuZu面と平行な内壁面11Acと、傾斜内壁面10Aと平行な内壁面11AdとがZu方向に連続して設けられている。傾斜内壁面10Aと内壁面11Acとのブロック部材13の下面でのXu方向の間隔は、
図10Aと同じに間隔Sgxに設定され、傾斜内壁面10Aと内壁面11AdとのXu方向の間隔は、スロット部SLTの間隔Dgと同程度の一定間隔に設定される。従って、XuZu面内での内壁面11Acと内壁面11Adとの成す角度は、傾斜内壁面10Aの角度θaに応じて、180°-θaに設定される。
【0044】
図10Dでは、ノズルユニット部MNの傾斜内壁面10Aと対峙するブロック部材11側に、XuZu面内で傾斜内壁面10Aと反対側に傾斜した内壁面11Aeと、傾斜内壁面10Aと平行な内壁面11AfとがZu方向に連続して設けられている。傾斜内壁面10Aと内壁面11Aeとは、YuZu面と平行で導入口13aの中心線AXhを含む面に関して対称的に配置される。さらに、傾斜内壁面10Aと内壁面11Aeとのブロック部材13の下面でのXu方向の間隔は、
図10Aと同じに間隔Sgxに設定され、傾斜内壁面10Aと内壁面11AfとのXu方向の間隔は、スロット部SLTの間隔Dgと同程度の一定間隔に設定される。従って、XuZu面内での内壁面11Aeと内壁面11Afとの成す角度は、傾斜内壁面10Aの角度θaに応じて、180°-2・θaに設定される。
【0045】
以上の
図10A、
図10B、
図10C、
図10Dの各々のノズルユニット部MNについて、先の
図5、
図8と同様のシミュレーションを行ったところ、
図11に示すような特性が得られた。
図11において、横軸は、スリット開口部APのYu方向の端部付近の約70mmの範囲の距離を表し、縦軸は、スリット開口部APから噴出するミスト気体MsfのZu方向の流速成分の規格化された比率(m/s)を表す。
図11のグラフにおいて、特性(10A)は、
図10Aのノズルユニット部MNの流速特性を示し、特性(10B)は、
図10Bのノズルユニット部MNの流速特性を示し、特性(10C)は、
図10Cのノズルユニット部MNの流速特性を示し、特性(10D)は、
図10Dのノズルユニット部MNの流速特性を示す。
【0046】
図11のシミュレーション結果のように、
図10A、
図10Bの構造のノズルユニット部MNの場合は、その流速特性(10A)、(10B)が
図5中の特性(4A)とほぼ同じ傾向で、流速分布のムラも少なくなっている。一方、
図10C、
図10Dの構造のノズルユニット部MNの場合は、その流速特性(10C)、(10D)が互いにほぼ同じであるが、流速特性(10A)、(10B)に比べて、スリット開口部APの端部付近での流速の落ち込みが大きくなっている。これは、
図10C、
図10Dの構造の場合、導入口13aからスリット開口部APに至るミスト気体Msfが、傾斜内壁面10Aと狭い間隔Dgで平行に対向した内壁面11Ad又は内壁面11Afとで挟まれた空間を通る為に生じたものと考えられる。以上のことから、
図10A、
図10Bに示した変形構造のノズルユニット部MNでも、
図3に示したノズルユニット部MNと同様の作用、効果を得ることができる。
【0047】
〔変形例2〕
図12は、先の各種の変形例でのシミュレーション結果を参酌したノズルユニット部MNの変形例を示し、先の
図3と同様に、XuZu面と平行な面での部分断面を示す。
図12において、
図3中に示した部材や配置と同じものには同じ符号を付してある。本変形例では、XuZu面内で見たとき、ブロック部材10の傾斜内壁面10Aとブロック部材11の内壁面11Aとが、なだらかな曲面状に形成される。傾斜内壁面10Aは、天板としてのブロック部材13の下面直下の部分、及び、スリット開口部APの付近(スロット部SLT)の部分ではYuZu面とほぼ平行に形成され、その間の部分では緩やかなS字状に形成されている。また、本変形例でも、XuZu面内で見たとき、導入口13aの中心線AXhと傾斜内壁面10Aとの成す角度θaは、25°~40°の範囲、好ましくは30°に設定され、スロット部SLTの中心線AXsと導入口13aの中心線AXhとは、Xu方向に間隔(寸法)Lxaだけオフセットされている。
【0048】
従って、本変形例においても、Xu方向に関する導入口13aの直径(寸法)Da、スロット部SLT(スリット開口部AP)の間隔Dg、間隔(寸法)Lxaは、
図3の構成と同様に、Lxa>(Da+Dg)/2の関係に設定される。なお、
図12のノズルユニット部MNにおいて、ブロック部材11の内壁面11Aは、
図3の構成と同様にYuZu面と平行な平坦面としても良い。
【0049】
〔変形例3〕
図13は、先の各種の変形例でのシミュレーション結果を参酌したノズルユニット部MNの変形例を示し、先の
図3と同様にXuZu面と平行な面での部分断面を示す。
図13において、
図3中に示した部材や配置と同じものには同じ符号を付してある。本変形例では、XuZu面内で見たとき、ブロック部材10の内壁面10Aとブロック部材11の内壁面11Aとの両方が、
図12中の傾斜内壁面10Aと同様に緩やかにS字状に湾曲した曲面に形成され、内部の空間SOはXuZu面内でロート状に形成される。
図13の傾斜内壁面10Aと内壁面11Aとは、スロット部SLTの中心線AXsを含むYuZu面と平行な面に関してXu方向に対称的に配置される。
【0050】
本変形例では、天板としてのブロック部材13に取り付けられる複数のパイプSP1、SP2、・・・のうち、奇数番のパイプSP1、SP3、・・・と、偶数番のパイプSP2、SP4、・・・とがXu方向に一定の間隔で離れて位置するように配置される。さらに、奇数番のパイプSP1、SP3、・・・の各々の先端部(導入口13a側)は、Yu方向に延設された軸130Aの回りに回転可能に軸支された回動部材130に貫通して設けられ、偶数番のパイプSP2、SP4、・・・の各々の先端部(導入口13b側)は、Yu方向に延設された軸131Aの回りに回転可能に軸支された回動部材131に貫通して設けられる。本変形例では、複数のパイプSP1、SP2、・・・の各々の先端の円形の射出口が導入口13a、13b・・・として機能し、その射出口の中心線AXh1、AXh2・・・の各々は、XuZu面内で見たとき、スロット部SLTの中心線AXsに対して傾いている。
【0051】
奇数番のパイプSP1、SP3、・・・の各々の射出口の中心線AXh1の延長は、XuZu面内で見たときブロック部材11の内壁面11Aと角度θaで交差し、偶数番のパイプSP2、SP2、・・・の各々の射出口の中心線AXh2の延長は、XuZu面内で見たときブロック部材10の傾斜内壁面10Aと角度θaで交差する。その角度θaは、25°~40°の範囲に設定されるが、本変形例では、回動部材130、131の各々によって角度θaが簡単に調整可能となっている。但し、本変形例でも、奇数番のパイプSP1、SP3、・・・、及び偶数番のパイプSP2、SP4、・・・の各々の射出口から噴出されるミスト気体Msfは、直接的にスロット部SLT(スリット開口部AP)に向かわないように設定される。
【0052】
本変形例によれば、複数のパイプSP1、SP2、・・・の各々からノズルユニット部MNの内部空間に噴出されるミスト気体Msfの風量(風速)にばらつきが生じたり、複数のパイプSP1、SP2、・・・の各々から噴出されるミスト気体Msfの風量(風速)を全体的に大きく変化させたりする場合に、スリット開口部APから噴出されるミスト気体MsfのYu方向の風量(風速)分布のムラを小さくするように、回動部材130、131の回転により調整することができる。なお、
図13のような回動部材130を設けて、パイプSP1、SP2、・・・の各々からのミスト気体Msfの噴出方向を調整可能とする構成は、先の
図3のノズルユニット部MNにも同様に適用可能である。
【0053】
〔変形例4〕
図14は、先の各種の変形例でのシミュレーション結果を参酌したノズルユニット部MNの変形例を示し、先の
図3と同様にXuZu面と平行な面であって導入口13aの位置で破断した斜視図である。
図15は
図14のノズルユニット部MNのXuZu面と平行な面での部分断面図である。
図14、
図15において、先の
図3のノズルユニット部MNの部材、材質、配置と同等のものには同じ符号を付してあり、またミスト気体Msfが供給される複数の導入口は、代表的に導入口13a~13cの3つのみを示したが、それ以上の個数としても良い。
【0054】
本変形例では、ノズルユニット部MNの長手方向(Yu方向)の両端に設けられるブロック部材12A、12B(
図14ではブロック部材12Aは不図示)の内壁面はXuZu面と平行な平面であり、天板としてのブロック部材13の内壁面はYuZu面に対して僅かに傾いた平面となっている。但し、ブロック部材13の内壁面はYuZu面と平行に配置しても良い。また本変形例では、
図15に示すように、円形断面の導入口13a(及び他の導入口)の中心線AXhとスロット部SLT(スリット開口部AP)のXu方向の中心線AXsとは、XuZu面内で90°以上の角度(鈍角)θwを成すように設定される。
【0055】
さらに本変形例では、ブロック部材10の内壁面10Aとブロック部材11の内壁面11Aとで囲まれる空間SOのXuZu面内で見た形状は、先の
図13に示したノズルユニット部MNの空間SOを角度θwだけ折り曲げた屈曲ロート状に形成される。ブロック部材10の内壁面10Aとブロック部材11の内壁面11Aは、XuZu面内では緩急カーブ状(曲率半径が大きな状態、小さい状態、大きな状態で連続した曲線状)に湾曲して形成される。これにより、導入口13a~13cから噴出されたミスト気体Msfは、XuZu面内では空間SO内で絞られながらスロット部SLT(スリット開口部AP)に向かう。
図15に示すように、本変形例では、導入口13a~13cの中心線AXhの延長は、ブロック部材11の内壁面11Aと交わるが、その交点pkにおける内壁面11Aの垂線と直交する接平面と中心線AXhとの成す角度θaは、25°~40°の範囲になるように設定されている。従って、本変形例では、ブロック部材11の内壁面11Aが傾斜内壁面として機能する。
【0056】
図14、
図15のように、ノズルユニット部MNの内部の空間SOを屈曲ロート状にする場合でも、ブロック部材11の内壁面11A又はブロック部材10の内壁面10Aに付着したミストの集合(凝集)による液滴が、スロット部SLTの壁面を伝わって流れてスリット開口部APから基板Pに滴下する可能性がある。その為、内壁面10A、11Aの各々のスリット開口部APの近傍には、
図3と同様に、液滴をトラップするスリット部TRSが設けられる。
【0057】
図16は、
図14、
図15のノズルユニット部MNの配置例を示し、スリット開口部APと対向する基板Pの表面は、先の
図1に示したように、XYZ座標系内でXY面から角度θp(例えば45°)だけ傾けた状態に設定される。その為、
図16において、
図14、
図15のノズルユニット部MNのXuYuZu座標系は、XYZ座標系内でY軸の回りに角度θpだけ傾けて配置される。このような配置とした場合、導入口13a~13cの中心線AXhは、XZ面内で見たとき、XY面に対して角度θuだけ傾いたものとなり、その角度θuは、θu=90°-(θw-θp)となる。一例として、角度θw(
図15参照)を105°、角度θpを45°とした場合、角度θuは30°となる。従って、導入口13a~13cの各々から空間SO内に噴出されるミスト気体Msfの中心噴霧ベクトルは、XYZ座標系内で見ると、斜め上方に向かうものとなる。
【0058】
さらに、空間SOの下側(-Z方向)に位置するブロック部材10の内壁面10Aと天板としてのブロック部材13との接合部は、Z方向に関して最も下側に位置すると共に、内壁面10Aの大部分は、その接合部に向けて斜めに傾斜したものとなる。同様に、ブロック部材11の内壁面11Aのうち、交点pkよりもブロック部材13側の表面は、XY面に対して-Z方向に傾いたものとなっている。その為、内壁面11Aに付着した液滴は、その多くが内壁面11Aに沿ってブロック部材13側に流れるか、下側の内壁面10Aに落下する。交点pkよりも-X方向側の内壁面10Aの部分は、ブロック部材13側に-Z方向に傾斜している為、内壁面11Aからその部分に落下した液滴は、内壁面10Aに沿ってブロック部材13側に流れる。
【0059】
そこで、本変形例では、ノズルユニット部MNのブロック部材13の内壁面と下側のブロック部材10の内壁面10Aとの接合部に、液滴を捕集するようにY(Yu)方向に延設された溝10Pが形成され、その溝10P内の一部に、液滴を外部に排出する排出ポート部SPdが形成される。排出ポート部SPdには排出(排水)用のパイプが接続されている。このように、本変形例のノズルユニット部MNを角度θpだけ傾けて配置することにより、ノズルユニット部MNの内部の空間SOを規定する内壁面10A、11Aに付着した液滴の多くを排出ポート部SPdから回収することができ、スリット開口部APに向かう液滴を大幅に減少させることができる。仮に、スロット部SLTの内壁面を伝わってスリット開口部APに向かう液滴が生じたとしても、その液滴はスリット開口部APの直前に配置されたスリット部TRSによって捕集される。
【0060】
〔第2の実施の形態〕
図17は、
図1に示したミスト成膜装置MDEのノズルユニット部MN、回収ユニット部DN1、DN2、並びにカバー部CBの具体的な構成を示し、XuZu面と平行な面で破断した部分断面図である。
図17では、ノズルユニット部MNの構成を先の
図3と同じとするが、
図10A、
図10B、
図12~
図14のいずれかの構成であっても良い。また、
図17に示したノズルユニット部MNのスリット開口部APと基板Pの間には、プラズマアシスト用の電極棒15A、15BをXu方向に所定間隔で支持する電極保持ブロック部材16が配置される。XuYu面(基板Pの表面)と平行な電極保持ブロック部材16の下面と、基板Pの表面とは数mm程度の間隔に設定される。スリット開口部APから噴出して基板Pの表面に付着しなかった余剰のミスト気体Msfは、スリット開口部APに対して基板Pの搬送方向の上流側に配置された回収ユニット部DN1と、下流側に配置された回収ユニット部DN2とによって回収される。
【0061】
回収ユニット部DN1は、全体に板材で囲まれた構造を有し、ノズルユニット部MNのYu方向の寸法とほぼ同じ長さでYu方向に延設して構成され、底面には電極保持ブロック部材16の下面と同一面となるように配置された底板DN1aが設けられる。底板DN1aと電極保持ブロック部材16とのXu方向の間には、Yu方向に延びたスリット状の開口部DN1bが形成される。回収ユニット部DN1の内部空間は、真空ポンプに接続された排気パイプEP1aを介して減圧される。それによって、ノズルユニット部MNのスリット開口部APから噴出した余剰のミスト気体Msfは、負圧にされた開口部DN1bから回収ユニット部DN1の内部空間内に吸引される。回収ユニット部DN1の内部空間内には、排気パイプEP1aに向かうミスト気体Msf中のミストはトラップして気体は通すフィルタ部DN1cが斜めに設けられる。フィルタ部DN1cでトラップされたミストは捕集(凝集)されて、底板DN1a上に液状に溜まるが、吸引ポンプに接続された排水パイプEP1bを介して回収される。
【0062】
回収ユニット部DN2は、ノズルユニット部MNのスリット開口部APを挟んで回収ユニット部DN1と対称的に配置され、回収ユニット部DN1と同様に、底板DN2a、開口部DN2b、フィルタ部DN2c、排気パイプEP2a、及び排水パイプEP2bとで構成される。回収ユニット部DN2は、ノズルユニット部MNのスリット開口部APから噴出されて基板Pの表面に沿って上流側に流れる余剰のミスト気体Msfを、開口部DN2bから吸引し、気体は排気パイプEP2aで吸引され、ミストが凝集した液体は排水パイプEP2bを介して回収される。なお、回収ユニット部DN1の開口部DN1bと回収ユニット部DN2の開口部DN2bとのYu方向の長さは、ノズルユニット部MNのスリット開口部APのYu方向の長さと同等に設定されている。
【0063】
本実施の形態において、ノズルユニット部MNのスリット開口部APの中心線AXsから回収ユニット部DN1の開口部DN1bまでのXu方向の距離(間隔)Xe1と、スリット開口部APの中心線AXsから回収ユニット部DN2の開口部DN2bまでのXu方向の距離(間隔)Xe2とは、ほぼ等しく設定されると共に、なるべく短く設定される。その距離(間隔)Xe1、Xe2は、底板DN1a、DN2aの下面と基板Pの表面とのZu方向の間隔(ギャップ幅)の3~5倍の寸法よりも小さく設定される。例えば、ギャップ幅を数mm(3~6mm)とした場合、距離(間隔)Xe1、Xe2は、9~30mmの範囲に設定される。さらに、回収ユニット部DN1の開口部DN1bで吸引される気体の流量(リットル/秒)、並びに回収ユニット部DN2の開口部DN2bで吸引される気体の流量(リットル/秒)は、それぞれ、ノズルユニット部MNのスリット開口部APから噴出されるミスト気体Msfの流量(リットル/秒)と同等以上に設定され、好ましくは1.5倍以上に設定される。
【0064】
このように、回収ユニット部DN1の開口部DN1b、回収ユニット部DN2の開口部DN2bの各々での吸引流量を設定すると、ノズルユニット部MNのスリット開口部APから噴出して、基板Pの表面に沿ってYu方向に流れ出すミスト気体Msfを抑制することができる。
図1、又は
図17に示したように、ノズルユニット部MNの-Zu方向側の下端面(電極保持ブロック部材16の下面)は基板Pの表面から数mm程度の間隔(ギャップ)で配置される。その為、回収ユニット部DN1、回収ユニット部DN2が無い場合、スリット開口部APから噴出されるミスト気体MsfはXuYu面内で四方八方に広がって遺漏し、ミスト成膜装置内の至る所にミスト気体Msfのミストが付着してしまう。
【0065】
図17のような回収ユニット部DN1、回収ユニット部DN2を設けることによって、ノズルユニット部MNのスリット開口部APから噴出したミスト気体Msfの流れを、基板Pの表面に沿ったXu方向に制限することができると共に、余剰のミスト気体Msfのほぼ全部を効率的に回収することができる。従って、ノズルユニット部MN、回収ユニット部DN1、回収ユニット部DN2で構成されるミスト成膜部1からミスト成膜装置MDE内に遺漏するミスト気体Msfが皆無となり、装置内をクリーニングする為に装置稼働を一時的に停止させる頻度を極めて少なくする、又は皆無にすることができる。
【0066】
〔変形例5〕
図18は、
図17に示した第2の実施の形態のミスト成膜部1の変形例を示し、XuYuZu座標系のXuZu面と平行な面で破断した部分断面で表した斜視図である。本変形例では、ノズルユニット部MNは先の
図5に示した構造と同等とし、ミスト気体Msfは5つの導入口13a~13eの各々から供給され、内部空間の傾斜内壁面10Aによってスロット部SLTに流入するミスト気体MsfのYu方向の流速分布が一様化される。また、本変形例では、ノズルユニット部MNの-Zu方向に、プラズマ放電用の一対の電極棒15A、15B(
図18では図示省略)を支持する電極保持ブロック部材16が設けられる。ノズルユニット部MNのスロット部SLTを通ったミスト気体Msfは、電極保持ブロック部材16の-Zu方向の底部にYu方向に延びるように形成されたスリット開口部AP’を通って基板Pの表面に噴霧される。なお、
図18中の各部材や構造で、先の
図17中の部材と同じものには同じ符号を付してある。
【0067】
ノズルユニット部MN及び電極保持ブロック部材16の-Xu方向側には、底板DN1aとスリット状の開口部DN1bとを含む回収ユニット部DN1のブロック部材が配置され、+Xu方向側には、底板DN2aとスリット状の開口部DN2bとを含む回収ユニット部DN2のブロック部材が配置される。本変形例の回収ユニット部DN1、回収ユニット部DN2の各ブロック部材は、XuZu面内で見ると全体に角柱状に形成され、その内部にはYu方向に延設された断面が矩形の空間Sv1、Sv2が形成されている。スリット状の開口部DN1bは傾斜した流路を介して空間Sv1に連通し、スリット状の開口部DN2bは傾斜した流路を介して空間Sv2に連通している。また、回収ユニット部DN1、回収ユニット部DN2の各ブロック部材のYu方向の両端部は、空間Sv1、Sv2や開口部DN1b、DN2bが開放されないように板材によって閉鎖されている。
【0068】
さらに、回収ユニット部DN1のブロック部材の-Xu方向側には、空間Sv1を減圧する為の複数の真空発生器(以下、エジェクターと呼ぶ)EJ1a、EJ1b、・・・がYu方向に並んで取り付けられている。エジェクターEJ1a、EJ1b、・・・の各々は、パイプPVaを介して供給される加圧気体(圧縮空気)をパイプPVbに向けて排出する流路(排気ポート)と、その流路によりベンチュリー効果等で作られる減圧した流路(吸引ポート)とを形成するように構成され、減圧された真空圧が発生する排気ポートが回収ユニット部DN1のブロック部材の-Xu方向の壁面に形成された孔Hdに接続されている。エジェクターEJ1a、EJ1b、・・・の各々によって、回収ユニット部DN1のブロック部材の空間Sv1が減圧されるので、ノズルユニット部MNのスリット開口部AP’から噴出された余剰のミスト気体Msfは、回収ユニット部DN1のブロック部材の開口部DN1bから吸引され、エジェクターEJ1a、EJ1b、・・・の各々のパイプPVbを介して回収される。
【0069】
同様に、回収ユニット部DN2のブロック部材の+Xu方向側には、空間Sv2を減圧する為の複数の真空発生器(エジェクター)EJ2a、EJ2b、EJ2cがYu方向に並んで取り付けられている。エジェクターEJ2a、EJ2b、EJ2cの各々も、パイプPVaから供給される加圧気体(圧縮空気)によって作られる真空圧を発生する排気ポートを介して、回収ユニット部DN2のブロック部材の空間Sv2を減圧する。これによって、ノズルユニット部MNのスリット開口部AP’から噴出された余剰のミスト気体Msfは、回収ユニット部DN2のブロック部材の開口部DN2bから吸引され、エジェクターEJ2a、EJ2b、EJ2cの各々のパイプPVbを介して回収される。
【0070】
本変形例においても、回収ユニット部DN1、DN2の各ブロック部材の開口部DN1b、DN2bの各々で吸引される風量(リットル/秒)は、ノズルユニット部MNのスリット開口部AP’から噴出されるミスト気体Msfの風量(リットル/秒)に対して、1~2倍の範囲で大きくなるように、エジェクターEJ1a、EJ1b、EJ2a、EJ2b、EJ2cの各々にパイプPVaを介して供給される加圧気体の風量が設定される。なお、エジェクターEJ1a、EJ1b、EJ2a、EJ2b、EJ2cとしては、粒体や粉体を含む気体を搬送できるものとして、例えば、株式会社日本ピスコから販売されている真空発生器VRLを利用することができる。
【0071】
本変形例では、ノズルユニット部MN、電極保持ブロック部材16、回収ユニット部DN1、DN2の各々を密接させて、ほぼ一体化するように組み付けられ、回収ユニット部DN1、DN2の各々の底板DN1a、DN2aの底面と、電極保持ブロック部材16の底面とは、隙間が無いように互いにXuYu面と平行な同一面を成すように形成される。また、先にも説明したが、ノズルユニット部MNの各ブロック部材、電極保持ブロック部材16、回収ユニット部DN1、DN2の各ブロック部材は、アクリル樹脂(ポリメタクリル酸メチル:PMMA)、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン:PTFE)、熱可塑性プラスチックのポリカーボネート、或いは、石英等のガラス硝材のいずれかで構成される。
【0072】
以上のような真空発生器(エジェクター)を用いることで、回収ユニット部DN1、DN2の各々の開口部DN1b、DN2bから吸引された余剰のミスト気体Msfは、パイプPVbまでほとんど圧損なく搬送される。なお、エジェクターEJ1a、EJ1b、EJ2a、EJ2b、EJ2cの各々からのパイプPVbの先端は1本にまとめられて回収機構に接続される。回収機構としては、余剰のミスト気体Msfから水分を冷凍乾燥器で取り除いて、ミストに含有されたナノ粒子を粉体状態で回収する方式が用いられる。
【0073】
〔変形例6〕
図19は、
図18のミスト成膜部1の構成の更なる変形例を示す部分断面図であり、
図19に示した各部の部材や構造において、
図18中の部材と同じものには同じ符号を付してある。
図18の構成では、回収ユニット部DN1、DN2の各々の底板DN1a、DN2aの底面と、電極保持ブロック部材16の底面とが同一面となるように形成されたが、
図19の構成では、回収ユニット部DN1、DN2の各々の底板DN1a、DN2aの底面に、周囲よりも僅かな寸法(数mm程度)だけ窪んだ窪み面Pboが形成されている。
図20は、
図19のミスト成膜部1の底面を基板P側から見た図である。
【0074】
図19、
図20に示すように、回収ユニット部DN1、DN2の各々の底板DN1a、DN2aの窪み面Pbo(
図19中の斜線部分)のZu方向の高さ位置は、ノズルユニット部MNの下方の電極保持ブロック部材16の平坦な底面16BのZu方向の高さ位置と同じに設定されている。従って、電極保持ブロック部材16のスリット開口部AP’から噴出されたミスト気体Msfは、基板Pの表面と底板DN1a、DN2aの窪み面Pboとで挟まれた間隔hbo(
図19参照)の空間内に溜まりつつ、開口部DN1b、DN2bを介して吸引される。XuYu面内において、底板DN1a、DN2aの底面の窪み面Pboの周囲部分(平坦面)は、基板Pの表面との間の間隔(ギャップ)が間隔hboよりも小さくなるように設定される。その為、開口部DN1b、DN2bによる気体の吸引圧(減圧)も作用して、間隔hboの空間内に溜まったミスト気体Msfが回収ユニット部DN1、DN2(底板DN1a、DN2a)の底面部から外側に遺漏することが抑制される。
【0075】
なお、
図20に示したように、電極保持ブロック部材16の底面16Bのスリット開口部AP’のYu方向の寸法(ノズルユニット部MNのスリット開口部AP’の長さ)に対して、回収ユニット部DN1、DN2の底板DN1a、DN2aの各々に形成されたスリット状の開口部DN1b、DN2bのYu方向の寸法は少しだけ長く設定される。また、電極保持ブロック部材16の底面16Bのスリット開口部AP’のYu方向の両端部分の面と基板Pの表面との間隔は、間隔hboのままだが、余剰のミスト気体Msfの遺漏を抑制する為に、その両端部分の面に吸引圧を供給する排気口を設けても良い。さらに、
図19では、電極保持ブロック部材16の電極棒15A、15Bの下方(-Zu側)に位置し、スリット開口部AP’のXu方向の端面を成す部分には、ミストの凝集による液滴をトラップする為のスリット部TRSが形成されている。
【0076】
〔変形例7〕
図21は、先の
図2、
図12、
図17~20の各々で示した電極保持ブロック部材16の構造の変形例を示す斜視図である。
図21において、直交座標系は従前の各図面で示した座標系XuYuZuと同じに設定され、また、従前の各図面で示した部材や配置と同じ部材には同じ符号を付してある。
図21において、電極保持ブロック部材16は、Yu方向に延びた2本の電極棒15A、15BをXu方向に所定のギャップ(スリット開口部AP又はAP’の間隔Dg以上)で平行に支持する底部支持部材160を有する。底部支持部材160は、電極棒15A、15BのYu方向の両端部のみを保持するようにU字状に切り取られた凹部160A、160Bと、スリット開口部AP(又はAP’)のYu方向の長さに亘って電極棒15A、15Bが露出するようにくり貫かれたスロット状の開口部160Cと、上側カバー板161が接合されるようにXuYu面と平行に形成された上端面160Dとで構成される。
【0077】
上側カバー板161は、ノズルユニット部MNのスリット開口部AP(又はAP’)の-Zu方向の直下に配置され、スリット開口部AP(又はAP’)のYu方向、Xu方向の各寸法とほぼ同じ寸法に形成されたスリット状の開口部161Aを有する。さらに、金属製(鉄、SUS等)の電極棒15A、15Bの各々の外周面は、柔軟性(伸縮性)を有するフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン:PTFE)のチューブ15At、15Btで被覆されている。基板Pに噴霧されるミスト気体Msfにプラズマを照射する場合、電極棒15A、15BのXu方向の間に安定してプラズマを発生させる必要がある。その為に、電極棒15A、15Bの各々を、耐薬品性と耐熱性を有し、誘電率が高い石英管の内部に挿入するのが望ましい。しかしながら、石英管の内壁面の全体と電極棒15A、15Bの外周面の全体とを一様に密着させることが難しいことがある。
【0078】
そこで、本変形例では、誘電率が比較的に高く、耐薬品性と耐熱性を有する可撓性のPTFE製のチューブ15At、15Btにより、電極棒15A、15Bの外周面の全体を密着して被覆する。例えば、電極棒15A、15Bの各々の外周面の公称の直径φeに対して、チューブ15At、15Btの各々の内周面の公称の直径φfを数%~30%程度だけ小さなものとし、電極棒15A、15Bの各々をチューブ15At、15Btの各々の内部に圧入することで、絶縁体で被覆された電極棒15A、15Bを容易に作製できる。なお、チューブ15At、15Btの各々の厚みが単体(単層)では不足する場合は、PTFE製の第2のチューブによって、チューブ15At、15Btの各々の外周面を更に被覆すれば良い。また、
図21に示した上側カバー板161は必須ではなく、省略しても良い。
【0079】
ところで、先の
図2、
図12、
図17、
図19、
図21に示したプラズマアシスト用の電極棒15A、15Bの構成では、ノズルユニット部MNのスリット開口部APから噴出されるミスト気体Msfに、Yu方向に関して均一な分布でプラズマ放電が照射される必要がある。その為には、Xu方向のギャップを一定にした電極棒15A、15Bを高い平行度で維持すると共に、プラズマが安定的に発生するように、比較的に高い周波数(2KHz以上)でピーク強度が20Kv程度に及ぶ高圧パルス電力を電極棒15A、15B間に印加する必要がある。
【0080】
その為、電極棒15A、15Bの周囲の絶縁性を高めて、不要な部分でのコロナ放電やアーク放電の発生を防止することが必要である。
図22は、先の
図19や
図21に示した電極保持ブロック部材16を、-Zu側から+Zu側に見た変形例を示す。
図22において、電極保持ブロック部材16の底部支持部材160(又は、
図19で示した底面16B)に形成されたスリット開口部AP’の-Xu側に配置される電極棒15Aの+Yu方向の端部には、高圧パルス電源からの一方のケーブル15Awが接続される圧着端子部15Anが設けられる。圧着端子部15Anは、電極保持ブロック部材16(底部支持部材160、又は底面16B)の+Yu方向の端部から突出するように設置される。一方、電極棒15Aの-Yu方向の端部15Aeは、電極保持ブロック部材16(底部支持部材160、又は底面16B)の-Yu方向の端部よりも内側に位置するように設置される。
【0081】
同様に、電極保持ブロック部材16の底部支持部材160(又は、
図19で示した底面16B)に形成されたスリット開口部AP’の+Xu側に配置される電極棒15Bの-Yu方向の端部には、高圧パルス電源からの他方のケーブル15Bwが接続される圧着端子部15Bnが設けられる。圧着端子部15Bnは、電極保持ブロック部材16(底部支持部材160、又は底面16B)の-Yu方向の端部から突出するように設置される。一方、電極棒15Bの+Yu方向の端部15Beは、電極保持ブロック部材16(底部支持部材160、又は底面16B)の+Yu方向の端部よりも内側に位置するように設置される。
【0082】
図22に示すように、電極棒15Aの圧着端子部15Anと電極棒15Bの端部15BeとはYu方向に距離Yssだけ離れ、電極棒15Bの圧着端子部15Bnと電極棒15Aの端部15AeとはYu方向に距離Yssだけ離れている。距離Yssを十分に大きくして、電極棒15A、15Bの各々の全体長に亘ってチューブ15At、15Btを被覆すれば、圧着端子部15Anと端部15Beの間、又は圧着端子部15Bnと端部15Aeの間で、不要なアーク放電等は発生しないが、距離Yssが十分に取れない場合、不要なアーク放電が発生し、電極保持ブロック部材16が損傷、破損するおそれがある。
【0083】
そこで、チューブ15Atは、圧着端子部15Anから端部15Aeまでの全体長に対して、距離Yssよりも長い寸法距離で、電極棒15Aを被覆する。即ち、チューブ15Atの-Yu方向側の端部が、電極棒15B側の圧着端子部15Bnの位置に対して、更に-Yu側に位置するように設定される。同様に、チューブ15Btも、圧着端子部15Bnから端部15Beまでの全体長に対して、距離Yssよりも長い寸法距離で、電極棒15Bを被覆する。即ち、チューブ15Btの+Yu方向側の端部が、電極棒15A側の圧着端子部15Anの位置に対して、更に+Yu側に位置するように設定される。
【0084】
また、先の
図21にも同様の構造が開示されているが、スリット開口部AP’のYu方向の両端側でミスト気体Msfの噴霧範囲のYu方向の外側であって、チューブ15Atで被覆された電極棒15Aとチューブ15Btで被覆された電極棒15BとのXu方向の間の空間には、PTFE(絶縁体)によるブロック部材162A、162Bが設けられている。ブロック部材162A、162Bの各々の-Zu方向の上面は、チューブ15At、15Btの高さよりも少し高く形成され、ブロック部材162Aは電極棒15Aの開放側の端部15Aeの横に、ブロック部材162Bは電極棒15Bの開放側の端部15Beの横に、それぞれ位置するように配置される。
【0085】
このようなブロック部材162A、162Bを設けることにより、電極棒15Aの端部15Ae側と電極棒15Bの端部15Be側の各々の近傍でプラズマ放電が強く集中する(場合によってはアーク放電したりする)ことが緩和され、チューブ15At、15Btの損傷を抑制することができる。その為、プラズマアシストの電極保持ブロック部材16の全体としての耐久性が向上する。なお、チューブ15At、15Btの材料としては、柔軟性のあるPTFEが作製上の取り扱いも容易なので、好ましい材料であるが、その他、エポキシ樹脂にガラス繊維を含有したガラスエポキシ樹脂で電極棒15A、15Bの各々の外周面を所定の厚みで被覆しても良い。
【0086】
〔変形例8〕
図23A~
図23Cは、ノズルユニット部MNの天板としてのブロック部材13に形成される複数の導入口の形状と配置に関する幾つかの変形例をXuYu面内で見た平面図である。
図23Aは、8つの円形の導入口13a~13hをYu方向に並べた場合を示し、
図23Bは、Yu方向を長軸とする小判形(オーバル形)の5つの導入口13a~13eをYu方向に並べた場合を示し、
図23Cは、頂角の1つを交互に+Xu方向と-Xu方向に向けた三角形(二等辺三角形)の7つの導入口13a~13gをYu方向に並べた場合を示す。
図23A、
図23B、
図23Cにおいて、ノズルユニット部MNの構造は、一例として先の
図2、
図3と同じとするが、構造としては、
図10A、
図10B、
図12、
図14のようなノズルユニット部MNであっても良い。
【0087】
図23Aにおいて、先の
図2、
図3で説明したように、導入口13a~13hの各々の中心線はAXh、導入口13a~13hの各々の直径はDa、導入口13a~13hの中心点のYu方向の間隔はLyp、ブロック部材13の内側の導入口13a~13hが形成された面のXu方向の間隔(幅)はDu、そして中心線AXhからスロット部SLT(スリット開口部AP)までのXu方向の間隔(寸法)はLxaに設定されている。また、ノズルユニット部MN内部の空間SOのYu方向の寸法(スロット部SLTの長さ)をLysとする。
【0088】
先に
図3で説明したように、間隔(寸法)Lxaと直径Daとは、Lxa>Da/2の関係に設定され、8つの導入口13a~13hは、空間SOの寸法Lys内でYu方向にほぼ均等な分布で位置するように設定される。さらに、直径Daと間隔Lypとの比Lyp/Daは、導入口13a~13hから噴出されるミスト気体Msfの流量によっても異なるが、1.1≧Lyp/Da≧2.0の範囲に設定される。従って、空間SOの寸法Lysによっては、比Lyp/Daの範囲を保つように直径Daを変えたり、導入口13a~13hの個数を減少又は増加させたりすると良い。
【0089】
図23Bでは、オーバル形状の導入口13a~13eの各々のXu方向の寸法をDa、Yu方向の寸法をDyaとしたとき、その比Dya/Daは1.5≧Dya/Da≧2.0程度の範囲に設定され、寸法Dyaと間隔Lypとの比Lyp/Dyaは、
図23Aの場合と同様に、1.1≧Lyp/Dya≧2.0の範囲に設定される。
【0090】
図23Cでは、三角形の導入口13a~13gの各々の中心線AXhが通る位置を重心点としたとき、導入口13a~13gの各々の重心点は、そのYu方向の並びの順にXu方向に交互に僅かにずれて位置する。しかしながら、三角形の導入口13a~13gの各々の中心線AXhがノズルユニット部MN内の傾斜内壁面10A(
図3参照)と交わるXu方向の位置の平均的な位置と、スロット部SLTのXu方向の中心位置とは、
図23A、
図23Bと同様の間隔(寸法)Lxaに設定される。
【0091】
図23Cにおいて、導入口13a~13gの各々を二等辺三角形として、その頂角(60°以外)と対向する底辺のYu方向の寸法をDya、頂角の底辺からの高さ寸法をDaとしたとき、その頂角が約53°のとき、Dya≒Daの関係になる。また、
図23Cの場合、中心線AXhのYu方向の間隔(寸法)Lypは、導入口13a~13gの各々をYu方向に仕切る隔壁のYu方向の寸法をWkとすると、Lyp≒Wk+(Dya/2)に設定される。その為、頂角を小さくすると共に、隔壁の寸法Wkを小さくすることにより、間隔(寸法)Lypと導入口13a~13gの各々のYu方向の寸法Dyaとを、Lyp≦Dyaの関係に設定することもできる。
【0092】
〔第3の実施の形態〕
図24は、第3の実施の形態によるミスト成膜装置の概略的な構成を示す図であり、座標系XYZ、座標系XuYuZuの各々は、先の
図1中で定義したものと同じである。また、ノズルユニット部MNは先の
図2、
図3で示した構造のものと同じとする。本実施の形態では、シート状の基板Pを長尺方向に円筒面状に湾曲させて支持して一定速度で回転する回転ドラムDRが設けられる。回転ドラムDRは、座標系XYZのY軸(並びに座標系XuYuZuのYu軸)と平行に設置される回転中心線AXoから一定半径の外周面DRaと、不図示の駆動モータや減速器(ギヤボックス)のトルク軸と接続されて、回転中心線AXo回りのトルクが伝達されるシャフトSftとを備える。そのシャフトSftは回転ドラムDRのY方向の両端側に突出して設けられ、装置本体の支持フレーム(支持コラム)にベアリングを介して軸支される。本実施の形態では、基板Pを周方向に搬送する回転ドラムDRが移動機構に相当する。
【0093】
さらに本実施の形態では、シート状の基板Pを回転ドラムDRの外周面DRaにシワなく密着させる為のテンションローラTRが、基板Pの搬送方向に関して回転ドラムDRの上流側に配置される。XZ面内で見たとき、基板Pは外周面DRa上の周方向の位置Pinで外周面DRaに接触し始め、位置Poutで外周面DRaから離脱する。回転ドラムDRの回転速度は、駆動モータをオープン制御した場合、減速機のギヤ特性、ベアリング性能等によって、目標値に対して数%程度の速度ムラを有することがある。ミスト成膜の場合も、基板Pの搬送速度は、出来るだけ等速性が高い方が好ましく、速度ムラとしては、例えば、±0.5%以下にするのが望ましい。
【0094】
そこで、本実施の形態では、シャフトSftと同軸にエンコーダ計測用のスケール円盤SDを取り付け、スケール円盤SDの外周面の周方向に一定ピッチで形成された格子目盛を読取りヘッド(エンコーダヘッド)EH1、EH2を設ける。エンコーダヘッドEH1、EH2の各々で読取られる格子目盛の移動量に基づいて、回転ドラムDRの外周面DRaの周方向の単位時間当たりの移動量を計測して、外周面DRa(即ち、基板P)の移動速度を逐次求める。そして、計測された実際の移動速度の目標速度値に対する偏差をフィードバック情報として駆動モータをサーボ制御することで、速度ムラが低減される。
【0095】
ノズルユニット部MNから噴出されるミスト気体Msfは、回転ドラムDRの周方向の接触位置Pinと離脱位置Poutとの間の何処かで基板Pの表面に噴霧される。
図24に示すように、ノズルユニット部MNのスロット部SLT(スリット開口部AP)の中心線AXsの延長線は、回転ドラムDRの回転中心線AXo(又はシャフトSft)に向かうように、XY面に対して角度θpだけ傾くように配置される。角度θpは、
図1で説明したように、ミスト気体MsfをXY面に対して45°程度傾いた基板Pの表面に噴霧するものとするので、
図24においても、ノズルユニット部MNの座標系XuYuZuは座標系XYZ内でYu軸の回りに45°程度傾けられる。
【0096】
そのようにノズルユニット部MNの配置に合せて、エンコーダヘッドEH1は、スケール円盤SDの外周面の周方向に関して、ノズルユニット部MNの中心線AXsの延長線と同じ方位に配置され、エンコーダヘッドEH2は、回転中心線AXoを挟んで、エンコーダヘッドEH1の反対側(180°回転した方位)に配置される。エンコーダヘッドEH1の格子目盛Gssの読取り位置は、ノズルユニット部MNのスリット開口部APの周方向の方位と同じに設定されるので、ミスト気体Msfの基板P上の噴出位置と計測位置とは、周方向のアッベ誤差が無い状態で配置される。なお、本来は、スケール円盤SDの周囲には1つのエンコーダヘッドEH1を配置すれば良いが、
図24のように2つ目のエンコーダヘッドEH2を180°の間隔で配置することにより、遺漏したミスト気体Msfの一部が主たるエンコーダヘッドEH1に付着して計測エラーが発生した場合でも、エンコーダヘッドEH2で計測される移動量や移動速度の情報を直ちに代替使用することができ、装置の稼働停止を防ぐことができる。
【0097】
図24において、ノズルユニット部MNを回転中心線AXoの回りに回転させて、スロット部SLT(スリット開口部AP)の中心線AXsが、XY面(水平面)に対して角度θm(数度程度)だけ下方に傾くような配置のノズルユニット部MNaとしても良い。ノズルユニット部MNaの内部構造が先の
図2、
図3と同じである場合、
図24のように、接触位置Pinよりも下流側に中心線AXsが位置するようにノズルユニット部MNaを配置すると、ノズルユニット部MNa内の傾斜内壁面10A、内壁面11A、或いはスロット部SLT内にミストの凝集により付着した液滴が、スロット部SLTやスリット開口部APを伝わって基板P上に滴下されることが防止される。
【0098】
また、
図24において、ノズルユニット部MNを回転中心線AXoの回りに回転させて、スロット部SLT(スリット開口部AP)の中心線AXsが、YZ面(垂直面)に対して角度θf(数度程度)だけ基板Pの搬送方向の下流側に傾くと共に、離脱位置Poutよりも上流側にスリット開口部APが配置するようなノズルユニット部MNbとしても良い。ノズルユニット部MNbの配置では、ミスト気体Msfの噴出位置(スリット開口部APの位置)が、XZ面内で見ると、基板Pの表面が離脱位置Poutに向けて傾斜し始めた位置となり、ミスト噴霧された基板Pを、直後の離脱位置Poutから斜め下向きに一定の角度を保って搬送させることができる。
【0099】
即ち、
図24に示したノズルユニット部MNbの配置では、ミスト成膜によって基板Pの表面に形成された薄い液膜を乾燥させるまでの間、ミスト成膜の直後から基板Pの姿勢を一方向に傾けた状態にすることができる。その為、重力の影響で薄い液膜が流れようとする方向性を一方向(
図24の場合は下流側)に制限することができ、液膜の乾燥後に得られるナノ粒子層の厚み分布を基板Pの表面の全体に亘って均一にすることが可能となる。
【0100】
〔変形例9〕
図25は、
図24のように回転ドラムDRで基板Pを支持する際のノズルユニット部MN、回収ユニット部DN1、DN2、及び電極保持ブロック部材16が組付けられるカバー部CBの変形構造を、回転ドラムDR側から見た斜視図である。また、
図26は、
図25のカバー部CBをXuZu面と平行な面で破断した断面図である。
図25、
図26において、座標系XuYuZuは、従前の各図で定義した座標系と同じであり、ノズルユニット部MNの内部構造は、ここでは先の
図2、
図3と同じとするが、その他に先の
図10A、
図10B、
図12~
図14のいずれかに示した構造と同じであっても良い。
【0101】
図25、
図26に示すように、カバー部CBは、回転ドラムDRの外周面DRa(基板P)の曲率に合わせて、全体として回転中心線AXoから所定の半径で湾曲した円弧状の形状とされ、基板Pの表面と径方向に一定の間隔で対向するように湾曲して、Yu方向の幅が基板Pの幅(又は外周面DRaの幅)よりも広い内壁面40Aを有する。内壁面40Aの回転中心線AXoから半径Rcbは、回転ドラムDRの外周面DRa(又は基板P)の半径Rdpよりも5mm~15mm程度大きく設定される。また、内壁面40AのYu方向の両側には、回転ドラムDRの外周面DRaのYu方向の端部付近と数mm以下(例えば、1~3mm)のギャップで対向するような扇状のフランジ部40B1、40B2が設けられる。フランジ部40B1、40B2は、内壁面40Aに形成された電極保持ブロック部材16のスリット開口部AP’から噴出されて、内壁面40Aと基板Pの表面との間の空間内に満たされるミスト気体Msfが、カバー部CBの下方からYu方向に遺漏することを抑制する。
【0102】
さらに、カバー部CBの内壁面40Aの周方向に沿った両端部の各々には、基板Pの表面と所定のギャップで対向するようにYu方向に延設されたリム部40E1、40E2が設けられている。リム部40E1、40E2の基板Pと対向する面は、内壁面40Aの半径Rcbと同じ曲率の円筒状の部分曲面としても良いが、径方向に関して半径Rcbと半径Rdpの間の位置に設定しても良い。カバー部CBの内壁面40Aの周方向の中央部に形成されたスリット開口部AP’に対して、基板Pの搬送方向の上流側と下流側の各々には、内壁面40Aよりも窪んだ凹部40C1、40C2が形成されている。凹部40C1、40C2の各々は、Yu方向に内壁面40Aの幅と同じ長さで形成され、周方向に関しては回収ユニット部DN1のスリット状の開口部DN1b、回収ユニット部DN2のスリット状の開口部DN2bの幅よりも大きく形成されている。
【0103】
また、凹部40C1のスリット開口部AP’側の端部エッジは、内壁面40Aと垂直な面(回転中心線AXoを含みYu方向に延びる面)に対してスリット開口部AP’側に傾斜した斜面40D1にされ、凹部40C2のスリット開口部AP’側の端部エッジは、内壁面40Aと垂直な面(回転中心線AXoを含みYu方向に延びる面)に対してスリット開口部AP’側に傾斜した斜面40D2にされている。内壁面40Aの凹部40C1内に形成された回収ユニット部DN1のスリット状の開口部DN1bの中心を通り、回転中心線AXoから径方向に延びる線をL31とし、回収ユニット部DN2のスリット状の開口部DN2bの中心を通り、回転中心線AXoから径方向に延びる線をL32としたとき、ノズルユニット部MNのスロット部SLTの中心(スリット開口部AP’の中心)を通る中心線AXsに対する線L31のXuZu面内での開き角度と、中心線AXsに対する線L32のXuZu面内での開き角度とはほぼ等しく設定されている。
【0104】
本変形例においても、ミスト気体Msfを噴出するスリット開口部AP’、余剰のミスト気体Msfを吸引するスリット状の開口部DN1b、DN2bの各々のYu方向の長さはほぼ同じに設定されるが、開口部DN1b、DN2bの長さをスリット開口部AP’よりも少し長くなるように設定しても良い。また、開口部DN1b、DN2bの各々での吸引流量(リットル/秒)は、スリット開口部AP’から噴出されるミスト気体Msfの流量(リットル/秒)に対して同程度以上(例えば、1.2倍~2倍)に設定される。従って、本変形例でも、スリット開口部AP’から噴出されたミスト気体Msfは、直下の基板Pの表面に噴霧された後、カバー部CBの内壁面40Aと基板Pの表面との間の空間を周方向に沿って上流側と下流側とに流れて凹部40C1、40C2に達する。
【0105】
凹部40C1、40C2の空間の基板Pの表面からの径方向の寸法は、内壁面40Aと基板Pの間の空間の径方向の寸法に比べて大きい為、凹部40C1、40C2の空間に達したミスト気体Msfは、内壁面40Aの下の空間を流れるミスト気体Msfの流速(m/秒)よりも低下した流速(m/秒)になって、開口部DN1b、DN2bの各々で吸引される。このような凹部40C1、40C2を設けることにより、カバー部CBのリム部40E1、40E2の各々と基板Pの表面との間の隙間からは、周囲の外気が凹部40C1、40C2内に流入する強い流れが生じ、余剰のミスト気体Msfのカバー部CB内からの遺漏を効率的に防止することができる。
【0106】
以上の変形例において、基板Pの温度をミスト気体Msfの温度よりも低くすると、ミストの基板Pへの付着率が向上することから、回転ドラムDRの外周面DRaの温度を低下させる温調機構を回転ドラムDR内に設けても良い。さらに、カバー部CB(特に内壁面40A)の温度をミスト気体Msfの温度と同じにするような温調機構を設けても良い。
図25で示したカバー部CBのフランジ部40B1、40B2は、開口部DN1b、DN2bの各々による余剰のミスト気体Msfの吸引力が十分に確保できていれば、省略しても良い。また、
図26で示した中心線AXsに対する線L31の回転中心線AXo回りの開き角度と、中心線AXsに対する線L32の回転中心線AXo回りの開き角度とは必ずしも同じにする必要はない。その開き角度は、基板Pの目標となる搬送速度とスリット開口部AP’から噴出されるミスト気体Msfの流量との関係から設定される。
【0107】
なお、以上の実施形態の説明に関して、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
キャリア気体にミストを含むミスト気体を基板の表面に噴霧し、前記ミストに含有させたナノ粒子を前記基板の表面に薄膜状に堆積するミスト成膜装置であって、前記基板を表面に沿った第1方向に移動させる移動機構と、前記基板の表面から所定の間隔で対向した先端部から前記ミスト気体を、前記第1方向と交差した第2方向にスリット状に延びた分布で噴出するように、前記先端部に形成されたスリット開口部と、前記ミスト気体の導入口から前記スリット開口部まで、前記ミスト気体を前記第2方向に広がった空間内に満たす為に、前記スリット開口部の前記第1方向の一方の端部に連なる第1内壁面と、前記スリット開口部の前記第1方向の他方の端部に連なると共に、前記第1内壁面との間隔が前記導入口から前記スリット開口部に向けて狭くなるような第2内壁面とで構成されるノズルユニットと、を備え、前記導入口から噴出される前記ミスト気体の噴出ベクトルの中心の延長線と前記第2内壁面との成す交差角を鋭角に設定した、ミスト成膜装置。
(付記2)
付記1に記載のミスト成膜装置であって、前記導入口からの前記ミスト気体の噴出ベクトルの中心の延長線を中心線AXh、前記スリット開口部からの前記ミスト気体の噴出方向と平行で前記スリット開口部の前記第1方向に関する中心を通る線を中心線AXs、前記導入口の前記第1方向の寸法をDa、前記スリット開口部の前記第1方向の寸法をDgとしたとき、前記中心線AXhと前記第2内壁面との交点から前記中心線AXsまでの前記第1方向の間隔Lxaは、Lxa>(Da+Dg)/2の関係に設定される、ミスト成膜装置。
(付記3)
付記2に記載のミスト成膜装置であって、前記中心線AXhと前記第2内壁面との成す前記交差角を角度θaとしたとき、角度θaを、20°<θa<40°の範囲に設定した、ミスト成膜装置。
(付記4)
付記2に記載のミスト成膜装置であって、前記中心線AXhと前記第2内壁面との成す前記交差角を角度θaとしたとき、角度θaを、30°±5°の範囲に設定した、ミスト成膜装置。
(付記5)
付記2~4のいずれか1項に記載のミスト成膜装置であって、前記ノズルユニットは、前記第1内壁面を構成する第1のブロック部材と、前記第2内壁面を構成する第2のブロック部材と、前記空間内に前記ミスト気体を供給する前記導入口が形成され、前記第1方向に離れた前記第1内壁面と前記第2内壁面とをつなぐように配置された第3のブロック部材と、を有する、ミスト成膜装置。
(付記6)
付記5に記載のミスト成膜装置であって、前記第3のブロック部材に形成される前記導入口は、前記第2方向に沿って所定の間隔Lypで複数設けられ、複数の前記導入口の各々に接続されて、霧化器により発生させた前記ミスト気体を個別に供給する為の複数のパイプを更に有する、ミスト成膜装置。
(付記7)
付記6に記載のミスト成膜装置であって、複数の前記導入口の各々は、前記間隔Lypよりも小さく設定された前記寸法Daを直径とする円形に形成される、ミスト成膜装置。
(付記8)
付記2~4のいずれか1項に記載のミスト成膜装置であって、前記ノズルユニットの前記スリット開口部から噴出されて、前記基板の表面に沿って流れる前記ミスト気体の余剰分を吸引する為に、前記スリット開口部に対して前記基板の搬送方向の上流側に配置された第1の回収ユニットと下流側に配置された第2の回収ユニットとを更に備える、ミスト成膜装置。
(付記9)
付記8に記載のミスト成膜装置であって、前記第1及び第2の回収ユニットの各々は、前記ノズルユニットの前記スリット開口部と平行に配置されて、前記ミスト気体の余剰分を吸引する負圧を発生するスリット状の開口部を有する、ミスト成膜装置。
(付記10)
付記9に記載のミスト成膜装置であって、前記第1及び第2の回収ユニットの各々は、前記スリット状の開口部と連通して前記第2方向に延設された内部空間を有し、圧縮気体の供給により真空圧を発生させて前記内部空間を減圧する真空発生器を、前記第1及び第2の回収ユニットの各々の前記第2方向に沿って所定の間隔で複数接続した、ミスト成膜装置。
(付記11)
付記9に記載のミスト成膜装置であって、前記ノズルユニットの前記スリット開口部と前記基板との間に配置されて、前記ミスト気体にプラズマを照射する為に、前記第1方向に関して前記スリット開口部から噴出する前記ミスト気体を挟むように配置されたプラズマ放電用の一対の電極棒を支持する電極保持ブロック部材を更に備える、ミスト成膜装置。
(付記12)
付記11に記載のミスト成膜装置であって、前記電極保持ブロック部材は、前記一対の電極棒の前記基板側に前記ミスト気体を通すスロット状の開口部を形成した底部支持部材を有し、前記第1の回収ユニットと前記第2の回収ユニットは、前記電極保持ブロック部材を挟んで前記第1方向に密接して配置される、ミスト成膜装置。
(付記13)
付記12に記載のミスト成膜装置であって、前記電極保持ブロック部材の前記底部支持部材の前記基板と対向した面と、前記第1及び第2の回収ユニットの各々の前記スリット状の開口部が形成されて前記基板と対向した面とを、前記基板の表面と平行な同一面に設定した、ミスト成膜装置。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミストを物体の表面に供給して前記物体の表面に前記ミストが含む材料物質の膜を成膜する成膜装置であって、
前記ミストを発生させるミスト発生部と、
前記ミスト発生部で発生した前記ミストを空間に供給する第1の供給口及び前記空間から前記物体の表面に前記ミストを供給する第2の供給口を有するミスト供給部と、
を有し、
前記ミスト供給部は、前記空間内の内壁面に前記ミストが付着して形成された液体をトラップするトラップ部を有し、
前記トラップ部は、前記第1の供給口と前記第2の供給口との間に配置される、成膜装置。
【請求項2】
前記トラップ部は、前記内壁面に設けられる、
請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記トラップ部は、スリットであり、
前記ミスト供給部は、前記液体を前記スリットにより捕集する、
請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記ミスト供給部は、前記トラップ部と接続され、前記トラップ部でトラップされた前記液体を回収する回収部を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記ミスト供給部は、排出口を有し、
前記トラップ部でトラップされた前記液体が前記排出口を介して排出される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記排出口は、吸引部と接続し、
前記吸引部は、前記トラップ部でトラップされた前記液体を吸引する、
請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記ミスト供給部は、前記トラップ部を複数有する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記トラップ部は、前記第1の供給口よりも前記第2の供給口に近い位置に配置される、
請求項1~7のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項9】
ミストを物体の表面に供給して前記物体の表面に前記ミストが含む材料物質の膜を成膜する成膜装置であって、
前記ミストを発生させるミスト発生部と、
前記ミスト発生部で発生した前記ミストを空間に供給する第1の供給口及び前記空間から前記物体の表面に前記ミストを供給する第2の供給口を有するミスト供給部と、
を有し、
前記ミスト供給部は、前記空間内の内壁面に前記ミストが付着して形成された液体を捕集する捕集部を有し、
前記捕集部は、前記第1の供給口と前記第2の供給口との間に配置される、成膜装置。
【請求項10】
前記捕集部は、前記第2の供給口よりも前記第1の供給口に近い位置に配置される、
請求項9に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記ミスト供給部は、前記空間を形成する前記内壁面を有し、
前記内壁面は、曲面を有する、
請求項1~10のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項12】
前記物体を保持する物体保持部を有し、
前記第2の供給口は、前記物体保持部と対向して設けられる、
請求項1~11のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項13】
前記物体を搬送する搬送部を有し、
前記ミスト供給部は、搬送されている前記物体に対して前記ミストを供給する、
請求項1~11のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項14】
前記搬送部は、前記物体を、水平面に対して角度θ傾けて搬送する、
請求項13に記載の成膜装置。
【請求項15】
前記θは30°~60°である、
請求項14に記載の成膜装置。
【請求項16】
前記ミスト供給部は、前記物体の物体面に対して垂直方向を第1方向とし、前記第2の供給口の中心点を通って前記第1方向に延伸した延伸線が、鉛直方向に対して角度φ傾いて配置される、
請求項1~14のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項17】
前記角度φは、90度以下である、
請求項16に記載の成膜装置。
【請求項18】
前記ミスト供給部は、前記第2の供給口の中心点を通って前記第1方向に延伸した延伸線が、前記物体の物体面とほぼ垂直に交差する、
請求項16または17に記載の成膜装置。