(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105419
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20240730BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H01L21/302 101B
H05H1/46 M
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024075110
(22)【出願日】2024-05-07
(62)【分割の表示】P 2021035192の分割
【原出願日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2020079517
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(72)【発明者】
【氏名】永海 幸一
(57)【要約】
【課題】異なるエネルギーを有するイオンを基板に供給する技術を提供する。
【解決手段】開示されるプラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持器、及び電源システムを備える。基板支持器は、電極を有し、チャンバ内で基板を支持するように構成されている。電源システムは、電極に電気的に接続されている。電源システムは、バイアス電圧として、第1の期間において第1のパルスを電極に出力し、第1の期間の後の第2の期間において第2のパルスを電極に出力するように構成されている。第1のパルス及び第2のパルスの各々は、電圧のパルスである。第1のパルスの電圧レベルは、第2のパルスの電圧レベルと異なる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
電極を有し、前記チャンバ内で基板を支持するように構成された基板支持器と、
前記電極に電気的に接続されており、前記チャンバ内のプラズマから前記基板支持器上の基板にイオンを引き込むために前記電極にバイアス電圧を印加するように構成された電源システムと、
を備え、
前記電源システムは、前記バイアス電圧として、第1の期間において第1のパルスを前記電極に出力し、前記第1の期間の後の第2の期間において第2のパルスを前記電極に出力するように構成されており、
前記第1のパルス及び前記第2のパルスの各々は、負極性の電圧のパルスであり、
前記第1のパルスの電圧レベルは、前記第2のパルスの電圧レベルと異なり、
前記電源システムは、前記第1の期間及び前記第2の期間を各々が含む二つの周期のうち後続の周期内の前記第1の期間の開始前に、正極性の電圧のパルスを前記電極に出力するように構成されている、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記第2の期間は、前記第1の期間に連続しており、
前記第1のパルスの電圧レベルの絶対値は、前記第2のパルスの電圧レベルの絶対値よりも小さい、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記第1のパルスの電圧レベルの絶対値は、前記第2のパルスの電圧レベルの絶対値よりも大きく、
前記電源システムは、前記第1の期間と前記第2の期間との間の期間において前記電極への出力電圧が0Vであるように構成されている、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記第2の期間は、前記第1の期間に連続しており、
前記第1のパルスの電圧レベルの絶対値は、前記第2のパルスの電圧レベルの絶対値よりも大きい、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記電源システムは、前記第2の期間の後の第3の期間において前記電極に第3のパルスを出力するように構成されており、
前記第3のパルスは、負極性の電圧のパルスであり、
前記第3のパルスの電圧レベルの絶対値は、前記第2のパルスの電圧レベルの絶対値よりも大きい、
請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
チャンバと、
電極を有し、前記チャンバ内で基板を支持するように構成された基板支持器と、
前記電極に電気的に接続されており、前記チャンバ内のプラズマから前記基板支持器上の基板にイオンを引き込むために前記電極にバイアス電圧を印加するように構成された電源システムと、
を備え、
前記電源システムは、前記バイアス電圧として、第1の期間において第1のパルスを間欠的に前記電極に出力し、前記第1の期間の後の第2の期間において第2のパルスを間欠的に前記電極に出力するように構成されており、
前記第1のパルス及び前記第2のパルスの各々は、負極性の電圧のパルスであり、
前記第1のパルスの電圧レベルは、前記第2のパルスの電圧レベルと異なり、
前記電源システムは、前記第1の期間において前記第1のパルスと正極性の電圧のパルスを交互に前記電極に出力し、前記第2の期間において前記第2のパルスと正極性の電圧のパルスを交互に前記電極に出力するように構成されている、
プラズマ処理装置。
【請求項7】
チャンバと、
電極を有し、前記チャンバ内で基板を支持するように構成された基板支持器と、
前記電極に電気的に接続されており、前記チャンバ内のプラズマから前記基板支持器上の基板にイオンを引き込むために前記電極にバイアス電圧を印加するように構成された電源システムと、
を備え、
前記電源システムは、前記バイアス電圧として、第1の期間において第1のパルスを間欠的に前記電極に出力し、前記第1の期間の後の第2の期間において第2のパルスを間欠的に前記電極に出力するように構成されており、
前記第1のパルス及び前記第2のパルスの各々は、負極性の電圧のパルスであり、
前記第1のパルスの電圧レベルは、前記第2のパルスの電圧レベルと異なり、
前記電源システムは、前記第1の期間と前記第2の期間との間の期間において、正極性の電圧のパルスを前記電極に出力するように構成されている、
プラズマ処理装置。
【請求項8】
プラズマ処理装置のチャンバ内に設けられた基板支持器上に基板を準備する工程であり、該基板支持器は電極を含む、該工程と、
前記チャンバ内のプラズマから前記基板にイオンを引き込むためのバイアス電圧として、第1の期間において電源システムから前記電極に第1のパルスを出力する工程と、
前記バイアス電圧として、第2の期間において前記電源システムから前記電極に第2のパルスを出力する工程と、
を含み、
前記第1のパルス及び前記第2のパルスの各々は、負極性の電圧のパルスであり、
前記第1のパルスの電圧レベルは、前記第2のパルスの電圧レベルと異なり、
前記第1の期間及び前記第2の期間を各々が含む二つの周期のうち後続の周期内の前記第1の期間の開始前に、前記電源システムから前記電極に正極性の電圧のパルスを出力する工程を更に含む、
プラズマ処理方法。
【請求項9】
前記第2の期間は、前記第1の期間に連続しており、
前記第1のパルスの電圧レベルの絶対値は、前記第2のパルスの電圧レベルの絶対値よりも小さい、
請求項8に記載のプラズマ処理方法。
【請求項10】
前記第1のパルスの電圧レベルの絶対値は、前記第2のパルスの電圧レベルの絶対値よりも大きく、
前記第1の期間と前記第2の期間との間の期間において前記電源システムから前記電極への出力電圧を0Vに設定する工程を更に含む、
請求項8に記載のプラズマ処理方法。
【請求項11】
前記第2の期間は、前記第1の期間に連続しており、
前記第1のパルスの電圧レベルの絶対値は、前記第2のパルスの電圧レベルの絶対値よりも大きい、
請求項8に記載のプラズマ処理方法。
【請求項12】
前記第2の期間の後の第3の期間において前記電源システムから前記電極に第3のパルスを出力する工程を更に含み、
前記第3のパルスは、負極性の電圧のパルスであり、
前記第3のパルスの電圧レベルの絶対値は、前記第2のパルスの電圧レベルの絶対値よりも大きい、
請求項11に記載のプラズマ処理方法。
【請求項13】
プラズマ処理装置のチャンバ内に設けられた基板支持器上に基板を準備する工程であり、該基板支持器は電極を含む、該工程と、
前記チャンバ内のプラズマから前記基板にイオンを引き込むためのバイアス電圧として、第1の期間において電源システムから前記電極に第1のパルスを間欠的に出力する工程と、
前記第1の期間において前記電源システムから前記電極に正極性の電圧のパルスを間欠的に出力する工程であり、該正極性の電圧のパルスは前記第1のパルスと交互に出力される、該工程と、
前記バイアス電圧として、第2の期間において前記電源システムから前記電極に第2のパルスを間欠的に出力する工程と、
前記第2の期間において前記電源システムから前記電極に正極性の電圧のパルスを間欠的に出力する工程であり、該正極性の電圧のパルスは前記第2のパルスと交互に出力される、該工程と、
を含み、
前記第1のパルス及び前記第2のパルスの各々は、負極性の電圧のパルスであり、
前記第1のパルスの電圧レベルは、前記第2のパルスの電圧レベルと異なる、
プラズマ処理方法。
【請求項14】
プラズマ処理装置のチャンバ内に設けられた基板支持器上に基板を準備する工程であり、該基板支持器は電極を含む、該工程と、
前記チャンバ内のプラズマから前記基板にイオンを引き込むためのバイアス電圧として、第1の期間において電源システムから前記電極に第1のパルスを間欠的に出力する工程と、
前記バイアス電圧として、第2の期間において前記電源システムから前記電極に第2のパルスを間欠的に出力する工程と、
前記第1の期間と前記第2の期間との間の期間において、前記電源システムから前記電極に正極性の電圧のパルスを出力する工程と、
を含み、
前記第1のパルス及び前記第2のパルスの各々は、負極性の電圧のパルスであり、
前記第1のパルスの電圧レベルは、前記第2のパルスの電圧レベルと異なる、
プラズマ処理方法。
【請求項15】
チャンバと、
電極を有し、前記チャンバ内で基板を支持するように構成された基板支持器と、
前記電極に電気的に接続されており、前記チャンバ内のプラズマから前記基板支持器上の基板にイオンを引き込むために前記電極にバイアス電圧を印加するように構成されたDC電源システムと、
を備え、
前記電源システムは、前記バイアス電圧として、第1の期間において第1のパルスを100kHz以上1MHz以下の周波数で周期的に前記電極に出力し、前記第1の期間の後の第2の期間において第2のパルスを100kHz以上1MHz以下の周波数で周期的に前記電極に出力するように構成されており、
前記第1のパルス及び前記第2のパルスの各々は、負極性の電圧のパルスであり、
前記第1のパルスの電圧レベルは、前記第2のパルスの電圧レベルと異なり、
制御部が、前記電源システムを制御して、前記第1の期間及び前記第2の期間を各々が含む二つの周期のうち後続の周期内の前記第1の期間の開始前に、正極性の電圧の単一のパルスを前記電極に出力するように構成されている、
プラズマ処理装置。
【請求項16】
チャンバと、
電極を有し、前記チャンバ内で基板を支持するように構成された基板支持器と、
前記電極に電気的に接続されており、前記チャンバ内のプラズマから前記基板支持器上の基板にイオンを引き込むために前記電極にバイアス電圧を印加するように構成されたDC電源システムと、
を備え、
前記電源システムは、前記バイアス電圧として、第1の期間において第1のパルスを100kHz以上1MHz以下の周波数で周期的に前記電極に出力し、前記第1の期間の後の第2の期間において第2のパルスを100kHz以上1MHz以下の周波数で周期的に前記電極に出力するように構成されており、
前記第1のパルス及び前記第2のパルスの各々は、負極性の電圧のパルスであり、
前記第1のパルスの電圧レベルは、前記第2のパルスの電圧レベルと異なり、
制御部が、前記電源システムを制御して、前記第1の期間において前記第1のパルスと正極性の電圧のパルスを交互に前記電極に出力し、前記第2の期間において前記第2のパルスと正極性の電圧のパルスを交互に前記電極に出力するように構成されている、
プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理装置が基板に対するプラズマ処理において用いられている。プラズマ処理装置は、チャンバ及び基板保持電極を備える。基板保持電極は、チャンバ内に設けられている。基板保持電極は、その主面上に載置された基板を保持する。このようなプラズマ処理装置の一種は、特開2009-187975号公報(以下、「特許文献1」という)に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載されたプラズマ処理装置は、高周波発生装置及びDC負パルス発生装置を更に備えている。高周波発生装置は、基板保持電極に対して高周波電圧を印加する。特許文献1に記載されたプラズマ処理装置では、高周波電圧のオンとオフが交互に切り替えられる。また、特許文献1に記載されたプラズマ処理装置では、高周波電圧のオンとオフのタイミングに応じてDC負パルス発生装置から基板保持電極にDC負パルス電圧が印加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、異なるエネルギーを有するイオンを基板に供給する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持器、及び電源システムを備える。基板支持器は、電極を有し、チャンバ内で基板を支持するように構成されている。電源システムは、基板支持器の電極に電気的に接続されており、チャンバ内のプラズマから基板支持器上の基板にイオンを引き込むために基板支持器の電極にバイアス電圧を印加するように構成されている。電源システムは、バイアス電圧として、第1の期間において第1のパルスを基板支持器の電極に出力し、第1の期間の後の第2の期間において第2のパルスを基板支持器の電極に出力するように構成されている。第1のパルス及び第2のパルスの各々は、電圧のパルスである。第1のパルスの電圧レベルは、第2のパルスの電圧レベルと異なる。
【発明の効果】
【0007】
一つの例示的実施形態によれば、異なるエネルギーを有するイオンを基板に供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
【
図2】第1例のバイアス電圧のタイミングチャートである。
【
図3】第2例のバイアス電圧のタイミングチャートである。
【
図4】第3例のバイアス電圧のタイミングチャートである。
【
図5】第4例のバイアス電圧のタイミングチャートである。
【
図6】第5例のバイアス電圧のタイミングチャートである。
【
図7】一つの例示的実施形態に係る電源システムを示す図である。
【
図8】別の例示的実施形態に係る電源システムを示す図である。
【
図9】別の例示的実施形態に係る基板支持器の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0010】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理装置が提供される。プラズマ処理装置は、チャンバ、基板支持器、及び電源システムを備える。基板支持器は、電極を有し、チャンバ内で基板を支持するように構成されている。電源システムは、基板支持器の電極に電気的に接続されており、チャンバ内のプラズマから基板支持器上の基板にイオンを引き込むために基板支持器の電極にバイアス電圧を印加するように構成されている。電源システムは、バイアス電圧として、第1の期間において第1のパルスを基板支持器の電極に出力し、第1の期間の後の第2の期間において第2のパルスを基板支持器の電極に出力するように構成されている。第1のパルス及び第2のパルスの各々は、電圧のパルスである。第1のパルスの電圧レベルは、第2のパルスの電圧レベルと異なる。
【0011】
上記実施形態では、第1のパルスの電圧レベルは、第2のパルスの電圧レベルと異なる。したがって、第1の期間においてプラズマから基板に供給されるイオンのエネルギーと第2の期間においてプラズマから基板に供給されるイオンのエネルギーは異なる。故に、上記実施形態によれば、基板に異なるエネルギーを有するイオンを供給することが可能となる。
【0012】
一つの例示的実施形態において、第2の期間は、第1の期間に連続していてもよい。第1のパルス及び第2のパルスの各々は、負極性の電圧のパルスであってもよい。第1のパルスの電圧レベルの絶対値は、第2のパルスの電圧レベルの絶対値よりも小さくてもよい。
【0013】
一つの例示的実施形態において、第1のパルス及び第2のパルスの各々は、負極性の電圧のパルスであってもよい。第1のパルスの電圧レベルの絶対値は、第2のパルスの電圧レベルの絶対値よりも大きくてもよい。電源システムは、第1の期間と第2の期間との間の期間において基板支持器の電極への出力電圧が0Vであるように構成されていてもよい。
【0014】
一つの例示的実施形態において、第2の期間は、第1の期間に連続していてもよい。第1のパルス及び第2のパルスの各々は、負極性の電圧のパルスであってもよい。第1のパルスの電圧レベルの絶対値は、第2のパルスの電圧レベルの絶対値よりも大きくてもよい。
【0015】
一つの例示的実施形態において、電源システムは、第2の期間の後の第3の期間において基板支持器の電極に第3のパルスを出力するように構成されていてもよい。第3のパルスは、負極性の電圧のパルスであってもよい。第3のパルスの電圧レベルの絶対値は、第2のパルスの電圧レベルの絶対値よりも大きくてもよい。第3のパルスの電圧レベルの絶対値は、第1のパルスの電圧レベルの絶対値と同一であってもよい。
【0016】
一つの例示的実施形態において、電源システムは、第1の期間及び第2の期間を各々が含む二つの周期のうち後続の周期内の第1の期間の開始前に、正極性の電圧のパルスを基板支持器の電極に出力するように構成されていてもよい。この実施形態によれば、正極性の電圧のパルスが基板支持器の電極に出力されているときに、基板に電子が供給される。その結果、基板の正電荷量が減少される。
【0017】
一つの例示的実施形態において、電源システムは、第1の期間において第1のパルスを間欠的に基板支持器の電極に出力するように構成されていてもよい。電源システムは、第2の期間において第2のパルスを間欠的に基板支持器の電極に出力するように構成されていてもよい。
【0018】
一つの例示的実施形態において、第1のパルス及び第2のパルスの各々は、負極性の電圧のパルスであってもよい。電源システムは、第1の期間において第1のパルスと正極性の電圧のパルスを交互に基板支持器の電極に出力するように構成されていてもよい。電源システムは、第2の期間において第2のパルスと正極性の電圧のパルスを交互に基板支持器の電極に出力するように構成されていてもよい。この実施形態によれば、正極性の電圧のパルスが基板支持器の電極に出力されているときに、基板に電子が供給される。その結果、基板の正電荷量が減少される。
【0019】
一つの例示的実施形態において、電源システムは、第1の期間と第2の期間との間の期間において、正極性の電圧のパルスを基板支持器の電極に出力するように構成されていてもよい。この実施形態によれば、正極性の電圧のパルスが基板支持器の電極に出力されているときに、基板に電子が供給される。その結果、基板の正電荷量が減少される。
【0020】
別の例示的実施形態において、プラズマ処理方法が提供される。プラズマ処理方法は、プラズマ処理装置のチャンバ内に設けられた基板支持器上に基板を準備する工程を含む。該基板支持器は電極を含む。プラズマ処理方法は、チャンバ内のプラズマから基板にイオンを引き込むためのバイアス電圧として、第1の期間において電源システムから基板支持器の電極に第1のパルスを出力する工程を更に含む。プラズマ処理方法は、バイアス電圧として、第2の期間において電源システムから基板支持器の電極に第2のパルスを出力する工程を更に含む。第1のパルス及び第2のパルスの各々は、電圧のパルスである。第1のパルスの電圧レベルは、第2のパルスの電圧レベルと異なる。
【0021】
一つの例示的実施形態において、第2の期間は、第1の期間に連続していてもよい。第1のパルス及び第2のパルスの各々は、負極性の電圧のパルスであってもよい。第1のパルスの電圧レベルの絶対値は、第2のパルスの電圧レベルの絶対値よりも小さくてもよい。
【0022】
一つの例示的実施形態において、第1のパルス及び第2のパルスの各々は、負極性の電圧のパルスであってもよい。第1のパルスの電圧レベルの絶対値は、第2のパルスの電圧レベルの絶対値よりも大きくてもよい。プラズマ処理方法は、第1の期間と第2の期間との間の期間において電源システムから基板支持器の電極への出力電圧を0Vに設定する工程を更に含んでいてもよい。
【0023】
一つの例示的実施形態において、第2の期間は、第1の期間に連続していてもよい。第1のパルス及び第2のパルスの各々は、負極性の電圧のパルスであってもよい。第1のパルスの電圧レベルの絶対値は、第2のパルスの電圧レベルの絶対値よりも大きくてもよい。
【0024】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理方法は、第2の期間の後の第3の期間において電源システムから基板支持器の電極に第3のパルスを出力する工程を更に含んでいてもよい。第3のパルスは、負極性の電圧のパルスであってもよい。第3のパルスの電圧レベルの絶対値は、第2のパルスの電圧レベルの絶対値よりも大きくてもよい。第3のパルスの電圧レベルの絶対値は、第1のパルスの電圧レベルの絶対値と同一であってもよい。
【0025】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理方法は、第1の期間及び第2の期間を各々が含む二つの周期のうち後続の周期内の第1の期間の開始前に、電源システムから基板支持器の電極に正極性の電圧のパルスを出力する工程を更に含んでいてもよい。
【0026】
一つの例示的実施形態では、第1の期間において第1のパルスが電源システムから基板支持器の電極に間欠的に出力されてもよい。第2の期間において第2のパルスが電源システムから基板支持器の電極に間欠的に出力されてもよい。
【0027】
一つの例示的実施形態において、第1のパルス及び前記第2のパルスの各々は、負極性の電圧のパルスであってもよい。プラズマ処理方法は、第1の期間において電源システムから基板支持器の電極に正極性の電圧のパルスを間欠的に出力する工程を更に含んでいてもよい。正極性の電圧のパルスは第1のパルスと交互に出力されてもよい。プラズマ処理方法は、第2の期間において電源システムから基板支持器の電極に正極性の電圧のパルスを間欠的に出力する工程を更に含んでいてもよい。正極性の電圧のパルスは第2のパルスと交互に出力されてもよい。
【0028】
一つの例示的実施形態において、プラズマ処理方法は、第1の期間と第2の期間との間の期間において、電源システムから基板支持器の電極に正極性の電圧のパルスを出力する工程を更に含んでいてもよい。
【0029】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0030】
図1は、一つの例示的実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図1に示すプラズマ処理装置1は、容量結合型のプラズマ処理装置である。プラズマ処理装置1は、チャンバ10を備えている。チャンバ10は、その中に内部空間10sを提供している。チャンバ10の中心軸線は、軸線AXであり、鉛直方向に延びている。
【0031】
一実施形態において、チャンバ10は、チャンバ本体12を含んでいてもよい。チャンバ本体12は、略円筒形状を有している。内部空間10sは、チャンバ本体12の中に提供されている。チャンバ本体12は、例えばアルミニウムから構成されている。チャンバ本体12は電気的に接地されている。チャンバ本体12の内壁面、即ち、内部空間10sを画成する壁面には、耐プラズマ性を有する膜が形成されている。この膜は、陽極酸化処理によって形成された膜又は酸化イットリウムから形成された膜といったセラミック製の膜であり得る。
【0032】
チャンバ本体12の側壁には通路12pが形成されている。基板Wは、内部空間10sとチャンバ10の外部との間で搬送されるときに、通路12pを通過する。この通路12pの開閉のために、ゲートバルブ12gがチャンバ本体12の側壁に沿って設けられている。
【0033】
プラズマ処理装置1は、基板支持器16を更に備えている。基板支持器16は、チャンバ10の中で、その上に載置される基板Wを支持するように構成されている。基板Wは、略円盤形状を有する。基板支持器16は、支持体15によって支持されていてもよい。支持体15は、チャンバ本体12の底部から上方に延在している。支持体15は、略円筒形状を有している。支持体15は、石英といった絶縁材料から形成されている。
【0034】
基板支持器16は、下部電極18を有する。基板支持器16は、静電チャック20を更に有していてもよい。基板支持器16は、電極プレート19を更に有していてもよい。電極プレート19は、アルミニウムといった導電性材料から形成されており、略円盤形状を有している。下部電極18は、電極プレート19上に設けられている。下部電極18は、アルミニウムといった導電性材料から形成されており、略円盤形状を有している。下部電極18は、電極プレート19に電気的に接続されている。下部電極18及び電極プレート19の中心軸線は、軸線AXに略一致している。
【0035】
下部電極18は、その中に流路18fを提供している。流路18fは、熱交換媒体用の流路である。熱交換媒体としては、例えば冷媒が用いられる。流路18fには、熱交換媒体の循環装置(例えば、チラーユニット)が接続されている。この循環装置は、チャンバ10の外部に設けられている。循環装置からの熱交換媒体は、配管23aを介して流路18fに供給される。流路18fに供給された熱交換媒体は、配管23bを介して循環装置に戻される。
【0036】
静電チャック20は、下部電極18上に設けられている。基板Wは、内部空間10sの中で処理されるときには、その中心が軸線AX上に位置するように静電チャック20上に載置される。静電チャック20は、基板を保持するように構成されている。静電チャック20は、本体及び電極を有している。静電チャック20の本体は、酸化アルミニウム又は窒化アルミニウムといった誘電体から形成されている。静電チャック20の本体は、略円盤形状を有している。静電チャック20の中心軸線は、軸線AXに略一致している。
【0037】
静電チャック20の電極は、静電チャック20の本体内に設けられている。静電チャック20の電極は、導体から形成された膜である。静電チャック20の電極には、直流電源が電気的に接続されている。直流電源から静電チャック20の電極に直流電圧が印加されると、静電チャック20と基板Wとの間で静電引力が発生する。発生した静電引力により、基板Wは、静電チャック20に引き付けられ、静電チャック20によって保持される。
【0038】
基板支持器16は、その上に搭載されるエッジリングERを更に支持してもよい。エッジリングERは、環形状を有しており、例えばシリコン又は炭化ケイ素から形成されている。エッジリングERは、その中心軸線が軸線AX上に位置するように基板支持器16上に搭載される。一実施形態において、エッジリングERは、部分的に静電チャック20上に搭載されていてもよい。なお、基板Wは、静電チャック20上、且つ、エッジリングERによって囲まれた領域内に配置される。
【0039】
プラズマ処理装置1は、ガス供給ライン25を更に備えていてもよい。ガス供給ライン25は、ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャック20の上面と基板Wの裏面(下面)との間の間隙に供給する。
【0040】
プラズマ処理装置1は、筒状部28及び絶縁部29を更に備えていてもよい。筒状部28は、チャンバ本体12の底部から上方に延在している。筒状部28は、支持体15の外周に沿って延在している。筒状部28は、導電性材料から形成されており、略円筒形状を有している。筒状部28は、電気的に接地されている。絶縁部29は、筒状部28上に設けられている。絶縁部29は、絶縁性材料から形成されている。絶縁部29は、例えば石英といったセラミックから形成されている。絶縁部29は、略円筒形状を有している。絶縁部29は、電極プレート19の外周、下部電極18の外周、及び静電チャック20の外周に沿って延在している。
【0041】
プラズマ処理装置1は、上部電極30を更に備えている。上部電極30は、基板支持器16の上方に設けられている。上部電極30は、部材32と共にチャンバ本体12の上部開口を閉じている。部材32は、絶縁性材料から形成されている。上部電極30は、この部材32を介してチャンバ本体12の上部に支持されている。
【0042】
上部電極30は、天板34及び支持体36を含んでいてもよい。天板34の下面は、内部空間10sを画成している。天板34には、複数のガス吐出孔34aが形成されている。複数のガス吐出孔34aは、天板34を板厚方向(鉛直方向)に貫通している。天板34は、例えばシリコンから形成されている。或いは、天板34は、アルミニウム製の部材の表面に耐プラズマ性の膜を設けた構造を有し得る。この膜は、陽極酸化処理によって形成された膜又は酸化イットリウムから形成された膜といったセラミック製の膜であり得る。
【0043】
支持体36は、天板34を着脱自在に支持している。支持体36は、アルミニウムといった導電性材料から形成されている。支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。ガス拡散室36aからは、複数のガス孔36bが下方に延びている。複数のガス孔36bは、複数のガス吐出孔34aにそれぞれ連通している。支持体36には、ガス導入ポート36cが形成されている。ガス導入ポート36cは、ガス拡散室36aに接続している。ガス導入ポート36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0044】
ガス供給管38には、ガスソース群40が、バルブ群41、流量制御器群42、及びバルブ群43を介して接続されている。ガスソース群40、バルブ群41、流量制御器群42、及びバルブ群43は、ガス供給部を構成している。ガスソース群40は、複数のガスソースを含んでいる。バルブ群41及びバルブ群43の各々は、複数のバルブ(例えば開閉バルブ)を含んでいる。流量制御器群42は、複数の流量制御器を含んでいる。流量制御器群42の複数の流量制御器の各々は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。ガスソース群40の複数のガスソースの各々は、バルブ群41の対応のバルブ、流量制御器群42の対応の流量制御器、及びバルブ群43の対応のバルブを介して、ガス供給管38に接続されている。プラズマ処理装置1は、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択された一つ以上のガスソースからのガスを、個別に調整された流量で、内部空間10sに供給することが可能である。
【0045】
筒状部28とチャンバ本体12の側壁との間には、バッフル部材48が設けられていてもよい。バッフル部材48は、板状の部材であり得る。バッフル部材48は、例えば、アルミニウム製の板材に酸化イットリウム等のセラミックを被覆することにより構成され得る。このバッフル部材48には、複数の貫通孔が形成されている。バッフル部材48の下方においては、排気管52がチャンバ本体12の底部に接続されている。この排気管52には、排気装置50が接続されている。排気装置50は、自動圧力制御弁といった圧力制御器、及び、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、内部空間10sの中の圧力を減圧することができる。
【0046】
プラズマ処理装置1は、高周波電源61を更に備えている。高周波電源61は、プラズマ生成用の第1の高周波電力を発生する電源である。第1の高周波電力の周波数は、27~100MHzの範囲内の周波数、例えば40MHz又は60MHzであってもよい。高周波電源61は、整合器61m及び電極プレート19を介して下部電極18に接続されている。整合器61mは、高周波電源61の負荷側(下部電極18側)のインピーダンスを高周波電源61の出力インピーダンスに整合させるための整合回路を有している。なお、高周波電源61は、下部電極18に電気的に接続されていなくてもよく、整合器61mを介して上部電極30に接続されていてもよい。
【0047】
プラズマ処理装置1は、高周波電源62を更に備えていてもよい。高周波電源62は、第2の高周波電力を発生する電源である。第2の高周波電力の周波数は、第1の高周波電力の周波数よりも低い。高周波電源62は、整合器62m及び電極プレート19を介して下部電極18に接続されている。整合器62mは、高周波電源62の負荷側(下部電極18側)のインピーダンスを高周波電源62の出力インピーダンスに整合させるための整合回路を有している。なお、プラズマ処理装置1は、高周波電源62及び整合器62mを備えていなくてもよい。
【0048】
プラズマ処理装置1では、内部空間10sにガス供給部からガスが供給される。そして、高周波電力が供給されることにより、内部空間10sの中でガスが励起される。その結果、内部空間10sの中でプラズマが生成される。基板Wは、プラズマからのイオン及び/又はラジカルといった化学種により、処理される。
【0049】
プラズマ処理装置1は、電源システム70を更に備えている。電源システム70は、下部電極18に電気的に接続されている。電源システム70は、プラズマからのイオンを基板支持器16上の基板に引き込むために下部電極18にバイアス電圧を印加するように構成されている。電源システム70は、フィルタ70fを介して下部電極18に接続されていてもよい。フィルタ70fは、電源システム70に向かう高周波電力を遮断するか低減させるフィルタ回路を含んでいる。なお、電源システム70の詳細については、後述する。
【0050】
プラズマ処理装置1は、制御部MCを更に備えていてもよい。制御部MCは、プロセッサ、記憶装置、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、プラズマ処理装置1の各部を制御する。具体的に、制御部MCは、記憶装置に記憶されている制御プログラムを実行し、当該記憶装置に記憶されているレシピデータに基づいてプラズマ処理装置1の各部を制御する。制御部MCによる制御により、レシピデータによって指定されたプロセスがプラズマ処理装置1において実行される。種々の実施形態に係るプラズマ処理方法は、制御部MCによるプラズマ処理装置1の各部の制御により、プラズマ処理装置1において実行され得る。
【0051】
以下、
図2~
図6を参照して、電源システム70が発生するバイアス電圧について、説明する。
図2~
図6はそれぞれ、第1例~第5例のバイアス電圧のタイミングチャートである。また、以下では、種々の例示的実施形態に係るプラズマ処理方法についても説明する。
【0052】
種々の例示的実施形態において、プラズマ処理方法は、基板支持器16上に基板Wを準備する工程を含む。プラズマ処理方法は、基板Wが基板支持器16上に載置されている状態で実行される。
【0053】
プラズマ処理方法は、チャンバ10内でプラズマを生成する工程を含む。プラズマを生成するために、処理ガスが、ガス供給部からチャンバ10内に供給される。また、チャンバ10内のガスの圧力が、指定された圧力に排気装置50によって調整される。また、第1の高周波電力が、高周波電源61から供給される。その結果、プラズマが、チャンバ10内で処理ガスから生成される。なお、プラズマの生成中に、高周波電源62からの第2の高周波電力が下部電極18に供給されてもよい。以下に説明するプラズマ処理方法の工程は、チャンバ10内でプラズマが生成されている期間において、実行される。
【0054】
プラズマ処理方法は、
図2~
図6に示すように、第1の期間P1において電源システム70から下部電極18にバイアス電圧として第1のパルスPL1を出力する工程を含む。第1のパルスPL1は、電圧のパルスである。第1のパルスPL1は、直流電圧のパルスであってもよい。なお、第1のパルスPL1は、三角波、インパルス波のような矩形波以外の波形を有していてもよい。第1のパルスは、その前縁及び後縁においてその電圧値が変化する波形を有していてもよい。
【0055】
プラズマ処理方法は、
図2~
図6に示すように、第2の期間P2において電源システム70から下部電極18にバイアス電圧として第2のパルスPL2を出力する工程を含む。第2の期間P2は、第1の期間P1の後の期間である。第2のパルスPL2は、電圧のパルスである。第1のパルスPL1の電圧レベルは、第2のパルスPL2の電圧レベルと異なる。なお、第2のパルスPL2は、直流電圧のパルスであってもよい。第2のパルスPL2は、三角波、インパルス波のような矩形波以外の波形を有していてもよい。第2のパルスは、その前縁及び後縁においてその電圧値が変化する波形を有していてもよい。
【0056】
図2~
図6の各々に示す例において、第1のパルスPL1及び第2のパルスPL2の各々は、負極性の電圧(例えば、負極性の直流電圧)のパルスである。第1のパルスPL1と第2のパルスPL2のうち一方のパルス(以下、「Hレベルのパルス」という)の電圧レベルと基準レベル(例えば、0V)との差は、6kV以上であってもよい。Hレベルのパルスの電圧レベルと基準レベルとの差は、10kV又は20kV以上であってもよい。第1のパルスPL1と第2のパルスPL2のうち他方のパルス(以下、「Lレベルのパルス」という)の電圧レベルと基準レベル(例えば、0V)との差は、5kV以下であってもよい。
【0057】
プラズマ処理方法では、
図2~
図6に示すように、周期CYが繰り返されてもよい。周期CYは、第1の期間P1及び第2の期間P2を含む。
図2~
図4に示す第1例~第3例では、周期CYを規定する周波数は、100kHz以上、1MHz以下の周波数であってもよい。
図5~
図6に示す第4例~第5例では、周期CYを規定する周波数は、0.2Hz以上、1Hz以下であってもよい。
【0058】
一実施形態においては、
図2に示す第1例のように、第2の期間P2は、第1の期間P1に連続していてもよい。この実施形態において、第1のパルスPL1の電圧レベルの絶対値は、第2のパルスPL2の電圧レベルの絶対値よりも小さくてもよい。
【0059】
なお、
図2に示す第1例では、バイアス電圧の基準レベルは0Vである。この基準レベルは、正又は負の値を有していてもよい。第1例では、基準レベルと第1のパルスPL1の電圧レベルとの間の差が基準レベルと第2のパルスPL2の電圧レベルとの間の差よりも小さければ、第1のパルスPL1の電圧レベル及び第2のパルスPL2の電圧レベルの各々は任意の値を有していてもよい。即ち、第1例では、第2のパルスPL2の電圧レベルが第1のパルスPL1の電圧レベルよりも低ければ、第1のパルスPL1の電圧レベル及び第2のパルスPL2の電圧レベルの各々は任意の値を有していてもよい。
【0060】
別の実施形態においては、
図3に示す第2例のように、第1のパルスPL1の電圧レベルの絶対値は、第2のパルスPL2の電圧レベルの絶対値よりも大きくてもよい。この実施形態において、プラズマ処理方法は、第1の期間P1と第2の期間P2との間の期間PG1において電源システム70から下部電極18への出力電圧を0Vに設定する工程を更に含んでいてもよい。
【0061】
なお、
図3に示す第2例においても、バイアス電圧の基準レベルは0Vである。この基準レベルは、正又は負の値を有していてもよい。第2例では、基準レベルと第1のパルスPL1の電圧レベルとの間の差が基準レベルと第2のパルスPL2の電圧レベルとの間の差よりも大きければ、第1のパルスPL1の電圧レベル及び第2のパルスPL2の電圧レベルの各々は任意の値を有していてもよい。即ち、第2例では、第1のパルスPL1の電圧レベルが第2のパルスPL2の電圧レベルよりも低ければ、第1のパルスPL1の電圧レベル及び第2のパルスPL2の電圧レベルの各々は任意の値を有していてもよい。
【0062】
更に別の実施形態においては、
図4に示す第3例のように、第2の期間P2は、第1の期間P1に連続していてもよい。この実施形態において、第1のパルスPL1の電圧レベルの絶対値は、第2のパルスPL2の電圧レベルの絶対値よりも大きくてもよい。
【0063】
更に別の実施形態においては、
図4に示す第3例のように、プラズマ処理方法は、第2の期間P2の後の第3の期間P3において電源システム70から下部電極18に第3のパルスPL3を出力する工程を更に含んでいてもよい。第3のパルスPL3は、負の電圧のパルスであってもよく、第3のパルスPL3の電圧レベルの絶対値は、第2のパルスPL2の電圧レベルの絶対値よりも大きくてもよい。第3のパルスPL3の電圧レベルの絶対値は、第1のパルスPL1の電圧レベルの絶対値と同じであってもよい。即ち、第3のパルスPL3は、Hレベルのパルスであってもよい。第3のパルスPL3の電圧レベルと基準レベル(例えば、0V)との差は、6kV以上であってもよい。第3のパルスPL3の電圧レベルと基準レベルとの差は、10kV又は20kV以上であってもよい。
【0064】
なお、
図4に示す第3例においても、バイアス電圧の基準レベルは0Vである。この基準レベルは、正又は負の値を有していてもよい。第3例では、基準レベルと第1のパルスPL1の電圧レベルとの間の差が基準レベルと第2のパルスPL2の電圧レベルとの間の差よりも大きければ、第1のパルスPL1の電圧レベル及び第2のパルスPL2の電圧レベルの各々は任意の値を有していてもよい。即ち、第3例では、第1のパルスPL1の電圧レベルが第2のパルスPL2の電圧レベルよりも低ければ、第1のパルスPL1の電圧レベル及び第2のパルスPL2の電圧レベルの各々は任意の値を有していてもよい。また、第3例では、基準レベルと第3のパルスPL3の電圧レベルとの間の差が基準レベルと第2のパルスPL2の電圧レベルとの間の差よりも大きければ、第3のパルスPL3の電圧レベル及び第2のパルスPL2の電圧レベルの各々は任意の値を有していてもよい。即ち、第3例では、第3のパルスPL3の電圧レベルが第2のパルスPL2の電圧レベルよりも低ければ、第3のパルスPL3の電圧レベル及び第2のパルスPL2の電圧レベルの各々は任意の値を有していてもよい。
【0065】
更に別の実施形態において、プラズマ処理方法は、
図2~
図4に示す第1例~第3例のように、正極性の電圧のパルスPPLを出力する工程を更に含んでいてもよい。電圧のパルスPPLの電圧レベルは、基準レベル(例えば、0V)よりも高い。電圧のパルスPPLは、正極性の直流電圧のパルスであってもよい。パルスPPLは、期間PPにおいて出力される。期間PPは、任意の連続する二つの周期CYのうち後続の周期CY内の第1の期間P1の開始前の期間である。期間PPは、後続の第1の期間P1の直前の期間であってもよい。この場合には、後続の第1の期間P1において、高いエネルギーを有するイオンを基板Wに供給することが可能となる。
【0066】
図2に示す第1例では、期間PPは、期間PGの後の期間である。
図2に示す第1例では、期間PGは、第2の期間P2の後の期間である。
図2に示す第1例では、期間PGにおいて、電源システム70から下部電極18への出力電圧は、0V(即ち、基準レベル)に設定される。
【0067】
図3に示す第2例では、期間PPは、期間PG2の後の期間である。
図3に示す第2例では、期間PG2は、第2の期間P2の後の期間である。
図3に示す第2例では、期間PG2において、電源システム70から下部電極18への出力電圧は、0Vに設定される。
【0068】
図4に示す第3例では、期間PPは、期間PGの後の期間である。
図4に示す第3例では、期間PGは、第3の期間P3の後の期間である。
図4に示す第3例では、期間PGにおいて、電源システム70から下部電極18への出力電圧は、0V(即ち、基準レベル)に設定される。
【0069】
更に別の実施形態においては、
図5に示す第4例及び
図6に示す第5例のように、第1の期間P1において第1のパルスPL1が電源システム70から下部電極18に間欠的に出力されてもよい。第1のパルスPL1は、第1の期間P1において、電源システム70から下部電極18に周期的に出力されてもよい。第1のパルスPL1は、第1の期間P1内の副期間SP1において出力される。第1のパルスPL1は、100kHz以上、1MHz以下の周波数で周期的に出力されてもよい。
【0070】
更に別の実施形態においては、
図5に示す第4例及び
図6に示す第5例のように、第2の期間P2において第2のパルスPL2が電源システム70から下部電極18に間欠的に出力されてもよい。第2のパルスPL2は、第2の期間P2において、電源システム70から下部電極18に周期的に出力されてもよい。第2のパルスPL2は、第2の期間P2内の副期間SP2において出力される。第2のパルスPL2は、100kHz以上、1MHz以下の周波数で周期的に出力されてもよい。
【0071】
なお、
図5に示す第4例及び
図6に示す第5例では、第1のパルスPL1の電圧レベルの絶対値は、第2のパルスPL2の電圧レベルの絶対値よりも大きい。第1のパルスPL1の電圧レベルの絶対値は、第2のパルスPL2の電圧レベルの絶対値よりも小さくてもよい。
【0072】
図5に示す第4例においても、バイアス電圧の基準レベルは0Vである。この基準レベルは、正又は負の値を有していてもよい。第4例では、基準レベルと第1のパルスPL1の電圧レベルとの間の差が基準レベルと第2のパルスPL2の電圧レベルとの間の差と異なっていれば、第1のパルスPL1の電圧レベル及び第2のパルスPL2の電圧レベルの各々は任意の値を有していてもよい。
【0073】
更に別の実施形態において、プラズマ処理方法は、
図5に示す第4例のように、第1の期間P1において電源システム70から下部電極18に正極性の電圧のパルスPPL1を間欠的に出力する工程を更に含んでいてもよい。電圧のパルスPPL1の電圧レベルは、基準レベル(例えば、0V)よりも高い。電圧のパルスPPL1は、正極性の直流電圧のパルスであってもよい。この実施形態において、正極性の電圧のパルスPPL1は、第1のパルスPL1と交互に出力され得る。正極性の電圧のパルスPPL1は、期間SPP1において出力される。期間SPP1は、期間SPG1の後の期間であってもよい。期間SPG1は、副期間SP1の後の期間である。期間SPG1において、電源システム70から下部電極18への出力電圧は、0V(即ち、基準レベル)に設定されてもよい。期間SPP1は、後続の副期間SP1の直前の期間であってもよい。この場合には、後続の副期間SP1において、高いエネルギーを有するイオンを基板Wに供給することが可能となる。
【0074】
更に別の実施形態において、プラズマ処理方法は、
図5に示す第4例のように、第2の期間P2において電源システム70から下部電極18に正極性の電圧のパルスPPL2を間欠的に出力する工程を更に含んでいてもよい。電圧のパルスPPL2の電圧レベルは、基準レベル(例えば、0V)よりも高い。電圧のパルスPPL2は、正極性の直流電圧のパルスであってもよい。この実施形態において、正極性の電圧のパルスPPL2は、第2のパルスPL2と交互に出力され得る。正極性の電圧のパルスPPL2は、期間SPP2において出力される。期間SPP2は、期間SPG2の後の期間であってもよい。期間SPG2は、副期間SP2の後の期間である。期間SPG2において、電源システム70から下部電極18への出力電圧は、0V(即ち、基準レベル)に設定されてもよい。期間SPP2は、後続の副期間SP2の直前の期間であってもよい。この場合には、後続の副期間SP2において、高いエネルギーを有するイオンを基板Wに供給することが可能となる。
【0075】
更に別の実施形態において、プラズマ処理方法は、
図6に示す第5例のように、第1の期間P1と第2の期間P2との間の期間SPP1において、電源システム70から下部電極18に正極性の電圧のパルスPPL1を出力する工程を更に含んでいてもよい。電圧のパルスPPL1の電圧レベルは、基準レベル(例えば、0V)よりも高い。電圧のパルスPPL1は、正極性の直流電圧のパルスであってもよい。期間SPP1は、後続の副期間SP2の直前の期間であってもよい。この場合には、後続の副期間SP2において、高いエネルギーを有するイオンを基板Wに供給することが可能となる。
【0076】
更に別の実施形態において、プラズマ処理方法は、
図6に示す第5例のように、期間SPP2において、電源システム70から下部電極18に正極性の電圧のパルスPPL2を出力する工程を更に含んでいてもよい。電圧のパルスPPL2の電圧レベルは、基準レベル(例えば、0V)よりも高い。電圧のパルスPPL2は、正極性の直流電圧のパルスであってもよい。期間SPP2は、第2の期間P2と後続の第1の期間P1との間の期間である。期間SPP2は、後続の副期間SP1の直前の期間であってもよい。この場合には、後続の副期間SP1において、高いエネルギーを有するイオンを基板Wに供給することが可能となる。
【0077】
なお、
図6に示す第5例においても、バイアス電圧の基準レベルは0Vである。この基準レベルは、正又は負の値を有していてもよい。第5例では、基準レベルと第1のパルスPL1の電圧レベルとの間の差が基準レベルと第2のパルスPL2の電圧レベルとの間の差と異なっていれば、第1のパルスPL1の電圧レベル及び第2のパルスPL2の電圧レベルの各々は任意の値を有していてもよい。
【0078】
上述した種々の例示的実施形態では、第1の期間P1においてプラズマから基板Wに供給されるイオンのエネルギーと第2の期間P2においてプラズマから基板Wに供給されるイオンのエネルギーは異なる。故に、基板Wに異なるエネルギーを有するイオンを供給することが可能となる。
【0079】
また、幾つかの例示的実施形態では、正極性の直流電圧のパルスが下部電極18に供給される。正極性の直流電圧のパルスを下部電極18に供給することにより、電子が基板Wに供給される。その結果、基板Wの正電荷量が減少される。
【0080】
なお、第1例~第3例のバイアス電圧を用いて基板Wの膜をエッチングして基板Wに開口を形成する場合には、Lレベルのパルスが供給されている期間において、基板W上の堆積物が除去されて開口の形状が調整され得る。また、この場合には、Hレベルのパルスが供給されている期間において、深い開口の底にイオンが供給され得る。
【0081】
第4例及び第5例のバイアス電圧は、互いに異なる膜種を有する多層膜のエッチングに用いることが可能である。第4例及び第5例のバイアス電圧は、例えば、NANDデバイスの製造におけるエッチングで用いられ得る。NANDデバイスの製造においては、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜又は多結晶シリコン膜との交互の積層を含む多層膜がエッチングされる。シリコン酸化膜は、比較的高いエネルギーのイオンでエッチングされ、シリコン窒化膜又は多結晶シリコン膜は、比較的低いエネルギーのイオンでエッチングされ得る。第4例及び第5例のバイアス電圧を用いる場合には、第1の期間P1においてシリコン酸化膜がエッチングされ、第2の期間P2においてシリコン窒化膜又は多結晶シリコン膜がエッチングされてもよい。
【0082】
以下、プラズマ処理装置1の電源システム70として採用され得る幾つかの例示的実施形態に係る電源システムについて説明する。
【0083】
図7は、一つの例示的実施形態に係る電源システムを示す図である。
図7に示す電源システム70Aは、プラズマ処理装置1の電源システム70として採用され得る。電源システム70Aは、上述した第1例~第5例のバイアス電圧を出力し得る。電源システム70Aは、直流電源71、パルスユニット72、及びパルスコントローラPCを含み得る。
【0084】
直流電源71は、負極性の直流電圧を発生する電源である。直流電源71の正極は、グランドに接続されている。直流電源71は、可変直流電源であってもよい。
【0085】
パルスユニット72は、直流電源71からの負極性の直流電圧から電圧のパルスを生成するように構成されている。一実施形態において、パルスユニット72は、一つ以上のスイッチングトランジスタ72a、一つ以上のスイッチングトランジスタ72b、ダイオード72c、及びダイオード72dを含んでいてもよい。
【0086】
一つ以上のスイッチングトランジスタ72aは、直流電源71の正極とノード721との間で接続されている。パルスユニット72が、複数のスイッチングトランジスタ72aを含んでいる場合には、これらスイッチングトランジスタ72aは、直流電源71の正極とノード721との間で直列接続される。
【0087】
一つ以上のスイッチングトランジスタ72bは、直流電源71の負極とノード721との間で接続されている。パルスユニット72が、複数のスイッチングトランジスタ72bを含んでいる場合には、これらスイッチングトランジスタ72bは、直流電源71の負極とノード721との間で直列接続される。
【0088】
ダイオード72cは、一つ以上のスイッチングトランジスタ72aと並列に接続されている。ダイオード72cは、直流電源71の正極とノード722との間で接続されている。ダイオード72cのカソードは、直流電源71の正極に接続されており、ダイオード72cのアノードは、ノード722に接続されている。ノード722は、ノード721に接続されている。
【0089】
ダイオード72dは、一つ以上のスイッチングトランジスタ72bと並列に接続されている。ダイオード72dは、直流電源71の負極とノード722との間で接続されている。ダイオード72dのアノードは、直流電源71の負極に接続されており、ダイオード72dのカソードは、ノード722に接続されている。
【0090】
パルスコントローラPCは、パルスユニット72に制御信号を与えることにより、パルスユニット72からの電圧のパルスの出力期間を設定するように構成されている。一実施形態において、パルスコントローラPCは、制御信号として、一つ以上のスイッチングトランジスタ72aの制御端子及び一つ以上のスイッチングトランジスタ72bの制御端子にパルス制御信号を与える。
【0091】
パルスコントローラPCからのパルス制御信号により、一つ以上のスイッチングトランジスタ72aが閉状態になり、一つ以上のスイッチングトランジスタ72bが開状態になると、ノード722はグランドに接続される。その結果、電源システム70Aの出力電圧は、0V(即ち、基準レベル)になる。
【0092】
パルスコントローラPCからのパルス制御信号により、一つ以上のスイッチングトランジスタ72aが開状態になり、一つ以上のスイッチングトランジスタ72bが閉状態になると、ノード722は直流電源71の負極に接続される。その結果、電源システム70Aから負極性の電圧のパルス(例えば、負極性の直流電圧)が出力される。上述した第1のパルス、第2のパルス、及び第3のパルスの各々は、直流電源71の出力電圧レベルを調整してノード722から出力されるパルスの電圧レベルを調整することにより、生成される。
【0093】
一実施形態において、電源システム70Aは、直流電源73及びパルスユニット74を更に含んでいてもよい。直流電源73は、正極性の直流電圧を発生する電源である。直流電源73の負極は、グランドに接続されている。直流電源73は、可変直流電源であってもよい。
【0094】
パルスユニット74は、直流電源73からの正極性の直流電圧から電圧のパルスを生成するように構成されている。一実施形態において、パルスユニット74は、一つ以上のスイッチングトランジスタ74a、一つ以上のスイッチングトランジスタ74b、ダイオード74c、及びダイオード74dを含んでいてもよい。
【0095】
一つ以上のスイッチングトランジスタ74aは、直流電源73の正極とノード741との間で接続されている。パルスユニット74が、複数のスイッチングトランジスタ74aを含んでいる場合には、これらスイッチングトランジスタ74aは、直流電源73の正極とノード741との間で直列接続される。
【0096】
一つ以上のスイッチングトランジスタ74bは、直流電源73の負極とノード741との間で接続されている。パルスユニット74が、複数のスイッチングトランジスタ74bを含んでいる場合には、これらスイッチングトランジスタ74bは、直流電源73の負極とノード741との間で直列接続される。
【0097】
ダイオード74cは、一つ以上のスイッチングトランジスタ74aと並列に接続されている。ダイオード74cは、直流電源73の正極とノード742との間で接続されている。ダイオード74cのカソードは、直流電源73の正極に接続されており、ダイオード74cのアノードは、ノード742に接続されている。ノード742は、ノード741に接続されている。
【0098】
ダイオード74dは、一つ以上のスイッチングトランジスタ74bと並列に接続されている。ダイオード74dは、直流電源73の負極とノード742との間で接続されている。ダイオード74dのアノードは、直流電源73の負極に接続されており、ダイオード74dのカソードは、ノード742に接続されている。
【0099】
パルスコントローラPCは、パルスユニット74に制御信号を与えることにより、パルスユニット74からの電圧のパルスの出力期間を設定するように構成されていてもよい。一実施形態において、パルスコントローラPCは、制御信号として、一つ以上のスイッチングトランジスタ74aの制御端子及び一つ以上のスイッチングトランジスタ74bの制御端子にパルス制御信号を与える。
【0100】
パルスコントローラPCからのパルス制御信号により、一つ以上のスイッチングトランジスタ74aが開状態になり、一つ以上のスイッチングトランジスタ74bが閉状態になると、ノード742はグランドに接続される。その結果、電源システム70Aの出力電圧は、0V(即ち、基準レベル)になる。
【0101】
パルスコントローラPCからのパルス制御信号により、一つ以上のスイッチングトランジスタ74aが閉状態になり、一つ以上のスイッチングトランジスタ74bが開状態になると、ノード742は直流電源73の正極に接続される。その結果、電源システム70Aから正極性の電圧(例えば、正極性の直流電圧)のパルスが出力される。
【0102】
なお、電源システム70Aから負極性の電圧のパルスが出力されているときには、一つ以上のスイッチングトランジスタ74a及び一つ以上のスイッチングトランジスタ74bは、開状態に設定され得る。また、電源システム70Aから正極性の電圧のパルスが出力されているときには、一つ以上のスイッチングトランジスタ72a及び一つ以上のスイッチングトランジスタ72bは、開状態に設定され得る。
【0103】
一実施形態において、パルスコントローラPCは、高周波電源61及び/又は高周波電源62にパルス制御信号を与えてもよい。高周波電源61は、パルス制御信号に応じて、第1の高周波電力のパルスを出力してもよい。第1の高周波電力のパルスは、電源システム70Aから出力される直流電圧のパルスと同じ位相で出力されてもよく、異なる位相で出力されてもよい。高周波電源62は、パルス制御信号に応じて、第2の高周波電力のパルスを出力してもよい。第2の高周波電力のパルスは、電源システム70Aから出力される直流電圧のパルスと同じ位相で出力されてもよく、異なる位相で出力されてもよい。なお、高周波電源61は、第1の高周波電力の連続波を出力してもよい。また、高周波電源62は、第2の高周波電力の連続波を出力してもよい。
【0104】
以下、
図8を参照する。
図8は、別の例示的実施形態に係る電源システムを示す図である。
図8に示す電源システム70Bは、プラズマ処理装置1の電源システム70として採用され得る。電源システム70Bは、上述した第1例~第5例のバイアス電圧を出力し得る。以下、電源システム70Bの電源システム70Aに対する相違点について説明する。
【0105】
電源システム70Bのパルスユニット72は、スイッチングトランジスタ72eを更に含んでいる。スイッチングトランジスタ72eは、ノード722とノード701との間で接続されている。ノード701は、下部電極18に接続されている。
【0106】
スイッチングトランジスタ72eは、パルスコントローラPCからその制御端子に与えられる制御信号(パルス制御信号)に応じて、開状態と閉状態との間で切り替わる。スイッチングトランジスタ72eが開状態であるときには、パルスユニット72は、ノード701及び下部電極18から電気的に分離される。スイッチングトランジスタ72eが閉状態であるときには、パルスユニット72は、ノード701及び下部電極18に接続され、負極性の電圧のパルスが、パルスユニット72から下部電極18に出力される。パルスユニット72から下部電極18に出力される負極性の電圧のパルスは、第1のパルスPL1及び第2のパルスPL2のうち一方として用いられる。パルスユニット72が第1のパルスPL1を出力する場合には、パルスユニット72は第3のパルスPL3を更に出力してもよい。
【0107】
電源システム70Bは、直流電源75及びパルスユニット76を更に含んでいる。直流電源75は、負極性の直流電圧を発生する電源である。直流電源75の正極は、グランドに接続されている。直流電源75は、可変直流電源であってもよい。直流電源75が発生する負極性の直流電圧のレベルは、直流電源71が発生する負極性の直流電圧のレベルと異なっている。
【0108】
パルスユニット76は、直流電源75からの負極性の直流電圧から電圧のパルスを生成するように構成されている。一実施形態において、パルスユニット76は、一つ以上のスイッチングトランジスタ76a、一つ以上のスイッチングトランジスタ76b、ダイオード76c、ダイオード76d、及びスイッチングトランジスタ76eを含んでいてもよい。
【0109】
一つ以上のスイッチングトランジスタ76aは、直流電源75の正極とノード761との間で接続されている。パルスユニット76が、複数のスイッチングトランジスタ76aを含んでいる場合には、これらスイッチングトランジスタ76aは、直流電源75の正極とノード761との間で直列接続される。
【0110】
一つ以上のスイッチングトランジスタ76bは、直流電源75の負極とノード761との間で接続されている。パルスユニット76が、複数のスイッチングトランジスタ76bを含んでいる場合には、これらスイッチングトランジスタ76bは、直流電源75の負極とノード761との間で直列接続される。
【0111】
ダイオード76cは、一つ以上のスイッチングトランジスタ76aと並列に接続されている。ダイオード76cは、直流電源75の正極とノード762との間で接続されている。ダイオード76cのカソードは、直流電源75の正極に接続されており、ダイオード76cのアノードは、ノード762に接続されている。ノード762は、ノード761に接続されている。ノード762は、スイッチングトランジスタ76eを介してノード701に接続されている。即ち、スイッチングトランジスタ76eは、ノード762とノード701との間で接続されている。
【0112】
ダイオード76dは、一つ以上のスイッチングトランジスタ76bと並列に接続されている。ダイオード76dは、直流電源75の負極とノード762との間で接続されている。ダイオード76dのアノードは、直流電源75の負極に接続されており、ダイオード76dのカソードは、ノード762に接続されている。
【0113】
電源システム70Bでは、パルスコントローラPCは、パルスユニット76に制御信号を与えることにより、パルスユニット76からの電圧のパルスの出力期間を設定するように構成されている。一実施形態において、パルスコントローラPCは、制御信号として、一つ以上のスイッチングトランジスタ76aの制御端子及び一つ以上のスイッチングトランジスタ76bの制御端子にパルス制御信号を与える。
【0114】
また、電源システム70Bでは、パルスコントローラPCは、スイッチングトランジスタ76eの制御端子にパルス制御信号を与える。スイッチングトランジスタ76eは、パルスコントローラPCからその制御端子に与えられるパルス制御信号に応じて、開状態と閉状態との間で切り替わる。
【0115】
スイッチングトランジスタ76eが開状態であるときには、パルスユニット76は、ノード701及び下部電極18から電気的に分離される。スイッチングトランジスタ76eが閉状態であるときには、パルスユニット76は、ノード701及び下部電極18に接続される。
【0116】
パルスコントローラPCからのパルス制御信号により、一つ以上のスイッチングトランジスタ76aが閉状態になり、一つ以上のスイッチングトランジスタ76bが開状態になると、ノード762はグランドに接続される。その結果、ノード762における電圧は、0V(即ち、基準レベル)になる。
【0117】
パルスコントローラPCからのパルス制御信号により、一つ以上のスイッチングトランジスタ76aが開状態になり、一つ以上のスイッチングトランジスタ76bが閉状態になると、ノード762は直流電源75の負極に接続される。
【0118】
パルスユニット76がノード701に接続され、且つ、ノード762が直流電源75の負極に接続されると、負極性の電圧(例えば、負極性の直流電圧)のパルスが、パルスユニット76から出力される。パルスユニット76から下部電極18に出力される負極性の電圧のパルスは、第1のパルスPL1及び第2のパルスPL2のうち他方として用いられる。パルスユニット76が第1のパルスPL1を出力する場合には、パルスユニット76は第3のパルスPL3を更に出力してもよい。
【0119】
以下、
図9を参照する。
図9は、別の例示的実施形態に係る基板支持器の構成を示す図である。
図9に示す基板支持器16Aは、プラズマ処理装置1において、基板支持器16に代えて採用され得る。
【0120】
基板支持器16Aは、下部電極18A及び静電チャック20Aを有する。下部電極18Aは、アルミニウムといった導電性材料から形成されており、略円盤形状を有している。下部電極18Aには、高周波電源61が、整合器61mを介して接続され得る。なお、上述したように、高周波電源61は、整合器61mを介して上部電極30に接続されていてもよい。
【0121】
静電チャック20Aは、下部電極18A上に設けられている。静電チャック20Aは、誘電体部20d及び電極21aを有している。静電チャック20Aは、電極22a及び電極22bを更に有していてもよい。基板Wは、内部空間10sの中で処理されるときに、静電チャック20A上に載置され、静電チャック20Aによって保持される。また、基板支持器16A上には、エッジリングERが搭載される。エッジリングERは、その中心軸線が軸線AXに一致するように、基板支持器16A上に搭載される。チャンバ10内に収容された基板Wは、静電チャック20A上、且つ、エッジリングERによって囲まれた領域内に配置される。
【0122】
基板支持器16Aは、第1の領域21及び第2の領域22を有する。
図9において、第1の領域21と第2の領域22との間の境界は、破線で示されている。第1の領域21は、基板支持器16Aの中央の領域である。第1の領域21は、静電チャック20Aの中央領域及び下部電極18Aの中央領域を含む。第2の領域22は、第1の領域21に対して径方向外側で周方向に延在している。第2の領域22は、静電チャック20Aの周縁領域及び下部電極18Aの周縁領域を含む。第1の領域21の静電チャック及び第2の領域22の静電チャックは、単一の静電チャックによって提供されていてもよい。即ち、第1の領域21の静電チャック及び第2の領域22の静電チャックは、一体化されていてもよい。なお、別の実施形態では、第1の領域21の静電チャックと第2の領域22の静電チャックは、別個の静電チャックであってもよい。
【0123】
第1の領域21は、その上(即ち、その上面の上)に載置される基板Wを支持するように構成されている。第1の領域21は、円盤形状を有する領域である。第1の領域21の中心軸線は、軸線AXに略一致している。第1の領域21は、誘電体部20dを第2の領域22と共有している。誘電体部20dは、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムといった誘電体から形成されている。誘電体部20dは、略円盤形状を有している。一実施形態において、第2の領域22における誘電体部20dの厚みは、第1の領域21における誘電体部20dの厚みよりも小さい。第2の領域22における誘電体部20dの上面の鉛直方向における位置は、第1の領域21における誘電体部20dの上面の鉛直方向における位置よりも低くてもよい。
【0124】
第1の領域21は、電極21a(チャック電極)を有する。電極21aは、膜状の電極であり、第1の領域21内で誘電体部20dの中に設けられている。電極21aには、直流電源101pがスイッチ101sを介して接続されている。直流電源101pからの直流電圧が電極21aに印加されると、第1の領域21と基板Wとの間で静電引力が発生する。発生した静電引力により、基板Wは第1の領域21に引き付けられ、第1の領域21によって保持される。
【0125】
第1の領域21は、第1の電極21cを更に有している。第1の電極21cは、膜状の電極であり、第1の領域21内で誘電体部20dの中に設けられている。なお、電極21aは、鉛直方向において、第1の電極21cよりも第1の領域21の上面の近くで延在し得る。
【0126】
第1の電極21cには、電源システム81がフィルタ81fを介して接続されている。電源システム81は、電源システム70と同一の構成を有し、上述したバイアス電圧を第1の電極21cに印加するように構成されている。フィルタ81fは、フィルタ70fと同一の構成を有する。
【0127】
第2の領域22は、第1の領域21を囲むよう延在している。第2の領域22は、略環状の領域である。第2の領域22の中心軸線は、軸線AXに略一致している。第2の領域22は、その上(即ち、その上面の上)に載置されるエッジリングERを支持するように構成されている。第2の領域22は、誘電体部20dを第1の領域21と共有している。
【0128】
一実施形態において、第2の領域22は、エッジリングERを静電引力により保持してもよい。この実施形態において、第2の領域22は、一つ以上の電極(チャック電極)を有し得る。
図9に示す例では、第2の領域22は、一対の電極、即ち電極22a及び電極22bを有する。電極22a及び電極22bは、第2の領域22内で誘電体部20dの中に設けられている。電極22a及び電極22bは、双極電極を構成している。電極22a及び電極22bの各々は、膜状の電極である。電極22a及び電極22bは、鉛直方向において略同一の高さ位置で延在していてもよい。
【0129】
電極22aには、直流電源102pが、スイッチ102s及びフィルタ102fを介して接続されている。フィルタ102fは、高周波電力を遮断するか、減衰させるように構成されている。電極22bには、直流電源103pが、スイッチ103s及びフィルタ103fを介して接続されている。フィルタ103fは、高周波電力を遮断するか、低減させるように構成されている。
【0130】
直流電源102p及び直流電源103pはそれぞれ、エッジリングERを第2の領域22に引き付ける静電引力を発生させるために、電極22a及び電極22bに直流電圧を印加する。なお、電極22a及び電極22bの各々の設定電位は、正電位、負電位、及び0Vのうち何れであってもよい。例えば、電極22aの電位が正電位に設定され、電極22bの電位が負電位に設定されてもよい。また、電極22aと電極22bとの間の電位差は、二つの直流電源ではなく、単一の直流電源を用いて形成されてもよい。
【0131】
電極22aと電極22bに直流電圧が与えられると、第2の領域22とエッジリングERとの間で静電引力が発生する。エッジリングERは、発生した静電引力により第2の領域22に引き付けられ、第2の領域22によって保持される。
【0132】
第2の領域22は、第2の電極22cを更に有する。第2の電極22cは、膜状の電極である。第2の電極22cは、第2の領域22内で誘電体部20dの中に設けられている。第2の電極22cは、第1の電極21cから分離されている。なお、電極22a及び電極22bは、鉛直方向において、第2の電極22cよりも第2の領域22の上面の近くで延在し得る。なお、第2の電極22cは、第2の領域22の外側に配置されていてもよい。例えば、第2の電極22cは、エッジリングERの下方、且つ、絶縁部29の中に設けられていてもよい。
【0133】
第2の電極22cには、電源システム82がフィルタ82fを介して接続されている。電源システム82は、電源システム70と同一の構成を有し、上述したバイアス電圧を第2の電極22cに印加するように構成されている。フィルタ82fは、フィルタ70fと同一の構成を有する。電源システム82によって第2の電極22cに印加されるバイアス電圧は、電源システム81によって第1の電極21cに印加されるバイアス電圧と同期され得る。電源システム82によって第2の電極22cに印加されるバイアス電圧の位相は、電源システム81によって第1の電極21cに印加されるバイアス電圧の位相と一致していてもよい。電源システム82によって第2の電極22cに印加されるバイアス電圧は、電源システム81によって第1の電極21cに印加されるバイアス電圧に対して位相差を有していてもよい。
【0134】
第2の領域22は、ガスライン22gを更に有していてもよい。ガスライン22gは、第2の領域22とエッジリングERとの間の間隙に伝熱ガス、例えばHeガスを供給するために設けられたガスラインである。ガスライン22gは、伝熱ガスのソースであるガス供給機構104に接続されている。
【0135】
なお、電源システム81は、電極21aに接続されていてもよい。この場合には、基板支持器16Aは、第1の電極21cを有していなくてもよい。また、電源システム82は、電極22a及び電極22bのうち少なくとも一方に接続されていてもよい。この場合には、基板支持器16Aは、第2の電極22cを有していなくてもよい。また、第2の領域22は、電極22a及び電極22bを有していなくてもよい。また、電源システム81は、第1の電極21c及び第2の電極22cにバイアス電圧を印加してもよい。この場合には、プラズマ処理装置1は、電源システム82を備えていなくてもよい。
【0136】
また、静電チャック20Aは、高周波電源61からの高周波電力が供給されるソース電極を有していてもよい。ソース電極は、第1の領域21及び第2の領域22のうち少なくとも一方の誘電体部20dの中に設けられる。ソース電極が第1の領域21の誘電体部20dの中に設けられる場合には、当該ソース電極は第1の電極21cの下方に設けられてもよく、第1の電極21cは電極21aの下方に設けられてもよい。或いは、ソース電極は第1の電極21cの上方且つ電極21aの下方に設けられてもよい。ソース電極が第2の領域22の誘電体部20dの中に設けられる場合には、当該ソース電極は第2の電極22cの下方に設けられてもよく、第2の電極22cは電極22a及び電極22bの下方に設けられてもよい。或いは、ソース電極は第2の電極22cの上方且つ電極22a及び電極22bの下方に設けられてもよい。
【0137】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0138】
例えば、電源システム70、81、及び82の各々は、
図7及び
図8に示した構成に代えて、電圧(例えば、直流電圧)のパルスを出力可能な一つ以上の電源(例えば、直流電源)を有していてもよい。一つ以上の電源の各々は、可変直流電源であってもよい。かかる一つ以上の電源により、上述した種々の例のバイアス電圧が生成され得る。
【0139】
また、パルスコントローラPCは、電源システム70、81、及び82の構成ではなく、高周波電源61又は高周波電源62に付随する構成であってもよい。
【0140】
また、
図3に示す第2例において、第2のパルスPL2は、第1の期間P1の終了時点以降にノード722をグランドに接続し、ノード722の電位が0Vになる前にノード722を直流電源71から電気的に分離することにより、生成されてもよい。ノード722をグランドに接続するために、一つ以上のスイッチングトランジスタ72aが閉状態に設定され、一つ以上のスイッチングトランジスタ72bが開状態に設定される。ノード722を直流電源71から電気的に分離するために、一つ以上のスイッチングトランジスタ72a及び一つ以上のスイッチングトランジスタ72bは、開状態に設定される。
【0141】
また、別の実施形態において、プラズマ処理装置は、容量結合型のプラズマ処理装置ではなく、他のタイプのプラズマ処理装置であってもよい。他のタイプのプラズマ処理装置は、誘導結合型のプラズマ処理装置、電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ処理装置、又はマイクロ波といった表面波を用いてプラズマを生成するプラズマ処理装置等であってもよい。種々の例示的実施形態に係るプラズマ処理方法においては、そのような他のタイプのプラズマ処理装置が用いられてもよい。
【0142】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0143】
1…プラズマ処理装置、10…チャンバ、16…基板支持器、18…下部電極、70…電源システム。