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特開2024-105462最適化された活性比を有するFGF21化合物/GLP-1Rアゴニストの組合せ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105462
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】最適化された活性比を有するFGF21化合物/GLP-1Rアゴニストの組合せ
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/18 20060101AFI20240730BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240730BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240730BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20240730BHJP
   C07K 14/475 20060101ALI20240730BHJP
   C07K 14/50 20060101ALI20240730BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
A61K38/18
A61K45/00 ZNA
A61K38/22
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/10
A61P1/16
A61P9/10
A61P3/06
A61K38/26
C07K14/475
C07K14/50
A61K45/00
A61K38/18 ZNA
C07K19/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024076336
(22)【出願日】2024-05-09
(62)【分割の表示】P 2020570929の分割
【原出願日】2019-06-21
(31)【優先権主張番号】18305784.3
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】カトリン・ケルナー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】肥満、太り過ぎ、メタボリック症候群、糖尿病、糖尿病性網膜症、高血糖症、異常脂血症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、および/またはアテローム性動脈硬化症の治療のための組み合わせを提供する。
【解決手段】FGF21(線維芽細胞増殖因子21)化合物およびGLP-1R(グルカゴン様ペプチド1受容体)アゴニストを含む組み合わせであって、GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、9~531分の1のGLP-1Rアゴニスト活性を有する、組み合わせである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FGF21(線維芽細胞増殖因子21)化合物およびGLP-1R(グルカゴン様ペプチド1受容体)アゴニストを含む組合せであって、
該FGF21化合物は、天然FGF21のFGF21活性と同じまたは実質的に同じであるFGF21活性を有し、以下:
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から98~101位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列EIRP(配列番号44)による置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170~174位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列TGLEAV(配列番号45)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170~174位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列TGLEAN(配列番号46)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170位のアミノ酸残基の、アミノ酸Nでの置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から174位のアミノ酸残基の、アミノ酸Nでの置換;
- 上記に定義される1つまたはそれ以上の変異と共に、配列番号2の天然FGF21のN末端から180位のアミノ酸残基の、アミノ酸Eでの置換;および
- 配列番号2の天然FGF21に比べて、FGF21変異体の免疫原性を減少させるための1~10個のアミノ酸残基の変異
からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含むFGF21変異体であり、
該GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、9~531分の1のGLP-1Rアゴニスト活性を有する、前記組合せ。
【請求項2】
GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、9~482分の1または9~319分の1または9~121分の1のGLP-1Rアゴニスト活性を有する、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、18~501分の1または18~469分の1または18~313分の1または18~123分の1のGLP-1Rアゴニスト活性を有する、請求項1に記載の組合せ。
【請求項4】
FGF21変異体は、天然FGF21のアミノ酸配列と少なくとも80%または少なくとも90%または少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の組合せ。
【請求項5】
FGF21変異体は、配列番号47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63および64からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそのようなアミノ酸配列からなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の組合せ。
【請求項6】
GLP-1Rアゴニストは、アミノ酸配列
H-G-E-G-T-F-T-S-D-X10-S-X12-Q-X14-X15-E-E-X18-V-X20-X21-F-I-E-W-L-X27-X28-X29-X30(配列番号37)
を含むまたはそのようなアミノ酸配列からなり、
式中
10はLまたはKであり;
12はKまたはIであり;
14はLまたはMであり;
15はEまたはDであり;
18はAまたはRであり;
20はRまたはQであり;
21はLまたはEであり;
27はL、E、KまたはVであり;
28はA、NまたはKであり;
29はTまたはGであり;
30はGまたはRであり;
場合により、該アミノ酸配列は、そのN末端に少なくとも1つの追加のアミノ酸残基を含み、
場合により、該アミノ酸配列は、そのC末端に最大12、11または10個のアミノ酸残基からなるペプチド延長を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組合せ。
【請求項7】
GLP-1Rアゴニストは、配列番号9、10、12、14、15、16、17、19および20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそのようなアミノ酸配列からなる、請求項1~6のいずれか1項に記載の組合せ。
【請求項8】
14はLであり、X28はAである、請求項6または7に記載の組合せ。
【請求項9】
薬学的に許容される担体および/または賦形剤と共に、FGF21(線維芽細胞増殖因子21)化合物およびGLP-1R(グルカゴン様ペプチド1受容体)アゴニストを含む医薬組成物であって、
該FGF21化合物は、天然FGF21のFGF21活性と同じまたは実質的に同じであるFGF21活性を有し、以下:
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から98~101位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列EIRP(配列番号44)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170~174位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列TGLEAV(配列番号45)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170~174位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列TGLEAN(配列番号46)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170位のアミノ酸残基の、アミノ酸Nでの置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から174位のアミノ酸残基の、アミノ酸Nでの置換;
- 上記に定義される1つまたはそれ以上の変異と共に、配列番号2の天然FGF21のN末端から180位のアミノ酸残基の、アミノ酸Eでの置換;および
- 配列番号2の天然FGF21に比べて、FGF21変異体の免疫原性を減少させるための1~10個のアミノ酸残基の変異
からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含むFGF21変異体であり、
該GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、9~531分の1のGLP-1Rアゴニスト活性を有する、前記医薬組成物。
【請求項10】
FGF21(線維芽細胞増殖因子21)化合物およびGLP-1R(グルカゴン様ペプチド1受容体)アゴニストを含む融合分子であって、
該FGF21化合物は、天然FGF21のFGF21活性と同じまたは実質的に同じであるFGF21活性を有し、以下:
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から98~101位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列EIRP(配列番号44)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170~174位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列TGLEAV(配列番号45)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170~174位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列TGLEAN(配列番号46)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170位のアミノ酸残基の、アミノ酸Nでの置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から174位のアミノ酸残基の、アミノ酸Nでの置換;
- 上記に定義される1つまたはそれ以上の変異と共に、配列番号2の天然FGF21のN末端から180位のアミノ酸残基の、アミノ酸Eでの置換;および
- 配列番号2の天然FGF21に比べて、FGF21変異体の免疫原性を減少させるための1~10個のアミノ酸残基の変異
からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含むFGF21変異体であり、
該GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、9~531分の1のGLP-1Rアゴニスト活性を有する、前記融合分子。
【請求項11】
融合分子は、異なる免疫グロブリンの部分的Fc領域/ドメインの組合せを含むハイブリッドFcドメインをさらに含む、請求項10に記載の融合分子。
【請求項12】
GLP-1Rアゴニストおよび/またはFGF21化合物は、請求項2~8のいずれか1項に定義される、請求項9に記載の医薬組成物または請求項10もしくは11に記載の融合分子。
【請求項13】
請求項10~12のいずれか1項に記載の融合分子をコードする核酸分子。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸分子を含有する、宿主細胞。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか1項に記載の組合せ、請求項9もしくは12に記載の医薬組成物、請求項10~12のいずれか1項に記載の融合分子、請求項13に記載の核酸分子または請求項14に記載の宿主細胞を含む、キット。
【請求項16】
医薬としての使用のための、請求項1~8のいずれか1項に記載の組合せ、請求項9もしくは12に記載の医薬組成物、請求項10~12のいずれか1項に記載の融合分子、請求項13に記載の核酸分子または請求項14に記載の宿主細胞。
【請求項17】
肥満、太り過ぎ、メタボリック症候群、糖尿病、糖尿病性網膜症、高血糖症、異常脂血症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、およびアテローム性動脈硬化症からなる群から選択される疾患または障害の治療での使用のための、請求項1~8のいずれか1項に記載の組合せ、請求項9もしくは12に記載の医薬組成物、請求項10~12のいずれか1項に記載の融合分子、請求項13に記載の核酸分子または請求項14に記載の宿主細胞。
【請求項18】
肥満、太り過ぎ、メタボリック症候群、糖尿病、糖尿病性網膜症、高血糖症、異常脂血症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、およびアテローム性動脈硬化症からなる群から選択される疾患または障害の治療での使用のための医薬の製造における、請求項1~8のいずれか1項に記載の組合せ、請求項9もしくは12に記載の医薬組成物、請求項10~12のいずれか1項に記載の融合分子、請求項13に記載の核酸分子または請求項14に記載の宿主細胞の使用。
【請求項19】
肥満、太り過ぎ、メタボリック症候群、糖尿病、糖尿病性網膜症、高血糖症、異常脂血症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、およびアテローム性動脈硬化症からなる群から選択される疾患または障害を治療する方法であって、請求項1~8のいずれか1項に記載の組合せ、請求項9もしくは12に記載の医薬組成物、請求項10~12のいずれか1項に記載の融合分子、請求項13に記載の核酸分子または請求項14に記載の宿主細胞を、それを必要とする対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項20】
糖尿病は1型糖尿病または2型糖尿病である、請求項17に記載の使用のための、組合せ、医薬組成物、融合分子、核酸分子もしくは宿主細胞、請求項18に記載の使用または請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適化されたGLP-1Rアゴニスト/FGF21化合物活性比を有するFGF21(線維芽細胞増殖因子21)化合物およびGLP-1R(グルカゴン様ペプチド1受容体)アゴニストを含む組合せ、医薬組成物および融合分子に関する。本発明はさらに、特に、肥満、太り過ぎ、メタボリック症候群、糖尿病、糖尿病性網膜症、高血糖症、異常脂血症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、および/またはアテローム性動脈硬化症の治療のための医薬としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
線維芽細胞増殖因子21(FGF21)化合物、例えば、組換え産生されたFGF21ポリペプチドの投与によって、体重、血中グルコースおよび血漿脂質の大幅な減少ならびに例えば、非特許文献1および非特許文献2に説明されているように、インスリン感度の改善がもたらされる。グルカゴン様ペプチド1受容体(GLP-1R)アゴニストは、例えば、非特許文献3および非特許文献4に示されるように、ヒトにおける効果的なグルコースおよび体重減少を提供する。FGF21投与の利益効果をGLP-1受容体アゴニストのグルコース減少効果と組合せることによって、驚くべきことに、肥満、太り過ぎ、メタボリック症候群、糖尿病、糖尿病性網膜症、高血糖症、異常脂血症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、および/またはアテローム性動脈硬化症のような疾患/障害のより包括的な治療を提供する相乗効果(例えば、特許文献1および特許文献2を参照のこと)がもたらされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2011/089203A1
【特許文献2】WO2014/037373A1
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Gaichら(2013)Cell Metab18(3):333-340
【非特許文献2】Dongら(2015)Br J Clin Pharmacol80(5):1051-1063
【非特許文献3】Astrupら(2012)Int J Obes(Lond)36(6):843-854
【非特許文献4】Nauckら(2013)Diabetes Obes Metab15(3):204-212
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、融合タンパク質の形態のFGF21化合物とGLP-1Rアゴニストの組合せは、例えば、2型糖尿病を有する肥満の異常脂血症の患者に対して、太り過ぎにおける血糖コントロールを改善するために使用することができる。
【0006】
注目すべきことに、FGF21およびGLP-1(一次GLP-1Rアゴニストとして)は、異なる血漿中濃度で薬理学的作用を発揮する。より詳細には、FGF21効果は、GLP-1効果に比べて、より高い血漿レベルで作用し始める。さらに、より高いレベルで、GLP-1は、例えば、吐き気および嘔吐といった有害作用を有することが知られて
いる。まとめると、このことは、例えば、融合タンパク質の形態で、FGF21化合物およびGLP-1Rアゴニストの組合せを投与する場合、GLP-1媒介性有害作用の潜在的なリスクを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明の目的は、潜在的な有害作用(例えば、吐き気および嘔吐)を回避しながら、利益効果を達成するために、最適なGLP-1Rアゴニスト/FGF21化合物活性比を決定することである。本発明のさらなる目的は、最適化されたGLP-1Rアゴニスト/FGF21化合物活性比を有する対応する組合せ、医薬組成物および融合分子を提供することである。
【0008】
一態様において、本発明は、FGF21(線維芽細胞増殖因子21)化合物およびGLP-1R(グルカゴン様ペプチド1受容体)アゴニストを含む組合せであって、FGF21化合物は、天然FGF21のFGF21活性と同じまたは実質的に同じであるFGF21活性を有し、以下:
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から98~101位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列EIRP(配列番号44)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170~174位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列TGLEAV(配列番号45)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170~174位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列TGLEAN(配列番号46)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170位のアミノ酸残基の、アミノ酸Nでの置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から174位のアミノ酸残基の、アミノ酸Nでの置換;
- 前述に定義される1つまたはそれ以上の変異と共に、配列番号2の天然FGF21のN末端から180位のアミノ酸残基の、アミノ酸Eでの置換;および
- 配列番号2の天然FGF21に比べて、FGF21変異体の免疫原性を減少させるための1~10個のアミノ酸残基の変異
からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含むFGF21変異体であり、
GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、9~531分の1(または9.449~531.0分の1)のGLP-1Rアゴニスト活性を有する、組合せに関する。
【0009】
一実施形態において、FGF21活性は、FGF21受容体の活性を指す。一実施形態において、この用語は、インビトロにおける活性を指す。一実施形態において、FGF21受容体の活性は、インビトロにおけるFGF21化合物と接触したときのFGF21受容体自己リン酸化を測定することによって決定される。一実施形態において、FGF21活性は、例えば、本質的に実施例3において説明されるように、In-Cell Western(ICW)アッセイを使用することによって決定される。
【0010】
一実施形態において、GLP-1R活性は、GLP-1受容体の活性を指す。一実施形態において、この用語は、インビトロにおけるアゴニスト活性を指す。一実施形態において、GLP-1受容体の活性は、インビトロにおけるアゴニストと接触したときのGLP-1受容体を安定的に発現する細胞のcAMP反応を測定することによって決定される。一実施形態において、GLP-1受容体の活性は、本質的に実施例4において説明されるように決定される。
【0011】
一実施形態において、GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、9~482分の1(または9.449~482.39
6分の1)または9~319分の1(または9.449~319.311分の1)または9~121分の1(または9.449~121.189分の1)のGLP-1Rアゴニスト活性を有する。
【0012】
一実施形態において、GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、9~319分の1のGLP-1Rアゴニスト活性を有する。
【0013】
一実施形態において、GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、少なくとも9.4分の1または少なくとも9.45分の1または少なくとも9.5分の1のGLP-1Rアゴニスト活性を有する。
【0014】
一実施形態において、GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、少なくとも10分の1のGLP-1Rアゴニスト活性を有する。
【0015】
一実施形態において、GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、最大482.4分の1または最大482.35分の1のGLP-1Rアゴニスト活性を有する。
【0016】
一実施形態において、GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、最大482分の1のGLP-1Rアゴニスト活性を有する。
【0017】
一実施形態において、GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、10~482分の1のGLP-1Rアゴニスト活性を有する。
【0018】
一実施形態において、GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、10~319分の1のGLP-1Rアゴニスト活性を有する。
【0019】
一実施形態において、GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、90~100分の1のGLP-1Rアゴニスト活性を有する。
【0020】
一実施形態において、GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、少なくとも18分の1(または少なくとも18.268分の1)のGLP-1Rアゴニスト活性を有する。
【0021】
一実施形態において、GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、18~501分の1(または18.268~500.686分の1)または18~469分の1(または18.268~468.679分の1)または18~313分の1(または18.268~313.214分の1)または18~123分の1(または18.268~123.466分の1)のGLP-1Rアゴニスト活性を有する。
【0022】
一実施形態において、GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、18~313分の1のGLP-1Rアゴニスト活性を有する。
【0023】
前述の実施形態の1つにおいて、GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、少なくとも18.2分の1または少なくとも18.3分の1のGLP-1Rアゴニスト活性を有する。
【0024】
一実施形態において、FGF21変異体は、天然FGF21のアミノ酸配列と少なくとも80%または少なくとも90%または少なくとも95%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0025】
一実施形態において、FGF21変異体は、配列番号47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63および64からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそのようなアミノ酸配列からなる。
【0026】
一実施形態において、GLP-1Rアゴニストは、アミノ酸配列
H-G-E-G-T-F-T-S-D-X10-S-X12-Q-X14-X15-E-E-X18-V-X20-X21-F-I-E-W-L-X27-X28-X29-X30(配列番号37)
を含むまたはそのようなアミノ酸配列からなり、
式中
10はLまたはKであり;
12はKまたはIであり;
14はLまたはMであり;
15はEまたはDであり;
18はAまたはRであり;
20はRまたはQであり;
21はLまたはEであり;
27はL、E、KまたはVであり;
28はA、NまたはKであり;
29はTまたはGであり;
30はGまたはRであり;
場合により、アミノ酸配列は、そのN末端に少なくとも1つの追加のアミノ酸残基を含み、場合により、アミノ酸配列は、そのC末端に最大12、11または10個のアミノ酸残基からなるペプチド延長を含む。
【0027】
一実施形態において、GLP-1Rアゴニストは、配列番号9、10、12、14、15、16、17、19および20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそのようなアミノ酸配列からなる。
【0028】
一実施形態において、X14はLであり、X28はAである。
【0029】
一実施形態において、GLP-1Rアゴニストは、配列番号9、10、12、14、16、17、19および20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそのようなアミノ酸配列からなる。
【0030】
別の態様において、本発明は、薬学的に許容される担体および/または賦形剤と共に、FGF21(線維芽細胞増殖因子21)化合物およびGLP-1R(グルカゴン様ペプチド1受容体)アゴニストを含む医薬組成物であって、FGF21化合物は、天然FGF21のFGF21活性と同じまたは実質的に同じであるFGF21活性を有し、以下:
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から98~101位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列EIRP(配列番号44)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170~174位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列TGLEAV(配列番号45)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170~174位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列TGLEAN(配列番号46)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170位のアミノ酸残基の、アミノ酸Nでの置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から174位のアミノ酸残基の、アミノ酸Nでの置換;
- 前述に定義される1つまたはそれ以上の変異と共に、配列番号2の天然FGF21のN末端から180位のアミノ酸残基の、アミノ酸Eでの置換;および
- 配列番号2の天然FGF21に比べて、FGF21変異体の免疫原性を減少させるための1~10個のアミノ酸残基の変異
からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含むFGF21変異体であり、
GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、9~531分の1(または9.449~531.0分の1)のGLP-1Rアゴニスト活性を有する、医薬組成物に関する。
【0031】
一実施形態において、GLP-1Rアゴニストおよび/またはFGF21化合物は、前述のように定義される。
【0032】
さらなる別の態様において、本発明は、FGF21(線維芽細胞増殖因子21)化合物およびGLP-1R(グルカゴン様ペプチド1受容体)アゴニストを含む融合分子であって、FGF21化合物は、天然FGF21のFGF21活性と同じまたは実質的に同じであるFGF21活性を有し、以下:
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から98~101位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列EIRP(配列番号44)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170~174位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列TGLEAV(配列番号45)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170~174位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列TGLEAN(配列番号46)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170位のアミノ酸残基の、アミノ酸Nでの置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から174位のアミノ酸残基の、アミノ酸Nでの置換;
- 前述に定義される1つまたはそれ以上の変異と共に、配列番号2の天然FGF21のN末端から180位のアミノ酸残基の、アミノ酸Eでの置換;および
- 配列番号2の天然FGF21に比べて、FGF21変異体の免疫原性を減少させるための1~10個のアミノ酸残基の変異
からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含むFGF21変異体であり、
GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、9~531分の1(または9.449~531.0分の1)のGLP-1Rアゴニスト活性を有する、融合分子に関する。
【0033】
一実施形態において、融合分子は、異なる免疫グロブリンの部分的Fc領域/ドメインの組合せを含むハイブリッドFcドメインをさらに含む。
【0034】
一実施形態において、GLP-1Rアゴニストおよび/またはFGF21化合物は、前述のように定義される。
【0035】
別の態様において、本発明は、上記において定義される融合分子をコードする核酸分子
に関する。
【0036】
別の態様において、本発明は、上記において定義される核酸分子を含有する宿主細胞に関する。
【0037】
別の態様において、本発明は、上記において定義される組合せ、上記において定義される医薬組成物、上記において定義される融合分子、上記において定義される核酸分子または上記において定義される宿主細胞を含むキットに関する。
【0038】
別の態様において、本発明は、医薬としての使用のための、上記において定義される組合せ、上記において定義される医薬組成物、上記において定義される融合分子、上記において定義される核酸分子または上記において定義される宿主細胞に関する。
【0039】
別の態様において、本発明は、肥満、太り過ぎ、メタボリック症候群、糖尿病、糖尿病性網膜症、高血糖症、異常脂血症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、およびアテローム性動脈硬化症からなる群から選択される疾患または障害の治療での使用のための、上記において定義される組合せ、上記において定義される医薬組成物、上記において定義される融合分子、上記において定義される核酸分子または上記において定義される宿主細胞に関する。
【0040】
一実施形態において、疾患または障害は、糖尿病である。一実施形態において、糖尿病は、1型糖尿病または2型糖尿病である。
【0041】
別の態様において、本発明は、肥満、太り過ぎ、メタボリック症候群、糖尿病、糖尿病性網膜症、高血糖症、異常脂血症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、およびアテローム性動脈硬化症からなる群から選択される疾患または障害の治療での使用のための、医薬品の製造における上記において定義される組合せ、上記において定義される医薬組成物、上記において定義される融合分子、上記において定義される核酸分子または上記において定義される宿主細胞の使用に関する。
【0042】
一実施形態において、疾患または障害は、糖尿病である。一実施形態において、糖尿病は、1型糖尿病または2型糖尿病である。
【0043】
別の態様において、本発明は、肥満、太り過ぎ、メタボリック症候群、糖尿病、糖尿病性網膜症、高血糖症、異常脂血症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、およびアテローム性動脈硬化症からなる群から選択される疾患または障害を治療する方法であって、方法は、上記において定義される組合せ、上記において定義される医薬組成物、上記において定義される融合分子、上記において定義される核酸分子または上記において定義される宿主細胞を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0044】
一実施形態において、疾患または障害は、糖尿病である。一実施形態において、糖尿病は、1型糖尿病または2型糖尿病である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】GLP-1減衰率(12か月のシミュレーション)に依存した有害作用(胃排出(GE)率)および薬力学(すなわち、HbA1c、トリグリセリド、脂肪酸、非HDL、脂肪量)のEC50を示すグラフである: ・ 9.449超のGLP-1減衰率(9に四捨五入することができる)について、GLP-1媒介性胃腸有害作用(胃排出;GE率)のEC50は、薬力学的作用(すなわち、HbA1c、脂肪量、非HDL、脂肪酸、トリグリセリド)のEC50よりも大きかった; ・ FGF21-(脂質)およびGLP-1媒介性作用(HbA1c)の展開によって正規化された薬力学(HbA1c)の最大と有害作用(GE率)との間の最大距離は、121.189であり、すなわち、121.189(121に四捨五入することができる)において、GLP-1媒介性作用(HbA1c)と平均FGF21媒介性作用(すなわち、脂肪量、非HDL、脂肪酸、トリグリセリド)との間の最小距離において、薬力学的作用(HbA1c)の最大と有害作用(GE率)との間で最大距離がある(図2を参照のこと); ・ 薬力学(HbA1c)の最大と有害作用(GE率)との間の最大距離は、319.311であった(319に四捨五入することができる); ・ 平均薬力学(すなわち、HbA1c、脂肪量、非HDL、脂肪酸、トリグリセリド)と有害作用(GE率)との間の最大距離は、482.396であった(図2を参照のこと;482に四捨五入することができる); ・ 胃排出率の最大は531.0であった;(全て:縦線)。
図2】GLP-1減衰率(12か月のシミュレーション)に依存した胃排出(GE)率および平均薬力学的作用(すなわち、HbA1c、トリグリセリド、脂肪酸、非HDL、脂肪量)のEC50を示すグラフである: ・ 平均薬力学(すなわち、HbA1c、脂肪量、非HDL、脂肪酸、トリグリセリド)と有害作用(GE率)との間の最大距離は、482.396であった(右の縦線;482に四捨五入することができる)。 ・ FGF21-(脂質)およびGLP-1媒介性作用(HbA1c)の展開によって正規化された薬力学(HbA1c)の最大と有害作用(GE率)との間の最大距離は、121.189であった(左の縦線;121に四捨五入することができる)。曲線「(最大GE率)/範囲」は、HbA1cとGE率との間の最大距離と、HbA1cと平均FGF21媒介性作用(すなわち、脂肪量、非HDL、脂肪酸、トリグリセリド)との間の最小距離との間の比を表す。「(最大GE率)/範囲」曲線の最小において(すなわち、121.189において)、GLP-1媒介性作用(HbA1c)とFGF21媒介性作用(すなわち、脂肪量、非HDL、脂肪酸、トリグリセリド)との間の最小距離において、薬力学的作用(HbA1c)の最大と有害作用(GE率)との間で最大距離がある。
図3】GLP-1減衰率(3か月のシミュレーション)に依存した有害作用(胃排出(GE)率)および薬力学(HbA1c、トリグリセリド、脂肪酸、非HDL、脂肪量)のEC50を示すグラフである: ・ 18.268超のGLP-1減衰率(18に四捨五入することができる)について、GLP-1媒介性胃腸有害作用(胃排出;GE率)のEC50は、薬力学的作用(すなわち、HbA1c、脂肪量、非HDL、脂肪酸、トリグリセリド)のEC50よりも大きかった; ・ FGF21-(脂質)およびGLP-1媒介性作用(HbA1c)の展開によって正規化された薬力学(HbA1c)の最大と有害作用(GE率)との間の最大距離は、123.466であり、すなわち、123.466(123に四捨五入することができる)において、GLP-1媒介性作用(HbA1c)と平均FGF21媒介性作用(すなわち、脂肪量、非HDL、脂肪酸、トリグリセリド)との間の最小距離において、薬力学的作用(HbA1c)の最大と有害作用(GE率)との間で最大距離がある(図4を参照のこと); ・ 薬力学(HbA1c)の最大と有害作用(GE率)との間の最大距離は、313.214であった(313に四捨五入することができる); ・ 平均薬力学(すなわち、HbA1c、脂肪量、非HDL、脂肪酸、トリグリセリド)と有害作用(GE率)との間の最大距離は、468.679であった(図4を参照のこと;469に四捨五入することができる); ・ 胃排出率の最大は500.686であった(501に四捨五入することができる);(全て:縦線)。
図4】GLP-1減衰率(3か月のシミュレーション)に依存した胃排出(GE)率および平均薬力学的作用(すなわち、HbA1c、トリグリセリド、脂肪酸、非HDL、脂肪量)のEC50を示すグラフである: ・ 平均薬力学(すなわち、HbA1c、脂肪量、非HDL、脂肪酸、トリグリセリド)と有害作用(GE率)との間の最大距離は、468.679であった(右の縦線;469に四捨五入することができる); ・ FGF21-(脂質)およびGLP-1媒介性作用(HbA1c)の展開によって正規化された薬力学(HbA1c)の最大と有害作用(GE率)との間の最大距離は、123.466であった(左の縦線;123に四捨五入することができる)。曲線「(最大GE率)/範囲」は、HbA1cとGE率との間の最大距離と、HbA1cと平均FGF21媒介性作用(すなわち、脂肪量、非HDL、脂肪酸、トリグリセリド)との間の最小距離との間の比を表す。「(最大GE率)/範囲」曲線の最小において(すなわち、123.466において)、GLP-1媒介性作用(HbA1c)とFGF21媒介性作用(すなわち、脂肪量、非HDL、脂肪酸、トリグリセリド)との間の最小距離において、薬力学的作用(HbA1c)の最大と有害作用(GE率)との間で最大距離がある。
図5】In-Cell Westernによって測定した、成熟ヒトFGF21(配列番号2)による刺激後の、ヒトFGFR1cおよびベータ-klothoを過剰発現するCHO細胞における(A)FGFR自己リン酸化または(B)ERK1/2-リン酸化の用量-応答曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明を以下において詳細に説明するが、本明細書において説明される特定の方法、プロトコール、および試薬は変わることがあるため、本発明はそれらに限定されるものではないことは理解されるべきである。本明細書において使用する専門用語は、特定の実施形態を説明する目的のみのためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図するものではないということも理解されるべきである。特に明記されない限り、本明細書において使用される全ての技術的および科学的用語は、当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0047】
以下において、本発明のある特定の要素について説明する。これらの要素は、特定の実施形態により列挙されるが、それらは、追加の実施形態を創出するためにあらゆる様式およびあらゆる数において組み合わせることができるということは理解されるべきである。様々に説明される実施例および好ましい実施形態は、明確に説明された実施形態のみに本発明を限定すると解釈すべきではない。この説明は、明確に説明される実施形態をいくつもの開示されたおよび/または好ましい要素と組み合わせる実施形態も、支持および包含すると理解されるべきである。さらに、本出願における全ての説明された要素のあらゆる順序および組合せは、文脈において明記されない限り、本出願の説明によって開示されるものと解釈すべきである。
【0048】
本明細書において使用される用語は、「A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)」,H.G.W.Leuenberger,B.Nagel,and H.Kolbl編,Helvetica Chimica Acta,CH-4010 Basel,Switzerland,(1995)に記載される通りに定義される。
【0049】
本発明の実施は、そうでないと明記されない限り、当技術分野における文献において説明される、化学、生化学、細胞生理学、免疫学、遺伝子組換えDNA技術における従来の方法を用いるであろう(Sambrook,J.ら(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY)。
【0050】
以下の本明細書および特許請求の範囲全体を通して、文脈上必要とされない限り、言葉「含む(comprise)」およびその変形、例えば、「含む(comprises)」および「含むこと(comprising)」などは、言明されたメンバー、整数、または工程の包含だけでなく、任意の他のメンバー、整数、もしくは工程、または、メンバー、整数、または工程の群の包含を含意するが、いくつかの実施形態では、そのような他
のメンバー、整数、または工程、または、メンバー、整数、もしくは工程の群が除外される場合もある、すなわち、主題が、言明されたメンバー、整数、もしくは工程、またはメンバー、整数、または工程の群の包含からなることも理解されるべきである。本発明を説明する文脈において使用される用語「1つの(a)」および「1つの(an)」および「その(the)」ならびに同様の指示語は(特に特許請求の範囲の文脈において)、本明細書において別段の指示がないか、または文脈において明確に否定されない限り、単数および複数の両方を網羅すると解釈されるできである。本明細書における値の範囲の列挙は、単にその範囲内に属する別々の各値を個別に言及するための簡単な方法として機能する。本明細書において別段の指示がない限り、個々の各値は、それらが本明細書において個別に列挙されるかのように、本明細書に組み入れられる。本明細書において説明される全ての方法は、そうでないことが本明細書において示されていない限り、または文脈によって明確に否定されない限り、任意の適切な順序において実行することができる。本明細書において提供されるありとあらゆる実施例または例示言語(例えば、「例えば、~など(such as)」)の使用は、単に本発明をよりよく解説することを意図するものであり、そうでないことが主張されない限り、発明の範囲に制限を課すものではない。明細書におけるいかなる言語も、非請求要素を発明の実施に不可欠なものと指摘していると解釈すべきではない。
【0051】
いくつかの文献が、本明細書の本文全体を通して引用されている。本明細書において引用された各文献(全ての特許、特許出願、科学的刊行物、製造業者の仕様書、取扱説明書などを含む)は、上記および下記に関わらず、それらを参照することによりその全体を本明細書に組み入れる。本明細書のいかなる記載も、先行発明によるそのような開示に先行する権利がないことの承認として、解釈されるべきではない。
【0052】
糖尿病の病態生理学との関連においてGLP-1受容体シグナル伝達およびFGF21産生および作用の重要な要素を統合したシステム薬理学アプローチを使用することによって、発明者は、潜在的な有害作用(例えば、吐き気および嘔吐)を回避しながら、両方の活性剤(例えば、体重、脂質、血糖コントロールにおいて)の利益効果を達成するために、最適なGLP-1Rアゴニスト/FGF21化合物活性比を決定することに成功した。
【0053】
用語「組合せ」は、本明細書において使用される場合、FGF21化合物およびGLP-1Rアゴニストを患者に別々に投与することによって、またはFGF21化合物およびGLP-1Rアゴニストが存在する組合せ産物の形態、例えば、1つの医薬組成物または融合分子/タンパク質の形態でのいずれかによって、FGF21化合物およびGLP-1Rアゴニストを含む組合せを適用することができる手段を含むことを意味する。別々に投与される場合、投与は、同時にまたは逐次に、任意の順序において行うことができる。FGF21化合物およびGLP-1Rアゴニストの量ならびに関連する投与のタイミングは、所望の組合せ療法効果を達成するように選択される。組合せ物の投与は、同時に、(1)全ての医薬品有効成分を含む単一の医薬組成物において;または(2)医薬品有効成分の少なくとも1つをそれぞれが含む別々の医薬組成物においてであってもよい。あるいは、組合せ物は、ある治療薬剤が最初に投与され、二番目に他の薬剤が投与されるか、またはその逆において、連続して別々に投与してもよい。そのような連続投与は、時間的に近くであっても、または時間的に離れていてもよい。一実施形態において、組合せ物は、キット、例えば、本明細書において定義されるキットの形態で提供される。
【0054】
用語「線維芽細胞増殖因子21」または「FGF21」は、本明細書において使用される場合、当技術分野において公知の任意のFGF21タンパク質を指し、特に、ヒトFGF21を指す。一実施形態において、ヒトFGF21は配列番号1のアミノ酸配列を有する。
【0055】
用語「FGF21化合物」は、本明細書において使用される場合、概して、FGF21活性を有する化合物を指す。
【0056】
一実施形態において、FGF21化合物は、ペプチド化合物、すなわち、ペプチドまたはタンパク質である。
【0057】
用語「ペプチド」は、本明細書において使用される場合、ペプチド結合によって共有結合的に連結された、例えば、2以上、または3以上、または4以上、または6以上、または8以上、または9以上、または10以上、または13以上、または16以上、または21以上のアミノ酸を含む、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指す。ペプチドは、例えば、最大100個のアミノ酸からなる。用語「ポリペプチド」は、大きなペプチド、好ましくは、100を超えるアミノ酸残基を有するペプチドを指す。用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書において、互換的に使用される。
【0058】
一実施形態においてFGF21化合物は、天然FGF21またはFGF21変異体であって、天然FGF21のアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも91%、または少なくとも92%、または少なくとも93%、または少なくとも94%、または少なくとも95%、または少なくとも96%、または少なくとも97%、または少なくとも98%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0059】
用語「天然FGF21」は、本明細書において使用される場合、天然に存在するFGF21、例えば、配列番号1のアミノ酸配列を有するヒト野生型FGF21を指す(「全長ヒト野生型FGF21」とも呼ばれる)。用語「天然FGF21」は、本明細書において使用される場合、成熟FGF21、すなわち、本来のシグナル配列(シグナルペプチドとも呼ばれる)を欠く天然に存在するFGF21も含む。一実施形態において、天然FGF21は、配列番号1のアミノ酸1~28(M1~A28)を欠く成熟ヒト野生型FGF21であり、配列番号2によって表される。
【0060】
2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列間において同一であるアミノ酸の割合を示す。比較のための配列の最適化アラインメントは、手作業以外に、SmithおよびWaterman、1981、Ads App.Math.2、482の局所的相同性アルゴリズムによって、NeddlemanおよびWunsch、1970、J.Mol.Biol.48、443の局所的相同性アルゴリズムによって、PearsonおよびLipman、1988、Proc.Natl Acad.Sci.USA 85、2444の類似検索方法によって、またはこれらのアルゴリズムを使用するコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Drive,Madison,Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST
P、BLAST N、およびTFASTA)によって、生成され得る。
【0061】
FGF21変異体は、少なくとも1つのアミノ酸残基を天然FGF21(例えば、配列番号1または2)に対して欠失、付加および/または置換することに基づいてもよい。
【0062】
このような、欠失、付加および/または置換は、天然FGF21(例えば、配列番号1または2)に比べて、変異体の安定性、例えば、タンパク質分解安定性および/または熱安定性などの増加に貢献することができる。これは、例えば、置換されたアミノ酸においてかまたはその近くでのプロテアーゼ切断の防止によって、または1つまたはそれ以上の追加のジスルフィド架橋の形成によって達成される。
【0063】
用語「アミノ酸」または「アミノ酸残基」は、本明細書において使用される場合、天然
に存在するアミノ酸、非天然アミノ酸、アミノ酸類似体、および天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸模倣物、それらの構造がそのような立体異性形態を許容する場合にはそれらのDおよびL立体異性体の全てを指す。アミノ酸は、本明細書において、それらの名前もしくは一般的に知られるそれらの3文字記号のどちらかにおいて、またはIUPAC-IUB生化学命名法委員会(IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commission)によって推奨される1文字記号によって呼ばれる。
【0064】
アミノ酸に関連して使用される場合、用語「天然に存在する」は、慣習的な20のアミノ酸(すなわち、アラニン(A)、システイン(C)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、リジン(K)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アスパラギン(N)、プロリン(P)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、セリン(S)、トレオニン(T)、バリン(V)、トリプトファン(W)、およびチロシン(Y))、ならびにセレノシステイン、ピロリシン(PYL)、およびピロリン-カルボキシリシン(PCL)を意味する。
【0065】
用語「非天然アミノ酸」は、本明細書において使用される場合、自然にはコードされないかまたはどの有機体の遺伝子コードにも見出されないアミノ酸を意味することを指す。それらは、例えば、純粋に合成された化合物である場合がある。非天然アミノ酸の例としては、これらに限定されるわけではないが、ヒドロキシプロリン、ガンマ-カルボキシグルタメート、O-ホスホセリン、アゼチジンカルボン酸、2-アミノアジピン酸、3-アミノアジピン酸、ベータ-アラニン、アミノプロピオン酸、2-アミノ酪酸、4-アミノ酪酸、6-アミノカプロン酸、2-アミノヘプタン酸、2-アミノイソ酪酸、3-アミノイソ酪酸、2-アミノピメリン酸、第三級ブチルグリシン、2,4-ジアミノイソ酪酸、デスモシン、2,2’-ジアミノピメリン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、N-エチルグリシン、N-メチルグリシン、N-エチルアスパラギン、ホモプロリン、ヒドロキシリシン、アロ-ヒドロキシリシン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ-イソロイシン、N-メチルアラニン、N-メチルグリシン、N-メチルイソロイシン、N-メチルペンチルグリシン、N-メチルバリン、ナフトアラニン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、D-オルニチン、D-アルギニン、p-アミノフェニルアラニン、ペンチルグリシン、ピペコリン酸、およびチオプロリンが挙げられる。
【0066】
用語「アミノ酸類似体」は、本明細書において使用される場合、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的化学構造を有する化合物を指す。アミノ酸類似体は、可逆的もしくは非可逆的に化学的に遮断されるか、またはそれらのC末端カルボキシ基、それらのN末端アミノ基、および/またはそれらの側鎖の官能基が化学的に修飾された、天然および非天然アミノ酸を含む。そのような類似体としては、これらに限定されるわけではないが、メチオニンスルホキシド、メチオニンスルホン、S-(カルボキシメチル)-システイン、S-(カルボキシメチル)-システインスルホキシド、S-(カルボキシメチル)-システインスルホン、アスパラギン酸-(ベータメチルエステル)、N-エチルグリシン、アラニンカルボキサミド、ホモセリン、ノルロイシン、およびメチオニンメチルスルホニウムが挙げられる。
【0067】
用語「アミノ酸模倣物」は、本明細書において使用される場合、アミノ酸の一般的化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能する化学化合物を指す。
【0068】
いくつかの実施形態において、変異体は、そのN末端に、少なくとも1つの追加のアミ
ノ酸を含む。一実施形態において、少なくとも1つの追加のアミノ酸は、プロリンを除く天然に存在するアミノ酸、非天然アミノ酸、アミノ酸類似体、およびアミノ酸模倣物から選択される。一実施形態において、少なくとも1つの追加のアミノ酸は、G、A、N、およびCからなる群から選択される。特定の実施形態において、少なくとも1つの追加のアミノ酸は、Gである。
【0069】
本発明に使用するための適切なFGF21変異体は、WO2016/114633A1、WO2017/093465A1、WO2017/074117A1、WO2017/074123A1およびWO2018/088838A1に記載され、それらを参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0070】
一実施形態において、FGF21化合物は、配列番号3、4、5および6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなるFGF21変異体である。
【0071】
一実施形態において、FGF21化合物は、以下:
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から98~101位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列EIRP(配列番号44)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170~174位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列TGLEAV(配列番号45)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170~174位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列TGLEAN(配列番号46)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170位のアミノ酸残基の、アミノ酸Nでの置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から174位のアミノ酸残基の、アミノ酸Nでの置換;
- 前述に定義される1つまたはそれ以上の変異と共に、配列番号2の天然FGF21のN末端から180位のアミノ酸残基の、アミノ酸Eでの置換;および
- 配列番号2の天然FGF21に比べて、FGF21変異体の免疫原性を減少させるための1~10個のアミノ酸残基の変異
からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含むFGF21変異体である。
【0072】
所与のFGF21変異体の免疫原性は、当技術分野で公知の従来の方法によって予測することができる。例えば、タンパク質の潜在的な免疫原性は、例えば、iTope(商標)および/またはTCED(商標)方法を使用することによってスクリーニングすることができる。さらに、免疫原性を最小化するための変異は、当技術分野で公知の従来の方法によって設計することができる。例えば、潜在的な免疫原性を評価するために、免疫原性がEpiScreen(商標)分析を実施することによって観察される場合、免疫原性を誘導するアミノ酸配列は、T細胞エピトープマッピングによって同定することができ、最小になった免疫原性を有する突然変異体は、インシリコの予測によって設計することができる。
【0073】
一実施形態において、FGF21化合物は、配列番号47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63および64からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそれからなる。
【0074】
本発明の組合せ、医薬組成物および融合分子に含まれるFGF21化合物は、天然FGF21(例えば、配列番号2)のFGF21活性と同じまたは実質的に同じであるFGF21活性を示す。一実施形態において、FGF21活性は、本明細書において定義される融合分子に含まれない(その成分ではない)場合、および/またはさらに改変されない場合(以下を参照のこと)、FGF21化合物のFGF21活性を指す。
【0075】
用語「実質的に同じ」は、本明細書において使用される場合、天然FGF21(例えば、配列番号2)のFGF21活性の50~150%または60~140%または65~135%の範囲内にあるFGF21活性を指す。
【0076】
一実施形態において、用語「FGF21活性」(または「FGF21効力」)は、本明細書において使用される場合、FGF21受容体(FGFR、例えば、FGFR1c)の活性を指す。一実施形態において、FGF21受容体は、ヒトFGF21受容体である。一実施形態において、この用語は、インビトロにおける活性/効力を指す。別の実施形態において、この用語は、インビボにおける活性/効力を指す。一実施形態において、FGF21受容体の活性は、インビトロにおけるFGF21化合物と接触したときのFGF21受容体自己リン酸化を測定することによって決定される。一実施形態において、FGF21活性/効力は、In-Cell Western(ICW)アッセイを使用することによって決定される。一実施形態において、活性/効力は、EC50値を決定することによって定量される。
【0077】
用語「In-Cell Western(ICW)アッセイ」は、本明細書において使用される場合、免疫細胞化学的アッセイ、より詳しくは、通常はマイクロプレート(例えば、96ウェル形式または384ウェル形式)において実施される、定量的免疫蛍光アッセイを指す。それは、ウェスタンブロットの特異性を、ELISAの再現性および処理能力と組み合わせるものである(例えば、Aguilar H.N.ら(2010)PLoS ONE 5(4):e9965を参照されたい)。適切なICWアッセイシステムは市販されている(例えば、LI-COR Biosciences、米国)。一実施形態において、抗pFGFRおよび/または抗pERKは、ICWアッセイにおいて使用される。一実施形態において、pFGFR ICWアッセイが実施される。一実施形態において、ICWアッセイは、本質的に実施例3において説明されるように実施される。一実施形態において、ICWアッセイは、本質的に実施例3において説明されるように実施される。
【0078】
一実施形態において、天然FGF21のFGF21活性と同じまたは実質的に同じであるFGF21活性を有するFGF21化合物は、FGF21受容体活性のEC50値に関して定義することができる。例えば、天然FGF21(例えば、配列番号2)のFGF21活性の50~150%または60~140%または65~135%の範囲内にあるFGF21活性を有するFGF21化合物は、pFGFR ICWアッセイ、例えば、実施例3において本質的に説明されるように、それぞれ、2.40~7.20nmol/Lまたは2.88~6.72nmol/Lまたは3.12~6.48nmol/LのEC50を有するFGF21受容体を活性化するFGF21化合物として、本明細書において示すこともできる。一実施形態において、EC50値は、EC50±SDとして与えられる。一実施形態において、SDは、アッセイ依存性標準偏差である。一実施形態において、EC50は、pFGFR ICWアッセイ、例えば、実施例3において本質的に説明されるように、それぞれ、2.40±SD~7.20±SDnmol/Lまたは2.88±SD~6.72±SDnmol/Lまたは3.12±SD~6.48±SDnmol/Lである。一実施形態において、SDは1.8nmol/Lである。
【0079】
本発明により、例えば、以下にさらに説明されるように、FGF21化合物は、ポリマー(例えば、PEG)または、ヒト血清アルブミン(HSA)もしくは免疫グロブリンもしくはその変異体のFc領域/ドメインのようなペプチド/ポリペプチドのような、別の実体/分子にさらに改変、例えば、融合/コンジュゲートすることができる。一実施形態において、本明細書に示されるFGF21化合物のFGF21活性は、このようなさらなる改変のないFGF21化合物のFGF21活性であり、本明細書では「純粋FGF21
化合物」とも呼ばれる。
【0080】
用語「融合した」は、本明細書において使用される場合、特に、例えば、遺伝子組換えDNA技術などによる、遺伝子融合を指す。(ポリ)ペプチド半減期延長モジュールのアミノ酸配列は、変異体のアミノ酸配列内の任意の位置に導入することができ、例えば、コードされたタンパク質構造内においてループ形状を取ってもよく、または、N末端もしくはC末端に融合させることもできる。
【0081】
用語「にコンジュゲートさせる」は、本明細書において使用される場合、特に、結果として(ポリ)ペプチドと別の分子との間、例えば、変異体および半減期延長モジュールなどとの間において安定な共有結合を生じる、化学的および/または酵素的コンジュゲーションを指す。そのようなコンジュゲーションは、(ポリ)ペプチドのN末端もしくはC末端または特定の側鎖において、例えば、リジン、システイン、チロシン、または非天然アミノ酸残基において、生じてもよい。
【0082】
用語「GLP-1Rアゴニスト」(省略して「GLP-1RA」)は、本明細書において使用される場合、概して(一次GLP-1Rアゴニストとして)GLP-1のようなGLP-1受容体に結合するおよびGLP-1受容体を活性化する化合物を指す。
【0083】
一実施形態において、GLP-1Rアゴニストは、ペプチド化合物、すなわち、ペプチドまたはタンパク質である。別の実施形態において、GLP-1Rアゴニストは、小分子、すなわち、900Da未満の分子量を有する有機化合物である。
【0084】
本発明の組合せ、医薬組成物および融合分子に含まれるGLP-1Rアゴニストは、本明細書において定義される天然GLP-1(7-36)のものに比べて、減少したGLP-1Rアゴニスト活性を示す。「x分の1の」という表現における「x」という値は、本明細書において使用される場合、「減衰率」または「減衰係数」として本明細書に示すことができる。一実施形態において、本明細書において定義される天然GLP-1(7-36)のものに比べて減少したGLP-1Rアゴニスト活性は、GLP-1Rアゴニストが本明細書において定義される融合分子の成分である場合、示される。
【0085】
用語「天然GLP-1(7-36)」は、本明細書において使用される場合、場合により、そのC末端にアミド基を含む配列番号7のアミノ酸配列を有するペプチドを指す。
【0086】
一実施形態において、用語「GLP-1Rアゴニスト活性」(または「GLP-1Rアゴニスト効力」)は、本明細書において使用される場合、GLP-1受容体の活性を指す。一実施形態において、この用語は、インビトロにおけるアゴニスト活性/効力を指す。別の実施形態において、この用語は、インビボにおけるアゴニスト活性/効力を指す。一実施形態において、GLP-1受容体の活性は、インビトロにおけるアゴニストと接触したときのGLP-1受容体を安定的に発現する細胞のcAMP反応を測定することによって決定される。一実施形態において、細胞は、HEK-293細胞株に由来する。一実施形態において、GLP-1受容体は、ヒトGLP-1受容体である。一実施形態において、GLP-1受容体の活性は、本質的に実施例4において説明されるように決定される。一実施形態において、活性/効力は、EC50値を決定することによって定量される。
【0087】
一実施形態において、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて減少したGLP-1Rアゴニスト活性を有するGLP-1Rアゴニストは、例えば、表4に示されるように、GLP-1受容体活性のEC50値に関して定義することができる。例えば、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて9~531分の1のGLP-1Rアゴニスト活性を有するGLP-1Rアゴニストは、6.93
~408.87pmol/L等のEC50を有するGLP-1受容体を活性化するGLP-1Rアゴニストとして、本明細書に示すこともできる。一実施形態において、EC50値は、上記において説明されるように決定される。一実施形態において、EC50値は、EC50±SDとして与えられる。一実施形態において、SDは、アッセイ依存性標準偏差である。
【0088】
天然GLP-1(7-36)のものに比べて減少したGLP-1Rアゴニスト活性を有する適切なGLP-1Rアゴニストは、GLP-1Rアゴニスト活性、例えば、実施例4において、またはXiaoら(2001)Biochemistry.40(9):2860-9またはGaultら(2013)J Biol Chem.288(49):35581-91において説明されるようなアッセイ、例えば、サイトゾルcAMPのGLP-1Rアゴニスト誘導性産生、β細胞保存作用(アポトーシス)、またはグルコース刺激性インスリン分泌(GSIS)等において、GLP-1Rアゴニスト活性の決定について、本明細書において説明されるアッセイによって同定することができる。適切なGLP-1Rアゴニストは、例えば、ランダムまたは部位特異的変異誘発または化学合成(例えば、実施例5を参照のこと)、および対照として天然GLP-1(7-36)を使用して、本明細書において説明されるGLP-1Rアゴニスト活性の事後決定によって、天然GLP-1(7-36)のような公知のペプチドGLP-1Rアゴニストの変異体を産生することによって、同定することができる。あるいは、適切なGLP-1Rアゴニストは、対照として天然GLP-1(7-36)を使用して、GLP-1Rアゴニスト活性に関して小分子ライブラリをスクリーニングすることによって、同定することができる。これらのアッセイの全ては、ハイスループットアッセイの形態で実施することができる。
【0089】
公知のペプチドGLP-1Rアゴニスト(例えば、天然GLP-1(7-36))の変異体は、少なくとも1つのアミノ酸残基を公知のペプチドGLP-1Rアゴニストのアミノ酸配列に対して欠失、付加および/または置換することに基づいてもよい。
【0090】
一実施形態において、変異体は、最大15、14、13、12、11、10、9、8、7、6または5個のアミノ酸残基の置換を含む。
【0091】
一実施形態において、GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)の配列において、最大15、14、13、12、11、10、9、8、7、6または5個のアミノ酸残基の置換を含むGLP-1(7-36)の変異体である。一実施形態において、置換は、A8G、V16L、V16K、S18K、S18I、Y19Q、L20M、E21D、G22E、Q23E、A24R、A25V、K26R、K26Q、E27L、A30E、V33K、V33L、V33E、K34N、K34A、G35TおよびR36Gならびに/または表5(配列番号8~20の記述を参照のこと)に挙げられる置換を含むまたはそれからなる群から選択される。
【0092】
いくつかの実施形態において、変異体は、そのN末端に、少なくとも1つの追加のアミノ酸残基を含む。一実施形態において、少なくとも1つの追加のアミノ酸残基は、プロリンを除く天然に存在するアミノ酸、非天然アミノ酸、アミノ酸類似体、およびアミノ酸模倣物から選択される。一実施形態において、少なくとも1つの追加のアミノ酸残基は、G、A、N、およびCからなる群から選択される。特定の実施形態において、少なくとも1つの追加のアミノ酸残基は、(単一の)Gである。
【0093】
いくつかの実施形態において、変異体は、そのC末端にペプチド延長を含む。ペプチド延長は、例えば、最大12、11または10個のアミノ酸残基からなってもよい。一実施形態において、ペプチド延長は、PSSGAPPPS(配列番号38)、PVSGAPPPS(配列番号39)、PSSGEPPPES(配列番号40)、PSSGEPPPE(
配列番号41)、PKKQRLS(配列番号42)およびPKKIRYS(配列番号43)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0094】
一実施形態において、本明細書において定義される天然GLP-1(7-36)に比べて減少したGLP-1Rアゴニスト活性を有するGLP-1Rアゴニストは、アミノ酸配列
H-G-E-G-T-F-T-S-D-X10-S-X12-Q-X14-X15-E-E-X18-V-X20-X21-F-I-E-W-L-X27-X28-X29-X30(配列番号37)を含むまたはそのようなアミノ酸配列からなり、
式中
10は任意のアミノ酸、例えば、LまたはKであり;
12は任意のアミノ酸、例えば、KまたはIであり;
14は任意のアミノ酸、例えば、LまたはMであり;
15は任意のアミノ酸、例えば、EまたはDであり;
18は任意のアミノ酸、例えば、AまたはRであり;
20は任意のアミノ酸、例えば、RまたはQであり;
21は任意のアミノ酸、例えば、LまたはEであり;
27は任意のアミノ酸、例えば、L、E、KまたはVであり;
28は任意のアミノ酸、例えば、A、NまたはKであり;
29は任意のアミノ酸、例えば、TまたはGであり;
30は任意のアミノ酸、例えば、GまたはRであり;
場合により、アミノ酸配列は、そのN末端に少なくとも1つの追加のアミノ酸残基を含み、場合により、アミノ酸配列は、そのC末端に最大12、11または10個のアミノ酸残基からなるペプチド延長を含む。
【0095】
一実施形態において、X27はL、EまたはVであり、例えばLである。一実施形態において、X28はAまたはKであり、例えばAである。
【0096】
一実施形態において、少なくとも1つの追加のアミノ酸残基は、G、A、N、およびCからなる群から選択される。特定の実施形態において、少なくとも1つの追加のアミノ酸残基は、(単一の)Gである。
【0097】
一実施形態において、ペプチド延長は、PSSGAPPPS(配列番号38)、PVSGAPPPS(配列番号39)、PSSGEPPPES(配列番号40)、PSSGEPPPE(配列番号41)、PKKQRLS(配列番号42)およびPKKIRYS(配列番号43)からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0098】
N末端におけるGの導入またはX12=Iのような本明細書において説明される改変は、GLP-1Rアゴニスト活性の適切な減少へと導く。
【0099】
一実施形態において、本明細書において定義される天然GLP-1(7-36)のものに比べて減少したGLP-1Rアゴニスト活性を有するGLP-1Rアゴニストは、配列番号9、10、12、14、15、16、17、19および20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそのようなアミノ酸配列からなる。
【0100】
一実施形態において、X14はLであり、X28はAである。
【0101】
一実施形態において、GLP-1Rアゴニストは、配列番号9、10、12、14、16、17、19および20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそのようなアミノ酸配列からなる。
【0102】
本発明において、GLP-1Rアゴニストは、例えば、FGF21化合物に関連して、上記において説明されるように、さらに改変することができる。例えば、GLP-1Rアゴニストは、免疫グロブリンまたはその変異体のFc領域/ドメイン、例えば、本明細書において説明される免疫グロブリンまたはその変異体のFc領域/ドメインに融合することができる。
【0103】
本明細書による医薬組成物は、1種もしくはそれ以上の担体および/または賦形剤を含み、それら全ては、薬学的に許容されるものである。用語「薬学的に許容される」は、本明細書において使用される場合、好ましくは、該医薬組成物の活性剤の作用と相互作用しない材料の非毒性を意味する。
【0104】
用語「担体」は、適用を促進、増強、または可能にするために有効成分と組み合わされる、天然または合成の有機または無機成分を指す。本発明によれば、用語「担体」は、対象への投与にとって好適な、1種またはそれ以上の適合性の固体または液体の充填剤、希釈剤、または封入物質も含む。
【0105】
非経口投与のための可能な担体物質は、例えば、滅菌水、リンゲル液、乳酸リンゲル液、生理食塩水、静菌性生理食塩水(例えば、0.9%ベンジルアルコールを含有する生理食塩水)、リン酸緩衝食塩水(PBS)、ハンクス液、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレン、および、特に、生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、またはポリオキシエチレン/ポリオキシ-プロピレンコポリマーである。
【0106】
用語「賦形剤」は、本明細書において使用される場合、有効成分ではないが医薬組成物中に存在していてもよい全ての物質、例えば、塩、結合剤(例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、トレハロース、ソルビトール、マンニトール)、充填剤、潤滑剤、増粘剤、表面活性剤、防腐剤、乳化剤、緩衝剤物質、香味剤、または着色剤などを含むことが意図される。
【0107】
薬学的に許容される塩を製造するために、薬学的に許容されない塩を使用してもよく、それらは本発明に含まれる。この種類の薬学的に許容される塩は、非限定的に以下の酸:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸などから製造されるものを含む。薬学的に許容される塩は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、またはカルシウム塩などとして製造することもできる。塩は、イオン強度または張度を調節するために加えることができる。
【0108】
医薬組成物での使用のための好適な防腐剤としては、酸化防止剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、システイン、メチオニン、パラベン、チメロサール、フェノール、クレゾールおよびその混合物が挙げられる。
【0109】
医薬組成物での使用のための好適な緩衝物質としては、塩での酢酸、塩でのクエン酸、塩でのホウ酸、塩でのリン酸、およびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス、THAM、トロメタモール)が挙げられる。
【0110】
本発明による医薬組成物は、好ましくは、滅菌である。医薬組成物は、一様な剤形において提供され、それ自体公知の様式において製造することができる。医薬組成物は、例えば、溶液剤または懸濁剤の形態であってもよい。
【0111】
医薬組成物は、適切な希釈剤によって再構成される、安定な凍結乾燥された製品として
製剤化することもでき、場合により、上記において定義されるような1種またはそれ以上の賦形剤を含む。
【0112】
本発明による医薬組成物は、少なくとも1種の他の医薬品有効成分をさらに含んでもよい。
【0113】
用語「医薬品有効成分」(API)は、本明細書において使用される場合、いくつらかの薬理効果を提供し、例えば、本明細書において定義される疾患または障害などの状態を治療または予防するために使用される、任意の薬学的に活性な化学的または生物学的化合物ならびにそれらの任意の薬学的に許容される塩およびそれらの任意の混合物を含む。例示的な薬学的に許容される塩としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、臭化水素酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、クエン酸、酒石酸、パモン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、ラウリル硫酸、ナフタリンスルホン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。本明細書において使用される場合、用語「医薬品有効成分」、「活性剤」、「有効成分」、「活性物質」、「治療的に活性な化合物」、および「薬物」は、同義語であることが意図され、すなわち、同一の意味を有する。
【0114】
本発明により、医薬品有効成分は、場合により、以下から選択される:
- Rote Liste 2014において言及される全ての薬物、例えば、Rote Liste 2014、chapter 12において言及される全ての抗糖尿病薬、Rote Liste 2014、chapter 06において言及される全ての体重減量剤または食欲抑制剤、Rote Liste 2014、chapter 58において言及される全ての脂質低下剤、Rote Liste 2014 chapter
17において言及される全ての抗高血圧症薬、Rote Listeにおいて言及される全ての腎臓保護薬(nephroprotective)、またはRote Liste 2014chapter 36において言及される全ての利尿薬など;
- インスリンおよびインスリン誘導体、例えば:インスリングラルギン(例えば、Lantus(登録商標))、100U/mL超に濃縮されたインスリングラルギン、例えば、270~330U/mLのインスリングラルギンまたは300U/mLのインスリングラルギン(EP2387989において開示される)、インスリングルリシン(例えば、Apidra(登録商標))、インスリンデテミル(例えば、Levemir(登録商標))、インスリンリスプロ(例えば、Humalog(登録商標)、Liprolog(登録商標))、インスリンデグルデク(例えば、DegludecPlus(登録商標)、IdegLira(NN9068))、インスリンアスパルトおよびアスパルト製剤(例えば、NovoLog(登録商標))、基礎インスリンおよび類似体(例えば、LY2605541、LY2963016、NN1436)、ペグ化インスリンリスプロ(例えば、LY-275585)、長時間作用型インスリン(例えば、NN1436、Insumera(PE0139)、AB-101、AB-102、Sensulin LLC)、中間時間作用型インスリン(例えば、Humulin(登録商標)N、Novolin(登録商標)N)、速効性および短時間作用型インスリン(例えば、Humulin(登録商標)R、Novolin(登録商標)R、Linjeta(登録商標)(VIAject(登録商標))、PH20インスリン、NN1218、HinsBet(登録商標))、予備混合インスリン、SuliXen(登録商標)、NN1045、インスリン+Symlin(登録商標)、PE-0139、ACP-002ヒドロゲルインスリン、および経口、吸入可能、経皮、および口腔、または舌下インスリン(例えば、Exubera(登録商標)、Nasulin(登録商標)、Afrezza(登録商標)、インスリントレゴピル(tregopil)、TPM-02インスリン、Capsulin(登録商標)、Oral-lyn(登録商標)、Cobalamin(登録商標)、経口インスリン、ORMD-0801、Oshadi経口インスリン、NN1953、NN1954、NN1956、VIAtab(登録商標))。二官能性リンカーによってアルブミンま
たは他のタンパク質に結合したこれらのインスリンの誘導体も好適である;
- グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)、GLP-1類似体、およびGLP-1受容体アゴニスト、例えば:GLP-1(7~37)、GLP-1(7~36)アミド、リキシセナチド(例えば、Lyxumia(登録商標))、エキセナチド(例えば、エキセンディン-4、rエキセンディン-4、Byetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、エキセナチドNexP)、エキセナチド-LAR、リラグルチド(例えば、Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド、デュラグルチド、アルブゴン、オキシントモジュリン、ゲニプロシド、ACP-003、CJC-1131、CJC-1134-PC、GSK-2374697、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド(HM-11260C)、CM-3、GLP-1Eligen、AB-201、ORMD-0901、NN9924、NN9926、NN9927、Nodexen、Viador-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、ZP-3022、CAM-2036、DA-3091、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTEN(VRS-859)、エキセナチド-XTEN+グルカゴン-XTEN(VRS-859+AMX-808)、およびポリマー結合GLP-1およびGLP-1類似体;
- 二重GLP-1/GIPアゴニスト(例えば、RG-7697(MAR-701)、MAR-709、BHM081、BHM089、BHM098);二重GLP-1/グルカゴン受容体アゴニスト(例えばBHM-034、OAP-189(PF-05212389、TKS-1225)、TT-401/402、ZP2929、LAPS-HMOXM25、MOD-6030);
- 二重GLP-1/ガストリンアゴニスト(例えば、ZP-3022);
- 胃腸ペプチド、例えば、ペプチドYY3-36(PYY3-36)またはその類似体および膵臓ポリペプチド(PP)またはその類似体;
- グルカゴン受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、グルコース依存性インスリン分泌性ポリペプチド(GIP)受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、グレリンアンタゴニストまたはインバースアゴニスト、キセニンおよびその類似体;
- ジペプチジルペプチダーゼ-IV(DPP-4)阻害剤、例えば:アログリプチン(例えば、Nesina(登録商標)、Kazano(登録商標))、リナグリプチン(例えば、Ondero(登録商標)、Trajenta(登録商標)、Tradjenta(登録商標)、Trayenta(登録商標))、サキサグリプチン(例えば、Onglyza(登録商標)、Komboglyze XR(登録商標))、シタグリプチン(例えば、Januvia(登録商標)、Xelevia(登録商標)、Tesavel(登録商標)、Janumet(登録商標)、Velmetia(登録商標)、Juvisync(登録商標)、Janumet XR(登録商標))、アナグリプチン、テネリグリプチン(例えば、Tenelia(登録商標))、トレラグリプチン、ビルダグリプチン(例えば、Galvus(登録商標)、Galvumet(登録商標))、ゲミグリプチン、オマリグリプチン、エボグリプチン、デュトグリプチン、DA-1229、MK-3102、KM-223、KRP-104、PBL-1427、ピノキサシンヒドロクロリド、およびAri-2243;
- ナトリウム依存性グルコーストランスポーター2(SGLT-2)阻害剤、例えば:カナグリフロジン、ダパグリフロジン、レモグリフロジン、エタボン酸レモグリフロジン、セルグリフロジン、エンパグリフロジン、イプラグリフロジン、トホグリフロジン、ルセオグリフロジン、エルツグリフロジン、EGT-0001442、LIK-066、SBM-TFC-039、およびKGA-3235(DSP-3235);
- SGLT-2およびSGLT-1の二重阻害剤(例えば、LX-4211、LIK066)。
- 肥満防止薬、例えば、回腸型胆汁酸トランスポーター(IBAT)阻害剤(例えば、GSK-1614235+GSK-2330672)と組み合わせたSGLT-1阻害剤(例えばLX-2761、KGA-3235)またはSGLT-1阻害剤;
- ビグアニド(例えば、メトホルミン、ブホルミン、フェンホルミン);
- チアゾリジンジオン(例えば、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン)、グリタゾン類似体(例えば、ロベグリタゾン);
- ペルオキシソーム増殖活性化受容体(PPAR-)(アルファ、ガンマ、またはアルファ/ガンマ)アゴニストまたはモジュレーター(例えば、サログリタザル(例えば、Lipaglyn(登録商標))、GFT-505)、またはPPARガンマ部分アゴニスト(例えば、Int-131);
- スルホニル尿素(例えば、トルブタミド、グリベンクラミド、グリメピリド、Amaryl(登録商標)、グリピザイド)およびメグリチニド(例えば、ナテグリニド、レパグリニド、ミチグリニド);
- アルファ-グルコシダーゼ阻害剤(例えば、アカルボース、ミグリトール、ボグリボース);
- アミリンおよびアミリン類似体(例えば、プラムリンチド、Symlin(登録商標));
- Gタンパク質結合受容体119(GPR119)アゴニスト(例えば、GSK-1292263、PSN-821、MBX-2982、APD-597、ARRY-981、ZYG-19、DS-8500、HM-47000、YH-Chem1);
- GPR40アゴニスト(例えば、TUG-424、P-1736、P-11187、JTT-851、GW9508、CNX-011-67、AM-1638、AM-5262);
- GPR120アゴニストおよびGPR142アゴニスト;
- 全身性または低吸収性TGR5(GPBAR1=Gタンパク質結合胆汁酸受容体1)アゴニスト(例えば、INT-777、XL-475、SB756050);
- 糖尿病免疫療法、例えば:経口C-Cケモカインレセプタータイプ2(CCR-2)アンタゴニスト(例えば、CCX-140、JNJ-41443532)、インターロイキン1ベータ(IL-1β)アンタゴニスト(例えばAC-201)、または経口モノクローナル抗体(MoA)(例えば、メタゾラミド、VVP808、PAZ-320、P-1736、PF-05175157、PF-04937319);
- メタボリック症候群および糖尿病の治療のための抗炎症剤、例えば:核内因子カッパB阻害剤(例えば、Triolex(登録商標));
- アデノシンモンリン酸-活性化プロテインキナーゼ(AMPK)刺激剤、例えば:Imeglimin(PXL-008)、Debio-0930(MT-63-78)、R-118;
- 11-ベータ-ヒドロキシステロイド脱水素酵素1(11-ベータ-HSD-1)の阻害剤(例えば、LY2523199、BMS770767、RG-4929、BMS816336、AZD-8329、HSD-016、BI-135585);
- グルコキナーゼの活性剤(例えば、PF-04991532、TTP-399(GK1-399)、GKM-001(ADV-1002401)、ARRY-403(AMG-151)、TAK-329、TMG-123、ZYGK1);
- ジアシルグリセロールO-アシルトランスフェラーゼ(DGAT)の阻害剤(例えば、プラジガスタット(LCQ-908))、プロテインチロシンホスファターゼ1の阻害剤(例えば、トロズスクエミン)、グルコース-6-ホスファターゼの阻害剤、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼの阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼの阻害剤、ホスホエノールピルベートカルボキシキナーゼの阻害剤、グリコーゲンシンターゼキナーゼの阻害剤、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼの阻害剤;
- グルコーストランスポーター-4のモジュレーター、ソマトスタチン受容体3アゴニスト(例えば、MK-4256);
- 1種またはそれ以上の脂質低下剤も組合せパートナーとして好適であり、例えば:3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-コエンザイム-A-レダクターゼ(HMG-CoA-レダクターゼ)阻害剤、例えば、シンバスタチン(例えば、Zocor(登録商標
)、Inegy(登録商標)、Simcor(登録商標))、アトルバスタチン(例えば、Sortis(登録商標)、Caduet(登録商標))、ロスバスタチン(例えば、Crestor(登録商標))、プラバスタチン(例えば、Lipostat(登録商標)、Selipran(登録商標))、フルバスタチン(例えば、Lescol(登録商標))、ピタバスタチン(例えば、Livazo(登録商標)、Livalo(登録商標))、ロバスタチン(例えば、Mevacor(登録商標)、Advicor(登録商標))、メバスタチン(例えば、Compactin(登録商標))、リバスタチン、セリバスタチン(Lipobay(登録商標))、フィブレート、例えば、ベザフィブレート(例えば、Cedur(登録商標)retard)、シプロフィブレート(例えば、Hyperlipen(登録商標))、フェノフィブレート(例えば、Antara(登録商標)、Lipofen(登録商標)、Lipanthyl(登録商標))、ゲンフィブロジル(例えば、Lopid(登録商標)、Gevilon(登録商標))、エトフィブレート、シンフィブレート、ロニフィブレート、クリノフィブレート、クロフィブリド、ニコチン酸およびその誘導体(例えば、ナイアシン、例えば、ナイアシンの徐放性製剤など)、ニコチン酸受容体1アゴニスト(例えば、GSK-256073)、PPAR-デルタアゴニスト、アセチル-CoA-アセチルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤(例えば、アバシミベ)、コレステロール吸収阻害剤(例えば、エゼチミブ、Ezetrol(登録商標)、Zetia(登録商標)、Liptruzet(登録商標)、Vytorin(登録商標)、S-556971)、胆汁酸結合物質(例えば、コレスチラミン、コレセベラム)、回腸胆汁酸トランスポート(IBAT)阻害剤(例えば、GSK-2330672、LUM-002)、ミクロソーマールトリグリセリド移転タンパク質(MTP)阻害剤(例えば、ロミタピド(AEGR-733)、SLx-4090、グラノタピド)、前駆タンパク質転換酵素ズブチリシン/ケキシンタイプ9(PCSK9)のモジュレーター(例えば、アリロクマブ(REGN727/SAR236553)、AMG-145、LGT-209、PF-04950615、MPSK3169A、LY3015014、ALD-306、ALN-PCS、BMS-962476、SPC5001、ISIS-394814、1B20、LGT-210、1D05、BMS-PCSK9Rx-2、SX-PCK9、RG7652)、LDL受容体アップレギュレーター、例えば、肝臓選択性甲状腺ホルモン受容体ベータアゴニス(例えば、エプロチローム(KB-2115)、MB07811、ソベチロム(QRX-431)、VIA-3196、ZYT1)、HDL-上昇化合物(HDL-raising compound)、例えば:コレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)阻害剤(例えば、アナセトラピブ(MK0859)、ダルセトラピブ、エバセトラピブ、JTT-302、DRL-17822、TA-8995、R-1658、LY-2484595、DS-1442)、または二重CETP/PCSK9阻害剤(例えばK-312)、ATP結合カセット(ABC1)レギュレーター、脂質代謝モジュレーター(例えば、BMS-823778、TAP-301、DRL-21994、DRL-21995)、ホスホリパーゼA2(PLA2)阻害剤(例えば、ダラプラディブ、Tyrisa(登録商標)、バレスプラジブ、リラプラジブ)、ApoA-Iエンハンサー(例えば、RVX-208、CER-001、MDCO-216、CSL-112)、コレステロール合成阻害剤(例えば、ETC-1002)、脂質代謝モジュレーター(例えば、BMS-823778、TAP-301、DRL-21994、DRL-21995)、およびオメガ-3脂肪酸およびその誘導体(例えば、イコサペント酸エチル(AMR101)、Epanova(登録商標)、AKR-063、NKPL-66、PRC-4016、CAT-2003);
- ブロモクリプチン(例えば、Cycloset(登録商標)、Parlodel(登録商標))、フェンテルミンおよびフェンテルミン処方物または組合せ(例えば、Adipex-P、Ionamin、Qsymia(登録商標))、ベンズフェタミン(例えば、Didrex(登録商標))、ジエチルプロピオン(例えば、Tenuate(登録商標))、フェンジメトラジン(例えば、Adipost(登録商標)、Bontril(登録商標))、ブプロピオンおよび組合せ(例えば、Zyban(登録商標)、Wel
lbutrin XL(登録商標)、Contrave(登録商標)、Empatic(登録商標))、シブトラミン(例えば、Reductil(登録商標)、Meridia(登録商標))、トピラマート(例えば、Topamax(登録商標))、ゾニサミド(例えば、Zonegran(登録商標))、テソフェンシン、オピオイドアンタゴニスト、例えば、ナルトレキソン(例えば、Naltrexin(登録商標)、ナルトレキソン+ブプロピオン)、カンナビノイド受容体1(CB1)アンタゴニスト(例えば、TM-38837)、メラニン凝集ホルモン(MCH-1)アンタゴニスト(例えば、BMS-830216、ALB-127158(a))、MC4受容体アゴニストおよび部分的アゴニスト(例えば、AZD-2820、RM-493)、ニューロペプチドY5(NPY5)またはNPY2アンタゴニスト(例えば、ベルネペリト、S-234462)、NPY4アゴニスト(例えば、PP-1420)、ベータ-3-アドレナリン受容体アゴニスト、レプチンまたはレプチン模倣物、5-ヒドロキシトリプタミン2c(5HT2c)受容体のアゴニスト(例えば、ロルカセリン、Belviq(登録商標))、プラムリンチド/メトレレプチン、リパーゼ阻害剤、例えば、セチリスタット(例えば、Cametor(登録商標))、オルリスタット(例えば、Xenical(登録商標)、Calobalin(登録商標))、血管新生阻害剤(例えば、ALS-L1023)、ベータヒスチジンおよびヒスタミンH3アンタゴニスト(例えば、HPP-404)、AgRP(アグーチ関連タンパク質)阻害剤(例えば、TTP-435)、セロトニン再取り込み阻害剤、例えば、フルオキセチン(例えば、Fluctine(登録商標))、ジュロキセチン(例えば、Cymbalta(登録商標))、二重または三重モノアミン取り込み阻害剤(ドーパミン、ノルエピネフリン、およびセロトニン再取り込み)、例えば、セルトラリン(例えば、Zoloft(登録商標))、テソフェンシン、メチオニンアミノペプチダーゼ-2(MetAP2)阻害剤(例えば、ベロラニブ)、および線維芽細胞増殖因子受容体4(FGFR4)の産生に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、ISIS-FGFR4Rx)またはプロヒビチン標的指向性ペプチド-1(例えば、Adipotide(登録商標));
- 硝酸オキシド供与体、AT1アンタゴニストまたはアンジオテンシンII(AT2)受容体アンタゴニスト、例えば、テルミサルタン(例えば、Kinzal(登録商標)、Micardis(登録商標))、カンデサルタン(例えば、Atacand(登録商標)、Blopress(登録商標))、バルサルタ(例えば、Diovan(登録商標)、Co-Diovan(登録商標))、ロサルタン(例えば、Cosaar(登録商標))、エプロサルタン(例えば、Teveten(登録商標))、イルベサルタン(例えば、Aprovel(登録商標)、CoAprovel(登録商標))、オルメサルタン(例えば、Votum(登録商標)、Olmetec(登録商標))、タソサルタン、アジルサルタン(例えば、Edarbi(登録商標))、二重アンジオテンシン受容体遮断薬(二重ARB)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、ACE-2活性剤、レニン阻害剤、プロレニン阻害剤、エンドセリン変換酵素(ECE)阻害剤、エンドセリン受容体(ET1/ETA)遮断薬、エンドセリンアンタゴニスト、利尿薬、アルドステロンアンタゴニスト、アルドステロンシンターゼ阻害剤、アルファ遮断薬、アルファ-2アドレナリン受容体のアンタゴニスト、ベータ遮断薬、混合アルファ/ベータ遮断薬、カルシウムアンタゴニスト、カルシウムチャネル遮断薬(CCB)、カルシウムチャネル遮断薬ジルチアゼムの経鼻剤(例えば、CP-404)、二重ミネラルコルチコイド/CCB、中枢作用性抗高血圧症薬、中性エンドペプチダーゼの阻害剤、アミノペプチダーゼA阻害剤、バソペプチド阻害剤、二重バソペプチド阻害剤、例えば、ネプリリシンACE阻害剤またはネプリリシン-ECE阻害剤、二重作用性AT受容体-ネプリリシン阻害剤、二重AT1/ETAアンタゴニスト、終末糖化産物(AGE)分解剤、遺伝子組換えレナラーゼ、血圧ワクチン、例えば、抗RAAS(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン-システム)ワクチン、AT1-またはAT2-ワクチンなど、高血圧症ファーマコゲノミクスに基づく薬物、例えば、抗高血圧応答を有する遺伝的多型のモジュレーター、栓球凝集抑制因子、および他のものまたはそれらの組合せが好適である。
【0115】
用語「融合分子」は、一般的に、2つ以上の異なる分子(例えば、タンパク質および/またはペプチド)を連結、特に共有結合させ、結果として元の各分子に由来する機能特性を有する単一の分子を生じさせることよって作り出された分子を指す。タンパク質および/またはペプチドの場合、融合分子は、「融合タンパク質」と呼ばれる。融合分子は、遺伝子融合によって(例えば、遺伝子組換えDNA技術によって)、または化学的および/または酵素的コンジュゲーションによって生じさせることができる。2つ以上の異なる分子は、好適なリンカー分子、例えば、ペプチドリンカーまたは非ペプチドポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)などによって連結させてもよい。
【0116】
一般的に、ペプチドリンカーは、柔軟性およびプロテアーゼ抵抗性を提供するように設計される。一実施形態において、ペプチドリンカーは、1~30、1~25または1~20個のアミノ酸残基の長さを有する。一実施形態において、ペプチドリンカーは、少なくとも5個のアミノ酸残基を含む。一実施形態において、ペプチドリンカーは、グリシン-セリンリッチリンカーであり、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%のアミノ酸は、それぞれ、グリシンまたはセリン残基である。一実施形態において、ペプチドリンカーは、そのC末端にアラニン残基を含む。別の実施形態において、アミノ酸は、グリシンおよびセリンから選択され、すなわち、ペプチドリンカーは、グリシンおよびセリンから排他的に構成される(グリシン-セリンリンカーとして呼ばれる)。一実施形態において、ペプチドリンカーは、配列番号22または配列番号23のアミノ酸配列を含むまたはそのようなアミノ酸配列からなる。ペプチドリンカーは、1つまたはそれ以上の特異的プロテアーゼ切断部位をさらに含み得る。
【0117】
一実施形態において、融合分子は、融合タンパク質である。本発明による融合タンパク質において、融合タンパク質の成分は、(N末端からC末端まで)A-B-CまたはC-B-Aの順序で整列することができ、AはGLP-1Rアゴニストであり、Bはリンカー分子であり、CはFGF21化合物である。
【0118】
一実施形態において、融合タンパク質は、免疫グロブリン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはIgD)またはその変異体のFc領域/ドメインをさらに含む。一実施形態において、Fc領域/ドメインの変異体は、Fc領域/ドメインの野生型配列に比べて、最大5、4または3個の変異を含む。一実施形態において、該変異は、アミノ酸置換および欠失、例えば、NまたはC末端欠失からなる群から選択される。一実施形態において、IgG4のFc領域/ドメインの変異体(「IgG4 Fc変異体」とも呼ばれる)は、配列番号21のアミノ酸配列を含むまたはそのようなアミノ酸配列からなる。
【0119】
一実施形態において、Fc領域/ドメインの変異体は、ハイブリッドFc領域/ドメインの変異体である。このようなハイブリッドFc領域/ドメインは、例えば、WO2016/114633A1、WO2017/074117A1、WO2017/074123A1およびWO2018/088838A1に記載され、それらを参照することにより本明細書に組み入れられる。一実施形態において、ハイブリッドFc領域/ドメインは、異なる免疫グロブリン(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはIgD)の部分的Fc領域/ドメインの組合せを含む。一実施形態において、ハイブリッドFc領域/ドメインは、IgG4およびIgDの部分的Fc領域/ドメイン(「IgG4/IgDハイブリッドFc領域/ドメイン」とも呼ばれる)、好ましくはヒトIgG4およびIgDを含む。一実施形態において、ハイブリッドFc領域/ドメインは、IgD Fc領域/ドメインのヒンジ配列およびCH2、ならびにIgG4 Fc領域/ドメインのCH2およびCH3配列の部分を含む。一実施形態において、ハイブリッドFc領域/ドメイ
ンは、配列番号65、66、67、68、69および70からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそのようなアミノ酸配列からなる。
【0120】
一実施形態において、FGF21化合物およびGLP-1Rアゴニストは、免疫グロブリンまたはその変異体のFc領域/ドメインによって結合する。一実施形態において、FGF21化合物およびGLP-1Rアゴニストは、L-Fc、Fc-L、L-Fc-LおよびFcからなる群から選択される構造を含むリンカー分子によって結合し、L、LおよびLは、本明細書において定義されるペプチドリンカーであり(LおよびLは同じまたは異なる)、Fcは、免疫グロブリンまたはその変異体のFc領域/ドメインである。
【0121】
一実施形態において、融合タンパク質は、配列番号25、26、28、30、31、32、33、35および36からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むまたはそのようなアミノ酸配列からなる。
【0122】
本発明による融合タンパク質のさらなる特色は、例えば、WO2014/037373A1およびWO2017/093465A1に記載され、それらを参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0123】
「核酸分子」は、本発明において、好ましくはデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)である。核酸分子は、本発明において、一本鎖または二本鎖の、直鎖状であるかまたは共有結合により閉じて環を形成する分子の形態である。
【0124】
用語「DNA」は、デオキシリボヌクレオチド残基を含む分子、好ましくは、完全にまたは実質的にデオキシリボヌクレオチド残基で構成される分子に関する。「デオキシリボヌクレオチド」は、ベータ-D-リボフラノシル基の2’位においてヒドロキシル基を欠くヌクレオチドに関する。用語「DNA」は、単離DNA、例えば、部分的または完全に精製されたDNA、本質的に純粋なDNA、合成DNA、および遺伝子組換えにより生じたDNAを含み、1つまたはそれ以上のヌクレオチドの追加、欠失、置換、および/または改変によって天然に存在するDNAとは異なる修飾DNAも含む。そのような改変は、DNAの末端または内部などへの、例えば、DNAの1つまたはそれ以上のヌクレオチドへの、非ヌクレオチド材料の追加を含み得る。DNA分子におけるヌクレオチドは、非標準的ヌクレオチド、例えば、天然に存在しないヌクレオチドまたは化学的に合成されたヌクレオチドなども含むことができる。これらの改変DNAは、類似体または天然に存在するDNAの類似体と呼ぶことができる。用語「天然に存在する」は、ヌクレオチドと組み合わせて使用される場合、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびウラシル(U)の塩基を指す。
【0125】
用語「RNA」は、リボヌクレオチド残基を含む分子、好ましくは、完全にまたは実質的に、リボヌクレオチド残基で構成された分子に関する。「リボヌクレオチド」は、ベータ-D-リボフラノシル基の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドに関する。用語「RNA」は、単離RNA、例えば、部分的または完全に精製されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、および遺伝子組換えにより生じたRNAを含み、1つまたはそれ以上のヌクレオチドの追加、欠失、置換、および/または改変によって、天然に存在するRNAとは異なる修飾RNAを含む。そのような改変は、RNAの末端または内部などへの、例えば、RNAの1つまたはそれ以上のヌクレオチドでの、非ヌクレオチド材料の追加を含み得る。RNA分子におけるヌクレオチドは、非標準的ヌクレオチド、例えば、天然に存在しないヌクレオチドもしくは化学的に合成されたヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドなども含むことができる。これらの改変RNAは、類似体または天然に存在するRNAの類似体と呼ぶことができる。本発明によれば、「RNA」は、一本鎖RN
Aまたは二本鎖RNAを指す。一実施形態において、RNAは、mRNA、例えば、インビトロにおいて転写されたRNA(IVT RNA)または合成RNAである。RNAは、例えば、RNAの安定性(例えば、半減期)を増加させる1つまたはそれ以上の修飾によって、修飾することができる。そのような変更は、当業者に公知であり、そのようなものとして、例えば、5’-キャップまたは5’キャップ類似体が挙げられる。
【0126】
本発明による核酸分子は、ベクターに含有させる/含ませることができる。用語「ベクター」は、本明細書において使用される場合、プラスミドベクター、コスミドベクター、ファージベクター、例えば、ラムダファージなど、ウイルスベクター、例えば、アデノウイルスもしくはバキュロウイルスベクターなど、または人工染色体ベクター、例えば、バクテリア人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、もしくはP1人工染色体(PAC)などを含む、当業者に公知の全てのベクターを含む。前記ベクターは、発現ベクターおよびクローニングベクターを含む。発現ベクターは、プラスミドおよびウイルスベクターを含み、一般的に、特定の宿主生物(例えば、細菌、酵母、植物、昆虫、または哺乳動物)における、またはインビトロ発現系における、所望のコード配列と、作動可能に連結されたコード配列の発現のために必要な適切なDNA配列とを含有する。クローニングベクターは、一般的に、ある特定の所望のDNA断片を設計および増幅するために使用され、所望のDNA断片の発現に必要な機能的配列を欠き得る。
【0127】
あるいは、本発明による核酸分子は、ゲノム、例えば、宿主細胞のゲノム、に統合させてもよい。特定の核酸分子をゲノムに統合するための手段および方法は、当業者に公知である。
【0128】
用語「細胞」または「宿主細胞」は、好ましくは、完全細胞、すなわち、その正常な細胞内成分、例えば、酵素、細胞小器官、または遺伝物質などを放出していない、完全膜を有する細胞に関する。完全細胞は、好ましくは、生存細胞、すなわち、その正常な代謝機能を行うことができる生きた細胞である。好ましくは、前記用語は、本発明において、外因性の核酸をトランスフェクトまたは形質転換することができる任意の細胞に関する。好ましくは、外因性の核酸をトランスフェクトまたは形質導入させ、レシピエントに移した細胞は、レシピエントにおいてその核酸を発現することができる。用語「細胞」は、原核細胞、例えば、細菌細胞など、および真核生物細胞、例えば、酵母細胞、真菌細胞、または哺乳動物細胞などを含む。好適な細菌細胞としては、グラム陰性細菌株、例えば、大腸菌(Escherichia coli)、プロテウス(Proteus)、およびシュードモナス(Pseudomonas)の細菌株など、およびグラム陽性細菌株、例えば、バチルス属(Bacillus)、ストレプトマイセス属(Streptomyces)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、およびラクトコッカス属(Lactococcus)などに由来する細胞が挙げられる。好適な真菌細胞としては、トリコデルマ属(Trichoderma)、ニューロスポーラ属(Neurospor)、およびアスペルギルス属 (Aspergillus)の種に由来する細胞が挙げられる。好適な酵母細胞としては、サッカロマイセス属(Saccharomyces)の種(例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)の種(例えば、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe))、ピキア属(Pichia)の種(例えば、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)およびピチア・メタノリカ(Pichia methanolica))、およびハンゼヌラ属(Hansenula)の種に由来する細胞が挙げられる。好適な哺乳動物細胞としては、例えば、CHO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞、HEK293などが挙げられる。一実施形態において、HEK293細胞が使用される。しかしながら、両生類細胞、昆虫細胞、植物細胞、および異種タンパク質の発現のために当技術分野において使用される任意の他の細胞も、使用することができる。哺乳
動物細胞は、養子移入にとって特に好ましく、例えば、ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、および霊長類に由来する細胞である。これらの細胞は、多くの組織型から誘導することができ、初代細胞および細胞株、例えば、免疫系の細胞など、特に抗原提示細胞、例えば、樹枝状細胞およびT細胞など、幹細胞、例えば、造血幹細胞および間充織幹細胞など、ならびに他の細胞型を含む。抗原提示細胞は、その表面上の主要組織適合遺伝子複合体との関連において抗原を示す細胞である。T細胞は、それらのT細胞受容体(TCR)を使用して、この複合体を認識することができる。「細胞」または「宿主細胞」は、単離してもよく、または組織または有機体、特に「非人体」、の一部であってもよい。
【0129】
用語「非人体」は、本明細書において使用される場合、非ヒト霊長類または他の動物、特に哺乳動物、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、もしくはげっ歯類、例えば、マウス、ラット、モルモット、およびハムスターなどを含むことを意味する。
【0130】
本明細書において使用される場合、用語「部品のキット(簡潔に:キット)」は、1つまたはそれ以上の容器と、場合によりデータ媒体とを含む製品を指す。前記1つまたはそれ以上の容器は、上記において言及した薬剤(試薬)の1つまたはそれ以上で満たされる。キットには、例えば、希釈剤、緩衝剤、およびさらなる試薬を収容する追加の容器を含ませてもよい。前記データ媒体は、非電子的データ媒体、例えば、グラフィックデータ媒体、例えば、情報リーフレット、情報シート、バーコードもしくはアクセスコード、または電子的データ媒体、例えば、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)、マイクロチップ、もしくは別の半導体ベースの電子的データ媒体である。アクセスコードは、データベース、例えば、インターネットデータベース、集中データベース、分散データベースなどへのアクセスの可能にする。前記データ媒体は、本発明の薬剤、例えば、組合せ、医薬組成物および融合分子ならびに本明細書において説明される核酸分子および宿主細胞のような関連の薬剤の使用のための取扱説明書を含んでもよい。
【0131】
本明細書において説明される薬剤および組成物は、任意の従来の経路、例えば、経口、経肺、吸入によって、または注射もしくは注入による非経口において投与することができる。一実施形態において、非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下、皮内、または筋肉内において使用される。本明細書において説明される薬剤および組成物は、徐放性投与によって投与することもできる。
【0132】
非経口投与にとって好適な医薬組成物は、通常、活性物質の滅菌水性または非水性調製物を含み、これらは、好ましくは、レシピエントの血液に対して等張である。適合性の担体/溶媒/希釈剤の例は、滅菌水、リンゲル液、乳酸リンゲル液、生理食塩水、静菌性生理食塩水(例えば、0.9%ベンジルアルコールを含有する生理食塩水)、リン酸緩衝食塩水(PBS)、およびハンクス液である。さらに、通常、滅菌の不揮発性油も、溶液または懸濁液媒体として使用することができる。
【0133】
本明細書において説明される薬剤および組成物は、通常、治療有効量において投与される。「治療有効量」は、好ましくは、許容できない副作用を引き起こすことなく、単独でまたはさらなる用量と一緒に、所望の治療反応または所望の治療効果を達成する量を指す。特定の疾患または特定の状態の治療の場合、所望の反応は、好ましくは、疾患の経過の阻害に関する。これは、疾患の進行を減速させること、および、特に疾患の進行を中断または逆転させることを含む。疾患または状態の治療における所望の反応は、前記疾患または状態の発生の遅延または発生の予防であってもよい。本明細書において説明される薬剤および組成物の有効量は、治療される状態、疾患の重篤度、対象の個々のパラメータ、例えば、年齢、生理的条件、サイズ、および体重など、治療の持続期間、付随する療法のタイプ(存在する場合)、投与の特定の経路、ならびに同様の因子に依存するであろう。し
たがって、本明細書において説明される薬剤の投与される用量は、様々なそのようなパラメータに依存する。対象における反応が、初回用量において十分でない場合、より多い用量(または、別のより局所的経路の投与によって効果的に達成される、より多い用量)を使用することもできる。
【0134】
本発明により、用語「疾患または障害」は、任意の病理学的状態または不健康な状態、特に、肥満、太り過ぎ、メタボリック症候群、糖尿病、糖尿病性網膜症、高血糖、異常脂血症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、および/またはアテローム性動脈硬化症を指す。
【0135】
用語「肥満」は、健康に負の影響を有し得る程度にまで過剰な体脂肪が蓄積された医学的状態を指す。ヒト(成人)対象に関して、肥満は、30kg/m以上の肥満度指数(BMI)(BMI≧30kg/m)として定義することができる。
【0136】
用語「太り過ぎ」は、体脂肪の量が、最適に健康である量を超えている医学的状態を指す。ヒト(成人)対象に関して、肥満は、25kg/m以上の肥満度指数(BMI)(例えば、25kg/m≦BMI<30kg/m)として定義することができる。
【0137】
BMIは、成人において太り過ぎおよび肥満を分類するために一般的に使用される身長体重比の単純な指標である。それは、キログラムで表した人の体重をメートルで表したその人の身長の二乗で割ったものとして定義される(kg/m)。
【0138】
「メタボリック症候群」は、以下の医学的状態のうちの少なくとも3つのクラスタリングとして定義することができる:腹部(中心性)肥満(例えば、コーカソイドの男性の場合には胴回り≧94cmおよびコーカソイドの女性の場合は≧80cm、他の群に関しては民族的特有の値を有すると定義)、高い血圧(例えば、130/85mmHg以上)、高い空腹時血漿グルコース(例えば、少なくとも100mg/dL)、高い血清トリグリセリド(少なくとも150mg/dLE)、および低い高比重リポタンパク質(HDL)レベル(例えば、男性の場合には40mg/dL未満および女の場合は50mg/dL未満)。
【0139】
「糖尿病(diabetes mellitus)」(単に「糖尿病(diabetes)」とも呼ばれる)は、インスリン産生、インスリン作用、またはその両方における欠陥から結果として生じる血中グルコースの高濃度によって特徴付けられる代謝病の群を指す。一実施形態において、糖尿病は、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠性糖尿病、緩徐発症成人自己免疫性糖尿病(LADA)、若年発症成人型糖尿病(MODY)、ならびに特定の遺伝的条件、薬物、栄養不良、感染症、および他の病気からの結果として生じる他のタイプの糖尿病からなる群から選択される。
【0140】
糖尿病の現在のWHO診断基準は以下の通りである:空腹時血漿グルコース≧7.0mmol/l(126mg/dL)または2時間血漿グルコース≧11.1mmol/l(200mg/dL)。
【0141】
「1型糖尿病」(「インスリン依存性糖尿病(IDDM)」または「若年性糖尿病」としても知られる)は、インスリンの完全な欠乏によって引き起こされる高い血中グルコース濃度によって特徴付けられる状態である。これは、体の免疫システムが、膵臓におけるインスリンを産生するベータ細胞を攻撃し、それらを破壊する場合に生じる。膵臓は、インスリンを少ししか、または全く産生しない。膵臓除去または膵疾患も、インスリンを産生するベータ細胞の欠乏を生じ得る。1型糖尿病は、糖尿病の症例の5%から10%の間を占める。
【0142】
「2型糖尿病」(「インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)」または「成人発症型糖尿病」としても知られる)は、インスリンの可用性にかかわらない過剰なグルコース産生と、不十分なグルコースクリアランス(インスリン作用)の結果として過度に高いレベルのままにグルコースレベルが循環することによって特徴付けられる状態である。2型糖尿病は、糖尿病の全ての診断症例の約90から95%を占める。
【0143】
「妊娠性糖尿病」は、それ以前に糖尿病と診断されていない女性が、妊娠中(特に妊娠第三期)に高い血中グルコースレベルを示す状態である。妊娠性糖尿病は、調査された集団に応じて、妊娠の3~10%に影響する。
【0144】
「緩徐発症成人自己免疫性糖尿病(LADA)」(「遅発性1型糖尿病」とも呼ばれる)は、成人において生じる、多くの場合において発症の経過がより遅い、1型糖尿病の形態である。
【0145】
「若年発症成人型糖尿病(MODY)」は、インスリン産生を妨害する常染色体優性遺伝子における変異によって引き起こされる、糖尿病の遺伝子型を指す。
【0146】
「糖尿病性網膜症」は、糖尿病患者に生じる代謝の乱れによって誘発される眼疾患であり、視力の進行性喪失へ導く。
【0147】
用語「高血糖」は、血液中の過剰な糖(グルコース)を指す。
【0148】
用語「異常脂血症」は、リポタンパク質の過剰産生(高脂肪血症)または欠乏(低脂血症)を含む、リポタンパク質代謝の障害を指す。異常脂血症は、血中の総コレステロール、低比重リポタンパク質(LDL)コレステロールおよび/もしくはトリグリセリド濃度の上昇、ならびに/または高比重リポタンパク質(HDL)コレステロール濃度の減少によって明らかにされる。
【0149】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、肝細胞の炎症および変性を伴う、脂肪の蓄積(脂肪滴)によって特徴付けられる肝臓疾患である。一度罹患すると、この疾患は、肝臓機能が変化して肝不全へと進行し得る状態である、肝硬変の高リスクを伴う。その後、NASHは、多くの場合、肝臓がんへと進行する。
【0150】
「アテローム性動脈硬化症」は、動脈内腔の狭窄を引き起こして線維症および石灰化へと進行し得る、大動脈および中動脈の血管内膜におけるプラークと呼ばれる不規則に分布する脂質沈着によって特徴付けられる血管疾患である。病巣は、通常、限局性であり、ゆっくりと断続的に進行する。時折、血流障害を生じ、その結果として、閉塞に対して末梢側の組織死を引き起こす、プラークの破裂を生じる。血流の制限は、ほとんどの臨床徴候の主要因であり、これは、閉塞の分布および重篤度によって変わる。
【0151】
用語「医薬」は、本明細書において使用される場合、治療法において、すなわち、疾患および障害の治療において使用される、物質/組成物を指す。
【0152】
「治療」は、疾患または障害を予防または除去するため;対象の疾患および障害を停止または鈍化させるため;対象における新たな疾患または障害の発生を阻害または鈍化させるため;現在または以前に疾患または障害を有している対象における症状の頻度もしくは重篤度および/または再発を減少させるため;および/または、対象の寿命を延長、すなわち増加させるために、化合物もしくは組成物または化合物もしくは組成物の組合せを対象に投与することを意味する。
【0153】
特に、用語「疾患または障害を治療すること/治療」は、治癒、期間の短縮、改善、予防、進行または悪化の鈍化または阻害、または疾患もしくは障害もしくはそれらの症状の発症を予防または遅延させることを包含する。
【0154】
用語「対象」は、本明細書において、治療のための対象、特に罹患した対象(「患者」とも呼ばれる)、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、または他の動物、特に哺乳動物、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、ウサギ、またはげっ歯類、例えば、マウス、ラット、モルモット、およびハムスターなどを意味する。一実施形態において、対象/患者は、ヒトである。
【0155】
そこで、説明をするが、本発明の範囲を限定することは意図していない以下の実施例を参照することによって本発明をさらに説明する。
【実施例0156】
システム薬理学モデリングによる最適なGLP-1RA/FGF21活性比の決定
ヒトにおけるGLP-1RA/FGF21融合タンパク質の薬理学的効果への改善された機械論的洞察を使用して、最適なGLP-1RA/FGF21効力比を特定した。機械論的システム薬理学モデルを開発し、GLP-1およびFGF21のヒトにおけるグルコース、脂質およびエネルギー代謝に対する効果を説明した(Cuevas-Ramosら(2009)Curr Diabetes Rev 5(4):216-220;Deaconら(2011)Rev Diabet Stud 8(3):293-306;Kimら(2008)Pharmacol Rev 60(4):470-512;Kharitonenkovら(2014)Mol Metab 3(3):221-229)。
【0157】
このモデルは、GLP-1およびFGF21の効果について関連する経路を表した。血糖コントロール(すなわち、HbA1c、空腹時血漿グルコース、食後血糖値)、脂質パラメータ(すなわち、血漿トリグリセリド、脂肪酸、コレステロール)およびエネルギーバランス(すなわち、体重、食物摂取、エネルギー消費)を獲得して、模擬薬物治療(例えば、GLP-1RA/FGF21融合タンパク質、リラグルチド、FGF21類似体LY2405319)に対する治療奏功を評価した。LY2405319については、Kharitonenkovら(2013)PLoS ONE8(3):e58575を参照されたい。
【0158】
このモデルは、ホルモンインスリン、グルカゴンおよびインクレチン(GLP-1、GIP)によって制御されるグルコースホメオスタシスの重要な態様を網羅した。血糖コントロールに関する主要モデルエンドポイントは、HbA1cであった。HbA1cは、先の数か月にわたる平均血漿グルコース濃度を推定するために使用された共通の臨床エンドポイントである。HbA1cは、Nathanら(2008)Diabetes Care31(8):1473-1478によって報告されたように、平均血漿グルコースとHbA1cとの間位の線形的相関を使用してモデルにおいて推定した。
【0159】
このモデルは、コレステロールの提示を含む基本的脂質代謝を扱うのに適したレベルで、トリグリセリドおよび脂肪酸代謝を組み入れた。HDLおよび非HDL、すなわち、LDL+VLDLコレステロールは、循環しているリポタンパク質である。脂質代謝の提示は、FGF21化合物の、脂質およびスタチンとの相互作用に与える影響をシミュレートすることを可能にした。FGF21化合物は、脂質濃度に著しい効果を有した(Gaichら(2013)Cell Metab18(3):333-340;Fisherら(2011)Endocrinology152(8):2996-3004)。
【0160】
このモデルにおける体重減少または体重増加は、体脂肪量の変化として測定した。脂肪量と体重との間に直接的な関係性があった(Broylesら(2011)Br J Nutr 105(8):1272-1276)。食物摂取は、基礎および安静時代謝率に基づいた(Amirkalaliら(2008)Indian J Med Sci62(7):283-290)。エネルギー消費がカロリー摂取と等しい場合、体脂肪量は、一定を維持した。食物摂取に対する治療効果は、(Gobelら(2014)Obesity(Silver Spring)22(10):2105-2108)の式を使用して、モデルに実行した。
【0161】
食物は、炭水化物(グルコース等価物)、脂肪(脂肪酸等価物)およびタンパク質(アミノ酸等価物)であると考えた。全ての栄養が胃に入り、遅延ノードを通過し、その後、3区画の消化管に進んだ。消化管の設計は、食物消化および吸収を用いて(Bastianelliら(1996)J Anim Sci 74(8):1873-1887;Worthington(1997)Med Inform(Lond)22(1):35-45)によってなされた仕事に基づいた。
【0162】
栄養、ホルモン、薬物および疾患状態は、胃排出の遅延を生じさせる可能性がある。健康状態下で、胃排出率は、食事の量、そのエネルギー密度および胃における栄養量(Achourら(2001)Eur J Clin Nutr55(9):769-772;Fouilletら(2009)Am J Physiol Regul Integr
Comp Physiol297(6):R1691-1705)に依存した。糖尿病を有する個体は、経口ブドウ糖負荷試験または食事試験(Bharuchaら(2009)Clin Endocrinol(Oxf)70(3):415-420;Changら(2012)Diabetes Care35(12):2594-2596)で見られるグルコース吸収の遅延を有することが多かった。この遅延は胃排出の減速に起因した。胃と小腸との間の遅延をこのモデルに加えて、糖尿病対象における胃排出の遅延を説明した。薬物およびホルモン(GLP-1)は、胃の迷走神経緊張に影響し得、これは機械的混合および/または蠕動を減少し、胃排出も遅延させる(Jelsingら(2012)Diabetes Obes Metab 14(6):531-538;Littleら(2006)J Clin Endocrinol Metab91(5):1916-1923;Nauckら(2011)Diabetes 60(5):1561-1565;van Canら(2013)Int J Obes(Lond)38(6):784-93)。
【0163】
この調査の1つの目的は、GLP-1関連有害作用、すなわち、吐き気および嘔吐(Leanら(2014)Int J Obes(Lond)38(5):689-697)を予防することであった。胃排出測定値は、胃排出率の低さに相関する吐き気および嘔吐といった有害事象の推定を提供した。したがって、モデルにおける胃有害事象についてのマーカーは、胃排出率の和であった。
【0164】
健常者および疾患の異なるステージの2型糖尿病患者を表す異なる仮想患者がモデルプラットフォームに実装された。さらに、仮想患者は、異なる程度の肥満および異常脂血症を網羅した。仮想患者は、疾患重症度の可変性ならびにクリニックにおいて観察された病態生理学的および表現型の可変性を表した。
【0165】
いくつかの治療薬、すなわち、GLP-1RA/FGF21融合タンパク質、リラグルチド、FGF21類似体LY2405319、メトホルミン、アトルバスタチン、シタグリプチン、ヒトインスリンがモデルにおいて実施された。これらの治療薬は、シミュレーションにおいてオンオフ切り換えすることができた。仮想患者は、GLP-1RA/FG
F21融合タンパク質を投与される場合、メトホルミンおよびアトルバスタチンのバックグラウンドにあると想定された。
【0166】
仮想GLP-1RA/FGF21融合タンパク質がこのモデルにおいて実施された。融合タンパク質は、FGF21アゴニスト活性とGLP-1アゴニスト活性の両方を含み、FGF21受容体アゴニストとGLP-1受容体アゴニストの両方と同じ効果を有した。仮想融合タンパク質の薬物動態特性は、デュラグルチドと同様であると想定した(Geiserら(2016)Clin Pharmacokinet55(5):625-34)。
【0167】
多くのデータセットと比較することによってモデルを検証した。シミュレーション結果は、関連データおよび知識、例えば、Hellersteinら(1997)J Clin Invest 100(5):1305-1319;Muscelliら(2008)Diabetes57(5):1340-1348と定量的に一致した。モデルは、関連の定量的試験データ、例えば、Aschnerら(2006)Diabetes Care29(12):2632-2637;Dalla Man、Caumoら(2005)Am J Physiol Endocrinol Metab289(5):E909-914;Dalla Manら(2005)Diabetes54(11):3265-3273;Fiallo-Scharer(2005)J Clin Endocrinol Metab 90(6):3387-3391;Hahnら(2011)Theor Biol Med Model8:12;Hermanら(2005)Clin
Pharmacol Ther 78(6):675-688;Hermanら(2006)J Clin Pharmacol46(8):876-886およびJ Clin Endocrinol Metab91(11):4612-4619;Hojlundら(2001)Am J Physiol Endocrinol Metab 280(1):E50-58;Monauniら(2000)Diabetes 49(6):926-935;Nauckら(2009)Diabetes Care32(1):84-90;Nauckら(1993)J Clin Invest91(1):301-307;Nauckら(2004)Regul Pept122(3):209-217;Tzamaloukasら(1989)West J Med150(4):415-419;Sikaris(2009)J Diabetes Sci Technol3(3):429-438;ViciniおよびCobelli(2001)Am J
Physiol Endocrinol Metab280(1):E179-186;Vollmerら(2008)Diabetes57(3):678-687に適合した。
【0168】
FGF21類似体およびGLP-1受容体アゴニストを含む既存の治療薬が直接的比較についてモデルにおいて実施された。FGF21類似体の効果は臨床データ、例えば、Gaichら2013で検証された。GLP-1受容体アゴニストリラグルチドは、標的について直接的な競合相手であり、その実行を様々な臨床データ、例えば、Jacobsenら(2009)Br J Clin Pharmacol68(6):898-905;Elbrondら(2002)Diabetes Care25(8):1398-1404;Changら(2003)Diabetes52(7):1786-1791;Koltermanら(2003)J Clin Endocrinol Metab88(7):3082-3089;Degnら(2004)Diabetes53(5):1187-1194;Koltermanら(2005)Am J Health Syst Pharm62(2):173-181;Vilsbollら(2008)Diabet Med25(2):152-156;Buseら(2009)Lancet374(9683):39-47;Jelsingら(2012)Diabetes Obes Metab14(6):531-538;Hermansenら(2013)Dia
betes Obes Metab15(11):1040-1048;Suzukiら(2013)Intern Med52(10):1029-1034;van Canら(2013)Int J Obes(Lond)38(6):784-93;Zinmanら(2009)Diabetes Care32(7):1224-1230;Russell-Jonesら(2009)Diabetologia52(10):2046-2055;Pratleyら(2011)Int J Clin Pract65(4):397-407;Nauckら(2013)Diabetes Obes Metab15(3):204-212;Flintら(2011)Adv Ther28(3):213-226;Kapitzaら(2011)Adv Ther28(8):650-660;Astrupら(2012)Int J Obes(Lond)36(6):843-854と比較した。
【0169】
モデルプラットフォームは、活性比を変化させて、仮想GLP-1RA/FGF21融合タンパク質の利益的および有害作用をシミュレートすることを可能にした。有効FGF21媒介性EC50値には、Gaichら(2013)Cell Metab18(3):333-340に由来する定数を設定した。有効GLP-1媒介性EC50値は、内在GLP-1(表1)に関して、1つ増加の2~600の因子によって減少した。
【0170】
【表1】
【0171】
仮想融合タンパク質のそれぞれについて、関連の薬力学的エンドポイント、すなわち、HbA1c、トリグリセリド、脂肪酸、非HDLコレステロールおよび脂肪量について、暴露-奏功の関係をシミュレートした。GLP-1媒介性有害事象についてのマーカーとして、胃排出率を使用した。平均的な肥満異常脂血症の2型糖尿病の仮想患者に対するGLP-1RA/FGF21融合タンパク質による52週間の治療を幅の広い用量範囲でシミュレートした。52週間の治療後、全ての関連の薬力学的エンドポイントが定常状態に到達することを予想した。各エンドポイントについて、最大半量効果濃度(EC50値)を暴露-奏功曲線から決定した。EC50値は、特に主にGLP-1媒介性エンドポイントであるHbA1cおよび胃排出率について、活性比で変化した。図1は、GLP-1減衰率に依存するEC50値を記載する。GLP-1減衰率の増加は、GLP-1Rアゴニスト活性の減少を示す。
【0172】
この手順は、関連の活性比を特定することを可能にし、有害作用が薬力学的作用に比べて、より高い血漿レベルで作用し始める。9より高いGLP-1減衰率について、GLP-1媒介性消化管有害作用のEC50のほうが薬力学的作用のEC50より高かった。し
たがって、胃の有害作用は、薬力学的作用よりも高い血漿レベルで作用し始めた。GLP-1媒介性消化管有害作用を回避しながら、全ての望ましい薬力学的作用を提供する用量を見つけることは可能である。したがって、1:10以下の活性比は、関係しなかった。
【0173】
胃排出率についての最大EC50値は、減衰率531で到達した。有害作用と平均薬力学的作用との間の最大距離は、減衰率482で到達した(図2)。したがって、1:482以上の活性比は、関係しなかった。薬力学(HbA1c)の最大と有害作用との間の最大距離は、319であった。FGF21-(脂質)およびGLP-1媒介性作用(HbA1c)の展開によって正規化された薬力学(HbA1c)の最大と有害作用との間の最大距離は、121であった。
【0174】
1:10~1:482の間の効力比を有するGLP-1RA/FGF21融合タンパク質は、脂質特性、体重およびグルコース代謝を改善するのに最も有益であると予測され、胃排出反応に基づく著しい有害事象を発生する見込みはなかった。より低い効力比は、その予想される胃排出の強力な抑制および有害事象の潜在性に基づいて、良好な候補になりそうになかった。より高い効力比は、充分に効果的ではない可能性があり、したがって競合的ではなかった。
【0175】
さらに、平均的な肥満異常脂血症の2型糖尿病の仮想患者に対するGLP-1RA/FGF21融合タンパク質による12週間の治療は、主にGLP-1媒介性パラメータHbA1cが12週間の治療後に定常状態に臨床的に到達するため、幅の広い投与範囲でシミュレートしなかった。
【0176】
図3は、12週間のシミュレーションについてのGLP-1減衰率に依存するEC50値を記載する。18より高いGLP-1減衰率について、GLP-1媒介性消化管有害作用のEC50のほうが薬力学的作用のEC50より高かった。胃排出率についての最大EC50値は、減衰率501で到達した。有害作用と平均の薬力学的作用との間の最大距離は、減衰率469で到達した(図4)。薬力学(HbA1c)の最大と有害作用との間の最大距離は、313であった。FGF21-(脂質)およびGLP-1媒介性作用(HbA1c)の展開によって正規化された薬力学(HbA1c)の最大と有害作用との間の最大距離は、123であった。
【0177】
異なる活性比を有するGLP-1RA/FGF21融合タンパク質についての有害事象の効能および潜在能を記載のシステム薬理学アプローチによって調査した。おそらく計算された理想的な効力比を有する融合タンパク質が、同定され、胃排出反応に基づく著しく有害なGLP-1RA関連作用を発生しない可能性のある状態で、脂質特性、体重および血糖コントロールを改善するのに有益であると予測された。したがって、選択したモデルが知らせる効力比を有する化合物がリスク特性に対する良好な効能を提供することを予測した。
【実施例0178】
HEK293細胞におけるGLP1RA-FGF21融合タンパク質の発現
配列番号2のFGF21タンパク質をGLP1RAに直接融合するか、またはリンカー配列をGLP1RAとFGF21配列との間に挿入するかのいずれかであった。全ての構築物において、FGF21構築物は、GLP1RA配列にC末端において融合した。リンカーを挿入した場合、GLP1RAは、リンカー配列にN末端において融合し、FGF21はリンカー配列にC末端において融合した。GLP1RA-FGF21融合タンパク質のDNA配列を、N末端においてIL2シグナル配列に融合させ、続いて、ヒスチジンリッチな配列(Hisタグ)およびTev切断部位に融合させた。GLP1RA-FGF21融合タンパク質は、HEK293細胞の一過性トランスフェクションによって産生した
。シグナル配列は、培養培地への所望の融合タンパク質の分泌に必要であった。固定化金属イオン親和性クロマトグラフィ(IMAC)を使用して、培養上清から所望の融合タンパク質を精製した。IMACカラムからの溶出後、場合により、N末端HisタグをTevプロテアーゼの添加によって切断することができる。構築物のスクリーニングのために、GLP1RA活性アッセイについて、Tevプロテアーゼをインキュベーション培地に直接的に添加することによって、Hisタグを切断した。Hisタグを確実に完全切断するために、アッセイを開始する前のインキュベーション時間は、10~60分であった。所望の範囲のGLP1RA活性を有する構築物を大規模に産生した。GLP1RA-Fc-FGF21融合タンパク質は、HEK293細胞の一過性トランスフェクションによって産生した。所望の融合タンパク質は、完全Hisタグ精製樹脂(Roche)を有するIMACを使用して、培養上清物から精製した。Hisタグ切断後、切断反応溶液をIMACカラム(cOmplete(商標)His-Tag Purification resin(Roche))上にわたり2回目の通過をさせ、(Hisタグを有さない)フロースルー分画を収集した。これらの融合タンパク質をさらに、泳動用緩衝液としてリン酸緩衝生理食塩水(PBS、Gibco)を用いたゲルろ過カラムを使用して精製した。所望の融合タンパク質を含有する分画を収集し、プールし、濃縮して、さらなる使用まで-80℃で貯蔵した。
【実施例0179】
CHO細胞におけるヒトFGF21受容体の有効性についてのインビトロ細胞アッセイ(In-Cell Western)
成熟ヒトFGF21(配列番号2)またはFGF21変異体の細胞インビトロ有効性を、特異的な高感度のIn-Cell Western(ICW)アッセイを使用して測定した。ICWアッセイは、通常、マイクロプレート形式において実施される、免疫細胞化学的アッセイである。In-Cell Western(Aguilar H.N.ら(2010)PLoS ONE 5(4):e9965頁)を使用するFGF21受容体自己リン酸化アッセイのために、ヒトベータ-Klotho(KLB)と共にヒトFGFR1c(=FGF受容体1cアイソフォーム)を安定して発現するCHO Flp-In細胞(Invitrogen、ダルムシュタット、ドイツ)を使用した。MPAキナーゼERK1/2の受容体自己リン酸化レベルまたは下流活性を決定するために、2×10細胞/ウェルを、96ウェルプレートに播種し、48時間培養した。細胞を、GlutaMAX(Gibco、ダルムシュタット、ドイツ)を伴う無血清培地ハムF-12 Nutrient Mixによって3~4時間、血清飢餓させた。続いて、細胞を、増加した濃度の、成熟ヒトFGF21(配列番号2)のいずれかによって、37℃で5時間処理した。インキュベーション後、培地を捨て、細胞を、3.7%の新たに調製したパラ-ホルムアルデヒドにおいて20分間固定させた。20分間、PBS中で細胞に0.1%Triton-X-100を浸透させた。Odysseyブロッキングバッファ(LICOR、バートホンブルク、ドイツ)により、室温で2時間、ブロッキングを実施した。一次抗体(抗pFGFR Tyr653/654(New England Biolabs、フランクフルト、ドイツ)または抗pERKホスホ-p44/42 MAPキナーゼThr202/Tyr204(Cell Signaling))を加えて、4℃で一晩インキュベートした。一次抗体のインキュベーション後、細胞をPBS+0.1%Tween20で洗浄した。二次抗マウス800CW抗体(LICOR、バートホンブルク、ドイツ)を、室温で1時間インキュベートした。続いて、細胞をPBS+0.1%Tween20で再び洗浄し、Odyssey画像表示装置(LICOR、バートホンブルク、ドイツ)により、赤外色素シグナルを定量した。結果を、TO-PRO3染料(Invitrogen、カールスルーエ、ドイツ)によるDNAの定量化によって正規化した。任意単位(AU)としてデータを得て、用量-応答曲線からEC50値を得て、それらを表2にまとめる。図5は、ヒトFGFR1c+KLBを過剰発現するCHO細胞によるICWの結果を示している。
【0180】
【表2】
【実施例0181】
ヒトGLP-1受容体効能についてのインビトロ細胞アッセイ
ヒトグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体についての化合物のアゴニズムを、ヒトGLP-1受容体を安定的に発現するHEK-293細胞株においてcAMP反応を測定する機能的アッセイによって決定した。
【0182】
細胞のcAMP含有量は、HTRF(Homogenous Time Resolved Fluorescence)に基づいて、Cisbio Corp.のキット(カタログ番号62AM4PEC)を使用して決定した。製造するために、細胞は、T175培養フラスコに分割し、培地(DMEM/10%のFBS)においてコンフルエンス近くまで一晩培養した。培地はその後除去し、細胞をPBS欠失カルシウムおよびマグネシウムで洗浄し、続いて、アキュターゼ(Sigma-Aldrichカタログ番号A6964)でプロテイナーゼ処理を行った。剥離した細胞を洗浄し、アッセイバッファ(1×HBSS;20mMのHEPES、0.1%のBSA、2mMのIBMX)に再懸濁し、細胞密度を決定した。剥離した細胞は、その後、4×10細胞/mLに希釈し、25μLのアリコートを96ウェルプレートのウェルに分注した。測定のために、アッセイバッファにおける25μLの試験化合物をウェルに添加し、続いて、室温で30分間インキュベーションした。溶解バッファ(キットの成分)に希釈したHTRF試薬を添加した後、プレートを1時間インキュベートし、続いて、665/620nmで蛍光比を測定した。アゴニストのインビトロ効力は、最大反応の50%活性(EC50)を引き起こした濃度を決定することによって定量した。結果を表3にまとめる。
【0183】
【表3】
【0184】
【表4】
【実施例0185】
ペプチド化合物の合成
融合タンパク質が組換え方法(実施例2を参照のこと)によって産生をした一方で、単離されたペプチドGLP-1Rアゴニストを、化学合成した。
【0186】
より詳細には、ペプチドは手動の合成手順によって合成した:
0.3gの乾燥RinkアミドMBHA樹脂(0.66mmol/g)を、ポリプロピレンフィルターを備えたポリエチレン容器内に置いた。樹脂はDCM(15ml)にて1時間、DMF(15ml)にて1時間膨張した。樹脂のFmoc基は、20%(v/v)のピペリジン/DMF溶液で5分および15分間、2回処理することによって脱保護した。樹脂をDMF/DCM/DMFで洗浄した(各6:6:6時間)。固形支持体からFmocが除去されたことを確認するために、Kaiser試験(定量的方法)を使用した。乾燥DMF中のC末端Fmocアミノ酸(樹脂負荷に対応する5等量の余剰)を脱保護された樹脂に添加し、次のFmocアミノ酸のカップリングをDMF中のDICおよびHOBTの5等量の余剰で開始させた。反応混合物における各反応物の濃度は約0.4Mであった。混合物は、室温で2時間、ローターで回転させた。樹脂をろ過し、DMF/DCM/DMFで洗浄した(各6:6:6時間)。カップリング完了時のペプチド樹脂アリコートのKaiser試験は陰性であった(樹脂に色がなかった)。第1のアミノ酸の付着後、無反応のアミノ基は、存在する場合、樹脂の中で、無水酢酸/ピリジン/DCM(1:8:8)を使用して、20分間キャップして、配列の任意の欠失を回避した。キャッピング後、DCM/DMF/DCM/DMFで樹脂を洗浄した(各6/6/6/6時間)。C末端のアミノ酸付着ペプチジル樹脂のFmoc基は、20%(v/v)のピペリジン/DMF溶液で5分および15分間、2回処理することによって脱保護した。樹脂をDMF/DCM/DMFで洗浄した(各6:6:6時間)。Fmoc脱保護完了時のペプチド樹脂アリコートのKaiser試験は陽性であった。
【0187】
RinkアミドMBHA樹脂上の標的配列における残りのアミノ酸は、DMF中の樹脂負荷に対応する5等量の余剰を使用して、Fmoc AA/DIC/HOBt方法を使用して、順次結合させた。反応混合物における各反応物の濃度は約0.4Mであった。混合物は、室温で2時間、ローターで回転させた。樹脂をろ過し、DMF/DCM/DMFで洗浄した(各6:6:6時間)。各カップリングステップおよびFmoc脱保護ステップの後、Kaiser試験を実施して、反応の完全性を確認した。
【0188】
線形配列の完成後、分枝点または修飾点として使用されるリジンのε-アミノ基は、DMF中の2.5%のヒドラジン水和物を使用することによって、15分間を2回、脱保護し、DMF/DCM/DMFで洗浄した(各6:6:6時間)。DMF中のDIC/HOBt方法(樹脂負荷に対して、5等量の余剰)によるFmoc-Glu(OH)-OtBuを使用して、グルタミン酸のγ-カルボキシル端をLysのε-アミノ基に付着させた。混合物を室温で2時間、ローターで回転させた。樹脂をろ過し、DMF/DCM/DMFで洗浄した(各6×30ml)。グルタミン酸のFmoc基は、20%(v/v)のピペリジン/DMF溶液で5分および15分間(各25ml)、2回処理することによって脱保護した。樹脂をDMF/DCM/DMFで洗浄した(各6:6:6時間)。Fmoc脱保護完了時のペプチド樹脂アリコートのKaiser試験は陽性であった。
【0189】
側鎖分枝が1つ以上のγ-グルタミン酸も含む場合、DMF中のDIC/HOBt方法(樹脂負荷に対して、5等量の余剰)でγ-グルタミン酸の遊離アミノ基に付着させるために、第2のFmoc-Glu(OH)-OtBuを使用した。混合物を室温で2時間、ローターで回転させた。樹脂をろ過し、DMF/DCM/DMFで洗浄した(各6×30ml)。γ-グルタミン酸のFmoc基は、20%(v/v)のピペリジン/DMF溶液で5分および15分間(25ml)、2回処理することによって脱保護した。樹脂をDMF/DCM/DMFで洗浄した(各6:6:6時間)。Fmoc脱保護完了時のペプチド樹脂アリコートのKaiser試験は陽性であった。
【0190】
樹脂からのペプチドの最終切断:
手動の合成によって合成したペプチジル樹脂をDCM(6×10ml)、MeOH(6×10ml)およびエーテル(6×10ml)で洗浄し、減圧デシケーターで一晩乾燥させた。固体支持体からのペプチドの切断は、ペプチド-樹脂を試薬カクテル(80%のTFA/5%のチオアニソール/5%のフェノール/2.5%のEDT/2.5%のDMS/5%のDCM)で、室温で3時間処理することによって達成した。切断混合物はろ過によって回収し、樹脂はTFA(2ml)およびDCM(2×5ml)で洗浄した。余剰TFAおよびDCMを窒素下で少量に濃縮し、少量のDCM(5~10ml)を残留物に添加し、窒素下で蒸発させた。この工程を3~4回繰り返して、揮発性不純物の多くを除去した。残留物を0℃に冷却し、無水エーテルを添加して、ペプチドを沈殿させた。沈殿したペプチドを遠心分離にかけ、上清エーテルを除去し、新鮮なエーテルをペプチドに添加し、再び遠心分離にかけた。粗試料は分取HPLCによって精製し、凍結乾燥した。ペプチドの同一性をLCMSによって確認した。
【0191】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2024105462000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FGF21(線維芽細胞増殖因子21)化合物およびGLP-1R(グルカゴン様ペプチド1受容体)アゴニストを含む組合せであって、
該FGF21化合物は、天然FGF21のFGF21活性と同じまたは実質的に同じであるFGF21活性を有し、以下:
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から98~101位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列EIRP(配列番号44)による置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170~174位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列TGLEAV(配列番号45)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170~174位のアミノ酸残基の、アミノ酸配列TGLEAN(配列番号46)での置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から170位のアミノ酸残基の、アミノ酸Nでの置換;
- 配列番号2の天然FGF21のN末端から174位のアミノ酸残基の、アミノ酸Nでの置換;
- 上記に定義される1つまたはそれ以上の変異と共に、配列番号2の天然FGF21のN末端から180位のアミノ酸残基の、アミノ酸Eでの置換;および
- 配列番号2の天然FGF21に比べて、FGF21変異体の免疫原性を減少させるための1~10個のアミノ酸残基の変異
からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含むFGF21変異体であり、
該GLP-1Rアゴニストは、天然GLP-1(7-36)のGLP-1Rアゴニスト活性に比べて、9~531分の1のGLP-1Rアゴニスト活性を有する、前記組合せ。
【外国語明細書】