(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105501
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】基板処理装置、及び基板処理方法。
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240730BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20240730BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240730BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240730BHJP
B05D 3/06 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01L21/30 564C
H01L21/30 562
B05C11/00
B05C11/10
B05D3/00 B
B05D3/00 D
B05D3/06 Z
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024077444
(22)【出願日】2024-05-10
(62)【分割の表示】P 2020128629の分割
【原出願日】2020-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 広大
(72)【発明者】
【氏名】林 聖人
(72)【発明者】
【氏名】野口 耕平
(57)【要約】 (修正有)
【課題】基板に供給される液体が通流する供給路における異物を光学的に検出する基板処理装置について、より多く種類の液体に適用可能とする。
【解決手段】基板に供給される液体が通流する供給路と、投光部により前記供給路の一部を成す流路形成部に向けて近赤外線である光が照射された結果として前記流路形成部から光が発せられて、前記流路形成部から発せられた光を受光部が受光して得られる信号に基づいて、前記液体の中の異物を検出可能な異物検出ユニットと、
を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に供給される液体が通流する供給路と、
投光部により前記供給路の一部を成す流路形成部に向けて近赤外線である光が照射された結果として前記流路形成部から光が発せられて、前記流路形成部から発せられた光を受光部が受光して得られる信号に基づいて、前記液体の中の異物を検出可能な異物検出ユニットと、
光源と、
前記光源から前記流路形成部へ向かう光路を形成する前段側光路形成部と、
前記前段側光路形成部が備えると共に前記投光部をなし、前記光源からの光を反射させる反射部と、
を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記反射部は、反射防止膜を備え、
前記反射防止膜に向けて前記光源からの光が照射される請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記流路形成部には、前記反射部から当該流路形成部に向かう光が通過する反射防止膜が設けられる請求項1または2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記流路形成部には、前記反射部で反射して当該流路形成部を通過した光が通過する反射防止膜が設けられる請求項1ないし3のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記反射部で反射して前記流路形成部を通過した光を撮像するカメラが設けられる請求項1ないし4のいずれか一つに記載の記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記カメラによる撮像で取得された画像データに基づいて異常の判定を行う制御部が設けられる請求項5記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記制御部による前記判定に従って異常を報知する報知器が設けられる請求項6記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記受光部が前記流路形成部から発せられる光として散乱光を受光するように、前記異物検出ユニットにおける前記投光部及び前記受光部は、前記流路形成部を基準とした上下左右前後の領域のうち対向しない領域に設けられる請求項1ないし7のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記流路形成部において前記投光部から照射される光が集光されて前記散乱光を発生させるための反応領域を透過した透過光の光路をなす後段側光路形成部が設けられ、
当該後段側光路形成部は反射防止膜を備える請求項8記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記後段側光路形成部は、前記透過光を検出するための透過光検出部または当該透過光を吸光するための吸光部へ、当該透過光を導光する請求項9記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記流路形成部から発せられた光を前記受光部に導光する受光側光路形成部が設けられ、
当該受光側光路形成部はバンドパスフィルタを含み、当該バンドパスフィルタの通過帯域は、前記投光部から照射される光のピーク波長を含む請求項8ないし10のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項12】
基板に供給される液体が通流する供給路と、
投光部により前記供給路の一部を成す流路形成部に向けて近赤外線である光が形成された結果として前記流路形成部から光が発せられて、前記流路形成部から発せられた光を受光部が受光して得られる信号に基づいて、前記液体の中の異物を検出可能な異物検出ユニットと、
光源と、
前記光源から前記流路形成部へ向かう光路を形成する前段側光路形成部と、
を備える基板処理装置を用いた基板処理方法であって、
前記投光部をなし、前記前段側光路形成部が備える反射部により前記光源からの光を反射させて、前記流路形成部に向かう光を形成する工程と、
前記流路形成部に向かう光が形成された結果として当該流路形成部から発せられた光を受光部に受光させる工程と、
前記受光部が受光して得られる信号に基づいて、前記液体の中の異物を検出する工程と、
を備える基板処理方法。
【請求項13】
前記反射部に設けられる反射防止膜に向けて前記光源から光を照射する工程を含む請求項12記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記反射部から前記流路形成部に向かう光を、当該流路形成部に設けられる反射防止膜を通過させる工程を備える請求項12または13記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記反射部で反射して前記流路形成部を通過した光を、当該流路形成部に設けられる反射防止膜を通過させる工程を備える請求項12ないし14のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【請求項16】
前記反射部で反射して前記流路形成部を通過した光をカメラにより撮像する工程を備える請求項12ないし15のいずれか一つに記載の記載の基板処理方法。
【請求項17】
制御部により、前記カメラによる撮像で取得された画像データに基づいて異常の判定を行う工程を備える請求項16記載の基板処理方法。
【請求項18】
前記制御部による前記判定に従って、報知器による異常の報知を行う工程を備える請求項17記載の基板処理方法。
【請求項19】
前記異物検出ユニットにおける前記投光部及び前記受光部は、前記流路形成部を基準とした上下左右前後の領域のうち対向しない領域に設けられ、
前記受光部に前記流路形成部から発せられる光として散乱光を受光させる工程を含む請求項12ないし18のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【請求項20】
前記流路形成部において前記投光部から照射される光が集光されて前記散乱光を発生させるための反応領域を透過した透過光を、当該透過光の光路をなす後段側光路形成部を通過させる工程を備え、
前記後段側光路形成部を通過させる工程は、前記透過光について、当該後段側光路形成部に設けられる反射防止膜を通過させる工程を含む請求項19記載の基板処理方法。
【請求項21】
前記後段側光路形成部により、前記透過光を検出するための透過光検出部または当該透過光を吸光するための吸光部へ、当該透過光を導光する工程を備える請求項20記載の基板処理方法。
【請求項22】
前記流路形成部から発せられた光を、受光側光路形成部を介して前記受光部に導光する工程を備え、
前記受光部に導光する工程は、前記流路形成部から発せられた光を、前記受光側光路形成部に含まれ且つ通過帯域として前記投光部から照射される光のピーク波長を含むバンドパスフィルタを通過させる工程を備える請求項19ないし21のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては円形の基板である半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)に対して様々な処理液が供給されて、処理が行われる。この処理液中の異物を検出することで、ウエハにおける欠陥の発生を抑制することが検討されている。特許文献1には、ウエハにレジストを供給するための配管と、この配管に介在する液中パーティクルカウンタであるセンサ部と、を備えた液処理装置について記載されている。
また特許文献2には、流体が流れる流路部にレーザー光を照射し、流路部を透過した光路上に光検出部を設け、受光した光の強度に基づいて異物を検出する異物検出部を備えた装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-251328号公報
【特許文献2】特開2019-220712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板に供給される液体が通流する供給路における異物を光学的に検出する基板処理装置について、より多くの種類の液体に適用可能とする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の基板処理装置は、基板に供給される液体が通流する供給路と、
投光部により前記供給路の一部を成す流路形成部に向けて近赤外線である光が照射された結果として前記流路形成部から光が発せられて、前記流路形成部から発せられた光を受光部が受光して得られる信号に基づいて、前記液体の中の異物を検出可能な異物検出ユニットと、
を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板に供給される液体が通流する供給路における異物を光学的に検出する基板処理装置について、より多くの種類の液体に適用可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施形態であるSOC塗布装置の概略構成図である。
【
図3】前記SOC塗布装置に組み込まれた異物検出ユニットの縦断側面図である。
【
図8】前記SOC塗布装置の動作を示すチャート図である。
【
図9】前記異物検出ユニットの各部の位置関係を示す説明図である。
【
図10】前記異物検出ユニットに設けられる流路形成部の変形例を示す縦断側面図である。
【
図12】前記異物検出ユニットに設けられるレーザー光を検出する機構を示す概略側面図である。
【
図13】前記異物検出ユニットに設けられる検出光学系の変形例を示す概略側面図である。
【
図14】前記異物検出ユニットに設けられる検出光学系のさらに他の変形例を示す概略側面図である。
【
図15】前記異物検出ユニットの変形例を示す上面図である。
【
図16】前記異物検出ユニットの他の変形例に設けられる受光部を示す斜視図である。
【
図17】前記異物検出ユニットの他の変形例の作用を説明する説明図である。
【
図18】前記異物検出ユニットの他の変形例の作用を説明する説明図である。
【
図19】前記異物検出ユニットのさらに他の変形例に設けられる受光部を示す斜視図である。
【
図20】前記異物検出ユニットの他の変形例の作用を説明する説明図である。
【
図21】前記異物検出ユニットの他の変形例の作用を説明する説明図である。
【
図22】前記異物検出ユニットの他の変形例の作用を説明する説明図である。
【
図23】SOC塗布装置が組み込まれる塗布、現像装置の平面図である。
【
図25】前記塗布、現像装置における異物検出ユニットの配置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の基板処理装置の一実施形態であるSOC(Spin On Carbon)塗布装置1について、
図1の概略図を参照しながら説明する。SOC塗布装置1は、基板であるウエハWに処理液として塗布膜形成用の塗布液を供給し、当該塗布膜として炭素を主成分とするSOC膜を形成する。SOC塗布装置1は、例えば12本のノズル11(11A~11L)を備えており、そのうちの11本のノズル11A~11KはウエハWにSOC膜を形成するために塗布液を吐出する。ノズル11LはウエハWにシンナーを吐出する。シンナーは、SOC膜形成用の塗布液が供給される前のウエハWに供給されて、当該塗布液に対する濡れ性を高めるプリウエット用の処理液である。SOC塗布装置1は、これらSOC膜形成用の塗布液及びシンナー中の異物を光学的に検出するための異物検出ユニット2を備えている。以下、特段の記載が無い場合、塗布液という記載はSOC膜形成用の塗布液を意味する。
【0009】
ノズル11A~11Lには、処理液が通流する供給路を形成する処理液供給管12(12A~12L)の下流端が接続されている。処理液供給管12A~12Kの上流端は、バルブV1を介して処理液供給部13A~13Kに夫々接続されている。処理液供給部13(13A~13K)は、各々塗布液が貯留されるボトルと、当該ボトルから塗布液をノズル11A~11Kに各々圧送するポンプと、を備えている。処理液供給部13A~13Kに貯留される塗布液の種類は互いに異なり、ウエハWには11種類の塗布液から選択された1種類の塗布液が供給される。
【0010】
ノズル11Lには処理液供給管12Lの下流端が接続され、処理液供給管12Lの上流端はバルブV1を介して、処理液供給部13Lに接続されている。処理液供給部13Lは、塗布液の代わりに上記のシンナーが貯留されることを除いて、処理液供給部13A~13Kと同様に構成されている。処理液供給管12A~12Lにおけるノズル11A~11LとバルブV1との間には流路形成部14(14A~14L)が介設されている。従って、流路形成部14は、ウエハWに供給される液体が通流する供給路の一部をなす。
【0011】
図2の平面図はSOC塗布装置1について、より詳しい構成の一例を示している。図中21はスピンチャックであり、各々ウエハWの裏面中央部を水平に吸着保持する基板載置部をなす。スピンチャック21は回転機構22(
図2では不図示)に接続されており、塗布液のスピンコートを行うことができるように、ウエハWを保持した状態で回転する。図中23は処理液の飛散を抑えるためにウエハWの側方を囲むカップである。この例では、スピンチャック21、回転機構22及びカップ23の組が横方向に配列されている。
【0012】
図中24は、その先端部においてノズル11A~11Lを支持するアームである。図中25はアーム24の基端部が接続される移動機構であり、カップ23の配列方向に沿って延伸されるガイドレール26に係止されている。移動機構25が移動することで、各ノズル11A~11Lがスピンチャック21に保持されたウエハWの中心部へ処理液を吐出できる位置に移動する。ガイドレール26は各カップ23の奥側に設けられ、このガイドレール26のさらに奥側には、方形で横長の筐体31が設けられている。
【0013】
筐体31の内部を示す縦断側面図である
図3、縦断背面図である
図4、斜視図である
図5を参照して説明を続ける。説明にあたり、筐体31の長さ方向を左右方向とする。筐体31は、本体部32と上蓋33と横蓋34とからなる。上蓋33及び横蓋34は例えばネジなどの固定具により本体部32に取り付けられることで、本体部32に対して着脱自在である。後に詳しく述べるように、筐体31内には左右方向に列をなすように上記の流路形成部14が設けられる。上蓋33はこの流路形成部14の列に対して上方、即ち縦方向に位置する壁部をなし、横蓋34は流路形成部14の列に対して後方に位置する壁部をなす。
【0014】
異物検出ユニット2は、筐体31内に設けられる流路形成部14、光路形成部4、光源51、照明光学系52及び計数部53と、当該筐体31とにより構成される。この異物検出ユニット2の概要を述べておくと、流路形成部14A~14Lのうちの選択された一つに向けて光を照射し、その結果、選択された流路形成部14から発せられた光を受光素子により受光できるように構成されている。そして、この受光によって光を発した流路形成部14を流れる液体である処理液中の異物の検出が行われる。
【0015】
以降の筐体31内の説明で用いる左側、右側とは夫々、前方から後方に向かって見たときの左側、右側であるものとする。従って、背面図である
図4中で右側に配置されるものは左側に配置されていることになる。筐体31内の前方寄り且つ右側寄りの位置には、既述したように流路形成部14A~14Lが左右に、直線状に列をなして設けられている。流路形成部14A~14Lは互いに若干の間隔を空けて配置され、筐体31の本体部32に対して各々固定されている。流路形成部14A~14Lは各々同様に構成されており、代表して
図3に示す流路形成部14Aについて説明する。流路形成部14Aは角型で六面体のブロック状に形成されており、異物の光学的な検出を行うために後述のレーザー光が透過できるように石英又はサファイアによって構成されている。
【0016】
流路形成部14A内には流路15が形成されている。流路15は下流側に向かって順に連接されると共に、各々流路形成部14Aの辺に沿って各々形成された第1流路16、第2流路17、第3流路18により構成されている。第1流路16は下流側が後方へ向かって水平に伸び、第2流路17は下流側が上方へ向かって垂直に伸び、第3流路18は下流側が前方へ向かうように水平に伸びている。また、第1流路16の上流端は流路形成部14Aへの処理液の入口16A、第3流路18の下流端は流路形成部14Aからの処理液の出口18Aを夫々形成している。従って、第1流路16と第2流路17とは互いに直交し、第3流路18は第2流路17と出口18Aとをつなぐ構成とされている。
【0017】
そして、入口16A及び出口18Aは、共に流路形成部14Aの前端面に開口しているため、同一面に設けられている。また、流路形成部14Aに含まれる第1の流路16、第2の流路17、第3の流路18を各々部分流路とすると、複数の部分流路が互いに交差している。また流路形成部14Aの下面、上面には、後述するように縦方向に照射されるレーザー光の光路上に、反射防止膜9が設けられている。
【0018】
上記の第1流路16の入口16Aには配管55の下流端が、第3流路18の出口18Aには配管54の上流端が夫々接続されており、流路形成部14Aの流路15を介して配管55から配管54へ処理液が通流する。これらの配管54、55は、
図1で説明した処理液供給管12Aを構成しており、可撓性を有し、レーザー光を透過しないという点が流路形成部14Aとは異なる。配管55の上流側及び配管54の下流側は、筐体31の前方壁を貫通して、筐体31の外部へ引き出されている。
【0019】
ところで流路形成部14A~14Lの流路15については、15A~15Lとして示す場合が有る。上記のように流路形成部14A~14Lは左右に列をなすため、この流路15A~15Lも左右に列をなしている。
図5では表示を省略しているが、流路形成部14B~14Lにも流路形成部14Aと同様に配管54、55が接続されている。そのように流路形成部14B~14Lに接続される各配管54、55によって、
図1で示した処理液供給管12B~12Lが構成される。
【0020】
流路形成部14A~14Lの列の左側(
図4の表示では右側)に向かって、照明光学系52、光源51が、この順に設けられている。光源51は照明光学系52に向かい、流路形成部14A~14Lの列方向に沿って異物を検出するための近赤外線であるレーザー光を照射する。本明細書において近赤外線とは、波長が750nm~1.4μmの光であり、近赤外線を照射することは、ピーク波長がこの波長の範囲に含まれる光を照射することである。後に検証試験としても述べるが、光源51から、ピーク波長が830nm以上である近赤外線を照射することが好ましく、940nm以上であるとより好ましい。本実施形態では当該ピーク波長が940nmであるものとする。以下、照射した光の波長についての記載は、特段の記載がない場合にはピーク波長のことを指すものとする。
【0021】
照明光学系52は例えば複数のコリメータを含む。
図4及び後述の
図7では、照明光学系52内の構成を簡略化して示しており、コリメータを構成する一部のレンズ521、522のみを示している。光源51から照射されたレーザー光は、そのビームの断面が照明光学系52により整形されてさらに右側へと照射され、後述の反射部44に照射される。例えば上記のレンズ521、522における光の入射面、照射面の各々に反射防止膜9が設けられている。
【0022】
また、例えば照明光学系52は、反射部44へ向かう光路を開閉するシャッタを含む。シャッタにより、異物の検出を行わないときにはレーザー光が遮蔽され、流路形成部14A~14Lへの光照射が行われない。なお、異物の検出を行わないときは、光源51のレーザーを発生させるための出力を落としてもよい。このように必要最小限の出力制御を行うことで、光源51からの発熱量を低減させて周囲への熱影響を抑えながら、光源51の性能劣化も抑えて長期間の使用が可能となる。
【0023】
続いて光路形成部4について説明する。光路形成部4は、スライド台41、ガイドレール42、移動機構43、反射部44、集光レンズ45、支持部46、検出光学系47、受光部48及び吸光部56を備えており、これらが一体のユニットとして構成されている。スライド台41は、流路形成部14A~14Lの列よりも後方側にその後端部が位置しており、その前端部は当該流路形成部14A~14Lの列の下方に位置している。そして、スライド台41は当該スライド台41の下方に設けられるガイドレール42に係止されており、ガイドレール42は左右に延伸されている。ガイドレール42の後方に移動機構43が設けられ、スライド台41は当該移動機構43に接続されている。移動機構43により、ガイドレール42の長さ方向、即ち左右方向に沿ってスライド台41が移動する。スライド台41上の前端部には第1の投光部をなす反射部44と、集光レンズ45とが設けられ、集光レンズ45は反射部44の上方に位置している。なお、
図5では集光レンズ45の図示を省略している。反射部44、集光レンズ45及び既述の照明光学系52は、前段側光路形成部をなす。
【0024】
スライド台41上の後端部から、立て板状の支持部46が上方に伸びるように形成される。支持部46には受光側光路形成部をなす検出光学系47と、受光素子である受光部48とが後方に向かって、この順に設けられる。検出光学系47はレンズ及びBPF(バンドパスフィルタ)49を含み、後述のように検出光学系47に入射した光は集光され、BPF49を通過して受光部48に照射される。BPF49については後に詳しく述べる。また、支持部46の上端部は前方に向かって伸び出してアーム57を形成しており、当該アーム57の先端部にビームダンパである吸光部56が設けられている。
【0025】
移動機構43により、スライド台41、反射部44、集光レンズ45、検出光学系47、受光部48及び吸光部56は、一体で流路形成部14A~14Lの配列方向(左右方向)に沿って移動する。検出光学系47及び受光部48は、このように移動する際に、各流路形成部14A~14Lの各流路16に対向する高さに配置されている。また、吸光部56は、流路形成部14A~14Lのうち光が照射される流路形成部14を挟んで反射部44に対向するように配置されている。
【0026】
また図示してはいないが、移動機構43は流路形成部14と受光部48との距離を変えて、流路形成部14から受光部48で光を受光するまでの受光距離を調整するように構成されていてもよい。より具体的には、流路形成部14に対して少なくとも検出光学系47と受光部48とを、流路形成部14の配列方向とは別方向に相対移動可能とする機構を備えていてもよい。即ち、流路形成部14A~14Lの各々について受光距離が設定され、一の流路形成部14に投光する際にその流路形成部14について設定された受光距離になるように検出光学系47及び受光部48の位置が調整される。これにより、複数の流路形成部14にて製作や組付けによる形状や位置のばらつきが有ることで、各流路形成部14から受光部48に向かう光の焦点が前記配列方向に揃っていない場合も、各流路形成部14の焦点に合わせるように受光距離を調整することができる。それにより、より精度の高い異物の検出が可能となる。
【0027】
図示した異物検出ユニット2の説明に戻る。上記のように、流路形成部14A~14Lのうち選択された一つにおいて異物の検出が行われる。この異物の検出を行う際には、反射部44及び集光レンズ45は選択された流路形成部14に対応する位置である当該流路形成部14の垂直下方に位置する。そして、検出光学系47及び受光部48は、選択された流路形成部14に対応する位置である当該流路形成部14の後方に位置する。また、吸光部56は当該流路形成部14の垂直上方に位置する。なお、
図3、
図4は、流路形成部14Aが選択された流路形成部14であるときの各部の配置を示している。
【0028】
図3中の一点鎖線の矢印は光路を示している。同様に一点鎖線の矢印で光路を示す
図6、
図7の模式図も参照しながら説明する。照明光学系52を介して光源51から照射されるレーザー光が反射部44により反射されて上方、即ち縦方向へと向かい、集光レンズ45を通過する。そして、当該レーザー光は、流路形成部14Aの下面に形成された反射防止膜9を通過し、第1流路16に、当該第1流路16における処理液の流れ方向に対して垂直に入射し、この第1流路16において、比較的エネルギーの高い集光スポットである反応領域40が形成される。このように反射部44にて反射されて反応領域40を通過するレーザー光の光軸は、前後方向から見ると斜めに上方に向かい、第1流路16以外の流路、即ち第2流路17及び第3流路18を通らないように形成される。そして、このように流路形成部14Aを透過したレーザー光は、流路形成部14Aの上面の反射防止膜9を通過し、吸光部56に照射されて吸収される(
図3、
図7参照)。この流路形成部14Aに塗布液が通流する間に、このように光路が形成されて反応領域40が形成される。そして、塗布液の流れに乗って異物Pが当該反応領域40に進入すると散乱光が発生する。
【0029】
そして、この散乱光のうち検出光学系47に入射したものは、BPF49を通過して受光部48に照射される。つまり、受光部48には、流路形成部14の第1流路16から第2流路17側(後方側)に向かう側方散乱光が照射され、
図6ではこの側方散乱光を二点鎖線で示している。このように受光部48に照射される散乱光の強度は異物Pの大きさ(粒子径)に対応しており、受光部48は光電変換を行い、受光した側方散乱光の強度に応じた強度の電気信号を出力する。なお、選択されている流路形成部14が14Aである場合について示したが、他の流路形成部14B~14Lが選択されている場合にも同様に光路が形成され、散乱光が受光部48に照射される。
【0030】
光源51から流路形成部14の反応領域40に至るレーザー光の光路に設けられた各反射防止膜9により、レーザー光が当たった部位での迷光の発生が低減されるため当該レーザー光の減衰が抑制される。つまり各レンズの透過方向、反射部(ミラー)の正反射方向における光の強度を高くすることができる。後述する理由により、レーザー光としては近赤外線を用いるため、当該レーザー光のエネルギーは比較的低い。従って、このように反射防止膜9によりエネルギーのロスを抑えることは、反応領域40にて発生する散乱光の強度を十分に確保して測定精度を高くするにあたって、有効である。
【0031】
また、後段側光路形成部をなす流路形成部14の上面、即ち、反応領域40から吸光部56に至るまでのレーザー光の光路にも反射防止膜9を設けている。この反射防止膜9及び上記の反応領域40に至るまでの光路における各反射防止膜9により、レーザー光の光路を形成するための各部材で乱反射した光が迷光として受光部48に導光されて受光部48から出力される検出信号中にノイズを発生させることが防止される。従って、測定精度が高まるように各反射防止膜9が設けられている。なお、各部材における反射防止膜9の形成方法は任意であるが、例えば蒸着などの表面処理によって形成されている。
【0032】
BPF49としては、通過帯域として光源51から照射されるレーザー光の波長と同一波長(この場合は940nm)を含む。従って、上記した受光部48に照射される散乱光はレイリー散乱光である。このBPF49は、例えば反応領域40で発生した蛍光などのレーザー光の波長よりもエネルギーが低い長波長成分をカットすることで、検出信号におけるノイズの発生を防ぐ。つまりSN比(信号ノイズ比)を上昇させ、異物の検出を示す信号のピークとバックグラウンド信号との差を大きくし、信頼性の高い異物の検出が可能となるようにしている。例えば当該BPF49については半値全幅が10nm以下の狭帯域フィルタであり、その中心波長は上記のレーザー光の波長と同一、即ち940nmである。
【0033】
図3~
図5を用いた筐体31内の説明に戻る。照明光学系52及び光源51の前方に、計数部53が設けられている。計数部53は例えばCPUなどが搭載された基板を備えている。例えば計数部53は、図示しないケーブルにより受光部48に接続されており、受光部48から上記の電気信号を受信し、当該電気信号に基づいて異物の検出を行う。この異物の検出としては、例えば異物の計数や分級が含まれ、計数部53はその検出結果に相当する検出信号を、SOC塗布装置1を構成する制御部100に出力する。なお、上記の分級は、所定の大きさの範囲毎に異物の計数を行うことである。
【0034】
続いて、
図1、
図3に示すSOC塗布装置1を構成する制御部100について説明する。制御部100はコンピュータにより構成され、例えば上記の計数部53は、この制御部100に接続されている。制御部100は、不図示のプログラム格納部を有している。このプログラム格納部には、ウエハWに対するレジスト膜の成膜と、異物の検出とが行われるように命令(ステップ群)が組まれたプログラムが格納されている。当該プログラムによって、制御部100からSOC塗布装置1の各部に制御信号が出力されることで、後述の各動作が行われる。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカードまたはDVDなどの記憶媒体に収納された状態でプログラム格納部に格納される。
【0035】
続いて
図8のタイミングチャートを参照しながら、上記のSOC塗布装置1において行われるウエハWの処理及び異物の検出について説明する。このタイミングチャートでは、13A~13Lのうちの一の処理液供給部13におけるポンプの圧力が整定されるタイミング、及び12A~12Lのうちの一の処理液供給部13に対応する処理液供給管12のバルブV1が開閉するタイミングを示している。また、このタイミングチャートは、照明光学系52のシャッタが開いて光路形成部4にレーザー光が照射されるタイミング、光路形成部4を構成する各部が移動するタイミング、計数部53が受光部48から取得される信号を受信して異物の検出を行うタイミングについても示している。
【0036】
先ず、図示しない基板搬送機構によりウエハWがスピンチャック21上に搬送されて、当該スピンチャック21に保持された状態で、ノズル11LがウエハW上に搬送されると共に、処理液供給部13Lのポンプがシンナーの吸引を行い、当該ポンプ内が所定の圧力となるように整定が開始される(時刻t1)。例えばこのノズル11Lの移動及びポンプの動作に並行して、光路形成部4のスライド台41が移動する。そして反射部44、集光レンズ45は流路形成部14Lの下方に、検出光学系47及び受光部48は流路形成部14Lの後方に、吸光部56は流路形成部14Lの上方に夫々位置する。
【0037】
続いて、ノズル11LがウエハW上で静止する(時刻t2)。続いて処理液供給管12LのバルブV1が開かれ、ポンプからシンナーがノズル11Lへ向けて圧送される。このシンナーの圧送と共に、光源51から反射部44へ向けてレーザー光が照射され、このレーザー光は、
図3、
図4などで説明したように反射部44により反射して上方へ向かい、流路形成部14Lに反応領域40が形成される(時刻t3)。そして、上記の流路形成部14Lに形成された反応領域40に異物が進入すると散乱光が生じ、この散乱光が検出光学系47を介して受光部48に照射される。
【0038】
その一方で圧送されたシンナーは流路形成部14Lの流路15を通過し、ノズル11LからウエハWの中心部へ吐出される。そして、所定の開度になるとバルブV1の開度の上昇が停止する(時刻t4)。その後、流路15の液流が安定すると、計数部53による受光部48からの信号取得が開始され、異物の検出が行われる。続いて計数部53による受光部48からの信号取得が停止し(時刻t6)、光源51からの光照射が停止すると共に処理液供給管12LのバルブV1が閉じられ(時刻t7)、ウエハWへのシンナーの吐出が停止する。ウエハWが回転し、吐出されたシンナーは、遠心力によりウエハWの周縁部に展伸されてプリウエットが行われる。
【0039】
続いて、処理液供給部13A~13Kのうちのいずれかに貯留された塗布液がウエハWに供給される。ここでは処理液供給部13Aの塗布液がウエハWに供給されるものとする。そのように処理液供給部13Aの塗布液をウエハWに供給する際には、ノズル11Lの代わりにノズル11AがウエハW上に位置し、処理液供給部13Lからシンナーがノズルへ供給される代りに処理液供給部13Aから塗布液がノズルへ供給される。また、処理液供給管12LのバルブV1の代わりに処理液供給管12AのバルブV1が開閉する。さらに、光路形成部4を構成する各部は、流路形成部14Lに対応する位置に移動する代わりに、流路形成部14Aに対応する位置に移動し、流路形成部14Aに光路が形成される。
【0040】
このような差違を除いて、シンナーのウエハWへの供給時と同様、
図8のタイミングチャートに沿って各部が動作する。それにより、塗布液のウエハWへの供給に並行して、当該塗布液中の異物の検出が行われる。そして、ウエハWの回転によりウエハWに供給された塗布液は、当該ウエハWの表面にスピンコートされて、SOC膜が形成される。その後、ウエハWは基板搬送機構によりスピンチャック21から搬送される。
【0041】
ところで、既述のSOC塗布装置1で光源51が近赤外線を照射する理由について説明するにあたり、従来技術の問題を説明する。既述した特許文献2に記載されているように流体の流路に光を照射することで流体中の異物を光学的に検出する装置が公知となっている。そのように流体に対して照射する光としては、目視可能で扱いやすいことから可視光を用いることが考えられる。
【0042】
しかしそのように可視光を照射して検出を行うにあたり、例えば上記の塗布液のような有色の液体に対しては、十分な精度をもって異物を検出できないおそれがあることが、本出願人により確認された。これは有色、即ち吸光性が比較的高い液体に対して可視光が吸収されてしまうことによる。さらに詳しく説明すると、仮にSOC塗布装置1において流路形成部14に可視光を照射して検出を行う場合、SOC膜形成用の塗布液に可視光が吸収される。その結果、流路形成部14にて発生する散乱光の強度も弱まってしまうおそれが有ることで、検出精度が低下してしまう。
【0043】
そこでSOC塗布装置1では、既述したように近赤外線を照射する。後に実験結果を示すが、近赤外線については液体が有色であっても、その吸収性が比較的低い。従って、SOC塗布装置1では、上記の塗布液について異物の検出を行う際に、流路形成部14にて生じる散乱光についての強度が確保され、精度高く異物を検出することができる。なお、SOC塗布装置1で用いられるシンナーは無色であるが、そのような無色の液体に対しても塗布液のような有色の液体と同様に、近赤外線の照射により異物を検出することができる。従って、このSOC塗布装置1としては、より多くの種類の液体に対して異物の検出が行えるように構成されている。なお、流路形成部14に照射するレーザー光として波長が長いものほど、液体による吸収が抑制されるが、散乱光の強度は励起光の波長の4乗に反比例するため、当該レーザー光の波長が長すぎると散乱光の強度が弱まることで、検出精度が低下する。従って、レーザー光としては近赤外線よりも波長が長い中赤外線等は用いず、当該近赤外線を用いることが好ましい。
【0044】
また、液体へのレーザー光の吸収量が多いほど高い熱が発生し、流路形成部14の内面がその熱によって損傷する懸念がある。上記のようにレーザー光として近赤外線を照射することで塗布液による吸収を抑制することは、その発熱を抑え、流路形成部14の損傷を防止することができる。また、その発熱が抑制されることで、塗布液の変質も防止することができる。
【0045】
また、流路形成部14を挟んで反射部44と対向する位置には、吸光部56が設けられている。従って、流路形成部14を透過したレーザー光が筐体31の壁面に照射され、その反射光が受光部48に入射することを防ぐことができるため、受光部48の出力信号におけるノイズをより低減して異物の検出精度を高くすることができる。吸光部56は筐体31内に流路形成部14毎に設けてもよいが、既述のように流路形成部14の列に沿って吸光部56が移動し、当該吸光部56が各流路形成部14に共用される構成とすることで製造コストを低減することができるため好ましい。なお吸光部56を設ける代りに、例えば筐体31の天井面(上蓋33の下面)について、レーザー光を吸収できるように構成してもよい。具体的には、当該天井面にレーザー光を吸収する塗料が塗布された構成としてもよい。また、その場合は光を吸収した上蓋33の温度上昇を防ぐために、当該上蓋33に冷却部材として、例えば筐体31の外側へ突出する放熱用のフィンを設けてもよい。
【0046】
ところで筐体31については、横倒しにしたり、逆さにしたりしてもよい。即ち、流路形成部14を基準とした各部の位置については、上記の位置となることに限られない。具体的には、流路形成部14に対して、受光部48が縦方向に、反射部44が横方向に夫々位置するような配置であってもよいし、各流路形成部14が縦方向に配列されてもよい。
【0047】
さらに散乱光を受光して異物の検出を行うにあたり、流路形成部14、投光部、受光部48の位置関係については各図で示した具体例に限られるものでは無い。三次元座標を示す
図9を参照して、この位置関係について補足して説明しておく。
図9中の座標軸の原点は、流路形成部14の流路15に形成される上記の反応領域40であるものとする。従って座標のX軸の軸方向は反応領域40から見た左方及び右方、Y軸の軸方向は反応領域40から見た前方及び後方、Z軸の軸方向は反応領域40から見た上方及び下方を示している。上記したように投光部及び受光部48は、流路形成部14を基準とした上下左右前後の領域のうち対向しない領域に設けられる。即ち投光部である反射部44からこの反応領域40に向けて光が照射されて光軸Lが形成されたとき、原点を通過したこの光軸Lの延長方向には、受光部48が設けられていないということである。
【0048】
そのように受光部48が設けられていないことで、既述したように投光部及び受光部が流路形成部を挟む構成となることに起因する異物検出ユニット2の大型化を防ぐことができる。
図9に示す例ではZ軸に沿って反射部44により光軸L(鎖線の矢印で表示している)を形成している。従って、このZ軸上に受光部48が設けられていなければよい。同様に、例えばX軸に沿って反射部44により光軸Lが形成される場合には、このX軸上には受光部48が設けられないことになる。なお、この
図10の説明で投光部を反射部44として説明したが、ここでいう投光部は最終的に反応領域に向かう光路の方向を決定付けるように投光する部材である。従って、例えば、光源51をスライド台41に搭載して、当該光源51から反射部44を介さずに直接、流路形成部14にレーザー光を照射して投光してもよく、その場合、投光部は光源51である。
【0049】
また、流路形成部14に対するレーザー光の照射位置としては既述した例には限られない。ただし、レーザー光の照射によって形成される反応領域40における処理液の流路方向とこの照射方向とが並行すると、流路を流れる異物に光が照射され続けて正確な検出が行えないため、これらの方向が並行にならず、互いに交差するように光照射を行う。なお、ここでいう交差は直交、筋交いを各々含む。また、既述した構成例では流路形成部14において、処理液が下方から上方に向かうように供給しているが、そのような方向に供給することには限られない。
【0050】
また他の流路形成部14の構成例を
図10、
図11に示しており、
図10、
図11は夫々当該流路形成部14の縦断側面図、背面図である。この例では、
図3で説明した例のように、流路形成部14の流路15は、第1流路16、第2流路17及び第3流路18により構成されている。この流路15の下端部は後方へ向けて突出し、第2流路17から見て凸レンズ形状をなすように膨らんだ球面レンズ部19を形成している。また、流路15を構成する部分流路が互いに交差する交差部201、202について、曲率を有する構成とされている。より具体的に説明すると、
図11に示す例では、前方に向かって見た第2流路17の上端部及び下端部についての左右の隅が丸みを帯びることで、当該上端部及び下端部は概ね半円状とされ、既述の曲率を有する交差部201、202として形成されている。
【0051】
このように曲率を有する交差部201、202を設けるのは、流路15の屈曲部において処理液の流れが淀むことを防ぐためである。その淀みによって反応領域40において異物が滞留してしまうと、滞留によりパーティクルが発生するおそれが有るが、交差部201、202を設けることで、そのような不具合が生じることを、より確実に防ぐことができる。また、流路形成部14の後端面の下端部は後方へ向けて突出し、凸レンズ部27を形成している。前後に見て交差部19の中心と凸レンズ部27の中心とは互いに揃っている。この凸レンズ部27や球面レンズ部19は、反応領域40から照射された側方散乱光を、より確実に検出光学系47に導光して、検出精度を高めるために設けられている。
【0052】
ところで流路形成部14に照射されるレーザー光は、例えば波長940nmの近赤外線であるため、目視ができない。そこで、このレーザー光の照射が正常に行われているか否かを検出するための機構を備えるようにし、流路形成部14におけるレーザー光の照射位置やレーザー光の傾きなどの調整が容易に行えるようにしてもよい。
図12は、そのような機構を備えた異物検出ユニット2の構成例を示しており、
図3等で述べた構成との差異点を中心に説明する。
図12の構成例においては、流路形成部14の列の上方に後段側光路形成部としてハーフミラー58が設けられ、図示しない支持部を介してアーム57に固定されている。また、アーム57に対して近赤外線を撮像可能なカメラ59が固定されている。従って、ハーフミラー58及びカメラ59は、移動機構4によって受光部48等と共に、流路形成部14の列に沿って移動可能である。
【0053】
そして、流路形成部14の反応領域40を透過したレーザー光は、ハーフミラー58により吸光部56及びカメラ59の各々に導光される。このレーザー光の照射時にカメラ59による撮像が行われ、画像データが取得される。装置のユーザーは、その画像におけるレーザー光の位置(つまりカメラの視野におけるレーザー光の位置)に基づき、異常の有無の判定を行い、異常である場合には光路形成部4を構成する各部の調整を行うものとする。なお、カメラ59で取得された画像データは制御部100に送信され、制御部100がその画像データに基づいて上記の異常の判定を行い、制御部100に接続されるアラームなどの報知器によりユーザーに異常を報知するようにしてもよい。
【0054】
なおカメラ59は、当該カメラ59への導光が異物の測定へ影響され難い任意の位置に配置することができ、その位置に合わせて光路を形成する部材を設けるものとする。つまり、カメラ59の位置は既述した位置に限られるものではないし、カメラ59へ導光する部材としてもハーフミラー58を用いることには限られない。また、透過光検出部としてはカメラ59により構成されることに限られず、例えばカメラ59の代わりに受光素子を多数並べて配置し、流路形成部14への照射時にいずれの受光素子から検出信号が出力されるかの検出を行うことで、レーザー光の位置についての情報が得られるようにしてもよい。なお、吸光部56が設けられず、流路形成部14の透過光のすべてがカメラ59に向かう構成であってもよい。
【0055】
ところで反応領域40にレーザー光を照射したときに、異物P及び反応領域40を流れる液体の各々から散乱光が生じる。より具体的には、上記の塗布液を各々構成する溶媒及び溶媒に溶けたポリマーからも散乱光が生じる。それらの塗布液の構成成分から生じる散乱光の強度が高いと、異物Pの信号レベルと液体の信号レベルとの差が小さくなる。即ちSN比が小さくなるため、異物Pに対する感度が低下するおそれが有る。
図13に示す構成例は、そのような塗布液の構成成分による散乱光の影響を抑制する。
【0056】
図13の構成例について、
図3等で説明した構成との差異点を中心に説明すると、
図13の構成によれば、検出光学系47による光の照射領域に受光部48が複数並べて設けられている。そして検出光学系47については当該検出光学系47を構成するレンズ470によって、反応領域40の異物Pから生じた散乱光が、受光部48のうち1つ(図中481として表示)に選択的に集光されると共に、流路15における液体の散乱光が各受光素子に各々照射されるように構成されている。受光部481以外の受光部を482として示している。
【0057】
制御部100は、受光部481により取得される信号レベルの時系列データに基づいて異物Pの検出を行う。異物検出部である制御部100は、受光部481から取得した信号レベルの時系列データと、例えば任意の一の受光部482から取得した信号レベルの時系列データとの差分について算出し、得られた差分の時系列データに基づいて異物Pの検出を行う。差分の時系列データは、塗布液の構成成分による散乱光の影響が除かれたものとなるのでSN比が高く、精度高く異物Pの検出を行うことができる。なお、各受光部48からの時系列データについては上記のような比較演算を行うことで異物Pを検出することに限られず、例えば受光部482の時系列データに対してFFT(高速フーリエ変換)を行い、ポリマーに起因する周波数成分の波形を特定した上で、その周波数成分の波形と一の受光部481についての信号レベルの波形との比較を行うことで、異物Pの検出を行ってもよい。そのように受光部48から取得される信号レベルの時系列データは、任意に加工(データ処理)して用いることができる。
【0058】
さらに他の異物検出ユニット2の構成例について、
図14を参照して
図3等の構成との差異点を説明する。この
図14の構成例では、分光器403が設けられ、流路形成部14から発せられた散乱光の光路が、受光部28と分光器403に分岐した構成となっている。検出光学系47においてハーフミラー401が設けられており、散乱光の一部はハーフミラー401を透過して受光部48に照射され、散乱光の他の一部はハーフミラー401で反射して光ファイバー402に入射して分光器403に導光され、スペクトルが取得される。ハーフミラー401及び光ファイバー402は、分岐光路形成部をなす。
【0059】
例えば流路形成部14を通流する塗布液の濃度が基準範囲から外れると、取得されるスペクトルについても変化する。従って、スペクトルを監視することで、当該濃度の異常の有無を監視することができる。また、例えば流路形成部14の上流側の流路が分岐し、SOC膜形成用の塗布液と他の処理液との間で流路形成部14に供給される液体が切替え自在に構成されたとする。そのような構成とした場合に、スペクトルを監視することで当該液体の切替えが正常に行われているか否かを監視するようにしてもよい。これらのスペクトルの監視はユーザーが行ってもよいし、例えば制御部100に分光器403からスペクトルデータが送信されることで、制御部100が基準のスペクトルデータと照合し、異常の有無の判定を行うことで監視を行ってもよい。
【0060】
ところで異物検出ユニット2については、波長が互いに異なると共に少なくとも一方が近赤外線である第1の光と第2の光とを選択して流路形成部14に照射するように構成されてもよい。
図15にそのような構成例を示している。この構成例では、流路形成部14A~14Lに対してレーザーの光源51、照明光学系52及び光路形成部4の組(第1の測定セット)400Aと、レーザーの光源51、照明光学系52及び光路形成部4の組(第2の測定セット)400Bと、が設けられている。以下、第1の測定セット400Aに属する各構成要素については数字の符号の後に「A」、第2の測定セット400Bに属する各構成要素については数字の符号の後に「B」を夫々付して示す。
【0061】
光源51Aについては、
図3等で述べた光源51と同様に構成され、波長が940nmであるレーザー光を照射する。光源51Bについては、例えば波長が532nmの可視光をレーザー光として照射する。光源51A及び照明光学系52Aはガイドレール42の一端側に、光源51B及び照明光学系52Bはガイドレール42の他端側に夫々設けられ、光源51A、51Bとでレーザー光の照射方向は互いに逆向きである。そして移動機構43は、第1の測定セット400Aの光路形成部4A、第2の測定セット400Bの光路形成部4Bを夫々独立して、流路形成部14の列方向に移動させる。なお、光路形成部4Aに設けられる反射防止膜9及びBPF49、光路形成部4Bに設けられる反射防止膜9及びBPF49については、光源51Aのレーザー光の波長に対応したもの、光源51Bのレーザー光の波長に対応したものを夫々用いるものとする。
【0062】
この
図15の各流路形成部14には上流側から、液体として例えば透明なレジスト及びSOC膜形成用の塗布液の一方が供給され、供給される液体が切替え自在に構成されている。第1の測定セット400Aは塗布液中の異物検出用のセット、第2の測定セット400Bはレジスト中の異物検出用のセットである。そして、異物を検出しようとする流路形成部14に供給される液体の種類に応じて、光路形成部4A、光路形成部4Bが、既述した異物の測定を行う位置に移動し、測定を行う。なお、例えば光路形成部4A及び光路形成部4Bのうちの一方が、流路形成部14の列に沿って移動する間、他方はその移動に干渉しないように、流路形成部14の並びから左右に外れた位置にて待機する。図中点線で光路形成部4Bの待機位置を示しており、光路形成部4Aについては待機位置にて待機する状態を示している。
【0063】
上記のように本実施形態で使用するレジストは透明であることから、照射するレーザー光の波長が低くても当該レーザー光に対する吸収性が低い。そして波長が低ければ散乱光の強度を高くすることができるので、異物の検出精度を高くすることができる。つまり、本実施形態によれば、液体の種類に応じて照射するレーザー光の波長を変更することで、塗布液、レジストの各々について異物の検出精度が高くなるように構成されている。
【0064】
また後述するように、薬液の異なる複数の基板処理装置に共通の異物検出ユニット2を設ける構成とされる場合が有る。その場合に夫々の基板処理装置にて基板の処理を夫々並行して実施する場合がある。しかし、そのような場合であっても、この
図15に示すように複数の測定セットを設けることで、一の流路形成部14、他の流路形成部14について互いに独立して検出を行うことができる。従って、この異物検出ユニット2においては、2つの流路形成部14に対して同時に光を照射して異物を検出することができる。また、2つの流路形成部14間で間断無く光を照射する、つまり一の流路形成部14への光照射を停止すると同時に他の流路形成部14への光照射を開始して、各流路形成部14において異物を検出することもできる。なお、上記の測定セットについては、3つ以上設けられていてもよい。
【0065】
さらに他の構成の異物検出ユニット2について説明する。この異物検出ユニット2は、
図15で説明した構成と同じく、塗布液及びレジストの夫々における異物を検出可能に構成されている。この異物検出ユニット2における光源51は、レーザー光の波長を変更できる波長可変型の光源として構成されており、塗布液中の異物検出時、レジスト中の異物検出時に夫々既述した波長のレーザー光を照射する。そして、
図3等と同様に光路形成部4及び照明光学系52は一つずつのみ設けられる。光路形成部4、照明光学系52、流路形成部15に設けられる各反射防止膜9については、比較的広い波長帯域に対応したものを使用するものとする。
【0066】
そして本実施形態では、BPF49としては塗布液中の異物検出時のレーザー光に対応するもの(第1のBPF49A)、レジスト中の異物検出時のレーザー光に夫々対応するもの(第2のBPF49B)が夫々設けられ、互いに切り替えて用いられる構成とされる。第1のBPF49A、第2のBPF49Bは、
図16に示すように受光部48の受光領域に重なり、左右方向(流路形成部14A~14Lの列に沿った方向)に並んで配置されている。既述の各例と同様、受光部48と検出光学系47との相対的位置は固定されている。即ち、第1のBPF49A、第2のBPF49Bは、受光部48と共に移動機構43によって一体で移動する。
【0067】
第1のBPF49Aは、
図3等で述べた異物検出ユニット2に設けられるBPF49と同様の構成である。第2のBPF49Bについて、その通過帯域は、第1のBPF49Aの通過帯域とは異なっており、レジストに対する異物検出を行う際のレーザー光の波長である532nmが含まれる。つまり、レイリー散乱光が通過するように構成されている。例えば、第2のBPF49Bは半値全幅が10nm以下の狭帯域フィルタであり、その中心波長はそのレジストに対する異物検出時のレーザー光の波長と同一の波長、即ち532nmである。
【0068】
上記のように第1のBPF49A、第2のBPF49Bが設けられることで、受光部48は左右の一方または他方で散乱光を受光する。
図17、
図18を参照して具体的に説明する。塗布液中の異物を検出するために940nmの波長のレーザー光を用いるときには、
図17に示すように第1のBPF49Aが、検出を行う流路形成部14の後方に位置するように検出光学系47及び受光部48を位置させる。それにより、流路形成部14で生じた散乱光が第1のBPF49Aを通過して、受光部48の右側に照射されて検出が行われる。レジスト中の異物を検出するために532nmの波長のレーザー光を用いるときには、
図18に示すように第2のBPF49Bが、検出を行う流路形成部14の後方に位置するように検出光学系47及び受光部48を位置させる。それにより、流路形成部14で生じた散乱光が第2のBPF49Bを通過して、受光部48の左側に照射されて検出が行われる。
【0069】
なお、異物検出ユニット2では、検出光学系47及び受光部48の移動に伴って流路形成部14におけるレーザー光の照射位置、即ち反応領域40の位置も移動する構成となっている。つまり反応領域40、検出光学系47及び受光部48の位置関係は変化しない。そのため流路形成部14を反応領域40で生じた散乱光を集光して照射するレンズとして構成する。そして、例えば流路形成部14における反応領域40の位置の移動に応じて、第1のBPF49A側に散乱光が集光されて照射されるか、第2のBPF49B側に散乱光が集光されて照射されるかが変化するように、当該流路形成部14を設計するものとする。
【0070】
このように
図16~
図18で示した実施形態においては、異なる種類の液体中の異物を検出するために第1のBPF49A、第2のBPF49Bを切り替えて用いるにあたり、フィルタの切り替え機構として光路形成部4の各構成要素を移動させる移動機構43を利用している。つまりフィルタの切り替え専用の機構を設けなくても、移動機構43(第1の相対位置移動機構)により、流路形成部14と、第1のBPF49A及び第2のBPF49Bとの相対位置を移動させることで、この切り替えを行っている。そのように切り替え専用の機構を不要とすることで、装置の製造コストの抑制やメンテナンスの手間の削減を図ることができる。ただし、その相対位置を移動させる専用の移動機構を設けてもよい。
【0071】
ところで液体にレーザー光を照射したときに、粒子から生じる散乱光の強度は、理論的には粒子径の6乗に比例する。従って、液体中に含まれる粒子の大きさの差が大きい場合、受光部48から出力される検出信号のレベルの変移が大きくなる。しかしながら受光部48からの信号を受信する計数部53においては、計測可能な信号レベルの範囲が一定であり、この計測可能な範囲から外れる場合には、アンプや減衰器を設けて計数部53に入力される信号レベルを、当該計測可能範囲に合わせこむ必要がある。そして、上記の散乱光の強度の差が大きすぎる場合には、検出信号を計数部53の計測可能範囲に合わせこむための上記のアンプや減衰器を、散乱光の強度の範囲ごとに複数設けることになり、異物検出ユニット2に組み込まれる回路規模が大型化してしまう懸念がある。
【0072】
そのような回路規模の増大を防ぐために、
図19に示す例では受光部48に重なるように、減光率が互いに異なる第1~第3の減光フィルタ491~493を設けた構成としており、検出する粒子の大きさに合わせて、受光部48に向かう散乱光が通過する減光フィルタ491~493を切り替える。より具体的に述べると、
図16~
図18で示した第1及び第2のBPF49A、49Bの代わりに、第1~第3の減光フィルタ491~493が設けられており、左右に順に並べられている。減光率については、第1の減光フィルタ491<第2の減光フィルタ492<第3の減光フィルタ493である。
【0073】
そして大粒子の異物Pを検出する場合には、強度の高い散乱光が発せられることから、当該散乱光が第3の減光フィルタ493を通過するように、当該第3の減光フィルタ493を、測定を行う流路形成部14の後方に位置させる(
図20)。中程度の大きさの粒子の異物Pを検出する場合には、中程度の強度の散乱光が発せられることから当該散乱光が第2の減光フィルタ492を通過するように、当該第3の減光フィルタ492を、測定を行う流路形成部14の後方に位置させる(
図21)。小粒子の異物Pを検出する場合には、強度の低い散乱光が発せられることから当該散乱光が第1の減光フィルタ491を通過するように当該第1の減光フィルタ491を、測定を行う流路形成部14の後方に位置させる(
図22)。
【0074】
このように検出目標とする異物Pの大きさに合わせて、異物Pから発生する散乱光が通過する減光フィルタ491~493を切り替える。つまり散乱光の減光率を切り替える。それにより、検出目標となる異物の信号レベルは、上記した計数部53の計測可能範囲に収まる。従って既述したように回路規模の増大を抑制することができる。
【0075】
この
図19~
図21で述べた実施形態の装置により各減光フィルタ491~493を通過する散乱光を夫々測定し、小さい異物Pから大きい異物Pまで検出するようにしてもよいし、あるいは、目標とする異物Pの大きさを決めて、異物Pの大きさに応じた減光フィルタ491~493のみに散乱光を通過させて測定を行うようにしてもよい。
【0076】
そして、この実施形態においては、使用する減光フィルタを切り替えるにあたり、フィルタの切り替え機構として光路形成部4の各構成要素を移動させる移動機構43を利用している。従ってフィルタの切り替え専用の機構を設けなくても、移動機構43(第2の相対位置移動機構)により、流路形成部14と、減光フィルタ491~493との相対位置を移動させることで、この切り替えを行っている。そのように切り替え専用の機構を不要とすることで、装置の製造コストの抑制やメンテナンスの手間の削減を図ることができる。ただし、切り替え専用の機構を設けてもよい。
【0077】
受光部48全体を覆うように減光フィルタを設けた例を示したが、一部のみを覆うようにし、減光フィルタを通過させた光を受光して検出する場合と、減光フィルタを通過させずに光を検出する場合とを切り替えるように構成してもよい。また、
図16~
図18で示した実施形態と組み合わせて、バンドパスフィルタと減光フィルタとが受光部48に重なって設けられていてもよい。
【0078】
この
図19~
図22にて説明した散乱光を透過させる減光フィルタ491~493を切り替える構成は、近赤外線以外の波長のレーザー光を用いる異物検出ユニット2に適用してもよい。そのような装置においても、受光部48にて検出される検出信号の範囲を狭くすることができる。従って検出信号を計数部53の計測範囲に合わせこむアンプ、減衰器の数の削減を図ることができ、既述した回路規模の大型化を抑制することができる。
なお、このように減光フィルタを設ける場合においても例えばBPF49A、49Bを設ける場合と同様に流路形成部14が構成される。つまり反応領域40の位置に応じて集光された光の照射方向が変化するように構成される。
【0079】
なお、
図15~
図22の各例で流路形成部14に供給される液体が塗布液とレジスト液との間で切り替えられるように述べてきたが、そのように切り替わることには限られない。例えば、複数の流路形成部14のうちの一部の流路形成部14に塗布液が供給され、他の一部の流路形成部14にレジスト液が供給される。そして流路形成部14に応じて使用するレーザー光の波長、BPF等が選択されるようにしてもよい。
【0080】
なお、散乱光を利用して異物を検出する構成例について述べてきたが、そのような構成とすることには限られず、透過光を用いて異物の検出を行ってもよい。その場合には、投光部と受光部とを流路形成部14を挟んで対向させ、流路形成部14を透過したレーザー光(即ち、流路形成部14に光照射して流路形成部14から発せられた光である)を受光し、その透過光に基づいて異物の検出を行うようにする。
【0081】
続いて、上記のSOC塗布装置1が含まれる基板処理システムの一例である塗布、現像装置7について、
図23の平面図及び
図24の縦断側面図を参照しながら説明する。塗布、現像装置7は、ウエハWの表面への塗布液の塗布によるSOC膜の形成と、レジスト塗布によるレジスト膜の形成と、露光後のレジスト膜の現像によるレジストパターンの形成と、を行う。キャリアブロックB1と、検査ブロックB2、多目的ブロックB3、処理ブロックB4と、インターフェイスブロックB5と、を横方向に直線状に接続して構成されている。これらの各ブロックB1~B5は各々筐体を備えており、互いに区画されている。図中B6は露光装置であり、インターフェイスブロックB5に接続されている。
【0082】
キャリアブロックB1の載置台71に載置されたキャリアC内のウエハWは、搬送機構73により、キャリアCと検査ブロックB2との間で受け渡される。図中72は、キャリアブロックB1の隔壁及びキャリアCの蓋を開閉する開閉部である。検査ブロックB2は、レジストパターン形成後のウエハWを検査する検査モジュール74と、多目的ブロックB3と、処理ブロックB4との間でウエハWを受け渡すための受け渡しモジュールTRSと、を備える。
【0083】
多目的ブロックB3は、処理ブロックB4を構成する各単位ブロックE1~E6と、検査ブロックB2との間でウエハWを受け渡すための受け渡しモジュールTRSを多数備える。この多数の受け渡しモジュールTRSは互いに積層され、タワーT1を構成している。また、タワーT1を構成する各モジュールに対して、ウエハWを受け渡すために昇降自在な搬送機構70が設けられている。
【0084】
処理ブロックB4は、ウエハWに液処理を行う単位ブロックE1~E6を下方から順番に積層して構成されており、単位ブロックE1~E6では互いに並行してウエハWの搬送及び処理が行われる。単位ブロックE1とE2、E3とE4、E5とE6が夫々互いに同様に構成されている。
図23では単位ブロックE1を示しており、代表してこの単位ブロックE1について説明する。当該単位ブロックE1には、多目的ブロックB3側からインターフェイスブロックB5側へ向かって伸びる搬送領域76が設けられている。この搬送領域76に、上記のタワーT1を構成する各モジュール及び処理ブロックB4を構成する各モジュールに対してウエハWを搬送する搬送機構F1が設けられる。この搬送領域76の長さ方向に向かって見て、左右の一方側には加熱モジュール79が設けられ、左右の他方側にはSOC塗布装置1の設置領域77、78が設けられる。なお、ここでいう左右は、異物検出ユニット2の説明で用いた左右と必ずしも一致しない。
【0085】
設置領域77、78は、搬送領域76の長さ方向に沿って配置されている。そして、設置領域77、78には、上記した2つのカップ23、2つのスピンチャック21、ノズル11A~11Lを支持するアーム24、移動機構25及び異物検出ユニット2を構成する筐体31が各々設けられている。つまり、単位ブロックE1には、基板載置部とノズルとの組が、複数設けられる。上記のカップ23は搬送領域76の長さ方向に沿って列をなして配置されている。また、筐体31はカップ23の列から見て、搬送領域76の反対側に設けられている。なお、ノズル11A~11Lに接続される処理液供給管12A~12L及び処理液供給部13A~13Lについては、設置領域77、78から多目的ブロックB3へと引き回されており、当該多目的ブロックB3に設けられる処理液供給部13を構成するポンプに接続されている。
【0086】
単位ブロックE3、E4は、設置領域77、78にレジストを供給してレジスト膜の形成を行うレジストモジュールが設置されることを除いて、単位ブロックE1、E2と同様に構成されている。レジストモジュール(レジスト塗布装置)はウエハWにレジスト液を供給すること、既述したように検査用のレーザー光の波長等がレジスト液に対応したものであることを除いて、SOC塗布装置1と同様の構成である。単位ブロックE5、E6は、設置領域77、78に現像液を供給して現像を行う現像液モジュールが設置されることを除いて、単位ブロックE1、E2と同様に構成されている。また、
図24において、単位ブロックE2~E6における単位ブロックE1の搬送機構F1に相当する搬送機構を、F2~F6として示している。
【0087】
インターフェイスブロックB5は、単位ブロックE1~E6に跨って上下に伸びるタワーT2、T3、T4を備えている。タワーT2は各単位ブロックE1~E6に対応する高さに設けられた受け渡しモジュールTRSを備え、上記の搬送機構F1~F6が対応する各高さの受け渡しモジュールTRSにウエハWを搬送する。また、インターフェイスブロックB5には、タワーT2とタワーT3に対してウエハWの受け渡しを行うための昇降自在な搬送機構81と、タワーT2とタワーT4に対してウエハWの受け渡しを行うための昇降自在な搬送機構82と、タワーT2と露光装置B6の間でウエハWの受け渡しを行うための搬送機構83と、が設けられている。タワーT3、T4に設けられるモジュールについては記載を省略する。
【0088】
この塗布、現像装置7におけるウエハWの搬送経路について説明する。ウエハWは、キャリアCから搬送機構73により、検査ブロックB2の受け渡しモジュールTRSに搬送され、然る後、搬送機構75を介して多目的ブロックB3のタワーT1の受け渡しモジュールTRS0に搬送される。ここからウエハWは、搬送機構70により単位ブロックE1、E2に振り分けられて搬送される。
【0089】
振り分けられたウエハWは、受け渡しモジュールTRS1~TRS2を介して各単位ブロックE1~E2のSOC塗布装置1のカップ23に搬送され、プリウエット及びSOC塗布処理を受ける。これらの処理に並行して、
図8を用いて説明した異物の検出が行われる。続いてウエハWは、加熱モジュール79に搬送されて加熱処理された後、タワーT1の受け渡しモジュールTRS3、TRS4に搬送され、単位ブロックE3、E4に振り分けられて搬送される。そして、レジストモジュールにて、プリウエット及びレジスト塗布処理を受ける。これらの処理に並行して、
図8を用いて説明した異物の検出が行われる。続いてウエハWは、加熱モジュール79に搬送されて加熱処理された後、タワーT2の受け渡しモジュールTRS13、TRS41に搬送され搬送機構82、83により、タワーT2を介して露光装置B6へ搬入されて、レジスト膜が露光される。
【0090】
露光後のウエハWは、搬送機構83、82によりタワーT2、T4間を搬送されて、単位ブロックE5~E6に対応するタワーT2の受け渡しモジュールTRS51、TRS61に夫々搬送される。然る後、ウエハWは、加熱モジュール79に搬送されて露光後の加熱処理(ポストエクスポージャーべーク)が行われる。続いて、ウエハWは、現像モジュールに搬送されて現像液が供給され、レジストパターンが形成される。その後、ウエハWはタワーT1の受け渡しモジュールTRS4~TRS6、搬送機構75を介して検査ブロックB2の検査モジュール74に搬送されて検査を受けた後、搬送機構73を介してキャリアCに戻される。
【0091】
上記の塗布、現像装置7では、筐体31がカップ23の近傍に設けられる。より具体的には、カップ23が設けられる単位ブロックEと同じ単位ブロックEに異物検出ユニット2が設けられる。このような配置により、流路形成部14A~14Lからノズル11A~11Lまでの流路の長さを比較的短くすることができる。異物は処理液供給管12A~12Lから発生する可能性が有ることを考えると、当該流路の長さが短いことによって、流路形成部14A~14Lとノズル11A~11Lとの間の異物の量についての差が抑えられる。従って、ウエハWに供給される処理液の清浄度について精度高く監視することができる。
【0092】
ただし、各筐体31については単位ブロックE1~E3のカップ23の近傍に設置することに限られず、カップ23から比較的大きく離れた検査ブロックB2や多目的ブロックB3に設けてもよい。
図23中の85、86は、検査ブロックB2、多目的ブロックB3における筐体設置領域の一例を示しており、例えばこれらの筐体設置領域85または86に複数の筐体31を設置することができる。つまり、異物検出ユニット2は、キャリアブロックB1及び処理ブロックB4とは区画されたブロックに設けることができ、そのように配置された異物検出ユニット2の流路形成部14から、各単位ブロックE1~E4のノズル11A~11Lへ処理液を供給することができる。占有スペースを抑えるために、筐体設置領域85、86に設けられる各筐体31については、例えば互いに積層される。
【0093】
ところで、既述の例ではノズル11A~11Lから吐出される全ての処理液について異物の検出が行われるものとして説明したが、そのように全ての処理液について異物の検出を行うことに限られず、高い清浄度が求められる処理液についてのみ検出を行ってもよい。
図25は、単位ブロックE1~E2の設置領域77、78に設けられるSOC塗布装置1、及び単位ブロックE3~E4の設置領域77、78に設けられるレジスト塗布装置のノズル11Aに接続される流路形成部14Aについてのみ、異物の検出を行う構成例を示している。
【0094】
この
図25に示す筐体31は、例えば上記の筐体設置領域85または86に設けられている。そして、この筐体31には流路形成部14A~14Lが格納される代わりに、各設置領域77、78に設けられるノズル11Aに対応する流路形成部14Aが格納される。つまり、この
図25に示す例では、4つのSOC塗布装置1、及び4つのレジスト塗布装置が1つの異物検出ユニット2を共用している構成となっている。本開示に係る異物検出ユニット2は、多くの処理液中の異物を検出することができ、SOC塗布装置1、及びレジスト塗布装置に対して共通化することができる。このような構成とすることで、塗布、現像装置7の製造コスト及び運用コストの低減を図ることができる。
【0095】
このように異物検出ユニット2が処理液の異なる装置1、例えばSOC塗布装置1と、レジスト塗布装置と、の間で共有される場合、SOC塗布装置1と、レジスト塗布装置と、の処理が並行して行われる場合が有る。そのため、
図15で述べた測定セットを複数設ける構成とすることが有効である。
【0096】
なお、異物の検査対象となる処理液は、例えば現像液、ウエハWを洗浄処理するための洗浄液、反射防止膜形成用の薬液、絶縁膜形成用の薬液、ウエハWを貼り合わせるための接着剤などであってもよい。従って、基板処理装置としては、現像装置や洗浄装置などであってもよい。
【0097】
また、上記の処理液供給管12A~12Kについて、例えば上流側から塗布液と、洗浄液とが切り替えて供給される構成とされ、シンナーはノズル11からウエハW以外の箇所に吐出されるようにする。当該シンナーは処理液供給管12A~12Kの洗浄液であり、この洗浄液についても塗布液と同様に、処理液供給管12A~12Kを流通中における異物の検出が行われるようにしてもよい。そのように洗浄液について異物の検出を行う場合には、検出結果に基づいて適切なタイミングで洗浄を終了し、洗浄に用いる処理液を無駄にすることを防ぐことができる。この処理液供給管12A~12Kの洗浄については、塗布液中の異物の検出結果に基づいて自動で行われるようにしてもよい。このように本開示は、当該処理液が流通する流路を流れる液体中の異物を検出する場合に適用することができ、ウエハWに供給される処理液中に含まれる異物を検出することに限られない。
【0098】
また、例えば現像装置において、現像後にウエハWを乾燥させるためにウエハWに不活性ガスを供給するガスノズルを設けてもよい。そして、このガスノズルの上流側に接続される流路について、上記の異物の検出を行ってもよい。つまり本技術によって行う異物の検出は、液体に限られず、気体を対象とする異物の検出であってもよい。
【0099】
なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0100】
[検証試験]
本開示に係る基板処理装置の効果を検出するため、成分の異なる2種のSOC膜形成用の塗布液のサンプル1、サンプル2に、波長が670nm、830nm、及び940nmのレーザー光を夫々照射し、透過率(透過率=(入射光量-吸収損失-散乱損失)/入射光量)を測定した。なお、各サンプルは有色である。
【0101】
図26はこの結果を示しており、縦軸の値は、各サンプル1、2において測定された透過率の値を、同じ波長のレーザー光にて測定されるシンナーの透過率の値に対してのパーセントで示している。グラフに示すように、サンプル1,2において、波長が830nm、940nmであるときに透過率が90%を越えていた。そして、液体中の異物を検出するにあたって、薬液の透過率は、シンナーの透過率に対して90%以上であることが好ましいが、波長750nm以上でサンプル1,2共に透過率が90%以上となることが、グラフより確認される。そして、830nmで透過率が90%以上であることが明確に示されていることから、波長を750nm以上とすることが好ましく、830nm以上であるとより好ましい。従って、既述したように測定を行うにあたり、近赤外線を液体に照射することが好ましいことが示された。
【0102】
またサンプル1、2に各波長のレーザー光を照射したときの、サンプル1、2を流した流路の損傷及びサンプル1、2にレーザー光を照射したときの蛍光の有無の結果を調べた。これら流路の損傷や蛍光の確認は、サンプルにおけるレーザー光の吸収の傾向の一指標となる。
【0103】
サンプル1、2の双方において、いずれの波長のレーザー光を照射したときに流路の損傷は観察されなかった。またサンプル1、2の双方において、波長670nmのレーザー光を照射したときに蛍光が観察された。つまりレーザー光の吸収が起きている。さらに波長830nmのレーザー光でもサンプル1、2の双方において、蛍光が観察されたが、サンプル1では、ごくわずかな蛍光であり、波長940nmのレーザー光では、いずれのサンプル1、2にて蛍光は観察されなかった。従って蛍光、流路の損傷の傾向から見ても750nm程度以上の波長のレーザー光を用いることで塗布液による吸収を抑えることができると推定される。また、波長が830nm以上であるとすると、より好ましいことが確認された。
【符号の説明】
【0104】
W ウエハ
1 SOC塗布装置
12 処理液供給管
2 異物検出ユニット
14 流路形成部
44 投光部
48 受光部
53 計数部
【手続補正書】
【提出日】2024-05-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明の基板処理装置は、基板に供給される液体が通流する供給路と、
投光部により前記供給路の一部を成す流路形成部に向けて近赤外線である光が照射された結果として前記流路形成部から光が発せられて、前記流路形成部から発せられた光を受光部が受光して得られる信号に基づいて、前記液体の中の異物を検出可能な異物検出ユニットと、
光源と、
前記光源から前記流路形成部へ向かう光路を形成する前段側光路形成部と、
前記前段側光路形成部が備えると共に前記投光部をなし、前記光源からの光を反射させる反射部と、
を備える。