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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105577
(43)【公開日】2024-08-06
(54)【発明の名称】注射デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
A61M5/32 500
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024079849
(22)【出願日】2024-05-16
(62)【分割の表示】P 2021519888の分割
【原出願日】2019-10-09
(31)【優先権主張番号】18306346.0
(32)【優先日】2018-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ・ダスバッハ
(72)【発明者】
【氏名】アレックス・ズエフ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マーク・ケンプ
(72)【発明者】
【氏名】ヒューゴー・リヴェラット
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・デンヤー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】医療インプラント内に埋め込まれた電子機器のためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】ハウジングと、キャップ12とを含む注射デバイスであって、キャップをハウジングから取り外すときに使用者が把持する外側部材21と、外側部材の内部に配置された中間部材27と、中間部材の内部に配置され、外側部材および中間部材のうちの少なくとも1つに連結された内側部材24と、を含み、内側部材はハウジングに受けられた薬剤のシリンジのニードルシールドに係合する。注射デバイスはさらに、キャップおよび係合されたニードルシールドをハウジングから取り外すために必要な力を低減させる持ち上げ機構を含み、該持ち上げ機構は、外側部材または中間部材の回転運動が内部部材のハウジングから遠位方向の軸方向運動に変換されるように、少なくとも1つの持ち上げ部分20と係合する少なくとも1つの軸方向傾斜部分30を含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を有する細長いハウジングと、該ハウジングの遠位端に設けられたキャップとを含む注射デバイスであって、キャップがハウジングから取り外し可能であり:
キャップをハウジングから取り外すときに使用者が把持するための外側部材と;
該外側部材の実質的に内部に配置された中間部材であって、該中間部材または外側部材のうちの少なくとも一方は、中間部材または外側部材のうちの他方に対して回転可能である、中間部材と;
該中間部材の実質的に内部に配置され、外側部材および中間部材のうちの少なくとも1つに連結された内側部材であって、薬剤のシリンジのニードルシールドに、このようなシリンジがハウジングに受けられるときに係合するように構成されている内側部材と、
キャップおよび係合されたニードルシールドをハウジングから取り外すために必要な力を低減させるように構成された持ち上げ機構であって、外側部材または中間部材の回転運動が内部部材のハウジングから遠位方向の軸方向運動に変換されるように少なくとも1つの持ち上げ部分と係合している少なくとも1つの軸方向傾斜部分を含む持ち上げ機構とを含む、前記注射デバイス。
【請求項2】
外側部材は蓋を含み、内側部材は、蓋の固定部分と係合している遠位端にアパーチャを含み、それにより、内側部材は、蓋に対して軸方向に固定されるように、また蓋に対して回転可能になるように蓋に連結される、請求項1に記載の注射デバイス。
【請求項3】
外側部材は、内側部材が外側部材に対して軸方向に固定されるように、また外側部材に対して回転可能になるように内側部材の遠位端のクリップと係合している環状部分を含む、請求項1または請求項2に記載の注射デバイス。
【請求項4】
中間部材および内側部材は止め機構を含み、内側部材は、内側部材が中間部材に対してさらなる軸方向運動をしないように中間部材の第1の止め部分が内側部材の第2の止め部分と係合するまで、中間部材に対して軸方向の遠位方向に自由に動く、請求項1~3のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項5】
軸方向傾斜部分は溝または切り欠きであり、持ち上げ部分はボスであり、持ち上げ部分は軸方向傾斜部分の実質的に内部に設置されており、外側部材がひねられると、持ち上げ部分は軸方向傾斜部分の経路をたどるように強制されて、外側部材および内側部材の軸方向運動が遠位方向に生じる、請求項1~4のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項6】
軸方向傾斜部分は隆起または突起であり、持ち上げ部分はボスであり、持ち上げ部分は、軸方向傾斜部分から軸方向にオフセットされているが、軸方向傾斜部分の遠位または近位縁部と接触しており、外側部材がひねられると、持ち上げ部分は軸方向傾斜部分の経路をたどるように強制されて、外側部材および内側部材の軸方向運動が遠位方向に生じる、請求項1~4のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項7】
軸方向傾斜部分は、中間部材の外面および外側部材の内面のうちの一方の上に設置された第1の軸方向傾斜部分であり、持ち上げ部分は、中間部材の外面または外側部材の内面のうちの他方の上の第1の持ち上げ部分であり、外面は注射デバイスの中心軸から外方に向いており、内面は注射デバイスの中心軸の方に向いている、請求項1~4のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項8】
持ち上げ機構は、第2の持ち上げ部分および第2の軸方向傾斜部分を含み、第2の持ち上げ部分は、中間部材の内面および内側部材の外面のうちの一方の上に設置され、第2の軸方向傾斜部分は、中間部材の内面および内側部材の外面のうちの他方の上にあり、外面
は注射デバイスの中心軸から外方に向いており、内面は注射デバイスの中心軸の方に向いている、請求項7に記載の注射デバイス。
【請求項9】
第2の軸方向傾斜部分は、軸方向に対して第1の軸方向傾斜部分よりも浅い傾度を有する、請求項8に記載の注射デバイス。
【請求項10】
軸方向傾斜部分のうちの少なくとも1つは溝または切り欠きであり、持ち上げ部分のうちの少なくとも1つはボスであり、持ち上げ部分のうちの少なくとも1つは、軸方向傾斜部分のうちの少なくとも1つの実質的に内部に設置されており、外側部材がハウジングから遠位方向に持ち上げられると、各持ち上げ部分は各軸方向傾斜部分の経路をたどるように強制されて、中間部材の回転運動および内部部材の軸方向運動が生じる、請求項7~9のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項11】
軸方向傾斜部分のうちの少なくとも1つは隆起または突起であり、持ち上げ部分のうちの少なくとも1つはボスであり、持ち上げ部分のうちの少なくとも1つは、軸方向傾斜部分の少なくとも1つから軸方向にオフセットされているが、軸方向傾斜部分のうちの少なくとも1つの遠位または近位縁部と接触しており、外側部材がハウジングから遠位方向に持ち上げられると、各持ち上げ部分は各軸方向傾斜部分の経路をたどるように強制されて、中間部材の回転運動および内側部材の軸方向運動が生じる、請求項7~10のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項12】
軸方向傾斜部分の一端の保持部分、またはこの保持部分と係合するための第2の軸方向傾斜部分を含み、保持部分と持ち上げ部分が係合されると、キャップとハウジングが一緒に保持され、キャップとハウジングの相対運動が抵抗を受ける、請求項1~11のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項13】
軸方向傾斜部分は、ハウジングからキャップを取り外す際に様々なレベルの補助を提供するために、1つよりも多い傾度を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項14】
少なくとも1つの軸方向傾斜部分は、外側部材または中間部材の回転運動が内側部材のハウジングから遠位方向の前記軸方向運動に変換されるように、少なくとも1つの持ち上げ部分と係合しており、それにより、内側部材のハウジングから遠位方向の軸方向運動は、ハウジングから遠位方向のニードルシールドの係合を促すようになる、請求項1~13のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項15】
ニードルシールドは、剛性の外側部材および弾性の内側部材を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項16】
内側部材は、外側部材および中間部材のうちの前記少なくとも1つに係合するように構成される、請求項1~15のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項17】
キャップは持ち上げ機構を含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項18】
針がハウジング内に配置されている針を有するシリンジをさらに含み、前記シリンジは薬剤を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の注射デバイスのキャップを組み立てる方法であって:
中間部材と内側部材を互いに係合位置に保持する工程と;
外側部材を内側部材の上にクリップ留めしてサブアセンブリを形成する工程と;
サブアセンブリをハウジングアセンブリに取り付ける工程であって、ハウジングアセンブリはハウジング、および針を覆うためのニードルシールドを含む、工程と;
注射デバイスをプライミングする工程と;
蓋を内側部材にクリップ留めし、押し嵌め連結を介して外側部材に係合する工程とを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り外し可能キャップ付きの注射デバイスと、前記注射デバイスのキャップを組み立てる方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の注射部位に薬剤を投薬するための、自動注射器などの注射デバイスが当技術分野で知られている。このような注射デバイスは一般に、ハウジングおよびキャップを含む。ニードルシリンジがハウジング内に設置され、ニードルシールドで覆われることもある。キャップおよびニードルシールドは、ハウジングに取り外し可能に取り付けられてニードルシリンジの針を遮蔽する。薬剤を投薬するには、キャップおよびニードルシードルがまずハウジングから取り外されて針が露出される。次に、針が患者の体の注射部位に挿入されて、薬剤が注射される。
【0003】
ハウジングからキャップを取り外すのに必要な力が比較的大きいことがあり、これは、ニードルシールドとシリンジの間の摩擦境界面に起因し得る。高齢者または身体に障害があるなどの虚弱な患者は、必要な力が比較的大きいために、キャップを取り外すことが困難であると感じることがある。さらに、キャップを取り外すのに必要な力は低温で増大することがあるが、一部の薬剤、したがって一部の注射デバイスは、冷蔵庫内に低温で保管する必要がある。これは、ハウジングからキャップを取り外すことを難しくすることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、取り外し可能キャップを有する改善された注射デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、中心軸を有する細長いハウジングと、ハウジングの遠位端に設けられたキャップとを含む注射デバイスが提供され、キャップがハウジングから取り外し可能であり、注射デバイスは:キャップをハウジングから取り外すときに使用者が把持するための外側部材と;外側部材の実質的に内部に配置された中間部材であって、中間部材または外側部材のうちの少なくとも一方は、中間部材または外側部材のうちの他方に対して回転可能である、中間部材と;中間部材の実質的に内部に配置され、外側部材および中間部材のうちの少なくとも1つに連結された内側部材であって、薬剤のシリンジのニードルシールドに、このようなシリンジがハウジングに受けられるときに係合するように構成されている内側部材とを含み、注射デバイスはさらに、キャップおよび係合されたニードルシールドをハウジングから取り外すために必要な力を低減させるように構成された持ち上げ機構を含み、この持ち上げ機構は、外側部材または中間部材の回転運動が内部部材のハウジングから遠位方向の軸方向運動に変換されるように少なくとも1つの持ち上げ部分と係合している少なくとも1つの軸方向傾斜部分を含む。
【0006】
本発明によれば、中心軸を有する細長いハウジングと、ハウジングの遠位端に設けられたキャップとを含む注射デバイスであって、キャップがハウジングから取り外し可能であり:キャップをハウジングから取り外すときに使用者が把持するための外側部材と;外側部材の実質的に内部に配置された中間部材であって、中間部材または外側部材のうちの少なくとも一方は、中間部材または外側部材のうちの他方に対して回転可能である、中間部材と;中間部材の実質的に内部に配置され、外側部材および中間部材のうちの少なくとも
1つに連結された内側部材であって、薬剤のシリンジのニードルシールドに、このようなシリンジがハウジングに受けられるときに係合するように構成されている内側部材と、キャップおよび係合されたニードルシールドをハウジングから取り外すために必要な力を低減させるように構成された持ち上げ機構であって、外側部材または中間部材の回転運動が内部部材のハウジングから遠位方向の軸方向運動に変換されるように少なくとも1つの持ち上げ部分と係合している少なくとも1つの軸方向傾斜部分を含む持ち上げ機構とを含む、注射デバイスが提供される。
【0007】
有利なことに、持ち上げ機構は、キャップをハウジングから取り外す際に使用者を補助することができ、したがって、キャップを取り外すために必要な使用者からの力は、補助がない状態で必要な力と比べて少ない。高齢者または身体に障害があるなどの虚弱な患者は、キャップを取り外すことが困難であると感じることがあり、したがって、ハウジングからキャップを取り外すのに必要な力の低減は有益である。さらに、注射デバイスが低温で保管されていた場合、このことにより、ハウジングからキャップを取り外すのに必要な力が、室温のキャップを取り外すのに必要な力と比べて増大することになり得る。これは、キャップを取り外すことが困難であるとすでに感じている人に対してさらなる問題を引き起こし得る。
【0008】
外側部材は蓋を含むことができ、蓋と外側部材は別々の構成要素とすることができ、蓋は外側部材に回転不能に軸方向に固定されている。しかし、蓋と外側部材は単一の構成要素としても形成できることを理解されたい。これらの構成要素を別々の部材として製造すると、より簡単な組み立てプロセスが可能になり得るが、これらを1つの構成要素として製造すると、デバイスの構成要素の総数の低減が可能になる。
【0009】
外側部材は蓋を含むことができ、内側部材は遠位端にアパーチャを含むことができる。アパーチャは、蓋の固定部分と係合することができ、それにより、内側部材は、蓋に対して軸方向に固定されるように、また蓋に対して回転可能になるように蓋に連結される。加えて、または別法として、外側部材は、内側部材が外側部材に対して軸方向に固定されるように、また外側部材に対して回転可能になるように内側部材の遠位端のクリップと係合することができる、環状部分を含み得る。有利なことに、外側部材に対して回転可能である内側部材とは、キャップが取り外されるときにニードルシールドが回転されないことを意味し得る。ニードルシールドを、元の場所でシリンジの針を覆いながら回転させると、たとえばコアリングによって針を損傷するおそれがある。
【0010】
中間部材および内側部材は止め機構を含むことができ、内側部材は、内側部材が中間部材に対してさらなる軸方向運動をしないように中間部材の第1の止め部分が内側部材の第2の止め部分と係合するまで、中間部材に対して軸方向の遠位方向に自由に動く。止め機構は、中間部材に対する内側部材の回転運動を防止することができる。この構成の利点は、止め部分同士が係合するまで中間部分が内側部材に軸方向に固定されないことであり、これにより、内側部材がニードルシールドを遠位方向に中間部材から独立して動かすことが可能になり、その後、これらの構成要素は、キャップをハウジングから最終的に持ち上げるために軸方向に固定される。
【0011】
軸方向傾斜部分は溝または切り欠きとすることができ、持ち上げ部分はボスとすることができ、持ち上げ部分は軸方向傾斜部分の実質的に内部に設置されており、外側部材がひねられると、持ち上げ部分は軸方向傾斜部分の経路をたどるように強制されて、外側部材および内側部材の軸方向運動が生じる。
【0012】
軸方向傾斜部分は隆起または突起とすることができ、持ち上げ部分はボスとすることができ、持ち上げ部分は、軸方向傾斜部分から軸方向にオフセットされているが、軸方向傾
斜部分の遠位または近位縁部と接触しており、外側部材がひねられると、持ち上げ部分は軸方向傾斜部分の経路をたどるように強制されて、外側部材および内側部材の軸方向運動が遠位方向に生じる。
【0013】
こうすることの利点は、製造および組み立てが容易である簡単な機構が運動量増大を可能にして、注射デバイスからキャップまたはニードルシールドを使用者が取り外すことが補助されることである。
【0014】
軸方向傾斜部分は、中間部材の外面および外側部材の内面のうちの一方の上に設置された第1の軸方向傾斜部分とすることができ、持ち上げ部分は、中間部材の外面または外側部材の内面のうちの他方の上の第1の持ち上げ部分とすることができ、外面は注射デバイスの中心軸から外方に向いており、内面は注射デバイスの中心軸の方に向いている。
【0015】
持ち上げ機構は、第2の持ち上げ部分および第2の軸方向傾斜部分を含むことができ、第2の持ち上げ部分は、中間部材の内面および内側部材の外面のうちの一方の上に設置され、第2の軸方向傾斜部分は、中間部材の内面および内側部材の外面のうちの他方の上にあり、外面は注射デバイスの中心軸から外方に向いており、内面は注射デバイスの中心軸の方に向いている。第2の軸方向傾斜部分は、軸方向に対して第1の軸方向傾斜部分よりも浅い傾度を有し得る。
【0016】
有利なことに、2つの持ち上げ部分を含む中間部材は、注射デバイスのキャップおよびニードルシールドを取り外すときに、外側部材の引っ張り力が中間部材のひねりの動きに変換され、次いで内側部材の軸方向運動に変換されて、機械的な利点がもたらされることを可能にする。さらに、傾度の差は、外側部材の大きい軸方向運動が、外側部材の軸方向運動に比べて小さい内側部材の軸方向運動を生じさせることを可能にし得る。第1の軸方向傾斜部分が第2の軸方向傾斜部分よりも浅い傾度を軸方向に対して有する場合、傾度の差はまた、外側部材の小さい軸方向運動が、外側部材の動きに比べて大きい内側部材の軸方向運動を生じさせることも可能にし得る。さらに、内側部材にかかる軸方向の力は、第1と第2の軸方向傾斜部分の傾度の差に基づいて、外側部材に加わる軸方向の力に対して増大または低減される。
【0017】
軸方向傾斜部分のうちの少なくとも1つは溝または切り欠きとすることができ、持ち上げ部分のうちの少なくとも1つはボスとすることができ、持ち上げ部分のうちの少なくとも1つは、軸方向傾斜部分のうちの少なくとも1つの実質的に内部に設置されており、外側部材がハウジングから遠位方向に持ち上げられると、各持ち上げ部分は各軸方向傾斜部分の経路をたどるように強制されて、中間部材の回転運動および内部部材の軸方向運動が生じる。
【0018】
軸方向傾斜部分のうちの少なくとも1つは隆起または突起とすることができ、持ち上げ部分のうちの少なくとも1つはボスとすることができ、持ち上げ部分のうちの少なくとも1つは、軸方向傾斜部分の少なくとも1つから軸方向にオフセットされているが、軸方向傾斜部分のうちの少なくとも1つの遠位または近位縁部と接触しており、外側部材がハウジングから遠位方向に持ち上げられると、各持ち上げ部分は各軸方向傾斜部分の経路をたどるように強制されて、中間部材の回転運動および内側部材の軸方向運動が生じる。
【0019】
こうすることの利点は、製造および組み立てが容易である簡単な機構が運動量増大を可能にして、注射デバイスからキャップを使用者が取り外すことが補助されることである。
【0020】
注射デバイスは、軸方向傾斜部分の一端の保持部分、または持ち上げ部分と係合するための第2の軸方向傾斜部分を含むことができ、保持部分と持ち上げ部分が係合されると、
キャップとハウジングが一緒に保持され、キャップとハウジングの相対運動が抵抗を受ける。キャップは、キャップを取り外す前に、近位方向に押されて持ち上げ部分が保持部分から解放される必要がある。このことの利点は、早すぎるキャップの取り外しが防止されることであり、この構成はまた、保管または輸送の間の、デバイスを損傷するおそれがあるデバイスの特定の構成要素の動きを防止することもできる。
【0021】
本発明の1つの態様によれば、中心軸を有する細長いハウジングと、ハウジングの遠位端に設けられたキャップと:を含む注射デバイスが提供され、キャップがハウジングから取り外し可能であり、注射デバイスは:キャップをハウジングから取り外すときに使用者が把持するための外側部材と;外側部材の実質的に内部に配置され、外側部材が内側部材に対して回転可能になるように外側部材に連結された内側部材であって、薬剤のシリンジのニードルシールドに、このようなシリンジがハウジングに受けられるときに係合するように構成されている内側部材と;キャップおよび係合されたニードルシールドをハウジングから取り外すために必要な力を低減させるように構成された持ち上げ機構であって:外側部材およびハウジングのうちの一方の上の持ち上げ部分、ならびに外側部材およびハウジングのうちの他方の上の軸方向傾斜部分を含む持ち上げ機構とを含み、持ち上げ部分は、ハウジングに対する外側部材の回転運動が内部部材のハウジングから遠位方向の軸方向運動に変換されるように、軸方向傾斜部分に係合する。
【0022】
有利なことに、持ち上げ機構は、キャップをハウジングから取り外す際に使用者を補助することができ、したがって、キャップを取り外すために必要な使用者からの力は、補助がない状態で必要な力と比べて少ない。高齢者または身体に障害があるなどの虚弱な患者は、キャップを取り外すことが困難であると感じることがあり、したがって、ハウジングからキャップを取り外すのに必要な力の低減は有益である。さらに、注射デバイスが低温で保管されていた場合、このことにより、ハウジングからキャップを取り外すのに必要な力が、室温のキャップを取り外すのに必要な力と比べて増大することになり得る。これは、キャップを取り外すことが困難であるとすでに感じている人に対してさらなる問題を引き起こし得る。
【0023】
持ち上げ部分は、外側部材の近位縁部から軸方向の近位方向に延びる外側部材上の突起とすることができ、軸方向傾斜部分はハウジング上にある。あるいは、持ち上げ部分は、ハウジングの遠位縁部から軸方向の遠位方向に延びるハウジング上の突起とすることができ、軸方向傾斜部分は外側部材上にある。あるいは、持ち上げ部分は、ハウジングの中心軸に向かって延びる、外側部材の内面上の内向きに突出するボスとすることができ、軸方向傾斜部分はハウジング上にある。あるいは、持ち上げ部分は、ハウジングの中心軸から延びる、ハウジングの外面上の外向きに突出するボスとすることができ、軸方向傾斜部分は外側部材上にある。
【0024】
軸方向傾斜部分は、持ち上げ部分と係合するための凹部分とすることができる。あるいは、軸方向傾斜部分は、持ち上げ部分と係合するための隆起または突起とすることができる。軸方向傾斜部分は曲げられる。あるいは、軸方向傾斜部分は直線状にすることができる。有利なことに、軸方向傾斜部分は、いくつかの変化する輪郭および斜面とすることができる。これらは、注射デバイスの特定の要件、たとえば、それだけには限らないが、内側部材の必要とされる軸方向運動、または使用者がキャップを取り外す際に必要な力の低減に基づいて、選択される。
【0025】
キャップは、キャップがハウジングから取り外される前に、ハウジングと係合し、それにより外側部材がハウジングの近位端を越えて遠位方向に延びて持ち上げ機構を覆うように構成される。こうすることにより、持ち上げ機構が保護され、より美的な境界面がキャップとハウジングの間に設けられる。
【0026】
キャップは、キャップがハウジングから取り外される前に、ハウジングと係合して持ち上げ機構が露出するように構成される。有利なことに、こうすることにより、外側部材を製造するのに使用されるべき材料を少なくすることが可能になる。
【0027】
軸方向傾斜部分は、ハウジングからキャップを取り外す際に様々なレベルの補助を提供するために、1つよりも多い傾度を含み得る。
【0028】
ハウジングと外側部材は境界面で接触することができ、ハウジングおよび外側部材は、この境界面において、ハウジングの中心軸に垂直な断面で非円形とすることができる。こうすることにより、ハウジングおよびキャップの断面設計の自由をより大きくすることができる。
【0029】
注射デバイスは、針がハウジング内に配置されているシリンジを含むことができ、前記シリンジは薬剤を含む。
【0030】
注射デバイスは、針を覆うためのニードルシールドを含むことができ;さらに内側部材は、ニードルシールドと係合するための係合部材を含むことができ、キャップを取り外すと、ニードルシールドが同時に取り外される。係合部材は、グラバ、返し、もしくは偏向可能なアームとすることができ、または、2つの構成要素を固定して連結する、知られている代替の方法とすることができる。係合部材は、ニードルシールドに切り込むこと、またはニードルシールドに留めることができる。ニードルシールドに係合するように構成される内側部材とは、内側部材が、内側部材に取り付けられた上述の把持部もしくは代替物を有するか、またはニードルシールドに係合するための内側部材の一体化部材を有することを意味し得る。高齢者または身体に障害があるなどの虚弱な患者は、取り扱うことを困難にする小さなサイズのニードルシールドの故に、キャップを取り外すよりもニードルシールドを取り外す方が困難であると感じることがあり、したがって、同時に取り外せるように2つの構成要素を連結することがこの問題に対処することになると理解されたい。
【0031】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの軸方向傾斜部分は、外側部材または中間部材の回転運動が内側部材のハウジングから遠位方向の前記軸方向運動に変換されるように、少なくとも1つの持ち上げ部分と係合しており、それにより、内側部材のハウジングから遠位方向の軸方向運動は、ハウジングから遠位方向のニードルシールドの係合を促すようになる。
【0032】
いくつかの実施形態では、ニードルシールドは、剛性の外側部材および弾性の内側部材を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、内側部材は、外側部材および中間部材のうちの前記少なくとも1つに連結され、また、外側部材および中間部材のうちの前記少なくとも1つに係合するように構成される。
【0034】
いくつかの実施形態では、キャップは持ち上げ機構を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、内側部材、中間部材および外側部材のすべてがハウジングから取り外し可能である。
【0036】
いくつかの実施形態では、中間部材と外側部材は、一緒にハウジングから取り外し可能である。
【0037】
注射デバイスのキャップを組み立てる方法が提供され、この方法は:中間部材と内側部材を互いに係合位置に保持する工程と;外側部材を内側部材の上にクリップ留めしてサブアセンブリを形成する工程と;サブアセンブリをハウジングアセンブリに取り付ける工程であって、ハウジングアセンブリはハウジング、および針を覆うためのニードルシールドを含む、工程と;注射デバイスをプライミングする工程と;蓋を内側部材にクリップ留めし、押し嵌め連結を介して外側部材に係合する工程とを含む。
【0038】
中間部材は第1の係合部分を含むことができ、外側部材は二次係合部分を含むことができ;この方法は、外側部材を内側部材と、中間部材の一次係合部分に係合する外側部材の二次係合部分とにクリップ留めすることを含む。
【0039】
外側部材は、外側部材の把持特性を向上させるための高摩擦材料または形成物を含む、人間工学的な表面を含むことができ、したがって、キャップは使用者によってより簡単に取り外される。さらなる利点は、低温で保管されることによりキャップがいくらか圧縮されている場合、キャップは滑りやすく把持するのが困難になり、あるいはキャップがなお冷たい場合、キャップは把持するのが使用者には不快であり得るが、人間工学的な表面はこうしたことに対処できることである。
【0040】
上記およびその他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになり、その実施形態を参照して解明されよう。
【0041】
次に、本発明の実施形態について、単なる例として添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1A】キャップが自動注射器のハウジングに取り付けられている、自動注射器の概略側面図である。
図1B】キャップがハウジングから取り外されている、図1Aの自動注射器の概略側面図である。
図2】自動注射器のニードルシールドの近接概略断面側面図である。
図3】キャップの内部構成要素を示す、1つの態様によるキャップの近接等角図である。
図4図3の中間部材の軸方向傾斜部の近接側面図である。
図5図3の外側部材の持ち上げ部分を示す近接概略断面図である。
図6図3のセクションAの近接図である。
図7図3の内部部材クリップの近接図である。
図8図3の外部部材の平面図である。
図9図3の中間部材および内部部材近接等角上面図である。
図10図1Aおよび図1Bのものなどの注射デバイス上の、取り外される前の図3のキャップの図である。
図11図3の主構成要素の分解組立図である。
図12】外部部材を透明なものとして、したがって、図3のキャップを取り外す様々な段階で内部構成要素が見えるように示す側面図である。
図13】本発明の第2の態様によるキャップの線図である。
図14】本発明の第4の態様によるキャップの断面側面図である。
図15図14の第1の持ち上げ部分および軸方向傾斜部の、ハウジングが透明なものとして示され、したがって内部構成要素が見える、近接図である。
図16】軸方向傾斜部がキャップ取り外しの前でも後でも見える、ハウジングの外面に軸方向傾斜部を備えた図15の代替形態の図である。
図17】軸方向傾斜部がキャップ取り外しの前には見えない、ハウジングの外面に軸方向傾斜部がある図15の代替形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本明細書に記載の薬物送達デバイスは、薬剤を患者に注射するように構成される。たとえば送達は、皮下、筋肉内、または静脈内送達とすることができる。このようなデバイスは、患者、または看護師もしくは医師などの介護者によって操作され、様々なタイプの安全シリンジ、ペン注射器または自動注射器を含み得る。このデバイスは、使用前に封止アンプルを穿孔する必要があるカートリッジベースのシステムを含み得る。これらの様々なデバイスを用いて送達される薬剤の量は、約0.5mlから約2mlになり得る。さらに別のデバイスは、「大」量の薬剤(通常約2mlから約10mlまで)を送達するために、ある期間(たとえば、約5、15、30、60、または120分)患者の皮膚に粘着するように構成された大容積デバイス(「LVD」)またはパッチポンプを含み得る。
【0044】
特定の薬剤と組み合わせることで、ここで説明されているデバイスはまた、要求される仕様内で動作するようにカスタマイズされる。たとえば、デバイスは、ある一定の期間内(たとえば、自動注射器では約3秒から約20秒、LVDでは約10分から約60分)に薬剤を注射するようにカスタマイズされる。他の仕様は、低レベルまたは最小レベルの不快感、またはヒューマンファクタに関連するいくつかの条件に対し、保存寿命、使用期限、生体適合性、環境的考慮事項などを含み得る。このような違いは、たとえば、粘性が約3cPから約50cPまでの薬物など、様々な要因により生じ得る。その結果、薬物送達デバイスは、サイズが約25から約31ゲージまでの中空針を含むことが多い。一般的なサイズは27および29ゲージである。
【0045】
本明細書に記載の送達デバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動化機能を含み得る。たとえば、針挿入、薬剤注射、および針後退のうちの1つまたはそれ以上が自動化される。1つまたはそれ以上の自動化段階のためのエネルギーは、1つまたはそれ以上のエネルギー源によって供給される。エネルギー源は、たとえば、機械エネルギー、空気エネルギー、化学エネルギー、または電気エネルギーを含み得る。たとえば、機械エネルギー源は、エネルギーを保存または解放するためのばね、てこ、エラストマー、または他の機械機構を含み得る。1つまたはそれ以上のエネルギー源は、単一のデバイスの中に集約することができる。デバイスはさらに、エネルギーをデバイスの1つまたはそれ以上の構成要素の動きに変換するための歯車、弁、または他の機構を含み得る。
【0046】
自動注射器の1つまたはそれ以上の自動化機能は、それぞれ起動機構を介して起動される。このような起動機構は、1つまたはそれ以上のボタン、レバー、ニードルスリーブ、またはその他の起動機構を含み得る。自動化機能の起動は、一段階または多段階過程とすることができる。すなわち、使用者が、自動化機能を行わせるために1つまたはそれ以上の起動構成要素を起動する必要があり得る。たとえば、一段階過程では、薬剤が注射されるには使用者がニードルスリーブを使用者の体に当てて押し下げればよい。他のデバイスでは、自動化機能の多段階起動が必要なことがある。たとえば、注射されるには使用者がボタンを押し下げ、ニードルシールドを後退させる必要がある。
【0047】
加えて、1つの自動化機能を起動すると1つまたはそれ以上の次の自動化機能を起動することができ、それによって起動シーケンスが形成される。たとえば、第1の自動化機能を起動すると、針挿入、薬剤注射、および針後退のうちの少なくとも2つを起動することができる。いくつかのデバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動化機能を行わせるための特定の一連の段階を必要とし得る。他のデバイスは、一連の個別の段階によって動作し得る。
【0048】
いくつかの送達デバイスは、安全シリンジ、ペン注射器、または自動注射器の1つまたはそれ以上の構成を含み得る。たとえば、1つの送達デバイスは、薬剤を自動的に注射す
るように構成された機械エネルギー源(自動注射器で一般に見られる)と、用量設定機構(ペン注射器で通常見られる)とを含み得る。
【0049】
本開示のいくつかの実施形態による、例示的な薬物送達デバイス10が図1Aおよび図1Bに示されている。上述のように、デバイス10は、薬剤を患者の体に注射するように構成される。デバイス10は、注射予定の薬剤を含むリザーバ(たとえば、シリンジ)を一般に含むハウジング11と、送達過程の1つまたはそれ以上の段階を容易にするために必要な構成要素とを含む。デバイス10はまた、ハウジング11に取り外し可能に取り付けることができるキャップアセンブリまたはキャップ12を含み得る。一般には使用者が、デバイス10を動作させる前に、キャップ12をハウジング11から取り外さなければならない。
【0050】
図示のように、ハウジング11は実質的に円筒形であり、直径が長手方向軸A-Aに沿って実質的に一定である。ハウジング11は、遠位領域Dおよび近位領域Pを有する。用語「遠位」は、注射の部位に相対的に近い場所を指し、用語「近位」は、注射部位から相対的に遠い場所を指す。
【0051】
デバイス10はまた、ハウジング11に対してスリーブ19が動くことを可能にするようにハウジング11に連結されたニードルスリーブ19を含み得る。たとえば、スリーブ19は、長手方向軸A-Aと平行な長手方向に動くことができる。具体的には、スリーブ19が近位方向に動くと、針17がハウジング11の遠位領域Dから延びることが可能になり得る。
【0052】
針17の挿入は、いくつかの機構を介して行うことができる。たとえば、針17は、ハウジング11に対して固定して設置され、最初に、延びたニードルスリーブ19の中に設置される。スリーブ19の遠位端を患者の体に当て、ハウジング11を遠位方向に動かすことによってスリーブ19が近位に動くと、針17の遠位端のカバーが外れる。このような相対運動により、針17の遠位端が患者の体の中に達することが可能になる。このような挿入は、スリーブ19に対するハウジング11の、患者の手操作による動きによって針17が手動で挿入されるので、「手動」挿入と呼ばれる。
【0053】
挿入の別の形は「自動化」であり、それによって針17がハウジング11に対して動く。このような挿入は、スリーブ19が動くことによって、または、たとえばボタン13などの別の形の起動によって起動される。図1Aおよび図1Bに示されるように、ボタン13はハウジング11の近位端に設置される。しかし、他の実施形態では、ボタン13はハウジング11の側面に設置される。
【0054】
他の手動または自動化機能は、薬物注射もしくは針後退、または両方が含み得る。注射とは、薬剤をシリンジ18から針17に強制的に通すために、栓またはピストン14をシリンジ18内の近位位置からシリンジ18内のより遠位位置まで動かす過程のことである。いくつかの実施形態では、駆動ばね(図示せず)が、デバイス10が起動される前に圧縮されている。駆動ばねの近位端はハウジング11の近位領域P内に固定され、駆動ばねの遠位端は、ピストン14の近位面に圧縮力をかけるように構成される。起動に続いて、駆動ばねに保存されたエネルギーの少なくとも一部がピストン14の近位面に加えられる。この圧縮力は、ピストン14を遠位方向に動かすようにピストン14に作用する。このような遠位運動は、シリンジ18内の液体薬剤を圧縮するように作用して、液体薬剤を針17から外に強制的に出す。
【0055】
注射に続いて、針17はスリーブ19またはハウジング11の中に後退させることができる。後退は、使用者がデバイス10を患者の体から離すにつれてスリーブ19が遠位に
動くときに行われる。後退は、針17がハウジング11に対して固定位置に留まったままであるときに行われる。スリーブ19の遠位端が針17の遠位端を通り過ぎ、針17が覆われると、スリーブ19がロックされる。このようなロッキングは、ハウジング11に対するスリーブ19の近位運動をロックすることを含み得る。
【0056】
別の形の針後退は、針17がハウジング11に対して動く場合に行われる。このような動きは、ハウジング11内のシリンジ18がハウジング11に対して近位方向に動く場合に行われる。この近位運動は、遠位領域Dにある後退ばね(図示せず)を使用して実現される。圧縮された後退ばねが、起動したときに十分な力をシリンジ18に供給して、シリンジを近位方向に動かすことができる。十分な後退の後では、針17とハウジング11の間の相対運動がロッキング機構によってロックされる。加えて、デバイス10のボタン13または他の構成要素が必要に応じてロックされる。
【0057】
次に図2を参照すると、注射デバイス10はさらに、ニードルシールド1を含むことができる。ニードルシールド1は、不浸透性の材料からなる本体2を含み、凹部3が本体2の近位端にある。凹部3は、ニードルハブ4および針17を受けるように構成され、それにより針17は、本体2によって遮蔽される。本体2の内面とニードルハブ4の外面は摩擦係合して凹部3を封止し、空気が凹部3に進入することを防止する。したがって、針17は、キャップ12がハウジング11に取り付けられるときに、滅菌したままに保たれる。
【0058】
キャップ12とニードルシールド1が同時に取り外されるのは、キャップ12とニードルシールド1の取り外しが使用者にとって簡単になり、有利であり得る。キャップ12を注射デバイス10から取り外すのに必要な力は比較的大きいことがあり、そのため高齢者または身体に障害がある使用者は、キャップを取り外すことが困難であると感じることがある。この困難さが生じ得る理由の1つは、ニードルシールド1とニードルハブ4の間の摩擦係合に起因する。しかし、必要な力は、いくつかある変数の中で特に、構造体の材料、デバイスの設計、および周囲温度によって変化することが分かる。さらに、ニードルシールドとキャップを取り外すのに必要な力は、低温でさらに増大する。一部の薬剤、したがって一部の注射デバイスには、デバイスを冷蔵庫内で、または低温で保管する要件または必要がある。このことが、ハウジング11からキャップ12を取り外すことの困難さを悪化させ得る。
【0059】
図3に示されているように、外側部材21を有する取り外し可能キャップ12があり、形成物22が外側部材21の把持特性を向上させる。外側部材21は、高摩擦材料で作られるが、さらなるコーティングを含み得る、特に人間工学的に形づくられる、または摩擦増強特性を有していないこともあることを理解されたい。外側部材21は蓋23に連結され、この蓋は、押し嵌め連結、または知られている代替の連結手段によって外側部材21に連結され、外側部材21と蓋23はまた、一体化して形成され、したがって、両方が互に軸方向に回転不能に固定されると1つの構成要素になる。外側部材21は、この例では内向きに突出するボス9である持ち上げ部分20を含む。外側部材21はさらに、環32を含む。
【0060】
取り外し可能キャップ12は、アパーチャ25付きの内側部材24を有し、蓋23は、中心アパーチャ25を通って内側部材24と係合するクリップ26を有する。この係合により、蓋23が内側部材24に軸方向に連結されるが、蓋23が内側部材24に対して回転することは可能になる。内側部材24はさらに、外側部材21の環32に留まるクリップ33を含む。このクリップは、外側部材21と内側部材24を軸方向に連結するが、これらが互に回転することは可能にする。内側部材24は、ニードルシールド1と連係すること、または係合するように構成することができ、こうすることは、それだけには限らな
いが、把持部の形で、ニードルシールド1への戻り切り込みまたは堅い着座の形で、または内側部材24とニードルシールド1の間の摩擦ロックの形ですることが可能である。ニードルシールドと係合するように構成されている内側部材24は、上述の機構のいずれかをさらに含み得る内側部材の24の中に取り付けまたは設置された、把持部(図示せず)などの別の構成要素があることを意味し得る。
【0061】
キャップ12はまた、実質的に内側部材24と外側部材21の間に設置されている中間部材27を含む。中間部材27は、内向きに突出する少なくとも1つの形成物29がその遠位端にある、実質的に管形の本体28を有する。形成物29は、内側部材24の切り欠き41との係合用であり、内側に突出する形成物29と切り欠き41は止め機構を提供する。内側部材24は、中間部材27の第1の止め部分(すなわち、内向きに突出する形成物29)が第2の止め部分(すなわち、切り欠き41の近位最末端)と係合するまで、中間部材27に対してハウジングから軸方向の遠位方向に自由に動く。第1の止め具が第2の止め具と係合すると、内側部材24は中間部材27に軸方向に固定される。この止め機構はまた、中間部材27を内側部材24に回転可能に連結する。この構成の利点は、止め部分同士が係合するまで中間部材27が内側部材24に軸方向に固定されないことである。これにより、止め部分同士が係合するまで内側部材24がニードルシールド1を遠位方向に中間部材27から独立して動かすことが可能になり、その後、内側部材24と中間部材27は、キャップをハウジングから最終的に持ち上げるために軸方向に固定される。第1の止め部分を切り欠きとし、第2の止め部分を突起とすることもできると理解され;さらに、当業者には、上述のような止め機構を提供する第1および第2の止め部分を得るための、いくつかの知られている代替の手段を想定することが可能である。
【0062】
中間部材27はまた、中間部材の外壁31の傾斜溝の形をしている、軸方向傾斜部分30を含む。この傾斜路は、外壁31の切り込み、または中間部材27を全体で通る切り欠きとすることができる。傾斜路は傾斜している;しかし、どちらの方向にも傾斜できると理解され、湾曲した形状であることも、1つよりも多い傾度を含むこともある。必要な傾斜路の傾きは、キャップ12を取り外すために必要な外側部材21の回転運動の方向に依存する。中間部材27はまた、ハウジング11に回転不能に固定され、これにより中間部材27が、したがって内側部材24が回転する運動が、外側部材21がねじられたり回転されたりした場合でさえも防止される。
【0063】
2つの構成要素を互いに回転可能に軸方向に連結するには、当業者に知られているいくつかの方法があることを理解されたい。溝、クリップ、ボス、形成物および突起の任意の組合せが、上述の各構成要素を連結するために使用されて、上述の要件に応じて、回転運動、軸方向運動のどちらかが可能になるか、どちらも可能にならない。持ち上げ部分20は中間部材27に設置され、軸方向傾斜部分30は外側部材21に設置されることもまた理解される。第1の止め部分は内側部材24に設置され、第2の止め部分は中間部材27に設置される。止め部分はまた、ある点までの相対的な軸方向運動を可能にし、その点を過ぎてからの相対的な軸方向運動を防止する上述の任意の知られている機構とすることもできる。
【0064】
キャップ12をハウジング11から取り外す機構は、以下のように説明され、図12に示された各段階で見ることができる。使用者が外側部材21をねじるか回すと、その力が外側部材21から内側部材24までクリップ33を介して伝達される。内側部材24は、ハウジング11から遠位方向に動く。持ち上げ部分20は、軸方向傾斜部分30に沿って第1の部分から第2の部分まで移動する。すなわち、内向きに突出するボスは、外側部材21がひねられると傾斜路に沿って移動する。第1の部分は軸方向傾斜部分の近位最端部であり、第2の部分は軸方向傾斜部分の遠位最端部である。傾斜路の端部で、中間部材27と外側部材21は、軸方向に互いに固定される。次に、外側部材21は持ち上げられて
、外側部材21がひねられる前に必要であったよりも少ない力で、また上述の方法の運動量増大の故により滑らかに、キャップが取り外される。注射デバイス10はさらに、ニードルシールド1を含むこともあり、キャップ12を取り外すとニードルシールド1が同時に取り外される。
【0065】
注射デバイスのキャップ12を組み立てる方法は、以下の工程を含む。中間部材27および内側部材24は、組み立て機器内の定位置に保持される。次に、外側部材21は内側部材24の上にクリップ留めされて、サブアセンブリが形成される。場合によって、中間部材27は、たとえば、それだけには限らないが、ねじ山、突起または溝とすることができる一次係合部を組み込む。その場合、外側部材21は、たとえば、それだけには限らないが、一次係合部に適合するねじ山、突起または溝とすることができる二次係合部分を含む。外側部材21は、内側部材24にクリップ留めされ、外側部材21の二次係合部分もまた、中間部材27の一次係合部分に係合する。サブアセンブリはハウジングアセンブリに取り付けられ、このハウジングアセンブリは事前に組み立てられており、ハウジング11と、針17を覆うためのニードルシールド1とを含む。注射デバイスは、蓋23が内側部材24の上にクリップ留めされ、押し嵌め連結によって外側部材21と係合する前に、プライミング措置を受ける。
【0066】
本発明の別の態様が図13に示されている。いくつかの構成は、以前の図と同じままであり、同様の構成要素は同じ参照数字を保持している。中間部材27は、一次突出ボス37の形の第1の持ち上げ部分20と、二次突出ボス39の形の第2の持ち上げ部分50とを有する。外側部材は、一次傾斜路34の形の第1の軸方向傾斜部分30を含み、内側部材は、二次傾斜路35の形の第2の軸方向傾斜部分40を含む。傾斜路34、35は、内側もしくは外側部材、切り込みもしくは溝、または内側もしくは外側部材を全体で通る切り欠きから、突出していることがあることを理解されたい。傾斜路は傾斜している;しかし、どちらの方向にも傾斜すること、湾曲すること、または1つよりも多い傾度を含むことができることを理解されたい。
【0067】
一次突出ボス37は、第1の位置から第2の位置への、図示の例では傾斜路の遠位最端部から傾斜路の近位最端部への、一次傾斜路34と係合するように構成される。中間部材27は、外側部材21ではなく内側部材24に、軸方向に固定される。外側部材がハウジングから遠位方向に引っ張られると、中間部材27は、内側部材24と係合しているので、軸方向運動に抵抗する。その結果、中間部材27は、一次傾斜路34と一次ボス37が係合しているので、強制的に回転させられる。上述のように外側部材21が持ち上げられ中間部材27が回転するとき、二次ボス39は二次傾斜路35と係合している。内側部材は、ハウジング11に回転不能に固定されているので、中間部材27と共に回転することが制限されており、したがって、二次ボス39と二次傾斜路35が係合していることにより、内側部材がハウジング11から遠位方向に強制的に上げられる。その結果、キャップ12はハウジングから取り外される。
【0068】
第1の軸方向傾斜部分30が、図13に示されるように、第2の軸方向傾斜部分40の傾度よりも浅い傾度を軸方向に有する場合、遠位方向に引っ張ることによる外側部材21の軸方向運動は、内側部材の軸方向運動よりも大きい。この場合、内側部材24にかかる軸方向の力は、外側部材21に加わる軸方向の力よりも大きい。これを反対にできること、および第2の軸方向傾斜部分40が、第1の軸方向傾斜部分の傾度よりも浅い傾度を軸方向に有することもあり得ることが理解される。このことは、上述のように外側部材21がハウジング11から引っ張られると、外側部材21の軸方向運動により、外側部材の軸方向運動よりも大きい内側部材の軸方向運動が生じることを意味する。
【0069】
2つの構成要素を互いに回転可能に軸方向に連結するには、当業者に知られているいく
つかの方法があることを理解されたい。溝、クリップ、ボス、形成物および突起の任意の組合せが、上述の各構成要素を連結するために使用されて、上述の要件に応じて、回転運動、軸方向運動のどちらかが可能になるか、どちらも可能にならない。持ち上げ部分20、50が外側部材に設置され、内側部材および軸方向傾斜部分30、40が中間部材27または上記のいずれかの組合せに設置されるとも理解される。外側部材21および内側部材24は傾斜路を含み、中間部材27は、外側部材に向かい、かつデバイスの中心軸から外側に向いている突出ボスと、内側部材に向かってデバイスの中心軸の内側に向いている別のボス、または上述の機構を容易にする上記の任意の組合せとを含む、と考えられる。
【0070】
注射デバイス10は、持ち上げ部分20または第2の持ち上げ部分50と係合して使用前のキャップ12とハウジング11の相対運動に抵抗するために、軸方向傾斜部分30または第2の軸方向傾斜部分40の一端に保持部分42を含み得る。キャップは、キャップを取り外す前に、近位方向に押されて持ち上げ部分が保持部分42から解放される必要がある。このことの利点は、早すぎるキャップの取り外しが防止されることであり、この構成はまた、保管または輸送の間の、デバイスを損傷するおそれがあるデバイスの特定の構成要素の動きを防止することもできる。
【0071】
本発明の別の態様が図14および図15に示されており、いくつかの構成は以前の図と同じままであり、同様の構成要素は同じ参照数字を保持している。この態様では、ハウジング11の内壁15が軸方向傾斜部分30を含み、この部分は、この態様では内部傾斜路45になる。持ち上げ部分20は、近位に突出するボス46であり、ボス46は、外側部材21の近位縁部から下向きに、外側部材21の近位方向に延びる。外側部材が回転すると、近位に突出するボス46は、内部傾斜路45と係合して外側部材21を持ち上げ、内側部材24は、ニードルシールド1に回転不能に固定されているが、軸方向には蓋23および外側部材21にロックされている。したがって、外側部材21および蓋23が回転することにより、ニードルシールド1、ニードルスリーブまたは内側部材24が回転することなく、キャップが持ち上げられて取り外すことが可能になる。内側部材24は、2つの部材、内側管47および外側管48で作られることが理解される。以下で説明するコアリングが問題にならない場合、内側管47が外側部材または蓋に一体化しているか、または固定して連結される。さらに、外側管48が内側管47に対して回転可能であり得ることが想定される。
【0072】
上述の軸方向傾斜部分30が、図17に示されたハウジングの外面16に配置され、これにより、軸方向傾斜部分30が、キャップ取り外し(キャップを注射デバイスから取り外すこと)の前でも後でも見えるようになることを理解されたい。さらに、軸方向傾斜部分30は、ハウジングの外面16にあり得るが、図16のように、他の態様よりもさらに近位方向に延びる長い外側部材21によって隠されることがある。軸方向傾斜部分30は、キャップが注射デバイスから取り外される前には隠されているが、キャップが注射デバイスから取り外された後には見える。
【0073】
軸方向傾斜部分30は、半月の形、半円形、傾斜面がどちらかの方向にある直線状、V字形、または別の傾斜形であることが理解される。持ち上げ部分が軸方向傾斜部分と係合すること、ならびに、外側部材21が回転されるか持ち上げられたときに、内側部材が上述のいずれかの態様で説明したように遠位方向に持ち上げられることが適切に可能になる、任意の形状が想定される。持ち上げ部分は、対応する軸方向傾斜部分に応じてハウジングの中心軸に対して内向きに、外向きに、近位に、または遠位に延びる突起とすることができる。持ち上げ部分および軸方向傾斜部分は、ハウジングまたは外側部材の内面または外面に配置される。
【0074】
持ち上げ部分は、外側部材の近位縁部から軸方向の近位方向に延びる外側部材上の突起
であり、軸方向傾斜部分は、ハウジング上の凹部または突起である;
【0075】
持ち上げ部分は、ハウジングの遠位縁部から軸方向の遠位方向に延びるハウジング上の突起とすることができ、軸方向傾斜部分は、外側部材上の凹部または突起である;
【0076】
持ち上げ部分は、ハウジングの中心軸に向かって延びる、外側部材の内面上の内向きに突出するボスとすることができ、軸方向傾斜部分はハウジング上の凹部または突起である;および/または、
【0077】
持ち上げ部分は、ハウジングの中心軸から延びる、ハウジングの外面上の外向きに突出するボスとすることができ、軸方向傾斜部分は、外側部材上の凹部または突起である。
【0078】
さらに、持ち上げ部分は、ハウジング11および外側部材21のうちの一方の上にあり、軸方向傾斜部分は、ハウジング11および外側部材21のうちの他方の上にあることが理解される。
【0079】
上述の持ち上げ機構は、外側部材21とハウジング11の間の境界面を有効にし、この境界面は形状が、たとえば、それだけには限らないが、楕円形、丸みのある正方形または三角形の非円形である。これは、外側部材21がハウジング11に対して回転すると外側部材21がハウジング11から持ち上げられることによる。これにより、外側部材21とハウジング11の間の、持ち上げ機構である唯一の接点が残る。
【0080】
本明細書に記載のいずれの斜面または軸方向傾斜部分もまた、一定ではないことがあり得る理解される。このことは、傾斜を調整することが、やはり一定でないニードルシールド取り外し力に適合できるという利点をもたらし、すなわちいくつかの実施形態では、キャップが取り外されるにつれて力が一様に強まり、その後最高点まで急増する。したがって、傾斜の変化が、使用者への小さい初期補助と、その後に続く、最高点で必要なより大きい力に適合するための使用者への大きい補助とを提供する、調整をもたらすことができる。
【0081】
本明細書に記載のいずれの持ち上げ部分も、たとえば、それだけには限らないが、溝、クリップ、ボス、形成物、突起、カムまたは被動歯車とすることができることを理解されたい。本明細書に記載のいずれの軸方向傾斜部分も、たとえば、それだけには限らないが、突起、切り込みもしくは溝、または切り欠きとすることができることを理解されたい。軸方向傾斜部分は傾斜している;しかし、どちらの方向にも傾斜すること、湾曲すること、または1つよりも多い傾度を含むことができることを理解されたい。持ち上げ部分は、回転により軸方向運動を駆動するために、または軸方向運動により回転を駆動するために、軸方向傾斜部分と係合できなければならない。
【0082】
本明細書に記載のいずれの実施形態の内部部材も、外側部材に一体化しているか、2つの部材、内側管47および外側管48から形成され、コアリングが問題にならない場合、内側管47は外側部材21と一体化していることを理解されたい。コアリングとは、ニードルシールド1が回転することによる針17の損傷のことである。針17の端部は、ニードルシールド1が針17に対して回転するときに、ニードルシールド1の内面の小部分を切り取る。次に、ニードルシールド1がシリンジ18から取り外されるとき、切り取り部分が針17の中に残って針17を閉塞し、注射デバイス10を損傷することがあり得る。
【0083】
注射デバイス1は、使い捨てであることも再使用可能であることもある。
【0084】
注射デバイス1は、固定用量または使用者設定可能用量を提供することができる。
【0085】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、1つもしくはそれ以上の活性医薬成分またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、場合により薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬製剤を記述する。活性医薬成分(「API」)とは、最広義には、ヒトまたは動物に対して生物学的効果を有する化学構造体のことである。薬理学では、薬剤または医薬は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に使用されるか、さもなければ身体的または精神的なウェルビーイングを向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限定された継続期間で、または慢性障害では定期的に使用可能である。
【0086】
以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPIまたはその組合せを含み得る。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが挙げられ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。1つまたはそれ以上の薬物の混合物も企図される。
【0087】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他の硬性もしくは可撓性のベッセルであり得る。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(たとえば、APIと希釈剤、または2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジであり得るか、またはそれを含み得る。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0088】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物または薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療および/または予防のために使用可能である。障害の例としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。APIおよび薬物の例は、ローテリステ2014年(Rote Liste 2014)(たとえば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)または86(オンコロジー薬剤))やメルク・インデックス第15版(Merck Index,15th edition)などのハンドブックに記載されているものである。
【0089】
1型もしくは2型糖尿病または1型もしくは2型糖尿病に伴う合併症の治療および/ま
たは予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、はそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「アナログ」および「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/または交換によりおよび/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造たとえばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基または他の天然に存在する残基または純合成アミノ酸残基のどれかであり得る。インスリンアナログは、「インスリンレセプターリガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、たとえば、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば脂肪酸)がアミノ酸の1つまたはそれ以上に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失し、および/または非コード可能アミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えられ、または天然に存在するペプチドに非コード可能なものを含めてアミノ酸が付加される。
【0090】
インスリンアナログの例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0091】
インスリン誘導体の例は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(Levemir)(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、トレシーバ(Tresiba)(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0092】
GLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストの例は、たとえば、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、バイエッタ(Byetta)(登録商標)、ビデュリオン(Bydureon)(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(ビクトーザ(Victoza)(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(シンクリア(Syncria)(登録商標))、デュラ
グルチド(トルリシティ(Trulicity)(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0093】
オリゴヌクレオチドの例は、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセンナトリウム(キナムロ(Kynamro)(登録商標))である。
【0094】
DPP4阻害剤の例は、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0095】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0096】
多糖の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(シンビスク(Synvisc)(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0097】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体であり得る。抗体という用語は、4価二重特異的タンデムイムノグロブリン(TBTI)および/またはクロスオーバー結合領域配向を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗原結合分子も含む。
【0098】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含み得るが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な
抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、四重特異的および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価または多価抗体フラグメント、たとえば、2価、3価、4価および多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0099】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与し得るか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼし得る。
【0100】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0101】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物または薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。
【0102】
当業者には、本明細書に記載のAPI、公式、装置、方法、システムおよび実施形態の様々な構成要素の修正(追加および/または除去)を、このような修正、およびありとあらゆるその均等物を包含する本発明の全範囲および趣旨から逸脱せずに加えることができることが理解されよう。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【手続補正書】
【提出日】2024-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を有する細長いハウジングと、該ハウジングの遠位端に設けられたキャップとを含む注射デバイスであって、キャップがハウジングから取り外し可能であり:
キャップをハウジングから取り外すときに使用者が把持するための外側部材と;
該外側部材の実質的に内部に配置された中間部材であって、該中間部材または外側部材のうちの少なくとも一方は、中間部材または外側部材のうちの他方に対して回転可能である、中間部材と;
該中間部材の実質的に内部に配置され、外側部材および中間部材のうちの少なくとも1つに連結された内側部材であって、薬剤のシリンジのニードルシールドに、このようなシリンジがハウジングに受けられるときに係合するように構成されている内側部材と、
キャップおよび係合されたニードルシールドをハウジングから取り外すために必要な力を低減させるように構成された持ち上げ機構であって、外側部材または中間部材の回転運動が内部部材のハウジングから遠位方向の軸方向運動に変換されるように少なくとも1つの持ち上げ部分と係合している少なくとも1つの軸方向傾斜部分を含む持ち上げ機構とを含む、前記注射デバイス。
【外国語明細書】