(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010571
(43)【公開日】2024-01-24
(54)【発明の名称】有効間隙率測定装置とそれを用いた有効間隙率の測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/24 20060101AFI20240117BHJP
【FI】
G01N33/24 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022111983
(22)【出願日】2022-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 慎也
(72)【発明者】
【氏名】河内 友一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健一
(72)【発明者】
【氏名】三戸 勇吾
(72)【発明者】
【氏名】松本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】中下 慎也
(57)【要約】
【課題】簡単な操作によって土の有効間隙率を効率良く測定することが可能な有効間隙率測定装置とそれを用いた有効間隙率の測定方法を提供する。
【解決手段】有効間隙率測定装置1は、下端2aにフランジ2bを有し、下端2aにメッシュ部材11が設置された円筒部材2が、貯水部3aを有する固定部材3を介して架台4に取り付けられている。固定部材3の排水口3bに接続された排水管7には、内部にオリフィス板8が排水口7aの手前に設置されるとともに排水コック9がオリフィス板8と排水口3bの間に設置されており、下方には貯水容器10が設置されている。架台4にはビュレット12が鉛直方向と平行に設置され、ビュレット12の下端12aは通水管13を介して固定部材3の通水口3cに接続されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の有効間隙率を測定する際に用いられる有効間隙率測定装置であって、
鉛直方向と平行に設置されて前記試料と試験水が上方から流し込まれる試料容器と、
この試料容器の下方に設置された貯水容器と、
流出口を有し、前記試料容器の排水口に取り付けられたオリフィス板と、
前記試料容器を支持する架台と、を備えていることを特徴とする有効間隙率測定装置。
【請求項2】
前記試料容器の下端には、前記オリフィス板よりも上方となる箇所にメッシュ部材が設置されていることを特徴とする請求項1に記載の有効間隙率測定装置。
【請求項3】
前記試料容器は内部に流し込まれた前記試料や前記試験水を視認可能に少なくとも一部が透明な部材によって形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有効間隙率測定装置。
【請求項4】
前記オリフィス板の前記流出口から流出する前記試験水の流量を調節する流量調節手段を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有効間隙率測定装置。
【請求項5】
前記流量調節手段が排水コックであることを特徴とする請求項4に記載の有効間隙率測定装置。
【請求項6】
前記試料容器の下部に設けられた通水口に一端が連結された通水管と、
この通水管の他端が下端に接続されるとともに長手方向が鉛直方向と平行をなすように設置されたビュレットと、を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有効間隙率測定装置。
【請求項7】
有効間隙率の測定方法であって、
試料を試験水で飽和させる工程と、
流出口を有するオリフィス板が下端に取り付けられるとともに前記流出口から流出する前記試験水の流量を調節する流量調整手段を備えた試料容器に前記試料及び前記試験水を溜める工程と、
前記流量調節手段を操作して前記試料容器内における前記試験水の水面の高さが前記試料の最上部の高さと一致するように前記試験水の水位を調整する工程と、
前記流量調節手段を操作して前記試料容器内の前記試験水を排出する工程と、
前記試料容器内に溜められた前記試料の体積と前記試料容器から排出された前記試験水の体積から前記有効間隙率を求める工程と、を備えたことを特徴とする有効間隙率の測定方法。
【請求項8】
前記試料容器に前記試料及び前記試験水を溜める工程と前記試験水の水位を調整する工程の間に、
別試料を別の前記試験水と混合して撹拌する工程と、
混合された前記別試料及び別の前記試験水を前記試料容器内に流し込む工程と、を備えていることを特徴とする請求項7に記載の有効間隙率の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土、砂や礫、あるいは土壌改良材などの試料の有効間隙率を測定する装置に係り、特に、簡単な操作によって試料の有効間隙率を効率良く測定することが可能な有効間隙率測定装置とそれを用いた有効間隙率の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海底や湖底などに堆積した底泥に覆砂することにより、悪臭の原因となる硫化水素や栄養塩の溶出が抑制されることが知られている。覆砂には、海砂が用いられることが多いが、近年では海砂の採取が規制されていることもあり、海砂に代わるものとして、石炭灰造粒物からなる土壌改良材が注目されている。石炭灰造粒物は、多孔質体であり、砂よりも軽く、優れた吸排水効果を有している。
試料として、土壌改良材などの土の性能を評価する場合、内部に浸透する有機泥の残留モデルを用いることが有効であるが、残留モデルを作成するためにはその土の有効間隙率を測定する必要がある。
【0003】
土全体の体積のうち、土粒子で占められていない部分は間隙と呼ばれ、この間隙は、さらに空気と水の間隙に分けられる。また、土粒子の体積に対する空気と水の体積の割合は間隙比と呼ばれ、土全体の体積に対する空気と水の体積の割合は間隙率と呼ばれる。間隙比は、土全体の体積と土粒子の乾燥重量と土粒子の単位体積重量(約2.7)から求められることが一般に知られており、間隙率は間隙比から更に求めることが可能である。
この間隙率に対し、土粒子の間を移動できる水の土全体の体積に対する割合は有効間隙率と呼ばれる。間隙内に存在する水の一部は吸着水や毛管水の状態で間隙内に保留されることから、仮に間隙内が全て水によって占められている(すなわち、間隙が水によって飽和している)場合でも、その間隙内に存在する全ての水が土粒子の間を移動できるわけではない。したがって、実際に土粒子の間を移動できる水の体積の土全体の体積に対する割合(有効間隙率)は水によって飽和している状態の間隙の体積の土全体の体積に対する割合(間隙率)よりも小さい。
【0004】
この有効間隙率を測定する技術については、例えば、特許文献1に「トレーサを用いた透水試験による帯水層の有効間隙率測定法」という名称で、コンクリートや土壌を用いて隔離した有害物質の透過移動速度を評価する場合に必要な帯水層の有効間隙率を測定する方法に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された透水試験装置に係る発明は、透過用液体が収容されたマリオットタンク(貯留された液体を常に一定の速度で流出させる構造を備えた容器)と、このマリオットタンクの下方に配置され、パイプを介してマリオットタンクに接続されるとともに下方に吐出口が設けられた試料容器と、この試料容器に挿入された供試体を透過した透過液体のサンプルを採取するために吐出口の下方に配置されたフラクションコレクタを備えた構造となっている。そして、有効間隙率測定方法に係る発明は、上述の試験装置において、トレーサを含む液体を供試体に透過させ、フラクションコレクタで採取された透過液体に含まれるトレーサの濃度の経時変化から求めた実流速と、単位時間に供試体を透過した液量を試料容器の断面積で割って求めた見かけの流速から有効間隙率を算出することを特徴とする。
特許文献1に開示された発明によれば、トレーサを含む透過液体を用いた透水試験と解析により、土のような多孔質物体帯水層の有効間隙率と実流速を求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された発明では、トレーサを含む透過液体を用いた透水試験と解析によって供試体の有効間隙率を求めることができるものの、供試体を透過する液体の流速を透過液体に含まれるトレーサの経時変化に基づいて計算する必要があり、当該流速の算出に時間を要することから、有効間隙率を短時間に効率良く求めることができないという課題があった。
本発明は、このような課題に対処してなされたものであり、簡単な操作によって土の有効間隙率を効率良く測定することが可能な有効間隙率測定装置とそれを用いた有効間隙率の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第1の発明は、試料の有効間隙率を測定する際に用いられる有効間隙率測定装置であって、鉛直方向と平行に設置されて試料と試験水が上方から流し込まれる試料容器と、この試料容器の下方に設置された貯水容器と、流出口を有し、試料容器の排水口に取り付けられたオリフィス板と、試料容器を支持する架台と、を備えていることを特徴とする。
第1の発明における「試料」とはその材質や成分を問わず、土、砂、石、礫をはじめ、広く有効間隙率を測定可能なあらゆる粒子、粒状物、多孔質体等の固体物を含む概念である。また、第1の発明において、「試料容器に試料と試験水が上方から流し込まれる」とは、試料容器の上部に限らず、試料容器の中央付近に流入口が設けられている場合のように排水口よりも上方に位置する箇所から試料や試験水を試料容器の内部に流し込む場合も含まれることを意味している。また、「鉛直方向と平行に設置された試料容器」には「鉛直方向と略平行に設置された試料容器」も含まれる。さらに、「試料容器を支持する架台」には、試料容器を支持するために他の装置から独立して設置された専用の架台に限らず、連結部材などを介して試料容器を支持する構造となっている場合には他の装置のために設けられた架台も上述の「試料容器を支持する架台」に含まれる。
【0008】
第1の発明では、排水口を塞いだ状態で試料容器の上方から流し込まれた試験水と試料は試料容器内に溜まることになる。このとき、排水口を試料容器からの試料の排出を防ぐのに適した大きさに設定しておけば、排水口を開放しても試料が試料容器から排出されてしまうおそれはなく、試験水のみが試料容器から排出される。そして、排水口を通過する試験水の流速は、オリフィス板の流出口の大きさによって規定される。すなわち、第1の発明においては、排水口を塞ぐことにより試料容器の内部に試料と試験水を溜めた状態で、排水口を開放すると、試験水が一定の流速で排水口を通って試料容器から排出されるという作用を有する。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、試料容器の下端には、オリフィス板よりも上方となる箇所にメッシュ部材が設置されていることを特徴とする。
第2の発明における「試料容器の下端に設置されるメッシュ部材」には、例えば、試料容器の下端の近くのように「試料容器の略下端に設置されるメッシュ部材」も含まれるものとする。
第2の発明においては、第1の発明の作用に加え、メッシュ部材のメッシュの大きさによってメッシュ部材を通過できる試料の粒子の大きさが規定されるという作用を有する。
【0010】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、試料容器は内部に流し込まれた試料や試験水を視認可能に少なくとも一部が透明な部材によって形成されていることを特徴とする。
第3の発明においては、第1の発明又は第2の発明の作用に加え、試料容器内の試料や試験水の水面の高さが試料容器の外側から容易に視認されるという作用を有する。
【0011】
第4の発明は、第1の発明又は第2の発明において、オリフィス板の流出口から流出する試験水の流量を調節する流量調節手段を備えていることを特徴とする。
第4の発明においては、第1の発明又は第2の発明の作用に加え、試料容器からの試験水の排出及びその停止並びに試験水の排出量の調節が容易であるという作用を有する。
【0012】
第5の発明は、第4の発明において、流量調節手段が排水コックであることを特徴とする。
第5の発明においては、試料容器からの試験水の排出及びその停止並びに試験水の排出量を調節するという第4の発明における流量調節手段の機能が簡単な構造によって実現されるという作用を有する。
【0013】
第6の発明は、第1の発明又は第2の発明において、試料容器の下部に設けられた通水口に一端が連結された通水管と、この通水管の他端が下端に接続されるとともに長手方向が鉛直方向と平行をなすように設置されたビュレットと、を備えていることを特徴とする。
ビュレットとは、分析化学の容量滴定の際に使用される実験器具のことであり、太さが一様な細長いガラス管に目盛線が均等に刻まれるとともに、下端に設置されたコックを操作して液の滴下量を調整する構造が一般的であるが、第6の発明における「ビュレット」には、下端にコックが設けられていない場合も含まれるものとする。
第6の発明においては、第1の発明又は第2の発明の作用に加え、試料容器の内部に試験水が流し込まれると、その試験水の一部がビュレットの内部に貯留されるとともに、ビュレット内の水位が試料容器内の水位と一致するように変動するという作用を有する。
【0014】
第7の発明は、有効間隙率の測定方法であって、試料を試験水で飽和させる工程と、流出口を有するオリフィス板が下端に取り付けられるとともに流出口から流出する試験水の流量を調節する流量調整手段を備えた試料容器に試料及び試験水を溜める工程と、流量調節手段を操作して試料容器内における試験水の水面の高さが試料の最上部の高さと一致するように試験水の水位を調整する工程と、流量調節手段を操作して試料容器内の試験水を排出する工程と、試料容器内に溜められた試料の体積と試料容器から排出された試験水の体積から有効間隙率を求める工程と、を備えたことを特徴とする。
なお、第7の発明における「試料」の概念も第1の発明における「試料」の概念と同じである。
第7の発明では、流出口を有するオリフィス板が下端に取り付けられるとともに流出口から流出する試験水の流量を調節する流量調整手段を備えた試料容器が用いられる工程において、第1の発明及び第4の発明と同様の作用が発揮される。
【0015】
第8の発明は、第7の発明において、試料容器内に試料及び試験水を溜める工程と試験水の水位を調整する工程の間に、別試料を別の試験水と混合して撹拌する工程と、混合された別試料及び別の試験水を試料容器内に流し込む工程と、を備えていることを特徴とする。
第8の発明においては、別試料の沈降に伴う有効間隙率の変化を調べる実験を行う場合に第7の発明と同様の作用が発揮される。
なお、別試料とは、試料の有効間隙率への影響を知りたい他の試料を意味しており、試料よりも粒径の細かなものであれば、その材質や成分を問わず、土、砂、石、礫をはじめ、広く有効間隙率に影響を与える可能性のあるあらゆる粒子、粒状物、多孔質体等の固体物を含む概念である。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、排水口を塞いだ状態で試料容器の上方から試験水と試料を流し込んだ後に、排水口を開放して試験水の一部を排出することで、試験水の水面の高さが試料の最上部の高さと一致するように試験水の水位を調整することができる。これにより、有効間隙率の説明において土を例として既に述べた「土全体の体積」に相当する「試料容器内の試料と試験水の体積」が求められる。
そして、この状態から排水口を開放し、「試料容器から排出される試験水の体積」を計測することにより、有効間隙率の説明において同様に土を例として述べた「実際に土粒子の間を移動できる水の体積」が求められる。したがって、第1の発明によれば、上述の「試料容器から排出される試験水の体積」の「試料容器内の試料と試験水の体積」に対する割合として、有効間隙率を容易に求めることができる。
また、第1の発明において、オリフィス板を流出口の大きさの異なるものに変えると、排水口を通過する試験水の流速が変わるため、試料内の間隙を通過する試験水の流速が変化する。したがって、第1の発明によれば、流出口の大きさの異なる複数枚のオリフィス板を用いることにより、試料内の間隙を通過する試験水の流速と有効間隙率との関係を調べる実験を容易に行うことが可能である。
【0017】
第2の発明において、メッシュ部材のメッシュの大きさを変えると、メッシュ部材を通過できる試料の粒子の大きさが変わる。そのため、例えば、粒度の小さい試料について実験をする場合には、メッシュの小さいメッシュ部材を用い、粒度の大きい試料について実験をする場合には、メッシュの大きいメッシュ部材を用いるようにすることで、粒度の異なる試料を用いた場合でも試料容器の排出口の大きさを変えることなく、試料容器からの試料の排出を防ぐことができる。したがって、第2の発明によれば、第1の発明の効果に加え、メッシュの大きさの異なる複数のメッシュ部材を用いることで、試料の粒度と有効間隙率との関係を調べる実験を容易に行うことができるという効果を奏する。
【0018】
第3の発明によれば、試料容器内の試料や試験水の水面の高さが試料容器の外側から視認できるため、第1の発明又は第2の発明の効果に加え、試料容器の表面に長手方向に沿って目盛を設けることで、試験水が試料容器から排出される流速(水位の単位時間当たりの変化)を容易に測定できるという効果を奏する。
【0019】
第4の発明によれば、試料容器からの試験水の排出及びその停止並びに試験水の排出量の調節が容易であるため、第1の発明又は第2の発明の効果に加え、試料の有効間隙率を測定する作業を効率良く行うことができるという効果を奏する。
【0020】
第5の発明によれば、第4の発明の効果に加え、流量調節手段の機能が簡単な構造によって実現されるため、製造コストを安くすることができるという効果を奏する。
【0021】
第3の発明では、試料容器内に粘土を投入した際に、試料の上部に粘土が堆積してしまい、試料容器の外部から透明な部材を通して試料上端の水位を確認できない場合がある。これに対し、第6の発明によれば、第1の発明又は第2の発明の効果に加え、試料容器内の水位と一致するように変動するビュレット内の水位を読み取ることで、試料容器の外部から透明な部材を通して試料上端の水位を確認できない場合であっても第3の発明の場合よりも簡単かつ正確に試料上端の水位を確認することができるという効果を奏する。
【0022】
第7の発明では、流量調節手段を操作して試料容器内における試験水の水面の高さが試料の最上部の高さと一致するように試験水の水位を調整する工程を備えているため、有効間隙率の計算に必要な「試料容器内の試料と試験水の体積」を容易に求めることができる。そして、流量調節手段を操作して試料容器内の試験水を排出する工程において、土を例として上述した有効間隙率の計算に必要な「実際に土粒子の間を移動できる水の体積」が「試料容器から排出される試験水の体積」として求められる。したがって、第7の発明によれば、この「試料容器から排出される試験水の体積」の「試料容器内の試料と試験水の体積」に対する割合を計算することで、有効間隙率を容易に求めることが可能である。
また、第7の発明によれば、流出口の大きさの異なる複数枚のオリフィス板を用いることにより、試料内の間隙を通過する試験水の流速と有効間隙率との関係を調べる実験を容易に行うことが可能である。さらに、第7の発明によれば、試料容器からの試験水の排出及びその停止並びに試験水の排出量の調節が容易であるため、試料の有効間隙率を測定する作業を効率良く行うことができる。
【0023】
第8の発明によれば、別試料の沈降に伴う有効間隙率の変化を調べる実験を行う場合に第7の発明と同様の効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】(a)及び(b)はそれぞれ本発明の実施の形態に係る有効間隙率測定装置の外観を示した正面図及び平面図であり、(c)は同図(b)におけるA-A線矢視断面図である。
【
図2】(a)乃至(d)は本発明の有効間隙率の測定方法によって試料の有効間隙率を測定する様子を模式的に示した図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る有効間隙率の測定方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4】(a)乃至(e)は本発明の有効間隙率の測定方法によって試料の有効間隙率を測定する様子を模式的に示した図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る有効間隙率の測定方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態に係る有効間隙率測定装置の具体的な構造とそれを用いた有効間隙率の測定方法とそれらの実施の形態の作用及び効果について
図1乃至
図5を参照しながら実施例を用いて具体的に説明する。
なお、本実施の形態に係る有効間隙率測定装置を構成する筒状容器やビュレットは鉛直方向と平行に設置された状態で使用されるものであるため、以下の説明では実際に使用される状態を想定して、それらの構成要素について「上部」及び「下部」並びに「下方」及び「下端」という表現を用いている。また、有効間隙率の測定方法に関する説明では、純水を試験水として用いているが、純水に塩分を溶解させたものを試験水として用いても良い。例えば、塩分の濃度が異なる複数の試験水を用いることにより、塩分の濃度と試料の有効間隙率の関係を調べる実験を行うことができる。
【実施例0026】
図1(a)及び
図1(b)はそれぞれ本発明の実施の形態に係る有効間隙率測定装置の外観を示した正面図及び平面図であり、
図1(c)は
図1(b)におけるA-A線矢視断面図である。なお、図が煩雑になるのを避けるため、
図1(a)では1本のアングル材についてのみ符号を付し、
図1(b)では1つのボルト挿通孔と1本のアングル材についてのみそれぞれ符号を付している。
図1(a)乃至
図1(c)に示すように、本発明の有効間隙率測定装置1は、ガラスやプラスチックなどの透明な部材によって形成され、下端2aにフランジ2bを有する円筒部材2が固定部材3を介して架台4に取り付けられた構造となっている。
固定部材3は、上面が開放され、平面視した場合に内径が円筒部材2の内径と等しい円形をなす貯水部3aを有し、この貯水部3aの排水口3b及び通水口3cが下面と側面にそれぞれ設けられている。円筒部材2はフランジ2bのボルト挿通孔2cに挿通されたボルト(図示せず)を用いて、円筒軸が貯水部3aの中心軸と一致するようにフランジ2bが固定部材3のフランジ3dにボルト接合されている。なお、排水口3bを塞いだ場合、円筒部材2に上方から流し込まれた試料や試験水は円筒部材2の内部と固定部材3の貯水部3aに貯留する。すなわち、円筒部材2と固定部材3は、内部に試料や試験水を貯留可能な試料容器を構成している。
【0027】
架台4は、直方体をなすように組まれた12本のアングル材5aによって構成されるフレーム5と、このフレーム5の上面に接合された天板6からなる。また、天板6には固定部材3のフランジ3dの外径よりも内径が小さい円形の取付穴6aが設けられており、固定部材3は、天板6の上面6bにフランジ3dが係止するとともに、フランジ3d以外の部分が天板6の下方へ突出し、かつ、貯水部3aの中心軸が天板6に垂直となるように取付穴6aに設置されている。したがって、水平な床面Gに架台4が設置されると、床面Gと平行な天板6に対して垂直な円筒部材2及び固定部材3からなる試料容器は鉛直方向と平行な状態になる。
【0028】
固定部材3の排水口3bには、排水管7が接続されており、排水管7の内部には中心に流出口(図示せず)を有するオリフィス板8が排水口7aの手前に設置されるとともに、排水コック9がオリフィス板8と排水口3bの間に設置されている。このとき、排水管7の排水口7aは試料容器の排水口として機能し、排水口7aを通過する試験水の流速は、オリフィス板8の流出口の大きさによって規定される。そのため、試料容器の内部に試料と試験水を溜めた状態で、排水管7の排水口7aを開放すると、試験水が一定の流速で排水口7aを通って試料容器から排出されることになる。この場合、オリフィス板8を流出口の大きさの異なるものに変えると、排水口7aを通過する試験水の流速が変わるため、試料内の間隙を通過する試験水の流速が変化する。したがって、有効間隙率測定装置1では、流出口の大きさの異なる複数枚のオリフィス板8を用いることにより、試料内の間隙を通過する試験水の流速と有効間隙率との関係を調べる実験を容易に行うことが可能である。
【0029】
また、オリフィス板8の流出口から流出する試験水の流量を調節する流量調節手段として排水コック9を備えた有効間隙率測定装置1においては、排水コック9の操作により、試料容器からの試験水の排出及びその停止並びに試験水の排出量の調節が容易となっている。したがって、有効間隙率測定装置1によれば、試料の有効間隙率を測定する作業を効率良く行うことができる。
なお、排水管7の排水口7aに着脱可能に蓋を取り付け、この蓋を排水口7aに取り付けたり、排水口7aから取り外したりすることによっても試料容器から試験水を排出させたり、それを停止させたりすることができる。また、排水口7aの開口面積を調節可能な機構を排水管7に取り付けた構造とすることもできる。このような構造であれば、試料容器からの試験水の排出及びその停止に加え、試験水の排出量の調節も可能であるため、上述の流量調節手段としての機能が十分に発揮される。ただし、排水口7aの開口面積を調節する上述の機構や蓋に比べ、排水コック9は操作が容易なだけでなく、試験水の排出量の微調整も可能である。さらに、排水コック9を用いた場合には、上述の流量調節手段の機能が簡単な構造によって発揮されることになるため、有効間隙率測定装置1の製造コストが安くなるというメリットがある。
【0030】
排水管7の排水口7aの下方には上面が開放されるとともに下面が閉塞された貯水容器10が設置されており、円筒部材2の下端2aにはメッシュ部材11が着脱可能に設置されている。すなわち、円筒部材2の内部に設置されたメッシュ部材11は交換可能な状態となっている。
円筒部材2の下端2aにメッシュ部材11が設置されていない場合には、試料容器から試料が排出されてしまうことを防ぐために、排水管7の排水口7aを小さくして試料が通過できないような対策を講じる必要がある。しかしながら、メッシュ部材11はメッシュの大きさに応じてメッシュ部材11を通過できる試料の粒子の大きさが規定されるという作用を有していることから、例えば、粒度の小さい試料について実験をする場合には、メッシュの小さいメッシュ部材11を用い、粒度の大きい試料について実験をする場合には、メッシュの大きいメッシュ部材11を用いるようにすることで、粒度の異なる試料を用いた場合でも排水管7の排水口7aの大きさを変えることなく、試料容器からの試料の排出を防ぐことができる。
したがって、有効間隙率測定装置1によれば、メッシュの大きさの異なる複数のメッシュ部材11を用いることで、試料の粒度と有効間隙率との関係を調べる実験を容易に行うことが可能である。
【0031】
さらに、架台4にはビュレット12が鉛直方向と平行に設置されており、ビュレット12の下端12aは通水管13を介して固定部材3の通水口3cに接続されている。そのため、円筒部材2と固定部材3からなる試料容器の内部に試験水が流し込まれると、その試験水の一部がビュレット12の内部に貯留される。そして、ビュレット12は、内部の水位が試料容器内の水位と一致するように変動する構造となっている。したがって、有効間隙率測定装置1では、試料容器の内部の水位と一致するように変動するビュレット12の内部の水位を読み取ることにより、試料上端の水位を簡単かつ正確に確認することができる。
なお、有効間隙率測定装置1では、円筒部材2がガラスやプラスチックなどの透明な部材によって形成され、内部に溜められた試料や試験水の高さを円筒部材2の外側から容易に視認可能な構造であるため、ビュレット12を設ける代わりに、円筒部材2の表面に長手方向に沿って目盛を設けることによっても、試験水が試料容器から排出される流速(水位の単位時間当たりの変化)を容易に測定することが可能である。また、試験水が排出される流速に加えて、円筒部材2の内径及び求められた有効間隙率から、流量に対する流速(流量の単位時間当たりの変化)を求めることも可能である。
【0032】
有効間隙率測定装置1を用いて試料の有効間隙率を測定する方法について
図2乃至
図5を参照しながら説明する。
図2(a)乃至
図2(d)並びに
図4(a)乃至
図4(e)は本発明の有効間隙率の測定方法によって土壌改良材(以下、試料という。)の有効間隙率を測定する様子を模式的に示した図であり、
図3及び
図5はその有効間隙率を測定する際の手順を示したフローチャートである。なお、
図1を用いて既に説明した有効間隙率測定装置1の構成要素については同一の符号を付すことにより、適宜その説明を省略する。
まず、
図2(a)に示すように所定の粒度に調整した試料14を容器15の内部に満たした純水(以下、試験水16という。)に一晩ほど浸漬して、試料14の微細な空隙が試験水16で飽和した状態にする(
図3のステップS1)。
つぎに、
図2(b)に示すように排水コック9を閉じた状態で試料容器17(円筒部材2と固定部材3からなる前述の試料容器)の内部に試料14を試験水16とともに流し込んで、試料容器17の内部に試料14と試験水16を貯留する(
図3のステップS2)。ただし、当該作業は、試験水16に試料14が完全に浸かった状態になるとともに、試料14の最上部が略水平な平坦面を形成するように注意しながら慎重に行うものとする。
【0033】
その後、
図2(c)に示すように排水コック9をゆっくりと開いて、試験水16の一部を試料容器17から排出することにより、試料容器17の内部における試験水16の水面の高さが試料14の上記平坦面の高さと一致するように試験水16の水位を調整した後、排水コック9を閉じる(
図3のステップS3)。そして、有効間隙率の説明において既に述べた「土全体の体積」に相当する「試料容器17の内部の試料14と試験水16の体積」を測定する。なお、有効間隙率測定装置1では円筒部材2の下端2aに設置されたメッシュ部材11の上面に試料14が載置されており、試料14は全体として側面が円筒部材2の内周面に接触した状態の円筒体をなしていることから、円筒部材2の内径をrとし、メッシュ部材11の上面から試料14の最上部に形成された上述の平坦面までの高さをhとすると、上述の「試料容器17の内部の試料14と試験水16の体積」として、「間隙が試験水16で飽和した状態の試料14の体積V」が以下の式(1)によって求められる。
【0034】
【0035】
図2(d)に示すように排水コック9を開いて、試験水16を試料容器17から完全に排出した後、有効間隙率の説明において既に述べた「実際に土粒子の間を移動できる水の体積」として、「貯水容器10に溜まった試験水16の体積V
1」を計測する(
図3のステップS4)。最後に、「試料容器から排出される試験水の体積」の「試料容器内の試料と試験水の体積」に対する割合として表される有効間隙率を以下の式(2)によって求める(
図3のステップS5)。
【0036】
【0037】
このときビュレット12の内部の水位又は円筒部材2の表面に長手方向に沿って付した目盛を読み取ることで、流速(水位の単位時間当たりの変化)を測定することができる。また、この流速と円筒部材2の内径r及び求められた有効間隙率から、流量に対する流速(流量の単位時間当たりの変化)を求めることも可能である。
つぎに、
図4及び
図5を用いて別試料が土壌改良材の有効間隙率に与える影響を調べる方法について説明する。
まず、
図4(a)に示すように所定の粒度に調整した試料14を容器15の内部に満たした試験水16に一晩ほど浸漬して、試料14の微細な空隙が試験水16で飽和した状態にする(
図5のステップS1)。
つぎに、排水コック9を閉じた状態で試料容器17の内部に試料14の最上部が略水平な平坦面を形成するように注意しながら慎重に試料14を試験水16とともに流し込む。そして、排水コック9をゆっくりと開いて試験水16の一部を試料容器17から排出し、
図4(b)に示すように試料容器17の内部における試験水16の水面の高さが試料14の上記平坦面の高さと一致するように試験水16の水位を調整した後、排水コック9を閉じる(
図5のステップS2)。なお、後述するように次の工程で別試料と別の試験水16を試料容器17に追加した後、再び水位の調整を行うことから、この工程における水位の調整は
図3に示したステップS3における水位の調整とは異なり、必須ではないため、省略しても良い。
【0038】
その後、所定の量の別試料を別の試験水16と混合して撹拌する(
図5のステップS3)。そして、このようにして生成された別試料と別の試験水16の混合物を容器18の内部に貯留し、別試料がまんべんなく試料容器17の内部に沈降するように、容器18の内部の上記混合物を
図4(c)に示すように試料容器17の上部にゆっくりと流し込む(
図5のステップS4)。
さらに、試料容器17の内部における試験水16の水面の高さが試料14の上記平坦面の高さと一致するように、排水コック9をゆっくりと開いて試験水16の一部を試料容器17から排出し、
図4(d)に示すように試験水16の水位を調整した後、排水コック9を閉じる(
図5のステップS5)。そして、
図3のステップS3の場合と同様に、有効間隙率の計算に必要な「土全体の体積」に相当する「試料容器17の内部の試料14と試験水16の体積」として、「間隙が試験水16で飽和した状態の試料14の体積V」を前述の式(1)によって求める。
つぎに、
図4(e)に示すように排水コック9を開いて、試験水16を試料容器17から完全に排出した後、
図3のステップS4の場合と同様に、有効間隙率の計算に必要な「実際に土粒子の間を移動できる水の体積」として、「貯水容器10に溜まった試験水16の体積V
1」を計測する(
図5のステップS6)。最後に、
図3のステップS5の場合と同様に、「試料容器から排出される試験水の体積」の「試料容器内の試料と試験水の体積」に対する割合として表される有効間隙率を前述の式(2)によって求める(
図5のステップS7)。
さらに、ビュレット12の内部の水位又は円筒部材2の表面に長手方向に沿って付した目盛を用いた流速(水位の単位時間当たりの変化)から流量に対する流速(流量の単位時間当たりの変化)を求めることも可能である。したがって、排水コック9の開度を一定としておけば、別試料の影響として、有効間隙率の変化による評価のみならず、流量の単位時間当たりの変化としての流速の変化を評価することも可能である。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態に係る有効間隙率の測定方法では、流量調節手段を操作して試料容器17の内部における試験水16の水面の高さが試料14の最上部の高さと一致するように試験水16の水位を調整する工程を備えているため、「間隙が試験水16で飽和した状態の試料14の体積V」を計測することにより、有効間隙率の計算に必要な「試料容器内の試料と試験水の体積」が求められる。
また、流量調節手段を操作して試料容器17の内部の試験水16を排出する工程において、「貯水容器10に溜まった試験水16の体積V1」を計測することにより、有効間隙率の計算に必要な「実際に土粒子の間を移動できる水の体積」が求められる。したがって、本発明の有効間隙率の測定方法によれば、この「貯水容器10に溜まった試験水16の体積V1」の「間隙が試験水16で飽和した状態の試料14の体積V」に対する割合を計算することで、有効間隙率を容易に求めることができる。
そして、本実施の形態に係る有効間隙率の測定方法において、排水コック9を備えた有効間隙率測定装置1を用いることによれば、試料容器17からの試験水16の排出及びその停止並びに試験水16の排出量の調節が容易であるため、試料14の有効間隙率を測定する作業を効率良く行うことが可能である。
さらに、内部水位のわかるビュレット12又は内面に沿って目盛を付した円筒部材2を備えた有効間隙率測定装置1を用いることによれば、試料の有効間隙率と円筒部材2の内径寸法から単位時間当たりの流量変化を求めることが可能であり、別試料を用いた場合でも同様に求めることが可能である。
本発明は、土、砂や礫、あるいは石炭灰造粒物などについて土壌改良材としての適正を評価するために用いられる有機泥の残留モデルを作成する際に必要となる有効間隙率を測定する場合に利用可能であり、特に、石炭火力発電所から排出される石炭灰造粒物に対しては、その特性を評価しながら、湖沼や河川の水質浄化あるいは道路舗装のための骨材等として活用を促進することが可能であるので、環境産業分野や建設土木産業分野へ広く利用可能である。
1…有効間隙率測定装置 2…円筒部材 2a…下端 2b…フランジ 2c…ボルト挿通孔 3…固定部材 3a…貯水部 3b…排水口 3c…通水口 3d…フランジ 4…架台 5…フレーム 5a…アングル材 6…天板 6a…取付穴 6b…上面 7…排水管 7a…排水口 8…オリフィス板 9…排水コック 10…貯水容器 11…メッシュ部材 12…ビュレット 12a…下端 13…通水管 14…試料 15…容器 16…試験水 17…試料容器 18…容器 G…床面