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  • 特開-離型フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105973
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240731BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010000
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】今井 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】舟津 良亮
(72)【発明者】
【氏名】菅井 陽太
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA20A
4F100AA27
4F100AA27A
4F100AH03B
4F100AH06C
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK21
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK42A
4F100AK42B
4F100AK51A
4F100AK52B
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA02
4F100CA02B
4F100DD01
4F100DD01A
4F100DE01
4F100DE01A
4F100EH20A
4F100EH46
4F100EJ38
4F100GB41
4F100JA06
4F100JD02A
4F100JD02B
4F100JD02C
4F100JK14
4F100JK14A
4F100JK16
4F100JL14
4F100JL14C
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】樹脂層の微細な凹凸構造の形成により、ロール状にフィルムを巻き取る際などにおける取り扱い性に優れた離型フィルムを提供することにある。
【解決手段】ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの一方の表面に、樹脂組成物により形成された樹脂層とを備え、前記ポリエステルフィルムのもう一方の表面に、離型層を備える離型フィルムであって、以下の(1)~(3)の要件を全て満足する離型フィルムである。
(1)前記樹脂組成物が、下記化合物(A)及び(B)を含むこと。
(A)バインダー樹脂及び架橋剤からなる群から選ばれる1種以上
(B)粒子
(2)前記(B)粒子の含有量が、前記樹脂組成物中の全不揮発成分全体に占める割合として、20質量%以上であること。
(3)前記樹脂層表面のクルトシス(Sku)が3.0未満であること。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの一方の表面に、樹脂組成物により形成された樹脂層とを備え、
前記ポリエステルフィルムのもう一方の表面に、離型層を備える離型フィルムであって、
以下の(1)~(3)の要件を全て満足する離型フィルム。
(1)前記樹脂組成物が、下記化合物(A)及び(B)を含むこと。
(A)バインダー樹脂及び架橋剤からなる群から選ばれる1種以上
(B)粒子
(2)前記(B)粒子の含有量が、前記樹脂組成物中の全不揮発成分全体に占める割合として、20質量%以上であること。
(3)前記樹脂層表面のクルトシス(Sku)が3.0未満であること。
【請求項2】
走査型プローブ顕微鏡で測定したときの前記樹脂層表面の切断レベル70%における粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr(70))が、82%以下である、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの一方の表面に、樹脂組成物により形成された樹脂層とを備え、
前記ポリエステルフィルムのもう一方の表面に、離型層を備える離型フィルムであって、
以下の(4)及び(5)の要件を全て満足する離型フィルム。
(4)前記樹脂組成物が、下記化合物(A)及び(B)を含むこと。
(A)バインダー樹脂及び架橋剤からなる群から選ばれる1種以上
(B)粒子
(5)走査型プローブ顕微鏡で測定したときの前記樹脂層表面の切断レベル70%における粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr(70))が、74%以下であること。
【請求項4】
前記樹脂層表面のクルトシス(Sku)が、3.0未満である、請求項3に記載の離型フィルム。
【請求項5】
前記(B)粒子の含有量が、前記樹脂組成物中の全不揮発成分全体に占める割合として、5質量%以上である、請求項3に記載の離型フィルム。
【請求項6】
前記樹脂層が、凹凸構造を有する、請求項1又は3に記載の離型フィルム。
【請求項7】
走査型プローブ顕微鏡で測定したときの前記樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が、10nm以上である、請求項1又は3に記載の離型フィルム。
【請求項8】
走査型プローブ顕微鏡で測定したときの前記樹脂層表面の十点平均粗さ(Rzjis)が、60nm以上である、請求項1又は3に記載の離型フィルム。
【請求項9】
前記樹脂層表面の二乗平均平方根勾配(Sdq)が、0.1以上である、請求項1又は3に記載の離型フィルム。
【請求項10】
前記樹脂層表面の展開界面面積率(Sdr)が、0.5%以上である、請求項1又は3に記載の離型フィルム。
【請求項11】
空気漏れ指数が150,000秒以下である、請求項1又は3に記載の離型フィルム。
【請求項12】
前記(B)粒子の平均粒径が1~100nmである、請求項1又は3に記載の離型フィルム。
【請求項13】
前記(A)バインダー樹脂が、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1又は3に記載の離型フィルム。
【請求項14】
前記(B)粒子が、酸化ジルコニウム及びシリカからなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1又は3に記載の離型フィルム。
【請求項15】
前記離型層が離型剤を含む離型剤組成物から形成され、前記離型剤がシリコーン化合物及び長鎖アルキル基含有化合物なる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1又は3に記載の離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルムに代表されるポリエステルフィルムは、機械的特性、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れた特性を有し、コストパフォーマンスに優れるため、各種用途に使用されている。
【0003】
また、ポリエステルフィルムは、フィルム表面の平滑性を利用して、積層セラミックコンデンサのグリーンシートを成形するための離型フィルムや、層間絶縁樹脂離型フィルム、ドライフィルムレジスト用離型フィルムなど、各種離型用途に好適に用いられている。
【0004】
上記用途をはじめとする、優れた表面平滑性を有するシート成形用離型フィルムは、ロール状に巻き取った場合、シワがなく、ロール外観が良好であることが必要とされる。
しかしながら、表面平滑性を高くすると、滑り性が低下するとともに、ロール状に巻くときやロールから繰り出すときの空気抜けが悪くなるため、巻きずれやブロッキングが発生してハンドリング性が低下する。
とりわけ、近年、生産性向上に伴い、離型フィルムの薄膜長尺化がさらに進行する傾向にあり、より高度なレベルでのロール外観品質が要求される。
【0005】
そこで、ハンドリング性を確保するために、例えば積層セラミックコンデンサのグリーンシートを成形するための離型フィルムなどでは、ポリエステルフィルムの離型層が設けられている面とは反対面側、すなわち平滑面でない側(背面側)は、粒子の練り込みによって平滑面側に比べて粗く設計されることがある(例えば特許文献1)。
また、特許文献2には、ハンドリング性の向上を目的として、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、微細網目凹凸構造を有する連続被膜層を設けた易滑性複合ポリエステルフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-33811号公報
【特許文献2】特開2000-211082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されるような従来の粒子練り込み型フィルムの製法では、凹凸形成の制御が難しく微細な凹凸構造の形成は困難であり、また、特許文献2に開示のフィルムでは凹凸が不十分であることから、ロール状に巻き取る際にシワが入りやすくなり、ロール外観が損なわれる場合があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、樹脂層の微細な凹凸構造の形成により、ロール状にフィルムを巻き取る際などにおける取り扱い性に優れた離型フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、次の構成を有することで、上記課題を解決できることを見出した。
本発明は、以下の態様を有する。
【0010】
[1]ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの一方の表面に、樹脂組成物により形成された樹脂層とを備え、前記ポリエステルフィルムのもう一方の表面に、離型層を備える離型フィルムであって、以下の(1)~(3)の要件を全て満足する離型フィルム。
(1)前記樹脂組成物が、下記化合物(A)及び(B)を含むこと。
(A)バインダー樹脂及び架橋剤からなる群から選ばれる1種以上
(B)粒子
(2)前記(B)粒子の含有量が、前記樹脂組成物中の全不揮発成分全体に占める割合として、20質量%以上であること。
(3)前記樹脂層表面のクルトシス(Sku)が3.0未満であること。
[2]走査型プローブ顕微鏡で測定したときの前記樹脂層表面の切断レベル70%における粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr(70))が、82%以下である、上記[1]に記載の離型フィルム。
[3]ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの一方の表面に、樹脂組成物により形成された樹脂層とを備え、前記ポリエステルフィルムのもう一方の表面に、離型層を備える離型フィルムであって、以下の(4)及び(5)の要件を全て満足する離型フィルム。
(4)前記樹脂組成物が、下記化合物(A)及び(B)を含むこと。
(A)バインダー樹脂及び架橋剤からなる群から選ばれる1種以上
(B)粒子
(5)走査型プローブ顕微鏡で測定したときの前記樹脂層表面の切断レベル70%における粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr(70))が、74%以下であること。
[4]前記樹脂層表面のクルトシス(Sku)が、3.0未満である、上記[3]に記載の離型フィルム。
[5]前記(B)粒子の含有量が、前記樹脂組成物中の全不揮発成分全体に占める割合として、5質量%以上である、上記[3]又は[4]に記載の離型フィルム。
[6]前記樹脂層が、凹凸構造を有する、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の離型フィルム。
[7]走査型プローブ顕微鏡で測定したときの前記樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)が、10nm以上である、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の離型フィルム。
[8]走査型プローブ顕微鏡で測定したときの前記樹脂層表面の十点平均粗さ(Rzjis)が、60nm以上である、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の離型フィルム。
[9]前記樹脂層表面の二乗平均平方根勾配(Sdq)が、0.1以上である、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の離型フィルム。
[10]前記樹脂層表面の展開界面面積率(Sdr)が、0.5%以上である上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の離型フィルム。
[11]空気漏れ指数が150,000秒以下である、上記[1]~[10]のいずれか1つに記載の離型フィルム。
[12]前記(B)粒子の平均粒径が1~100nmである、上記[1]~[11]のいずれか1つに記載の離型フィルム。
[13]前記(A)バインダー樹脂が、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含む、上記[1]~[12]のいずれか1つに記載の離型フィルム。
[14]前記(B)粒子が、酸化ジルコニウム及びシリカからなる群から選ばれる1種以上を含む、上記[1]~[13]のいずれか1つに記載の離型フィルム。
[15]前記離型層が離型剤を含む離型剤組成物から形成され、前記離型剤がシリコーン化合物及び長鎖アルキル基含有化合物なる群から選ばれる1種以上を含む、上記[1]~[14]のいずれか1つに記載の離型フィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂層の微細な凹凸構造の形成により、ロール状にフィルムを巻き取る際などにおける取り扱い性に優れた離型フィルムが提供される。
【0012】
また、本発明の離型フィルムは、樹脂層表面に微細な凹凸構造を形成できるため、例えばシート成形用として用いれば、極めて高平滑なフィルムをロール状に巻き取る際にも、良好な巻取り性を発揮し、シワが発生しにくくなるという利点がある。
【0013】
さらに、本発明の離型フィルムは、樹脂層を薄膜にできることから、離型フィルムの薄膜長尺化にも対応可能であり、加工時における製品ロールの切替頻度低減による生産性向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1の樹脂層表面を走査型プローブ顕微鏡で観察した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態の一例について説明する。ただし、本発明は、次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本明細書において、「(メタ)アクリル」という表現を用いる場合、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の一方又は両方を意味するものとする。また、同様に「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の一方又は両方、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の一方又は両方、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の一方又は両方を意味するものとする。その他についても、上記と同様である。
【0017】
<<<離型フィルム>>>
本発明の離型フィルム(以下、「本離型フィルム」とも称する。)は、ポリエステルフィルム(以下、「本ポリエステルフィルム」とも称する。)と、前記ポリエステルフィルムの一方の表面に、樹脂組成物により形成された樹脂層(以下、「本樹脂層」とも称する。)とを備え、前記ポリエステルフィルムのもう一方の表面に、離型層(以下、「本離型層」とも称する。)を備える。
【0018】
本離型フィルムの積層構成としては、上述のとおり、離型層と、ポリエステルフィルムと、樹脂層とをこの順に有する構成からなる。
また、離型層をポリエステルフィルムの上に直接形成してもよいが、ポリエステルフィルムと離型層との間に他の層を設けてもよい。
さらにまた、樹脂層をポリエステルフィルムの上に直接形成してもよいが、ポリエステルフィルムと樹脂層との間に他の層を設けてもよい。
【0019】
本発明の離型フィルムは、以下の(1)~(3)の要件を全て満足するか、又は(4)及び(5)の要件を全て満足する。(1)~(3)の要件を全て満足する態様を第1態様、(4)及び(5)の要件を全て満足する態様を第2態様とする。
以下、各構成要件について、詳細に説明するが、第1態様における(1)の要件と第2態様における(4)の要件は共通する。
(1)前記樹脂組成物が、下記化合物(A)及び(B)を含むこと。
(A)バインダー樹脂及び架橋剤からなる群から選ばれる1種以上
(B)粒子
(2)前記(B)粒子の含有量が、前記樹脂組成物中の全不揮発成分全体に占める割合として、20質量%以上であること。
(3)前記樹脂層表面のクルトシス(Sku)が3.0未満であること。
(4)前記樹脂組成物が、下記化合物(A)及び(B)を含むこと。
(A)バインダー樹脂及び架橋剤からなる群から選ばれる1種以上
(B)粒子
(5)走査型プローブ顕微鏡で測定したときの前記樹脂層表面の切断レベル70%における粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr(70))が、74%以下であること。
【0020】
<<ポリエステルフィルム>>
本ポリエステルフィルムは、本離型フィルムの基材としての役割を果たすものである。本ポリエステルフィルムは、単層構造であっても多層構造であってもよい。本ポリエステルフィルムが多層構造の場合、本ポリエステルフィルムは2層構造、3層構造などでもよいし、本発明の要旨を逸脱しない限り、4層又はそれ以上の多層であってもよく、層数は特に限定されない。
なお、本ポリエステルフィルムが2層以上の多層構造である場合、2種3層、3種3層が特に好ましい。本ポリエステルフィルムは、多層構造である場合、中間層の両面に表層が設けられた構造を有することも好ましい。
【0021】
特に、本離型フィルムの平滑性を利用する場合、本ポリエステルフィルムの少なくとも片面は平滑性に優れる面であることが好ましい。かかる設計の方法としては、例えば、本ポリエステルフィルムを単層、2種3層及び3種3層構造として本ポリエステルフィルムの両方の面を平滑性に優れた状態に設計する方法や、本ポリエステルフィルムを3種3層構造として本ポリエステルフィルムの片方の面を平滑性に優れた状態とし、もう一方の面を異なる粗さに設計する方法が挙げられる。
【0022】
また、本ポリエステルフィルムは、無延伸フィルム(シート)であっても延伸フィルムであってもよい。中でも、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムであることが好ましい。その中でも、力学特性のバランスや平面性に優れる点で、二軸延伸フィルムであることがより好ましい。
【0023】
<ポリエステル>
本ポリエステルフィルムの原料であるポリエステルは、主鎖に連続してエステル結合を有する高分子化合物をいい、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。具体的には、ジカルボン酸成分とジオール成分とを重縮合反応させることによって得られるポリエステルを挙げることができる。また、ジカルボン酸成分を100モル%としたとき、芳香族ジカルボン酸又は脂肪族ジカルボン酸を50モル%よりも多く含有するポリエステルを使用することが好ましい。
【0024】
前記ジカルボン酸成分としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸及び4,4’-ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸や、例えばアジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸及びこれらのエステル誘導体等の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
【0025】
前記ジオール成分としては、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート及びスピログリコール等を挙げることができる。
【0026】
上記ポリエステルがホモポリエステルである場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、好ましくはテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族ジオールとしては、好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なホモポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等を例示することができ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0027】
一方、共重合ポリエステルは、例えばジカルボン酸成分と脂肪族ジオールの重縮合ポリマーであることが好ましい。ジカルボン酸成分としては、好ましくはイソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸及びオキシカルボン酸(例えば、p-オキシ安息香酸等)等の1種又は2種以上が挙げられる。また、脂肪族ジオールとしては、好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール及びネオペンチルグリコール等の1種又は2種以上が挙げられる。共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を含み、脂肪族ジオールとしてエチレングリコールを含むことがより好ましい。
上記ポリエステルが共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であることが好ましい。第三成分とは、ポリエステルを構成するジカルボン酸成分の主成分(すなわち、最も含有量が多い成分)となる化合物と、ジオール成分の主成分となる化合物以外の成分であり、例えば共重合ポリエチレンテレフタレートではテレフタル酸及びエチレングリコール以外の成分である。
また、共重合ポリエステルは、ジカルボン酸成分及び脂肪族ジオール以外の二官能性化合物由来の構成単位を含んでもよい。ジカルボン酸成分及び脂肪族ジオール以外の二官能性化合物由来の構成単位は、ポリエステルを構成する全構成単位の総モルに対して、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。二官能性化合物としては、各種のヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオール等が挙げられる。
【0028】
本ポリエステルフィルムを構成する全ジカルボン酸成分中のテレフタル酸の含有量は、50モル%以上が好ましく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
また、本ポリエステルフィルムを構成する全ジオール成分中のエチレングリコールの含有量は、50モル%以上が好ましく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。
なお、テレフタル酸及びエチレングリコールの含有量の上限値は、100モル%である。
【0029】
また、上記ポリエステルは、再生ポリエステルであってもよく、バイオマス由来のポリエステルであってもよい。
【0030】
<重縮合触媒>
上記ポリエステルを重縮合する際の重縮合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができ、例えばチタン化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物等が挙げられる。
これらの中では、チタン化合物及びアンチモン化合物の少なくともいずれかが好ましく、とりわけ、チタン化合物を用いて得られるポリエステルを使用することが好ましい。
したがって、本ポリエステルフィルムは、チタン化合物及びアンチモン化合物の少なくともいずれかを含むことが好ましく、チタン化合物を含むことがより好ましい。
【0031】
前記チタン化合物を使用することで、結果的にアンチモン化合物の使用量を低減することができるため、アンチモン化合物がフィルム表面に析出することによる新たな突起形成リスクが小さくなり、高度な表面平滑性が維持できる。
したがって、特に好ましい形態としては、本ポリエステルフィルムが多層構造の場合に、少なくとも一方の表層を構成するポリエステルがチタン化合物を使用することが挙げられる。
【0032】
前記表層中のチタン化合物に由来するチタン元素含有量は、質量基準で、3ppm以上40ppm以下であることが好ましく、より好ましくは4ppm以上35ppm以下である。また、表層がアンチモン化合物及びチタン化合物の少なくともいずれかを含む場合、表層におけるアンチモン元素含有量は0ppm以上100ppm以下であることが好ましい。かかる範囲内であれば、製造効率を低下させることなく、触媒起因の異物を低減化することができる。
なお、生産性及びコストの観点から、表層以外の層を構成するポリエステルは、チタン化合物を使用しないことも好ましい。
以上より、本ポリエステルフィルムがチタン化合物を含むことにより、優れた平滑性を有するポリエステルフィルムとすることができる。そうした上で、本樹脂層を備えた本離型フィルムとすれば、本離型フィルムをシート成形用等として好適に用いることができる。
【0033】
<固有粘度>
本ポリエステルフィルムを構成するポリエステルの固有粘度(IV)は、0.50dL/g以上であることが好ましく、より好ましくは0.55dL/g以上、さらに好ましくは0.60dL/g以上である。かかる範囲であれば、混練中のせん断応力が増大することによって粒子が高分散する等の利点がある。また、該ポリエステルの固有粘度(IV)は、例えば、1.00dL/g以下である。
なお、「本ポリエステルフィルムを構成するポリエステルの固有粘度(IV)」とは、固有粘度(IV)が異なる2種以上のポリエステルを使用する場合には、これら混合ポリエステルの固有粘度(IV)を意味するものとする。
【0034】
本ポリエステルフィルムが多層構造の場合には、表層を構成するポリエステルの固有粘度(IV)が上記範囲であることが好ましい。
【0035】
<粒子>
本ポリエステルフィルム中には、粒子を含有させることも可能である。ポリエステルフィルムは、粒子を含有することで、易滑性が付与され、かつ各工程での傷発生を防止して、取扱い性が良好となる。
本ポリエステルフィルム中に含有させる粒子の種類は、易滑性を付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の無機粒子の他、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン-アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子等の架橋高分子、シュウ酸カルシウム及びイオン交換樹脂等の有機粒子を挙げることができる。これらの中では、有機粒子、シリカ、酸化アルミニウムなどが好ましい。中でも、層を硬くしてフィルム表面への傷つきを防止し、平滑性を保てるという観点からは、酸化アルミニウムを含むことが好ましい。
さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0036】
使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。
また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0037】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常5μm以下、好ましくは0.01~3μm、より好ましくは0.02~1μm、さらに好ましくは0.03~0.5μmの範囲である。5μm以下であると、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎず、後工程において樹脂層や離型層、及び樹脂層や離型層以外の各種の表面機能層を形成させる場合等に不具合が生じず好ましい。また、平均粒径がかかる範囲であれば、ヘーズが低く抑えられ、本離型フィルム全体として透明性を確保しやすい。
なお、粒子の平均粒径は、10個以上の粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)観察して粒子の直径を測定し、その平均値として求めることができる。その際、非球状粒子の場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子の直径として測定することができる。
【0038】
本ポリエステルフィルムに粒子を含有させる場合、例えば、表層と中間層を設けて、表層に粒子を含有させることが好ましい。また、3種3層構造などにより表裏異設計とする場合は、少なくとも一方の表層のみに粒子を含有させることも可能である。
粒子の含有量は、平均粒径にも依存するが、粒子を含有する層において、質量基準で、通常5000ppm以下、好ましくは3000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下である。粒子を含有しない場合、あるいは粒子の含有量が少ない場合、ポリエステルフィルムの透明性が高くなるが、滑り性が不十分となる場合がある。そのため、後述する本樹脂層を積層させることにより、滑り性を向上させる等の工夫が必要である。また、5000ppm以下であれば、ポリエステルフィルムの透明性が十分担保できる。また、粒子を含有する層において、粒子の含有量の下限値は、特に制限されず、例えば50ppm以上、好ましくは100ppm以上である。
【0039】
後述する本樹脂層は、ポリエステルフィルムの粒子を含有する層上に設けられてもよいし、粒子を実質的に含有しない層上に設けられてもよい。また、ポリエステルフィルムにおいて本樹脂層が設けられる面とは反対側の面(反対面)を、粒子を実質的に含有しない層としてもよいし、粒子を含有する層としてもよい。本発明では、樹脂層が設けられる面及び反対側の面の両方を、粒子を実質的に含有しない層としても、後述する凹凸構造を有する樹脂層によって巻取性などを良好にできる。また、樹脂層が設けられる面及び反対側の面の一方又は両方を、粒子を含有する層とすることで、巻取性をより一層良好としやすくなる。
本ポリエステルフィルムの少なくとも一方の表面に優れた平滑性を付与する場合には、平滑面側の表層には、粒子を含有してもよく、又は粒子を実質的に含有しなくてもよいが、極めて高平滑なフィルムとする場合には、実質的に粒子を含有しないことが好ましい。
なお、「実質的に含有しない」とは、意図して含有しないという意味であり、具体的には、粒子の含有量(粒子濃度)が質量基準で50ppm未満、より好ましくは40ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下のことを指す。
この場合、平滑面側の表層上又は平滑面の反対面側の表層上に本樹脂層を積層させることで、フィルムをロール状に巻き取る際のハンドリング性を向上させることができる。中でも、フィルムの平滑性を保ちつつ、ハンドリング性を向上させる観点からは、少なくとも片側の面は平滑な状態とし、その反対面側に本樹脂層を積層させることが好ましい。すなわち、少なくとも片側の面は平滑な状態とし、平滑面側の表層上に本離型層を、その反対面側に本樹脂層を積層させることが好ましい。
【0040】
本ポリエステルフィルム中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、多層のポリエステルフィルムであれば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、エステル化又はエステル交換反応終了後、添加するのが好ましい。
【0041】
<その他>
オリゴマー成分の析出量を抑えるために、オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステルを原料としてフィルムを製造してもよい。オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステルの製造方法としては、種々公知の方法を用いることができ、例えばポリエステル製造後に固相重合する方法等が挙げられる。
また、本ポリエステルフィルムを3層以上の構成とし、本ポリエステルフィルムの表層を、オリゴマー成分の含有量が少ないポリエステル原料を用いた層とすることで、オリゴマー成分の析出量を抑えてもよい。
また、ポリエステルは、エステル化又はエステル交換反応をした後に、さらに反応温度を高くして減圧下で溶融重縮合して得てもよい。
【0042】
なお、本ポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0043】
ポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、機械的強度、ハンドリング性及び生産性などの観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは19μm以上、特に好ましくは25μm以上であり、そして、好ましくは200μm以下、より好ましくは125μm以下、さらに好ましくは80μm以下、特に好ましくは50μm以下である。
【0044】
<ポリエステルフィルムの製造方法>
次に、本ポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。例えば二軸延伸フィルムを製造する場合、先に述べたポリエステル原料の乾燥したペレットを、押出機などの溶融押出装置を用いてダイから溶融シートとして押し出し、回転冷却ドラムなどの冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと冷却ロールとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法及び/又は液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0045】
次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロール又はテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70~120℃、好ましくは80~110℃であり、延伸倍率は通常2.5~7.0倍、好ましくは3.0~6.0倍である。
次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70~170℃であり、延伸倍率は通常3.0~7.0倍、好ましくは3.5~6.0倍である。
そして、引き続き、通常180~270℃の温度で、緊張下又は30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸延伸フィルムを得る。この熱処理は、熱固定工程とも呼ばれる。熱処理は、温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。
また、熱処理の後に冷却ゾーンにて冷却を行ってもよい。冷却温度は、フィルムを構成するポリエステルのガラス転移温度(Tg)より高い温度であることが好ましく、より具体的には、100~160℃の範囲であることが好ましい。この冷却は、温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。
上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0046】
また、本ポリエステルフィルムの製造に同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70~120℃、好ましくは80~110℃に温度コントロールされた状態で機械方向(縦方向)及び幅方向(横方向)に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で好ましくは4~50倍、より好ましくは7~35倍、さらに好ましくは10~25倍である。
そして、引き続き、通常170~250℃の温度で、緊張下又は30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式及びリニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0047】
<<樹脂層>>
本離型フィルムは、ポリエステルフィルムの一方の表面側に、樹脂組成物から形成されてなる樹脂層を備えるものである。樹脂層は、硬化樹脂層であってもよい。
本樹脂層は、上述のとおり、樹脂組成物(以下、「本樹脂組成物」とも称する)から形成され、凹凸構造を有することが好ましい。
【0048】
<凹凸構造>
本樹脂層が有する凹凸構造は、微細な形状である。凹凸構造の形状としては、凹凸形状及び/又は網目形状が挙げられる。
前記凹凸形状は、後述する粒子によって微細な突起が形成されることにより表面に凹凸構造を成すものである。前記網目形状は、本樹脂組成物の延伸適性をあえて劣るものとし、延伸適性に劣る膜にすることで生じた、塗膜割れにより表面に凹凸構造を成すものである。樹脂層表面において網目形状と凹凸形状は混在していてもよい。
なお、その構造は種々の表面分析手法、例えば原子間力顕微鏡(走査型プローブ顕微鏡)などの手段によって確認することが可能である。
【0049】
<樹脂組成物>
本樹脂組成物は、下記化合物(A)及び(B)を含む。
(A)バインダー樹脂及び架橋剤からなる群から選ばれる1種以上
(B)粒子
また、本発明の第1態様における本樹脂組成物において、前記(B)粒子の含有量は、本樹脂組成物中の全不揮発成分全体に占める割合として、20質量%以上である。
【0050】
本樹脂組成物は、上記組成を有することで延伸適性が低くなり、後述する塗膜割れによって微細な凹凸構造を形成しやすくなる。本樹脂組成物に含まれる化合物(A)及び(B)の合計含有量は、不揮発成分として80質量%以上であることが好ましい。より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。当該合計含有量がかかる範囲であれば、所望する微細な凹凸構造を得やすくなる。なお、当該合計含有量は、上限値について特に限定されず、100質量%以下であればよい。
【0051】
(((化合物(A))))
本樹脂組成物は、(A)バインダー樹脂及び架橋剤から選ばれる1種以上を含有する。
【0052】
((バインダー樹脂))
前記(A)として選択されるバインダー樹脂は、「高分子化合物安全性評価フロースキーム」(昭和60年11月、化学物質審議会主催)に準じて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量(Mn)が1000以上の高分子化合物で、かつ、造膜性を有するものと定義する。なお、バインダー樹脂としては、後述する架橋剤として例示されているものは除く。
そのような(A)バインダー樹脂としては、特に制限はなく、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニル樹脂(ポリビニルアルコール、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等、従来公知のバインダー樹脂を使用することができる。中でも、造膜性やポリエステルフィルムとの密着性の観点から、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及び(メタ)アクリル樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂からなる群から選ばれる1種以上を含むことがより好ましい。本樹脂組成物において、(A)バインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
本樹脂組成物が、(A)バインダー樹脂を含有することによって、(B)粒子を保持し、かつ固定された膜(樹脂層)を形成することが可能となる。
【0054】
(ポリエステル樹脂)
ポリエステル樹脂としては、主な構成成分として例えば、下記のような多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物からなるものが挙げられる。
すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-カリウムスルホテレフタル酸、5-ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩及びそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができる。多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、p-キシリレングリコール、ビスフェノールA-エチレングリコール付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
【0055】
また、上記多価カルボン酸の一部として、5-ソジウムスルホイソフタル酸などのスルホイソフタル酸類を共重合して、ポリエステル骨格にスルホン酸基を導入し、中和して親水化した物が好ましく用いられる。共重合する量は、多価カルボン酸全体に対し通常1~13モル%、好ましくは3~10モル%、さらに好ましくは4~9モル%である。スルホン酸基を適量導入することで、樹脂の親水性を高め、凹凸構造を形成しやすくすることができる。さらに水分散安定性を向上させることができる。
【0056】
(ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂とは、ウレタン結合を分子内に有する高分子化合物で、水分散性又は水溶性のものが好ましい。本発明では、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0057】
水分散性又は水溶性を付与させるために、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホニル基、リン酸基、エーテル基等の親水性基をポリウレタン樹脂に導入することが一般的であり好ましい。前記親水性基のなかでも、樹脂層とポリエステルフィルムの密着性の点から、カルボキシル基又はスルホン酸基が特に好ましい。例えばカルボキシル基の導入は、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有多価アルコールなどを用いて行うとよい。
【0058】
ポリウレタン樹脂を作製する方法の一つに、水酸基含有化合物とイソシアネートとの反応によるものがある。原料として用いられる水酸基含有化合物としては、ポリオールが好適に用いられ、例えば、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリカーボネート系ポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられる。これらの中でもポリエステルフィルムとの密着性に優れるという観点からポリエステルポリオール類が好ましい。これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。
【0059】
ポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸又はそれらの酸無水物と多価アルコールの反応から得られるものが挙げられる。多価カルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等が挙げられる。
【0060】
ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0061】
ポリカーボネート系ポリオール類としては、多価アルコール類とジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等とから、脱アルコール反応によって得られるポリカーボネートジオール、例えばポリ(1,6-ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
上記した中でもポリエステルポリオール類が好ましい。
【0062】
ポリウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。
【0063】
ポリウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用してもよく、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基又はアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
【0064】
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール;キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール;ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。
【0065】
アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えばトリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン;エチレンジアミン、プロパンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10-デカンジアミン等の脂肪族ジアミン;1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環式ジアミン等が挙げられる。
【0066】
((メタ)アクリル樹脂)
(メタ)アクリル樹脂とは、アクリル系、メタクリル系のモノマーを含む重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体、さらにはアクリル系、メタクリル系のモノマー以外の重合性モノマーとの共重合体のいずれでもよい。
(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸アルキルエステル類由来の構成単位を有する重合体である。(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルから選択される少なくとも1種の重合体でもよいし、これらから選択される少なくとも1種と、これら以外のモノマー類、例えば、スチレン又はスチレン誘導体、水酸基を含有するモノマーなどから選択される少なくとも1種との共重合体であってもよい。
また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えばブロック共重合体、グラフト共重合体である。すなわち、(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂や、(メタ)アクリル変性ポリウレタン樹脂であってもよい。
あるいは、ポリエステル溶液、又はポリエステル分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、又は分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれ、これらも本明細書では、(メタ)アクリル変性ポリエステル樹脂や、(メタ)アクリル変性ポリウレタン樹脂とする。なお、(メタ)アクリル樹脂において使用される上記したポリエステル、ポリウレタンは、後述するバインダー樹脂に使用されるポリエステル、ポリウレタンとして例示されたものから適宜選択して使用できる。
また、(メタ)アクリル樹脂は、ポリエステルフィルムとの密着性をより向上させるために、ヒドロキシ基、アミノ基を含有することも可能である。
【0067】
上記重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸等の各種カルボキシル基含有モノマー類、及びそれらの塩;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキシフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネート等の各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種のアルキル(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、又は(メタ)アクリロニトリル等の種々の窒素含有モノマー類;N-メチロール(メタ)アクリルアミドなどの水酸基含有の窒素含有モノマー類;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン等の各種スチレン誘導体;プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等の種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエン等の各種共役ジエン類が挙げられる。
【0068】
上記の(メタ)アクリル樹脂の中では、アクリル系、メタクリル系のモノマーを含む重合性モノマーを重合してなる重合体が好ましく、重合性モノマーがアルキル(メタ)アクリル酸エステル類を含むことがより好ましい。
また、(メタ)アクリル樹脂を含む本樹脂組成物は、後述するように溶媒で希釈して塗布液とするのが好ましく、かかる溶媒が水を主溶媒(50質量%以上)とするのが好ましい。すなわち、塗布液を水系とした場合に溶解又は分散しやすくする観点から、重合性モノマーは水酸基やカルボキシル基などの親水性基を有することが好ましい。また、効果的に凹凸構造が得られるという観点からも、水酸基やカルボキシル基などの親水性基を有することが好ましい。
したがって、アクリル樹脂は、アルキル(メタ)アクリル酸エステル類と、水酸基を含有するモノマー、カルボキシル基含有モノマーなどの親水性基含有モノマーを含む重合性モノマーを重合してなる重合体も好ましい。
また、アクリル樹脂は、例えば界面活性剤の存在下に重合性モノマーを重合した乳化重合体でもよい。
【0069】
(ポリビニルアルコール)
ポリビニルアルコールとは、ポリビニルアルコール部位を有する化合物であり、例えば、ポリビニルアルコールに対し、部分的にアセタール化やブチラール化等された変成化合物も含め、従来公知のポリビニルアルコールを使用することができる。ポリビニルアルコールの重合度は特に限定されるものではないが、通常100以上、好ましくは300~40000の範囲である。重合度を100以上とすると、樹脂層の耐水性を良好にしやすくなる。また、ポリビニルアルコールのケン化度は特に限定されるものではないが、通常70モル%以上、好ましくは70~99.9モル%の範囲、より好ましくは80~97モル%、特に好ましくは86~95モル%であるポリ酢酸ビニルケン化物が実用上用いられる。
【0070】
((架橋剤))
前記化合物(A)として選択される前記架橋剤としては、特に制限はなく、従来公知の架橋剤を使用することができる。例えばメラミン化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、シランカップリング化合物等を挙げることができる。中でも、塗膜の強度を高める観点や、ポリエステルフィルムとの密着性を向上させる観点から、メラミン化合物を含むことが好ましい。また、樹脂層は、架橋剤を使用することで、硬化樹脂層としやすくなる。
【0071】
(メラミン化合物)
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えばアルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。
アルキロール化としては、メチロール化、エチロール化、イソプロピロール化、n-ブチロール化、イソブチロール化等が挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、メチロール化が好ましい。
エーテル化に用いるアルコールとしては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール及びイソブタノール等が好適に用いられ、これらの中では、メタノールがより好ましい。
また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために、本樹脂組成物にはさらに触媒を使用することも可能である。
【0072】
(イソシアネート化合物)
イソシアネート化合物とは、イソシアネート、あるいは前駆体であるイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤で保護した構造を有するブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体構造を有する化合物のことである。イソシアネートとしては、例えば、脂肪族系イソシアネート化合物、脂環族系イソシアネート化合物、芳香族系イソシアネート化合物等が挙げられる。これらイソシアネート化合物は、より高度に反応が可能で樹脂層の耐久性を向上できるという観点において、複数個のイソシアネート基を有する化合物、すなわちポリイソシアネート化合物であることがより好ましい。また、水系の塗布液を使用する場合は、ブロックイソシアネートであることがより好ましい。
【0073】
脂肪族系ポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、リジンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物、リジントリイソシアネート、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアナトエチル)2-イソシアナトグルタレート、あるいはこれらイソシアネート化合物から誘導される化合物等を挙げることができる。その中でも工業的入手のしやすさからヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0074】
脂環族系ポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、(1,3-ビス(イソシアナトメチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、あるいはこれらイソシアネート化合物から誘導される化合物等を挙げることができる。その中でも、耐候性、工業的入手の容易さから、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0075】
芳香族系ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、あるいはこれらイソシアネート化合物から誘導される化合物等を挙げることができる。
【0076】
これらのポリイソシアネート化合物の中でも、脂肪族系ポリイソシアネート化合物及び脂環族系ポリイソシアネート化合物が耐候性に優れるため、好ましい。さらに、脂肪族系ポリイソシアネート化合物の中では、脂肪族系ジイソシアネートから誘導される脂肪族系ポリイソシアネート化合物が好ましい。その中でも、特にヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。また、これらイソシアネート化合物は、単独で使用してもいいし、2種以上を併用しても構わない。
【0077】
ブロックポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、ブロック剤と反応させて合成することができる。
【0078】
ブロック剤としては、例えば、活性メチレン系、オキシム系、ピラゾール系、アルコール系、アルキルフェノール系、フェノール系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、アミン系、イミン系、重亜硫酸塩ブロック剤等が挙げられる。これらの中でも、特に樹脂層とポリエステルフィルムの密着性を向上させるという観点から、活性メチレン系ブロック剤であることが好ましい。また、これらのブロック剤は2種以上を併用してもよい。
【0079】
活性メチレン系ブロック剤としては、例えば、イソブタノイル酢酸エステル、n-プロパノイル酢酸エステル、n-ブタノイル酢酸エステル、n-ペンタノイル酢酸エステル、n-ヘキサノイル酢酸エステル、2-エチルヘプタノイル酢酸エステル、マロン酸エステル、アセト酢酸エステル、アセチルアセトン等を挙げることができる。その中でも、低温硬化性及び水存在下の貯蔵安定性に優れるという点で、イソブタノイル酢酸エステル、n-プロパノイル酢酸エステル、n-ブタノイル酢酸エステル、n-ペンタノイル酢酸エステル、n-ヘキサノイル酢酸エステル、2-エチルヘプタノイル酢酸エステルが好ましく、より好ましくは、イソブタノイル酢酸エステル、n-プロパノイル酢酸エステル、n-ペンタノイル酢酸エステルであり、さらに好ましくは、イソブタノイル酢酸エステルである。より具体的には、イソブタノイル酢酸エステルとしては、例えば、イソブタノイル酢酸メチル、イソブタノイル酢酸エチル、イソブタノイル酢酸n-プロピル、イソブタノイル酢酸イソプロピル、イソブタノイル酢酸n-ブチル、イソブタノイル酢酸イソブチル、イソブタノイル酢酸t-ブチル、イソブタノイル酢酸n-ペンチル、イソブタノイル酢酸n-ヘキシル、イソブタノイル酢酸2-エチルヘキシル、イソブタノイル酢酸フェニル、イソブタノイル酢酸ベンジル等が挙げられる。その中でも、イソブタノイル酢酸メチル、イソブタノイル酢酸エチルが好ましい。n-プロパノイル酢酸エステルとしては、例えば、n-プロパノイル酢酸メチル、n-プロパノイル酢酸エチル、n-プロパノイル酢酸イソプロピル、n-プロパノイル酢酸n-ブチル、n-プロパノイル酢酸t-ブチル等が挙げられる。その中でも、n-プロパノイル酢酸メチル、n-プロパノイル酢酸エチルが好ましい。n-ペンタノイル酢酸エステルとしては、例えば、n-ペンタノイル酢酸メチル、n-ペンタノイル酢酸エチル、n-ペンタノイル酢酸イソプロピル、n-ペンタノイル酢酸n-ブチル、n-ペンタノイル酢酸t-ブチル等が挙げられる。その中でも、n-ペンタノイル酢酸メチル、n-ペンタノイル酢酸エチルが好ましい。
【0080】
本発明で用いる活性メチレンブロックイソシアネート化合物においては、上記に示した活性メチレン系ブロック剤を単独で用いることもできるし、2種以上を併用して使用することもできる。併用する活性メチレン系ブロック剤としては、低温硬化性に優れ、形成した樹脂層の耐久性に優れるという点で、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルが好ましい。
【0081】
オキシム系ブロック剤としては、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。ピラゾール系ブロック剤としては、例えば、ピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等が挙げられる。アルコール系ブロック剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール等が挙げられる。アルキルフェノール系ブロック剤としては、例えば、n-プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n-ブチルフェノール、sec-ブチルフェノール、t-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類、ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-t-ブチルフェノール、ジ-sec-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類等が挙げられる。フェノール系ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等が挙げられる。メルカプタン系ブロック剤としては、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等が挙げられる。酸アミド系ブロック剤としては、例えば、アセトアニリド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等が挙げられる。酸イミド系ブロック剤としては、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド等が挙げられる。イミダゾール系ブロック剤としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール等が挙げられる。尿素系ブロック剤としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等が挙げられる。アミン系ブロック剤としては、例えば、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等が挙げられる。イミン系ブロック剤としては、例えば、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0082】
本発明で用いるブロックイソシアネート化合物は、水系塗料における配合性を高めるため、親水性部位を含有することが好ましく、ブロックイソシアネート化合物に親水部位を付加する方法としては、例えば、前駆体であるイソシアネート化合物のイソシアネート基と活性水素を有する親水性化合物を反応させる方法が挙げられる。
【0083】
本発明で用いるブロックイソシアネート化合物に使用される活性水素を有する親水性化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール系化合物、カルボン酸基含有化合物、スルホン酸基含有化合物、アミン含有化合物等が挙げられる。これらの親水性化合物は、単独で用いてもいいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0084】
ポリエチレングリコール系化合物としては、例えば、モノアルコキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンコポリマージオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロックポリマージオール等が挙げられ、その中でも、特にモノメトキシポリエチレングリコール、モノエトキシポリエチレングリコール等のモノアルコキシポリエチレングリコールが好ましい。
【0085】
カルボン酸基含有化合物としては、モノヒドロキシカルボン酸あるいはジヒドロキシカルボン酸あるいはそれらの誘導体等が挙げられる。カルボン酸基含有化合物の中では、モノヒドロキシカルボン酸あるいはジヒドロキシカルボン酸が好ましく、さらに好ましくは、モノヒドロキシカルボン酸である。
【0086】
カルボン酸基含有化合物の具体例としては、例えば、ヒドロキシピバリン酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸あるいは、これらを開始剤としたポリカプロラクトンジオールやポリエーテルポリオール等の誘導体、及びそれらの塩が挙げられる。
【0087】
スルホン酸基含有化合物としては、アミノエチルスルホン酸、エチレンジアミノ-プロピル-β-エチルスルホン酸、1,3-プロピレンジアミン-β-エチルスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、及びそれらの塩が挙げられる。
【0088】
アミン含有化合物としては、水酸基含有アミノ化合物が挙げられる。具体的には、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等が挙げられる。
【0089】
(オキサゾリン化合物)
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物であり、特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリン及び2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2-イソプロペニル-2-オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限はなく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基及びシクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の含ハロゲンα,β-不飽和モノマー類;スチレン、α-メチルスチレン等のα,β-不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上のモノマーを使用することができる。
また、オキサゾリン化合物は、ポリエチレンオキサイド鎖などのポリアルキレンオキサイド鎖を有してもよく、例えばポリアルキレンオキサイド鎖を有する(メタ)アクリレートなどを他のモノマーとして使用してもよい。
樹脂層のポリエステルフィルムに対する密着性向上の観点から、オキサゾリン化合物のオキサゾリン基量は、好ましくは0.5~10mmol/g、より好ましくは1~9mmol/g、さらに好ましくは3~8mmol/gの範囲である。
【0090】
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物とは、分子内にエポキシ基を有する化合物であり、例えばエピクロロヒドリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン及びビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物や、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物並びにグリシジルアミン化合物等がある。
ポリエポキシ化合物としては、例えばソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル及びトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
ジエポキシ化合物としては、例えばネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル及びポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
モノエポキシ化合物としては、例えばアリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル及びフェニルグリシジルエーテル、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。樹脂層のポリエステルフィルムに対する密着性向上の観点から、ポリエーテル系のエポキシ化合物が好ましい。
また、エポキシ基の量としては、2官能より、3官能以上の多官能であるポリエポキシ化合物が好ましい。
【0091】
(カルボジイミド化合物)
カルボジイミド化合物とは、カルボジイミド構造を有する化合物のことであり、分子内にカルボジイミド構造を1つ以上有する化合物であるが、樹脂層とポリエステルフィルムのより良好な密着性等のために、分子内に2つ以上のカルボジイミド構造を有するポリカルボジイミド化合物がより好ましい。
【0092】
カルボジイミド化合物は、従来公知の技術で合成することができ、一般的にはジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート及びジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネートなどが挙げられる。
さらに、本発明の主旨を損なわない範囲において、ポリカルボジイミド化合物の水溶性や水分散性を向上するために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩及びヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加して用いてもよい。
【0093】
(シランカップリング化合物)
シランカップリング化合物とは、1つの分子中に有機官能基とアルコキシ基などの加水分解基を有する有機ケイ素化合物である。例えば3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル基含有化合物;p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシランなどのスチリル基含有化合物;3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基含有化合物;トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどのイソシアヌレート基含有化合物;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基含有化合物などが挙げられる。
【0094】
本発明の第1態様において、本組成物中の化合物(A)の含有量は、本組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは10~80質量%、より好ましくは25~70質量%、さらに好ましくは40~60質量%の範囲である。当該含有量を10質量%以上とすることで、造膜性を有し、粒子を含有する膜とすることができる。また、ポリエステルフィルムとの密着性を有することで塗膜の脱落を抑えることができる。また、当該含有量を80質量%以下とすることで、高い粒子含有量となり、塗膜硬度を高めることで塗膜の凹凸を形成することが可能となる。
本発明の第2態様において、本樹脂組成物中の化合物(A)の含有量は、本樹脂組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは10~95質量%、より好ましくは25~90質量%、さらに好ましくは30~80質量%、特に好ましくは40~60質量%の範囲である。当該含有量を10質量%以上とすることで、造膜性を有し、粒子を含有する膜とすることができる。また、ポリエステルフィルムとの密着性を有することで塗膜の脱落を抑えることができる。また、当該含有量を95質量%以下とすることで、高い粒子含有量となり、塗膜硬度を高めることで塗膜の凹凸を形成することが可能となる。
【0095】
化合物(A)はバインダー樹脂及び架橋剤から選ばれる1種以上を含有するが、より造膜性が得られるという観点から、バインダー樹脂を含有することが好ましい。さらに、塗膜強度やポリエステルフィルムとの密着性をさらに向上させるという観点から、バインダー樹脂と架橋剤を含有することがより好ましい。
【0096】
((化合物(B)))
本樹脂組成物は、(B)粒子を含有する。本樹脂組成物が、(B)粒子を含有することによって、塗膜の延伸適性が低下し、凹凸構造が形成されやすくなる。また、形成された凹凸構造の硬度が高まることにより、効果的にエア抜け性を向上させることが可能となる。
【0097】
前記(B)粒子としては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム及び酸化チタン等の無機粒子の他、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂粒子、架橋スチレン-アクリル樹脂粒子、架橋ポリエステル粒子等の架橋高分子、シュウ酸カルシウム及びイオン交換樹脂等の有機粒子を挙げることができる。これらの中では、酸化ジルコニウム、酸化チタン及びシリカが好ましく、酸化ジルコニウム及びシリカがより好ましい。(B)粒子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0098】
使用する(B)粒子の形状は、球状、塊状、棒状、扁平状、鎖状等が挙げられる。これらの中でも、化合物(A)中に均一に分布しやすいという観点から、球状であることが好ましい。
【0099】
前記(B)粒子の平均粒径は、1~100nmであることが好ましく、より好ましくは4~60nm、さらに好ましくは8~40nmである。当該平均粒径がかかる範囲であれば、粒子の凝集による粗大突起の発生や、粒子の脱落による工程の汚染を抑制することができ、所望する微細な凹凸構造を得やすくなる。
なお、微粒子の平均粒径の測定方法は、比表面積測定装置によって測定される比表面積と粒子の密度より算出する方法や、透過型電子顕微鏡(TEM)もしくは走査型電子顕微鏡(SEM)観察して粒子の直径を算出する方法、動的光散乱法による測定から求める方法があり、微粒子の平均粒径により適した手法によって測定できる。
【0100】
本発明の第1態様において、本組成物中の化合物(B)の含有量は、本組成物中の全不揮発成分に占める割合として、20質量%以上である。当該含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは30~75質量%、さらに好ましくは40~60質量%の範囲である。当該含有量を20質量%以上とすることで、凹凸構造の形成がされやすくなり、また、形成された凹凸構造の硬度が高まることで効果的にエア抜け性を向上させることが可能となる。また、当該含有量を90質量%以下とすることで、他の成分を必要量含むことができ、凹凸膜の形成やポリエステルフィルムとの密着性を得ることができる。また、化合物(B)の含有量を一定値以下にすることで、塗膜の脱落を防止しやすくなる。
本発明の第2態様において、本樹脂組成物中の化合物(B)の含有量は、本樹脂組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは5~90質量%、より好ましくは10~75質量%、さらに好ましくは20~70質量%、特に好ましくは40~60質量%の範囲である。当該含有量を5質量%以上とすることで、凹凸構造の形成がされやすくなり、また、形成された凹凸構造の硬度が高まることで効果的にエア抜け性を向上させることが可能となる。また、当該含有量を90質量%以下とすることで、他の成分を必要量含むことができ、凹凸膜の形成やポリエステルフィルムとの密着性を得ることができる。また、化合物(B)の含有量を一定値以下にすることで、塗膜の脱落を防止しやすくなる。
【0101】
((その他成分))
また、本発明の主旨を損なわない範囲において、上記成分以外にも、架橋触媒、消泡剤、塗布性改良剤、界面活性剤、増粘剤、有機系潤滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤をさらに適宜配合してもよい。
【0102】
((溶媒))
本樹脂組成物は、溶媒で希釈して塗布液としてもよい。すなわち、本樹脂組成物は、液状の塗布液として、例えば本ポリエステルフィルムに塗布し、必要に応じて乾燥、かつ、硬化させて樹脂層を形成させるとよい。
なお、本樹脂組成物を構成する各成分(化合物(A)及び(B)、その他成分等)は、溶媒に溶解させてもよいし、溶媒中に分散させてもよい。
塗布液とした場合、塗布液中における本樹脂組成物の全不揮発成分の濃度は、0.1~50質量%であることが好ましい。0.1質量%以上であれば、効率的に所望の厚みの樹脂層を形成することができる。一方、50質量%以下であれば、塗工時の粘度を抑えることで樹脂層の外観を向上させることができ、また、塗布液中の安定性を高めることができる。
【0103】
前記溶媒としては、特に制限はなく、水及び有機溶剤のいずれも使用することができる。環境保護の観点から、水を主溶媒(全溶媒の50質量%以上)として水性塗布液とすることが好ましい。水の含有量に関して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であるのがよい。水性塗布液には、少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤の具体的な量は、質量基準で水の量以下とするとよく、例えば、溶媒中の50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下とするのがよい。
水と併用する有機溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;エチルセロソルブ、t-ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;ジメチルエタノールアミン等のアミン類等を例示することができる。これらは単独、もしくは複数を組み合わせて用いることができる。水性塗布液に、必要に応じてこれらの有機溶剤を適宜選択し、含有させることで、塗布液の安定性、塗工性を良好にできる場合がある。
【0104】
また、上記溶媒として有機溶剤のみを使用する場合、かかる有機溶剤としては、トルエン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン等のケトン類;エタノール、2-プロパノール等のアルコール類;ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類などを挙げることができる。これらは、溶解性、塗工性や沸点等を考慮して単独で使用してもよいし、複数種を混合して使用してもよい。
【0105】
樹脂層中には、本樹脂組成物を構成する各成分(化合物(A)及び(B)、その他成分等)の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
なお、樹脂層中の各成分の分析は、例えば、TOF-SIMS、ESCA、蛍光X線等によって行うことができる。
【0106】
<樹脂層の形成方法>
次に、本離型フィルムを構成する樹脂層の形成方法について説明する。
本樹脂層は、本樹脂組成物をポリエステルフィルムに塗布し、必要に応じて、塗布した本樹脂組成物に対して乾燥、硬化、熱処理等などの処理を行って形成すればよく、少なくとも熱処理を行うことが好ましい。樹脂組成物を塗布する方法は、特に限定されず、例えばリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0107】
また、樹脂層の形成方法としては、インラインコーティング及びオフラインコーティングがある。塗布した樹脂組成物を熱処理する方法は、特に限定されるわけではなく、例えばオフラインコーティングにより樹脂層を設ける場合、通常、80~200℃で3~40秒間、好ましくは100~180℃で3~40秒間を目安として熱処理を行うのがよい。一方、インラインコーティングにより樹脂層を設ける場合、通常、70~280℃で3~200秒間を目安として熱処理を行うのがよい。
また、熱処理は、上記温度範囲内において温度の異なる2段以上の工程で行ってもよい。熱処理の少なくとも一部は、延伸時の加熱により行ってもよい。また、乾燥及び硬化は、上記熱処理における加熱により合わせて行うとよい。
【0108】
本発明では、樹脂層は、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより形成されるのが好ましい。
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押し出ししてから延伸後、熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻き上げ前のフィルムのいずれかにコーティングする。
【0109】
以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。かかる方法によれば、製膜と樹脂層形成を同時に行うことができるため、製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、樹脂層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングフィルムに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。
【0110】
また、延伸前にフィルム上に樹脂層を設けることにより、樹脂層をポリエステルフィルムと共に延伸することができ、それにより樹脂層をポリエステルフィルムに強固に密着させることができる。
【0111】
さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造において、クリップ等によりフィルム端部を把持しつつ延伸することで、フィルムを縦及び横方向に拘束することができ、その後の熱処理(熱固定工程)において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。
それゆえ、塗布後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、樹脂層の造膜性が向上し、樹脂層とポリエステルフィルムをより強固に密着させることができる。さらには、強固な樹脂層とすることができ、樹脂層上に形成され得る各種の機能層への耐移行性や耐湿熱性等の性能を向上させることができる。
【0112】
特に、本発明においては、塗膜割れを形成する製造方法として、かかる方法が最適である。本樹脂組成物中の化合物(A)及び(B)のそれぞれの含有量を調整し、本樹脂組成物の延伸適性をあえて劣るものとする。そうした上で、本樹脂組成物をコーティングした後に延伸する製造方法を採用することで、延伸適性に劣る膜を延伸することによって生じた塗膜割れにより、樹脂層表面に凹凸構造を形成することができる。当業者においては、従来から、塗膜割れは塗布欠陥の一形態と見なされ、塗膜割れが極力発生しないような均一な塗膜形成が必要とされてきた。塗膜割れが起こる一つの原因として、樹脂組成物の延伸適性が不十分なことが挙げられるため、樹脂組成物は十分な延伸適性を有するように設計される。しかしながら、本発明者らは、樹脂層表面に微細な凹凸構造を形成する手段の一つとして、かかる塗膜割れを利用することに至った。
【0113】
また、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングにかかわらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。本離型フィルムを構成するポリエステルフィルムにはあらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0114】
本樹脂層の不揮発成分の塗布量は、好ましくは0.005~0.95g/m、より好ましくは0.02~0.5g/m、さらに好ましくは0.04~0.3g/m、特に好ましくは0.06~0.2g/mである。当該塗布量がかかる範囲であれば、塗膜割れなどにより微細な凹凸構造を形成することができる。
なお、当該塗布量は、塗布液不揮発成分濃度、塗布液消費量から導かれる乾燥前塗布量、横延伸倍率等から計算で求めることができる。また、不揮発成分の塗布量とは、本離型フィルムにおける塗布量であり、例えば、乾燥及び延伸を行う場合には、乾燥延伸後の塗布量である。
【0115】
<<離型層>>
本離型フィルムは、ポリエステルフィルムのもう一方の表面側に、離型層を備えるものである。
前記離型層は、上述のとおり、ポリエステルフィルムの上に直接又は他の層を介して積層される。他の層としては、例えば、本ポリエステルフィルムへの密着性を改良するための易接着コート層の他、帯電防止層やブロッキング防止層等を挙げることができる。
【0116】
<離型剤組成物>
本離型層は、離型剤組成物(以下、「本離型剤組成物」とも称する。)から形成される。
また、本離型剤組成物は、離型剤を含有する。
【0117】
((離型剤))
前記離型剤としては、特に制限はなく、従来公知の離型剤を使用することができる。例えばシリコーン化合物、長鎖アルキル基含有化合物、ワックス、フッ素化合物等を挙げることができる。中でも、シリコーン化合物及び長鎖アルキル基含有化合物の少なくともいずれかであることが好ましい。本離型剤組成物において、離型剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0118】
(シリコーン化合物)
シリコーン化合物とは、分子内にシリコーン構造を有する化合物、言い換えれば、シロキサン結合による主骨格を有する化合物である。シリコーン化合物あるいはシリコーン化合物を構成する主骨格としては、例えばポリジメチルシロキサンなどのオルガノポリシロキサン、アクリルグラフトシリコーン、シリコーングラフトアクリル、アミノ変性シリコーン、パーフルオロアルキル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン等を挙げることができる。中でも、離型性に優れるという観点から、ポリジメチルシロキサンなどのオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0119】
中でも、後述する(メタ)アクリロイル基を含有する化合物中の(メタ)アクリロイル基と反応し得る官能基を有するシリコーン化合物が好ましく、その中でも特にSi-H基を含有するシリコーン化合物が好ましい。シリコーン化合物のSi-H基は、本ポリエステルフィルムとの密着性を高める性質を有する。その中でも、本離型層中にシリコーン化合物に由来する骨格を有する架橋構造を形成する観点から、Si-H基及びアルケニル基を有するシリコーン化合物が好ましい。
【0120】
シリコーン化合物の分子量は、特に限定されない。中でも、本ポリエステルフィルムと離型層との密着性の観点から、その数平均分子量は5000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましい。上限は特に限定されないが、通常1000000以下である。
シリコーン化合物の数平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定し、ポリスチレン換算値として算出することができる。
【0121】
前述した中でも、本離型剤組成物に用いるシリコーン化合物としては、耐熱性、汚染性を考慮し、硬化型シリコーン化合物を含有することが好ましい。
硬化型シリコーン化合物の種類としては、付加硬化型、縮合硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型等いずれの硬化反応タイプでも用いることができる。中でも、付加硬化型シリコーン化合物が塗膜凝集力を上げることができるという観点でより好ましい。
【0122】
付加硬化型シリコーン化合物とは、その構造中に不飽和炭化水素基及び水素基を官能基として有するシリコーン化合物であり、これらの官能基の反応によって付加硬化反応が行われる。すなわち、Si-H基を有するシリコーン化合物及びアルケニル基を含有するシリコーン化合物の混合物又は分子内にSi-H基及びビニル基を含有するシリコーン化合物である。
不飽和炭化水素基と水素基は同一分子内に存在しないことが、ポットライフの観点から好ましく、別々のシリコーン分子中に官能基を含み、それらの混合物を用いるのが好ましい。よって、不飽和炭化水素基を官能基として有するシリコーン化合物と、水素基を官能基として有するシリコーン化合物とを混合して用いるのが好ましい。
【0123】
不飽和炭化水素基を官能基として有する前記シリコーン化合物としては、不飽和炭化水素基含有のポリジメチルシロキサンを挙げることができる。
不飽和炭化水素基は、ポリジメチルシロキサン分子中に少なくとも2個含有する必要がある。不飽和炭化水素基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基などの炭素数が2~8個のアルケニル基を挙げることができる。これらの中でも、工業的な入手のしやすさから、ビニル基であることが好ましい。
少なくとも2個含有するアルケニル基は異なる炭素数のアルケニル基を含んでいてもよい。
不飽和炭化水素基含有のポリジメチルシロキサンは、ケイ素原子に直結する官能基としてアルケニル基とメチル基を有しており、その他にも種々の官能基を有してもよい。メチル基以外の官能基の例としては、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、メチルフェニル基などのアリール基、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基などを挙げることができる。ポリエステルフィルムへの密着性の観点から、フェニル基やメトキシ基を含むことが好ましい。
【0124】
他方、水素基を官能基として有する前記シリコーン化合物としては、水素基含有のポリジメチルシロキサンを挙げることができる。水素基含有のポリジメチルシロキサンとは、ケイ素原子に結合した水素原子を持つポリジメチルシロキサンのことである。1分子中にケイ素原子に結合した水素原子は少なくとも2個含有することが必要であり、硬化特性の観点から3個以上含有することが好ましい。ケイ素に結合した水素原子は、ポリジメチルシロキサン分子鎖の末端でもあっても側鎖でもあってもよい。
水素基含有のポリジメチルシロキサンは、ケイ素原子に直結する官能基として水素基とメチル基を有するが、その他にも種々の官能基を有してもよい。メチル基以外の官能基の例としては、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基、メチルフェニル基などのアリール基、ヒドロキシ基、メトキシ基やエトキシ基などのアルコキシ基などを挙げることができる。
【0125】
不飽和炭化水素基含有のポリジメチルシロキサンと、水素基含有のポリジメチルシロキサンのポリジメチルシロキサン骨格は、それぞれ直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
【0126】
不飽和炭化水素含有ポリジメチルシロキサンと水素基含有ポリジメチルシロキサンの配合は、全アルケニル基に対する全Si-H基のモル比(Si-H基量/アルケニル基量)が1.0~5.0であることが好ましい。
当該モル比が1.0以上であれば、硬化性を維持することができ、5.0以下であれば、残存するSi-H基量が多過ぎることなく、粘着剤に対する剥離力が重くなり過ぎることがないから、好ましい。
かかる観点から、1.0~5.0であることが好ましく、中でも1.6以上或いは4.8以下、その中でも2.0以上あるいは4.6以下であることが特に好ましい。
【0127】
本離型剤組成物に用いるシリコーン化合物は、溶剤型硬化型シリコーンであっても、無溶剤型硬化型シリコーンであってもよい。溶剤型硬化型シリコーンと無溶剤型硬化型シリコーンとを混合して使用することも可能である。
また、溶剤型硬化型シリコーン、及び無溶剤型硬化型シリコーンのいずれにおいても、離型性を有する硬化型シリコーンであり、硬化過程においてビニル基とケイ素-水素結合を有する基の付加反応を含むもの(いわゆる付加型シリコーン)であるのが好ましい。
【0128】
作業環境面や、有機溶剤爆発火災などの安全面の観点から、前述のシリコーン化合物はシリコーンエマルジョンとして用いるのが好ましい。
シリコーン化合物をエマルジョン化する場合、乳化安定剤として界面活性剤成分を使用することができる。
【0129】
界面活性剤としてはノニオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤を挙げることができる。
ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンフェニルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル等を挙げることができる。アニオン系界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウムやパルミチン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸石けん、アルキルエーテルカルボン酸及びその塩、アルキルスルホン酸、アルケニルスルホン酸塩、脂肪酸エステルのスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキル及びアリルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸エステル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ロート油等の硫酸エステル塩類、アルキルリン酸塩、エーテルリン酸塩、アルキルアリルエーテルリン酸塩、アミドリン酸塩等を挙げることができる。これらの中でもノニオン系界面活性剤であることが好ましく、シリコーンエマルジョンの安定性の観点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルやポリオキシアルキレンフェニルエーテルがより好ましい。
【0130】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシブチレンアルキルエーテルなどを挙げることができる。これらの中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテルであることが好ましい。また、アルキル基は炭素数が8~30の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく、炭素数が8~16の直鎖または分岐のアルキル基であることがより好ましい。
【0131】
ポリオキシアルキレンフェニルエーテルとしては、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシブチレンフェニルエーテルなどを挙げることができる。これらの中でもポリオキシエチレンフェニルエーテルであることが好ましい。また、フェニル基は非置換または置換のフェニル基であり、フェニル基の水素原子がスチリル基で置換されたスチレン化フェニル基であることが好ましい。
【0132】
(長鎖アルキル基含有化合物)
長鎖アルキル基含有化合物とは、炭素数が6以上、好ましくは8以上、さらに好ましくは12以上の直鎖又は分岐のアルキル基を有する化合物のことである。
アルキル基としては、例えばヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、オクタデシル基、ベヘニル基等の炭素数6~30程度のアルキル基が挙げられる。アルキル基を有する化合物とは、例えば、各種の長鎖アルキル基含有高分子化合物、長鎖アルキル基含有アミン化合物、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有四級アンモニウム塩等が挙げられる。耐熱性、汚染性を考慮すると高分子化合物であることが好ましい。また、効果的に離型性を得られるという観点から、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物であることがより好ましい。
【0133】
長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物とは、反応性基を有する高分子と、当該反応性基と反応可能なアルキル基を有する化合物とを反応させて得ることができる。上記反応性基としては、例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物等が挙げられる。これらの反応性基を有する化合物としては、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリエチレンアミン、反応性基含有ポリエステル樹脂、反応性基含有ポリ(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、離型性や取り扱いやすさを考慮するとポリビニルアルコールであることが好ましい。使用されるポリビニルアルコールの重合度は特に限定されるものではないが、通常100以上、好ましくは300~40000の範囲である。また、ポリビニルアルコールのケン化度は特に限定されるものではないが、通常70モル%以上、好ましくは70~99.9モル%の範囲、より好ましくは80~97モル%、さらに好ましくは86~95モル%であるものが用いられる。
【0134】
上記の反応性基と反応可能なアルキル基を有する化合物とは、例えばヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、ベヘニルイソシアネート等の長鎖アルキル基含有イソシアネート、ヘキサノイルクロライド、オクタノイルクロライド、デカノイルクロライド、ラウロイルクロライド、オクタデカノイルクロライド、ベヘノイルクロライド等の長鎖アルキル基含有酸クロライド、長鎖アルキル基含有アミン、長鎖アルキル基含有アルコール等が挙げられる。これらの中でも取り扱い易さを考慮すると長鎖アルキル基含有イソシアネートが好ましく、オクタデシルイソシアネートが特に好ましい。
【0135】
また、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物は、長鎖アルキル(メタ)アクリレートの重合物や長鎖アルキル(メタ)アクリレートと他のビニル基含有モノマーとの共重合によって得ることもできる。長鎖アルキル(メタ)アクリレートとは、例えばヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0136】
前記離型剤としてシリコーン化合物を使用する場合、本離型剤組成物中のシリコーン化合物の含有量は、本離型剤組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、さらに好ましくは90~99質量%、特に好ましくは95~99質量%の範囲である。シリコーン化合物を本離型層中に50質量%以上含有していれば、十分な離型性が得られるため好ましい。なお、当該含有量を99質量%以下とすることで、後述する(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を含むことができるため、本ポリエステルフィルムとの密着性をさらに高めることができる。
【0137】
前記離型剤としてシリコーン化合物以外の離型剤(例えば、長鎖アルキル基含有化合物、ワックス、フッ素化合物等)を使用する場合、本離型剤組成物中のシリコーン化合物以外の離型剤の含有量は、本離型剤組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは10~90質量%、より好ましくは20~80質量%、さらに好ましくは30~70質量%、特に好ましくは50~70質量%の範囲である。当該含有量を10質量%以上とすることで、離型性が良好となる。また、当該含有量を90質量%以下とすることで、十分な耐溶剤性を得ることができる。
【0138】
((架橋剤))
本離型剤組成物は、離型剤としてシリコーン化合物以外の離型剤を用いた場合に、架橋剤を含有していることが好ましい。前記架橋剤としては、特に制限はなく、従来公知の架橋剤を使用することができる。架橋剤を使用することで、離型層の強度を上げることができ、離型成分の転着が起きにくい層とすることができる。
架橋剤としては、例えばメラミン化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、シランカップリング化合物等を挙げることができる。中でも、離型層の強度を強化し、ポリエステルフィルムとの密着性を向上させるという観点から、架橋剤としては、メラミン化合物を含むことが好ましい。本離型剤組成物において、架橋剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本離型剤組成物に含有し得る架橋剤の具体的な態様及び好ましい態様は、本樹脂組成物に含有し得る架橋剤と同じであり、これらを全て援用することができる。すなわち、本離型剤組成物中の架橋剤として例示されるものは、本樹脂組成物中の架橋剤として例示されるものと同じである。
【0139】
本離型剤組成物が架橋剤を含む場合、本離型剤組成物中の架橋剤の含有量は、本離型剤組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは10~90質量%、より好ましくは20~80質量%、さらに好ましくは30~70質量%、特に好ましくは30~50質量%の範囲である。当該含有量を10質量%以上とすることで、離型層の強度を向上させることができる。また、当該含有量を90質量%以下とすることで、十分な離型性を確保することができる。
【0140】
(((メタ)アクリロイル基を含有する化合物))
本離型剤組成物は、離型剤としてシリコーン化合物を用いた場合に、さらに(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を含有していてもよい。(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を含有することにより、本ポリエステルフィルムとの密着性をさらに高めることができる。
【0141】
前記(メタ)アクリロイル基を含有する化合物としては、ポリマーの(メタ)アクリレート化合物や、モノマーの(メタ)アクリレート化合物があり、そのいずれでもよい。また、これらを併用することもできる。ここで、ポリマーの(メタ)アクリレート化合物はマクロモノマーを意味する。
【0142】
(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート系化合物、ポリアルキレン(メタ)アクリレート系化合物、その他の(メタ)アクリレート化合物などを挙げることができる。中でも、(メタ)アクリロイル基を含有する化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート、又は、ウレタン(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートを除く(メタ)アクリレート化合物との組み合わせからなる混合物であるのが好ましい。
【0143】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、従来公知のものを用いることができ、特に限定されないが、例えば、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とイソシアネート化合物との反応によって得られる化合物、水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とポリオールとイソシアネート化合物との反応によって得られる化合物などを挙げることができる。ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、ポリマーであっても、モノマーであってもよいが、ポリエステルフィルムとの密着性の観点から、ポリマーである方が好ましい。
【0144】
水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンモノ(メタ)アクリレート、ジグリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールジ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールモノ(メタ)アクリレートジグリセリンジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸の付加物、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子の1,6-ヘキサンジオールジグリシジルとの反応生成物、2分子のエポキシ(メタ)アクリル酸と1分子のネオペンチルグリコールジグリシジルとの反応生成物、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子のビスフェノールAジグリシジルとの反応生成物、2分子の(メタ)アクリル酸とビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のジグリシジル体との反応生成物、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子のフタル酸ジグリシジルとの反応生成物、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子のポリエチレングリコールジグリシジルとの反応生成物、2分子の(メタ)アクリル酸と1分子のポリプロピレングリコールジグリシジルとの反応生成物等の(メタ)アクリル酸とポリオールジグリシジルとの反応生成物等を挙げることができる。これらは、単独で用いても、複数種併用してもよい。
【0145】
これらの中でもシリコーン化合物とポリエステルフィルムとの密着性をより効果的に向上させるという観点から、ジグリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレートなどの1分子中の(メタ)アクリロイル基の数が3つ以上のものが好ましく、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレートなどの1分子中の(メタ)アクリロイル基の数が5つ以上のものがより好ましい。
【0146】
イソシアネート化合物とは、イソシアネート、あるいはブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体構造を有する化合物のことである。イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族イソシアネート、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族イソシアネート等を例示することができる。これらのイソシアネートと、各種ポリマーや化合物との反応物でもよい。また、これらイソシアネートのビュレット化物、イソシアヌレート化物、ウレトジオン化物、カルボジイミド変性体等の重合体や誘導体も挙げることができる。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。上記イソシアネートの中でも、ポリエステルフィルムに対する離型層の密着性が向上するという観点から脂肪族イソシアネート又は脂環族イソシアネートが好ましく、脂環族イソシアネートがより好ましい。
【0147】
ポリオールとしては、例えばポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等を挙げることができ、高分子量ポリオールや低分子量ポリオールを用いることができる。
【0148】
高分子量ポリオールとは、特に制限はないが、数平均分子量が400~8,000であることが好ましく、400~4,000であることがより好ましい。数平均分子量がこの範囲であれば、適切な粘度であり、良好な離型層の外観を得ることが可能となる。
高分子量ポリオールとしては、例えばポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等を挙げることができる。ポリエステルフィルムとの密着性を向上させるために、ポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0149】
ポリカーボネートポリオールは、多価アルコール類とカーボネート化合物とから、脱アルコール反応によって得られる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン1,4-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、4,4’-ナフタレンジメタノール、3,4’-ナフタレンジメタノール等を挙げることができる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等を挙げることができ、これらの反応から得られるポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリシクロへキシレンカーボネートジオール等を挙げることができる。これらの中でもポリエステルフィルムに対する離型層の密着性の観点からポリヘキサメチレンカーボネートジオールが好ましい。
【0150】
ポリエステルポリオールとしては、多価カルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)又はそれらの酸無水物と多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等)の反応から得られるもの、ポリカプロラクトン等のラクトン化合物の誘導体ユニットを有するもの等を挙げることができる。
【0151】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等を挙げることができる。
【0152】
低分子量ポリオールとしては、特に制限されないが、例えば、数平均分子量が60以上400未満のものを挙げることができる。例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等の炭素数2~9の脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン、2,7-ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、2,5-ビス(ヒドロキシメチル)-1,4-ジオキサン等の炭素数6~12の脂環式構造を有するジオール等、2,2-ジメチロールプロパン酸、2,2-ジメチロールブタン酸等のジメチロールアルカン酸、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の低分子量多価アルコールを挙げることができる。これらの中でもウレタン(メタ)アクリレート化合物の水分散体の安定性を向上させる観点からジメチロールアルカン酸が好ましい。
【0153】
(メタ)アクリレート化合物としては、単官能(メタ)アクリレートや二官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。ここで多官能(メタ)アクリレートとは、1分子中に(メタ)アクリレート基を3つ以上有する化合物をいう。
(メタ)アクリレート化合物は、ポリマーであっても、モノマーであってもよい。シリコーン化合物との反応性の観点から、モノマーである方が好ましい。
【0154】
単官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではない。例えばメチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレート、ジアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリール(メタ)アクリレート、フェニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。
【0155】
二官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えば1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ) アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等のビスフェノール変性ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、エポキシジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0156】
多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではないが、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のアルキレノキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のアルキレノキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0157】
これらの中でもより効率的に架橋を形成するという観点から、二官能(メタ)アクリレート又は多官能(メタ)アクリレートが好ましく、多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(トリ)アクリレートがより好ましい。
【0158】
本離型剤組成物が(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を含む場合、本離型剤組成物中の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物の含有量は、本離型剤組成物中の全不揮発成分に占める割合として、好ましくは1~50質量%、より好ましくは1~40質量%、さらに好ましくは2~30質量%、特に好ましくは2~10質量%の範囲である。当該含有量を1質量%以上とすることで、本ポリエステルフィルムとの密着性を向上させることができる。また、当該含有量を50質量%以下とすることで、十分な離型性を確保することができる。
【0159】
((特に好ましい形態))
本離型層は、優れた離型性を得る観点からは、前記離型剤としてシリコーン化合物を含むことが好ましい。
また、本離型層は、ポリエステルフィルムに対する優れた密着性を得る観点からは、前記離型剤としてシリコーン化合物を含む場合に本離型剤組成物がさらに(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を含むこと、又は、前記離型剤として長鎖アルキルを含む場合に本離型剤組成物がさらに架橋剤を含むことが好ましい。
さらに、本離型層は、後述する空気漏れ指数をより低くし、本離型フィルムの巻き取り性といったハンドリング性をより向上させる観点からは、前記離型剤として長鎖アルキル基含有化合物を含むことが好ましい。
このように、優先する特性によって、上記の特に好ましい形態を適宜選択すればよい。
【0160】
((その他成分))
また、本発明の主旨を損なわない範囲において、上記成分以外にも、バインダー樹脂、粒子、消泡剤、塗布性改良剤、界面活性剤、増粘剤、有機系潤滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤をさらに適宜配合してもよい。本離型剤組成物に含有し得るバインダー樹脂の具体的な態様は、本樹脂組成物に含有し得るバインダー樹脂と同じであり、これらを全て援用することができる。
また、離型剤としてシリコーン化合物を使用する場合には、触媒量の白金族金属触媒や、反応性重剥離調整剤などを適宜配合してもよい。
【0161】
((溶媒))
本離型剤組成物は、溶媒で希釈して塗布液としてもよい。すなわち、本離型剤組成物は、液状の塗布液として、例えば本ポリエステルフィルムに塗布し、必要に応じて乾燥、かつ、硬化させて離型層を形成させるとよい。
なお、本離型剤組成物を構成する各成分(離型剤、任意に添加される架橋剤及び(メタ)アクリロイル基を含有する化合物、その他成分等)は、溶媒に溶解させてもよいし、溶媒中に分散させてもよい。
塗布液とした場合、塗布液中における本離型剤組成物の全不揮発成分の濃度は、0.1~50質量%であることが好ましい。0.1質量%以上であれば、効率的に所望の厚みの離型層を形成することができる。一方、50質量%以下であれば、塗工時の粘度を抑えることで離型層の外観を向上させることができ、また、塗布液中の安定性を高めることができる。
【0162】
本離型剤組成物を希釈し得る溶媒の具体的な態様及び好ましい態様は、本樹脂組成物に希釈し得る溶媒と同じであり、これらを全て援用することができる。
【0163】
離型層中には、本離型剤組成物を構成する各成分(離型剤、任意に添加される架橋剤及び(メタ)アクリロイル基を含有する化合物、その他成分等)の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
なお、離型層中の各成分の分析は、例えば、TOF-SIMS、ESCA、蛍光X線等によって行うことができる。
【0164】
<離型層の形成方法>
次に、離型フィルムを構成する離型層の形成方法について説明するが、本離型層の形成方法の具体的な態様及び好ましい態様は、本樹脂層の形成方法と同じであり、これらを全て援用することができる。
すなわち、本発明では、離型層は、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより形成されるのが好ましい。
また、以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。
【0165】
本離型層の不揮発成分の塗布量は、好ましくは0.001~1.0g/m、より好ましくは0.005~0.5g/m、さらに好ましくは0.01~0.2g/mである。当該塗布量が、0.001g/m以上であれば、十分な離型性を得ることができる。また、当該塗布量が、1.0g/m以下であれば、塗膜外観の悪化や塗膜の硬化不足が生じるのを抑えることができる。
なお、当該塗布量は、塗布液不揮発成分濃度、塗布液消費量から導かれる乾燥前塗布量、横延伸倍率等から計算で求めることができる。
また、不揮発成分の塗布量とは、本離型フィルムにおける塗布量であり、例えば、乾燥及び延伸を行う場合には、乾燥延伸後の塗布量である。
【0166】
<<<離型フィルムの物性>>>
第1態様における本離型フィルムの樹脂層表面のクルトシス(Sku)は、3.0未満である。
クルトシス(Sku)は、凹凸の先端形状に関するパラメーターであり、Sku=3を正規分布とし、Sku>3であれば高さ分布が尖っている、すなわち表面に鋭い凹凸が多い形状である、Sku<3であれば表面凹凸の高さ分布がつぶれている、すなわち表面が比較的平坦である形状と評価することができる。
したがって、当該クルトシス(Sku)が3.0未満であれば、表面が平たんな形状の突起であることにより、フィルムを重ねた時に突起頂点が潰れにくく、空気抜け性を効率的に保つことができる。かかる観点から、当該クルトシスは、2.9以下であることが好ましく、より好ましくは2.8以下、さらに好ましくは2.6以下、特に好ましくは2.4以下、とりわけ好ましくは2.2以下である。下限値は特に制限されず、0.1である。
【0167】
第2態様における本離型フィルムの樹脂層表面のクルトシス(Sku)は、3.0未満であることが好ましい。
クルトシス(Sku)は、凹凸の先端形状に関するパラメーターであり、Sku=3を正規分布とし、Sku>3であれば高さ分布が尖っている、すなわち表面に鋭い凹凸が多い形状である、Sku<3であれば表面凹凸の高さ分布がつぶれている、すなわち表面が比較的平坦である形状と評価することができる。
したがって、当該クルトシス(Sku)が3.0未満であれば、表面が平坦な形状の突起であることにより、フィルムを重ねた時に突起頂点が潰れにくく、空気抜け性を効率的に保つことができる。かかる観点から、当該クルトシスは、2.9以下であることがより好ましく、さらに好ましくは2.8以下、特に好ましくは2.6以下、とりわけ好ましくは2.4以下、最も好ましくは2.2以下である。下限値は特に制限されず、0.1である。
【0168】
クルトシス(Sku)とは、面粗さパラメーター(ISO 25178)の一つであり、高さ分布のヒストグラムのとがり具合(尖度)を評価することができ、以下の式(1)から求められる。
表面をXY面,高さ方向をZ軸とした時、A:定義された領域(画像全体とする)、Z(x,y):画像点(x,y)の高さ0の面からの高さ、Sq:二乗平均平方根高さ(高さ分布の標準偏差に相当)とすると、以下のように表される。
【0169】
【数1】
【0170】
第2態様における本離型フィルムの樹脂層表面の切断レベル70%における粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr(70))は、74%以下である。
ここで、本発明者らは、負荷長さ率(Rmr(70))が凹凸構造の凹凸分布を表す指標として有効であると考えた。例えば凹分布が大きいものは負荷長さ率(Rmr(70))の数値が小さくなり、凸分布が大きいものは負荷長さ率(Rmr(70))の数値が大きくなる。
当該負荷長さ率(Rmr(70))が74%以下であれば、適度な微細凹凸構造が形成されており、フィルムをロール状に巻き取った際にフィルム間にできる隙間が大きくなり、空気の抜け易さが向上し、巻き特性などを向上させることができる。
かかる観点から、当該負荷長さ率(Rmr(70))は、70%以下であることが好ましく、より好ましくは65%以下、さらに好ましくは60%以下である。下限値は特に制限されず、1%程度であり、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上である。
【0171】
第1態様における本離型フィルムの樹脂層表面の切断レベル70%における粗さ曲線の負荷長さ率(Rmr(70))が82%以下であることが好ましく、より好ましくは65%以下、さらに好ましくは60%以下である。下限値は特に制限されず、1%程度であり、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上である。
ここで、本発明者は、負荷長さ率(Rmr(70))が凹凸構造の凹凸分布を表す指標として有効であると考えた。例えば凹分布が大きいものは負荷長さ率(Rmr(70))の数値が小さくなり、凸分布が大きいものは負荷長さ率(Rmr(70))の数値が大きくなる。
当該負荷長さ率(Rmr(70))が82%以下であれば、適度な微細凹凸構造が形成されており、フィルムをロール状に巻き取った際にフィルム間にできる隙間が大きくなり、空気の抜け易さが向上し、巻き特性などを向上させることができる。
【0172】
負荷長さ率(Rmr(c))は、線粗さパラメーター(JIS B 0601)の一つであり、切断レベルc(高さ%又はμm)における輪郭曲線要素の負荷長さML(c)の評価長さLnに対する比率を表したものであり、以下の式(2)から求められる。
【0173】
【数2】
【0174】
本離型フィルムの樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)は、10nm以上であることが好ましく、より好ましくは20nm以上、さらに好ましくは50nm以上、特に好ましくは80nm以上である。上限値は特に制限されないが、600nmであることが好ましく、より好ましくは400nm、さらに好ましくは200nmである。当該算術平均粗さ(Ra)が10nm以上であれば、本樹脂層が微細な凹凸構造を有しているといえ、本離型フィルムの取り扱い性が良好となる。また、当該算術平均粗さ(Ra)が600nm以下であれば、本樹脂層の凹凸構造が十分に微細な形状といえる。
【0175】
算術平均粗さ(Ra)とは、線粗さパラメーター(JIS B 0601)の一つであり、平均面からの平均的な高低差の平均値を表す。
すなわち、基準長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の平均線をx軸、縦倍率の方向をy軸として粗さ曲線をy=Z(x)で表したとき、以下の式(3)から求められる。
【0176】
【数3】
【0177】
また、樹脂層表面の十点平均粗さ(Rzjis)は60nm以上であることが好ましく、より好ましくは150nm以上、さらに好ましくは250nm以上である。上限値は特に制限されないが、800nmであることが好ましく、より好ましくは600nm、さらに好ましくは450nmである。当該十点平均粗さ(Rzjis)が60nm以上であれば、本樹脂層が十分な凹凸構造を有しているといえる。また、当該十点平均粗さ(Rzjis)が800nm以下であれば、本樹脂層の凹凸構造が十分に微細な形状といえる。
【0178】
十点平均粗さ(Rzjis)とは、線粗さパラメーター(JIS B 0601)の一つであり、基準長さLにおいて、輪郭曲線の最大の山高さ(Zp)から5番目までの平均と、最深の谷深さ(Zv)から5番目までの平均との和を表し、以下の式(4)から求められる。
【0179】
【数4】
【0180】
本離型フィルムの樹脂層表面の二乗平均平方根勾配(Sdq)は、0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.25以上、さらに好ましくは0.45以上である。一方、当該二乗平均平方根勾配(Sdq)は、3以下であることが好ましく、より好ましくは1.0以下である。当該二乗平均平方根勾配(Sdq)が0.1以上であれば、凹凸構造の山谷の差がはっきりとしていることで空気抜け性を高めることができる。また、当該二乗平均平方根勾配(Sdq)が3以下であれば、粗大突起を抑えることができる。
【0181】
二乗平均平方根勾配(Sdq)とは、面粗さパラメーター(ISO 25178)の一つであり、以下の式(5)から求められる。
二乗平均平方根勾配(Sdq)は、表面の凹凸形状の局部的な勾配(傾斜)の平均的な大きさを表し、値が大きいほど急峻な表面であることを示す。
【0182】
【数5】
【0183】
また、樹脂層表面の展開界面面積率(Sdr)は、0.5%以上であることが好ましく、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは9%以上である。一方、当該展開界面面積率(Sdr)は、60%以下であることが好ましく、より好ましくは50%以下である。当該展開界面面積率(Sdr)が0.5%以上であれば、微細凹凸構造が形成できていることにより、巻き特性を改善することができる。また、当該展開界面面積率(Sdr)が60%以下であれば、起伏が適度に抑えられており、粗大突起などを防ぐことができる。
【0184】
展開界面面積率(Sdr)とは、面粗さパラメーター(ISO 25178)の一つであり、以下の式(6)の%表示から求められる。
展開界面面積率(Sdr)は、定義領域の展開面積(表面積)が定義領域の面積に対してどれだけ増大しているか、すなわち表面積の増加割合を表し、表面の形状が緻密で起伏が激しいほど値が大きくなる。
【0185】
【数6】
【0186】
上記クルトシス(Sku)、負荷長さ率(Rmr(70))、算術平均粗さ(Ra)、十点平均粗さ(Rzjis)、二乗平均平方根勾配(Sdq)及び展開界面面積率(Sdr)は、本樹脂組成物中の組成や含有量、樹脂層の形成方法や形成過程における各種条件などによって調整することができる。
【0187】
なお、樹脂層表面のクルトシス(Sku)、負荷長さ率(Rmr(70))、算術平均粗さ(Ra)、十点平均粗さ(Rzjis)、二乗平均平方根勾配(Sdq)及び展開界面面積率(Sdr)は、原子間力顕微鏡(走査型プローブ顕微鏡)を用いて実施例に記載の方法で測定する。原子間力顕微鏡(走査型プローブ顕微鏡)による測定であれば、表面のより微細な構造を捉えることが可能であり、樹脂層による効果を強く反映した数値を得ることが可能となる。
【0188】
本離型フィルムの樹脂層表面の表面算術平均粗さ(Sa)は、1~70nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは2~50nm、さらに好ましくは3~30nmの範囲である。当該算術平均粗さ(Sa)がかかる範囲であれば、微細凹凸形状を有しつつ、極端に大きな凹凸を低減することができる。よって、例えば本離型フィルムのハンドリング性を確保することができ、ロール状に巻き取る際のシワを抑制しつつ、積層セラミックコンデンサの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用い、本樹脂層が設けられた面とは反対側のフィルム面に離型層やセラミック層が設けられる場合、本樹脂層表面の突起によるセラミック層への突起転写やセラミック層破壊を防止することができる。
【0189】
平均表面粗さ(Sa)とは、面粗さパラメーター(ISO 25178)の一つであり、二次元のRa(線の算術平均粗さ)を三次元に拡張したもので、表面形状曲面と平均面で囲まれた部分の体積を測定面積で割ったものであり、以下の式(7)から求められる。
表面をXY面,高さ方向をZ軸とした時、A:定義された領域(画像全体とする)、Z(x,y):画像点(x,y)の高さ0の面からの高さとすると、以下のように表される。
【0190】
【数7】
【0191】
また、樹脂層表面の表面最大山高さ(Sp)は、1000nm以下であることが好ましく、より好ましくは800nm以下、さらに好ましくは500nm以下、特に好ましくは300nm以下、とりわけ好ましくは200nm以下である。一方、当該最大山高さ(Sp)は、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上である。当該最大山高さ(Sp)が1000nm以下であれば、突起を低減することができる。よって、例えば本離型フィルムを積層セラミックコンデンサの製造工程においてセラミックグリーンシートの支持体として用い、本樹脂層が設けられた面とは反対側のフィルム面に離型層やセラミック層が設けられる場合、本樹脂層表面の突起によるセラミック層への突起転写やセラミック層破壊を防止することができる。また、当該最大山高さ(Sp)が10nm以上であれば、本離型フィルムのハンドリング性を確保することができ、ロール状に巻き取る際のシワを抑制することができる。
【0192】
最大山高さ(Sp)とは、面粗さパラメーター(ISO 25178)の一つであり、表面の平均面からの高さの最大値を表し、以下の式(8)ように表される。
【0193】
【数8】
【0194】
樹脂層表面の算術平均粗さ(Sa)及び最大山高さ(Sp)は、本樹脂組成物中の組成や含有量などによって調整することができる。
なお、樹脂層表面の算術平均粗さ(Sa)及び最大突起山高さ(Sp)は、光干渉を利用した非接触式の表面粗さ計によって測定でき、具体的には実施例に記載の方法で測定することができる。この手法による測定であれば、本離型フィルムのより広い面積を反映した数値を得ることができる。
【0195】
本離型フィルムの離型層のテープ剥離力は、500mN/cm以下であることが好ましく、より好ましくは400mN/cm以下、さらに好ましくは300mN/cm以下、特に好ましくは200mN/cm以下である。当該テープ剥離力が500mN/cm以下であれば、本離型フィルムが十分な離型性を有するといえる。下限値は特に制限されず、0.1mN/cm程度である。
なお、上記離型層のテープ剥離力は、実施例に記載の方法で測定できる。
【0196】
本離型フィルムの樹脂層表面と離型層表面との静摩擦係数は、1.0以下であることが好ましく、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.6以下、特に好ましくは0.4以下である。
本離型フィルムをロール状に巻き取った際などには、樹脂層表面と離型層表面が接するため、樹脂層表面と離型層表面との摩擦係数が重要である。
したがって、当該静摩擦係数がかかる範囲であれば、本樹脂層の凹凸構造により、滑り性が良好となり、本離型フィルムのハンドリング性が良化する。
なお、上記静摩擦係数は、実施例に記載の方法で測定できる。
【0197】
本離型フィルムの巻き取り性といったハンドリング性を評価する一つの指標として、空気漏れ指数を用いることができる。空気漏れ指数が低ければ、本離型フィルムを巻き上げた際に噛み込んだエアが抜けやすく、シワや端面不揃いなどのロール外観の不良を防ぐことができる。一方、空気漏れ指数が高い場合、巻き込んだエアが十分時間経過後、特に搬送中に抜けることで、巻き芯方向にフィルムがズレたり、ズレによりキズが入ったりして問題となる場合がある。本離型フィルムでは、このような不具合が生じない。
【0198】
空気漏れ指数は、例えば、150,000秒以下であればよい。より好ましくは100,000秒以下、さらに好ましくは70,000秒以下、特に好ましくは30,000秒以下である。150,000秒以下であれば一定のハンドリング性を有するといえる。
当該空気漏れ指数は、樹脂層の凹凸構造によって改善できる以外に、ポリエステルフィルムの平滑面の粗さによる改善もできる。具体的には、樹脂層が形成された面とは反対面(すなわち、平滑面)のポリエステルフィルム表面の算術平均粗さ(Sa)が15nm以下、及び最大山高さ(Sp)が800nm以下のいずれか又は両方を満たすことが好ましい。ここで、反対面は、本離型フィルムを積層セラミックコンデンサのグリーンシートを成形するための離型フィルムや、層間絶縁樹脂離型フィルム、ドライフィルムレジスト用離型フィルムなどの各種用途に用いる場合に、加工に用いられるフィルム面であるとよく、例えば後述するとおり、各種材料が塗布、積層などされるとよい。
また、より精密な加工が必要とされる場合、反対面(すなわち加工に用いられるフィルムの平滑面)のポリエステルフィルム表面の算術平均粗さ(Sa)が9nm以下、及び最大山高さ(Sp)が500nm以下のいずれか又は両方を満たすことがより好ましい。このように、フィルムの平滑面が極めて高平滑な場合、フィルムの平滑性を利用することで、より精密な加工ができる上、本樹脂層の凹凸構造によって当該空気漏れ指数が上記範囲に改善されて巻き取り性が良好となり、本離型フィルムのハンドリング性が良化する。
このように、空気漏れ指数は、樹脂層が形成された面とは反対面側のポリエステルフィルム表面の平滑度合いに依存する。ポリエステルフィルムにより平滑性が求められる場合も、本樹脂層の凹凸構造によるハンドリング性の改善効果を得ることが可能となる。
なお、上記空気漏れ指数は、実施例に記載の方法で測定できる。
【0199】
<<<離型フィルムの用途>>>
第1態様における本樹脂層は、特定の化合物を一定量含む樹脂組成物から構成し、そして特定の粗さ構造を持つことにより、微細な凹凸構造を発現できる点に特徴がある。また、粗さ構造を表す指標として、凹凸の先端形状を評価できる、とがり具合(尖度)に着目したことにも特徴がある。
第2態様における本樹脂層は、特定の化合物を含む樹脂組成物から構成し、そして特定の粗さ構造を持つことにより、微細な凹凸構造を発現できる点に特徴がある。また、粗さ構造を表す指標として、凹凸構造の凹凸分布を表す負荷長さ率(Rmr(70))に着目したことにも特徴がある。
かかる設計思想により、従来の粒子練り込み型のフィルム製法では達成困難な、微細な凹凸構造の精密制御が可能となった。また、特定の粗さ構造を持つことにより、薄膜であっても空気の抜け易さを向上させることができ、ハンドリング性の優れる離型フィルムを提供することが可能となった。
【0200】
本離型フィルムは、ハンドリング性を向上させる目的で各種用途に使用することができ、その用途は特に制限されない。
中でも、上述のとおり、微細な凹凸構造を有することから、シート成形用として用いれば、高平滑なフィルムをロール状に巻き取る際にも、良好な巻取り性を発揮し、シワが発生しにくくなるという利点があり、シート成形用離型フィルムとして好適に用いることができる。シート成形用離型フィルムとしては、例えば積層セラミックコンデンサ(Multi-Layer Ceramic Capacitor;MLCC)のグリーンシート成形用、層間絶縁樹脂用、ドライフィルムレジスト(DFR)用、多層回路基板用等の各種離型用途が挙げられる。本離型フィルムは、離型用途では、例えば支持体として使用される。中でも、本離型フィルムは、積層セラミックコンデンサ、とりわけ自動車向け積層セラミックコンデンサの製造工程において、セラミックグリーンシートの支持体として好適に用いることができる。
シート成形用離型フィルムは、例えば、該フィルムの少なくとも一方の面側に、各種材料を塗布、積層などしてグリーンシートなどの各種シートを成形する工程において使用されるとよい。各種材料は、離型層面側に塗布、積層などされることが好ましい。
【0201】
<<<語句の説明>>>
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」あるいは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例0202】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
ただし、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0203】
<評価方法>
(1)ポリエステルの固有粘度(IV)
ポリエステルに非相溶な成分を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mLを加えて溶解させ、粘度測定装置「VMS-022UPC・F10」(株式会社離合社製)を用いて、30℃で測定した。
【0204】
(2)ポリエステルフィルムに含有される粒子の平均粒径
粒子の平均粒径は、10個以上の粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して粒子の直径を測定し、その平均値を平均粒径(平均1次粒径)として求めた。その際、非球状粒子の場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子の直径として測定した。
【0205】
(3)樹脂層の凹凸構造
走査型プローブ顕微鏡(株式会社島津製作所社製 SPM-9700)を用いて、下記の条件で測定を行った。
探針:シリコンカンチレバー
走査モード:ダイナミックモード
走査範囲:25μm×25μm
スキャン速度:0.8Hz
画素数:512×512データポイント
得られたデータから25μm幅の断面形状を観察し、第1態様においては8割以上の位置において、第2態様においては3割以上の位置において、段差が10nmを超える凸部もしくは凹部が複数ある場合は凹凸構造「有」、複数の凸部もしくは凹部を確認できない場合は凹凸構造「無」と判断した。
【0206】
(4)樹脂層表面の算術平均粗さ(Ra)及び十点平均粗さ(Rzjis)
上記(3)の方法で測定した走査型プローブ顕微鏡のデータから、テンター延伸方向(すなわち、横方向)に平行に25μm幅の断面解析を行い、算術平均粗さ(Ra)と十点平均粗さ(Rzjis)を求めた。フィルムの製膜方向(すなわち、縦方向)に等間隔に10点の断面解析データを求め、これを平均して求めた。
【0207】
(5)樹脂層表面の負荷長さ率(Rmr(70))
上記(4)と同様の方法で走査型プローブ顕微鏡の断面解析を行い、切断レベル70%の負荷長さ率(Rmr(70))を求めた。フィルムの製膜方向(すなわち、縦方向)に等間隔に10点の断面解析データを求め、これを平均して求めた。
【0208】
(6)樹脂層表面のクルトシス(Sku)、二乗平均平方根勾配(Sdq)及び展開界面面積率(Sdr)
上記(3)の方法で測定した走査型プローブ顕微鏡のデータから、得られた画像データを画像解析ソフトSPIP6.2.5ImageMetrologyを用いて解析し、クルトシス(Sku)、二乗平均平方根勾配(Sdq)及び展開界面面積率(Sdr)を算出した。
【0209】
(7)樹脂層表面及び樹脂層とは反対面側表面の算術平均粗さ(Sa)及び最大山高さ(Sp)
フィルム表面を、株式会社菱化システム製、非接触表面・層断面形状計測システムVertScan(登録商標)R550GMLを使用して、CCDカメラ:SONY HR-50 1/3’、対物レンズ:20倍、鏡筒:1X Body、ズームレンズ:No Relay、波長フィルター:530 white、測定モード:Waveにて、640μm×480μmの領域を測定し、4次の多項式補正による出力を用い、算術平均粗さ(Sa)及び最大山高さ(Sp)を10点平均して求めた。
【0210】
(8)離型層のテープ剥離力
離型フィルムの離型層表面に5cm幅にカットした粘着テープ(日東電工株式会社製、「No.31B」)を2kgゴムローラーにて1往復圧着し、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は、小型卓上試験機「EZ Graph」(株式会社島津製作所製)を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。
【0211】
(9)離型層の塗膜密着性
離型フィルムの離型層面を触手により、5回擦り、離型層の脱落の有無を下記判定基準により判定した。
《判定基準》
〇:塗膜の脱落が見られない、又は塗膜が白くなるが脱落はしていない
×:塗膜の脱落が確認された
【0212】
(10)静摩擦係数
離型フィルムの樹脂層表面と離型層表面との静摩擦係数は、以下の方法で求めた。
幅10mm、長さ100mmの平滑な金属板上に、離型層表面が上面となるようにフィルムを貼り付けた。その上に幅18mm、長さ120mmに切り出したフィルムを上記樹脂層が設けられた面が下面となるように載せ、そのフィルムの上にさらに直径8mmの金属ピンに押し当て、金属ピンをガラス板の長手方向に、加重30g、40mm/分で滑らせて摩擦力を測定し、滑り出し直後の最大値を静摩擦係数として評価した。なお、測定は、室温23±1℃、湿度50±0.5%RHの雰囲気下で行った。また、測定回数(N)は3回とし、その平均値を採用した。
静摩擦係数(μs)=Fs/おもり荷重
(上記式中、Fsの単位はg重、おもり荷重の単位はg重である)
【0213】
(11)空気漏れ指数
デジベック平滑度試験機(東洋精機株式会社製、「DB-2」)を使用し、JIS P8119に準拠して、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で測定した。加圧装置の圧力は100kPa、真空容器は容積38mLの容器を使用し、1mLの空気が流れる時間、すなわち容器内の圧力が50.7kPaから48.0kPaに変化するまでの時間(秒)を計測し、得られた秒数の10倍を空気漏れ指数とした。試験フィルムのサンプルサイズは70mm四方として、試験フィルムの表裏が重なるように20枚を積層し、試験用積層フィルムとした。
試験用積層フィルムの中央に直径5mmの穴を開けて、前述の通り、空気漏れ指数を測定した。この空気漏れ指数の値が大きいほど、フィルム同士の隙間から空気が漏れるのに時間を要するので、フィルム同士がより密に接していることを示しており、ロール状フィルムにした時にシワ発生のリスクが大きいこと示す。
【0214】
<使用した材料>
実施例及び比較例において使用したポリエステルは、以下のとおりである。
【0215】
[ポリエステル(A)]
ジメチルテレフタレート100質量部及びエチレングリコール65質量部を、攪拌装置、昇温装置及び留出液分離塔を備えたエステル交換反応槽に仕込み、150℃に加熱してジメチルテレフタレートを溶融させた。
【0216】
次いで、得られるポリエステルに対する酢酸マグネシウムの添加量が0.09質量%となるように、酢酸マグネシウム四水塩のエチレングリコール溶液を添加した。
その後、常圧下で3時間かけて225℃まで昇温させ、更に225℃で1時間15分攪拌保持すると共にメタノールを留去しながらエステル交換反応を行ない、実質的にエステル交換反応を終了してポリエステル低重合体(オリゴマー)を得た。
【0217】
次いで、前記オリゴマーを留出管を備えた攪拌機付き重縮合反応槽へ移送した。
得られるポリエステル樹脂分に対する酢酸マグネシウムの添加量が0.09質量%となるように、酢酸マグネシウム四水塩のエチレングリコール溶液を、移送後のオリゴマーに添加した。
その後、得られるポリエステルに対するリン酸の添加量が0.017質量%となるように、熱安定剤としてリン酸のエチレングリコール溶液を添加した。
【0218】
次いで、得られるポリエステルに対してチタン原子として4.5質量ppmとなるように、重縮合触媒としてテトラブチルチタネートのエチレングリコール溶液を、前記オリゴマーに添加した。
その後、101.3kPaから0.4kPaまで85分間で減圧し0.4kPaに保持するとともに、225℃から280℃まで2時間かけて昇温させ280℃で1.5時間保持して溶融重縮合反応を行い、固有粘度(IV)が0.63dL/gのポリエステルAを得た。
【0219】
[ポリエステル(B)]
ポリエステル(A)でテトラブチルチタネートを添加する代わりに、得られるポリエステル樹脂分に対してアンチモン原子として300質量ppmとなるように、重縮合触媒として三酸化アンチモンを添加すること以外はポリエステル(A)と同様にして、固有粘度(IV)が0.63dL/gのポリエステル(B)を得た。
【0220】
下記表1に示す組成にて撹拌混合して得られる樹脂組成物を水で希釈して、塗布液A1~A6を調製した。使用した化合物は以下のとおりである。
【0221】
[化合物(A):バインダー樹脂(IA)]
下記組成で共重合したポリエステル樹脂の水分散体
モノマー組成:(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5-ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4-ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)
【0222】
[化合物(A):バインダー樹脂(IB)]
下記組成で重合したポリエステル系ウレタン樹脂の水分散体。
イソホロンジイソシアネートユニット:テレフタル酸ユニット:イソフタル酸ユニット:エチレングリコールユニット:ジエチレングリコールユニット:ジメチロールプロピオン酸ユニット=12:19:18:21:25:5(mol%)から形成される。
【0223】
[化合物(A):架橋剤(II)]
メラミン化合物:ヘキサメトキシメチロールメラミン
【0224】
[化合物(B):粒子(IIIA)]
平均粒径14nmの酸化ジルコニウム粒子
【0225】
[化合物(B):粒子(IIIB)]
平均粒径12nmの鎖状シリカ粒子
【0226】
[化合物(B):粒子(IIIC)]
平均粒径11nmの球状シリカ粒子
【0227】
[化合物(B):粒子(IIID)]
平均粒径45nmの球状シリカ粒子
【0228】
下記表2に示す組成にて撹拌混合して得られる離型剤組成物を水で希釈して、塗布液B1~B3を調製した。使用した化合物は以下のとおりである。
【0229】
[離型剤(IVA)]
平均重合度500、ケン化度88モル%のポリビニルアルコールにオクタデシルイソシ アネートを付加させた長鎖アルキル基含有化合物
【0230】
[離型剤(IVB)]
ビニル基含有量が0.16mmol/gであるビニル基含有ポリジメチルシロキサンの水分散体(乳化剤:ノニオン系界面活性剤)
【0231】
[離型剤(IVC)]
Si-H基含有量が7.8mmol/gである水素基含有ポリジメチルシロキサンの水分散体(乳化剤:ノニオン系界面活性剤)
【0232】
[架橋剤(V)]
メチロール基、メトキシ基及びイミノ基を有する部分エーテル化メラミン
【0233】
[(メタ)アクリロイル基を含有する化合物(VI)]
下記組成のポリカーボネート系ウレタン樹脂及び(メタ)アクリレート化合物の混合物の水分散体
分子量1100のポリヘキサメチレンカーボネートジオールユニット:ジメチロールプロピオン酸ユニット:水添キシリレンジイソシアネートユニット:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートユニット=11:7:40:42(mol%)から形成されるポリウレタン(メタ)アクリレート樹脂が50質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが27質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート23質量部で混合された、ウレタン(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートを除く(メタ)アクリレート化合物の混合物の水分散体
【0234】
(実施例1)
ポリエステル(A)のみを最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(B)のみを中間層の原料とした。最外層及び中間層の原料の各々を2台の押出機に供給し、各々280℃で溶融した後、25℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層=1.6/27.8/1.6の吐出量)の層構成で共押出し冷却固化させて未延伸シートを得た。
次いで、このフィルムを86℃の加熱ロール群を通過させながら長手方向に3.5倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。この一軸延伸フィルムの片面に、下記表1に示す組成を有する塗布液A1を塗布量(乾燥延伸後)が0.05g/mとなるように塗布し、反対側の面に、下記表2に示す組成を有する塗布液B1を塗布量(乾燥延伸後)が0.02g/mとなるように塗布し、次いでこのフィルムをテンター延伸機に導き、105℃で幅方向に4.5倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施した後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、ポリエステルフィルムの厚さが31μmである離型フィルムを得た。評価結果を表3に示す。
なお、実施例1の離型フィルムについて、図1に樹脂層表面を走査型プローブ顕微鏡で観察した画像を示す。図1の画像から、樹脂層表面には微細な凹凸構造が形成されていることがわかる。
【0235】
(実施例2~11)
表1及び表2に示す塗布液を用いると共に、塗布量(乾燥延伸後)を表3に示す塗布量とした以外は、実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。評価結果を表3に示す。
【0236】
(比較例1)
樹脂層及び離型層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルフィルムを得た。評価結果を表3に示す。
【0237】
(比較例2)
表1に示す塗布液を用いると共に、塗布量(乾燥延伸後)を表3に示す塗布量としたこと、及び離型層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂層を有するポリエステルフィルムを得た。評価結果を表3に示す。
【0238】
(比較例3)
表2に示す塗布液を用いると共に、塗布量(乾燥延伸後)を表3に示す塗布量としたこと、及び樹脂層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして、離型層を有するポリエステルフィルムを得た。評価結果を表3に示す。
【0239】
【表1】
【0240】
【表2】
【0241】
【表3】
【0242】
表3の結果が示す通り、本発明の第1態様における離型フィルムである実施例1~11は、化合物(A)及び一定量以上の化合物(B)を含み、かつクルトシス(Sku)が3.0未満であることで適切な凹凸形状となり、静摩擦係数が1.0以下と低く、滑り性が良く、空気漏れ指数が150,000秒以下と空気抜け性に優れるため、巻き取り性といった生産性に優れたフィルムであることが分かる。
また、本発明の第2態様における離型フィルムである実施例1~11は、化合物(A)及び化合物(B)を含み、かつ切断レベル70%における負荷長さ率(Rmr(70))が74%以下であることで適切な凹凸形状となり、静摩擦係数が1.0以下と低く、滑り性が良く、空気漏れ指数が150,000秒以下と空気抜け性に優れるため、巻き取り性といった生産性に優れたフィルムであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0243】
本発明の離型フィルムは、樹脂層表面が微細な凹凸構造を有するため、例えばシート成形用として用いれば、極めて高平滑なフィルムをロール状に巻き取る際にも、良好な巻取り性を発揮し、シワが発生しにくくなるという利点がある。
また、本発明の離型フィルムは、樹脂層を薄膜にできるから、離型フィルムの薄膜長尺化にも対応可能であり、加工時における製品ロールの切替頻度低減による生産性向上に寄与することができる。
したがって、本発明の離型フィルムは、優れた表面平滑性を有するシート成形用離型フィルム等として好適に用いることができ、その工業的利用価値は高い。
図1