(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024105999
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板支持部
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240731BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240731BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/302 101B
C23C16/44 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010032
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠人
(72)【発明者】
【氏名】武藤 亮磨
(72)【発明者】
【氏名】須賀 海成
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
4K030FA01
4K030GA02
4K030KA05
4K030KA30
5F004BA09
5F004BB12
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
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5F004CA04
5F004CA06
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA32
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131BA23
5F131CA02
5F131CA03
5F131EA03
5F131EB11
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】基板支持部の温度制御効率を高める。
【解決手段】処理容器と、前記処理容器内に配置される基板支持部と、少なくとも前記基板支持部にRF電力を供給する電源と、を有する基板処理装置であって、前記基板支持部は、セラミックスにより形成され、被処理基板を静電吸着により保持する静電チャックと、熱交換媒体が流れる流路を有し、前記静電チャックを支持する基台と、前記静電チャックと前記基台との間に設けられる低線膨張係数部材と、前記低線膨張係数部材と前記基台との間に設けられる伝熱シートと、前記伝熱シートを前記低線膨張係数部材に固定する固定部と、前記低線膨張係数部材と
前記基台との間に設けられ、前記低線膨張係数部材と
前記基台とを電気的に接続する導電性部材と、を有する、基板処理装置が提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器と、前記処理容器内に配置される基板支持部と、少なくとも前記基板支持部にRF電力を供給する電源と、を有する基板処理装置であって、
前記基板支持部は、
セラミックスにより形成され、被処理基板を静電吸着により保持する静電チャックと、
熱交換媒体が流れる流路を有し、前記静電チャックを支持する基台と、
前記静電チャックと前記基台との間に設けられる低線膨張係数部材と、
前記低線膨張係数部材と前記基台との間に設けられる伝熱シートと、
前記伝熱シートを前記低線膨張係数部材に固定する固定部と、
前記低線膨張係数部材と基台との間に設けられ、前記低線膨張係数部材と基台とを電気的に接続する導電性部材と、
を有する、基板処理装置。
【請求項2】
前記流路の上面は前記低線膨張係数部材で塞がれている、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記流路の上面は前記基台の上部で塞がれている、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記静電チャックと前記低線膨張係数部材とを金属接合する金属接合層を有する、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記固定部は、ネジ構造又はクランプ構造を有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記低線膨張係数部材は、前記静電チャックとの線膨張係数の差が2ppm/℃以下の材料により形成されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記低線膨張係数部材は、金属セラミックス複合材料又はモリブデンである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記基台は、体積抵抗率が10-4Ωm未満の材料により形成されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記基台は、アルミニウム、モリブデン又はチタンである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記伝熱シートは、グラファイトシートである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記電源は、前記基台にRFソース電力と、RFバイアス電力又は直流バイアス電圧と、を供給する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記静電チャックは、前記被処理基板を支持する基板支持面を有する第1部分と、前記被処理基板を囲むように配置されるエッジリングを指示するリング支持面を有する第2部分と、を有し、
前記電源は、前記基台にRFソース電力を供給し、前記静電チャックの前記第1部分及び/又は前記第2部分に設けられた電極にRFバイアス電力又は直流バイアス電圧を供給する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記静電チャックの前記第1部分と前記第2部分とは、一体化している、
請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記静電チャックの前記第1部分と前記第2部分とは、分離している、
請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記静電チャックと前記低線膨張係数部材とを金属接合する金属接合層であり、前記金属接合層は、前記静電チャックの前記第1部分と前記第2部分との分離位置に対応して分離するように構成されている、
請求項14に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記低線膨張係数部材は、前記金属接合層の分離位置に対応して分離するように構成されている、
請求項15に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記基台は、前記低線膨張係数部材の分離位置に対応して分離するように構成されている、
請求項16に記載の基板処理装置。
【請求項18】
処理容器を有する基板処理装置において前記処理容器内に配置される基板支持部であって、
セラミックスにより形成され、被処理基板を静電吸着により保持する静電チャックと、
熱交換媒体が流れる流路を有し、前記静電チャックを支持する基台と、
前記静電チャックと前記基台との間に設けられる低線膨張係数部材と、
前記低線膨張係数部材と前記基台との間に設けられる伝熱シートと、
前記伝熱シートを前記低線膨張係数部材に固定する固定部と、
前記低線膨張係数部材と基台との間に設けられ、前記低線膨張係数部材と基台とを電気的に接続する導電性部材と、
を有する、基板支持部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置及び基板支持部に関する。
【背景技術】
【0002】
チラーユニットから温度制御された熱交換媒体を基板支持部の流路に流すことで、静電チャック上の被処理基板が所望の温度に冷却される。例えば、特許文献1は、被処理基板を載置する基板支持部を有する基板処理装置を提案する。基板支持部は、温度制御された熱交換媒体が流れる流路を配置した基台と、プラズマ耐性が高いセラミックス内に電極を内包し、載置面に被処理基板を載置する静電チャックと有し、基台と静電チャックとの間を接着層で接着させた構造を有する。
【0003】
近年、基板支持部に印加される高周波電力が増加している。このため、被処理基板へのプラズマからの入熱が増加し、被処理基板の温度制御が不十分になる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、基板支持部の温度制御効率を高めることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の態様によれば、処理容器と、前記処理容器内に配置される基板支持部と、少なくとも前記基板支持部にRF電力を供給する電源と、を有する基板処理装置であって、前記基板支持部は、セラミックスにより形成され、被処理基板を静電吸着により保持する静電チャックと、熱交換媒体が流れる流路を有し、前記静電チャックを支持する基台と、前記静電チャックと前記基台との間に設けられる低線膨張係数部材と、前記低線膨張係数部材と前記基台との間に設けられる伝熱シートと、前記伝熱シートを前記低線膨張係数部材に固定する固定部と、前記低線膨張係数部材と基台との間に設けられ、前記低線膨張係数部材と基台とを電気的に接続する導電性部材と、を有する、基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一の側面によれば、基板支持部の温度制御効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係るプラズマ処理装置の一例を示す断面模式図。
【
図2】第1及び第2実施形態に係る基板支持部の構成と参考例とを示す図。
【
図4】第1実施形態に係る基板支持部の電極構造の一例を示す図。
【
図5】第2実施形態に係る基板支持部の電極構造の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
[プラズマ処理装置]
以下に、プラズマ処理装置の構成例について
図1を参照して説明する。
図1のプラズマ処理装置は、容量結合型のプラズマ処理装置1であり、制御部2を含む。プラズマ処理装置1は基板処理装置の一例である。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10(処理容器)、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間10sからガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。側壁10aは接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体と電気的に絶縁されている。
【0011】
基板支持部11は、基台122と低線膨張係数部材114と静電チャック111とを含む。基板支持部11は、更にリングアセンブリ112を含む。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリング112aである。静電チャック111は、基台122の上部に低線膨張係数部材114を挟んで配置されており、被処理基板(ウェハ)(以下、基板Wという。)を支持するための中央領域(基板支持面111a)と、エッジリング112aを支持するための環状領域(リング支持面111b)とを有する。静電チャック111の環状領域(リング支持面111b)は、平面視で静電チャック111の中央領域(基板支持面111a)を囲んでいる。基板Wは、静電チャック111の基板支持面111a上に配置され、エッジリング112aは、静電チャック111の基板支持面111a上の基板Wを囲むように静電チャック111のリング支持面111b上に配置される。一実施形態において、基台122は、導電性部材を含む。基台122の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャック111は、低線膨張係数部材114を挟んで基台122の上に配置される。静電チャック111の上面は、基板支持面111aを有する。また、基板支持部11は、静電チャック111、エッジリング112a及び基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、流路123、ヒータ、伝熱媒体、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。実施形態では、基台122に流路123が形成されているが、これに限らない。流路123には、熱交換媒体が流れる。熱交換媒体は、液体である。チラーユニット(図示せず)にて温度制御された熱交換媒体は、配管を通り基板支持部11の入口INから流路123を流れることで、静電チャック111上の基板Wが所望の温度に冷却される。流路123を流れた熱交換媒体は、基板支持部11の出口OUTから配管を通りチラーユニットに戻り、温度制御されて再び流路123を流れ循環する。また、基板支持部11は、基板Wの下面と基板支持面111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0012】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、導電性部材を含む。シャワーヘッド13の導電性部材は上部電極として機能する。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0013】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0014】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号(RFソース電力)及びバイアスRF信号(RFバイアス電力)のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持部11の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0015】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(RFソース電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材に結合され、バイアスRF信号(RFバイアス電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、基板支持部11の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0016】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、基板支持部11の導電性部材に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のDC信号(第1のバイアスDC信号)は、基板支持部11の導電性部材に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック111内の電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、シャワーヘッド13の導電性部材に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、シャワーヘッド13の導電性部材に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0017】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0018】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程を、プラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラムに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0019】
[基板支持部]
基板支持部11の構成について、
図1~
図3を参照しながら更に説明する。
図2は、第1及び第2実施形態に係る基板支持部11の構成と参考例の基板支持部11'とを示す図である。
図3は、
図1をA-A面にて切断した図であり、基台122を上方向から見た平面図である。
【0020】
図2(a)は参考例の基板支持部11'であり、
図2(b)は、第1実施形態に係る基板支持部11の構成例であり、
図2(c)は、第2実施形態に係る基板支持部11の構成例である。
【0021】
図2(a)に示す参考例の基板支持部11'は、静電チャック111と基台124とを有する。静電チャック111は、セラミックスにより形成され、内部に吸着電極111cを有する。静電チャック111は、吸着電極111cに直流電圧を印加することにより、基板Wを静電吸着により保持する。
【0022】
基台124は、低線膨張係数部材の金属セラミックス複合材料(MMC)により形成され、内部に流路123を有する。静電チャック111と基台124との間には金属接合層113が設けられている。金属接合層113は、静電チャック111と基台124とを金属のロウ付けにより金属接合する。
【0023】
参考例の基板支持部11'の構成によっても、チラーユニットによって温度制御された熱交換媒体を基台124の流路123に流すことで、静電チャック111上の基板Wを冷却し所望の温度に制御する。しかしながら、近年、基板処理時間(エッチング時間等)の短縮、イオンの直進性等の観点から、基板支持部に印加される高周波電力が増加している。このため、基板Wへのプラズマからの入熱が増加し、基板Wの温度制御が不十分になる場合がある。基板Wの温度制御が不十分になると、基板Wの温度上昇によるエッチング等の処理効率の低下、基板Wの熱による破損等が生じ得る。
【0024】
そこで、
図2(b)及び(c)に示す第1及び第2実施形態では、基板Wの温度制御効率を高めることが可能な基板支持部11及びプラズマ処理装置1を提供する。
【0025】
<第1実施形態>
(構成例)
図2(b)に示す第1実施形態に係る基板支持部11は、静電チャック111、基台122、低線膨張係数部材114、伝熱シート130、固定部140、金属接合層113及び導電ガスケット131を有する。
【0026】
静電チャック111は、誘電体により形成され、内部に吸着電極111cを有する。静電チャック111は、電源30(
図1のDC電源32)から吸着電極111cに直流電圧(直流バイアス電圧、第1のバイアスDC信号)を印加することにより、基板支持面111a上の基板Wを静電吸着により保持する。
【0027】
基台122は、非磁性金属材料により形成され、内部に流路123を有する。静電チャック111と基台122との間には低線膨張係数部材114が設けられる。
【0028】
基台122に形成された流路123は基台122の上面にて開口している。その流路123の上面の開口部123aは、低線膨張係数部材114で塞がれている。すなわち、流路123の上面は、低線膨張係数部材114の下面に接している。
【0029】
図3には、基台122の上面(
図1のA-A面)が示されている。基台122には流路123が渦巻き状に形成され、基台122の上面には渦巻き状の流路123の開口部123aがある。これにより、基板支持部11の基板支持面111a(
図1参照)の全域において、基板Wの温度を制御することができる。なお、流路123の形状は渦巻き状に限らず、放射状等であってもよいし、その他の形状であってもよい。
【0030】
伝熱シート130は、低線膨張係数部材114と基台122との間に設けられている。伝熱シート130は円形のシートであり、流路123の開口部123aと同一形状に開口する。伝熱シート130の直径は、低線膨張係数部材114及び基台122の直径よりも小さく、伝熱シート130の最外周は、低線膨張係数部材114及び基台122の最外周よりも内側にある。伝熱シート130は、グラファイトシートである。グラファイトシートは、カーボンとシリコーンを組み合わせた樹脂材料から形成され、高熱伝導材である。よって、
図3に示すように、伝熱シート130を流路123の開口部123aが形成されていない基台122の上面に敷き詰める。これにより、低線膨張係数部材114と基台122との間の伝熱効率を高めることができ、流路123による冷却性能を高めることができる。
【0031】
伝熱シート130は、グラファイトが含有された異方性伝熱シートであってもよい。すなわち、伝熱シート130は、水平方向の炭素の結晶構造又は垂直方向の炭素の結晶構造が共有結合により強固に結び付いているために高い熱伝導率を確保できるグラファイトのような異方性材料をシート状にして使用してもよい。これにより、水平方向の熱伝導又は垂直方向の熱伝導を良くして基板W上の温度の面内均一性を高めることができる。
【0032】
図2に示すように、固定部140は、例えば複数のネジ140aを含むネジ構造を有してもよい。ネジ140aは基台122を厚さ方向に貫通する貫通穴に挿入され、その先端部分を低線膨張係数部材114に形成されたネジ穴114aにねじ止めすることにより、固定部140は、伝熱シート130を低線膨張係数部材114に固定してもよい。複数のネジ140aは、伝熱シート130の全面を均等に加圧するようにその個数と配置が定められる。これにより、伝熱シート130により、基台122と低線膨張係数部材114及び静電チャック111との間で安定した熱伝達を実現することができる。
【0033】
固定部140は、ネジ構造に限られず、伝熱シート130の全面を均等に低線膨張係数部材114に加圧及び固定できれば他の方法を適用してもよい。例えば固定部140は、クランプ構造を有し、クランプにより低線膨張係数部材114と基台122とを挟み込むことにより、伝熱シート130を低線膨張係数部材114に固定してもよい。
【0034】
伝熱シート130を介さずに低線膨張係数部材114と基台122との固体同士を接触させた場合は、接触面に微少な空間が生じ、その空間により熱抵抗が高くなり、伝熱性が低下する。このため、低線膨張係数部材114と基台122との間に伝熱シート130を設け、更に固定部140により伝熱シート130の全面を加圧して低線膨張係数部材114と基台122との間に生じていた隙間を無くし、熱抵抗を低くすることで熱伝導を良くする。これにより、低線膨張係数部材114と基台122との間の伝熱効率を高めることができ、流路123による冷却性能を高め、基板Wの温度低下を促進し、基板Wの温度を精度良く制御することができる。
【0035】
静電チャック111と低線膨張係数部材114との間には、金属接合層113が設けられている。金属接合層113は、静電チャック111と基台122とをロウ付け(金属ロウ)により接合(金属接合)する。これにより、静電チャック111と低線膨張係数部材114との間の熱抵抗が低くなることで熱伝導が良くなり、基板Wの温度制御を更に促進することができる。これにより、高熱伝導の静電チャック111及び基台122を有する基板支持部11を提供することができる。
【0036】
図2に示すように、基台122と低線膨張係数部材114との間に固定された伝熱シート130の外周には伝熱シート130を囲むように導電ガスケット131が設けられている。導電ガスケット131の外周には導電ガスケット131を囲むように真空シール132が設けられている。真空シール132は、例えば、Oリングである。
【0037】
導電ガスケット131は、低線膨張係数部材114と基台122との間に設けられ、低線膨張係数部材114と基台122とを電気的に接続する。真空シール132は、真空(減圧)雰囲気のプラズマ処理空間10sを流路123側の空間からシールする。加えて、真空シール132は、プラズマ耐性を有していてもよい。これにより、プラズマ処理空間10s内に生成したプラズマによる導電ガスケット131,伝熱シート130の消耗から保護することができる。特に伝熱シート130がカーボンを含有するグラファイトシートであるためプラズマにより消耗しやすい。また、導電ガスケット131は金属で形成されている。よって、真空シール132によりシールすることで、導電ガスケット131及び伝熱シート130の消耗を抑制することができ、これにより、導電ガスケット131及び伝熱シート130が汚染の原因となることを防止することができる。
【0038】
(材料例)
静電チャック111は、プラズマ耐性が高いアルミナ(Al2O3)等のセラミックスにより形成されている。基台122は、体積抵抗率が10-4Ωm未満の材料により形成されてもよい。この場合、RF信号の基台122における電力損失をより低減させることができる。例えば、基台122は、アルミニウム、モリブデン又はチタンであってもよい。
【0039】
低線膨張係数部材114は、静電チャック111との線膨張係数の差が2ppm/℃以下の材料により形成されてもよい。例えば、低線膨張係数部材114は、金属セラミックス複合材料(Metal Matrix Composites:MMC)又はモリブデンであってもよい。この場合、基台122と低線膨張係数部材114の線膨張係数の差をより低減させることができ、温度変化に伴うせん断応力を抑制することが可能となる。
【0040】
導電ガスケット131は、スプリング状の導電性部材、スパイラル状の金属であってもよい。導電ガスケット131は、低線膨張係数部材114と基台122とを電気的に接続する導電性部材の一例である。基台122はRF電力を供給する下部電極としても機能する。そこで、例えばアルミニウムの基台122にRF電力を供給したとき、導電ガスケット131は、RF電流を基台122上の低線膨張係数部材114及び静電チャック111に伝えるための通電をとるように構成されている。導電ガスケット131により、基台122と静電チャック111との導電経路を形成することができる。
【0041】
伝熱シート130は、密着性及び伝熱性を上げるためにカーボンとシリコーンを組み合わせた樹脂材料を含む。このため、密着性及び伝熱性の高い伝熱シート130は導電性が低くなる傾向がある。逆に、導電性の高い導電ガスケット131では、伝熱性が下がる傾向がある。以上から、伝熱シート130は密着性及び伝熱性が高いものを配置し、導電ガスケット131により基台122と静電チャック111との導電経路を形成するように構成する。
【0042】
ただし、低線膨張係数部材114と基台122とを電気的に接続する導電性部材は、導電ガスケット131に限らず、導電性のネジ140aを使用してもよいし、導電ガスケット131及び導電性のネジ140aの両方を使用してもよい。これにより、流路123による冷却性能を高め、基板Wの温度制御の精度を高めることができる。
【0043】
また、
図2(b)に示す第1実施形態に係る基板支持部11では、流路123を基台122の上面に形成する。このため、基台124の内部に流路123を形成する
図2(a)に示す参考例の基板支持部11'と比較して加工コストが安い。加えて、
図2(a)の金属セラミックス複合材料(MMC)の基台124と、
図2(b)のアルミニウムの基台122とを比較すると、アルミニウムの基台122の方が流路123の加工がしやすいため、更に加工コストが安いというメリットがある。
【0044】
<第2実施形態>
図2(c)に示す第2実施形態に係る基板支持部11の基本的構成は、第1実施形態に係る基板支持部11と同じである。第1実施形態に係る基板支持部11では、流路123の上面が低線膨張係数部材114で塞がれているのに対して、第2実施形態に係る基板支持部11では、流路123の上面は基台122の上部で塞がれている点で異なる。よって、この異なる構成について説明し、その他の構成については説明を省略する。
【0045】
流路123には、例えばブライン等のフッ素系の熱交換媒体を流す。よって、第1実施形態に係る基板支持部11の構成では、伝熱シート130に直接ブラインが触れることによる伝熱シート130の劣化が生じる可能性がある。
【0046】
これに対して、第2実施形態に係る基板支持部11の構成では、流路123の上面は基台122の上部で塞がれているため、伝熱シート130に直接ブラインが触れることがなく、伝熱シート130の劣化を防ぐことができる。また、流路123上に熱伝導の高い(熱拡散のよい)アルミニウム等の非磁性金属の基台122が存在することで横方向に熱が拡散し易くなる。このため、温度の均一性が高くなり、流路123の配置や形状等による温度の特異点の発生を緩和することができる。加えて、
図2(a)の金属セラミックス複合材料(MMC)の基台124と、
図2(c)のアルミニウムの基台122とを比較すると、アルミニウムの基台122の方が流路123の加工がしやすいため、加工コストが安いというメリットがある。
【0047】
<第1実施形態及び第2実施形態の電極構造>
電源30は、基台122にRFソース電力(ソースRF信号)と、RFバイアス電力(バイアスRF信号)又は直流バイアス電圧と、を供給してもよい。これらの電力を供給するために、第1実施形態に係る基板支持部11及び第2実施形態に係る基板支持部11に適用可能な電極構造について、
図4及び
図5を参照しながら説明する。
図4は、第1実施形態に係る基板支持部11の電極構造の一例を示す図である。
図5は、第2実施形態に係る基板支持部11の電極構造の一例を示す図である。
【0048】
図4(a)~(c)及び
図5(a)~(c)に示すように、静電チャック111は、基板Wを支持する基板支持面111aを有する第1部分111fと、エッジリング112aを支持するリング支持面111bを有する第2部分111sと、を有してもよい。静電チャック111の第1部分111fと第2部分111sとの間は環状の隙間111gを有し、静電チャック111の第1部分111fと第2部分111sとは分離している。
【0049】
静電チャック111の第1部分111fには、吸着電極111c及び吸着電極111cの下方の第1バイアス電極111eが設けられている。静電チャック111の第2部分111sには、吸着電極111d及び吸着電極111dの下方の第2バイアス電極111hが設けられている。
【0050】
環状の隙間111gの深さは、
図4(b)及び
図5(b)の基板支持部11において最も浅く、
図4(a)及び
図5(a)の基板支持部11において最も深く、
図4(c)及び
図5(c)の基板支持部11においてその中間の深さである。ただし、これに限定されるものではない。環状の隙間111gは、基台122の下面から基板支持面111a又はリング支持面111bの間の範囲のいずれかまで延在していてもよい。
【0051】
図4(b)及び
図5(b)の基板支持部11では、金属接合層113は、静電チャック111の第1部分111fと第2部分111sとの分離位置に対応して分離されるように構成される。これにより、隙間111gの深さが金属接合層113の下面と等しくなる。
【0052】
図4(c)及び
図5(c)の基板支持部11では、さらに低線膨張係数部材114が、金属接合層113の分離位置に対応して分離されるように構成される。これにより、隙間111gの深さが低線膨張係数部材114の下面と等しくなる。この場合、静電チャック111の第1部分111fの下方の伝熱シート130の外周に伝熱シート130を囲むように導電ガスケット131a及び真空シール132aが設けられる。また、静電チャック111の第2部分111sの下方の伝熱シート130の外周に伝熱シート130を囲むように導電ガスケット131b及び真空シール132bが設けられる。これにより、プラズマ処理空間10s内に生成したプラズマによる導電ガスケット131a、導電ガスケット131b及び伝熱シート130の消耗から保護することができる。
【0053】
図4(a)及び
図5(a)の基板支持部11では、さらに基台122が、低線膨張係数部材114の分離位置に対応して分離されるように構成される。これにより、隙間111gの深さが基台122の下面と等しくなる。この場合、隙間111gを塞ぐように基台122の下部に導電性プレート125が設けられる。また、静電チャック111の第1部分111fの下方の伝熱シート130の外周に伝熱シート130を囲むように導電ガスケット131a及び真空シール132aが設けられる。静電チャック111の第2部分111sの下方の伝熱シート130の外周に伝熱シート130を囲むように導電ガスケット131b及び真空シール132bが設けられる。更に静電チャック111の第2部分111sの下方の伝熱シート130の内周に伝熱シート130を囲むように真空シール132cが設けられる。これにより、プラズマ処理空間10s内に生成したプラズマによる導電ガスケット131a、導電ガスケット131b及び伝熱シート130の消耗から保護することができる。
【0054】
図1に示すように、静電チャック111の第1部分111fと第2部分111sとは一体化してもよい。静電チャック111が一体化している場合、分離している場合(
図4及び
図5参照)のいずれの場合も、電源30は、基台122にRF電力を供給する。基台122に供給するRF電力は、RFソース電力であってもよいし、RFバイアス電力であってもよいし、RFソース電力及びRFバイアス電力であってもよい。また、静電チャック111が一体化している場合、分離している場合のいずれの場合も、静電チャック111の第1部分111f内及び/又は第2部分111s内に設けられた電極にRFバイアス電力又は直流バイアス電圧を供給することができる。
【0055】
RF電力及び/又は直流電圧の供給の第1例として、一体化した静電チャック111において(
図1参照)、電源30から基台122にRFソース電力及びRFバイアス電力を供給してもよい。このとき、吸着電極111cに直流電圧が供給され、基板Wが静電チャック111に静電吸着されてもよい。吸着電極111c及び吸着電極111dにそれぞれ直流電圧が供給され、基板W及びエッジリング112aが静電チャック111にそれぞれ静電吸着されてもよい。
【0056】
第2例として、分離した静電チャック111において(
図4及び
図5参照)、基台122にRFソース電力及びRFバイアス電力を供給してもよい。このとき、吸着電極111c及び吸着電極111dにそれぞれ直流電圧が供給され、基板W及びエッジリング112aが静電チャック111にそれぞれ静電吸着されてもよい。
【0057】
第3例として、一体化した静電チャック111において(
図1参照)、電源30から基台122にRFソース電力及びパルス波の直流バイアス電力を供給してもよい。このとき、吸着電極111cに直流電圧が供給され、基板Wが静電チャック111に静電吸着されてもよい。
【0058】
第4例として、一体化した静電チャック111において(
図1参照)、電源30から基台122にRFソース電力を供給し、第1バイアス電極111eにパルス波の直流バイアス電力を供給してもよい。このとき、吸着電極111cに直流電圧が供給され、基板Wが静電チャック111に静電吸着されてもよい。
【0059】
第5例として、一体化した静電チャック111において(
図1参照)、電源30から基台122にRFソース電力を供給し、第1バイアス電極111eにパルス波の直流バイアス電力(第1直流バイアス電力)を供給してもよい。また、第2バイアス電極111hにパルス波の直流バイアス電力(第2直流バイアス電力)を供給してもよい。このとき、吸着電極111c及び吸着電極111dにそれぞれ直流電圧が供給され、基板W及びエッジリング112aが静電チャック111にそれぞれ静電吸着されてもよい。
【0060】
第6例として、分離した静電チャック111において(
図4及び
図5参照)、電源30から基台122にRFソース電力を供給し、第1バイアス電極111eにパルス波の直流バイアス電力(第1直流バイアス電力)を供給してもよい。また、第2バイアス電極111hにパルス波の直流バイアス電力(第2直流バイアス電力)を供給してもよい。このとき、吸着電極111c及び吸着電極111dにそれぞれ直流電圧が供給され、基板W及びエッジリング112aが静電チャック111にそれぞれ静電吸着されてもよい。
【0061】
第7例として、一体化した静電チャック111において(
図1参照)、電源30から基台122にRFソース電力及びパルス波の直流バイアス電力(第1直流バイアス電力)を供給してもよい。また、第2バイアス電極111hにパルス波の直流バイアス電力(第2直流バイアス電力)を供給してもよい。このとき、吸着電極111c及び吸着電極111dにそれぞれ直流電圧が供給され、基板W及びエッジリング112aが静電チャック111にそれぞれ静電吸着されてもよい。
【0062】
第8例として、分離した静電チャック111において(
図4及び
図5参照)、電源30から基台122にRFソース電力及びパルス波の直流バイアス電力(第1直流バイアス電力)を供給してもよい。また、第2バイアス電極111hにパルス波の直流バイアス電力(第2直流バイアス電力)を供給してもよい。このとき、吸着電極111c及び吸着電極111dにそれぞれ直流電圧が供給され、基板W及びエッジリング112aが静電チャック111にそれぞれ静電吸着されてもよい。
【0063】
第9例として、一体化した静電チャック111において(
図1参照)、電源30から基台122にRFソース電力及びパルス波の直流バイアス電力を供給してもよい。このとき、吸着電極111c及び吸着電極111dにそれぞれ直流電圧が供給され、基板W及びエッジリング112aが静電チャック111にそれぞれ静電吸着されてもよい。
【0064】
第1及び第2実施形態に係る基板支持部11及びこれらの基板支持部11を有する基板処理装置によれば、低線膨張係数部材114と基台122との間の伝熱効率を高めることができる。これにより、流路123による冷却性能を高め、基板Wの温度低下を促進し、基板Wの温度を精度良く制御することができる。また、
図2(a)に示す参考例の基板支持部11'と比較して加工コストを安くすることができる。
【0065】
なお、上記実施形態では、熱交換媒体による基板Wの冷却について主に説明したが、熱交換媒体による基板Wの加熱等の温度調整に対しても同様であり、基板Wの温度上昇(温度調整)を促進し、基板Wの温度を精度良く制御することができる。
【0066】
以上に開示された実施形態は、例えば、以下の態様を含む。
(付記1)
処理容器と、前記処理容器内に配置される基板支持部と、少なくとも前記基板支持部にRF電力を供給する電源と、を有する基板処理装置であって、
前記基板支持部は、
セラミックスにより形成され、被処理基板を静電吸着により保持する静電チャックと、
熱交換媒体が流れる流路を有し、前記静電チャックを支持する基台と、
前記静電チャックと前記基台との間に設けられる低線膨張係数部材と、
前記低線膨張係数部材と前記基台との間に設けられる伝熱シートと、
前記伝熱シートを前記低線膨張係数部材に固定する固定部と、
前記低線膨張係数部材と基台との間に設けられ、前記低線膨張係数部材と基台とを電気的に接続する導電性部材と、
を有する、基板処理装置。
(付記2)
前記流路の上面は前記低線膨張係数部材で塞がれている、
付記1に記載の基板処理装置。
(付記3)
前記流路の上面は前記基台の上部で塞がれている、
付記1に記載の基板処理装置。
(付記4)
前記静電チャックと前記低線膨張係数部材とを金属接合する金属接合層を有する、
付記1~3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
(付記5)
前記固定部は、ネジ構造又はクランプ構造を有する、
付記1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
(付記6)
前記低線膨張係数部材は、前記静電チャックとの線膨張係数の差が2ppm/℃以下の材料により形成されている、
付記1~5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
(付記7)
前記低線膨張係数部材は、金属セラミックス複合材料又はモリブデンである、
付記1~6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
(付記8)
前記基台は、体積抵抗率が10-4未満の材料により形成されている、
付記1~7のいずれか一項に記載の基板処理装置。
(付記9)
前記基台は、アルミニウム、モリブデン又はチタンである、
付記1~8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
(付記10)
前記伝熱シートは、グラファイトシートである、
付記1~9のいずれか一項に記載の基板処理装置。
(付記11)
前記電源は、前記基台にRFソース電力と、RFバイアス電力又は直流バイアス電圧と、を供給する、
付記1~10のいずれか一項に記載の基板処理装置。
(付記12)
前記静電チャックは、前記被処理基板を支持する基板支持面を有する第1部分と、前記被処理基板を囲むように配置されるエッジリングを指示するリング支持面を有する第2部分と、を有し、
前記電源は、前記基台にRFソース電力を供給し、前記静電チャックの前記第1部分及び/又は前記第2部分に設けられた電極にRFバイアス電力又は直流バイアス電圧を供給する、
付記1~11のいずれか一項に記載の基板処理装置。
(付記13)
前記静電チャックの前記第1部分と前記第2部分とは、一体化している、
付記12に記載の基板処理装置。
(付記14)
前記静電チャックの前記第1部分と前記第2部分とは、分離している、
付記12に記載の基板処理装置。
(付記15)
前記金属接合層は、前記静電チャックの前記第1部分と前記第2部分との分離位置に対応して分離するように構成されている、
付記14に記載の基板処理装置。
(付記16)
前記低線膨張係数部材は、前記金属接合層の分離位置に対応して分離するように構成されている、
付記15に記載の基板処理装置。
(付記17)
前記基台は、前記低線膨張係数部材の分離位置に対応して分離するように構成されている、
付記16に記載の基板処理装置。
(付記18)
処理容器を有する基板処理装置において前記処理容器内に配置される基板支持部であって、
セラミックスにより形成され、被処理基板を静電吸着により保持する静電チャックと、
熱交換媒体が流れる流路を有し、前記静電チャックを支持する基台と、
前記静電チャックと前記基台との間に設けられる低線膨張係数部材と、
前記低線膨張係数部材と前記基台との間に設けられる伝熱シートと、
前記伝熱シートを前記低線膨張係数部材に固定する固定部と、
前記低線膨張係数部材と基台との間に設けられ、前記低線膨張係数部材と基台とを電気的に接続する導電性部材と、
を有する、基板支持部。
【0067】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせ等、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。また、複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0068】
例えば、上記実施形態では、基板処理装置の一例として、容量結合型のプラズマ処理装置を例に説明したが、これに限定されるものではなく、他のプラズマ処理装置に適用されてもよい。例えば、容量結合型のプラズマ処理装置に代えて、誘導結合型のプラズマ(Inductively-coupled plasma:ICP)処理装置が用いられてもよい。この場合、誘導結合型のプラズマ処理装置は、アンテナ及び下部電極を含む。下部電極は、基板支持部内に配置され、アンテナは、チャンバの上部又は上方に配置される。そして、RF生成器は、アンテナに結合され、DC生成器は、下部電極に結合される。従って、RF生成器は、容量結合型のプラズマ処理装置の上部電極、又は、誘導結合型のプラズマ処理装置のアンテナに結合される。即ち、RF生成器は、プラズマ処理チャンバ10に結合される。
【符号の説明】
【0069】
1 プラズマ処理装置
2 制御部
2a コンピュータ
10 プラズマ処理チャンバ
11 基板支持部
20 ガス供給部
30 電源
31 RF電源
111 静電チャック
112 リングアセンブリ
112a エッジリング
113 金属接合層
114 低線膨張係数部材
122 基台
123 流路
130 伝熱シート
131 導電ガスケット
140 固定部
【手続補正書】
【提出日】2024-03-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器と、前記処理容器内に配置される基板支持部と、少なくとも前記基板支持部にRF電力を供給する電源と、を有する基板処理装置であって、
前記基板支持部は、
セラミックスにより形成され、被処理基板を静電吸着により保持する静電チャックと、
熱交換媒体が流れる流路を有し、前記静電チャックを支持する基台と、
前記静電チャックと前記基台との間に設けられる低線膨張係数部材と、
前記低線膨張係数部材と前記基台との間に設けられる伝熱シートと、
前記伝熱シートを前記低線膨張係数部材に固定する固定部と、
前記低線膨張係数部材と前記基台との間に設けられ、前記低線膨張係数部材と前記基台とを電気的に接続する導電性部材と、
を有する、基板処理装置。
【請求項2】
前記流路の上面は前記低線膨張係数部材で塞がれている、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記流路の上面は前記基台の上部で塞がれている、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記静電チャックと前記低線膨張係数部材とを金属接合する金属接合層を有する、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記固定部は、ネジ構造又はクランプ構造を有する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記低線膨張係数部材は、前記静電チャックとの線膨張係数の差が2ppm/℃以下の材料により形成されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記低線膨張係数部材は、金属セラミックス複合材料又はモリブデンである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記基台は、体積抵抗率が10-4Ωm未満の材料により形成されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記基台は、アルミニウム、モリブデン又はチタンである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記伝熱シートは、グラファイトシートである、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記電源は、前記基台にRFソース電力と、RFバイアス電力又は直流バイアス電圧と、を供給する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記静電チャックは、前記被処理基板を支持する基板支持面を有する第1部分と、前記被処理基板を囲むように配置されるエッジリングを支持するリング支持面を有する第2部分と、を有し、
前記電源は、前記基台にRFソース電力を供給し、前記静電チャックの前記第1部分及び/又は前記第2部分に設けられた電極にRFバイアス電力又は直流バイアス電圧を供給する、
請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記静電チャックの前記第1部分と前記第2部分とは、一体化している、
請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記静電チャックの前記第1部分と前記第2部分とは、分離している、
請求項12に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記静電チャックは、前記被処理基板を支持する基板支持面を有する第1部分と、前記被処理基板を囲むように配置されるエッジリングを支持するリング支持面を有する第2部分と、を有し、
前記電源は、前記基台にRFソース電力を供給し、前記静電チャックの前記第1部分及び/又は前記第2部分に設けられた電極にRFバイアス電力又は直流バイアス電圧を供給し、
前記静電チャックの前記第1部分と前記第2部分とは、分離しており、
前記金属接合層は、前記静電チャックの前記第1部分と前記第2部分との分離位置に対応して分離するように構成されている、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記低線膨張係数部材は、前記金属接合層の分離位置に対応して分離するように構成されている、
請求項15に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記基台は、前記低線膨張係数部材の分離位置に対応して分離するように構成されている、
請求項16に記載の基板処理装置。
【請求項18】
処理容器を有する基板処理装置において前記処理容器内に配置される基板支持部であって、
セラミックスにより形成され、被処理基板を静電吸着により保持する静電チャックと、
熱交換媒体が流れる流路を有し、前記静電チャックを支持する基台と、
前記静電チャックと前記基台との間に設けられる低線膨張係数部材と、
前記低線膨張係数部材と前記基台との間に設けられる伝熱シートと、
前記伝熱シートを前記低線膨張係数部材に固定する固定部と、
前記低線膨張係数部材と前記基台との間に設けられ、前記低線膨張係数部材と前記基台とを電気的に接続する導電性部材と、
を有する、基板支持部。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本開示の一の態様によれば、処理容器と、前記処理容器内に配置される基板支持部と、少なくとも前記基板支持部にRF電力を供給する電源と、を有する基板処理装置であって、前記基板支持部は、セラミックスにより形成され、被処理基板を静電吸着により保持する静電チャックと、熱交換媒体が流れる流路を有し、前記静電チャックを支持する基台と、前記静電チャックと前記基台との間に設けられる低線膨張係数部材と、前記低線膨張係数部材と前記基台との間に設けられる伝熱シートと、前記伝熱シートを前記低線膨張係数部材に固定する固定部と、前記低線膨張係数部材と前記基台との間に設けられ、前記低線膨張係数部材と前記基台とを電気的に接続する導電性部材と、を有する、基板処理装置が提供される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
以上に開示された実施形態は、例えば、以下の態様を含む。
(付記1)
処理容器と、前記処理容器内に配置される基板支持部と、少なくとも前記基板支持部にRF電力を供給する電源と、を有する基板処理装置であって、
前記基板支持部は、
セラミックスにより形成され、被処理基板を静電吸着により保持する静電チャックと、
熱交換媒体が流れる流路を有し、前記静電チャックを支持する基台と、
前記静電チャックと前記基台との間に設けられる低線膨張係数部材と、
前記低線膨張係数部材と前記基台との間に設けられる伝熱シートと、
前記伝熱シートを前記低線膨張係数部材に固定する固定部と、
前記低線膨張係数部材と前記基台との間に設けられ、前記低線膨張係数部材と前記基台とを電気的に接続する導電性部材と、
を有する、基板処理装置。
(付記2)
前記流路の上面は前記低線膨張係数部材で塞がれている、
付記1に記載の基板処理装置。
(付記3)
前記流路の上面は前記基台の上部で塞がれている、
付記1に記載の基板処理装置。
(付記4)
前記静電チャックと前記低線膨張係数部材とを金属接合する金属接合層を有する、
付記1~3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
(付記5)
前記固定部は、ネジ構造又はクランプ構造を有する、
付記1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
(付記6)
前記低線膨張係数部材は、前記静電チャックとの線膨張係数の差が2ppm/℃以下の材料により形成されている、
付記1~5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
(付記7)
前記低線膨張係数部材は、金属セラミックス複合材料又はモリブデンである、
付記1~6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
(付記8)
前記基台は、体積抵抗率が10-4
Ωm未満の材料により形成されている、
付記1~7のいずれか一項に記載の基板処理装置。
(付記9)
前記基台は、アルミニウム、モリブデン又はチタンである、
付記1~8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
(付記10)
前記伝熱シートは、グラファイトシートである、
付記1~9のいずれか一項に記載の基板処理装置。
(付記11)
前記電源は、前記基台にRFソース電力と、RFバイアス電力又は直流バイアス電圧と、を供給する、
付記1~10のいずれか一項に記載の基板処理装置。
(付記12)
前記静電チャックは、前記被処理基板を支持する基板支持面を有する第1部分と、前記被処理基板を囲むように配置されるエッジリングを支持するリング支持面を有する第2部分と、を有し、
前記電源は、前記基台にRFソース電力を供給し、前記静電チャックの前記第1部分及び/又は前記第2部分に設けられた電極にRFバイアス電力又は直流バイアス電圧を供給する、
付記1~11のいずれか一項に記載の基板処理装置。
(付記13)
前記静電チャックの前記第1部分と前記第2部分とは、一体化している、
付記12に記載の基板処理装置。
(付記14)
前記静電チャックの前記第1部分と前記第2部分とは、分離している、
付記12に記載の基板処理装置。
(付記15)
前記静電チャックは、前記被処理基板を支持する基板支持面を有する第1部分と、前記被処理基板を囲むように配置されるエッジリングを支持するリング支持面を有する第2部分と、を有し、
前記電源は、前記基台にRFソース電力を供給し、前記静電チャックの前記第1部分及び/又は前記第2部分に設けられた電極にRFバイアス電力又は直流バイアス電圧を供給し、
前記静電チャックの前記第1部分と前記第2部分とは、分離しており、
前記金属接合層は、前記静電チャックの前記第1部分と前記第2部分との分離位置に対応して分離するように構成されている、
付記4に記載の基板処理装置。
(付記16)
前記低線膨張係数部材は、前記金属接合層の分離位置に対応して分離するように構成されている、
付記15に記載の基板処理装置。
(付記17)
前記基台は、前記低線膨張係数部材の分離位置に対応して分離するように構成されている、
付記16に記載の基板処理装置。
(付記18)
処理容器を有する基板処理装置において前記処理容器内に配置される基板支持部であって、
セラミックスにより形成され、被処理基板を静電吸着により保持する静電チャックと、
熱交換媒体が流れる流路を有し、前記静電チャックを支持する基台と、
前記静電チャックと前記基台との間に設けられる低線膨張係数部材と、
前記低線膨張係数部材と前記基台との間に設けられる伝熱シートと、
前記伝熱シートを前記低線膨張係数部材に固定する固定部と、
前記低線膨張係数部材と前記基台との間に設けられ、前記低線膨張係数部材と前記基台とを電気的に接続する導電性部材と、
を有する、基板支持部。