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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106026
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】大豆蛋白組成物、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/16 20060101AFI20240731BHJP
   A23L 2/66 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
A23J3/16
A23J3/16 502
A23L2/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010076
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柑本 雅司
(72)【発明者】
【氏名】内田 洋行
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 敏樹
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC04
4B117LE03
4B117LG11
4B117LK15
4B117LK18
(57)【要約】
【課題】 本発明の課題は、蛋白含量が60質量%以上であり、かつ、蛋白含量が7.2質量%以上の流動性を有する大豆蛋白水溶液を調製することができる大豆蛋白組成物を提供すること、また、本発明の課題は、原料に分離大豆蛋白を使用していても、飲料中の蛋白含量が7.2質量%以上で、飲料に適した流動性を有する大豆蛋白飲料を提供することである。
【解決手段】 分離大豆蛋白70~90質量%と、粒状大豆蛋白粉砕物及び/又は全脂大豆粉末10~30質量%とを含有する大豆蛋白組成物であって、該粒状大豆蛋白粉砕物は、粒状大豆蛋白を粉砕したものであり、該大豆蛋白組成物の蛋白含量が72質量%以上である大豆蛋白組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離大豆蛋白70~90質量%と、粒状大豆蛋白粉砕物及び/又は全脂大豆粉末10~30質量%とを含有する大豆蛋白組成物であって、該粒状大豆蛋白粉砕物は、粒状大豆蛋白を粉砕したものであり、該大豆蛋白組成物の蛋白含量が72質量%以上であることを特徴とする大豆蛋白組成物。
【請求項2】
前記粒状大豆蛋白粉砕物のメジアン径が、10~60μmであることを特徴とする請求項1に記載の大豆蛋白組成物。
【請求項3】
前記大豆蛋白組成物のメジアン径が、50~85μmであることを特徴とする請求項1に記載の大豆蛋白組成物。
【請求項4】
前記大豆蛋白組成物が、飲料用であることを特徴とする請求項1に記載の大豆蛋白組成物。
【請求項5】
請求項1に記載された大豆蛋白組成物を含有する大豆蛋白粉末飲料。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載された大豆蛋白組成物、又は請求項5に記載の大豆蛋白粉末飲料と、水又は牛乳とを混合することにより得られる大豆蛋白飲料。
【請求項7】
分離大豆蛋白70~90質量%と、粒状大豆蛋白粉砕物及び/又は全脂大豆粉末10~30質量%とを混合する大豆蛋白組成物の製造方法であって、該粒状大豆蛋白粉砕物は、粒状大豆蛋白を粉砕したものであり、該大豆蛋白組成物の蛋白含量が72質量%以上であることを特徴とする大豆蛋白組成物の製造方法。
【請求項8】
前記粒状大豆蛋白粉砕物のメジアン径が、10~60μmであることを特徴とする請求項7に記載の大豆蛋白組成物の製造方法。
【請求項9】
該大豆蛋白組成物のメジアン径が、50~85μmであることを特徴とする請求項7に記載の大豆蛋白組成物の製造方法。
【請求項10】
前記大豆蛋白組成物が、飲料用であることを特徴とする請求項7に記載の大豆蛋白組成物の製造方法。
【請求項11】
原料に、請求項7に記載された大豆蛋白組成物の製造方法により製造された大豆蛋白組成物を使用することを特徴とする大豆蛋白粉末飲料の製造方法。
【請求項12】
請求項7~10のいずれか1項に記載された大豆蛋白組成物の製造方法により製造された大豆蛋白組成物、又は請求項11に記載の大豆蛋白粉末飲料の製造方法により製造された大豆蛋白粉末飲料と、水又は牛乳とを混合することを特徴とする大豆蛋白飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆蛋白組成物の製造方法、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、蛋白質の摂取を目的として、水や牛乳に分散させて飲む大豆蛋白粉末飲料が販売されている。そして、大豆蛋白粉末飲料の蛋白原料には、大豆蛋白加水分解物がよく使用されている(特許文献1)。
一方で、加水分解をしていない分離大豆蛋白は、蛋白含量が高いので、蛋白質摂取量の点ではメリットがあるが、分離大豆蛋白と水を混合して調製した大豆蛋白飲料は、流動性が低くなってしまうことがら、分離大豆蛋白は、飲料用途にはほとんど使用されていなかった。
また、大豆飲料の原料に使用されている大豆蛋白加水分解物は、流動性のある飲料を製造することができるが、製造時に加水分解処理を行うことから、その価格が高いものとなってしまうという欠点があった。
そこで、分離大豆蛋白の加水分解処理を行わなくても、蛋白含量が高く、飲料に適した流動性を有する大豆蛋白飲料を調製することができる飲料用の大豆製剤の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-238693公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、蛋白含量が60質量%以上であり、かつ、蛋白含量が7.2質量%以上の流動性を有する大豆蛋白水溶液を調製することができる大豆蛋白組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、原料に分離大豆蛋白を使用していても、飲料中の蛋白含量が7.2質量%以上で、飲料に適した流動性を有する大豆蛋白飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、分離大豆蛋と粒状大豆蛋白粉砕物及び/又は全脂大豆粉末を特定量で配合することにより、分離大豆蛋白を加水分解処理しなくても、飲料の原料に適した大豆蛋白組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、以下に関するものである。
〔1〕分離大豆蛋白70~90質量%と、粒状大豆蛋白粉砕物及び/又は全脂大豆粉末10~30質量%とを含有する大豆蛋白組成物であって、該粒状大豆蛋白粉砕物は、粒状大豆蛋白を粉砕したものであり、該大豆蛋白組成物の蛋白含量が72質量%以上であることを特徴とする大豆蛋白組成物。
〔2〕前記粒状大豆蛋白粉砕物のメジアン径が、10~60μmであることを特徴とする〔1〕に記載の大豆蛋白組成物。
〔3〕前記大豆蛋白組成物のメジアン径が、50~85μmであることを特徴とする〔1〕に記載の大豆蛋白組成物。
〔4〕前記大豆蛋白組成物が、飲料用であることを特徴とする〔1〕に記載の大豆蛋白組成物。
〔5〕〔1〕に記載された大豆蛋白組成物を含有する大豆蛋白粉末飲料。
〔6〕〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載された大豆蛋白組成物、又は〔5〕に記載の大豆蛋白粉末飲料と、水又は牛乳とを混合することにより得られる大豆蛋白飲料。
〔7〕分離大豆蛋白70~90質量%と、粒状大豆蛋白粉砕物及び/又は全脂大豆粉末10~30質量%とを混合する大豆蛋白組成物の製造方法であって、該粒状大豆蛋白粉砕物は、粒状大豆蛋白を粉砕したものであり、該大豆蛋白組成物の蛋白含量が72質量%以上であることを特徴とする大豆蛋白組成物の製造方法。
〔8〕前記粒状大豆蛋白粉砕物のメジアン径が、10~60μmであることを特徴とする〔7〕に記載の大豆蛋白組成物の製造方法。
〔9〕該大豆蛋白組成物のメジアン径が、50~85μmであることを特徴とする〔7〕に記載の大豆蛋白組成物の製造方法。
〔10〕前記大豆蛋白組成物が、飲料用であることを特徴とする〔7〕に記載の大豆蛋白組成物の製造方法。
〔11〕原料に、〔7〕に記載された大豆蛋白組成物の製造方法により製造された大豆蛋白組成物を使用することを特徴とする大豆蛋白粉末飲料の製造方法。
〔12〕〔7〕~〔10〕のいずれか1つに記載された大豆蛋白組成物の製造方法により製造された大豆蛋白組成物、又は〔11〕に記載の大豆蛋白粉末飲料の製造方法により製造された大豆蛋白粉末飲料と、水又は牛乳とを混合することを特徴とする大豆蛋白飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、蛋白含量が60質量%以上であり、かつ、蛋白含量が7.2質量%以上の流動性を有する大豆蛋白水溶液を調製することができる大豆蛋白組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、原料に分離大豆蛋白を使用していても、飲料中の蛋白含量が7.2質量%以上で、飲料に適した流動性を有する大豆蛋白飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明は、分離大豆蛋白70~90質量%と、粒状大豆蛋白粉砕物及び/又は全脂大豆粉末10~30質量%とを含有する大豆蛋白組成物であって、該粒状大豆蛋白粉砕物は、粒状大豆蛋白を粉砕したものであり、該大豆蛋白組成物の蛋白含量が72質量%以上の大豆蛋白組成物である。
【0009】
〔分離大豆蛋白〕
まず、本発明に使用する分離大豆蛋白について説明をする。
本発明に使用する分離大豆蛋白は、粉末状の大豆蛋白で、通常製造されている方法で製造することができる。分離大豆蛋白の製造方法としては、例えば、脱脂大豆を中性から弱アルカリ性で水抽出後、おからを分離し、得られた抽出液を大豆蛋白の等電点付近の酸性に調整して沈殿物を生じさせることでホエー成分を分離し、沈殿物を溶解、中和後、乾燥することによって製造することができる。
このように、分離大豆蛋白は脱脂大豆から製造することができるが、市販品を使用することもできる。分離大豆蛋白の市販品としては、例えば、日清オイリオグループ(株)
販売の商品「ソルピー6000H」、「ソルピー5000H」が挙げられる。
なお、市販の分離大豆蛋白中の蛋白含量は、通常、80質量%以上である。
【0010】
本発明の大豆蛋白組成物中の分離大豆蛋白の含量は、70~90質量%であり、75~85質量%であることが好ましく、77~85質量%であることがより好ましく、78~83質量%であることがさらに好ましい。
分離大豆蛋白の含量を70質量%より少なくすると、得られる大豆蛋白組成物の蛋白含量を72質量%以上にすることが難しくなり、また、分離大豆蛋白の含量を90質量%より多くすると、飲料に適した流動性を有する蛋白溶液を調製すること難しくなってしまうからである。
【0011】
〔粒状大豆蛋白粉砕物〕
次に、本発明に使用する粒状大豆蛋白粉砕物について説明をする。
本発明に使用する粒状大豆蛋白粉砕物は、粒状大豆蛋白を粉砕することにより製造することができる。
粒状大豆蛋白を粉砕するのは、粒状大豆蛋白は、通常、長い部分の大きさは数ミリメートル~数センチメートルあるので、本発明の大豆蛋白組成物の原料に、粒状大豆蛋白をそのまま使用すると、得られた大豆蛋白組成物を用いて製造した飲料は、ざらつき、又は異物感があるものとなってしまうからである。
粒状大豆蛋白は、例えば、エクストルーダーに大豆蛋白を含む原料を供給し、加圧・加熱しながら混合・混練することにより製造される。エクストルーダー処理により、蛋白質が膨化し、多孔質な組織が形成される。エクストルーダーとしては、例えば、二軸エクストルーダーが使用できる。大豆蛋白を含む原料として、例えば、脱脂大豆、分離大豆蛋白等を使用できる。また、原料には、澱粉、食用油脂等を混合することができる。
粒状大豆蛋白は、市販品を使用することができる。市販品としては、例えば、日清オイリオグループ株式会社販売の商品、「ニューソイミーS10」、「ニューソイミーS11」、「ニューソイミーS20F」、「ニューソイミーS21F」、「ニューソイミーS21MKJ」、「ニューソイミーS22F」、「ニューソイミーS31B」、「ニューソイミーS50」、「ニューコミテックスA-301」、「ニューコミテックスA-302」、「ニューコミテックスA-318」、「ニューコミテックスA-320」、「ニューコミテックスA-321S」、「ニューコミテックスA-400」、「ニューソイミーF2010」、「ニューソイミーF3010」、「ニューコミテックスP501」等が挙げられる。
【0012】
粒状大豆蛋白の粉砕は、ローラーミル、ジェットミル、ハンマーミル(高速回転粉砕機)、ピンミル(高速回転粉砕機)等の粉砕機を用いて行うことができる。
粉砕は、粉砕機の粉砕能力を適宜調整することにより、粒状大豆蛋白粉砕物のメジアン径が、10~60μmになるように粉砕することが好ましく、10~50μmになるように粉砕することがより好ましく、10~40μmになるように粉砕することがさらに好ましい。
粒状大豆蛋白粉砕物のメジアン径をかかる範囲に調整すれば、粒状大豆蛋白粉砕物を含有する大豆蛋白組成物を飲料原料に使用した場合に、ざらつきが少なく飲みやすくなるからである。
ここで、メジアン径は、D50とも呼ばれており、粉体の粒子径分布を小さい方から大きい方へ並べて2つに分けた際、小さい方と大きい方が同じ数となる径である。
メジアン径は、例えば、Microtrac社の測定装置「粒子径分布測定装置 MT3000II」を使用して測定することができる。
【0013】
粒状大豆蛋白粉砕物は、市販品を使用することができる。市販品としては、例えば、日清オイリオグループ株式会社製の商品、「ソーヤフラワーFT-N」等が挙げられる。
粒状大豆蛋白粉砕物中の蛋白含量は、好ましくは40~60質量%であり、より好ましくは45~55質量%であり、さらに好ましくは50~55質量%である。
蛋白含量は、大豆蛋白試料の全窒素分を、ケルダール法により定量し、大豆蛋白試料に対する百分率で表し、これに6.25を乗じて粗蛋白の含量とする方法で導出する。この方法は、JAS(社団法人日本農林規格協会)による植物性たん白の日本農林規格における植物たん白質含有率の測定法に準じたものである。
【0014】
本発明の大豆蛋白組成物中の粒状大豆蛋白粉砕物の含量は、10~30質量%であり、15~25質量%であることが好ましく、15~23質量%であることがより好ましく、17~22質量%であることがさらに好ましい。
粒状大豆蛋白粉砕物の含量を10質量%より少なくすると、飲料に適した流動性を有する蛋白溶液を調製すること難しくなってしまうからであり、また、粒状大豆蛋白粉砕物の含量を30質量%より多くすると、得られる大豆蛋白組成物の蛋白含量を72質量%以上にすることが難しくなってしまうからである。
【0015】
〔全脂大豆粉末〕
次に、本発明に使用する全脂大豆粉末について説明をする。
本発明に使用する全脂大豆粉末は、市販品を使用することができ、加熱処理をした加熱脱臭タイプの全脂大豆粉末を使用することができる。
また、例えば、原料としてリポキシゲナーゼ欠失大豆のような特殊な大豆品種を使用した全脂大豆粉末も使用することができる。
【0016】
本発明に使用する全脂大豆粉末は、一般に行われている方法、すなわち、大豆の脱皮工程、加熱脱臭工程、及び粉砕工程を有する製造方法により製造することができる。
脱皮工程では、脱皮機及び風力選別機を用いて大豆の脱皮を行うことができる。脱皮工程においては、脱皮機で大豆の脱皮を行った後、風力選別機により皮が取り除かれる。得られる全脂大豆粉末の風味をより向上させるために、皮だけではなく胚軸も取り除くことが好ましい。
粉砕工程は、ピンミルやハンマーミル等の粉砕機を用いて大豆の粉砕を行うことができる。
【0017】
全脂大豆粉末は、原料大豆を入手し、先に説明した方法で製造しても良いが、市販品を使用することもできる。
全脂大豆粉末の市販品として、例えば、加熱脱臭タイプの全脂大豆粉末(商品名「アルファプラスHS-600」、NSIは約60)等が挙げられる。
なお、NSIは、試料中に含まれる全窒素に占める水溶性窒素の割合を示す指数である。具体的には、NSIは、試料に含まれる全窒素を100としたときに、試料の水抽出液に含まれる窒素量を相対量として表した数値である。
全脂大豆粉末のNSIは、基準油脂分析試験法((社)日本油化学会)1.8.1-2013水溶性窒素指数(40℃法)に基づいて算出することができる。
【0018】
本発明の大豆蛋白組成物中の全脂大豆粉末の含量は、10~30質量%であり、15~25質量%であることが好ましく、15~23質量%であることがより好ましく、17~22質量%であることがさらに好ましい。
全脂大豆粉末の含量を10質量%より少なくすると、飲料に適した流動性を有する蛋白溶液を調製すること難しくなってしまうからであり、また、全脂大豆粉末の含量を30質量%より多くすると、得られる大豆蛋白組成物の蛋白含量を72質量%以上にすることが難しくなってしまうからである。
【0019】
本発明の大豆蛋白組成物に、上述した粒状大豆蛋白粉砕物、及び全脂大豆粉末の両方を含有する場合には、それらの合計量が10~30質量%であり、15~25質量%であることが好ましく、15~23質量%であることがより好ましく、17~22質量%であることがさらに好ましい。
粒状大豆蛋白粉砕物、及び全脂大豆粉末の合計含量を10質量%より少なくすると、飲料に適した流動性を有する蛋白溶液を調製すること難しくなってしまうからであり、また、粒状大豆蛋白粉砕物、及び全脂大豆粉末の合計含量を30質量%より多くすると、得られる大豆蛋白組成物の蛋白含量を72質量%以上にすることが難しくなってしまうからである。
【0020】
〔大豆蛋白組成物〕
次に、本発明の大豆蛋白組成物について説明をする。
本発明の大豆蛋白組成物は、上述した分離大豆蛋白と上述した粒状大豆蛋白粉砕物、及び/又は全脂大豆粉末を特定量含有する大豆蛋白組成物で、大豆蛋白組成物中の蛋白含量が、72質量%以上である。
本発明の大豆蛋白組成物中の蛋白含量は、72質量%以上であり、72~85質量%であることが好ましく、75~85質量%であることがより好ましく、78~85質量%であることがさらに好ましい。
大豆蛋白組成物中の蛋白含量を72質量%以上とするのは、蛋白飲料は、蛋白摂取を主な目的として飲まれるため、飲料に使用する原料は、蛋白含量がより高いものが求められており、72質量%以上に設定すれば、大豆蛋白組成物を10質量%配合した大豆飲料は、少なくとも7.2質量%以上の大豆蛋白を含有させることができるからである。
ここで、本発明の大豆蛋白組成物は、飲料に10質量%以上添加すれば、飲料中の大豆蛋白が7.2質量%以上となるように設定をしているが、これは、大豆飲料により、多くの蛋白を摂取したいというニーズに対応できるよう設定したものである。
したがって、飲料の目的により、飲料中の大豆蛋白が7.2質量%未満でも良いという場合には、飲料への大豆蛋白組成物の添加量を10質量%よりも少なくすることで、蛋白含量が7.2質量%未満の飲料も製造することができる。
このように、本発明によると、飲料の目的に応じて飲料への大豆蛋白組成物の添加量を変えることで、得られる飲料中の蛋白含量を調整することができる。
【0021】
得られる大豆蛋白組成物中の蛋白含量が72質量%以上になるようにするためには、例えば、製造前に、原料に使用する分離大豆蛋白、粒状大豆蛋白粉砕物、全脂大豆粉末の蛋白含量を測定しておき、混合後の蛋白含量が計算上72質量%以上なるように混合割合を設定して製造するのが好ましい。
蛋白含量は、大豆蛋白試料の全窒素分を、ケルダール法により定量し、大豆蛋白試料に対する百分率で表し、これに6.25を乗じて粗蛋白の含量とする方法で導出する。この方法は、JAS(社団法人日本農林規格協会)による植物性たん白の日本農林規格における植物たん白質含有率の測定法に準じたものである。
【0022】
大豆蛋白組成物のメジアン径は、50~85μmであることが好ましく、50~83μmであることがより好ましく、50~80μmであることがさらに好ましい。
大豆蛋白組成物のメジアン径が、かかる範囲であれば、大豆蛋白組成物を飲料原料に使用した場合に、ざらつきが少なく飲みやすくなるからである。
【0023】
〔大豆蛋白組成物の製造方法〕
次に、本発明の大豆蛋白組成物の製造方法について説明をする。
本発明は、上述した分離大豆蛋白70~90質量%と、上述した粒状大豆蛋白粉砕物、及び/又は全脂大豆粉末10~30質量%とを混合する大豆蛋白組成物の製造方法である。
混合は、袋に原料を入れて袋を振って混合してもよく、V型混合機、リボンミキサー、ナウターミキサー等の混合機を用いて混合しても良い。
【0024】
分離大豆蛋白の配合量は、70~90質量%であり、75~85質量%であることが好ましく、77~85質量%であることがより好ましく、78~83質量%であることがさらに好ましい。
分離大豆蛋白の含量を70質量%より少なくすると、得られる大豆蛋白組成物の蛋白含量を、72質量%以上にすることが難しくなり、また、分離大豆蛋白の含量を90質量%より多くすると、飲料に適した流動性を有する蛋白溶液を調製すること難しくなってしまうからである。
また、粒状大豆蛋白粉砕物の配合量は、10~30質量%であり、15~25質量%であることが好ましく、15~23質量%であることがより好ましく、17~22質量%であることがさらに好ましい。
また、全脂大豆粉末の配合量は、10~30質量%であり、15~25質量%であることが好ましく、15~23質量%であることがより好ましく、17~22質量%であることがさらに好ましい。
粒状大豆蛋白粉砕物、又は全脂大豆粉末の含量を10質量%より少なくすると、飲料に適した流動性を有する蛋白溶液を調製すること難しくなってしまうからであり、また、粒状大豆蛋白粉砕物、又は全脂大豆粉末の含量を30質量%より多くすると、得られる大豆蛋白組成物の蛋白含量を72質量%以上にすることが難しくなってしまうからである。
【0025】
本発明の大豆蛋白組成物に、上述した粒状大豆蛋白粉砕物、及び全脂大豆粉末の両方を配合する場合には、それらの合計量が10~30質量%であり、15~25質量%であることが好ましく、15~23質量%であることがより好ましく、17~22質量%であることがさらに好ましい。
粒状大豆蛋白粉砕物、及び全脂大豆粉末の合計含量を10質量%より少なくすると、飲料に適した流動性を有する蛋白溶液を調製すること難しくなってしまうからであり、また、粒状大豆蛋白粉砕物、及び全脂大豆粉末の合計含量を30質量%より多くすると、得られる大豆蛋白組成物の蛋白含量を72質量%以上にすることが難しくなってしまうからである。
【0026】
本発明の大豆蛋白組成物の製造においては、得られる 大豆蛋白組成物中の蛋白含量が72質量%以上になるように、使用する分離大豆蛋白、及び粒状大豆蛋白粉砕物の選定、及び混合割合の調整するのが好ましい。
本発明の大豆蛋白組成物中の蛋白含量は、72質量%以上であり、72~85質量%であることが好ましく、75~85質量%であることがより好ましく、78~85質量%であることがさらに好ましい。
得られる大豆蛋白組成物中の蛋白含量が72質量%以上になるようにするためには、例えば、製造前に、原料に使用する分離大豆蛋白、粒状大豆蛋白粉砕物、全脂大豆粉末の蛋白含量を測定しておき、混合後の蛋白含量が計算上72質量%以上なるように混合割合を設定して製造するのが好ましい。
大豆蛋白組成物中の蛋白含量を72質量%以上とするのは、蛋白飲料は、蛋白摂取を主な目的として飲まれるため、飲料に使用する原料は、蛋白含量がより高いものが求められ、72質量%以上に設定すれば、大豆蛋白組成物を10質量%配合した大豆飲料は、少なくとも大豆蛋白を7.2質量%以上含有させることができるからである。
蛋白含量は、大豆蛋白試料の全窒素分を、ケルダール法により定量し、大豆蛋白試料に対する百分率で表し、これに6.25を乗じて粗蛋白の含量とする方法で導出する。この方法は、JAS(社団法人日本農林規格協会)による植物性たん白の日本農林規格における植物たん白質含有率の測定法に準じたものである。
【0027】
〔大豆蛋白組成物の用途〕
本発明の大豆蛋白組成物は、そのまま飲料の原料、即ち、大豆蛋白粉末飲料として使用することができる。
本発明の大豆蛋白組成物を用いた大豆蛋白飲料は、例えば、水又は牛乳を入れたシェイカーに、大豆蛋白組成物を添加後、シェイカーの蓋をして数回振り混ぜることにより製造することができる。
上述したが、本発明の大豆蛋白組成物は、飲料に10質量%以上添加すれば、飲料中の大豆蛋白が7.2質量%以上となるように設定をしているが、飲料の目的に応じて飲料への大豆蛋白組成物の添加量を変えることで、得られる飲料中の蛋白含量を調整することができる。
例えば、水180gに大豆蛋白組成物20gを添加して混合すれば、飲料中の大豆蛋白が7.2質量%以上のものを得ることができるが、飲料中の大豆蛋白を、7.2質量%未満でも良い場合には、飲料への大豆蛋白組成物の添加量を10質量%よりも少なくすることで、蛋白含量が7.2質量%未満の飲料も製造することができる。
各種食品素材を含有する大豆蛋白粉末飲料を用いた大豆蛋白飲料は、例えば、100~200mlの水又は牛乳を入れたシェイカーに、大豆蛋白粉末飲料を、好ましくは5~30g、より好ましくは、8~25g、さらに好ましくは10~22g添加後、シェイカーの蓋をして数回振り混ぜることにより製造することができる。
【0028】
また、本発明の大豆蛋白組成物と各種食品素材とを混合することで、各種食品素材を含有する大豆蛋白粉末飲料を得ることができる。
各種食品素材として、ビタミン類、糖類、高甘味度甘味料、増粘多糖類、デキストリン、食用油脂、ココアパウダー、食塩、着色料、香料、乳化剤等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
大豆蛋白粉末飲料中の大豆蛋白組成物、及び各種食品素材の含量は、特に限定しないが、大豆蛋白粉末飲料中の大豆蛋白組成物の含量は、例えば、好ましくは30~99質量%であり、より好ましくは40~90質量%であり、さらにより好ましくは45~85質量%である。
また、各種食品素材の含量は、好ましくは1~70質量%であり、より好ましくは10~60質量%であり、さらにより好ましくは15~55質量%である。
【0029】
ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、パントテン酸、葉酸、ナイアシン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
糖類としては、砂糖、ブドウ糖、果糖、乳糖、ソルビトール等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
高甘味度甘味料としては、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムK等が挙
げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0030】
増粘多糖類としては、キサンタンガム、ローカストビーンガム、寒天、プルラン、ジェランガム、カラギーナン、グアーガム、タマリンドシードガム等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
食用油脂としては、大豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、ひまわり油、綿実油、ブドウ種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、かぼちゃ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、ボラージ油、オリーブ油、米糠油、パーム油、豚脂、牛脂、魚油や、これらの油脂の水添油や、これらの油脂の1種又は2種以上をエステル交換した油、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0031】
各種食品素材を含有する大豆蛋白粉末飲料は、大豆蛋白組成物と各種食品素材の1種又は2種以上を混合することにより製造することができる。
混合は、袋に原料を入れて袋を振って混合してもよく、ナウターミキサー、V型混合機、リボンミキサー等の混合機を用いて混合しても良い。
各種食品素材を含有する大豆蛋白粉末飲料は、水や牛乳と混合することにより、各種食品素材を含有する大豆蛋白飲料とすることができる。
各種食品素材を含有する大豆蛋白粉末飲料を用いた大豆蛋白飲料は、例えば、水又は牛乳を入れたシェイカーに、大豆蛋白粉末飲料を添加後、シェイカーの蓋をして数回振り混ぜることにより製造することができる。
各種食品素材を含有する大豆蛋白粉末飲料は、それに含まれる大豆蛋白組成物を10質量%以上になるように飲料に添加すれば、飲料中の大豆蛋白が7.2質量%以上となるように設定しているが、飲料の使用目的に応じて飲料中の大豆蛋白粉末飲料の添加量を変えることで、得られる飲料中の蛋白含量を調整することができる。
各種食品素材を含有する大豆蛋白粉末飲料を用いた大豆蛋白飲料は、例えば、100~200mlの水又は牛乳を入れたシェイカーに、大豆蛋白粉末飲料を、好ましくは5~30g、より好ましくは、8~25g、さらに好ましくは10~22g添加後、シェイカーの蓋をして数回振り混ぜることにより製造することができる。
【0032】
また、本発明の大豆蛋白組成物は、食品の蛋白質源として、各種食品の原料として使用することができる。
【0033】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【実施例0034】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
・使用した原材料について
大豆蛋白組成物に使用した原材料、及び分析値を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
〔蛋白含量の分析〕
測定サンプルの蛋白含量は、大豆蛋白試料の全窒素分を、ケルダール法により定量し、大豆蛋白試料に対する百分率で表し、これに6.25を乗じて粗蛋白の含量とする方法で導出した。この方法は、JAS(社団法人日本農林規格協会)による植物性たん白の日本農林規格における植物たん白質含有率の測定法に準じたものである。
〔メジアン径の測定〕
測定サンプルのメジアン径は、Microtrac社の測定装置「粒子径分布測定装置 MT3000II」を使用し、測定は、乾式測定で行った。
なお、メジアン径は、D50とも呼ばれており、粉体の粒子径分布を小さい方から大きい方へ並べて2つに分けた際、小さい方と大きい方が同じ数となる径である。
【0038】
・大豆蛋白組成物の製造(実施例1、2、比較例1、2)
表2に示す配合で、大豆蛋白組成物を製造した。
具体的には、ビニール袋に分離大豆蛋白80g及び粒状大豆蛋白粉砕物20gを入れ、1分間ビニール袋を振って混合することにより、大豆蛋白組成物を製造した(実施例1)。得られた大豆蛋白組成物の蛋白含量、及びメジアン径を上述した方法で測定した。測定結果を、表2に示す。
実施例1の粒状大豆蛋白粉砕物を全脂大豆粉末に代えて、実施例1と同様の方法で、大豆蛋白組成物を製造した(実施例2)。得られた大豆蛋白組成物の蛋白含量を、原料中の蛋白含量を用いて計算で算出し、メジアン径を上述した方法で測定した。測定結果を、表2に示す。
飲料原料の比較とするために、分離大豆蛋白のみを比較例1とした。分離大豆蛋白の蛋白含量、及びメジアン径の測定結果を、表2に示す。
実施例1の粒状大豆蛋白粉砕物をデキストリンに代えて、実施例1と同様の方法で、大豆蛋白組成物を製造した(比較例2)。得られた大豆蛋白組成物の蛋白含量を、原料中の蛋白含量を用いて計算で算出し、メジアン径を上述した方法で測定した。測定結果を、表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
・大豆蛋白飲料の製造(実施例3、4、比較例3、4)
実施例1の大豆蛋白組成物と水を用いて、大豆蛋白飲料を製造した。
具体的には、イオン交換水を入れた500mlシェイカーに、実施例1、実施例2、比較例1、又は比較例2の大豆蛋白組成物を入れた後、シェイカーの蓋をして上下に10回振り混ぜ(上下の振り幅40~50cm)、大豆蛋白飲料を製造した(それぞれ、実施例3、4、比較例3、4)。
また、飲料中の蛋白含量が同じもので効果の違いを確認するために、比較例3の大豆蛋白飲料は、実施例3の大豆蛋白飲料と、飲料中の蛋白含量が同じ量(8.0質量%)となるように配合を調整して製造をした。
また、各大豆飲料中の蛋白含量を、原料の蛋白含量から算出した。計算で求めた蛋白含量を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
・大豆蛋白飲料の流動性
製造した直後の大豆蛋白飲料の流動性を目視で確認した。評価結果を表4に示す。
・大豆蛋白飲料の食感
大豆蛋白飲料の飲食時の食感について評価をした。評価結果を表4に示す。
【0043】
【表4】
【0044】
表2~表4の結果から、以下のことがわかった。
実施例3、4の大豆蛋白組成物を使用した大豆飲料は、飲料に適した流動性を有しており、大豆蛋白組成物中の蛋白含量を72質量%以上にしたので(表2)、大豆飲料中の蛋白含量は、それぞれ8.0質量%、7.8質量%と、想定した飲料中の蛋白含量(7.2質量%以上)を満たすものであった。
また、実施例3の大豆飲料は、飲料に適した流動性を有しており、飲料として飲みやすいものであった。一方、飲料中の蛋白含量を実施例3と同じ値(8.0質量%)に設定して調製をした比較例3の大豆飲料は、流動性が低く、飲料として飲みにくいものであった。このことから、実施例3の大豆飲料の原料に使用した実施例1の大豆蛋白組成物は、分離大豆蛋白を使用した大豆飲料原料に適したものであることがわかった。
同じように、飲料中の蛋白含量が比較例3とほぼ同じ量である実施例4の大豆飲料も飲料に適した流動性を有しており、飲料として飲みやすいものであった。このことから、実施例4の大豆飲料の原料に使用した実施例2の大豆蛋白組成物は、分離大豆蛋白を使用した大豆飲料原料に適したものであることがわかった。
また、比較例2の大豆蛋白組成物を使用した大豆飲料は、飲料に適した流動性を有するものではあったが、大豆蛋白組成物中の蛋白含量が72質量%未満なので(表2)、大豆飲料中の蛋白含量は、7.0質量%で、想定した飲料中の蛋白含量(7.2質量%以上)を満たさなかった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の大豆蛋白組成物は、食品分野、特に飲料に利用することができる。