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特開2024-106059光学部材およびその製造方法、並びに発光装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106059
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】光学部材およびその製造方法、並びに発光装置
(51)【国際特許分類】
   F21V 9/00 20180101AFI20240731BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240731BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20240731BHJP
   F21V 9/30 20180101ALI20240731BHJP
   F21V 3/08 20180101ALI20240731BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240731BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240731BHJP
【FI】
F21V9/00 100
G02B5/20
H01L33/50
F21V9/30
F21V3/08
F21Y115:10
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010140
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山下 利章
【テーマコード(参考)】
2H148
5F142
【Fターム(参考)】
2H148AA00
2H148AA07
2H148AA09
2H148AA19
2H148AA25
2H148AA27
5F142AA03
5F142DA15
5F142DA61
5F142DA73
5F142FA24
5F142FA28
(57)【要約】
【課題】励起光の取り込み効率を向上させることが可能な光学部材を提供する。
【解決手段】透光部材と、前記透光部材の上面に固定された波長変換部材とを含む複合体を準備する工程と、前記透光部材の下面を支持部材に固定することにより、前記複合体を前記支持部材に固定する工程と、前記複合体の周囲に無機材料を含むスラリーを配置することにより、前記複合体を囲む成形体を形成する工程と、前記成形体を焼成することにより、前記複合体を囲む光反射部材を得る工程と、を備え、前記透光部材の下面の面積は、前記波長変換部材の上面及び下面のいずれの面積よりも大きい、光学部材の製造方法。
【選択図】 図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光部材と、前記透光部材の上面に固定された波長変換部材とを含む複合体を準備する工程と、
前記透光部材の下面を支持部材に固定することにより、前記複合体を前記支持部材に固定する工程と、
前記複合体の周囲に無機材料を含むスラリーを配置することにより、前記複合体を囲む成形体を形成する工程と、
前記成形体を焼成することにより、前記複合体を囲む光反射部材を得る工程と、を備え、
前記透光部材の下面の面積は、前記波長変換部材の上面及び下面のいずれの面積よりも大きい、光学部材の製造方法。
【請求項2】
前記複合体を準備する工程において、前記透光部材の上面と前記波長変換部材の下面とを直接接合することにより前記複合体を得る、請求項1に記載の光学部材の製造方法。
【請求項3】
前記波長変換部材は、蛍光体セラミックスと、前記蛍光体セラミックスの下面に形成された透明膜とを有し、
前記複合体を準備する工程において、前記透明膜の下面と前記透光部材の上面とを直接接合する、請求項2に記載の光学部材の製造方法。
【請求項4】
前記透光部材は、第1透光部材であり、
前記複合体は、前記第1透光部材と、前記波長変換部材と、前記波長変換部材の上面に固定された第2透光部材と、を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学部材の製造方法。
【請求項5】
第1透光部材と、
前記第1透光部材の上面に固定された波長変換部材と、
前記第1透光部材の側面及び前記波長変換部材の側面を囲む光反射部材と、を備え、
前記第1透光部材の下面の面積は、前記波長変換部材の上面及び下面のいずれの面積よりも大きい、光学部材。
【請求項6】
前記波長変換部材の上面に固定された第2透光部材を備え、
前記第2透光部材の上面の面積は、前記波長変換部材の上面及び下面のいずれの面積よりも大きい、請求項5に記載の光学部材。
【請求項7】
前記光反射部材は、少なくとも前記第1透光部材と前記第2透光部材に挟まれた領域に、複数の空隙がある、請求項6に記載の光学部材。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の光学部材と、
前記光学部材の前記第1透光部材に入射する光を発する発光素子と、を備える、発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学部材およびその製造方法、並びに発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蛍光体材料を含む波長変換領域と、セラミック材料を含む保持領域とを有する焼結体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-002912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
波長変換領域に励起光を照射する際に、励起光のうちその領域から外れた部分に到達した光は、保持領域に反射または吸収される。透光部材と波長変換部材を有する光学部材において、励起光の取り込み効率を向上するために更なる工夫を施す余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における一実施形態の光学部材の製造方法は、透光部材と、前記透光部材の上面に固定された波長変換部材とを含む複合体を準備する工程と、前記透光部材の下面を支持部材に固定することにより、前記複合体を前記支持部材に固定する工程と、前記複合体の周囲に無機材料を含むスラリーを配置することにより、前記複合体を囲む成形体を形成する工程と、前記成形体を焼成することにより、前記複合体を囲む光反射部材を得る工程と、を備え、前記透光部材の下面の面積は、前記波長変換部材の上面及び下面のいずれの面積よりも大きい。
【0006】
本開示における一実施形態の光学部材は、第1透光部材と、前記第1透光部材の上面に固定された波長変換部材と、前記第1透光部材の側面及び前記波長変換部材の側面を囲む光反射部材と、を備え、前記第1透光部材の下面の面積は、前記波長変換部材の上面及び下面のいずれの面積よりも大きい。
【0007】
本開示における一実施形態の発光装置は、上述の光学部材と、前記光学部材の前記第1透光部材に入射する光を発する発光素子と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
励起光の取り込み効率を向上させることが可能な光学部材及びそれを有する発光装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、実施形態に係る光学部材の模式的な上面図である。
図1B図1Bは、図1AのIB-IB線における断面図である。
図2図2は、実施形態に係る光学部材の製造方法を説明するための図である。
図3図3は、実施形態に係る光学部材の製造方法を説明するための図である。
図4図4は、実施形態に係る光学部材の製造方法を説明するための図である。
図5図5は、実施形態に係る光学部材の製造方法を説明するための図である。
図6図6は、実施形態に係る光学部材の製造方法を説明するための図である。
図7図7は、実施形態に係る光学部材の製造方法を説明するための図である。
図8図8は、変形例1に係る光学部材の模式的な断面図である。
図9図9は、変形例2に係る光学部材の模式的な断面図である。
図10図10は、変形例3に係る光学部材の模式的な断面図である。
図11図11は、実施形態に係る発光装置の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について適宣図面を参照して説明する。ただし、以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。
【0011】
図1A及び図1Bを用いて、実施形態に係る光学部材10を説明する。また、図2図7を用いて、実施形態に係る光学部材10の製造方法を説明する。図1Aは実施形態に係る光学部材10の模式的な上面図である。図1Bは、図1AのIB-IB線における断面図である。図2図7は、実施形態に係る光学部材10の製造方法を説明するための図である。
【0012】
(光学部材10)
光学部材10は、第1透光部材1と、第1透光部材1の上面に固定された波長変換部材2と、第1透光部材1の側面及び波長変換部材2の側面を囲む光反射部材3と、を有する。第1透光部材1の下面の面積は、波長変換部材2の上面及び下面のいずれの面積よりも大きい。このような第1透光部材1を設けることで、第1透光部材1に照射される励起光の取り込み効率を向上させることができる。なお、ここでは、図1Bにおける上側の面を上面とし、下側の面を下面とするが、実際の使用時においては上下の位置関係はこの通りでなくてよい。
【0013】
光学部材10は、波長変換部材2の上面に固定された第2透光部材4を有することができる。図1Aに示す上面図において、波長変換部材2と第2透光部材4は同じサイズであり、第2透光部材4の上面の面積は波長変換部材2の上面及び下面の面積と等しい。
【0014】
(第1透光部材1)
第1透光部材1は、発光素子等からの励起光を透過する材料からなる。第1透光部材1は、例えば、サファイア、マグネシア、石英、またはガラスのいずれかから構成される。第1透光部材1としては、光反射部材3の焼成温度で溶融しない材料を用いることが好ましい。第1透光部材1は、例えばサファイアからなる。第1透光部材1は、四角柱であり、その上面が一方向に長い長方形である。第1透光部材1は、円柱、多角柱、多角錐台、又は円錐台であってもよい。
【0015】
第1透光部材1と光反射部材3は接している。つまり、第1透光部材1と光反射部材3が、他の部材を介することなく直接的に接している。これにより、他の部材により光が吸収されることが少なくなるので、光の取出し効率を向上させることができる。第1透光部材1と光反射部材3との間に透光性の他の部材を介在させてもよい。
【0016】
(波長変換部材2)
波長変換部材2は、照射された励起光の波長を変換する部材である。波長変換部材2は、蛍光体を含有する。波長変換部材2としては、光反射部材3の焼成温度で溶融しない材料を用いることができる。本実施形態では、波長変換部材2として、蛍光体を含有するセラミックス(以下、「蛍光体セラミックス」ということがある。)を用いている。波長変換部材2は、実質的に蛍光体のみからなるセラミックスであってもよく、蛍光体の単結晶であってもよい。
【0017】
蛍光体セラミックスとしては、蛍光体と無機材料からなる結着剤とを含むものを用いることができる。具体的には、蛍光体としてYAG(Yttrium Aluminum Garnet)系蛍光体を用いており、結着剤として酸化アルミニウムを用いている。また、光反射部材3として、酸化アルミニウムを主成分として含む材料を用いている。このように、波長変換部材2に含まれる結着剤に光反射部材3と同じ材料を含む場合は、波長変換部材2と光反射部材3との密着力を向上させることができる。
【0018】
蛍光体としては、波長変換部材2と光反射部材3との密着力を高くするために、光反射部材3の線膨張係数に近い線膨張係数を有する蛍光体を用いることが好ましい。光反射部材3として酸化アルミニウムを主成分として含む材料を用いる場合は、これに近い線膨張係数を有する蛍光体として、YAG系蛍光体が挙げられる。YAG系蛍光体には、例えばYの少なくとも一部をTbに置換したもの(TAG)や、Yの少なくとも一部をLuに置換したもの(LAG)も含まれる。YAG系蛍光体は、組成中にGdやGa等が含まれるものであってもよい。蛍光体にYAG系蛍光体を用い、光反射部材3に酸化アルミニウムを用いる場合、同様の理由により、波長変換部材2に含まれる結着剤は、酸化アルミニウムであることが好ましい。結着剤としては、他にも、例えば、賦活剤を含まないYAG、酸化イットリウムを用いることができる。これらを用いることで、光反射部材3の焼成時の熱による蛍光体の発光効率の低下を抑制することができる。
【0019】
波長変換部材2と光反射部材3は接している。つまり、波長変換部材2と光反射部材3が、他の部材を介することなく直接的に接している。これにより、他の部材により光が吸収されることが少なくなるので、光の取出し効率を向上させることができる。波長変換部材2と光反射部材3との間に透光性の他の部材を介在させてもよい。波長変換部材2の下面のすべてが第1透光部材1の上面と接していてよい。波長変換部材2は、四角柱であり、その上面が一方向に長い長方形である。波長変換部材2は、円柱、多角柱、多角錐台、又は円錐台であってもよい。例えば、第1透光部材1が四角柱であり、波長変換部材2が四角柱であってよい。この場合、上面に対して垂直に見る上面視において、第1透光部材1の上面の四辺のいずれよりも内側に波長変換部材2の上面および下面のそれぞれの四辺が収まるように配置することができる。これによって、より効率よく励起光の取り込み効率を向上させることができる。例えば、第1透光部材1の上面は長方形であり、波長変換部材2の上面および下面のそれぞれは長方形であってよい。この場合、第1透光部材1の上面の一辺(例えば長辺)と波長変換部材2の上面および下面の一辺(例えば長辺)が平行になるように配置することができる。
【0020】
(光反射部材3)
光反射部材3は、第1透光部材1及び波長変換部材2を取り囲むように第1透光部材1及び波長変換部材2の側方に設けられている。言い換えると、光反射部材3には上下方向に貫通する貫通孔が設けられており、貫通孔の内部に第1透光部材1及び波長変換部材2が設けられている。第1透光部材1の下面は光反射部材3から露出している。
【0021】
光反射部材3は、例えば、複数の空隙を含むセラミックスからなる。第1透光部材1と光反射部材3とを横切る一断面において、複数の空隙は第1透光部材1の近傍に偏在していてもよい。
【0022】
光反射部材3としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ルテチウム、酸化ランタンなどからなる酸化物、酸窒化アルミニウム、酸窒化ケイ素などからなる酸窒化物、窒化アルミニウム、又は窒化ケイ素などからなる窒化物の単体が挙げられる。光反射部材3は、これらのうち2以上を含む複合部材から構成されていてもよい。光反射部材3としては、これらの材料の中でも比較的、熱伝導率が高く、光吸収が少なく、焼結性の良い材料である、酸化アルミニウムをベースとしたものを用いることが好ましい。酸化アルミニウムをベースとして使用する場合、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、又は酸化イットリウムの1以上を添加してもよい。また、酸化ジルコニウムなどの高屈折率材料と組み合わせてもよい。酸化アルミニウムをベースとしてそれとは異なる材料を添加することで、酸化アルミニウムの粒子の成長を抑制することが可能である。粒子成長抑制により粒界が増えるため、粒界と粒界の間に生じる空隙の数も増加し、且つ、粒子のサイズの増大が抑制されることで空隙のサイズの増大も抑制される。このため、空隙のサイズ縮小及び数の増大が期待でき、これによる反射率の向上が期待できる。
【0023】
(第2透光部材4)
第2透光部材4は、発光素子等からの励起光及び波長変換部材2において変換された波長変換光を透過する材料からなる。第2透光部材4は、例えば、サファイア、マグネシア、石英、またはガラスのいずれかから構成される。第2透光部材4としては、光反射部材3の焼成温度で溶融しない材料を用いることが好ましい。第2透光部材4は、例えばサファイアからなる。第2透光部材4は、四角柱であり、その上面が一方向に長い長方形である。第1透光部材1は、円柱、多角柱、多角錐台、又は円錐台であってもよい。
【0024】
第2透光部材4と光反射部材3は接している。つまり、第2透光部材4と光反射部材3が、他の部材を介することなく直接的に接している。これにより、他の部材により光が吸収されることが少なくなるので、光の取出し効率を向上させることができる。第2透光部材4と光反射部材3との間に透光性の他の部材を介在させてもよい。第2透光部材4の上面は光反射部材3から露出している。第2透光部材4の下面は波長変換部材2の上面の一部又は全面に接している。
【0025】
(光学部材10の製造方法)
光学部材10の製造方法は、複合体20を準備する工程と、複合体20を支持部材30に固定する工程と、複合体20を囲む成形体60を形成する工程と、複合体20を囲む光反射部材3を得る工程と、を有する。
【0026】
複合体を準備する工程では、第1透光部材1(透光部材)と、第1透光部材1の上面に固定された波長変換部材2とを含む複合体20を準備する。複合体を支持部材に固定する工程では、第1透光部材1の下面を支持部材30に固定する。複合体を囲む成形体を形成する工程では、複合体20の周囲に無機材料を含むスラリー50を配置することにより、複合体を囲む成形体60を形成する。複合体20を囲む光反射部材3を得る工程では、成形体60を焼成することにより、複合体20を囲む光反射部材3を得る。第1透光部材1の下面の面積は、波長変換部材2の上面及び下面のいずれの面積よりも大きい。
【0027】
これにより、第1透光部材1に照射される励起光の取り込み効率を向上させることが可能な光学部材10を得ることができる。また、波長変換部材2よりも大きな第1透光部材1を支持部材30に固定することで、波長変換部材2を支持部材30に固定する場合と比較して、成形体を形成する際に複合体20がずれにくくなる。また、このような第1透光部材1があることで、成形体60を焼成する際に波長変換部材2の付近で成形体60の密度が上がりにくくなると考えられる。これによって、波長変換部材2の近傍における光反射部材3の空隙率が上昇し、光反射部材3の光反射率が上昇することが期待できる。
【0028】
以下で、光学部材10の製造方法に含まれる各工程について説明する。ここで、同一の名称、符号については、上記で説明したものと同一もしくは同質の部材を示しているため、重複した説明は適宜省略する。
【0029】
(複合体20を準備する工程)
図2に示すように、第1透光部材1(透光部材)と、第1透光部材1の上面に固定された波長変換部材2とを含む複合体20を準備する。第1透光部材1の下面の面積は、波長変換部材2の上面及び下面のいずれの面積よりも大きい。本実施形態では、複数の複合体20を準備している。これにより、一度の製造で複数の光学部材10を得ることができるため、量産性を向上させることができる。
【0030】
第1透光部材1の上面と波長変換部材2の下面とを直接接合することにより複合体20を得てもよい。これにより、それらを接着剤で接合する場合と比較して、波長変換部材2から第1透光部材1への熱引きを向上させることができる。また、第1透光部材1から波長変換部材2へと光が伝播する際の光吸収の確率を低減することができる。直接接合としては、例えば、表面活性化接合が挙げられる。
【0031】
波長変換部材2は、蛍光体セラミックス2aと、蛍光体セラミックス2aの下面に形成された透明膜2bとを有していてもよい。透明膜2bの下面と第1透光部材1の上面とを直接接合してもよい。蛍光体セラミックス2aの下面を研磨等により平坦化する場合、凹凸が生じやすいため、透明膜2bを設けることで、設けない場合よりも平坦性を向上させることができ、直接接合を容易に行うことができる。透明膜2bは、例えば研磨等の前に形成する。透明膜2bは、例えばスパッタリングにより形成する。透明膜2bは、例えばAlなどの酸化膜である。
【0032】
複合体20は、第1透光部材1と、波長変換部材2と、波長変換部材2の上面に固定された第2透光部材4と、を含んでいてもよい。これにより、第2透光部材4を設けない場合と比較して、複合体20の厚さを増大させることができ、得られる光学部材10における光反射部材3の厚さを増大させることができるため、光反射部材3の強度を向上させることができる。第2透光部材4によって複合体の厚さを増大させることができるため、波長変換部材2の厚みを小さくしてもよい。これにより、波長変換部材2に含有される蛍光体による光散乱が減少し、光取り出し効率の向上が期待できる。第1透光部材1の上面と波長変換部材2の下面の接合と同様に、波長変換部材2の上面と第2透光部材4の下面とを直接接合してもよい。
【0033】
(複合体20を支持部材30に固定する工程)
図3に示すように、第1透光部材1の下面を支持部材30に固定することにより、複合体20を支持部材30に固定する。これにより、成形体60を形成する工程において、複合体20がずれる可能性を低減することができる。本実施形態では、複合体20と支持部材30との間に樹脂を配置し、これによって複合体20を支持部材30に固定している。樹脂を用いることで、複合体20及び成形体60から支持部材30を除去する際に、過度に力を入れることなく支持部材30を除去することができる。スリップキャスト法により成形体60を形成する場合は、支持部材30として例えば石膏を用いる。支持部材30として、ポーラス状のアルミナセラミックスなどの密度が比較的低いセラミックスを用いてもよい。
【0034】
(複合体20を囲む成形体60を形成する工程)
複合体20を囲む成形体60を形成する工程では、複合体20の周囲に無機材料を含むスラリー50を配置する。複合体20の周囲にスラリー50を配置するとは、複合体20の少なくとも側面を覆うようにスラリー50を配置することを意味する。スラリー50は、複合体20の上面を覆っていてもよく、下面を覆っていてもよい。スラリー50に含まれる無機材料は、光反射粉末である。スラリー50に含まれる無機材料は、酸化アルミニウム、及び/または、酸化イットリウムを含む。例えば、図4に示すように、複数の複合体20を取り囲む枠体40を支持部材30の上面に配置した後、枠体40の内側に光反射粉末を含むスラリー50を塗布する。続いて、スラリー50に含まれる水分を石膏である支持部材30に吸わせる。石膏は水分を吸収する材料であるため、例えば室温で数時間程度放置すればよい。これにより、スラリー50が光反射粉末を含む成形体60となる。スラリー50は、例えば、光反射粉末、分散剤、結合剤、並びに純水を含む。枠体40としては、例えば、フッ素樹脂からなる枠を用いる。
【0035】
スラリーに含まれる水分を支持部材30に吸収させた後、図5に示すように、複合体20及び成形体から支持部材30及び枠体40を除去してよい。成形体60は、複合体20の上面及び下面の少なくとも一方と側面とを取り囲むように形成することが好ましい。これにより、複合体20の側面を確実に被覆することができる。成形体は、例えば、複合体20の上面と側面とを取り囲む。成形体60は、複合体20の下面と側面とを取り囲んでいてもよく、複合体20の上面と下面と側面とを取り囲んでいてもよい。成形体60は無機材料からなる。
【0036】
このようなスリップキャスト法(泥漿鋳込み成形法)を用いることにより、加圧せずに成形体60を形成することができる。スリップキャスト法は、ドクターブレード法(シート成形法)と比較してスラリーに含まれる有機物を少なくすることができる。これにより、成形密度を高くすることができるため、成形体60を焼成することにより得られる焼成体にクラックが入る可能性を低減することができる。成形体60は、ドクターブレード法、または乾式成形法などを用いて成形してもよい。
【0037】
(複合体20を囲む光反射部材3を得る工程)
成形体60を焼成することにより、複合体20を囲む光反射部材3を得る。成形体60を焼成する前に、焼成温度よりも低い温度で成形体を加熱する脱脂工程を行ってもよい。脱脂工程は、例えば、窒素雰囲気や大気雰囲気で行うことができる。
【0038】
成形体を焼成することにより、焼成体を得る。この焼成体が光反射部材3となる。成形体60を押圧せずに焼成することが好ましい。これにより、得られる焼成体に空隙が含有されやすい。複合体20が存在することによって、複合体20の近傍では光反射粉末同士の結合が阻害され、その結果、空隙が生じやすくなることがある。押圧せずに焼成することにより、このように光反射粉末同士が離れた状態が維持されたまま焼成が完了するため、複合体20の近傍においては焼成体の空隙率が高くなると考えられる。
【0039】
光反射粉末として酸化アルミニウムを用いる場合は、焼成温度を、1200℃以上1700℃以下に設定することが好ましく、1300℃以上1500℃以下に設定することがより好ましい。1200℃以上に設定することにより、得られる光反射部材3としての強度を確保することができる。1700℃以下に設定することにより、粒子の成長を抑制し、密度が高くなることによる光反射部材3の透光性が高くなる可能性を低減することができる。また、1700℃以下に設定することにより、波長変換部材2に含まれる蛍光体の劣化を抑制することができる。焼成温度とは、焼成時の雰囲気温度を指す。本実施形態では、大気雰囲気下で焼成している。焼成時間は、例えば、30分以上10時間以下の範囲で設定することができる。
【0040】
焼成体が複合体20の上面及び下面の少なくとも一方を取り囲んでいる場合は、焼成体の一部を除去することにより、複合体20の上面及び下面を露出させる。これにより、図6に示すように、複合体20の側面を囲み且つ上面及び下面を露出する光反射部材3を得る。焼成体が複合体20の上面及び下面のいずれも取り囲んでいない場合は、焼成体をすなわち光反射部材3とすることができる。焼成体の一部を除去する方法としては、研磨などが挙げられる。
【0041】
複合体20を複数配置した場合は、図7に示すように、個片化を行うことができる。個片化は、1つの光学部材10が1つの複合体20を含むように複数の光学部材10に分割することにより行う。図7における縦線の位置で分割する。1つの光学部材10が2以上の複合体20を含むように個片化してもよい。例えば、ダイシングを用いて複数の光学部材10に個片化することができる。個片化工程が不要であれば行わなくてよい。
【0042】
(変形例)
図8~10を用いて、変形例1~3に係る光学部材10を説明する。図8は、変形例1に係る光学部材10Aの模式的な断面図である。図9は、変形例2に係る光学部材10Bの模式的な断面図である。図10は、変形例3に係る光学部材10Cの模式的な断面図である。
【0043】
図8に示すように、第1透光部材1の側面は傾斜していてもよい。第1透光部材1において、下面の方が上面よりも大きくなるように側面が傾斜していることにより、取り込んだ光を傾斜した側面で反射させることができる。第1透光部材1の側面は、照射された励起光が波長変換部材2へ向かって反射されるように傾斜していてもよく、これによって波長変換部材2への光の取り込み効率の向上が可能である。
【0044】
図9に示すように、波長変換部材2及び/または第2透光部材4の側面が傾斜していてもよい。図9では、第2透光部材4の上面の方が波長変換部材2の下面よりも大きくなるようにそれぞれの側面が傾斜している。これにより、波長変換部材2から上方に向かう光を傾斜した側面で反射させ、第2透光部材4の上面からの光の取り出し効率を向上させることができる。波長変換部材2及び/または第2透光部材4の側面が傾斜する向きは逆であってもよい。
【0045】
図10に示すように、第2透光部材4のサイズを波長変換部材2のサイズよりも大きくしてもよい。図10において、第2透光部材4の上面の面積は、波長変換部材2の上面及び下面のいずれの面積よりも大きい。光の取り出し側となる第2透光部材4を波長変換部材2よりも大きくすることで、波長変換部材2からの光の取り出し効率を向上させることができる。また、光反射部材3の第1透光部材1と第2透光部材4に挟まれた部分が他の部分よりも薄くなることで、その部分を励起光の一部が通過することができる。波長変換部材2の側面を光反射部材3が囲む構造は、励起光を照射したときに、波長変換部材2の側面の近傍において波長変換された光の強度が相対的に強くなる傾向がある。例えば、波長変換された光が黄色光である場合は、イエローリングと呼ばれる。光反射部材3の第1透光部材1と第2透光部材4に挟まれた部分において励起光の一部が通過することで、このような色むらが低減されることが期待できる。
【0046】
光反射部材3は、少なくとも第1透光部材1と第2透光部材4に挟まれた領域に、複数の空隙があることが好ましい。これにより、光反射部材3の第1透光部材1と第2透光部材4に挟まれた部分を励起光が通過しやすい。光反射部材3は、例えばセラミックスである。第2透光部材4の上面は、第1透光部材1の下面よりも小さくすることができる。これにより、第2透光部材4から取り出される光量の低下を抑制することができる。
【0047】
(発光装置100)
図11を用いて、発光装置100を説明する。図11は、発光装置100の模式的な断面図である。
【0048】
発光装置100は、光学部材10と、発光素子70と、を有する。発光素子70は、光学部材10の第1透光部材1に入射する光を発する。光学部材10は、変形例の光学部材10A、10Bまたは10Cであってもよい。このような発光装置100は、光学部材10への励起光の取り込み効率を向上させることが可能である。発光装置100が発する光は、例えば可視光である。発光装置100が発する光は、例えば白色光である。第2透光部材4の上面を、発光装置100の光取り出し面とすることができる。
【0049】
発光素子70としては、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)又はレーザダイオード(Laser Diode:LD)が挙げられる。発光素子70は、例えばLDである。発光素子70は、例えば可視光を発する。発光素子70は、例えば青色光を発する。発光装置100では、発光素子70からの光が光学部材10に含まれる第1透光部材1を通過するように配置されている。図11に示すように、発光素子70は光学部材10から離れた位置に配置してよい。これにより、発光素子70の発熱と光学部材10の発熱をそれぞれ別の経路で放散することができる。発光素子70は光学部材10と接していてもよい。発光素子70の励起光を発する面である発光面の面積は、例えば、第1透光部材1の下面の面積より小さい。これにより、面積の大小関係が逆の場合と比較して、励起光の第1透光部材1への取り込み効率を向上させやすい。発光装置100は、複数の光学部材10を有していてもよい。
【0050】
発光装置100の製造方法は、光学部材10を得る工程と、光学部材10の第1透光部材1に発光素子70が発する光が入射するように光学部材10と発光素子70とを配置する工程と、を有する。
【符号の説明】
【0051】
1 第1透光部材
2 波長変換部材
2a 蛍光体セラミックス、2b 透明膜
3 光反射部材
4 第2透光部材
10、10A、10B、10C 光学部材
20 複合体
30 支持部材
40 枠体
50 スラリー
60 成形体
70 発光素子
100 発光装置
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11