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特開2024-106106被加工物の検査方法、被加工物の加工方法及びプラズマ処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106106
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】被加工物の検査方法、被加工物の加工方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240731BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240731BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
H01L21/78 L
H01L21/302 105Z
H01L21/302 101B
H05H1/46 R
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010221
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ユウ
(72)【発明者】
【氏名】山銅 英之
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
5F063
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA05
2G084BB11
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD23
2G084DD55
2G084FF15
2G084HH02
2G084HH30
2G084HH42
2G084HH57
5F004BA09
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB25
5F004BC06
5F004CB02
5F004CB09
5F004DA01
5F004DA18
5F004DA22
5F004DA23
5F004DB00
5F004DB01
5F004DB08
5F004DB14
5F004DB19
5F004DB20
5F004DB22
5F004DB23
5F004EA13
5F004FA08
5F063AA28
5F063AA41
5F063AA48
5F063BA32
5F063BA33
5F063BA43
5F063BA44
5F063BA45
5F063BA47
5F063BA48
5F063CA08
5F063CB05
5F063CB06
5F063CB27
5F063CC23
5F063CC33
5F063DD01
5F063DD25
5F063DD37
5F063DD42
5F063DD48
5F063DE16
5F063DE23
5F063DF01
5F063DF04
5F063DF06
5F063DF19
5F063DF20
5F063DF23
5F063FF01
(57)【要約】
【課題】加工不良の発生を防止することが可能な被加工物の検査方法を提供する。
【解決手段】保護膜が形成された被加工物を検査する被加工物の検査方法であって、処理室に収容された被加工物に被加工物をエッチングするためのガスをプラズマ化して供給し、処理室内で生じる光を検出する検出ステップと、検出ステップにおいて検出された光の光量に基づいて、被加工物に保護膜が形成されていない非形成領域が存在するか否かを判定する判定ステップと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護膜が形成された被加工物を検査する被加工物の検査方法であって、
処理室に収容された該被加工物に該被加工物をエッチングするためのガスをプラズマ化して供給し、該処理室内で生じる光を検出する検出ステップと、
該検出ステップにおいて検出された光の光量に基づいて、該被加工物に該保護膜が形成されていない非形成領域が存在するか否かを判定する判定ステップと、を含むことを特徴とする被加工物の検査方法。
【請求項2】
該判定ステップにおいて該非形成領域が存在すると判定された場合に、該被加工物に追加の保護膜を形成する追加保護膜形成ステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の被加工物の検査方法。
【請求項3】
被加工物の加工方法であって、
被加工物に保護膜を形成する保護膜形成ステップと、
該保護膜が形成され処理室に収容された該被加工物に該被加工物をエッチングするためのガスをプラズマ化して供給し、該処理室内で生じる光を検出する検出ステップと、
該検出ステップにおいて検出された光の光量に基づいて、該被加工物に該保護膜が形成されていない非形成領域が存在するか否かを判定する判定ステップと、
該判定ステップにおいて該非形成領域が存在すると判定された場合に、該被加工物に追加の保護膜を形成する追加保護膜形成ステップと、
該保護膜が形成された該被加工物を加工する加工ステップと、を含むことを特徴とする被加工物の加工方法。
【請求項4】
保護膜が形成された被加工物を検査するプラズマ処理装置であって、
処理室と、
該処理室に収容され該被加工物を保持する保持テーブルと、
該処理室に該被加工物をエッチングするためのガスを供給するガス供給部と、
該保持テーブルによって保持された該被加工物にプラズマ状態の該ガスが供給された際に該処理室内で生じる光を検出する検出部と、
該検出部によって検出された光の光量に基づいて、該被加工物に該保護膜が形成されていない非形成領域が存在するか否かを判定する判定部と、を備えることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
該判定部によって該非形成領域が存在すると判定された場合に警告を報知する報知部を更に備えることを特徴とする請求項4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
該判定部によって該非形成領域が存在すると判定された場合に、該ガス供給部から保護膜を形成するためのガスを供給して該被加工物に追加の保護膜を形成することを特徴とする請求項4又は5に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護膜が形成された被加工物を検査する被加工物の検査方法、被加工物を加工する被加工物の加工方法、及び、保護膜が形成された被加工物を検査するプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスチップの製造プロセスでは、格子状に配列された複数のストリート(分割予定ライン)によって区画された複数の領域にそれぞれデバイスが形成されたウェーハが用いられる。このウェーハをストリートに沿って分割することにより、デバイスを備えるチップ(デバイスチップ)が得られる。デバイスチップは、携帯電話、パーソナルコンピュータ等の様々な電子機器に組み込まれる。
【0003】
ウェーハの分割には、環状の切削ブレードで被加工物を切削する切削装置や、被加工物にレーザー加工を施すレーザー加工装置等が用いられる。また、近年では、ウェーハにプラズマエッチングを施すことによってウェーハを分割する、プラズマダイシングと称されるプロセスの開発も進められている。プラズマダイシングでは、まず、ストリートが露出するようにパターニングされたマスクがウェーハに形成される。その後、マスクを介してウェーハにプラズマ状態のエッチングガスが供給される。これにより、ウェーハに対してプラズマエッチングがストリートに沿って施され、ウェーハが複数のデバイスチップに分割される。
【0004】
プラズマエッチングのマスクは、例えばフォトレジストをストリートに沿ってパターニングすることによって形成される。また、マスク形成の工程の簡略化及びコスト低減を図るため、ウェーハの表面を被覆する保護膜をストリートに沿って部分的に除去することによりマスクを形成する手法も提案されている。例えば特許文献1には、ウェーハに水溶性保護膜を形成した後、レーザービームの照射によって水溶性保護膜をストリートに沿って部分的に除去することにより、被加工物のストリートと重なる領域を露出させるエッチングマスクを形成する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-207737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
被加工物の加工に用いられるマスクを保護膜で形成する場合には、保護膜が被加工物の表面の全体を覆うように形成された後、被加工物のうち加工が施される領域のみが露出するように保護膜が部分的に除去される。しかしながら、保護膜の厚さばらつき等が原因で、保護膜による被加工物の被覆が部分的に不十分になり、被加工物の一部が意図せず露出してしまうことがある。このような保護膜の不備が認識されないまま被加工物の加工が続行されると、被加工物に予期しない加工が施され、加工不良が発生するおそれがある。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、加工不良の発生を防止することが可能な被加工物の検査方法、被加工物の加工方法、及びプラズマ処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、保護膜が形成された被加工物を検査する被加工物の検査方法であって、処理室に収容された該被加工物に該被加工物をエッチングするためのガスをプラズマ化して供給し、該処理室内で生じる光を検出する検出ステップと、該検出ステップにおいて検出された光の光量に基づいて、該被加工物に該保護膜が形成されていない非形成領域が存在するか否かを判定する判定ステップと、を含む被加工物の検査方法が提供される。
【0009】
なお、好ましくは、該被加工物の検査方法は、該判定ステップにおいて該非形成領域が存在すると判定された場合に、該被加工物に追加の保護膜を形成する追加保護膜形成ステップをさらに含む。
【0010】
また、本発明の他の一態様によれば、被加工物の加工方法であって、被加工物に保護膜を形成する保護膜形成ステップと、該保護膜が形成され処理室に収容された該被加工物に該被加工物をエッチングするためのガスをプラズマ化して供給し、該処理室内で生じる光を検出する検出ステップと、該検出ステップにおいて検出された光の光量に基づいて、該被加工物に該保護膜が形成されていない非形成領域が存在するか否かを判定する判定ステップと、該判定ステップにおいて該非形成領域が存在すると判定された場合に、該被加工物に追加の保護膜を形成する追加保護膜形成ステップと、該保護膜が形成された該被加工物を加工する加工ステップと、を含む被加工物の加工方法が提供される。
【0011】
さらに、本発明の他の一態様によれば、保護膜が形成された被加工物を検査するプラズマ処理装置であって、処理室と、該処理室に収容され該被加工物を保持する保持テーブルと、該処理室に該被加工物をエッチングするためのガスを供給するガス供給部と、該保持テーブルによって保持された該被加工物にプラズマ状態の該ガスが供給された際に該処理室内で生じる光を検出する検出部と、該検出部によって検出された光の光量に基づいて、該被加工物に該保護膜が形成されていない非形成領域が存在するか否かを判定する判定部と、を備えるプラズマ処理装置が提供される。
【0012】
なお、好ましくは、該プラズマ処理装置は、該判定部によって該非形成領域が存在すると判定された場合に警告を報知する報知部を更に備える。また、好ましくは、該プラズマ処理装置は、該判定部によって該非形成領域が存在すると判定された場合に、該ガス供給部から保護膜を形成するためのガスを供給して該被加工物に追加の保護膜を形成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様においては、処理室に収容された被加工物にプラズマ状態のガスが供給される際に処理室内で生じる光を検出し、検出された光の光量に基づいて被加工物に保護膜が形成されていない非形成領域が存在するか否かを判定する。これにより、保護膜による被加工物の被覆が不十分なまま被加工物の加工が続行されることを回避でき、被加工物に意図しない加工が施されることによる加工不良の発生が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】被加工物を示す斜視図である。
図2】被加工物の加工方法を示すフローチャートである。
図3】プラズマ処理装置を示す一部断面正面図である。
図4図4(A)は保護膜形成ステップにおける被加工物を示す一部断面正面図であり、図4(B)は保護膜形成ステップ後の被加工物の一部を示す断面図である。
図5】保護膜形成装置を示す一部断面正面図である。
図6】検出ステップ及び判定ステップにおけるプラズマ処理装置を示す一部断面正面図である。
図7図7(A)は保護膜を加工する切削装置を示す一部断面正面図であり、図7(B)は保護膜を加工するレーザー加工装置を示す一部断面正面図である。
図8】マスク形成ステップ後の被加工物を示す断面図である。
図9】加工ステップにおける被加工物を示す一部断面正面図である。
図10】溝を有する被加工物を示す断面図である。
図11図11(A)は保護膜形成ステップおける被加工物の一部を示す断面図であり、図11(B)はマスク形成ステップおける被加工物の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本発明の一態様に係る実施形態を説明する。まず、本実施形態に係る被加工物の検査方法によって検査され、本実施形態に係る被加工物の加工方法によって加工され、又は本実施形態に係るプラズマ処理装置によって検査される被加工物の構成例について説明する。図1は、被加工物11を示す斜視図である。
【0016】
被加工物11は、一対の表面を備える板状の部材である。例えば被加工物11は、単結晶シリコン等の半導体材料でなる円盤状のウェーハであり、互いに概ね平行な第1面11a及び第2面11bを含む。被加工物11は、互いに交差するように格子状に配列、設定された複数のストリート(分割予定ライン)13によって、複数の矩形状の領域に区画されている。
【0017】
ストリート13によって区画された複数の領域の第1面11a側にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)、LED(Light Emitting Diode)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス等のデバイス15が形成されている。被加工物11をストリート13に沿って分割することにより、デバイス15をそれぞれ備える複数のチップ(デバイスチップ)が製造される。
【0018】
ただし、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば被加工物11は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、サファイア、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等でなるウェーハ(基板)であってもよい。また、デバイス15の種類、数、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はなく、被加工物11にはデバイス15が形成されていなくてもよい。
【0019】
次に、本実施形態に係る被加工物の検査方法及び加工方法(チップの製造方法)の詳細について説明する。図2は、被加工物の加工方法を示すフローチャートである。
【0020】
本実施形態に係る被加工物の加工方法では、被加工物11に保護膜を形成した後(保護膜形成ステップS1)、被加工物11にプラズマ状態のガスを供給した際に生じる光を検出し(検出ステップS2)、その光の光量に基づいて被加工物11に保護膜が形成されていない領域(非形成領域)が存在するか否かを判定する(判定ステップS3)。そして、判定結果に応じて被加工物11に追加の保護膜を形成した後(追加保護膜形成ステップS4)、保護膜を加工してマスクを形成し(マスク形成ステップS5)、マスクを用いて被加工物11を加工する(加工ステップS6)。
【0021】
上記の被加工物の加工方法に含まれる、検出ステップS2から判定ステップS3を経て追加保護膜形成ステップS4に至る一連のプロセスが、本実施形態に係る被加工物の検査方法に相当する。また、本実施形態では一例として、被加工物11にプラズマエッチングを施して被加工物11を分割する加工ステップS6(プラズマダイシング)について説明する。
【0022】
以下、保護膜形成ステップS1~加工ステップS6の各ステップの具体例について説明する。なお、以下では被加工物11の第1面11a側に保護膜が形成される場合について説明するが、保護膜は被加工物11の第2面11b側に形成されてもよい。
【0023】
まず、被加工物11に保護膜を形成する(保護膜形成ステップS1)。例えば保護膜形成ステップS1では、プラズマ状態のガスを供給してプラズマ処理を施すプラズマ処理装置によって、被加工物11に保護膜が形成される。
【0024】
図3は、プラズマ処理装置2を示す一部断面正面図である。プラズマ処理装置2は、被加工物11に保護膜を形成する保護膜形成装置、保護膜が形成された被加工物11を検査する検査装置、及び、被加工物11にエッチング等の加工を施す加工装置として用いることができる。
【0025】
プラズマ処理装置2は、被加工物11が収容されるチャンバー4を備える。チャンバー4は、金属等の導電性材料でなり、接地されている。チャンバー4の内部は、被加工物11に対するプラズマ処理が実施される処理室(処理空間)6に相当する。
【0026】
チャンバー4の側壁には、被加工物11の搬送のための開口4aが設けられている。開口4aの外側には、開口4aを開閉するゲート(開閉扉)8が設けられている。ゲート8にはエアシリンダ等の移動機構(不図示)が連結されており、移動機構はゲート8をチャンバー4の側壁に沿って昇降させる。ゲート8を下降させて開口4aを露出させることにより、開口4aを介して被加工物11を処理室6に搬入し、又は開口4aを介して被加工物11を処理室6から搬出することが可能となる。また、ゲート8を上昇させて開口4aを閉塞することにより、処理室6が密閉される。
【0027】
また、チャンバー4の底壁には、チャンバー4の内部と外部とを接続する開口4bが設けられている。開口4bは、配管10を介して真空ポンプ等の排気装置12に接続されている。処理室6が密閉された状態で排気装置12を作動させると、処理室6が排気、減圧される。
【0028】
処理室6には、被加工物11を保持する保持テーブル(チャックテーブル)14が収容されている。保持テーブル14の上面は、水平面と概ね平行な平坦面であり、被加工物11を保持する保持面14aを構成している。
【0029】
保持テーブル14としては、被加工物11を電気的な力で保持する静電チャックを用いることができる。例えば、保持テーブル14はセラミックス等の誘電体でなり、保持テーブル14の内部には円盤状の電極16が設けられている。電極16は、保持面14aと概ね平行に配置され、整合器18を介して高周波電源20に接続されている。
【0030】
なお、保持テーブル14の内部には、水等の冷却液が流れる冷却路(不図示)が設けられていてもよい。冷却液を冷却路に流して保持テーブル14の内部で循環させることにより、保持テーブル14が冷却される。
【0031】
保持テーブル14の上方には、処理室6にプラズマ状態のガスを供給するガス供給部(ガス噴出ヘッド)22が設けられている。ガス供給部22は、金属等の導電性材料でなり、チャンバー4の上壁に設けられた開口4cに挿入されている。なお、チャンバー4とガス供給部22との間には、絶縁性材料でなる環状の軸受け24が設けられている。軸受け24は、ガス供給部22を囲むように設けられ、チャンバー4とガス供給部22とを絶縁している。
【0032】
ガス供給部22は、整合器26を介して高周波電源28に接続されている。また、ガス供給部22には、ガス供給部22を鉛直方向に沿って昇降させる昇降機構(不図示)が連結されている。昇降機構でガス供給部22を昇降させることにより、保持テーブル14とガス供給部22との間隔が調節される。
【0033】
ガス供給部22の内部には、プラズマ処理用のガスが供給されるガス拡散空間22aが設けられている。また、ガス供給部22の下面側には、処理室6とガス拡散空間22aとを連結させる複数のガス供給路22bが設けられている。さらに、ガス供給部22の上面側には、一対のガス供給路22c,22dが設けられている。ガス供給路22cは配管30aを介してガス供給源32aに接続され、ガス供給路22dは配管30bを介してガス供給源32bに接続されている。
【0034】
ガス供給源32aは、配管30a及びガス供給路22cを介してガス拡散空間22aにプラズマ処理用のガスを供給する。同様に、ガス供給源32bは、配管30b及びガス供給路22dを介してガス拡散空間22aにプラズマ処理用のガスを供給する。そして、2種類のガスがガス拡散空間22aにおいて混合される。なお、図3には2つのガス供給源32a,32bからガス供給部22にガスが供給される形態を図示しているが、ガス供給部22に接続されるガス供給源の数は1又は3以上であってもよい。
【0035】
チャンバー4の内部には、処理室6内で生じる光を検出する検出部(光検出器)34が設けられている。検出部34は、例えばチャンバー4の内壁に固定され、保持テーブル14とガス供給部22との間を観察可能な位置に設置されている。
【0036】
検出部34は、フォトダイオード、フォトトランジスタ等の光センサを備え、被加工物11にプラズマ処理が施される際に処理室6内で発生するプラズマ発光を検出する。例えば検出部34として、CCD(Charged-Coupled Devices)センサ、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)センサ等のイメージセンサを用いることができる。
【0037】
ただし、検出部34の種類は、処理室6内における発光を検出可能であれば制限はない。例えば検出部34は、光の強度を波長ごとに測定する分光器であってもよい。また、検出部34として誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES:Inductively coupled plasma optical emission spectrometer)等を用いることもできる。なお、検出部34の用途の詳細については後述する。
【0038】
プラズマ処理装置2は、各種の情報を表示する表示部(表示ユニット、表示装置)36と、オペレータに情報を報知する報知部(報知ユニット、報知装置)38とを備える。例えば、プラズマ処理装置2を構成する各構成要素は筐体(不図示)によって覆われており、表示部36は筐体の側面に、報知部38は筐体の上部にそれぞれ設置される。
【0039】
表示部36は、各種のディスプレイによって構成できる。例えば表示部36として、タッチパネル式ディスプレイが用いられる。この場合、表示部36は、プラズマ処理装置2に情報を入力するための入力ユニット(入力部、入力装置)としても機能し、オペレータは表示部36のタッチ操作によってプラズマ処理装置2に加工条件等の情報を入力できる。すなわち、表示部36がユーザーインターフェースとして機能する。ただし、入力ユニットは、表示部36とは独立して設けられたキーボード、マウスなどの電子機器であってもよい。
【0040】
報知部38としては、例えば表示灯(警告灯)が用いられる。プラズマ処理装置2で異常が発生すると、表示灯が点灯又は点滅してオペレータに異常を報知する。ただし、報知部38の種類に制限はない。例えば報知部38は、音又は音声でオペレータに情報を報知するスピーカーであってもよい。この場合、プラズマ処理装置2で異常が発生すると、スピーカーが異常の発生を知らせる音又は音声を発する。
【0041】
また、プラズマ処理装置2は、プラズマ処理装置2を構成する構成要素を制御するコントローラ(制御ユニット、制御装置)40を備える。コントローラ40は、プラズマ処理装置2の各構成要素に制御信号を出力することにより、構成要素の動作を制御する。
【0042】
具体的には、コントローラ40によって、ゲート8の開閉、排気装置12による処理室6の排気、電極16への高周波電力の供給、ガス供給部22への高周波電力の供給、ガス供給源32a,32bからガス供給部22へのガスの供給、検出部34による光の検出等が制御される。また、コントローラ40によって、表示部36による情報の表示と報知部38による情報の報知とが制御される。
【0043】
例えばコントローラ40は、コンピュータによって構成され、プラズマ処理装置2の稼働に必要な演算を行う演算部と、プラズマ処理装置2の稼働に用いられる各種の情報(データ、プログラム等)を記憶する記憶部とを含む。演算部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んで構成される。記憶部は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリを含んで構成される。
【0044】
プラズマ処理装置2を用いて被加工物11にプラズマ処理を施す際には、まず、ゲート8が下降し、開口4aが露出する。そして、搬送機構(不図示)によって被加工物11が開口4aを介して処理室6に搬入され、保持テーブル14の保持面14a上に配置される。なお、被加工物11の搬入時には、ガス供給部22を上昇させ、保持テーブル14とガス供給部22との間隔を広げておくことが好ましい。
【0045】
次に、ゲート8が上昇して開口4aが閉塞され、処理室6が密閉される。そして、高周波電源20によって電極16に所定の電圧が印加される。これにより、保持テーブル14の保持面14a側で誘電分極が生じ、保持面14aと被加工物11との間に静電吸着力が作用する。その結果、被加工物11が保持面14aで吸着保持される。また、保持テーブル14とガス供給部22とがプラズマ処理に適した所定の間隔で配置されるように、ガス供給部22の高さが調節される。さらに、排気装置12が作動して処理室6が排気、減圧される。
【0046】
次に、ガス供給源32a及び/又はガス供給源32bからガス拡散空間22aに、プラズマ処理用のガスが供給される。また、高周波電源28によってガス供給部22に高周波電力が付与される。その結果、ガス拡散空間22a内のガスがプラズマ化し、プラズマ状態のガスが複数のガス供給路22bを介して処理室6に供給、分散される。そして、プラズマ状態のガスが保持テーブル14上の被加工物11に供給され、被加工物11に所定のプラズマ処理(成膜処理、エッチング処理等)が施される。
【0047】
図4(A)は、保護膜形成ステップS1における被加工物11を示す一部断面正面図である。保護膜形成ステップS1では、プラズマ処理装置2によって被加工物11の第1面11a側に保護膜17が形成され、被加工物11の第1面11aが保護膜17によって被覆される。
【0048】
具体的には、まず、被加工物11の保護膜17が形成される面側(第1面11a側)が上方に露出し、反対の面側(第2面11b側)が保持面14aに対面するように、被加工物11が保持テーブル14で保持される。また、ガス供給部22のガス拡散空間22a(図3参照)に保護膜を形成するためのガス(保護膜形成用ガス)42が供給されるとともに、ガス供給部22に高周波電力が付与される。これにより、ガス拡散空間22a内のガス42がプラズマ化し、イオンやラジカルを含むプラズマ状態のガス42が生成される。そして、プラズマ状態のガス42が被加工物11の第1面11a側に供給されることにより、被加工物11の第1面11aを被覆する保護膜17が形成される。
【0049】
例えば、ガス供給源32aから供給されたCを含むガスと、ガス供給源32bから供給されたArガスとがガス拡散空間22aにおいて混合され、ガス42が生成される。そして、プラズマ状態のガス42が被加工物11に供給されると、ガス42に含まれるCFラジカルが被加工物11の第1面11a側に堆積される。これにより、被加工物11の第1面11a側にフッ化炭素を含む絶縁性の膜(フルオロカーボン膜)が形成される。このフッ化炭素を含む膜が、保護膜17に相当する。
【0050】
保護膜17の厚さは、後述の加工ステップS6におけるプラズマエッチングの条件等を考慮して適宜設定される。ただし、保護膜17が薄いほど成膜時間が短縮されるため、保護膜17はプラズマエッチングのマスクとして機能する範囲内で薄く形成することが好ましい。例えば、保護膜17の厚さは20μm未満、好ましくは10μm未満、より好ましくは5μm未満である。また、保護膜17の材質も、プラズマエッチングが適切に実施される範囲内で適宜選択できる。例えば、ガス42としてCHを含むガスを用いることもできる。
【0051】
図4(B)は、保護膜形成ステップS1後の被加工物11の一部を示す断面図である。プラズマ処理装置2で保護膜17を形成すると、何らかの原因で被加工物11の第1面11aの被覆が部分的に不十分になることがある。例えば、ガス42の流動の偏りやプラズマ密度のばらつき等に起因して、保護膜17の厚さにばらつきが生じ、被加工物11の第1面11aの一部が保護膜17によって被覆されないことがある。この場合、被加工物11には保護膜17が形成されていない非形成領域19が部分的に残存し、非形成領域19において被加工物11の第1面11aが露出する。
【0052】
なお、上記ではプラズマ処理装置2によって保護膜17を形成する場合について説明したが、保護膜17の形成方法に制限はない。例えば、被加工物11の表面に保護膜材を塗布した後、この保護膜材を乾燥させることによって保護膜17を形成してもよい。
【0053】
図5は、保護膜形成装置(保護膜形成ユニット)50を示す一部断面正面図である。保護膜形成装置50は、被加工物11に保護膜材を供給することにより、被加工物11の表面を被覆する保護膜17を形成する。
【0054】
保護膜形成装置50は、保護膜形成装置50の各構成要素を収容するカバー52を備える。カバー52は中空の円柱状に形成されており、カバー52の内側は保護膜17の形成が行われる処理室(処理空間)54に相当する。
【0055】
処理室54には、被加工物11を保持して回転するスピンナテーブル56が収容されている。スピンナテーブル56の上面は、水平面と概ね平行な平坦面であり、被加工物11を保持する保持面56aを構成している。保持面56aは、スピンナテーブル56の内部に形成された流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。保持面56a上に被加工物11を配置した状態で、保持面56aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、被加工物11がスピンナテーブル56によって吸引保持される。
【0056】
スピンナテーブル56には、円柱状の回転軸58が連結されている。回転軸58は、カバー52の底壁に設けられた開口52aに挿入されている。回転軸58の上端側は処理室54においてスピンナテーブル56の下面側の中央部に固定されており、回転軸58の下端側はカバー52の外部に配置されている。
【0057】
回転軸58の下端側は、ロータリージョイント60を介してモータ62に連結されている。また、モータ62にはエンコーダ64が接続されている。モータ62を駆動させると、モータ62の動力がロータリージョイント60及び回転軸58を介してスピンナテーブル56に伝達され、スピンナテーブル56が鉛直方向と概ね平行な回転軸の周りを回転する。
【0058】
また、カバー52には、保護膜17の原料である保護膜材66を供給する保護膜材供給ユニット68が収容されている。例えば保護膜材66は、溶媒に溶質を溶解させることによって生成される液状樹脂である。具体的には、溶媒として水が用いられ、溶質として水溶性の樹脂が用いられる。
【0059】
水溶性の樹脂の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリ-N-ビニルアセトアミド、ポリスチレンスルホン酸、特殊ナイロン、フェノール樹脂、メチロールメラミン樹脂、ポリグリセリン等が挙げられる。
【0060】
保護膜材供給ユニット68は、L字型のアーム70を備える。アーム70の先端部(一端部)には、スピンナテーブル56の保持面56aに向かって保護膜材66を供給する供給ノズル72が装着されている。また、アーム70は、カバー52の底壁に設けられた開口52bに挿入されており、アーム70の基端部(他端部)はカバー52の外部に配置されている。
【0061】
アーム70の基端部には、モータ74が連結されている。また、モータ74にはエンコーダ76が接続されている。モータ74を駆動させると、アーム70が鉛直方向と概ね平行な回転軸の周りを回転し、供給ノズル72がアーム70の回転軸を中心に旋回する。これにより、供給ノズル72を、保持面56aに重なる位置(供給位置)と、保持面56aに重ならない位置(退避位置)とに位置付けることができる。
【0062】
アーム70には、アーム70に保護膜材66を供給する保護膜材供給源78が接続されている。保護膜材供給源78からアーム70に供給された保護膜材66は、アーム70の内部に設けられている流路(不図示)を介して供給ノズル72に供給され、供給ノズル72からスピンナテーブル56で保持されている被加工物11に向かって滴下される。
【0063】
保護膜形成ステップS1では、上記の保護膜形成装置50を用いて被加工物11に保護膜17を形成してもよい。具体的には、まず、被加工物11が、第1面11a側が上方に露出して第2面11b側が保持面56aに対向するように、スピンナテーブル56上に配置される。この状態で、保持面56aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、被加工物11がスピンナテーブル56によって吸引保持される。
【0064】
次に、供給ノズル72を旋回させ、被加工物11の中心部の直上に位置付ける。そして、スピンナテーブル56をモータ62によって回転させつつ、供給ノズル72から保護膜材66を滴下して被加工物11の第1面11a側に供給する。その結果、被加工物11の中心部に供給された保護膜材66が遠心力によって被加工物11の外周縁側に向かって放射状に広がり、被加工物11の第1面11aの全体を被覆する。なお、被加工物11を被覆する保護膜材66の厚さは、スピンナテーブル56の回転数や保護膜材66の供給量を調節することによって制御できる。
【0065】
その後、供給ノズル72から被加工物11への保護膜材66の供給を停止し、スピンナテーブル56の回転を一定時間維持する。これにより、保護膜材66が乾燥し、被加工物11の第1面11aを被覆する保護膜17が形成される。なお、保護膜材66の乾燥後、必要に応じて保護膜材66を硬化させるためのベーキング処理等を実施してもよい。
【0066】
保護膜17の形成中は、保護膜材66の飛散がカバー52によって遮断される。また、カバー52の底壁には開口52cが設けられており、開口52cには配管80が接続されている。被加工物11から飛散して保護膜17の形成に用いられなかった保護膜材66は、カバー52の底部に一時的に貯留された後、開口52c及び配管80を介してカバー52の外部に排出される。
【0067】
保護膜形成装置50で保護膜17を形成する場合にも、被加工物11の第1面11aの被覆が不十分になる場合がある。例えば、被加工物11の第1面11a側に供給された保護膜材66の流動の偏り等に起因して、保護膜17の厚さばらつきが生じ、被加工物11の第1面11aの一部が被覆されないことがある。この場合、被加工物11には非形成領域19(図4(B)参照)が部分的に残存する。
【0068】
上記のように、保護膜形成ステップS1では、プラズマ処理装置2や保護膜形成装置50によって被加工物11に保護膜17が形成され、被加工物11の第1面11aが保護膜17によって被覆される。ただし、保護膜17の材質や形成方法は適宜変更することができる。
【0069】
なお、被加工物11に非形成領域19(図4(B)参照)が残存している場合、そのまま被加工物11の加工を続行すると、非形成領域19で露出している被加工物11の第1面11a側に意図せず加工が施されてしまい、加工不良が発生することがある。そこで、本実施形態においては、被加工物11の加工前に、被加工物11にプラズマ状態のガスを供給した際に生じる光を検出し(検出ステップS2)、その光の光量に基づいて被加工物11に非形成領域19が存在するか否かを判定する(判定ステップS3)。
【0070】
図6は、検出ステップS2及び判定ステップS3におけるプラズマ処理装置2を示す一部断面正面図である。なお、図6には、コントローラ40の機能的な構成を示すブロックも図示している。
【0071】
まず、プラズマ処理装置2によって検出ステップS2が実施される。検出ステップS2では、保護膜17が形成され処理室6(図3参照)に収容された被加工物11に被加工物11をエッチングするためのガス(エッチングガス)44をプラズマ化して供給し、処理室6内で生じる光を検出する。
【0072】
具体的には、まず、第1面11a側(保護膜17が形成されている面側)が上方に露出して第2面11b側が保持面14aに対面するように、被加工物11が保持テーブル14の保持面14aで保持される。また、ガス供給部22のガス拡散空間22a(図3参照)にエッチング用のガス44が供給される。例えば、被加工物11が単結晶シリコンウェーハである場合には、ガス供給源32aからフッ素系ガス(CF、SF等)が供給され、ガス供給源32bから不活性ガス(He、Ar等)が供給される。そして、これらのガスがガス拡散空間22aにおいて混合される。
【0073】
そして、ガス供給部22に高周波電力が付与される。これにより、ガス拡散空間22aに供給されたガス44がプラズマ化し、プラズマ状態のガス44が被加工物11の第1面11a側に供給される。
【0074】
ここで、被加工物11の第1面11a側の全体が保護膜17によって被覆されている場合には、ガス44が保護膜17に沿って遮断され、被加工物11に到達しない。そのため、ガス44は被加工物11に作用せず、被加工物11の第1面11a側にはプラズマエッチングが施されない。
【0075】
一方、被加工物11に非形成領域19が存在すると、ガス44が保護膜17の隙間に入り込み、非形成領域19で露出している被加工物11の第1面11a側に作用する。その結果、非形成領域19に短時間のプラズマエッチングが施される。その際、被加工物11とガス44との反応によって生成物21が生成される。例えば、単結晶シリコンウェーハにフッ素系ガスが作用すると、生成物21としてSi-F化合物の粒子が生成される。
【0076】
生成物21は、非形成領域19から飛散してプラズマ状態のガス44にさらされる。このとき、処理室6において生成物21とガス44との反応による発光(プラズマ発光)が生じる。そして、検出部34は、生成物21とガス44との反応によって生じる光を検出する。
【0077】
このように、被加工物11に非形成領域19が存在しない場合には検出部34によって光が検出されず、被加工物11に非形成領域19が存在する場合には検出部34によって光が検出される。そして、検出部34は、検出された光の光量(強度、輝度)をコントローラ40に出力する。
【0078】
なお、被加工物11に非形成領域19が存在する場合には、プラズマ状態のガス44が僅かに被加工物11と反応すれば発光が生じる。そのため、非形成領域19の有無を判定するためのプラズマエッチングは短時間でよい。例えば、プラズマエッチングの時間(プラズマ状態のガス44の供給時間)は、10秒以下、好ましくは5秒以下、より好ましくは3秒以下に設定できる。これにより、非形成領域19における被加工物11の過度な加工が防止される。
【0079】
次に、判定ステップS3が実施される。判定ステップS3では、検出ステップS2において検出された光の光量に基づいて、被加工物11に保護膜17が形成されていない非形成領域19が存在するか否かを判定する。
【0080】
非形成領域19が存在するか否かの判定は、例えばコントローラ40によって実行される。具体的には、コントローラ40は、被加工物11に非形成領域19が存在するか否かを判定する判定部40aと、判定部40aによる判定に用いられる情報(データ、プログラム等)を記憶する記憶部40bとを含む。
【0081】
判定部40aには、検出ステップS2において検出部34が検出した光の光量が入力される。また、記憶部40bには、非形成領域19の有無を区別するための光量の基準値(閾値)が予め記憶されている。検出部34から判定部40aに光量が入力されると、記憶部40bから基準値が読み出されて判定部40aに入力される。
【0082】
そして、判定部40aは、検出部34によって測定された光の光量と基準値とを比較することにより、被加工物11に非形成領域19が存在するか否かを判定する。具体的には、測定された光量が基準値以下(又は基準値未満)である場合には、判定部40aは被加工物11に非形成領域19が存在しないと判定する。一方、測定された光量が基準値を超える(又は基準値以上である)場合には、判定部40aは被加工物11に非形成領域19が存在すると判定する。
【0083】
また、コントローラ40は、制御信号を生成してプラズマ処理装置2の各構成要素に出力する制御部40cを含む。判定部40aによる判定の結果は、制御部40cに入力される。そして、制御部40cは、判定部40aの判定結果に応じた制御信号を生成して各構成要素へ出力する。
【0084】
例えば、判定部40aによって非形成領域19が存在しないと判定された場合には、制御部40cは表示部36に制御信号を出力し、保護膜17が正常である旨を知らせる情報(メッセージ、符号、図形等)を表示させる。これにより、オペレータは被加工物11の第1面11aが保護膜17によって適切に被覆されていることを確認できる。すなわち、表示部36がオペレータに判定結果を知らせる報知部として機能する。
【0085】
一方、判定部40aによって非形成領域19が存在する判定された場合には、制御部40cは表示部36に制御信号を出力し、保護膜17が異常である旨を知らせる情報を表示させる。また、制御部40cは、報知部38に制御信号を出力し、保護膜17の異常を報知させる。例えば、報知部38が表示灯である場合には、制御部40cは表示灯を点灯又は点滅させる。また、報知部38がスピーカーである場合には、制御部40cはスピーカーに保護膜17が異常である旨を知らせる音又は音声を発信させる。
【0086】
上記のように、被加工物11の加工前に非形成領域19の有無を判定することにより、保護膜17による被加工物11の被覆が不十分なまま被加工物11の加工が続行させることを回避できる。これにより、被加工物11に意図しない加工が施されることによる加工不良の発生が防止される。
【0087】
なお、保護膜形成ステップS1、検出ステップS2及び判定ステップS3を全てプラズマ処理装置2によって実施すると、保護膜17の形成と被加工物11の検査とを連続的に実施でき、処理効率が向上するため好ましい。ただし、保護膜形成ステップS1と検出ステップS2とは別の装置によって実施されてもよいし(図5及び図6参照)、判定ステップS3はプラズマ処理装置2とは別途準備された外部のサーバ等によって実行されてもよい。
【0088】
判定ステップS3において被加工物11に非形成領域19が存在すると判定された場合には、被加工物11に追加の保護膜を形成してもよい(追加保護膜形成ステップS4)。追加保護膜形成ステップS4では、前述の保護膜形成ステップS1と同様の手順で、既に被加工物11に形成されている保護膜17の上に、さらに保護膜が形成される。これにより、非形成領域19で露出している被加工物11の第1面11aが追加の保護膜によって被覆され、非形成領域19が消失する。
【0089】
また、追加保護膜形成ステップS4において追加の保護膜を形成した場合には、さらに前述の検出ステップS2及び判定ステップS3を実施してもよい(図2参照)。これにより、追加の保護膜の形成によって被加工物11の非形成領域19が消失したか否かを確認することができる。
【0090】
そして、被加工物11に非形成領域19が存在しないと判定された後、被加工物11が加工される。被加工物11を加工する際には、必要に応じて、保護膜17を加工することによってマスクを形成する(マスク形成ステップS5)。例えばマスク形成ステップS5では、保護膜17を切削装置又はレーザー加工装置で加工することにより、マスクを形成する。
【0091】
図7(A)は、保護膜17を加工する切削装置100を示す一部断面正面図である。なお、図7(A)において、X軸方向(加工送り方向、第1水平方向)とY軸方向(割り出し送り方向、第2水平方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z軸方向(高さ方向、上下方向、鉛直方向)は、X軸方向及びY軸方向と垂直な方向である。
【0092】
切削装置100は、被加工物11を保持する保持テーブル(チャックテーブル)102を備える。保持テーブル102の上面は、水平面(X平面)と概ね平行な平坦面であり、被加工物11を保持する円形の保持面102aを構成している。保持面102aは、保持テーブル102の内部に形成された流路(不図示)、バルブ(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0093】
保持テーブル102には、ボールねじ式の移動機構(不図示)と、モータ等の回転駆動源(不図示)とが連結されている。移動機構は、保持テーブル102をX軸方向に沿って移動させる。回転駆動源は、保持テーブル102をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させる。
【0094】
また、切削装置100は、被加工物11及び保護膜17を切削可能な切削ユニット104を備える。切削ユニット104は、保持テーブル102の上方に配置されており、Y軸方向に沿って配置された円柱状のスピンドル106を備える。スピンドル106の先端部(一端部)には、環状の切削ブレード108が装着される。また、スピンドル106の基端部(他端部)には、モータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。切削ブレード108は、回転駆動源からスピンドル106を介して伝達される動力によって、Y軸方向と概ね平行な回転軸の周りを回転する。
【0095】
切削ブレード108としては、例えばハブタイプの切削ブレード(ハブブレード)が用いられる。ハブブレードは、金属等でなる環状のハブ基台と、ハブ基台の外周縁に沿って形成された環状の切刃とを備える。ハブブレードの切刃は、ダイヤモンド等でなる砥粒と、砥粒を固定するニッケルめっき層等の結合材とを含む電鋳砥石によって構成される。ただし、切削ブレード108としてワッシャータイプの切削ブレード(ワッシャーブレード)を用いることもできる。ワッシャーブレードは、ダイヤモンド等でなる砥粒と、金属、セラミックス、樹脂等でなり砥粒を固定する結合材とを含む環状の切刃のみによって構成される。
【0096】
切削ユニット104には、切削ユニット104をY軸方向及びZ軸方向に沿って移動させるボールねじ式の移動機構(不図示)が連結されている。移動機構によって、切削ブレード108の割り出し送り方向における位置や、切削ブレード108の被加工物11への切り込み深さ等が調節される。
【0097】
切削装置100で保護膜17を加工する際には、まず、被加工物11が保持テーブル102で保持される。具体的には、被加工物11は、第1面11a側(保護膜17が形成されている面側)が上方を向き第2面11b側が保持面102aと対面するように、保持テーブル102上に配置される。この状態で、保持面102aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、被加工物11が保持テーブル102によって吸引保持される。
【0098】
次に、保持テーブル102を回転させ、所定のストリート13の長さ方向をX軸方向に合わせる。また、切削ブレード108が所定のストリート13の延長線と重なるように、切削ユニット104のY軸方向における位置を調整する。さらに、切削ブレード108の下端が保護膜17の下面よりも下方に配置されるように、切削ユニット104の高さ位置(Z軸方向における位置)を調整する。
【0099】
そして、切削ブレード108を回転させつつ、保持テーブル102をX軸方向に沿って移動させる。これにより、保持テーブル102と切削ブレード108とがX軸方向に沿って相対的に移動し、切削ブレード108がストリート13に沿って保護膜17に切り込む。その結果、被加工物11の第1面11aに達し保護膜17を分断する溝23(切削溝)がストリート13に沿って形成される。その後、同様の手順を繰り返すことにより、全てのストリート13に沿って複数の溝23を形成する。
【0100】
図7(B)は、保護膜17を加工するレーザー加工装置110を示す一部断面正面図である。なお、図7(B)において、X軸方向(加工送り方向、第1水平方向)とY軸方向(割り出し送り方向、第2水平方向)とは、互いに垂直な方向である。また、Z軸方向(高さ方向、上下方向、鉛直方向)は、X軸方向及びY軸方向と垂直な方向である。
【0101】
レーザー加工装置110は、被加工物11を保持する保持テーブル(チャックテーブル)112を備える。保持テーブル112の上面は、水平面(X平面)と概ね平行な平坦面であり、被加工物11を保持する円形の保持面112aを構成している。なお、保持テーブル112の構成及び機能は、切削装置100の保持テーブル102(図7(A)参照)と同様である。
【0102】
保持テーブル112には、ボールねじ式の移動機構(不図示)と、モータ等の回転駆動源(不図示)とが連結されている。移動機構は、保持テーブル112をX軸方向及びY軸方向に沿って移動させる。回転駆動源は、保持テーブル112をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させる。
【0103】
また、レーザー加工装置110は、レーザービームを照射するレーザー照射ユニット114を備える。レーザー照射ユニット114は、YAGレーザー、YVOレーザー、YLFレーザー等のレーザー発振器(不図示)と、保持テーブル102の上方に配置されたレーザー加工ヘッド116とを備える。レーザー加工ヘッド116には、レーザー発振器から出射したパルス発振のレーザービーム118を被加工物11へと導く光学系(不図示)が収容されている。光学系は、集光レンズ、ミラー等の光学素子を含んで構成される。レーザー照射ユニット114から被加工物11にレーザービーム118が照射されることにより、被加工物11にレーザー加工が施される。
【0104】
レーザー加工装置110で保護膜17を加工する際には、まず、被加工物11が保持テーブル112で保持される。具体的には、被加工物11は、第1面11a側(保護膜17が形成されている面側)が上方を向き第2面11b側が保持面112aと対面するように、保持テーブル112上に配置される。この状態で、保持面112aに吸引源の吸引力(負圧)を作用させると、被加工物11が保持テーブル112によって吸引保持される。
【0105】
次に、保持テーブル112を回転させ、所定のストリート13の長さ方向をX軸方向に合わせる。また、レーザービーム118が照射される領域が所定のストリート13の延長線と重なるように、保持テーブル112のY軸方向における位置を調節する。さらに、レーザービーム118の集光点が保護膜17の表面又は内部と同じ高さ位置(Z軸方向における位置)に位置付けられるように、レーザー加工ヘッド116の位置や光学系に含まれる光学素子の配置を調節する。
【0106】
そして、レーザー加工ヘッド116からレーザービーム118を照射しつつ、保持テーブル112をX軸方向に沿って移動させる。これにより、保持テーブル112とレーザービーム118とがX軸方向に沿って相対的に移動し、レーザービーム118がストリート13に沿って保護膜17に照射される。
【0107】
例えば、レーザービーム118の照射条件は、保護膜17にアブレーション加工が施されるように設定される。具体的には、レーザービーム118の波長は、少なくともレーザービーム118の一部が保護膜17に吸収されるように設定される。すなわち、レーザービーム118は、保護膜17に対して吸収性を有するレーザービームである。また、レーザービーム118の他の照射条件も、保護膜17にアブレーション加工が適切に施されるように適宜設定される。
【0108】
被加工物11にレーザービーム118がストリート13に沿って照射されると、保護膜17のうちレーザービーム118が照射された領域がアブレーションによって除去される。その結果、被加工物11の第1面11aに達し保護膜17を分断する溝23(レーザー加工溝)がストリート13に沿って形成される。その後、同様の手順を繰り返すことにより、全てのストリート13に沿って溝23を形成する。
【0109】
図8は、マスク形成ステップS5後の被加工物11を示す断面図である。切削装置100(図7(A)参照)やレーザー加工装置110(図7(B)参照)で保護膜17を加工することにより、保護膜17のストリート13と重なる領域が除去され、パターニングされる。その結果、保護膜17を分断する溝23がストリート13に沿って格子状に形成され、被加工物11のうちストリート13と重なる領域を露出させるマスク25が形成される。
【0110】
次に、保護膜17が形成された被加工物11を加工する(加工ステップS6)。本実施形態では、マスク25が形成された被加工物11に対してプラズマ処理装置2(図3参照)によるプラズマエッチングを施すことにより、被加工物11をストリート13に沿って分割する(プラズマダイシング)。
【0111】
図9は、加工ステップS6における被加工物11を示す一部断面正面図である。例えば加工ステップS6では、被加工物11のマスク25が形成されている面側(第1面11a側)にプラズマ状態のエッチングガスを供給することにより、被加工物11のうちマスク25で覆われていない領域(ストリート13と重なる領域)にプラズマエッチングを施す。
【0112】
具体的には、まず、第1面11a側(マスク25が形成されている面側)が上方に露出して第2面11b側が保持面14aに対面するように、被加工物11が保持テーブル14の保持面14aで保持される。また、ガス供給部22のガス拡散空間22a(図3参照)に、被加工物11をエッチングするためのガス(エッチングガス)46が供給される。例えば、被加工物11が単結晶シリコンウェーハである場合には、ガス供給源32aからフッ素系ガス(CF、SF等)が供給され、ガス供給源32bから不活性ガス(He、Ar等)が供給される。そして、これらのガスがガス拡散空間22aにおいて混合される。
【0113】
また、ガス供給部22に高周波電力が付与される。これにより、ガス拡散空間22aに供給されたガス46がプラズマ化し、プラズマ状態のガス46が被加工物11の第1面11a側に供給される。その結果、ガス46が溝23に入り込み、溝23の内側で露出している被加工物11の第1面11a側に作用する。これにより、被加工物11のストリート13と重なる領域にプラズマエッチングが施され、被加工物11の第1面11a側に溝27がストリート13に沿って形成される。
【0114】
そして、被加工物11へのガス46の供給を継続すると、プラズマエッチングが進行して溝27が被加工物11の第2面11bに到達し、被加工物11がストリート13に沿って分断される。これにより、デバイス15(図1参照)をそれぞれ備える複数のチップ(デバイスチップ)29が製造される。
【0115】
なお、加工ステップS6では、Boschプロセスを用いて溝27を形成してもよい。この場合には、保護膜形成ステップ、異方性エッチングステップ、等方性エッチングステップを順に実施して被加工物11をエッチングする工程を繰り返すことにより、溝27を被加工物11の第2面11bに到達させる。
【0116】
保護膜形成ステップでは、被加工物11の第1面11a側(マスク25側)にプラズマ化したガスを供給することにより、溝23を保護膜で被覆する。具体的には、ガス供給部22のガス拡散空間22a(図3参照)に保護膜形成用のガスが供給されるとともに、ガス供給部22に高周波電力が付与される。これにより、プラズマ状態のガスが被加工物11の第1面11a側に供給される。
【0117】
被加工物11にガスを供給すると、ガスに含まれるイオンやラジカルが保護膜17上に堆積されるとともに、溝23に入り込んで溝23の内壁にも堆積される。その結果、保護膜17の表面及び溝23の内壁に保護膜が形成され、溝23が保護膜によって被覆される。
【0118】
例えば、ガス拡散空間22a(図3参照)において、ガス供給源32aから供給されたCを含むガスと、ガス供給源32bから供給されたArガスとが混合され、プラズマ化される。そして、ガスに含まれるCFラジカルが被加工物11の第1面11a側に堆積し、保護膜17の表面及び溝27の内壁にフッ化炭素を含む絶縁性の保護膜が形成される。例えば、ガスの供給時間は6秒以上8秒以下に設定され、厚さが10nm以下の保護膜が形成される。
【0119】
なお、上記の保護膜形成ステップの後に、前述の検出ステップS2及び判定ステップS3を実施してもよい。これにより、保護膜が適切に形成されているか否かを確認しつつBoschプロセスを進行させることができる。
【0120】
次に、異方性エッチングステップを実施する。異方性エッチングステップでは、被加工物11の第1面11a側(マスク25側)にプラズマ化したガスを供給することにより、保護膜を異方的にプラズマエッチングして、溝23の底を被覆している保護膜を除去する。具体的には、ガス供給部22のガス拡散空間22a(図3参照)にエッチング用のガスが供給される。例えば、ガス供給源32aから供給されたフッ素系ガス(CF、SF等)と、ガス供給源32bから供給された不活性ガス(He、Ar等)とが、ガス拡散空間22aで混合される。
【0121】
そして、電極16及びガス供給部22(図3参照)にそれぞれ高周波電力が付与される。これにより、ガス拡散空間22a内のガスがプラズマ化されるとともに保持テーブル14に向かって加速され、保護膜に異方性のプラズマエッチングが施される。異方性のプラズマエッチングを一定時間(例えば3秒程度)継続すると、保護膜のうち溝23の底を覆う部分が除去され、溝23の底が露出する。
【0122】
次に、等方性エッチングステップを実施する。等方性エッチングステップでは、被加工物11の第1面11a側(マスク25側)にプラズマ化したガスを供給することにより、溝23の底を等方的にプラズマエッチングする。具体的には、ガス供給部22のガス拡散空間22a(図3参照)にエッチング用のガスが供給される。例えば、ガス供給源32aから供給されたフッ素系ガス(CF、SF等)と、ガス供給源32bから供給された不活性ガス(He、Ar等)とが、ガス拡散空間22aで混合される。
【0123】
そして、ガス供給部22(図3参照)に高周波電力が付与される。これにより、ガス拡散空間22aに供給されたガスがプラズマ化され、プラズマ状態のガスが被加工物11の第1面11a側に一定時間(例えば5秒以上7秒以下)供給される。なお、等方性エッチングステップでは、電極16(図3参照)に高周波電力が付与されない。そのため、被加工物11には等方性のプラズマエッチングが施される。その結果、溝23の底及びその近傍が除去され、被加工物11の第1面11a側に溝27が形成される。
【0124】
その後、溝27が被加工物11の第2面11bに到達するまで、上記の保護膜形成ステップ、異方性エッチングステップ、等方性エッチングステップが繰り返される。そして、溝27が被加工物11の第2面11bに到達すると、被加工物11がストリート13に沿って分割され、加工ステップS6が完了する。
【0125】
加工ステップS6が完了すると、保護膜17(マスク25)が除去される。例えば、保護膜17に対してアッシング処理を施すことにより、複数のチップ29からそれぞれ保護膜17が除去される。なお、保護膜17が水溶性の樹脂でなる場合には、保護膜17に純水等を供給することにより、保護膜17を容易に除去できる。保護膜17が除去されると、被加工物11の第1面11aが露出する。
【0126】
以上の通り、本実施形態においては、プラズマ処理装置2の処理室6に収容された被加工物11にプラズマ状態のガスが供給される際に処理室6内で生じる光を検出し、検出された光の光量に基づいて被加工物11に非形成領域19が存在するか否かを判定する(図6等参照)。これにより、保護膜17による被加工物11の被覆が不十分なまま被加工物11の加工が続行されることを回避でき、被加工物11に意図しない加工が施されることによる加工不良の発生が防止される。
【0127】
なお、上記実施形態では、被加工物11に形成された保護膜17を切削装置100(図7(A)参照)、レーザー加工装置110(図7(B)参照)等の加工装置で加工することによってマスク25を形成する例について説明した。ただし、マスク25の形成方法に制限はない。以下、マスク25の形成方法の変形例について説明する。
【0128】
図10は、溝11cを有する被加工物11を示す断面図である。まず、保護膜形成ステップS1の前に、被加工物11の第1面11a側に溝11cを形成する。溝11cは、複数のストリート13に沿って格子状に形成され、溝11cの深さは被加工物11の厚さ未満である。例えば溝11cは、切削装置100(図7(A)参照)又はレーザー加工装置110(図7(B)参照)を用いて形成される。ただし、溝11cの形成方法に制限はない。
【0129】
溝11cの寸法は、後の加工ステップS6において被加工物11に適切な加工が施されるように適宜設定される。例えば溝11cの幅は、100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下に設定できる。また、溝11cは、溝11cの幅Aと溝11cの深さBとのアスペクト比B/Aが1以上、好ましくは2以上となるように形成される。
【0130】
次に、保護膜形成ステップS1を実施し、被加工物11に保護膜17を形成する。例えば保護膜形成ステップS1では、プラズマ処理装置2(図3参照)によって被加工物11の第1面11a側(溝11c側)に保護膜17を形成する。なお、プラズマ処理装置2を用いた保護膜17の形成手順の詳細については前述の通りである。
【0131】
図11(A)は、保護膜形成ステップS1おける被加工物11の一部を示す断面図である。被加工物11の第1面11a側(溝11c側)に、保護膜17を形成するためのガス(保護膜形成用ガス)120をプラズマ化して供給すると、ガス120に含まれるイオンやラジカルが、被加工物11の第1面11aと溝11cの側面及び底面とに堆積される。その結果、被加工物11の第1面11aと、溝11cの側面及び底面とを被覆する保護膜17が形成される。
【0132】
なお、溝11cの内部には、被加工物11の第1面11aと比較してガス120が供給されにくい。また、溝11cの底面に近い領域ほどガス120が供給されにくい。そのため、溝11cの内部に形成される保護膜17は、被加工物11の第1面11a側に形成される保護膜17よりも薄くなる。また、溝11cの底面に形成される保護膜17は、溝11cの側面に形成される保護膜17よりも薄くなる。特に、溝11cの幅Aと溝11cの深さBとのアスペクト比B/Aが1以上(好ましくは2以上)である場合には、溝11cの底面にイオンやラジカルが堆積しにくく、溝11cの底面に薄い保護膜17が形成されやすい。
【0133】
また、低温下でガス120を被加工物11に供給すると、ガス120に含まれるイオンやラジカルが主に被加工物11の第1面11aに堆積され、溝11cに入り込みにくくなることが確認されている。そのため、保護膜17のうち溝11cの内部を被覆する部分を被加工物11の第1面11aを被覆する部分よりも薄く形成する場合には、保護膜17を低温の環境下で成膜することが好ましい。例えば、保護膜17の成膜が行われる間、処理室6(図3参照)の温度が0℃以下、好ましくは-10℃以下、より好ましくは-20℃以下に維持される。又は、保護膜17の成膜が行われる間、被加工物11の温度が0℃以下、好ましくは-10℃以下、より好ましくは-20℃以下に維持される。
【0134】
次に、検出ステップS2及び判定ステップS3(図6参照)を実施する。これにより、被加工物11の第1面11a側及び溝11cの内部に保護膜17が形成されていない領域(非形成領域)が存在するか否かが検査される。
【0135】
具体的には、保護膜17が適切に形成されており、被加工物11の第1面11aの全体と、溝11cの側面及び底面の全体とが保護膜17によって被覆されている場合には、判定部40a(図6参照)によって非形成領域が存在しないと判定される。一方、保護膜17の形成が不十分であり、被加工物11の第1面11a、溝11cの側面又は溝11cの底面の一部が露出している場合には、判定部40a(図6参照)によって非形成領域が存在すると判定される。そして、非形成領域が存在すると判定された場合には、必要に応じて被加工物11の第1面11a側及び溝11cの内部に追加の保護膜が形成される(追加保護膜形成ステップS4)。
【0136】
次に、保護膜17を加工することによってマスクを形成する(マスク形成ステップS5)。マスク形成ステップS5では、プラズマ処理装置2(図3参照)を用いて、被加工物11の第1面11a側にプラズマエッチングを施す。具体的には、保護膜17をエッチングするためのガス(エッチングガス)122をプラズマ化して、被加工物11の第1面11a側に供給する。これにより、保護膜17にプラズマエッチングが施され、保護膜17が薄化される。
【0137】
図11(B)は、マスク形成ステップS5おける被加工物11の一部を示す断面図である。前述の通り、保護膜17は溝11cの底面を被覆する部分が最も薄くなるように形成されている。そして、マスク形成ステップS5では、保護膜17のうち溝11cの底面に堆積している部分が除去されるまでエッチングが継続される。その結果、被加工物11の第1面11a及び溝11cの側面が保護膜17で被覆された状態のまま、溝11cの底面が露出する。
【0138】
保護膜17のうち溝11cの底面を被覆している領域が除去されると、保護膜17がストリート13及び溝11cに沿って分断され、パターニングされる。その結果、被加工物11のうちストリート13を重なる領域を露出させるマスク25が形成される。
【0139】
その後、加工ステップS6を実施する。例えば、被加工物11にマスク25を介してプラズマ状態のガスを供給することにより、被加工物11にプラズマエッチングが施され、被加工物11がストリート13に沿って分割される。なお、被加工物11の分割には、前述のBoschプロセスを用いてもよい。
【0140】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0141】
11 被加工物
11a 第1面
11b 第2面
11c 溝
13 ストリート(分割予定ライン)
15 デバイス
17 保護膜
19 非形成領域
21 生成物
23 溝
25 マスク
27 溝
29 チップ(デバイスチップ)
2 プラズマ処理装置
4 チャンバー
4a,4b,4c 開口
6 処理室(処理空間)
8 ゲート(開閉扉)
10 配管
12 排気装置
14 保持テーブル(チャックテーブル)
14a 保持面
16 電極
18 整合器
20 高周波電源
22 ガス供給部(ガス噴出ヘッド)
22a ガス拡散空間
22b,22c,22d ガス供給路
24 軸受け
26 整合器
28 高周波電源
30a,30b 配管
32a,32b ガス供給源
34 検出部(光検出器)
36 表示部(表示ユニット、表示装置)
38 報知部(報知ユニット、報知装置)
40 コントローラ(制御ユニット、制御装置)
40a 判定部
40b 記憶部
40c 制御部
42 ガス(保護膜形成用ガス)
44 ガス(エッチングガス)
46 ガス(エッチングガス)
50 保護膜形成装置(保護膜形成ユニット)
52 カバー
52a,52b,52c 開口
54 処理室(処理空間)
56 スピンナテーブル
56a 保持面
58 回転軸
60 ロータリージョイント
62 モータ
64 エンコーダ
66 保護膜材
68 保護膜材供給ユニット
70 アーム
72 供給ノズル
74 モータ
76 エンコーダ
78 保護膜材供給源
80 配管
100 切削装置
102 保持テーブル(チャックテーブル)
102a 保持面
104 切削ユニット
106 スピンドル
108 切削ブレード
110 レーザー加工装置
112 保持テーブル(チャックテーブル)
112a 保持面
114 レーザー照射ユニット
116 レーザー加工ヘッド
118 レーザービーム
120 ガス(保護膜形成用ガス)
122 ガス(エッチングガス)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11