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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106147
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】光学部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/08 20060101AFI20240731BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
G02B5/08 C
H01L21/306 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010286
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】樫本 一樹
(72)【発明者】
【氏名】坂田 広基
(72)【発明者】
【氏名】画星 直希
【テーマコード(参考)】
2H042
5F043
【Fターム(参考)】
2H042DA02
2H042DA04
2H042DA08
2H042DA12
2H042DC00
2H042DE00
2H042DE01
2H042DE04
5F043AA02
5F043BB02
5F043FF04
5F043GG06
(57)【要約】
【課題】 不良品の発生の抑制や、光学部材の実装の利便性向上など、生産効率の向上に寄与する改善を図る。
【解決手段】 第1主面及び第1主面の反対側の第2主面を有するシリコン基板を準備する工程と、第1主面上にマスクパターンを形成する工程と、シリコン基板を、マスクパターンをマスクとして用いて第1主面側からウェットエッチングし、第1主面から傾斜し、かつ、互いに対向する第1傾斜面及び第2傾斜面を形成する工程と、第1傾斜面から第2傾斜面に亘って金属膜を形成する工程と、レーザ光を用いて、第1傾斜面から第2傾斜面へと向かう第1方向に、金属膜の一部を線状に取り除く工程と、金属膜が線状に取り除かれた領域に沿って前記シリコン基板を第1方向にダイシングし、シリコン基板を分割する工程を含む光学部材の製造方法。
【選択図】 図3H
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び前記第1主面の反対側の第2主面を有するシリコン基板を準備する工程と、
前記第1主面上にマスクパターンを形成する工程と、
前記シリコン基板を、前記マスクパターンをマスクとして用いて前記第1主面側からウェットエッチングし、前記第1主面から傾斜し、かつ、互いに対向する第1傾斜面及び第2傾斜面を形成する工程と、
前記第1傾斜面から前記第2傾斜面に亘って金属膜を形成する工程と、
レーザ光を用いて、前記第1傾斜面から前記第2傾斜面へと向かう第1方向に、前記金属膜の一部を線状に取り除く工程と、
前記金属膜が線状に取り除かれた領域に沿って前記シリコン基板を前記第1方向にダイシングし、前記シリコン基板を分割する工程を含む光学部材の製造方法。
【請求項2】
前記シリコン基板を分割する工程は、
前記金属膜が線状に取り除かれた領域に沿って、前記第1主面から前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面の一部あるいは全部を含み、かつ、前記第2主面まで達しないように、前記シリコン基板を部分的に切る第1ダイシングを行う工程と、
前記第1ダイシングが行われたダイシングラインに沿って、前記第2主面まで達するように前記シリコン基板を切断する第2ダイシングを行う工程と、を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記シリコン基板は、前記第1主面から前記第1傾斜面の前記第1主面から最も遠い点までの第1主面に垂直な方向の幅は、当該点から前記第2主面までの前記第1主面に垂直な方向の幅よりも大きい、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
レーザ光を用いて、対向する前記第1傾斜面と前記第2傾斜面を接続する接続領域に形成された前記金属膜を取り除く工程をさらに有し、
前記シリコン基板を分割する工程において、さらに、前記金属膜が取り除かれた前記接続領域をダイシングし、前記シリコン基板を分割する請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1傾斜面及び第2傾斜面を形成する工程において、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面の間に前記接続領域を形成し、
前記接続領域の前記第1方向の幅は20μm以下であり、前記ダイシングは、前記接続領域の前記第1方向の幅以上の幅のブレードを用いて行われる、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記接続領域に形成された前記金属膜を取り除く工程において、前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面上に設けられた前記金属膜の一部であって、前記接続領域の近傍に設けられた前記金属膜を取り除く、請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記シリコン基板を分割する工程における前記第1方向のダイシングは、
前記金属膜が線状に取り除かれた領域に沿って、前記第1主面から前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面の一部あるいは全部を含み、かつ、前記第2主面まで達しないように、前記シリコン基板を部分的に切断する第1ダイシングと、
前記第1ダイシングが行われたダイシングラインに沿って、前記第2主面まで達する第2ダイシングと、に分けて行われ、
前記シリコン基板を分割する工程における前記接続領域のダイシングは、一度のダイシングで前記第2主面まで達する、請求項4に記載の製造方法。
【請求項8】
前記金属膜が前記第1方向に線状に取り除かれた除去部分の前記第1方向に垂直な第2方向の幅は、80μm以上160μm以下であり、
前記金属膜が線状に取り除かれた領域に沿って前記シリコン基板を前記第1方向にダイシングするブレードの幅は、前記除去部分の前記第2方向の幅よりも小さい、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第1主面は{110}面からなり、
前記第1傾斜面は、{100}面を有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記第2主面は{110}面からなり、
前記第2傾斜面は、{100}面を有する、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記第2主面上に反射膜を形成する工程をさらに含む、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記反射膜は、誘電体多層膜である、請求項11に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリコン基板から反射部材などに利用される光学部材を製造する方法が開示されている。また、光学部材と半導体レーザ素子を備える半導体レーザ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-32625
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリコン基板から光学部材を製造するにあたり、不良品の発生の抑制や、光学部材の実装の利便性向上など、生産効率の向上に寄与する改善を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に開示される光学部材の製造方法は、第1主面及び前記第1主面の反対側の第2主面を有するシリコン基板を準備する工程と、前記第1主面上にマスクパターンを形成する工程と、前記シリコン基板を、前記マスクパターンをマスクとして用いて前記第1主面側からウェットエッチングし、前記第1主面から傾斜し、かつ、互いに対向する第1傾斜面及び第2傾斜面を形成する工程と、前記第1傾斜面から前記第2傾斜面に亘って金属膜を形成する工程と、レーザ光を用いて、前記第1傾斜面から前記第2傾斜面へと向かう第1方向に、前記金属膜の一部を線状に取り除く工程と、前記金属膜が線状に取り除かれた領域に沿って前記シリコン基板を前記第1方向にダイシングし、前記シリコン基板を分割する工程を含む。
【0006】
実施形態によって開示される1または複数の発明の少なくとも一つにより、光学部材あるいは光学部材を備える発光装置の生産効率の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る光学部材を第1側面の側からみた斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る光学部材を第2側面の側からみた斜視図である。
図3A図3Aは、実施形態に係る光学部材の製造方法における一工程を説明するための模式図である。
図3B図3Bは、実施形態に係る光学部材の製造方法における他の一工程を説明するための模式図である。
図3C図3Cは、実施形態に係る光学部材の製造方法における他の一工程を説明するための模式図である。
図3D図3Dは、実施形態に係る光学部材の製造方法における他の一工程を説明するための模式図である。
図3E図3Eは、図3Dで示した工程における模式的な斜視図である。
図3F図3Fは、実施形態に係る光学部材の製造方法における他の一工程を説明するための模式図である。
図3G図3Gは、実施形態に係る光学部材の製造方法における他の一工程を説明するための模式図である。
図3H図3Hは、図3Gで示した工程における模式的な斜視図である。
図3I図3Iは、実施形態に係る光学部材の製造方法における他の一工程を説明するための模式図である。
図3J図3Jは、実施形態に係る光学部材の製造方法における他の一工程を説明するための模式図である。
図4図4は、実施形態に係る発光装置の斜視図である。
図5図5は、実施形態に係る発光装置の上面図である。
図6図6は、実施形態に係る発光装置の内部に配置される構成要素を説明するための上面図である。
図7図7は、図6のVII-VII断面線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書または特許請求の範囲において、三角形や四角形などの多角形に関しては、多角形の隅に角丸め、面取り、角取り、丸取り等の加工が施された形状も含めて、多角形と呼ぶものとする。また、隅(辺の端)に限らず、辺の中間部分に加工が施された形状も同様に、多角形と呼ぶものとする。つまり、多角形をベースに残しつつ、部分的な加工が施された形状は、本明細書及び特許請求の範囲で記載される“多角形”の解釈に含まれるものとする。
【0009】
また、多角形に限らず、台形や円形や凹凸など、特定の形状を表す言葉についても同様である。また、その形状を形成する各辺を扱う場合も同様である。つまり、ある辺において、隅や中間部分に加工が施されていたとしても、“辺”の解釈には加工された部分も含まれる。なお、部分的な加工のない“多角形”や“辺”を、加工された形状と区別する場合は“厳密な”を付して、例えば、“厳密な四角形”などと記載するものとする。
【0010】
また、本明細書または特許請求の範囲において、上下、左右、表裏、前後(前方/後方)、手前と奥などの記載は、相対的な位置、向き、方向などの関係を述べるに過ぎず、使用時における関係と一致していなくてもよい。
【0011】
また、図面においてX方向、Y方向、及び、Z方向などの方向を、矢印を用いて示すことがある。この矢印の方向は、同じ実施形態に係る複数の図面間で整合が取られている。また、図面においてX、Y、及び、Zが記されている矢印の方向を正方向、これと反対の方向を負方向とする。例えば、矢印の先にXが記されている方向は、X方向であり、かつ、正方向である。なお、X方向であり、かつ、正方向である方向を、「Xの正方向」と呼ぶものとし、これと反対の方向を「Xの負方向」と呼ぶものとする。Y方向、及び、Z方向についても同様である。
【0012】
また、本明細書において、例えば構成要素などを説明するときに「部材」や「部」と記載することがある。「部材」は、物理的に単体で扱う対象を指すものとする。物理的に単体で扱う対象とは、製造の工程で一つの部品として扱われる対象ということもできる。一方で、「部」は、物理的に単体で扱われなくてもよい対象を指すものとする。例えば、1つの部材の一部を部分的に捉えるときや、複数の部材をまとめて一つの対象として捉えるときなどに「部」が用いられる。
【0013】
なお、上述の「部材」と「部」の書き分けは、均等論の解釈において権利範囲を意識的に限定するという意思を示すものではない。つまり、特許請求の範囲において「部材」と記載された構成要素があったとしても、そのことのみを以って、この構成要素を物理的に単体で扱うことが本発明の適用に必要不可欠であると出願人が認識しているわけではない。
【0014】
また、本明細書または特許請求の範囲において、ある構成要素が複数あり、それぞれを区別して表現する場合に、その構成要素の頭に“第1”、“第2”と付記して区別することがある。また、本明細書と特許請求の範囲とで区別する対象が異なる場合があり得る。そのため、特許請求の範囲において本明細書と同一の付記がされた構成要素が記載されていても、この構成要素によって特定される対象が、本明細書と特許請求の範囲との間で一致しないことがあり得る。
【0015】
例えば、本明細書において“第1”、“第2”、“第3”と付記されて区別される構成要素があり、本明細書において“第1”及び“第3”が付記された構成要素を特許請求の範囲に記載する場合に、見易さの観点から特許請求の範囲においては“第1”、“第2”と付記して構成要素を区別することがある。この場合、特許請求の範囲において“第1”、“第2”と付記された構成要素はそれぞれ、本明細書において“第1”“第3”と付記された構成要素を指すことになる。なお、このルールの適用対象は構成要素に限らず、その他の対象に対しても、合理的かつ柔軟に適用される。
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。またさらに、図面を参照しながら、本発明を実施するための具体的な形態を説明する。なお、本発明を実施するための形態は、この具体的な形態に限定されない。つまり、図示される実施形態は、本発明が実現される唯一の形態ではない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、理解の便宜を図るために誇張していることがある。
【0017】
<実施形態>
実施形態に係る光学部材1を説明する。図1乃至図3Jは、光学部材1及び光学部材1の製造方法を説明するための図である。図1は、光学部材1を第1側面10Bの側からみた斜視図である。図2は、光学部材1を第2側面10Cの側からみた斜視図である。図3A乃至図3Jは、光学部材1の製造方法を説明するための模式図である。なお、図3Iでは、第1ダイシングと第2ダイシングとの境界を破線で示している。
【0018】
光学部材1は、複数の構成要素を備えている。光学部材1が備える複数の構成要素は、シリコン部材10、金属膜20、及び、反射膜30を含む。なお、光学部材1は、この他にも構成要素を備えていてよい。
【0019】
まず、各構成要素について説明する。
【0020】
(シリコン部材10)
シリコン部材10の主材料は、シリコンである。シリコン部材10は、シリコンで構成される。
【0021】
ここで、主材料とは、対象となる形成物において、質量または体積が最も多くの割合を占める材料をいうものとする。なお、一つの材料から対象となる形成物が形成される場合には、その材料が主材料である。つまり、ある材料が主材料であるとは、その材料の占める割合が100%となり得ることを含む。
【0022】
シリコン部材10は、下面10A、第1側面10B、及び、第2側面10Cを有する。第2側面10Cは、第1側面10Bの反対側に位置する側面である。第1側面10Bは、下面10Aに対して45度の角度で傾斜している。第2側面10Cは、下面10Aに対して垂直である。
【0023】
下面10Aは、第1辺と、第1辺の反対側の辺である第2辺とを有する。また、下面10Aは、第3辺と、第3辺の反対側の辺である第4辺とを有する。下面10Aの第3辺及び第4辺はいずれも、下面10Aの第1辺及び第2辺と接続する。下面10Aの外形は矩形である。なお、下面10Aの外形は矩形でなくてもよい。
【0024】
第1側面10Bは、上辺及び下辺を有する。また、第1側面10Bは、2つの側辺を有する。第1側面10Bの外形は矩形である。第1側面10Bの2つの側辺はいずれも、第1側面10Bの上辺及び下辺と接続する。なお、第1側面10Bの外形は矩形でなくてもよい。
【0025】
第2側面10Cは、上辺及び下辺を有する。また、第2側面10Cは、2つの側辺を有する。第2側面10Cの外形は矩形である。第2側面10Cの2つの側辺はいずれも、第2側面10Cの上辺及び下辺と接続する。なお、第2側面10Cの外形は矩形でなくてもよい。
【0026】
シリコン部材10は、第1側面10Bの下辺と、下面10Aの第1辺とを共有する第1接続面10Dを有する。第1接続面10Dの外形は矩形である。なお、第1接続面10Dの外形は矩形でなくてもよい。
【0027】
シリコン部材10は、第2側面10Cの下辺と、下面10Aの第2辺とを共有する第2接続面10Eを有する。第2接続面10Eの外形は矩形である。なお、第2接続面10Eの外形は矩形でなくてもよい。
【0028】
シリコン部材10は、第1側面10Bの上辺と、第2側面10Cの上辺とを共有する第3接続面10Fを有する。第3接続面10Fの外形は矩形である。なお、第3接続面10Fの外形は矩形でなくてもよい。
【0029】
また、シリコン部材10は、下面10Aの第3辺と、第1側面10Bの2つの側辺のうちの一方と、第2側面10Cの2つの側辺のうちの一方と、を共有する第3側面10Mを有する。また、シリコン部材10は、下面10Aの第4辺と、第1側面10Bの他方の側辺と、第2側面10Cの他方の側辺と、を共有する第4側面10Nを有する。
【0030】
第3側面10M及び第4側面10Nの外形は矩形ではない。第3側面10M及び第4側面10Nの外形は六角形である。この六角形は、三角形の三つの角を切り落としたような形状である。第3側面10M及び第4側面10Nの外形は、厳密な三角形ではない。
【0031】
シリコン部材10の第1側面10Bは、{110}面からなる。ここで、{110}面とは、シリコンの常温及び常圧で安定な結晶構造であるダイヤモンド構造における結晶格子面のうちのひとつ(110) 面とその等価結晶面との全ての面を指す。等価結晶面とは、ミラー指数によって定義される等価結晶面又はファセットのファミリを意味する。
【0032】
シリコン部材10の第2接続面10Eは、{110}面からなる。第1側面10Bと第2接続面10Eは平行である。なお、第1側面10B及び第2接続面10Eは、{110}面に対して±2度以内のオフ角を許容する。このオフ角は、好ましくは±1度以内、より好ましくは±0.2度以内である。
【0033】
シリコン部材10の下面10Aは、{100}面からなる。シリコン部材10の第2側面10Cは、{100}面からなる。下面10Aと第2接続面10Eの成す角度は135度である。第2側面10Cと第2接続面10Eの成す角度は135度である。なお、下面10A及び第2側面10Cは、{100}面に対して±2度以内のオフ角を許容する。このオフ角は、好ましくは±1度以内、より好ましくは±0.2度以内である。
【0034】
シリコン部材10の第1側面10Bの面積は、下面10Aの面積よりも大きい。シリコン部材10の第1側面10Bの面積は、第2側面10Cの面積よりも大きい。シリコン部材10の第1側面10Bの面積は、第2接続面10Eの面積よりも大きい。シリコン部材10の下面10Aと、第2側面10Cは、同じ形状及び面積である。なお、ここでの同じ形状とは、縦横の寸法比率の差が175%以内であることも含み、同じ面積とは、大きい方の面積が小さい方の面積の175%以内に収まっていることも含む。
【0035】
図示されるシリコン部材10は、X方向の幅が650μm以上4800μm以下である。また、Y方向の幅が800μm以上1100μm以下である。また、Z方向の幅が800μm以上1100μm以下である。また、下面10Aの第1辺及び第2辺の長さは650μm以上4800μm以下である。また、下面10Aの第3辺及び第4辺の長さは500μm以上800μm以下である。また、第1側面10Bの上端から下端までの距離は1000μm以上1300μm以下である。第1側面10Bから第2接続面10Eまでの距離は5000μm以上700μm以下である。
【0036】
(金属膜20)
金属膜20は、主材料に、金属材料を用いることができる。例えば、Cu、Ag、Al、Ni、Ru、Rh、Au、Ti、Pt、Pd、Mo、Cr、W等の単体金属又はこれらの金属を含む合金を、金属膜20の主材料に用いることができる。一例として、金属膜20は、Ti/Ru/Auで構成することができる。
【0037】
金属膜20は、シリコン部材10の下面10Aに設けられる。また、金属膜20は、シリコン部材10の第2側面10Cに設けられる。また、金属膜20は、シリコン部材10の第2接続面10Eに設けられる。
【0038】
下面10Aに設けられる金属膜20の外縁は、下面10Aの第1辺から離隔する。つまり、下面10Aに設けられる金属膜20の外縁は、下面10Aの第1辺よりも内側にある。下面10Aに設けられる金属膜20の外縁は、下面10Aの第2辺と重なる。つまり、下面10Aに設けられる金属膜20の外縁は、下面10Aの第2辺上にある。
【0039】
下面10Aに設けられる金属膜20の外縁は、下面10Aの第3辺及び第4辺から離隔する。つまり、下面10Aに設けられる金属膜20の外縁は、下面10Aの第3辺よりも内側にあり、かつ、下面10Aの第4辺よりも内側にある。
【0040】
第2側面10Cに設けられる金属膜20の外縁は、第2側面10Cの上辺から離隔する。つまり、第2側面10Cに設けられる金属膜20の外縁は、第2側面10Cの上辺よりも内側にある。第2側面10Cに設けられる金属膜20の外縁は、第2側面10Cの下辺と重なる。つまり、第2側面10Cに設けられる金属膜20の外縁は、第2側面10Cの下辺上にある。
【0041】
第2側面10Cに設けられる金属膜20の外縁は、第2側面10Cの2つの側辺から離隔する。つまり、第2側面10Cに設けられる金属膜20の外縁は、第2側面10Cの2つの側辺のうちの一方の側辺よりも内側にあり、かつ、他方の側辺よりも内側にある。
【0042】
第2接続面10Eに設けられる金属膜20の外縁は、下面10Aの第2辺と共有する第2接続面10Eの辺と重なる。つまり、第2接続面10Eに設けられる金属膜20の外縁は、第2接続面10Eのこの辺上にある。第2接続面10Eに設けられる金属膜20の外縁は、第2側面10Cの下辺と共有する第2接続面10Eの辺と重なる。つまり、第2接続面10Eに設けられる金属膜20の外縁は、第2接続面10Eのこの辺上にある。
【0043】
第2接続面10Eに設けられる金属膜20の外縁は、第3側面10Mと共有する第2接続面10Eの側辺、及び、第4側面10Nと共有する第2接続面10Eの側辺から離隔する。つまり、第2接続面10Eに設けられる金属膜20の外縁は、第2接続面10Eのこれら2つの側辺うちの一方の側辺よりも内側にあり、かつ、他方の側辺よりも内側にある。
【0044】
(反射膜30)
反射膜30は、主材料に誘電体多層膜を用いて形成することができる。反射膜30は、例えば、Ta/SiO、TiO/SiO、Nb/SiO等の誘電体多層膜を用いて形成することができる。また、反射膜30は、主材料に金属を用いて形成してもよい。反射膜30は、例えば、Ag、Al等の金属を用いて形成することができる。
【0045】
反射膜30は、シリコン部材10の第1側面10Bに設けられる。反射膜30は、実質的に、第1側面10Bの全面に設けられる。
【0046】
第1側面10Bの下辺から第1側面10Bに設けられる反射膜30の外縁までの距離は、下面10Aの第1辺から下面10Aに設けられる金属膜20の外縁までの距離よりも小さい。
【0047】
第1側面10Bの上辺から第1側面10Bに設けられる反射膜30の外縁までの距離は、第2側面10Cの上辺から第2側面10Cに設けられる金属膜20の外縁までの距離よりも小さい。
【0048】
第1側面10Bの2つの側辺のうちの一方の側辺から第1側面10Bに設けられる反射膜30の外縁までの距離は、下面10Aの第3辺から下面10Aに設けられる金属膜20の外縁までの距離よりも小さく、かつ、下面10Aの第4辺から下面10Aに設けられる金属膜20の外縁までの距離よりも小さい。また、第1側面10Bの2つの側辺のうちの他方の側辺から第1側面10Bに設けられる反射膜30の外縁までの距離も、下面10Aの第3辺から下面10Aに設けられる金属膜20の外縁までの距離よりも小さく、かつ、下面10Aの第4辺から下面10Aに設けられる金属膜20の外縁までの距離よりも小さい。
【0049】
(光学部材1の製造方法)
次に、光学部材1の製造方法について説明する。光学部材1は、シリコン基板1Aを準備する工程と、シリコン基板1Aにマスクパターン1Bを形成する工程と、シリコン基板1Aに傾斜面1A3を形成する工程と、シリコン基板1Aに金属膜1Cを形成する工程と、シリコン基板1Aに反射膜1Dを形成する工程と、シリコン基板1Aに形成された金属膜1Cの一部を取り除く工程と、シリコン基板1Aを分割する工程と、を含む製造方法によって製造することができる。
【0050】
シリコン基板1Aを準備する工程において、第1主面1A1及び第2主面1A2を有するシリコン基板1Aを準備する(図3A参照)。第2主面1A2は、第1主面1A1の反対側の面である。第1主面1A1は、シリコンの{110}面からなる。第2主面1A2は、シリコンの{110}面からなる。シリコン基板1Aの主材料は、シリコンである。シリコン基板1Aは、シリコンで構成される。シリコン基板1Aの第1主面1A1から第2主面1A2までの厚みは、例えば、500μm以上700μm以下である。
【0051】
シリコン基板1Aにマスクパターン1Bを形成する工程において、シリコン基板1Aの第1主面1A1上にマスクパターン1Bを形成する(図3B参照)。マスクパターン1Bは、例えば、<100> 方向に伸びる開口を有する。<100>方向に伸びる開口は、第1主面1A1に平行な方向に伸びる開口とすることができる。
【0052】
ここで、<100>方向とは、シリコンの常温及び常圧で安定な結晶構造であるダイヤモンド構造における結晶格子面のうちのひとつである(100)面に対する垂直方向と、その等価結晶面に対する垂直方向の全ての方向とを指す。
【0053】
マスクパターン1Bの開口は、<100>方向に伸びるストライプ状であってもよい。また、<100>方向に対して垂直に交わる方向(つまり、<110>方向)に伸びる開口と連結した格子状であってもよい。例えば、<110>方向に伸びる開口と連結した格子状でもよい。また、<100>方向に伸びる開口は、その外縁(両端)が<100>方向と略平行であることが好ましく、<110>方向に伸びる開口は、その外縁(両端)が<110>方向と略平行であることが好ましい。
【0054】
マスクパターン1Bは、レジスト膜又は絶縁膜(Si、Hf、Zr、Al、Ti、La等の酸化膜又は窒化膜あるいはそれらの複合膜等)等の公知の材料を用いて、公知の方法により形成することができる。マスクパターン1Bの材料は、後述するウェットエッチングのエッチャントの種類によって適宜選択することが好ましい。
【0055】
シリコン基板1Aに傾斜面1A3を形成する工程において、マスクパターン1Bをマスクとして用いて、シリコン基板1Aを第1主面1A1側からエッチングし、傾斜面1A3を形成する(図3C参照)。例えば、シリコン基板1Aを第1主面1A1側からウェットエッチングすることで、傾斜面1A3を形成することができる。この工程により、第1主面1A1から傾斜する傾斜面1A3が形成される。
【0056】
この工程により、シリコン基板1Aに複数の傾斜面1A3が形成される。複数の傾斜面1A3には、互いに対向する第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32が含まれる。シリコン基板1Aにおいて、互いに対向する第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32が複数形成され得る。例えば、1のシリコン基板1Aに、互いに対向する第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32が10以上形成され得る。
【0057】
傾斜面1A3が形成されたシリコン基板1Aにおいて、第1主面1A1から第1傾斜面1A31の第1主面1A1から最も遠い点までの第1主面1A1に垂直な方向の幅は、この点から第2主面1A2までの第1主面1A1に垂直な方向の幅よりも大きい。
【0058】
第1主面1A1に垂直な方向からみた平面視で(以下、上面視と言う。)、第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32はそれぞれ、第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32が対向する方向(以下、第1方向と言う。)とは垂直な方向(以下、第2方向と言う。)に延びる平面で構成される。
【0059】
この工程において、対向する第1傾斜面1A31と第2傾斜面1A32の間に、第1方向に幅を有する接続領域1A4を形成する。例えば、形成される接続領域1A4の幅は、20μm以下である。なお、接続領域1A4は、対向する第1傾斜面1A31と第2傾斜面1A32を接続する領域である。第1傾斜面1A31の下端と第2傾斜面1A32の下端とが接続している場合、この接続する部分が接続領域1A4となる。つまり、接続領域1A4は、必ずしも第1方向に幅を有していなくてもよく、第1傾斜面1A31と第2傾斜面1A32とが接続する境界線を接続領域1A4と捉えることもできる。
【0060】
傾斜面1A3は、シリコンの{100}面を有する。第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32はいずれも、シリコンの{100}面を有する。傾斜面1A3は、<100>方向に伸び、シリコン基板1Aの第2主面1A2( つまり、{110}面)に対して45度の傾斜角度を有する。なお、{100}面に対して±2度程度のオフ角が傾斜面1A3に許容される。
【0061】
シリコン基板1Aに金属膜1Cを形成する工程において、傾斜面1A3上に金属膜1Cを形成する(図3D及び図3E参照)。金属膜1Cは、対向する第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32上に形成される。この工程において、金属膜1Cは、第1傾斜面1A31から第2傾斜面1A32に亘って形成される。接続領域1A4の上にも金属膜1Cが形成されることになる。例えば、シリコン基板1Aの第1主面1A1側において、全ての傾斜面1A3を包含する領域の全てに金属膜1Cを形成する。この工程で形成される金属膜1Cの最大厚みは、50nm以上3000nm以下となり得る。
【0062】
金属膜1Cには、例えば、Cu、Ag、Al、Ni、Rh、Au、Ti、Pt、Pd、Mo、Cr、W等の単体金属又はこれらの金属を含む合金のうち、1または複数を選択して用いることができる。例えば、金属膜1Cを、Ti/Ru/Auの金属層で形成することができる。
【0063】
シリコン基板1Aに反射膜1Dを形成する工程において、第2主面1A2上に反射膜1Dを形成する(図3F参照)。反射膜1Dは、例えば、0.1以上10μm以下の厚みで形成することができる。反射膜1Dは、発光素子12からの光を50%以上反射し得る材料によって形成することができる。
【0064】
反射膜1Dは、2種以上の誘電体を複数積層させた誘電体多層膜で構成することができる。誘電体多層膜としては、DBR(distributed Bragg reflector: 分布ブラッグ反射) 膜が好ましい。DBR膜を構成する誘電体としては、例えば、Si、Ti、Zr、Nb、Ta、Alからなる群より選択された少なくとも一種の元素を含む酸化物又は窒化物が挙げられる。なお、反射膜1Dは、Al、Au、Ag、Cr等の金属で構成することもできる。
【0065】
シリコン基板1Aに形成された金属膜1Cの一部を取り除く工程において、傾斜面1A3が傾斜する方向に沿って、金属膜1Cを取り除く(図3G及び図3H参照))。金属膜1Cは、この傾斜方向に沿って、線上に取り除かれる。傾斜面1A3上に、金属膜1Cが取り除かれた線状領域が複数設けられる。この複数の線状領域は、上面視で傾斜方向に垂直な方向に等間隔に設けられる。なお、複数の線状領域は必ずしも等間隔に設けられなくてもよい。隣り合う線状領域の間隔は、1000μm以上1300μm以下とすることができる。
【0066】
この工程で、第1傾斜面1A31から第2傾斜面1A32へと向かう方向(傾斜方向)に、金属膜1Cの一部を線状に取り除く。図示される例では、この方向は、第1方向に平行である。金属膜1Cの一部が取り除かれることで、対向する第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32に亘って繋がった線状領域が設けられる。
【0067】
金属膜1Cが線状に取り除かれた除去部分(線状領域)の幅(上面視で傾斜方向に垂直な方向の幅)は、80μm以上160μm以下とすることができる。
【0068】
また、この工程は、上述した傾斜方向に沿って金属膜1Cを線状に取り除く工程だけでなく、対向する第1傾斜面1A31と第2傾斜面1A32を接続する接続領域1A4に形成された金属膜1Cを取り除く工程を含んでよい。上面視で、傾斜方向に垂直な方向に、接続領域1A4上に形成された金属膜1Cを取り除く。傾斜方向に垂直な方向に、線状に金属膜1Cが取り除かれた領域(線状領域)が設けられる。
【0069】
接続領域1A4に形成された金属膜1Cを取り除く工程では、接続領域1A4だけでなく、第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32上に設けられた金属膜1Cの一部であって、接続領域1A4の近傍に設けられた金属膜1Cも取り除く。接続領域1A4においてシリコン基板1Aが露出した状態になる。
【0070】
シリコン基板1Aに形成された金属膜1Cは、例えば、レーザを用いて取り除くことができる。例えば、層流水ジェットの界面での全反射現象を利用して、レーザービームを材料に照射するレーザマイクロジェット技術を採用し、金属膜1Cを取り除くことができる。
【0071】
シリコン基板1Aを分割する工程では、線状領域(金属膜1Cが線状に取り除かれた領域)に沿ってシリコン基板1Aをダイシングする(図3I及び図3J参照)。ダイシングによって、シリコン基板1Aを分割し、複数の光学部材1を得る。
【0072】
この工程では、傾斜方向に設けられた線状領域に沿って、シリコン基板1Aを傾斜方向にダイシングする。また、この工程では、傾斜方向に垂直な方向に沿って、接続領域1A4を通るようにシリコン基板1Aをダイシングする。なお、傾斜方向に垂直な方向に設けられた線状領域を通るように、シリコン基板1Aをダイシングしてもよい。つまり、金属膜1Cが取り除かれた接続領域1A4をダイシングして、シリコン基板1Aを分割してもよい。
【0073】
この工程において、傾斜方向に設けられた線状領域に沿ってシリコン基板1Aを傾斜方向にダイシングするブレードの幅は、金属膜1Cの除去部分(線状領域)の幅(上面視で傾斜方向に垂直な方向の幅)よりも小さいことが好ましい。このようなブレードを用いることで、ブレードが金属膜1Cを通らないようにダイシングすることができ、ブレードの消耗を抑えることができる。
【0074】
この工程において、接続領域1A4を通るダイシングは、接続領域1A4の幅(上面視で傾斜方向に平行な方向の幅)以上の幅のブレードを用いて行うとよい。このようなブレードを用いることで、光学部材1において接続領域1A4が部分的に残らないようにダイシングをすることができる。後述するように、傾斜面1A3を実装面にして他の部材と接合する場合に、接続領域1A4が残っていると、反射面の実装精度に悪影響を及ぼすことがある。なお、傾斜方向のダイシングと接続領域1A4のダイシングとで同じブレードを使用してよい。
【0075】
この工程において、傾斜方向に設けられた線状領域に沿ってシリコン基板1Aを分割する処理は、必ずしも一回のダイシングによって行われなくてよい。複数のダイシングに分けてシリコン基板1Aを分割することで、不良品の発生を抑え、生産効率を向上させることもできる。
【0076】
例えば、線状領域に沿ったシリコン基板1Aの分割処理を、少なくとも第1ダイシングと第2ダイシングを含む2以上のダイシング処理によって実現してもよい。
【0077】
第1ダイシングを行う工程では、金属膜1Cが線状に取り除かれた領域に沿って、第1主面1A1から第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32の一部あるいは全部を含み、かつ、第2主面1A2まで達しないように、シリコン基板1Aを部分的に切る(図3Iの破線を参考)。また、第1ダイシングを行う工程では、第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32の傾斜方向の長さの半分以上を切ることが好ましい。第2ダイシングでシリコン基板1Aを切断する部分が多いと、不良品の発生が増加するおそれがある。
【0078】
第2ダイシングを行う工程では、第1ダイシングが行われたダイシングラインに沿って、第2主面1A2まで達するようにシリコン基板1Aを切断する。傾斜面1A3を設けたシリコン基板1Aでは、傾斜を構成する部分と、その下の板状部分とを有することになり、これを一度にダイシングしようとすると、意図せぬ方向に負荷がかかり不良品の発生が増加するおそれがある。そのため、2回以上にわけてダイシングを行い、シリコン基板1Aを分割することで不良品の発生を低減させることが期待できる。
【0079】
一方で、接続領域1A4を通るダイシング処理は、傾斜方向にシリコン基板1Aを切断するためのダイシングの回数よりも少ない回数で行うことができる。接続領域1A4を通るダイシングは、実質的に板状部分(接続領域1A4及びその近傍)を切断するだけでよいためである。
【0080】
例えば、傾斜方向のダイシングは、少なくとも第1ダイシングと第2ダイシングとに分けて行われ、第2ダイシングによって第2主面にまで達する一方で、接続領域1A4のダイシングは、一度のダイシングで第2主面にまで達するようにして、この工程を実行することができる。
【0081】
このようにしてシリコン基板1Aを分割し、複数の光学部材1を製造することができる。 なお、分割される時点におけるシリコン基板1Aにおいても、第1主面1A1から第1傾斜面1A31の第1主面1A1から最も遠い点までの第1主面1A1に垂直な方向の幅は、この点から第2主面1A2までの第1主面1A1に垂直な方向の幅よりも大きい。
【0082】
ここで、シリコン基板1Aと光学部材1との対応について述べておく。シリコン基板1Aの第1主面1A1は、シリコン部材10の第2接続面10Eに相当し、シリコン基板1Aの第2主面1A2は、シリコン部材10の第1側面10Bに相当し、シリコン基板1Aの第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32は、シリコン部材10の下面10A及び第2側面10Cに相当する。また、シリコン基板1Aにおいて隣り合う接続領域1A4を切断した2つの切断面が、シリコン部材10の第1接続面10D及び第3接続面10Fに相当する。シリコン基板1Aに設けられる金属膜1Cは、シリコン部材10に設けられる金属膜20に相当し、シリコン基板1Aに設けられる反射膜1Dは、シリコン部材10に設けられる反射膜30に相当する。
【0083】
次に、上述の光学部材1を備える発光装置100の一例を説明する。図4乃至図7は、発光装置100を説明するための図である。図4は、発光装置100の斜視図である。図5は、発光装置100の上面図である。図6は、発光装置100における発光素子12及び反射部材14の配置を説明するための上面図である。図7は、図6のVII-VII断面線における断面図である。
【0084】
発光装置100は、複数の構成要素を備えている。発光装置100が備える複数の構成要素は、パッケージ11、1または複数の発光素子12、1または複数の反射部材14、及び、レンズ部材15を含む。なお、発光装置100は、この他にも構成要素を備えていてよい。例えば、発光装置100は、1または複数の発光素子12とは別に、さらに発光素子を備えてもよい。また、発光装置100は、ここで挙げた複数の構成要素の一部を備えていなくてもよい。
【0085】
(パッケージ11)
パッケージ11は、実装面11Eを有する。パッケージ11は、基体11Aと、蓋部材11Nとを含む。蓋部材11Nは、基体11Aに接合される。基体11Aには、パッケージ11の実装面11Eが含まれる。
【0086】
上面視で、パッケージ11の外縁形状は矩形である。この矩形は、長辺と短辺を有する矩形とすることができる。図示されるパッケージ11において、この矩形の長辺方向はX方向と同じ方向であり、短辺方向はY方向と同じ方向である。なお、上面視で、パッケージ11の外縁形状は矩形でなくてもよい。
【0087】
パッケージ11には、他の構成要素が配置される内部空間が形成される。この内部空間は、真空あるいは気密状態で封止された閉空間とすることができる。
【0088】
基体11Aにおいて、凹形状が形成されている。上面側から下方に窪んだ凹形状が形成される。上面視で、凹形状の窪みの外縁形状は矩形である。この矩形は、長辺と短辺を有する矩形とすることができる。図示される基体11Aにおいて、この矩形の長辺方向はX方向と同じ方向であり、短辺方向はY方向と同じ方向である。なお、この窪みの外縁形状は矩形でなくてもよい。
【0089】
基体11Aは、枠部材と底部材とを含んで構成され得る。底部材には、実装面11Eが含まれる。枠部材は上面視で、実装面11Eを囲う。
【0090】
枠部材は、セラミックを主材料に用いて形成することができる。底部材は、金属あるいは金属を含む複合物を主材料に用いて形成することができる。セラミックとしては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、炭化ケイ素などが挙げられる。金属としては、例えば、銅、アルミニウム、鉄,銅モリブデン、銅タングステンなどが挙げられる。あるいは、金属を含む複合物として、銅-ダイヤモンド複合材料などを用いることができる。
【0091】
蓋部材11Nは、光を透過する透光性を有する。ここで、透光性とは、光に対する透過率が80%以上であることとする。なお、全ての波長の光に対して80%以上の透過率を有していなくてもよい。蓋部材11Nは、一部に非透光性の領域(透光性を有していない領域)を有していてもよい。
【0092】
蓋部材11Nは、ガラスを主材料に用いて形成される。蓋部材11Nを形成する主材料は、高い透光性を有する材料である。蓋部材11Nは、ガラスに限らず、例えば、サファイアを主材料に用いて形成してもよい。
【0093】
(発光素子12)
発光素子12は、光を出射する光出射面を有する。発光素子12は、上面、下面、複数の側面を有する。発光素子12の側面が、光出射面となる。発光素子12は、1または複数の光出射面を有する。
【0094】
発光素子12の上面の形状は、長辺と短辺を有する矩形である。なお、発光素子12の上面の形状は、矩形でなくてもよい。発光素子12には、半導体レーザ素子を採用することができる。なお、発光素子12には、半導体レーザ素子に限らず、発光ダイオードなどを採用してもよい。
【0095】
発光素子12には、例えば、青色の光を出射する発光素子、緑色の光を出射する発光素子、または、赤色の光を出射する発光素子を採用することができる。なお、発光素子12に、その他の色の光を出射する発光素子を採用してもよい。
【0096】
ここで、青色の光は、その発光ピーク波長が420nm~494nmの範囲内にある光をいうものとする。緑色の光は、その発光ピーク波長が495nm~570nmの範囲内にある光をいうものとする。赤色の光は、その発光ピーク波長が605nm~750nmの範囲内にある光をいうものとする。
【0097】
(反射部材14)
反射部材14には、上述の光学部材1を用いることができる。反射膜30が設けられる第1側面10Bを、反射部材14の光反射面とすることができる。
【0098】
反射部材14の光反射面は、光反射面に照射される光のピーク波長に対する反射率が90%以上である。また、この反射率は95%以上であってもよい。また、この反射率を99%以上とすることもできる。光反射率は、100%以下あるいは100%未満である。
【0099】
(レンズ部材15)
レンズ部材15は、上面と、下面と、側面と、を有する。レンズ部材15は、入射する光に対して集光、拡散、コリメートといった光学作用を与え、レンズ部材15からは、光学作用が与えられた光が出射される。
【0100】
レンズ部材15は、1または複数のレンズ面を有する。1または複数のレンズ面は、レンズ部材15の上面側に設けられる。なお、レンズ部材15の下面側に設けられてもよい。レンズ部材15は、それぞれ平面である上面及び下面を有する。1または複数のレンズ面は、上面と交わる。1または複数のレンズ面は、上面視で上面に囲まれる。上面視で、レンズ部材15は、矩形の外形を有している。レンズ部材15の下面は矩形である。
【0101】
複数のレンズ面を有するレンズ部材15において、複数のレンズ面は一方向に連なって形成される。つまり、複数のレンズ面は、各レンズ面が連結し、かつ、同じ方向に並んで設けられる。レンズ部材15は、各レンズ面の頂点が仮想的な一本の直線上に位置するように形成される。この仮想直線は、X方向と同じ方向である。
【0102】
ここで、上面視で、複数のレンズ面が並ぶ方向を連結方向というものとする。複数のレンズ面は、上面視で、連結方向の長さが、この方向に垂直な方向の長さよりも大きい。図示されるレンズ部材15において、連結方向は、X方向と同じ方向である。
【0103】
レンズ部材15は透光性を有する。レンズ部材15は、レンズ部及び非レンズ部のいずれも透光性を有する。レンズ部材15は、例えば、BK7等のガラスを用いて形成することができる。
【0104】
(発光装置100)
発光装置100において、1または複数の発光素子12がパッケージ11の実装面11Eに配置される。発光素子12は、サブマウントを介して実装面11Eに配置されてもよい。発光装置100は複数の発光素子12を備え、実装面11Eには、複数の発光素子12が配置され得る。複数の発光素子12は、実装面11Eに並べて配置される。図示される発光装置100では、複数の発光素子12がX方向に並べて配置されている。
【0105】
発光素子12は、光出射面から側方に光を出射する。各発光素子12の光出射面から、同じ方向に光が出射される。ここでの同じ方向は、±10度の角度差を含む。図示される発光装置100では、複数の発光素子12のそれぞれが、光出射面からY方向に光を出射する。
【0106】
発光装置100において、発光素子12から出射された光を反射する反射部材14が配置される。反射部材14は、実装面11Eに配置される。1または複数の発光素子12から出射された光は、1または複数の反射部材14の光反射面によって反射される。1つの反射部材14によって複数の発光素子12から出射された光を反射してもよいし、発光素子12と反射部材14を一対一で配置してもよい。
【0107】
反射部材14の下面10A(光学部材1の下面10A)と実装面11Eが対向する。反射部材14の下面10Aが実装面11Eに接合される。反射部材14の下面10Aに設けられた金属膜20は、実装面11Eとの接合に利用される。
【0108】
光学部材の製造過程において、シリコン基板1Aの第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32の両方に金属膜1Cを形成した。シリコン基板1Aを分割し、複数の光学部材1に個片化された状態においても、第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32の両方に金属膜1Cが形成されている。そのため、光学部材1の下面10Aには、第1傾斜面1A31あるいは第2傾斜面1A32のいずれを採用してもよい。第1傾斜面1A31が下面10Aとなり、第2傾斜面1A32が第2側面10Cとなる光学部材1もあれば、第1傾斜面1A31が第2側面10Cとなり、第2傾斜面1A32が下面10Aとなる光学部材1もあり得る。
【0109】
このように、光学部材1の下面10A及び第2側面10Cの両方に金属膜20が形成されている光学部材1は、発光装置100の実装に際して、第1傾斜面1A31または第2傾斜面1A32のどちらを下面10Aにしてもよいため、実装時に、光学部材1のどれが第1傾斜面1A31であり、また、どれが第2傾斜面1A32であるかを判別する必要がなく、製造を容易にし、生産効率を向上させることができる。
【0110】
発光装置100において、パッケージ11の上にレンズ部材15が配置される。レンズ部材15は、パッケージ11と接合する。レンズ部材15が有する1つのレンズ面が、1つの発光素子12から出射された光に対応する。
【0111】
以上、本発明に係る各実施形態を説明してきたが、本発明に係る発光装置は、各実施形態の発光装置に厳密に限定されるものではない。つまり、本発明は、各実施形態により開示された発光装置の外形や構造に限定されなければ実現できないものではない。本発明は、全ての構成要素を必要十分に備えることを必須とせずに適用され得るものである。例えば、特許請求の範囲に、実施形態により開示された発光装置の構成要素の一部が記載されていなかった場合、その一部の構成要素については、代替、省略、形状の変形、材料の変更などの当業者による設計の自由度を認め、その上で特許請求の範囲に記載された発明が適用されることを特定するものである。
【0112】
本明細書でこれまで説明してきた内容を通し、以下の技術事項が開示される。
(項1)
第1主面及び前記第1主面の反対側の第2主面を有するシリコン基板を準備する工程と、
前記第1主面上にマスクパターンを形成する工程と、
前記シリコン基板を、前記マスクパターンをマスクとして用いて前記第1主面側からウェットエッチングし、前記第1主面から傾斜し、かつ、互いに対向する第1傾斜面及び第2傾斜面を形成する工程と、
前記第1傾斜面から前記第2傾斜面に亘って金属膜を形成する工程と、
レーザ光を用いて、前記第1傾斜面から前記第2傾斜面へと向かう第1方向に、前記金属膜の一部を線状に取り除く工程と、
前記金属膜が線状に取り除かれた領域に沿って前記シリコン基板を前記第1方向にダイシングし、前記シリコン基板を分割する工程を含む光学部材の製造方法。
(項2)
前記シリコン基板を分割する工程は、
前記金属膜が線状に取り除かれた領域に沿って、前記第1主面から前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面の一部あるいは全部を含み 、かつ、前記第2主面まで達しないように、前記シリコン基板を部分的に切る第1ダイシングを行う工程と、
前記第1ダイシングが行われたダイシングラインに沿って、前記第2主面まで達するように前記シリコン基板を切断する第2ダイシングを行う工程 と、を含む、項1に記載の製造方法。
(項3)
前記シリコン基板は、前記第1主面から前記第1傾斜面の前記第1主面から最も遠い点までの第1主面に垂直な方向の幅は、当該点から前記第2主面までの前記第1主面に垂直な方向の幅よりも大きい、項1または項2に記載の製造方法。
(項4)
レーザ光を用いて、対向する前記第1傾斜面と前記第2傾斜面を接続する接続領域に形成された前記金属膜を取り除く工程をさらに有し、
前記シリコン基板を分割する工程において、さらに、前記金属膜が取り除かれた前記接続領域をダイシングし、前記シリコン基板を分割する項1乃至項3のいずれか一項に記載の製造方法。
(項5)
前記第1傾斜面及び第2傾斜面を形成する工程において、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面の間に前記接続領域を形成し、
前記接続領域の前記第1方向の幅は20μm以下であり、前記ダイシングは、前記接続領域の前記第1方向の幅以上の幅のブレードを用いて行われる、項1乃至項4のいずれか一項に記載の製造方法。
(項6)
前記接続領域に形成された前記金属膜を取り除く工程において、前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面上に設けられた前記金属膜の一部であって、前記接続領域の近傍に設けられた前記金属膜を取り除く、項4または項5に記載の製造方法。
(項7)
前記シリコン基板を分割する工程における前記第1方向のダイシングは、
前記金属膜が線状に取り除かれた領域に沿って、前記第1主面から前記第1傾斜面及び前記第2傾斜面の一部あるいは全部を含み、かつ、前記第2主面まで達しないように、前記シリコン基板を部分的に切断する第1ダイシングと、
前記第1ダイシングが行われたダイシングラインに沿って、前記第2主面まで達する第2ダイシングと、に分けて行われ、
前記シリコン基板を分割する工程における前記接続領域のダイシングは、一度のダイシングで前記第2主面まで達する、項4乃至項6のいずれか一項に記載の製造方法。
(項8)
前記金属膜が前記第1方向に線状に取り除かれた除去部分の前記第1方向に垂直な第2方向の幅は、80μm以上160μm以下であり、
前記金属膜が線状に取り除かれた領域に沿って前記シリコン基板を前記第1方向にダイシングするブレードの幅は、前記除去部分の前記第2方向の幅よりも小さい、項1乃至項7のいずれか一項に記載の製造方法。
(項9)
前記第1主面は{110}面からなり、
前記第1傾斜面は、{100}面を有する、項1乃至項8のいずれか一項に記載の製造方法。
(項10)
前記第2主面は{110}面からなり、
前記第2傾斜面は、{100}面を有する、項1乃至項9のいずれか一項に記載の製造方法。
(項11)
前記第2主面上に反射膜を形成する工程をさらに含む、項1乃至項10のいずれか一項に記載の製造方法。
(項12)
前記反射膜は、誘電体多層膜である、項11に記載の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0113】
各実施形態に記載の発光装置は、プロジェクタ、ヘッドマウントディスプレイ、照明、車載ヘッドライト、ディスプレイ等に使用することができる。
【符号の説明】
【0114】
1 光学部材
10 シリコン部材
10A 下面
10B 第1側面
10C 第2側面
10D 第1接続面
10E 第2接続面
10F 第3接続面
10M 第3側面
10N 第4側面
20 金属膜
30 反射膜
1A シリコン基板
1A1 第1主面
1A2 第2主面
1A3 傾斜面
1A31 第1傾斜面
1A32 第2傾斜面
1A4 接続領域
1B マスクパターン
1C 金属膜
1D 反射膜
100 発光装置
11 パッケージ
11A 基体
11E 実装面
11N 蓋部材
12 発光素子
14 反射部材
15 レンズ部材
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図4
図5
図6
図7