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特開2024-106148シリコン光学部材の製造方法、シリコン光学部材、及び、発光装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106148
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】シリコン光学部材の製造方法、シリコン光学部材、及び、発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/022 20210101AFI20240731BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
H01S5/022
G02B5/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010287
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】湯藤 祐且
【テーマコード(参考)】
2H042
5F173
【Fターム(参考)】
2H042DA08
2H042DA12
2H042DA22
2H042DC02
2H042DC10
5F173ME22
5F173MF03
5F173MF28
(57)【要約】
【課題】 小さいサイズのシリコン光学部材を実現する。
【解決手段】 第1主面及び前記第1主面の反対側の第2主面を有するシリコン基板を準備する工程と、前記第1主面上にマスクパターンを形成する工程と、前記シリコン基板を、前記マスクパターンをマスクとして用いて前記第1主面側からウェットエッチングし、1または複数の傾斜面を形成する工程と、前記シリコン基板の前記第1主面側を支持し、前記1または複数の傾斜面にまで到達しないように前記第2主面から前記第1主面側に向かって前記シリコン基板を部分的に除去し、前記第2主面よりも前記第1主面側において、第3主面を形成する工程と、前記第3主面に反射膜を設け、反射面を形成する工程と、前記シリコン基板を、それぞれが前記傾斜面及び前記反射面を含む複数の光学部材に個片化する工程を含む、シリコン光学部材の製造方法。
【選択図】 図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面及び前記第1主面の反対側の第2主面を有するシリコン基板を準備する工程と、
前記第1主面上にマスクパターンを形成する工程と、
前記シリコン基板を、前記マスクパターンをマスクとして用いて前記第1主面側からウェットエッチングし、1または複数の傾斜面を形成する工程と、
前記シリコン基板の前記第1主面側を支持し、前記1または複数の傾斜面にまで到達しないように前記第2主面から前記第1主面側に向かって前記シリコン基板を部分的に除去し、前記第2主面よりも前記第1主面側において、第3主面を形成する工程と、
前記シリコン基板を、それぞれが前記傾斜面及び前記第3主面を含む複数のシリコン光学部材に個片化する工程を含む、シリコン光学部材の製造方法。
【請求項2】
前記第3主面から、前記傾斜面までの最短距離は、10μm以上50μm以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記傾斜面から前記第3主面までの最短距離を、前記傾斜面に垂直な方向成分と、前記傾斜面に平行な方向成分とに分けたときの、前記傾斜面に垂直な方向成分の距離は、10μm以上50μm以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記傾斜面を形成する工程によって形成された前記傾斜面の、前記第1主面に垂直な方向の幅は、100μm以上300μm以下である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第3主面に反射膜を設ける工程をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記シリコン光学部材は、前記第1主面から前記第3主面までの距離が、100μm以上400μm以下である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記傾斜面を形成する工程において、それぞれが互いに対向する2つの前記傾斜面を含む複数の溝を形成し、溝を挟んで隣り合う前記第1主面の間隔を200μm以上500μm以下とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第1主面に垂直な方向に関し、前記第3主面を形成する工程において除去される前記シリコン基板の前記第2主面から前記第3主面までの幅は、前記傾斜面を形成する工程によって形成された前記傾斜面の幅よりも大きい、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
下面と、前記下面と交わり前記下面から上方へと延びる第1側面と、前記第1側面と交わり前記下面に対して45度の角度で前記第1側面から斜め上方へと延びる主面と、前記第1側面の反対側で前記主面と交わり前記主面から下方へと延びる第2側面と、前記第2側面と交わり前記下面に対して90度の角度で前記第2側面から下方へと延びる第3側面と、を有するシリコン部材
を備え、
前記第1側面の前記下面と交わる辺から前記主面と交わる辺までの幅は、30μm以上100μm以下であり、
前記下面の前記第1側面側の端点から前記第3側面側の端点までの幅よりも、前記主面の下端から上端までの幅の方が大きい、シリコン光学部材。
【請求項10】
前記下面から前記主面の上端までの高さは100μm以上550μm以下である、請求項9に記載のシリコン光学部材。
【請求項11】
前記第1側面の前記下面と交わる辺から前記主面と交わる辺までの幅は、60μm未満である、請求項9に記載のシリコン光学部材。
【請求項12】
前記主面に設けられる反射膜をさらに備える、請求項9に記載のシリコン光学部材。
【請求項13】
実装面を有する基板と、
前記実装面と接合する請求項9乃至12のいずれか一項に記載のシリコン光学部材と、
第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有し、前記第2面が前記実装面に接合され、前記実装面に垂直な方向の厚みが50μm以上150μm以下の調整部材と、
光出射面を前記シリコン光学部材の前記主面に向けて、前記調整部材の前記第1面に接合される半導体レーザ素子と、
を備え、
前記半導体レーザ素子から前記シリコン光学部材までの、前記実装面に平行な方向の最短距離は0μmを超え100μm以下である、発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン光学部材の製造方法、シリコン光学部材、及び、シリコン光学部材を備える発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリコン基板からミラーを製造する方法であって、シリコン基板にマスクを形成し、エッチングにより反射下地面を形成し、ダミー基盤にシリコン基板を貼り合わせ、反射下地面の反対側からシリコン基板を研磨してミラーを個片化する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-340408
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光素子とミラーなどの光学部材を備える発光装置を作る際に、小さいサイズの光学部材が要求されることがある。光学部材が小さくなれば、発光装置のサイズを小さくすることや、同じ大きさの発光装置により多くの光学部材を配置することができるといったメリットが考えられる。
【0005】
シリコン基板から小さいサイズの光学部材を得るためには、特許文献1の開示だけでは不十分であり、なお、考慮しなければならない技術事項がある。本発明は、小さいサイズのシリコン光学部材を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に開示されるシリコン光学部材の製造方法は、第1主面及び前記第1主面の反対側の第2主面を有するシリコン基板を準備する工程と、前記第1主面上にマスクパターンを形成する工程と、前記シリコン基板を、前記マスクパターンをマスクとして用いて前記第1主面側からウェットエッチングし、1または複数の傾斜面を形成する工程と、前記シリコン基板の前記第1主面側を支持し、前記1または複数の傾斜面にまで到達しないように前記第2主面から前記第1主面側に向かって前記シリコン基板を部分的に除去し、前記第2主面よりも前記第1主面側において、第3主面を形成する工程と、前記第3主面に反射膜を設け、反射面を形成する工程と、前記シリコン基板を、それぞれが前記傾斜面及び前記反射面を含む複数の光学部材に個片化する工程を含む。
【0007】
実施形態に開示されるシリコン光学部材は、下面と、前記下面と交わり前記下面から上方へと延びる第1側面と、前記第1側面と交わり前記下面に対して45度の角度で前記第1側面から斜め上方へと延びる主面と、前記第1側面の反対側で前記主面と交わり前記主面から下方へと延びる第2側面と、前記第2側面と交わり前記下面に対して90度の角度で前記第2側面から下方へと延びる第3側面と、を有するシリコン部材と、前記主面に設けられる反射膜と、を備え、前記第1側面の前記下面と交わる辺から前記主面と交わる辺までの幅は、10μm以上50μm以下であり、前記下面の前記第1側面側の端点から前記第3側面側の端点までの幅よりも、前記主面の下端から上端までの幅の方が大きい。
【0008】
実施形態に開示される発光装置は、実装面を有する基板と、前記実装面と接合する上記の光学部材と、第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有し、前記第2面が前記実装面に接合され、前記実装面に垂直な方向の厚みが50μm以上150μm以下の金属部材と、光出射面を前記光学部材の主面に向けて、前記金属部材の前記第1面に接合される半導体レーザ素子と、を備え、前記半導体レーザ素子から前記光学部材までの、前記実装面に平行な方向の最短距離は0μmを超え100μm以下である。
【0009】
実施形態によって開示される1または複数の発明の少なくとも一つにより、小さいサイズのシリコン光学部材の実現に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係るシリコン光学部材の平面図である。
図2A図2Aは、実施形態に係るシリコン光学部材を反射面側からみた斜視図である。
図2B図2は、実施形態に係るシリコン光学部材を第3側面側からみた斜視図である。
図3A図3Aは、実施形態に係る光学部材の製造方法における一工程を説明するための模式図である。
図3B図3Bは、実施形態に係る光学部材の製造方法における他の一工程を説明するための模式図である。
図3C図3Cは、実施形態に係る光学部材の製造方法における他の一工程を説明するための模式図である。
図3D図3Dは、実施形態に係る光学部材の製造方法における他の一工程を説明するための模式図である。
図3E図3Eは、実施形態に係る光学部材の製造方法における他の一工程を説明するための模式図である。
図3F図3Fは、実施形態に係る光学部材の製造方法における他の一工程を説明するための模式図である。
図3G図3Gは、実施形態に係る光学部材の製造方法における他の一工程を説明するための模式図である。
図3H図3Hは、実施形態に係る光学部材の製造方法における他の一工程を説明するための模式図である。
図4A図4Aは、実施形態に係るシリコン光学部材の2つの実施例及び比較例となるシリコン光学部材を示す画像である。
図4B図4Bは、実施形態に係るシリコン光学部材の2つの実施例のうちの第1実施例を示す画像である。
図4C図4Cは、実施形態に係るシリコン光学部材の2つの実施例のうちの第2実施例を示す画像である。
図5図5は、実施形態に係る発光装置の斜視図である。
図6図6は、実施形態に係る発光装置からパッケージの蓋部材を除いた状態の斜視図である。
図7図7図6の状態の発光装置の上面図である。
図8図8は、図5のVIII-VIII断面線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書または特許請求の範囲において、三角形や四角形などの多角形に関しては、多角形の隅に角丸め、面取り、角取り、丸取り等の加工が施された形状も含めて、多角形と呼ぶものとする。また、隅(辺の端)に限らず、辺の中間部分に加工が施された形状も同様に、多角形と呼ぶものとする。つまり、多角形をベースに残しつつ、部分的な加工が施された形状は、本明細書及び特許請求の範囲で記載される“多角形”の解釈に含まれるものとする。
【0012】
また、多角形に限らず、台形や円形や凹凸など、特定の形状を表す言葉についても同様である。また、その形状を形成する各辺を扱う場合も同様である。つまり、ある辺において、隅や中間部分に加工が施されていたとしても、“辺”の解釈には加工された部分も含まれる。なお、部分的な加工のない“多角形”や“辺”を、加工された形状と区別する場合は“厳密な”を付して、例えば、“厳密な四角形”などと記載するものとする。
【0013】
また、本明細書または特許請求の範囲において、上下、左右、表裏、前後(前方/後方)、手前と奥などの記載は、相対的な位置、向き、方向などの関係を述べるに過ぎず、使用時における関係と一致していなくてもよい。
【0014】
また、図面においてX方向、Y方向、及び、Z方向などの方向を、矢印を用いて示すことがある。この矢印の方向は、同じ実施形態に係る複数の図面間で整合が取られている。また、図面においてX、Y、及び、Zが記されている矢印の方向を正方向、これと反対の方向を負方向とする。例えば、矢印の先にXが記されている方向は、X方向であり、かつ、正方向である。なお、X方向であり、かつ、正方向である方向を、「Xの正方向」と呼ぶものとし、これと反対の方向を「Xの負方向」と呼ぶものとする。Y方向、及び、Z方向についても同様である。
【0015】
また、本明細書において、例えば構成要素などを説明するときに「部材」や「部」と記載することがある。「部材」は、物理的に単体で扱う対象を指すものとする。物理的に単体で扱う対象とは、製造の工程で一つの部品として扱われる対象ということもできる。一方で、「部」は、物理的に単体で扱われなくてもよい対象を指すものとする。例えば、1つの部材の一部を部分的に捉えるときや、複数の部材をまとめて一つの対象として捉えるときなどに「部」が用いられる。
【0016】
なお、上述の「部材」と「部」の書き分けは、均等論の解釈において権利範囲を意識的に限定するという意思を示すものではない。つまり、特許請求の範囲において「部材」と記載された構成要素があったとしても、そのことのみを以って、この構成要素を物理的に単体で扱うことが本発明の適用に必要不可欠であると出願人が認識しているわけではない。
【0017】
また、本明細書または特許請求の範囲において、ある構成要素が複数あり、それぞれを区別して表現する場合に、その構成要素の頭に“第1”、“第2”と付記して区別することがある。また、本明細書と特許請求の範囲とで区別する対象が異なる場合があり得る。そのため、特許請求の範囲において本明細書と同一の付記がされた構成要素が記載されていても、この構成要素によって特定される対象が、本明細書と特許請求の範囲との間で一致しないことがあり得る。
【0018】
例えば、本明細書において“第1”、“第2”、“第3”と付記されて区別される構成要素があり、本明細書において“第1”及び“第3”が付記された構成要素を特許請求の範囲に記載する場合に、見易さの観点から特許請求の範囲においては“第1”、“第2”と付記して構成要素を区別することがある。この場合、特許請求の範囲において“第1”、“第2”と付記された構成要素はそれぞれ、本明細書において“第1”“第3”と付記された構成要素を指すことになる。なお、このルールの適用対象は構成要素に限らず、その他の対象に対しても、合理的かつ柔軟に適用される。
【0019】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。またさらに、図面を参照しながら、本発明を実施するための具体的な形態を説明する。なお、本発明を実施するための形態は、この具体的な形態に限定されない。つまり、図示される実施形態は、本発明が実現される唯一の形態ではない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、理解の便宜を図るために誇張していることがある。
【0020】
<実施形態>
実施形態に係るシリコン光学部材1を説明する。図1乃至図4Cは、シリコン光学部材1の例示的な一形態を説明するための図面である。図1は、シリコン光学部材1の平面図である。図2Aは、シリコン光学部材1を反射面側からみた斜視図である。図2Bは、シリコン光学部材1を第3側面10E側からみた斜視図である。図3A乃至図3Hは、シリコン光学部材1の製造方法を説明するための図である。なお、図3Eに記される破線は、シリコン基板1Aにおいて第3主面が形成されるラインを示している。また、図3F乃至図3Hは、図3A乃至図3Eよりも拡大して図示している。図4Aは、シリコン光学部材1の各実施例及び比較例となるシリコン光学部材を示す画像である。図4Bは、シリコン光学部材1の第1実施例を示す画像である。図4Cは、シリコン光学部材1の第2実施例を示す画像である。
【0021】
シリコン光学部材1は、1または複数の構成要素を備えている。この1または複数の構成要素には、シリコン部材10が含まれる。また、この1または複数の構成要素にはさらに、金属膜20、及び、反射膜30が含まれる。なお、シリコン光学部材1は、この他にも構成要素を備えていてよい。また、シリコン光学部材1は、本明細書で説明するシリコン光学部材1の構成要素の全てを備えていなくてもよい。
【0022】
まず、各構成要素について説明する。
【0023】
(シリコン部材10)
シリコン部材10の主材料は、シリコンである。シリコン部材10は、シリコンで構成される。
【0024】
ここで、主材料とは、対象となる形成物において、質量または体積が最も多くの割合を占める材料をいうものとする。なお、一つの材料から対象となる形成物が形成される場合には、その材料が主材料である。つまり、ある材料が主材料であるとは、その材料の占める割合が100%となり得ることを含む。
【0025】
シリコン部材10は、下面10A、主面10B、第1側面10C、第2側面10D、及び、第3側面10Eを有する。また、シリコン部材10はさらに、第4側面10Fを有する。主面10Bは、下面10Aに対して45度の角度で傾斜している。第3側面10Eは、下面10Aに対して垂直である。第4側面10Fは、主面10Bに対して平行である。
【0026】
第1側面10Cは、下面10Aと交わり、下面10Aから上方へと延びる。主面10Bは、第1側面10Cと交わり第1側面10Cから上方へと延びる。主面10Bは、下面10Aに対して45度の角度で第1側面10Cから斜め上方へと延びる。
【0027】
第2側面10Dは、主面10Bと交わり主面10Bから下方へと延びる。第2側面10Dは、第1側面10Cの反対側で主面10Bと交わる。第3側面10Eは、第2側面10Dと交わり第2側面10Dから下方へと延びる。第3側面10Eは、下面10Aに対して90度の角度で第2側面10Dから下方へと延びる。第4側面10Fは、第3側面10Eと交わり第3側面10Eから下方へと延びる。第4側面10Fは、第3側面10Eの反対側で下面10Aと交わる。
【0028】
下面10Aは、第1辺と、第1辺の反対側の辺である第2辺とを有する。また、下面10Aは、第3辺と、第3辺の反対側の辺である第4辺とを有する。下面10Aの第3辺及び第4辺はいずれも、下面10Aの第1辺及び第2辺と接続する。下面10Aの外形は矩形である。なお、下面10Aの外形は矩形でなくてもよい。
【0029】
主面10Bは、上辺及び下辺を有する。また、主面10Bは、2つの側辺を有する。主面10Bの外形は矩形である。主面10Bの2つの側辺はいずれも、主面10Bの上辺及び下辺と接続する。なお、主面10Bの外形は矩形でなくてもよい。
【0030】
第3側面10Eは、上辺及び下辺を有する。また、第3側面10Eは、2つの側辺を有する。第3側面10Eの外形は矩形である。第3側面10Eの2つの側辺はいずれも、第3側面10Eの上辺及び下辺と接続する。なお、第3側面10Eの外形は矩形でなくてもよい。
【0031】
第1側面10Cは、主面10Bの下辺と、下面10Aの第1辺とを共有する。言い換えると、主面10Bの下辺は、第1側面10Cの主面10Bと交わる辺と言え、下面10Aの第1辺は、第1側面10Cの下面10Aと交わる辺と言える。第1側面10Cの外形は矩形である。なお、第1側面10Cの外形は矩形でなくてもよい。
【0032】
第2側面10Dは、主面10Bの上辺と、第3側面10Eの上辺とを共有する。第2側面10Dの外形は矩形である。なお、第2側面10Dの外形は矩形でなくてもよい。第4側面10Fは、下面10Aの第2辺と、第3側面10Eの下辺とを共有する。第4側面10Fの外形は矩形である。なお、第4側面10Fの外形は矩形でなくてもよい。
【0033】
第1側面10Cの下面10Aと交わる辺から主面10Bと交わる辺までの幅は、30μm以上100μm以下である。また、この幅は、60μm未満であることが好ましい。この幅が小さいほど、下面10Aから主面10Bの下辺までの距離が短くなり、主面10Bを下面10Aに近付けることができる。
【0034】
第2側面10Dの第3側面10Eと交わる辺から主面10Bと交わる辺までの幅は、30μm以上100μm以下である。また、この幅は、第1側面10Cの下面10Aと交わる辺から主面10Bと交わる辺までの幅と同じであることが好ましい 。
【0035】
第4側面10Fの下面10Aと交わる辺から第3側面10Eと交わる辺までの幅は、5
μm以上45μm以下である 。また、この幅は、下面10Aの第1辺から第2辺までの幅の1/4以下である。この幅は、下面10Aの第1辺から第2辺までの幅の1/6以下とすることが好ましい。この幅が小さいほど、下面10Aの第1辺から第2辺までの幅を大きく確保することができ、シリコン光学部材1の接合をより安定させることができる。
【0036】
下面10Aから主面10Bまでの最短距離(下面10Aの第1辺から主面10Bの下辺までの距離)を、下面10Aに垂直な方向成分と、下面10Aに平行な方向成分とに分けたときの、下面10Aに垂直な方向成分の距離(図1の距離d)は、10μm以上50μm以下である。
【0037】
また、シリコン部材10は、下面10Aの第3辺と、主面10Bの2つの側辺のうちの一方と、第3側面10Eの2つの側辺のうちの一方と、を共有する第5側面10Mを有する。また、シリコン部材10は、下面10Aの第4辺と、主面10Bの他方の側辺と、第3側面10Eの他方の側辺と、を共有する第6側面10Nを有する。
【0038】
第5側面10M及び第6側面10Nの外形は矩形ではない。第5側面10M及び第6側面10Nの外形は六角形である。この六角形は、三角形の三つの角を切り落としたような形状である。第5側面10M及び第6側面10Nの外形は、厳密な三角形ではない。
【0039】
シリコン部材10の主面10Bは、{110}面からなる。ここで、{110}面とは、シリコンの常温及び常圧で安定な結晶構造であるダイヤモンド構造における結晶格子面のうちのひとつ(110) 面とその等価結晶面との全ての面を指す。等価結晶面とは、ミラー指数によって定義される等価結晶面又はファセットのファミリを意味する。
【0040】
シリコン部材10の第4側面10Fは、{110}面からなる。主面10Bと第4側面10Fは平行である。なお、主面10B及び第4側面10Fは、{110}面に対して±2度以内のオフ角を許容する。このオフ角は、好ましくは±1度以内、より好ましくは±0.2度以内である。
【0041】
シリコン部材10の下面10Aは、{100}面からなる。シリコン部材10の第3側面10Eは、{100}面からなる。下面10Aと第4側面10Fの成す角度は135度である。第3側面10Eと第4側面10Fの成す角度は135度である。なお、下面10A及び第3側面10Eは、{100}面に対して±2度以内のオフ角を許容する。このオフ角は、好ましくは±1度以内、より好ましくは±0.2度以内である。
【0042】
シリコン部材10の主面10Bの面積は、下面10Aの面積よりも大きい。シリコン部材10の主面10Bの面積は、第3側面10Eの面積よりも大きい。シリコン部材10の主面10Bの面積は、第4側面10Fの面積よりも大きい。シリコン部材10の下面10Aと、第3側面10Eは、同じ形状及び面積である。なお、ここでの同じ形状とは、縦横の寸法比率の差が200%以内であることも含み、同じ面積とは、大きい方の面積が小さい方の面積の200%以内に収まっていることも含む。
【0043】
図示されるシリコン部材10は、X方向の幅が100μm以上550μm以下である。また、Y方向の幅が300μm以上1000μm以下である。また、Z方向の幅が100μm以上550μm以下である。また、下面10Aの第1辺及び第2辺の長さは300μm以上1000μm以下である。また、下面10Aの第3辺及び第4辺の長さは100μm以上550μm以下である。また、主面10Bの上端から下端までの距離は150μm以上750μm以下である。主面10Bから第4側面10Fまでの距離は100μm以上400μm以下である。
【0044】
シリコン部材10は、下面10Aの第1側面10C側の端点から第3側面10E側の端点までの幅よりも、主面10Bの下端から上端までの幅の方が大きい。図示されるシリコン部材10では、下面10Aの第1側面10C側の端点は、下面10Aの第1辺上にあり、第3側面10E側の端点は、下面10Aの第2辺上にある。また、主面10Bの下端は、主面10Bの下辺上にあり、主面10Bの上端は、主面10Bの上辺上にある。
【0045】
主面10Bの下端から第3側面10EまでのX方向の最長距離が、シリコン部材10のX方向の幅となり得る。第5側面10Mから第6側面10NまでのY方向の最長距離が、シリコン部材10のY方向の幅となり得る。下面10Aから主面10Bの上端までのZ方向の最長距離(高さ)が、シリコン部材10のZ方向の幅となり得る。
【0046】
シリコン部材10の主面10Bは、主面10Bの下端から上端までの幅よりも、Y方向の幅の方が大きい。Y方向の幅は、主面10Bの下端から上端までの幅の1.5倍以上3倍以下である。なお、シリコン部材10は、主面10Bの下端から上端までの幅よりもY方向の幅の方が小さくてもよい。
【0047】
(金属膜20)
金属膜20は、主材料に、金属材料を用いることができる。例えば、Cu、Ag、Al、Ni、Ru、Rh、Au、Ti、Pt、Pd、Mo、Cr、W等の単体金属又はこれらの金属を含む合金を、金属膜20の主材料に用いることができる。一例として、金属膜20は、Ti/Ru/Auで構成することができる。
【0048】
金属膜20は、シリコン部材10の下面10Aに設けられる。また、金属膜20は、シリコン部材10の第3側面10Eに設けられる。また、金属膜20は、シリコン部材10の第4側面10Fに設けられる。
【0049】
下面10Aに設けられる金属膜20の外縁は、下面10Aの第1辺から離隔する。つまり、下面10Aに設けられる金属膜20の外縁は、下面10Aの第1辺よりも内側にある。下面10Aに設けられる金属膜20の外縁は、下面10Aの第2辺と重なる。つまり、下面10Aに設けられる金属膜20の外縁は、下面10Aの第2辺上にある。
【0050】
下面10Aに設けられる金属膜20の外縁は、下面10Aの第3辺及び第4辺から離隔する。つまり、下面10Aに設けられる金属膜20の外縁は、下面10Aの第3辺よりも内側にあり、かつ、下面10Aの第4辺よりも内側にある。
【0051】
第3側面10Eに設けられる金属膜20の外縁は、第3側面10Eの上辺から離隔する。つまり、第3側面10Eに設けられる金属膜20の外縁は、第3側面10Eの上辺よりも内側にある。第3側面10Eに設けられる金属膜20の外縁は、第3側面10Eの下辺と重なる。つまり、第3側面10Eに設けられる金属膜20の外縁は、第3側面10Eの下辺上にある。
【0052】
第3側面10Eに設けられる金属膜20の外縁は、第3側面10Eの2つの側辺から離隔する。つまり、第3側面10Eに設けられる金属膜20の外縁は、第3側面10Eの2つの側辺のうちの一方の側辺よりも内側にあり、かつ、他方の側辺よりも内側にある。
【0053】
第4側面10Fに設けられる金属膜20の外縁は、下面10Aの第2辺と共有する第4側面10Fの辺と重なる。つまり、第4側面10Fに設けられる金属膜20の外縁は、第4側面10Fのこの辺上にある。第4側面10Fに設けられる金属膜20の外縁は、第3側面10Eの下辺と共有する第4側面10Fの辺と重なる。つまり、第4側面10Fに設けられる金属膜20の外縁は、第4側面10Fのこの辺上にある。
【0054】
第4側面10Fに設けられる金属膜20の外縁は、第5側面10Mと共有する第4側面10Fの側辺、及び、第6側面10Nと共有する第4側面10Fの側辺から離隔する。つまり、第4側面10Fに設けられる金属膜20の外縁は、第4側面10Fのこれら2つの側辺うちの一方の側辺よりも内側にあり、かつ、他方の側辺よりも内側にある。
【0055】
(反射膜30)
反射膜30は、主材料に誘電体多層膜を用いて形成することができる。反射膜30は、例えば、Ta/SiO、TiO/SiO、Nb/SiO等の誘電体多層膜を用いて形成することができる。また、反射膜30は、主材料に金属を用いて形成してもよい。反射膜30は、例えば、Ag、Al等の金属を用いて形成することができる。
【0056】
反射膜30は、シリコン部材10の主面10Bに設けられる。反射膜30は、実質的に、主面10Bの全面に設けられる。
【0057】
主面10Bの下辺から主面10Bに設けられる反射膜30の外縁までの距離は、下面10Aの第1辺から下面10Aに設けられる金属膜20の外縁までの距離よりも小さい。
【0058】
主面10Bの上辺から主面10Bに設けられる反射膜30の外縁までの距離は、第3側面10Eの上辺から第3側面10Eに設けられる金属膜20の外縁までの距離よりも小さい。
【0059】
主面10Bの2つの側辺のうちの一方の側辺から主面10Bに設けられる反射膜30の外縁までの距離は、下面10Aの第3辺から下面10Aに設けられる金属膜20の外縁までの距離よりも小さく、かつ、下面10Aの第4辺から下面10Aに設けられる金属膜20の外縁までの距離よりも小さい。また、主面10Bの2つの側辺のうちの他方の側辺から主面10Bに設けられる反射膜30の外縁までの距離も、下面10Aの第3辺から下面10Aに設けられる金属膜20の外縁までの距離よりも小さく、かつ、下面10Aの第4辺から下面10Aに設けられる金属膜20の外縁までの距離よりも小さい。
【0060】
(シリコン光学部材1の製造方法)
次に、シリコン光学部材1の製造方法について説明する。シリコン光学部材1は、第1主面1A1及び第2主面1A2を有するシリコン基板1Aを準備する工程と、シリコン基板1Aにマスクパターン1Bを形成する工程と、シリコン基板1Aに傾斜面1A3を形成する工程と、シリコン基板1Aに金属膜1Cを形成する工程と、シリコン基板1Aに第3主面1A4を形成する工程と、シリコン基板1Aの第3主面1A4に反射膜1Dを設ける工程と、シリコン基板1Aを複数のシリコン光学部材に個片化する工程と、を含む製造方法によって製造することができる。
【0061】
シリコン基板1Aを準備する工程において、第1主面1A1及び第2主面1A2を有するシリコン基板1Aを準備する。第2主面1A2は、第1主面1A1の反対側の面である。第1主面1A1は、シリコンの{110}面からなる。第2主面1A2は、シリコンの{110}面からなる。シリコン基板1Aの主材料は、シリコンである。シリコン基板1Aは、シリコンで構成される。
【0062】
シリコン基板1Aの第1主面1A1から第2主面1A2までの厚みは、例えば、500μm以上1000μm以下である。シリコン基板1Aの第1主面1A1から第2主面1A2までの厚みは、製造されるシリコン光学部材1の同じ方向における厚みの200%以上600%以下とすることが好ましい。これにより、工程の途中で、意図せずシリコン基板1Aが割れてしまう等の不良の発生を抑制することができる。
【0063】
シリコン基板1Aにマスクパターン1Bを形成する工程において、シリコン基板1Aの第1主面1A1上にマスクパターン1Bを形成する。マスクパターン1Bは、例えば、<100> 方向に伸びる開口を有する。<100>方向に伸びる開口は、第1主面1A1に平行な方向に伸びる開口とすることができる。
【0064】
ここで、<100>方向とは、シリコンの常温及び常圧で安定な結晶構造であるダイヤモンド構造における結晶格子面のうちのひとつである(100)面に対する垂直方向と、その等価結晶面に対する垂直方向の全ての方向とを指す。
【0065】
マスクパターン1Bの開口は、<100>方向に伸びるストライプ状であってもよい。また、<100>方向に対して垂直に交わる方向(つまり、<110>方向)に伸びる開口と連結した格子状であってもよい。例えば、<110>方向に伸びる開口と連結した格子状でもよい。また、<100>方向に伸びる開口は、その外縁(両端)が<100>方向と略平行であることが好ましく、<110>方向に伸びる開口は、その外縁(両端)が<110>方向と略平行であることが好ましい。
【0066】
マスクパターン1Bは、レジスト膜又は絶縁膜(Si、Hf、Zr、Al、Ti、La等の酸化膜又は窒化膜あるいはそれらの複合膜等)等の公知の材料を用いて、公知の方法により形成することができる。マスクパターン1Bの材料は、後述するウェットエッチングのエッチャントの種類によって適宜選択することが好ましい。
【0067】
シリコン基板1Aに傾斜面1A3を形成する工程において、マスクパターン1Bをマスクとして用いて、シリコン基板1Aを第1主面1A1側からエッチングし、1または複数の傾斜面1A3を形成する。例えば、シリコン基板1Aを第1主面1A1側からウェットエッチングすることで、傾斜面1A3を形成することができる。この工程により、第1主面1A1から傾斜する傾斜面1A3が形成される。
【0068】
この工程により、シリコン基板1Aに複数の傾斜面1A3が形成される。複数の傾斜面1A3には、互いに対向する第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32が含まれる。シリコン基板1Aにおいて、互いに対向する第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32が複数形成され得る。例えば、1のシリコン基板1Aに、互いに対向する第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32が10以上形成され得る。
【0069】
この工程によって形成された傾斜面1A3の、第1主面1A1に垂直な方向の長さは、100μm以上300μm以下である。また、傾斜面1A3の、第1主面1A1に平行な方向の長さは、100μm以上300μm以下である 。
【0070】
傾斜面1A3が形成されたシリコン基板1Aにおいて、第1主面1A1から傾斜面1A3の第1主面1A1から最も遠い点までの第1主面1A1に垂直な方向の幅の150%以上を、この点から第2主面1A2までの第1主面1A1に垂直な方向の幅に確保しておくことが好ましい。あるいは、この点から第2主面1A2までの第1主面1A1に垂直な方向の幅を250%以上750%以下とすることが好ましい。200%以上とすることで、意図せずシリコン基板1Aが割れてしまう等の不良の発生を抑制することができ、750%以下とすることで、後の反射下地面を形成する工程に過度な作業負荷が掛からないようにできる。
【0071】
第1主面1A1に垂直な方向からみた平面視で(以下、上面視と言う。)、第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32はそれぞれ、第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32が対向する方向(以下、第1方向と言う。)とは垂直な方向(以下、第2方向と言う。)に延びる平面で構成される。
【0072】
この工程において、対向する第1傾斜面1A31と第2傾斜面1A32の間に、第1方向に幅を有する接続領域を形成する。例えば、形成される接続領域の幅は、500μm以下である。なお、接続領域は、対向する第1傾斜面1A31と第2傾斜面1A32を接続する領域である。第1傾斜面1A31の下端と第2傾斜面1A32の下端とが接続している場合、この接続する部分が接続領域となる。つまり、接続領域は、必ずしも第1方向に幅を有していなくてもよく、第1傾斜面1A31と第2傾斜面1A32とが接続する境界線を接続領域と捉えることもできる。
【0073】
この工程により、シリコン基板1Aにおいて、対向する2つの傾斜面1A3(第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32)及び接続領域を含む溝が複数形成されるといえる。また、2つの第1主面1A1によって溝が挟まれた構造が形成される。なお、溝を挟む2つの第1主面1A1は繋がっていてもよい。例えば、溝を囲むように第1主面1A1が設けられている構造が挙げられる。溝を挟んで隣り合う第1主面1A1の間隔は200μm以上500μm以下である。
【0074】
傾斜面1A3は、シリコンの{100}面を有する。第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32はいずれも、シリコンの{100}面を有する。傾斜面1A3は、<100>方向に伸び、シリコン基板1Aの第2主面1A2( つまり、{110}面)に対して45度の傾斜角度を有する。なお、{100}面に対して±2度程度のオフ角が傾斜面1A3に許容される。
【0075】
シリコン基板1Aに金属膜1Cを形成する工程において、傾斜面1A3上に金属膜1Cを形成する。金属膜1Cは、対向する第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32上に形成される。この工程において、金属膜1Cは、第1傾斜面1A31から第2傾斜面1A32に亘って形成される。接続領域の上にも金属膜1Cが形成されることになる。例えば、シリコン基板1Aの第1主面1A1側において、全ての傾斜面1A3を包含する領域の全てに金属膜1Cを形成する。この工程で形成される金属膜1Cの最大厚みは、200nm以上1000nm以下となり得る。
【0076】
金属膜1Cには、例えば、Cu、Ag、Al、Ni、Rh、Au、Ti、Pt、Pd、Mo、Cr、W等の単体金属又はこれらの金属を含む合金のうち、1または複数を選択して用いることができる。例えば、金属膜1Cを、Ti/Ru/Auの金属層で形成することができる。
【0077】
シリコン基板1Aに第3主面1A4を形成する工程において、シリコン基板1Aの第2主面1A2から第1主面1A1側に向かって、シリコン基板1Aを部分的に除去し、第3主面1A4を形成する。第3主面1A4は、第2主面1A2よりも第1主面1A1側に形成される。
【0078】
この工程では、第3主面1A4が1または複数の傾斜面1A3にまで到達しないように、シリコン基板1Aを部分的に除去する。従って、第3主面1A4は傾斜面1A3と接続しない。第3主面1A4が傾斜面1A3に達するということは、シリコン基板1Aに貫通孔が形成されたということになる。第3主面1A4が傾斜面1A3に達しないようにシリコン基板1Aを除去することで、シリコン光学部材1のサイズを小さくすることができる。また、後の反射膜1Dを設ける工程における処理が容易となる。
【0079】
第1主面1A1に垂直な方向に関し、この工程によって除去されるシリコン基板1Aの第2主面1A2から第3主面1A4までの幅は、シリコン基板1Aに傾斜面1A3を形成する工程によって形成された傾斜面1A3の幅よりも大きい。このように、シリコン基板1Aに除去のための十分な幅を確保しておくことで、小型のシリコン光学部材を安定して製造することができる。
【0080】
第3主面1A4から傾斜面1A3までの最短距離は、5μm以上60μm以下である。また、この最短距離は、10μm以上50μm以下とするのが好ましい。10μm以上とすることで貫通孔が形成され無いという利点があり、50μm以下とすることで第3主面1A4を傾斜面1A3に近づけるという利点がある。
【0081】
シリコン基板1Aの部分的な除去は、例えば、研磨、研削、切削などによって実行することができる。また、化学研磨、電解研磨、機械研磨などによって実行することができる。また、機械研磨など、機械を用いて物理的に除去する方法を採用することができる。
【0082】
シリコン基板1Aの部分的な除去は、支持基盤がシリコン基板1Aの第1主面1A1側を支持した状態で行うことができる。シリコン基板1Aを支持しておくことで、安定した状態でこの工程の作業を行うことができる。
【0083】
第3主面1A4は、シリコン光学部材1において反射面として機能する。例えば、第3主面1A4そのものを反射面に用いてもよいし、後述する、反射膜1Dを設ける工程によって、第3主面1A4上に反射膜1Dを設け、この状態で反射面に用いてもよい。
【0084】
シリコン基板1Aに反射膜1Dを設ける工程において、第3主面1A4に反射膜1Dを設ける。反射膜1Dは、例えば、0.1以上10μm以下の厚みで第3主面1A4上に形成することができる。反射膜1Dは、半導体レーザ素子12からの光を50%以上反射し得る材料によって形成することができる。
【0085】
反射膜1Dは、2種以上の誘電体を複数積層させた誘電体多層膜で構成することができる。誘電体多層膜としては、DBR(distributed Bragg reflector: 分布ブラッグ反射) 膜が好ましい。DBR膜を構成する誘電体としては、例えば、Si、Ti、Zr、Nb、Ta、Alからなる群より選択された少なくとも一種の元素を含む酸化物又は窒化物が挙げられる。なお、反射膜1Dは、Al、Au、Ag、Cr等の金属で構成することもできる。
【0086】
シリコン基板1Aを複数のシリコン光学部材1に個片化する工程では、シリコン基板1Aを分割して、複数のシリコン光学部材1に個片化する。各シリコン光学部材1は、傾斜面1A3及び第3主面1A4を含んでいる。また、各シリコン光学部材1は、第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32を含む。なお、シリコン光学部材1が有する第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32は、シリコン基板1Aにおいて対向していた第1傾斜面1A31と第2傾斜面1A32ではない。
【0087】
シリコン基板1Aから複数のシリコン光学部材1への個片化は、例えば、ダイシングによって実現することができる。シリコン基板1Aを、上面視で2つの第1主面1A1に挟まれた溝に垂直な方向にダイシングする。また、シリコン基板1Aを、上面視でこの溝に平行な方向に、接続領域を通るようにダイシングする(図3Gを参照)。
【0088】
各シリコン光学部材1は、接続領域は含まない。例えば、接続領域を通るようにダイシングをするときのブレードを、接続領域の幅(上面視で傾斜方向に平行な方向の幅)より大きい幅のブレードとすることで、接続領域を含まないシリコン光学部材1に個片化できる。傾斜面1A3を実装面にして他の部材と接合する場合に、接続領域が残っていると、反射面の実装精度に悪影響を及ぼすことがある。
【0089】
このようにしてシリコン基板1Aを分割して、複数のシリコン光学部材1を製造することができる。 なお、個片化の工程が実行される時点におけるシリコン基板1Aにおいて、第1主面1A1から第1傾斜面1A31の第1主面1A1から最も遠い点までの第1主面1A1に垂直な方向の幅は、この点から第3主面1A4までの第1主面1A1に垂直な方向の幅よりも大きい。
【0090】
ここで、シリコン基板1Aとシリコン光学部材1との対応について述べておく。シリコン基板1Aの第1主面1A1は、シリコン部材10の第4側面10Fに相当し、シリコン基板1Aの第3主面1A3は、シリコン部材10の主面10Bに相当し、シリコン基板1Aの第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32は、シリコン部材10の下面10A及び第3側面10Eに相当する。また、シリコン基板1Aにおいて隣り合う接続領域を切断した2つの切断面が、シリコン部材10の第1側面10C及び第2側面10Dに相当する。シリコン基板1Aに設けられる金属膜1Cは、シリコン部材10に設けられる金属膜20に相当し、シリコン基板1Aに設けられる反射膜1Dは、シリコン部材10に設けられる反射膜30に相当する。
【0091】
(第1実施例のシリコン光学部材1)
上述の製造方法に基づき製造したシリコン光学部材1の一実施例を説明する。図4Bは、第1実施例に係るシリコン光学部材1N1を示す画像である。シリコン光学部材1N1において、第1側面10Cの下面10Aと交わる辺から主面10Bと交わる辺までの幅は、50μmである。第2側面10Dの第3側面10Eと交わる辺から主面10Bと交わる辺までの幅は、50μmである。第4側面10Fの下面10Aと交わる辺から第3側面10Eと交わる辺までの幅は、30μmである。距離dは、40μmである。シリコン部材10のX方向の幅は、310μmである。シリコン部材10のY方向の幅は、650μmである。シリコン部材10のZ方向の幅は、310μmである。下面10Aの第1辺の長さは、650μmである。下面10Aの第3辺の長さは250μmである。また、主面10Bの上端から下端までの距離は380μmである。主面10Bから第4側面10Fまでの距離は230μmである。
【0092】
(第2実施例のシリコン光学部材1)
上述の製造方法に基づき製造したシリコン光学部材1の他の一実施例を説明する。図4Cは、第2実施例に係るシリコン光学部材1N2を示す画像である。シリコン光学部材1N2において、第1側面10Cの下面10Aと交わる辺から主面10Bと交わる辺までの幅は、50μmである。第2側面10Dの第3側面10Eと交わる辺から主面10Bと交わる辺までの幅は、50μmである。第4側面10Fの下面10Aと交わる辺から第3側面10Eと交わる辺までの幅は、20μmである。距離dは、40μmである。シリコン部材10のX方向の幅は、220μmである。シリコン部材10のY方向の幅は、650μmである。シリコン部材10のZ方向の幅は、220μmである。下面10Aの第1辺の長さは、650μmである。下面10Aの第3辺の長さは160μmである。また、主面10Bの上端から下端までの距離は250μmである。主面10Bから第4側面10Fまでの距離は170μmである。
【0093】
(比較例のシリコン光学部材99)
比較例となる従来のシリコン光学部材99の一例を説明する。図4Aに、第1実施例に係るシリコン光学部材1N1、及び、第2実施例に係るシリコン光学部材1N2と共に、比較例のシリコン光学部材99を示している。シリコン光学部材99において、第1側面10Cの下面10Aと交わる辺から主面10Bと交わる辺までの幅は、145μmである。第2側面10Dの第3側面10Eと交わる辺から主面10Bと交わる辺までの幅は、145μmである。第4側面10Fの下面10Aと交わる辺から第3側面10Eと交わる辺までの幅は、250μmである。距離dは、100μmである。シリコン部材10のX方向の幅は、950μmである。シリコン部材10のY方向の幅は、1000μmである。シリコン部材10のZ方向の幅は、950μmである。下面10Aの第1辺の長さは、1000μmである。下面10Aの第3辺の長さは650μmである。また、主面10Bの上端から下端までの距離は950μmである。主面10Bから第4側面10Fまでの距離は600μmである。
【0094】
このように、実施形態に係るシリコン光学部材1は、従来技術によって製造された比較例のシリコン光学部材99に比して小型化されている。なお、比較例のシリコン部材99は、その製造工程において、少なくとも、上述のシリコン基板に第3主面を形成する工程を有しておらず、第2主面を反射面としている。
【0095】
次に、上述のシリコン光学部材1を備える発光装置100の一例を説明する。図5乃至図8は、発光装置100の例示的な一形態を説明するための図面である。図5は、発光装置100の斜視図である。図6は、発光装置100から蓋部材11Nを除いた状態の斜視図である。図7は、発光装置100から蓋部材11Nを除いた状態の上面図である。図8は、図5のVIII-VIII断面線における断面図である。
【0096】
発光装置100は、複数の構成要素を備えている。発光装置100が備える複数の構成要素は、パッケージ11、半導体レーザ素子12、調整部材13、及び、反射部材14を含む。なお、発光装置100は、この他にも構成要素を備えていてよい。
【0097】
(パッケージ11)
パッケージ11は、基板11Aと、蓋部材11Nとを含む。蓋部材11Nは、基板11Aに接合される。基板11Aは、板状の形状で形成される。基板11Aは、実装面11Eを有する。基板11Aの実装面11Eに垂直な方向の幅(厚み)は、0.2mm以上0.5mm以下である。
【0098】
上面視で、パッケージ11の外縁形状は矩形である。この矩形は、長辺と短辺を有する矩形とすることができる。図示されるパッケージ11において、この矩形の長辺方向はX方向と同じ方向であり、短辺方向はY方向と同じ方向である。なお、上面視で、パッケージ11の外縁形状は矩形でなくてもよい。パッケージ11の実装面11Eに垂直な方向の幅は、1mm以上3.5mm以下である。
【0099】
パッケージ11には、他の構成要素が配置される内部空間が形成される。この内部空間は、真空あるいは気密状態で封止された閉空間とすることができる。
【0100】
基板11Aは、セラミックを主材料に用いて形成することができる。セラミックとしては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、炭化ケイ素などが挙げられる。
【0101】
蓋部材11Nは、枠部と、枠部による枠を覆う上部と、を有する。蓋部材11Nの枠部が、基板11Aと接合する。
【0102】
蓋部材11Nは、光を透過する透光性を有する。ここで、透光性とは、光に対する透過率が80%以上であることとする。なお、全ての波長の光に対して80%以上の透過率を有していなくてもよい。蓋部材11Nは、一部に非透光性の領域(透光性を有していない領域)を有していてもよい。
【0103】
蓋部材11Nは、ガラスを主材料に用いて形成される。蓋部材11Nを形成する主材料は、高い透光性を有する材料である。蓋部材11Nは、ガラスに限らず、例えば、サファイアを主材料に用いて形成してもよい。
【0104】
(半導体レーザ素子12)
半導体レーザ素子12は、光を出射する光出射面を有する。半導体レーザ素子12は、上面、下面、複数の側面を有する。半導体レーザ素子12の側面が、光出射面となる。半導体レーザ素子12は、1または複数の光出射面を有する。
【0105】
半導体レーザ素子12の上面の形状は、長辺と短辺を有する矩形である。なお、半導体レーザ素子12の上面の形状は、矩形でなくてもよい。
【0106】
半導体レーザ素子12には、例えば、青色の光を出射する半導体レーザ素子、緑色の光を出射する半導体レーザ素子、または、赤色の光を出射する半導体レーザ素子を採用することができる。なお、半導体レーザ素子12に、その他の色の光を出射する半導体レーザ素子を採用してもよい。
【0107】
ここで、青色の光は、その発光ピーク波長が420nm~494nmの範囲内にある光をいうものとする。緑色の光は、その発光ピーク波長が495nm~570nmの範囲内にある光をいうものとする。赤色の光は、その発光ピーク波長が605nm~750nmの範囲内にある光をいうものとする。
【0108】
半導体レーザ素子12から出射される光(レーザ光)は拡がりを有する。また、半導体レーザ素子12の出射端面(光出射面)から出射される光は、発散光である。
【0109】
半導体レーザ素子12から出射される光は、光の出射端面と平行な面において楕円形状のファーフィールドパターン(以下「FFP」という。)を形成する。FFPとは、出射端面から離れた位置における出射光の形状や光強度分布である。
【0110】
ここで、FFPの楕円形状の中心を通る光、言い換えると、FFPの光強度分布におけるピーク強度の光を、光軸を進む光、あるいは、光軸を通る光と呼ぶものとする。また、FFPの光強度分布において、ピーク強度値に対して1/e以上の強度を有する光を、主要部分の光と呼ぶものとする。
【0111】
半導体レーザ素子12から出射される光のFFPの形状は、光の出射端面と平行な面において、積層方向の方が、積層方向に垂直な方向よりも長い楕円形状である。積層方向とは、半導体レーザ素子12において活性層を含む複数の半導体層が積層される方向のことである。積層方向に垂直な方向は、半導体層の面方向ということもできる。また、FFPの楕円形状の長径方向を半導体レーザ素子12の速軸方向、短径方向を半導体レーザ素子12の遅軸方向ということもできる。
【0112】
FFPの光強度分布に基づきピーク光強度の1/eの光強度の光が拡がる角度を、半導体レーザ素子12の光の拡がり角とする。光の拡がり角は、ピーク光強度の1/eの光強度の他に、例えば、ピーク光強度の半値の光強度から求められることもある。本明細書の説明において、単に「光の拡がり角」というときは、ピーク光強度の1/eの光強度における光の拡がり角を指すものとする。なお、速軸方向の拡がり角の方が、遅軸方向の拡がり角よりも大きいといえる。
【0113】
半導体レーザ素子12は、GaN系材料で構成された活性層を含む半導体レーザ素子とすることができる。また、半導体レーザ素子12は、GaAs系材料で構成された活性層を含む半導体レーザ素子とすることができる。
【0114】
例えば、青色の光を発する半導体レーザ素子12、または、緑色の光を発する半導体レーザ素子12として、GaN系材料で構成された活性層を含む半導体レーザ素子が挙げられる。GaN系材料としては、例えば、GaN、InGaN、及びAlGaNなどが挙げられる。赤色の光を発する半導体レーザ素子12として、GaP系、または、GaAs系材料の半導体で構成された活性層を含む半導体レーザ素子が挙げられる。GaAs系材料としては、例えば、GaAs、及びAlGaAsなどが挙げられる。GaP系材料としては、GaP、AlGaP、及びAlGaInPなどが挙げられる。GaAsPなどのAsとPを含む半導体で活性層を構成してもよい。
【0115】
(調整部材13)
調整部材13は、第1面13A及び第2面13Bを有する。第2面13Bは、第1面13Aの反対側の面である。調整部材13の厚さ(第1面13Aから第2面13Bまでの幅)は、50μm以上150μm以下である。調整部材13は、板状の形状で形成される。上面視で、調整部材13の外形は長辺および短辺を有する矩形である。なお、調整部材13の上面視の外形は矩形でなくてもよい。
【0116】
調整部材13は、金属を主材料に用いて形成することができる。主材料となる金属には、例えば、Cuを採用することができる。また、Cuに限らず、Moを主材料に用いることができる。なお、調整部材13は、金属以外の材料を主材料に用いて形成されてもよい。
【0117】
(反射部材14)
反射部材14には、上述のシリコン光学部材1を用いることができる。反射膜30が設けられる主面10Bを、反射部材14の光反射面とすることができる。なお、反射部材14は、主面10Bに反射膜30が設けられていない状態で、主面10Bを光反射面として用いることもできる。
【0118】
反射部材14の光反射面は、光反射面に照射される光のピーク波長に対する反射率が90%以上である。また、この反射率は95%以上であってもよい。また、この反射率を99%以上とすることもできる。光反射率は、100%以下あるいは100%未満である。
【0119】
(発光装置100)
発光装置100において、半導体レーザ素子12がパッケージ11の実装面11Eに配置される。半導体レーザ素子12は、光出射面から側方に進行する光を出射する。半導体レーザ素子12から出射される光は、実装面11Eに垂直な方向を速軸方向とする光である。
【0120】
半導体レーザ素子12は、調整部材13を介して実装面11Eに配置される。調整部材13の第1面13Aに半導体レーザ素子12は接合される。調整部材13の第2面13Bが、実装面11Eに接合される。
【0121】
発光装置100において、反射部材14が配置される。反射部材14は、半導体レーザ素子12から出射された光を反射する。半導体レーザ素子12は、光出射面を反射部材14の主面10Bに向ける。反射部材14は、実装面11Eに配置される。反射部材14は、実装面11Eと接合する。
【0122】
主面10Bは、半導体レーザ素子12から出射された光の速軸方向における幅よりも、遅軸方向における幅の方が大きい。半導体レーザ素子12から出射される光のFFPの形状に対して、反射部材14の主面10Bの大小関係が逆になっている。このように、反射部材14をY方向に長くすることで、反射部材14を基板11Aに実装しやすくできる。
【0123】
主面10Bは、半導体レーザ素子12から出射された光の速軸方向における幅よりも、遅軸方向における幅の方が、1.5倍以上6倍以下の範囲で大きいことが好ましい。1.5倍以上とすることで、反射部材14の製造過程で第5側面10Mあるいは第6側面10Nにクラックなどが入った場合にも、光が照射される領域にクラックの影響を及びにくくすることができる。また、6倍より大きくなると、発光装置100が過度に大型化してしまうことがある。
【0124】
半導体レーザ素子12の光出射面における発光点は、光出射面の上端よりも下端に近い位置にある。調整部材13を介することで、下端に近い発光点であっても、光反射面に主要部分の光の全部を照射させることができる。
【0125】
調整部材13の、実装面11Eに垂直な方向の厚みは、50μm以上150μm以下である。半導体レーザ素子12から反射部材14までの実装面11Eに平行な方向の最短距離は、1μmを超え150μm以下である。小さなシリコン光学部材1を実現することで、半導体レーザ素子12と反射部材14を近付け、小型の発光装置100を実現することができる。
【0126】
実装面11Eから半導体レーザ素子12の光の出射点までの距離は、50μmを超え150μm以下である。この距離は、実装面11Eから反射部材14の主面10Bの上端までの距離の半分以下である。
【0127】
反射部材14の下面10Aと実装面11Eが対向する。反射部材14の下面10Aが実装面11Eに接合される。反射部材14の下面10Aに設けられた金属膜20は、実装面11Eとの接合に利用される。
【0128】
光学部材の製造過程において、シリコン基板1Aの第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32の両方に金属膜1Cを形成した。シリコン基板1Aを分割し、複数のシリコン光学部材1に個片化された状態においても、第1傾斜面1A31及び第2傾斜面1A32の両方に金属膜1Cが形成されている。そのため、シリコン光学部材1の下面10Aには、第1傾斜面1A31あるいは第2傾斜面1A32のいずれを採用してもよい。第1傾斜面1A31が下面10Aとなり、第2傾斜面1A32が第3側面10Eとなるシリコン光学部材1もあれば、第1傾斜面1A31が第3側面10Eとなり、第2傾斜面1A32が下面10Aとなるシリコン光学部材1もあり得る。
【0129】
このように、シリコン光学部材1の下面10A及び第3側面10Eの両方に金属膜20が形成されているシリコン光学部材1は、発光装置100の実装に際して、第1傾斜面1A31または第2傾斜面1A32のどちらを下面10Aにしてもよいため、実装時に、シリコン光学部材1のどれが第1傾斜面1A31であり、また、どれが第2傾斜面1A32であるかを判別する必要がなく、製造を容易にし、生産効率を向上させることができる。
【0130】
以上、本発明に係る各実施形態を説明してきたが、本発明に係る発光装置は、各実施形態の発光装置に厳密に限定されるものではない。つまり、本発明は、各実施形態により開示された発光装置の外形や構造に限定されなければ実現できないものではない。本発明は、全ての構成要素を必要十分に備えることを必須とせずに適用され得るものである。例えば、特許請求の範囲に、実施形態により開示された発光装置の構成要素の一部が記載されていなかった場合、その一部の構成要素については、代替、省略、形状の変形、材料の変更などの当業者による設計の自由度を認め、その上で特許請求の範囲に記載された発明が適用されることを特定するものである。
【0131】
本明細書でこれまで説明してきた内容を通し、以下の技術事項が開示される。
(項1)
第1主面及び前記第1主面の反対側の第2主面を有するシリコン基板を準備する工程と、
前記第1主面上にマスクパターンを形成する工程と、
前記シリコン基板を、前記マスクパターンをマスクとして用いて前記第1主面側からウェットエッチングし、1または複数の傾斜面を形成する工程と、
前記シリコン基板の前記第1主面側を支持し、前記1または複数の傾斜面にまで到達しないように前記第2主面から前記第1主面側に向かって前記シリコン基板を部分的に除去し、前記第2主面よりも前記第1主面側において、第3主面を形成する工程と、
前記シリコン基板を、それぞれが前記傾斜面及び前記第3主面を含む複数のシリコン光学部材に個片化する工程を含む、シリコン光学部材の製造方法。
(項2)
前記第3主面から、前記傾斜面までの最短距離は、10μm以上50μm以下である、項1に記載の製造方法。
(項3)
前記傾斜面から前記第3主面までの最短距離を、前記傾斜面に垂直な方向成分と、前記傾斜面に平行な方向成分とに分けたときの、前記傾斜面に垂直な方向成分の距離は、10μm以上50μm以下である、項1または項2に記載の製造方法。
(項4)
前記傾斜面を形成する工程によって形成された前記傾斜面の、前記第1主面に垂直な方向の幅は、100μm以上300μm以下である、項1乃至項3のいずれか一項に記載の製造方法。
(項5)
前記第3主面に反射膜を設ける工程をさらに含む、項1乃至項4のいずれか一項に記載の製造方法。
(項6)
前記シリコン光学部材は、前記第1主面から前記第3主面までの距離が、100μm以上400μm以下である、項1乃至項5のいずれか一項に記載の製造方法。
(項7)
前記傾斜面を形成する工程において、それぞれが互いに対向する2つの前記傾斜面を含む複数の溝を形成し、溝を挟んで隣り合う前記第1主面の間隔を200μm以上500μm以下とする、項1乃至項6のいずれか一項に記載の製造方法。
(項8)
前記第1主面に垂直な方向に関し、前記第3主面を形成する工程において除去される前記シリコン基板の前記第2主面から前記第3主面までの幅は、前記傾斜面を形成する工程によって形成された前記傾斜面の幅よりも大きい、項1乃至項7のいずれか一項に記載の製造方法。
(項9)
下面と、前記下面と交わり前記下面から上方へと延びる第1側面と、前記第1側面と交わり前記下面に対して45度の角度で前記第1側面から斜め上方へと延びる主面と、前記第1側面の反対側で前記主面と交わり前記主面から下方へと延びる第2側面と、前記第2側面と交わり前記下面に対して90度の角度で前記第2側面から下方へと延びる第3側面と、を有するシリコン部材
を備え、
前記第1側面の前記下面と交わる辺から前記主面と交わる辺までの幅は、30μm以上100μm以下であり、
前記下面の前記第1側面側の端点から前記第3側面側の端点までの幅よりも、前記主面の下端から上端までの幅の方が大きい、シリコン光学部材。
(項10)
前記下面から前記主面の上端までの高さは100μm以上550μm以下である、項9に記載のシリコン光学部材。
(項11)
前記第1側面の前記下面と交わる辺から前記主面と交わる辺までの幅は、60μm未満である、項9または項10に記載のシリコン光学部材。
(項12)
前記主面に設けられる反射膜をさらに備える、項9乃至項11のいずれか一項に記載のシリコン光学部材。
(項13)
実装面を有する基板と、
前記実装面と接合する請求項9乃至12のいずれか一項に記載のシリコン光学部材と、
第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有し、前記第2面が前記実装面に接合され、前記実装面に垂直な方向の厚みが50μm以上150μm以下の調整部材と、
光出射面を前記シリコン光学部材の前記主面に向けて、前記調整部材の前記第1面に接合される半導体レーザ素子と、
を備え、
前記半導体レーザ素子から前記シリコン光学部材までの、前記実装面に平行な方向の最短距離は0μmを超え100μm以下である、発光装置。
【産業上の利用可能性】
【0132】
各実施形態に記載の発光装置は、プロジェクタ、ヘッドマウントディスプレイ、照明、車載ヘッドライト、ディスプレイ等に使用することができる。
【符号の説明】
【0133】
1 シリコン光学部材
10 シリコン部材
10A 下面
10B 主面
10C 第1側面
10D 第2側面
10E 第3側面
10F 第4側面
10M 第5側面
10N 第6側面
20 金属膜
30 反射膜
1A シリコン基板
1A1 第1主面
1A2 第2主面
1A3 傾斜面
1A31 第1傾斜面
1A32 第2傾斜面
1A4 第3主面
1B マスクパターン
1C 金属膜
1D 反射膜
100 発光装置
11 パッケージ
11A 基板
11E 実装面
11N 蓋部材
12 半導体レーザ素子
13 調整部材
13A 第1面
13B 第2面
14 反射部材
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8