(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106179
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/046 20140101AFI20240731BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20240731BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20240731BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B23K26/046
B23K26/03
B23K26/53
H01L21/78 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010344
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】新井 裕介
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AE01
4E168CA06
4E168CA11
4E168CB07
4E168CB12
4E168CB15
4E168CB23
4E168DA02
4E168DA24
4E168JA12
5F063AA02
5F063AA13
5F063AA48
5F063BA25
5F063CB03
5F063CB07
5F063DD29
5F063DD31
5F063DD32
5F063DE02
5F063DE03
5F063DE11
5F063DE17
5F063DE23
5F063DE34
5F063EE21
5F063EE86
(57)【要約】
【課題】対物レンズの温度変化に関係なくレーザ加工の加工品質を向上可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供する。
【解決手段】レーザ光Lを被加工物(ウェーハ)の内部に集光させる対物レンズ32であって、レンズ光軸O1と、補正環35と、補正環35の回転に応じてレンズ光軸1に沿って移動する1又は複数の移動レンズ34aと、を有する対物レンズ32と、補正環35を回転させる回転駆動部22と、レーザ加工中に、対物レンズ32の温度を測定する1又は複数の温度センサ20と、レーザ加工中に、温度センサ20の測定結果に基づいて、対物レンズ32の温度変化に応じた焦点位置の光軸方向の変化を打ち消す方向に回転駆動部22を駆動して補正環35を回転させる焦点位置調整部46と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の内部にレーザ光の焦点位置を合わせて前記レーザ光を前記被加工物に照射して、前記被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工を実行するレーザ加工装置において、
前記レーザ光を前記被加工物の内部に集光させる対物レンズであって、レンズ光軸と、補正環と、前記補正環の回転に応じて前記レンズ光軸に沿って移動する1又は複数の移動レンズと、を有する対物レンズと、
前記補正環を回転させる回転駆動部と、
前記レーザ加工中に、前記対物レンズの温度を測定する1又は複数の温度センサと、
前記レーザ加工中に、前記温度センサの測定結果に基づいて、前記対物レンズの温度変化に応じた前記焦点位置の前記レンズ光軸の光軸方向の変化を打ち消す方向に前記回転駆動部を駆動して前記補正環を回転させる焦点位置調整部と、
を備えるレーザ加工装置。
【請求項2】
前記対物レンズの温度変化と、前記対物レンズの温度変化に応じた前記被加工物内での前記焦点位置の前記光軸方向の変化を打ち消す前記補正環の回転方向及び回転角度と、の関係を示す補正情報を記憶する記憶部を備え、
前記焦点位置調整部が、前記対物レンズの温度測定結果に基づいて前記記憶部内の前記補正情報を参照して前記補正環の回転方向及び回転角度を決定し、前記回転角度及び前記回転角度の決定結果に基づいて前記回転駆動部を駆動する請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記対物レンズの温度変化と、前記対物レンズの温度変化に応じた前記被加工物内での前記焦点位置の前記光軸方向の変化との関係を示す焦点位置変化情報を記憶する記憶部を備え、
前記焦点位置調整部が、前記対物レンズの温度測定結果に基づいて前記記憶部内の前記焦点位置変化情報を参照して前記被加工物内での前記焦点位置の変化方向及び変化量を判別し、前記変化方向及び前記変化量の判別結果に基づいて前記焦点位置の前記光軸方向の変化を打ち消す前記補正環の回転方向及び回転角度を決定して、前記回転角度及び前記回転角度の決定結果に基づいて前記回転駆動部を駆動する請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記温度センサが、前記対物レンズのレンズ鏡筒の外周面に設けられている請求項1から3のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
レンズ光軸と、補正環と、前記補正環の回転に応じて前記レンズ光軸に沿って移動する1又は複数の移動レンズと、を有する対物レンズによって被加工物の内部にレーザ光の焦点位置を合わせて前記レーザ光を前記被加工物に照射して、前記被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工を実行するレーザ加工方法において、
前記レーザ加工中に、前記対物レンズの温度を測定する温度測定工程と、
前記レーザ加工中に、前記温度測定工程の測定結果に基づいて、前記対物レンズの温度変化に応じた前記焦点位置の前記レンズ光軸の光軸方向の変化を打ち消す方向に前記補正環を回転させる焦点位置調整工程と、
を有するレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物であるシリコンウェーハ(以下、ウェーハと略す)は、複数のデバイスが格子状のストリート(加工ライン、切断予定ラインともいう)によって格子状に区画されており、ウェーハをストリートに沿って割断(分割)することにより個々のデバイスが製造される。ウェーハを複数のデバイス(チップ)に割断する前工程として、レーザ加工装置によるウェーハのレーザ加工が実行される。
【0003】
例えば特許文献1に記載のレーザ加工装置は、レーザヘッドの対物レンズの焦点位置をウェーハの内部に合わせた状態でこのレーザヘッドからレーザ光をストリートに沿って照射することで、ストリートに沿ってウェーハの内部に切断の起点となるレーザ加工領域を形成するレーザ加工(内部集光加工ともいう)を実行する。これにより、レーザ加工領域からウェーハの厚さ方向に亀裂(クラックともいう)が伸展するので、後工程の割断工程においてウェーハが各デバイス(チップ)に割断される。
【0004】
このようなレーザ加工を実行する場合には、ウェーハの厚み方向(加工深さ方向)の所定位置に精密にレーザ加工領域を生成することが重要である。このため、特許文献1に記載のレーザ加工装置には、対物レンズの収差補正(対物レンズにより集光されるレーザ光の中心光線と周辺光線の集光深度差を調整)するために、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)又は補正環付き対物レンズが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、レーザ加工装置によるレーザ加工中には時間経過と共に対物レンズの温度が上昇することで、対物レンズによるレーザ光の焦点位置及び対物レンズの収差に変化が生じてしまう。その結果、レーザ加工の加工品質が低下、特にレーザ加工領域の加工深さ位置が上述の規定位置からずれることで、後工程でウェーハを複数のチップに割断する場合にチップの割断品質が低下する虞がある。レーザ加工の加工品質の低下はレーザ加工済みのウェーハの品質チェックにて初めて検知されるので、歩留まりの低下が避けられない。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、対物レンズの温度変化に関係なくレーザ加工の加工品質を向上可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的を達成するためのレーザ加工装置は、被加工物の内部にレーザ光の焦点位置を合わせてレーザ光を被加工物に照射して、被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工を実行するレーザ加工装置において、レーザ光を被加工物の内部に集光させる対物レンズであって、レンズ光軸と、補正環と、補正環の回転に応じてレンズ光軸に沿って移動する1又は複数の移動レンズと、を有する対物レンズと、補正環を回転させる回転駆動部と、レーザ加工中に、対物レンズの温度を測定する1又は複数の温度センサと、レーザ加工中に、温度センサの測定結果に基づいて、対物レンズの温度変化に応じた焦点位置のレンズ光軸の光軸方向の変化を打ち消す方向に回転駆動部を駆動して補正環を回転させる焦点位置調整部と、を備える。
【0009】
このレーザ加工装置によれば、対物レンズの温度変化に関わらず、レーザ光の焦点位置を光軸方向において一定位置(略一定位置を含む)に維持することができる。
【0010】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、対物レンズの温度変化と、対物レンズの温度変化に応じた被加工物内での焦点位置の光軸方向の変化を打ち消す補正環の回転方向及び回転角度と、の関係を示す補正情報を記憶する記憶部を備え、焦点位置調整部が、対物レンズの温度測定結果に基づいて記憶部内の補正情報を参照して補正環の回転方向及び回転角度を決定し、回転角度及び回転角度の決定結果に基づいて回転駆動部を駆動する。これにより、レーザ光の焦点位置を光軸方向において一定位置に維持することができる。
【0011】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、対物レンズの温度変化と、対物レンズの温度変化に応じた被加工物内での焦点位置の光軸方向の変化との関係を示す焦点位置変化情報を記憶する記憶部を備え、焦点位置調整部が、対物レンズの温度測定結果に基づいて記憶部内の焦点位置変化情報を参照して被加工物内での焦点位置の変化方向及び変化量を判別し、変化方向及び変化量の判別結果に基づいて焦点位置の光軸方向の変化を打ち消す補正環の回転方向及び回転角度を決定して、回転角度及び回転角度の決定結果に基づいて回転駆動部を駆動する。これにより、レーザ光の焦点位置を光軸方向において一定位置に維持することができる。
【0012】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、温度センサが、対物レンズのレンズ鏡筒の外周面に設けられている。
【0013】
本発明の目的を達成するためのレーザ加工方法は、レンズ光軸と、補正環と、補正環の回転に応じてレンズ光軸に沿って移動する1又は複数の移動レンズと、を有する対物レンズによって被加工物の内部にレーザ光の焦点位置を合わせてレーザ光を被加工物に照射して、被加工物の内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工を実行するレーザ加工方法において、レーザ加工中に、対物レンズの温度を測定する温度測定工程と、レーザ加工中に、温度測定工程の測定結果に基づいて、対物レンズの温度変化に応じた焦点位置のレンズ光軸の光軸方向の変化を打ち消す方向に補正環を回転させる焦点位置調整工程と、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、対物レンズの温度変化に関係なくレーザ加工の加工品質を向上可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】レーザ加工装置による加工対象のウェーハの平面図である。
【
図3】
図2に示したウェーハの一部の断面図である。
【
図4】符号4Aは対物レンズの側面図であり、符号4B及び符号4Cは対物レンズの断面図である。
【
図5】回転駆動部の構成を説明するための説明図である。
【
図6】回転駆動部による補正環の回転駆動を説明するための説明図である。
【
図8】ウェーハの内部へのレーザ加工領域の形成を説明するための説明図である。
【
図9】ウェーハの内部への複数層のレーザ加工領域の形成を説明するための説明図である。
【
図10】焦点位置調整部によるレーザ加工中のレーザ光の焦点位置調整を説明するための説明図である。
【
図11】レーザ加工装置によるウェーハのレーザ加工処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[レーザ加工装置の構成]
図1は、本発明のレーザ加工装置10の概略図である。
図1に示すように、レーザ加工装置10は、被加工物であるウェーハW(例えばシリコンウェーハ)を複数のチップ4(
図2参照)に割断する割断プロセスの前工程として、ウェーハWに対してレーザ加工(内部集光加工)を施す。なお、図中のXYZ方向は互いに直交し、このうちX方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向(ウェーハWの厚み方向)である。またθ方向は、Z方向を回転軸とする回転方向である。
【0017】
図2は、レーザ加工装置10による加工対象のウェーハWの平面図である。
図3は、
図2に示したウェーハWの一部の断面図である。
図2及び
図3に示すように、ウェーハWには、複数のストリートCH1と複数のストリートCH2とが互いに交差して格子状に形成されている。これにより、ウェーハWは、各ストリートCH1,CH2により複数の領域に区画されている。この区画された各領域にはチップ4を構成するデバイス層6が設けられている。
【0018】
レーザ加工装置10は、レーザ加工により、最初にストリートCH1ごとにストリートCH1に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域Pを形成し、次いでストリートCH2ごとにストリートCH2に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域Pを形成する。
【0019】
図1に戻って、レーザ加工装置10は、テーブル12(XYZθステージともいう)と、移動機構14と、赤外線カメラ16と、レーザヘッド18と、温度センサ20と、回転駆動部22と、制御装置24と、を備える。
【0020】
テーブル12は、不図示のバックグラインドテープ等を介して、ウェーハWのデバイス層6が設けられている側の表面を吸着保持するチャックテーブルである。これにより、ウェーハWは、その表面とは反対側の裏面が後述のレーザヘッド18と対向するようにテーブル12に保持される。
【0021】
移動機構14は、アクチュエータ及びモータ等により構成されており、後述の制御装置24の下、テーブル12をXYZ方向に移動させたり、或いはテーブル12をθ方向に回転させたりする。移動機構14は、レーザ加工時にはテーブル12をX方向(加工送り方向)に移動させる。なお、移動機構14は、テーブル12及びウェーハWに対してレーザヘッド18をXYZθ方向に相対移動可能であれば特に限定されず、例えば、レーザヘッド18を移動させてもよい。
【0022】
赤外線カメラ16は、レーザヘッド18と一体(別体でも可)に設けられている。この赤外線カメラ16は、ウェーハWのレーザ加工前にウェーハWに形成されているアライメント基準を撮影して、このアライメント基準の撮影画像データを制御装置24へ出力する。ここでいうアライメント基準とは、レーザ加工装置10がウェーハWのストリートCH1,CH2の位置を認識するための基準であり、例えば、ストリートCH1,CH2、或いはアライメントマーク(図示は省略)等の公知の基準が用いられる。なお、アライメント基準は、赤外線カメラ16で撮影可能であれば、ウェーハWの内部、表面、及び裏面等の任意の位置に設けられていてもよい。
【0023】
レーザヘッド18は、テーブル12のZ方向上方側の位置(ウェーハWの裏面に対向する位置)に配置されており、後述の制御装置24により制御される。このレーザヘッド18は、ウェーハWの内部にレーザ光Lの焦点位置(集光点)を合わせてレーザ光LをウェーハWに向けて照射することで、ストリートCH1,CH2に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域Pを形成する。
【0024】
レーザヘッド18は、大別して、レーザ光源30と対物レンズ32とを備える。なお、レーザヘッド18には、レーザ光源30と対物レンズ32との間のレーザ光Lの光路中に公知の各種光学系が設けられているが、ここでは具体的な説明は省略する。
【0025】
レーザ光源30は、レーザ加工用のレーザ光L(パルスレーザ光)を出射する。このレーザ光源30及びレーザ光Lの条件としては、例えば、レーザ光源30が半導体レーザ励起Nd:YAGレーザ、波長が波長:1.1μm、レーザ光スポット断面積が3.14×10-8cm2、発振形態がQスイッチパルス、繰り返し周波数が80~120kHz、パルス幅が180~280ns、出力が8Wである。
【0026】
対物レンズ32は、所謂補正環付き対物レンズであり、レーザ光源30から出射されたレーザ光LをウェーハWの内部に集光する。これにより、レーザ加工によってウェーハWの内部にレーザ加工領域Pが形成される。
【0027】
図4の符号4Aは対物レンズ32の側面図であり、符号4B及び符号4Cは対物レンズ32の断面図である。
図4の符号4Aから符号4Cに示すように、対物レンズ32は、Z方向に平行なレンズ光軸O1と、レンズ鏡筒33と、複数のレンズ34(レンズ群)と、補正環35と、駆動伝達機構36と、を有する。
【0028】
レンズ鏡筒33は、レンズ光軸O1の方向である光軸方向(Z方向)に対して平行に延びた略円筒形状に形成されており、レーザヘッド18の筐体に固定されている。このレンズ鏡筒33の内部には光軸方向に沿って複数のレンズ34が収納されている。これらレンズ34の中には、後述の駆動伝達機構36によって光軸方向に移動可能に保持されている1又は複数の移動レンズ34a(移動レンズ群)が含まれている。
【0029】
補正環35は、レンズ鏡筒33の外周面に設けられており、レンズ光軸O1の軸周り方向に回転可能である。この補正環35は後述の回転駆動部22によって回転される。また、補正環35は、図示は省略するが駆動伝達機構36に連結されている。
【0030】
駆動伝達機構36は、レンズ鏡筒33の内部において移動レンズ34aを光軸方向に移動可能に保持している。この駆動伝達機構36は、補正環35がレンズ光軸O1の軸周り方向に回転した場合に、この補正環35の回転運動を、移動レンズ34aをレンズ光軸O1に沿って移動可能な直線運動に変換する。これにより、補正環35の回転(回転方向及び回転角度)に応じて移動レンズ34aがレンズ光軸O1に沿って移動する(
図4の符号4B,4C及び矢印A1参照)。その結果、公知のように対物レンズ32の収差等を補正することができる(上記特許文献1参照)。また、補正環35を回転させた場合には、移動レンズ34aの移動により対物レンズ32の焦点位置も光軸方向(Z方向)に沿って移動する。なお、駆動伝達機構36の具体的な構成については公知技術であるのでここでは説明を省略する。
【0031】
レンズ鏡筒33の外周面には複数個の温度センサ20が取り付けられている。なお、本実施形態ではレンズ鏡筒33の外周面に2個の温度センサ20を取り付けているが、3個以上の温度センサ20を取り付けてもよい。また、温度センサ20の数が1個でもよい。また、レンズ鏡筒33の外周面以外の例えば、テーブル12などのレーザ加工装置10内の各部の温度が測定できるように配置しても良い。
【0032】
図1に戻って、各温度センサ20は、後述の制御装置24の制御の下、対物レンズ32の温度を測定してその温度測定結果を制御装置24へ出力する。
【0033】
回転駆動部22は、後述の制御装置24の制御の下、補正環35をレンズ光軸O1の軸周り方向に回転させる。
【0034】
図5は、回転駆動部22の構成を説明するための説明図である。なお、符号5Aは対物レンズ32及び回転駆動部22をY方向側から見た側面図であり、符号5Bは符号5Aの対物レンズ32及び回転駆動部22をZ方向下方側(矢印A2方向側)から見た下面図である。
【0035】
また、
図6は、回転駆動部22による補正環35の回転駆動を説明するための説明図である。なお、符号6Aは対物レンズ32及び回転駆動部22をY方向側から見た側面拡大図であり、符号6Bは符号6Aの対物レンズ32及び回転駆動部22をZ方向下方側(矢印A3方向側)から見た下面図である。
【0036】
図5の符号5A及び符号5Bに示すように、回転駆動部22は、例えば、補正環レバー25、アーム26、及びアーム駆動機構27により構成される。
【0037】
補正環レバー25は、略円環形状に形成されており、補正環35の外周面に対して着脱自在に外嵌固定される。これにより、補正環レバー25は、補正環35と一体にレンズ光軸O1の軸回り方向に回転する。また、補正環レバー25の外周面には、補正環レバー25の径方向外側に延びる棒状のレバー部25aが突設されている。
【0038】
アーム26は、2辺で構成された略L字型に形成されており、Y方向に延びる第1アーム部26aと、X方向に延びる第2アーム部26bと、を有する。
【0039】
第1アーム部26aの基端部は第2アーム部26bに接続されている。また、第1アーム部26aの先端部には、補正環レバー25に向かってX方向に突出する2つの突出部26cが形成されている。これら2つの突出部26cは互いに離隔して第1アーム部26a上に形成されている。2つの突出部26cの間隙(ギャップ)には補正環レバー25のレバー部25aが遊嵌する。
【0040】
第2アーム部26bは、アーム駆動機構27によりY方向に移動自在に保持されている。
【0041】
アーム駆動機構27は、第2アーム部26b、すなわちアーム26をY方向に移動可能な公知のアクチュエータである。このアーム駆動機構27は、後述の制御装置24の制御の下、アーム26をY方向に移動させることで補正環35を任意の回転方向及び回転角度で回転させる。具体的にはアーム駆動機構27がアーム26をY方向に移動させると、アーム26上の2つの突出部26cのいずれか1つにレバー部25aが押されて、このレバー部25aにY方向の力が加えられる。これにより、
図6の符号6A及び符号6Bに示すように、レバー部25aを介して補正環レバー25及び補正環35が一体的にレンズ光軸O1の軸回り方向に回転される(矢印A4参照)。
【0042】
なお、回転駆動部22の構成は、
図5及び
図6に示した構成に限定されるものではなく、補正環35を回転可能であれば特に限定はされない。
【0043】
図7は、制御装置24の機能ブロック図である。
図7及び既述の
図1に示すように、制御装置24は、移動機構14、赤外線カメラ16、レーザヘッド18(レーザ光源30)、温度センサ20、及び回転駆動部22(アーム駆動機構27)などのレーザ加工装置10の各部の動作を統括的に制御する。これにより、制御装置24は、ウェーハWに対するレーザヘッド18のアライメント、及びストリートCH1,CH2ごとのレーザ加工(後述のレーザ光Lの焦点位置の制御を含む)などを制御する。
【0044】
制御装置24には、既述の移動機構14、赤外線カメラ16、レーザヘッド18、温度センサ20、及び回転駆動部22などの他に、記憶部28及び不図示の操作部(公知のキーボード、マウス、及び操作ボタン等)が接続されている。
【0045】
記憶部28には、制御装置24の制御プログラム(図示は省略)の他に、データテーブル48が記憶されている。データテーブル48は、後述のレーザ加工中のレーザ光Lの焦点位置の補正に用いられる。データテーブル48はレーザ加工装置10のメーカで作成されたものが予め記憶されている。なお、制御装置24がレーザ加工前に外部サーバからデータテーブル48を取得して記憶部28に記憶させてもよい。
【0046】
制御装置24は、不図示の制御プログラムを実行することで、検出制御部40、レーザ加工制御部42、温度取得部44、及び焦点位置調整部46として機能する。以下、本実施形態において「~部」として説明するものは「~回路」、「~装置」、又は「~機器」であってもよい。すなわち、「~部」として説明するものは、ファームウェア、ソフトウェア、及びハードウェアまたはこれらの組み合わせのいずれで構成されていてもよい。
【0047】
検出制御部40は、レーザ加工装置10の各部を制御して、テーブル12に保持されているウェーハWのストリートCH1,CH2の位置(XY面内での向きを含む)を検出するアライメント検出を実行する。
【0048】
最初に検出制御部40は、移動機構14及び赤外線カメラ16を制御して、ウェーハWのアライメント基準の撮影画像データを取得(撮影)する。例えば検出制御部40は、ウェーハWの公知の設計情報に基づいて移動機構14を駆動して、赤外線カメラ16をウェーハWのアライメント基準を撮影可能な位置に相対移動させる。この移動後に検出制御部40は、赤外線カメラ16にアライメント基準を含むウェーハWの撮影を実行させる。これにより、赤外線カメラ16によりウェーハWのアライメント基準の撮影画像データが取得され、この撮影画像データが赤外線カメラ16から検出制御部40に出力される。
【0049】
次いで、検出制御部40は、赤外線カメラ16から入力された撮影画像データからアライメント基準を公知の画像認識法で検出することにより、ウェーハWの各ストリートCH1,CH2の位置を検出する。
【0050】
レーザ加工制御部42は、移動機構14及びレーザヘッド18を制御して、ウェーハWのストリートCH1,CH2ごとにレーザ加工を実行する。このレーザ加工は、各ストリートCH1に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域Pを形成する加工と、各ストリートCH2に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域Pを形成する加工と、を含む。
【0051】
図8は、ウェーハWの内部へのレーザ加工領域Pの形成を説明するための説明図である。
図8に示すように、レーザ加工制御部42は、検出制御部40によるアライメント検出結果に基づいて、移動機構14を駆動してテーブル12をθ方向に回転させることにより、互いに交差するストリートCH1,CH2のうちのストリートCH1をX方向(加工送り方向)に平行にする。次いで、レーザ加工制御部42は、検出制御部40によるアライメント検出結果に基づいて、移動機構14を駆動してテーブル12の位置調整を実行することで、レーザヘッド18の光軸を第1番目のストリートCH1の一端に位置合わせするアライメントを実行する。
【0052】
レーザ加工制御部42は、上述のアライメント完了後、レーザヘッド18を制御して、レーザ光LをウェーハWの裏面から所定の加工深さ位置(後述の目標位置)に集光させることで、この加工深さ位置にレーザ加工領域Pを形成する。
【0053】
次いで、レーザ加工制御部42は、移動機構14を駆動して、テーブル12をX方向に移動させる。これにより、ウェーハWの内部にレーザ光Lを集光させた状態で、ウェーハWに対してレーザヘッド18がX方向に相対移動される、すなわち第1番目のストリートCH1に沿ってレーザヘッド18がウェーハWに対してX方向に相対移動される。その結果、第1番目のストリートCH1に沿ってウェーハWの内部に1層(単層)のレーザ加工領域Pが形成される。また、レーザ加工領域Pが形成されると、このレーザ加工領域Pを起点としてウェーハWの厚さ方向(Z方向)に亀裂Kが発生する。
【0054】
レーザ加工制御部42は、レーザ加工領域Pの層数が単層である場合には、第1番目のストリートCH1に対応するレーザ加工領域Pの形成後、移動機構14を駆動して、レーザヘッド18の光軸を第2番目のストリートCH1の一端に位置合わせ(アライメント)する。そして、レーザ加工制御部42は、レーザヘッド18によりウェーハWの内部にレーザ光Lを集光させた状態で、移動機構14を駆動してテーブル12をX方向に移動させる。これにより、第2番目のストリートCH1に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域Pが形成される。
【0055】
以下同様に、全てのストリートCH1に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域Pが形成される。次いで、レーザ加工制御部42は、移動機構14を駆動して、テーブル12を90°回転させることにより、各ストリートCH2をX方向に平行にする。そして、レーザ加工制御部42は、既述の各ストリートCH1のレーザ加工の同様に、移動機構14及びレーザヘッド18等を制御して、全てのストリートCH2に沿ってウェーハWの内部にレーザ加工領域Pを形成する。
【0056】
図9は、ウェーハWの内部への複数層のレーザ加工領域Pの形成を説明するための説明図である。
図9に示すように、レーザ加工制御部42は、ウェーハWが厚い場合には、ストリートCH1,CH2に沿ってウェーハWの内部に複数層(2層以上)のレーザ加工領域Pを形成する。この場合には、レーザ加工制御部42は、ストリートCH1ごとに複数層のレーザ加工領域Pを連続して実行すると共に、ストリートCH2ごとに複数層のレーザ加工領域Pを連続して実行する。
【0057】
具体的にレーザ加工制御部42は、既述の
図8で説明したように第1番目のストリートCH1に対応する1層目のレーザ加工領域Pの形成後、レーザヘッド18から出射されるレーザ光Lの集光位置をウェーハWの内部で1層目のレーザ加工領域Pよりも浅い位置(Z方向上方側の位置)に変更する。次いで、レーザ加工制御部42は、移動機構14を駆動してテーブル12をX方向に移動させることで、2層目のレーザ加工領域Pの形成を繰り返し実行する。これにより、第1番目のストリートCH1に沿って2層目のレーザ加工領域Pが形成される。以下同様に、3層目以降のレーザ加工領域Pを第1番目のストリートCH1に沿って形成可能である。
【0058】
そして、レーザ加工制御部42は、残りのストリートCH1,CH2についても同様に、ストリートCH1,CH2ごとに複数層のレーザ加工領域Pを形成する。
【0059】
このようなレーザ加工中にその時間経過と共に対物レンズ32の温度が上昇することで対物レンズ32によるレーザ光Lの焦点位置及び対物レンズ32の収差に変化が生じる虞がある。特にレーザ光Lの焦点位置がZ方向(光軸方向)に変化すると、Z方向におけるレーザ加工領域Pの加工深さ位置が所定の目標位置(以下、単に目標位置という)から変化するため、レーザ加工後の割断工程でチップ4の割断品質が低下してしまう。
【0060】
そこで本実施形態では、レーザ加工中の温度センサ20の温度測定結果に基づいて、対物レンズ32の温度変化が生じた場合には回転駆動部22を駆動して補正環35を回転させることで、目標位置に対するレーザ光Lの焦点位置のZ方向(光軸方向)のずれを補正する。すなわちレーザ光Lの焦点位置を目標位置に維持する。
【0061】
図7に戻って、温度取得部44は、レーザ加工中に温度センサ20を作動させて、温度センサ20から出力される対物レンズ32の温度測定結果を焦点位置調整部46へ繰り返し(連続的)に出力する。
【0062】
図10は、焦点位置調整部46によるレーザ加工中のレーザ光Lの焦点位置調整を説明するための説明図である。
図10及び既述の
図7に示すように、焦点位置調整部46は、レーザ加工中に温度取得部44から連続的に入力される温度センサ20の温度測定結果に基づいて記憶部28内のデータテーブル48を参照して、補正環35の回転方向及び回転角度を決定する。
【0063】
データテーブル48は、対物レンズ32の温度変化と、この温度変化に応じたウェーハW内でのレーザ光Lの焦点位置のZ方向の変化を打ち消す補正環35の回転方向及び回転角度と、の関係を示した補正情報である。このデータテーブル48は、対物レンズ32の温度変化に応じたウェーハW内でのレーザ光Lの焦点位置のZ方向の変化(変化方向及び変化量)を予めシミュレーション又は実験等で求めておくことで作成可能である。なお、対物レンズ32の温度変化とは、例えば、設計通りの焦点距離が得られる対物レンズ32の温度(基準温度)からの温度変化量を指す。これにより、焦点位置調整部46は、温度センサ20の温度測定結果に基づいてデータテーブル48を参照することで、対物レンズ32の温度変化に応じたレーザ光Lの焦点位置のZ方向の変化を打ち消す補正環35の回転方向及び回転角度を決定可能である。
【0064】
次いで、焦点位置調整部46は、回転駆動部22を駆動して、データテーブル48を参照して決定した補正環35の回転方向及び回転角度に従って補正環35を回転させる。これにより、
図10の符号XA及び符号XBに示すように対物レンズ32の温度変化に応じてレーザ光Lの焦点位置が目標位置h0からZ方向にずれた変化位置h1に変化することが防止される。その結果、
図10の符号XCに示すように、対物レンズ32の温度変化に応じた焦点位置の光軸方向の変化が打ち消され、レーザ光Lの焦点位置が目標位置h0で一定位置(略一定位置を含む、以下同じ)に維持される。
【0065】
なお、レーザ光Lの焦点位置調整のために補正環35を回転させたとしても、レーザ光の焦点位置のZ方向の変化量はウェーハWの内部で±2~3μmのレベルであるため、対物レンズ32の収差への影響はほぼない。また、レーザ光Lを厳密に一点に集光させる必要はなく、対物レンズ32の多少の収差変化が発生したとしても、レーザ加工領域Pの加工品質に重大な影響は及ぼさない。さらに、レーザ加工向けに最適化されたレーザ光Lの集光状態は、レーザ加工装置10が必要とするレーザ光Lの集光位置のZ方向補正を補正環35で実施した場合でも十分なマージンを持っている。このため、このZ方向補正を行った場合でもレーザ加工領域Pの加工品質への影響は及ぼさない。
【0066】
また、本実施形態では、データテーブル48として、対物レンズ32の温度変化と補正環35の回転方向及び回転角度との関係を示す補正情報を作成しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、データテーブル48として、対物レンズ32とテーブル12などレーザ加工装置10の各部の温度変化と、この温度変化に応じたウェーハW内でのレーザ光Lの焦点位置のZ方向の変化と、の関係を示す焦点位置変化情報を作成してもよい。
【0067】
この場合には焦点位置調整部46は、レーザ加工中に温度取得部44から温度センサ20の温度測定結果が繰り返し入力されるごとに、温度測定結果に基づいて記憶部28内のデータテーブル48を参照して、対物レンズ32の温度変化に応じたレーザ光Lの焦点位置のZ方向の変化(変化方向及び変化量)を判別する。次いで、この判別結果に基づいて焦点位置調整部46は、レーザ光Lの焦点位置のZ方向の変化を打ち消す補正環35の回転方向及び回転角度を決定する。そして、この決定結果に基づいて焦点位置調整部46は、回転駆動部22を駆動して補正環35を回転させる。
【0068】
[本実施形態の作用]
図11は、本発明のレーザ加工方法に係る上記構成のレーザ加工装置10によるウェーハWのレーザ加工処理の流れを示すフローチャートである。
【0069】
図11に示すように、加工対象のウェーハW(製品ウェーハ)がテーブル12に吸着保持されると、制御装置24の検出制御部40が作動する。検出制御部40は、移動機構14及び赤外線カメラ16を制御して、ウェーハWのアライメント基準の撮影画像データを取得する。そして、検出制御部40は、この撮影画像データを解析して、ウェーハWの各ストリートCH1,CH2の位置を検出するアライメント検出を行う(ステップS1)。
【0070】
アライメント検出が完了するとレーザ加工制御部42が作動して、ストリートCH1のレーザ加工を開始する。
【0071】
最初にレーザ加工制御部42は、検出制御部40によるアライメント検出結果に基づいて、移動機構14を駆動して、レーザヘッド18のレンズ光軸O1を第1番目のストリートCH1の一端に位置合わせするアライメントを実行する(ステップS2)。このアライメントが完了すると、レーザ加工制御部42は、レーザヘッド18を制御して、レーザ光LをウェーハWの内部の所定の目標位置h0に集光させる。これにより、レーザ加工が開始されて、ウェーハWの内部(目標位置h0)にレーザ加工領域Pが形成される(ステップS3)。
【0072】
次いで、レーザ加工制御部42は、移動機構14を駆動して、テーブル12をX方向に移動させることで、ウェーハWに対してレーザヘッド18をX方向に相対移動させる(ステップS4)。これにより、ウェーハWの内部に第1番目のストリートCH1に沿ったレーザ加工領域Pが形成される。なお、レーザ加工制御部42は、ウェーハWが厚い場合には、移動機構14及びレーザヘッド18を制御して、第1番目のストリートCH1に沿った複数層のレーザ加工領域Pを形成する。
【0073】
ウェーハWのレーザ加工が開始されると、制御装置24の温度取得部44及び焦点位置調整部46が作動する。これにより、レーザ加工中の対物レンズ32の温度測定とレーザ光Lの焦点位置調整と、が開始される。
【0074】
温度取得部44が、レーザ加工中に温度センサ20を作動させて、温度センサ20からの対物レンズ32の温度測定結果を連続的に取得して、この温度測定結果を焦点位置調整部46へ連続的に出力する(ステップS5、本発明の温度測定工程に相当)。これにより、レーザ加工中の対物レンズ32の温度がリアルタイムに測定される。
【0075】
また、焦点位置調整部46が温度取得部44から入力される温度測定結果に基づいてデータテーブル48を参照して、対物レンズ32の温度変化に応じたレーザ光Lの焦点位置のZ方向の変化を打ち消す補正環35の回転方向及び回転角度を決定する(ステップS6)。なお、焦点位置調整部46は、対物レンズ32の温度変化が発生していない場合には、補正環35を回転させない旨(回転角度=0度)の決定を行う。
【0076】
次いで、焦点位置調整部46は、対物レンズ32の温度変化が発生している場合には、回転駆動部22を駆動して、先に決定した補正環35の回転方向及び回転角度に従って補正環35を回転させる(ステップS7でYES、ステップS8)。これにより、既述の
図10に示したようにレーザ光Lの焦点位置を目標位置h0に維持する焦点位置調整がリアルタイムに実行される。なお、焦点位置調整部46は、対物レンズ32の温度変化が発生していない場合には、補正環35の回転を実行しない(ステップS7でNO)。また、ステップS6からステップS8は、本発明の焦点位置調整工程に相当する。
【0077】
第1番目のストリートCH1に対する単層又は複数層のレーザ加工が完了するまで、既述のステップS4からステップS8までの処理が繰り返し実行される(ステップS9でNO)。このようにレーザ加工中に対物レンズ32の温度測定とレーザ光Lの焦点位置調整とをリアルタイムに実行することで、対物レンズ32の温度変化に関わらずレーザ光Lの焦点位置を目標位置h0に維持、すなわち一定位置に維持可能である。
【0078】
以下同様に、残りのストリートCH1に対するレーザ加工と、対物レンズ32の温度測定と、レーザ光Lの焦点位置調整と、が繰り返し実行される(ステップS9でYES、ステップS10でYES、ステップS2からステップS8)。また、全てのストリートCH1のレーザ加工が完了すると、各ストリートCH2に対するレーザ加工と、対物レンズ32の温度測定と、レーザ光Lの焦点位置調整と、が再び繰り返し実行される(ステップS10でNO)。
【0079】
以上のように本実施形態のレーザ加工装置10では、ウェーハWのレーザ加工中に対物レンズ32の温度を測定して、対物レンズ32の温度変化に応じて補正環35を回転することで、レーザ光Lの焦点位置をZ方向において目標位置h0に維持可能である。このため、対物レンズ32の温度変化に関係なく焦点位置を一定位置に維持可能であり、レーザ加工領域Pの加工品質を向上可能である。これにより、後工程(割断工程)でウェーハWを複数のチップ4に割断する場合におけるチップ4の割断品質の低下が防止される。その結果、歩留まりを向上させることができる。
【0080】
[その他]
上記実施形態では、焦点位置調整部46が温度センサ20の温度測定結果に基づいてデータテーブル48を参照することでレーザ光Lの焦点位置のZ方向の変化を打ち消すような補正環35の回転方向及び回転角度を決定(レーザ光Lの焦点位置のZ方向の変化を判別するのみでも可)しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、温度センサ20の温度測定結果と、焦点位置調整用の補正環35の回転方向及び回転角度とを教師データとして機械学習させた学習済みモデルを予め生成する。そして、焦点位置調整部46が温度センサ20の温度測定結果に基づいて学習済みモデルを用いて補正環35の回転方向及び回転角度を決定してもよい。
【0081】
上記実施形態ではレンズ鏡筒33の外周面に設けた温度センサ20により対物レンズ32の温度測定を実行しているが、例えば、対物レンズ32の内部に設けられた温度センサ20により対物レンズ32の温度測定を実行してもよい。また、温度センサ20として、公知の非接触温度センサを用いてもよい。
【0082】
上記実施形態では、ウェーハWのレーザ加工中に対物レンズ32の温度を測定してこの対物レンズ32の温度変化に応じて補正環35を回転(Z方向の焦点位置補正)させているが、レーザ加工時以外にも対物レンズ32の温度を測定してこの対物レンズ32の温度変化に応じて補正環35を回転させてもよい。例えば、ウェーハWのレーザ加工前に実施されるレーザパワー調整マップ補正作業時(パワーキャリブレーション時)にはレーザ光Lのパワーを最大に設定するので、対物レンズ32の温度が上昇して対物レンズ32によるレーザ光Lの焦点位置及び対物レンズ32の収差に変化が発生し易い。このため、レーザパワー調整マップ補正作業時にも、対物レンズ32の温度を測定してこの対物レンズ32の温度変化に応じて補正環35を回転させてもよい。
【符号の説明】
【0083】
4 チップ
6 デバイス層
10 レーザ加工装置
12 テーブル
14 移動機構
16 赤外線カメラ
18 レーザヘッド
20 温度センサ
22 回転駆動部
24 制御装置
25 補正環レバー
25a レバー部
26 アーム
26a 第1アーム部
26b 第2アーム部
26c 突出部
27 アーム駆動機構
28 記憶部
30 レーザ光源
32 対物レンズ
33 レンズ鏡筒
34 レンズ
34a 移動レンズ
35 補正環
36 駆動伝達機構
40 検出制御部
42 レーザ加工制御部
44 温度取得部
46 焦点位置調整部
48 データテーブル
CH1 ストリート
CH2 ストリート
K 亀裂
L レーザ光
O1 レンズ光軸
P レーザ加工領域
W ウェーハ
h0 目標位置
h1 変化位置