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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106284
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】接合方法および接合装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010560
(22)【出願日】2023-01-26
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】菊地 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】中林 肇
(57)【要約】
【課題】表面に絶縁膜と導電膜とが形成された基板の表面同士を接合する際に、導電膜中の金属が導電膜に析出して導電膜間がショートすることを防止できる接合方法および接合装置を提供する。
【解決手段】接合方法は、それぞれ、絶縁膜が露出する第1領域と、導電膜が露出する第2領域とを表面に有し、少なくとも一方がPN接合を有する第1基板および第2基板を準備することと、第1基板および第2基板の第1領域に露出する絶縁膜に対し表面活性化処理を行うことと、表面活性化処理を行った後、第1基板および第2基板の表面に親水化処理液を供給して第1領域に露出する絶縁膜の表面に親水化処理を行うことと、表面活性化処理を行った後、親水化処理の前、または親水化処理と同時に、第1基板および第2基板のうちPN接合を有するものの表面にイオン界面活性剤を供給することと、親水化処理後の第1基板の表面と第2基板の表面とを接合することとを有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ、絶縁膜が露出する第1領域と、導電膜が露出する第2領域とを表面に有し、少なくとも一方がPN接合を有する第1基板および第2基板を準備することと、
前記第1基板および前記第2基板の前記第1領域に露出する前記絶縁膜に対し表面活性化処理を行うことと、
前記表面活性化処理を行った後、前記第1基板および前記第2基板の表面に親水化処理液を供給して前記第1領域に露出する前記絶縁膜の表面に親水化処理を行うことと、
前記表面活性化処理を行った後、前記親水化処理の前、または前記親水化処理と同時に、前記第1基板および前記第2基板のうち前記PN接合を有するものの表面にイオン界面活性剤を供給することと、
前記親水化処理後の前記第1基板の前記表面と前記第2基板の前記表面とを接合することと、
を有する、接合方法。
【請求項2】
前記表面活性化処理は、前記第1基板および前記第2基板の前記第1領域に露出する前記絶縁膜の表面にダングリングボンドを形成する、請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記表面活性化処理は、前記第1基板および前記第2基板の前記第1領域に露出する前記絶縁膜の表面にプラズマを作用させることにより行う、請求項2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記親水化処理液は、純水、または純水にCOを溶解させたCO水である、請求項1に記載の接合方法。
【請求項5】
イオン界面活性剤は、陽イオン性の親水基を持つ陽イオン界面活性剤である、請求項1に記載の接合方法。
【請求項6】
前記陽イオン界面活性剤は、第4級アンモニウム系である、請求項5に記載の接合方法。
【請求項7】
前記第4級アンモニウム系の陽イオン界面活性剤は、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、エステル型ジアルキルアンモニウム塩、およびアルキルトリメチルアンモニウム塩から選択されたものである、請求項6に記載の接合方法。
【請求項8】
前記イオン界面活性剤は、陰イオン性の親水基を持つ陰イオン界面活性剤である、請求項1に記載の接合方法。
【請求項9】
前記陰イオン界面活性剤は、直鎖アルキルベンゼン系、または、高級アルコール系である、請求項8に記載の接合方法。
【請求項10】
前記直鎖アルキルベンゼン系の陰イオン界面活性剤は直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩であり、前記高級アルコール系の陰イオン界面活性剤はアルキルエーテル硫酸エステル塩である、請求項9に記載の接合方法。
【請求項11】
前記導電膜は、Cu、Al、Ag、およびAuから選択された金属を含む、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項12】
それぞれ、絶縁膜が露出する第1領域と、導電膜が露出する第2領域とを表面に有し、少なくとも一方がPN接合を有する第1基板および第2基板の表面同士を接合する接合装置であって、
前記第1基板および前記第2基板の前記第1領域に露出する前記絶縁膜に対し表面活性化処理を行う活性化処理部と、
前記第1基板および前記第2基板の表面に親水化処理液を供給して前記第1領域に露出する前記絶縁膜の表面に親水化処理を行う親水化処理部と、
前記第1基板および前記第2基板のうち前記PN接合を有するものの表面にイオン界面活性剤を供給するイオン界面活性剤供給部と、
前記第1基板の前記表面と前記第2基板の前記表面とを接合する接合部と、
を有し、
前記親水化処理部は、前記表面活性化処理を行った後の前記第1基板および前記第2基板の表面に親水化処理液を供給し、
前記イオン界面活性剤供給部は、前記活性化処理部で前記表面活性化処理を行った後、前記親水化処理の前、または前記親水化処理と同時に、前記第1基板および前記第2基板のうち前記PN接合を有するものの表面にイオン界面活性剤を供給し、
前記接合部は、前記親水化処理後の前記第1基板の前記表面と前記第2基板の前記表面とを接合する、接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接合方法および接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体デバイスを3次元に積層する三次元集積技術として、表面に絶縁膜と導電膜とが形成された基板同士を接合する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-49267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、表面に絶縁膜と導電膜とが形成された基板の表面同士を接合する際に、導電膜中の金属が導電膜に析出して導電膜間がショートすることを防止できる接合方法および接合装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る接合方法は、それぞれ、絶縁膜が露出する第1領域と、導電膜が露出する第2領域とを表面に有し、少なくとも一方がPN接合を有する第1基板および第2基板を準備することと、前記第1基板および前記第2基板の前記第1領域に露出する前記絶縁膜に対し表面活性化処理を行うことと、前記表面活性化処理を行った後、前記第1基板および前記第2基板の表面に親水化処理液を供給して前記第1領域に露出する前記絶縁膜の表面に親水化処理を行うことと、前記表面活性化処理を行った後、前記親水化処理の前、または前記親水化処理と同時に、前記第1基板および前記第2基板のうち前記PN接合を有するものの表面にイオン界面活性剤を供給することと、前記親水化処理後の前記第1基板の前記表面と前記第2基板の前記表面とを接合することと、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、表面に絶縁膜と導電膜とが形成された基板の表面同士を接合する際に、導電膜中の金属が導電膜に析出して導電膜間がショートすることを防止できる接合方法および接合装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る接合方法を説明するためのフローチャートである。
図2図1の接合方法に用いる第1基板の例を示す断面図である。
図3図1の接合方法に用いる第2基板の例を示す断面図である。
図4】ステップST2の表面活性化処理を行う際の絶縁膜の表面状態を説明するための図である。
図5】ステップST4の親水化処理を行う際の絶縁膜の表面状態を説明するための図である。
図6】親水化処理液としてCO水を用いた場合の効果を説明するための図である。
図7】基板中の電子回路素子にPN接合が存在する場合においてN型部分に接続される電極パッドに金属が析出するメカニズムを説明するための図である。
図8】基板中の電子回路素子にPN接合が存在する場合において、親水化処理液の供給に先立ってイオン界面活性剤として陽イオン界面活性剤を供給することにより、N型部分に接続される電極パッドへの金属の析出が抑制されるメカニズムを説明するための図である。
図9】基板中の電子回路素子にPN接合が存在する場合において、親水化処理液の供給に先立ってイオン界面活性剤として陰イオン界面活性剤を供給することにより、N型部分に接続される電極パッドへの金属の析出が抑制されるメカニズムを説明するための図である。
図10】ステップST5の第1基板と第2基板を接合する工程において、第1基板と第2基板を位置合わせした状態を示す断面図である。
図11】ステップST5の第1基板と第2基板を接合する工程において、第1基板と第2基板を圧着して接合した状態を示す断面図である。
図12】ステップST5の第1基板と第2基板を接合する工程を行う際の絶縁膜表面の反応を説明するための図である。
図13】実施形態に係る接合方法を実施するための接合装置の一例を示す横断面図である。
図14】実施形態に係る接合方法を実施するための接合装置の一例を示す縦断面図である。
図15】接合装置における活性化処理部を説明するための図である。
図16】接合装置におけるイオン界面活性剤供給部および親水化処理液供給部を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施の形態について具体的に説明する。
【0009】
<経緯>
近時、VLSI(Very Large-Scale Integration)の微細化、立体形化にともない、別々に作製された異なる基板に存在する電子回路素子同士を直接貼り合わせて1つの電子回路素子として造り込む3次元積層技術が注目されている。特に、一方の基板の表面に存在する絶縁膜および導電膜を、それぞれ他方の基板の表面に存在する絶縁膜および導電膜に同時に貼り合わせて圧着するハイブリッド接合は、VLSIのさらなる高速化と低消費電力化が可能な技術として注目されている。導電膜は、例えば、電気信号の入出力のために用いられる電極パッドである。
【0010】
ハイブリッド接合では、それぞれ許容できる熱処理(Thermal Budget)が異なる2つの基板(例えばSi基板上に作りこんだC-FET(Complementary - Field Effect Transistor)のNチャネル(Nch)トランジスタ回路部とPチャネル(Pch)トランジスタ回路部の縦方向立体積層形成やSi基板とGeやIII-V族基板等の異種基板)を、電子回路素子を形成した後に貼り合わせることで1つの素子を形成できる。ハイブリッド接合では、異なる基板に形成された低インピーダンスの入出力回路間で信号通信をする必要がないため、基板に形成された電子回路素子間の信号伝達を飛躍的に高速化できる。
【0011】
ところで、このようなハイブリッド接合技術においては、導電膜同士は単純に熱と圧力で接合されるが、絶縁膜同士の接合には、接合工程に先立って、絶縁膜表面をOH終端して親水化する前処理を行う必要がある。このような前処理は、絶縁膜表面をプラズマ等により活性化してダングリングボンドを形成する工程と、絶縁膜表面に純水等の親水化処理液を供給する工程とにより行うことができる。
【0012】
しかし、基板中の電子回路素子にPN接合が存在する場合、例えば、PチャネルとN型部分であるN-wellが接合されている場合、起電力が生じ、基板表面に存在する親水化処理液に導電膜(電極パッド)中の金属のイオン、例えばCuイオンが溶出していると、電界めっき反応により、N-wellに配線を介して接続される導電膜(電極パッド)にCuが析出することが見出された。このように導電膜(電極パッド)にCuが析出すると、隣接する導電膜(電極パッド)に析出したCu同士が接触してショートするおそれがある。
【0013】
そこで、実施形態では、親水化処理液を供給する工程に先立って、または親水化処理液を供給する工程と同時に、基板表面にイオン界面活性剤を供給する工程を実施する。これにより、Cu等の金属がN型部分に繋がる導電膜に析出することが妨げられ、導電膜間のショートが抑制される。
【0014】
<接合方法>
次に、一実施形態に係る接合方法について説明する。
図1は、一実施形態に係る接合方法を説明するためのフローチャートである。図1に示すように、本実施形態に係る接合方法においては、ステップST1~ステップST5を有する。
【0015】
ステップST1では、それぞれ、絶縁膜が露出する第1領域と、導電膜が露出する第2領域とを表面に有し、少なくとも一方がPN接合を有する第1基板および第2基板を準備する。ステップST2では、第1基板および第2基板の第1領域に露出する絶縁膜に対し表面活性化処理を行い、ダングリングボンドを形成する。ステップST3では、第1基板および第2基板のうちPN接合を有するものの表面にイオン界面活性剤を供給する。ステップST4では、第1基板および第2基板の表面に親水化処理液を供給して第1領域に露出する絶縁膜表面に親水化処理を行う。ステップST5では、親水化処理後の第1基板の表面と第2基板の表面とを接合する。
【0016】
以下、具体的に説明する。
ステップST1において準備する第1基板および第2基板は、それぞれ、例えば、図2および図3に示す構造を有している。
【0017】
第1基板10は、図2に示すように、演算部11と、配線層12とを有する。演算部11は、下地基板13の一部を含んで形成される。演算部11は、例えばトランジスタ等の半導体デバイスを含む。下地基板13は、例えば半導体ウエハである。下地基板13は、表面部分に、例えばチャネル領域18と、拡散領域19とを有している。
【0018】
配線層12は、例えば多層配線である。配線層12は、配線14と、電極パッド15と、第1絶縁膜16と、第2絶縁膜17とを有する。配線14は、多層に設けられ、演算部11と電気的に接続される。電極パッド15は、下地基板13から最も離れた位置にある配線14の上に設けられる。電極パッド15は、配線14と電気的に接続されるとともに、配線14を介して演算部11と電気的に接続される。電極パッド15は、上面が露出する。配線14および電極パッド15は、例えばCuにより形成される。配線14および電極パッド15は、Cuの他、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)であってもよい。第1絶縁膜16は、例えば配線14間を埋める層間絶縁膜である。第1絶縁膜16は、特に限定されないが、例えばSiO膜、SiN膜、SiOC膜、SiON膜、SiOCN膜を挙げることができる。なお、各膜における各元素の原子比は任意である。層間絶縁膜は、好ましくはSiOC膜、SiON膜、SiOCN膜等の低誘電率(Low-k)膜である。第2絶縁膜17は、第1絶縁膜16の上に設けられる。第2絶縁膜17は、上面が露出する。第2絶縁膜17の上面は、例えば電極パッド15の上面と面一である。第2絶縁膜17は、特に限定されないが、例えばSiO膜、SiN膜、SiOC膜、SiON膜、SiOCN膜を挙げることができる。第2絶縁膜17を設けずに第1絶縁膜16の上面を電極パッド15と面一の露出面としてもよい。
【0019】
配線層12は、例えば配線14と第1絶縁膜16との間にバリア膜をさらに有していてもよい。配線層12は、例えば電極パッド15と第1絶縁膜16との間にバリア膜をさらに有していてもよい。バリア膜は、配線14および電極パッド15から第1絶縁膜16への金属拡散を抑制する。バリア膜は、特に限定されないが、例えばTaN膜、TiN膜である。これらのTaとNの原子比、TiとNの原子比は任意である。
【0020】
第1基板10は、第2絶縁膜17が露出する第1領域A11と、電極パッド15が露出する第2領域A12とを表面10aに有する。第2絶縁膜17は絶縁膜の一例であり、電極パッド15は導電膜の一例である。
【0021】
第2基板20は、例えば第1基板10と実質的に同じ構成を有する。第2基板20は、図3に示すように、演算部21と、配線層22とを有する。演算部21は、下地基板23の一部を含んで形成される。下地基板23は、表面部分に、例えばチャネル領域28と、配線24が接続された拡散領域29とを有している。
【0022】
配線層22は、例えば多層配線である。配線層22は、配線24と、電極パッド25と、第1絶縁膜26と、第2絶縁膜27とを有する。電極パッド25は、例えば電極パッド15と同じ材料により形成される。
【0023】
第2基板20は、第2絶縁膜27が露出する第1領域A21と、電極パッド25が露出する第2領域A22とを表面20aに有する。第2絶縁膜27は絶縁膜の一例であり、電極パッド25は導電膜の一例である。
【0024】
第1基板10および第2基板20の少なくとも一方にはPN接合を含む。例えば、図2の第1基板10のチャネル領域18と拡散領域19がPN接合を形成するか、あるいは、図3の第2基板20のチャネル領域28と拡散領域29がPN接合を形成するか、あるいはその両方である。具体例としては、第1基板10のチャネル領域18がPチャネルで、拡散領域19がN型部分としてのN-well、または/および第2基板20のチャネル領域28がPチャネルで、拡散領域29がN型部分としてのN-wellであってよい。
【0025】
ステップST2~ST4は、第1基板10と第2基板20の接合に際して、絶縁膜同士を接合するための前処理として行われる。
【0026】
これらのステップのうちステップST2とステップST4は、絶縁膜である第2絶縁膜17および27の表面を親水化するための処理である。
【0027】
第1基板10および第2基板20の第1領域A11およびA21に露出する第2絶縁膜17および27は、初期状態では図4(a)に示すように、表面が例えばHやC等により終端されている。絶縁膜同士を接合するためには、表面がOH基で終端されている必要があるため、まず、ステップST2において、第1領域A11およびA21(第2絶縁膜17および27の表面)に対して表面活性化処理を行い、図4(b)に示すように、HやC等を除去してダングリングボンドを形成する。
【0028】
表面活性化処理としては、例えばプラズマによる処理を挙げることができる。プラズマによる表面活性化処理は、例えば、ガスとしてNガス、Arガス等を用いて生成したプラズマを絶縁膜表面に作用させることにより行うことができる。この処理は、例えば、基板にガスを吐出するノズルに高周波コイルを巻回して、基板の表面にプラズマを照射することにより行うことができる。このプラズマは大気プラズマであってよい。
【0029】
ステップST4では、表面活性化処理を行った後、第1基板10の表面および第2基板20の表面に親水化処理液を供給して、第1領域A11およびA21に露出する第2絶縁膜17および27の表面を親水化処理する。具体的には、図5に示すように、親水化処理液を供給して、ステップST2で絶縁膜(第2絶縁膜17および27)の表面に形成されたダングリングボンドにOH基を結合させてOH終端することにより行うことができる。また、親水化処理液により基板表面の洗浄も行われる。
【0030】
第1基板および第2基板への親水化処理液の供給手法は特に限定されないが、例えば、基板を回転させながら基板の表面に親水化処理液を供給して液膜を形成する手法を採用することができる。親水化処理液供給後、基板から親水化処理液を除去する。例えば、基板を回転させて親水化処理液を振り切りにより除去することができる。
【0031】
親水化処理液としては、純水、または純水にCOを溶解させたCO水(炭酸水)を用いることができる。親水化処理液としてCO水を用いることにより、導電膜(例えばCu膜)をわずかにエッチングすることができ、絶縁膜と導電膜を同時に接合するハイブリット接合の際の導電膜の熱膨張に対応することができる。すなわち、第1基板10と第2基板20のハイブリット接合の際に、導電膜同士は、後述するように、加熱することによる導電膜中の金属の相互拡散により接合されるが、その際に導電膜の熱膨張により精度が低下するおそれがある。親水化処理液としてCO水を用いた場合は、導電膜である電極パッド(例えばCu膜)15および25のみをわずかにエッチングすることができる。これにより、図6(a)に示すように、その後のハイブリッド接合のために第1基板10および第2基板20を合わせたときに、導電膜である電極パッド15と電極パッド25の間に隙間30ができる。この状態で加熱すると、図6(b)に示すように、隙間30を埋めるように電極パッド15と電極パッド25が熱膨張して接触するので熱膨張を吸収することができる。
【0032】
ステップST3の第1基板および第2基板のうちPN接合を有するものの表面にイオン界面活性剤を供給する工程は、ステップST4の親水化処理液の供給に先立って、または親水化処理液の供給と同時に行われる。このステップST3は、導電膜、例えば電極パッドを構成する金属(例えばCu)が、めっき反応により導電膜に析出して導電膜間がショートすることを抑制するために行われる。
【0033】
具体的には、基板中の電子回路素子にPN接合が存在する場合、例えば、図2に示す第1基板10を例に取ると、図7に示すように、チャネル領域18がPチャネル、拡散領域19がN型部分としてのN-wellであり、N-wellに配線を介して電極パッド15aが接続され、Pチャネルに配線を介して電極パッド15bが接続される場合を考える。この場合、図7に示すように、親水化処理液に電極パッド15a、15b等から金属のイオン、例えばCuイオンが溶出した状態では、PN接合の起電力に基づく電界めっき反応により、金属イオン(Cuイオン)がN-wellに配線を介して接続される電極パッド15aに金属(Cu)として析出する。この場合、隣接する電極パッド15aに析出した金属(Cu)同士が接触してショートするおそれがある。
【0034】
特に、第1基板10および第2基板20が光の存在下で処理される場合、光による起電力も発生するため、導電膜である電極パッド15への金属(Cu)の析出はより顕著になる。また、親水化処理液がCO水である場合、導電膜である電極パッド(Cu)15がエッチングされるため、液中の金属イオン(Cuイオン)の量が多くなり、導電膜である金属パッド15への金属(Cu)の析出量がより多くなる。
【0035】
そのため、ステップST3では、ステップST4の親水化処理液の供給に先立って、または親水化処理液の供給と同時に第1基板および第2基板の表面に液体であるイオン界面活性剤を供給する。イオン界面活性剤は、導電膜である電極パッド15に吸着するか、または親水化処理液中の金属イオン(Cuイオン)に吸着して、導電膜である電極パッド15への金属(Cu)の析出を抑制する。
【0036】
イオン界面活性剤としては、陽イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤を用いることができる。
【0037】
陽イオン界面活性剤は、陽イオン性の親水基を持つ界面活性剤である。図8に示すように、陽イオン界面活性剤40は、PN接合による起電力によりマイナス電荷を有するN-well(拡散領域19)側の電極パッド15aに選択的に吸着し、Pチャネル(チャネル領域18)側の電極パッド15bには吸着しない。具体的には、陽イオン界面活性剤40の親水基がマイナス電荷を有する電極パッド15aに吸着する。これにより、電極パッド15aが電気的に中性となるとともに、陽イオン界面活性剤40の有機鎖が、金属イオン(Cuイオン)がマイナス電荷を有する電極パッド15aに到達することを物理的に妨げる。このため、マイナス電荷を有する電極パッド15aへの金属(Cu)の析出が抑制される。
【0038】
陽イオン界面活性剤としては、例えば、第4級アンモニウム系のものを用いることができる。第4級アンモニウム系の陽イオン界面活性剤としては、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、エステル型ジアルキルアンモニウム塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0039】
陰イオン界面活性剤は、陰イオン性の親水基を持つ界面活性剤である。図9に示すように、陰イオン界面活性剤50は、親水化処理液中の金属イオン(Cuイオン)をトラップし、電気中性化する。これにより、金属イオン(Cuイオン)がマイナス電荷を有する電極パッド15aへ析出することが抑制される。
【0040】
陰イオン界面活性剤としては、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩のような直鎖アルキルベンゼン系のものや、アルキルエーテル硫酸エステル塩のような高級アルコール系のものを用いることができる。
【0041】
第1基板および/または第2基板へのイオン界面活性剤の供給方法は特に限定されないが、例えば、基板を回転させながら基板の表面にイオン界面活性剤を供給して液膜を形成する手法を採用することができる。また、イオン界面活性剤の供給をステップST4の親水化処理液の供給と同時に行う場合には、第1基板および/または第2基板へイオン界面活性剤および親水化処理液を同時に供給することにより行うことができる。この場合にも、基板を回転させながら基板の表面にイオン界面活性剤と親水化処理液を供給して液膜を形成する手法を採用することができる。
【0042】
イオン界面活性剤は、親水化処理液を供給して親水化処理を行った後に除去する必要があるが、陽イオン界面活性剤および陰イオン界面活性剤はいずれも親水基を有するため、純水により除去することができる。親水化処理液として純水またはCO水を用いる場合は、基板表面に純水またはCO水の液膜を形成後、親水化処理後に純水またはCO水を振り切り等により除去する際に、陽イオン界面活性剤および陰イオン界面活性剤を併せて除去することができる。さらに、親水化処理後に純水またはCO水を振り切り等により除去する際に、純水等のリンス液を供給するようにしてもよい。
【0043】
ステップST5の親水化処理後の第1基板と第2基板とを接合する工程では、第1基板の表面と第2基板の表面とを合わせ、加熱しつつ圧力をかけて圧着する。
【0044】
具体的には、まず、図10に示すように、第1基板10の表面10aと第2基板20の表面20aとを対向させて保持し、第1基板10と第2基板20との位置合わせを行う。位置合わせは、導電膜である電極パッド15と電極パッド25とを対向させ、絶縁膜である第2絶縁膜17と第2絶縁膜27とを対向させる。
【0045】
次に、第1基板10および第2基板20を加熱しながら、図11に示すように、第1基板10の表面10aと第2基板20の表面20aとを接触させ、圧力をかけて圧着する。これにより、第1基板10の表面10aと第2基板20の表面20aとが接合される。このとき、電極パッド15と電極パッド25とは電極パッド中の金属例えばCuの拡散により接合され、第2絶縁膜17と第2絶縁膜27とは、図12(a)に示すように、表面のOH基同士が結合した後、図12(b)に示すように、脱水縮合によりSi-O-Si結合が形成されて接合される。このときの加熱温度は、100~400℃程度であってよく、圧力は100~300g程度であってよい。
【0046】
ステップST5の接合工程の雰囲気は特に限定されないが、真空雰囲気下で行うことにより、導電膜である電極パッド15および電極パッド25の酸化腐食を抑制することができる。
【0047】
<接合装置>
次に、実施形態に係る接合方法を実施するための接合装置について説明する。
【0048】
図13は実施形態に係る接合方法を実施するための接合装置の一例を示す横断面図であり、図14はその縦断面図である。なお、図13において、上側がX方向の正方向側であり、下側がX方向の負方向側である。また、図13図14において、左側がY方向の負方向側であり、右側がY方向の正方向側である。さらに、図13図14中、基板WUは上側に配置される基板をいい、基板WLは下側に配置される基板をいい、重合基板WTは上基板WUと下基板WLを重ね合わせた基板をいう。なお、これらの基板を総称して単に基板ということもある。
【0049】
接合装置200は、内部を密閉可能な処理容器100を有する。図13に示すように、処理容器100のX方向の正方向側の側面には、上基板WU、下基板WLおよび重合基板WTを搬送するための搬入出口101が設けられる。搬入出口101は、開閉シャッタ102により開閉される。
【0050】
処理容器100の内部は、内壁103によって、前処理領域T1と接合領域T2に区画される。前処理領域T1には、基板を搬送する搬送部が設けられているとともに、基板に対して接合前の前処理が行われる前処理部210が設けられている。前処理部210は、後述するように、活性化処理部230、イオン界面活性剤供給部240、および親水化処理液供給部250を有する。搬入出口101は、前処理領域T1における処理容器100の側面に形成される。内壁103には、上基板WU、下基板WLおよび重合基板WTを搬送するための搬入出口104が形成される。搬入出口104は、ゲートバルブ105により開閉される。
【0051】
前処理領域T1のX方向の正方向側には、上基板WU、下基板WLおよび重合基板WTを一時的に載置するためのトランジション110が設けられる。トランジション110は、例えば2段に形成され、上基板WU、下基板WLおよび重合基板WTのいずれか2つを同時に載置できる。
【0052】
前処理領域T1には、X方向に延伸する搬送路111上を移動自在な基板搬送体112が設けられる。基板搬送体112は、鉛直方向(Z方向)および鉛直軸周りにも移動自在であり、前処理領域T1内、または前処理領域T1と接合領域T2との間で上基板WU、下基板WLおよび重合基板WTを搬送する。
【0053】
前処理領域T1のX方向の負方向側には、上基板WUおよび下基板WLを支持してこれらを回転可能に位置調節機構120が設けられている。位置調節機構120は水平方向の向きを調節するとともに、後述する表面活性化処理、イオン界面活性剤供給処理、親水化処理液供給処理の際に支持された基板を回転するように構成されている。
【0054】
前処理領域T1における位置調節機構120のX方向の負方向側には、Y方向に沿って延伸するレール130が設けられる。レール130は、例えば位置調節機構120のY方向の負方向側の外方からY方向の正方向側の外方まで設けられる。レール130には、例えば2本のノズルアーム131,132が取り付けられる。
【0055】
ノズルアーム131には、活性化処理部230の一部であるプラズマノズル133が支持される。ノズルアーム131は、ノズル駆動部136により、レール130上を移動自在である。これにより、プラズマノズル133は、位置調節機構120のY方向の正方向側の外方から位置調節機構120に保持された上基板WUおよび下基板WLの上方まで移動できる。ノズルアーム131は、ノズル駆動部136によって昇降自在であり、プラズマノズル133の高さを調節できる。
【0056】
活性化処理部230は、図15に示すように、上記プラズマノズル133と、コイル141と、高周波電源142と、ガス供給配管143と、ガス供給源144と、供給機器群145とを有している。コイル141はプラズマノズル133に巻回され、コイル141には高周波電源142が接続されている。プラズマノズル133にはガス供給配管143が接続され、ガス供給配管143にはガス供給源144が接続されている。そして、ガス供給源144から、例えば、Nガス、Arガスのような活性化処理のためのガスがプラズマノズル133に供給されるように構成されている。供給機器群145は、ガス供給配管143に介装されたバルブや流量調節器等を含む。ガス供給源144からガス供給配管143を介してプラズマノズル133に供給されたガスは、高周波電源142からコイル141に供給された高周波電力によりプラズマ化され、生成されたプラズマがその下方の位置調節機構120に支持された基板表面に供給されて表面活性化処理が施される。
【0057】
ノズルアーム132には、イオン界面活性剤供給部240の一部であるイオン界面活性剤ノズル134、および親水化処理液供給部250の一部である親水化処理液ノズル135が支持される。ノズルアーム132は、ノズル駆動部137により、レール130上を移動自在である。これにより、イオン界面活性剤ノズル134および親水化処理液ノズル135は、位置調節機構120のY方向の負方向側から位置調節機構120に保持された上基板WUおよび下基板WLの上方まで移動できる。ノズルアーム132は、ノズル駆動部137によって昇降自在であり、イオン界面活性剤ノズル134および親水化処理液ノズル135の高さを調節できる。なお、イオン界面活性剤ノズル134と親水化処理液ノズル135をノズルアーム132で支持して同時に移動する代わりに、これらノズルを別々のアーム(駆動機構)に設けて別々に移動制御してもよい。
【0058】
イオン界面活性剤供給部240および親水化処理液供給部250は、図16に示すように構成される。
【0059】
イオン界面活性剤供給部240は、上記イオン界面活性剤ノズル134と、イオン界面活性剤供給配管151と、イオン界面活性剤供給源152と、供給機器群153とを有している。イオン界面活性剤ノズル134にはイオン界面活性剤供給配管151が接続され、イオン界面活性剤供給配管151にはイオン界面活性剤供給源152が接続されており、イオン界面活性剤供給源152からイオン界面活性剤がイオン界面活性剤供給配管151およびイオン界面活性剤ノズル134を介して位置調節機構120に支持された基板表面に吐出されるように構成されている。供給機器群153は、イオン界面活性剤供給配管151に接続されたバルブや流量調節器等を含む。位置調節機構120に支持された基板を回転しつつ、イオン界面活性剤供給源152からイオン界面活性剤供給配管151およびイオン界面活性剤ノズル134を介して基板表面にイオン界面活性剤を供給することによりイオン界面活性剤供給処理が行われる。
【0060】
親水化処理液供給部250は、上記親水化処理液ノズル135と、親水化処理液供給配管155と、親水化処理液供給源156と、供給機器群157とを有している。親水化処理液ノズル135には親水化処理液供給配管155が接続され、親水化処理液供給配管155には親水化処理液供給源156が接続されており、親水化処理液供給源156から親水化処理液が親水化処理液供給配管155および親水化処理液ノズル135を介して位置調節機構120に支持された基板表面に吐出されるように構成されている。供給機器群157は、親水化処理液供給配管155に接続されたバルブや流量調節器等を含む。位置調節機構120に支持された基板を回転しつつ、親水化処理液供給源156から親水化処理液供給配管155および親水化処理液ノズル135を介して基板表面に親水化処理液を供給することにより親水化処理液供給処理が行われる。
【0061】
接合領域T2には、接合処理部220が設けられている。接合処理部220は、下基板WLを上面で載置して保持する下部チャック160と、上基板WUを下面で吸着保持する上部チャック161とを有する。上部チャック161は、下部チャック160の上方に設けられる。上部チャック161は、下部チャック160と対向配置可能に構成される。すなわち、下部チャック160に保持された下基板WLと、上部チャック161に保持された上基板WUとは、対向して配置可能である。
【0062】
下部チャック160の内部には、直流電源(図示せず)に電気的に接続されている静電吸着用の電極(図示せず)もしくは真空ポンプ(図示せず)に連通する吸引管(図示せず)が設けられる。下基板WLは、静電吸着用の電極に生じたクーロン力等の静電力もしくは吸引管からの吸引により下部チャック160の上面に吸着保持される。
【0063】
下部チャック160の内部には、ヒータ等の加熱機構160aが設けられる。加熱機構160aは、下部チャック160に吸着保持された下基板WLを加熱する。
【0064】
下部チャック160の下方には、シャフト162を介してチャック駆動部163が設けられる。チャック駆動部163は、下部チャック160を昇降させるように構成される。チャック駆動部163は、下部チャック160を水平方向に移動させるように構成されてもよい。チャック駆動部163は、下部チャック160を鉛直軸周りに回転させるように構成されてもよい。
【0065】
上部チャック161の内部には、直流電源(図示せず)に電気的に接続されている静電吸着用の電極(図示せず)もしくは真空ポンプ(図示せず)に連通する吸引管(図示せず)が設けられる。上基板WUは、静電吸着用の電極に生じたクーロン力等の静電力もしくは吸引管からの吸引により上部チャック161の下面に吸着保持される。
【0066】
上部チャック161の内部には、ヒータ等の加熱機構161aが設けられる。加熱機構161aは、上部チャック161に吸着保持された上基板WUを加熱する。
【0067】
上部チャック161の上方には、Y方向に沿って延伸するレール164が設けられる。上部チャック161は、チャック駆動部165によりレール164上を移動可能である。チャック駆動部165は、上部チャック161を昇降させるように構成される。チャック駆動部165は、上部チャック161を鉛直軸周りに回転させるように構成されてもよい。
【0068】
処理容器100内には、前処理領域T1と接合領域T2との間を移動し、かつ上基板WUの表裏面を反転させる反転機構170が設けられる。反転機構170は、上基板WUを保持する保持アーム171を有する。保持アーム171上には、上基板WUを吸着して水平に保持する吸着パッド(図示せず)が設けられる。保持アーム171は、駆動部173に支持される。駆動部173は、保持アーム171を水平軸周りに回動させるように構成され、かつ保持アーム171を水平方向に伸縮させるように構成される。駆動部173の下方には、駆動部174が設けられる。駆動部174は、駆動部173を鉛直軸周りに回転させるように構成され、かつ駆動部173を鉛直方向に昇降させるように構成される。駆動部174は、Y方向に延伸するレール175に取り付けられる。レール175は、接合領域T2から前処理領域T1まで延伸する。反転機構170は、駆動部174によりレール175に沿って位置調節機構120と上部チャック161との間を移動可能になっている。反転機構170の構成は、これに限定されず、上基板WUの表裏面を反転させることができればよい。基板搬送体112に反転機構を設け、反転機構170の位置に別の搬送機構を設けてもよい。
【0069】
接合領域T2における処理容器100の側面には、排気ポート181が設けられる。排気ポート181には、排気通路182が接続される。排気通路182には、圧力調整弁183および真空ポンプ184が順次介設されて排気機構を構成する。排気機構により接合領域T2を排気して減圧雰囲気にできるようになっている。なお、排気機構を設けずに接合領域T2を常圧にしてもよい。この場合は、ゲートバルブ105は設けなくてもよい。
【0070】
接合装置200はさらに制御部260を有する。制御部260は、CPU(コンピュータ)を有する主制御部と、入力装置と、出力装置と、表示装置と、記憶装置とを有している。主制御部は、接合装置200の各構成部を制御する。制御部260の主制御部は、例えば、記憶装置の記憶媒体に記憶された処理レシピに基づいて、各構成部に上記接合方法を行うための動作を実行させる。
【0071】
次に、このように構成される接合装置200における上基板WUと下基板WLとを接合する動作について説明する。下基板WLは第1基板10に対応し、上基板WUは第2基板20に対応する。
【0072】
まず、接合装置200に上基板WUを搬送する。上基板WUは、外部の搬送機構(図示せず)により搬入出口101を介して接合装置に搬入され、トランジション110を介して基板搬送体112により位置調節機構120に搬送される。
【0073】
次いで、ノズル駆動部136によりノズルアーム131を走査させ、プラズマノズル133を上基板WUの中心部上方に移動させる。続いて、ガス供給源144からガス供給配管143を介して活性化処理のためのガスをプラズマノズル133に供給するとともに、高周波電源142からコイル141に高周波電力を供給する。そして、プラズマノズル133から上基板WUの表面にプラズマを照射し、上基板WUの絶縁膜に対し、表面活性化処理を施す。これにより、絶縁膜表面にダングリングボンドが形成される。
【0074】
引き続き、プラズマノズル133を元に戻し、ノズル駆動部137によりノズルアーム132を走査させてイオン界面活性剤ノズル134および親水化処理液ノズル135を上基板WUの上方に移動させる。そして、上基板WUがPN接合を有するものの場合は、イオン界面活性剤ノズル134を上基板WUの中心部の上方に位置させ、上基板WUを回転させながら、イオン界面活性剤ノズル134から上基板WUの表面にイオン界面活性剤を供給する。供給されたイオン界面活性剤は遠心力により上基板WUの表面に拡散されて、全面に供給される。これにより、導電膜(電極パッド)への金属(Cu)の析出が抑制される。上述したようにイオン界面活性剤としては、陽イオン界面活性剤および陰イオン界面活性剤を用いることができる。
【0075】
引き続き、ノズル駆動部137によりノズルアーム132を走査させて親水化処理液ノズル135を上基板WUの中心部上方に移動させる。続いて、上基板WUを回転させながら、親水化処理液ノズル135から上基板WUの表面に親水化処理液を供給する。供給された親水化処理液は遠心力により上基板WUの表面に拡散されて、全面に供給される。これにより上基板WUの絶縁膜表面に形成されたダングリングボンドをOH終端して親水化する。上述したように親水化処理液としては、純水、CO水を用いることができる。
【0076】
なお、イオン界面活性剤ノズル134と親水化処理液ノズル135から上基板WUにイオン界面活性剤および親水化処理液を同時に供給してもよい。
【0077】
その後、位置調節機構120によって上基板WUの水平方向の向きが調節され、位置調節機構120から反転機構170の保持アーム171に上基板WUが受け渡される。続いて、前処理領域T1において、保持アーム171を反転させることにより、上基板WUの表裏面が反転される。すなわち、上基板WUの表面が下方に向けられる。次いで、反転機構170が上部チャック161側に移動し、反転機構170から上部チャック161に上基板WUが受け渡される。上基板WUは、上部チャック161にその裏面が吸着保持される。引き続き、上部チャック161がチャック駆動部165によって下部チャック160の上方であって当該下部チャック160に対向する位置まで移動する。そして、上基板WUは、後述する下基板WLが接合装置に搬送されるまで上部チャック161で待機される。なお、上基板WUの表裏面の反転は、反転機構170の移動中に行われてもよい。
【0078】
次いで、接合装置200に下基板WLを搬送する。下基板WLは、外部の搬送機構(図示せず)により搬入出口101を介して接合装置に搬入され、トランジション110を介して基板搬送体112により位置調節機構120に搬送される。続いて、ノズル駆動部136によりノズルアーム131を走査させ、プラズマノズル133を下基板WLの中心部上方に移動させる。続いて、上基板WUの際と同様の動作で、プラズマノズル133から下基板WLの表面にプラズマを照射し、下基板WLの絶縁膜に対し、表面活性化処理を施す。これにより、絶縁膜表面にダングリングボンドが形成される。
【0079】
次いで、プラズマノズル133を元に戻し、ノズル駆動部137によりノズルアーム132を走査させてイオン界面活性剤ノズル134および親水化処理液ノズル135を下基板WLの上方に移動させる。そして、下基板WLがPN接合を有するものの場合は、イオン界面活性剤ノズル134を下基板WLの中心部の上方に位置させ、上基板WUのときと同様に、下基板WLを回転させながら、イオン界面活性剤ノズル134から下基板WLの表面にイオン界面活性剤を供給する。
【0080】
次いで、ノズル駆動部137によりノズルアーム132を走査させて親水化処理液ノズル135を下基板WLの中心部上方に移動させる。そして、上基板WUのときと同様に、下基板WLを回転させながら、親水化処理液ノズル135から下基板WLの表面に親水化処理液を供給する。
【0081】
なお、イオン界面活性剤ノズル134と親水化処理液ノズル135から下基板WLにイオン界面活性剤および親水化処理液を同時に供給してもよい。
【0082】
その後、位置調節機構120によって下基板WLの水平方向の向きが調節され、続いて、下基板WLが基板搬送体112によって下部チャック160に搬送され、下部チャック160に吸着保持される。このとき、下基板WLの表面が上方を向くように、下基板WLの裏面が下部チャック160に保持される。なお、下部チャック160の上面には基板搬送体112の形状に適合する溝(図示せず)が形成され、下基板WLの受け渡しの際に基板搬送体112と下部チャック160とが干渉するのを避けるようにしてもよい。
【0083】
次いで、ゲートバルブ105により搬入出口104を閉じ、真空ポンプ184により接合領域T2を排気して減圧する。そして、下部チャック160に保持された下基板WLと上部チャック161に保持された上基板WUとの水平方向の位置調節を行う。具体的には、まず、例えばCCDカメラを用いて、下基板WLの表面と上基板WUの表面を撮像する。そして、撮像された画像に基づいて、予め定められた下基板WLの表面の基準点(図示せず)と上基板WUの表面の基準点(図示せず)とが合致するように、上部チャック161によって上基板WUの水平方向の位置が調節される。なお、下部チャック160がチャック駆動部163によって水平方向に移動自在である場合には、下部チャック160によって下基板WLの水平方向の位置を調節してもよい。また、下部チャック160および上部チャック161の両方で下基板WLと上基板WUの相対的な水平方向の位置を調節してもよい。
【0084】
次いで、チャック駆動部163によって下部チャック160を上昇させ、下部チャック160に保持された下基板WLの表面と上部チャック161に保持された上基板WUの表面とを当接させて圧着する。このとき、下基板WLは加熱機構160aにより加熱され、上基板WUは加熱機構161aにより加熱されており、この際の熱と圧力により、上基板WUと下基板WLとが接合され、重合基板WTが形成される。具体的には、上基板WUと下基板WLの導電膜(電極パッド)同士が金属の拡散により接合され、絶縁膜同士がOH基同士の脱水縮合反応により接合される。
【0085】
このようにして形成された重合基板WTは、基板搬送体112によってトランジション110へ搬送され、外部の搬送機構(図示せず)により搬入出口101を介して搬出される。
【0086】
<実験例>
次に、実験例について説明する。
ここでは、複数のCu電極パッドを有する実験用回路を準備し、実験用回路を親水化処理液としての、純水、2MΩcmのCO水、0.2MΩcmのCO水に浸漬した状態で、PN接合および光による起電力を想定して、Cu電極パッド間に-1V(一方が0V、他方が-1V)の電圧を100sec間印加した。その結果、いずれも、-1V側のCu電極パッドにCuの析出が見られた。
【0087】
これに対して、親水化処理液としての、純水、2MΩcmのCO水、0.2MΩcmのCO水に、陽イオン界面活性剤としてエステル型ジアルキルアンモニウム塩を添加した場合は、同様の電圧印加実験の後、いずれも、-1V側のCu電極パッドにCuの析出が見られなかった。また、同様の親水化処理液に対し、陰イオン界面活性剤として直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩を添加し、電圧印加実験を行った場合も、同様に、-1V側のCu電極パッドにCuの析出が見られなかった。
【0088】
以上のことから、イオン界面活性剤である陽イオン界面活性剤および陰イオン界面活性剤ともに、PN接合に基づく電界めっき反応によるCu電極パッドへのCu析出を抑制できることが確認された。
【0089】
<他の適用>
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0090】
例えば、上記実施形態では、接合装置として、活性化処理部、イオン界面活性剤供給部、および親水化処理液供給部を有する前処理部を処理容器内の前処理領域に配置し、実際に接合処理を行う接合部を処理容器内の接合領域に配置した一体的な装置を例示した。しかし、このような一体的な装置に限らず、接合部と前処理部を分離して設けた装置や、前処理部を構成する活性化処理部、イオン界面活性剤供給部、および親水化処理液供給部を別個に設けた装置であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
10;第1基板
10a,20a;表面
15,25;電極パッド(導電膜)
17,27;第2絶縁膜(絶縁膜)
18,28;チャネル領域(Pチャネル)
19,29;拡散領域(N-well)
20;第2基板
A11,A21;第1領域
A12,A22;第2領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16