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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106334
(43)【公開日】2024-08-07
(54)【発明の名称】送出装置及び受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/235 20110101AFI20240731BHJP
   H04N 21/435 20110101ALI20240731BHJP
【FI】
H04N21/235
H04N21/435
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024009213
(22)【出願日】2024-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2023010490
(32)【優先日】2023-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】弁理士法人キュリーズ
(72)【発明者】
【氏名】市ヶ谷 敦郎
(72)【発明者】
【氏名】根本 慎平
(72)【発明者】
【氏名】岩村 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】井口 和久
【テーマコード(参考)】
5C164
【Fターム(参考)】
5C164FA04
5C164MA06S
5C164MB13S
5C164MB42S
5C164SB06P
5C164SB11S
5C164UB10P
5C164UB11S
(57)【要約】
【課題】マルチレイヤ符号化を利用して編成スーパー等の上乗せ情報を視聴者に対して適切に提示することを可能とする。
【解決手段】映像配信システムで用いる送出装置は、番組の映像を符号化してベースレイヤのビットストリームを出力するベースレイヤ符号化手段(111)と、前記映像に重畳して表示する上乗せ情報を符号化してエンハンスメントレイヤのビットストリームを出力するエンハンスメントレイヤ符号化手段(113)と、前記ベースレイヤ及び前記エンハンスメントレイヤの各ビットストリームを多重化して多重化ストリームを出力するとともに、前記上乗せ情報を前記映像に重畳して受信側で表示する時間を制御するための制御情報を前記多重化ストリームに含める多重化手段(13)と、前記多重化ストリームを送出する送出手段(14)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像配信システムで用いる送出装置であって、
番組の映像を符号化してベースレイヤのビットストリームを出力するベースレイヤ符号化手段と、
前記映像に重畳して表示する上乗せ情報を符号化してエンハンスメントレイヤのビットストリームを出力するエンハンスメントレイヤ符号化手段と、
前記ベースレイヤ及び前記エンハンスメントレイヤの各ビットストリームを多重化して多重化ストリームを出力するとともに、前記上乗せ情報を前記映像に重畳して受信側で表示する時間を制御するための制御情報を前記多重化ストリームに含める多重化手段と、
前記多重化ストリームを送出する送出手段と、を備える
送出装置。
【請求項2】
前記制御情報は、第1フラグ情報を含み、
前記第1フラグ情報は、当該第1フラグ情報を取得した受信側で前記上乗せ情報を前記映像に重畳して常時表示することが必須であることを示すフラグ情報である
請求項1に記載の送出装置。
【請求項3】
前記制御情報は、第2フラグ情報を含み、
前記第2フラグ情報は、当該第2フラグ情報を取得した受信側で前記上乗せ情報を前記映像に重畳して所定時間だけ表示することが必須であることを示すフラグ情報である
請求項1に記載の送出装置。
【請求項4】
前記制御情報は、前記所定時間に関する時間情報をさらに含み、
前記時間情報は、前記所定時間の時間長、前記所定時間が設定される周期であるインターバル時間、及び前記所定時間が繰り返される繰返し回数のうち、少なくとも1つを示す情報である
請求項3に記載の送出装置。
【請求項5】
前記制御情報は、第3フラグ情報を含み、
前記第3フラグ情報は、当該第3フラグ情報を取得した受信側で前記上乗せ情報を前記映像に重畳して表示するか否かを任意に選択可能であることを示すフラグ情報である
請求項1に記載の送出装置。
【請求項6】
映像配信システムで用いる受信装置であって、
番組の映像を符号化して得られたベースレイヤのビットストリームと前記映像に重畳して表示する上乗せ情報を符号化して得られたエンハンスメントレイヤのビットストリームとが多重化された多重化ストリームを受信する受信手段と、
前記ベースレイヤ及び前記エンハンスメントレイヤの各ビットストリームを分離するとともに、前記上乗せ情報を前記映像に重畳して受信側で表示する時間を制御するための制御情報を前記多重化ストリームから取得する分離手段と、
前記ベースレイヤのビットストリームから前記映像を復号するベースレイヤ復号手段と、
前記制御情報に基づいて、前記エンハンスメントレイヤのビットストリームから前記上乗せ情報を復号するエンハンスメントレイヤ復号手段と、を備える
受信装置。
【請求項7】
前記制御情報は、第1フラグ情報を含み、
前記第1フラグ情報は、当該第1フラグ情報を取得した受信側で前記上乗せ情報を前記映像に重畳して常時表示することが必須であることを示すフラグ情報である
請求項6に記載の受信装置。
【請求項8】
前記制御情報は、第2フラグ情報を含み、
前記第2フラグ情報は、当該第2フラグ情報を取得した受信側で前記上乗せ情報を前記映像に重畳して所定時間だけ表示することが必須であることを示すフラグ情報である
請求項6に記載の受信装置。
【請求項9】
前記制御情報は、前記所定時間に関する時間情報をさらに含み、
前記時間情報は、前記所定時間の時間長、前記所定時間が設定される周期であるインターバル時間、及び前記所定時間が繰り返される繰返し回数のうち、少なくとも1つを示す情報である
請求項8に記載の受信装置。
【請求項10】
前記制御情報は、第3フラグ情報を含み、
前記第3フラグ情報は、当該第3フラグ情報を取得した受信側で前記上乗せ情報を前記映像に重畳して表示するか否かを任意に選択可能であることを示すフラグ情報である
請求項6に記載の受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送を含む映像配信システムで用いる送出装置及び受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放送サービスにおいては、過去の番組の再放送時、スポーツ、又は国会放送など、終了時間が流動的な番組がある。そのため、当該番組の放送中又はその後の番組において放送時間が変更になる場合がある。また、一部の番組が放送プログラムを正常化するために放送休止になることもある。
【0003】
そのような場合において、放送時間が変更されたこと又は番組が休止になったことなどを上乗せスーパーと称される字幕により、番組開始時又は別途定められた時間において所定時間にわたって表示することが行われている。このような字幕スーパーは、番組編成情報を告知することから編成スーパーとも称される。
【0004】
例えば、送出装置は、番組開始時に、所定時間にわたって番組の映像に編成スーパーを重畳したうえで符号化を行い、符号化によって得たストリームを送出する。受信装置は、当該ストリームから編成スーパー付きの映像を復号する。その結果、受信側では、当該所定時間にわたって編成スーパー付きの映像を表示する。また、ライブ映像のネット配信を同時に行う場合において、ネット配信でも同様のスーパーの表示を必要とする。
【0005】
一方、特許文献1には、マルチレイヤ符号化を応用して映像の上乗せサービスを実現する技術が記載されている。送出装置は、主映像をベースレイヤとして符号化するとともに、字幕や解説映像等の上乗せ情報(すなわち、副映像)を主映像に重畳した映像をエンハンスメントレイヤとして符号化して送出する。受信側では、視聴者の選択に応じて、ベースレイヤ及びエンハンスメントレイヤを組み合わせて復号することにより、上乗せ情報付きの映像を表示できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-53534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術では、編成スーパーを上乗せ情報として用いることで、編成スーパーが重畳された映像を受信側で表示させることができる。しかしながら、編成スーパーは、本来であれば番組放送中に継続して表示させたいところであるが、編成スーパーが常時表示されることでコンテンツの邪魔になることもある。そのため、従来の技術では、番組冒頭又は定められた時間において所定時間(数秒から数分)の表示に限定して編成スーパーの上乗せが実施されており、番組の途中から視聴を開始した視聴者の目に触れないことがある。
【0008】
そこで、本発明は、マルチレイヤ符号化を利用して編成スーパー等の上乗せ情報を視聴者に対して適切に提示することを可能とする送出装置及び受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係る送出装置は、映像配信システムで用いる送出装置であって、番組の映像を符号化してベースレイヤのビットストリームを出力するベースレイヤ符号化手段と、前記映像に重畳して表示する上乗せ情報を符号化してエンハンスメントレイヤのビットストリームを出力するエンハンスメントレイヤ符号化手段と、前記ベースレイヤ及び前記エンハンスメントレイヤの各ビットストリームを多重化して多重化ストリームを出力するとともに、前記上乗せ情報を前記映像に重畳して受信側で表示する時間を制御するための制御情報を前記多重化ストリームに含める多重化手段と、前記多重化ストリームを送出する送出手段と、を備える。
【0010】
第2の態様に係る受信装置は、映像配信システムで用いる受信装置であって、番組の映像を符号化して得られたベースレイヤのビットストリームと前記映像に重畳して表示する上乗せ情報を符号化して得られたエンハンスメントレイヤのビットストリームとが多重化された多重化ストリームを受信する受信手段と、前記ベースレイヤ及び前記エンハンスメントレイヤの各ビットストリームを分離するとともに、前記上乗せ情報を前記映像に重畳して受信側で表示する時間を制御するための制御情報を前記多重化ストリームから取得する分離手段と、前記ベースレイヤのビットストリームから前記映像を復号するベースレイヤ復号手段と、前記制御情報に基づいて、前記エンハンスメントレイヤのビットストリームから前記上乗せ情報を復号するエンハンスメントレイヤ復号手段と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、マルチレイヤ符号化を利用して編成スーパー等の上乗せ情報を視聴者に対して適切に提示することを可能とする送出装置及び受信装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る放送システムの構成例を示す図である。
図2】実施形態に係る送出装置の構成例を示す図である。
図3】実施形態に係る重畳部の動作例を示す図である。
図4】実施形態に係る制御情報の構成例を示す図である。
図5】実施形態に係る受信装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。以下において、映像配信システムの一例として放送システムについて説明する。放送システムは、送出装置から受信装置へ放送伝送路を介して一方向の配信を行うシステムである。しかしながら、本発明の映像配信システムは放送システムに限定されない。映像配信システムは、送出装置と受信装置とが通信回線を介して双方向の通信を行うシステム、例えば、インターネット経由で映像配信を行うネット配信システムであってもよい。
【0014】
(放送システム)
図1は、本実施形態に係る放送システム10の構成例を示す図である。放送システム10は、送出装置1と受信装置2とを有する。図1では、受信装置2を1つのみ図示しているが、受信装置2の数は複数であってもよい。送出装置1は、番組の映像を符号化して送出する。受信装置2は、符号化された番組映像データを受信して復号する。受信装置2は、図示を省略する表示装置と接続されている、又は表示装置と一体化されていてもよい。受信装置2が復号映像を表示装置に出力することで表示装置が映像を表示する。
【0015】
本実施形態では、放送システム10は、マルチレイヤ符号化を用いて番組の映像伝送を行う。マルチレイヤ符号化は、階層符号化と称されることもある。マルチレイヤ符号化では、ベースレイヤ(以下、「BL」と表記する)を基本のストリームとし、その差分映像をエンハンスメントレイヤ(以下、「EL」と表記する)として伝送する。図1において、1つのBL#0を伝送し、複数のEL(EL#1乃至EL#n)を伝送する例を図示しているが、伝送するELは1つのみであってもよい。ここで、「#」が付された数字は、ビットストリームの識別子(ストリーム番号)を意味する。なお、ELの最大数nは、2以上の整数であって、サービスによって符号化方式で定められる。受信装置2は、BL単体での復号だけではなく、BL及びELを組み合わせて復号することも可能である。
【0016】
マルチレイヤ符号化の方式には、HEVC(High Efficiency Video Coding)におけるScalable Main 10プロファイルを用いることができる。Scalable Main 10プロファイルは、BLとしてMain10プロファイル相当の映像を伝送しながら、ELを追加してBLの映像に重畳することができる符号化の仕組みである。
【0017】
マルチレイヤ符号化の方式には、VVC(Versatile Video Coding)におけるMultilayer Main10プロファイルを用いてもよい。Multilayer Main10プロファイルでは、上述のScalable Main 10プロファイルと同様に、Main10プロファイルに対して複数レイヤの伝送を実現するプロファイルであり、複数のレイヤの映像伝送が可能である。
【0018】
このようなマルチレイヤ機能を備えた符号化技術では、映像の本サービスとなるBLに対して上位レイヤであるELの映像を重畳することができる。なお、マルチレイヤ符号化としてHEVCのScalable Main 10プロファイルやVVCのMultilayer Main10プロファイルを例に挙げたが、HEVCやVVCに限定されるものではなく、他の符号化方式を用いてもよい。
【0019】
受信装置2は、BL単体での復号に加え、BL及びELを組み合わせて復号することも可能である。マルチレイヤ符号化によれば、例えば、複数のレイヤのビットストリームを利用して復号すると高い品質の映像が再生されるのに対し、一部のレイヤ(BL)のビットストリームのみを復号しても低い品質の映像が再生可能である。
【0020】
マルチレイヤ符号化の第1の応用例として、BLに対して品質向上のためのELを伝送することで、品質の異なる(低品質、高品質)映像サービスを実現するSNRスケーラブルがある。第2の応用例として、BL(低解像度映像)に対して解像度向上のためのEL(高解像度映像)を伝送する空間スケーラブルがある。空間スケーラブルによれば、2K映像と4K映像とのセットや、4K映像と8K映像とのセット等、異なる解像度の放送サービスを効率的に同時に伝送可能である。第3の応用例として、BLに対してフレームレート向上のためのELを伝送する時間スケーラブル(Temporal Scalable)がある。
【0021】
本実施形態では、送出装置1は、マルチレイヤ符号化(特に、SNRスケーラブル)を応用して映像の上乗せサービスを実現する。具体的には、送出装置1は、主映像をBLとして符号化するとともに、字幕や解説映像等の上乗せ情報(すなわち、副映像)を主映像に重畳した映像をELとして符号化し、BL及びELのそれぞれのビットストリーム(以下、単に「ストリーム」とも称する)を送出する。このような方法によれば、BLのみを受信する受信装置2は主映像のみを再生可能である一方、BL及びELを受信する受信装置2は、BLのみの復号を行うことで主映像を、BL及びELの両方を復号することで副映像付きの主映像をそれぞれ再生可能となり、受信したいサービスの選択を受信装置2側で行うことが可能となる。
【0022】
ここで、上乗せ情報とは、番組の映像に重畳して表示する情報である。上乗せ情報は、画面の一部のみを占有する情報であり、例えば、時報や緊急地震速報と呼ばれる情報やニュース速報と呼ばれる情報が上乗せ情報に相当する。上乗せ情報は、字幕(例えば、災害や事件・事故を知らせるテロップ)であってもよい。字幕は、数字を含む文字、図形、若しくは記号、又はこれらの組み合わせからなる。上乗せ情報は、多言語字幕サービスにおける字幕であってもよいし、主映像サービスに関する解説映像サービスにおける解説映像であってもよい(特許文献1参照)。
【0023】
本実施形態では、上乗せ情報が編成スーパーである一例について主として説明する。編成スーパーは、放送時間が変更されたこと又は番組が休止になったことなどを表す字幕である。
【0024】
(送出装置)
図2は、本実施形態に係る送出装置1の構成例を示す図である。送出装置1は、ビットストリーム生成部11と、制御情報生成部12と、多重化部13と、送出部14とを有する。なお、ELが1つのみである一例を示しているが、ELは複数であってもよい。
【0025】
ビットストリーム生成部11は、BL符号化部111と、重畳部112と、EL符号化部113とを有する。
【0026】
BL符号化部111は、番組の映像である主映像の入力信号をBLとして符号化し、BLのビットストリームを多重化部13に出力する。また、BL符号化部111は、主映像に対応する局部復号映像を重畳部112及びEL符号化部113に出力する。また、BL符号化部111は、送出しているBLビットストリームの映像フォーマットや符号化情報としてELと共有するパラメータをEL符号化部113に出力する。
【0027】
重畳部112は、主映像に対応する局部復号映像に上乗せ情報(副映像信号)を重畳し、上乗せ情報が重畳された主映像である上乗せ情報付き映像信号をEL符号化部113に出力する。なお、重畳部112は、主映像に対応する局部復号映像に上乗せ情報を重畳する場合に限らず、主映像に対して直接的に上乗せ情報を重畳してEL符号化部113に出力してもよい。重畳部112は、上乗せ情報が入力されていない場合(例えば、入力信号が黒一色のような映像情報として内容を含まないような場合)、主映像に対応する局部復号映像をそのままEL符号化部113に出力してもよい。
【0028】
図3は、本実施形態に係る重畳部112の動作例を示す図である。重畳部112は、図3(a)に示すような編成スーパーを上乗せ情報として図3(b)に示す番組映像(主映像)に重畳し、図3(c)に示す上乗せ情報付き番組映像を出力する。ここでは、上乗せ情報が編成スーパーであるとしているが、編成スーパーに限定するものではなく、時報や解説映像等における図や映像等であってもよい。
【0029】
EL符号化部113は、上乗せ情報が重畳された主映像である上乗せ情報付き映像信号をELとして符号化し、ELのビットストリームを出力する。例えば、EL符号化部113は、上乗せ情報が重畳された番組映像の全体的な提示領域(すなわち、フレーム全体)を、BLを参照するインターレイヤ予測により符号化する。インターレイヤ予測とは、ELを符号化する際にBLを参照する予測をいう。インターレイヤ予測により、BLに対する差分映像をELとして伝送できる。例えば、図3(c)に示す上乗せ情報付き番組映像をELとして符号化する場合、BLは図3(b)に示すような番組映像であるため、差分は図3(a)に示す上乗せ情報である。そのため、EL符号化部113は、インターレイヤ予測により上乗せ情報を効率的且つ速やかに符号化してELのビットストリームを生成可能である。ここで、EL符号化部113は、BLとの差分がゼロである領域をインターレイヤ予測に制限してもよい。なお、上乗せ情報が入力されていない場合、EL符号化部113は、予測処理を省略し差分が無いことを示すビットストリームを生成してもよい。
【0030】
なお、本実施形態では、BLとELとで同じ解像度・同じフレームレートの映像を符号化するSNRスケーラブルを利用し、上乗せ情報を効率的に符号化している。なお、一般的なSNRスケーラブルは、BLに生じる符号化劣化を補償する情報をELとして符号化するものであるが、本実施形態では、上乗せ情報を効率的に符号化するためにSNRスケーラブルの技術を利用している。
【0031】
図2に戻り、制御情報生成部12は、上乗せ情報を主映像に重畳して受信側で表示する時間を制御するための制御情報を生成する。このような制御情報の詳細については後述する。制御情報生成部12は、生成した制御情報を多重化部13に出力する。
【0032】
多重化部13は、制御情報と、BLのビットストリームと、ELのビットストリームと、他のメディア(例えば、音声)とを多重化して多重化ストリームを送出部14に出力する。BLとELのストリームを合成するか個別に伝送するかは符号化方式、伝送方式による。ここで、多重化部13は、所定の多重化方式を用いて各ビットストリームを多重化して多重化ストリームを送出する。所定の多重化方式は、例えば、MPEG-2やMPEG-4のTransport stream(TS)であってもよいし、MPEG Media Transport(MMT)であってもよい。所定の多重化方式は、これらに限定されず、例えばCMAF(Common Media Application Format)など、複数のストリームを同期して伝送できる多重化方式であればよい。多重化部13は、BLビットストリーム及びELビットストリームのそれぞれにストリーム識別子を付与してもよい。
【0033】
多重化部13は、制御情報生成部12が生成した制御情報を周期的に(繰り返して)多重化ストリームに含めてもよい。多重化部13は、番組と対応付けられたメッセージ(又はテーブル)に制御情報を含めてもよい。例えば、多重化部13は、制御情報生成部12が生成した制御情報を、デジタル放送で用いられているService Information(SI)情報に含める。SIは、例えば、デジタル放送の番組を視聴するために必要な情報やEIT(Event Information Table)と呼ばれる番組タイトルや放送時間、番組出演者などを含む情報である。多重化部13は、制御情報生成部12が生成した制御情報をSIの一部として含む多重化ストリームを出力する。なお、多重化部13は、SI情報以外のメッセージ(又はテーブル)に制御情報を含めてもよい。
【0034】
送出部14は、伝送路を介して多重化ストリームを送出する。伝送路は、無線回線(放送電波)であってもよいし、有線回線(ネットワーク)であってもよい。なお、伝送路については、例えばBLビットストリーム及びELビットストリームを放送電波やネットワークを用いた同一経路で伝送してもよいし、一部のストリーム(例えばBLビットストリーム)を放送波で伝送しつつ残りのストリーム(例えばELビットストリーム)をネットワークで伝送するというように異経路で伝送してもよい。
【0035】
このように、本実施形態に係る送出装置1は、番組の映像を符号化してBLのビットストリームを出力するBL符号化手段(111)と、映像に重畳して表示する上乗せ情報を符号化してELのビットストリームを出力するEL符号化手段(113)と、BL及びELの各ビットストリームを多重化して多重化ストリームを出力するとともに、上乗せ情報を映像に重畳して受信側で表示する時間を制御するための制御情報を多重化ストリームに含める多重化手段(13)と、多重化ストリームを送出する送出手段(14)と、を有する。このような制御情報を多重化ストリームに含めることにより、マルチレイヤ符号化を利用して編成スーパー等の上乗せ情報を視聴者に対して適切に提示することが可能になる。
【0036】
(制御情報)
図4は、本実施形態に係る制御情報の構成例を示す図である。制御情報には、第1フラグ情報、第2フラグ情報、及び第3フラグ情報のいずれかのフラグ情報がセットされる。
【0037】
第1フラグ情報は、当該第1フラグ情報を取得した受信側で上乗せ情報を映像に重畳して常時表示することが必須であることを示すフラグ情報である。すなわち、第1フラグ情報は、受信側における上乗せ情報の常時表示が必須であることを示す。番組を視聴する受信側が当該番組について第1フラグ情報を取得した場合、当該受信側では、上乗せ情報を当該番組の映像に重畳して常時表示する。これにより、受信側で番組の途中から視聴を開始した場合であっても上乗せ情報が常に表示されるため、上乗せ情報を視聴者に対してより確実に提示することが可能になる。
【0038】
第2フラグ情報は、当該第2フラグ情報を取得した受信側で上乗せ情報を映像に重畳して所定時間だけ表示することが必須であることを示すフラグ情報である。すなわち、第2フラグ情報は、受信側における上乗せ情報の一時的な表示が必須であることを示す。番組を視聴する受信側が当該番組について第2フラグ情報を取得した場合、当該受信側では、当該第2フラグ情報を取得してから所定時間にわたって上乗せ情報を当該番組の映像に重畳して表示し、当該所定時間が経過したときに上乗せ情報を非表示にする。これにより、上乗せ情報を視聴者に対してより確実に提示可能としつつ、上乗せ情報が常時表示されることでコンテンツの邪魔になる事態を抑制できる。
【0039】
制御情報に第2フラグ情報がセットされる場合、制御情報は、所定時間に関する時間情報をさらに含んでもよい。時間情報は、所定時間の時間長、所定時間が設定される周期であるインターバル時間、及び所定時間が繰り返される繰返し回数のうち、少なくとも1つを示す情報である。
【0040】
所定時間の時間長を示す時間情報を制御情報に含めることにより、例えば上乗せ情報の内容に応じて、適切な時間長において当該上乗せ情報を受信側で表示させることができる。但し、所定時間の時間長は、システム仕様で予め規定された固定の時間長であってもよい。
【0041】
インターバル時間を示す時間情報を制御情報に含めることにより、例えば上乗せ情報の内容に応じて、適切なインターバル(周期)で当該上乗せ情報を受信側で表示させることができる。但し、インターバル時間は、システム仕様で予め規定された固定の時間長であってもよい。或いは、上乗せ情報の表示を番組中で1回のみとする場合、インターバル時間は不要である。
【0042】
繰返し回数を示す時間情報を制御情報に含めることにより、例えば上乗せ情報の内容に応じて、適切な回数だけ当該上乗せ情報を受信側で表示させることができる。但し、繰返し回数は、システム仕様で予め規定された固定の回数であってもよい。或いは、上乗せ情報の表示を番組中で1回のみとする場合、繰返し回数は不要である。
【0043】
第3フラグ情報は、当該第3フラグ情報を取得した受信側で上乗せ情報を映像に重畳して表示するか否かを任意に選択可能であることを示すフラグ情報である。番組を視聴する受信側が当該番組について第3フラグ情報を取得した場合、上乗せ情報をデフォルト(初期状態)では非表示とし、視聴者の操作(例えば、リモコンによる操作)によって任意に上乗せ情報の表示・非表示の切り替えを可能とする。例えば、上乗せ情報の内容が、時報や、多言語字幕サービスにおける字幕、又は解説映像サービスにおける解説映像であるような場合、第3フラグ情報をセットすることにより、視聴者が任意に上乗せ情報の表示・非表示を切り替えることができる。
【0044】
制御情報は、フラグ情報と対応付けられたストリーム識別子をさらに含んでもよい。ストリーム識別子は、上乗せ情報が符号化されたELビットストリームを識別するための識別子(ストリーム番号)である。例えば、同一番組について、異なる上乗せ情報をそれぞれELビットストリームで伝送する場合、制御情報は、フラグ情報とストリーム識別子とのセットを複数含んでもよい。これにより、あるELレイヤについては上乗せ情報の表示を必須としつつ、別のELレイヤについては上乗せ情報の表示を任意とするといった運用が可能になる。或いは、上乗せ情報を伝送するストリームは、システム仕様で予め規定されていてもよい。例えば、最も上位のELレイヤ(図1のEL#n)が上乗せ情報を伝送するストリームであると規定されていてもよい。
【0045】
(受信装置)
図5は、本実施形態に係る受信装置2の構成例を示す図である。受信装置2は、受信部21と、ストリーム取得部22と、復号部23とを有する。
【0046】
受信部21は、送出装置1からの伝送信号を受信し、受信信号をストリーム取得部22に出力する。伝送信号は、番組の映像を符号化して得られたBLのビットストリーム(BLストリーム)と、当該映像に重畳して表示する上乗せ情報を符号化して得られたELのビットストリーム(ELストリーム)とが多重化された多重化ストリームを含む。本実施形態では、多重化ストリームは、上乗せ情報を映像に重畳して受信側で表示する時間を制御するための制御情報を含む。
【0047】
ストリーム取得部22は、受信信号からBL及び対応するELのそれぞれのストリームを分離(取得)し、BLストリーム及びELストリームを復号部23に出力する。ストリーム取得部22は、選局部221と、メディア検出部222とを有する。選局部221は、例えば視聴者からの操作に基づいてサービス(視聴番組)を選択(すなわち、選局)し、選択結果を示す情報をメディア検出部222に出力する。選局部221は、リモコンであってもよい。
【0048】
メディア検出部222は、選局部221が出力する情報に基づいて、視聴者が選択したサービスに対応する多重化ストリームを取得(抽出)してBLストリーム及びELストリームに分離し、BLストリーム及びELストリームを復号部23に出力する。本実施形態では、メディア検出部222は、上乗せ情報を映像に重畳して受信側で表示する時間を制御するための制御情報を多重化ストリームから取得し、取得した制御情報を復号部23に出力する。
【0049】
復号部23は、マルチレイヤ復号を行う。具体的には、復号部23は、BLストリーム及びELストリームを組み合わせて復号し、復号映像を表示装置に出力する。復号部23は、BL復号部231と、EL復号部232と、復号制御部233とを有する。
【0050】
BL復号部231は、BLストリームから番組映像を復号する。EL復号部232は、ELストリームから、上乗せ情報が重畳された番組映像を復号する。ここで、EL復号部232は、上乗せ情報が重畳された番組映像の全体的な提示領域(フレーム全体)を、BLを参照するインターレイヤ予測により復号する。ELストリームは、BLに対する差分映像として上乗せ情報を符号化したストリームであるため、EL復号部232は、BL復号部231が復号する番組映像を参照して、差分としての上乗せ情報を番組映像に重畳(合成)し、上乗せ情報付き番組映像を復号する。これにより、インターレイヤ予測により上乗せ情報を効率的且つ速やかに復号して上乗せ情報を提示可能である。
【0051】
復号制御部233は、メディア検出部222が取得した制御情報に基づいて、上乗せ情報(すなわち、ELストリーム)の復号を制御する。上述のように、制御情報には、第1フラグ情報、第2フラグ情報、及び第3フラグ情報のいずれかのフラグ情報がセットされている。
【0052】
視聴する番組について第1フラグ情報がセットされている場合、復号制御部233は、ELストリームを常時復号するようEL復号部232を制御する。その結果、復号部23は、ELストリームから復号された上乗せ情報を、BLストリームから復号された番組映像に重畳して出力する。これにより、番組の途中から視聴を開始した場合であっても上乗せ情報が常に表示されることになる。
【0053】
視聴する番組について第2フラグ情報がセットされている場合、復号制御部233は、当該第2フラグ情報を取得してから所定時間だけELストリームを復号するようEL復号部232を制御する。その結果、復号部23は、ELストリームから復号された上乗せ情報を、BLストリームから復号された番組映像に所定時間だけ重畳して出力する。また、視聴する番組について第2フラグ情報がセットされている場合、復号制御部233は、制御情報に含まれる時間情報に基づいて所定時間を特定する。上述のように、時間情報は、所定時間の時間長、所定時間が設定される周期であるインターバル時間、及び所定時間が繰り返される繰返し回数のうち、少なくとも1つを示す情報である。
【0054】
視聴する番組について第3フラグ情報がセットされている場合、復号制御部233は、選局部221(リモコン)に対する視聴者の操作に基づいて、ELストリームを復号するか否か(すなわち、上乗せ情報を番組映像に重畳するか否か)を決定する。
【0055】
このように、本実施形態に係る受信装置2は、番組の映像を符号化して得られたBLのビットストリームと映像に重畳して表示する上乗せ情報を符号化して得られたELのビットストリームとが多重化された多重化ストリームを受信する受信手段(21)と、BL及びELの各ビットストリームを分離するとともに、上乗せ情報を映像に重畳して受信側で表示する時間を制御するための制御情報を多重化ストリームから取得する分離手段(222)と、BLのビットストリームから映像を復号するBL復号手段(231)と、制御情報に基づいて、ELのビットストリームから上乗せ情報を復号するEL復号手段(232)と、を有する。これにより、マルチレイヤ符号化を利用して編成スーパー等の上乗せ情報を視聴者に対して適切に提示することが可能になる。
【0056】
(その他の実施形態)
上述の実施形態において、便宜上、BLストリームとELストリームを分割して図示したが、符号化方式の仕様に従って1本のストリームとして合成されたストリームでもよい。例えば、BLストリーム及びELストリームを多重化する(伝送する)パケット単位でBLストリーム及びELストリームに分割し処理を行ってもよい。
【0057】
送出装置1が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。また、受信装置2が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。送出装置1が行う各処理を実行する回路を集積化し、送出装置1を半導体集積回路(チップセット、SoC)により構成してもよい。受信装置2が行う各処理を実行する回路を集積化し、受信装置2を半導体集積回路(チップセット、SoC)により構成してもよい。
【0058】
本開示で使用されている「に基づいて(based on)」、「に応じて(depending on)」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」、「のみに応じて」を意味しない。「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」及び「に少なくとも部分的に基づいて」の両方を意味する。同様に、「に応じて」という記載は、「のみに応じて」及び「に少なくとも部分的に応じて」の両方を意味する。「含む(include)」、「備える(comprise)」、及びそれらの変形の用語は、列挙する項目のみを含むことを意味せず、列挙する項目のみを含んでもよいし、列挙する項目に加えてさらなる項目を含んでもよいことを意味する。また、本開示において使用されている用語「又は(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。さらに、本開示で使用されている「第1」、「第2」等の呼称を使用した要素へのいかなる参照も、それらの要素の量又は順序を全般的に限定するものではない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本明細書で使用され得る。したがって、第1及び第2の要素への参照は、2つの要素のみがそこで採用され得ること、又は何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味しない。本開示において、例えば、英語でのa,an,及びtheのように、翻訳により冠詞が追加された場合、これらの冠詞は、文脈から明らかにそうではないことが示されていなければ、複数のものを含むものとする。
【0059】
以上、図面を参照して実施形態について詳しく説明したが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 :送出装置
2 :受信装置
10 :放送システム
11 :ビットストリーム生成部
12 :制御情報生成部
13 :多重化部
14 :送出部
21 :受信部
22 :ストリーム取得部
23 :復号部
111 :BL符号化部
112 :重畳部
113 :EL符号化部
221 :選局部
222 :メディア検出部
231 :BL復号部
232 :EL復号部
233 :復号制御部
図1
図2
図3
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図5