(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106524
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】樹脂フィルム及び表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20240801BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20240801BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20240801BHJP
H10K 59/38 20230101ALI20240801BHJP
H10K 50/854 20230101ALI20240801BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240801BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240801BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
G02B5/20
H05B33/14 Z
H05B33/12 E
H10K59/38
H10K50/854
H10K59/10
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
G09F9/30 349Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010818
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】岩脇 寛
(72)【発明者】
【氏名】西岡 宏司
(72)【発明者】
【氏名】アシャバニ・クマール
(72)【発明者】
【氏名】オースティン・スミス
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・オルメイジャー
(72)【発明者】
【氏名】ホーマー・アントニアディス
【テーマコード(参考)】
2H148
3K107
4F071
5C094
【Fターム(参考)】
2H148AA00
2H148AA05
2H148AA07
3K107AA01
3K107AA05
3K107BB01
3K107CC06
3K107CC37
3K107EE24
3K107EE28
3K107FF06
3K107FF13
3K107FF14
3K107FF15
4F071AA22X
4F071AA77X
4F071AB18
4F071AB23
4F071AE09
4F071AF29Y
4F071AF30Y
4F071AH19
4F071BA01
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC12
5C094AA03
5C094BA27
5C094BA43
5C094ED20
(57)【要約】
【課題】半導体粒子を含有する樹脂フィルムであって、該樹脂フィルムから発せられる光の色度の視野角依存性が小さい樹脂フィルム、及び該樹脂フィルムを含む表示装置を提供する。
【解決手段】第1樹脂を含有する第1樹脂層を含む樹脂フィルムであって、第1樹脂層は1種又は2種以上の半導体粒子を含有し、全光線透過率が73.0%以下である樹脂フィルム、及び該樹脂フィルムを含む表示装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂を含有する第1樹脂層を含む樹脂フィルムであって、
前記第1樹脂層は、1種又は2種以上の半導体粒子を含有し、
全光線透過率が73.0%以下である、樹脂フィルム。
【請求項2】
ヘイズが80.0%以上である、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
前記第1樹脂層は、発光波長が異なる2種以上の半導体粒子を含有する、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項4】
前記第1樹脂層は、光散乱剤をさらに含有する、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項5】
前記第1樹脂層中の前記半導体粒子の濃度[質量%]をC1、前記第1樹脂層中の前記光散乱剤の濃度[質量%]をC2、前記樹脂フィルムの厚みをT[μm]とするとき、式(i):
[C1
2/(1+C2)2]×T≦150 (i)
を満たす、請求項4に記載の樹脂フィルム。
【請求項6】
前記樹脂フィルムの第1表面に波長450nmにおける強度がIinであり発光のピーク波長が450nmの光を入射したときに前記第1表面と対向する第2表面側から出射される波長450nmの透過光の強度であって、観視角0度において検出される透過光の強度をI0、観視角45度において検出される透過光の強度をI45とするとき、式(ii):
|(I0-I45)/Iin|≦0.0450 (ii)
を満たす、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項7】
前記樹脂フィルムの第1表面に発光のピーク波長が450nmの光を入射したときに前記第1表面と対向する第2表面側から出射される発光の発光強度であって、観視角0度において検出される発光の波長510nm~550nmの範囲における最大発光強度をE1、波長600nm~650nmの範囲における最大発光強度をE2とし、観視角45度において検出される発光の波長510nm~550nmの範囲における最大発光強度をE3、波長600nm~650nmの範囲における最大発光強度をE4とするとき、式(iii)及び式(iv):
E2/E1≧0.80 (iii)
E4/E3≧0.80 (iv)
の少なくともいずれか一方を満たす、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項8】
前記第1樹脂層の第1表面上に配置される樹脂層であって、第2樹脂を含有する第2樹脂層と、
前記第1樹脂層の前記第1表面と対向する第2表面上に配置される樹脂層であって、第3樹脂を含有する第3樹脂層と、
をさらに含む、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項9】
前記第1樹脂、前記第2樹脂及び前記第3樹脂がそれぞれ熱可塑性樹脂である、請求項8に記載の樹脂フィルム。
【請求項10】
前記第1樹脂層に含まれる樹脂は前記第1樹脂からなり、前記第2樹脂層に含まれる樹脂は前記第2樹脂からなり、前記第3樹脂層に含まれる樹脂は前記第3樹脂からなる、請求項8に記載の樹脂フィルム。
【請求項11】
前記第1樹脂と前記第2樹脂と前記第3樹脂とが同一である、請求項8に記載の樹脂フィルム。
【請求項12】
押出成形品である、請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の樹脂フィルムを含む表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体粒子を含有する樹脂フィルム、及び該樹脂フィルムを含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2019/078135号(特許文献1)には、複数の樹脂層が積層され、少なくとも一層の樹脂層に量子ドットを含有する量子ドット含有樹脂シート又はフィルム、及びこれを用いた波長変換部材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の1つの目的は、半導体粒子を含有する樹脂フィルムであって、該樹脂フィルムから発せられる光の色度の視野角依存性が小さい樹脂フィルムを提供することにある。本発明の他の目的は、該樹脂フィルムを含む表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下に示される樹脂フィルム及び表示装置を提供する。
[1] 第1樹脂を含有する第1樹脂層を含む樹脂フィルムであって、
前記第1樹脂層は、1種又は2種以上の半導体粒子を含有し、
全光線透過率が73.0%以下である、樹脂フィルム。
[2] ヘイズが80.0%以上である、[1]に記載の樹脂フィルム。
[3] 前記第1樹脂層は、発光波長が異なる2種以上の半導体粒子を含有する、[1]又は[2]に記載の樹脂フィルム。
[4] 前記第1樹脂層は、光散乱剤をさらに含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂フィルム。
[5] 前記第1樹脂層中の前記半導体粒子の濃度[質量%]をC1、前記第1樹脂層中の前記光散乱剤の濃度[質量%]をC2、前記樹脂フィルムの厚みをT[μm]とするとき、式(i):
[C1
2/(1+C2)2]×T≦150 (i)
を満たす、[4]に記載の樹脂フィルム。
[6] 前記樹脂フィルムの第1表面に波長450nmにおける強度がIinであり発光のピーク波長が450nmの光を入射したときに前記第1表面と対向する第2表面側から出射される波長450nmの透過光の強度であって、観視角0度において検出される透過光の強度をI0、観視角45度において検出される透過光の強度をI45とするとき、式(ii):
|(I0-I45)/Iin|≦0.0450 (ii)
を満たす、[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂フィルム。
[7] 前記樹脂フィルムの第1表面に発光のピーク波長が450nmの光を入射したときに前記第1表面と対向する第2表面側から出射される発光の発光強度であって、観視角0度において検出される発光の波長510nm~550nmの範囲における最大発光強度をE1、波長600nm~650nmの範囲における最大発光強度をE2とし、観視角45度において検出される発光の波長510nm~550nmの範囲における最大発光強度をE3、波長600nm~650nmの範囲における最大発光強度をE4とするとき、式(iii)及び式(iv):
E2/E1≧0.80 (iii)
E4/E3≧0.80 (iv)
の少なくともいずれか一方を満たす、[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂フィルム。
[8] 前記第1樹脂層の第1表面上に配置される樹脂層であって、第2樹脂を含有する第2樹脂層と、
前記第1樹脂層の前記第1表面と対向する第2表面上に配置される樹脂層であって、第3樹脂を含有する第3樹脂層と、
をさらに含む、[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂フィルム。
[9] 前記第1樹脂、前記第2樹脂及び前記第3樹脂がそれぞれ熱可塑性樹脂である、[8]に記載の樹脂フィルム。
[10] 前記第1樹脂層に含まれる樹脂は前記第1樹脂からなり、前記第2樹脂層に含まれる樹脂は前記第2樹脂からなり、前記第3樹脂層に含まれる樹脂は前記第3樹脂からなる、[8]又は[9]に記載の樹脂フィルム。
[11] 前記第1樹脂と前記第2樹脂と前記第3樹脂とが同一である、[8]~[10]のいずれかに記載の樹脂フィルム。
[12] 押出成形品である、[1]~[11]のいずれかに記載の樹脂フィルム。
[13] [1]~[12]のいずれかに記載の樹脂フィルムを含む表示装置。
【発明の効果】
【0006】
半導体粒子を含有する樹脂フィルムであって、該樹脂フィルムから発せられる光の色度の視野角依存性が小さい樹脂フィルム、及びこれを含む表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】樹脂フィルムの一例を示す模式断面図である。
【
図2】樹脂フィルムの他の一例を示す模式断面図である。
【
図3】樹脂フィルムからの発光に関する視野角依存性を測定するための測定系を示す概略側面図であり、
図3(a)は観視角0度の測定系、
図3(b)は観視角45度の測定系である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<樹脂フィルム>
(1)樹脂フィルムの構成及び光学特性
図1は、本発明に係る樹脂フィルムの一例を示す模式断面図である。
図1に示されるように、本発明に係る樹脂フィルム(以下、単に「樹脂フィルム」ともいう。)は、半導体粒子15及び第1樹脂を含有する第1樹脂層10を含む。樹脂フィルムは、1種又は2種以上の半導体粒子を含有することができる。なお、本明細書において用語「フィルム」は、用語「シート」の意味をも包含する。
【0009】
図2は、樹脂フィルムの他の一例を示す模式断面図である。
図2に示される樹脂フィルムは、半導体粒子15を含有する第1樹脂層10と、第1樹脂層10の第1表面(一方の表面)上に配置される第2樹脂層20と、第1樹脂層10の第1表面と対向する第2表面(他方の表面)上に配置される第3樹脂層30とからなる3層構造の樹脂フィルムである。第1樹脂層10と第2樹脂層20とは接していることが好ましく、第1樹脂層10と第3樹脂層30とは接していることが好ましい。樹脂フィルムは、第2樹脂層20及び第3樹脂層30のいずれか一方を有していることが好ましく、第2樹脂層20及び第3樹脂層30の両方を有していることがより好ましい。
【0010】
樹脂フィルムは、光学用途のフィルム(光学フィルム)として好適に用いることができる。光学用途の例は、表示装置に用いられる光学部材としての用途である。
【0011】
樹脂フィルムは、JIS K 7361-1:1997に準拠して測定される全光線透過率Ttが73.0%以下である。全光線透過率Ttが73.0%以下である樹脂フィルムは、該樹脂フィルムから発せられる光の色度の視野角依存性が小さく、広い視野角において発光色の変化が小さい。発光色の視野角依存性を小さくする観点から、樹脂フィルムの全光線透過率Ttは、好ましくは70%以下、より好ましくは65%以下、さらに好ましくは60%以下、なおさらに好ましくは57%以下又は55%以下である。樹脂フィルムの全光線透過率Ttは、例えば10%以上、20%以上、30%以上又は40%以上である。
【0012】
発光色の視野角依存性は、後述する[実施例]の項の記載に従って求められる(Δx2+Δy2)1/2の値に基づいて評価することができる。(Δx2+Δy2)1/2は、樹脂フィルムの第1表面(一方の表面)に最大発光波長450nmの光を入射したときに第1表面と対向する第2表面(他方の表面)側から出射される発光であって観視角0度において検出される発光のCIE色度図(xy色度図)における色度座標を(x0,y0)とし、観視角45度において検出される発光のCIE色度図における色度座標を(x45,y45)とするとき、色度座標(x0,y0)と(x45,y45)との距離である。Δxはx0とx45との差であり、Δyはy0とy45との差である。(Δx2+Δy2)1/2の値が小さいほど発光色の視野角依存性が小さいといえる。
【0013】
(Δx2+Δy2)1/2の値は、好ましくは8.0×10-3以下、より好ましくは6.0×10-3以下、さらに好ましくは5.0×10-3以下、なおさらに好ましくは4.0×10-3以下、特に好ましくは3.0×10-3以下、最も好ましくは2.0×10-3以下である。
【0014】
樹脂フィルムは、JIS K 7361-1:1997に準拠して測定されるヘイズHzが、好ましくは80.0%以上である。ヘイズHzがこの範囲内であることは、全光線透過率Ttを上記範囲内とするうえで有利である。樹脂フィルムのヘイズHzは、より好ましくは85.0%以上、さらに好ましくは90.0%以上、なおさらに好ましくは95.0%以上、特に好ましくは97.0%以上、最も好ましくは98.0%以上である。樹脂フィルムのヘイズHzは、通常99.9%以下である。
【0015】
樹脂フィルムの全光線透過率Tt及びヘイズHzは、樹脂フィルムに含有される粒子(半導体粒子、光散乱剤、アンチブロッキング剤等)の種類、サイズ、形状及び濃度、樹脂フィルムの表面形状、樹脂フィルム全体の層構成、樹脂フィルムを構成する樹脂層の厚み、並びに該樹脂層に含まれる樹脂の種類等によって制御することができる。また、全光線透過率Tt、さらにはヘイズHzを上記範囲内とするために、樹脂フィルムに含有される粒子(半導体粒子、光散乱剤、アンチブロッキング剤等)は、その存在分布が、樹脂フィルムを構成する各樹脂層においてできるだけ均一であることが好ましい。
【0016】
樹脂フィルムは、その第1表面に波長450nmにおける強度がIinである最大発光波長450nmの光を入射したときに第1表面と対向する第2表面側から出射される波長450nmの透過光の強度であって、観視角0度において検出される透過光の強度をI0、観視角45度において検出される透過光の強度をI45とするとき、式(ii):
|(I0-I45)/Iin|≦0.0450 (ii)
を満たすことが好ましい。
【0017】
式(ii)を満たすことは、樹脂フィルムから発せられる光の強度の視野角依存性を小さくし、視認性を向上させる観点から有利である。この観点から、式(ii)の左辺の値は、より好ましくは0.0400以下、さらに好ましくは0.0300以下、なおさらに好ましくは0.0250以下、特に好ましくは0.0200以下、最も好ましくは0.0150以下である。式(ii)の左辺の値は、通常0.0010以上であり、0.0050以上、0.0100以上又は0.0110以上であってもよい。式(ii)の左辺の値は、後述する[実施例]の項の記載に従って測定することができる。
【0018】
式(ii)の左辺の値は、樹脂フィルムに含有される粒子(半導体粒子、光散乱剤、アンチブロッキング剤等)の種類、サイズ、形状及び濃度、樹脂フィルムの表面形状、樹脂フィルム全体の層構成、樹脂フィルムを構成する樹脂層の厚み、並びに該樹脂層に含まれる樹脂の種類等によって制御することができる。
【0019】
樹脂フィルムは、その第1表面に最大発光波長450nmの光を入射したときに第1表面と対向する第2表面側から出射される発光の発光強度であって、観視角0度において検出される発光の波長510nm~550nmの範囲における最大発光強度をE1、波長600nm~650nmの範囲における最大発光強度をE2とし、観視角45度において検出される発光の波長510nm~550nmの範囲における最大発光強度をE3、波長600nm~650nmの範囲における最大発光強度をE4とするとき、式(iii)及び式(iv):
E2/E1≧0.80 (iii)
E4/E3≧0.80 (iv)
の少なくともいずれか一方を満たすことが好ましい。
【0020】
式(iii)及び式(iv)の少なくともいずれか一方を満たすことは、樹脂フィルムから発せられる光の色度の視野角依存性を小さくする観点、及び、視認性を向上させる観点から有利である。これらの観点から、樹脂フィルムは、式(iii)及び式(iv)の両方を満たすことが好ましい。また、これらの観点から、式(iii)及び式(iv)の左辺の値は、それぞれ、より好ましくは0.82以上、さらに好ましくは0.84以上、なおさらに好ましくは0.86以上、特に好ましくは0.88以上、なお特に好ましくは0.90以上、最も好ましくは0.95以上である。式(iii)及び式(iv)の左辺の値は、それぞれ、通常2.0以下であり、1.5以下であってもよい。式(iii)及び式(iv)の左辺の値は、後述する[実施例]の項の記載に従って測定することができる。
【0021】
式(iii)及び式(iv)の左辺の値は、樹脂フィルムに含有される半導体粒子の種類、サイズ、形状及び濃度等によって制御することができる。式(iii)及び式(iv)の両方を満たすために、樹脂フィルムに含有される半導体粒子は、その存在分布ができるだけ均一であることが好ましい。
【0022】
(2)第1樹脂層
第1樹脂層10は、半導体粒子15を含有する樹脂層であり、半導体粒子15は通常、第1樹脂層10中に分散されている。第1樹脂層10に含まれる樹脂は第1樹脂を含み、好ましくは、第1樹脂層10に含まれる樹脂は第1樹脂からなる。
【0023】
(2-1)半導体粒子
第1樹脂層10は、半導体粒子15を1種又は2種以上含有する。半導体粒子15は、発光性(蛍光発光性)の半導体粒子である。半導体粒子15の形状は特に制限されないが、好ましくは粒状であり、より好ましくは球状又は略球状である。半導体粒子15は単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
【0024】
半導体粒子は、入射される一次光とは異なる波長の光を発し、好ましくは、一次光である青色の光の波長を、これとは異なる色の光の波長に変換する。半導体粒子は、緑色又は赤色を発光することが好ましく、青色光を吸収して緑色又は赤色を発光することがより好ましい。
【0025】
本明細書において「青色」とは、青色として視認される光全般(青色の波長域、例えば380nm~495nmに強度を有する光全般)を指し、単一波長の光に限定されない。「緑色」とは、緑色として視認される光全般(緑色の波長域、例えば495nm~585nmに強度を有する光全般)を指し、単一波長の光に限定されない。「赤色」とは、赤色として視認される光全般(赤色の波長域、例えば585nm~780nmに強度を有する光全般)を指し、単一波長の光に限定されない。「黄色」とは、黄色として視認される光全般(黄色の波長域、例えば560nm~610nmに強度を有する光全般)を指し、単一波長の光に限定されない。
【0026】
緑色を発光する半導体粒子の発光スペクトルは、好ましくは、500nm以上560nm以下の波長域に極大値を有するピークを含み、より好ましくは、520nm以上545nm以下の波長域に極大値を有するピークを含み、さらに好ましくは、525nm以上540nm以下の波長域に極大値を有するピークを含む。これにより、表示装置の緑色光の表示可能色域を拡大させることができる。該ピークは、好ましくは、半値全幅が15nm以上80nm以下、より好ましくは15nm以上60nm以下、さらに好ましくは15nm以上50nm以下、特に好ましくは15nm以上45nm以下である。これにより、表示装置の緑色光の表示可能色域を拡大させることができる。
【0027】
赤色を発光する半導体粒子の発光スペクトルは、好ましくは、610nm以上750nm以下の波長域に極大値を有するピークを含み、より好ましくは、615nm以上650nm以下の波長域に極大値を有するピークを含み、さらに好ましくは、620nm以上640nm以下の波長域に極大値を有するピークを含む。これにより、表示装置の赤色光の表示可能色域を拡大させることができる。該ピークは、好ましくは、半値全幅が15nm以上80nm以下、より好ましくは15nm以上60nm以下、さらに好ましくは15nm以上50nm以下、特に好ましくは15nm以上45nm以下である。これにより、表示装置の赤色光の表示可能色域を拡大させることができる。
【0028】
半導体粒子の発光スペクトルは、例えば、分光蛍光光度計や絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス製の「C9920-02」、励起光450nm、室温、大気下)を用いて求めることができる。該発光スペクトルは、例えば、波長450nmにおける吸光度が0.4となるように希釈した半導体粒子分散液を測定サンプルとして測定される。
【0029】
また、半導体粒子を含有する樹脂フィルムの発光スペクトルは、ピーク波長450nmの青色の面発光型バックライト照明の発光面上に樹脂フィルムの測定サンプルを置き、透過光を分光放射計(トプコンテクノハウス社製の「SR-UL1R」)を用いて測定することで求めることができる。
【0030】
半導体粒子は、半導体結晶からなる粒子、好ましくは半導体結晶からなるナノ粒子である。半導体粒子の好ましい例としては、半導体量子ドット(以下、「量子ドット」ともいう。)及びペロブスカイト型結晶構造を有する化合物(以下、「ペロブスカイト化合物」ともいう。)の粒子が挙げられ、より好ましくは量子ドットである。量子ドットは、発光性半導体微粒子であり、半導体のバンドギャップを利用し、紫外光又は可視光(例えば青色光)を吸収して発光する微粒子である。
【0031】
量子ドットの平均粒径は、例えば0.5nm以上100nm以下、好ましくは0.5nm以上20nm以下、より好ましくは1nm以上15nm以下(例えば2nm以上15nm以下)である。量子ドットの平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて求めることができる。量子ドットのエネルギー状態はその大きさに依存するため、粒子径を変えることにより自由に発光波長を選択することが可能である。例えば、CdSeのみから構成される量子ドットの場合、粒子径が2.3nm、3.0nm、3.8nm、4.6nmであるときの発光スペクトルのピーク波長は、それぞれ528nm、570nm、592nm、637nmである。
【0032】
量子ドットとしては、例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、CdHgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe等の12族元素と16族元素との化合物;GaN、GaP、GaAs、AlN、AlP、AlAs、InN、InP、InAs、GaNP、GaNAs、GaPAs、AlNP、AlNAs、AlPAs、InNP、InNAs、InPAs、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlPAs、GaInNP、GaInNAs、GaInPAs、InAlNP、InAlNAs、InAlPAs等の13族元素と15族元素との化合物;PdS、PbSe等の14族元素と16族元素との化合物等が挙げられる。
【0033】
量子ドットがSやSeを含む場合、金属酸化物や有機物で表面修飾した量子ドットを使用してもよい。表面修飾した量子ドットを使用することで、樹脂フィルムの作成に用いる組成物に含まれる又は含まれ得る反応成分によってSやSeが引き抜かれることを防止することができる。
また量子ドットは、上記の化合物を組み合わせてコアシェル構造を形成していてもよい。このような組み合わせとしては、コアがCdSeであり、シェルがZnSである微粒子、コアがInPであり、シェルがZnSeSである微粒子等が挙げられる。
【0034】
量子ドットのエネルギー状態はその大きさに依存するため、粒子径を変えることにより自由に発光波長を選択することが可能である。また、量子ドットからの発光光はスペクトル幅が狭いため、表示装置の広色域化に有利である。さらに、量子ドットは応答性が高いため、一次光の利用効率の面でも有利である。
【0035】
量子ドットは、前述のとおり、単一の半導体材料からなる単層構造であってもよいし、単一の半導体材料からなる核粒子(コア層)の表面が、これとは異なる1種又は2種以上の半導体材料からなる被覆層(シェル層)によって被覆されたコアシェル構造であってもよい。後者の場合、シェル層を構成する半導体材料としては通常、コア層を構成する半導体材料よりもバンドギャップエネルギーが大きいものを用いる。量子ドットは、シェル層を2種以上有していてもよい。量子ドットの形状は特に限定されず、例えば、球状又は略球状、棒状、円盤状等であり得る。
【0036】
ペロブスカイト化合物は、A、B及びXを成分とする、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物である。
Aは、ペロブスカイト型結晶構造において、Bを中心とする6面体の各頂点に位置する成分であって、1価の陽イオンである。
Xは、ペロブスカイト型結晶構造において、Bを中心とする8面体の各頂点に位置する成分を表し、ハロゲン化物イオン及びチオシアン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種のイオンである。
Bは、ペロブスカイト型結晶構造において、Aを頂点に配置する6面体及びXを頂点に配置する8面体の中心に位置する成分であって、金属イオンである。
【0037】
ペロブスカイト化合物からなる半導体粒子の平均粒径は、良好に結晶構造を維持させる観点から、好ましくは3nm以上、より好ましくは4nm以上、さらに好ましくは5nm以上である。また、ペロブスカイト化合物からなる半導体粒子の分散性の観点から、該半導体粒子の平均粒径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。ペロブスカイト化合物からなる半導体粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて求めることができる。
【0038】
A、B及びXを成分とするペロブスカイト化合物としては、特に限定されず、3次元構造、2次元構造、疑似2次元構造のいずれの構造を有する化合物であってもよい。
3次元構造の場合には、ペロブスカイト化合物は、ABX(3+δ)で表される。
2次元構造の場合には、ペロブスカイト化合物は、A2BX(4+δ)で表される。
ここで、δは、Bの電荷バランスに応じて適宜変更が可能な数であり、-0.7以上0.7以下である。
【0039】
ペロブスカイト化合物であって、ABX(3+δ)で表される、3次元構造のペロブスカイト型の結晶構造を有する化合物の好ましい具体例としては、
CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbCl3、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbBr(3-y)Iy(0<y<3)、CH3NH3PbBr(3-y)Cly(0<y<3)、(H2N=CH-NH2)PbBr3、(H2N=CH-NH2)PbCl3、(H2N=CH-NH2)PbI3、
CH3NH3Pb(1-a)CaaBr3(0<a≦0.7)、CH3NH3Pb(1-a)SraBr3(0<a≦0.7)、CH3NH3Pb(1-a)LaaBr(3+δ)(0<a≦0.7,0<δ≦0.7)、CH3NH3Pb(1-a)BaaBr3(0<a≦0.7)、CH3NH3Pb(1-a)DyaBr(3+δ)(0<a≦0.7,0<δ≦0.7)、
CH3NH3Pb(1-a)NaaBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、CH3NH3Pb(1-a)LiaBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、
CsPb(1-a)NaaBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、CsPb(1-a)LiaBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、
CH3NH3Pb(1-a)NaaBr(3+δ-y)Iy(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)LiaBr(3+δ-y)Iy(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)NaaBr(3+δ-y)Cly(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)LiaBr(3+δ-y)Cly(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、
(H2N=CH-NH2)Pb(1-a)NaaBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、(H2N=CH-NH2)Pb(1-a)LiaBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、(H2N=CH-NH2)Pb(1-a)NaaBr(3+δ-y)Iy(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、(H2N=CH-NH2)Pb(1-a)NaaBr(3+δ-y)Cly(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、
CsPbBr3、CsPbCl3、CsPbI3、CsPbBr(3-y)Iy(0<y<3)、CsPbBr(3-y)Cly(0<y<3)、CH3NH3PbBr(3-y)Cly(0<y<3)、
CH3NH3Pb(1-a)ZnaBr3(0<a≦0.7)、CH3NH3Pb(1-a)AlaBr(3+δ)(0<a≦0.7,0≦δ≦0.7)、CH3NH3Pb(1-a)CoaBr3(0<a≦0.7)、CH3NH3Pb(1-a)MnaBr3(0<a≦0.7)、CH3NH3Pb(1-a)MgaBr3(0<a≦0.7)、
CsPb(1-a)ZnaBr3(0<a≦0.7)、CsPb(1-a)AlaBr(3+δ)(0<a≦0.7,0<δ≦0.7)、CsPb(1-a)CoaBr3(0<a≦0.7)、CsPb(1-a)MnaBr3(0<a≦0.7)、CsPb(1-a)MgaBr3(0<a≦0.7)、
CH3NH3Pb(1-a)ZnaBr(3-y)Iy(0<a≦0.7,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)AlaBr(3+δ-y)Iy(0<a≦0.7,0<δ≦0.7,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)CoaBr(3-y)Iy(0<a≦0.7,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)MnaBr(3-y)Iy(0<a≦0.7,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)MgaBr(3-y)Iy(0<a≦0.7,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)ZnaBr(3-y)Cly(0<a≦0.7,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)AlaBr(3+δ-y)Cly(0<a≦0.7,0<δ≦0.7,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)CoaBr(3+δ-y)Cly(0<a≦0.7,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)MnaBr(3-y)Cly(0<a≦0.7,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)MgaBr(3-y)Cly(0<a≦0.7,0<y<3)、
(H2N=CH-NH2)ZnaBr3(0<a≦0.7)、(H2N=CH-NH2)MgaBr3(0<a≦0.7)、(H2N=CH-NH2)Pb(1-a)ZnaBr(3-y)Iy(0<a≦0.7,0<y<3)、(H2N=CH-NH2)Pb(1-a)ZnaBr(3-y)Cly(0<a≦0.7,0<y<3)等が挙げられる。
【0040】
ペロブスカイト化合物であって、A2BX(4+δ)で表される、2次元構造のペロブスカイト型の結晶構造を有する化合物の好ましい具体例としては、
(C4H9NH3)2PbBr4、(C4H9NH3)2PbCl4、(C4H9NH3)2PbI4、(C7H15NH3)2PbBr4、(C7H15NH3)2PbCl4、(C7H15NH3)2PbI4、(C4H9NH3)2Pb(1-a)LiaBr(4+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、(C4H9NH3)2Pb(1-a)NaaBr(4+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、(C4H9NH3)2Pb(1-a)RbaBr(4+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、
(C7H15NH3)2Pb(1-a)NaaBr(4+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、(C7H15NH3)2Pb(1-a)LiaBr(4+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、(C7H15NH3)2Pb(1-a)RbaBr(4+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、
(C4H9NH3)2Pb(1-a)NaaBr(4+δ-y)Iy(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<4)、(C4H9NH3)2Pb(1-a)LiaBr(4+δ-y)Iy(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<4)、(C4H9NH3)2Pb(1-a)RbaBr(4+δ-y)Iy(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<4)、
(C4H9NH3)2Pb(1-a)NaaBr(4+δ-y)Cly(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<4)、(C4H9NH3)2Pb(1-a)LiaBr(4+δ-y)Cly(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<4)、(C4H9NH3)2Pb(1-a)RbaBr(4+δ-y)Cly(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<4)、
(C4H9NH3)2PbBr4、(C7H15NH3)2PbBr4、
(C4H9NH3)2PbBr(4-y)Cly(0<y<4)、(C4H9NH3)2PbBr(4-y)Iy(0<y<4)、
(C4H9NH3)2Pb(1-a)ZnaBr4(0<a≦0.7)、(C4H9NH3)2Pb(1-a)MgaBr4(0<a≦0.7)、(C4H9NH3)2Pb(1-a)CoaBr4(0<a≦0.7)、(C4H9NH3)2Pb(1-a)MnaBr4(0<a≦0.7)、
(C7H15NH3)2Pb(1-a)ZnaBr4(0<a≦0.7)、(C7H15NH3)2Pb(1-a)MgaBr4(0<a≦0.7)、(C7H15NH3)2Pb(1-a)CoaBr4(0<a≦0.7)、(C7H15NH3)2Pb(1-a)MnaBr4(0<a≦0.7)、
(C4H9NH3)2Pb(1-a)ZnaBr(4-y)Iy(0<a≦0.7,0<y<4)、(C4H9NH3)2Pb(1-a)MgaBr(4-y)Iy(0<a≦0.7,0<y<4)、(C4H9NH3)2Pb(1-a)CoaBr(4-y)Iy(0<a≦0.7,0<y<4)、(C4H9NH3)2Pb(1-a)MnaBr(4-y)Iy(0<a≦0.7,0<y<4)、
(C4H9NH3)2Pb(1-a)ZnaBr(4-y)Cly(0<a≦0.7,0<y<4)、(C4H9NH3)2Pb(1-a)MgaBr(4-y)Cly(0<a≦0.7,0<y<4)、(C4H9NH3)2Pb(1-a)CoaBr(4-y)Cly(0<a≦0.7,0<y<4)、(C4H9NH3)2Pb(1-a)MnaBr(4-y)Cly(0<a≦0.7,0<y<4)等が挙げられる。
【0041】
第1樹脂層10は半導体粒子を1種又は2種以上含有することができ、例えば、第1樹脂層は、発光波長が異なる2種以上の半導体粒子を含有していてもよい。例えば、第1樹脂層は、一次光を吸収して緑色を発光する半導体粒子を1種のみを含有していてもよく、2種以上組み合わせて含有していてもよい。第1樹脂層は、一次光を吸収して赤色を発光する半導体粒子を1種のみを含有していてもよく、2種以上組み合わせて含有していてもよい。また、第1樹脂層10は、1種以上の赤色発光性の半導体粒子と1種以上の緑色発光性の半導体粒子とを含有していてもよい。
【0042】
第1樹脂層10における半導体粒子15の濃度(含有率)C1は、第1樹脂層10の総量に対して、例えば0.01質量%以上であり、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上、さらに好ましくは0.15質量%以上、なおさらに好ましくは0.20質量%以上、特に好ましくは0.25質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5.0質量%以下、なおさらに好ましくは3.0質量%以下、特に好ましくは2.0質量%以下、最も好ましくは1.0質量%以下である。第1樹脂層10が2種以上の半導体粒子を含有する場合、半導体粒子15の濃度(含有率)C1は、2種以上の半導体粒子の各含有量の合計量を指す。第1樹脂層10における半導体粒子15の濃度C1が上記範囲であることは、発光色の視野角依存性を小さくする観点から有利であり、また、樹脂フィルムの発光強度を高めやすい点でも有利である。
【0043】
第1樹脂層10が赤色発光性の半導体粒子と緑色発光性の半導体粒子とを含有する場合、該樹脂フィルムは白色光を発する波長変換フィルムとして好適に用いることができる。赤色発光性の半導体粒子の含有量に対する緑色発光性の半導体粒子の含有量の比は、好ましくは0.1以上60以下、より好ましくは1以上50以下、さらに好ましくは5以上45以下、なおさらに好ましくは10以上40以下である。赤色発光性の半導体粒子の含有量に対する緑色発光性の半導体粒子の含有量の比が上記範囲であると、所望の白色光を得やすく、また、樹脂フィルムから発せられる光の色度の視野角依存性を小さくする観点、及び、視認性を向上させる観点からも有利である。
【0044】
第1樹脂層10が赤色発光性の半導体粒子と緑色発光性の半導体粒子とを含有する場合、上述のように樹脂フィルムは、式(iii)及び式(iv)の少なくともいずれか一方を満たすことが好ましく、両方を満たすことがより好ましい。
【0045】
半導体粒子15は、半導体粒子に配位する有機配位子を含む配位子含有半導体粒子であってもよい。半導体粒子に配位する有機配位子は、例えば、半導体粒子に対する配位能を示す極性基を有する有機化合物であることができる。有機配位子は、例えば半導体粒子の表面に配位することができる。
【0046】
半導体粒子に配位する有機配位子は、1種の配位子であってもよいし2種以上の配位子であってもよい。有機配位子が極性基を有する有機化合物である場合、有機配位子は通常、その極性基を介して半導体粒子に配位する。有機配位子が配位していることは、有機配位子に好適な分散媒に半導体粒子が均一分散することから確認することができる。半導体粒子として配位子含有半導体粒子を用いることは、半導体粒子の安定性及び分散性、並びに、半導体粒子を含有する樹脂フィルムの発光強度を向上させる観点から有利となり得る。
【0047】
有機配位子の上記極性基は、例えば、チオール基(-SH)、カルボキシ基(-COOH)及びアミノ基(-NH2)からなる群より選択される少なくとも1種の基であることが好ましい。該群より選択される極性基は、半導体粒子への配位性を高めるうえで有利となり得る。中でも、発光強度により優れる樹脂フィルムを得る観点から、極性基は、チオール基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基であることがより好ましい。有機配位子は、1個又は2個以上の極性基を有し得る。
【0048】
有機配位子は、例えば、下記式(x):
XA-RX (x)
で表される有機化合物であることができる。式中、XAは上記の極性基であり、RXはヘテロ原子(N、O、S、ハロゲン原子等)を含んでいてもよい1価の炭化水素基である。該炭化水素基は、炭素-炭素二重結合等の不飽和結合を1個又は2個以上有していてもよい。該炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状構造を有していてもよい。該炭化水素基の炭素数は、例えば1以上40以下であり、1以上30以下であってもよい。該炭化水素基に含まれるメチレン基は、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-等で置換されていてもよい。
【0049】
基RXは、極性基を含んでいてもよい。該極性基の具体例については極性基XAに係る上記記述が引用される。
【0050】
極性基XAとしてカルボキシ基を有する有機配位子の具体例として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸のほか、飽和又は不飽和脂肪酸を挙げることができる。飽和又は不飽和脂肪酸の具体例は、ブチル酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の飽和脂肪酸;ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、イコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸等の一価不飽和脂肪酸;リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、ステアドリン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、ドコサジエン酸、アドレン酸(ドコサテトラエン酸)等の多価不飽和脂肪酸を含む。
【0051】
極性基XAとしてチオール基又はアミノ基を有する有機配位子の具体例は、上で例示した極性基XAとしてカルボキシ基を有する有機配位子のカルボキシ基がチオール基又はアミノ基に置き換わった有機配位子を含む。
【0052】
上記のほか、上記式(x)で表される有機配位子としては、化合物(G-1)及び化合物(G-2)が挙げられる。
【0053】
〔化合物(G-1)〕
化合物(G-1)は、第1官能基及び第2官能基を有する化合物である。第1官能基はカルボキシ基(-COOH)であり、第2官能基はカルボキシ基又はチオール基(-SH)である。化合物(G-1)は、カルボキシ基及び/又はチオール基を有しているため、半導体粒子に配位する配位子となり得る。半導体粒子は、化合物(G-1)を1種のみ含んでいてもよいし2種以上含んでいてもよい。
【0054】
化合物(G-1)の一例は、下記式(G-1a)で表される化合物である。化合物(G-1)は、式(G-1a)で表される化合物の酸無水物であってもよい。
【0055】
【化1】
[式中、R
Bは、2価の炭化水素基を表す。複数のR
Bが存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。上記炭化水素基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、それらは互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。上記炭化水素基に含まれる-CH
2-は-O-、-S-、-SO
2-、-CO-及び-NH-の少なくとも1つに置き換わっていてもよい。
pは、1~10の整数を表す。]
【0056】
RBで表される2価の炭化水素基としては、例えば、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0057】
鎖状炭化水素基としては、例えば、直鎖状又は分岐状のアルカンジイル基が挙げられ、その炭素数は通常1~50であり、好ましくは1~20、より好ましくは1~10である。脂環式炭化水素基としては、例えば、単環式又多環式のシクロアルカンジイル基が挙げられ、その炭素数は通常3~50であり、好ましくは3~20、より好ましくは3~10である。芳香族炭化水素基としては、例えば、単環式又多環式のアレーンジイル基が挙げられ、その炭素数は通常6~20である。
【0058】
上記炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、炭素数1~50のアルキル基、炭素数3~50のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、カルボキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。上記炭化水素基が有していてもよい置換基は、好ましくは、カルボキシ基、アミノ基又はハロゲン原子である。
【0059】
上記炭化水素基に含まれる-CH2-が-O-、-CO-及び-NH-の少なくとも1つに置き換わる場合、-CH2-が置き換わるのは、好ましくは-CO-及び-NH-の少なくとも1つであり、より好ましくは-NH-である。pは、好ましくは1又は2である。
【0060】
式(G-1a)で表される化合物としては、例えば、下記式(1-1)~(1-9)で表される化合物が挙げられる。
【0061】
【0062】
式(G-1a)で表される化合物の具体例を化学名で示せば、例えば、メルカプト酢酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトブタン酸、4-メルカプトブタン酸、メルカプトコハク酸、メルカプトステアリン酸、メルカプトオクタン酸、4-メルカプト安息香酸、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-メルカプト安息香酸、L-システイン、N-アセチル-L-システイン、3-メルカプトプロピオン酸3-メトキシブチル、3-メルカプト-2-メチルプロピオン酸等が挙げられる。中でも3-メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸が好ましい。
【0063】
化合物(G-1)の他の一例は、多価カルボン酸化合物であり、好ましくは上記式(G-1a)で表される化合物において、式(G-1a)中の-SHがカルボキシ基(-COOH)に置き換わった化合物(G-1b)が挙げられる。
【0064】
化合物(G-1b)としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、ドデカフルオロスベリン酸、3-エチル-3-メチルグルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、trans-3-ヘキセン二酸、セバシン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、アセチレンジカルボン酸、trans-アコニット酸、1,3-アダマンタンジカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジカルボン酸、cis-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、1,1-シクロプロパンジカルボン酸、1,1-シクロブタンジカルボン酸、cis-又はtrans-1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、cis-又はtrans-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,1-シクロペンタン二酢酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、デカヒドロ-1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ノルボルナンジカルボン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、フタル酸、3-フルオロフタル酸、イソフタル酸、テトラフルオロイソフタル酸、テレフタル酸、テトラフルオロテレフタル酸、2,5-ジメチルテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,1’-フェロセンジカルボン酸、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、ベンゾフェノン-2,4’-ジカルボン酸一水和物、ベンゾフェノン-4,4’-ジカルボン酸、2,3-ピラジンジカルボン酸、2,3-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,6-ピリジンジカルボン酸、3,4-ピリジンジカルボン酸、ピラゾール-3,5-ジカルボン酸一水和物、4,4’-スチルベンジカルボン酸、アントラキノン-2,3-ジカルボン酸、4-(カルボキシメチル)安息香酸、ケリドン酸一水和物、アゾベンゼン-4,4’-ジカルボン酸、アゾベンゼン-3,3’-ジカルボン酸、クロレンド酸、1H-イミダゾール-4,5-ジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,10-ビス(4-カルボキシフェノキシ)デカン、ジプロピルマロン酸、ジチオジグリコール酸、3,3’-ジチオジプロピオン酸、4,4’-ジチオジブタン酸、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ジカルボキシジフェニルスルホン、エチレングリコール ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボン酸、4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ酢酸、1,3-アセトンジカルボン酸、メチレンジサリチル酸、5,5’-チオジサリチル酸、トリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレート、テトラフルオロコハク酸、α,α,α’,α’-テトラメチル-1,3-ベンゼンジプロピオン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸等。
【0065】
半導体粒子の安定性及び分散性、並びに、樹脂フィルムの発光強度を向上させる観点から、化合物(G-1)の分子量は、好ましくは3000以下、より好ましくは2500以下、さらに好ましくは2000以下、なおさらに好ましくは1000以下、特に好ましくは800以下、最も好ましくは500以下である。化合物(G-1)の分子量は、通常100以上である。
【0066】
上記分子量は、数平均分子量であってもよいし重量平均分子量であってもよい。この場合、数平均分子量及び重量平均分子量はそれぞれ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量である。
【0067】
配位子含有半導体粒子が化合物(G-1)を含む場合、半導体粒子に対する化合物(G-1)の含有量比は、質量比で、好ましくは0.001以上1以下、より好ましくは0.01以上0.5以下、さらに好ましくは0.02以上0.45以下である。該含有量比がこの範囲にあると、半導体粒子の安定性及び分散性、並びに、樹脂フィルムの発光強度を向上させる観点から有利となり得る。
【0068】
〔化合物(G-2)〕
化合物(G-2)は、化合物(G-1)とは異なる化合物であって、ポリアルキレングリコール構造を含み、かつ極性基を分子末端に有する化合物である。分子末端とは、化合物(G-2)中、最も長い炭素鎖(炭素鎖中の炭素原子は、酸素原子等の他の原子に置き換わっていてもよい。)の末端であることが好ましい。
【0069】
半導体粒子は、化合物(G-2)を1種のみ含んでいてもよいし2種以上含んでいてもよい。半導体粒子は、化合物(G-1)又は化合物(G-2)を含んでいてもよいし、化合物(G-1)及び化合物(G-2)を含んでいてもよい。
なお、ポリアルキレングリコール構造を含み、上記第1官能基及び第2官能基を有する化合物は、化合物(G-1)に属するものとする。
【0070】
ポリアルキレングリコール構造とは、下記式:
【化3】
で表される構造をいう(nは2以上の整数)。式中、R
Cはアルキレン基であり、例えば、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
【0071】
化合物(G-2)の具体例として、下記式(G-2a)で表されるポリアルキレングリコール系化合物を挙げることができる。
【0072】
【0073】
式(G-2a)中、Xは極性基であり、Yは1価の基であり、ZCは2価又は3価の基である。nは2以上の整数である。mは1又は2である。RCはアルキレン基である。
【0074】
極性基Xは、チオール基(-SH)、カルボキシ基(-COOH)及びアミノ基(-NH2)からなる群より選択される少なくとも1種の基であることが好ましい。該群より選択される極性基は、半導体粒子への配位性を高めるうえで有利となり得る。中でも、半導体粒子の安定性及び分散性、並びに、樹脂フィルムの発光強度を向上させる観点から、極性基Xは、チオール基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基であることがより好ましい。
【0075】
基Yは1価の基である。基Yとしては特に制限されず、置換基(N、O、S、ハロゲン原子等)を有していてもよい1価の炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基に含まれる-CH2-は、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-等で置換されていてもよい。上記炭化水素基の炭素数は、例えば1以上12以下である。該炭化水素基は、不飽和結合を有していてもよい。
【0076】
基Yとしては、直鎖状、分岐鎖状又は環状構造を有する炭素数1以上12以下のアルキル基;直鎖状、分岐鎖状又は環状構造を有する炭素数1以上12以下のアルコキシ基等が挙げられる。該アルキル基及びアルコキシ基の炭素数は、好ましくは1以上8以下であり、より好ましくは1以上6以下であり、さらに好ましくは1以上4以下である。該アルキル基及びアルコキシ基に含まれる-CH2-は、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-等で置換されていてもよい。中でも、基Yは、炭素数が1以上4以下である直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数が1以上4以下である直鎖状のアルコキシ基であることがより好ましい。
【0077】
基Yは、極性基を含んでいてもよい。該極性基としては、チオール基(-SH)、カルボキシ基(-COOH)及びアミノ基(-NH2)からなる群より選択される少なくとも1種の基が挙げられる。ただし、上述のとおり、ポリアルキレングリコール構造を含み、上記第1官能基及び第2官能基を有する化合物は、化合物(G-1)に属するものとする。該極性基は、好ましくは基Yの末端に配置される。
【0078】
基ZCは2価又は3価の基である。基ZCとしては特に制限されず、ヘテロ原子(N、O、S、ハロゲン原子等)を含んでいてもよい2価又は3価の炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基の炭素数は、例えば1以上24以下である。該炭化水素基は、不飽和結合を有していてもよい。
【0079】
2価の基である基ZCとしては、直鎖状、分岐鎖状又は環状構造を有する炭素数1以上24以下のアルキレン基;直鎖状、分岐鎖状又は環状構造を有する炭素数1以上24以下のアルケニレン基等が挙げられる。該アルキル基及びアルケニレン基の炭素数は、好ましくは1以上12以下であり、より好ましくは1以上8以下であり、さらに好ましくは1以上4以下である。該アルキル基及びアルケニレン基に含まれる-CH2-は、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-等で置換されていてもよい。3価の基である基ZCの例としては、上記2価の基である基ZCから水素原子を1つ取り除いた基を挙げることができる。
【0080】
基ZCは、分岐構造を有していてもよい。分岐構造を有する基ZCは、上記式(G-2a)に示されるポリアルキレングリコール構造を含む分岐鎖とは別の分岐鎖において、上記式(G-2a)に示されるポリアルキレングリコール構造とは別のポリアルキレングリコール構造を有していてもよい。
【0081】
中でも、基ZCは、炭素数が1以上6以下である直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が1以上4以下である直鎖状のアルキレン基であることがより好ましい。
【0082】
RCはアルキレン基であり、炭素数が1以上6以下である直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が1以上4以下である直鎖状のアルキレン基であることがより好ましい。
【0083】
式(G-2a)中のnは2以上の整数であり、好ましくは2以上540以下であり、より好ましくは2以上120以下であり、さらに好ましくは2以上60以下である。
【0084】
化合物(G-2)の分子量は、例えば150以上10000以下程度であり得るが、半導体粒子の安定性及び分散性、並びに、樹脂フィルムの発光強度を向上させる観点から、150以上5000以下であることが好ましく、150以上4000以下であることがより好ましい。該分子量は、数平均分子量であってもよいし重量平均分子量であってもよい。この場合、数平均分子量及び重量平均分子量はそれぞれ、GPCにより測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量である。
【0085】
配位子含有半導体粒子が化合物(G-2)を含む場合、半導体粒子に対する化合物(G-2)の含有量比は、質量比で、好ましくは0.001以上2以下、より好ましくは0.01以上1.5以下、さらに好ましくは0.1以上1以下である。該含有量比がこの範囲にあると、半導体粒子の安定性及び分散性、並びに、樹脂フィルムの発光強度を向上させる観点から有利となり得る。
【0086】
半導体粒子が配位子含有半導体粒子である場合、半導体粒子に対する有機配位子の含有量の比は、質量比で、好ましくは0.001以上1以下、より好ましくは0.01以上0.8以下、さらに好ましくは0.02以上0.5以下である。該含有量比がこの範囲にあると、半導体粒子の安定性及び分散性、並びに、樹脂フィルムの発光強度を向上させる観点から有利となり得る。ここでいう有機配位子の含有量とは、すべての有機配位子の合計含有量である。
【0087】
(2-2)光散乱剤
第1樹脂層10は、光散乱剤をさらに含有することが好ましい。第1樹脂層10は、光散乱剤を1種又は2種以上含有することができる。第1樹脂層10は、1種又2種以上の光散乱剤と1種又2種以上の半導体粒子とを含有することができる。第1樹脂層10に光散乱剤及び発光性の半導体粒子の両方を含有させることにより、半導体粒子の近傍に光散乱剤を存在させることができるため、樹脂フィルムの発光強度向上に有利となり得る。また、第1樹脂層10に光散乱剤及び発光性の半導体粒子の両方を含有させることは、樹脂フィルムから発せられる光の色度の視野角依存性を小さくする観点、及び、視認性を向上させる観点からも有利である。
【0088】
光散乱剤としては、金属又は金属酸化物の粒子、ガラス粒子(ガラスビーズ等)等が挙げられる。光散乱剤は、着色による吸収が無く、散乱効果のみを有する方が好ましいことから、好ましくは金属酸化物の粒子であり、該金属酸化物としては、TiO2、SiO2、BaTiO3、ZnO等が挙げられ、効率的に光を散乱することから、好ましくはTiO2の粒子である。光散乱剤の体積基準のメディアン径は、例えば0.03μm以上20μm以下程度であり、好ましくは0.05μm以上1μm以下であり、より好ましくは0.05μm以上0.5μm以下である。
【0089】
第1樹脂層10が光散乱剤を含む場合、第1樹脂層10における光散乱剤の濃度(含有率)C2は、第1樹脂層10の総量に対して、例えば0.01質量%以上であり、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上、さらに好ましくは0.10質量%以上、なおさらに好ましくは0.15質量%以上、特に好ましくは0.20質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、なおさらに好ましくは5.0質量%以下、特に好ましくは2.0質量%以下、特により好ましくは1.0質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下である。第1樹脂層10が2種以上の光散乱剤を含有する場合、光散乱剤の濃度(含有率)C2は、2種以上の光散乱剤の各含有量の合計量を指す。第1樹脂層10における光散乱剤の濃度C2が上記範囲であると、樹脂フィルムの光散乱性能及び/又は発光強度を高めやすく、また、樹脂フィルムから発せられる光の色度の視野角依存性を小さくする観点、及び、視認性を向上させる観点からも有利である。
【0090】
第1樹脂層10が半導体粒子15及び光散乱剤を含む場合、光散乱剤の含有量に対する半導体粒子15の含有量の比(すなわち、濃度比C1/C2)は、好ましくは0.1以上15以下、より好ましくは0.2以上10以下、さらに好ましくは0.3以上8.0以下、なおさらに好ましくは0.5以上5.0以下である。光散乱剤の含有量に対する半導体粒子15の含有量の比(濃度比C1/C2)が上記範囲であると、半導体粒子の発光を効率よく外部に射出しやすく、樹脂フィルムの発光強度を高めやすく、また、樹脂フィルムから発せられる光の色度の視野角依存性を小さくする観点、及び、視認性を向上させる観点からも有利である。
【0091】
第1樹脂層10が半導体粒子15を含む場合、及び、半導体粒子15と光散乱剤とを含む場合において、樹脂フィルムは、その厚みをT[μm]とするとき、式(i):
[C1
2/(1+C2)2]×T≦150 (i)
を満たすことが好ましい。式(i)を満たすことにより、上記範囲内の全光線透過率Ttを達成しやすくなり、樹脂フィルムから発せられる光の色度の視野角依存性を小さくする観点、及び、視認性を向上させる観点からも有利である。これらの観点から、式(i)の左辺の値は、より好ましくは100以下、さらに好ましくは75以下、なおさらに好ましくは50以下、特に好ましくは30以下、最も好ましくは20以下である。式(i)の左辺の値は、通常1以上であり、5以上であってもよい。
【0092】
(2-3)第1樹脂
第1樹脂層10は、第1樹脂を含む。好ましくは、第1樹脂層10に含まれる樹脂は第1樹脂からなる。第1樹脂は、好ましくは熱可塑性樹脂である。第1樹脂は、2種以上の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。
第1樹脂層10に含まれる樹脂は、1種の第1樹脂からなっていてもよいし、2種以上の第1樹脂からなっていてもよいが、好ましくは、1種の第1樹脂からなる。
【0093】
熱可塑性樹脂としては、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の(メタ)アクリル系樹脂;セルロースエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;及びこれらの混合物、共重合物等が挙げられる。本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルから選択される少なくとも一方を意味する。
【0094】
第1樹脂は、樹脂フィルムの成形時に、半導体粒子15の光学特性等に悪影響が与えない程度の温度で溶融可能な熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0095】
第1樹脂は、樹脂フィルムの機械的強度及び光学特性等の観点から、好ましくは、ポリスチレン系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂から選択される1種以上の熱可塑性樹脂であり、より好ましくはポリスチレン系樹脂である。ポリスチレン系樹脂とは、スチレン系単量体から誘導される構成単位を含む重合体又は共重合体をいう。ポリスチレン系樹脂としては、例えば、1種又は2種以上のスチレン系単量体の重合体又は共重合体;ゴム重合体(ゴム弾性体)と1種以上のスチレン系単量体との共重合体(ゴム変性ポリスチレン系樹脂。耐衝撃性ポリスチレン系樹脂ともいう。);1種以上のスチレン系単量体と、これと共重合可能な1種以上の他の単量体との共重合体(ゴム変性ポリスチレン系樹脂は除く。)等が挙げられる。第1樹脂は、1種又は2種以上のポリスチレン系樹脂を含むことができる。
【0096】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレンの他、α-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、m-又はp-メチルスチレン、m-又はp-エチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、クロロスチレン等のα置換及び/又は核置換スチレン等が挙げられる。
【0097】
ゴム重合体としては、例えば、天然クレープゴム、ポリブタジエン、ブタジエン-スチレン共重合ゴム、ブタジエン-アクリロニトリル共重合ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、イソプレン-イソブチレン共重合ゴム、ポリクロロプレン、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン単量体ゴム、スチレン-ブタジエンブロック共重合ゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合ゴム、(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合ゴム等が挙げられる。
【0098】
スチレン系単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、ビニルナフタレン、ブロモスチレン、フェニルマレイミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0099】
ゴム変性ポリスチレン系樹脂(耐衝撃性ポリスチレン系樹脂)としては、例えば、ポリブタジエングラフトスチレン重合体(HIPS樹脂)、ポリブタジエングラフトスチレン-メタクリル酸共重合体(HISMAA樹脂)、ポリブタジエングラフトスチレン-アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等が挙げられる。中でも、樹脂フィルムの機械的強度及び光学特性等の観点から、HIPS樹脂が好ましい。
【0100】
1種以上のスチレン系単量体と1種以上の他の単量体との共重合体としては、例えば、スチレン-メチルメタクリレート共重合体(MS樹脂)、スチレン-メタクリル酸共重合体(SMAA樹脂)、スチレン-アクリル酸共重合体(SAA樹脂)、スチレン-アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)等が挙げられる。中でも、樹脂フィルムの機械的強度及び光学特性等の観点から、MS樹脂が好ましい。
【0101】
第1樹脂層10における第1樹脂の含有率は、第1樹脂層10の総量に対して、例えば50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、なおさらに好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、例えば99.9質量%以下であり、好ましくは99.5質量%以下、より好ましくは99.0質量%以下である。第1樹脂層10における第1樹脂の含有率が上記範囲内であると、樹脂フィルムの機械的強度及び光学特性等の観点から有利である。
【0102】
(2-4)第1樹脂層に含まれ得る他の成分
第1樹脂層10は、半導体粒子15、光散乱剤及び第1樹脂以外の他の成分を含むことができる。他の成分としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤等の添加剤が挙げられる。第1樹脂層10は、2種以上の添加剤を含有してもよい。
【0103】
酸化防止剤としては、工業的に一般に使用される酸化防止剤であれば特に限定はなく、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、リン/フェノール複合型酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤等を用いることができる。2種以上の酸化防止剤を用いてもよい。
【0104】
リン/フェノール複合型酸化防止剤は、例えば、分子中にリン原子とフェノール構造とをそれぞれ1以上有する化合物である。中でも、樹脂フィルムの発光強度の観点から、酸化防止剤は、リン/フェノール複合型酸化防止剤を含むことが好ましい。
【0105】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、イルガノックス(登録商標)1010(Irganox 1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASF(株)製)、同1076(Irganox 1076:オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、BASF(株)製)、同1330(Irganox 1330:3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、BASF(株)製)、同3114(Irganox 3114:1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、BASF(株)製)、同3790(Irganox 3790:1,3,5-トリス((4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、BASF(株)製)、同1035(Irganox 1035:チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASF(株)製)、同1135(Irganox 1135:ベンゼンプロパン酸の3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-C7-C9側鎖アルキルエステル、BASF(株)製)、同1520L(Irganox 1520L:4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、BASF(株)製)、同3125(Irganox 3125、BASF(株)製)、同565(Irganox 565:2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3’、5’-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、BASF(株)製)、アデカスタブ(登録商標)AO-80(アデカスタブ AO-80:3,9-ビス(2-(3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、(株)ADEKA製)、スミライザー(登録商標)BHT、同GA-80、同GS(以上、住友化学(株)製)、サイアノックス(登録商標)1790(Cyanox 1790、(株)サイテック製)、ビタミンE(エーザイ(株)製)等が挙げられる。
【0106】
フェノール系酸化防止剤としては、フェノール性ヒドロキシ基の少なくとも一方のオルト位に嵩高い有機基が結合したヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤が好ましい。嵩高い有機基としては、2級又は3級アルキル基が好ましく、具体的には、イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、s-アミル基、t-アミル基等が挙げられる。中でも、3級アルキル基が好ましく、t-ブチル基又はt-アミル基が特に好ましい。
【0107】
リン系酸化防止剤としては、例えば、イルガフォス(登録商標)168(Irgafos 168:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、BASF(株)製)、同12(Irgafos 12:トリス[2-[[2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d、f][1,3,2]ジオキサフォスフィン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、BASF(株)製)、同38(Irgafos 38:ビス(2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル)エチルエステル亜りん酸、BASF(株)製)、アデカスタブ(登録商標)329K、同PEP36、同PEP-8(以上、(株)ADEKA製)、Sandstab P-EPQ(クラリアント社製)、Weston(登録商標)618、同619G(以上、GE社製)、Ultranox626(GE社製)等が挙げられる。
【0108】
リン/フェノール複合型酸化防止剤としては、例えば、スミライザー(登録商標)GP(6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]ジオキサホスフェピン)(住友化学(株)製)等が挙げられる。
【0109】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、ジミリスチル又はジステアリール等のジアルキルチオジプロピオネート化合物及びテトラキス[メチレン(3-ドデシルチオ)プロピオネート]メタン等のポリオールのβ-アルキルメルカプトプロピオン酸エステル化合物等が挙げられる。
【0110】
第1樹脂層10が酸化防止剤を含む場合、第1樹脂層10における酸化防止剤の含有率は、第1樹脂層10の総量に対して、例えば0.001質量%以上10質量%以下であり、樹脂フィルムの発光強度の観点から、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上1質量%以下である。
【0111】
紫外線吸収剤の例としては、2,2’-メチレンビス〔4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール〕、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-〔2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル〕-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-tert-アミル-2-ヒドロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-クロロベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン等の2-ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤;p-tert-ブチルフェニルサリチル酸エステル、p-オクチルフェニルサリチル酸エステル等のサリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤;2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシルオキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニル、2-[4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-(オクチルオキシ)フェノール、2-[2,6-ジ(2,4-キシリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-オクチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイル)エトキシ]フェノール、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メトキシフェニル)-1,3,5トリアジン等のトリアジン系紫外線吸収剤などが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
【0112】
紫外線吸収剤としては、市販品を使用してもよく、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤として、ケミプロ化成株式会社製のKemisorb 102、株式会社ADEKA製のアデカスタブ LA46、アデカスタブ LAF70、BASF社製のTINUVIN 460、TINUVIN 405、TINUVIN 400及びTINUVIN 477、サンケミカル株式会社製のCYASORB UV-1164(以上、いずれも商品名)等がある。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、株式会社ADEKA製のアデカスタブ LA31及びアデカスタブ LA36、住化ケムテックス株式会社製のスミソーブ 200、スミソーブ 250、スミソーブ 300、スミソーブ 340及びスミソーブ 350、ケミプロ化成株式会社製のKemisorb 74、Kemisorb 79及びKemisorb 279、BASF社製のTINUVIN 99-2、TINUVIN 360、TINUVIN 900及びTINUVIN 928、城北化学工業株式会社製のJF-77、JF-79、JF-80、JF-83、JF-832、JAST-500、JF-90G、JF-95(以上、いずれも商品名)等が挙げられる。
【0113】
第1樹脂層10が紫外線吸収剤を含む場合、第1樹脂層10における紫外線吸収剤の含有率は、第1樹脂層10の総量に対して、例えば0.001質量%以上10質量%以下であり、樹脂フィルムの耐候性向上等の観点から、好ましくは0.01質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上2質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以上1質量%以下である。
【0114】
(2-5)第1樹脂層の厚み
樹脂フィルムの機械的強度及び光学特性等の観点から、第1樹脂層10の厚みT1は、好ましくは50μm以上500μm以下、より好ましくは70μm以上400μm以下、さらに好ましくは80μm以上350μm以下、なおさらに好ましくは100μm以上300μm以下、特に好ましくは120μm以上250μm以下である。第1樹脂層等の樹脂層の厚みは、後述する[実施例]の項の記載に従って測定することができる。
【0115】
(3)第2樹脂層及び第3樹脂層
樹脂フィルムは、第1樹脂層10の第1表面上に配置される第2樹脂層20と、第1表面と対向する第2表面上に配置される第3樹脂層30とをさらに含むことができる。第2樹脂層20に含まれる樹脂は第2樹脂を含み、好ましくは、第2樹脂層20に含まれる樹脂は第2樹脂からなる。第3樹脂層30に含まれる樹脂は第3樹脂を含み、好ましくは、第3樹脂層30に含まれる樹脂は第3樹脂からなる。樹脂フィルムは、樹脂フィルムの機械的強度等の観点から、好ましくは第2樹脂層20及び第3樹脂層30の少なくともいずれか一方を有し、より好ましくは第2樹脂層20及び第3樹脂層30の両方を有する。
【0116】
1つの好ましい実施形態において樹脂フィルムは、
図2に示されるように、第2樹脂層20と第1樹脂層10と第3樹脂層30とをこの順に含む。第2樹脂層20と第1樹脂層10とは接していることが好ましく、第1樹脂層10と第3樹脂層30とは接していることが好ましい。
【0117】
上記好ましい実施形態に係る樹脂フィルムにおいて、好ましくは、第1樹脂層10は半導体粒子15、又は、半導体粒子15及び光散乱剤を含有し、第2樹脂層20及び第3樹脂層30は半導体粒子15及び光散乱剤を含有しない。これにより、樹脂フィルムにおいて、半導体粒子15、さらには光散乱剤に基づく光学特性と機械的強度とを両立させやすくなる。また、第1樹脂層10に半導体粒子15及び光散乱剤の両方を含有させることにより、半導体粒子15の近傍に光散乱剤を存在させることができるため、樹脂フィルムの発光強度向上に有利となり得る。
【0118】
(3-1)アンチブロッキング剤
第2樹脂層20及び第3樹脂層30は、好ましくは、少なくともいずれか一方の樹脂層がアンチブロッキング剤を含有し、より好ましくは、両方の樹脂層がアンチブロッキング剤を含有する。これにより、樹脂フィルムをロール状態にしたときや枚葉状態の樹脂フィルムを積層させたときのフィルムの密着(ブロッキング)を抑制することができる。また、いずれか一方又は両方の樹脂層にアンチブロッキング剤を含有させることにより、樹脂フィルムの機械的強度等を高め得る。第2樹脂層20、第3樹脂層30はそれぞれ、2種以上のアンチブロッキング剤を含有してもよい。なお、第1樹脂層10は、アンチブロッキング剤を含有していてもよいが、樹脂フィルムの発光強度を高めやすいことから、アンチブロッキング剤を含有しないことが好ましい。
【0119】
アンチブロッキング剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、これらの疎水処理物等からなる無機系の粒子;(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート等からなる樹脂粒子が挙げられる。樹脂粒子の好ましい一例は、(メタ)アクリル樹脂粒子である。
【0120】
アンチブロッキング剤は、好ましくは樹脂粒子である。アンチブロッキング剤が樹脂粒子であると、樹脂フィルムの表面に存在するアンチブロッキング剤により、樹脂フィルムの機械的強度等をより高めることができる。さらには、樹脂フィルムの内部、好ましくは第1樹脂層から発せられる光の散乱を抑制できるとともに、例えば無機系の粒子を含有させた場合に比して樹脂フィルムの透明性を高めることができるため、樹脂フィルムの出射光強度の低下を抑制することができる。
【0121】
アンチブロッキング剤は、それが分散される第2樹脂又は第3樹脂との屈折率差が小さい粒子であることが好ましい。屈折率差を小さくすることにより、アンチブロッキング剤により生じる、樹脂フィルム内部から発せられる光の散乱を抑制できるため、樹脂フィルムの出射光強度を向上させることができる。上記屈折率差を小さくする観点から、アンチブロッキング剤は、好ましくは樹脂粒子であり、より好ましくは(メタ)アクリル樹脂粒子である。
【0122】
アンチブロッキング剤の平均粒径は、樹脂フィルムの機械的強度等を考慮して、好ましくは1μm以上45μm以下、より好ましくは2μm以上30μm以下、さらに好ましくは3μm以上15μm以下、なおさらに好ましくは4μm以上10μm以下である。
【0123】
第2樹脂層20及び/又は第3樹脂層30がアンチブロッキング剤を含む場合、該樹脂層におけるアンチブロッキング剤の含有率は、該樹脂層の総量に対して、例えば0.01質量%以上50質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以上15質量%以下、なおさらに好ましくは3.0質量%以上12質量%以下、特に好ましくは5.0質量%以上12質量%以下である。該樹脂層におけるアンチブロッキング剤の含有率が上記範囲であると、樹脂フィルムをロール状態にしたときや枚葉状態の樹脂フィルムを積層させたときのフィルムの密着(ブロッキング)を抑制することができ、また、樹脂フィルムの発光強度を高めやすい。さらに、該樹脂層におけるアンチブロッキング剤の含有率が上記範囲であると、樹脂フィルムの機械的強度等の観点からも有利である。
【0124】
(3-2)第2樹脂及び第3樹脂
第2樹脂及び第3樹脂は、好ましくは、それぞれ熱可塑性樹脂である。第2樹脂及び第3樹脂はそれぞれ、2種以上の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂の例については上記(2-3)での記載が引用される。
【0125】
第2樹脂層20に含まれる樹脂は、1種の第2樹脂からなっていてもよいし、2種以上の第2樹脂からなっていてもよいが、好ましくは、1種の第2樹脂からなる。第3樹脂層30に含まれる樹脂は、1種の第3樹脂からなっていてもよいし、2種以上の第3樹脂からなっていてもよいが、好ましくは、1種の第3樹脂からなる。
【0126】
第2樹脂及び第3樹脂はそれぞれ、樹脂フィルムの成形時に、半導体粒子の光学特性等に悪影響が与えない程度の温度で溶融可能な熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0127】
第2樹脂及び第3樹脂はそれぞれ、樹脂フィルムの機械的強度等の観点から、好ましくは、ポリスチレン系樹脂及び(メタ)アクリル系樹脂から選択される1種以上の熱可塑性樹脂であり、より好ましくはポリスチレン系樹脂である。第2樹脂及び第3樹脂はそれぞれ、1種又は2種以上のポリスチレン系樹脂を含むことができる。中でも、樹脂フィルムの機械的強度等の観点から、第2樹脂及び第3樹脂はそれぞれ、好ましくは、HIPS樹脂又はMS樹脂である。
【0128】
第1樹脂と第2樹脂とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1樹脂と第3樹脂とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。第2樹脂と第3樹脂とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1樹脂、第2樹脂及び第3樹脂は、好ましくは、いずれも熱可塑性樹脂であり、より好ましくは、いずれもポリスチレン系樹脂である。1つの好ましい実施形態において、樹脂フィルムは第1樹脂層10、第2樹脂層20及び第3樹脂層30を有し、第1樹脂と第2樹脂と第3樹脂とは同一であり、好ましくはいずれもHIPS樹脂である。
【0129】
第2樹脂層20における第2樹脂の含有率、第3樹脂層30における第3樹脂の含有率はそれぞれ、該樹脂層の総量に対して、例えば50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%、なおさらに好ましくは85質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、例えば99.9質量%以下であり、好ましくは99.5質量%以下、より好ましくは99.0質量%以下、さらに好ましくは98.0%以下、なおさらに好ましくは96.0%以下である。第2樹脂層20における第2樹脂の含有率及び第3樹脂層30における第3樹脂の含有率が上記範囲内であると、樹脂フィルムの機械的強度等の観点から有利である。
【0130】
第2樹脂層20及び第3樹脂層30は、アンチブロッキング剤及び第2樹脂又は第3樹脂以外の他の成分を含むことができる。他の成分の例は、上記(2-4)に記載の添加剤の例と同様である。
【0131】
(3-3)第2樹脂層及び第3樹脂層の厚み
樹脂フィルムの機械的強度等の観点から、第2樹脂層20の厚みT2、第3樹脂層30の厚みT3はそれぞれ、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上、なおさらに好ましくは20μm以上であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下、なおさらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは40μm以下である。
【0132】
第2樹脂層20の厚みT2に対する第3樹脂層30の厚みT3の比T3/T2は、好ましくは0.5以上2以下、より好ましくは0.7以上1.5以下、さらに好ましくは0.9以上1.2以下、特に好ましくは1である。
【0133】
(4)樹脂フィルムの厚み
樹脂フィルムの厚み(総厚み)Tは、該フィルムの取扱性及び該フィルムを適用した表示装置の薄型化の観点から、好ましくは55μm以上900μm以下、より好ましくは75μm以上700μm以下、さらに好ましくは95μm以上550μm以下、なおさらに好ましくは120μm以上400μm以下、特に好ましくは150μm以上350μm以下である。
【0134】
<樹脂フィルムの製造方法>
樹脂フィルムは、特に制限されるものではないが、押出成形によって製造されることが好ましい。第2樹脂層20及び/又は第3樹脂層30をさらに有する樹脂フィルムは、共押出成形によって製造されることがより好ましい。この場合、樹脂フィルムは押出成形品又は共押出成形品である。樹脂フィルムを押出成形により製造する場合、全光線透過率Tを調整しやすく、全光線透過率が均一な樹脂フィルムを得やすい観点から、第1樹脂、第2樹脂及び第3樹脂にHIPS樹脂を用いることが好ましい。
【0135】
第2樹脂層20及び/又は第3樹脂層30をさらに有する樹脂フィルムを例に挙げて、共押出成形による樹脂フィルムの製造方法について説明する。
【0136】
共押出成形による樹脂フィルムの製造方法は、例えば、以下の工程を含む製造方法であることができる。
第1樹脂層用の第1樹脂組成物を調製する工程(X)、
第2樹脂層用の第2樹脂組成物を調製する工程(Y-1)、
第3樹脂層用の第3樹脂組成物を調製する工程(Y-2)、
第1樹脂組成物、第2樹脂組成物、及び必要に応じて第3樹脂組成物を用い、共押出成形により樹脂フィルムを製造する工程(Z)。
【0137】
例えば第3樹脂層を有しない樹脂フィルムを製造する場合には工程(Y-2)は不要である。また、第2樹脂組成物と第3樹脂組成物とが同一組成である場合には、工程(Y-1)と別に工程(Y-2)を設ける必要はなく、第3樹脂組成物として第2樹脂組成物を用いればよい。第1樹脂層10のみを有する樹脂フィルムを製造する場合には、工程(X)で調製した第1樹脂組成物を用いて押出成形を行う。
【0138】
工程(X)は、所望の含有率で半導体粒子、第1樹脂、並びに任意で含有される光散乱剤及び添加剤等を含有する第1樹脂組成物を、好ましくは加熱溶融混練を経て、調製する工程である。工程(X)は、複数の工程からなっていてもよい。例えば、工程(X)は、半導体粒子と第1樹脂とを加熱溶融混練してこれらを含むマスターバッチ(MB)を調製する工程;光散乱剤と第1樹脂とを加熱溶融混練してこれらを含むMBを調製する工程;及び、各MBと第1樹脂とを加熱溶融混練してこれらを含む第1樹脂組成物を調製する工程を含むことができる。MBが複数ある場合、添加剤は、複数のMBのいずれか又はすべてに含有させることができる。各MBは、ペレットの形態で調製されてよい。MBを用いる方法によれば、半導体粒子、光散乱剤及び添加剤それぞれの濃度が均一な第1樹脂組成物を調製しやすい。また、MB調製時にかかる熱等により半導体粒子が失活する可能性があるため、工程(X)は、半導体粒子と第1樹脂とを含む前記MBについて、前記第1樹脂組成物を調製する前に、製造された樹脂フィルムが所望の発光強度を示すために有効な量の半導体粒子が含まれているか検査する工程を含むことが好ましい。前記検査は、例えば、量子収率測定、青色光照射時の発光色の色度測定、分光測色計による基準光下での色度測定等が挙げられる。該工程を設け、得られた検査値を元に第1樹脂や他のMBの添加量を決定することにより、所望の光学特性を有する樹脂フィルムを再現性良く製造することができる。
【0139】
加熱溶融混練による第1樹脂組成物の調製及び各MBの調製は、所定成分を二軸押出機等の押出機に投入し、加熱溶融混練する方法によって実施できる。加熱溶融混練時の温度は、例えば150℃以上、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上であり、例えば350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは280℃以下、特に好ましくは260℃以下である。
【0140】
第1樹脂組成物の調製及びMBの調製において、所定成分の混合物に溶剤や水分が含まれる場合には、加熱溶融混練しながら又は加熱溶融混練後に、これらを除去するための脱揮処理を行うことができる。所定成分の混合物に溶剤が含まれる場合とは、例えば、半導体粒子を、これを分散媒に分散させた分散液の形態で投入する場合である。
【0141】
工程(Y-1)及び工程(Y-2)における第2樹脂組成物及び第3樹脂組成物についても、第1樹脂組成物と同様にして調製することができる。例えば、工程(Y-1)は、アンチブロッキング剤と第2樹脂とを溶融混練してこれらを含むMBを調製する工程;及び、MBと第2樹脂とを溶融混練してこれらを含む第2樹脂組成物を調製する工程を含むことができる。添加剤は、MBに含有させることができる。
【0142】
工程(Z)における共押出成形は、従来公知の方法で行ってよい。例えば、工程(X)において第1押出機内で調製された溶融状態の第1樹脂組成物と、工程(Y-1)(及び工程(Y-2))において第1押出機とは異なる第2押出機内で調製された溶融状態の第2樹脂組成物(及び第3樹脂組成物)とを、2層又は3層構成のフィードブロックに供給し、さらにT-ダイから共押出することにより、第1樹脂層及び第2樹脂層を有する、又は第1樹脂層、第2樹脂層及び第3樹脂層を有する樹脂フィルムを製造することができる。共押出時の各樹脂組成物の温度は、例えば150℃以上、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上であり、例えば350℃以下、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは280℃以下、特に好ましくは260℃以下である。
【0143】
樹脂フィルムが有する各樹脂層の厚みは、例えば、フィードブロックへの樹脂組成物の供給速度、T-ダイ吐出口の開口幅、下記成形・冷却ロールにおけるロール間ギャップ(間隔)等を調整することによって制御できる。T-ダイから押し出された溶融状態の積層物を成形・冷却ロールに通すことによって、長尺物としての樹脂フィルムが得られる。第2樹脂層と第3樹脂層とが、組成や厚みにおいて異なる場合には、第3樹脂組成物を調製するための第3押出機を別途準備すればよい。
【0144】
樹脂フィルムの製造方法は、上記以外の他の工程を有していてもよい。他の工程としては、上記長尺物である樹脂フィルムの長手方向端部をトリミングする工程、上記長尺物である樹脂フィルムをロール状に巻き取る工程、上記長尺物である樹脂フィルムを所定サイズの枚葉フィルムに裁断する工程等が挙げられる。
【0145】
<表示装置>
本発明に係る表示装置は、上記樹脂フィルムを含む。表示装置としては、液晶表示装置、有機EL表示装置、無機EL表示装置等が挙げられる。樹脂フィルムは、光源(液晶表示装置のバックライト、有機EL表示装置や無機EL表示装置のEL表示素子)の上(視認側)に配置することにより、光源からの光を拡散させたり、波長変換を行ったりするフィルム(すなわち、拡散フィルム又は波長変換フィルム)として好適に用いることができる。
【実施例0146】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記のない限り、質量%及び質量部である。
【0147】
<測定及び評価>
(1)樹脂層の厚み
製造した樹脂フィルムについて、ミクロトームを用いてその断面を露出させ、レーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製「LEXT OLS4000」)を用いた断面観測により、各樹脂層の厚みを測定した。
【0148】
(2)樹脂フィルムの全光線透過率Tt及びヘイズHz
JIS K 7361-1:1997に準拠し、株式会社村上色彩技術研究所製ヘイズメーター「HM-150」を用いて測定した。
【0149】
(3)発光色の視野角依存性
図3(a)を参照して、水平な床面に青色の面発光型バックライト照明100(最大発光波長450nm、輝度105cd/m
2)を置き、その発光面上に樹脂フィルムの測定サンプル200を置いた。測定サンプル200から59cm離れた位置にレンズの先端が位置するように分光放射計(トプコンテクノハウス社製の「SR-UL1R」)300を測定サンプル200の上方に設置した。分光放射計300の光軸は水平面と垂直であった。面発光型バックライト照明100を起動させ、測定角0.2度の条件で樹脂フィルムから発せられる光の色度測定を行った。該測定から、観視角0度において検出される発光のCIE色度図における色度座標(x
0,y
0)を得た。
【0150】
また、
図3(b)を参照して、面発光型バックライト照明100を床面から45度傾けて置いたこと以外は上記と同様にして色度測定を行い、観視角45度において検出される発光のCIE色度図における色度座標(x
45,y
45)を得た。得られた色度座標から、(Δx
2+Δy
2)
1/2の値を求めた。結果を表1に示す。Δxはx
0とx
45との差であり、Δyはy
0とy
45との差である。
【0151】
(4)透過光強度の視野角依存性
上記(3)における樹脂フィルムから発せられる光の色度測定にあたって、波長毎の該光の強度を併せて測定し、観視角0度において検出される波長450nmの透過光の強度I0及び観視角45度において検出される波長450nmの透過光の強度I45を得た。これらの強度値に基づき、|(I0-I45)/Iin|の値を求めた。結果を表1に示す。波長450nmにおける強度Iinは、面発光型バックライト照明100の発光面上に樹脂フィルムの測定サンプル200を置かない状態で面発光型バックライト照明100を起動させたときに、観視角0度において分光放射計によって検出される波長450nmの光の強度として求めた。
【0152】
(5)最大発光強度E1~E4
上記(4)に記載の波長毎の該光の強度の測定結果から、観視角0度において検出される発光の波長510nm~550nmの範囲における最大発光強度E1、波長600nm~650nmの範囲における最大発光強度E2、観視角45度において検出される発光の波長510nm~550nmの範囲における最大発光強度E3、波長600nm~650nmの範囲における最大発光強度E4を得た。これらから、E2/E1及びE4/E3を求めた。結果を表1に示す。
【0153】
<製造例1:第1樹脂層用の量子ドットMBの調製>
HIPS樹脂ペレット及び量子ドットが下記の配合比率となるようにHIPS樹脂ペレット及び量子ドットのトルエン分散液を、二軸押出機を用い真空ベントによりトルエンを脱揮しながら成形温度200~260℃で混練した。押出機から得られたストランドを冷却した後、ペレタイザーで切断することによって、量子ドットが樹脂中に分散した第1樹脂層用の量子ドットMBを得た。
HIPS樹脂ペレット(PS Japan社製「SX100」) 97.3質量%
量子ドット(Nanosys社製) 2.7質量%
【0154】
<製造例2:第1樹脂層用の酸化チタン粒子MBの調製>
HIPS樹脂ペレット、酸化チタン(TiO2)粒子(光散乱剤)、酸化防止剤、紫外線吸収剤を、下記の配合比率でタンブラーにてドライブレンドし、二軸押出機を用い成形温度200~260℃で混練した。押出機から得られたストランドをウォーターバスで冷却した後、ペレタイザーで切断することによって、酸化チタン粒子が樹脂中に分散した第1樹脂層用の酸化チタン粒子MBを得た。
HIPS樹脂ペレット(PS Japan社製「SX100」) 91.0質量%
酸化チタン粒子(体積基準のメディアン径:0.2μm) 5.0質量%
酸化防止剤(住友化学株式会社製「スミライザーGP」) 2.0質量%
紫外線吸収剤(城北化学工業株式会社製「JF-77」) 2.0質量%
【0155】
<製造例3:第2及び第3樹脂層用のMBの調製>
HIPS樹脂ペレット、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤を、下記の配合比率でタンブラーにてドライブレンドし、二軸押出機を用い成形温度200~260℃で混練した。押出機から得られたストランドをウォーターバスで冷却した後、ペレタイザーで切断することによって、第2及び第3樹脂層用のMBを得た。
HIPS樹脂ペレット(PS Japan社製「SX100」) 77.0質量%
アンチブロッキング剤(アイカ工業社製の架橋PMMA粒子「ガンツパール GM-0806S」 平均粒径:8μm) 20.0質量%
酸化防止剤(住友化学株式会社製「スミライザーGP」) 2.0質量%
紫外線吸収剤(城北化学工業株式会社製「JF-77」 1.0質量%
【0156】
<実施例1>
製造例1で調製した第1樹脂層用の量子ドットMB、製造例2で調製した第1樹脂層用の酸化チタン粒子MB、及び、HIPS樹脂ペレット(MBの調製に用いたものと同じもの)の所定量を二軸押出機に投入し、200~260℃の温度で加熱溶融混練して、溶融状態の第1樹脂層用の樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の組成を下記に示す。
一方、製造例3で調製した第2及び第3樹脂層用のMB、並びに、HIPS樹脂ペレット(MBの調製に用いたものと同じもの)の所定量を別の二軸押出機に投入し、200~260℃の温度で加熱溶融混練して、溶融状態の第2及び第3樹脂層用の樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の組成を下記に示す。
【0157】
(第1樹脂層用の樹脂組成物の組成)
HIPS樹脂 :98.17質量%
量子ドット : 0.40質量%
酸化チタン粒子 : 0.35質量%
酸化防止剤 : 0.54質量%
紫外線吸収剤 : 0.54質量%
【0158】
(第2及び第3樹脂層用の樹脂組成物の組成)
HIPS樹脂 :90.80質量%
アンチブロッキング剤: 8.00質量%
酸化防止剤 : 0.80質量%
紫外線吸収剤 : 0.40質量%
【0159】
上記で得た溶融状態の第1樹脂層用の樹脂組成物、並びに、第2及び第3樹脂層用の樹脂組成物を3層構成のフィードブロックに送り、さらにT-ダイから共押出した。押し出された溶融状態の積層物を3本の成形・冷却ロールに通すことによって、第2樹脂層(厚み25μm)、第1樹脂層(厚み150μm)及び第3樹脂層(厚み25μm)をこの順に有する樹脂フィルム(総厚み200μm)を得た。
【0160】
<実施例2>
フィードブロックへの第1樹脂層用の樹脂組成物の供給速度を調整することにより、第1樹脂層の厚みを200μmとしたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂フィルムを得た(総厚み250μm)。
【0161】
<実施例3>
製造例1で調製した第1樹脂層用の量子ドットMB、製造例2で調製した第1樹脂層用の酸化チタン粒子MB、及び、HIPS樹脂ペレット(MBの調製に用いたものと同じもの)の所定量を二軸押出機に投入し、200~260℃の温度で加熱溶融混練して、溶融状態の第1樹脂層用の樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の組成を下記に示す。
一方、製造例3で調製した第2及び第3樹脂層用のMB、及び、HIPS樹脂ペレット(MBの調製に用いたものと同じもの)の所定量を別の二軸押出機に投入し、200~260℃の温度で加熱溶融混練して、溶融状態の第2及び第3樹脂層用の樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の組成は実施例1と同じであった。
【0162】
(第1樹脂層用の樹脂組成物の組成)
HIPS樹脂 :98.27質量%
量子ドット : 0.30質量%
酸化チタン粒子 : 0.35質量%
酸化防止剤 : 0.54質量%
紫外線吸収剤 : 0.54質量%
【0163】
上記で得た溶融状態の第1樹脂層用の樹脂組成物、並びに、第2及び第3樹脂層用の樹脂組成物を3層構成のフィードブロックに送り、さらにT-ダイから共押出した。押し出された溶融状態の積層物を3本の成形・冷却ロールに通すことによって、第2樹脂層(厚み25μm)、第1樹脂層(厚み200μm)及び第3樹脂層(厚み25μm)をこの順に有する樹脂フィルム(総厚み250μm)を得た。
【0164】
<実施例4>
製造例1で調製した第1樹脂層用の量子ドットMB、製造例2で調製した第1樹脂層用の酸化チタン粒子MB、及び、HIPS樹脂ペレット(MBの調製に用いたものと同じもの)の所定量を二軸押出機に投入し、200~260℃の温度で加熱溶融混練して、溶融状態の第1樹脂層用の樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の組成を下記に示す。
一方、製造例3で調製した第2及び第3樹脂層用のMB、及び、HIPS樹脂ペレット(MBの調製に用いたものと同じもの)の所定量を別の二軸押出機に投入し、200~260℃の温度で加熱溶融混練して、溶融状態の第2及び第3樹脂層用の樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の組成は実施例1と同じであった。
【0165】
(第1樹脂層用の樹脂組成物の組成)
HIPS樹脂 :98.07質量%
量子ドット : 0.50質量%
酸化チタン粒子 : 0.35質量%
酸化防止剤 : 0.54質量%
紫外線吸収剤 : 0.54質量%
【0166】
上記で得た溶融状態の第1樹脂層用の樹脂組成物、並びに、第2及び第3樹脂層用の樹脂組成物を3層構成のフィードブロックに送り、さらにT-ダイから共押出した。押し出された溶融状態の積層物を3本の成形・冷却ロールに通すことによって、第2樹脂層(厚み25μm)、第1樹脂層(厚み200μm)及び第3樹脂層(厚み25μm)をこの順に有する樹脂フィルム(総厚み250μm)を得た。
【0167】
<実施例5>
フィードブロックへの第1樹脂層用の樹脂組成物の供給速度を調整することにより、第1樹脂層の厚みを250μmとしたこと以外は実施例1と同様にして、樹脂フィルムを得た(総厚み300μm)。
【0168】
<比較例1>
製造例1で調製した第1樹脂層用の量子ドットMB、及び、HIPS樹脂ペレット(MBの調製に用いたものと同じもの)の所定量を二軸押出機に投入し、200~260℃の温度で加熱溶融混練して、溶融状態の第1樹脂層用の樹脂組成物を得た。該樹脂組成物の組成を下記に示す。
【0169】
(第1樹脂層用の樹脂組成物の組成)
HIPS樹脂 :98.67質量%
量子ドット : 1.33質量%
【0170】
二軸押出機から得られたストランドを冷却後に切断することによって、量子ドットがコンパウンドされた樹脂片を得た。所定量の該樹脂片をステンレス製底板の上に置き、金枠と天板を組み合わせて金型とし、240℃で3~10MPaの圧力で熱プレスを行った。取り出した金型を冷却後に分解し、厚み200μmの樹脂フィルムを得た。
【0171】
上記<測定及び評価>に従う測定結果及び評価結果を表1に示す。[C1
2/(1+C2)2]×Tの値を併せて表1に示す。
【0172】
10 第1樹脂層、15 半導体粒子、20 第2樹脂層、30 第3樹脂層、100 面発光型バックライト照明、200 樹脂フィルムの測定サンプル、300 分光放射計。