(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106540
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】切削装置および切削方法
(51)【国際特許分類】
B24B 49/02 20060101AFI20240801BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240801BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240801BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B24B49/02 Z
H01L21/68 N
H01L21/304 601Z
B24B27/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010842
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 淳
(72)【発明者】
【氏名】牧野 香一
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F057
5F131
【Fターム(参考)】
3C034AA13
3C034AA19
3C034BB73
3C034CA13
3C034CA26
3C034CB13
3C034DD10
3C034DD18
3C158AA03
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3C158BC03
3C158CB06
3C158DA17
5F057AA04
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5F131KB12
5F131KB45
5F131KB49
(57)【要約】
【課題】保持面の異物を良好に検出する。
【解決手段】ウェーハ100の外周の高さを測定して高さ分布データを算出し、ウェーハ100の外周の高さの変化率を算出している。そして、高さ変化率としきい値との比較結果に基づいて、ウェーハ100の裏面102に異物があるか否か、すなわち、チャックテーブル20の保持面22上に異物があるか否かを判定している。したがって、保持面22に異物があることを、良好に検出することができる。また、本実施形態では、保持面22に異物がある場合に、その旨を作業者に報知し、研削動作を終了している。したがって、保持面22に異物が付着していることを作業者に対して良好に伝達することができるとともに、保持面22に異物が付着している状態で切削加工が実施されることを、良好に回避することが可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の外周面取り部を切削する切削装置であって、
該被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、
該チャックテーブルに保持された該被加工物の高さを測定する高さ測定ユニットと、
該切削装置の各構成要素を制御する制御ユニットと、を備え、
該制御ユニットは、
チャックテーブルを少なくとも1周回転させながら該高さ測定ユニットによって該被加工物の外周端部から所定距離内側の位置の高さを測定することによって、該被加工物の外周の高さ分布データを算出する高さ分布算出部と、
該高さ分布算出部によって算出された高さ分布データに基づいて、被加工物における外周の高さの変化率である高さ変化率を算出する変化率算出部と、
該高さ変化率としきい値との比較結果に基づいて、該被加工物の裏面に異物があるか否かを判定する判定部と、
該被加工物の裏面に異物があると判定された場合にエラーを報知するエラー報知部と、を含む、
切削装置。
【請求項2】
被加工物の外周面取り部を切削する切削方法であって、
保持面を有するチャックテーブルによって該被加工物を保持する保持ステップと、
該保持ステップの後に、該チャックテーブルを少なくとも1周回転させながら、該被加工物の外周端部から所定距離内側の位置の高さを測定することによって、該被加工物の外周の高さ分布データを算出する高さ分布算出ステップと、
該高さ分布算出ステップにおいて算出された高さ分布データに基づいて、被加工物における外周の高さの変化率である高さ変化率を算出する変化率算出ステップと、
該高さ変化率としきい値との比較結果に基づいて、該被加工物の裏面に異物があるか否かを判定する判定ステップと、
該判定ステップにて異物があると判定された場合にエラーを報知し、該判定ステップにて異物があると判定されない場合に外周面取り部の切削を実施する、処理ステップと、
を備える切削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置および切削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等のデバイスが表面に複数形成されたシリコンウェーハは、裏面が研削されて所定の厚みに形成された後、切削装置によって個々のデバイスに分割され、携帯電話やパソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
上記シリコンウェーハ等の被加工物を個々のデバイスに分割する場合、一般的には、被加工物を吸引保持する保持面を有する保持テーブルと切削ブレードとを備えた切削装置を用いる(例えば、特許文献1)。切削ブレードは、たとえば、基台にNiめっきで電着されたハブブレードである。
【0004】
そして、切削装置では、保持テーブルによって被加工物を吸引保持して、切削ブレードによって被加工物に対する切削加工が遂行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-087282号公報
【特許文献2】特開2000-216227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような切削装置では、保持テーブルの保持面に異物が付着していると、被加工物が、保持テーブルに保持された際に破損してしまうことがある。
そこで、現状では、被加工物を保持テーブルに保持する前に、保持面を撮像手段で撮像して、保持面に異物が存在するか否かを検査している(例えば、特許文献2)。
【0007】
しかし、異物の大きさが小さく、撮像手段によっても異物を検出することが困難な場合がある。この場合、被加工物が破損しない場合でも、被加工物の一部が異物によって盛り上がってしまい、そのまま切削加工すると、加工品質が低下する可能性がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、保持面の異物を良好に検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の切削装置は、被加工物の外周面取り部を切削する切削装置であって、該被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された該被加工物を加工する加工ユニットと、該チャックテーブルに保持された該被加工物の高さを測定する高さ測定ユニットと、該切削装置の各構成要素を制御する制御ユニットと、を備え、該制御ユニットは、チャックテーブルを少なくとも1周回転させながら該高さ測定ユニットによって該被加工物の外周端部から所定距離内側の位置の高さを測定することによって、該被加工物の外周の高さ分布データを算出する高さ分布算出部と、該高さ分布算出部によって算出された高さ分布データに基づいて、被加工物における外周の高さの変化率である高さ変化率を算出する変化率算出部と、該高さ変化率としきい値との比較結果に基づいて、該被加工物の裏面に異物があるか否かを判定する判定部と、該被加工物の裏面に異物があると判定された場合にエラーを報知するエラー報知部と、を含む。
【0010】
本発明の切削方法は、被加工物の外周面取り部を切削する切削方法であって、保持面を有するチャックテーブルによって該被加工物を保持する保持ステップと、該保持ステップの後に、該チャックテーブルを少なくとも1周回転させながら、該被加工物の外周端部から所定距離内側の位置の高さを測定することによって、該被加工物の外周の高さ分布データを算出する高さ分布算出ステップと、該高さ分布算出ステップにおいて算出された高さ分布データに基づいて、被加工物における外周の高さの変化率である高さ変化率を算出する変化率算出ステップと、該高さ変化率としきい値との比較結果に基づいて、該被加工物の裏面に異物があるか否かを判定する判定ステップと、該判定ステップにて異物があると判定された場合にエラーを報知し、該判定ステップにて異物があると判定されない場合に外周面取り部の切削を実施する、処理ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、被加工物の外周の高さを測定して高さ分布データを算出し、被加工物の外周の高さの変化率を算出している。そして、高さ変化率としきい値との比較結果に基づいて、被加工物の裏面に異物があるか否か、すなわち、チャックテーブルの保持面上に異物があるか否かを判定している。したがって、本実施形態では、保持面に異物が付着していることを、良好に検出することができる。
【0012】
また、本発明では、被加工物の裏面に異物がある場合に、その旨を報知している。したがって、保持面に異物が付着していることを、たとえば作業者に対して良好に伝達することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】チャックテーブルおよび高さ測定ユニットの構成を示す説明図である。
【
図4】
図4(a)および
図4(b)は、ウェーハに付着している異物を示す説明図である。
【
図5】ウェーハに異物が付着している場合の高さ分布データの例を示すグラフである。
【
図6】ウェーハに異物が付着していない場合の高さ分布データの例を示すグラフである。
【
図7】ウェーハの表面に異物が付着している場合の高さ分布データの例を示すグラフである。
【
図8】ウェーハの裏面に異物がある場合の高さ分布データの例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すウェーハ100は、被加工物の一例であり、概略円形状を有している。ウェーハ100の表面101には、デバイス103が形成されている。ウェーハ100の裏面102は、研削砥石などによって研削される被研削面である。
【0015】
また、
図2に示すように、ウェーハ100は、その外周縁が面取り加工されており、外周縁に、円弧状の断面を有する外周面取り部105が形成されている。そして、
図1に示す切削装置1は、このようなウェーハ100の外周面取り部105を切削(エッジトリミング加工)するものである。
【0016】
切削装置1は、いわゆるデュアルダイサーと称されるものである。切削装置1は、基台10、基台10に立設された門型コラム14、および、切削装置1の各部材を制御する制御ユニット7を備えている。
【0017】
基台10上には、X軸方向移動機構11が配設されている。X軸方向移動機構11は、チャックテーブル20を、切削送り方向(X軸方向)に沿って移動させる。X軸方向移動機構11は、X軸方向に延びる一対のガイドレール111、ガイドレール111に載置されたX軸テーブル113、ガイドレール111と平行に延びるボールネジ110、および、ボールネジ110を回転させるモータ112を含んでいる。
【0018】
一対のガイドレール111は、X軸方向に平行に、基台10の上面に配置されている。X軸テーブル113は、一対のガイドレール111上に、これらのガイドレール111に沿ってスライド可能に設置されている。X軸テーブル113上には、チャックテーブル20を含む保持部2が載置されている。
【0019】
ボールネジ110は、X軸テーブル113に設けられたナット部(図示せず)に螺合されている。モータ112は、ボールネジ110の一端部に連結されており、ボールネジ110を回転駆動する。ボールネジ110が回転駆動されることで、X軸テーブル113および保持部2が、ガイドレール111に沿ってX軸方向に沿って移動する。
【0020】
保持部2は、ウェーハ100を保持する保持面22を有するチャックテーブル20、および、チャックテーブル20を支持して回転する回転軸であるθテーブル25を備えている。
【0021】
図2に示すように、チャックテーブル20は、略円板状の枠体23を有しており、枠体23に設けられた凹部内に、ポーラスセラミックス等の多孔質部材からなる保持部材21を有している。保持部材21の上面は、ウェーハ100を吸引保持する保持面22となっている。チャックテーブル20では、保持部材21が吸引源(図示せず)に連通されることにより、保持面22によってウェーハ100を吸引保持することが可能となっている。
【0022】
図1に示すように、チャックテーブル20は、チャックテーブル20の底面側に配設されたθテーブル25に支持されている。θテーブル25は、X軸テーブル113の上面に、XY平面内で回転可能に設けられている。したがって、θテーブル25は、チャックテーブル20を支持するとともに、チャックテーブル20をXY平面内で回転駆動することができる。
【0023】
基台10上の後方側(-X方向側)には、門型コラム14が、X軸方向移動機構11を跨ぐように立設されている。
【0024】
門型コラム14の前面(+X方向側の面)には、第1切削ユニット18および第2切削ユニット19を移動させる切削ユニット移動機構13が設けられている。切削ユニット移動機構13は、第1切削ユニット18および第2切削ユニット19を、Y軸方向にインデックス送りするとともに、Z軸方向に切込み送りする。
【0025】
切削ユニット移動機構13は、+Y方向側の第1切削ユニット18をZ軸方向に移動させる第1Z軸方向移動機構16、-Y方向側の第2切削ユニット19をZ軸方向に移動させる第2Z軸方向移動機構17、ならびに、第1切削ユニット18および第2切削ユニット19をY軸方向に移動させるY軸方向移動機構12を備えている。
【0026】
Y軸方向移動機構12は、門型コラム14の前面に配設されている。Y軸方向移動機構12は、Y軸方向に沿って、第1切削ユニット18を含む第1Z軸方向移動機構16、および、第2切削ユニット19を含む第2Z軸方向移動機構17を往復移動させる。
【0027】
Y軸方向移動機構12は、Y軸方向に延びる一対のガイドレール121、ガイドレール121に取り付けられた第1Y軸テーブル123および第2Y軸テーブル125、ガイドレール121と平行に延びる第1ボールネジ120および第2ボールネジ122、第1ボールネジ120を回転させる第1モータ124、ならびに、第2ボールネジ122を回転させる第2モータ(図示せず)を含んでいる。
【0028】
一対のガイドレール121は、Y軸方向に平行に、門型コラム14の前面に配置されている。第1Y軸テーブル123および第2Y軸テーブル125は、一対のガイドレール121上に、これらのガイドレール121に沿ってスライド可能に設置されている。第1Y軸テーブル123上には、第1Z軸方向移動機構16および第1切削ユニット18が取り付けられている。第2Y軸テーブル125上には、第2Z軸方向移動機構17および第2切削ユニット19が取り付けられている。
【0029】
第1ボールネジ120は、第1Y軸テーブル123に設けられたナット部(図示せず)に螺合されている。第1モータ124は、第1ボールネジ120の一端部に連結されており、第1ボールネジ120を回転駆動する。第1ボールネジ120が回転駆動されることで、第1Y軸テーブル123、第1Z軸方向移動機構16および第1切削ユニット18が、ガイドレール121に沿ってY軸方向に移動する。
【0030】
同様に、第2ボールネジ122は、第2Y軸テーブル125のナット部(図示せず)に螺合されており、その一端部に連結された第2モータによって回転駆動される。これにより、第2Y軸テーブル125、第2Z軸方向移動機構17および第2切削ユニット19が、ガイドレール121に沿ってY軸方向に移動する。
【0031】
第1Z軸方向移動機構16は、第1切削ユニット18をZ軸方向に往復移動させる。第1Z軸方向移動機構16は、Z軸方向に延びる一対のガイドレール161、ガイドレール161に配置された支持部材163、ガイドレール161と平行に延びるボールネジ160、および、ボールネジ160を回転させるモータ162を含んでいる。
【0032】
一対のガイドレール161は、Z軸方向に平行に、第1Y軸テーブル123に配置されている。支持部材163は、一対のガイドレール161上に、これらのガイドレール161に沿ってスライド可能に設置されている。支持部材163の下端部には、第1切削ユニット18が取り付けられている。
【0033】
ボールネジ160は、支持部材163に設けられたナット部(図示せず)に螺合されている。モータ162は、ボールネジ160の一端部に連結されており、ボールネジ160を回転駆動する。ボールネジ160が回転駆動されることで、支持部材163および第1切削ユニット18が、ガイドレール161に沿ってZ軸方向に移動する。
【0034】
第2Z軸方向移動機構17も、第2切削ユニット19をZ軸方向に往復移動させる。第2Z軸方向移動機構17は、第1Z軸方向移動機構16と同様の構成を有しているため、その説明を省略する。
【0035】
第1切削ユニット18および第2切削ユニット19は、チャックテーブル20に保持されたウェーハ100を加工する加工ユニットの一例である。
第1切削ユニット18は、チャックテーブル20に保持されたウェーハ100を切削するものであり、切削ブレード181および撮像ユニット182を有している。撮像ユニット182は、チャックテーブル20の保持面22に保持されたウェーハ100を撮像して、ウェーハ100の切削部位である外周面取り部105を検出する。切削ブレード181は、ウェーハ100の外周面取り部105を切削するために用いられる。
【0036】
第2切削ユニット19も、第1切削ユニット18と同様に、チャックテーブル20に保持されたウェーハ100を切削するものである。第2切削ユニット19は、第1切削ユニット18と同様の構成を有しているため、その説明を省略する。
【0037】
また、第1Z軸方向移動機構16および第2Z軸方向移動機構17における支持部材163の下端部には、支持アーム40を介して、高さ測定ユニット30が取り付けられている。
【0038】
高さ測定ユニット30は、第1切削ユニット18および第2切削ユニット19に隣接するように配置されている。高さ測定ユニット30は、第1切削ユニット18および第2切削ユニット19とともに、Y軸方向移動機構12、第1Z軸方向移動機構16および第2Z軸方向移動機構17を含む切削ユニット移動機構13によって、Y軸方向およびZ軸方向に移動されることが可能である。
【0039】
そして、高さ測定ユニット30は、チャックテーブル20に保持されたウェーハ100の高さを測定するように構成されている。
具体的には、高さ測定ユニット30は、たとえば、
図2に示すように、筐体35内に配置されてレーザ光Lを照射する照射部31、照射部31のY軸方向に沿う位置を調整する位置調整部32、照射部31からのレーザ光Lの照射を制御する発振部36、および、レーザ光Lの反射光を受光する受光部37を有している。
【0040】
位置調整部32は、Y軸方向に延びるボールネジ33、および、ボールネジ33を回転させるモータ34を含んでいる。ボールネジ33は、照射部31に設けられたナット部(図示せず)に螺合されている。モータ34がボールネジ33を回転駆動することで、照射部31が、Y軸方向に移動する。
【0041】
このような構成を有する高さ測定ユニット30は、たとえば、
図2に示すように、チャックテーブル20の保持面22に保持されているウェーハ100の外周面取り部105の近傍、および、枠体23の上面である枠体面24に、照射部31からレーザ光Lを照射する。そして、高さ測定ユニット30は、レーザ光Lの反射光に基づいて、枠体面24の高さと、ウェーハ100における外周面取り部105の近傍の高さ、すなわち、ウェーハ100における外周端部(外周面取り部105の外縁)から所定距離内側の位置の高さを測定することができる。
【0042】
また、
図1に示すように、切削装置1は、図示しない筐体に取り付けられたタッチパネル8を備えている。タッチパネル8には、切削装置1に関する各種情報が表示される。また、タッチパネル8は、各種情報を設定するためにも用いられる。このように、タッチパネル8は、情報を表示するための表示部材として機能するとともに、情報を入力するための入力部材としても機能する。
【0043】
また、タッチパネル8の近傍には、作業者に対して音声によって情報を伝達するスピーカー9が備えられている。
【0044】
また、切削装置1には、制御ユニット7が設けられている。制御ユニット7は、制御プログラムに従って演算処理を行うCPU、および、メモリ等の記憶媒体等を備えている。制御ユニット7は、各種の処理を実行し、切削装置1の各構成要素を制御する。
【0045】
また、制御ユニット7は、高さ分布算出部71、変化率算出部72、判定部73、および、エラー報知部74を備えており、これらを用いて、ウェーハ100の表面における異物の検知を実施しながら、ウェーハ100に対する研削を実施する。
【0046】
以下に、制御ユニット7によって制御されるウェーハ100に対する切削方法について説明する。この切削方法は、ウェーハ100の外周面取り部105を切削する切削方法である。
【0047】
(1)保持ステップ
このステップでは、ウェーハ100を、保持面22を有するチャックテーブル20によって保持する。すなわち、このステップでは、作業者あるいは図示しない搬送装置が、保持部2のチャックテーブル20における保持面22上に、ウェーハ100を載置する。そして、制御ユニット7が、図示しない吸引源を制御して、保持面22に吸引力を伝達する。これにより、保持面22によってウェーハ100が吸引保持される。
【0048】
(2)高さ分布算出ステップ
次に、制御ユニット7は、X軸方向移動機構11、切削ユニット移動機構13およびθテーブル25を制御して、
図3に示すように、高さ測定ユニット30の位置を、高さ測定ユニット30からのレーザ光Lがウェーハ100の外周面取り部105およびその近傍に照射されるように設定する。
【0049】
その後、制御ユニット7の高さ分布算出部71が、θテーブル25を制御してチャックテーブル20を少なくとも1周回転させながら、高さ測定ユニット30を用いて、ウェーハ100の外周に沿って、ウェーハ100の外周端部から所定距離だけ内側の位置の高さを、ウェーハ100の外周の高さとして測定する。これによって、高さ分布算出部71は、ウェーハ100の外周の高さ分布データを算出する。この高さ分布データは、「ウェーハ100の外周に沿った、ウェーハ100の高さの分布」を示すデータである。
【0050】
ここで、ウェーハ100に付着した異物と高さ分布データとの関係の一例について説明する。
図4(a)に示すように、ウェーハ100の外周における表面101の一部に異物Fが付着している場合、測定されるウェーハ100の外周の高さTaは、異物Fが付着している部分でだけ高くなる。このため、高さ分布算出部71によって算出される高さ分布データも、
図5のグラフ(a)に示すように、異物F対応する測定点およびその近傍のみにおいて局所的に大きくなる。
【0051】
一方、
図4(b)に示すように、ウェーハ100の外周における裏面102の一部に異物Fが付着している場合、すなわち、チャックテーブル20の保持面22上に異物がある場合、測定されるウェーハ100の外周の高さTbは、異物Fが付着している部分に向かって、だんだんと高くなる。このため、高さ分布算出部71によって算出される高さ分布データも、
図5のグラフ(b)に示すように、異物F対応する測定点に向かってなだらかに大きくなる。
【0052】
(3)変化率算出ステップ
次に、制御ユニット7の変化率算出部72が、高さ分布算出ステップにおいて高さ分布算出部71によって算出された高さ分布データに基づいて、ウェーハ100における外周の高さの変化率である高さ変化率を算出する。
【0053】
この際、変化率算出部72は、高さ分布データに基づいて、ウェーハ100の外周における複数の測定点での高さを取得する。そして、変化率算出部72は、高さ変化率を、たとえば、以下の(1)式を用いて求める。
高さ変化率=((高さの変化量)/(測定点間の距離))×100%
ここで、高さの変化量は、たとえば、「測定点間における、測定された高さの差」を意味する。また、測定点間の距離は、たとえば、「ウェーハ100の外周に沿った、測定点間の距離」である。
【0054】
たとえば、ウェーハ100の外周に、4つの測定点A~Dが、この順で並ぶように設定されているとする。そして、測定点A~Dにおけるウェーハ100の外周上での位置が、それぞれ、rA,rB,rc,rDであり、測定点A~Dにおいて測定された高さが、それぞれ、HA,HB,Hc,HDであるとする。
【0055】
この場合、A-B間の高さ変化率、B-C間の高さ変化率、およびC-D間の高さ変化率は、A-B間の高さの変化量(HB-HA)、B-C間の高さの変化量(HC-HB)、C-D間の高さの変化量(HD-HC)、A-B間の距離(rB-rA)、B-C間の距離(rC-rB)、およびC-D間の距離(rD-rC)を用いて、それぞれ、以下のように算出される。
A-B間の高さ変化率=((HB-HA)/(rB-rA))×100%
B-C間の高さ変化率=((HC-HB)/(rC-rB))×100%
C-D間の高さ変化率=((HD-HC)/(rD-rC))×100%
【0056】
(4)判定ステップ
次に、制御ユニット7の判定部73が、変化率算出部72によって算出された高さ変化率と、所定のしきい値との比較結果に基づいて、ウェーハ100の裏面102に異物があるか否かを判定する。
【0057】
本実施形態では、判定部73の判定に関して、比較的に小さい第1しきい値と、比較的に大きい第2しきい値とが設定されている。判定部73は、これら2つのしきい値を用いて、ウェーハ100に異物が付着していないこと、ウェーハ100の表面101に異物が付着していること、および、ウェーハ100の裏面102に異物が付着していること、を判定する。
【0058】
以下に、判定部73による判定例を、上述した4つの測定点A~Dの例を用いて説明する。
ウェーハ100に異物が付着していない場合、
図6に示すように、4つの測定点A~Dにおいて測定された高さH
A,H
B,H
c,H
Dは、実質的に同じ値となる。したがって、この場合、A-B間の高さ変化率、B-C間の高さ変化率、およびC-D間の高さ変化率の最大値は、非常に小さくなり、比較的に小さい第1のしきい値よりも小さくなる。したがって、判定部73は、変化率算出部72によって求められた高さ変化率の最大値が第1のしきい値よりも小さい場合に、ウェーハ100に異物が付着していないと判定する。
【0059】
また、ウェーハ100の表面101における測定点Dの近傍に、異物が付着しているとする。この場合、
図4および
図5を用いて説明したように、ウェーハ100の外周の高さは、異物のある付近において局所的に大きくなる。したがって、この場合、
図7に示すように、測定されるウェーハ100の外周の高さは、測定点Dおよびその近傍の測定点Cにおいて局所的に大きくなる一方、測定点Dから離れている測定点AおよびBでは小さくなる。このため、A-B間の高さ変化率、B-C間の高さ変化率、およびC-D間の高さ変化率の最大値は、比較的に大きい第2のしきい値よりも大きくなる。したがって、判定部73は、変化率算出部72によって求められた高さ変化率の最大値が第2のしきい値よりも大きい場合に、ウェーハ100の表面101に異物が付着していると判定する。
【0060】
また、ウェーハ100の裏面102における測定点Dの近傍に、異物が付着しているとする。この場合、
図4および
図5を用いて説明したように、ウェーハ100の外周の高さは、異物が付着している部分に向かって、だんだんと高くなる。したがって、この場合、
図8に示すように、測定されるウェーハ100の外周の高さは、測定点Dに向かってなだらかに大きくなるように変化する。このため、A-B間の高さ変化率、B-C間の高さ変化率、およびC-D間の高さ変化率の最大値は、第1のしきい値よりは大きい一方、第2のしきい値よりは小さくなる。したがって、判定部73は、変化率算出部72によって求められた高さ変化率の最大値が、第1のしきい値よりは大きい一方、第2のしきい値よりは小さくなる場合に、ウェーハ100の裏面102に異物がある(すなわち、チャックテーブル20の保持面22上に異物がある)と判定する。
【0061】
(5)処理ステップ
次に、制御ユニット7のエラー報知部74が、判定部73の判定結果に基づいてエラー報知を制御する。たとえば、判定部73がウェーハ100の裏面102に異物があると判定した場合、エラー報知部74は、作業者に対してエラーを報知する。すなわち、エラー報知部74は、ウェーハ100の裏面102に異物が付着していることを、作業者に対して、
図1に示したスピーカー9を用いて音声(たとえばアラーム)によって報知(通知)するとともに、タッチパネル8を用いて文字および/または画像によって報知する。そして、制御ユニット7は、たとえば、ウェーハ100に対する切削方法を終了する。
【0062】
一方、判定部73がウェーハ100に異物が付着していないと判定した場合には、エラー報知部74は、たとえば、エラーの報知を実施しない。そして、この場合、制御ユニット7が、切削装置1における上述した各構成部材を制御して、ウェーハ100の外周面取り部105の切削を実施する。すなわち、制御ユニット7は、θテーブル25によってチャックテーブル20を回転させながら、第1切削ユニット18あるいは第2切削ユニット19における回転する切削ブレード181によって、ウェーハ100の外周面取り部105を、周方向に沿って切削する。
【0063】
さらに、判定部73がウェーハ100の表面101に異物が付着していると判定した場合には、エラー報知部74は、たとえば、その旨を、タッチパネル8を用いて作業者に報知する。そして、制御ユニット7は、たとえば、ウェーハ100に異物が付着していない場合と同様に、切削装置1の各構成部材を制御して、ウェーハ100の外周面取り部105の切削を実施する。
【0064】
以上のように、本実施形態では、ウェーハ100の外周の高さを測定して高さ分布データを算出し、ウェーハ100の外周の高さ変化率を算出している。そして、高さ変化率としきい値との比較結果に基づいて、ウェーハ100の裏面102に異物があるか否か、すなわち、チャックテーブル20の保持面22上に異物があるか否かを判定している。したがって、本実施形態では、保持面22に異物が付着していることを、良好に検出することができる。
【0065】
また、本実施形態では、ウェーハ100の裏面102に異物がある場合に、タッチパネル8およびスピーカー9を含む報知部材を用いて、その旨を作業者に報知している。したがって、本実施形態は、保持面22に異物が付着していることを作業者に対して良好に伝達することができる。さらに、本実施形態では、この場合に、制御ユニット7が、研削動作を終了している。したがって、保持面22に異物が付着している状態で切削加工が実施されることを、良好に回避することが可能である。
【0066】
さらに、本実施形態では、判定部73が、第1のしきい値および第2のしきい値からなる2つのしきい値を用いて、ウェーハ100に異物が付着していないこと、ウェーハ100の表面101に異物が付着していること、および、ウェーハ100の裏面102に異物が付着していること、を判定している。したがって、本実施形態では、ウェーハ100に異物が付着していることに加えて、異物が付着している部位(表面101あるいは裏面102)を判定することも可能である。
【0067】
なお、これに関し、判定部73は、1つのしきい値を用いて、ウェーハ100の裏面102に異物が付着しているか否かを判定するように構成されていてもよい。この場合、判定部73は、変化率算出部72によって算出された高さ変化率の最大値がしきい値よりも大きい場合に、ウェーハ100の裏面102に異物があると判定する一方、高さ変化率の最大値がしきい値以下である場合に、ウェーハ100の裏面102に異物がないと判定するように構成されていてもよい。
【0068】
また、変化率算出部72は、変化率算出ステップにおいて、高さ分布データから局所的に高くなっているデータ(測定点および測定された高さ)を抽出し、抽出したデータおよびその前後のデータを用いて、厚み変化率を算出するように構成されていてもよい。この構成では、ウェーハ100における異物が付着していると考えられる部分に注目して、厚み変化率を算出することができる。したがって、ウェーハ100に対する異物の付着を判定するために有用な厚み変化率を、効率的に算出することができる。
【符号の説明】
【0069】
1:切削装置,2:保持部,7:制御ユニット,8:タッチパネル,9:スピーカー,
10:基台,11:X軸方向移動機構,12:Y軸方向移動機構,
13:切削ユニット移動機構,14:門型コラム,16:第1Z軸方向移動機構,
17:第2Z軸方向移動機構,18:第1切削ユニット,19:第2切削ユニット,
20:チャックテーブル,21:保持部材,22:保持面,23:枠体,24:枠体面,
25:θテーブル,30:高さ測定ユニット,31:照射部,32:位置調整部,
33:ボールネジ,34:モータ,35:筐体,36:発振部,37:受光部,
40:支持アーム,71:高さ分布算出部,72:変化率算出部,73:判定部,
74:エラー報知部,
100:ウェーハ,101:表面,102:裏面,
103:デバイス,105:外周面取り部,
110:ボールネジ,111:ガイドレール,112:モータ,113:X軸テーブル,
120:第1ボールネジ,121:ガイドレール,122:第2ボールネジ,
123:第1Y軸テーブル,124:第1モータ,125:第2Y軸テーブル,
160:ボールネジ,161:ガイドレール,162:モータ,163:支持部材,
181:切削ブレード,182:撮像ユニット