IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東京エレクトロン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-成膜方法及び成膜装置 図1
  • 特開-成膜方法及び成膜装置 図2
  • 特開-成膜方法及び成膜装置 図3
  • 特開-成膜方法及び成膜装置 図4
  • 特開-成膜方法及び成膜装置 図5
  • 特開-成膜方法及び成膜装置 図6
  • 特開-成膜方法及び成膜装置 図7
  • 特開-成膜方法及び成膜装置 図8
  • 特開-成膜方法及び成膜装置 図9
  • 特開-成膜方法及び成膜装置 図10
  • 特開-成膜方法及び成膜装置 図11
  • 特開-成膜方法及び成膜装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106552
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/38 20060101AFI20240801BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20240801BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240801BHJP
   H01L 21/318 20060101ALN20240801BHJP
   H01L 21/316 20060101ALN20240801BHJP
【FI】
C23C16/38
C23C16/455
H01L21/31 B
H01L21/318 B
H01L21/316 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010861
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藤田 成樹
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA07
4K030AA12
4K030AA14
4K030AA18
4K030BA18
4K030BA26
4K030BA38
4K030BA39
4K030BA42
4K030BA46
4K030CA11
4K030FA01
4K030HA01
4K030JA05
4K030JA09
4K030JA10
4K030JA11
4K030KA05
4K030KA30
5F045AA06
5F045AA08
5F045AA15
5F045AB34
5F045AB40
5F045AC00
5F045AC01
5F045AC02
5F045AC07
5F045AC11
5F045AC12
5F045AC15
5F045AC16
5F045AD05
5F045AD06
5F045AD07
5F045AD08
5F045AE17
5F045AE19
5F045AE21
5F045AE23
5F045AF12
5F045BB19
5F045DP03
5F045EE17
5F045EF05
5F045EH05
5F045EH13
5F045EK07
5F058BA09
5F058BB05
5F058BB06
5F058BC10
5F058BC12
5F058BC20
5F058BD13
5F058BD16
5F058BF04
5F058BF07
5F058BF37
5F058BJ02
5F058BJ06
(57)【要約】
【課題】基板表面の凹部の内部に膜を形成する、技術を提供する。
【解決手段】成膜方法は、凸部と前記凸部の頂面から凹む凹部とを表面に有する基板を準備することと、前記凹部の内部に比べて前記凸部の頂面に、ボロンを含有する第1膜を厚く形成することと、前記第1膜の形成後に、前記基板の前記表面に対して、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する原料ガスと、前記原料ガスの吸着物と反応する反応ガスとを交互に又は同時に供給することで、前記元素Xを含有する第2膜を前記凸部の頂面に比べて前記凹部の内部に厚く形成することと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸部と前記凸部の頂面から凹む凹部とを表面に有する基板を準備することと、
前記凹部の内部に比べて前記凸部の頂面に、ボロンを含有する第1膜を厚く形成することと、
前記第1膜の形成後に、前記基板の前記表面に対して、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する原料ガスと、前記原料ガスの吸着物と反応する反応ガスとを交互に又は同時に供給することで、前記元素Xを含有する第2膜を前記凸部の頂面に比べて前記凹部の内部に厚く形成することと、
を有する、成膜方法。
【請求項2】
前記第1膜は、前記凸部の頂面だけではなく前記凹部の内部にも形成され、前記凹部の内部に比べて前記凸部の頂面に厚く形成される、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記第1膜の形成と前記第2膜の形成とを有する第1サイクルを複数回繰り返す、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記第2膜の一部をエッチングすることを有する、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記第1膜の形成と前記第2膜の形成と前記第2膜のエッチングとを有する第2サイクルを複数回繰り返す請求項4に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記元素Xは、金属元素を含む、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記元素Xは、遷移金属元素を含む、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記元素Xは、半導体元素を含む、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記第2膜を形成することは、前記原料ガスと前記反応ガスとを交互に供給することを含み、前記反応ガスをプラズマ化して供給することを含む、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記第2膜の形成は、前記元素Xとして元素X1を含む前記原料ガスの供給と、前記元素Xとして前記元素X1とは異なる元素X2を含む前記原料ガスの供給と、前記反応ガスの供給とをこの順番で含む処理を1回以上行う、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記第2膜の形成は、前記元素Xとして元素X1を含む前記原料ガスの供給と、前記反応ガスの供給とをこの順番で含む処理を1回以上行い、また、前記元素Xとして前記元素X1とは異なる元素X2を含む前記原料ガスの供給と、前記反応ガスの供給とをこの順番で含む処理を1回以上行う、請求項1又は2に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記凸部と前記凹部とを表面に有する基板を収容する処理容器と、
前記処理容器の内部で前記基板を保持する保持部と、
前記保持部に保持されている前記基板の前記表面に対してガスを供給するガス供給部と、
前記ガス供給部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、請求項1又は2に記載の成膜方法を実施する制御を行う、成膜装置。
【請求項13】
前記凸部と前記凹部とを表面に有する基板を収容する処理容器と、
前記処理容器の内部で前記基板を保持する保持部と、
前記保持部に保持されている前記基板の前記表面に対してガスを供給するガス供給部と、
前記ガスをプラズマ化するプラズマ生成部と、
前記ガス供給部と前記プラズマ生成部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、請求項9に記載の成膜方法を実施する制御を行う、成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の窒化膜の形成方法は、第1の下地膜と第2の下地膜の表面に塩素ガスを吸着させる工程と、塩素ガスを吸着させた第1の下地膜と第2の下地膜の一方に対して選択的に窒化膜を形成する工程と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-174919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、基板表面の凹部の内部に膜を形成する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様の成膜方法は、凸部と前記凸部の頂面から凹む凹部とを表面に有する基板を準備することと、前記凹部の内部に比べて前記凸部の頂面に、ボロンを含有する第1膜を厚く形成することと、前記第1膜の形成後に、前記基板の前記表面に対して、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する原料ガスと、前記原料ガスの吸着物と反応する反応ガスとを交互に又は同時に供給することで、前記元素Xを含有する第2膜を前記凸部の頂面に比べて前記凹部の内部に厚く形成することと、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、基板表面の凹部の内部に膜を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。
図2図2は、図1に示す成膜方法の具体例を示すフローチャートである。
図3図3は、S101~S103の一例を示す断面図である。
図4図4は、2回目の第1サイクルにおけるS102~S103の一例を示す断面図である。
図5図5は、変形例に係る成膜方法を示すフローチャートである。
図6図6は、1回目の第2サイクルにおけるS104及び2回目の第2サイクルにおけるS102~S103の一例を示す図である。
図7図7は、S103の変形例を示すフローチャートである。
図8図8は、S103の別の変形例を示すフローチャートである。
図9図9は、一実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
図10図10は、例1の処理後の基板を示すSEM写真である。
図11図11は、例2の処理後の基板を示すSEM写真である。
図12図12は、例3の処理後の基板を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0009】
先ず、図1図4を参照して、一実施形態に係る成膜方法について説明する。成膜方法は、例えば図1に示すステップS101~S103及びS105を有する。ステップS104については後述する。成膜方法は、図1に示すステップS101~S103及びS105以外のステップを有してもよい。
【0010】
ステップS101は、基板Wを準備することを含む(図3参照)。基板Wは、例えば、第1下地膜W1と、第1下地膜W1の上に形成された第2下地膜W2と、を有する。第1下地膜W1と第2下地膜W2は、この順番で、不図示の下地基板の上に形成される。下地基板は、シリコンウェハ、又は化合物半導体ウェハである。化合物半導体ウェハは、例えばGaAsウェハ、SiCウェハ、GaNウェハ、又はInPウェハである。
【0011】
第1下地膜W1と第2下地膜W2は、ボロン(B)を実質的に含有しない。Bを実質的に含有しないとは、B含有量が0原子%~5原子%であることをいう。第1下地膜W1と第2下地膜W2におけるB含有量は、少ないほど好ましい。第1下地膜W1と第2下地膜W2は、絶縁膜、導電膜、半導体膜のいずれでもよい。なお、第1下地膜W1が無くてもよく、第2下地膜W2は下地基板の表面に直接形成されてもよい。
【0012】
第1下地膜W1又は第2下地膜W2としての絶縁膜は、特に限定されないが、例えばSiO膜、SiN膜、SiOC膜、SiON膜、SiOCN膜、AlO膜、ZrO膜、HfO膜、又はTiO膜である。ここで、SiO膜とは、シリコン(Si)と酸素(O)を含む膜という意味である。SiO膜におけるSiとOの原子比は、通常1:2であるが、1:2には限定されない。SiN膜、SiOC膜、SiON膜、SiOCN膜、AlO膜、ZrO膜、HfO膜、及びTiO膜についても同様に各元素を含むという意味であり、化学量論比には限定されない。絶縁膜は、例えば層間絶縁膜である。層間絶縁膜は、好ましくは低誘電率(Low-k)膜である。
【0013】
第1下地膜W1又は第2下地膜W2としての半導体膜は、特に限定されないが、例えばSi膜、SiGe膜、GaN膜である。半導体膜は、単結晶膜、多結晶膜、及びアモルファス膜のいずれでもよい。
【0014】
第1下地膜W1又は第2下地膜W2としての導電膜は、例えば金属膜である。金属膜は、特に限定されないが、例えば、Cu膜、Co膜、Ru膜、Mo膜、W膜、又はTi膜である。導電膜は、金属窒化膜であってもよい。金属窒化膜は、特に限定されないが、例えばTiN膜、又はTaN膜である。ここで、TiN膜とは、チタン(Ti)と窒素(N)を含む膜という意味である。TiN膜におけるTiとNの原子比は、通常1:1であるが、1:1には限定されない。TaN膜についても同様に各元素を含むという意味であり、化学量論比には限定されない。
【0015】
基板Wは、その表面WAに、凸部WA1と、凸部WA1の頂面から凹む凹部WA2とを有する。凹部WA2は、例えば側面WA2aと底面WA2bとを含む。第2下地膜W2に開口パターンを形成することで、凸部WA1と凹部WA2とが形成される。凸部WA1の頂面と凹部WA2の側面WA2aは第2下地膜W2で形成され、凹部WA2の底面WA2bは第1下地膜W1で形成される。なお、第1下地膜W1が無い場合、凹部WA2の底面WA2bは下地基板で形成される。また、第2下地膜W2の開口部は、第2下地膜W2を貫通しているが、貫通していなくてもよい。この場合、凹部WA2の底面WA2bは、第2下地膜W2で形成される。
【0016】
ステップS102は、凹部WA2の内部に比べて凸部WA1の頂面に、ボロンを含有する第1膜W3を厚く形成することを含む(図3参照)。第1膜W3は、ALD(Atomic Layer Deposition)法またはCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成され、基板Wの表面WAにガスを供給することで形成する。ガスは、凹部WA2の内部に比べて、凸部WA1の頂面に供給されやすい。従って、凹部WA2の内部に比べて凸部WA1の頂面に第1膜W3を厚く形成することが可能である。第1膜W3は、凹凸パターンに沿って形成され、凸部WA1の頂面だけではなく凹部WA2の内部にも形成され、凹部WA2の内部に比べて凸部WA1の頂面に厚く形成される。なお、第1膜W3は、図3では凹凸パターンの全面に形成されるが、凹部WA2の側面WA2aの下部、及び凹部WA2の底面WA2bには形成されなくてもよい。
【0017】
第1膜W3におけるB含有量は、例えば20原子%~100原子%であり、好ましくは40原子%~100原子%である。第1膜W3は、例えば、B膜、BN膜、BNC膜、BO膜、BNOC膜、SiBN膜、SiBCN膜又はSiOBN膜である。ここで、BN膜とは、ボロン(B)と窒素(N)を含む膜という意味である。BN膜におけるBとNの原子比は1:1には限定されない。BN膜以外のBNC膜等についても同様に各元素を含むという意味であり、化学量論比には限定されない。
【0018】
ステップS102は、図2に示すように、例えばステップS102a~S102eを有する。なお、ステップS102は、ステップS102a及びS102cを有すればよく、ステップS102b、S102d及びS102eを有しなくてもよい。以下、ステップS102a~S102eについて説明する。
【0019】
ステップS102aは、基板Wの表面に対して第2原料ガスを供給することを含む。第2原料ガスは、ボロンを含有する。第2原料ガスは、例えばトリスジメチルアミノボラン(TDMAB:C18BN)を含む。第2原料ガスは、希釈ガスと共に供給してもよい。希釈ガスは、例えばArガス又はNガスである。
【0020】
なお、第2原料ガスは、TDMABを含むものには限定されず、例えば、ジボラン(B)、三塩化ホウ素(BCl)、三フッ化ホウ素(BF)、トリスエチルメチルアミノボラン(C24BN)、トリメチルボラン(CB)、又はトリエチルボラン(C15B)、シクロトリボラザン(B)等を含むものであってもよい。
【0021】
ステップS102bは、基板Wの表面に対してパージガスを供給することを含む。パージガスは、上記ステップS102aで基板Wの表面WAに吸着しなかった余剰の第2原料ガスをパージする。パージガスとしては、例えば、Arガス等の希ガス又はNガスが用いられる。
【0022】
ステップS102cは、基板Wの表面に対して第2反応ガスを供給することを含む。第2反応ガスは、例えば窒素を含有し、吸着した第2原料ガスを窒化することで、第1膜W3(例えばBN膜)を形成する。第2反応ガスは、例えばNガスとHガスの混合ガス、又はNHガスを含む。第2反応ガスは、希釈ガスと共に供給してもよい。希釈ガスは、例えばArガス又はNガスである。
【0023】
なお、第2反応ガスは、窒素含有ガス、酸素含有ガス、及び還元性ガスの少なくとも1つを含めばよい。窒素含有ガスは、第2原料ガスを窒化することで、窒化ボロン膜を形成する。窒素含有ガスは、例えばNH、N、N又はNを含む。酸素含有ガスは、第2原料ガスを酸化することで、酸化ボロン膜を形成する。酸素含有ガスは、例えばO、O、HO、NO又はNOを含む。還元性ガスは、第2原料ガスを還元することで、ボロン膜を形成する。還元性ガスは、例えばH、SiH又はHSガスを含む。
【0024】
ステップS102cは、第2反応ガスをプラズマ化することを含んでもよく、プラズマ化した第2反応ガスを基板Wの表面WAに対して供給することを含んでもよい。第2反応ガスをプラズマ化することで、第1膜W3の形成を促進できる。
【0025】
なお、第2反応ガスは、上記ステップS102cのみならず、ステップS102a~S102dの全てで供給してもよい。但し、第2反応ガスのプラズマ化は、上記ステップS102cのみで実施される。第2反応ガスは、プラズマ化されることで、基板Wの表面に吸着した第2原料ガスとの反応が促進されるようになるからである。
【0026】
ステップS102dは、基板Wの表面に対してパージガスを供給することを含む。パージガスは、上記ステップS102cで基板Wの表面WAと反応しなかった余剰の第2反応ガスをパージする。パージガスとしては、例えば、Arガス等の希ガス又はNガスが用いられる。
【0027】
ステップS102eでは、上記ステップS102a~S102dをK(Kは1以上の整数)回実施したか否かを確認する。Kは2以上の整数であってもよく、上記ステップS102a~S102dが繰り返し実施されてもよい。凸部WA1の頂面における第1膜W3の膜厚を厚くすることができる。
【0028】
上記ステップS102a~S102dの実施回数がK回未満である場合(ステップS102e、NO)、第1膜W3の膜厚が目標値未満であるので、上記ステップS102a~S102dを再度実施する。凸部WA1の頂面における第1膜W3の膜厚の目標値は、好ましくは300Å以下であり、より好ましくは100Å以下であり、更に好ましくは50Å以下である。
【0029】
第1膜W3は、ステップS103で第2膜W4の形成を阻害するものであり、凸部WA1の頂面において下地膜W2が露出しない程度に厚く形成されていることが望ましい。第1膜W3は、下地膜W2の表面上で核が成長し、隣り合う核同士が接触することで膜となると考えられる。核が十分な大きさになるまで、下地膜W2が露出する部分が分散して存在すると考えられる。したがって、凸部WA1の頂面における第1膜W3の膜厚は、好ましくは10Å以上である。第1膜W3の膜厚が10Å未満の場合には、下地膜W2が露出する部分が存在し、第2膜W4の形成を阻害する効果が弱まると考えられる。
【0030】
一方、上記ステップS102a~S102dの実施回数がK回に達した場合(ステップS102e、YES)、凸部WA1の頂面における第1膜W3の膜厚が目標値に達しているので、今回のステップS102が終了する。
【0031】
なお、図2に示す第1膜W3の形成方法は、ALD法であるが、CVD法であってもよい。ALD法では、第2原料ガスの供給と、第2反応ガスの供給とを交互に行う。一方、CVD法では、第2原料ガスの供給と、第2反応ガスの供給とを同時に行う。
【0032】
なお、第1膜W3は、分子が化学吸着または物理吸着した分子膜であってもよい。分子は、ガスの状態で基板表面に供給される。ガスは、分子中に基板表面に吸着しやすい官能基を有し、且つ分子中にボロン(B)を含む。ガスを短時間供給することで、凹部WA2の内部に比べて凸部WA1の頂面に第1膜W3を厚く形成することができる。第1膜W3は、吸着した分子が基板Wの熱により分解したものであってもよい。
【0033】
ステップS103は、基板Wの表面に対して、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する原料ガスと、原料ガスの吸着物と反応する反応ガスとを交互に又は同時に供給することで、元素Xを含有する第2膜W4を凸部WA1の頂面に比べて凹部WA2の内部に厚く形成することを含む(図3参照)。第2膜W4は、凸部WA1の頂面にはほとんど形成されず、凹部WA2の内部に選択的に形成される。
【0034】
ステップS103は、図2に示すように、例えばステップS103a~S103eを有する。なお、ステップS103は、ステップS103a及びS103cを有すればよく、ステップS103b、S103d及びS103eを有しなくてもよい。以下、ステップS103a~S103eについて説明する。
【0035】
ステップS103aは、基板Wの表面に対して原料ガスを供給することを含む。原料ガスは、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素である。元素Xは、特に限定されないが、好ましくは金属元素であり、より好ましくは遷移金属元素である。元素Xは、例えばTi、W、V、Al、Mo、Sn、Hf、Ta、Nb、Zr、In、Ga又はSbである。原料ガスの具体例としては、TiClガス、WClガス、WFガス、VClガス、AlClガス、MoClガス、SnClガス、HfClガス、TaClガス、NbClガス、ZrClガス、InClガス、GaClガス又はSbClガスが挙げられる。元素Xは、半導体元素であってもよく、具体的にはSi又はGeであってもよい。原料ガスは、ハロゲン化シリコンガス又はハロゲン化ゲルマニウムガスである。ハロゲン化シリコンガスの具体例としては、SiClガス、SiHClガス、SiHClガス、SiHClガス、SiClガスSiHClガス、SiClCHガス、SiClCClガス、SiClCHガス、又はSiHガス等が挙げられる。ハロゲン化ゲルマニウムガスの具体例としては、GeClガス等が挙げられる。原料ガスは、希釈ガスと共に供給してもよい。希釈ガスは、例えばArガス又はNガスである。
【0036】
ステップS103bは、基板Wの表面に対してパージガスを供給することを含む。パージガスは、上記ステップS103aにおいて基板Wの表面に吸着しなかった余剰の原料ガスをパージする。パージガスとしては、例えば、Arガス等の希ガス又はNガスが用いられる。
【0037】
ステップS103cは、基板Wの表面に対して反応ガスを供給することを含む。ステップS103cは、反応ガスをプラズマ化することを含んでもよく、プラズマ化した反応ガスを基板Wの表面に対して供給することを含んでもよい。反応ガスは、基板Wの表面に吸着した原料ガスに含まれる元素Xと反応することで、元素Xを含有する第2膜W4を形成する。反応ガスとしては、酸素含有ガス、窒素含有ガス、又は水素含有ガスが挙げられる。酸素含有ガスは、酸素を含有し、元素Xの酸化膜を形成する。酸素含有ガスは、例えばOガス、Oガス、COガス、NOガス、NOガス、又はHOガスである。窒素含有ガスは、窒素を含有し、元素Xの窒化膜を形成する。窒素含有ガスは、例えばNHガス、又はNガスである。水素含有ガスは、水素を含有し、元素Xを主成分とする膜(例えば、金属膜又は半導体膜)を形成する。水素含有ガスは、例えばHガス、又はHSガスである。反応ガスは、希釈ガスと共に供給してもよい。希釈ガスは、例えばArガス又はNガスである。
【0038】
なお、反応ガスは、上記ステップS103cのみならず、ステップS103a~S103dの全てで供給してもよい。但し、反応ガスのプラズマ化は、上記ステップS103cのみで実施される。反応ガスは、プラズマ化されることで、基板Wの表面に吸着した原料ガスと反応しやすくなるからである。
【0039】
ステップS103dは、基板Wの表面に対してパージガスを供給することを含む。パージガスは、上記ステップS103cで基板Wの表面と反応しなかった余剰の反応ガスをパージする。パージガスとしては、例えば、Arガス等の希ガス又はNガスが用いられる。
【0040】
ステップS103eでは、上記ステップS103a~S103dをL(Lは1以上の整数)回実施したか否かを確認する。Lは2以上の整数であってもよく、上記ステップS103a~S103dが繰り返し実施されてもよい。第2膜W4の膜厚を厚くすることができる。
【0041】
上記ステップS103a~S103dの実施回数がL回未満である場合(ステップS103e、NO)、第2膜W4の膜厚が目標値未満であるので、上記ステップS103a~S103dを再度実施する。Lは、好ましくは200以上であり、より好ましくは300以上であり、更に好ましくは1000以上である。Lは、好ましくは10000以下である。
【0042】
一方、上記ステップS103a~S103dの実施回数がL回に達した場合(ステップS103e、YES)、第2膜W4の膜厚が目標値に達しているので、今回のステップS103が終了する。
【0043】
なお、図2に示す第2膜W4の形成方法は、ALD法であるが、CVD法であってもよい。ALD法では、原料ガスの供給と、反応ガスの供給とを交互に行う。一方、CVD法では、原料ガスの供給と、反応ガスの供給とを同時に行う。
【0044】
本実施形態によれば、ステップS103は、凸部WA1の頂面においてハロゲン化物の吸着または解離を阻害することで、凸部WA1の頂面に比べて凹部WA2の内部に厚く第2膜W4を形成することを含む。第2膜W4の形成を抑制するには、第1膜W3に対する原料ガスの吸着が弱く、その結果として、第1膜W3の上に吸着した原料ガスが成膜反応(第2膜W4の形成)を進めることなく脱離することが重要である。または、第1膜W3に対する原料ガスの吸着が起こらない、もしくは第1膜W3の表面で原料ガスの解離が生じにくいことが重要である。
【0045】
第1膜W3はボロンを含有しているので、第1膜W3の上ではハロゲン化物の吸着が弱いか、又はハロゲン化物の解離が生じにくいと考えられる。この傾向は、凸部WA1の頂面で顕著である。凸部WA1の頂面では、凹部WA2の内部に比べて、第1膜W3の膜厚が厚いからである。凹部WA2の内部において、第1膜W3の膜厚は薄く、下地膜W1又はW2の露出する部分(ボロンを実質的に含有しない部分)が分散して存在すると考えられる。凹部WA2の内部では、下地膜W1又はW2の露出する部分(ボロンを実質的に含有しない部分)が成膜の起点となり、第2膜W4の形成が進む。
【0046】
なお、凸部WA1の頂面において、本実施形態では第1膜W3が連続膜であって下地膜W2の露出する部分が存在しないが、下地膜W2の露出する部分が存在してもよい。凸部WA1の頂面における第1膜W3の平均膜厚が凹部WA2の内部における第1膜W3の平均膜厚に比べて厚ければよく、凸部WA1の頂面に下地膜W2の露出する部分が存在してもよい。凸部WA1の頂面において、凹部WA2の内部に比べて、第2膜W4の形成の開始を遅くできればよい。
【0047】
また、TiClなどのハロゲン化物は、Ti[N(CHなどの有機金属錯体に比べて、基板Wの熱によって分解(decompose)しにくい。原料ガスが第1膜W3に吸着した後に分解してしまうと、第2膜W4の形成が進んでしまう。従って、凸部WA1の頂面において第2膜W4の形成を抑制するには、第2膜W4の原料ガスとしては、ハロゲンを含有するガスが適している。
【0048】
さらに、ハロゲン化物と反応ガスを共にプラズマ化するプラズマCVD法では、ハロゲン化物が解離して生じるイオン又はラジカル等の活性種が発生する。ハロゲン化物から生じた活性種は反応性が大きく、凹部WA2の内部だけではなく、凸部WA1の頂面でも成膜反応が進みやすくなると考えられる。したがって、原料ガスをプラズマ化しないことが好ましく、熱ALD法、プラズマALD法、または熱CVD法を使用することが重要である。
【0049】
上記ステップS103a~S103dでは、凸部WA1の頂面において、原料ガスの第1膜W3からの脱離を促進すべく、基板Wの温度を100℃以上に制御してもよい。基板Wの温度が100℃未満である場合、凸部WA1の頂面において原料ガスの脱離が十分に起こらずに原料ガスが物理吸着してしまい、第2膜W4が凸部WA1の頂面にも形成されてしまう。基板Wの温度は、好ましくは300℃以上である。基板Wの温度は、好ましくは800℃以下である。
【0050】
ステップS105は、一連の処理をN(Nは1以上の整数)回実施したか否かを確認することを含む。一連の処理は、第1膜W3の形成(ステップS102)と第2膜W4の形成(ステップS103)とを有する。この一連の処理を、第1サイクルとも呼ぶ。第1サイクルの実施回数がN回未満である場合(ステップS105、NO)、第2膜W4の膜厚が不十分であるので、第1サイクルを再度実施する。一方、第1サイクルの実施回数がN回に達した場合(ステップS105、YES)、今回の処理が終了する。Nは、好ましくは2以上の整数である。Nが2以上の整数であれば、第1膜W3を補充しつつ、第2膜W4の膜厚を増加できる。
【0051】
次に、Nが2以上の整数である場合の成膜方法について、図4を参照して説明する。Nが2以上の整数である場合、第1サイクルが複数回繰り返し行われる。2回目以降の第1サイクルにおいても、1回目の第1サイクルと同様に、ステップS102は、凹部WA2の内部に比べて凸部WA1の頂面に、ボロンを含有する第1膜W3を厚く形成することを含む。第1膜W3は、凹凸パターンに沿って形成され、凸部WA1の頂面だけではなく凹部WA2の内部にも形成され、凹部WA2の内部に比べて凸部WA1の頂面に厚く形成される。
【0052】
また、2回目以降の第1サイクルにおいても、1回目の第1サイクルと同様に、ステップS103は、基板Wの表面に対して、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する原料ガスと、原料ガスの吸着物と反応する反応ガスとを交互に又は同時に供給することで、元素Xを含有する第2膜W4を凸部WA1の頂面に比べて凹部WA2の内部に厚く形成することを含む。第2膜W4は、凸部WA1の頂面にはほとんど形成されず、凹部WA2の内部に選択的に形成される。
【0053】
Nが2以上の整数である場合、図4に示すように、凹部WA2の内部において、第1膜W3と第2膜W4とが交互に積層される。なお、図4において、第1膜W3と第2膜W4とは凹部WA2の一部を埋めるが、凹部WA2の全体を埋めるように、Nが設定されてもよい。また、Nが2以上の整数である場合、ステップS102、S103の各処理条件は、毎回同じでもよいし、毎回異なってもよい。
【0054】
次に、図5図6を参照して、変形例に係る成膜方法について説明する。以下、主に相違点について説明する。本変形例の成膜方法は、ステップS101~S103及びS105に加えて、ステップS104を有する。第1膜W3の形成(ステップS102)と第2膜W4の形成(ステップS103)と第2膜W4のエッチング(ステップS104)とで、第2サイクルが構成される。なお、ステップS104において、第2膜W4のエッチングだけではなく、第1膜W3のエッチングも行われてもよい。
【0055】
ステップS104は、ステップS103の後に基板Wに対してエッチングガスを供給することで、第2膜W4の一部をエッチングすることを含む。第2膜W4は、凹部WA2の内部に凸部WA1の頂面に比べて厚く形成されており、凸部WA1の頂面およびその近傍(側面WA2aの上部)の第2膜W4を除去して、凹部WA2内のみに第2膜W4を残すことができる。
【0056】
エッチングガスは、第2膜W4を例えば図6に破線で示す状態から図6に実線で示す状態にエッチングする。凹部WA2の内部において、第2膜W4を平坦化できる。凹部WA2の内部において、第2膜W4の断面V字状の表面を構成する左右一対の傾斜面が閉じ合わされることを防止でき、第2膜W4の内部に空間が残ることを防止できる。
【0057】
なお、Nが2以上の整数である場合、2回目以降のサイクルにおいて、ステップS104はステップS102の後であってステップS103の前に行われてもよい。その場合、n(nは2以上の整数)回目のサイクルのステップS104では、凹部WA2の内部において、n回目のサイクルで形成された第1膜W3のエッチングと、(n-1)回目のサイクルで形成された第2膜W4のエッチングとが連続的に行われる。凸部WA1の頂面に、第1膜W3が残ればよい。その後に、ステップS103が行われる。
【0058】
また、Nが2以上の整数である場合、ステップS104は少なくとも1回のサイクルで行えばよい。さらに、Nが2以上の整数である場合、ステップS102、S103及びS104の各処理条件は、毎回同じでもよいし、毎回異なってもよい。
【0059】
エッチングガスは、例えばClFガス、Clガス、NFガス、又はCガスなどである。エッチングガスは、プラズマ化してもよい。なお、エッチングガスは、第2膜W4だけではなく、第1膜W3をもエッチングしてもよい。
【0060】
ステップS105においてNが2以上の整数である場合、第2サイクルが複数回繰り返し行われる。Nが2以上の整数である場合、図6に示すように、凹部WA2の内部において、第1膜W3と第2膜W4とが交互に積層される。なお、図6において、第1膜W3と第2膜W4とは凹部WA2の一部を埋めるが、凹部WA2の全体を埋めるように、Nが設定されてもよい。
【0061】
次に、図7を参照して、ステップS103の変形例について説明する。以下、主に相違点について説明する。ステップS103は、図7に示すように、元素Xとして元素X1を含む原料ガスの供給(ステップS103a1)と、元素Xとして元素X1とは異なる元素X2を含む原料ガスの供給(ステップS103a2)と、原料ガスの吸着物と反応する反応ガスの供給(ステップS103c)とをこの順番で含む処理を1回以上行う。
【0062】
なお、ステップS103a1とS103a2の間には、パージガスの供給(ステップS103b1)が行われてもよい。また、ステップS103a2とS103cの間には、パージガスの供給(ステップS103b2)が行われてもよい。
【0063】
次に、図8を参照して、ステップS103の別の変形例について説明する。以下、主に相違点について説明する。ステップS103は、図8に示すように、元素Xとして元素X1を含む原料ガスの供給(ステップS103a1)と、原料ガスの吸着物と反応する反応ガスの供給(ステップS103c1)をこの順番で含む処理を1回以上行う。また、ステップS103は、元素Xとして元素X1とは異なる元素X2を含む原料ガスの供給(ステップS103a2)と、原料ガスの吸着物と反応する反応ガスの供給(ステップS103c2)とをこの順番で含む処理を1回以上行う。
【0064】
なお、ステップS103a1とS103c1の間には、パージガスの供給(ステップS103b1)が行われてもよい。また、ステップS103c1の直後には、パージガスの供給(ステップS103d1)が行われてもよい。さらに、ステップS103a2とS103c2の間には、パージガスの供給(ステップS103b2)が行われてもよい。さらにまた、ステップS103c2の直後には、パージガスの供給(ステップS103d2)が行われてもよい。
【0065】
図8のステップS103e1において、Aは1以上の整数であればよく、2以上の整数であってもよい。Aが2以上の整数である場合、ステップS103a1、S103b1、S103c1及びS103d1が複数回繰り返し行われる。また、図8のステップS103e2において、Bは1以上の整数であればよく、2以上の整数であってもよい。Bが2以上の整数である場合、ステップS103a2、S103b2、S103c2及びS103d2が複数回繰り返し行われる。
【0066】
図7及び図8において、元素X1と元素X2のいずれか1つは金属元素(好ましくは遷移金属元素)であって、残りの1つは半導体元素である。なお、図7及び図8において、元素X1と元素X2の組み合わせは、特に限定されない。元素X1と元素X2の組み合わせは、金属元素同士、半導体元素同士の組み合わせであってもよい。いずれにしろ、元素X1と元素X2を含む第2膜W4が得られる。元素Xは元素X1、X2とは異なる元素X3を含んでもよく、互いに異なる3つ以上の元素を含んでもよい。元素X3を含む原料ガスの供給が実施されてもよい。
【0067】
次に、図9を参照して、一実施形態に係る成膜装置1について説明する。成膜装置1は、略円筒状の気密な処理容器2を備える。処理容器2の底壁の中央部には、排気室21が設けられている。排気室21は、下方に向けて突出する例えば略円筒状の形状を備える。排気室21には、例えば排気室21の側面において、排気配管22が接続されている。
【0068】
排気配管22には、圧力調整部23を介して排気部24が接続されている。圧力調整部23は、例えばバタフライバルブ等の圧力調整バルブを備える。排気配管22は、排気部24によって処理容器2内を減圧できるように構成されている。処理容器2の側面には、搬送口25が設けられている。搬送口25は、ゲートバルブ26によって開閉される。処理容器2内と搬送室(図示せず)との間における基板Wの搬入出は、搬送口25を介して行われる。
【0069】
処理容器2内には、ステージ3が設けられている。ステージ3は、基板Wの表面WAを上に向けて基板Wを水平に保持する保持部である。ステージ3は、平面視で略円形状に形成されており、支持部材31によって支持されている。ステージ3の表面には、例えば直径が300mmの基板Wを載置するための略円形状の凹部32が形成されている。凹部32は、基板Wの直径よりも僅かに大きい内径を有する。凹部32の深さは、例えば基板Wの厚さと略同一に構成される。ステージ3は、例えば窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料により形成されている。また、ステージ3は、ニッケル(Ni)等の金属材料により形成されていてもよい。なお、凹部32の代わりにステージ3の表面の周縁部に基板Wをガイドするガイドリングを設けてもよい。
【0070】
ステージ3には、例えば接地された下部電極33が埋設される。下部電極33の下方には、加熱機構34が埋設される。加熱機構34は、制御部100からの制御信号に基づいて電源部(図示せず)から給電されることによって、ステージ3に載置された基板Wを設定温度に加熱する。ステージ3の全体が金属によって構成されている場合には、ステージ3の全体が下部電極として機能するので、下部電極33をステージ3に埋設しなくてよい。ステージ3には、ステージ3に載置された基板Wを保持して昇降するための複数本(例えば3本)の昇降ピン41が設けられている。昇降ピン41の材料は、例えばアルミナ(Al)等のセラミックスや石英等であってよい。昇降ピン41の下端は、支持板42に取り付けられている。支持板42は、昇降軸43を介して処理容器2の外部に設けられた昇降機構44に接続されている。
【0071】
昇降機構44は、例えば排気室21の下部に設置されている。ベローズ45は、排気室21の下面に形成された昇降軸43用の開口部211と昇降機構44との間に設けられている。支持板42の形状は、ステージ3の支持部材31と干渉せずに昇降できる形状であってもよい。昇降ピン41は、昇降機構44によって、ステージ3の表面の上方と、ステージ3の表面の下方との間で、昇降自在に構成される。
【0072】
処理容器2の天壁27には、絶縁部材28を介してガス供給部5が設けられている。ガス供給部5は、上部電極を成しており、下部電極33に対向している。ガス供給部5には、整合器511を介して高周波電源512が接続されている。高周波電源512から上部電極(ガス供給部5)に100kHz~2.45GHz、好ましくは450kHz~100MHzの高周波電力を供給することによって、上部電極(ガス供給部5)と下部電極33との間に高周波電界が生成され、容量結合プラズマが生成する。プラズマ生成部51は、整合器511と、高周波電源512と、を含む。なお、プラズマ生成部51は、容量結合プラズマに限らず、誘導結合プラズマ又はリモートプラズマなど他のプラズマを生成するものであってもよい。
【0073】
ガス供給部5は、中空状のガス供給室52を備える。ガス供給室52の下面には、処理容器2内へ処理ガスを分散供給するための多数の孔53が例えば均等に配置されている。ガス供給部5における例えばガス供給室52の上方には、加熱機構54が埋設されている。加熱機構54は、制御部100からの制御信号に基づいて電源部(図示せず)から給電されることによって、設定温度に加熱される。
【0074】
ガス供給室52には、ガス供給路6が設けられている。ガス供給路6は、ガス供給室52に連通している。ガス供給路6の上流には、それぞれガスラインL61、L62、L63、L64を介して、ガス源G61、G62、G63、G64が接続されている。なお、ガス源の数、及びガス種は、図示のものには限定されない。
【0075】
ガス源G61は、TiClのガス源であり、ガスラインL61を介して、ガス供給路6に接続されている。ガスラインL61には、マスフローコントローラM61、貯留タンクT61及びバルブV61が、ガス源G61の側からこの順番に設けられている。マスフローコントローラM61は、ガスラインL61を流れるTiClガスの流量を制御する。貯留タンクT61は、バルブV61が閉じられた状態で、ガスラインL61を介してガス源G61から供給されるTiClガスを貯留して貯留タンクT61内におけるTiClガスの圧力を昇圧できる。バルブV61は、開閉動作により、ガス供給路6へのTiClガスの供給・遮断を行う。
【0076】
ガス源G62は、Arのガス源であり、ガスラインL62を介して、ガス供給路6に接続されている。ガスラインL62には、マスフローコントローラM62及びバルブV62が、ガス源G62の側からこの順番に設けられている。マスフローコントローラM62は、ガスラインL62を流れるArガスの流量を制御する。バルブV62は、開閉動作により、ガス供給路6へのArガスの供給・遮断を行う。
【0077】
ガス源G63は、Oのガス源であり、ガスラインL63を介して、ガス供給路6に接続されている。ガスラインL63には、マスフローコントローラM63、及びバルブV63が、ガス源G63の側からこの順番に設けられている。マスフローコントローラM63は、ガスラインL63を流れるOガスの流量を制御する。バルブV63は、開閉動作により、ガス供給路6へのOガスの供給・遮断を行う。
【0078】
ガス源G64は、TDMABのガス源であり、ガスラインL64を介して、ガス供給路6に接続されている。ガスラインL64には、マスフローコントローラM64、及びバルブV64が、ガス源G64の側からこの順番に設けられている。マスフローコントローラM64は、ガスラインL64を流れるTDMABガスの流量を制御する。バルブV64は、開閉動作により、ガス供給路6へのTDMABガスの供給・遮断を行う。
【0079】
成膜装置1は、制御部100と、記憶部101とを備える。制御部100は、CPU、RAM、ROM等(いずれも図示せず)を備えており、例えばROMや記憶部101に格納されたコンピュータプログラムをCPUに実行させることによって、成膜装置1を統括的に制御する。具体的には、制御部100は、記憶部101に格納された制御プログラムをCPUに実行させて成膜装置1の各構成部の動作を制御することで、基板Wに対する成膜処理等を実行する。
【0080】
次に、図9を再度参照して、成膜装置1の動作の一例について説明する。成膜装置1は、例えば図1および図2に示す成膜方法を実施する。なお、制御部100は、図5に示す成膜方法を実施してもよい。また、ステップS102を実施する処理容器2と、ステップS103を実施する処理容器2とは別々に設けられてもよい。基板Wは、第1の処理容器の内部でステップS102を実施した後、第1の処理容器から第2の処理容器に搬送され、第2の処理容器の内部でステップS103を実施してもよい。
【0081】
先ず、制御部100は、ゲートバルブ26を開いて搬送機構により基板Wを処理容器2内に搬送し、ステージ3に載置する。基板Wは、表面WAを上に向けて水平に載置される。制御部100は、搬送機構を処理容器2内から退避させた後、ゲートバルブ26を閉じる。次いで、制御部100は、ステージ3の加熱機構34により基板Wを設定温度に加熱し、圧力調整部23により処理容器2内を設定圧力に調整する。例えば、基板Wを処理容器2内に搬入することなどが、ステップS101に含まれる。
【0082】
次に、制御部100は、ステップS102aを実施する。ステップS102aでは、バルブV64、V63、V62を開き、TDMABガスとOガスとArガスとを同時に処理容器2内に供給する。このとき、制御部100は、バルブV61を閉じており、TiClガスを処理容器2内に供給しない。
【0083】
上記ステップS102aの具体的な処理条件は、例えば下記の通りである。
TDMABガスの流量:1sccm~100sccm
ガスの流量:100sccm~100000sccm
Arガスの流量:100sccm~100000sccm
処理時間:1秒~1200秒
処理温度:100℃~450℃
処理圧力:3Pa~10000Pa。
【0084】
次に、制御部100は、ステップS102bを実施する。ステップS102bでは、バルブV64を閉じる。このとき、バルブV63、V62は開いているので、処理容器2内にはOガスとArガスが供給され、処理容器2内に残留するTDMABガスが排気配管22へと排出される。
【0085】
上記ステップS102bの具体的な処理条件は、例えば下記の通りである。
ガスの流量:100sccm~100000sccm
Arガスの流量:100sccm~100000sccm
処理時間:1秒~60秒
処理温度:100℃~450℃
処理圧力:3Pa~10000Pa。
【0086】
次に、制御部100は、ステップS102cを実施する。ステップS102cでは、プラズマ生成部51によりプラズマを生成し、Oガスをプラズマ化する。これにより、吸着したTDMABガスに含まれるB(ボロン)が酸化され、例えばBO膜が形成される。BO膜は、凹部WA2の内部に比べて、凸部WA1の頂面に厚く形成される。BO膜は、凹凸パターンに沿って形成され、凸部WA1の頂面だけではなく凹部WA2の内部にも形成される。ステップS102cの具体的な処理条件は、プラズマを生成する以外、上記ステップS102bの処理条件と同様であるので、説明を省略する。
【0087】
次に、制御部100は、ステップS102dを実施する。ステップS102dでは、プラズマの生成を停止する。このとき、バルブV63、V62は開いているので、処理容器2内にはOガスとArガスが供給され、処理容器2内に残留するプラズマ化したガスが排気配管22へと排出される。ステップS102dの具体的な処理条件は、上記ステップS102bの処理条件と同様であるので、説明を省略する。
【0088】
次に、ステップS102eでは、制御部100は、ステップS102a~S102dをK(Kは1以上の自然数)回実施したか否かを確認する。実施回数がK回未満である場合(ステップS102e、NO)、制御部100はステップS102a~S102dを再度実施する。一方、実施回数がK回に達した場合(ステップS102e、YES)、制御部100はステップS103を実施する。
【0089】
次に、制御部100は、ステップS103aを実施する。ステップS103aでは、バルブV61、V62、V63を開き、TiClガスとArガスとOガスとを同時に処理容器2内に供給する。このとき、制御部100は、バルブV64を閉じており、TDMABガスを処理容器2内に供給しない。
【0090】
上記ステップS103aの具体的な処理条件は、例えば下記の通りである。
TiClガスの流量:1sccm~500sccm
Arガスの流量:100sccm~100000sccm
ガスの流量:100sccm~100000sccm
処理時間:0.1秒~30秒
処理温度:100℃~450℃
処理圧力:3Pa~10000Pa。
【0091】
次に、制御部100は、ステップS103bを実施する。ステップS103bでは、バルブV61を閉じる。このとき、バルブV62、V63は開いているので、処理容器2内にはArガスとOガスが供給され、処理容器2内に残留するTiClガスが排気配管22へと排出される。
【0092】
上記ステップS103bの具体的な処理条件は、例えば下記の通りである。
Arガスの流量:100sccm~100000sccm
ガスの流量:100sccm~100000sccm
処理時間:0.1秒~30秒
処理温度:100℃~450℃
処理圧力:3Pa~10000Pa。
【0093】
次に、制御部100は、ステップS103cを実施する。ステップS103cでは、プラズマ生成部51によりプラズマを生成し、Oガスをプラズマ化する。これにより、吸着したTiClガスが酸化され、例えばTiO膜が形成される。TiO膜は、BO膜による成膜の阻害によって凸部WA1の頂面にはほとんど形成されず、凸部WA1の頂面に比べて凹部WA2の内部に厚く形成される。ステップS103cの具体的な処理条件は、プラズマを生成する以外、上記ステップS103bの処理条件と同様であるので、説明を省略する。
【0094】
次に、制御部100は、ステップS103dを実施する。ステップS103dでは、プラズマの生成を停止する。このとき、バルブV62、V63は開いているので、処理容器2内にはArガスとOガスが供給され、処理容器2内に残留するプラズマ化したガスが排気配管22へと排出される。ステップS103dの具体的な処理条件は、上記ステップS103bの処理条件と同様であるので、説明を省略する。
【0095】
次に、ステップS103eでは、制御部100は、ステップS103a~S103dをL(Lは1以上の自然数)回実施したか否かを確認する。実施回数がL回未満である場合(ステップS103e、NO)、制御部100はステップS103a~S103dを再度実施する。一方、実施回数がL回に達した場合(ステップS103e、YES)、制御部100はステップS105を実施する。なお、制御部100は、ステップS103の後であってステップS105の前に、ステップS104を実施してもよい。
【0096】
次に、ステップS105では、制御部100は、第1サイクルをN回実施したか否かを確認する。実施回数がN回未満である場合(ステップS105、NO)、制御部100は第1サイクルを再度実施する。一方、実施回数がN回に達した場合(ステップS105、YES)、制御部100は今回の処理を終了する。その後、制御部100は、ゲートバルブ26を開いて搬送機構により基板Wを処理容器2外に搬送する。制御部100は、搬送機構を処理容器2内から退避させた後、ゲートバルブ26を閉じる。
【0097】
[実施例]
次に、実施例などについて説明する。下記の例1が比較例であり、下記の例2~例3が実施例である。
【0098】
[例1]
例1では、図10に示すようにSi基板の上にSiN膜W1-1とアモルファスSi膜W2-1とをこの順番で形成し、アモルファスSi膜W2-1に開口パターンを形成した基板を準備し、表1に示す処理条件でステップS103a~S103dを実施した。
【0099】
【表1】
【0100】
表1において、「RF」の「ON」は高周波電力によってガスをプラズマ化したことを意味する。「RF」の「OFF」はガスのプラズマ化を実施しなかったことを意味する。下記の表2~表3において、同様である。表1に示すように、S103cにおいてガスをプラズマ化した。
【0101】
表1に示すように、例1では、ステップS102を実施しなかった。ステップS102においてボロンを含有する膜を形成しなかったので、ステップS103において図10に示すようにTiO膜W4-1が凸部の頂面と凹部の内部の両方に均一に形成された。
【0102】
[例2]
例2では、図11に示すようにSi基板の上にSiN膜W1-2とアモルファスSi膜W2-2とをこの順番で形成し、アモルファスSi膜W2-2に開口パターンを形成した基板を準備し、表2に示す処理条件でステップS102a、S102c及びS102d並びにステップS103a~S103dを実施した。表2に示すように、S102cとS103cにおいてガスをプラズマ化した。
【0103】
【表2】
【0104】
表2に示すように、例2では、例1とは異なり、ステップS102を実施した。その結果、ステップS102においてBO膜を形成でき、ステップS103において図11に示すようにTiO膜W4-2が凸部の頂面に比べて凹部の内部に厚く形成された。TiO膜W4-2は、凸部の頂面にはほとんど形成されなかった。
【0105】
[例3]
例3では、図12に示すようにSi基板の上にSiN膜W1-3とアモルファスSi膜W2-3とをこの順番で形成し、アモルファスSi膜W2-3に開口パターンを形成した基板を準備し、表3に示す処理条件でステップS102a、S102c及びS102d並びにステップS103a~S103dを実施した。表3に示すように、S102cとS103cにおいてガスをプラズマ化した。
【0106】
【表3】
【0107】
表3に示すように、例3では、例1とは異なり、ステップS102を実施した。その結果、ステップS102においてBO膜を形成でき、ステップS103において図12に示すようにTiO膜W4-3が凸部の頂面に比べて凹部の内部に厚く形成された。TiO膜W4-3は、凸部の頂面にはほとんど形成されなかった。
【0108】
以上、本開示に係る成膜方法及び成膜装置の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0109】
W 基板
WA 表面
WA1 凸部
WA2 凹部
W3 第1膜
W4 第2膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12