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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106553
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/38 20060101AFI20240801BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20240801BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240801BHJP
   H01L 21/316 20060101ALN20240801BHJP
   H01L 21/318 20060101ALN20240801BHJP
【FI】
C23C16/38
C23C16/455
H01L21/31 B
H01L21/316 X
H01L21/318 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010862
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藤田 成樹
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA07
4K030AA12
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA18
4K030BA18
4K030BA26
4K030BA29
4K030BA30
4K030BA38
4K030BA39
4K030BA40
4K030BA42
4K030BA44
4K030BA46
4K030CA11
4K030FA01
4K030JA10
4K030JA11
4K030KA05
4K030KA30
5F045AA06
5F045AA08
5F045AA15
5F045AB31
5F045AB32
5F045AB33
5F045AC00
5F045AC02
5F045AC05
5F045AC11
5F045AC12
5F045AD07
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AD11
5F045AD12
5F045AE17
5F045AE19
5F045AE21
5F045AF12
5F045AF20
5F045DC69
5F045DP03
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5F045DQ17
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5F045EF05
5F045EH05
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5F058BD04
5F058BD05
5F058BD10
5F058BD12
5F058BF04
5F058BF07
5F058BF24
5F058BF29
5F058BF30
5F058BF37
5F058BJ02
5F058BJ06
(57)【要約】
【課題】ボロンを含有する第1膜に対して、第1膜とは異なる材料で形成される第2膜の上に第3膜を選択的に形成する、技術を提供する。
【解決手段】成膜方法は、ボロンを含有する第1膜と、第2膜とを表面の異なる領域に有する基板を準備することと、前記基板の表面に対して有機化合物を除去する洗浄ガスを供給することと、前記有機化合物を除去した前記第1膜に対して前記第2膜の上に選択的に第3膜を形成することと、前記有機化合物を除去した直後から、前記第3膜を形成する直前まで、前記基板の前記表面を真空雰囲気と不活性雰囲気の少なくとも1つで保護することと、を有する。前記第3膜を形成することは、前記基板の前記表面に対して、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する原料ガスと、前記原料ガスの吸着物と反応する反応ガスとを交互に又は同時に供給することにより、前記元素Xを含有する前記第3膜を形成することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボロンを含有する第1膜と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜とを表面の異なる領域に有する基板を準備することと、
前記基板の表面に対して有機化合物を除去する洗浄ガスを供給することと、
前記有機化合物を除去した前記第1膜に対して前記第2膜の上に選択的に第3膜を形成することと、
前記有機化合物を除去した直後から、前記第3膜を形成する直前まで、前記基板の前記表面を大気雰囲気に曝すことなく前記基板の前記表面を真空雰囲気と不活性雰囲気の少なくとも1つで保護することと、
を有し、
前記第3膜を形成することは、前記基板の前記表面に対して、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する原料ガスと、前記原料ガスの吸着物と反応する反応ガスとを交互に又は同時に供給することにより、前記元素Xを含有する前記第3膜を形成することを含む、成膜方法。
【請求項2】
前記基板を準備することは、前記第2膜に対して前記第2膜とは異なる材料で形成される第4膜の上に選択的に前記第1膜を形成することを有する、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
第2膜と、前記第2膜とは異なる材料で形成される第4膜とを表面の異なる領域に有する基板を準備することと、
前記第2膜に対して前記第4膜の上に選択的にボロンを含有する第1膜を形成することと、
前記第1膜に対して前記第2膜の上に選択的に第3膜を形成することと、
前記第1膜を形成した直後から、前記第3膜を形成する直前まで、前記基板の前記表面を大気雰囲気に曝すことなく前記基板の前記表面を真空雰囲気と不活性雰囲気の少なくとも1つで保護することと、
を有し、
前記第3膜を形成することは、前記基板の前記表面に対して、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する原料ガスと、前記原料ガスの吸着物と反応する反応ガスとを交互に又は同時に供給することにより、前記元素Xを含有する前記第3膜を形成することを含む、成膜方法。
【請求項4】
前記第3膜の形成後に、前記第3膜に対して前記第1膜又は前記第4膜の上に選択的に前記第1膜を再び形成することと、
再び形成した前記第1膜に対して前記第3膜の上に選択的に前記第3膜を再び形成することと、
を有する、請求項2又は3に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記反応ガスは、窒素を含有するガスである、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記反応ガスは、水素を含有するガスである、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記反応ガスは、酸素を含有するガスである、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記第2膜は、ボロンを実質的に含有しない、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記第3膜を形成する前に、前記基板は前記第1膜と前記第2膜を含む前記表面に凹部を有し、前記凹部の内部のみで前記第1膜が露出しており、前記第1膜は少なくとも前記凹部の底面で露出する、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記第3膜を形成する前に、前記基板は前記第1膜と前記第2膜を含む前記表面に凹部を有し、前記凹部の内部のみで前記第2膜が露出しており、前記第2膜は少なくとも前記凹部の底面で露出する、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記元素Xは、金属元素を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記元素Xは、遷移金属元素を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記元素Xは、半導体元素を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項14】
前記第3膜を形成することは、前記原料ガスと前記反応ガスとを交互に供給することを含み、前記反応ガスをプラズマ化して供給することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項15】
前記第3膜を形成することは、前記元素Xとして元素X1を含む前記原料ガスの供給と、前記元素Xとして前記元素X1とは異なる元素X2を含む前記原料ガスの供給と、前記反応ガスの供給とをこの順番で含む処理を1回以上行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項16】
前記第3膜を形成することは、前記元素Xとして元素X1を含む前記原料ガスの供給と、前記反応ガスの供給とをこの順番で含む処理を1回以上行い、また、前記元素Xとして前記元素X1とは異なる元素X2を含む前記原料ガスの供給と、前記反応ガスの供給とをこの順番で含む処理を1回以上行う、請求項1~3のいずれか1項の成膜方法。
【請求項17】
前記基板を収容する処理容器と、
前記処理容器の内部で前記基板を保持する保持部と、
前記保持部に保持されている前記基板の前記表面に対してガスを供給する供給部と、
前記供給部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、請求項1~3に記載のいずれか1項に記載の成膜方法を実施する制御を行なう、成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の窒化膜の形成方法は、第1の下地膜と第2の下地膜の表面に塩素ガスを吸着させる工程と、塩素ガスを吸着させた第1の下地膜と第2の下地膜の一方に対して選択的に窒化膜を形成する工程と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-174919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、ボロンを含有する第1膜に対して、第1膜とは異なる材料で形成される第2膜の上に第3膜を選択的に形成する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様の成膜方法は、ボロンを含有する第1膜と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜とを表面の異なる領域に有する基板を準備することと、前記基板の表面に対して有機化合物を除去する洗浄ガスを供給することと、前記有機化合物を除去した前記第1膜に対して前記第2膜の上に選択的に第3膜を形成することと、前記有機化合物を除去した直後から、前記第3膜を形成する直前まで、前記基板の前記表面を大気雰囲気に曝すことなく前記基板の前記表面を真空雰囲気と不活性雰囲気の少なくとも1つで保護することと、を有する。前記第3膜を形成することは、前記基板の前記表面に対して、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する原料ガスと、前記原料ガスの吸着物と反応する反応ガスとを交互に又は同時に供給することにより、前記元素Xを含有する前記第3膜を形成することを含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、ボロンを含有する第1膜に対して、第1膜とは異なる材料で形成される第2膜の上に第3膜を選択的に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。
図2図2は、図1に示すS104の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、図1に示すS104の変形例を示すフローチャートである。
図4図4は、図1に示すS104の別の変形例を示すフローチャートである。
図5図5は、成膜方法の第1例を示す断面図である。
図6図6は、成膜方法の第2例を示す断面図である。
図7図7は、成膜方法の第3例を示す断面図である。
図8図8は、成膜方法の第4例を示す断面図である。
図9図9は、成膜方法の第5例を示す断面図である。
図10図10は、成膜方法の第6例を示す断面図である。
図11図11は、成膜方法の第7例を示す断面図である。
図12図12は、成膜方法の第8例を示す断面図である。
図13図13は、成膜方法の第9例を示す断面図である。
図14図14は、変形例に係る成膜方法を示すフローチャートである。
図15図15は、図14に示すS101Bの一例を示すフローチャートである。
図16図16は、成膜方法の第10例を示す断面図である。
図17図17は、成膜方法の第11例を示す断面図である。
図18図18は、一実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
図19図19は、第1処理部の一例を示す断面図である。
図20図20は、例1の処理前の基板を示すSEM写真である。
図21図21は、例1の処理後の基板を示すSEM写真である。
図22図22は、例2の処理後の基板を示すSEM写真である。
図23図23は、例3の処理後の基板を示すSEM写真である。
図24図24は、例4の処理後の基板を示すSEM写真である。
図25図25は、例5の処理後の基板を示すSEM写真である。
図26図26は、例6の処理後の基板を示すSEM写真である。
図27図27は、例7の処理前の基板を示すSEM写真である。
図28図28は、例7の処理後の基板を示すSEM写真である。
図29図29は、例8の処理後の基板を示すSEM写真である。
図30図30は、例9の処理後の基板を示すSEM写真である。
図31図31は、例10の処理後の基板を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0009】
先ず、主に図1を参照して、一実施形態に係る成膜方法について説明する。成膜方法は、例えば図1に示すステップS101~S104を含む。なお、成膜方法は、少なくともステップS102~S104を含めばよい。また、成膜方法は、図1に示すステップS101~S104以外のステップを含んでもよい。
【0010】
ステップS101は、基板Wを準備することを含む(例えば図5参照)。基板Wは、ボロン(B)を含有する第1膜W1と、第1膜W1とは異なる材料で形成される第2膜W2とを表面Waの異なる領域に有する。第1膜W1と第2膜W2は、例えば不図示の下地基板の上に形成される。下地基板は、シリコンウェハ、又は化合物半導体ウェハである。化合物半導体ウェハは、例えばGaAsウェハ、SiCウェハ、GaNウェハ、又はInPウェハである。
【0011】
第1膜W1は、ボロン(B)を含有する。第1膜W1におけるB含有量は、例えば20原子%~100原子%であり、好ましくは40原子%~100原子%である。第1膜W1は、例えば、B膜、BN膜、BNC膜、BO膜、BNOC膜、SiBN膜、SiBCN膜又はSiOBN膜である。ここで、BN膜とは、ボロン(B)と窒素(N)を含む膜という意味である。BN膜におけるBとNの原子比は1:1には限定されない。BN膜以外のBNC膜等についても同様に各元素を含むという意味であり、化学量論比には限定されない。
【0012】
第2膜W2は、第1膜W1とは異なる材料で形成される。第2膜W2は、Bを実質的に含有しない。Bを実質的に含有しないとは、B含有量が0原子%~5原子%であることをいう。第2膜W2におけるB含有量は、少ないほど好ましい。第2膜W2は、絶縁膜、導電膜、半導体膜のいずれでもよい。
【0013】
第2膜W2としての絶縁膜は、特に限定されないが、例えばSiO膜、SiN膜、SiOC膜、SiON膜、SiOCN膜、AlO膜、ZrO膜、HfO膜、又はTiO膜である。ここで、SiO膜とは、シリコン(Si)と酸素(O)を含む膜という意味である。SiO膜におけるSiとOの原子比は、通常1:2であるが、1:2には限定されない。SiN膜、SiOC膜、SiON膜、SiOCN膜、AlO膜、ZrO膜、HfO膜、及びTiO膜についても同様に各元素を含むという意味であり、化学量論比には限定されない。絶縁膜は、例えば層間絶縁膜である。層間絶縁膜は、好ましくは低誘電率(Low-k)膜である。
【0014】
第2膜W2としての半導体膜は、特に限定されないが、例えばSi膜、SiGe膜、GaN膜である。半導体膜は、単結晶膜、多結晶膜、及びアモルファス膜のいずれでもよい。
【0015】
第2膜W2としての導電膜は、例えば金属膜である。金属膜は、特に限定されないが、例えば、Cu膜、Co膜、Ru膜、Mo膜、W膜、又はTi膜である。導電膜は、金属窒化膜であってもよい。金属窒化膜は、特に限定されないが、例えばTiN膜、又はTaN膜である。ここで、TiN膜とは、チタン(Ti)と窒素(N)を含む膜という意味である。TiN膜におけるTiとNの原子比は、通常1:1であるが、1:1には限定されない。TaN膜についても同様に各元素を含むという意味であり、化学量論比には限定されない。
【0016】
ステップS102は、第1膜W1を形成した後に基板Wの表面Waが大気雰囲気に曝露されたか否かをチェックすることを含む。以下、基板Wの表面Waを基板表面Waと記載することがある。基板表面Waが大気雰囲気に曝されると、大気雰囲気に含まれる有機化合物が基板表面Waを汚染してしまい(例えば有機化合物が基板表面Waに付着し基板表面Waを覆ってしまい)、第1膜W1がボロンを含有する効果(後述するように第1膜W1が第3膜W3の形成を阻害する効果)が損なわれてしまう。
【0017】
本明細書において、大気雰囲気とは、圧力が常圧(約101kPa)であって且つ大気の割合が95体積%~100体積%である雰囲気のことである。不活性雰囲気とは、大気の割合が5体積%以下であり、不活性ガスの割合が95体積%~100体積%(好ましくは98体積%~100体積%)である雰囲気のことである。不活性ガスは、Nガス及び希ガス(例えばアルゴンガス又はヘリウムガス等)から選ばれる少なくとも1つで構成される。不活性雰囲気の圧力は、特に限定されないが、例えば常圧である。不活性ガスは、純度を管理されたガスであって、例えばボンベ等から供給される。
【0018】
また、本明細書において、真空雰囲気とは、圧力が0Pa~10kPa(好ましくは0Pa~1kPa)である雰囲気のことである。真空雰囲気は、大気、不活性ガス、水素ガス、及びアンモニアガス等から選ばれる少なくとも1つを含んでもよい。真空雰囲気は、大気雰囲気を常圧から10kPa以下に減圧した雰囲気であってもよい。大気の90%以上を取り除くことで、大気に含まれる有機化合物の大部分を取り除くことができる。但し、真空雰囲気は、不活性雰囲気を常圧から10000Pa以下に減圧した雰囲気であることが好ましい。大気以外のガス(例えば不活性ガス、水素ガス、及びアンモニアガス)は、純度を管理されたガスであって、例えばボンベ等から供給される。
【0019】
成膜方法は、第1膜W1を形成した直後から、第3膜W3を形成する直前(ステップS104の直前)まで、基板表面Waを大気雰囲気に曝すことなく基板表面Waを真空雰囲気と不活性雰囲気の少なくとも1つで保護することを有してもよい。基板表面Waが大気雰囲気に曝露されない場合(ステップS102、NO)、基板表面Waが有機化合物で汚染されず、第1膜W1がボロンを含有する効果が損なわれないので、ステップS103は行われずに、ステップS104が行われる。
【0020】
一方、第1膜W1を形成した後に基板Wの表面Waが大気雰囲気に曝露される場合(ステップS102、YES)、基板表面Waが有機化合物で汚染され、第1膜W1がボロンを含有する効果(後述するように第1膜W1が第3膜W3の形成を阻害する効果)が損なわれるので、有機化合物を除去すべくステップS103が行われる。
【0021】
ステップS103は、基板表面Waに対して有機化合物を除去する洗浄ガスを供給することを含む。洗浄ガスとしては、酸素含有ガス、窒素含有ガス、又は水素含有ガスが用いられる。酸素含有ガスは、酸素を含有するガスであって、例えばOガス、Oガス、COガス、NOガス、NOガス、又はHOガスである。窒素含有ガスは、窒素を含有するガスであって、例えばNガス、NHガス、又はNガスである。水素含有ガスは、水素を含有するガスであって、例えばHガス、又はHSガスである。洗浄ガスは、後述するようにプラズマ化する場合、Arガスなどの希ガスであってもよい。
【0022】
ステップS103は、洗浄ガスをプラズマ化することを含んでもよく、プラズマ化した洗浄ガスを基板表面Waに対して供給することを含んでもよい。洗浄ガスをプラズマ化することで、イオン又はラジカルが発生する。発生したイオン又はラジカルが基板表面Waに衝突することで、有機化合物が物理的に叩き飛ばされる。洗浄ガスが酸素含有ガス又は水素含有ガスである場合、発生したイオン又はラジカルが有機化合物と化学反応することで、有機化合物がCO又はCHなどに分解除去される。
【0023】
ステップS103は、反応ガスとして、酸素含有ガス(例えばOガス)又は水素含有ガス(例えばHガス)をプラズマ化することなく、基板表面Waに対して供給することを含んでもよい。酸素含有ガス又は水素含有ガスが有機化合物と化学反応することで、有機化合物がCO又はCHなどに分解除去される。
【0024】
洗浄ガスは、第1膜W1の材質、又は第2膜W2の材質に応じて選択される。例えば、第2膜W2が金属膜である場合、金属膜の酸化、又は窒化などを防止すべく、希ガス若しくはNガスなどの不活性ガス、又はHガスなどの還元性ガスが洗浄ガスとして用いられてもよい。
【0025】
成膜方法は、有機化合物を除去した直後(ステップS103の直後)から、第3膜W3を形成する直前(ステップS104の直前)まで、基板表面Waを大気雰囲気に曝すことなく、基板表面Waを真空雰囲気と不活性雰囲気の少なくとも1つで保護することを含む。これにより、再び有機化合物で基板表面Waが汚染されるのを抑制できる。
【0026】
ステップS104は、第1膜W1に対して第2膜W2の上に選択的に第3膜W3を形成することを含む(図5等参照)。ステップS104は、基板表面Waに対して、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する原料ガスと、原料ガスの吸着物と反応する反応ガスとを交互に又は同時に供給することで、元素Xを含有する第3膜W3を形成することを含む。
【0027】
ステップS104は、図2に示すように、例えばステップS104a~S104eを有する。なお、ステップS104は、ステップS104a及びS104cを有すればよく、ステップS104b、S104d及びS104eを有しなくてもよい。以下、ステップS104a~S104eについて説明する。
【0028】
ステップS104aは、基板表面Waに対して原料ガスを供給することを含む。原料ガスは、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素である。元素Xは、特に限定されないが、好ましくは金属元素であり、より好ましくは遷移金属元素である。元素Xは、例えばTi、W、V、Al、Mo、Sn、Hf、Ta、Nb、Zr、In、Ga又はSbである。原料ガスの具体例としては、TiClガス、WClガス、WFガス、VClガス、AlClガス、MoClガス、SnClガス、HfClガス、TaClガス、NbClガス、ZrClガス、InClガス、GaClガス又はSbClガスが挙げられる。元素Xは、半導体元素であってもよく、具体的にはSi又はGeであってもよい。原料ガスは、ハロゲン化シリコンガス又はハロゲン化ゲルマニウムガスである。ハロゲン化シリコンガスの具体例としては、SiClガス、SiHClガス、SiHClガス、SiHClガス、SiClガスSiHClガス、SiClCHガス、SiClCClガス、SiClCHガス、又はSiHガス等が挙げられる。ハロゲン化ゲルマニウムガスの具体例としては、GeClガス等が挙げられる。原料ガスは、希釈ガスと共に供給してもよい。希釈ガスは、例えばArガス又はNガスである。
【0029】
ステップS104bは、基板表面Waに対してパージガスを供給することを含む。パージガスは、上記ステップS104aにおいて基板表面Waに吸着しなかった余剰の原料ガスをパージする。パージガスとしては、例えば、Arガス等の希ガス又はNガスが用いられる。
【0030】
ステップS104cは、基板表面Waに対して反応ガスを供給することを含む。反応ガスは、原料ガスの吸着物に含まれる元素Xと反応することで、元素Xを含有する第3膜W3を形成する。反応ガスとしては、酸素含有ガス、窒素含有ガス、又は水素含有ガスが挙げられる。酸素含有ガスは、酸素を含有し、元素Xの酸化膜を形成する。酸素含有ガスは、例えばOガス、Oガス、COガス、NOガス、NOガス、又はHOガスである。窒素含有ガスは、窒素を含有し、元素Xの窒化膜を形成する。窒素含有ガスは、例えばNHガス、又はNガスである。水素含有ガスは、水素を含有し、元素Xを主成分とする膜(例えば、金属膜又は半導体膜)を形成する。水素含有ガスは、例えばHガス、又はHSガスである。反応ガスは、希釈ガスと共に供給してもよい。希釈ガスは、例えばArガス又はNガスである。
【0031】
ステップS104cは、反応ガスをプラズマ化することを含んでもよく、プラズマ化した反応ガスを基板表面Waに対して供給することを含んでもよい。
【0032】
なお、反応ガスは、上記ステップS104cのみならず、ステップS104a~S104dの全てで供給してもよい。但し、反応ガスのプラズマ化は、上記ステップS104cのみで実施される。反応ガスは、プラズマ化されることで、基板表面Waにおいて原料ガスの吸着物と反応しやすくなるからである。
【0033】
ステップS104cは、反応ガスとして、Oガスをプラズマ化することなく、基板表面Waに対して供給することを含んでもよい。この場合も、ステップS104の途中でステップS103と同様に基板表面Waに付着した有機化合物を除去することが可能である。但し、本実施形態によれば、基板表面Waは清浄であるので、反応ガスの種類は特に限定されない。
【0034】
ステップS104dは、基板表面Waに対してパージガスを供給することを含む。パージガスは、上記ステップS104cで基板表面Waと反応しなかった余剰の反応ガスをパージする。パージガスとしては、例えば、Arガス等の希ガス又はNガスが用いられる。
【0035】
ステップS104eでは、上記ステップS104a~S104dをL(Lは1以上の整数)回実施したか否かを確認する。Lは2以上の整数であってもよく、上記ステップS104a~S104dが繰り返し実施されてもよい。第3膜W3の膜厚を厚くすることができる。
【0036】
上記ステップS104a~S104dの実施回数がL回未満である場合(ステップS104e、NO)、第3膜W3の膜厚が目標値未満であるので、上記ステップS104a~S104dを再度実施する。Lは、好ましくは200以上であり、より好ましくは300以上である。Lは、好ましくは1000以下である。
【0037】
一方、上記ステップS104a~S104dの実施回数がL回に達した場合(ステップS104e、YES)、第3膜W3の膜厚が目標値に達しているので、今回のステップS104が終了する。
【0038】
なお、図2に示す第3膜W3の形成方法は、ALD(Atomic Layer Deposition)法であるが、CVD(Chemical Vapor Deposition)法であってもよい。ALD法では、原料ガスの供給(ステップS104a)と、反応ガスの供給(ステップS104c)とを交互に行う。一方、CVD法では、原料ガスの供給と、反応ガスの供給とを同時に行う。
【0039】
第1膜W1の表面において第3膜W3の形成を阻害するには、第1膜W1に対する原料ガスの吸着が弱くまたは吸着せず、その結果として、第1膜W1の表面において原料ガスの吸着物が成膜反応(第3膜W3の形成)を進めることなく脱離することが重要である。または、第1膜W1の表面に対する原料ガスの吸着が起こらない、もしくは第1膜W1の表面で原料ガスの解離が生じにくいことが重要である。原料ガスの解離が生じると、成膜反応が進みやすい。
【0040】
第1膜W1はボロンを含有しているので、且つ第1膜W1の表面が有機化合物で覆われておらず露出しているので、第1膜W1の上ではハロゲン化物の吸着が生じないか、生じても弱く、あるいはハロゲン化物の解離が生じにくいと考えられる。その結果、第1膜W1の表面において第3膜W3の形成が阻害される。
【0041】
一方、第2膜W2はボロンを実質的に含有していないので、第2膜W2の上ではハロゲン化物が強く吸着しているか、あるいはハロゲン化物の解離が生じやすいと考えられる。その結果、第2膜W2の表面において第3膜W3の形成が進むと考えられる。
【0042】
なお、第1膜W1がボロンを含有していたとしても、大気中に含まれる有機物が第1膜W1の表面を覆い隠した場合、ボロンによるハロゲン化物の吸着阻害が生じにくく、有機化合物の上に原料ガスが吸着する。有機化合物の上に吸着した原料ガスはS104cで供給される反応ガスと反応し、第1膜W1の上にも第3膜W3が形成される。
【0043】
但し、S104cにおいて、反応ガスとして酸素含有ガスを基板表面Waに対して供給する場合は、ステップS103と同様に基板表面Waに付着した有機化合物を除去できることがある。
【0044】
また、TiClなどのハロゲン化物は、Ti[N(CHなどの有機金属錯体に比べて、基板Wの熱によって分解(decompose)しにくい。原料ガスが第1膜W1に吸着した後に分解してしまうと、第3膜W3の形成が進んでしまう。従って、第1膜W1の表面において第3膜W3の形成を阻害するには、第3膜W3の原料ガスとしては、ハロゲンを含有するガスが適している。
【0045】
さらに、ハロゲン化物と反応ガスを共にプラズマ化するプラズマCVD法では、ハロゲン化物が解離して生じるイオン又はラジカル等の活性種が発生する。ハロゲン化物から生じた活性種は反応性が大きく、第2膜W2の表面だけではなく、第1膜W1の表面でも成膜反応が進みやすくなると考えられる。したがって、原料ガスをプラズマ化しないことが好ましく、熱ALD法、プラズマALD法、又は熱CVD法を使用することが重要である。
【0046】
上記ステップS104a~S104dでは、第1膜W1の表面において、原料ガスの脱離を促進すべく、基板Wの温度を100℃以上に制御してもよい。基板Wの温度が100℃未満である場合、第1膜W1の表面において原料ガスの脱離が十分に起こらずに原料ガスが物理吸着してしまい、第3膜W3が第1膜W1の表面にも形成されてしまう。基板Wの温度は、好ましくは300℃以上である。基板Wの温度は、好ましくは800℃以下である。
【0047】
次に、図3を参照して、ステップS104の変形例について説明する。以下、主に相違点について説明する。ステップS104は、図3に示すように、元素Xとして元素X1を含む原料ガスの供給(ステップS104a1)と、元素Xとして元素X1とは異なる元素X2を含む原料ガスの供給(ステップS104a2)と、原料ガスの吸着物と反応する反応ガスの供給(ステップS104c)とをこの順番で含む処理を1回以上行う。
【0048】
なお、ステップS104a1とS104a2の間には、パージガスの供給(ステップS104b1)が行われてもよい。また、ステップS104a2とS104cの間には、パージガスの供給(ステップS104b2)が行われてもよい。
【0049】
次に、図4を参照して、ステップS104の別の変形例について説明する。以下、主に相違点について説明する。ステップS104は、図4に示すように、元素Xとして元素X1を含む原料ガスの供給(ステップS104a1)と、原料ガスの吸着物と反応する反応ガスの供給(ステップS104c1)とをこの順番で含む処理を1回以上行う。また、ステップS104は、元素Xとして元素X1とは異なる元素X2を含む原料ガスの供給(ステップS104a2)と、原料ガスの吸着物と反応する反応ガスの供給(ステップS104c2)とをこの順番で含む処理を1回以上行う。
【0050】
図4のステップS104e1において、Aは1以上の整数であればよく、2以上の整数であってもよい。Aが2以上の整数である場合、ステップS104a1、S104b1、S104c1及びS104d1が複数回繰り返し行われる。また、図4のステップS104e2において、Bは1以上の整数であればよく、2以上の整数であってもよい。Bが2以上の整数である場合、ステップS104a2、S104b2、S104c2及びS104d2が複数回繰り返し行われる。
【0051】
なお、ステップS104a1とS104c1の間には、パージガスの供給(ステップS104b1)が行われてもよい。また、ステップS104c1の直後には、パージガスの供給(ステップS104d1)が行われてもよい。さらに、ステップS104a2とS104c2の間には、パージガスの供給(ステップS104b2)が行われてもよい。さらにまた、ステップS104c2の直後には、パージガスの供給(ステップS104d2)が行われてもよい。
【0052】
図3及び図4において、元素X1と元素X2のいずれか1つは金属元素(好ましくは遷移金属元素)であって、残りの1つは半導体元素である。なお、図3及び図4において、元素X1と元素X2の組み合わせは、特に限定されない。元素X1と元素X2の組み合わせは、金属元素同士、半導体元素同士の組み合わせであってもよい。いずれにしろ、元素X1と元素X2を含む第3膜W3が得られる。元素Xは元素X1、X2とは異なる元素X3を含んでもよく、互いに異なる3つ以上の元素を含んでもよい。元素X3を含む原料ガスの供給が実施されてもよい。
【0053】
次に、図6図8を参照して、ステップS101で準備する基板Wが表面Waに凹部Wa1を有し、凹部Wa1の内部のみで第2膜W2が露出する場合について説明する。第2膜W2は、図6図8に示すように、少なくとも凹部Wa1の底面で露出する。この場合、ステップS102以降の処理を実施することで、凹部Wa1の内部に第3膜W3を充填することができる。なお、図6図8において、第3膜W3は、凹部Wa1の一部を埋めるが、凹部Wa1の全体を埋めてもよい。後者の場合、図8において、第1膜W1は、エッチングによって第2膜W2の凸部の頂面にのみ残してもよい。
【0054】
図6のステップS101では、先ず、第2膜W2の表面全体に第1膜W1を形成し、次に第1膜W1の表面の一部をエッチングする。その結果、凹部Wa1が第1膜W1の一部を貫通して形成され、第2膜W2が凹部Wa1の底面のみで露出する。その後、ステップS102以降の処理を実施することで、凹部Wa1の底面のみで第3膜W3が成長する。
【0055】
図7のステップS101では、先ず、第2膜W2の表面の一部をエッチングして第2膜W2の表面に凹部を形成する。次に、その凹部を埋める第1膜W1を形成する。次に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)又はエッチングにより第2膜W2が露出するまで第1膜W1を加工する。最後に、第1膜W1に対して第2膜W2を選択的にエッチングする。その結果、凹部Wa1が第1膜W1の一部を貫通して形成され、第2膜W2が凹部Wa1の底面のみで露出する。その後、ステップS102以降の処理を実施することで、凹部Wa1の底面のみで第3膜W3が成長する。
【0056】
図8のステップS101では、先ず、第2膜W2の表面の一部をエッチングして第2膜W2の表面に凹部を形成する。次に、その凹部の内部に対して凹部の外部(つまり凸部の頂面)に選択的に第1膜W1を形成する。その結果、第2膜W2が凹部Wa1の底面と側面の下部で露出する。なお、ステップS101の途中で第1膜W1が凹部Wa1の底面にも堆積してしまう場合、底面に堆積した第1膜W1はエッチングなどで除去される。その後、ステップS102以降の処理を実施することで、凹部Wa1の底面と側面の下部で第3膜W3が成長する。
【0057】
次に、図9図11を参照して、ステップS101で準備する基板Wが表面Waに凹部Wa1を有し、凹部Wa1の内部のみで第1膜W1が露出する場合について説明する。第1膜W1は、図9図11に示すように、少なくとも凹部Wa1の底面で露出する。この場合、ステップS102以降の処理を実施することで、凹部Wa1の底面以外に第3膜W3を形成できる。
【0058】
図9のステップS101では、先ず、第1膜W1の表面全体に第2膜W2を形成し、次に第2膜W2の表面の一部をエッチングする。その結果、凹部Wa1が第2膜W2の一部を貫通して形成され、第1膜W1が凹部Wa1の底面のみで露出する。その後、ステップS102以降の処理を実施することで、凹部Wa1の側面と凹部Wa1の外部(凸部の頂面)で第3膜W3が成長する。
【0059】
図10のステップS101では、先ず、第1膜W1の表面の一部をエッチングして第1膜W1の表面に凹部を形成する。次に、その凹部を埋める第2膜W2を形成する。次に、CMP又はエッチングにより第1膜W1が露出するまで第2膜W2を加工する。最後に、第2膜W2に対して第1膜W1を選択的にエッチングする。その結果、凹部Wa1が第2膜W2の一部を貫通して形成され、第1膜W1が凹部Wa1の底面のみで露出する。その後、ステップS102以降の処理を実施することで、凹部Wa1の側面と凹部Wa1の外部(凸部の頂面)で第3膜W3が成長する。
【0060】
図11のステップS101では、先ず、第1膜W1の表面の一部をエッチングして第1膜W1の表面に凹部を形成する。次に、その凹部の内部に対して凹部の外部(つまり凸部の頂面)に選択的に第2膜W2を形成する。その結果、第1膜W1が凹部Wa1の底面と側面の下部で露出する。なお、ステップS101の途中で第2膜W2が凹部Wa1の底面にも堆積してしまう場合、底面に堆積した第2膜W2はエッチングなどで除去される。その後、ステップS102以降の処理を実施することで、凹部Wa1の外部(つまり凸部の頂面)と凹部Wa1の側面の上部とで第3膜W3が成長する。第3膜W3は、図11に示すように凹部Wa1の内部の空隙(エアギャップ)を閉じ込めてもよい。
【0061】
次に、図12を参照して、ステップS101の変形例について説明する。図12のステップS101では、先ず凹凸パターンを有する第2膜W2を準備する。次に、ALD法又はCVD法で、第2膜W2の全体に、第2膜W2の凹凸パターンに沿って第1膜W1を形成する。次に、CMP又はエッチングによって、第2膜W2の凸部の頂面を露出する。このとき、第2膜W2の凹部の側面と底面には、第1膜W1を残す。その後、ステップS102以降の処理を実施することで、凸部の頂面に第3膜W3を形成できる。
【0062】
次に、図13を参照して、ステップS101の別の変形例について説明する。図13のステップS101では、先ず凹凸パターンを有する第2膜W2を準備する。次に、第2膜W2の凹部を埋める第1膜W1を形成する。第1膜W1は、液体である。液体は、例えば、トリスジメチルアミノボラン(TDMAB:C18BN)などの有機配位子を有するB含有分子を、Nプラズマなどで重合させたものである。次に、第2膜W2の凹部に埋め込んだ液体をOプラズマなどで分解させ、第2膜W2の凹部の側面と底面に第1膜W1を残す。第2膜W2の凸部の頂面は、露出したままである。図示しないが、第2膜W2の凹部に埋め込んだ液体をHプラズマなどで改質し、第2膜W2の凹部に埋め込まれた第1膜W1を形成してもよい。その後、ステップS102以降の処理を実施することで、凸部の頂面に第3膜W3を形成できる。
【0063】
次に、図14図17を参照して、変形例に係る成膜方法について説明する。以下、相違点について主に説明する。ステップS101は、例えば、図16及び図17に示すように、第2膜W2と、第2膜W2とは異なる材料で形成される第4膜W4とを表面Waの異なる領域に有する基板Wを準備すること(ステップS101A)と、第2膜W2に対して第4膜W4の上に選択的に第1膜W1を形成すること(ステップS101B)と、を含んでもよい。
【0064】
第4膜W4は、第2膜W2に対して第4膜W4の上に選択的に第1膜W1を形成できるものであればよく、絶縁膜、導電膜、半導体膜のいずれでもよい。例えば、第2膜W2に対する第1膜W1のインキュベーションタイムが、第4膜W4に対する第1膜W1のインキュベーションタイムよりも長ければよい。このインキュベーションタイムの差を利用して、選択的に第1膜W1を形成できる。インキュベーションタイムとは、成膜処理の開始(例えば原料ガス又は反応ガスの供給開始)から、実際に成膜が開始するまでの時間差のことである。
【0065】
ステップS101Bは、図15に示すように、例えばステップS101a~S101eを有する。なお、ステップS101Bは、ステップS101a及びS101cを有すればよく、ステップS101b、S101d及びS101eを有しなくてもよい。以下、ステップS101a~S101eについて説明する。
【0066】
ステップS101aは、基板表面Waに対して第2原料ガスを供給することを含む。第2原料ガスは、ボロンを含有する。第2原料ガスは、例えばトリスジメチルアミノボラン(TDMAB:C18BN)を含む。第2原料ガスは、希釈ガスと共に供給してもよい。希釈ガスは、例えばArガス又はNガスである。
【0067】
なお、第2原料ガスは、TDMABを含むものには限定されず、例えば、ジボラン(B)、三塩化ホウ素(BCl)、三フッ化ホウ素(BF)、トリスエチルメチルアミノボラン(C24BN)、トリメチルボラン(CB)、又はトリエチルボラン(C15B)、シクロトリボラザン(B)等を含むものであってもよい。
【0068】
ステップS101bは、基板表面Waに対してパージガスを供給することを含む。パージガスは、上記ステップS101aで基板表面Waに吸着しなかった余剰の第2原料ガスをパージする。パージガスとしては、例えば、Arガス等の希ガス又はNガスが用いられる。
【0069】
ステップS101cは、基板表面Waに対して第2反応ガスを供給することを含む。第2反応ガスは、基板表面Waにおいて第2原料ガスの吸着物と反応することで、第1膜W1を形成する。第2反応ガスは、例えば、窒素含有ガス、酸素含有ガス、及び還元性ガスの少なくとも1つを含む。窒素含有ガスは、第2原料ガスを窒化することで、窒化ボロン膜を形成する。窒素含有ガスは、例えばNH、N、N又はNを含む。酸素含有ガスは、第2原料ガスを酸化することで、酸化ボロン膜を形成する。酸素含有ガスは、例えばO、O、HO、NO又はNOを含む。還元性ガスは、第2原料ガスを還元することで、ボロン膜を形成する。還元性ガスは、例えばH、SiH又はHSガスを含む。第2反応ガスは、Arガスなどの希釈ガスと共に供給してもよい。
【0070】
ステップS101cは、第2反応ガスをプラズマ化することを含んでもよく、プラズマ化した第2反応ガスを基板表面Waに対して供給することを含んでもよい。第2反応ガスをプラズマ化することで、第1膜W1の形成を促進できる。
【0071】
なお、第2反応ガスは、上記ステップS101cのみならず、ステップS101a~S101dの全てで供給してもよい。但し、第2反応ガスのプラズマ化は、上記ステップS101cのみで実施される。第2反応ガスは、プラズマ化されることで、基板表面Waにおいて第2原料ガスの吸着物との反応が促進されるようになるからである。
【0072】
ステップS101dは、基板表面Waに対してパージガスを供給することを含む。パージガスは、上記ステップS101cで基板表面Waと反応しなかった余剰の第2反応ガスをパージする。パージガスとしては、例えば、Arガス等の希ガス又はNガスが用いられる。
【0073】
ステップS101eでは、上記ステップS101a~S101dをK(Kは1以上の整数)回実施したか否かを確認する。Kは2以上の整数であってもよく、上記ステップS101a~S101dが繰り返し実施されてもよい。第1膜W1の膜厚を厚くすることができる。
【0074】
上記ステップS101a~S101dの実施回数がK回未満である場合(ステップS101e、NO)、第1膜W1の膜厚が目標値未満であるので、上記ステップS101a~S101dを再度実施する。第1膜W1は、ステップS104で第3膜W3の形成を阻害するものであり、第4膜W4が露出しない程度に厚く形成されていることが望ましい。第4膜W4は、第1膜W1とは異なり、ボロンを実質的に含有しない。
【0075】
第1膜W1は、第4膜W4の表面上で核が成長し、隣り合う核同士が接触することで膜となると考えられる。核が十分な大きさになるまで、第4膜W4が露出する部分が分散して存在すると考えられる。したがって、第1膜W1の膜厚は、好ましくは10Å以上である。第1膜W1の膜厚が10Å未満の場合には、第4膜W4が露出する部分が存在し、第3膜W3の形成を阻害する効果が弱まると考えられる。
【0076】
一方、上記ステップS101a~S101dの実施回数がK回に達した場合(ステップS101e、YES)、第1膜W1の膜厚が目標値に達しているので、今回のステップS101が終了する。
【0077】
なお、図15に示す第1膜W1の形成方法は、ALD法であるが、CVD法であってもよい。ALD法では、第2原料ガスの供給と、第2反応ガスの供給とを交互に行う。一方、CVD法では、第2原料ガスの供給と、第2反応ガスの供給とを同時に行う。
【0078】
なお、第1膜W1は、分子が化学吸着または物理吸着した分子膜であってもよい。分子は、ガスの状態で基板表面に供給される。ガスは、分子中に基板表面の所望の領域に選択的に吸着しやすい官能基を有し、且つ分子中にボロン(B)を含む。第1膜W1は、吸着した分子が基板Wの熱により分解したものであってもよい。
【0079】
ステップS105(図14参照)は、一連の処理をN(Nは1以上の整数)回実施したか否かを確認することを含む。一連の処理は、第1膜W1の形成(ステップS101B)と第3膜W3の形成(ステップS104)とを有する。この一連の処理を、第1サイクルとも呼ぶ。第1サイクルの実施回数がN回未満である場合(ステップS105、NO)、第3膜W3の膜厚が不十分であるので、第1サイクルを再度実施する。一方、第1サイクルの実施回数がN回に達した場合(ステップS105、YES)、今回の処理が終了する。Nは、好ましくは2以上の整数である。Nが2以上の整数であれば、第1膜W1を補充しつつ、第3膜W3の膜厚を増加できる。
【0080】
次に、Nが2以上の整数である場合の成膜方法について、図16及び図17を参照して説明する。Nが2以上の整数である場合、第1サイクルが複数回繰り返し行われる。
【0081】
2回目以降のステップS101Bは、第3膜W3に対して第1膜W1の上に選択的に第1膜W1を再び形成することを含む(図16参照)。なお、1回目のステップS104(第3膜W3の形成)において、第1膜W1が薄くなることがあり、第1膜W1が消失することがある(図17参照)。第1膜W1が消失する場合、2回目以降のステップS101Bは、第1膜W1の代わりに第4膜W4の上に選択的に第1膜W1を再び形成することを含む(図17参照)。
【0082】
2回目以降のステップS104は、第1膜W1に対して第3膜W3の上に選択的に第3膜W3を再び形成することを含む。
【0083】
次に、図18を参照して、上記の成膜方法を実施する成膜装置100について説明する。図18に示すように、成膜装置100は、第1処理部200Aと、第2処理部200Bと、搬送部400と、制御部500とを有する。第1処理部200Aは、図1のステップS103を実施する。第2処理部200Bは、図1のステップS104を実施する。第1処理部200Aと第2処理部200Bとは、同様の構造を有してもよいし、異なる構造を有してもよい。
【0084】
なお、第1処理部200Aが図1のステップS103とS104の両方を実施してもよい。また、第1処理部200Aが図14のステップS101Bを実施し、第2処理部200Bが図14のステップS104を実施してもよい。第1処理部200Aと第2処理部200Bが第2搬送室411に接続されており、第2搬送室411の内部雰囲気が真空雰囲気である場合、図14のステップS103は行われなくてよい。
【0085】
搬送部400は、第1処理部200Aと第2処理部200Bに対して、基板Wを搬送する。搬送部400は、第1搬送室401と、第1搬送機構402とを有する。第1搬送室401の内部雰囲気は、大気雰囲気である。第1搬送室401の内部に、第1搬送機構402が設けられる。第1搬送機構402は、基板Wを保持するアーム403を含み、レール404に沿って走行する。レール404は、キャリアCの配列方向に延びている。
【0086】
また、搬送部400は、第2搬送室411と、第2搬送機構412とを有する。第2搬送室411の内部雰囲気は、真空雰囲気である。第2搬送室411の内部に、第2搬送機構412が設けられる。第2搬送機構412は、基板Wを保持するアーム413を含み、アーム413は、鉛直方向及び水平方向に移動可能に、且つ鉛直軸周りに回転可能に配置される。第2搬送室411には、異なるゲートバルブGを介して第1処理部200Aと第2処理部200Bが接続される。
【0087】
更に、搬送部400は、第1搬送室401と第2搬送室411の間に、ロードロック室421を有する。ロードロック室421の内部雰囲気は、図示しない調圧機構により真空雰囲気と大気雰囲気との間で切り換えられる。これにより、第2搬送室411の内部を常に真空雰囲気に維持できる。また、第1搬送室401から第2搬送室411にガスが流れ込むのを抑制できる。第1搬送室401とロードロック室421の間、及び第2搬送室411とロードロック室421の間には、ゲートバルブGが設けられる。
【0088】
制御部500は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)等の演算部501と、メモリ等の記憶部502とを有する。記憶部502には、成膜装置100において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部500は、記憶部502に記憶されたプログラムを演算部501に実行させることにより、成膜装置100の動作を制御する。制御部500は、第1処理部200Aと第2処理部200Bと搬送部400とを制御し、上記の成膜方法を実施する。
【0089】
次に、成膜装置100の動作について説明する。先ず、第1搬送機構402が、キャリアCから基板Wを取り出し、取り出した基板Wをロードロック室421に搬送し、ロードロック室421から退出する。次に、ロードロック室421の内部雰囲気が大気雰囲気から真空雰囲気に切り換えられる。その後、第2搬送機構412が、ロードロック室421から基板Wを取り出し、取り出した基板Wを第1処理部200Aに搬送する。
【0090】
次に、第1処理部200Aが、図1のステップS103を実施する。その後、第2搬送機構412が、第1処理部200Aから基板Wを取り出し、取り出した基板Wを第2処理部200Bに搬送する。この間、基板表面Waを真空雰囲気で保護でき、基板表面Waが大気中の有機化合物で汚染されるのを抑制できる。
【0091】
次に、第2処理部200Bが、図1のステップS104を実施する。その後、第2搬送機構412が、第2処理部200Bから基板Wを取り出し、取り出した基板Wをロードロック室421に搬送し、ロードロック室421から退出する。続いて、ロードロック室421の内部雰囲気が真空雰囲気から大気雰囲気に切り換えられる。その後、第1搬送機構402が、ロードロック室421から基板Wを取り出し、取り出した基板WをキャリアCに収容する。そして、基板Wの処理が終了する。
【0092】
なお、第1膜W1の形成(図14のステップS101B)と第3膜W3の形成(図14のステップS104)とが別々の成膜装置で行われ、一の成膜装置から別の成膜装置まで基板Wを搬送するキャリアCとして、その内部雰囲気を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気に維持するキャリアCが使用されてもよい。この場合、図14のステップS102の判断結果は「NO」となる。従って、この場合、ステップS103を行うことなく、ステップS104を行う。
【0093】
次に、図19を参照して、第1処理部200Aについて説明する。なお、第2処理部200Bは、第1処理部200Aと同様に構成されるので、図示及び説明を省略する。
【0094】
第1処理部200Aは、略円筒状の気密な処理容器210を備える。処理容器210の底壁の中央部には、排気室211が設けられている。排気室211は、下方に向けて突出する例えば略円筒状の形状を備える。排気室211には、例えば排気室211の側面において、排気配管212が接続されている。
【0095】
排気配管212には、圧力制御器271を介して排気源272が接続されている。圧力制御器271は、例えばバタフライバルブ等の圧力調整バルブを備える。排気配管212は、排気源272によって処理容器210内を減圧できるように構成されている。圧力制御器271と、排気源272とで、処理容器210内のガスを排出するガス排出機構270が構成される。
【0096】
処理容器210の側面には、搬送口215が設けられている。搬送口215は、ゲートバルブGによって開閉される。処理容器210内と第2搬送室411(図18参照)との間における基板Wの搬入出は、搬送口215を介して行われる。
【0097】
処理容器210内には、基板Wを保持する保持部であるステージ220が設けられている。ステージ220は、基板表面Waを上に向けて、基板Wを水平に保持する。ステージ220は、平面視で略円形状に形成されており、支持部材221によって支持されている。ステージ220の表面には、例えば直径が300mmの基板Wを載置するための略円形状の凹部222が形成されている。凹部222は、基板Wの直径よりも僅かに大きい内径を有する。凹部222の深さは、例えば基板Wの厚さと略同一に構成される。ステージ220は、例えば窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料により形成されている。また、ステージ220は、ニッケル(Ni)等の金属材料により形成されていてもよい。なお、凹部222の代わりにステージ220の表面の周縁部に基板Wをガイドするガイドリングを設けてもよい。
【0098】
ステージ220には、例えば接地された下部電極223が埋設される。下部電極223の下方には、加熱機構224が埋設される。加熱機構224は、制御部500(図18参照)からの制御信号に基づいて電源部(図示せず)から給電されることによって、ステージ220に載置された基板Wを設定温度に加熱する。ステージ220の全体が金属によって構成されている場合には、ステージ220の全体が下部電極として機能するので、下部電極223をステージ220に埋設しなくてよい。ステージ220には、ステージ220に載置された基板Wを保持して昇降するための複数本(例えば3本)の昇降ピン231が設けられている。昇降ピン231の材料は、例えばアルミナ(Al)等のセラミックスや石英等であってよい。昇降ピン231の下端は、支持板232に取り付けられている。支持板232は、昇降軸233を介して処理容器210の外部に設けられた昇降機構234に接続されている。
【0099】
昇降機構234は、例えば排気室211の下部に設置されている。ベローズ235は、排気室211の下面に形成された昇降軸233用の開口部219と昇降機構234との間に設けられている。支持板232の形状は、ステージ220の支持部材221と干渉せずに昇降できる形状であってもよい。昇降ピン231は、昇降機構234によって、ステージ220の表面の上方と、ステージ220の表面の下方との間で、昇降自在に構成される。
【0100】
処理容器210の天壁217には、絶縁部材218を介してガス供給部240が設けられている。ガス供給部240は、上部電極を成しており、下部電極223に対向している。ガス供給部240には、整合器251を介して高周波電源252が接続されている。高周波電源252から上部電極(ガス供給部240)に100kHz~2.45GHz、好ましくは450kHz~100MHzの高周波電力を供給することによって、上部電極(ガス供給部240)と下部電極223との間に高周波電界が生成され、容量結合プラズマが生成する。プラズマを生成するプラズマ生成部250は、整合器251と、高周波電源252と、を含む。なお、プラズマ生成部250は、容量結合プラズマに限らず、誘導結合プラズマ又はリモートプラズマなど他のプラズマを生成するものであってもよい。なお、プラズマを生成しない工程では、ガス供給部240が上部電極を成すことは不要であり、下部電極223も不要である。
【0101】
ガス供給部240は、中空状のガス供給室241を備える。ガス供給室241の下面には、処理容器210内へ処理ガスを分散供給するための多数の孔242が例えば均等に配置されている。ガス供給部240における例えばガス供給室241の上方には、加熱機構243が埋設されている。加熱機構243は、制御部500からの制御信号に基づいて電源部(図示せず)から給電されることによって、設定温度に加熱される。
【0102】
ガス供給室241には、ガス供給路261を介して、ガス供給機構260が接続される。ガス供給機構260は、ガス供給路261を介してガス供給室241に、図1又は図14の工程で使用されるガスを供給する。ガス供給機構260は、図示しないが、ガスの種類毎に、個別配管と、個別配管の途中に設けられる開閉バルブと、個別配管の途中に設けられる流量制御器とを含む。開閉バルブが個別配管を開くと、供給源からガス供給路261にガスが供給される。その供給量は流量制御器によって制御される。一方、開閉バルブが個別配管を閉じると、供給源からガス供給路261へのガスの供給が停止される。
【0103】
[実施例]
次に、実施例などについて説明する。下記の例1、例4、例7及び例9が実施例であり、下記の例2~例3、例5~例6、例8及び例10が比較例である。
【0104】
[例1]
例1では、図20に示すように基板表面にBN膜W1-1とSiO膜W2-1とを有しており且つ基板表面を大気雰囲気に曝した基板を準備し、表1に示す処理条件で図1のステップS103~S104を実施した。例1において、第1膜はBN膜W1-1であり、第2膜はSiO膜W2-1であり、洗浄ガスはOガスであり、原料ガスはTiClガスであり、反応ガスはNHガスであり、第3膜はTiN膜W3-1であった。
【0105】
【表1】
【0106】
表1において、「RF」の「ON」は高周波電力によってガスをプラズマ化したことを意味する。「RF」の「OFF」はガスのプラズマ化を実施しなかったことを意味する。下記の表2、表3及び表4において、同様である。表1に示すように、S103bとS104cにおいてガスをプラズマ化した。
【0107】
表1に示すように、S103は、S103aとS103bとS103cをこの順番で1回実施した。S103aは、S103bの前にS103bで基板表面に供給する洗浄ガス(例1ではOガス)の流量を安定化する工程である。S103bは、洗浄ガスを基板表面に供給する工程である。S103cは、基板表面に残る洗浄ガスを不活性ガスに置換する工程である。
【0108】
表1に示すように、S104は、S104aとS104bとS104fとS104cとS104dをこの順番で100回繰り返し実施した(図2に示すL=100)。S104fを除く、S104aとS104bとS104cの内容は、既述の通りである。S104fは、S104cの前にS104cで使用する反応ガスの流量を安定化する工程である。
【0109】
例1では、S103の直後からS104の直前まで、基板表面を大気雰囲気に曝すことなく、基板表面を真空雰囲気で保護した。その結果、図21に示すように、BN膜W1-1に対してSiO膜W2-1の上に選択的にTiN膜W3-1が形成された。TiN膜W3-1は、BN膜W1-1の表面には、ほとんど形成されなかった。
【0110】
また、S103の直前と直後に、それぞれ、BN膜W1-1の表面の組成をTOF-SIMS(Time of Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)で分析した結果、S103の直前に比べてS103の直後にカーボン(C)の含有量が低減していた。カーボンの含有量が低減したことから、S103によって有機化合物が除去されたことが分かる。
【0111】
[例2]
例2では、S103を実施しなかった点を除き、例1と同様に基板の処理を実施した。その結果、図22に示すように、TiN膜W3-2は、BN膜W1-2とSiO膜W2-2の両方の表面に同程度の厚みで形成された。
【0112】
例1と例2の結果から、BN膜がTiN膜の形成を阻害するには、有機化合物を予め除去することが重要であることが分かる。
【0113】
[例3]
例3では、S103を実施した後、S104を実施する前に、基板表面を大気雰囲気に40分間曝した点を除き、例1と同様に基板の処理を実施した。その結果、図23に示すように、BN膜W1-3がTiN膜W3-3の成膜を阻害しており、BN膜W1-3の表面とSiO膜W2-3の表面とでTiN膜W3-3の膜厚に差が認められた。但し、TiN膜W3-3は、BN膜W1-3とSiO膜W2-3の両方の表面に形成された。
【0114】
例1と例3の結果から、BN膜がTiN膜の形成を十分に阻害するには、有機化合物を除去した直後から、TiN膜を形成する直前まで、基板表面を大気雰囲気に曝さないことが重要であることが分かる。
【0115】
[例4]
例4では、表2に示す処理条件で図1のステップS103~S104を実施した点を除き、例1と同様に基板の処理を実施した。例4において、第1膜はBN膜W1-4であり、第2膜はSiO膜W2-4であり、洗浄ガスはOガスであり、原料ガスはTiClガスであり、反応ガスはOガスであり、第3膜はTiO膜W3-4であった。Oガスを発生させるオゾン発生器は、Oガスの供給経路の途中に設けた。
【0116】
【表2】
【0117】
表2に示すように、S103は、例1と同様にS103aとS103bとS103cをこの順番で1回実施した。また、表2に示すように、S104は、例1とは異なりS104aとS104cを同時に1回実施した。表2に示すように、S103bではガスをプラズマ化したが、S104cではガスをプラズマ化しなかった。
【0118】
例4では、S103の直後からS104の直前まで、基板表面を大気雰囲気に曝すことなく、基板表面を真空雰囲気で保護した。その結果、図24に示すように、BN膜W1-4に対してSiO膜W2-4の上に選択的にTiO膜W3-4が形成された。TiO膜W3-4は、BN膜W1-4の表面には、ほとんど形成されなかった。
【0119】
[例5]
例5では、S103を実施しなかった点を除き、例4と同様に基板の処理を実施した。その結果、図25に示すように、TiO膜W3-5は、BN膜W1-5とSiO膜W2-5の両方の表面に同程度の厚みで形成された。
【0120】
例4と例5の結果から、BN膜がTiO膜の形成を阻害するには、有機化合物を予め除去することが重要であることが分かる。
【0121】
[例6]
例6では、S103を実施した後、S104を実施する前に、基板表面を大気雰囲気に5分間曝した点を除き、例4と同様に基板の処理を実施した。その結果、図26に示すように、BN膜W1-6がTiO膜W3-6の成膜を阻害しており、BN膜W1-6の表面とSiO膜W2-6の表面とでTiO膜W3-6の膜厚に差が認められた。但し、TiO膜W3-6は、BN膜W1-6とSiO膜W2-6の両方の表面に形成された。
【0122】
例4と例6の結果から、BN膜がTiO膜の形成を十分に阻害するには、有機化合物を除去した直後から、TiO膜を形成する直前まで、基板表面を大気雰囲気に曝さないことが重要であることが分かる。
【0123】
[例7]
例7では、図27に示すように基板表面にBN膜W1-7とSi膜W2-7とを有しており且つ基板表面を大気雰囲気に曝した基板を準備し、表3に示す処理条件で図1のステップS103~S104を実施した。例7において、第1膜はBN膜W1-7であり、第2膜はSi膜(詳細にはアモルファスSi膜)W2-7であり、洗浄ガスはOガスであり、原料ガスはSiClガスであり、反応ガスはNHガスであり、第3膜はSiN膜W3-7であった。
【0124】
【表3】
【0125】
表3に示すように、S103は、例1と同様にS103aとS103bとS103cをこの順番で1回実施した。また、表3に示すように、S104は、S104aとS104bとS104fとS104cとS104dをこの順番で300回繰り返し実施した(図2に示すL=300)。表3に示すように、S103bではガスをプラズマ化したが、S104cではガスをプラズマ化しなかった。
【0126】
例7では、S103の直後からS104の直前まで、基板表面を大気雰囲気に曝すことなく、基板表面を真空雰囲気で保護した。その結果、図28に示すように、BN膜W1-7に対してSi膜W2-7の上に選択的にSiN膜W3-7が形成された。SiN膜W3-7は、BN膜W1-7の表面には、ほとんど形成されなかった。
【0127】
[例8]
例8では、S103を実施しなかった点を除き、例7と同様に基板の処理を実施した。その結果、図29に示すように、SiN膜W3-8は、BN膜W1-8とSi膜W2-8の両方の表面に同程度の厚みで形成された。
【0128】
例7と例8の結果から、BN膜がSiN膜の形成を阻害するには、有機化合物を予め除去することが重要であることが分かる。
【0129】
[例9]
例9では、表4に示す処理条件で図1のステップS103~S104を実施した点を除き、例1と同様に基板の処理を実施した。例9において、第1膜はBN膜W1-9であり、第2膜はSiO膜W2-9であり、洗浄ガスはOガスであり、原料ガスはTiClガスであり、反応ガスはHガスであり、第3膜はTi膜W3-9であった。
【0130】
【表4】
【0131】
表4に示すように、S103は、例1と同様にS103aとS103bとS103cをこの順番で1回実施した。また、表4に示すように、S104は、S104aとS104bとS104fとS104cとS104dをこの順番で300回繰り返し実施した(図2に示すL=300)。表4に示すように、S103bとS104cにおいてガスをプラズマ化した。
【0132】
例9では、S103の直後からS104の直前まで、基板表面を大気雰囲気に曝すことなく、基板表面を真空雰囲気で保護した。その結果、図30に示すように、BN膜W1-9に対してSiO膜W2-9の上に選択的にTi膜W3-9が形成された。Ti膜W3-9は、BN膜W1-9の表面には、ほとんど形成されなかった。
【0133】
[例10]
例10では、S103を実施しなかった点を除き、例9と同様に基板の処理を実施した。その結果、図31に示すように、Ti膜W3-10は、BN膜W1-10とSiO膜W2-10の両方の表面に同程度の厚みで形成された。
【0134】
例9と例10の結果から、BN膜がTi膜の形成を阻害するには、有機化合物を予め除去することが重要であることが分かる。
【0135】
以上、本開示に係る成膜方法及び成膜装置の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0136】
W 基板
W1 第1膜
W2 第2膜
W3 第3膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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