(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106554
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
C23C 16/38 20060101AFI20240801BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240801BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240801BHJP
H01L 21/316 20060101ALN20240801BHJP
H01L 21/318 20060101ALN20240801BHJP
【FI】
C23C16/38
C23C16/455
H01L21/31 B
H01L21/316 X
H01L21/318 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010863
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】藤田 成樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠介
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA07
4K030AA12
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA18
4K030BA18
4K030BA26
4K030BA29
4K030BA38
4K030BA39
4K030BA42
4K030BA44
4K030CA11
4K030FA01
4K030HA01
4K030JA10
4K030JA11
4K030KA30
5F045AA06
5F045AA08
5F045AA15
5F045AB31
5F045AB32
5F045AB33
5F045AC00
5F045AC02
5F045AC05
5F045AC11
5F045AC12
5F045AD07
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AD11
5F045AD12
5F045AE01
5F045AF12
5F045AF20
5F045DC69
5F045DP03
5F045DQ10
5F045DQ17
5F045EE17
5F045EF05
5F045EH05
5F045EH13
5F045EK07
5F058BA20
5F058BB05
5F058BB06
5F058BC02
5F058BC03
5F058BC08
5F058BC09
5F058BD04
5F058BD05
5F058BD10
5F058BD12
5F058BF04
5F058BF07
5F058BF24
5F058BF29
5F058BF30
5F058BF37
5F058BJ02
5F058BJ06
(57)【要約】
【課題】ボロンを含有する第1膜に対して、第1膜とは異なる材料で形成される第2膜の上に第3膜を選択的に形成する、技術を提供する。
【解決手段】成膜方法は、ボロンを含有する第1膜と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜とを表面の異なる領域に有する基板を準備することと、前記第1膜に対して前記第2膜の上に選択的に第3膜を形成することと、を有する。前記第3膜を形成することは、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する原料ガスを前記基板の前記表面に対して供給することと、前記原料ガスの吸着物と反応する反応ガスを前記基板の前記表面に対して供給することで前記元素Xを含有する前記第3膜を形成することと、を含み、且つ前記原料ガスの供給と前記反応ガスの供給とを交互に又は同時に行うことを繰り返す間に、前記第1膜の表面における前記原料ガスの吸着を抑制すべく前記第1膜の表面における前記反応ガスの吸着物を置換する置換ガスを供給することを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボロンを含有する第1膜と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜とを表面の異なる領域に有する基板を準備することと、
前記第1膜に対して前記第2膜の上に選択的に第3膜を形成することと、
を有し、
前記第3膜を形成することは、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する原料ガスを前記基板の前記表面に対して供給することと、前記原料ガスの吸着物と反応する反応ガスを前記基板の前記表面に対して供給することで前記元素Xを含有する前記第3膜を形成することと、を含み、且つ前記原料ガスの供給と前記反応ガスの供給とを交互に又は同時に行うことを繰り返す間に、前記第1膜の表面における前記原料ガスの吸着を抑制すべく前記第1膜の表面における前記反応ガスの吸着物を置換する置換ガスを供給することを含む、成膜方法。
【請求項2】
前記基板を準備することは、前記第2膜に対して前記第2膜とは異なる材料で形成される第4膜の上に選択的に前記第1膜を形成することを有する、請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記第3膜の形成後に、前記第3膜に対して前記第1膜又は前記第4膜の上に選択的に前記第1膜を再び形成することと、
再び形成した前記第1膜に対して前記第3膜の上に選択的に前記第3膜を再び形成することと、
を有する、請求項2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記反応ガスは、窒素を含有するガスである、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記反応ガスは、水素を含有するガスである、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項6】
前記反応ガスは、酸素を含有するガスである、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項7】
前記置換ガスは、ハロゲンを含有するガスである、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記置換ガスは、酸素を含有するガスである、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記置換ガスは、窒素を含有するガスである、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項10】
前記第2膜は、ボロンを実質的に含有しない、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項11】
前記第3膜を形成する前に、前記基板は前記第1膜と前記第2膜を含む前記表面に凹部を有し、前記凹部の内部のみで前記第1膜が露出しており、前記第1膜は少なくとも前記凹部の底面で露出する、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項12】
前記第3膜を形成する前に、前記基板は前記第1膜と前記第2膜を含む前記表面に凹部を有し、前記凹部の内部のみで前記第2膜が露出しており、前記第2膜は少なくとも前記凹部の底面で露出する、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項13】
前記元素Xは、金属元素を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項14】
前記元素Xは、遷移金属元素を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項15】
前記元素Xは、半導体元素を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項16】
前記第3膜を形成することは、前記原料ガスと前記反応ガスとを交互に供給することを含み、前記反応ガスをプラズマ化して供給することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項17】
前記第3膜を形成することは、前記元素Xとして元素X1を含む前記原料ガスの供給と、前記元素Xとして前記元素X1とは異なる元素X2を含む前記原料ガスの供給と、前記反応ガスの供給とをこの順番で含む処理を1回以上行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項18】
前記第3膜を形成することは、前記元素Xとして元素X1を含む前記原料ガスの供給と、前記反応ガスの供給とをこの順番で含む処理を1回以上行い、また、前記元素Xとして前記元素X1とは異なる元素X2を含む前記原料ガスの供給と、前記反応ガスの供給とをこの順番で含む処理を1回以上行う、請求項1~3のいずれか1項の成膜方法。
【請求項19】
前記基板を収容する処理容器と、
前記処理容器の内部で前記基板を保持する保持部と、
前記保持部に保持されている前記基板の前記表面に対してガスを供給する供給部と、
前記供給部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、請求項1~3に記載のいずれか1項に記載の成膜方法を実施する制御を行なう、成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、成膜方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の窒化膜の形成方法は、第1の下地膜と第2の下地膜の表面に塩素ガスを吸着させる工程と、塩素ガスを吸着させた第1の下地膜と第2の下地膜の一方に対して選択的に窒化膜を形成する工程と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、ボロンを含有する第1膜に対して、第1膜とは異なる材料で形成される第2膜の上に第3膜を選択的に形成する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様の成膜方法は、ボロンを含有する第1膜と、前記第1膜とは異なる材料で形成される第2膜とを表面の異なる領域に有する基板を準備することと、前記第1膜に対して前記第2膜の上に選択的に第3膜を形成することと、を有する。前記第3膜を形成することは、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する原料ガスを前記基板の前記表面に対して供給することと、前記原料ガスの吸着物と反応する反応ガスを前記基板の前記表面に対して供給することで前記元素Xを含有する前記第3膜を形成することと、を含み、且つ前記原料ガスの供給と前記反応ガスの供給とを交互に又は同時に行うことを繰り返す間に、前記第1膜の表面における前記原料ガスの吸着を抑制すべく前記第1膜の表面における前記反応ガスの吸着物を置換する置換ガスを供給することを含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、ボロンを含有する第1膜に対して、第1膜とは異なる材料で形成される第2膜の上に第3膜を選択的に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る成膜方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、
図1に示すS102の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図1に示すS102fの有無による違いの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すS102の変形例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図1に示すS102の別の変形例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、成膜方法の第1例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、成膜方法の第2例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、成膜方法の第3例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、成膜方法の第4例を示す断面図である。
【
図15】
図15は、変形例に係る成膜方法を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、一実施形態に係る成膜装置を示す断面図である。
【
図21】
図21は、例1の処理前の基板を示すSEM写真である。
【
図22】
図22は、例1の処理後の基板を示すSEM写真である。
【
図23】
図23は、例2の処理後の基板を示すSEM写真である。
【
図24】
図24は、例3の処理後の基板を示すSEM写真である。
【
図25】
図25は、例4の処理後の基板を示すSEM写真である。
【
図26】
図26は、例5の処理後の基板を示すSEM写真である。
【
図27】
図27は、例6の処理後の基板を示すSEM写真である。
【
図28】
図28は、例7の処理前の基板を示すSEM写真である。
【
図29】
図29は、例7の処理後の基板を示すSEM写真である。
【
図30】
図30は、例8の処理後の基板を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。
【0009】
先ず、主に
図1を参照して、一実施形態に係る成膜方法について説明する。成膜方法は、例えば
図1に示すステップS101~S102を含む。なお、成膜方法は、
図1に示すステップS101~S102以外のステップを含んでもよい。
【0010】
ステップS101は、基板Wを準備することを含む(例えば
図6参照)。基板Wは、ボロン(B)を含有する第1膜W1と、第1膜W1とは異なる材料で形成される第2膜W2とを表面Waの異なる領域に有する。第1膜W1と第2膜W2は、例えば不図示の下地基板の上に形成される。下地基板は、シリコンウェハ、又は化合物半導体ウェハである。化合物半導体ウェハは、例えばGaAsウェハ、SiCウェハ、GaNウェハ、又はInPウェハである。
【0011】
第1膜W1は、ボロン(B)を含有する。第1膜W1におけるB含有量は、例えば20原子%~100原子%であり、好ましくは40原子%~100原子%である。第1膜W1は、例えば、B膜、BN膜、BNC膜、BO膜、BNOC膜、SiBN膜、SiBCN膜又はSiOBN膜である。ここで、BN膜とは、ボロン(B)と窒素(N)を含む膜という意味である。BN膜におけるBとNの原子比は1:1には限定されない。BN膜以外のBNC膜等についても同様に各元素を含むという意味であり、化学量論比には限定されない。
【0012】
第2膜W2は、第1膜W1とは異なる材料で形成される。第2膜W2は、Bを実質的に含有しない。Bを実質的に含有しないとは、B含有量が0原子%~5原子%であることをいう。第2膜W2におけるB含有量は、少ないほど好ましい。第2膜W2は、絶縁膜、導電膜、半導体膜のいずれでもよい。
【0013】
第2膜W2としての絶縁膜は、特に限定されないが、例えばSiO膜、SiN膜、SiOC膜、SiON膜、SiOCN膜、AlO膜、ZrO膜、HfO膜、又はTiO膜である。ここで、SiO膜とは、シリコン(Si)と酸素(O)を含む膜という意味である。SiO膜におけるSiとOの原子比は、通常1:2であるが、1:2には限定されない。SiN膜、SiOC膜、SiON膜、SiOCN膜、AlO膜、ZrO膜、HfO膜、及びTiO膜についても同様に各元素を含むという意味であり、化学量論比には限定されない。絶縁膜は、例えば層間絶縁膜である。層間絶縁膜は、好ましくは低誘電率(Low-k)膜である。
【0014】
第2膜W2としての半導体膜は、特に限定されないが、例えばSi膜、SiGe膜、GaN膜である。半導体膜は、単結晶膜、多結晶膜、及びアモルファス膜のいずれでもよい。
【0015】
第2膜W2としての導電膜は、例えば金属膜である。金属膜は、特に限定されないが、例えば、Cu膜、Co膜、Ru膜、Mo膜、W膜、又はTi膜である。導電膜は、金属窒化膜であってもよい。金属窒化膜は、特に限定されないが、例えばTiN膜、又はTaN膜である。ここで、TiN膜とは、チタン(Ti)と窒素(N)を含む膜という意味である。TiN膜におけるTiとNの原子比は、通常1:1であるが、1:1には限定されない。TaN膜についても同様に各元素を含むという意味であり、化学量論比には限定されない。
【0016】
ステップS102は、第1膜W1に対して第2膜W2の上に選択的に第3膜W3を形成することを含む(
図6等参照)。ステップS102は、基板表面Waに対して、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する原料ガスと、原料ガスの吸着物と反応する反応ガスとを交互に又は同時に供給することで、元素Xを含有する第3膜W3を形成することを含む。
【0017】
ステップS102は、
図2に示すように、例えばステップS102a~S102gを有する。なお、ステップS102は、少なくともステップS102a、S102c、S102f及びS102gを有すればよく、ステップS102b、S102d及びS102eを有しなくてもよい。以下、ステップS102a~S102gについて説明する。
【0018】
ステップS102aは、基板表面Waに対して原料ガスを供給することを含む。原料ガスは、ハロゲンとハロゲン以外の元素Xを含有する。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素である。元素Xは、特に限定されないが、好ましくは金属元素であり、より好ましくは遷移金属元素である。元素Xは、例えばTi、W、V、Al、Mo、Sn、Hf、Ta、Nb、Zr、In、Ga又はSbである。原料ガスの具体例としては、TiCl4ガス、WCl6ガス、WF6ガス、VCl4ガス、AlCl3ガス、MoCl5ガス、SnCl4ガス、HfCl4ガス、TaCl5ガス、NbCl5ガス、ZrCl4ガス、InCl3ガス、GaCl3ガス又はSbCl3ガスが挙げられる。元素Xは、半導体元素であってもよく、具体的にはSi又はGeであってもよい。原料ガスは、ハロゲン化シリコンガス又はハロゲン化ゲルマニウムガスである。ハロゲン化シリコンガスの具体例としては、SiCl4ガス、SiHCl3ガス、SiH2Cl2ガス、SiH3Clガス、Si2Cl6ガス、Si2HCl5ガス、Si2Cl3CH3ガス、SiCl3CCl3ガス、SiCl3CH3ガス、又はSiH2I2ガス等が挙げられる。ハロゲン化ゲルマニウムガスの具体例としては、GeCl4ガス等が挙げられる。原料ガスは、希釈ガスと共に供給してもよい。希釈ガスは、例えばArガス又はN2ガスである。
【0019】
ステップS102bは、基板表面Waに対してパージガスを供給することを含む。パージガスは、上記ステップS102aにおいて基板表面Waに吸着しなかった余剰の原料ガスをパージする。パージガスとしては、例えば、Arガス等の希ガス又はN2ガスが用いられる。
【0020】
ステップS102cは、基板表面Waに対して反応ガスを供給することを含む。反応ガスは、原料ガスの吸着物に含まれる元素Xと反応することで、元素Xを含有する第3膜W3を形成する。反応ガスとしては、酸素含有ガス、窒素含有ガス、又は水素含有ガスが挙げられる。酸素含有ガスは、酸素を含有し、元素Xの酸化膜を形成する。酸素含有ガスは、例えばO2ガス、O3ガス、CO2ガス、N2Oガス、NOガス、又はH2Oガスである。窒素含有ガスは、窒素を含有し、元素Xの窒化膜を形成する。窒素含有ガスは、例えばNH3ガス、又はN2H4ガスである。水素含有ガスは、水素を含有し、元素Xを主成分とする膜(例えば、金属膜又は半導体膜)を形成する。水素含有ガスは、例えばH2ガス、又はH2Sガスである。反応ガスは、希釈ガスと共に供給してもよい。希釈ガスは、例えばArガス又はN2ガスである。
【0021】
ステップS102cは、反応ガスをプラズマ化することを含んでもよく、プラズマ化した反応ガスを基板表面Waに対して供給することを含んでもよい。反応ガスをプラズマ化することで、第3膜W3の形成を促進できる。
【0022】
なお、反応ガスは、上記ステップS102cのみならず、ステップS102a~S102dの全てで供給してもよい。但し、反応ガスのプラズマ化は、上記ステップS102cのみで実施される。反応ガスは、プラズマ化されることで、基板表面Waにおいて原料ガスの吸着物と反応しやすくなるからである。
【0023】
ステップS102cは、反応ガスとして、O3ガスをプラズマ化することなく、基板表面Waに対して供給することを含んでもよい。
【0024】
ステップS102dは、基板表面Waに対してパージガスを供給することを含む。パージガスは、上記ステップS102cで基板表面Waと反応しなかった余剰の反応ガスをパージする。パージガスとしては、例えば、Arガス等の希ガス又はN2ガスが用いられる。
【0025】
ステップS102eは、上記ステップS102a~S102dをL(Lは1以上の整数)回実施したか否かを確認することを含む。Lは2以上の整数であってもよく、上記ステップS102a~S102dが繰り返し実施されてもよい。第3膜W3の膜厚を厚くすることができる。
【0026】
上記ステップS102a~S102dの実施回数がL回未満である場合(ステップS102e、NO)、第3膜W3の膜厚が目標値未満であるので、上記ステップS102a~S102dを再度実施する。Lは、好ましくは200以上であり、より好ましくは300以上である。Lは、好ましくは1000以下である。
【0027】
一方、上記ステップS102a~S102dの実施回数がL回に達した場合(ステップS102e、YES)、第3膜W3の膜厚が目標値に達しているので、後述するステップS102eが行われる。
【0028】
なお、
図2に示す第3膜W3の形成方法は、ALD(Atomic Layer Deposition)法であるが、CVD(Chemical Vapor Deposition)法であってもよい。ALD法では、原料ガスの供給(ステップS102a)と、反応ガスの供給(ステップS102c)とを交互に行う。一方、CVD法では、原料ガスの供給と、反応ガスの供給とを同時に行う。
【0029】
第1膜W1の表面において第3膜W3の形成を阻害するには、第1膜W1に対する原料ガスの吸着が弱く、その結果として、第1膜W1の表面において原料ガスの吸着物が成膜反応(第3膜W3の形成)を進めることなく脱離することが重要である。または、第1膜W1の表面に対する原料ガスの吸着が起こらない、もしくは第1膜W1の表面で原料ガスの解離が生じにくいことが重要である。原料ガスの解離が生じると、成膜反応が進みやすい。
【0030】
第1膜W1はボロンを含有しているので、第1膜W1の上ではハロゲン化物の吸着が生じないか、生じても弱く、あるいはハロゲン化物の解離が生じにくいと考えられる。その結果、第1膜W1の表面において第3膜W3の形成が阻害される。
【0031】
一方、第2膜W2はボロンを実質的に含有していないので、第2膜W2の上ではハロゲン化物が強く吸着しているか、あるいはハロゲン化物の解離が生じやすいと考えられる。その結果、第2膜W2の表面において第3膜W3の形成が進むと考えられる。
【0032】
また、TiCl4などのハロゲン化物は、Ti[N(CH3)2]4などの有機金属錯体に比べて、基板Wの熱によって分解(decompose)しにくい。原料ガスが第1膜W1に吸着した後に分解してしまうと、第3膜W3の形成が進んでしまう。従って、第1膜W1の表面において第3膜W3の形成を阻害するには、第3膜W3の原料ガスとしては、ハロゲンを含有するガスが適している。
【0033】
さらに、ハロゲン化物と反応ガスを共にプラズマ化するプラズマCVD法では、ハロゲン化物が解離して生じるイオン又はラジカル等の活性種が発生する。ハロゲン化物から生じた活性種は反応性が大きく、第2膜W2の表面だけではなく、第1膜W1の表面でも成膜反応が進みやすくなると考えられる。したがって、原料ガスをプラズマ化しないことが好ましく、熱ALD法、プラズマALD法、又は熱CVD法を使用することが重要である。
【0034】
上記ステップS102a~S102dでは、第1膜W1の表面において、原料ガスの脱離を促進すべく、基板Wの温度を100℃以上に制御してもよい。基板Wの温度が100℃未満である場合、第1膜W1の表面において原料ガスの脱離が十分に起こらずに原料ガスが物理吸着してしまい、第3膜W3が第1膜W1の表面にも形成されてしまう。基板Wの温度は、好ましくは300℃以上である。基板Wの温度は、好ましくは800℃以下である。
【0035】
ステップS102fは、原料ガスの供給(ステップS102a)と反応ガスの供給(ステップS102c)とを交互に又は同時に行うことを繰り返す間に、第1膜W1の表面における原料ガスの吸着を抑制すべく第1膜W1の表面における反応ガスの吸着物を置換する置換ガスを供給することを含む。
【0036】
図3を参照して、置換ガスの供給(ステップS102f)の有無による違いの一例について説明する。
図3において、第1膜W1はBN膜であり、第2膜はSiO膜であり、原料ガスはTiCl
4ガスであり、反応ガスはNH
3ガスであり、置換ガスはCl
2ガスであり、第3膜W3はTiN膜である。
図3の左欄にS102fを行う場合の成膜の一例を示し、
図3の右欄にS102fを行わない場合の成膜の一例を示す。
【0037】
図3の右欄に示すように、置換ガスの供給(ステップS102f)を行わない場合、原料ガスの供給(ステップS102a)と反応ガスの供給(ステップS102c)とを交互に又は同時に行うことを繰り返すことで、第1膜W1の表面において第3膜W3の形成を阻害する効果が弱くなることがある。
【0038】
具体的には、第1膜W1の表面において、反応ガスの吸着物を起点として、原料ガスの吸着と第3膜W3の成膜反応が進むことがある。この現象は、反応ガスが水素含有ガスである場合に顕著である。水素を起点として、原料ガスの吸着と第3膜W3の成膜反応(原料ガスの解離を含む。)が進むと考えられる。S102aとS102cの実施回数が多くなるほど、第1膜W1の表面において第3膜W3の形成を阻害する効果が弱くなる。
【0039】
図3の左欄に示すように、ステップS102aとS102cとを交互に又は同時に行うことを繰り返す間にS102fを行うことで、第1膜W1の表面における反応ガスの吸着物(例えばNH
2)を置換ガスの吸着物(例えばCl)に置き換えることができる。これにより、第1膜W1の表面において、原料ガスの吸着(例えばTiCl
3の吸着)と第3膜W3(例えばTiN膜)の成膜反応を抑制できる。
【0040】
置換ガスは、例えばハロゲン含有ガス、酸素含有ガス、又は窒素含有ガスであってよい。置換ガスは好ましくは水素を含有しないガスであるが、置換ガスがハロゲン含有ガスである場合には置換ガスは水素を含有してもよい。ハロゲン含有ガスは、ハロゲンを含有するガスであって、例えばCl2ガス、Br2ガス、F2ガス、ClF3ガス、NF3ガス、HBrガス、HFガス、HClガス、又はHIガスなどである。酸素含有ガスは、酸素を含有するガスであって、例えばO2ガス、O3ガス、CO2ガス、N2Oガス、又はNOガスである。窒素含有ガスは、窒素を含有するガスであって、例えばN2ガスである。
【0041】
置換ガスとしてのハロゲン含有ガスは、第3膜W3に残り難い成分で構成され、具体的にはハロゲンのみで構成されるか、ハロゲンと窒素またはハロゲンと水素で構成される。置換ガスがハロゲンと水素を含む場合、ハロゲンが水素よりも強く第1膜W1の表面に吸着するため、置換ガスが水素を含んでいても吸着物の置換が進むと考えられる。置換ガスとしてハロゲン含有ガスが用いられる場合、ハロゲン含有ガスの成分は第3膜W3に残留しにくく、第3膜W3の組成は主に原料ガスと反応ガスの組み合わせで決まる。
【0042】
置換ガスが酸素含有ガスである場合には、第3膜W3に酸素が残る場合がある。反応ガスが酸素含有ガスである場合、置換ガスは酸素含有ガス又はハロゲン含有ガスであることが好ましい。一方、置換ガスが窒素含有ガスである場合には、第3膜W3に窒素が残る場合がある。反応ガスが窒素含有ガスである場合、置換ガスは窒素含有ガス又はハロゲン含有ガスであることが好ましい。
【0043】
ステップS102gは、上記ステップS102a~S102dをL(Lは1以上の整数)回実施する第1サイクルを、M(Mは2以上の整数)回実施したか否かを確認することを含む。第1サイクルの実施回数がM回未満である場合(ステップS102g、NO)、第3膜W3の膜厚が目標値未満であるので、第1サイクルを再度実施する。Mは、好ましくは200以上であり、より好ましくは300以上である。Mは、好ましくは1000以下である。
【0044】
一方、第1サイクルの実施回数がM回に達した場合(ステップS102g、YES)、第3膜W3の膜厚が目標値に達しているので、今回の処理が終了する。
【0045】
次に、
図4を参照して、ステップS102の変形例について説明する。以下、主に相違点について説明する。ステップS102は、
図4に示すように、元素Xとして元素X1を含む原料ガスの供給(ステップS102a1)と、元素Xとして元素X1とは異なる元素X2を含む原料ガスの供給(ステップS102a2)と、原料ガスの吸着物と反応する反応ガスの供給(ステップS102c)とをこの順番で含む処理を1回以上行う。
【0046】
なお、ステップS102a1とS102a2の間には、パージガスの供給(ステップS102b1)が行われてもよい。また、ステップS102a2とS102cの間には、パージガスの供給(ステップS102b2)が行われてもよい。
【0047】
次に、
図5を参照して、ステップS102の別の変形例について説明する。以下、主に相違点について説明する。ステップS102は、
図5に示すように、元素Xとして元素X1を含む原料ガスの供給(ステップS102a1)と、原料ガスの吸着物と反応する反応ガスの供給(ステップS102c1)とをこの順番で含む処理を1回以上行う。また、ステップS102は、元素Xとして元素X1とは異なる元素X2を含む原料ガスの供給(ステップS102a2)と、原料ガスの吸着物と反応する反応ガスの供給(ステップS102c2)とをこの順番で含む処理を1回以上行う。
【0048】
図5のステップS102e1において、Aは1以上の整数であればよく、2以上の整数であってもよい。Aが2以上の整数である場合、ステップS102a1、S102b1、S102c1及びS102d1が複数回繰り返し行われる。また、
図5のステップS102e2において、Bは1以上の整数であればよく、2以上の整数であってもよい。Bが2以上の整数である場合、ステップS102a2、S102b2、S102c2及びS102d2が複数回繰り返し行われる。
【0049】
なお、ステップS102a1とS102c1の間には、パージガスの供給(ステップS102b1)が行われてもよい。また、ステップS102c1の直後には、パージガスの供給(ステップS102d1)が行われてもよい。さらに、ステップS102a2とS102c2の間には、パージガスの供給(ステップS102b2)が行われてもよい。さらにまた、ステップS102c2の直後には、パージガスの供給(ステップS102d2)が行われてもよい。
【0050】
図4及び
図5において、元素X1と元素X2のいずれか1つは金属元素(好ましくは遷移金属元素)であって、残りの1つは半導体元素である。なお、
図4及び
図5において、元素X1と元素X2の組み合わせは、特に限定されない。元素X1と元素X2の組み合わせは、金属元素同士、半導体元素同士の組み合わせであってもよい。いずれにしろ、元素X1と元素X2を含む第3膜W3が得られる。元素Xは元素X1、X2とは異なる元素X3を含んでもよく、互いに異なる3つ以上の元素を含んでもよい。元素X3を含む原料ガスの供給が実施されてもよい。
【0051】
次に、
図7~
図9を参照して、ステップS101で準備する基板Wが表面Waに凹部Wa1を有し、凹部Wa1の内部のみで第2膜W2が露出する場合について説明する。第2膜W2は、
図7~
図9に示すように、少なくとも凹部Wa1の底面で露出する。この場合、ステップS102以降の処理を実施することで、凹部Wa1の内部に第3膜W3を充填することができる。なお、
図7~
図9において、第3膜W3は、凹部Wa1の一部を埋めるが、凹部Wa1の全体を埋めてもよい。後者の場合、
図9において、第1膜W1は、エッチングによって第2膜W2の凸部の頂面にのみ残してもよい。
【0052】
図7のステップS101では、先ず、第2膜W2の表面全体に第1膜W1を形成し、次に第1膜W1の表面の一部をエッチングする。その結果、凹部Wa1が第1膜W1の一部を貫通して形成され、第2膜W2が凹部Wa1の底面のみで露出する。その後、ステップS102以降の処理を実施することで、凹部Wa1の底面のみで第3膜W3が成長する。
【0053】
図8のステップS101では、先ず、第2膜W2の表面の一部をエッチングして第2膜W2の表面に凹部を形成する。次に、その凹部を埋める第1膜W1を形成する。次に、CMP(Chemical Mechanical Polishing)又はエッチングにより第2膜W2が露出するまで第1膜W1を加工する。最後に、第1膜W1に対して第2膜W2を選択的にエッチングする。その結果、凹部Wa1が第1膜W1の一部を貫通して形成され、第2膜W2が凹部Wa1の底面のみで露出する。その後、ステップS102以降の処理を実施することで、凹部Wa1の底面のみで第3膜W3が成長する。
【0054】
図9のステップS101では、先ず、第2膜W2の表面の一部をエッチングして第2膜W2の表面に凹部を形成する。次に、その凹部の内部に対して凹部の外部(つまり凸部の頂面)に選択的に第1膜W1を形成する。その結果、第2膜W2が凹部Wa1の底面と側面の下部で露出する。なお、ステップS101の途中で第1膜W1が凹部Wa1の底面にも堆積してしまう場合、底面に堆積した第1膜W1はエッチングなどで除去される。その後、ステップS102以降の処理を実施することで、凹部Wa1の底面と側面の下部で第3膜W3が成長する。
【0055】
次に、
図10~
図12を参照して、ステップS101で準備する基板Wが表面Waに凹部Wa1を有し、凹部Wa1の内部のみで第1膜W1が露出する場合について説明する。第1膜W1は、
図10~
図12に示すように、少なくとも凹部Wa1の底面で露出する。この場合、ステップS102以降の処理を実施することで、凹部Wa1の底面以外に第3膜W3を形成できる。
【0056】
図10のステップS101では、先ず、第1膜W1の表面全体に第2膜W2を形成し、次に第2膜W2の表面の一部をエッチングする。その結果、凹部Wa1が第2膜W2の一部を貫通して形成され、第1膜W1が凹部Wa1の底面のみで露出する。その後、ステップS102以降の処理を実施することで、凹部Wa1の側面と凹部Wa1の外部(凸部の頂面)で第3膜W3が成長する。
【0057】
図11のステップS101では、先ず、第1膜W1の表面の一部をエッチングして第1膜W1の表面に凹部を形成する。次に、その凹部を埋める第2膜W2を形成する。次に、CMP又はエッチングにより第1膜W1が露出するまで第2膜W2を加工する。最後に、第2膜W2に対して第1膜W1を選択的にエッチングする。その結果、凹部Wa1が第2膜W2の一部を貫通して形成され、第1膜W1が凹部Wa1の底面のみで露出する。その後、ステップS102以降の処理を実施することで、凹部Wa1の側面と凹部Wa1の外部(凸部の頂面)で第3膜W3が成長する。
【0058】
図12のステップS101では、先ず、第1膜W1の表面の一部をエッチングして第1膜W1の表面に凹部を形成する。次に、その凹部の内部に対して凹部の外部(つまり凸部の頂面)に選択的に第2膜W2を形成する。その結果、第1膜W1が凹部Wa1の底面と側面の下部で露出する。なお、ステップS101の途中で第2膜W2が凹部Wa1の底面にも堆積してしまう場合、底面に堆積した第2膜W2はエッチングなどで除去される。その後、ステップS102以降の処理を実施することで、凹部Wa1の外部(つまり凸部の頂面)と凹部Wa1の側面の上部とで第3膜W3が成長する。第3膜W3は、
図12に示すように凹部Wa1の内部の空隙(エアギャップ)を閉じ込めてもよい。
【0059】
次に、
図13を参照して、ステップS101の変形例について説明する。
図13のステップS101では、先ず凹凸パターンを有する第2膜W2を準備する。次に、ALD法又はCVD法で、第2膜W2の全体に、第2膜W2の凹凸パターンに沿って第1膜W1を形成する。次に、CMP又はエッチングによって、第2膜W2の凸部の頂面を露出する。このとき、第2膜W2の凹部の側面と底面には、第1膜W1を残す。その後、ステップS102以降の処理を実施することで、凸部の頂面に第3膜W3を形成できる。
【0060】
次に、
図14を参照して、ステップS101の別の変形例について説明する。
図14のステップS101では、先ず凹凸パターンを有する第2膜W2を準備する。次に、第2膜W2の凹部を埋める第1膜W1を形成する。第1膜W1は、液体である。液体は、例えば、トリスジメチルアミノボラン(TDMAB:C
6H
18BN
3)などの有機配位子を有するB含有分子を、N
2プラズマなどで重合させたものである。次に、第2膜W2の凹部に埋め込んだ液体をO
2プラズマなどで分解させ、第2膜W2の凹部の側面と底面に第1膜W1を残す。第2膜W2の凸部の頂面は、露出したままである。図示しないが、第2膜W2の凹部に埋め込んだ液体をH
2プラズマなどで改質し、第2膜W2の凹部に埋め込まれた第1膜W1を形成してもよい。その後、ステップS102以降の処理を実施することで、凸部の頂面に第3膜W3を形成できる。
【0061】
次に、
図15~
図18を参照して、変形例に係る成膜方法について説明する。以下、相違点について主に説明する。ステップS101は、例えば、
図17及び
図18に示すように、第2膜W2と、第2膜W2とは異なる材料で形成される第4膜W4とを表面Waの異なる領域に有する基板Wを準備すること(ステップS101A)と、第2膜W2に対して第4膜W4の上に選択的に第1膜W1を形成すること(ステップS101B)と、を含んでもよい。
【0062】
第4膜W4は、第2膜W2に対して第4膜W4の上に選択的に第1膜W1を形成できるものであればよく、絶縁膜、導電膜、半導体膜のいずれでもよい。例えば、第2膜W2に対する第1膜W1のインキュベーションタイムが、第4膜W4に対する第1膜W1のインキュベーションタイムよりも長ければよい。このインキュベーションタイムの差を利用して、選択的に第1膜W1を形成できる。インキュベーションタイムとは、成膜処理の開始(例えば原料ガス又は反応ガスの供給開始)から、実際に成膜が開始するまでの時間差のことである。
【0063】
ステップS101Bは、
図16に示すように、例えばステップS101a~S101eを有する。なお、ステップS101Bは、ステップS101a及びS101cを有すればよく、ステップS101b、S101d及びS101eを有しなくてもよい。以下、ステップS101a~S101eについて説明する。
【0064】
ステップS101aは、基板表面Waに対して第2原料ガスを供給することを含む。第2原料ガスは、ボロンを含有する。第2原料ガスは、例えばトリスジメチルアミノボラン(TDMAB:C6H18BN3)を含む。第2原料ガスは、希釈ガスと共に供給してもよい。希釈ガスは、例えばArガス又はN2ガスである。
【0065】
なお、第2原料ガスは、TDMABを含むものには限定されず、例えば、ジボラン(B2H6)、三塩化ホウ素(BCl3)、三フッ化ホウ素(BF3)、トリスエチルメチルアミノボラン(C9H24BN3)、トリメチルボラン(C3H9B)、又はトリエチルボラン(C6H15B)、シクロトリボラザン(B3N3H6)等を含むものであってもよい。
【0066】
ステップS101bは、基板表面Waに対してパージガスを供給することを含む。パージガスは、上記ステップS101aで基板表面Waに吸着しなかった余剰の第2原料ガスをパージする。パージガスとしては、例えば、Arガス等の希ガス又はN2ガスが用いられる。
【0067】
ステップS101cは、基板表面Waに対して第2反応ガスを供給することを含む。第2反応ガスは、基板表面Waにおいて第2原料ガスの吸着物と反応することで、第1膜W1を形成する。第2反応ガスは、例えば、窒素含有ガス、酸素含有ガス、及び還元性ガスの少なくとも1つを含む。窒素含有ガスは、第2原料ガスを窒化することで、窒化ボロン膜を形成する。窒素含有ガスは、例えばNH3、N2、N2H4又はN2H2を含む。酸素含有ガスは、第2原料ガスを酸化することで、酸化ボロン膜を形成する。酸素含有ガスは、例えばO2、O3、H2O、NO又はN2Oを含む。還元性ガスは、第2原料ガスを還元することで、ボロン膜を形成する。還元性ガスは、例えばH2、SiH4又はH2Sガスを含む。第2反応ガスは、Arガスなどの希釈ガスと共に供給してもよい。
【0068】
ステップS101cは、第2反応ガスをプラズマ化することを含んでもよく、プラズマ化した第2反応ガスを基板表面Waに対して供給することを含んでもよい。第2反応ガスをプラズマ化することで、第1膜W1の形成を促進できる。
【0069】
なお、第2反応ガスは、上記ステップS101cのみならず、ステップS101a~S101dの全てで供給してもよい。但し、第2反応ガスのプラズマ化は、上記ステップS101cのみで実施される。第2反応ガスは、プラズマ化されることで、基板表面Waにおいて第2原料ガスの吸着物との反応が促進されるようになるからである。
【0070】
ステップS101dは、基板表面Waに対してパージガスを供給することを含む。パージガスは、上記ステップS101cで基板表面Waと反応しなかった余剰の第2反応ガスをパージする。パージガスとしては、例えば、Arガス等の希ガス又はN2ガスが用いられる。
【0071】
ステップS101eでは、上記ステップS101a~S101dをK(Kは1以上の整数)回実施したか否かを確認する。Kは2以上の整数であってもよく、上記ステップS101a~S101dが繰り返し実施されてもよい。第1膜W1の膜厚を厚くすることができる。
【0072】
上記ステップS101a~S101dの実施回数がK回未満である場合(ステップS101e、NO)、第1膜W1の膜厚が目標値未満であるので、上記ステップS101a~S101dを再度実施する。第1膜W1は、ステップS102で第3膜W3の形成を阻害するものであり、第4膜W4が露出しない程度に厚く形成されていることが望ましい。第4膜W4は、第1膜W1とは異なり、ボロンを実質的に含有しない。
【0073】
第1膜W1は、第4膜W4の表面上で核が成長し、隣り合う核同士が接触することで膜となると考えられる。核が十分な大きさになるまで、第4膜W4が露出する部分が分散して存在すると考えられる。したがって、第1膜W1の膜厚は、好ましくは10Å以上である。第1膜W1の膜厚が10Å未満の場合には、第4膜W4が露出する部分が存在し、第3膜W3の形成を阻害する効果が弱まると考えられる。
【0074】
一方、上記ステップS101a~S101dの実施回数がK回に達した場合(ステップS101e、YES)、第1膜W1の膜厚が目標値に達しているので、今回のステップS101が終了する。
【0075】
なお、
図16に示す第1膜W1の形成方法は、ALD法であるが、CVD法であってもよい。ALD法では、第2原料ガスの供給と、第2反応ガスの供給とを交互に行う。一方、CVD法では、第2原料ガスの供給と、第2反応ガスの供給とを同時に行う。
【0076】
なお、第1膜W1は、分子が化学吸着または物理吸着した分子膜であってもよい。分子は、ガスの状態で基板表面に供給される。ガスは、分子中に基板表面の所望の領域に選択的に吸着しやすい官能基を有し、且つ分子中にボロン(B)を含む。第1膜W1は、吸着した分子が基板Wの熱により分解したものであってもよい。
【0077】
ステップS103(
図15参照)は、一連の処理をN(Nは1以上の整数)回実施したか否かを確認することを含む。一連の処理は、第1膜W1の形成(ステップS101B)と第3膜W3の形成(ステップS102)とを有する。この一連の処理を、第2サイクルとも呼ぶ。第2サイクルの実施回数がN回未満である場合(ステップS103、NO)、第3膜W3の膜厚が不十分であるので、第2サイクルを再度実施する。一方、第2サイクルの実施回数がN回に達した場合(ステップS103、YES)、今回の処理が終了する。Nは、好ましくは2以上の整数である。Nが2以上の整数であれば、第1膜W1を補充しつつ、第3膜W3の膜厚を増加できる。
【0078】
次に、Nが2以上の整数である場合の成膜方法について、
図17及び
図18を参照して説明する。Nが2以上の整数である場合、第2サイクルが複数回繰り返し行われる。
【0079】
2回目以降のステップS101Bは、第3膜W3に対して第1膜W1の上に選択的に第1膜W1を再び形成することを含む(
図17参照)。なお、1回目のステップS102(第3膜W3の形成)において、第1膜W1が薄くなることがあり、第1膜W1が消失することがある(
図18参照)。第1膜W1が消失する場合、2回目以降のステップS101Bは、第1膜W1の代わりに第4膜W4の上に選択的に第1膜W1を再び形成することを含む(
図18参照)。
【0080】
2回目以降のステップS102は、第1膜W1に対して第3膜W3の上に選択的に第3膜W3を再び形成することを含む。
【0081】
次に、
図19を参照して、上記の成膜方法を実施する成膜装置100について説明する。
図19に示すように、成膜装置100は、第1処理部200Aと、搬送部400と、制御部500とを有する。第1処理部200Aは、
図1のステップS102を実施する。なお、成膜装置100は、
図15のステップS101Bを実施する第2処理部を有してもよい。但し、第1処理部200Aが、
図15のステップS101BとS102の両方を実施することも可能である。
【0082】
搬送部400は、第1処理部200Aに対して、基板Wを搬送する。搬送部400は、第1搬送室401と、第1搬送機構402とを有する。第1搬送室401の内部雰囲気は、大気雰囲気である。第1搬送室401の内部に、第1搬送機構402が設けられる。第1搬送機構402は、基板Wを保持するアーム403を含み、レール404に沿って走行する。レール404は、キャリアCの配列方向に延びている。
【0083】
また、搬送部400は、第2搬送室411と、第2搬送機構412とを有する。第2搬送室411の内部雰囲気は、真空雰囲気である。第2搬送室411の内部に、第2搬送機構412が設けられる。第2搬送機構412は、基板Wを保持するアーム413を含み、アーム413は、鉛直方向及び水平方向に移動可能に、且つ鉛直軸周りに回転可能に配置される。第2搬送室411には、ゲートバルブGを介して第1処理部200Aが接続される。
【0084】
更に、搬送部400は、第1搬送室401と第2搬送室411の間に、ロードロック室421を有する。ロードロック室421の内部雰囲気は、図示しない調圧機構により真空雰囲気と大気雰囲気との間で切り換えられる。これにより、第2搬送室411の内部を常に真空雰囲気に維持できる。また、第1搬送室401から第2搬送室411にガスが流れ込むのを抑制できる。第1搬送室401とロードロック室421の間、及び第2搬送室411とロードロック室421の間には、ゲートバルブGが設けられる。
【0085】
制御部500は、例えばコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)等の演算部501と、メモリ等の記憶部502とを有する。記憶部502には、成膜装置100において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部500は、記憶部502に記憶されたプログラムを演算部501に実行させることにより、成膜装置100の動作を制御する。制御部500は、第1処理部200Aと搬送部400とを制御し、上記の成膜方法を実施する。
【0086】
次に、成膜装置100の動作について説明する。先ず、第1搬送機構402が、キャリアCから基板Wを取り出し、取り出した基板Wをロードロック室421に搬送し、ロードロック室421から退出する。次に、ロードロック室421の内部雰囲気が大気雰囲気から真空雰囲気に切り換えられる。その後、第2搬送機構412が、ロードロック室421から基板Wを取り出し、取り出した基板Wを第1処理部200Aに搬送する。
【0087】
次に、第1処理部200Aが、
図1のステップS102を実施する。その後、第2搬送機構412が、第1処理部200Aから基板Wを取り出し、取り出した基板Wをロードロック室421に搬送し、ロードロック室421から退出する。続いて、ロードロック室421の内部雰囲気が真空雰囲気から大気雰囲気に切り換えられる。その後、第1搬送機構402が、ロードロック室421から基板Wを取り出し、取り出した基板WをキャリアCに収容する。そして、基板Wの処理が終了する。
【0088】
次に、
図20を参照して、第1処理部200Aについて説明する。第1処理部200Aは、略円筒状の気密な処理容器210を備える。処理容器210の底壁の中央部には、排気室211が設けられている。排気室211は、下方に向けて突出する例えば略円筒状の形状を備える。排気室211には、例えば排気室211の側面において、排気配管212が接続されている。
【0089】
排気配管212には、圧力制御器271を介して排気源272が接続されている。圧力制御器271は、例えばバタフライバルブ等の圧力調整バルブを備える。排気配管212は、排気源272によって処理容器210内を減圧できるように構成されている。圧力制御器271と、排気源272とで、処理容器210内のガスを排出するガス排出機構270が構成される。
【0090】
処理容器210の側面には、搬送口215が設けられている。搬送口215は、ゲートバルブGによって開閉される。処理容器210内と第2搬送室411(
図19参照)との間における基板Wの搬入出は、搬送口215を介して行われる。
【0091】
処理容器210内には、基板Wを保持する保持部であるステージ220が設けられている。ステージ220は、基板表面Waを上に向けて、基板Wを水平に保持する。ステージ220は、平面視で略円形状に形成されており、支持部材221によって支持されている。ステージ220の表面には、例えば直径が300mmの基板Wを載置するための略円形状の凹部222が形成されている。凹部222は、基板Wの直径よりも僅かに大きい内径を有する。凹部222の深さは、例えば基板Wの厚さと略同一に構成される。ステージ220は、例えば窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料により形成されている。また、ステージ220は、ニッケル(Ni)等の金属材料により形成されていてもよい。なお、凹部222の代わりにステージ220の表面の周縁部に基板Wをガイドするガイドリングを設けてもよい。
【0092】
ステージ220には、例えば接地された下部電極223が埋設される。下部電極223の下方には、加熱機構224が埋設される。加熱機構224は、制御部500(
図19参照)からの制御信号に基づいて電源部(図示せず)から給電されることによって、ステージ220に載置された基板Wを設定温度に加熱する。ステージ220の全体が金属によって構成されている場合には、ステージ220の全体が下部電極として機能するので、下部電極223をステージ220に埋設しなくてよい。ステージ220には、ステージ220に載置された基板Wを保持して昇降するための複数本(例えば3本)の昇降ピン231が設けられている。昇降ピン231の材料は、例えばアルミナ(Al
2O
3)等のセラミックスや石英等であってよい。昇降ピン231の下端は、支持板232に取り付けられている。支持板232は、昇降軸233を介して処理容器210の外部に設けられた昇降機構234に接続されている。
【0093】
昇降機構234は、例えば排気室211の下部に設置されている。ベローズ235は、排気室211の下面に形成された昇降軸233用の開口部219と昇降機構234との間に設けられている。支持板232の形状は、ステージ220の支持部材221と干渉せずに昇降できる形状であってもよい。昇降ピン231は、昇降機構234によって、ステージ220の表面の上方と、ステージ220の表面の下方との間で、昇降自在に構成される。
【0094】
処理容器210の天壁217には、絶縁部材218を介してガス供給部240が設けられている。ガス供給部240は、上部電極を成しており、下部電極223に対向している。ガス供給部240には、整合器251を介して高周波電源252が接続されている。高周波電源252から上部電極(ガス供給部240)に100kHz~2.45GHz、好ましくは450kHz~100MHzの高周波電力を供給することによって、上部電極(ガス供給部240)と下部電極223との間に高周波電界が生成され、容量結合プラズマが生成する。プラズマを生成するプラズマ生成部250は、整合器251と、高周波電源252と、を含む。なお、プラズマ生成部250は、容量結合プラズマに限らず、誘導結合プラズマ又はリモートプラズマなど他のプラズマを生成するものであってもよい。なお、プラズマを生成しない工程では、ガス供給部240が上部電極を成すことは不要であり、下部電極223も不要である。
【0095】
ガス供給部240は、中空状のガス供給室241を備える。ガス供給室241の下面には、処理容器210内へ処理ガスを分散供給するための多数の孔242が例えば均等に配置されている。ガス供給部240における例えばガス供給室241の上方には、加熱機構243が埋設されている。加熱機構243は、制御部500からの制御信号に基づいて電源部(図示せず)から給電されることによって、設定温度に加熱される。
【0096】
ガス供給室241には、ガス供給路261を介して、ガス供給機構260が接続される。ガス供給機構260は、ガス供給路261を介してガス供給室241に、
図1又は
図15の工程で使用されるガスを供給する。ガス供給機構260は、図示しないが、ガスの種類毎に、個別配管と、個別配管の途中に設けられる開閉バルブと、個別配管の途中に設けられる流量制御器とを含む。開閉バルブが個別配管を開くと、供給源からガス供給路261にガスが供給される。その供給量は流量制御器によって制御される。一方、開閉バルブが個別配管を閉じると、供給源からガス供給路261へのガスの供給が停止される。
【0097】
[実施例]
次に、実施例などについて説明する。下記の例1~例2、例4~例5及び例7が実施例であり、下記の例3、例6及び例8が比較例である。
【0098】
[例1]
例1では、
図21に示すように基板表面にBN膜W1-1とSiO膜W2-1とを有する基板を準備し、表1に示す処理条件で
図1に示すステップS102を実施した。例1において、第1膜はBN膜W1-1であり、第2膜はSiO膜W2-1であり、原料ガスはTiCl
4ガスであり、反応ガスはNH
3ガスであり、置換ガスはO
2ガスであり、第3膜はTiON膜W3-1であった。
【0099】
【0100】
表1において、「RF」の「ON」は高周波電力によってガスをプラズマ化したことを意味する。「RF」の「OFF」はガスのプラズマ化を実施しなかったことを意味する。下記の表2及び表3において、同様である。表1に示すように、S102cとS102fにおいてガスをプラズマ化した。
【0101】
表1に示すように、S102は、S102aとS102bとS102hとS102cとS102dとS102iとS102fとS102jをこの順番で300回繰り返し実施した(
図2に示すL=1、M=300)。S102h、S102i、S102jを除く、S102aとS102bとS102cとS102dとS102fの内容は、既述の通りである。S102hは、S102cの前にS102cで使用する反応ガスの流量を安定化する工程である。S102iは、S102fの前にS102fで使用する置換ガスの流量を安定化する工程である。S102jは、S102fで基板表面に吸着しなかった余剰の置換ガスをパージする工程である。
【0102】
例1では、原料ガスの供給(S102a)と反応ガスの供給(S102c)を交互に繰り返す間に、置換ガスの供給(S102f)を実施した。その結果、
図22に示すようにBN膜W1-1に対してSiO膜W2-1の上に選択的にTiON膜W3-1が形成された。TiON膜W3-1は、BN膜W1-1の表面には、ほとんど形成されなかった。
【0103】
[例2]
例2では、S102fにおいて置換ガスをプラズマ化することなく基板表面に供給した点を除き、例1と同様に基板の処理を実施した。その結果、
図23に示すようにBN膜W1-2に対してSiO膜W2-2の上に選択的にTiON膜W3-2が形成された。TiON膜W3-2は、BN膜W1-2の表面には、ほとんど形成されなかった。
【0104】
[例3]
例3では、S102iとS102fとS102jを実施しなかった点(その結果、第3膜としてTiON膜ではなくTiN膜を形成した点を含む。)を除き、例1と同様に基板の処理を実施した。その結果、
図24に示すように、BN膜W1-3がTiN膜W3-3の成膜を阻害しており、BN膜W1-3の表面とSiO膜W2-3の表面とでTiN膜W3-3の膜厚に差が認められた。但し、TiN膜W3-3は、BN膜W1-3とSiO膜W2-3の両方の表面に形成された。
【0105】
例1と例3の結果、又は例2と例3の結果から、原料ガスの供給(S102a)と反応ガスの供給(S102c)を交互に繰り返す場合にBN膜がTiON膜W3の成膜を阻害する効果を維持するには、途中で置換ガスの供給(S102f)を実施することが有効であることが分かる。
【0106】
[例4]
例4では、表2に示す処理条件で
図1のステップS102を実施した点を除き、例1と同様に基板の処理を実施した。例4において、第1膜はBN膜W1-4であり、第2膜はSiO膜W2-4であり、原料ガスはTiCl
4ガスであり、反応ガスはH
2ガスであり、置換ガスはO
2ガスであり、第3膜はTiO膜W3-4であった。表2に示すように、S102cとS102fにおいてガスをプラズマ化した。
【0107】
【0108】
例4では、原料ガスの供給(S102a)と反応ガスの供給(S102c)を交互に繰り返す間に、置換ガスの供給(S102f)を実施した。その結果、
図25に示すようにBN膜W1-4に対してSiO膜W2-4の上に選択的にTiO膜W3-4が形成された。TiO膜W3-4は、BN膜W1-4の表面には、ほとんど形成されなかった。
【0109】
[例5]
例5では、S102fにおいて置換ガスをプラズマ化することなく基板表面に供給した点を除き、例4と同様に基板の処理を実施した。その結果、
図26に示すようにBN膜W1-5に対してSiO膜W2-5の上に選択的にTiO膜W3-5が形成された。TiO膜W3-5は、BN膜W1-5の表面には、ほとんど形成されなかった。
【0110】
[例6]
例6では、S102iとS102fとS102jを実施しなかった点(その結果、第3膜としてTiO膜ではなくTi膜を形成した点を含む。)を除き、例4と同様に基板の処理を実施した。その結果、
図27に示すように、Ti膜W3-6が、BN膜W1-6とSiO膜W2-6の両方の表面に形成された。
【0111】
例4と例6の結果、又は例5と例6の結果から、原料ガスの供給(S102a)と反応ガスの供給(S102c)を交互に繰り返す場合にBN膜がTi含有膜の成膜を阻害する効果を維持するには、途中で置換ガスの供給(S102f)を実施することが有効であることが分かる。
【0112】
[例7]
例7では、
図28に示すように基板表面にBN膜W1-7とSi膜W2-7とを有する基板を準備し、表3に示す処理条件で
図1のステップS102を実施した。例7において、第1膜はBN膜W1-7であり、第2膜はSi膜(詳細にはアモルファスSi膜)W2-7であり、原料ガスはSi
2Cl
6ガスであり、反応ガスはNH
3ガスであり、置換ガスはO
2ガスであり、第3膜はSiON膜W3-7であった。表3に示すように、S102cとS102fにおいてガスをプラズマ化した。
【0113】
【0114】
例7では、原料ガスの供給(S102a)と反応ガスの供給(S102c)を交互に繰り返す間に、置換ガスの供給(S102f)を実施した。その結果、
図29に示すようにBN膜W1-7に対してSi膜W2-7の上に選択的にSiON膜W3-7が形成された。SiON膜W3-7は、BN膜W1-7の表面には、ほとんど形成されなかった。
【0115】
[例8]
例8では、S102iとS102fとS102jを実施しなかった点(その結果、第3膜としてSiON膜ではなくSiN膜を形成した点を含む。)を除き、例7と同様に基板の処理を実施した。その結果、
図30に示すように、SiN膜W3-8が、BN膜W1-8とSi膜W2-8の両方の表面に形成された。
【0116】
例7と例8の結果から、原料ガスの供給(S102a)と反応ガスの供給(S102c)を交互に繰り返す場合にBN膜がSi含有膜の成膜を阻害する効果を維持するには、途中で置換ガスの供給(S102f)を実施することが有効であることが分かる。
【0117】
以上、本開示に係る成膜方法及び成膜装置の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0118】
W 基板
W1 第1膜
W2 第2膜
W3 第3膜