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特開2024-106746無線通信システム、制御装置、無線通信方法、および無線通信用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106746
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】無線通信システム、制御装置、無線通信方法、および無線通信用プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 84/18 20090101AFI20240801BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20240801BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20240801BHJP
【FI】
H04W84/18 110
H04W16/28
H04W64/00 173
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011168
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 匡史
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】小川 智明
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 泰司
(72)【発明者】
【氏名】阪口 啓
(72)【発明者】
【氏名】米田 拓海
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA23
5K067DD20
5K067EE08
5K067EE10
5K067KK02
(57)【要約】
【課題】無線通信システムに関し、マルチホップ中継においても中継経路を決定し、無線中継局におけるビームの方向を決定することにより通信品質を高めることを目的とする。
【解決手段】本開示の無線通信システムは、可変位相器を備えるアンテナによりビームの方向制御を行う複数の無線中継局と、第一基地局と、第二基地局と、制御装置とを備える。制御装置は、端末の位置情報に基づき、複数の無線中継局の中から、第一基地局から端末までを中継する中継局を決定し、中継経路を決定する。第二基地局は、中継経路に用いられる中継局に対して中継経路の情報を通知する。中継経路に用いられる中継局は、当該中継経路に基づき、決定された方向にビームを形成し、無線電波を中継する。制御装置および中継経路に用いられる中継局の少なくとも一方は、ビームの方向を決定する。第一基地局は、当該中継経路を介し端末との間で無線通信を行う。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線電波の中継を行う無線通信システムであって、
可変位相器を備えるアンテナによりビームの方向制御を行い、無線電波を送受信する複数の無線中継局と、
第一基地局と、
端末の位置情報を受け付ける第二基地局と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記第二基地局から前記位置情報を受け付ける処理と、
前記位置情報に基づき、前記複数の無線中継局の中から、前記第一基地局から前記端末までを無線中継する無線中継局を決定し、中継経路を決定する中継経路決定処理と、
前記中継経路の情報を前記第二基地局に通知する処理と、
を実行するように構成され、
前記第二基地局は、
前記中継経路に用いられる無線中継局のそれぞれに対して、前記中継経路の情報を通知する通知処理を実行するように構成され、
前記中継経路に用いられる無線中継局は、
前記中継経路の情報を受け付ける処理と、
前記中継経路に基づき、中継を結ぶ相手の位置と、自局の位置に基づき決定された方向にビームを形成し、無線電波を中継する中継処理と、
を実行するように構成され、
前記制御装置および前記中継経路に用いられる無線中継局の少なくとも一方は、前記ビームの方向を決定する方向決定処理を行い、
前記第一基地局は、
前記中継経路を介し前記端末との間で無線通信を行う、無線通信システム。
【請求項2】
前記中継経路決定処理においては、
前記位置情報に基づき、前記複数の無線中継局のうち、前記端末からの距離が所定値以下となる無線中継局をエッジ中継ノード候補とする候補決定処理と、
前記第一基地局への距離が最も短い第1群から、前記エッジ中継ノード候補を含み、前記第一基地局への距離が最も遠い第n群まで、前記複数の無線中継局を、前記第一基地局との距離に応じたn個の群に分ける群分け処理と、
前記第一基地局と、前記第1群に含まれる各々の無線中継局とを結ぶ経路、前記n個の群において、nが1異なる群にそれぞれ含まれる無線中継局どうしを結ぶ経路、および前記第n群に含まれる各々の無線中継局と前記端末とを結ぶ経路、をすべて算出し、中継経路候補とする経路候補算出処理と、
前記中継経路候補から、前記第一基地局から前記端末までの距離が最も短い経路を、中継経路に決定する、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記端末を複数備える場合は、
前記中継経路決定処理においては、前記端末のうち前記エッジ中継ノード候補の数が少ない端末から順に中継経路を決定し、
前記エッジ中継ノード候補の数が同数である場合は、前記端末のうち前記第一基地局との距離が長い端末から中継経路を決定する、請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記位置情報は、前記第一基地局と前記端末とが送受信する前記無線電波よりも低い周波数帯の無線電波を用いて前記端末から送信され、
前記第二基地局は、
前記通知処理においては、前記低い周波数帯の無線電波を用いて、前記中継経路の情報を通知する、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記複数の無線中継局は、前記ビームの方向制御においては、互いにビーム方向が異なる候補を複数備え、
前記方向決定処理においては、決定された前記ビームの方向に最も近い方向を前記候補の中から決定する処理をさらに含み、
前記中継経路に用いられる無線中継局は、
前記候補の中から決定されたビームを用いて前記中継処理を行う、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項6】
可変位相器を備えたアンテナによりビームの方向制御を行う複数の無線中継局を制御する制御装置であって、
端末の位置情報を受け付ける処理と、
前記位置情報に基づき、前記複数の無線中継局の中から、前記端末から前記端末と無線通信を行う基地局までを無線中継する無線中継局を決定し、中継経路を決定する中継経路決定処理と、
前記中継経路に用いられる無線中継局のそれぞれに対して、前記中継経路の情報を通知する処理と、
を実行するように構成される、制御装置。
【請求項7】
可変位相器を備えたアンテナによりビームの方向制御を行う複数の無線中継局を用いた無線通信方法であって、
端末の位置情報を受け付けることと、
前記位置情報に基づき、前記複数の無線中継局の中から、第一基地局から前記端末までを無線中継する無線中継局を決定し、中継経路を決定する中継経路決定処理を行うことと、
前記中継経路に用いられる無線中継局のそれぞれに対して、前記中継経路の情報を通知することと、
前記中継経路に基づき、中継を結ぶ一方の無線局の位置と、中継を結ぶもう一方の無線局の位置から、前記中継経路に用いられる無線中継局のビームの方向を決定する方向決定処理を行うことと、
前記中継経路に用いられる無線中継局が、前記中継経路の情報を受け付けることと、
前記中継経路に用いられる無線中継局が、前記方向決定処理の結果に基づくビームを前記アンテナにより形成し、無線電波を中継する中継処理をおこなうことと、
前記第一基地局が、前記中継経路を介し、前記端末との間で無線通信を行うことを含む、無線通信方法。
【請求項8】
可変位相器を備えたアンテナによりビームの方向制御を行う複数の無線中継局を制御する制御装置に実行させる無線通信用プログラムであって、
端末の位置情報を受け付ける処理と、
前記位置情報に基づき、複数の無線中継局の中から、基地局から端末までを無線中継する無線中継局を決定し、中継経路を決定する中継経路決定処理と、
前記中継経路に用いられる無線中継局のそれぞれに対して、前記中継経路の情報を通知する処理と、
を実行させるプログラムを含む、無線通信用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線電波の中継を行う無線通信システム、制御装置、無線通信方法、および無線通信用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線電波を中継する無線中継局において、アナログビームフォーミングを用いることにより利得を向上する技術が知られる。これにより、ミリ波の品質が劣化する見通し外通信、または長距離通信においても、通信品質を改善することができる。
【0003】
また近年では、バックホールを構成する無線中継局においても適応的にビームフォーミングを行うことにより、送信局から受信局への中継経路を適応的に変更することが可能となり、さらなる通信品質の改善が期待されている(たとえば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】米田、阪口、岩渕、村上”ミリ波マルチホップアナログ中継シングルユーザMIMOに関する検討”,SRW2020-83,2021年3月
【非特許文献2】H.Abbas and K. Hamdi, “Millimeter wave communications over relay networks”, IEEE WCNC, 2018年4月
【非特許文献3】岩渕、村上、小川、鷹取、米田、阪口”多数アナログ中継システムにおける端末位置情報を用いた中継ビーム制御方法の一検討”,2021年電子情報通信学会ソサイエティ大会,B-5-50,2021年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、無線電波の復調等、信号処理の機能を有さないリピータ等を無線中継局として使用する場合は、移動する端末に対して如何に中継経路を決定し、ビーム方向を決定するかが課題であった(例えば、非特許文献2参照)。シングルホップ中継に対しては、ビーム制御方法の提案も存在してはいるが(例えば、非特許文献3参照)、マルチホップ中継におけるビーム制御方法は今なお課題であった。
【0006】
本開示は上述の問題を解決するため、マルチホップ中継においても中継経路を決定し、無線中継局におけるビームの方向を決定することにより通信品質を高めることのできる無線通信システムを提供することを第一の目的とする。
【0007】
また、本開示は、マルチホップ中継においても中継経路を決定し、通信品質を高めることのできる制御装置を提供することを第二の目的とする。
【0008】
また、本開示は、マルチホップ中継においても中継経路を決定し、無線中継局におけるビームの方向を決定することにより通信品質を高めることのできる無線通信方法を提供することを第三の目的とする。
【0009】
また、本開示は、マルチホップ中継においても中継経路を決定し、通信品質を高めることのできる無線通信用プログラムを提供することを第四の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第一の態様は、無線電波の中継を行う無線通信システムであって、
可変位相器を備えるアンテナによりビームの方向制御を行い、無線電波を送受信する複数の無線中継局と、
第一基地局と、
端末の位置情報を受け付ける第二基地局と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記第二基地局から前記位置情報を受け付ける処理と、
前記位置情報に基づき、前記複数の無線中継局の中から、前記第一基地局から前記端末までを無線中継する無線中継局を決定し、中継経路を決定する中継経路決定処理と、
前記中継経路の情報を前記第二基地局に通知する処理と、
を実行するように構成され、
前記第二基地局は、
前記中継経路に用いられる無線中継局のそれぞれに対して、前記中継経路の情報を通知する通知処理を実行するように構成され、
前記中継経路に用いられる無線中継局は、
前記中継経路の情報を受け付ける処理と、
前記中継経路に基づき、中継を結ぶ相手の位置と、自局の位置に基づき決定された方向にビームを形成し、無線電波を中継する中継処理と、
を実行するように構成され、
前記制御装置および前記中継経路に用いられる無線中継局の少なくとも一方は、前記ビームの方向を決定する方向決定処理を行い、
前記第一基地局は、
前記中継経路を介し前記端末との間で無線通信を行うことが好ましい。
【0011】
また、本開示の第二の態様は、可変位相器を備えたアンテナによりビームの方向制御を行う複数の無線中継局を制御する制御装置であって、
端末の位置情報を受け付ける処理と、
前記位置情報に基づき、前記複数の無線中継局の中から、前記端末から前記端末と無線通信を行う基地局までを無線中継する無線中継局を決定し、中継経路を決定する中継経路決定処理と、
前記中継経路に用いられる無線中継局のそれぞれに対して、前記中継経路の情報を通知する処理と、
を実行するように構成されることが好ましい。
【0012】
また、本開示の第三の態様は、可変位相器を備えたアンテナによりビームの方向制御を行う複数の無線中継局を用いた無線通信方法であって、
端末の位置情報を受け付けることと、
前記位置情報に基づき、前記複数の無線中継局の中から、第一基地局から前記端末までを無線中継する無線中継局を決定し、中継経路を決定する中継経路決定処理を行うことと、
前記中継経路に用いられる無線中継局のそれぞれに対して、前記中継経路の情報を通知することと、
前記中継経路に基づき、中継を結ぶ一方の無線局の位置と、中継を結ぶもう一方の無線局の位置から、前記中継経路に用いられる無線中継局のビームの方向を決定する方向決定処理を行うことと、
前記中継経路に用いられる無線中継局が、前記中継経路の情報を受け付けることと、
前記中継経路に用いられる無線中継局が、前記方向決定処理の結果に基づくビームを前記アンテナにより形成し、無線電波を中継する中継処理をおこなうことと、
前記第一基地局が、前記中継経路を介し、前記端末との間で無線通信を行うことを含むことが好ましい。
【0013】
また、本開示の第四の態様は、可変位相器を備えたアンテナによりビームの方向制御を行う複数の無線中継局を制御する制御装置に実行させる無線通信用プログラムであって、
端末の位置情報を受け付ける処理と、
前記位置情報に基づき、複数の無線中継局の中から、基地局から端末までを無線中継する無線中継局を決定し、中継経路を決定する中継経路決定処理と、
前記中継経路に用いられる無線中継局のそれぞれに対して、前記中継経路の情報を通知する処理と、
を実行させるプログラムを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本開示の第一から第四の態様によれば、マルチホップ中継においても中継経路を決定し、無線中継局におけるビームの方向を決定することにより通信品質を高めることのできる無線通信システム、制御装置、無線通信方法、および無線通信用プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の比較例に係る、無線通信システムの構成例である。
図2】本開示の実施の形態1に係る、無線通信システムの構成例である。
図3】本開示の実施の形態1に係る、制御装置の機能ブロック図である。
図4】本開示の実施の形態1に係る、中継局の機能ブロック図である。
図5】本開示の実施の形態1に係る、制御装置が行う候補決定処理を説明する図である。
図6】本開示の実施の形態1に係る、制御装置が行う群分け処理を説明する図である。
図7】本開示の実施の形態1に係る、制御装置が行う経路候補算出処理を説明する図である。
図8】本開示の実施の形態1に係る、制御装置が行う中継経路決定処理、および中継ノード種別決定処理を説明する図である。
図9】バックホール中継ノードに分類された中継局のビーム制御部が行う方向決定処理を説明する図である。
図10】エッジ中継ノードに分類された中継局のビーム制御部が行う方向決定処理を説明する図である。
図11】本開示の実施の形態1に係る、制御装置が行う処理のフローチャートである。
図12】本開示の実施の形態1に係る、制御装置の中継ノード種別決定部が行う処理のフローチャートである。
図13】バックホール中継ノードに分類された中継局が行う処理のフローチャートである。
図14】エッジ中継ノードに分類された中継局が行う処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
比較例
ここではまず従来技術である比較例について説明する。図1は本開示の比較例に係る、無線通信システムの構成例である。無線通信システム100は、送信局である無線基地局(以下、基地局と称する)110、受信局である無線端末(以下、端末と称する)120を備える。さらに、基地局110から無線電波を受信し、端末120へと再送信する複数の無線中継局(以下、中継局と称する)130を備える。すなわち、ここではシングルホップ中継が行われるとしている。
【0017】
基地局110は、中継局130を介して端末120と無線通信を行う基地局である。基地局110は、端末120の位置情報を取得する。さらに、取得した位置情報に基づき、ビームフォーミングにより方向選択されたビーム140を生成し、中継局130へと送信する。
【0018】
中継局130は、リピータ等の中継局である。リピータ等の中継局130は、無線電波の増幅は行うが、復調等の複雑な信号処理の機能を持たないため、低コストでの配備が可能である。
【0019】
中継局130は、端末120からの距離が所定値以下となる範囲150に複数存在している。複数の中継局130のうち、端末120との距離が特に近い中継局130(1)は、基地局110から送信された方向選択されたビーム140を高い受信レベルで受信する。また、中継局130(2)および中継局130(3)も、端末120との距離が近く、方向選択されたビーム140を受信する。
【0020】
方向選択されたビーム140を受信した中継局130(1)、中継局130(2)、中継局130(3)は、無線電波の増幅を行い、端末120へと再送信する。再送信される無線電波の強度は、受信時の無線電波の強度に依存する。
【0021】
端末120は、たとえばスマートフォンなどの端末である。端末120は、中継局130(1)から高い強度で送信された無線電波を受信する。さらに、中継局130(2)、中継局130(3)からの無線電波を受信する。
【0022】
以上説明したように、従来技術に係る無線通信システム100においては、基地局110がビームフォーミングを行い、適応的にビームの方向を制御する。方向選択されたビーム140を中継局130に中継させることで、基地局110から端末120までを短い中継経路で中継することが可能となる。すなわち、伝搬に伴う無線電波の損失が抑制され、高い利得で無線通信することが可能となる。
【0023】
なお、図1では基地局110がビームフォーミングを行う場合を説明したが、たとえば、非特許文献2では、中継局130においてもビームフォーミングにより適応的にビームの方向を制御する技術が開示されている。これにより、さらに高い利得での無線通信が可能となる。ただし、そこでの中継方式は、シングルホップ中継を想定している。
【0024】
上述したように、マルチホップ中継においては、基地局110から端末120までの中継経路を決定し、中継局130がビームフォーミングにより適応的にビームの方向を制御する技術が確立されていなかった。
【0025】
実施の形態1
図2は、本開示の実施の形態1に係る無線通信システムの構成例である。無線通信システム200は、第一基地局211、第二基地局212、複数の端末220、複数の中継局230、および制御装置240を備える。なお、ここでの中継局130は、中継局130間どうしでも無線電波の送受信を行うとする。すなわち、マルチホップ中継が行われるとする。
【0026】
第一基地局211は、高周波数帯の無線電波を用い、端末220および中継局230との間で大容量の無線通信(以下、データ通信と称する)を行う。なお、高周波数帯とは、例えばミリ波帯である。
【0027】
第二基地局212は、端末220から送信される端末環境情報を受信する。さらに、受信した端末環境情報を制御装置240に通知する。ここで、端末環境情報とは、各々の端末220の位置情報、その他のセンシング情報を含む情報である。
【0028】
さらに、第二基地局212は、制御装置240が端末環境情報に基づき決定した中継経路の情報を制御装置240から受信する。さらに、当該中継経路の情報を第二基地局通知信号251として各々の中継局230に送信する。
【0029】
第二基地局通知信号251の送信には上述の高周波数帯の無線電波よりも低い周波数帯の無線電波が用いられる。これにより、第一基地局211、中継局230、および端末220間でやり取りされるデータ通信に負荷をかけることなく、信号を送信することができる。
【0030】
端末220は、比較例と同様、スマートフォンなどの端末である。端末220は、第一基地局211との間で上述の高周波数帯を利用した無線通信を行う。さらに、第二基地局212との間で、上述の低周波数帯の無線電波を利用した無線通信を行い、端末環境情報を通知する。
【0031】
端末環境情報は、たとえば、自己の位置情報をGPS、LiDAR等を用いて取得することで生成することができる。端末220は、生成した端末環境情報を端末通知信号252として第二基地局212、および中継局230に定期的に送信する。端末通知信号252の送信には低周波数帯の無線電波が用いられる。
【0032】
中継局230は、比較例と同様、信号の増幅は行うが復調等の信号処理の機能は持たないリピータ等の中継局である。中継局230は、受信用にアナログビームを形成する受信用アンテナと、送信用にアナログビームを形成する送信用アンテナをそれぞれ有する。
【0033】
受信用アンテナ及び送信用アンテナは、可変位相器をそれぞれ備える。これにより、無線電波の送受信時にアナログビームの位相制御が可能となり、ビームの方向を動的に切替えるビームフォーミングが可能となる。
【0034】
また、中継局230は、第二基地局212からの第二基地局通知信号251を受信した場合は、第二基地局通知信号251に含まれる中継経路の情報に基づき、中継を結ぶ相手の位置と、自局の位置に基づきビームの方向を決定する処理(以下、方向決定処理と称する)を行う。さらに、上述の受信用アンテナと送信用アンテナにより当該方向のビームを形成し、データ通信用の無線電波を中継する処理(以下、中継処理と称する)を実行する。
【0035】
制御装置240は、第二基地局212を介して端末220の端末環境情報を取得する。さらに、取得した端末環境情報に基づき、複数の中継局230の中から、第一基地局211から端末220までを中継する中継局230を決定し、中継経路を決定する処理(以下、中継経路決定処理と称する)を実行する。
【0036】
さらに、制御装置240は、決定した中継経路に従い、中継経路に採用された中継局230をバックホール中継ノードもしくはエッジ中継ノードに分類し、中継ノード種別を決定する処理(以下、中継ノード種別決定処理と称する)。ここで、エッジ中継ノードとは、中継経路に採用された中継局230のうち、端末220と直接無線通信を行う中継局230のことである。また、バックホール中継ノードとは、中継経路に採用された中継局230のうち、エッジ中継ノードを除く中継局230のことである。
【0037】
さらに、制御装置240は、決定した中継経路、および中継ノード種別を含む情報を第二基地局212へと通知する。
【0038】
以上説明したように、本開示の無線通信システム200では、端末220から送信された端末環境情報に基づき、制御装置240が中継経路を決定する。さらに、決定された中継経路に基づき、中継局230がビームの方向を決定し、ビームフォーミングにより適応的にビームの方向を制御する。これにより、マルチホップの中継においても、高い利得での無線通信が可能となる。
【0039】
ここで、各々の中継局230における自律制御で中継経路を決定した場合には、端末からの距離が遠い中継局230においては位置情報を取得できず、適切に通信経路が形成されない可能性もある。本開示では、制御装置240が一元して中継経路を決定することで、そのような可能性を払しょくし、中継経路を確実に決定することができる。
【0040】
また、本開示の無線通信システム200では、端末がGPS、LiDAR等を用いて取得した位置情報を第二基地局212が受信する。第二基地局212は、端末220から発せられる無線電波の状態から位置情報を測定する必要がないため、フィードバックのための通信を削減することができる。
【0041】
図3は、本開示の実施の形態1に係る制御装置の機能ブロック図である。制御装置240の通信部241は、第二基地局212と通信し、端末220の端末環境情報を受けつける部分である。中継ノード種別決定部242は、上述の中継経路決定処理を行う部分である。さらに、決定した中継経路に従い、上述の中継ノード種別決定処理を実行する部分である。
【0042】
なお、中継ノード種別決定部242が行う中継経路決定処理は、候補決定処理、群分け処理、経路候補算出処理を更に含むが、詳細は後述する。
【0043】
通知情報生成部243は、中継ノード種別決定部242が決定した中継経路情報、および中継ノード種別情報を総括し、中継局230へ通知するための情報(以下、中継ノード通知情報)を生成する部分である。生成された中継ノード通知情報は、通信部241から第二基地局212へ通知され、第二基地局通知信号251として第二基地局212から中継経路に選択された中継局230へと配信される。
【0044】
このように、本開示の無線通信システム200においては、端末220が取得した端末環境情報に基づいて、制御装置240が中継経路、および中継局230の中継ノード種別を決定する。
【0045】
図4は、本開示の実施の形態1に係る中継局の機能ブロック図である。中継局230の第一通信部231は、第二基地局212から第二基地局通知信号251を受信する部分である。
【0046】
中継ノード種別管理部232は、受信した第二基地局通知信号251から自局の中継ノード種別の情報を抽出する部分である。
【0047】
中継ノード種別管理部232は、自局の中継ノード種別がバックホール中継ノードに指定された場合、ビーム制御部233に対して、バックホール中継ノードとして方向決定処理を実行するように指令する。一方、自局の中継ノード種別としてエッジ中継ノードが指定された場合は、エッジ中継ノードとして方向決定処理を実行するように指令する。
【0048】
ビーム制御部233は、上述の方向決定処理を実行する部分である。中継局230は、互いにビーム方向が異なる候補を複数備えており、方向決定処理においては、中継を結ぶ相手の位置と、自局の位置に基づき算出されたビームの方向に最も近いビームを、当該候補の中から決定する。
【0049】
バックホール中継ノードとして方向決定処理を行う場合、ビーム制御部233は、自局の位置と、自局と中継を結ぶ他の中継局230、または第一基地局211の位置に基づきビームの方向を算出する。他の中継局230および第一基地局211の位置は、例えば、第二基地局通知信号251で通知されるなどの方法により既知である。
【0050】
一方、エッジ中継ノードとして方向決定処理を行う場合、ビーム制御部233は、自局の位置と、自局と中継を結ぶ端末220の位置に基づきビームの方向を算出する。端末220の位置の取得においては、中継局230は、端末環境情報の取得を自律的に行う。
【0051】
ビーム制御部233は、方向決定処理の結果を基地局側アンテナ部234および端末中継側アンテナ部235へ通知する処理をさらに行う。
【0052】
基地局側アンテナ部234は、上述の受信アンテナである。基地局側アンテナ部234は、ビーム制御部233が行った方向決定処理の結果に基づき、ビームフォーミングを行い、決定された方向にビームを形成する。
【0053】
増幅部236は、受信した無線電波を増幅する部分である。増幅処理においては基地局側アンテナ部234で受信した無線電波の周波数と同一の周波数で電力を増幅してもよいし、異なる周波数に変換したうえで増幅してもよい。
【0054】
端末中継側アンテナ部235は、増幅部236が増幅した無線電波を他の中継局230、または端末220へ再送信する、上述の送信アンテナである。端末中継側アンテナ部235においても、ビーム制御部233が行った選択処理の結果に基づき、ビームフォーミングを行い、決定された方向にビームを形成する。
【0055】
第二通信部237は、端末220からの端末通知信号252を無線電波として受信する部分である。
【0056】
以上説明したように、本開示の中継局130は、制御装置240が決定した中継経路および中継ノード種別の情報に基づき、ビームの方向を決定する。自局の中継ノード種別がエッジ中継ノードに指定された場合、中継局130は、端末220位置情報を自ら取得し、ビームの方向を決定する。これにより、制御装置240を介して当該位置情報を取得するのに比べて、より短時間でビームの方向を決定することができる。
【0057】
〈変形例〉
なお、第一通信部231、および第二通信部237は必ずしも分離している必要はない。
【0058】
図5は、本開示の実施の形態1に係る、制御装置が行う候補決定処理を説明する図である。制御装置240は、第一基地局211、第二基地局212、および各中継局230の位置情報を有している。制御装置240は、端末220の位置情報に基づき、端末220からの距離が所定値以下となる中継局230をエッジ中継ノード候補260とする処理(以下、候補決定処理と称する)を実行する。
【0059】
たとえば、図5のように端末220(1)、端末220(2)、端末220(3)が位置している場合、各々の端末220を中心とした所定半径の円の内側に位置する中継局230が、それぞれエッジ中継ノード候補260(1)、エッジ中継ノード候補260(2)、エッジ中継ノード候補260(3)となる。
【0060】
このように、本開示の無線通信システム200において、制御装置240は、端末220からの距離が所定値以下となる中継局230をエッジ中継ノード候補に決定する。
【0061】
図6は、本開示の実施の形態1に係る、制御装置が行う群分け処理を説明する図である。図6においては、第一基地局211、中継局230、端末220(1)、端末220(2)、および端末220(3)の位置は、図5と同じであるとする。また、エッジ中継ノード候補260については図5で説明した通りに決定されたものとする。
【0062】
制御装置240は、群分け処理においては、第一基地局211から一定距離内に位置する中継局230をTier#1群と群分けする。さらに、Tier#1群に属する各々の中継局230から一定距離内に位置する中継局230をTier#2群とする。同様の処理をTier#nまで繰り返していくことにより、中継局230の群分けを行う。ここで、nは予め定めたホップ数である。なお、すでに群分けされた中継局230についてはTierの更新は行わないとする。
【0063】
また、群分け処理においては、エッジ中継ノード候補260からは次のTierを見つける処理は行わない。たとえば、図6においては、Tier#2群にエッジ中継ノード候補260(3)に属する中継局230が2台含まれている。当該中継局230から次のTierを見つける処理は行わない。
【0064】
図6では、Tier#4群に属する中継局230が全てエッジ中継ノード候補260に属する中継局230になるため、ここで群分け処理は終了する。
【0065】
さらに、制御装置240は、群分け処理でどの群にも分類されなかった中継局230を、対象外中継局270として中継経路への採用候補から除外する。図6においては、2点鎖線で囲われた中継局230が対象外中継局270である。
【0066】
このように、本開示の制御装置240は、第一基地局への距離が最も短いTier#1群から、エッジ中継ノード候補260を含み、第一基地局への距離が最も遠いTier#n群まで、中継局230を第一基地局211との距離に応じたn個の群に分ける群分け処理を行う。
【0067】
図7は、本開示の実施の形態1に係る、制御装置が行う経路候補算出処理を説明する図である。ただし、図7においては、Tier#1群からTier#4群までは図6で決定された通りであるとする。
【0068】
制御装置240は、経路候補算出処理においては、第一基地局211とTier#1群に属する各々の中継局230とを結ぶ経路の全てを第一基地局211からTier#1群への中継経路候補とする。さらに、Tier#1群に属する各々の中継局230とTier#2群に属する各々の中継局230とを結ぶ経路の全てを、Tier#1群からTier#2群への中継経路候補とする。
【0069】
このように、Tier#(n-1)群に属する各々の中継局230から、Tier#n群に属する各々の中継局230への経路を全て中継経路候補としていく。そこでは、nが2以上に離れたTier間での中継経路候補の算出は行わない。さらには、同一Tier内での中継経路候補の算出は行わない。
【0070】
さらに、経路候補算出処理においては、エッジ中継ノード候補260に属する各々の中継局230と、当該中継局230の中継先である端末220とを結ぶ経路の全てを、中継経路候補とする処理をさらに実行する。
【0071】
以上説明した経路候補算出処理の結果、第一基地局211から各端末220までの中継経路候補の全てが、図7のように算出される。
【0072】
図8は、本開示の実施の形態1に係る、制御装置が行う中継経路決定処理、および中継ノード種別決定処理を説明する図である。ただし、図8においては、中継経路候補は図7で決定された通りであるとする。
【0073】
制御装置240は、中継経路決定処理においては、中継経路候補のうち、中継経路長が最短となる経路を中継経路に決定する。そこでは、端末220から第一基地局211に向けて中継経路を決定していく。
【0074】
また、一度の中継経路決定処理において、複数の端末220に対する中継経路を決定しなければならない場合は、エッジ中継ノード候補260に含まれる中継局230の数(以下、候補数と称する)が少ない端末220から中継経路を決定していく。なお、候補数が同数である場合は、第一基地局211までの距離が遠い端末220から先に中継経路を決定する。
【0075】
また、先に中継経路が決定された端末220と第一基地局211との中継経路において採用された中継局230は、後の端末220に対する中継経路からは除外される。これにより、中継局230において、先に中継経路が決定された端末220に対応したビームフォーミングを実行することができる。
【0076】
図8の例において、制御装置240は、一度の中継経路決定処理において、端末220(1)、端末220(2)、端末220(3)に対する中継経路を決定しなければならない。この場合、候補数が1の端末220(1)について、先に中継経路を決定する。さらに、端末220(2)と端末220(3)は、候補数が2で、同数であるが、より第一基地局211までの距離が遠い端末220(2)から先に中継経路を決定する。
【0077】
以上説明した中継経路決定処理の結果、第一基地局211から各端末220までの中継経路280が、図8のように決定される。中継経路280(1)、中継経路280(2)、中継経路280(3)は、それぞれ第一基地局211から端末220(1)、端末220(2)、端末220(3)への中継経路である。
【0078】
次に、制御装置240は、中継経路決定処理の結果に基づき、中継ノード種別決定処理を行う。そこでは、各々の端末220に対する中継経路280において、端末220に対して直接無線電波を送信する中継局230がエッジ中継ノード282に分類される。一方、各々の端末220に対する中継経路280において、エッジ中継ノード282を除いた中継局230がバックホール中継ノード281に分類される。
【0079】
以上説明した中継ノード種別決定処理の結果、中継局230が図8のように分類され、バックホール中継ノード281およびエッジ中継ノード282が決定される。またどちらにも属さない中継局230は、不使用中継ノード283として示されている。
【0080】
以上説明したように、本開示の制御装置240は中継経路候補のうち、第一基地局211から端末220までの距離が最も短い経路を、中継経路に決定する。これにより、中継時の無線電波の伝搬損失を低減し、高品質な無線通信を実現することができる。
【0081】
〈変形例〉
なお、上述の中継経路決定処理においては、先に中継経路が決定された端末220への中継に使用する中継局230は、後の端末220に対する中継経路からは除外されることを説明した。しかしながら、複数の端末220において同一の中継局230を中継に使用してもよい。この機能は、第一基地局211のスケジューリング情報と連動し、スケジューリング情報を当該中継局230に事前に通知することで実現可能である。
【0082】
中継局230は、スケジューリング情報に基づきビーム方向の切替えを行う。例えば、時刻t1に端末220(1)へ通信し、時刻t2に端末220(2)へ通信するようにスケジュールされていた場合、時刻t1には端末220(1)に対する中継経路280(1)を構成するビームを形成する。その後、時刻t2には端末220(2)への中継経路280(2)を構成するビームを形成するように動作する。
【0083】
図9は、バックホール中継ノードに分類された中継局のビーム制御部が行う方向決定処理を説明する図である。ここでは、2個の中継局230が、バックホール中継ノードであることを明確にするために、バックホール中継ノード281(1)およびバックホール中継ノード281(1)と記載している。また中継経路決定処理の結果、これらを結ぶ様に中継経路が選択されているとする。
【0084】
また、図9においては、2個のバックホール中継ノード281を上から見た図として示している。2個のバックホール中継ノード281のアンテナの設置高さは等しいと仮定し、紙面上の2次元方向にビームを形成する場合を説明する。なお、ここでのアンテナとは、基地局側アンテナ部234または端末中継側アンテナ部235のことである。
【0085】
各バックホール中継ノード281において、自局および接続相手の位置は、例えば、第二基地局212からの第二基地局通知信号251から通知されるなどの方法により、既知であるとする。各々のバックホール中継ノード281の位置は、2次元座標にて示される。
【0086】
まず、バックホール中継ノード281(1)は、バックホール中継ノード281(2)に向けるべきビームの方向φを、幾何学的に算出する。そこでは、以下の(式1)が使用される。
【0087】
ただし、(x、y)はバックホール中継ノード281(1)の位置、(x、y)はバックホール中継ノード(2)の位置である。また、φはバックホール中継ノード281(1)のアンテナ設置角であり、x軸に水平な軸290(1)とアンテナの正面方向を示す法線291(1)が成す角度である。また、定義域は0≦φ<2πである。
【0088】
ここで、ビームの方向φは、アンテナの正面方向を示す法線291(1)からの角度として示されている。定義域は(-(π/2)≦φ<(π/2))である。
【0089】
ここで、中継局230が、互いに方向が異なる複数のビームの候補を備えることは上述のとおりである。バックホール中継ノード281(1)は、算出したビームの方向φに最も近い送信方向を有するビームを当該候補の中から選択する。そこでは、以下の(式2)を満たすビームが選択される。
【0090】
ただし、nはビームの候補に対して付した番号であり、n=1、2、…である。またハット記号付きのφは、n番目のビームの候補のビーム方向を示す単位ベクトルであり、アンテナの正面方向を示す法線291(1)からの角度として示されている。
【0091】
バックホール中継ノード281(2)についても、バックホール中継ノード281(1)に向けるべきビームの方向Φを同様の方法で算出する。そこでは、以下の(式3)が使用される。
【0092】
ここで、Φ‘はバックホール中継ノード281(2)のアンテナ設置角であり、角度の定義方法、定義域はバックホール中継ノード281(1)の場合と同様である。
【0093】
また、バックホール中継ノード281(2)についても、算出したビームの方向Φに最も近い送信方向のビームを候補の中から選択する。そこでは、先ほどの場合と同様に、以下の(式4)を満たすビームが選択される。
【0094】
このように、バックホール中継ノードに分類された中継局230のビーム制御部233は、自局の位置と、自局と中継を結ぶ他の中継局230の位置に基づきビームの方向を算出する。さらに、算出されたビームの方向に最も近い方向を候補の中から決定する。
【0095】
〈変形例〉
図9においては、2個のバックホール中継ノード281間でビームを送受信する場合の方向決定処理を説明したが、片方は第一基地局211であってもよい。その場合も、バックホール中継ノード281はビームの方向決定を行うことができる。
【0096】
図10は、エッジ中継ノードに分類された中継局のビーム制御部が行う方向決定処理を説明する図である。ここでは、中継局230が、エッジ中継ノード282であることを明確にするために、エッジ中継ノード282と記載している。また中継経路決定処理の結果、エッジ中継ノード282と端末220を結ぶ様に中継経路が決定されているとする。
【0097】
また、図10においては、図9と同様に、エッジ中継ノード282と端末220を上から見た図として示している。ここでは、説明のため、エッジ中継ノード282のアンテナと端末220の設置高さが等しいと仮定し、紙面上の2次元方向にビームを形成する場合を説明する。なお、アンテナとは、基地局側アンテナ部234または端末中継側アンテナ部235のことである。なお、エッジ中継ノード282において、端末220の位置情報は、端末環境情報から既知であるとする。
【0098】
エッジ中継ノード282は、端末220に向けるべきビームの方向φを、幾何学的に算出する。そこでは、図9と同様に、以下の(式1)が使用される。
【0099】
ただし、(x、y)はエッジ中継ノード282の位置、(x、y)は端末220の位置である。また、φはエッジ中継ノード282のアンテナ設置角である。
【0100】
さらに、エッジ中継ノード282は、算出したビームの方向φに最も近い送信方向を有するビームを候補の中から選択する。そこでは、図9と同様に、以下の(式2)を満たすビームが選択される。
【0101】
このように、エッジ中継ノードに分類された中継局230のビーム制御部233は、自局の位置と、自局と中継を結ぶ端末220の位置に基づきビームの方向を算出する。さらに、算出されたビームの方向に最も近い方向を候補の中から決定する。
【0102】
図11は、本開示の実施の形態1に係る、制御装置が行う処理のフローチャートである。まず、端末環境情報を取得する(ステップS110)。つぎに、図8で説明した中継経路決定処理を実行する(ステップS111)。さらに、図8で説明した中継ノード種別決定処理を実行する(ステップS112)。最後に、中継ノード通知情報を生成する(ステップS113)。
【0103】
図12は、本開示の実施の形態1に係る、制御装置の中継ノード種別決定部が行う処理のフローチャートである。まず、図5で説明した候補決定処理を実行する(ステップS120)。つぎに、図6で説明した群分け処理を実行する(ステップS121)。次に、図7で説明した経路候補算出処理を実行する(ステップS122)。次に、図8で説明した中継経路決定処理を実行する(ステップS123)。最後に、図8で説明した中継ノード種別決定処理を実行する(ステップS124)。
【0104】
図13は、バックホール中継ノードに分類された中継局が行う処理のフローチャートである。まず、第二基地局通知信号251を受信する(ステップS130)。さらに、第一ビームに対する方向決定処理を実行する(ステップS131)。ここで、第一ビームとは、中継経路で指定される接続相手のうち、自局が属するTier群よりもnが1つ小さいTier群に属する中継局230、または第一基地局211に対して向けるビームのことである。さらに、第二ビームに対する方向決定処理を実行する(ステップS132)。ここで、第二ビームとは、中継経路で指定される接続相手のうち、自局が属するTier群よりもnが1つ大きいTier群に属する中継局230に対して向けるビームのことである。
【0105】
図14は、エッジ中継ノードに分類された中継局が行う処理のフローチャートである。
を実行する。まず、第二基地局通知信号251を受信する(ステップS140)。さらに、第一ビームに対する方向決定処理を実行する(ステップS141)。さらに、端末環境情報を取得する(ステップS142)。さらに、第二ビームに対する方向決定処理を実行する(ステップS143)。ただし、ここでの第二ビームとは、中継経路で指定される接続相手の端末220に対して向けるビームのことである。
【0106】
なお、本開示の制御装置240、中継局230が行う処理は、CPUとメモリを備え、メモリにプログラムを格納したコンピュータを用いて、プログラムで実行するようにしてもよい。もしくはFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路を用いて、プログラムで実行するようにしてもよい。尚、プログラムは、記憶媒体に記録して提供されてもよいし、ネットワークを通して提供されてもよい。
【0107】
以上説明したように、本開示によれば、マルチホップ中継においても中継経路を決定し、無線中継局におけるビームの方向を決定することにより通信品質を高めることのできる無線通信システム200、および無線通信方法を提供することができる。
【0108】
また、本開示によれば、マルチホップ中継においても中継経路を決定し、通信品質を高めることのできる制御装置240、および無線通信用プログラムを提供することができる。
【0109】
〈変形例〉
なお、本開示では、主に第一基地局211から端末220へデータ送信を行う場合を説明した。しかしながら、端末220から第一基地局に対してデータを送信する場合にも適用可能である。その場合も、上述と同様の効果を得ることができる。
【0110】
また、本開示では、制御装置240と第二基地局212が分離された構成である場合を説明したが、制御装置240の機能を第二基地局212が備えていてもよい。
【0111】
また、本開示では第一基地局211が高周波数帯の無線電波により無線通信を行い、第二基地局がより低周波数帯の無線電波により無線通信を行う場合を説明したが、無線電波の周波数帯は、必ずしも限定しなくともよい。
【0112】
また、本開示では方向決定処理を中継局230が行う場合を説明したが、バックホール中継ノードに属する中継局230に対しては、制御装置240により方向決定処理を実行してもよい。この場合は、制御装置240により決定された各バックホール中継ノードに対するビームの方向の情報は、上述の中継ノード通知情報に含められ、第二基地局212に通知される。これにより、バックホール中継ノードに採用された中継局230は、決定された方向のビームに基づき中継処理を実行することができる。
【0113】
〈請求項で使用する用語との対応〉
図6で説明した群分け処理において、Tier#1群、Tier#2群、…Tier#n群を、請求項では第1群、第2群、…第n群と称する。
【0114】
また、本開示で説明した、方向決定処理において、中継局230が中継を結ぶ相手は第一基地局211、中継局230、端末220のいずれかであるが、請求項ではこれらを総称して無線局と呼ぶ。
【符号の説明】
【0115】
無線通信システム100;基地局110;無線端末120;中継局130;方向選択されたビーム140、範囲150;無線通信システム200;第一基地局211、第二基地局212;端末220;中継局230;第一通信部231;中継ノード種別管理部232;ビーム制御部233;基地局側アンテナ部234;端末中継側アンテナ部235;増幅部236;第二通信部237;制御装置240;通信部241;中継ノード種別決定部242;通知情報生成部243;第二基地局通知信号251;端末通知信号252;エッジ中継ノード候補260;対象外中継局270;中継経路280;バックホール中継ノード281;エッジ中継ノード282;不使用中継ノード283;軸290;法線291
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14