(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106821
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】共重合ポリカーボネート樹脂組成物、該組成物の製造方法、および、フィルム
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20240801BHJP
C08G 64/02 20060101ALI20240801BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C08L69/00
C08G64/02
C08J5/18 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011276
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】中村 佳史
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 大輝
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4F071AA50
4F071AA86
4F071AA88
4F071AC19
4F071AE05
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4J029JA091
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4J029JB131
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4J029JC731
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4J029JF051
4J029JF131
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4J029JF151
4J029JF161
4J029KD02
4J029KD07
4J029KE02
4J029KE05
(57)【要約】
【課題】特定の波長の透過率を制御し、耐熱性の低下を抑制し、ブリードアウトした物質による濁りなどの外観不良等の問題を抑制し、光弾性係数を低くすることができる、ポリカーボネート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】イソソルビドに由来する構造単位(A)とトリシクロデカンジメタノールに由来する構造単位(B)とを少なくとも含む共重合ポリカーボネート樹脂、および、特定の紫外線吸収剤を含有する共重合ポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造単位(A)と、下記式(2)で表される構造単位(B)とを含む共重合ポリカーボネート樹脂と、
350~400nmの波長帯域に極大吸収波長を有する紫外線吸収剤とを含む、共重合ポリカーボネート樹脂組成物。
【化1】
【化2】
【請求項2】
前記共重合ポリカーボネート樹脂の全ての構造単位及び連結基の含有量の合計100質量%に対して、前記構造単位(A)を20質量%以上、90質量%以下含有し、前記構造単位(B)を10質量%以上、80質量%以下含有する請求項1に記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
前記共重合ポリカーボネート樹脂の光弾性係数が15×10-12Pa-1以下である、請求項1に記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
前記紫外線吸収剤の合計含有量が、前記共重合ポリカーボネート樹脂組成物100質量%に対して0.01~6.0質量%である、請求項1に記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
前記共重合ポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度が80℃以上、150℃以下である、請求項1に記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
前記共重合ポリカーボネート樹脂組成物の20℃における還元粘度が0.20以上、0.60以下である、請求項1に記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
前記紫外線吸収剤の5%重量減少温度が280℃以上である請求項1に記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
前記共重合ポリカーボネート樹脂、および、前記紫外線吸収剤を配合して、請求項1~7のいずれかに記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物とする、共重合ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載の前記共重合ポリカーボネート樹脂組成物を用いた共重合ポリカーボネート樹脂組成物フィルム。
【請求項10】
波長380nmにおける光線透過率が25%以下、波長430nmにおける光線透過率が60%以上である請求項9に記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物フィルム。
【請求項11】
ヘイズが10%以下である、請求項9に記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物フィルム。
【請求項12】
厚みが5μm~450μmである請求項9に記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物フィルム。
【請求項13】
請求項9に記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物フィルムを用いた位相差フィルム。
【請求項14】
請求項9に記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物フィルムを用いた保護フィルム。
【請求項15】
請求項13に記載の位相差フィルムを用いた保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合ポリカーボネート樹脂組成物、該組成物の製造方法、および、フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリカーボネート樹脂を得る方法としては、バイオマス資源から得られるジヒド ロキシ化合物であるイソソルビド(以下、ISBと略記することがある)をモノマー成分 とし、炭酸ジエステルとのエステル交換により、副生するモノヒドロキシ化合物を減圧下 で留去しながら、ポリカーボネート樹脂を得る方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ISBから得られるポリカーボネート樹脂は、耐熱性を活かした成形材料としての利用の他にも、優れた光学特性を活かし、ディスプレイ等に搭載する光学フィルムへの利用も検討されている(例えば、特許文献2~3参照)
【0003】
ディスプレイに搭載する光学フィルムとしては、表面保護フィルムや偏光子保護フィルム、位相差フィルムなどが挙げられる。これらの用途に用いるフィルムでは、外部から侵入する紫外線やバックライト光に含まれる紫外線による、液晶分子や偏光板内の偏光子(PVA製偏光フィルム)の劣化を防止するために、紫外線カット性を有することが必要となる。特に車載ディスプレイ用途など屋外で表示するディスプレイの場合には、波長300nm~380nmの範囲の紫外線をより強くカットすることが要求され、380nm近傍はカットし、かつ視認性の観点から410nm~440nmは光線透過率に優れた光学フィルムが必要である(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-24919号公報
【特許文献2】特開2011-021171号公報
【特許文献3】WO2016/171194号公報
【特許文献4】特開2017-187619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ISBから得られるポリカーボネート樹脂は、紫外線吸収がほとんどないため、380nm近傍をカットするには、大量の紫外線吸収剤の含有が必要である。さらに近年、薄膜化の要求が強くなっており、単純に薄膜化してしまうと、十分に380nm近傍の波長をカットすることができず、薄膜化された分だけ、紫外線吸収剤を増量しなければならない。その一方で、ポリカーボネート樹脂に大量の紫外線吸収剤を含有させると、410nm~440nmは光線透過率の低下や耐熱性の低下、ブリードアウトした物質によるフィルムの濁りによるフィルムの外観不良等の問題がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、特定の波長の透過率を制御し、耐熱性の低下を抑制し、ブリードアウトした物質による濁りなどの外観不良等を抑制し、光弾性係数を低くすることができる、ポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するべく、鋭意検討を重ねた結果、イソソルビドに由来する構造単位とトリシクロデカンジメタノールに由来する構造単位を有する共重合ポリカーボネート樹脂が、上記課題を解決することを見出し、本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明の要旨は下記[1]~[15]に存する。
[1] 下記式(1)で表される構造単位(A)と、下記式(2)で表される構造単位(B)とを含む共重合ポリカーボネート樹脂と、350~400nmの波長帯域に極大吸収波長を有する紫外線吸収剤とを含む、共重合ポリカーボネート樹脂組成物。
【0009】
【0010】
【0011】
[2] 前記共重合ポリカーボネート樹脂の全ての構造単位及び連結基の含有量の合計100質量%に対して、前記構造単位(A)を20質量%以上、90質量%以下含有し、前記構造単位(B)を10質量%以上、80質量%以下含有する[1]に記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物。
[3] 前記共重合ポリカーボネート樹脂の光弾性係数が15×10-12Pa-1以下である、[1]または[2]に記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物。
【0012】
[4] 前記紫外線吸収剤の合計含有量が、前記共重合ポリカーボネート樹脂組成物100質量%に対して0.01~6.0質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物。
[5] 前記共重合ポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度が80℃以上、150℃以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物。
【0013】
[6] 前記共重合ポリカーボネート樹脂組成物の20℃における還元粘度が0.20以上、0.60以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物。
[7] 前記紫外線吸収剤の5%重量減少温度が280℃以上である[1]~[6]のいずれかに記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物。
【0014】
[8] 前記共重合ポリカーボネート樹脂、および、前記紫外線吸収剤を配合して、[1]~[7]のいずれかに記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物とする、共重合ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法。
[9] [1]~[7]のいずれかに記載の前記共重合ポリカーボネート樹脂組成物を用いた共重合ポリカーボネート樹脂組成物フィルム。
【0015】
[10] 波長380nmにおける光線透過率が25%以下、波長430nmにおける光線透過率が60%以上である[9]に記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物フィルム。
[11] ヘイズが10%以下である、[9]または[10]に記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物フィルム。
【0016】
[12] 厚みが5μm~450μmである[9]~[11]のいずれかに記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物フィルム。
[13] [9]~[12]のいずれかに記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物フィルムを用いた位相差フィルム。
【0017】
[14] [9]~[12]のいずれかに記載の共重合ポリカーボネート樹脂組成物フィルムを用いた保護フィルム。
[15] [13]に記載の位相差フィルムを用いた保護フィルム。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、特定のポリカーボネート樹脂に、特定の紫外線吸収剤を含有させることにより、波長380nm近傍における光線透過率が低く、波長430nm近傍における光線透過率に優れ、耐熱性の低下を抑制し、ブリードアウトした物質による濁りなどの外観不良等を抑制し、光弾性係数を低くすることができる、共重合ポリカーボネート樹脂組成物を提供することが出来る。さらに成形においての外観不良品を大幅に削減できることから生産性や作業性、ならびに製品の品質を向上させることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0020】
「構造単位」とは、樹脂を構成する部分構造であって、繰り返し構造単位に含まれる特定の部分構造のことを意味する。例えば、樹脂中で隣り合う連結基に挟まれた部分構造や、重合体の末端部分に存在する重合反応性基と、該重合性反応基に隣り合う連結基とに挟まれた部分構造を言う。より具体的には、共重合ポリカーボネート樹脂の場合、カルボニル基が連結基であって、隣り合うカルボニル基に挟まれた部分構造、または、末端の重合性官能基と隣り合うカルボニル基に挟まれた構造部分のことを構造単位と呼称する。
尚、本明細書において、共重合ポリカーボネート樹脂中の各構造単位の質量比率は、全ての構造単位及び連結基の合計質量を100質量%として計算する。
【0021】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
【0022】
[共重合ポリカーボネート樹脂組成物]
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂組成物は、所定の共重合ポリカーボネート樹脂、および、所定の紫外線吸収剤を含む。
【0023】
<共重合ポリカーボネート樹脂>
共重合ポリカーボネート樹脂は、前記式(1)で表される構造単位(A)と、前記式(2)で表される構造単位(B)とを含む。共重合ポリカーボネート樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の質量の合計量を100質量%とした際に、前記構造単位(A)の含有量は、20質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。上記下限以上であると耐熱性が向上し、かつ表面硬度を高めることできる。また、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。上記上限以下であると、耐吸湿性や低寸法変化率性が向上する。
前記構造単位(B)の含有量は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。上記下限以上であると耐吸湿性や低寸法変化率性が向上し、光弾性係数を低減することができる。また、80質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。上記上限以下であると、溶融加工性等の他の物性のバランスを調整することができる。
【0024】
(構造単位(A))
前記構造単位(A)は、下記式(3)で表されるジヒドロキシ化合物等(以下、「ジヒドロキシ化合物(3)」と称する場合がある。)から誘導される構造単位である。
【0025】
【0026】
ジヒドロキシ化合物(3)としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられる。これらのジヒドロキシ化合物(3)のうち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能であり、種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、成形性の面から最も好ましい。これらのジヒドロキシ化合物(3)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0027】
(構造単位(B))
前記構造単位(B)は、下記式(4)で表されるジヒドロキシ化合物等から誘導される構造単位である。
【0028】
【0029】
(その他の構造単位)
共重合ポリカーボネート樹脂は、構造単位(A)と構造単位(B)以外に、機械物性により優れるという観点からは、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、複素環構造を有するジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる1つ以上の化合物に由来する構成単位を有することが好ましい。
【0030】
脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のオキシアルキレングリコール化合物、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、水素化ジリノレイルグリコール、水素化ジオレイルグリコール等の分岐鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
【0031】
脂環式ジヒドロキシ化合物としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6-デカリンジメタノール、1,5-デカリンジメタノール、2,3-デカリンジメタノール、2,3-ノルボルナンジメタノール、2,5-ノルボルナンジメタノール、1,3-アダマンタンジメタノール、リモネン等のテルペン化合物から誘導されるジヒドロキシ化合物等に例示される、脂環式炭化水素の1級アルコールであるジヒドロキシ化合物;1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-アダマンタンジオール、水添ビスフェノールA、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等に例示される、脂環式炭化水素の2級アルコール、又は3級アルコールであるジヒドロキシ化合物等が挙げられる。
【0032】
複素環構造を有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、スピログリコール(別名:3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)やジオキサングリコール(別名:2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-5-エチル-5-ヒドロキシメチルー1,3-ジオキサン)等の複素環構造を有するジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0033】
前記した脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、複素環構造を有するジヒドロキシ化合物としては、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールに由来する構成単位を含むポリカーボネートジオールを用いることが特に好ましい。これらのモノマーに由来する構造単位を含む共重合ポリカーボネート樹脂は、光学特性や耐熱性、機械特性等のバランスに一層優れている。
【0034】
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂は、樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の質量の合計量を100質量%とした際に、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、または、複素環構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含有する場合は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0035】
また、共重合ポリカーボネート樹脂は、前述の脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂環式ジヒドロキシ化合物、および、複素環構造を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の他に芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでよい。
【0036】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジエチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-(3,5-ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4'-ジヒドロキシ-ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-5-ニトロフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジクロロジフェニルエーテル、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ-2-メチル)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)フルオレン等の芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0037】
共重合ポリカーボネート樹脂は、樹脂を構成する全ての構造単位、及び連結基の質量の合計量を100質量%とした際に、芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含有する場合は、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。芳香族ビスフェノール類に由来する構成単位が上記範囲内にあると、ベンゼン環構造の紫外線吸収に由来する耐候性の悪化を抑制できる。
【0038】
(共重合ポリカーボネート樹脂の光弾性係数)
共重合ポリカーボネート樹脂は、光弾性係数が15×10-12Pa-1以下が好ましく、より好ましくは12×10-12Pa-1以下、さらに好ましくは10×10-12Pa-1以下である。光弾性係数が15×10-12Pa-1より大きいと、本発明の共重合ポリカーボネート樹脂組成物を用いたフィルムを位相差フィルムとして偏光板に貼り合わせ、更にこの偏光板を表示装置に搭載させたときに、貼り合わせ時の応力により、視認環境やバックライトの熱で位相差フィルムに部分的応力がかかり、不均一な位相差変化が生じ、著しい画像品質の低下が起きるという問題が生じる。
【0039】
(共重合ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度)
共重合ポリカーボネート樹脂は、ガラス転移温度が80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましく、125℃以上が特に好ましい。また、150℃以下が好ましく、145℃以下がより好ましく、140℃以下がさらに好ましい。ガラス転移温度が上記範囲内であると、成形時の流動性を高め、複雑な形状の成形品であっても成形時に、共重合ポリカーボネート樹脂が成形型の末端まで行き届き易くなり、所望の成形品を得ることができる。また、ウエルド部での強度の低下を抑制できる。
【0040】
(炭酸ジエステル)
共重合ポリカーボネート樹脂に含有される上記の構造単位の連結基は、下記式(5)で表される炭酸ジエステルを重合することで導入される。
【0041】
【0042】
(式(5)中、R1及びR2は、それぞれ置換基を有していてもよい炭素数1~18の脂肪族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、R1とR2とは同一であっても異なっていてもよい。)
【0043】
R1及びR2は、置換又は無置換の芳香族炭化水素基であることが好ましく、無置換の芳香族炭化水素基がより好ましい。尚、脂肪族炭化水素基の置換基としては、エステル基、エーテル基、アミド基、ハロゲン原子が挙げられ、芳香族炭化水素基の置換基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基が挙げられる。
【0044】
前記式(5)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート(以下、DPCと略記することがある。)、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ-tert-ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネートが例示されるが、好ましくはジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。
【0045】
炭酸ジエステルは、塩化物イオン等の不純物を含む場合があり、これらの不純物が重合反応を阻害したり、得られる樹脂の色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留等により精製したものを使用することが好ましい。
【0046】
<共重合ポリカーボネート樹脂の製造方法>
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂は、一般に用いられる重合方法で製造することができる。例えば、ホスゲンやカルボン酸ハロゲン化物を用いた溶液重合法又は界面重合法や、溶媒を用いずに反応を行う溶融重合法を用いて製造することができる。これらの製造方法のうち、溶媒や毒性の高い化合物を使用しないことから環境負荷を低減することができ、また、生産性にも優れる溶融重合法によって製造することが好ましい。
【0047】
また、重合に溶媒を使用すると樹脂中に溶媒が残存する場合があり、その可塑化効果によって樹脂のガラス転移温度が低下することにより、後述する成形や延伸などの加工工程での品質変動要因となり得る。また、溶媒としては塩化メチレン等のハロゲン系の有機溶媒が用いられることが多いが、ハロゲン系溶媒が樹脂中に残存する場合、この樹脂を用いた成形体が電子機器等に組み込まれると金属部の腐食の原因ともなり得る。溶融重合法によって得られる樹脂は溶媒を含有しないため、加工工程や製品品質の安定化にとっても有利である。
【0048】
溶融重合法により共重合ポリカーボネート樹脂を製造する際は、前述した構造単位を有するモノマーと、炭酸ジエステルと、重合触媒とを混合し、溶融下でエステル交換反応(又は重縮合反応とも称する。)を行い、脱離成分を系外に除去しながら反応率を上げていく。重合の終盤では高温、高真空の条件で目的の分子量まで反応を進める。反応が完了したら、反応器から溶融状態の樹脂を抜き出し、本発明の共重合ポリカーボネート樹脂が得られる。
【0049】
重縮合反応は、反応に用いる全ジヒドロキシ化合物と全ジエステル化合物のモル比率を厳密に調整することで、反応速度や得られる樹脂の分子量を制御できる。共重合ポリカーボネート樹脂の場合、全ジヒドロキシ化合物に対する炭酸ジエステルのモル比率を、0.85~1.15に調整することが好ましく、0.90~1.10に調整することがより好ましく、0.95~1.05に調整することが特に好ましい。
【0050】
前記のモル比率が上下に大きく外れると、所望とする分子量の樹脂が製造できなくなる。また、前記のモル比率が小さくなりすぎると、製造された樹脂のヒドロキシ基末端が増加して、樹脂の熱安定性が悪化する場合がある。また、未反応のジヒドロキシ化合物が樹脂中に多く残存し、その後の成形加工工程で成形機の汚れや成形品の外観不良の原因となり得る。一方、前記のモル比率が大きくなりすぎると、同一条件下ではエステル交換反応の速度が低下したり、製造された樹脂中の炭酸ジエステルの残存量が増加し、この残存低分子成分が同様に成形加工工程での問題を招く可能性がある。
【0051】
溶融重合法は、通常、2段階以上の多段工程で実施される。重縮合反応は、1つの重合反応器を用い、順次条件を変えて2段階以上の工程で実施してもよいし、2つ以上の反応器を用いて、それぞれの条件を変えて2段階以上の工程で実施してもよいが、生産効率の観点からは、2つ以上、好ましくは3つ以上の反応器を用いて実施する。重縮合反応はバッチ式、連続式、或いはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれでも構わないが、生産効率と品質の安定性の観点から、連続式が好ましい。
【0052】
重縮合反応においては、反応系内の温度と圧力のバランスを適切に制御することが重要である。温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが反応系外に留出してしまうおそれがある。その結果、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物のモル比率が変化し、所望の分子量の樹脂が得られない場合がある。
【0053】
また、重縮合反応の重合速度は、ヒドロキシ基末端と、カーボネート基末端とのバランスによって制御される。そのため、特に連続式で重合を行う場合は、未反応モノマーの留出によって末端基のバランスが変動すると、重合速度を一定に制御することが難しくなり、得られる樹脂の分子量の変動が大きくなるおそれがある。樹脂の分子量は溶融粘度と相関するため、得られた樹脂を成形加工する際に、溶融粘度が変動し、均一な寸法の成形品が得られない等の問題を招くおそれがある。
【0054】
以下、溶融重縮合反応の工程を、モノマーを消費させてオリゴマーを生成させる段階(第1段目の反応)と、所望の分子量まで重合を進行させてポリマーを生成させる段階(第2段目又はそれ以降の反応)に分けて述べる。
【0055】
(第1段目の反応)
具体的に、第1段目の反応における反応条件としては、以下の条件を採用することができる。即ち、重合反応器の内温は、通常130℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは170℃以上、かつ、通常250℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下の範囲で設定する。また、重合反応器の圧力(以下、圧力とは絶対圧力を表す。)は、通常70kPa以下、好ましくは50kPa以下、より好ましくは30kPa以下、かつ、通常1kPa以上、好ましくは3kPa以上、より好ましくは5kPa以上の範囲で設定する。また、反応時間は、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、かつ、通常10時間以下、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下の範囲で設定する。
【0056】
第1段目の反応は、発生するジエステル化合物由来のモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施される。例えば、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用いる場合には、第1段目の反応において反応系外へ留去されるモノヒドロキシ化合物はフェノールである。
【0057】
第1段目の反応においては、反応圧力を低くするほど重合反応を促進することができるが、一方で未反応モノマーの留出が多くなってしまう。未反応モノマーの留出の抑制と、減圧による反応の促進を両立させるためには、還流冷却器を具備した反応器を用いることが有効である。特に未反応モノマーの多い反応初期に還流冷却器を用いるのがよい。
【0058】
(第2段目又はそれ以降の反応)
第2段目又はそれ以降の反応は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げ、引き続き発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力を5kPa以下、好ましくは3kPa以下、より好ましくは1kPa以下にする。また、内温は、通常210℃以上、好ましくは220℃以上、かつ、通常260℃以下、好ましくは255℃以下の範囲で設定する。また、反応時間は、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、かつ、通常10時間以下、好ましくは5時間以下、より好ましくは3時間以下の範囲で設定する。着色や熱劣化、架橋などの副反応を抑制し、色相や耐候性、熱安定性の良好な樹脂を得るには、全反応段階における内温の最高温度を260℃以下、好ましくは255℃以下、さらに好ましくは250℃以下にするとよい。特に本発明で用いる構造単位(A)の原料となるジヒドロキシ化合物は、過度に高温で重合反応を行うと、着色し透明性が得られにくくなる。
【0059】
(エステル交換反応触媒)
重合時に使用し得るエステル交換反応触媒(以下、単に「触媒」、又は「重合触媒」と言うことがある。)は、反応速度や重縮合して得られる樹脂の色調や熱安定性に非常に大きな影響を与え得る。触媒としては、製造された樹脂の透明性、色相、耐熱性、熱安定性、及び機械的強度を満足させ得るものであれば限定されないが、長周期型周期表における1族又は2族(以下、単に「1族」、「2族」と表記する。)の金属化合物、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。好ましくは長周期型周期表第2族の金属及びリチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物が使用される。
【0060】
前記の1族金属化合物としては、例えば以下の化合物を採用することができるが、これら以外の1族金属化合物を採用することも可能である。
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸カリウム、テトラフェニルホウ酸リチウム、テトラフェニルホウ酸セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩。これらのうち、重合活性と得られる樹脂の色相の観点から、リチウム化合物を用いることが好ましい。
【0061】
前記の2族金属化合物としては、例えば以下の化合物を採用することができるが、これら以外の2族金属化合物を採用することも可能である。
水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム。
これらのうち、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、バリウム化合物を用いることが好ましく、重合活性と得られる樹脂の色相の観点から、マグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物を用いることがさらに好ましく、カルシウム化合物を用いることが最も好ましい。
【0062】
尚、前記の1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、長周期型周期表第2族の金属及びリチウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属化合物を使用することが特に好ましい。
【0063】
前記重合触媒の使用量は、金属量として、通常、重合に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1μmol~300μmol、好ましくは0.5μmol~100μmolである。
【0064】
触媒量が少なすぎると、重合速度が遅くなるため、所望の分子量の樹脂を得ようとするにはその分だけ重合温度を高くせざるを得なくなる。そのため、重合反応時の熱履歴が増大し、得られる樹脂の色相や耐候性が悪化する可能性が高くなる。また、未反応の原料が重合途中で揮発して、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物のモル比率が崩れ、所望の分子量に到達しない可能性がある。一方、重合触媒の使用量が多すぎると、好ましくない副反応を併発し、得られる樹脂の色相の悪化や成形加工時の樹脂の着色や分解を招く可能性がある。
【0065】
前記1族金属の中でもナトリウム、カリウム、セシウムは、樹脂中に多く含まれると色相に悪影響を及ぼす可能性がある。そして、これらの金属は使用する触媒からのみではなく、原料や反応装置から混入する場合がある。出所にかかわらず、樹脂中のこれらの金属の化合物の合計量は、金属量として、前記全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、2μmol以下がよく、好ましくは1μmol以下、より好ましくは0.5μmol以下である。
【0066】
共重合ポリカーボネート樹脂は、前述のとおり重合させた後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化することができる。ペレット化の方法は限定されるものではないが、最終段の重合反応器から共重合ポリカーボネート樹脂を溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させてペレット化させる方法、最終段の重合反応器から溶融状態で一軸又は二軸の押出機に共重合ポリカーボネート樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法、又は、最終段の重合反応器から溶融状態で共重合ポリカーボネート樹脂を抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、再度一軸又は二軸の押出機に共重合ポリカーボネート樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法等が挙げられる。
【0067】
<紫外線吸収剤>
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂組成物は350nm~390nmの波長帯域に極大吸収波長を有する紫外線吸収剤を含む。紫外線吸収剤が上記範囲の波長帯域に極大吸収波長を有することによって、紫外線吸収剤の添加量が少量でも380nm近傍の波長をカットし、大量の紫外線吸収剤を添加することによる耐熱性の低下、ブリードアウトした物質によるフィルムの濁りによる外観不良等の問題を改善でき、波長430nm近傍における光線透過率に優れた共重合ポリカーボネート樹脂組成物を提供することができる。
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂組成物は、ペレット化を行う前に、共重合ポリカーボネート樹脂に対して、紫外線吸収剤をタンブラー、スーパーミキサー、フローター、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、押出機などで混合することが好ましい。また、本発明に用いる紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
本発明における紫外線吸収剤は、共重合ポリカーボネート樹脂組成物100質量%に対して、0.001質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がよりさらに好ましい。上記下限以上であると、430nm近傍の可視光領域において透過率が高くなり、透明性が得られやすい。また、6質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、4質量%以下がさらに好ましい。上記上限以下であると耐熱性が維持でき、紫外線吸収剤の凝集による異物増加を防ぐことができる。なお、共重合ポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度が、紫外線吸収剤が添加されていない共重合ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度に対して、温度差が好ましくは7℃以内、より好ましくは5℃以内、さらに好ましくは3℃以内である。
【0069】
本発明における紫外線吸収剤としては、トリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、キノリノン系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ベンゾオキサゾール系などが挙げられ、耐候性や長波長側吸収の観点からトリアジン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾオキサゾール系が好ましい。
【0070】
単独の紫外線吸収剤により達成可能な市販の紫外線吸収剤としては、2-(2´-ヒドロキシ-3´-t-ブチル-5´-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,4,6-トリス(4-ブトキシー2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、4,4´ビス(2-ベンゾオキサゾリル)スチルベン、2,5-ビス(5-tert-ブチル-2-ベンゾオキサゾリル)チオフェンンの構造で記される化合物などが挙げられる。
【0071】
本発明に用いる紫外線吸収剤の5%重量減少温度は、280℃より高いことが好ましい。また、290℃より高いことがより好ましく、300℃より高いことがさらに好ましい。この下限値以上であることにより、溶融混練の際に、紫外線吸収剤が分解や揮発を防ぐことができる。これにより、紫外線吸収剤の能力を十分発揮することが出来るだけでなく、分解物が押出のベントに蓄積して連続運転を妨げたり、Tダイ、ロール等に分解物が蓄積してフィルムの外観を損なったりすることを防止できる。
【0072】
本発明における紫外線吸収剤の分子量は、耐熱性の観点から410以上が好ましく、430以上がより好ましく、450以上がさらに好ましい。この下限値以上であれば、溶融重合にて製造した樹脂を押出機にて混練した際に揮発を防ぐことができる。これにより、紫外線吸収剤の能力を十分発揮することが出来るだけでなく、揮発物が押出のベントに蓄積して連続運転を妨げたり、Tダイ、ロール等に揮発物が蓄積してフィルムの外観を損なったりすることを防止できる。
【0073】
<各種添加剤>
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、中和剤(触媒失活剤)、光安定剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤、充填剤等の添加剤を配合することができる。本発明の共重合ポリカーボネート樹脂組成物において、添加剤は、紫外線吸収剤と同時に配合してもよく、紫外線吸収剤の配合前又は配合後に混合してもよい。また、添加剤は、タンブラー、スーパーミキサー、フローター、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、押出機などで混合することもできる。
【0074】
(熱安定剤)
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂組成物には、必要に応じて、溶融加工時等における分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤を配合することができる。かかる熱安定剤としては、通常知られるヒンダードフェノール系熱安定剤及び/又はリン系熱安定剤が挙げられる。
【0075】
ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,4-ジ-tert-ブチルフェノール、2-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、2-tert-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(6-シクロヘキシル-4-メチルフェノール)、2,2’-エチリデン-ビス-(2,4-ジ-tert-ブチルフェノール)、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]-メタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン等を採用することができる。これらの中でも、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]-メタン、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼンを用いることが好ましい。
【0076】
リン系熱安定剤としては、例えば、以下に示す亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸及びこれらのエステル等を採用することができるが、これらの化合物以外のリン系熱安定剤を採用することも可能である。
例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’-ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等をあげることができる。これらの熱安定剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
【0077】
かかる熱安定剤は、溶融重合時に反応液に添加してもよく、押出機を用いて樹脂に添加し、混練してもよい。溶融押出法によりフィルムを製膜する場合、押出機に前記熱安定剤等を添加して製膜してもよいし、予め押出機を用いて、樹脂中に前記熱安定剤等を添加して、ペレット等の形状にしたものを用いてもよい。
【0078】
これらの熱安定剤の配合量は、共重合ポリカーボネート樹脂組成物を100質量部とした場合、0.0001質量部以上が好ましく、0.0005質量部以上がより好ましく、0.001質量部以上がさらに好ましく、また、1質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましく、0.2質量部以下がさらに好ましい。
【0079】
(触媒失活剤)
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂組成物に、重合反応で用いた触媒を中和し、失活させるために酸性化合物を添加することで、色調や熱安定性を向上することができる。触媒失活剤として用いられる酸性化合物としては、カルボン酸基やリン酸基、スルホン酸基を有する化合物、又はそれらのエステル体などを用いることができるが、特に下記式(6)又は(7)で表される部分構造を含有するリン系化合物を用いることが好ましい。
【0080】
【0081】
【0082】
前記式(6)又は(7)で表されるリン系化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸類、次亜リン酸、ポリリン酸、ホスホン酸エステル、酸性リン酸エステル等が挙げられる。上記の中でも触媒失活と着色抑制の効果がさらに優れているのは、亜リン酸、ホスホン酸類、ホスホン酸エステルであり、特に亜リン酸が好ましい。
【0083】
前記ホスホン酸類としては、ホスホン酸(亜リン酸)、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、ビニルホスホン酸、デシルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、メチレンジホスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、4-メトキシフェニルホスホン酸、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)、プロピルホスホン酸無水物などが挙げられる。
【0084】
前記ホスホン酸エステルとしては、ホスホン酸ジメチル、ホスホン酸ジエチル、ホスホン酸ビス(2-エチルヘキシル)、ホスホン酸ジラウリル、ホスホン酸ジオレイル、ホスホン酸ジフェニル、ホスホン酸ジベンジル、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、エチルホスホン酸ジエチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジプロピル、(メトキシメチル)ホスホン酸ジエチル、ビニルホスホン酸ジエチル、ヒドロキシメチルホスホン酸ジエチル、(2-ヒドロキシエチル)ホスホン酸ジメチル、p-メチルベンジルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノ酢酸、ジエチルホスホノ酢酸エチル、ジエチルホスホノ酢酸tert-ブチル、(4-クロロベンジル)ホスホン酸ジエチル、シアノホスホン酸ジエチル、シアノメチルホスホン酸ジエチル、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸ジエチル、ジエチルホスホノアセトアルデヒドジエチルアセタール、(メチルチオメチル)ホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。
【0085】
前記酸性リン酸エステルとしては、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジビニル、リン酸ジプロピル、リン酸ジブチル、リン酸ビス(ブトキシエチル)、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)、リン酸ジイソトリデシル、リン酸ジオレイル、リン酸ジステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸ジベンジルなどのリン酸ジエステル、又はジエステルとモノエステルの混合物、クロロリン酸ジエチル、リン酸ステアリル亜鉛塩などが挙げられる。
【0086】
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
【0087】
前記共重合ポリカーボネート樹脂組成物への前記リン系化合物の添加量が少なすぎると、触媒失活や着色抑制の効果が不十分であり、多すぎるとかえって樹脂が着色したり、特に高温高湿度下での耐久試験において、樹脂が着色しやすくなる。前記リン系化合物の添加量は、重合反応に用いた触媒量に対応した量を添加する。重合反応に用いた触媒の金属1molに対して、前記リン系化合物はリン原子の量として0.5倍mol以上、5倍mol以下が好ましく、さらに0.7倍mol以上、4倍mol以下が好ましく、特に0.8倍mol以上、3倍mol以下が好ましい。
【0088】
(光安定剤)
かかる光安定剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)等が挙げられる。
【0089】
これらの光安定剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。かかる光安定剤の配合量は、共重合ポリカーボネート樹脂組成物を100質量部とした場合、0.01~2質量部が好ましい。また、本発明に係る共重合ポリカーボネート樹脂組成物には、重合体や紫外線吸収剤に基づく黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。ブルーイング剤としては、共重合ポリカーボネート樹脂組成物に使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。
【0090】
具体的なブルーイング剤としては、例えば、一般名Solvent Violet13 [CA.No(カラーインデックスNo)60725]、一般名Solvent Violet31[CA.No 68210、一般名Solvent Violet33[CA.No 60725]、一般名Solvent Blue94[CA.No 61500]、一般名Solvent Violet36[CA.No 68210]、一般名Solvent Blue97[バイエル社製「マクロレックスバイオレットRR」]及び一般名Solvent Blue45[CA.No61110]が代表例として挙げられる
【0091】
これらのブルーイング剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。これらブルーイング剤は、通常、共重合ポリカーボネート樹脂組成物を100質量部とした場合、0.1×10-4~2×10-4質量部の割合で配合される。
【0092】
[ポリマーアロイ]
本発明における共重合ポリカーボネート樹脂組成物は、例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリオレフィン、アクリル、アモルファスポリオレフィン、ABS、AS、ポリシクロオレフィンなどの合成樹脂、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートなどの生分解性樹脂、ゴムなどの1種又は2種以上と混練して、ポリマーアロイとしても用いることもできる。
【0093】
[フィルム]
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂及び共重合ポリカーボネート樹脂組成物は、そのまま、又は溶融押出機で一旦ペレット状にしてから、押出成形法等の通常知られている方法で、フィルム状やシート状に成形することができ、液晶表示装置やプラズマディスプレイなどに利用される位相差フィルム、拡散シート、偏光フィルムなどの光学用フィルムなどの光学部品とすることができる。
【0094】
<未延伸フィルムの製造方法>
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂組成物を用いて、未延伸フィルムを製膜する方法としては、共重合ポリカーボネート樹脂組成物を溶媒に溶解させてキャストした後、溶媒を除去する流延法や、溶媒を用いずに樹脂を溶融させて製膜する溶融製膜法を採用することができる。溶融製膜法としては、具体的にはTダイを用いた溶融押出法、カレンダー成形法、熱プレス法、共押出法、共溶融法、多層押出、インフレーション成形法等がある。未延伸フィルムの製膜方法は特に限定されないが、流延法では残存溶媒による問題が生じるおそれがあるため、好ましくは溶融製膜法、中でも後の延伸処理のし易さから、Tダイを用いた溶融押出法が好ましい。
【0095】
溶融製膜法により未延伸フィルムを成形する場合、成形温度を280℃以下とすることが好ましく、270℃以下とすることがより好ましく、265℃以下とすることが特に好ましい。成形温度が高過ぎると、得られるフィルム中の異物や気泡の発生による欠陥が増加したり、フィルムが着色したりする可能性がある。
【0096】
ただし、成形温度が低過ぎると樹脂の溶融粘度が高くなりすぎ、原反フィルムの成形が困難となり、厚みの均一な未延伸フィルムを製造することが困難になる可能性があるので、成形温度の下限は通常200℃以上、好ましくは210℃以上、より好ましくは220℃以上である。ここで、未延伸フィルムの成形温度とは、溶融製膜法における成形時の温度であって、通常、溶融樹脂を押し出すダイス出口の樹脂温度を測定した値である。
【0097】
また、フィルム中に異物が存在すると、偏光板として用いられた場合に光抜け等の欠点として認識される。樹脂中の異物を除去するために、前記の押出機の後にポリマーフィルターを取り付け、樹脂を濾過した後に、ダイスから押し出してフィルムを成形する方法が好ましい。その際、押出機やポリマーフィルター、ダイスを配管でつなぎ、溶融樹脂を移送する必要があるが、配管内での熱劣化を極力抑制するため、滞留時間が最短になるように各設備を配置することが重要である。また、押出後のフィルムの搬送や巻き取りの工程はクリーンルーム内で行い、フィルムに異物が付着しないように最善の注意が求められる。
【0098】
未延伸フィルムの厚みは、延伸後の位相差フィルムの膜厚の設計や、延伸倍率等の延伸条件に合わせて決められるが、好ましくは5μm以上、より好ましくは15μm以上であり、さらに好ましくは30μm以上である。また、好ましくは450μm以下、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは200μm以下、特に好ましくは160μm以下である。
【0099】
また、未延伸フィルムに厚み斑があると、位相差フィルムの位相差斑を招くため、位相 差フィルムとして使用する部分の厚みは設定厚み±3μm以下であることが好ましく、設 定厚み±2μm以下であることがさらに好ましく、設定厚み±1μm以下であることが特に好ましい。
【0100】
また、未延伸フィルムは長尺フィルムであることが好ましく、長尺フィルムの長手方向の長さは500m以上であることが好ましく、さらに1000m以上が好ましく、特に1500m以上が好ましい。生産性や品質の観点から、本発明の位相差フィルムを製造する際は、連続で延伸を行うことが好ましいが、通常、延伸開始時に所定の位相差に合わせ込むために条件調整が必要であり、フィルムの長さが短すぎると条件調整後に取得できる製品の量が減ってしまう。
【0101】
なお、本明細書において「長尺」とは、フィルムの幅方向よりも長手方向の寸法が十分に大きいことを意味し、実質的には長手方向に巻回してコイル状にできる程度のものを意味する。より具体的には、フィルムの長手方向の寸法が幅方向の寸法よりも10倍以上大 きいものを意味する。
【0102】
<位相差フィルムの製造方法>
未延伸フィルムを延伸配向させることにより、位相差フィルムを得ることができる。延伸方法としては縦一軸延伸、テンター等を用いる横一軸延伸、あるいはそれらを組み合わせた同時二軸延伸、逐次二軸延伸等、公知の方法を用いることができる。延伸はバッチ式で行ってもよいが、連続で行うことが生産性において好ましい。さらにバッチ式に比べて、連続式の方がフィルム面内の位相差のばらつきの少ない位相差フィルムが得られる。
【0103】
延伸温度は、原料として用いる樹脂のガラス転移温度(Tg)に対して、(Tg-20℃)~(Tg+30℃)の範囲であり、好ましくは(Tg-10℃)~(Tg+20℃)、さらに好ましくは(Tg-5℃)~(Tg+15℃)の範囲内である。
【0104】
延伸倍率は目的とする位相差値により決められるが、縦、横それぞれ、1.1倍~4倍、より好ましくは1.2倍~3.5倍である。延伸倍率が小さすぎると、所望とする配向度と配向角が得られる有効範囲が狭くなる。一方、延伸倍率が大きすぎると、延伸中にフィルムが破断したり、しわが発生するおそれがある。
【0105】
延伸速度も目的に応じて適宜選択されるが、下記数式で表される歪み速度で通常50%~2000%、好ましくは100%~1500%、より好ましくは200%~1000% 、特に好ましくは250%~500%となるように選択することができる。
【0106】
延伸速度が過度に大きいと延伸時の破断を招いたり、高温条件下での長期使用による光学的特性の変動が大きくなったりする可能性がある。また、延伸速度が過度に小さいと生産性が低下するだけでなく、所望の位相差を得るのに延伸倍率を過度に大きくしなければならない場合がある。
歪み速度(%/分)={延伸速度(mm/分)/原反フィルムの長さ(mm)}×100
【0107】
フィルムを延伸した後、必要に応じて加熱炉により熱固定処理を行ってもよいし、テンターの幅を制御したり、ロール周速を調整したりして、緩和工程を行ってもよい。熱固定処理の温度としては、未延伸フィルムに用いられる樹脂のガラス転移温度(Tg)に対し、60℃~(Tg)、好ましくは70℃~(Tg-5℃)の範囲で行う。熱処理温度が高すぎると、延伸により得られた分子の配向が乱れ、所望の位相差から大きく低下してしまう可能性がある。
【0108】
また、緩和工程を設ける場合は、延伸によって広がったフィルムの幅に対して、95%~99%に収縮させることで、延伸フィルムに生じた応力を取り除くことができる。この際にフィルムにかける処理温度は、熱固定処理温度と同様である。前記のような熱固定処理や緩和工程を行うことで、高温条件下での長期使用による光学特性の変動を抑制することができる。
【0109】
本発明の位相差フィルムは、このような延伸工程における処理条件を適宜選択・調整することによって作製することができる。
【0110】
本発明の位相差フィルムは、波長550nmにおける面内の複屈折(Δn)が0.001以上であると好ましく、0.002以上がより好ましく、0.0025以上が特に好ましい。位相差は、フィルムの厚み(d)と複屈折(Δn)に比例するため、複屈折を前記特定の範囲にすることにより、薄いフィルムで設計どおりの位相差を発現させることが可能となり、薄型の機器に適合するフィルムを容易に作製することができる。
【0111】
上記位相差フィルムは、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示す。位相差フィルムのRe(450)/Re(550)は、0.97~1.07であり、好ましくは0.98~1.04である。
【0112】
本発明の位相差フィルムは、波長550nmにおける面内位相差Re(550)が100nm~600nmであることが好ましい。前記面内位相差Re(550)の値がこの範囲内の場合には、1/4λ板、1/2λ板等に好適に用いることができる。
【0113】
また、一般的な偏光板を用いたディスプレイの場合、偏光板越しの光は直線偏光のため、偏光サングラス越しにディスプレイを見ると角度によりブラックアウトすることがある。これを解消するために、光学ディスプレイの表層を位相差フィルムにする場合がある。これらの位相差フィルムにおいても、好適に用いることができる。
【0114】
高い複屈折を発現させるためには、延伸温度を低くする、延伸倍率を高くする等して、ポリマー分子の配向度を上げなければならないが、そのような延伸条件ではフィルムが破断しやすくなるため、用いる樹脂が靱性に優れているほど有利である。
【0115】
本発明の位相差フィルムは、位相差の設計値にもよるが、厚みが100μm以下であることが好ましい。また、位相差フィルムの厚みは80μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることがさらに好ましい。
【0116】
一方、厚みが過度に薄いと、フィルムの取り扱いが困難になり、製造中にしわが発生したり、破断が起こったりするため、本発明の位相差フィルムの厚みの下限としては、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上である。
【0117】
<保護フィルム>
【0118】
保護フィルムとしての面内位相差Re(550)は30nm以下であり、好ましくは20nm以下であり、より好ましくは15nm以下である。面内位相差Re(550)は小さいほど好ましい。
【0119】
保護フィルムとして使用する場合は未延伸でも延伸しても良く、厚すぎると厚み斑が生じやすく、薄すぎると搬送時や延伸時の破断を招く可能性があるため、通常5μm以上、好ましくは20μm以上であり、また、好ましくは450μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは120μm以下である。上記上下限範囲内であれば、表面保護フィルム、偏光子保護フィルムなど光学製品用および電気電子部品用などに好適に用いることができる。
【0120】
保護フィルムとして用いる場合は、ハードコート層や反射防止処理、スティッキング防止や、拡散ないしアンチグレアを目的とした処理を施したものであってもよく、接着する前に表面処理としてコロナ放電処理、紫外線照射処理などを施したものであってもよい。
【0121】
<フィルムの異物>
フィルムの異物の発生はフィルムの品質を損ねるだけでなく、フィルムの生産性の観点からも好ましくない。フィルムの異物を低減するには、既述の通り、樹脂組成物中の特定の紫外線吸収剤を適量含有することで低減させることでき、溶融混練時の未融解物の発生やフィルム製膜時のブリードアウトに起因する製膜ロール汚れの発生を防ぐことが特に効果的である。本発明の共重合ポリカーボネート樹脂組成物においては、後述する透明性の評価をもって、フィルム異物の有無を判断した。
【0122】
[成形物(成形品)]
本発明の共重合ポリカーボネート組成物は、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の通常知られている方法で成形物(成形品)とすることができる。
【0123】
[共重合ポリカーボネート樹脂組成物の物性]
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂組成物は、以下に記載する物性を有することが好ましい。
【0124】
(光弾性係数)
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂組成物を用いたフィルムは、光弾性係数が15×10-12Pa-1以下であることが好ましい。光弾性係数が15×10-12Pa-1より大きいと、前記フィルムを位相差フィルムとして偏光板に貼り合わせ、更にこの偏光板を表示装置に搭載させたときに、貼り合わせ時の応力により、視認環境やバックライトの熱で位相差フィルムに部分的応力がかかり、不均一な位相差変化が生じ、著しい画像品質の低下が起きるという問題が生じる。したがって、本発明におけるフィルムは、光弾性係数が15×10-12Pa-1以下であることが好ましく、12×10-12Pa-1以下であることがより好ましく、10×10-12Pa-1以下であることがさらに好ましい。
【0125】
(ガラス転移温度)
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度は、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましい。ガラス転移温度が上記下限以上であると、共重合ポリカーボネート樹脂組成物、そのフイルム、あるいはその成形品が常温で癒着・変形する危険性が低くなる。また、共重合ポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度は150℃以下が好ましく、145℃以下がより好ましく、140℃以下がさらに好ましい。ガラス転移温度が上記上限以下であると、成形時の流動性を高め、複雑な形状の成形品であっても成形時に、共重合ポリカーボネート樹脂組成物が成形型の末端まで行き届き易くなり、所望の成形品を得ることができる。また、ウエルド部での強度の低下を抑制できる。共重合ポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度は、例えば樹脂を構成する構成単位の種類及び比率を変えることにより適宜調整することができる。共重合ポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度は、下記の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0126】
(還元粘度)
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂組成物の還元粘度は、0.20dL/g以上が好ましく、0.30dL/g以上がより好ましい。上記下限未満では、成形した時の機械的強度が弱い。還元粘度の上限は、0.6dL/g以下が好ましく、0.5dL/g以下がより好ましい。上記上限超では成形する際の流動性が低下し、サイクル特性を低下させ、成形サイクルが長くなる。共重合ポリカーボネート樹脂組成物の還元粘度は、下記の実施例に記載の方法により測定することができる。なお、還元粘度の測定温度は20℃で行い、振れ幅を±1℃の範囲内で調整した。
【0127】
(光線透過率)
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂組成物の波長380nmにおける光線透過率は、25%以下が好ましく、20%以下が好ましく、10%以下がさらに好ましい。波長430nmにおける光線透過率は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。上記を満たす場合、視認性が良く、紫外線領域をカットできる。また共重合ポリカーボネート樹脂組成物の透過率は、下記の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0128】
本発明の共重合ポリカーボネート樹脂組成物のヘイズは10%以下が好ましく、8%以下がより好ましく、6%以下がさらに好ましい。上記下限値以下であれば光学用途として使用できる。
【実施例0129】
以下にポリカーボネート共重合組成物の実施例を示すが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
【0130】
<樹脂の評価>
(光弾性係数)
・サンプル作製
80℃で5時間真空乾燥をしたポリカーボネート樹脂サンプル4.0gを、幅8cm、長さ8cm、厚さ0.5mmのスペーサーを用いて、熱プレスにて熱プレス温度200~250℃で、予熱1~3分、圧力20MPaの条件で1分間加圧後、スペーサーごと取り出し、水管冷却式プレスにて圧力20MPaで3分間加圧冷却してシートを作製した。このシートから幅5mm、長さ20mmのサンプルを切り出した。
【0131】
・測定
He-Neレーザー、偏光子、補償板、検光子、及び光検出器からなる複屈折測定装置と振動型粘弾性測定装置(レオロジー社製「DVE-3」)を組み合わせた装置を用いて測定した。(詳細は、日本レオロジー学会誌Vol.19、p93-97(1991)を参照。)
【0132】
切り出したサンプルを粘弾性測定装置に固定し、25℃の室温で貯蔵弾性率E'を周波数96Hzにて測定した。同時に、出射されたレーザー光を偏光子、試料、補償板、検光子の順に通し、光検出器(フォトダイオード)で拾い、ロックインアンプを通して角周波数ω又は2ωの波形について、その振幅とひずみに対する位相差を求め、ひずみ光学係数0'を求めた。このとき、偏光子と検光子の方向は直交し、またそれぞれ、試料の伸長方向に対してπ/4の角度をなすように調整した。光弾性係数は、貯蔵弾性率E'とひずみ光学係数0'を用いて次式より求めた。
光弾性係数=0'/E
【0133】
<紫外線吸収剤の評価>
(紫外線吸収剤吸光度)
紫外線吸収剤の吸光度は、紫外線吸収剤を8ppmになるようにクロロホルムに溶解した溶液を10mm石英セルに収容し、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、V-730)を用いて、測定モードはAbs、レスポンスは0.015sec、測定波長は190~1100nm、バンド幅は1nm間隔で測定した。得られた吸光度データから極大吸収波長値を読み取った。
【0134】
(5%重量減少温度)
TG-DTA6300(セイコー製)にて窒素下(流量200ml/min)にて、試 料約5mgを室温から500℃まで10℃/minにて昇温しながら測定を行い、5%重量減少温度を求めた。
【0135】
<共重合ポリカーボネート樹脂組成物の評価>
(熱プレス品の透明性)
共重合ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、200Pa以下の減圧下、ガラス転移温度-15℃の温度で12時間以上乾燥した。次に、乾燥したペレット約4gを小型熱プレス機(アズワン(株)、AH-2003CAH-1TC)を使用し、試料の上下にポリイミドフィルムを敷いて、温度200~230℃で3分間予熱し、圧力7MPaで5分間加圧後、冷却してシート成形品を作製した。
得られたシート成形品にて、厚み方向と幅方向から目視で確認して、透明性が実施例1で得られた共重合ポリカーボネート樹脂組成物と同程度以上の透明性のものを「○」、透明性が実施例1より劣るものを「×」とした。
【0136】
(共重合ポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度(Tg))
共重合ポリカーボネート樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製示差走査熱量計DSC6220を用いて測定した。約10mgの樹脂試料を同社製アルミパンに入れて密封し、50mL/分の窒素気流下、昇温速度20℃/分で30℃から200℃まで昇温した。3分間温度を保持した後、30℃まで20℃/分の速度で冷却した。30℃で3分保持し、再び200℃まで20℃/分の速度で昇温した。2回目の昇温で得られたDSCデータより、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点の温度である、補外ガラス転移開始温度を求め、それをガラス転移温度とした。
【0137】
(共重合ポリカーボネート樹脂組成物の還元粘度)
溶媒として塩化メチレンを用い、0.6g/dLの濃度のポリカーボネート溶液を調製した。森友理化工業社製:ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間t0と溶液の通過時間tから次式より相対粘度ηrelを求めた。
ηrel=t/t0
次いで、得られた相対粘度ηrelから次式より比粘度ηspを求めた。
ηsp=(η-η0)/η0=ηrel-1
そして、比粘度を濃度c(g/dL)で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。この値が高いほど分子量が大きい。
【0138】
<未延伸フィルムの評価>
(未延伸フィルムの成形1)
ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを、200Pa以下の減圧下、100℃の温度で12時間以上乾燥した。次に、乾燥したペレット約4gを小型熱プレス機(アズワン株式会社、AH-2003C AH-1TC)を使用し、縦14cm、横14cm、厚みに応じたスペーサーを用い、もしくは厚みによってはスペーサーを使用せず、試料の上下にポリイミドフィルムを敷いて、温度200~250℃で3分間予熱し、圧力7MPaで5分間加圧後、スペーサーごと取り出し、冷却して未延伸フィルムを作製した。膜厚はJISK6250準拠定圧厚さ測定器によって測定した。
【0139】
(ヘイズ)
ヘイズはJIS K7136に準拠した方法により、分光色彩メイズメーターCOH7700(日本電色工業社製)を用いて未延伸フィルムを切り出して測定した。ヘイズが低いほど、透明性に優れることを表す。
【0140】
(波長380nm、430nm透過率)
紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、V-730)を用いて、フィルムの膜厚測定部が光路に当たるようにセットし、測定モードは透過率(%)、レスポンスは0.015sec、測定波長は190~1100nm、バンド幅は1nm間隔で測定した。
得られた各波長における透過率のデータから、波長380nmと430nm、それぞれの透過率(%)を読み取った。
【0141】
<位相差フィルムの評価>
(フィルムの延伸)
未延伸フィルムから幅70mm、長さ100mmのフィルム片を切り出し、バッチ式二軸延伸装置(アイランド工業社製二軸延伸装置BIX-277-AL)を用いて、樹脂のガラス転移温度+12℃の延伸温度にて4分間予熱後、310%/分の延伸速度及び2.6倍の延伸倍率で上記フィルム片の自由端一軸延伸を行い、延伸フィルムを得た。
【0142】
(延伸フィルムの波長分散)
上記の方法で得られた延伸フィルムの中央部を幅4cm、長さ3cmに切り出し、王子計測機器(株)製位相差測定装置KOBRA-WPRを用いて、測定波長450、500、550、590、630nm、750nmで位相差を測定し、波長分散性を測定した。
【0143】
また、550nmの位相差R550と延伸フィルムの厚みを用い、次式より複屈折Δnを求めることができる。
複屈折=R550[nm]/(フィルム厚み[mm]×106)
複屈折の値が大きいほど、ポリマーの配向度が高いことを示す。また、複屈折の値が大きいほど、所望の位相差値を得るためのフィルムの厚みを薄くすることができる。
【0144】
<原材料>
以下の合成例、実施例および比較例で用いた原材料の略号、名称、銘柄当は以下の通りである。
・ISB:イソソルビド
・TCDDM:トリシクロデカンジメタノール
・CHDM:1,4-シクロヘキサンジメタノール
・DPC:ジフェニルカーボネート
・紫外線吸収剤-1:LA-F70 (ADEKA社製)
・紫外線吸収剤-2:4,4‘ビス(2-ベンゾオキサゾリル)スチルベン
・紫外線吸収剤-3:Tinopal OB OC (BASFジャパン社)
・紫外線吸収剤-4:2,4,6-トリス(4-ブトキシー2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン
・紫外線吸収剤-5:2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(ヘキシルオキシ)フェノール
・紫外線吸収剤-6:LA-31 (ADEKA社製)
【0145】
各紫外線吸収剤(UV吸収剤)の有する物性を下記表1にまとめて表記する。
【0146】
【0147】
<製造例1>
モル比ISB/TCDDM/DPC=0.700/0.300/1.000で、触媒として酢酸カルシウム1水和物の水溶液を全ジヒドロキシ化合物1molに対して1.25μmolとなるように、反応器に投入し、反応装置内を減圧窒素置換した。窒素雰囲気下、反応器内を150℃で30分間、攪拌しながら原料を溶解させた。反応1段目の工程として210℃まで30分かけて昇温し、30分間常圧にて反応させた。次いで圧力を常圧から13.3kPaまで120分かけて減圧した後、13.3kPaで保持しながら熱媒温度を15分かけて230℃まで昇温した。
反応2段目の工程として圧力を133Pa以下まで20分かけて減圧し、発生するフェノールを反応系外へ抜き出した。所定撹拌動力になった時点で窒素にて復圧し、内容物をストランドの形態で抜出し、回転式カッターでペレットにし、樹脂-1を得た。得られた共重合ポリカーボネート樹脂の光弾性係数は9×10-12Pa-1、Tgは129℃であった。
【0148】
<製造例2>
モル比ISB/CHDM/DPC=0.700/0.300/1.000を用いた以外は,実施例1と同様に重合反応を行い、樹脂-2のペレットを得た。得られた共重合ポリカーボネート樹脂の光弾性係数は18×10-12Pa-1、Tgは120℃であった。
【0149】
<実施例1>
製造例1に記載のポリカーボネート樹脂(樹脂-1)100質量部及び紫外線吸収剤-1の0.2質量部を、定量フィーダーを用いてベント付きニ軸押出機((株)日本製鋼所製TEX30α、シリンダー設定温度:240℃)に供給し、フィルターを通して異物を濾過した後、ダイからストランド状に排出させ、水冷、固化させた後、回転式カッターでペレット化した。
【0150】
上記した「未延伸フィルムの成形1」の通り、未延伸フィルムを作製し、前述の各種評価を行った。評価結果を表2に示す。さらに、上記した通り、位相差フィルムを作製し、前述の各種評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0151】
<実施例2~11、比較例1~5>
下記表2に示すように、樹脂配合、紫外線吸収剤の種類及び紫外線吸収剤の量を変更した以外は、実施例1と同様にして未延伸フィルムおよび位相差フィルムを作製し、前述の各種評価を行った。評価結果は表2に示す。また、比較例1はフィルムが白濁しているため延伸フィルムについての評価ができなかった。
【0152】
【0153】
<評価結果>
表2から明らかなように、本発明の実施例1~11の共重合ポリカーボネート組成物は、構造単位(A)と構造単位(B)とを含む共重合ポリカーボネート樹脂と、所定の紫外線吸収剤とを含有する共重合ポリカーボネート樹脂組成物であるので、紫外線吸収剤のブリードアウトがなく、波長380nmにおける光線透過率が低く、波長430nmにおける光線透過率に優れ、かつ耐熱性の低下の問題が無いことが分かる。