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特開2024-106893都市ごみ焼却灰の処理方法及びセメント原料の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106893
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】都市ごみ焼却灰の処理方法及びセメント原料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/80 20220101AFI20240801BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20240801BHJP
   C04B 7/38 20060101ALI20240801BHJP
   B09B 101/30 20220101ALN20240801BHJP
【FI】
B09B3/80 ZAB
B09B5/00 N
C04B7/38
B09B101:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011375
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門野 壮
(72)【発明者】
【氏名】田渕 亮丞
(72)【発明者】
【氏名】森川 卓子
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA36
4D004AB06
4D004BA02
4D004CC03
4D004CC11
(57)【要約】
【課題】都市ごみ焼却灰からより効率的に難水溶性の化合物を除去することができる、都市ごみ焼却灰の処理方法及びセメント原料の製造方法を提供する。
【解決手段】アルカリ含有鉱物を含む都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水を混合して水熱処理することと、水熱処理の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物を除去することと、を含む、都市ごみ焼却灰の処理方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ含有鉱物を含む都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水を混合して水熱処理することと、水熱処理の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物を除去することと、を含む、都市ごみ焼却灰の処理方法。
【請求項2】
前記アルカリ土類金属化合物が、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及び、塩基性炭酸マグネシウムの中から選択される少なくとも一種以上である、請求項1に記載の都市ごみ焼却灰の処理方法。
【請求項3】
100℃以上300℃以下で前記水熱処理を行う、請求項1または請求項2に記載の都市ごみ焼却灰の処理方法。
【請求項4】
前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(A)、及び、水を混合して水熱処理(A)を行うことと、
水熱処理(A)の後の前記前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(A)、及び、水を含む混合液から前記都市ごみ焼却灰を回収することと、
回収された前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(B)、及び、水を混合して水熱処理(B)を行うことと、
水熱処理(B)の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(B)、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物を除去することと、を含む、請求項1または請求項2に記載の都市ごみ焼却灰の処理方法。
【請求項5】
前記アルカリ土類金属化合物(A)が、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及び、塩基性炭酸マグネシウムの中から選択される少なくとも一種以上であり、
前記アルカリ土類金属化合物(B)が、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及び、塩基性炭酸マグネシウムの中で、前記アルカリ土類金属化合物(A)以外の化合物の中から選択される少なくとも一種以上である、請求項4に記載の都市ごみ焼却灰の処理方法。
【請求項6】
前記都市ごみ焼却灰が難水溶性塩化物を更に含み、
前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物、及び水を混合して水熱処理することと、
前記水熱処理の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物及び前記難水溶性塩化物を除去することと、を含む、請求項1または請求項2に記載の都市ごみ焼却灰の処理方法。
【請求項7】
前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(C)、及び、水を混合して水熱処理(C)を行うことと、
水熱処理(C)の後の前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(C)、及び、水を含む混合液(C)から前記都市ごみ焼却灰を回収することと、
回収された前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(D)、及び、水を混合して水熱処理(D)を行うことと、
水熱処理(D)の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(D)、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物及び前記難水溶性塩化物を除去することと、を含む、請求項6に記載の都市ごみ焼却灰の処理方法。
【請求項8】
アルカリ含有鉱物を含む都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水を混合して水熱処理することと、水熱処理の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物を除去することと、を含む、セメント原料の製造方法。
【請求項9】
前記アルカリ土類金属化合物が、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及び、塩基性炭酸マグネシウムの中から選択される少なくとも一種以上である、請求項8に記載のセメント原料の製造方法。
【請求項10】
100℃以上300℃以下で前記水熱処理を行う、請求項8または請求項9に記載のセメント原料の製造方法。
【請求項11】
前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(A)、及び、水を混合して水熱処理(A)を行うことと、
水熱処理(A)の後の前記前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(A)、及び、水を含む混合液から前記都市ごみ焼却灰を回収することと、
回収された前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(B)、及び、水を混合して水熱処理(B)を行うことと、
水熱処理(B)の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物を除去することと、を含む、請求項8または請求項9に記載のセメント原料の製造方法。
【請求項12】
前記アルカリ土類金属化合物(A)が、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及び、塩基性炭酸マグネシウムの中から選択される少なくとも一種以上であり、
前記アルカリ土類金属化合物(B)が、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及び、塩基性炭酸マグネシウムの中で、前記アルカリ土類金属化合物(A)以外の化合物の中から選択される少なくとも一種以上である、請求項11に記載のセメント原料の製造方法。
【請求項13】
前記都市ごみ焼却灰が難水溶性塩化物を更に含み、
前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物、及び水を混合して水熱処理することと、
前記水熱処理の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(B)、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物及び前記難水溶性塩化物を除去することと、を含む、請求項8または請求項9に記載のセメント原料の製造方法。
【請求項14】
前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(C)、及び、水を混合して水熱処理(C)を行うことと、
水熱処理(C)の後の前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(C)、及び、水を含む混合液(C)から前記都市ごみ焼却灰を回収することと、
回収された前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(D)、及び、水を混合して水熱処理(D)を行うことと、
水熱処理(D)の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(D)、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物及び前記難水溶性塩化物を除去することと、を含む、請求項13に記載のセメント原料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、都市ごみ焼却灰の処理方法に関する。また、本発明は、都市ごみ焼却灰を用いたセメント原料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般ごみ等の都市ごみを燃焼処理した際に発生する焼却灰(主灰、飛灰、混合灰等、以下、単に「都市ごみ焼却灰」と称する)は、セメント原料として有効利用される。
都市ごみ焼却灰には、塩素やアルカリ成分を含む化合物等が多量に含まれる。都市ごみ焼却灰をそのままセメント原料に用いると、塩素やアルカリ成分がセメント焼成時に悪影響を及ぼす可能性があるとともに、得られるセメントが品質に劣る虞がある。このため、都市ごみ焼却灰をセメント原料として用いる場合には、塩素やアルカリ成分等を水洗処理等によって予め除去することが一般的である。
【0003】
都市ごみ焼却灰中には、水溶性の塩素化合物やアルカリ含有化合物のほか、難水溶性のアルカリ含有化合物が含まれる場合がある。具体的に、アルカリ成分の一部は、アルカリ長石(正長石や微斜長石)、斜長石(曹長石や灰長石)、準長石等の難水溶性のアルカリ含有鉱物として存在する。セメント原料としてより高品質な都市ごみ焼却灰を得るためには、これらのアルカリ含有鉱物を除去し、都市ごみ焼却灰中のアルカリ成分を更に低減することが求められる。
【0004】
特許文献1には、二酸化炭素を含む水を用いてアルカリ含有鉱物を含む燃焼灰を洗浄することにより、アルカリ含有鉱物を分解して燃焼灰から除去することが開示されている。
【0005】
また、都市ごみ焼却灰中の塩素の一部は、難水溶性のフリーデル氏塩として存在することが知られている。塩素についても、セメント原料としてより高品質な都市ごみ焼却灰を得るために、難水溶性の塩素化合物を除去して、都市ごみ焼却灰中の塩素を更に低減することも求められる。
【0006】
特許文献2には、難水溶性の塩素化合物を含む塩素含有灰の脱塩方法が開示されている。引用文献2では、塩素含有灰を水洗することにより、水溶性の塩素化合物を除去した後、塩素含有灰を水スラリーにして100℃以上250℃以下の条件で水熱処理を施すことによって、難水溶性の塩素化合物を分解して水に溶出させて、灰から難水溶性塩素化合物を除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-158321号公報
【特許文献2】特開2022-85922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、都市ごみ焼却灰からより効率的に難水溶性の化合物を除去することができる、都市ごみ焼却灰の処理方法及びセメント原料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが検討した結果、都市ごみ焼却灰をアルカリ土類金属化合物と混合して水熱処理することにより、難水溶性のアルカリ含有鉱物が分解されて水に溶出し、都市ごみ焼却灰から分離除去することができることを見出した。更に、フリーデル氏塩と言った難水溶性の塩素化合物も、同様に、都市ごみ焼却灰をアルカリ土類金属化合物と混合して水熱処理することにより分解して水に溶出し、都市ごみ焼却灰から分離除去することができることを見出した。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の[1]~[14]を提供する。
[1]アルカリ含有鉱物を含む都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水を混合して水熱処理することと、水熱処理の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物を除去することと、を含む、都市ごみ焼却灰の処理方法。
[2]前記アルカリ土類金属化合物が、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及び、塩基性炭酸マグネシウムの中から選択される少なくとも一種以上である、[1]に記載の都市ごみ焼却灰の処理方法。
[3]100℃以上300℃以下で前記水熱処理を行う、[1]または[2]に記載の都市ごみ焼却灰の処理方法。
[4]前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(A)、及び、水を混合して水熱処理(A)を行うことと、水熱処理(A)の後の前記前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(A)、及び、水を含む混合液から前記都市ごみ焼却灰を回収することと、回収された前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(B)、及び、水を混合して水熱処理(B)を行うことと、水熱処理(B)の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(B)、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物を除去することと、を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の都市ごみ焼却灰の処理方法。
[5]前記アルカリ土類金属化合物(A)が、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及び、塩基性炭酸マグネシウムの中から選択される少なくとも一種以上であり、前記アルカリ土類金属化合物(B)が、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及び、塩基性炭酸マグネシウムの中で、前記アルカリ土類金属化合物(A)以外の化合物の中から選択される少なくとも一種以上である、[4]に記載の都市ごみ焼却灰の処理方法。
[6]前記都市ごみ焼却灰が難水溶性塩化物を更に含み、前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物、及び水を混合して水熱処理することと、前記水熱処理の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物及び前記難水溶性塩化物を除去することと、を含む、[1]~[5]のいずれかに記載の都市ごみ焼却灰の処理方法。
[7]前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(C)、及び、水を混合して水熱処理(C)を行うことと、水熱処理(C)の後の前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(C)、及び、水を含む混合液(C)から前記都市ごみ焼却灰を回収することと、回収された前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(D)、及び、水を混合して水熱処理(D)を行うことと、水熱処理(D)の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(D)、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物及び前記難水溶性塩化物を除去することと、を含む、[6]に記載の都市ごみ焼却灰の処理方法。
【0011】
[8]アルカリ含有鉱物を含む都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水を混合して水熱処理することと、水熱処理の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物を除去することと、を含む、セメント原料の製造方法。
[9]前記アルカリ土類金属化合物が、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及び、塩基性炭酸マグネシウムの中から選択される少なくとも一種以上である、[8]に記載のセメント原料の製造方法。
[10]100℃以上300℃以下で前記水熱処理を行う、[8]または[9]に記載のセメント原料の製造方法。
[11]前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(A)、及び、水を混合して水熱処理(A)を行うことと、水熱処理(A)の後の前記前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(A)、及び、水を含む混合液から前記都市ごみ焼却灰を回収することと、回収された前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(B)、及び、水を混合して水熱処理(B)を行うことと、水熱処理(B)の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(B)、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物を除去することと、を含む、[8]~[10]のいずれかに記載のセメント原料の製造方法。
[12]前記アルカリ土類金属化合物(A)が、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及び、塩基性炭酸マグネシウムの中から選択される少なくとも一種以上であり、前記アルカリ土類金属化合物(B)が、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及び、塩基性炭酸マグネシウムの中で、前記アルカリ土類金属化合物(A)以外の化合物の中から選択される少なくとも一種以上である、[11]に記載のセメント原料の製造方法。
[13]前記都市ごみ焼却灰が難水溶性塩化物を更に含み、前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物、及び水を混合して水熱処理することと、前記水熱処理の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物及び前記難水溶性塩化物を除去することと、を含む、[8]~[12]のいずれかに記載のセメント原料の製造方法。
[14]前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(C)、及び、水を混合して水熱処理(C)を行うことと、水熱処理(C)の後の前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(C)、及び、水を含む混合液(C)から前記都市ごみ焼却灰を回収することと、回収された前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(D)、及び、水を混合して水熱処理(D)を行うことと、水熱処理(D)の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(D)、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物及び前記難水溶性塩化物を除去することと、を含む、[13]に記載のセメント原料の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、都市ごみ焼却灰からより効率的に難水溶性の化合物を除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の都市ごみ焼却灰の処理方法、及び、セメント原料の製造方法について、詳細に説明する。本明細書中の「AA~BB」との数値範囲の表記は、「AA以上BB以下」であることを意味する。
【0014】
[都市ごみ焼却灰の処理方法]
本発明の都市ごみ焼却灰の処理方法は、アルカリ含有鉱物を含む都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水を混合して水熱処理することと、水熱処理の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物を除去することと、を含む。
【0015】
[セメント原料の製造方法]
本発明のセメント原料の製造方法は、アルカリ含有鉱物を含む都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水を混合して水熱処理することと、水熱処理の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物を除去することと、を含む。
【0016】
まず、上記都市ごみ焼却灰の処理方法及びセメント原料の製造方法に共通して用いられる成分について、以下に説明する。
<都市ごみ焼却灰>
本発明で用いられる都市ごみ焼却灰は、一般ごみ(家庭ごみ)等の一般廃棄物を焼却して得られる燃焼灰である。上記都市ごみ焼却灰には、塩素、アルカリ成分、硫黄分(硫酸)など種々の成分が含まれる。このうち、塩素及びアルカリ成分としては、NaCl、KCl等の水溶性化合物の他、難水溶性の化合物が含まれる。
【0017】
<アルカリ含有鉱物>
本発明で用いられる都市ごみ焼却灰は、難水溶性の化合物として、少なくともアルカリ含有鉱物を含むものである。「アルカリ含有鉱物」とは、アルカリ金属を含有する鉱物を指す。アルカリ含有鉱物としては、例えば、アルカリ長石(正長石や微斜長石)、斜長石(曹長石や灰長石)、準長石等が挙げられる。これらのアルカリ含有鉱物は、燃焼灰の処理で従来から行われている水洗処理では除去することができない成分である。
【0018】
<アルカリ土類金属化合物>
本発明で用いられるアルカリ土類金属化合物において、アルカリ土類金属とは、Mg、Ca、Sr、Ba及びRaの中から選択される一種以上の元素である。化合物の種類としては、塩化物、水酸化物、炭酸塩が例示される。処理コスト、水に対する溶解性、取扱い性などを考慮すると、アルカリ土類金属化合物は、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム(MgCO)、及び、塩基性炭酸マグネシウム(mMgCO・Mg(OH)・nHO)の中から選択される少なくとも一種以上であることが好ましい。これらの中でも、塩化カルシウム及び水酸化カルシウムの中から選択される少なくとも一種以上であることがより好ましい。
【0019】
本発明の第1実施形態に係る都市ごみ焼却灰の処理方法及びセメント原料の製造方法を、以下で説明する。なお、本発明は、後述する各実施形態に限定されるものではない。
【0020】
<水熱処理>
本実施形態では、都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水を混合して水熱処理を行う。
本発明者らが検討した結果、アルカリ含有鉱物を含む都市ごみ焼却灰を水と混合して水熱処理した場合、水熱処理前後のアルカリ成分の含有量にほとんど変化が無かった。これは、単に、都市ごみ焼却灰と水とを混合しただけでは、水熱処理を経てもアルカリ含有鉱物が分解されないことを意味する。しかし、都市ごみ焼却灰とアルカリ土類金属化合物と水とを混合して水熱処理することにより、アルカリ成分の含有量が低減することが判明した。このことは、水熱処理で、都市ゴミ焼却灰に含まれるアルカリ含有鉱物がアルカリ土類金属化合物と反応して分解し、水に溶出することを示している。すなわち、本発明により、アルカリ含有鉱物を都市ごみ焼却灰から除去することができる。
また、混合及び水熱処理の過程で、都市ごみ焼却灰と水とが接触することにより、水溶性化合物として都市ごみ焼却灰に含まれる塩素及びアルカリ成分も水に溶出する。この結果、塩素及びアルカリ成分を含む水溶性化合物が都市ごみ焼却灰から除去される。
【0021】
都市ごみ焼却灰と水との混合比は、質量比(都市ごみ焼却灰/水)で、1/1~1/20の範囲であることが好ましい。上記範囲であることにより、都市ごみ焼却灰の処理効率を高めることができ、かつ、処理中の混合液(スラリー)を取り扱いやすくすることができる。混合比は、1/2~1/15の範囲であることがより好ましく、1/3~1/10の範囲であることが更に好ましい。
【0022】
都市ごみ焼却灰に対するアルカリ土類金属化合物の混合比率は、質量比(アルカリ土類金属化合物/都市ごみ焼却灰)で、0.02以上であることが好ましく、0.03以上であることがより好ましく、0.06以上であることが更に好ましい。上記範囲であることにより、アルカリ含有鉱物を効果的に分解でき、除去率を高めることができる。一方、処理コスト等を考慮すると、水に対するアルカリ土類金属化合物の混合比率は、質量比で、1.0以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましく、0.5以下であることが更に好ましい。
【0023】
水熱処理は、100℃以上300℃以下で行うことが好ましい。水熱処理の温度が高い程、アルカリ含有鉱物とアルカリ土類金属化合物との反応性を高めることができる。用いるアルカリ土類金属化合物の種類に応じて、水熱処理の温度を適宜設定することが好ましい。反応性等を考慮すると、水熱処理の温度は、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることが更に好ましく、180℃以上であることが更に好ましく、200℃以上であることが特に好ましい。但し、水熱処理の温度が高い程、昇温のエネルギーを要するため処理コストが高くなる傾向がある。水熱処理温度は、反応性と処理コストとを考慮して適宜設定することが好ましい。
【0024】
水熱処理の圧力は、上記温度で水(液体)として存在し得る圧力であれば特に制限されない。水熱処理の圧力は、処理時の温度により適宜設定することができる。具体的には、水熱処理の圧力は、0.10MPa(大気圧)以上であることが好ましく、0.4MPa以上であることがより好ましく、2.5MPa以上であることがより好ましい。本発明においては、亜臨界状態となる温度及び圧力で水熱処理を行うことが特に好ましい。
【0025】
水熱処理の時間は、特に制限されない。十分な反応時間の確保と処理効率とのバランスを考慮すると、好ましくは0.5時間~4時間であり、より好ましくは0.5時間~3時間であり、更に好ましくは1時間~2時間である。
【0026】
水熱処理は、バッチ式で行っても良く、連続式で行っても良い。水熱処理装置としては、オートクレーブ、チューブリアクタなどを用いることができる。反応容器の大きさは、特に限定されず、実施のスケール等に応じて適宜選択することができる。
【0027】
水熱処理では、水が対流することにより、都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水が混合される。すなわち、本発明は、水熱処理と混合とが同時に行われることを含む。
なお、水熱処理の前に都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水を予め攪拌することなく、水熱処理が実施されてもよい。あるいは、都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水を混合した後で、水熱処理が実施されていてもよい。この場合、添加順は特に制限されない。混合方法は特に制限されず、攪拌、振とう等により混合してもよい。また、混合条件は、通常のスラリーの調製に行われている条件であれば、特に限定されない。
【0028】
<アルカリ含有鉱物の除去>
水熱処理により、都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水を含む混合液が得られる。水熱処理の後に、この混合液について固液分離処理して、都市ごみ焼却灰と液分とを分離する。
水熱処理により分解されたアルカリ含有鉱物は、水(液分)に溶解する。本発明の水熱処理及び固液分離の結果、アルカリ含有鉱物は都市ごみ焼却灰から除去される。また、水溶性化合物として都市ごみ焼却灰に含まれる塩素及びアルカリ成分も、水(液分)に溶解するため、固液分離により都市ごみ焼却灰から除去される。従って、除去後の都市ごみ焼却灰は、塩素及びアルカリ成分が低減されたものであり、水で洗浄した場合や、水のみで水熱処理を行った場合と比較して、アルカリ成分の濃度がより低減されている。
【0029】
固液分離方法としては、ろ過処理が挙げられる。ろ過処理は、公知の方法により行うことができ、例えば、吸引ろ過、フィルタープレス、遠心分離等により行うことができる。必要に応じて、ろ過の仕上げ処理として、固形分(都市ごみ焼却灰)に対して、イオン交換水、工業用水、水道水、地下水等の清水をかけて水洗浄してもよい。清水の量は、適宜調整すればよいが、例えば固形分の10倍量程度とすることが好ましい。
【0030】
分離後の都市ごみ焼却灰は、そのままセメント原料としてもよく、必要に応じて乾燥処理等を更に施してもよい。乾燥処理は、公知の方法により行うことができる。例えば、セメントクリンカ製造時の排熱利用を目的として、キルンから排出される排ガスを用いた乾燥処理等を行うことが好ましい。
【0031】
<セメント原料>
本発明の都市ごみ焼却灰の処理方法及びセメント原料の製造方法によれば、水溶性化合物として含まれる塩素及びアルカリ成分に加え、従来の水洗処理では除去が困難であった難水溶性のアルカリ含有鉱物に由来するアルカリ成分も分解することができる。このため、得られる都市ごみ焼却灰は、アルカリ成分及び塩素成分が低減されたものである。従来の水洗により処理された都市ごみ焼却灰は、アルカリ含有鉱物が残留するためにアルカリ成分の低減が不十分であったため、アルカリ成分によるセメントへの悪影響を避けるため、セメント原料として使用する際にはその使用量を低く調整する必要があった。これに対し、本発明により得られる都市ごみ焼却灰は、特にアルカリ成分が十分に低減されているため、セメント原料として好適に用いられ、その使用量を従来よりも多く設定することができる。
【0032】
本発明の第2実施形態に係る都市ごみ焼却灰の処理方法及びセメント原料の製造方法を、以下で説明する。
[都市ごみ焼却灰の処理方法]
本実施形態に係る都市ごみ焼却灰の処理方法は、前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(A)、及び、水を混合して水熱処理(A)を行うことと、水熱処理(A)の後の前記前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(A)、及び、水を含む混合液から前記都市ごみ焼却灰を回収することと、回収された前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(B)、及び、水を混合して水熱処理(B)を行うことと、水熱処理(B)の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(B)、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物を除去することと、を含む。
【0033】
[セメント原料の製造方法]
本実施形態に係るセメント原料の製造方法は、前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(A)、及び、水を混合して水熱処理(A)を行うことと、水熱処理(A)の後の前記前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(A)、及び、水を含む混合液から前記都市ごみ焼却灰を回収することと、回収された前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(B)、及び、水を混合して水熱処理(B)を行うことと、水熱処理(B)の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(B)、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物を除去することと、を含む。
【0034】
すなわち、本実施形態の都市ごみ焼却灰の処理方法及びセメント原料の製造方法は、上述した第1実施形態の水熱処理を繰り返すものである。こうすることにより、塩素及びアルカリ成分を含む水溶性化合物の除去率だけでなく、アルカリ含有鉱物の除去率も高めることができる。
【0035】
本実施形態において、前段の操作で用いられるアルカリ土類金属化合物(A)、及び、後段の操作で用いられるアルカリ土類金属化合物(B)の種類には、上記で説明したものの中から選択されるのであれば特に制限はないが、アルカリ土類金属化合物(A)とアルカリ土類金属化合物(B)とは異なることが好ましい。すなわち、アルカリ土類金属化合物(A)が、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及び、塩基性炭酸マグネシウムの中から選択される少なくとも一種以上であり、アルカリ土類金属化合物(B)が、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、及び、塩基性炭酸マグネシウムの中で、アルカリ土類金属化合物(A)以外の化合物の中から選択される少なくとも一種以上であることが好ましい。このように、前段の操作と後段の操作とで異なるアルカリ土類金属化合物を用いることにより、アルカリ含有鉱物の除去率をより高めることができる。なお、2段階の操作において、アルカリ土類金属化合物(B)が、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウムを含む場合、最終的に得られる都市ごみ焼却灰中に塩素分が残留する虞がある。このため、アルカリ土類金属化合物(B)には、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムが含まれないことが特に好ましい。
【0036】
<水熱処理(A)>
水熱処理(A)は、都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(A)、及び、水を混合して水熱処理する操作である。水熱処理(A)は、第1実施形態で説明した水熱処理と同じである。
水熱処理(A)により、都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(A)、及び、水を含む混合液(以下、「混合液(A)」と称する)が得られる。
【0037】
<都市ごみ焼却灰の回収>
水熱処理(A)の後に、混合液(A)について固液分離し、混合液(A)から都市ごみ焼却灰を回収する。固液分離方法としては、第1実施形態の分離工程で説明した公知の方法を用いることができる。
なお、この操作において、水熱処理(A)により分解されたアルカリ含有鉱物、及び、水溶性化合物としての塩素及びアルカリ成分は、液分に溶解しているため、都市ごみ焼却灰から除去される。
回収された都市ごみ焼却灰は、そのまま後段の水熱処理(B)に用いられてもよく、乾燥されてから水熱処理(B)に用いられてもよい。
【0038】
<水熱処理(B)>
水熱処理(B)は、回収された都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(B)、及び、水を混合し、水熱処理する操作である。水熱処理(B)は、第1実施形態で説明した水熱処理と同じである。また、水熱処理(B)は、水熱処理(A)と同じ条件で行われてもよい。あるいは、用いられるアルカリ土類金属化合物(B)の種類に応じて水熱処理(B)の温度や圧力を適宜設定し、水熱処理(A)とは異なる条件で行われてもよい。
水熱処理(B)により、都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(B)、及び、水を含む混合液(以下、「混合液(B)」と称する)が得られる。
【0039】
水熱処理(A)及び(B)の間に水が対流することにより、都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水が混合される。
本実施形態においても、各水熱処理の前に都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水が混合されずに、水熱処理が実施されてもよく、都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水が予め混合されてから水熱処理が実施されてもよい。なお、混合時の添加順、混合方法、混合条件は、第1実施形態と同じである。
【0040】
<アルカリ含有鉱物の除去>
水熱処理(B)の後に、混合液(B)について固液分離処理を行うことにより、都市ごみ焼却灰と液分とを分離する。この結果、都市ごみ焼却灰からアルカリ含有鉱物が除去される。回収された都市ごみ焼却灰に塩素及びアルカリ成分を含む水溶性化合物が残留している場合も、本工程の固液分離により都市ごみ焼却灰から除去される。固液分離方法は、第1実施形態で説明した方法と同じである。
【0041】
なお、本実施形態においては、上述した水熱処理及び回収を繰り返し行ってもよい。すなわち、本実施形態は、水熱処理を3段階以上行うことも含む。この場合、最後に行う水熱処理(B)の後に、上記のアルカリ含有鉱物の除去で説明した固液分離を行う。段階数は、塩素及びアルカリ成分の除去率と、処理コストとのバランスを考慮して設定することができる。
【0042】
<セメント原料>
本実施形態により得られた都市ごみ焼却灰は、特にアルカリ成分の濃度がより低減されている。このため、本実施形態の方法により得られた都市ごみ焼却灰は、セメント原料として好適に用いられる。
【0043】
本発明の第3実施形態に係る都市ごみ焼却灰の製造方法及びセメント原料の製造方法を、以下で説明する。
本実施形態において用いられる都市ごみ焼却灰は、難水溶性の化合物としてアルカリ含有鉱物のほか、難水溶性塩化物を更に含む。
【0044】
[都市ごみ焼却灰の処理方法]
すなわち、本実施形態の都市ごみ焼却灰の処理方法は、前記都市ごみ焼却灰が難水溶性塩化物を更に含み、前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物、及び水を混合して水熱処理することと、前記水熱処理の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物及び前記難水溶性塩化物を除去することと、を含む。
【0045】
[セメント原料の製造方法]
また、本実施形態のセメント原料の製造方法は、前記都市ごみ焼却灰が難水溶性塩化物を更に含み、前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物、及び水を混合して水熱処理することと、前記水熱処理の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物及び前記難水溶性塩化物を除去することと、を含む。
【0046】
<難水溶性塩化物>
難水溶性塩化物とは、常温程度(例えば、5~50℃)の水に対してほとんど溶解しない塩化物である。具体的に、難水溶性塩化物としては、フリーデル氏塩(3CaO・Al・CaCl・10HO)が挙げられる。
<水熱処理>
本実施形態における水熱処理は、第1実施形態で説明した工程と同じである。但し、難水溶性塩化物の分解効率は、用いるアルカリ土類金属化合物の種類によって異なる。このため、本実施形態において、アルカリ土類金属化合物の種類によって、水熱処理の温度を変えることが好ましい。
【0047】
本実施形態の一例において、アルカリ土類金属化合物として塩化カルシウム及び塩化マグネシウムの中から選択される一種以上を用いて、170℃以上300℃以下で水熱処理することが好ましい。アルカリ土類金属化合物として塩化カルシウム及び塩化マグネシウムの中から選択される一種以上を用いる場合、低温で水熱処理を行うと、難水溶性塩化物が十分に分解されない虞がある。このため、アルカリ土類金属化合物として塩化カルシウム及び塩化マグネシウムの中から選択される一種以上を用いる場合は、上記温度で水熱処理することにより、難水溶性塩化物の分解効率を高め、結果として都市ごみ焼却灰からの塩素の除去率を高めることができる。本態様において、水熱処理の温度は、180℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることが更に好ましい。
【0048】
本実施形態の別の例において、アルカリ土類金属化合物として水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、及び、塩基性炭酸マグネシウムの中から選択される一種以上を用いて、120℃以上300℃以下で水熱処理することが好ましい。アルカリ土類金属化合物として水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、及び、塩基性炭酸マグネシウムの中から選択される一種以上を用いる場合、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムの中から選択される一種以上を用いる場合と比較して、より低温での水熱処理でも、難水溶性塩化物を分解することができる。上記温度で水熱処理することにより、難水溶性塩化物の分解効率を高めることができる。本例において、水熱処理の温度は、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることが更に好ましく、180℃以上であることが更に好ましく、200℃以上であることが特に好ましい。
【0049】
本実施形態においても、水熱処理の間に水が対流することにより、都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水が混合される。
本実施形態においても、水熱処理の前に都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水が混合されずに、水熱処理が実施されてもよく、都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水が予め混合されてから水熱処理が実施されてもよい。なお、混合時の添加順、混合方法、混合条件は、第1実施形態と同じである。
【0050】
<アルカリ含有鉱物及び難水溶性塩化物の除去>
上記水熱処理により、都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水を含む混合液が得られる。第1実施形態と同様に、水熱処理の後、この混合液について固液分離を行い、都市ごみ焼却灰と液分とを分離する。
都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物及び水を混合した混合液を水熱処理することにより、アルカリ含有鉱物だけでなく、難水溶性塩化物(フリーデル氏塩)も分解することができる。分解された難水溶性塩化物は、水(液分)に溶解する。このため、アルカリ含有鉱物及び難水溶性塩化物は、都市ごみ焼却灰から除去される。また、塩素及びアルカリ成分を含む水溶性化合物も、固液分離により都市ごみ焼却灰から除去される。すなわち、本実施形態では、アルカリ成分の除去率を高めるだけでなく、難水溶性塩化物を含む場合でも塩素の除去率も更に高めることができる。
【0051】
<セメント原料>
本実施形態により得られる都市ごみ焼却灰は、アルカリ成分及び塩素の両方が十分に低減されている。このため、本実施形態の方法により得られた都市ごみ焼却灰は、セメント原料として好適に用いられる。
【0052】
本発明の第4実施形態に係る都市ごみ焼却灰の処理方法及びセメント原料の製造方法を、以下で説明する。
[都市ごみ焼却灰の処理方法]
本実施形態に係る都市ごみ焼却灰の処理方法は、前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(C)、及び、水を混合して水熱処理(C)を行うことと、水熱処理(C)の後の前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(C)、及び、水を含む混合液(C)から前記都市ごみ焼却灰を回収することと、回収された前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(D)、及び、水を混合して水熱処理(D)を行うことと、水熱処理(D)の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(D)、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物及び前記難水溶性塩化物を除去することと、を含む。
【0053】
[セメント原料の製造方法]
本実施形態に係るセメント原料の製造方法は、前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(C)、及び、水を混合して水熱処理(C)を行うことと、水熱処理(C)の後の前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(C)、及び、水を含む混合液(C)から前記都市ごみ焼却灰を回収することと、回収された前記都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(D)、及び、水を混合して水熱処理(D)を行うことと、水熱処理(D)の後に前記都市ごみ焼却灰、前記アルカリ土類金属化合物(D)、及び水を含む混合物から前記都市ごみ焼却灰を分離して、前記都市ごみ焼却灰から前記アルカリ含有鉱物及び前記難水溶性塩化物を除去することと、を含む。
【0054】
すなわち、本実施形態の都市ごみ焼却灰の処理方法及びセメント原料の製造方法は、水熱処理を繰り返すものである。こうすることにより、塩素及びアルカリ成分を含む水溶性化合物の除去率だけでなく、アルカリ含有鉱物及び難水溶性塩化物の除去率を高めることができる。
【0055】
本実施形態において、前段の操作で用いられるアルカリ土類金属化合物(C)、及び、後段の操作で用いられるアルカリ土類金属化合物(D)の種類には特に制限はないが、アルカリ土類金属化合物(C)とアルカリ土類金属化合物(D)とは異なることが好ましい。特に、本実施形態においては、アルカリ土類金属化合物(C)が、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムの中から選択される一種以上であり、アルカリ土類金属化合物(D)が、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウム、及び、塩基性炭酸マグネシウムの中から選択される一種以上であることが好ましい。このように、前段の操作でアルカリ土類金属塩化物を用い、後段の操作でアルカリ土類金属塩化物以外の化合物を用いることにより、処理後の都市ごみ焼却灰中にアルカリ土類金属塩化物が残留することを回避できる。
【0056】
<水熱処理(C)>
水熱処理(C)は、都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(C)、及び、水を混合して水熱処理(C)を行う操作である。水熱処理(C)は、第1実施形態及び第3実施形態で説明した水熱処理と同じである。本実施形態の処理方法では、複数回の水熱処理を行うため、前段の水熱処理(C)において、必ずしも難水溶性塩化物が高い効率で分解される必要はない。
【0057】
水熱処理(C)の温度は、例えば100℃以上300℃以下の範囲で行ってもよい。但し、最終的に得られる都市ごみ焼却灰中に含まれる塩素の量をより低減させるためには、当該水熱処理において、170℃以上300℃以下で水熱処理することが好ましい。より塩素の除去率を高めるためには、当該水熱処理での温度は、180℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることが更に好ましい。
水熱処理(C)により、都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(C)、及び、水を含む混合液(以下、「混合液(C)」と称する)が得られる。
【0058】
<都市ごみ焼却灰の回収>
水熱処理(C)の後に、混合液(C)について固液分離し、混合液(C)から都市ごみ焼却灰を回収する。固液分離方法は、第1実施形態と同じ方法を採用することができる。
なお、この工程において、水熱処理(C)により分解されたアルカリ含有鉱物、難水溶性塩化物、及び、水溶性化合物としての塩素及びアルカリ成分は、水に溶解しているため、都市ごみ焼却灰から除去される。
回収された都市ごみ焼却灰は、そのまま水熱処理(D)に用いられてもよく、乾燥されてから水熱処理に用いられてもよい。
【0059】
<水熱処理(D)>
水熱処理(D)は、回収された都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(D)、及び、水を混合して水熱処理する操作である。水熱処理(D)は、第3実施形態で説明した水熱処理と同じである。
水熱処理(D)では、120℃以上300℃以下で水熱処理を行う。それ以外の条件は、第1実施形態で説明した条件と同じである。上記温度で水熱処理することにより、仮に水熱処理(C)において難水溶性塩化物が十分に分解されなかったとしても、本工程で難水溶性塩化物が分解されるために、最終的に得られる都市ごみ焼却灰中の塩素の含有量をより低減させることができる。この場合、第3実施形態と同じく、水熱処理の温度は、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることが更に好ましく、180℃以上であることが更に好ましく、200℃以上であることが特に好ましい。
水熱処理(D)により、都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物(D)、及び、水を含む混合液(以下、「混合液(D)」と称する)が得られる。
【0060】
水熱処理(C)及び(D)の間に水が対流することにより、都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水が混合される。
本実施形態においても、各水熱処理の前に都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水が混合されずに、水熱処理が実施されてもよく、都市ごみ焼却灰、アルカリ土類金属化合物、及び水が予め混合されてから水熱処理が実施されてもよい。なお、混合時の添加順、混合方法、混合条件は、第1実施形態と同じである。
【0061】
<アルカリ含有鉱物及び難水溶性塩化物の除去>
水熱処理(D)の後、混合液(D)について固液分離処理を行うことにより、都市ごみ焼却灰と液分とを分離する。この結果、都市ごみ焼却灰からアルカリ含有鉱物及び難水溶性塩化物が除去される。水溶性化合物が残留している場合も、本工程の固液分離により都市ごみ焼却灰から除去される。固液分離方法は、第1実施形態で説明した方法と同じである。
【0062】
なお、本実施形態においては、上述した水熱処理及び回収を繰り返し行ってもよい。すなわち、本実施形態は、水熱処理を3段階以上行うことも含む。この場合、最後に行う水熱処理(D)の後に、上記のアルカリ含有鉱物及び難水溶性塩化物の除去を行う。段階数は、塩素及びアルカリ成分の除去率と、処理コストとのバランスを考慮して設定することができる。
【0063】
<セメント原料>
本実施形態により得られた都市ごみ焼却灰は、アルカリ成分だけでなく塩素の濃度もより低減されている。このため、本実施形態の方法により得られた都市ごみ焼却灰は、セメント原料として好適に用いられる。
【実施例0064】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0065】
1.試料作製方法
[実施例1~17]
試料容器(カーボン繊維含有PTFE製、50mL)に、都市ごみ焼却灰2gを秤量して投入した。その後、水酸化カルシウム(関東化学社製、純度95%以上)を表1に示す混合比率(水酸化カルシウム/都市ごみ焼却灰、質量比)となるように秤量し、試料容器に投入した。その後、純水20mlを試料容器に投入し、試料容器の蓋を閉めた。
試料容器を、高圧用反応分解容器(ステンレス製)に収容した。表1に示す温度に昇温した炉内に高圧用反応分解容器を入れ、2時間水熱処理を行った。
水熱反応中の圧力は、容器の容積、添加した水の量、温度の関係から、飽和蒸気圧になっていると言える。表1には、水熱処理時の圧力として、飽和蒸気圧を示した。
その後、炉内から高圧用反応分解容器を取り出し、冷却した。冷却後、高圧用反応分解容器から試料容器を取り出した。ろ紙(No.5A)を用いて、試料容器内の混合液を吸引ろ過した。吸引ろ過後、更に純水を用いてろ紙上の固形分を通水洗浄した。洗浄後、固形分を40℃で20時間乾燥し、実施例1~17のサンプル(処理後の都市ごみ焼却灰)を得た。
【0066】
[実施例18~22]
上述した試料容器に、都市ごみ焼却灰2gを秤量して投入した。その後、塩化カルシウム(関東化学社製、純度95.0%以上)を表2に示す混合比率(塩化カルシウム/都市ごみ焼却灰、質量比)となるように秤量し、試料容器に投入した。その後、純水20mlを試料容器に投入し、試料容器の蓋を閉めた。
その後、表2に示す温度に昇温した炉内で水熱処理を行ったこと以外は、実施例1~17で説明した工程と同じ手順により、実施例18~22のサンプルを得た。なお、表2に示す圧力は、水熱処理時の飽和蒸気圧である。
【0067】
[実施例23~29]
上述した試料容器に、都市ごみ焼却灰2gを秤量して投入した。その後、塩基性炭酸マグネシウム(関東化学社製、純度 MgOとして40.0~45.0%)を表3に示す混合比率(塩基性炭酸マグネシウム/都市ごみ焼却灰、質量比)となるように秤量し、試料容器に投入した。その後、純水20mlを試料容器に投入し、試料容器の蓋を閉めた。
その後、表3に示す温度に昇温した炉内で水熱処理を行ったこと以外は、実施例1~17で説明した工程と同じ手順により、実施例23~29のサンプルを得た。なお、表3に示す圧力は、水熱処理時の飽和蒸気圧である。
【0068】
[実施例30~36]
上述した試料容器に、都市ごみ焼却灰2gを秤量して投入した。その後、塩化マグネシウム(関東化学社製、純度99.0%以上)を表4に示す混合比率(塩化マグネシウム/都市ごみ焼却灰、質量比)となるように秤量し、試料容器に投入し、試料容器の蓋を閉めた。
その後、表4に示す温度に昇温した炉内で水熱処理を行ったこと以外は、実施例1~17で説明した工程と同じ手順により、実施例30~36のサンプルを得た。なお、表4に示す圧力は、水熱処理時の飽和蒸気圧である。
【0069】
[実施例37~38]
上述した試料容器に、都市ごみ焼却灰2gを秤量して投入した。その後、水酸化カルシウム(関東化学社製、純度95.0%以上)及び塩化カルシウム(関東化学社製、純度95.0%以上)を表5に示す混合比率(水酸化カルシウム/都市ごみ焼却灰、塩化カルシウム/都市ごみ焼却灰、質量比)となるように秤量し、試料容器に投入した。その後、純水20mlを試料容器に投入し、試料容器の蓋を閉めた。
その後、表5に示す温度に昇温した炉内で水熱処理を行ったこと以外は、実施例1~17で説明した工程と同じ手順により、実施例37~38のサンプルを得た。なお、表5に示す圧力は、水熱処理時の飽和蒸気圧である。
【0070】
[実施例39、参考例1]
上述した試料容器に、都市ごみ焼却灰2gを秤量して投入した。その後、塩化カルシウム(関東化学社製、純度95.0%以上)を表6に示す混合比率(塩化カルシウム/都市ごみ焼却灰、質量比)となるように秤量し、試料容器に投入した。その後、純水20mlを試料容器に投入し、試料容器の蓋を閉めた。
その後、表6に示す温度に昇温した炉内で水熱処理を行ったこと以外は、実施例1~17で説明した工程と同じ手順により、水熱処理を行った。表6に示す圧力は、水熱処理時の飽和蒸気圧である。
水熱処理後、炉内から高圧用反応分解容器を取り出し、冷却した。冷却後、高圧用反応分解容器から試料容器を取り出した。ろ紙(No.5A)を用いて、試料容器内の混合液を吸引ろ過した。吸引ろ過後、更に純水を用いてろ紙上の固形分を通水洗浄した。洗浄後、固形分を40℃で20時間乾燥した。
更に、上述した試料容器に、乾燥後の上記固形分を秤量して投入した。その後、実施例25については、水酸化カルシウム(関東化学社製、純度95.0%以上)を表6に示す混合比率(水酸化カルシウム/都市ごみ焼却灰、質量比)となるように秤量し、試料容器に投入した。参考例1については、水酸化カルシウムを投入しなかった。その後、固形分:純水が1:10(質量比)となるように純水を秤量し、試料容器に投入し、試料容器の蓋を閉めた。
その後、表6に示す温度に昇温した炉内で水熱処理を行ったこと以外は、実施例1~17で説明した工程と同じ手順により、実施例39及び参考例1のサンプルを得た。表6に示す圧力は、水熱処理時の飽和蒸気圧である。
【0071】
[比較例1]
容器(ビーカー)に都市ごみ焼却灰2g及び純水20mlを秤量して投入した。その後、20℃で0.5時間攪拌して、都市ごみ焼却灰水を混合して水洗処理を行った。
その後、ろ紙(No.5A)を用いて、容器内の混合液を吸引ろ過した。吸引ろ過後、更に純水を用いてろ紙上の固形分を通水洗浄した。洗浄後、固形分を40℃で20時間乾燥し、比較例1のサンプルを得た。
【0072】
[比較例2~8]
アルカリ土類金属化合物を添加せずに、各表に示す温度に昇温した炉内で水熱処理を行ったこと以外は、上記実施例で説明した工程と同じ手順により、比較例2~8のサンプルを得た。
【0073】
2.評価方法
未処理の都市ごみ焼却灰、実施例1~39、参考例1、比較例1~8のサンプルについて、蛍光X線分析を行った。分析装置には、エネルギー分散型蛍光X線分析装置Epsilon3(Malvern Panalytical社製)を用い、Omnian法(スタンダードレス法)により、Na、K、Clの含有量(%)を測定した。
測定値を用いて、以下の式により各サンプル中のNa、K、Clの含有量Aを算出した。
含有量A=a×(b+c)/100
a:蛍光X線分析により得られる含有量(測定値、%)
b:未処理の都市ごみ焼却灰の量(2g)
c:アルカリ土類金属化合物の添加量(g)
Oの含有量Aについては、下記式にて算出した。
A=ANa2O+AK2O×0.658
Na2O:Naの含有量を酸化物換算した場合の含有量
K2O:Kの含有量を酸化物換算した場合の含有量
各サンプルについて、上記式により得られた各成分の含有量Aと、未処理の都市ごみ焼却灰の各成分の含有量Bとから、除去率を以下の式により算出した。
除去率(%)=(B-A)/B×100
【0074】
3.結果
実施例1~17(水酸化カルシウムを用いた処理)、比較例1~6の評価結果を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1に示すように、実施例1~17は、従来の水洗処理のみを行った比較例1に比べて、アルカリ成分(RO)の除去率が大幅に上昇した。
同じ水熱処理温度で対比すると、いずれの実施例でも、比較例に対してアルカリ成分(RO)の除去率が上昇した。
これらの結果から、都市ごみ焼却灰と水酸化カルシウムとを混合して水熱処理することにより、都市ごみ焼却灰に含まれていた難水溶性のアルカリ含有鉱物が分解された結果、アルカリ成分の除去率が上昇したことが十分に理解できる。
ある程度の誤差はあるものの、水酸化カルシウムの混合比率が高くなるほど、また、水熱処理温度が高くなるほど、アルカリ成分の除去率が高くなる傾向が見られた。
【0077】
また、いずれの実施例も、従来の水洗工程のみを行った比較例1に比べて塩素の除去率が上昇した。塩素に関しては水熱処理温度が高くなるほど、除去率が高くなる傾向が見られ、120℃以上の水熱処理により、実施例の塩素の除去率が比較例よりも高くなった。この結果から、都市ごみ焼却灰と水酸化カルシウムとを混合して水熱処理することにより、都市ごみ焼却灰に含まれていた難水溶性塩化物(具体的にフリーデル氏塩)の分解が促進された結果、塩素の除去率が上昇したと推測される。
【0078】
実施例18~22(塩化カルシウムを用いた処理)、比較例1、5~7の評価結果を表2に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
表2に示すように、実施例18~22は、比較例1に比べて、アルカリ成分(RO)の除去率が大幅に上昇した。
同じ水熱処理温度で対比すると、いずれの実施例でも、比較例に対してアルカリ成分(RO)の除去率が上昇した。この結果から、都市ごみ焼却灰と塩化カルシウムとを混合して水熱処理することにより、都市ごみ焼却灰に含まれていた難水溶性のアルカリ含有鉱物が分解された結果、アルカリ成分の除去率が上昇したことが十分に理解できる。
【0081】
塩素の除去率については、いずれの実施例も水洗処理のみを行った比較例1に比べて上昇した。この結果から、都市ごみ焼却灰と塩化カルシウムとを混合して水熱処理することにより、都市ごみ焼却灰に含まれていた難水溶性塩化物が分解されて、塩素の除去率が上昇したことが推測される。
【0082】
実施例23~29(塩基性炭酸マグネシウムを用いた処理)、比較例1~8の評価結果を表3に示す。
【0083】
【表3】
【0084】
表3に示すように、実施例23~29は、比較例1に比べて、アルカリ成分(RO)の除去率が大幅に上昇した。
同じ水熱処理温度で対比すると、いずれの実施例でも、比較例に対してアルカリ成分(RO)の除去率が上昇した。この結果から、都市ごみ焼却灰と塩基性炭酸マグネシウムとを混合して水熱処理することにより、都市ごみ焼却灰に含まれていた難水溶性のアルカリ含有鉱物が分解された結果、アルカリ成分の除去率が上昇したことが十分に理解できる。
【0085】
塩素の除去率については、いずれの実施例も水洗処理のみを行った比較例1に比べて上昇した。この結果から、都市ごみ焼却灰と塩基性炭酸マグネシウムとを混合して水熱処理することにより、都市ごみ焼却灰に含まれていた難水溶性塩化物が分解されて、塩素の除去率が上昇したことが推測される。
【0086】
実施例30~36(塩化マグネシウムを用いた処理)、比較例1~8の評価結果を表4に示す。
【0087】
【表4】
【0088】
表4に示すように、実施例30~36は、比較例1に比べて、アルカリ成分(RO)の除去率が大幅に上昇した。
同じ水熱処理温度で対比すると、いずれの実施例でも、比較例に対してアルカリ成分(RO)の除去率が上昇した。この結果から、都市ごみ焼却灰と塩化マグネシウムとを混合して水熱処理することにより、都市ごみ焼却灰に含まれていた難水溶性のアルカリ含有鉱物が分解された結果、アルカリ成分の除去率が上昇したことが十分に理解できる。
【0089】
塩素の除去率については、いずれの実施例も水洗処理のみを行った比較例1に比べて上昇した。この結果から、都市ごみ焼却灰と塩基性炭酸マグネシウムとを混合して水熱処理することにより、都市ごみ焼却灰に含まれていた難水溶性塩化物が分解されて、塩素の除去率が上昇したことが推測される。
【0090】
実施例37、38(水酸化カルシウム及び塩化カルシウムを併用した処理)、比較例1、5、6の評価結果を表5に示す。
【0091】
【表5】
【0092】
表5に示すように、水酸化カルシウムと塩化カルシウムを併用して処理した実施例37、38においても、比較例1に比べて、アルカリ成分(RO)の除去率が大幅に上昇した。また、同じ水熱処理温度で対比した場合でも、比較例5、6に対してもアルカリ成分(RO)の除去率が大幅に上昇した。
塩素の除去率については、いずれの実施例も水洗処理のみを行った比較例1に比べて上昇した。この結果から、都市ごみ焼却灰と水酸化カルシウムと塩化カルシウムとを混合して水熱処理することにより、都市ごみ焼却灰に含まれていた難水溶性塩化物が分解されて、塩素の除去率が上昇したことが推測される。
【0093】
実施例39、参考例1(2段階の水熱処理を行った例)、比較例1、6の評価結果を表6に示す。
【0094】
【表6】
【0095】
表6に示すように、塩化カルシウムを用いた水熱処理と水酸化カルシウムを用いた水熱処理との2段階の処理を行った実施例39は、比較例1に比べて、アルカリ成分(RO)及び塩素の除去率が大幅に上昇した。
また、同じ水熱処理温度で対比した場合でも、水のみの水熱処理を行った比較例6に対してもアルカリ成分(RO)の除去率が大幅に上昇した。
実施例39は、塩化カルシウムを用いた水熱処理の後で水のみの水熱処理を行った参考例1と比べると、アルカリ成分(RO)の除去率が上昇している。また、塩素の除去率も上昇している。この結果から、塩化カルシウム及び水酸化カルシウムを用いた2段階の水熱処理を行うことにより、アルカリ成分だけでなく塩素の除去率も向上させることができることが理解できる。