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特開2024-106909可塑剤組成物、樹脂組成物、樹脂成形体、及び積層体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024106909
(43)【公開日】2024-08-08
(54)【発明の名称】可塑剤組成物、樹脂組成物、樹脂成形体、及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20240801BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20240801BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20240801BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240801BHJP
   B32B 27/22 20060101ALI20240801BHJP
   B32B 27/30 20060101ALN20240801BHJP
【FI】
C08L67/00
C08L27/06
C08K5/00
C08L101/00
B32B27/22
B32B27/30 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023011400
(22)【出願日】2023-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100209679
【弁理士】
【氏名又は名称】廣 昇
(72)【発明者】
【氏名】西村 翔太
(72)【発明者】
【氏名】坂本 圭
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AK15A
4F100AK41A
4F100AK41H
4F100AK51B
4F100AT00
4F100BA02
4F100CA04A
4F100CA04H
4F100GB33
4F100JK08
4F100JK17
4J002AA00X
4J002BD03X
4J002CF00W
4J002CF01W
4J002CF03W
4J002ED036
4J002EE026
4J002EH006
4J002EH066
4J002EP006
4J002FD026
4J002FD02W
4J002GN00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低温引張伸び及び耐熱収縮性に優れた樹脂成形体を形成可能な樹脂組成物の調製に用い得る可塑剤組成物を提供する。
【解決手段】ポリエステル系可塑剤と、下記式(1)で表される化合物とを含む可塑剤組成物〔式中、Axは、炭素数3~20の有機基;Y~Yは、単結合等;SP~SPは、所定の有機基;R~Rは、炭素数12~18の鎖状の脂肪族炭化水素基を表す〕。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系可塑剤と、下記式(1)で表される化合物とを含む、可塑剤組成物。
【化1】
〔式(1)中、
Axは、炭素数2~20の有機基を表し、
、Yは、それぞれ独立して、単結合、-C(=O)-、-C(=O)-NR-、又は、-C(=O)-O-を表し、
は、水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、
、Yは、それぞれ独立して、単結合、-C(=O)-、-NR-C(=O)-、又は、-O-C(=O)-を表し、
は、水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、
SP、SPは、それぞれ独立して、-CHCHO-、-CHCH(CH)O-、-CH(CH)CHO-、-CHCH(CHCH)O-、又は、-CH(CHCH)CHO-を表し、
SP、SPは、それぞれ独立して、-OCHCH-、-OCH(CH)CH-、-OCHCH(CH)-、-OCH(CHCH)CH-、又は、-OCHCH(CHCH)-を表し、
a、b、c、dは、それぞれ独立して、1~30の整数を表し、
、R、R、Rは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数12~18の鎖状の脂肪族炭化水素基を表し、
x、yは、それぞれ独立して0又は1を表し、
xが0である場合、下記式(2):
【化2】
で表される構造は、水素原子を表し、
yが0である場合、下記(3):
【化3】
で表される構造は、水素原子を表し、
式(2)、(3)中、*は、Axとの結合位置を表す。〕
【請求項2】
前記Axが、
(i)置換基を有していてもよい炭素数2~20の鎖状の脂肪族炭化水素基、
(ii)置換基を有していてもよい炭素数4~12の環状の脂肪族炭化水素基、
(iii)置換基を有していてもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素環基、又は、
(iv)置換基を有していてもよい鎖状の脂肪族炭化水素基に含まれる単結合の少なくとも1つが、-O-、-C(=O)-、-O-C(=O)-、若しくは、-C(=O)-O-に置換されてなる炭素数2~20の有機基(ただし、-O-が2以上連続する場合と、-C(=O)-が2以上連続する場合と、-O-又は-C(=O)-が前記Y、前記Y、前記Y、又は、前記Yと結合する端部に位置する場合と、を除く。)
のいずれかの有機基である、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項3】
前記Axが、置換基を有していてもよい下記式(2-1)~(2-35)のいずれかで表される基である、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【化4】
【請求項4】
前記ポリエステル系可塑剤が、アジピン酸系ポリエステルを含有する、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項5】
前記化合物の含有量が、前記ポリエステル系可塑剤100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下である、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項6】
樹脂と、請求項1~5のいずれかに記載の可塑剤組成物と、を含む、樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂がハロゲンを含有する、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂のガラス転移温度が50℃以上100℃以下である、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂が塩化ビニル樹脂を含有する、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記化合物の含有量が、前記樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下である、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
粉体成形に用いられる、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
パウダースラッシュ成形に用いられる、請求項6に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項6に記載の樹脂組成物を成形してなる、樹脂成形体。
【請求項14】
自動車インスツルメントパネル表皮用である、請求項13に記載の樹脂成形体。
【請求項15】
発泡ポリウレタン成形体と、請求項13に記載の樹脂成形体とを有する、積層体。
【請求項16】
自動車インスツルメントパネル用である、請求項15に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可塑剤組成物、樹脂組成物、樹脂成形体、及び積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル樹脂等の樹脂は、一般に、耐寒性、耐熱性、耐油性などの特性に優れているため、種々の用途に用いられている。
具体的には、例えば、自動車インスツルメントパネル及びドアトリム等の自動車内装部品の形成には、塩化ビニル樹脂等の樹脂を用いた樹脂成形体からなる表皮や当該樹脂成形体からなる表皮に発泡ポリウレタン等の発泡体を裏打ちしてなる積層体などの自動車内装材が用いられている。
【0003】
そして、自動車インスツルメントパネル等の自動車内装部品の表皮を構成する樹脂成形体は、例えば、塩化ビニル樹脂等の樹脂と、可塑剤と、添加剤とを含む樹脂組成物をパウダースラッシュ成形などの粉体成形の方法を用いて成形することにより製造されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、例えば特許文献1では、塩化ビニル樹脂粒子と、ポリエステル系可塑剤などの可塑剤と、ハイドロタルサイト系安定剤、ゼオライト系安定剤及びβ-ジケトン類などの添加剤とを含む塩化ビニル樹脂組成物をパウダースラッシュ成形することにより、塩化ビニル樹脂成形体を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-197394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述した樹脂成形体には、低温下での引張伸び(以下、「低温引張伸び」と称することがある。)に優れることが求められる。
また、自動車内装材としては、上述した樹脂成形体にポリウレタンの発泡体(以下、「発泡ポリウレタン成形体」と称することがある。)を裏打ちしてなる積層体を作製する場合がある。そして、自動車内装材としての積層体が高温下に置かれた場合、樹脂成形体に含まれる可塑剤が発泡ポリウレタン成形体へと移行することにより、樹脂成形体に熱収縮が生じる場合がある。そこで、発泡ポリウレタン成形体との積層体の形成に用いられる樹脂成形体には、上述した熱収縮を抑制すること、即ち、耐熱収縮性が求められる。
しかしながら、上記従来技術の可塑剤を含む樹脂組成物を用いた場合、形成される樹脂成形体の低温引張伸び及び耐熱収縮性に改善の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、低温引張伸び及び耐熱収縮性に優れた樹脂成形体を形成可能な樹脂組成物の調製に用い得る可塑剤組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、低温引張伸び及び耐熱収縮性に優れた樹脂成形体を形成可能な樹脂組成物を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、低温引張伸び及び耐熱収縮性に優れた樹脂成形体を提供することを目的とする。
また、本発明は、当該樹脂成形体を備える積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、所定の構造を有する化合物を樹脂組成物の調製に用いれば、調製される樹脂組成物を用いて形成される樹脂成形体が低温引張伸び及び耐熱収縮性の双方に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明は、[1]ポリエステル系可塑剤と、下記式(1)で表される化合物とを含む、可塑剤組成物である。
【化1】
〔式(1)中、
Axは、炭素数2~20の有機基を表し、
、Yは、それぞれ独立して、単結合、-C(=O)-、-C(=O)-NR-、又は、-C(=O)-O-を表し、
は、水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、
、Yは、それぞれ独立して、単結合、-C(=O)-、-NR-C(=O)-、又は、-O-C(=O)-を表し、
は、水素原子、メチル基、又は、エチル基を表し、
SP、SPは、それぞれ独立して、-CHCHO-、-CHCH(CH)O-、-CH(CH)CHO-、-CHCH(CHCH)O-、又は、-CH(CHCH)CHO-を表し、
SP、SPは、それぞれ独立して、-OCHCH-、-OCH(CH)CH-、-OCHCH(CH)-、-OCH(CHCH)CH-、又は、-OCHCH(CHCH)-を表し、
a、b、c、dは、それぞれ独立して、1~30の整数を表し、
、R、R、Rは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数12~18の鎖状の脂肪族炭化水素基を表し、
x、yは、それぞれ独立して0又は1を表し、
xが0である場合、下記式(2):
【化2】
で表される構造は、水素原子を表し、
yが0である場合、下記(3):
【化3】
で表される構造は、水素原子を表し、
式(2)、(3)中、*は、Axとの結合位置を表す。〕
このように、ポリエステル系可塑剤と、上記所定の構造を有する化合物とを含む可塑剤組成物であれば、低温引張伸び及び耐熱収縮性に優れた樹脂成形体を形成可能である。
【0010】
[2]上記[1]の可塑剤組成物において、前記Axが、
(i)置換基を有していてもよい炭素数2~20の鎖状の脂肪族炭化水素基、
(ii)置換基を有していてもよい炭素数4~12の環状の脂肪族炭化水素基、
(iii)置換基を有していてもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素環基、又は、
(iv)置換基を有していてもよい鎖状の脂肪族炭化水素基に含まれる単結合の少なくとも1つが、-O-、-C(=O)-、-O-C(=O)-、若しくは、-C(=O)-O-に置換されてなる炭素数2~20の有機基(ただし、-O-が2以上連続する場合と、-C(=O)-が2以上連続する場合と、-O-又は-C(=O)-が前記Y、前記Y、前記Y、又は、前記Yと結合する端部に位置する場合と、を除く。)
のいずれかの有機基であることが好ましい。
【0011】
[3]上記[1]又は[2]の可塑剤組成物において、前記Axが、置換基を有していてもよい下記式(2-1)~(2-35)のいずれかで表される基であることが好ましい。
【化4】
【0012】
[4]上記[1]~[3]のいずれかの可塑剤組成物において、前記ポリエステル系可塑剤が、アジピン酸系ポリエステルを含有することが好ましい。
ポリエステル系可塑剤としてアジピン酸系ポリエステルを用いれば、可塑剤組成物を含む樹脂組成物を用いて形成される樹脂成形体の耐熱収縮性を更に向上させることができる。
【0013】
[5]上記[1]~[4]のいずれかの可塑剤組成物において、前記化合物の含有量が、前記ポリエステル系可塑剤100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
可塑剤組成物中における上述した化合物の含有量が上記所定の範囲内であれば、形成される樹脂成形体の耐熱収縮性を十分に高く確保しつつ、当該樹脂成形体の発泡ポリウレタン成形体への接着性を向上させると共に、当該樹脂成形体の低温引張伸びを更に向上させることができる。
【0014】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明は、[6]樹脂と、上記[1]~[5]のいずれかの可塑剤組成物と、を含む、樹脂組成物である。
このように、樹脂と上述した可塑剤組成物とを含む樹脂組成物によれば、低温引張伸び及び耐熱収縮性に優れた樹脂成形体を形成可能である。
【0015】
[7]上記[6]の樹脂組成物において、前記樹脂がハロゲンを含有することが好ましい。
【0016】
[8]上記[6]又は[7]の樹脂組成物において、前記樹脂のガラス転移温度が50℃以上100℃以下であることが好ましい。
なお、本発明において、樹脂の「ガラス転移温度」は、JIS K 7121に準拠して、示差走査熱量計(DSC)により測定することができる。
【0017】
[9]上記[6]~[8]のいずれかの樹脂組成物において、前記樹脂が塩化ビニル樹脂を含有することが好ましい。
【0018】
[10]上記[6]~[9]のいずれかの樹脂組成物において、前記化合物の含有量が、前記樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
樹脂組成物中における上述した化合物の含有量が上記所定の範囲内であれば、形成される樹脂成形体の耐熱収縮性を十分に高く確保しつつ、当該樹脂成形体の発泡ポリウレタン成形体への接着性を向上させると共に、当該樹脂成形体の低温引張伸びを更に向上させることができる。
【0019】
[11]上記[6]~[10]のいずれかの樹脂組成物は、粉体成形に用いられることが好ましい。
樹脂組成物を粉体成形に用いれば、例えば、自動車インスツルメントパネル用表皮などの自動車内装材として良好に使用し得る樹脂成形体が容易に得られる。
【0020】
[12]上記[6]~[11]のいずれかの樹脂組成物は、パウダースラッシュ成形に用いられることが好ましい。
樹脂組成物をパウダースラッシュ成形に用いれば、例えば、自動車インスツルメントパネル用表皮などの自動車内装材として良好に使用し得る樹脂成形体がより容易に得られる。
【0021】
そして、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明は、[13]上記[6]~[12]のいずれかの樹脂組成物を成形してなる、樹脂成形体である。
このように、上述した樹脂組成物を成形してなる樹脂成形体は、低温引張伸び及び耐熱収縮性に優れているため、自動車内装材として良好に使用することができる。
【0022】
[14]上記[13]の樹脂成形体は、自動車インスツルメントパネル表皮用であることが好ましい。
本発明の樹脂成形体を自動車インスツルメントパネルの表皮に使用すれば、低温引張伸び及び耐熱収縮性に優れた表皮を有する自動車インスツルメントパネルを製造することができる。
【0023】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明は、[15]発泡ポリウレタン成形体と、上記[13]又は[14]の樹脂成形体とを有する、積層体である。
発泡ポリウレタン成形体及び上述した樹脂成形体を有する積層体は、低温引張伸び及び耐熱収縮性に優れた樹脂成形体部分を備えている。
【0024】
[16]上記[15]の積層体は、自動車インスツルメントパネル用であることが好ましい。
本発明の積層体を自動車インスツルメントパネルに用いれば、製造される自動車インスツルメントパネルの表皮の低温引張伸び及び耐熱収縮性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、低温引張伸び及び耐熱収縮性に優れた樹脂成形体を形成可能な樹脂組成物の調製に用い得る可塑剤組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、低温引張伸び及び耐熱収縮性に優れた樹脂成形体を形成可能な樹脂組成物を提供するができる。
さらに、本発明によれば、低温引張伸び及び耐熱収縮性に優れた樹脂成形体を提供することができる。
また、本発明によれば、当該樹脂成形体を備える積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】合成例で使用した「Cardolite LITE 2020」(カードライト社製)のH-NMRの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図2】合成例で使用した「Cardolite LITE 2020」(カードライト社製)の13C-NMRの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図3】合成例で使用した「Cardolite LITE 2020」(カードライト社製)のC-H COSYの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図4】合成例で使用した「Cardolite LITE 2020」(カードライト社製)の赤外分光法(全反射測定法)(以下、「IR(ATR)」と略記することがある。)の測定により得られたスペクトルを示す図である。
図5】合成例で使用した「Cardolite NX-7507」(カードライト社製)のH-NMRの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図6】合成例で使用した「Cardolite NX-7507」(カードライト社製)の13C-NMRの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図7】合成例で使用した「Cardolite NX-7507」(カードライト社製)のC-H COSYの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図8】合成例で使用した「Cardolite NX-7507」(カードライト社製)のIR(ATR)の測定により得られたスペクトルを示す図である。
図9】合成例1により得られたジエステル混合物1のH-NMRの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図10】合成例1により得られたジエステル混合物1の13C-NMRの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図11】合成例1により得られたジエステル混合物1のIR(ATR)の測定により得られたスペクトルを示す図である。
図12】合成例2により得られたジカルバメート混合物1のH-NMRの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図13】合成例2により得られたジカルバメート混合物1の13C-NMRの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図14】合成例2により得られたジカルバメート混合物1のIR(ATR)の測定により得られたスペクトルを示す図である。
図15】合成例3により得られたジエーテル混合物1のH-NMRの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図16】合成例3により得られたジエーテル混合物1のIR(ATR)の測定により得られたスペクトルを示す図である。
図17】合成例4により得られたジエステル混合物2のH-NMRの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図18】合成例4により得られたジエステル混合物2の13C-NMRの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図19】合成例4により得られたジエステル混合物2のIR(ATR)の測定により得られたスペクトルを示す図である。
図20】合成例5により得られたトリエステル混合物1のH-NMRの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図21】合成例5により得られたトリエステル混合物1の13C-NMRの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図22】合成例5により得られたトリエステル混合物1のIR(ATR)の測定により得られたスペクトルを示す図である。
図23】合成例6により得られたジエステル混合物3のH-NMRの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図24】合成例6により得られたジエステル混合物3の13C-NMRの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図25】合成例6により得られたジエステル混合物3のIR(ATR)の測定により得られたスペクトルを示す図である。
図26】合成例7により得られたジエステル混合物4のH-NMRの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図27】合成例7により得られたジエステル混合物4の13C-NMRの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図28】合成例7により得られたジエステル混合物4のIR(ATR)の測定により得られたスペクトルを示す図である。
図29】合成例8により得られたジエステル混合物5のH-NMRの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図30】合成例8により得られたジエステル混合物5の13C-NMRの測定により得られたスペクトルを示す図である。
図31】合成例8により得られたジエステル混合物5のIR(ATR)の測定により得られたスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の可塑剤組成物は、例えば、本発明の樹脂組成物を調製する際に用いることができる。
そして、本発明の樹脂組成物は、例えば、本発明の樹脂成形体を形成する際に用いることができる。そして、本発明の樹脂組成物を用いて形成した樹脂成形体は、例えば、自動車インスツルメントパネル及びドアトリム等の自動車内装部品が備える表皮などの、自動車内装材として好適に用いることができる。
また、本発明の樹脂成形体は、例えば、本発明の積層体を形成する際に用いることができる。そして、本発明の樹脂成形体を用いて形成した積層体は、例えば、自動車インスツルメントパネル及びドアトリム等の自動車内装部品を製造する際に用いる自動車内装材として好適に用いることができる。
【0028】
(可塑剤組成物)
本発明の可塑剤組成物(以下、「可塑剤組成物」と略記することもある。)は、ポリエステル系可塑剤と、所定の構造を有する化合物とを少なくとも含むことを特徴とする。本発明の可塑剤組成物を樹脂組成物の調製の際に用いれば、調製される樹脂組成物から形成される樹脂成形体の低温引張伸び及び耐熱収縮性を十分に向上させることができる。
なお、本発明の可塑剤組成物は、ポリエステル系可塑剤及び所定の構造を有する化合物以外の可塑剤(以下、「その他の可塑剤」と称することがある。)を更に含んでいてもよい。
【0029】
<ポリエステル系可塑剤>
ポリエステル系可塑剤は、可塑剤組成物を含む樹脂組成物を用いて形成される樹脂成形体に十分な引張特性(例えば、引張伸び、引張強度等)を付与し得る成分である。そして、ポリエステル系可塑剤を用いた場合、可塑剤組成物を含む樹脂組成物から形成される樹脂成形体に対して発泡ポリウレタン成形体を裏打ちしてなる積層体を形成した際に、ポリエステル系可塑剤は高温下であっても樹脂成形体から発泡ポリウレタン成形体へと移行し難いため、樹脂成形体の耐熱収縮性を十分に向上させることができる。
【0030】
ポリエステル系可塑剤としては、特に限定されることはなく、例えば、アジピン酸由来の構造単位を含有するポリエステル(アジピン酸系ポリエステル)、セバシン酸由来の構造単位を含有するポリエステル(セバシン酸系ポリエステル)、及びフタル酸由来の構造単位を含有するポリエステル(フタル酸系ポリエステル)などのポリエステルを用いることができる。なお、これらのポリエステルは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の比率で混合して用いてもよい。
中でも、樹脂成形体の耐熱収縮性を更に向上させる観点から、ポリエステル系可塑剤としては、アジピン酸系ポリエステル(アジピン酸由来の構造単位を含有するポリエステル)を用いることが好ましい。
【0031】
ポリエステル系可塑剤は、粘度が500mPa・s以上であることが好ましく、1000mPa・s以上であることがより好ましく、8000mPa・s以下であることが好ましく、5000mPa・s以下であることがより好ましい。
なお、「粘度」は、JIS Z8803に準拠し、温度25℃で測定することができる。
【0032】
<化合物(1)>
本発明の可塑剤組成物は、下記式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」と称することがある。)を含む。
【化5】
そして、化合物(1)は、可塑剤組成物を含む樹脂組成物を成形して得られる樹脂成形体の低温引張伸び及び耐熱収縮性を十分に向上させることができる。
なお、可塑剤組成物の調製に用いる化合物(1)としては、単一の構造を有する1種の化合物(1)を単独で用いてもよいし、構造が異なる2種以上の化合物(1)を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0033】
<<x、y>>
上記式(1)中、x及びyは、それぞれ独立して、0又は1を表す。
そして、xが0である場合、下記式(2):
【化6】
で表される構造は、水素原子を表す。
また、yが0である場合、下記(3):
【化7】
で表される構造は、水素原子を表す。
なお、上記式(2)、(3)中、*は、Axとの結合位置を表す。
【0034】
そして、x及びyは、いずれも0であってもよいし、いずれも1であってもよいし、一方が0であり、他方が1であってもよいが、樹脂成形体の低温引張伸び及び耐熱収縮性を更に向上させる観点から、x及びyがいずれも0であることが好ましい。
【0035】
<<Ax>>
上記式(1)中、Axは、炭素数2~20の有機基を表す。なお、Axの炭素数は、3~20であることが好ましい。
ここで、Axを構成する有機基中の同一の炭素原子が、上記Y、Y、Y(但し、x=1の場合に限る。)、及び、Y(但し、y=1の場合に限る。)のうちの2以上と結合してもよいし、Axを構成する有機基中の同一の炭素原子が、上記Y、Y、Y(但し、x=1の場合に限る。)、及び、Y(但し、y=1の場合に限る。)のうちの2以上と結合しなくてもよい。
そして、樹脂成形体の低温引張伸びを更に向上させる観点から、Axを構成する有機基中の同一の炭素原子が、上記Y、Y、Y(但し、x=1の場合に限る。)、及び、Y(但し、y=1の場合に限る。)のうちの2以上と結合しないこと、即ち、Yと結合する炭素原子、Yと結合する炭素原子、Y(但し、x=1の場合に限る。)と結合する炭素原子、及び、Y(但し、y=1の場合に限る。)と結合する炭素原子がいずれも異なることが好ましい。
さらに、Axを構成する有機基中の同一の炭素原子が、上記Y、Y、Y(但し、x=1の場合に限る。)、及び、Y(但し、y=1の場合に限る。)のうちの2以上と結合しない場合において、Axを構成する有機基中、Yと結合する炭素原子、Yと結合する炭素原子、Y(但し、x=1の場合に限る。)と結合する炭素、及び、Y(但し、y=1の場合に限る。)と結合する炭素原子は、互いに隣接していてもよいし、互いに隣接していなくてもよい。
そして、樹脂成形体の低温引張伸びを一層向上させる観点から、Axを構成する有機基中、Yと結合する炭素原子、Yと結合する炭素原子、Y(但し、x=1の場合に限る。)と結合する炭素、及び、Y(但し、y=1の場合に限る。)と結合する炭素原子は、互いに隣接しないことが好ましい。
【0036】
そして、Axは、
(i)置換基を有していてもよい炭素数2~20の鎖状の脂肪族炭化水素基、
(ii)置換基を有していてもよい炭素数4~12の環状の脂肪族炭化水素基、
(iii)置換基を有していてもよい炭素数6~14の芳香族炭化水素環基、又は、
(iv)置換基を有していてもよい鎖状の脂肪族炭化水素基に含まれる単結合の少なくとも1つが、-O-、-C(=O)-、-O-C(=O)-、若しくは、-C(=O)-O-に置換されてなる炭素数2~20の有機基(ただし、-O-が2以上連続する場合と、-C(=O)-が2以上連続する場合と、-O-又は-C(=O)-がY、Y、Y、又は、Yと結合する端部に位置する場合と、を除く。)
のいずれかの有機基であることが好ましく、上記(i)又は(iii)のいずれかの有機基であることがより好ましく、上記(i)の有機基であることが更に好ましい。
【0037】
なお、本発明において、「置換基を有していてもよい」とは、「無置換の、又は、置換基を有する」の意味である。そして、一般式中に含まれる有機基が置換基を有する場合、当該有機基が有する置換基の個数は1個であってもよいし、2個以上であってもよい。また、一般式中に含まれる有機基が置換基を有する場合、当該置換基を有する有機基の炭素数には、特に断らない限り、置換基の炭素数は含まれないものとする。例えば、炭素数2~20の鎖状の脂肪族炭化水素環基が置換基を有する場合、炭素数2~20の鎖状の脂肪族炭化水素環基の炭素数には、このような置換基の炭素数は含まれないものとする。
【0038】
ここで、上記(i)の炭素数2~20の鎖状の脂肪族炭化水素基の炭素数は、3~20であることが好ましく、3~15であることがより好ましく、3~12であることが更に好ましく、3~10であることが一層好ましく、3~8であることがより一層好ましく、3~6であることが更に一層好ましく、3~4であることが特に好ましい。
ただし、上記(i)の炭素数2~20の鎖状の脂肪族炭化水素基の、置換基の炭素数も含めた合計の炭素数は、2~20である。
上記(i)の炭素数2~20の鎖状の脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。
上記(i)の炭素数2~20の鎖状の脂肪族炭化水素基は、不飽和結合(炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合)を有する不飽和脂肪族炭化水素基であってもよいし、不飽和結合を有しない飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。また、上記(i)の炭素数2~20の鎖状の脂肪族炭化水素基が不飽和結合を有する場合における不飽和結合の個数は、例えば、1個以上3個以下である。
上記(i)の炭素数2~20の鎖状の脂肪族炭化水素基が有し得る置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0039】
上記(ii)の炭素数4~12の環状の脂肪族炭化水素基の炭素数は、4~15であることが好ましく、4~12であることがより好ましく、4~10であることが更に好ましく、4~8であることが一層好ましく、4~6であることがより一層好ましい。
ただし、上記(ii)の炭素数4~12の環状の脂肪族炭化水素基の、置換基の炭素数も含めた合計の炭素数は、4~20である。
上記(ii)の炭素数4~12の環状の脂肪族炭化水素基は、不飽和結合(炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合)を有する不飽和脂肪族炭化水素基であってもよいし、不飽和結合を有しない飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。
上記(ii)の炭素数4~12の環状の脂肪族炭化水素基が有し得る置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~8のアルキル基等が挙げられる。
【0040】
上記(iii)の炭素数6~14の芳香族炭化水素環基の炭素数は、6~12であることが好ましい。
ただし、上記(iii)の炭素数6~14の芳香族炭化水素環基の、置換基の炭素数も含めた合計の炭素数は、6~20である。
上記(iii)の炭素数6~14の芳香族炭化水素環基が有し得る置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基等が挙げられる。
【0041】
ここで、上記(iv)の炭素数2~20の有機基の炭素数は、3~20であることが好ましく、3~15であることがより好ましく、3~12であることが更に好ましく、3~10であることが一層好ましく、3~8であることがより一層好ましく、3~6であることが更に一層好ましく、3~4であることが特に好ましい。
なお、上記(iv)の炭素数2~20の有機基において、置換基を有していてもよい鎖状の脂肪族炭化水素基に含まれる単結合の少なくとも1つが、-C(=O)-、-O-C(=O)-、若しくは、-C(=O)-O-に置換された場合、-C(=O)-、-O-C(=O)-、若しくは、-C(=O)-O-の炭素数は、上記(iv)の炭素数3~20の有機基の炭素数に含まれるものとする。
ただし、上記(iv)の炭素数2~20の有機基の、置換基の炭素数も含めた合計の炭素数は、2~20である。
上記(iv)の炭素数2~20の有機基が有し得る置換基としては、例えば、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0042】
そして、Axの好適な具体例としては、置換基を有していてもよい下記式(2-1)~(2-35)のいずれかで表される基が挙げられる。ここで、「置換基を有する」とは、下記式(2-1)~(2-35)のいずれかで表される基が有する水素原子のいずれかが置換されていることを意味する。
【化8】
【0043】
なお、上記式(2-1)~(2-4)、(2-20)~(2-26)、及び、(2-30)~(2-33)中、「-」は環の任意の位置から延び、Y、Y、Y、又は、Yとの結合手を表す。
また、上記式(2-5)~(2-19)、(2-27)~(2-29)、(2-34)~(2-35)中、鎖状構造の末端に位置する「-」は、Y、Y、Y、又は、Yとの結合手を表す。
【0044】
なお、xが0である場合における上記式(2)で表される構造(即ち、水素原子)は、上記式(2-1)~(2-35)のいずれかで表される基が有する水素原子のいずれかとすることができ、yが0である場合における上記式(3)で表される構造(即ち、水素原子)は、上記式(2-1)~(2-35)のいずれかで表される基が有する水素原子のいずれかとすることができる。
【0045】
上記式(2-1)~(2-35)のいずれかで表される基が有し得る置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル基等が挙げられる。
【0046】
そして、樹脂成形体の低温引張伸び及び耐熱収縮性を更に向上させる観点から、Axとしては、上記式(2-5)~(2-6)、(2-8)、(2-20)、(2-27)のいずれかで表される基が好ましく、上記式(2-5)~(2-6)、(2-8)、(2-20)のいずれかで表される基がより好ましく、上記式(2-6)で表される基が更に好ましい。
【0047】
<<Y、Y>>
上記式(1)中、Y及びYは、それぞれ独立して、単結合、-C(=O)-、-C(=O)-NR-、又は、-C(=O)-O-を表す。なお、Rは、水素原子、メチル基、又は、エチル基を表す。
そして、樹脂成形体の低温引張伸び及び耐熱収縮性を更に向上させると共に、樹脂成形体の発泡ポリウレタン成形体への接着性を向上させる観点から、Y及びYとしては、それぞれ独立して、単結合、-C(=O)-、又は、-C(=O)-NR-が好ましく、単結合、又は、-C(=O)-がより好ましく、-C(=O)-が更に好ましい。
【0048】
<<Y、Y>>
上記式(1)中、Y及びYは、それぞれ独立して、単結合、-C(=O)-、-NR-C(=O)-、又は、-O-C(=O)-を表す。なお、Rは、水素原子、メチル基、又は、エチル基を表す。
そして、樹脂成形体の低温引張伸び及び耐熱収縮性を更に向上させると共に、樹脂成形体の発泡ポリウレタン成形体への接着性を向上させる観点から、Y及びYとしては、それぞれ独立して、単結合、-C(=O)-、又は、-C(=O)-NR-が好ましく、単結合、又は、-C(=O)-がより好ましく、-C(=O)-が更に好ましい。
【0049】
<<SP、SP>>
上記式(1)中、SP及びSPは、それぞれ独立して、-CHCHO-、-CHCH(CH)O-、-CH(CH)CHO-、-CHCH(CHCH)O-、又は、-CH(CHCH)CHO-を表す。
そして、SP及びSPとしては、それぞれ独立して、-CHCHO-、-CHCH(CH)O-、又は、-CH(CH)CHO-が好ましく、-CHCHO-がより好ましい。
【0050】
<<SP、SP>>
上記式(1)中、SP及びSPは、それぞれ独立して、-OCHCH-、-OCH(CH)CH-、-OCHCH(CH)-、-O(CHCH)CHCH-、又は、-OCHCH(CHCH)-を表す。
そして、SP及びSPとしては、それぞれ独立して、-OCHCH-、-OCH(CH)CH-、又は、-OCHCH(CH)-が好ましく、-OCHCH-がより好ましい。
【0051】
<<a、b、c、d>>
上記式(1)中、a、b、c、及びdは、それぞれ独立して、1~30の整数を表す。
そして、樹脂成形体の耐熱収縮性を更に向上させると共に、樹脂成形体の発泡ポリウレタン成形体への接着性を向上させる観点から、a、b、c、及びdは、それぞれ独立して、1~25の整数を表すことが好ましく、2~20の整数を表すことがより好ましく、3~15の整数を表すことが更に好ましく、4~12の整数を表すことが一層好ましく、5~10の整数を表すことがより一層好ましい。
【0052】
<<R、R、R、R>>
上記式(1)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数12~18の鎖状の脂肪族炭化水素基を表す。
、R、R、及びRを構成する、置換基を有していてもよい炭素数12~18の鎖状の脂肪族炭化水素基の炭素数は、それぞれ独立して、13~17であることが好ましく、14~16であることがより好ましい。
、R、R、及びRを構成する、置換基を有していてもよい炭素数12~18の鎖状の脂肪族炭化水素基は、それぞれ独立して、不飽和結合(炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合)を有する不飽和脂肪族炭化水素基であってもよいし、不飽和結合を有しない飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。そして、上記炭素数12~18の鎖状の脂肪族炭化水素基が不飽和結合を有する場合における不飽和結合の個数は、例えば、1個以上5個以下である。なお、上記炭素数12~18の鎖状の脂肪族炭化水素基中の炭素-炭素二重結合により形成される異性体は、シス体であってもよいし、トランス体であってもよい。
、R、R、及びRを構成する炭素数12~18の鎖状の脂肪族炭化水素基が有し得る置換基としては、例えば、炭素数1~3のアルキル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0053】
そして、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、例えば、
-(CH14CH
-(CHCH=CH(CHCH
-(CHCH=CHCHCH=CH(CHCH
-(CHCH=CHCHCH=CHCH=CHCH、又は、
-(CHCH=CHCHCH=CHCHCH=CH
のいずれかの炭素数15の鎖状の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。なお、上記炭素数15の鎖状の脂肪族炭化水素基は、少なくともいずれか1つの水素原子が置換されていてもよい。
【0054】
<<化合物の製造方法>>
上述した化合物(1)は、特に限定されることなく、既知の合成反応を組み合わせて合成することができる。既知の合成反応が記載されている文献の例としては、サンドラー・カロ 官能基別 有機化合物合成法[I]巻、[II]巻(廣川書店)、MARCH’S ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY SIXTH EDITION(Michael B. Smith, Jerry March著;WILEY)等が挙げられる。
典型的には、化合物(1)は、エーテル結合(-O-)、エステル結合(-C(=O)-O-、-O-C(=O)-)、ウレタン結合(-C(=O)-NR-、-NR-C(=O)-)などの形成反応を用いて、原料となる複数の化合物を適宜結合及び/又は修飾することにより製造することができる。なお、R及びRは、上記と同じ意味を表す。
より具体的にエーテル結合の形成は、例えば以下のようにして行うことができる。
(i)式:D1-hal(halはハロゲン原子を表す。以下にて同じ。)で表される化合物と、式:D2-OMet(Metはアルカリ金属(主にナトリウム)を表す。以下にて同じ。)で表される化合物とを混合して縮合させる(ウイリアムソン合成)。なお、式中、D1及びD2は任意の有機基を表す(以下にて同じ)。
(ii)式:D1-halで表される化合物と、式:D2-OHで表される化合物とを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して縮合させる。
(iii)式:D1-J(Jはエポキシ基を表す。)で表される化合物と、式:D2-OHで表される化合物とを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して縮合させる。
(Iv)式:D1-OFN(OFNは不飽和結合を有する基を表す。)で表される化合物と、式:D2-OMetで表される化合物を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基存在下、混合して付加反応させる。
(v)式:D1-halで表される化合物と、式:D2-OMetで表される化合物とを、銅あるいは塩化第一銅存在下、混合して縮合させる(ウルマン縮合)。
【0055】
より具体的にエステル結合の形成は、例えば以下のようにして行うことができる。
(vi)式:D1-COOHで表される化合物と、式:D2-OHで表される化合物とを、脱水縮合剤(WSC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)等) の存在下に脱水縮合させる。
(viii)式:D1-COOHで表される化合物にハロゲン化剤を作用させることにより、式:D1-C(=O)-halで表される化合物を得た後、このものと式:D2-OHで表される化合物とを、塩基の存在下に反応させる。
(viii)式:D1-COOHで表される化合物に酸無水物を作用させることにより、混合酸無水物を得た後、このものに、式:D2-OHで表される化合物を反応させる。
(ix)式:D1-COOHで表される化合物と、式:D2-OHで表される化合物とを、酸触媒あるいは塩基触媒の存在下に脱水縮合させる。
【0056】
より具体的にウレタン結合の形成は、例えば以下のようにして行うことができる。
(x)式:D1-N=C=Oで表される化合物と、式:D2-OHで表される化合物とを、塩基触媒の存在下に反応させる。
【0057】
化合物(1)は、例えば、下記に示す反応により製造することができる。
【化9】
(式中、Ax、Y~Y、R、R、SP~SP、a、b、c、d、R、R、R、R、x、yは、前記と同じ意味を表す。)
すなわち、式(A)で表されるカルボキシル基を有する化合物を、式(B)で表される水酸基を有する化合物とを、〔式(A)で表される化合物の有するカルボキシル基のモル数:式(B)で表される化合物の有する水酸基のモル数〕の比率で、1:2~2:1、好ましくは1:1.5~1.5:1、より好ましくは、1:1.0~1:1.5の割合で反応させることにより、高選択的かつ高収率で目的とする化合物(1)を製造することができる。
【0058】
この場合、用いる脱水縮合剤としては、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリノエチル)カルボジイミドメト-パラ-トルエンスルホネート、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、ビス(2、6-ジイソプロピルフェニル) カルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ビスイソプロピルカルボジイミド、などのカルボジイミド、2-メチル-6-ニトロ安息香酸無水物、2,2’-カルボニルビス-1H-イミダゾール、1,1’-オキサリルジイミダゾール、ジフェニルホスフォリルアジド、1-(4-ニトロベンゼンスルホニル)-1 H-1、2、4-トリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル) ウロニウムテトラフルオロボレート、N-(1,2,2,2-テトラクロロエトキシカルボニルオキシ)スクシンイミド、N-カルボベンゾキシスクシンイミド、O-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート、O-(6-クロロベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、2-ブロモ-1-エチルピリジニウムテトラフルオロボレート、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムクロリド、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロホスフェート、2-クロロ-1-メチルピリジニウムアイオダイド、2-クロロ-1-メチルピリジニウムパラートルエンスルホネート、2-フルオロ-1-メチルピリジニウム パラートルエンスルホネート、トリクロロ酢酸ペンタクロロフェニルエステル等が挙げられる。
反応性、コスト、使用できる溶媒の点から、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル) カルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、ビス(2、6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ビスイソプロピルカルボジイミド、2,2’-カルボニルビス-1H-イミダゾールがより好ましい。
脱水縮合剤の添加量は、式(A)で表される化合物の有するカルボキシル基のモル数に対して、通常1~1.5モルであり、好ましくは、1~1.2モルであり、より好ましくは、1~1.1モルである。また、脱水縮合剤はそのまま添加してもよいし、適当な溶媒に溶解あるいは分散させた溶液として添加してもよい。
【0059】
この場合、活性化剤を用いることができる。活性化剤としては、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(N,N-ジメチル-4-アミノピリジン)等が挙げられる。
活性化剤の添加量は、前記脱水縮合剤のモル数に対して、通常0.01~1.0モルであり、好ましくは、0.01~0.5モルである。また、活性化剤はそのまま添加してもよいし、適当な溶媒に溶解あるいは分散させた溶液として添加してもよい。
【0060】
この反応に用いる溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定されない。例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル等のエーテル系溶媒; 酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;及びこれらの2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、アミド系溶媒、ハロゲン系溶媒が好ましく、特にアミド系溶媒が好ましく、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドが特に好ましい。
【0061】
溶媒の使用量は、特に限定されず、用いる化合物の種類や反応規模等を考慮して適宜定めることができるが、式(A)で表されるカルボキシル基を有する化合物1gに対し、通常1~100gである。
【0062】
反応は、-10℃ から用いる溶媒の沸点までの温度範囲で円滑に進行するが、好ましくは、10℃~80℃であり、より好ましくは、15℃~50℃である。各反応の反応時間は、反応規模にもよるが、通常、数分から数十時間であり、好ましくは、数分~七十時間であり、より好ましくは、数時間から三十時間である。
【0063】
化合物(1)は、例えば、下記に示す反応によっても製造することができる。
【化10】
(式中、Ax、Y~Y、R、R、SP~SP、a、b、c、d、R、R、R、R、x、yは、前記と同じ意味を表す。)
すなわち、式(C)で表される酸クロリド基を有する化合物を、式(B)で表される水酸基を有する化合物とを、〔式(B)で表される化合物の有する水酸基のモル数:式(C)で表される化合物の有する酸クロリド基のモル数〕の比率で、1:2~2:1、好ましくは1:1.5 ~1.5:1、より好ましくは、1:1.0~1:1.2の割合で反応させることにより、高選択的かつ高収率で目的とする化合物(1)を製造することができる。
【0064】
この場合、用いる塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(N,N-ジメチル-4-アミノピリジン)、2,6-ルチジン等の有機塩基;水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基が挙げられる。
【0065】
この場合、活性化剤を用いることができる。活性化剤としては、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(N,N-ジメチル-4-アミノピリジン)等が挙げられる。
活性化剤の添加量は、前記式(C)で表される酸クロリド基を有する化合物に対して、通常0.01~1.0モルであり、好ましくは、0.01~0.5モルであり、より好ましくは、0.01~0.2モルである。また、活性化剤はそのまま添加してもよいし、適当な溶媒に溶解あるいは分散させた溶液として添加してもよい。
【0066】
この反応に用いる溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定されない。例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル等のエーテル系溶媒; 酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;及びこれらの2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ハロゲン系溶媒が好ましく、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒がより好ましく、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンが特に好ましい。
【0067】
溶媒の使用量は、特に限定されず、用いる化合物の種類や反応規模等を考慮して適宜定めることができるが、式(A)で表されるカルボキシル基を有する化合物1gに対し、通常1~100gである。
【0068】
反応は、-20℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲で円滑に進行するが、好ましくは、-5℃~50℃であり、より好ましくは、0℃~40℃である。各反応の反応時間は、反応規模にもよるが、通常、数分から十数時間であり、好ましくは、数分~十時間であり、より好ましくは、数十分から五時間である。
【0069】
この場合、式(C)で表される酸クロリド基を有する化合物は、購入したものを使用しても良いし、前記式(A)で表されるカルボキシル基を有する化合物から合成したものでも構わない。
【0070】
式(C)で表される酸クロリド基を有する化合物は、次のようにして製造することができる。
【化11】
(式中、x、yは、前記と同じ意味を表す。)
【0071】
この場合、用いる塩素化剤としては、塩化チオニル(SOCl)、塩化オキザリル〔(C(=O)Cl)〕、塩化スリフリル(SOCl)、塩化ホスホリル(POCl3)、三塩化リン(PCl)、五塩化リン(PCl)等が挙げられ、塩化チオニル、塩化オキザリル、塩化スリフリルが好ましい。これらの塩素化剤は、一種単独で、或いは二種以上を組み合わせて用いることができる。
使用する塩素化剤は、式(A)で表されるカルボキシル基を有する化合物を、塩素化剤とを、〔式(A)で表される化合物の有するカルボキシル基のモル数:塩素化剤〕の比率で、1:2~2:1、好ましくは1:5~1:3、より好ましくは、1:1.0~1:1.5の割合で反応させることにより、高選択的かつ高収率で目的とする式(C)で表される酸クロリド化合物を製造することができる。
【0072】
この場合、活性化剤を用いることができる。活性化剤としては、N,N-ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン、テトラアルキルアンモニウム等が挙げられ、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラアルキルアンモニウムが好ましい。
活性化剤の添加量は、前記式(A)で表されるカルボキシル基を有する化合物に対して、通常0.01~3.0モルであり、好ましくは、0.01~2.0モルであり、より好ましくは、0.01~0.5モルである。
【0073】
この反応に用いる溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定されない。例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル等のエーテル系溶媒; 酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;及びこれらの2種以上からなる混合溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ハロゲン系溶媒が好ましく、エーテル系溶媒、ハロゲン系溶媒がより好ましく、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル、クロロホルム、1,2-ジクロロエタンが特に好ましい。
【0074】
溶媒の使用量は、特に限定されず、用いる化合物の種類や反応規模等を考慮して適宜定めることができるが、式(A)で表されるカルボキシル基を有する化合物1gに対し、通常1~100gである。
【0075】
反応は、-20℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲で円滑に進行するが、好ましくは、-5℃~150℃であり、より好ましくは、0℃~110℃である。各反応の反応時間は、反応規模にもよるが、通常、数分から十数時間であり、好ましくは、数分~十時間であり、より好ましくは、数十分から五時間である。
【0076】
前記式(B)で表される化合物としては、カシューナッツ殻油抽出成分から製造されるカルダノール、及びその誘導体を好適に用いることができる。
カルダノール及び、水酸基を有するカルダノールの誘導体であれば、特に限定されず、以下にカードライト社の具体例を挙げるが、他社の同等製品であっても同様に使用することができる。
カルダノール、カルダノール誘導体は例えば、カードライト社等により製造されており、その具体例として、カードライト社の品名を挙げると、NX-2021、NX-2022、NX-2023、NX-2023D、NX-2024、NX-2025、NX-2026、NX-5205、UltraLITE2023、UL-2023、NC-510(水素添加体)、LITE2020(エチレンオキサイド1付加体)、NX-7507(エチレンオキサイド7付加体)、GX-5166(エチレンオキサイド7付加体)、GX-5167(エチレンオキサイド9付加体)、GX-5170(エチレンオキサイド12付加体)、LITE2100、LITE2100R等が挙げられる。
そのうち好ましくは、NX-2021、NX-2022、NX-2023、NX-2023D、NX-2024、NX-2025、NX-2026、NX-5205、UltraLITE2023、UL-2023、NC-510(水素添加体)、LITE2020(エチレンオキサイド1付加体)、NX-7507(エチレンオキサイド7付加体)、GX-5166(エチレンオキサイド7付加体)、GX-5167(エチレンオキサイド9付加体)、GX-5170(エチレンオキサイド12付加体)であり、
より好ましくは、NX-2021、NX-2022、NX-2023、NX-2024、NX-2025、NX-2026、UltraLITE2023、NC-510(水素添加体)、LITE2020(エチレンオキサイド1付加体)、NX-7507(エチレンオキサイド7付加体)、GX-5166(エチレンオキサイド7付加体)、GX-5167(エチレンオキサイド9付加体)、GX-5170(エチレンオキサイド12付加体)である。
【0077】
<<含有量>>
可塑剤組成物中における化合物(1)の含有量は、ポリエステル系可塑剤100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、1.5質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることが更に好ましく、2.5質量部以上であることが一層好ましく、3質量部以上であることがより一層好ましく、20質量部以下であることが好ましく、18質量部以下であることがより好ましく、16質量部以下であることが更に好ましい。可塑剤組成物中における化合物(1)の含有量が上記下限以上であれば、形成される樹脂成形体の低温引張伸びを更に向上させると共に、当該樹脂成形体の発泡ポリウレタン成形体への接着性を向上させることができる。一方、可塑剤組成物中における化合物(1)の含有量が上記上限以下であれば、形成される樹脂成形体の耐熱収縮性を十分に高く確保することができる。
【0078】
<その他の可塑剤>
可塑剤組成物は、任意で、上述した本発明の化合物及びポリエステル系可塑剤以外のその他の可塑剤を更に含んでいてもよい。
【0079】
その他の可塑剤の具体例としては、国際公開第2016/098344号に記載の可塑剤のうち、上述した(b1)ポリエステル系可塑剤、(b2)フェノール類及びその変性物以外の可塑剤などが挙げられる。中でも、形成される樹脂成形体の低温引張伸びを更に向上させる観点から、エポキシ化植物油を用いることが好ましく、エポキシ化大豆油を用いることがより好ましい。
【0080】
<<含有量>>
可塑剤組成物中におけるその他の可塑剤の含有量は、特に限定されないが、上記ポリエステル系可塑剤100質量部に対して、0質量部以上15質量部以下とすることができる。
そして、その他の可塑剤としてエポキシ化大豆油などのエポキシ化植物油を用いる場合、形成される樹脂成形体の低温引張伸びを一層向上させつつ、当該樹脂成形体の耐熱収縮性を十分に高く確保する観点から、その他の可塑剤としてのエポキシ化植物油の含有量は、上記ポリエステル系可塑剤100質量部に対して、2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、4質量部以上であることが更に好ましく、10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることが更に好ましい。
【0081】
(樹脂組成物)
本発明の樹脂組成物は、(a)樹脂と、(b)本発明の可塑剤組成物(以下、「(b)可塑剤組成物」と略記することもある。)と、を含むことを特徴とする。即ち、本発明の樹脂組成物は、(a)樹脂と、ポリエステル系可塑剤と、化合物(1)とを少なくとも含み、任意で、その他の可塑剤を更に含む。
なお、本発明の樹脂組成物は、任意で、上述した(a)樹脂及び(b)可塑剤組成物以外の添加剤を更に含んでいてもよい。
【0082】
そして、本発明の樹脂組成物を用いて形成した樹脂成形体は、低温引張伸びに優れている。
また、本発明の樹脂組成物を用いて形成した樹脂成形体に対して発泡ポリウレタン成形体を裏打ちしてなる積層体を作製した場合、当該積層体における樹脂成形体の熱収縮を十分に抑制することができる。即ち、本発明の樹脂組成物を用いて形成した樹脂成形体は、耐熱収縮性にも優れている。
【0083】
したがって、本発明の樹脂組成物を使用すれば、低温引張伸び及び耐熱収縮性に優れた自動車インスツルメントパネル用表皮及びドアトリム用表皮などの、自動車内装材として好適な樹脂成形体を得ることができる。
【0084】
なお、例えば、本発明の樹脂組成物を用いて、自動車内装材として良好に使用し得る樹脂成形体を容易に得る観点からは、本発明の樹脂組成物は、粉体成形に用いられることが好ましく、パウダースラッシュ成形に用いられることがより好ましい。
【0085】
<(a)樹脂>
(a)樹脂としては、本発明の所望の効果が得られるものであれば、特に限定されることはなく、既知の樹脂を用いることができる。
なお、本発明の樹脂組成物に含まれる(a)樹脂は、(b)可塑剤組成物に含まれるポリエステル系可塑剤及び化合物(1)等の可塑剤、並びに、任意成分である添加剤とは異なる成分であるものとする。
【0086】
ここで、(a)樹脂のガラス転移温度は、50℃以上100℃以下であることが好ましい。
【0087】
そして、(a)樹脂としては、ハロゲンを含有する樹脂を用いることが好ましく、フッ素を含有する樹脂、塩素を含有する樹脂を用いることがより好ましく、塩素を含有する樹脂を用いることが更に好ましく、塩化ビニル樹脂を用いることが特に好ましい。
【0088】
ここで、(a)樹脂中の塩化ビニル樹脂の含有割合は、特に限定されないが、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0089】
<<塩化ビニル樹脂>>
塩化ビニル樹脂としては、通常、粒子状の塩化ビニル樹脂を用いる。そして、塩化ビニル樹脂としては、例えば、1種類又は2種類以上の塩化ビニル樹脂粒子を含有することができ、任意に、1種類又は2種類以上の塩化ビニル樹脂微粒子を更に含有することができる。中でも、塩化ビニル樹脂は、少なくとも塩化ビニル樹脂粒子を含有することが好ましく、塩化ビニル樹脂粒子及び塩化ビニル樹脂微粒子を含有することがより好ましい。
そして、塩化ビニル樹脂は、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法など、従来から知られているいずれの製造法によっても製造し得る。
なお、本明細書において、「樹脂粒子」とは、粒子径が30μm以上の粒子を指し、「樹脂微粒子」とは、粒子径が30μm未満の粒子を指す。
【0090】
また、塩化ビニル樹脂としては、塩化ビニル単量体単位からなる単独重合体の他、塩化ビニル単量体単位を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有する塩化ビニル系共重合体が挙げられる。そして、塩化ビニル系共重合体を構成し得る、塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体(共単量体)の具体例としては、例えば、国際公開第2016/098344号に記載のものを使用することができる。また、これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0091】
[塩化ビニル樹脂粒子]
樹脂組成物において、塩化ビニル樹脂粒子は、通常、マトリックス樹脂(基材)として機能する。なお、塩化ビニル樹脂粒子は、懸濁重合法により製造することが好ましい。
【0092】
-平均重合度-
そして、塩化ビニル樹脂粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度は、800以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、5000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましく、2800以下であることが更に好ましい。塩化ビニル樹脂粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度が上記下限以上であれば、樹脂組成物を用いて形成した樹脂成形体の物理的強度を十分確保しつつ、例えば、引張特性、特には引張伸びを向上させることができる。そして、引張伸びが良好な樹脂成形体は、例えば、エアバッグが膨張、展開した際に、破片が飛散することなく設計通りに割れる、延性に優れた自動車インスツルメントパネルの表皮などの自動車内装材として好適に用いることができる。一方、塩化ビニル樹脂粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度が上記上限以下であれば、樹脂組成物の溶融性を向上させることができる。
なお、本発明において「平均重合度」は、JIS K6720-2に準拠して測定することができる。
【0093】
-平均粒子径-
また、塩化ビニル樹脂粒子の平均粒子径は、通常30μm以上であり、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、500μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。塩化ビニル樹脂粒子の平均粒子径が上記下限以上であれば、樹脂組成物の粉体流動性を向上させることができる。一方、塩化ビニル樹脂粒子の平均粒子径が上記上限以下であれば、樹脂組成物の溶融性を向上させて、形成される樹脂成形体の表面平滑性を向上させることができる。
なお、本発明において、「平均粒子径」は、JIS Z8825に準拠し、レーザー回折法により体積平均粒子径として測定することができる。
【0094】
-含有割合-
そして、塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂粒子の含有割合は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%とすることができ、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂粒子の含有割合が上記下限以上であれば、樹脂組成物を用いて形成した樹脂成形体の物理的強度を十分確保しつつ引張伸びを向上させることができる。一方、塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂粒子の含有割合が上記上限以下であれば、樹脂組成物の粉体流動性を向上させることができる。
【0095】
[塩化ビニル樹脂微粒子]
樹脂組成物において、塩化ビニル樹脂微粒子は、通常、ダスティング剤(粉体流動性改良剤)として機能する。なお、塩化ビニル樹脂微粒子は、乳化重合法により製造することが好ましい。
【0096】
-平均重合度-
そして、塩化ビニル樹脂微粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度は、500以上が好ましく、700以上がより好ましく、2600以下が好ましく、2400以下がより好ましい。ダスティング剤としての塩化ビニル樹脂微粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度が上記下限以上であれば、樹脂組成物の粉体流動性を向上させると共に、形成される樹脂成形体の引張伸びを向上させることができる。一方、塩化ビニル樹脂微粒子を構成する塩化ビニル樹脂の平均重合度が上記上限以下であれば、樹脂組成物の溶融性を向上させて、形成される樹脂成形体の表面平滑性を向上させることができる。
【0097】
-平均粒子径-
また、塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径は、通常30μm未満であり、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径が上記下限以上であれば、例えばダスティング剤としてのサイズを過度に小さくすることなく、樹脂組成物の粉体流動性を向上させることができる。一方、塩化ビニル樹脂微粒子の平均粒子径が上記上限以下であれば、樹脂組成物の溶融性を向上させて、形成される樹脂成形体の表面平滑性を向上させることができる。
【0098】
-含有割合-
そして、塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂微粒子の含有割合は、0質量%であってもよいが、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂微粒子の含有割合が上記下限以上であれば、樹脂組成物の粉体流動性を向上させることができる。一方、塩化ビニル樹脂中の塩化ビニル樹脂微粒子の含有割合が上記上限以下であれば、形成される樹脂成形体の物理的強度を高めることができる。
【0099】
<(b)可塑剤組成物>
(b)可塑剤組成物としては、上述したポリエステル系可塑剤と、化合物(1)とを少なくとも含み、任意で、その他の可塑剤を更に含む可塑剤組成物を用いる。
【0100】
樹脂組成物中におけるポリエステル系可塑剤の含有量は、上記(a)樹脂100質量部に対して、30質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であることがより好ましく、70質量部以上であることが更に好ましく、80質量部以上であることが一層好ましく、85質量部以上であることがより一層好ましく、200質量部以下であることが好ましく、180質量部以下であることがより好ましく、150質量部以下であることが更に好ましく、130質量部以下であることが一層好ましく、110質量部以下であることがより一層好ましく、100質量部以下であることが特に好ましい。樹脂組成物中におけるポリエステル系可塑剤の含有量が上記下限以上であれば、形成される樹脂成形体の耐熱収縮性を更に向上させることができる。一方、樹脂組成物中におけるポリエステル系可塑剤の含有量が上記上限以下であれば、形成される樹脂成形体の発泡ポリウレタン成形体への接着性を十分に高く確保することができる。
【0101】
樹脂組成物中における化合物(1)の含有量は、上記(a)樹脂100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、1.5質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることが更に好ましく、2.5質量部以上であることが一層好ましく、3質量部以上であることがより一層好ましく、20質量部以下であることが好ましく、18質量部以下であることがより好ましく、16質量部以下であることが更に好ましい。樹脂組成物中における化合物(1)の含有量が上記下限以上であれば、形成される樹脂成形体の低温引張伸びを更に向上させると共に、当該樹脂成形体の発泡ポリウレタン成形体への接着性を向上させることができる。一方、樹脂組成物中における化合物(1)の含有量が上記上限以下であれば、形成される樹脂成形体の耐熱収縮性を十分に高く確保することができる。
【0102】
樹脂組成物中における上記その他の可塑剤の含有量は、特に限定されないが、上記(a)樹脂100質量部に対して、0質量部以上15質量部以下とすることができる。
そして、その他の可塑剤としてエポキシ化大豆油などのエポキシ化植物油を用いる場合、形成される樹脂成形体の低温引張伸びを一層向上させつつ、当該樹脂成形体の耐熱収縮性を十分に高く確保する観点から、その他の可塑剤としてのエポキシ化植物油の含有量は、上記(a)樹脂100質量部に対して、2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、4質量部以上であることが更に好ましく、10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であることがより好ましい。
【0103】
なお、樹脂組成物中におけるポリエステル系可塑剤、化合物(1)、及びその他の可塑剤の合計含有量(即ち、(b)可塑剤組成物の含有量)は、樹脂100質量部に対して、31質量部以上であることが好ましく、53.5質量部以上であることがより好ましく、75質量部以上であることが更に好ましく、86.5質量部以上であることが一層好ましく、92質量部以上であることがより一層好ましく、235質量部以下であることが好ましく、208質量部以下であることがより好ましく、176質量部以下であることが更に好ましくは、154質量部以下であることが一層好ましく、129質量部以下であることがより一層好ましく、119質量部以下であることが特に好ましい。樹脂組成物中の(b)可塑剤組成物の含有量が上記所定の範囲内であれば、樹脂組成物の成形(例えば、粉体成形)を容易に行い得ると共に、形成される樹脂成形体の低温引張伸び、耐熱収縮性、及び発泡ポリウレタン成形体への接着性を高いレベルで並立することができる。
【0104】
<添加剤>
本発明の樹脂組成物は、上述した成分以外に、各種添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、特に限定されることなく、滑剤;過塩素酸処理ハイドロタルサイト、ゼオライト、β-ジケトン、脂肪酸金属塩などの安定剤;離型剤;上記塩化ビニル樹脂微粒子以外のその他のダスティング剤;耐衝撃性改良剤;過塩素酸処理ハイドロタルサイト以外の過塩素酸化合物(過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等);酸化防止剤;防カビ剤;難燃剤;帯電防止剤;充填剤;光安定剤;発泡剤;顔料;などが挙げられる。
【0105】
そして、本発明の樹脂組成物が含み得る上述した添加剤としては、例えば、国際公開第2016/098344号に記載のものを使用することができ、その好適含有量も国際公開第2016/098344号の記載と同様とすることができる。
【0106】
<樹脂組成物の調製方法>
本発明の樹脂組成物は、上述した成分を混合して調製することができる。
ここで、上記(a)樹脂と、(b)可塑剤組成物と、必要に応じて更に配合される各種添加剤との混合方法としては、特に限定されることなく、例えば、ダスティング剤(塩化ビニル樹脂微粒子を含む)を除く成分をドライブレンドにより混合し、その後、ダスティング剤を添加、混合する方法が挙げられる。ここで、ドライブレンドには、ヘンシェルミキサーの使用が好ましい。また、ドライブレンド時の温度は、特に制限されることなく、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、200℃以下が好ましい。
【0107】
<樹脂組成物の用途>
そして、得られた樹脂組成物は、粉体成形に好適に用いることができ、パウダースラッシュ成形により好適に用いることができる。
【0108】
(樹脂成形体)
本発明の樹脂成形体は、上述した樹脂組成物を、任意の方法で成形することにより得られることを特徴とする。そして、本発明の樹脂成形体は、上述した樹脂組成物を用いて形成されているため、通常、少なくとも、(a)樹脂と、(b)可塑剤組成物とを含む。即ち、本発明の樹脂成形体は、通常、少なくとも、(a)樹脂と、ポリエステル系可塑剤と、化合物(1)とを含み、任意で、その他の可塑剤、及び添加剤を更に含む。そして、本発明の樹脂成形体は、低温引張伸び及び耐熱収縮性に優れている。
したがって、本発明の樹脂成形体は、自動車インスツルメントパネルの表皮などの自動車内装材として好適に用いることができる。
【0109】
<樹脂成形体の形成方法>
ここで、パウダースラッシュ成形により樹脂成形体を形成する場合、パウダースラッシュ成形時の金型温度は、特に制限されることなく、200℃以上とすることが好ましく、220℃以上とすることがより好ましく、300℃以下とすることが好ましく、280℃以下とすることがより好ましい。
【0110】
そして、樹脂成形体を製造する際には、特に限定されることなく、例えば、以下の方法を用いることができる。即ち、上記温度範囲の金型に本発明の樹脂組成物を振りかけて、5秒以上30秒以下の間放置した後、余剰の樹脂組成物を振り落とし、さらに、任意の温度下、30秒以上3分以下の間放置する。その後、金型を10℃以上60℃以下に冷却し、得られた本発明の樹脂成形体を金型から脱型する。そして、金型の形状をかたどったシート状の成形体を得る。
【0111】
(積層体)
本発明の積層体は、発泡ポリウレタン成形体と、上述した樹脂成形体とを有する。なお、樹脂成形体は、通常、積層体の一方の表面を構成する。
そして、本発明の積層体は、例えば、本発明の樹脂組成物を用いて形成され、低温引張伸び及び耐熱収縮性に優れた樹脂成形体を有している。したがって、本発明の積層体は、自動車内装部品、特に、自動車インスツルメントパネルを形成する自動車内装材として好適に用いられる。
【0112】
ここで、発泡ポリウレタン成形体と樹脂成形体との積層方法は、特に限定されることなく、例えば、以下の方法を用いることができる。即ち、(1)発泡ポリウレタン成形体と、樹脂成形体とを別途準備した後に、熱融着、熱接着、又は、公知の接着剤などを用いることにより貼り合わせる方法;(2)樹脂成形体上で発泡ポリウレタン成形体の原料となるイソシアネート類とポリオール類などとを反応させて重合を行うと共に、公知の方法によりポリウレタンの発泡を行うことにより、樹脂成形体上に発泡ポリウレタン成形体を直接形成する方法;などが挙げられる。中でも、工程が簡素である点、及び、種々の形状の積層体を得る場合においても樹脂成形体と発泡ポリウレタン成形体とを強固に接着し易い点から、後者の方法(2)が好適である。
【実施例0113】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、塩化ビニル樹脂成形シート(塩化ビニル樹脂成形体)の低温下での引張特性、耐熱収縮性、及び、発泡ポリウレタン成形体への接着性は、下記の方法で測定及び評価した。
【0114】
<低温下での引張特性(引張強度、引張伸び)>
得られた塩化ビニル樹脂成形シートを、JIS K6251に記載の1号ダンベルで打ち抜き、JIS K7113に準拠して、引張速度200mm/分で、-25℃の低温下における引張破断伸び(%)及び引張破断応力(MPa)を測定した。引張破断伸びの値が大きいほど、塩化ビニル樹脂成形シートは初期(未加熱状態)の低温下での引張伸び(低温引張伸び)に優れている。また、引張破断応力の値が大きいほど、塩化ビニル樹脂成形シートは初期(未加熱状態)の低温下での引張強度に優れている。
【0115】
<耐熱収縮性>
得られた積層体の塩化ビニル樹脂成形シートに対して、短手方向の長さを三次元測定機(ミツトヨ社製「Crysta-Plus M443」)にて測定し、加熱前の実測値とした。
その後、当該積層体を120℃のギア式オーブン(東洋精機製作所社製「ギアオーブン」)内に保管して加熱を行い、600時間経過後にオーブンから積層体を取り出し、積層体の塩化ビニル樹脂成形シートの短手方向の長さを上記三次元測定機で測定し、加熱後の実測値とした。加熱前後の実測値を用いて、下記式で示される熱収縮率(%)を算出した。
熱収縮率[%]=100×(加熱前の実測値-加熱後の実測値)/加熱前の実測値
なお、熱収縮率の値が小さいほど、塩化ビニル樹脂成形シートの熱収縮が小さく、塩化ビニル樹脂成形シートは耐熱収縮性に優れていることを示す。
【0116】
<発泡ポリウレタン成形体への接着性>
得られた塩化ビニル樹脂成形シートに発泡ポリウレタン成形体が裏打ちされてなる積層体を用いて、塩化ビニル樹脂成形シートを発泡ポリウレタン成形体から剥がした。剥がした後の塩化ビニル樹脂成形シートの表面のうち、発泡ポリウレタン成形体が裏打ちされた表面を目視で確認し、塩化ビニル樹脂成形シート(塩化ビニル樹脂成形体)のポリウレタン成形体への接着性を評価した。
目視確認した塩化ビニル樹脂成形シートの全面に発泡ポリウレタン成形体の表面部分が残っている場合を「フォーム破壊」(表1中のA評価)とし、塩化ビニル樹脂成形シートの表面の一部の箇所のみに発泡ポリウレタン成形体の表面部分が残り、他の箇所には発泡ポリウレタン成形体の表面部分が残らない場合を「一部界面剥離」(表1中のB評価)とし、塩化ビニル樹脂成形シート全面のいずれの箇所にも発泡ポリウレタン成形体の表面部分が残らない場合を「全部界面剥離」(表1中のC評価)とした。
なお、塩化ビニル樹脂成形シートの表面において、発泡ポリウレタン成形体の表面部分が残って箇所が多いほど、塩化ビニル樹脂成形シート(塩化ビニル樹脂成形体)の発泡ポリウレタン成形体への接着性が高いことを示す。
【0117】
(合成例)
各実施例で使用した化合物は、以下のようにして調製した。
なお、以下の合成例で使用した「Cardolite LITE 2020」(カードライト社製)の核磁気共鳴法(NMR)(H-NMR、13C-NMR、C-H COSY)、及びIR(ATR)のそれぞれの測定により得られたスペクトルを図1~4に示す。図1H-NMRのスペクトルより、水酸基のシグナル位置が2.15ppmであることが分かった。
また、以下の合成例で使用した「Cardolite NX-7507」(カードライト社製)のNMR(H-NMR、13C-NMR、C-H COSY)、及びIR(ATR)のそれぞれの測定により得られたスペクトルを図5~8に示す。図5H-NMRのスペクトルより、水酸基のシグナル位置が3.33ppmであることが分かった。
【0118】
<合成例1>ジエステル混合物1の合成
以下の合成スキームに従って、「Cardolite LITE 2020」(カードライト社製)から、ジエステル混合物1を合成した。
なお、合成スキーム中、Rは下記の4種の炭素数15の炭化水素基のいずれかであることを表し、*はそれぞれベンゼン環と単結合を介して結合する位置を表す(以下、合成例2~7についても同様である)。そして、「Cardolite LITE 2020」及びジエステル混合物1はそれぞれ、Rが下記の4種の炭化水素基のいずれかである化合物の混合物であることを表し、ジエステル混合物1に含まれる2つのRは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【化12】
温度計を備えた3口反応器において、窒素気流中、「Cardolite LITE2020」(カードライト社製)80g(0.23mol)を、N-メチルピロリドン(NMP)250mLに溶解させた。この溶液に、アジピン酸16.15g(0.11mol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)2.8g(0.023mol)を加えて溶解させた。そこに、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)44.5g(0.23mol)を水浴下にて25℃以下となるように調節しながら、ゆっくり加え、全容をそのまま25℃で18時間撹拌した。
反応終了後、蒸留水2500mLに反応液を投入し、酢酸エチル300mLで2回抽出した。酢酸エチル層を無水硫酸ナ卜リウムで乾燥した後、硫酸ナトリウムをろ別した。
ロータリーエバポレーターにて溶媒を蒸発除去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=85:15(容積比))により精製することで、ジエステル混合物1を淡黄色オイルとして58g得た。ジエステル混合物1の構造は、NMR(H-NMR、13C-NMR)、及びIR(ATR)で同定した。
H-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):「Cardolite LITE2020」(カードライト社製)の水酸基に由来する2.15ppmのシグナルの消失を確認した。
13C-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):カルボニル炭素に由来する173.27ppmのシグナルの生成を確認した。
IR(ATR):エステル結合に由来する1736cm-1のピーク生成を確認した。
H-NMR、13C-NMR、IR(ATR)のそれぞれのスペクトルを図9図11に示す。
【0119】
<合成例2>ジカルバメート混合物1の合成
以下の合成スキームに従って、「Cardolite LITE 2020」(カードライト社製)から、ジカルバメート混合物1を合成した。
なお、「Cardolite LITE 2020」及びジカルバメート混合物1はそれぞれ、Rが下記の4種の炭化水素基のいずれかである化合物の混合物であることを表し、ジカルバメート混合物1に含まれる2つのRは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【化13】
温度計を備えた3口反応器において、窒素気流中、Cardolite LITE2020(カードライト社製)92g(0.27mol)を、テトラヒドロフラン(THF)200mLに溶解させ、氷浴で5℃まで冷却した。この溶液に、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)2.0g(0.013mol)をゆっくり加えた。この溶液にヘキサメチレンジイソシアネート22.5g(0.13mol)をTHF130mlに溶解させた溶液を氷浴下、10℃以下になるように調節しながら、ゆっくり滴下した。その後、ゆっくりと室温に戻し、引き続き、50℃に昇温して2時間そのまま攪拌した。反応終了後、反応液を希塩酸2500mlに投入して、酢酸エチル300mlで2回抽出した。酢酸エチル層を無水硫酸ナ卜リウムで乾燥した後、硫酸ナトリウムをろ別した。
ロータリーエバポレーターにて溶媒を蒸発除去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=80:20(容積比))により精製することで、ジカルバメート混合物1を淡黄色固体として54g得た。融点は、94~96℃であった。ジカルバメート混合物1の構造はNMR(H-NMR、13C-NMR)、及びIR(ATR)で同定した。
H-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):「Cardolite LITE2020」(カードライト社製)の水酸基に由来する2.15ppmのシグナルの消失を確認した。カルバメートのN-Hに由来する4.79ppmのシグナルの生成を確認した。
13C-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):カルボニル炭素に由来する155.99ppmのシグナルの生成を確認した。
IR(ATR):カルバメート結合に由来する1685cm-1、1718cm-1のピーク生成と、N-Hに由来する3327cm-1のピーク生成を確認した。
H-NMR、13C-NMR、IR(ATR)のそれぞれのスペクトルを図12図14に示す。
【0120】
<合成例3>ジエーテル混合物1の合成
以下の合成スキームに従って、「Cardolite LITE 2020」(カードライト社製)から、ジエーテル混合物1を合成した。
なお、「Cardolite LITE 2020」及びジエーテル混合物1はそれぞれ、Rが下記の4種の炭化水素基のいずれかである化合物の混合物であることを表し、ジエーテル混合物1に含まれる2つのRは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【化14】
温度計を備えた3口反応器において、窒素気流中、氷浴冷却下にて含量55%の水素化ナトリウム35.5g(正味19.5g(0.81mol))、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)250mlを加えた。氷浴下のまま、このスラリー溶液に「Cardolite LITE2020」(カードライト社製)80g(0.23mol)をCPME50mlに溶解させた溶液を内温が10℃付近になるように調節しながら、ゆっくりと滴下した。この反応液を室温に戻して、23℃にて30分間攪拌した。更にその後、この反応液を80℃に昇温して、ジブロモヘキサン19.9g(0.082mol)をCPME10mlに溶解させた溶液をゆっくりと滴下した。その後、110℃にて11時間加熱還流した。反応終了後、氷浴にて冷却して、そのまま氷浴下にてテトラヒドロフラン100mlと水50mlの混合溶液をゆっくりと滴下した。更に、この溶液に1規定の塩酸300mlを加えて酸性にしたのち、酢酸エチル300mlで2回抽出した。酢酸エチル層を無水硫酸ナ卜リウムで乾燥した後、硫酸ナトリウムをろ別した。
ロータリーエバポレーターにて溶媒を蒸発除去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=90:10(容積比))により精製することで、ジエーテル混合物1を淡黄色オイルとして57g得た。ジエーテル混合物1の構造はNMR(H-NMR)及びIR(ATR)で同定した。
H-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):「Cardolite LITE2020」(カードライト社製)の水酸基に由来する2.15ppmのシグナルの消失を確認した。
IR(ATR):エーテル結合に由来する1124cm-1のピーク生成を確認した。
H-NMR、IR(ATR)のそれぞれのスペクトルを図15図16に示す。
【0121】
<合成例4)ジエステル混合物2の合成
以下の合成スキームに従って、「Cardolite NX-7505」(カードライト社製)から、ジエステル混合物2を合成した。
なお、「Cardolite NX-7505」及びジエステル混合物2はそれぞれ、Rが下記の4種の炭素数15の炭化水素基のいずれかである化合物の混合物であることを表し、ジエステル混合物2に含まれる2つのRは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【化15】
温度計を備えた3口反応器において、窒素気流中、「Cardolite NX-7505」(カードライト社製)80g(0.13mol)を、N-メチルピロリドン(NMP)150mLに溶解させた。この溶液に、アジピン酸9.13g(0.062mol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)3.22g(0.026mol)を加えて溶解させた。そこに、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)25.24g (0.13mol)を水浴下にて25℃以下となるように調節しながら、ゆっくり加え、全容をそのまま25℃で24時間撹拌した。
反応終了後、蒸留水2500mLに反応液を投入し、酢酸エチル300mLで2回抽出した。酢酸エチル層を無水硫酸ナ卜リウムで乾燥した後、硫酸ナトリウムをろ別した。
ロータリーエバポレーターにて溶媒を蒸発除去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=90:10(容積比))により精製することで、ジエステル混合物2を淡黄色オイルとして84g得た。ジエステル混合物2の構造はNMR及びIR(ATR)で同定した。
H-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):Cardolite NX-7507(カードライト社製)の水酸基に由来する3.33ppmのシグナルの消失を確認した。
13C-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):カルボニル炭素に由来する175.03ppmと173.23ppmのシグナルの生成を確認した。
IR(ATR):エステル結合に由来する1736cm-1、1685cm-1のピーク生成を確認した。
H-NMR、13C-NMR、IR(ATR)、それぞれのスペクトルを図17図19に示す。
【0122】
<合成例5>トリエステル混合物1の合成
以下の合成スキームに従って、「Cardolite NX-7505」(カードライト社製)から、トリエステル混合物1を合成した。
なお、「Cardolite NX-7505」及びトリエステル混合物1はそれぞれ、Rが下記の4種の炭化水素基のいずれかである化合物の混合物であることを表し、トリエステル混合物1に含まれる3つのRは互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【化16】
温度計を備えた3口反応器において、窒素気流中、「Cardolite NX-7505」(カードライト社製)81.8g(0.134mol)を、N-メチルピロリドン(NMP)200mLに溶解させた。この溶液に、1,3,5-ペンタトリカルボン酸9.0g(0.044mol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)3.6g(0.029mol)を加えて溶解させた。そこに、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)28.3g(0.148mol)を水浴下にて25℃以下となるように調節しながら、ゆっくり加え、全容をそのまま25℃で18時間撹拌した。
反応終了後、蒸留水2500mLに反応液を投入し、酢酸エチル300mLで2回抽出した。酢酸エチル層を無水硫酸ナ卜リウムで乾燥した後、硫酸ナトリウムをろ別した。
ロータリーエバポレーターにて溶媒を蒸発除去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=90:10(容積比))により精製することで、トリエステル混合物1を淡黄色オイルとして81g得た。トリエステル混合物1の構造はNMR及びIR(ATR)で同定した。
H-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):「Cardolite NX-7507」(カードライト社製)の水酸基に由来する3.33ppmのシグナルの消失を確認した。
13C-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):カルボニル炭素に由来する175.05ppmのシグナルの生成を確認した。
IR(ATR):エステル結合に由来する1734cm-1、1685cm-1のピーク生成を確認した。
H-NMR、13C-NMR、IR(ATR)のそれぞれのスペクトルを図20図22に示す。
【0123】
<合成例6>ジエステル混合物3の合成
以下の合成スキームに従って、「Cardolite NX-7505」(カードライト社製)から、ジエステル混合物3を合成した。
なお、「Cardolite NX-7505」及びジエステル混合物3はそれぞれ、Rが下記の4種の炭化水素基のいずれかである化合物の混合物であることを表し、ジエステル混合物3に含まれる2つのRは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【化17】
温度計を備えた3口反応器において、窒素気流中、「Cardolite NX-7507」(カードライト社製)73.3g(0.121mol)を、N-メチルピロリドン(NMP)200mLに溶解させた。この溶液に、3-エチル-3-メチルグルタル酸10g(0.057mol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)3.24g(0.027mol)を加えて溶解させた。そこに、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)25.4g(0.132mol)を水浴下にて25℃以下となるように調節しながら、ゆっくり加え、全容をそのまま25℃で18時間撹拌した。反応終了後、蒸留水2500mLに反応液を投入し、酢酸エチル300mLで2回抽出した。酢酸エチル層を無水硫酸ナ卜リウムで乾燥した後、硫酸ナトリウムをろ別した。ロータリーエバポレーターにて溶媒を蒸発除去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=90:10から85:15にグラジエント(容積比))により精製することで、ジエステル混合物3を淡黄色オイルとして81g得た。ジエステル混合物3の構造はNMR及びIR(ATR)で同定した。
H-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):「Cardolite NX-7507」(カードライト社製)の水酸基に由来する3.33ppmのシグナルの消失を確認した。
13C-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):カルボニル炭素に由来する175.11ppm、166.39ppmのシグナルの生成を確認した。
IR(ATR):エステル結合に由来する1730cm-1、1685cm-1、1672cm-1のピーク生成を確認した。
H-NMR、13C-NMR、IR(ATR)のそれぞれのスペクトルを図23図25に示す。
【0124】
<合成例7>ジエステル混合物4の合成
以下の合成スキームに従って、「Cardolite NX-7505」(カードライト社製)から、ジエステル混合物4を合成した。
なお、「Cardolite NX-7505」及びジエステル混合物4はそれぞれ、Rが下記の4種の炭化水素基のいずれかである化合物の混合物であることを表し、ジエステル混合物4に含まれる2つのRは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【化18】
温度計を備えた3口反応器において、窒素気流中、Cardolite NX-7507(カードライト社製)84.58g(0.139mol)を、N-メチルピロリドン(NMP)250mLに溶解させた。この溶液に、テレフタル酸11.0g(0.066mol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)3.74g(0.031mol)を加えて溶解させた。そこに、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)29.32g (0.153mol)を水浴下にて25℃以下となるように調節しながら、ゆっくり加え、全容をそのまま25℃で22時間撹拌した。反応終了後、蒸留水2500mLに反応液を投入し、酢酸エチル300mLで2回抽出した。酢酸エチル層を無水硫酸ナ卜リウムで乾燥した後、硫酸ナトリウムをろ別した。ロータリーエバポレーターにて溶媒を蒸発除去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=85:15(容積比))により精製することで、ジエステル混合物4を淡黄色オイルとして82g得た。ジエステル混合物4の構造はNMR及びIR(ATR)で同定した。
H-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):Cardolite NX-7507(カードライト社製)の水酸基に由来する3.33ppmのシグナルの消失を確認した。8.11ppmにテレフタル酸の芳香族水素の生成を確認した。
13C-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):カルボニル炭素に由来する174.96ppm、165.62ppmのシグナルの生成を確認した。
IR(ATR):エステル結合に由来する1720cm-1、1689cm-1のピーク生成を確認した。
H-NMR、13C-NMR、IR(ATR)のそれぞれのスペクトルを図26図28に示す。
【0125】
<合成例8>ジエステル混合物5の合成
以下の合成スキームに従って、「Cardolite NX-7505」(カードライト社製)から、ジエステル混合物5を合成した。
なお、「Cardolite NX-7505」及びジエステル混合物5はそれぞれ、Rが下記の4種の炭化水素基のいずれかである化合物の混合物であることを表し、ジエステル混合物4に含まれる2つのRは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【化19】
温度計を備えた3口反応器において、窒素気流中、Cardolite NX-7507(カードライト社製)97.3g(0.16mol)を、N-メチルピロリドン(NMP)260mLに溶解させた。この溶液に、こはく酸9.0g(0.0762mol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)2.15g(0.0176mol)を加えて溶解させた。そこに、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)33.74g(0.176mol)を水浴下にて25℃以下となるように調節しながら、ゆっくり加え、全容をそのまま25℃18時間撹拌した。反応終了後、蒸留水2500mLに反応液を投入し、酢酸エチル300mLで2回抽出した。酢酸エチル層を無水硫酸ナ卜リウムで乾燥した後、硫酸ナトリウムをろ別した。ロータリーエバポレーターにて溶媒を蒸発除去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=85:15(容積比))により精製することで、ジエステル混合物5を淡黄色オイルとして95g得た。ジエステル混合物5の構造はNMRと赤外線吸収スペクトルで同定した。
H-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):Cardolite NX-7507(カードライト社製)の水酸基に由来する3.33ppmのシグナルの消失を確認した。
13C-NMR(500MHz,CDCl,TMS,δppm):カルボニル炭素に由来する172.19ppmのシグナルの生成を確認した。
IR(ATR):エステル結合に由来する1736cm-1、1685cm-1のピーク生成を確認した。
H-NMR、13C-NMR、IR(ATR)、それぞれのスペクトルを図29図31に示す。
【0126】
(実施例1)
<塩化ビニル樹脂組成物の調製>
表1に示す配合成分のうち、可塑剤組成物(ポリエステル系可塑剤、化合物、及び、その他の可塑剤)と、ダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子とを除く成分をヘンシェルミキサーに入れて混合した。そして、混合物の温度が80℃に上昇した時点で上記可塑剤組成物を全て添加し、ドライアップ(可塑剤が、塩化ビニル樹脂である塩化ビニル樹脂粒子に吸収されて、上記混合物がさらさらになった状態をいう。)させて、最高温度が100℃以上200℃以下になるまで混合を継続した。その後、ドライアップさせた混合物が温度100℃未満に冷却された時点でダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子を添加し、塩化ビニル樹脂組成物を調製した。
<塩化ビニル樹脂成形シートの形成>
得られた塩化ビニル樹脂組成物を、温度250℃に加熱したシボ付き金型に振りかけ、任意の時間放置して溶融させた後、余剰の塩化ビニル樹脂組成物を振り落とした。その後、当該塩化ビニル樹脂組成物を振りかけたシボ付き金型を、温度200℃に設定したオーブン内に静置し、静置から60秒経過した時点で当該シボ付き金型を冷却水で冷却した。金型温度が40℃まで冷却された時点で、塩化ビニル樹脂成形体としての、200mm×150mm×1mmの塩化ビニル樹脂成形シートを金型から脱型した。
得られた塩化ビニル樹脂成形シートを用いて、初期(未加熱状態)における低温下での引張特性(引張強度、引張伸び)を評価した。結果を表1に示す。
<積層体の形成>
得られた塩化ビニル樹脂成形シート(寸法:200mm×150mm×1mm)2枚を、200mm×300mm×10mmの金型の中に、シボ付き面を下にして敷いた。
別途、プロピレングリコールのプロピレンオキサイド・エチレンオキサイド(PO・EO)ブロック付加物(水酸基価28、末端EO単位の含有量=10%、内部EO単位の含有量4%)50質量部、グリセリンのPO・EOブロック付加物(水酸基価21、末端EO単位の含有量=14%)50質量部、水2.5質量部、トリエチレンジアミンのエチレングリコ-ル溶液(東ソー(株)製、商品名:「TEDA-L33」)0.2質量部、トリエタノールアミン1.2質量部、トリエチルアミン0.5質量部及び整泡剤(信越化学工業(株)製、商品名:「F-122」)0.5質量部からなるポリオール混合物と、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI))とを、インデックスが98になる比率で混合して混合液を調製した。そして、調製した混合液を、上述の通り金型中に敷かれた塩化ビニル樹脂成形シート2枚の上にそれぞれ注いだ。その後、348mm×255mm×10mmのアルミ板で金型に蓋をすることで金型を密閉した。金型を密閉してから5分間放置することにより、表皮としての塩化ビニル樹脂成形シート(厚さ:1mm)に発泡ポリウレタン成形体が裏打ちされてなる積層体が形成された。
形成された積層体を金型から取り出し、積層体における塩化ビニル樹脂成形シートについて、発泡ポリウレタン成形体への接着性を評価した。結果を表1に示す。
【0127】
(実施例2~8、比較例1~4)
塩化ビニル樹脂組成物の調製の際の配合組成を表1に示す通りに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、塩化ビニル樹脂組成物、塩化ビニル樹脂成形シート、及び積層体を作製した。そして、得られた塩化ビニル樹脂成形シート及び積層体を用いて、塩化ビニル樹脂成形シートの低温下での引張特性、耐熱収縮性及び発泡ポリウレタン成形体への接着性を評価した。結果を表1に示す。
【0128】
なお、表1中、
「EО変性」は「エチレンオキサイド変性」を意味し、
「n」は、「エチレンオキサイド単位の繰り返し単位数n」を意味する。
【0129】
【表1】
【0130】
1)新第一塩ビ社製、製品名「ZEST(登録商標)1300SI」(懸濁重合法で調製、平均重合度:1300、平均粒子径:115μm)
2)新第一塩ビ社製、製品名「ZEST PQLTX」(乳化重合法で調製、平均重合度:800、平均粒子径:1.8μm)
3)ADEKA社製、製品名「アデカサイザー HPN-3130」(アジピン酸系ポリエステル、粘度(25℃):3,000mPa・s)
4)カードライト社製、製品名「Cardolite LITE 2020」(エチレンオキサイド変性カルダノール、エチレンオキサイド単位の繰り返し単位数n=1)
5)カードライト社製、製品名「Cardolite NX-7507」(エチレンオキサイド変性カルダノール、エチレンオキサイド単位の繰り返し単位数n=7)
6)田岡工業社製、製品名「DODN」
7)ADEKA社製、製品名「アデカサイザー O-130S」
8)協和化学工業社製、製品名「アルカマイザー(登録商標)5」
9)水澤化学工業社製、製品名「MIZUKALIZER DS」
10)堺化学工業社製、製品名「SAKAI SZ2000」
11)ADEKA社製、製品名「アデカスタブ LA-72」
12)ADEKA社製、製品名「アデカスタブ LS-12」
13)大日精化社製、製品名「DA P 4720 ブラック」
【0131】
表1より、ポリエステル系可塑剤と所定の構造を有する化合物とを含む可塑剤組成物を用いて調製した実施例1~8の樹脂組成物によれば、低温引張伸び及び耐熱収縮性に優れた樹脂成形体を形成可能であることが分かる。
一方、所定の構造を有する化合物を含まない可塑剤組成物を用いて調製した比較例1の樹脂組成物から形成された樹脂成形体は、低温引張伸びに劣ることが分かる。
また、所定の構造を有する化合物に代えて、ドデカン二酸ジ(2-エチルヘキシル)を含む可塑剤組成物を用いて調製した比較例2の樹脂組成物から形成された樹脂成形体は、耐熱収縮性に劣ることが分かる。
さらに、所定の構造を有する化合物に代えて、エチレンオキサイド変性カルダノールを含む可塑剤組成物を用いて調製した比較例3~4の樹脂組成物から形成された樹脂成形体は、耐熱収縮性に劣ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明によれば、低温引張伸び及び耐熱収縮性に優れた樹脂成形体を形成可能な樹脂組成物の調製に用い得る可塑剤組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、低温引張伸び及び耐熱収縮性に優れた樹脂成形体を形成可能な樹脂組成物を提供するができる。
さらに、本発明によれば、低温引張伸び及び耐熱収縮性に優れた樹脂成形体を提供することができる。
また、本発明によれば、当該樹脂成形体を備える積層体を提供することができる。
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