(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010736
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】眼底画像を用いたうつ病リスク判定システム、機械学習モデル生成装置、うつ病リスク判定装置及びうつ病リスク判定方法
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20240118BHJP
【FI】
G16H50/30
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112188
(22)【出願日】2022-07-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-20
(71)【出願人】
【識別番号】521233943
【氏名又は名称】株式会社 SAI
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福間 康文
(72)【発明者】
【氏名】ザイシン マオ
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】曽根 康平
(72)【発明者】
【氏名】西田 幸二
(72)【発明者】
【氏名】川崎 良
(72)【発明者】
【氏名】丸山 和一
(72)【発明者】
【氏名】松下 賢治
(72)【発明者】
【氏名】橋田 徳康
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】眼底画像からうつ病のリスクを判定することが可能なうつ病リスク判定システムを提供する。
【解決手段】本発明によるうつ病リスク判定システムは、うつ病のリスクを判定するための学習済モデルを生成する機械学習モデル生成装置と、機械学習モデル生成装置で生成した学習済モデルを用いてうつ病のリスクを判定するうつ病リスク判定装置とを備え、機械学習モデル生成装置は、少なくとも学習用問診データと学習用眼底画像を取得するデータ取得部と、学習済モデルを生成する機械学習モデル生成部とを備え、うつ病リスク判定装置は、判定用眼底画像を取得する判定用データ取得部と、学習済モデルに少なくとも判定用眼底画像を入力することにより、うつ病リスクを示す予測スコアを出力するうつ病リスク判定部と、予測スコアに基づいてうつ病リスクの判定結果を出力する判定結果出力部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
うつ病リスク判定システムであって、
うつ病のリスクを判定するための学習済モデルを生成する機械学習モデル生成装置と、
前記機械学習モデル生成装置で生成した前記学習済モデルを用いてうつ病のリスクを判定するうつ病リスク判定装置とを備え、
前記機械学習モデル生成装置は、
学習用データベースから学習用問診データと学習用眼底画像を取得する学習用データ取得部と、
前記学習用問診データを正解データとし、前記学習用眼底画像を観測データとしてニューラルネットワークに入力し、学習済モデルを生成する機械学習モデル生成部とを備え、
前記うつ病リスク判定装置は、
判定用データベースから判定用眼底画像を取得する判定用データ取得部と、
前記学習済モデルに前記判定用眼底画像を入力することにより、うつ病リスクを示す予測スコアを出力するうつ病リスク判定部と、
前記予測スコアに基づいてうつ病リスクの判定結果を出力する判定結果出力部とを備えることを特徴とする、うつ病リスク判定システム。
【請求項2】
うつ病リスク判定システムであって、
うつ病のリスクを判定するための学習済モデルを生成する機械学習モデル生成装置と、
前記機械学習モデル生成装置で生成した前記学習済モデルを用いてうつ病のリスクを判定するうつ病リスク判定装置とを備え、
前記機械学習モデル生成装置は、
学習用データベースから学習用問診データと、学習用眼底画像と、学習用生活習慣データとを取得する学習用データ取得部と、
前記学習用問診データを正解データとし、前記学習用眼底画像と、前記学習用生活習慣データとを観測データとしてニューラルネットワークに入力し、学習済モデルを生成する機械学習モデル生成部とを備え、
前記うつ病リスク判定装置は、
判定用データベースから判定用眼底画像と、判定用生活習慣データとを取得する判定用データ取得部と、
前記学習済モデルに前記判定用眼底画像と、前記判定用生活習慣データとを入力することにより、うつ病リスクを示す予測スコアを出力するうつ病リスク判定部と、
前記予測スコアに基づいてうつ病リスクの判定結果を出力する判定結果出力部とを備えることを特徴とする、うつ病リスク判定システム。
【請求項3】
うつ病リスク判定システムであって、
うつ病のリスクを判定するための学習済モデルを生成する機械学習モデル生成装置と、
前記機械学習モデル生成装置で生成した前記学習済モデルを用いてうつ病のリスクを判定するうつ病リスク判定装置とを備え、
前記機械学習モデル生成装置は、
学習用データベースから学習用問診データと、学習用眼底画像と、学習用生活習慣データと、学習用基本健診データとを取得する学習用データ取得部と、
前記学習用問診データを正解データとし、前記学習用眼底画像と、前記学習用生活習慣データと、前記学習用基本健診データとを観測データとしてニューラルネットワークに入力し、学習済モデルを生成する機械学習モデル生成部とを備え、
前記うつ病リスク判定装置は、
判定用データベースから判定用眼底画像と、判定用生活習慣データと、判定用基本健診データを取得する判定用データ取得部と、
前記学習済モデルに前記判定用眼底画像と、前記判定用生活習慣データと、前記判定用基本健診データを入力することにより、うつ病リスクを示す予測スコアを出力するうつ病リスク判定部と、
前記予測スコアに基づいてうつ病リスクの判定結果を出力する判定結果出力部とを備えることを特徴とする、うつ病リスク判定システム。
【請求項4】
前記ニューラルネットワークは、第1のニューラルネットワークと、前記第1のニューラルネットワークとは異なる第2のニューラルネットワークとにより構成され、
前記第1のニューラルネットワークからの出力を前記第2のニューラルネットワークの入力とすることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のうつ病リスク判定システム。
【請求項5】
前記第1のニューラルネットワークは、ある層より前の層の出力を入力とするニューラルネットであることを特徴とする、請求項4に記載のうつ病リスク判定システム。
【請求項6】
前記第2のニューラルネットワークは、入力層と出力層の中間に中間層が1層あるニューラルネットであることを特徴とする、請求項4に記載のうつ病リスク判定システム。
【請求項7】
前記学習用眼底画像及び前記判定用眼底画像として、左目又は右目のいずれか一方の眼底画像を用いることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のうつ病リスク判定システム。
【請求項8】
前記学習用眼底画像及び前記判定用眼底画像として、左目の眼底画像と右目の眼底画像の両方を用いることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のうつ病リスク判定システム。
【請求項9】
うつ病のリスクを判定するための機械学習モデルを生成する機械学習モデル生成装置であって、
学習用データベースから学習用問診データと学習用眼底画像を取得する学習用データ取得部と、
前記学習用問診データを正解データとし、前記学習用眼底画像を観測データとしてニューラルネットワークに入力し、学習済モデルを生成する機械学習モデル生成部とを備えることを特徴とする、機械学習モデル生成装置。
【請求項10】
うつ病のリスクを判定するための機械学習モデルを生成する機械学習モデル生成装置であって、
学習用データベースから学習用問診データと、学習用眼底画像と、学習用生活習慣データとを取得する学習用データ取得部と、
前記学習用問診データを正解データとし、前記学習用眼底画像と、前記学習用生活習慣データとを観測データとしてニューラルネットワークに入力し、学習済モデルを生成する機械学習モデル生成部とを備えることを特徴とする、機械学習モデル生成装置。
【請求項11】
うつ病のリスクを判定するための機械学習モデルを生成する機械学習モデル生成装置であって、
学習用データベースから学習用問診データと、学習用眼底画像と、学習用生活習慣データと、学習用基本健診データとを取得する学習用データ取得部と、
前記学習用問診データを正解データとし、前記学習用眼底画像と、前記学習用生活習慣データと、前記学習用基本健診データとを観測データとしてニューラルネットワークに入力し、学習済モデルを生成する機械学習モデル生成部とを備えることを特徴とする、機械学習モデル生成装置。
【請求項12】
前記ニューラルネットワークは、第1のニューラルネットワークと、前記第1のニューラルネットワークとは異なる第2のニューラルネットワークとにより構成され、
前記第1のニューラルネットワークからの出力を前記第2のニューラルネットワークの入力とすることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載の機械学習モデル生成装置。
【請求項13】
前記第1のニューラルネットワークは、ある層より前の層の出力を入力とするニューラルネットであることを特徴とする、請求項12に記載の機械学習モデル生成装置。
【請求項14】
前記第2のニューラルネットワークは、入力層と出力層の中間に中間層が1層あるニューラルネットであることを特徴とする、請求項12に記載の機械学習モデル生成装置。
【請求項15】
前記学習用眼底画像として、左目又は右目のいずれか一方の眼底画像を用いることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載の機械学習モデル生成装置。
【請求項16】
前記学習用眼底画像として、左目の眼底画像と右目の眼底画像の両方を用いることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載の機械学習モデル生成装置。
【請求項17】
うつ病リスク判定装置であって、
判定用データベースから判定用眼底画像を取得する判定用データ取得部と、
学習済モデルに前記判定用眼底画像を入力することにより、うつ病リスクを示す予測スコアを出力するうつ病リスク判定部と、
前記予測スコアに基づいてうつ病リスクの判定結果を出力する判定結果出力部とを備えることを特徴とする、うつ病リスク判定装置。
【請求項18】
うつ病リスク判定装置であって、
判定用データベースから判定用眼底画像と、判定用生活習慣データとを取得する判定用データ取得部と、
学習済モデルに前記判定用眼底画像と、前記判定用生活習慣データとを入力することにより、うつ病リスクを示す予測スコアを出力するうつ病リスク判定部と、
前記予測スコアに基づいてうつ病リスクの判定結果を出力する判定結果出力部とを備えることを特徴とする、うつ病リスク判定装置。
【請求項19】
うつ病リスク判定装置であって、
判定用データベースから判定用眼底画像と、判定用生活習慣データと、判定用基本健診データを取得する判定用データ取得部と、
学習済モデルに前記判定用眼底画像と、前記判定用生活習慣データと、前記判定用基本健診データを入力することにより、うつ病リスクを示す予測スコアを出力するうつ病リスク判定部と、
前記予測スコアに基づいてうつ病リスクの判定結果を出力する判定結果出力部とを備えることを特徴とする、うつ病リスク判定装置。
【請求項20】
前記学習済モデルは、正解データと観測データをニューラルネットワークに入力することにより生成されたものである、請求項17~19のいずれか一項に記載のうつ病リスク判定装置。
【請求項21】
前記ニューラルネットワークは、第1のニューラルネットワークと、前記第1のニューラルネットワークとは異なる第2のニューラルネットワークとにより構成され、
前記第1のニューラルネットワークからの出力を前記第2のニューラルネットワークの入力とすることを特徴とする、請求項20に記載のうつ病リスク判定装置。
【請求項22】
前記第1のニューラルネットワークは、ある層より前の層の出力を入力とするニューラルネットであることを特徴とする、請求項21に記載のうつ病リスク判定装置。
【請求項23】
前記第2のニューラルネットワークは、入力層と出力層の中間に中間層が1層あるニューラルネットであることを特徴とする、請求項21に記載のうつ病リスク判定装置。
【請求項24】
前記判定用眼底画像として、左目又は右目のいずれか一方の眼底画像を用いることを特徴とする、請求項17~19のいずれか一項に記載のうつ病リスク判定装置。
【請求項25】
前記判定用眼底画像として、左目の眼底画像と右目の眼底画像の両方を用いることを特徴とする、請求項17~19のいずれか一項に記載のうつ病リスク判定装置。
【請求項26】
うつ病リスク判定方法であって、
学習用データ取得部と機械学習モデル生成部とを備える機械学習モデル生成装置が、うつ病のリスクを判定するための学習済モデルを生成するステップと、
判定用データ取得部と、うつ病リスク判定部と、判定結果出力部とを備えるうつ病リスク判定装置が、前記機械学習モデル生成装置で生成した前記学習済モデルを用いてうつ病のリスクを判定するステップとを備え、
前記学習済モデルを生成するステップは、
前記学習用データ取得部が、学習用データベースから少なくとも学習用問診データと学習用眼底画像を取得するステップと、
前記機械学習モデル生成部が、前記学習用問診データを正解データとし、少なくとも前記学習用眼底画像を観測データとしてニューラルネットワークに入力し、学習済モデルを生成するステップと
を含み、
前記うつ病のリスクを判定するステップは、
前記判定用データ取得部が、判定用データベースから少なくとも判定用眼底画像を取得するステップと、
前記うつ病リスク判定部が、前記学習済モデルに少なくとも前記判定用眼底画像を入力することにより、うつ病リスクを示す予測スコアを出力するステップと、
前記判定結果出力部が、前記予測スコアに基づいてうつ病リスクの判定結果を出力するステップと、
を含むことを特徴とする、うつ病リスク判定方法。
【請求項27】
コンピュータに、請求項26に記載の方法の各ステップを実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、うつ病リスク判定システムに関し、特に、ニューラルネットワークによる学習済モデルを用いて眼底画像からうつ病リスクの判定を行ううつ病リスク判定システム、機械学習モデル生成装置、うつ病リスク判定装置及びうつ病リスク判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、眼底画像を用いて、被検者の健康状態を分析するシステムが提案されている。具体的には、眼底画像を分析して、特有の医学的コンディションの存在または可能性の高い進行を出力する。
【0003】
この様な分析システムは、眼底画像を使用して、健康事象に対する被検者のリスクを評価し、または健康全般を評価する。
システムは、システムによって生成された予測に対する根拠を説明するデータ、すなわち、特定の予測を生成するため、眼底画像処理機械学習モデルを使用する。
機械学習モデルは、複数の眼底画像データと対応する被検者の健康状態を処理して、被検者についての学習モデルを生成し、次いで、任意の被検者眼底画像データを、学習モデルに、入力し、モデル出力から健康分析データを生成する。
【0004】
しかしながら、従来のシステムに於いては、精神健康状態 (例えばうつ状態、その予後 )などに関する評価は、専門医の問診、或いは、問診表によるいわゆる本人の申告による自覚診断に頼るしかなく、本人の状況によりその結果に関しても振幅の幅が大きいもので、所謂、客観的な指標が望まれていた。
【0005】
眼底画像を用いて、被検者の健康状態を分析するシステムとして、例えば、特許文献1では、「患者の1つまたは複数の眼底画像を含む入力から、患者についての健康分析データと、任意選択で、他の患者データとを生成することができるシステム」において「所与の患者についての健康分析データを生成するために、システムは、眼底画像処理機械学習モデルを使用して、1つまたは複数の眼底画像と、任意選択で、他の患者データとを処理して、患者についてのモデル出力を生成し、次いで、モデル出力から健康分析データを生成する」ことが開示されている。
【0006】
また、眼底画像等の眼画像データを用いて、被検者の健康状態のうち、特に感染症に伴う症状や重症化の兆候を分析するシステムとして、例えば、特許文献2では、「血中酸素データ、聴診音データ、眼画像データ、及び眼血流データのうちの少なくとも2 つのデータを患者から取得するデータ取得部と、感染症に随伴する循環器系の状態変化を検知するために、前記データ取得部により取得された前記少なくとも2 つのデータを処理するデータ処理部とを含む」医療システムが開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2はいずれも身体的な健康状態を評価するものであって、精神健康状態 (例えばうつ状態、その予後)などに関する評価を行うものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-528113号公報
【特許文献2】特開2021-176056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、うつ状態を分析するニューラルネットワークの学習モデルの生成に際し問診によりスコア化された問診データと眼底画像データを用いるうつ病リスク判定システムを提供するものである。
【0010】
また、本発明は、出力として、任意の眼底画像データを、本学習済みニューラルネットワークに入力させることにより、うつ状態のスコアを出力することができるうつ病リスク判定システムを提供する。
【0011】
さらに、性能を向上させる為、基本健康データ、ライフスタイルデータを、各学習プロセスに追加するシステムを構築することができる。
【0012】
また、本発明においては、眼底画像と基本健康データ、ライフスタイルデータを、当該学習済みニューラルネットワークに入力させることにより、さらに確度の高いうつ状態のスコアを出力する事も可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様によるうつ病リスク判定システムであって、うつ病のリスクを判定するための学習済モデルを生成する機械学習モデル生成装置と、機械学習モデル生成装置で生成した学習済モデルを用いてうつ病のリスクを判定するうつ病リスク判定装置とを備え、機械学習モデル生成装置は、学習用データベースから学習用問診データと学習用眼底画像を取得する学習用データ取得部と、学習用問診データを正解データとし、学習用眼底画像を観測データとしてニューラルネットワークに入力し、学習済モデルを生成する機械学習モデル生成部とを備え、うつ病リスク判定装置は、判定用データベースから判定用眼底画像を取得する判定用データ取得部と、学習済モデルに前記判定用眼底画像を入力することにより、うつ病リスクを示す予測スコアを出力するうつ病リスク判定部と、予測スコアに基づいてうつ病リスクの判定結果を出力する判定結果出力部とを備えることを特徴とする、うつ病リスク判定システムを提供する。
【0014】
また、本発明の第2の態様によるうつ病リスク判定システムであって、うつ病のリスクを判定するための学習済モデルを生成する機械学習モデル生成装置と、機械学習モデル生成装置で生成した学習済モデルを用いてうつ病のリスクを判定するうつ病リスク判定装置とを備え、機械学習モデル生成装置は、学習用データベースから学習用問診データと、学習用眼底画像と、学習用生活習慣データとを取得する学習用データ取得部と、学習用問診データを正解データとし、学習用眼底画像と、記学習用生活習慣データとを観測データとしてニューラルネットワークに入力し、学習済モデルを生成する機械学習モデル生成部とを備え、うつ病リスク判定装置は、判定用データベースから判定用眼底画像と、判定用生活習慣データとを取得する判定用データ取得部と、学習済モデルに判定用眼底画像と、判定用生活習慣データとを入力することにより、うつ病リスクを示す予測スコアを出力するうつ病リスク判定部と、予測スコアに基づいてうつ病リスクの判定結果を出力する判定結果出力部とを備えることを特徴とする、うつ病リスク判定システムを提供する。
【0015】
また、本発明の第3の態様によるうつ病リスク判定システムであって、うつ病のリスクを判定するための学習済モデルを生成する機械学習モデル生成装置と、機械学習モデル生成装置で生成した学習済モデルを用いてうつ病のリスクを判定するうつ病リスク判定装置とを備え、機械学習モデル生成装置は、学習用データベースから学習用問診データと、学習用眼底画像と、学習用生活習慣データと、学習用基本健診データとを取得する学習用データ取得部と、学習用問診データを正解データとし、学習用眼底画像と、学習用生活習慣データと、学習用基本健診データとを観測データとしてニューラルネットワークに入力し、学習済モデルを生成する機械学習モデル生成部とを備え、うつ病リスク判定装置は、判定用データベースから判定用眼底画像と、判定用生活習慣データと、判定用基本健診データを取得する判定用データ取得部と、学習済モデルに判定用眼底画像と、判定用生活習慣データと、判定用基本健診データを入力することにより、うつ病リスクを示す予測スコアを出力するうつ病リスク判定部と、予測スコアに基づいてうつ病リスクの判定結果を出力する判定結果出力部とを備えることを特徴とする、うつ病リスク判定システムを提供する。
【0016】
また、本発明のある態様によるうつ病リスク判定システムにおいては、ニューラルネットワークは、第1のニューラルネットワークと、第1のニューラルネットワークとは異なる第2のニューラルネットワークとにより構成され、第1のニューラルネットワークからの出力を第2のニューラルネットワークの入力とすることを特徴とする。
【0017】
また、本発明のある態様によるうつ病リスク判定システムにおいては、第1のニューラルネットワークは、ある層より前の層の出力を入力とするニューラルネットであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明のある態様によるうつ病リスク判定システムにおいては、第2のニューラルネットワークは、入力層と出力層の中間に中間層が1層あるニューラルネットであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明のある態様によるうつ病リスク判定システムにおいては、学習用眼底画像及び判定用眼底画像として、左目又は右目のいずれか一方の眼底画像を用いるようにしてもよい。
【0020】
また、本発明のある態様によるうつ病リスク判定システムにおいては、学習用眼底画像及び判定用眼底画像として、左目の眼底画像と右目の眼底画像の両方を用いるようにしてもよい。
【0021】
また、本発明のうつ病リスク判定方法であって、学習用データ取得部と機械学習モデル生成部とを備える機械学習モデル生成装置が、うつ病のリスクを判定するための学習済モデルを生成するステップと、判定用データ取得部と、うつ病リスク判定部と、判定結果出力部とを備えるうつ病リスク判定装置が、機械学習モデル生成装置で生成した学習済モデルを用いてうつ病のリスクを判定するステップとを備え、学習済モデルを生成するステップは、学習用データ取得部が、学習用データベースから少なくとも学習用問診データと学習用眼底画像を取得するステップと、機械学習モデル生成部が、学習用問診データを正解データとし、少なくとも学習用眼底画像を観測データとしてニューラルネットワークに入力し、学習済モデルを生成するステップとを含み、うつ病のリスクを判定するステップは、記判定用データ取得部が、判定用データベースから少なくとも判定用眼底画像を取得するステップと、うつ病リスク判定部が、学習済モデルに少なくとも判定用眼底画像を入力することにより、うつ病リスクを示す予測スコアを出力するステップと、判定結果出力部が、予測スコアに基づいてうつ病リスクの判定結果を出力するステップと、を含むことを特徴とする、うつ病リスク判定方法を提供する。
【0022】
また、本発明では、コンピュータに、上記うつ病リスク判定方法の各ステップを実行させることを特徴とするプログラムを提供する。
【0023】
本発明において、「うつ病」とは、気分障害の一種であり、抑うつ気分、意欲・興味・精神活動の低下、焦燥、食欲低下、不眠、持続する悲しみ・不安等を特徴とした精神障害のことをいう。本発明における「うつ病」には、一般的に「うつ病」と称されるものの他、大うつ病性障害、不安障害、その他の抗うつ状態を伴う気分障害であってうつ病に類似する精神疾患を含み得る。また、うつ病の発症又は診断には至らないが「うつ病」に近い「うつ状態」も含み得る。
【0024】
本発明において、「うつ病リスク」とは、うつ病の罹患に関するリスクのことをいい、既にうつ病を罹患しているリスク及び将来うつ病を罹患するリスクが含まれる。
【0025】
本発明において、「うつ病リスク」を「判定」することは、下記において特に指定のない限り、本発明のシステム、装置又は方法により導出されたうつ病リスクを示すデータ(例えば、スコア、数値、指標、ランク等)を得ることを意味し、医師等により実際にうつ病の診断を行う医療行為は含まれない。
【0026】
本発明において、「問診データ」とは、問診の項目に対する回答をスコア化したデータをいう。スコア化されたデータは、数値で表される。
【0027】
本発明において、「生活習慣データ」とは、被検者の生活習慣に関するデータをいう。生活習慣とは、例えば、睡眠習慣や飲酒習慣等である。生活習慣データには、生活習慣に関する項目と、その項目に対する被検者の回答をスコア化して数値で表されたデータが含まれる。
【0028】
本発明において、「基本健診データ」とは、健康診断等で測定される被検者の基本的な健診データをいう。基本健診データは、例えば、性別、受診年齢、身長、体重、腹囲、BMI、最高血圧及び最低血圧等である。基本健診データには、健診項目と、その健診項目の数値データが含まれる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、他覚的な眼底画像、健康診断で簡単に得られる基本計測データから、被検者の精神健康状態を得ることができる。
【0030】
本発明は、ストレスの多い現役の労働者に対し、事前にこのような情報が得られることは、職場環境の改善、事故の事前予防の観点から、非常に有用なシステムといえる。
本発明の他の目的、特徴および利点は添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明によるうつ病リスク判定システムの全体を示す概略図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明による第1の態様による機械学習モデル生成装置を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明による第1の態様によるうつ病リスク判定装置を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、本発明による第2の態様による機械学習モデル生成装置を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明による第2の態様によるうつ病リスク判定装置を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明による第3の態様による機械学習モデル生成装置を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明による第3の態様によるうつ病リスク判定装置を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明による学習用問診データの一例を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明による眼底画像の一例を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、左目又は右目のいずれか一方の眼底画像を用いる例を示す図である。
【
図6C】
図6Cは、左目の眼底画像と右目の眼底画像の両方を用いる例を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明による生活習慣データの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明による基本健診データの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明による判定結果出力部の出力の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明によるうつ病リスク判定部のうつ病リスク判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、本発明の学習済モデルにより出力された予測スコアの検証結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0032】
図1は、本発明によるうつ病リスク判定システム1の全体を示す概略図である。
本発明の第1の態様によるうつ病リスク判定システム1は、うつ病のリスクを判定するための学習済モデルを生成する機械学習モデル生成装置10と、機械学習モデル生成装置10で生成した学習済モデルを用いてうつ病のリスクを判定するうつ病リスク判定装置20とを備える。
【0033】
機械学習モデル生成装置10は、学習用データ取得部101と、機械学習モデル生成部102を備える。機械学習モデル生成装置10は、学習用データベース40に記憶された学習用データを用いて、うつ病のリスクを判定するための学習済モデルを生成する。
【0034】
うつ病リスク判定装置20は、判定用データ取得部201と、うつ病リスク判定部202と、判定結果出力部203とを備える。うつ病リスク判定装置20は、判定用データベース50に記憶された判定用データ及び機械学習モデル生成装置10で生成した学習済モデルを用いてうつ病のリスクを判定する。
【0035】
眼底画像撮像装置30は、被検者の眼底画像を撮像するための装置である。眼底画像撮像装置30は、医療機関での診療や健康診断等において眼底画像の撮像に用いられる既存の医療機器であってよい。眼底画像撮像装置30で撮像された眼底画像は、学習用データベース40に記憶される。
【0036】
学習用データベース40は、機械学習モデル生成装置10での学習済モデルの生成に用いられる学習用データを記憶する。学習用データベース40には、学習用データとして、学習用問診データ、学習用眼底画像、学習用生活習慣データ、学習用基本健診データが記憶されている。学習用眼底画像は、眼底画像撮像装置30により撮像されたものである。学習用問診データ、学習用生活習慣データ及び学習用基本健診データは、医療機関や健診機関等から予め収集されたものである。学習用データベース40は、サーバあるいはクラウド上に構築されるようにしてもよい。
【0037】
判定用データベース50は、うつ病リスク判定装置20でのうつ病リスクの判定に用いられる判定用データを記憶する。判定用データベース50には、判定用データとして、判定用眼底画像、判定用生活習慣データ及び判定用基本健診データが記憶されている。判定用眼底画像、判定用生活習慣データ及び判定用基本健診データは、ユーザ端末60から入力されて記憶される。学習用データベース40は、サーバあるいはクラウド上に構築されるようにしてもよい。
【0038】
ユーザ端末60は、うつ病リスクを判定する対象である被検者の判定用データを入力するために用いられる端末である。ユーザ端末60は、パーソナルコンピュータの他、スマートフォンやタブレット等の携帯端末であってもよい。ユーザ端末60には、うつ病リスク判定装置20の判定結果出力部203から出力された判定結果が表示される。ユーザは、ユーザ端末60に判定用データとして、少なくとも判定用眼底画像を入力すると、うつ病リスクに関する判定結果を得ることができる。
【0039】
ユーザ端末60から入力される判定用データは、判定用眼底画像、判定用生活習慣データ及び判定用基本健診データである。このうち、判定用生活習慣データ及び判定用基本健診データは、例えば医療機関等のユーザ端末60以外の端末から予め判定用データベース50に入力されたものであってもよい。この場合、ユーザは、判定用眼底画像を入力するのみで、うつ病リスクに関する判定結果を得ることができる。
【0040】
図2Aは、本発明による第1の態様による機械学習モデル生成装置10を示す図である。
第1の態様による機械学習モデル生成装置10は、学習用データベース40から学習用問診データと学習用眼底画像を取得する学習用データ取得部101と、学習用問診データを正解データとし、学習用眼底画像を観測データとしてニューラルネットワークに入力し、学習済モデルMを生成する機械学習モデル生成部102とを備える。
【0041】
本発明の第1の態様において、学習用データ取得部101は、学習用データベース40から学習用問診データと学習用眼底画像を取得する。学習用問診データと学習用眼底画像は、本発明による学習済モデルMの生成に必須のデータである。
【0042】
本発明の第1の態様において、機械学習モデル生成部102は、学習用データ取得部101で取得した学習用問診データと学習用眼底画像を用いて学習済モデルMを生成する。機械学習モデル生成部102は、学習用問診データを正解データとし、学習用眼底画像を観測データとしてニューラルネットワークに入力し、学習済モデルMを生成する。
【0043】
図2Bは、本発明による第1の態様によるうつ病リスク判定装置を示す図である。
第1の態様によるうつ病リスク判定装置20は、判定用データベース50から判定用眼底画像を取得する判定用データ取得部201と、学習済モデルMに判定用眼底画像を入力することにより、うつ病リスクを示す予測スコアを出力するうつ病リスク判定部202と、予測スコアに基づいてうつ病リスクの判定結を出力する判定結果出力部203とを備える。
【0044】
本発明の第2の態様において、判定用データ取得部201は、判定用データベース50から判定用眼底画像を取得する。判定用眼底画像は、本発明によるうつ病リスクの判定に必須のデータである。
【0045】
本発明の第1の態様において、うつ病リスク判定部202は、判定用眼底画像を用いてうつ病リスクの判定を行う。うつ病リスク判定部202は、学習済モデルMに判定用眼底画像を入力することにより、うつ病リスクを示す予測スコアを出力する。
【0046】
判定結果出力部203は、うつ病リスク判定部202から出力された予測スコアに基づいてうつ病リスクの判定結果を出力し、ユーザ端末60に表示する。
【0047】
図3Aは、本発明による第2の態様による機械学習モデル生成装置を示す図である。
第2の態様による機械学習モデル生成装置10は、学習用データベース40から学習用問診データと、学習用眼底画像と、学習用生活習慣データとを取得する学習用データ取得部101と、学習用問診データを正解データとし、学習用眼底画像と、学習用生活習慣データとを観測データとしてニューラルネットワークに入力し、学習済モデルMを生成する機械学習モデル生成部102とを備える。
【0048】
本発明の第2の態様において、学習用データ取得部101は、学習用データベース40から学習用問診データと、学習用眼底画像と、学習用生活習慣データとを取得する。学習用問診データと学習用眼底画像は、本発明による学習済モデルMの生成に必須のデータであるが、これに加えて、第2の態様においては、学習用生活習慣データを用いる。
【0049】
本発明の第2の態様において、機械学習モデル生成部102は、学習用データ取得部101で取得した学習用問診データと、学習用眼底画像と、学習用生活習慣データとを用いて学習済モデルMを生成する。機械学習モデル生成部102は、学習用問診データを正解データとし、学習用眼底画像と、学習用生活習慣データとを観測データとしてニューラルネットワークに入力し、学習済モデルMを生成する。
【0050】
学習用生活習慣データを加えることにより、学習済モデルMによる予測精度を高めることができ、より精度の高いうつ病リスクの判定を行うことができる。そのため、ユーザの生活習慣データを用いることができる場合に有用である。
【0051】
図3Bは、本発明による第2の態様によるうつ病リスク判定装置を示す図である。
第2の態様によるうつ病リスク判定装置は、判定用データベース50から判定用眼底画像と、判定用生活習慣データとを取得する判定用データ取得部201と、学習済モデルMに判定用眼底画像と、判定用生活習慣データとを入力することにより、うつ病リスクを示す予測スコアを出力するうつ病リスク判定部202と、予測スコアに基づいてうつ病リスクの判定結果を出力する判定結果出力部とを備える。
【0052】
本発明の第2の態様において、判定用データ取得部201は、判定用データベース50から判定用眼底画像と、判定用生活習慣データとを取得する。判定用眼底画像は、本発明によるうつ病リスクの判定に必須のデータであるが、これに加えて、第2の態様においては、判定用生活習慣データを用いる。
【0053】
本発明の第2の態様において、うつ病リスク判定部202は、判定用眼底画像と、判定用生活習慣データとを用いてうつ病リスクの判定を行う。うつ病リスク判定部202は、学習済モデルMに判定用眼底画像と、判定用生活習慣データとを入力することにより、うつ病リスクを示す予測スコアを出力する。
【0054】
判定用生活習慣データを加えることにより、より精度の高いうつ病リスクの判定を行うことができる。そのため、ユーザの生活習慣データを用いることができる場合に有用である。
【0055】
本発明の第2の態様において、判定結果出力部203は、第1の態様と同様に、うつ病リスク判定部202から出力された予測スコアに基づいてうつ病リスクの判定結果を出力し、ユーザ端末60に表示する。
【0056】
図4Aは、本発明による第3の態様による機械学習モデル生成装置を示す図である。
第3の態様による機械学習モデル生成装置10は、学習用データベースから学習用問診データと、学習用眼底画像と、学習用生活習慣データと、学習用基本健診データとを取得する学習用データ取得部101と、学習用問診データを正解データとし、学習用眼底画像と、学習用生活習慣データと、学習用基本健診データとを観測データとしてニューラルネットワークに入力し、学習済モデルを生成する機械学習モデル生成部102とを備える。
【0057】
本発明の第3の態様において、学習用データ取得部101は、学習用データベース40から学習用問診データと、学習用眼底画像と、学習用生活習慣データと、学習用基本健診データとを取得する。学習用問診データと学習用眼底画像は、本発明による学習済モデルMの生成に必須のデータであるが、これに加えて、第3の態様においては、学習用生活習慣データと学習用基本健診データを用いる。
【0058】
本発明の第3の態様において、機械学習モデル生成部102は、学習用データ取得部101で取得した学習用問診データと、学習用眼底画像と、学習用生活習慣データと、学習用基本健診データを用いて学習済モデルMを生成する。機械学習モデル生成部102は、学習用問診データを正解データとし、学習用眼底画像と、学習用生活習慣データと、楽手用基本健診データとを観測データとしてニューラルネットワークに入力し、学習済モデルMを生成する。
【0059】
学習用生活習慣データと学習用基本健診データを加えることにより、学習済モデルMによる予測精度をさらに高めることができ、より精度の高いうつ病リスクの判定を行うことができる。そのため、ユーザの生活習慣データと学習用基本健診データを用いることができる場合に有用である。
【0060】
図4Bは、本発明による第3の態様によるうつ病リスク判定装置を示す図である。
第3の態様によるうつ病リスク判定装置20は、判定用データベースから判定用眼底画像と、判定用生活習慣データと、判定用基本健診データを取得する判定用データ取得部201と、学習済モデルに判定用眼底画像と、判定用生活習慣データと、判定用基本健診データを入力することにより、うつ病リスクを示す予測スコアを出力するうつ病リスク判定部202と、予測スコアに基づいてうつ病リスクの判定結果を出力する判定結果出力部203とを備える。
【0061】
本発明の第3の態様において、判定用データ取得部201は、判定用データベース50から判定用眼底画像と、判定用生活習慣データと、判定用基本健診データを取得する。判定用眼底画像は、本発明によるうつ病リスクの判定に必須のデータであるが、これに加えて、第3の態様においては、判定用生活習慣データと判定用基本健診データを用いる。
【0062】
本発明の第3の態様において、うつ病リスク判定部202は、判定用眼底画像と、判定用生活習慣データと、判定用基本健診データとを用いてうつ病リスクの判定を行う。うつ病リスク判定部202は、学習済モデルMに判定用眼底画像と、判定用生活習慣データと、判定用基本健診データとを入力することにより、うつ病リスクを示す予測スコアを出力する。
【0063】
判定用生活習慣データと判定用基本健診データを加えることにより、より精度の高いうつ病リスクの判定を行うことができる。そのため、ユーザの生活習慣データと判定用基本健診データを用いることができる場合に有用である。
【0064】
本発明の第3の態様において、判定結果出力部203は、第1及び第2の態様と同様に、うつ病リスク判定部202から出力された予測スコアに基づいてうつ病リスクの判定結果を出力し、ユーザ端末60に表示する。
【0065】
ニューラルネットワークは、第1のニューラルネットワークと、第1のニューラルネットワークとは異なる第2のニューラルネットワークとにより構成されるようにしてもよい。
この場合、第1のニューラルネットワークからの出力を第2のニューラルネットワークの入力とするようにしてもよい。
【0066】
第1のニューラルネットワークは、ある層より前の層の出力を入力とするニューラルネットであってもよい。第1のニューラルネットワークは、例えば、所謂、DenseNetであってもよい。
【0067】
第2のニューラルネットワークは、入力層と出力層の中間に中間層が1層あるニューラルネットであってもよい。第2のニューラルネットワークは、例えば、所謂、Shallow Netであってもよい。
【0068】
図5は、本発明による学習用問診データの一例を示す図である。
学習用問診データは、問診の項目に対する回答をスコア化したデータである。スコア化されたデータは、数値で表される。学習用問診データを得るための問診の項目及びスコア化の方法については、例えば、うつ病の診断に用いられているPHQ-9(Patient Health Questionnaire-9)を用いるようにしてもよい。
図5の例では、設問(A)~(I)の9個の項目について、直近2週間の状態について問われている。被検者は、設問(A)~(I)の9個の項目のそれぞれについて、「全くない」、「数日」、「半分以上」、「ほとんど毎日」の4段階のいずれに当てはまるかを回答する。回答はスコア化され、数値で表される。
図5の(a)の例では、「全くない」を「0」、「数日」を「1」、「半分以上」を「2」、「ほとんど毎日」を「3」として、設問(A)~(I)の9個の項目の合計が問診データのスコアとして算出される。問診データのスコアは、例えば、PHQ-9を用いる場合は0~27の数値であるが、これに限られず、用いる問診の項目に応じて算出された任意の数値であってよい。
【0069】
図5の(b)は、問診の項目について回答をスコア化した結果である問診データの各スコアが示すうつ状態のレベルと、スコアに基づく提案が示されている。
図5の(b)では、うつ状態のレベルがA~Eの5段階で示されている。うつ状態のレベルは、問題なし、軽度、中程度、重度、要注意、要経過観察、要受診等の程度を表す任意の用語で表現してもよい。
図5の(b)の例では、各うつ状態のレベルに対して、提案が文章等のメッセージで示されている。
図5の(b)のスコア、うつ状態のレベル、及び提案については、うつ病リスク判定装置20の判定結果出力部203により、ユーザ端末60に表示されるようにしてもよい。
【0070】
図6Aは、本発明による眼底画像の一例を示す図である。
眼底画像は、眼底画像撮像装置30により撮像され、学習用データベース40に記憶される。ここで、「眼底画像」とは、被検者の眼の底部を撮影した写真である。眼の底部とは、水晶体の反対側の眼の内面をいう。網膜および視神経頭も眼の底部に含まれる。
図6Aの(a)は、被検者の左目の眼底画像の例を示しており、
図6Aの(b)は、被検者の右目の眼底画像の例を示している。学習用眼底画像及び判定用眼底画像は、被検者の左目又は右目のいずれか一方の眼底画像のみを用いてもよく、被検者の左目及び右目の両方の眼底画像を用いてもよい。
【0071】
学習用眼底画像に被検者の左目の眼底画像のみを用いる場合には、判定用眼底画像も被検者の左目の眼底画像のみを用いることが好ましい。学習用眼底画像に被検者の右目の眼底画像のみを用いる場合には、判定用眼底画像も被検者の右目の眼底画像のみを用いることが好ましい。学習用眼底画像に被検者の左目及び右目の両方の眼底画像を用いる場合には、判定用眼底画像も被検者の左目及び右目の両方の眼底画像を用いることが好ましい。
【0072】
しかしながら、これらの組み合わせに限られず、学習用眼底画像と判定用眼底画像とで左右が異なる眼底画像を用いるようにしてもよい。また、学習用眼底画像には左目と右目の両方の眼底画像を用い、判定用眼底画像には左目又は右目のいずれかの眼底画像を用いるようにしてもよい。また、学習用眼底画像には左目又は右目のいずれか一方の眼底画像を用い、判定用眼底画像には左目と右目の両方の眼底画像を用いるようにしてもよい。
【0073】
学習用眼底画像及び判定用眼底画像に被検者の左目及び右目の両方の眼底画像を用いる場合には、左目又は右目のいずれか一方の眼底画像のみを用いる場合に比べて判定の精度を向上することができる。また、学習用眼底画像と判定用眼底画像とで、同じ種類(即ち、右目のみ、左目のみ、左目と右目の両方)の眼底画像を用いる方が、異なる種類の眼底画像を用いる場合に比べて判定の精度を向上することができる。
【0074】
機械学習モデル生成装置10において学習済モデルの生成のために用いられる学習用眼底画像は、その眼底画像を撮影した被検者の問診データのスコアと関連付けて学習用データベース40に記憶される。また、学習用眼底画像に被検者の左目と右目の両方の眼底画像を用いる場合には、左目の眼底画像と右目の眼底画像とをセットにしてその被検者の問診データのスコアと関連付けて学習用データベース40に記憶される。このようにして、健康診断や医療機関での検査等により収集された多数の被検者のデータが学習用データベース40に記憶される。
【0075】
うつ病リスク判定装置20で用いられる判定用眼底画像は、うつ病リスクの判定の対象者の眼底画像を撮影したデータであり、判定用データベース50に記憶される。また、判定用眼底画像に被検者の左目と右目の両方の眼底画像を用いる場合には、左目の眼底画像と右目の眼底画像とをセットにしてその被検者(判定の対象者)の眼底画像のデータとして判定用データベース50に記憶される。
【0076】
図6Bは、左目又は右目のいずれか一方の眼底画像を用いる例を示す図である。
図6Bの例では、左目又は右目のいずれか一方の眼底画像に関する判定用眼底画像を少なくとも含む判定用データを学習済の機械学習モデルに入力することにより、出力として予測PHQ-9のデータが得られる。学習済の機械学習モデルは、1つのニューラルネットワークにより構成するようにしてもよいが、
図6Bの例のように、第1のニューラルネットワークと第2のニューラルネットワークから構成されるようにしてもよい。この場合に、左目又は右目のいずれか一方の眼底画像に関する判定用眼底画像を第1のニューラルネットワークに入力し、その他の被検者の眼に関する情報及び/又は被検者の基本情報を第2のニューラルネットワークに入力するようにしてもよい。その他の被検者の眼に関する情報は、例えば、RNFLの厚み、OCT、OCTA、及び/又は眼圧の情報である。被検者の基本情報は、例えば、年齢、性別、血圧等のデータである。
【0077】
図6Cは、左目の眼底画像と右目の眼底画像の両方を用いる例を示す図である。
左目の眼底画像と右目の眼底画像の両方に関する判定用眼底画像を少なくとも含む判定用データを学習済の機械学習モデルに入力することにより、出力として予測PHQ-9のデータが得られる。学習済の機械学習モデルは、1つのニューラルネットワークにより構成するようにしてもよいが、
図6Cの例のように、第1のニューラルネットワークと第2のニューラルネットワークから構成されるようにしてもよい。この場合に、左目の眼底画像と右目の眼底画像の両方の眼底画像に関する判定用眼底画像を第1のニューラルネットワークに入力し、その他の被検者の眼に関する情報及び/又は被検者の基本情報を第2のニューラルネットワークに入力するようにしてもよい。その他の被検者の眼に関する情報は、例えば、RNFLの厚み、OCT、OCTA、及び/又は眼圧の情報である。被検者の基本情報は、例えば、年齢、性別、血圧等のデータである。
【0078】
その他の被検者の眼に関する情報及び/又は被検者の基本情報については、
図6B又は
図6Cの例に限られず、
図2A~
図4Bまでの図により説明したいずれの構成に対しても追加可能である。この際、学習済モデルが第1のニューラルネットワーク及び第2のニューラルネットワークにより構成される場合には、第2のニューラルネットワークにその他の被検者の眼に関する情報及び/又は被検者の基本情報を入力するようにしてもよい。
【0079】
図7は、本発明による生活習慣データの一例を示す図である。
生活習慣データは、被検者の各設問に対する回答がスコア化され、数値で表される。
図7の例では、各設問に対して、「はい」、「いいえ」、「回答したくない」、「わからない」等の選択肢を被検者が選択する。各選択肢には、「0」、「1」等の数値が割り当てられている。また、
図7の「時間入力(自由回答)」のように、被検者が設問の回答に相当する任意の数値を入力するようにしてもよい。生活習慣データのスコアは、設問の項目ごとに集計されてもよく、設問全体の合計であってもよい。
【0080】
機械学習モデル生成装置10で学習済モデルの生成のために用いられる学習用生活習慣データは、学習用データベース40に記憶されている。機械学習モデル生成装置10の機械学習モデル生成部102では、学習用データベース40に記憶された学習用生活習慣データのうち、一部のみを用いて学習済モデルMを生成するようにしてもよい。
【0081】
うつ病リスク判定装置20で用いられる判定用生活習慣データは、うつ病リスクの判定の対象者の生活習慣データであり、判定用データベース50に記憶される。うつ病リスク判定装置20のうつ病リスク判定部202では、判定用データベース50に記憶された判定用生活習慣データのうち、一部のみを用いて予測スコアを算出するようにしてもよい。
【0082】
図8は、本発明による基本健診データの一例を示す図である。
基本健診データは、被検者の性別、受診年齢、身長、体重、腹囲、BMI、最高血圧、最低血圧等のデータであり、一般的な健康診断により得られるデータである。基本健診データは、典型的には集計されずに、項目ごとのデータとして用いられる。
【0083】
機械学習モデル生成装置10で学習済モデルの生成のために用いられる学習用基本健診データは、学習用データベース40に記憶されている。機械学習モデル生成装置10の機械学習モデル生成部102では、学習用データベース40に記憶された学習用基本健診データのうち、一部のみを用いて学習済モデルMを生成するようにしてもよい。
【0084】
うつ病リスク判定装置20で用いられる判定用基本健診データは、うつ病リスクの判定の対象者の基本健診データであり、判定用データベース50に記憶される。うつ病リスク判定装置20のうつ病リスク判定部202では、判定用データベース50に記憶された判定用基本健診データのうち、一部のみを用いて予測スコアを算出するようにしてもよい。
【0085】
図9は、本発明による判定結果出力部の出力の一例を示す図である。
うつ病リスク判定装置20の判定結果出力部203は、判定結果を出力し、ユーザ端末60に表示する。
図9の例では、うつ病リスク判定装置20のうつ病リスク判定部202において学習済モデルMにより算出された予測スコアとそのスコアの説明が判定結果の出力として表示されている。
図9は例示であり、ユーザに結果を伝えるための任意の表示方法で表示されてもよい。
図9の例では、予測スコアとスコアに基づく提案に関する表が表示されているが、これに限られず、他の表やグラフ等を用いて表示してもよい。
【0086】
次に、本発明によるうつ病リスク判定方法について説明する。
本発明のうつ病リスク判定方法は、学習用データ取得部と機械学習モデル生成部とを備える機械学習モデル生成装置が、うつ病のリスクを判定するための学習済モデルを生成するステップと、判定用データ取得部と、うつ病リスク判定部と、判定結果出力部とを備えるうつ病リスク判定装置が、機械学習モデル生成装置で生成した学習済モデルを用いてうつ病のリスクを判定するステップとを備える。
【0087】
学習済モデルを生成するステップは、学習用データ取得部が、学習用データベースから少なくとも学習用問診データと学習用眼底画像を取得するステップと、機械学習モデル生成部が、学習用問診データを正解データとし、少なくとも学習用眼底画像を観測データとしてニューラルネットワークに入力し、学習済モデルを生成するステップとを含む。
【0088】
うつ病のリスクを判定するステップは、記判定用データ取得部が、判定用データベースから少なくとも判定用眼底画像を取得するステップと、うつ病リスク判定部が、学習済モデルに少なくとも判定用眼底画像を入力することにより、うつ病リスクを示す予測スコアを出力するステップと、判定結果出力部が、予測スコアに基づいてうつ病リスクの判定結果を出力するステップとを含む。
【0089】
図10は、本発明によるうつ病リスク判定部のうつ病リスク判定処理の流れを示すフローチャートである。
図10のうつ病リスク判定処理においては、まず、ステップS1001において、判定用データが取得され、ステップS1002において、学習済モデルによるうつ病リスクの判定が行われ、ステップS1003において、うつ病リスクの判定結果が出力される。
【0090】
図11は、本発明の学習済モデルにより出力された予測スコアの検証結果を示す図である。
図11の例では、うつ病リスクの指標としてPHQ-9を用いて検証した例を示している。
図11の横軸は、被検者のPHQ-9の実際のスコアを示し、縦軸は、本発明の学習済モデルを用いて導出したPHQ-9の予測スコアを示している。
図11のTPフィールドは、PHQ-9の実際のスコアが5以上であり、PHQ-9の予測スコアも5以上である領域を示している。
図11のTNフィールドは、PHQ-9の実際のスコアが5未満であり、PHQ-9の予測スコアも5未満である領域を示している。
図11のFPフィールドは、PHQ-9の実際のスコアが5未満であるが、PHQ-9の予測スコアが5以上である領域を示している。
図11のFNフィールドは、PHQ-9の実際のスコアが5以上であるが、PHQ-9の予測スコアが5未満である領域を示している。
【0091】
図11のTPフィールド、FPフィールド及びFNフィールドは、受診やカウンセリングの勧め等のフォローアップを要する被検者の群である。TNフィールドは、フォローアップを要しない被検者の群である。TPフィールド及びTNフィールドは、本発明の学習済モデルにより、フォローアップを要するか否かを正しく判定できた被検者の群である。
図11の例では、全被検者242人中、TPフィールドに該当する被検者は90人、TNフィールドに該当する被検者は91人、FPフィールドに該当する被検者は19人、FNフィールドに該当する被検者は42人であった。本発明によれば、本発明の学習済モデルを用いたうつ病リスク判定システムを用いることにより、約75%の被検者についてうつ病に関してフォローアップを要するか否かを正しく判定できることが確認された。
【0092】
以上により説明した本発明によるうつ病リスク判定システム1によれば、他覚的な眼底画像、健康診断で簡単に得られる基本計測データから、被検者の精神健康状態を得ることができる。
【0093】
また、本発明では、ストレスの多い現役の労働者に対し、事前にこのような情報が得られることは、職場環境の改善、事故の事前予防の観点から、非常に有用なシステムを提供することができる。
上記記載は実施例についてなされたが、本発明はそれに限らず、本発明の原理と添付の請求の範囲の範囲内で種々の変更および修正をすることができることは当業者に明らかである。
本発明の第3の態様において、機械学習モデル生成部102は、学習用データ取得部101で取得した学習用問診データと、学習用眼底画像と、学習用生活習慣データと、学習用基本健診データを用いて学習済モデルMを生成する。機械学習モデル生成部102は、学習用問診データを正解データとし、学習用眼底画像と、学習用生活習慣データと、学習用基本健診データとを観測データとしてニューラルネットワークに入力し、学習済モデルMを生成する。
前記第2のニューラルネットワークは、入力層と出力層の中間に中間層が1層あるニューラルネットであることを特徴とする、請求項4に記載のうつ病リスク判定システム。
前記学習用眼底画像及び前記判定用眼底画像として、左目又は右目のいずれか一方の眼底画像を用いることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のうつ病リスク判定システム。
前記学習用眼底画像及び前記判定用眼底画像として、左目の眼底画像と右目の眼底画像の両方を用いることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のうつ病リスク判定システム。
前記第2のニューラルネットワークは、入力層と出力層の中間に中間層が1層あるニューラルネットであることを特徴とする、請求項12に記載の機械学習モデル生成装置。